説明

故障判定装置

【課題】 処理待ち時間を生じさせることなく、制御手段に負荷の異常状態を表す信号をモニタさせることができる故障判定装置を提供する。
【解決手段】 バックライト40に駆動電源が供給されているときに、バックライト40の下流側の端子電圧を入力してフィルタ処理を施すフィルタ回路50と、バックライト40への駆動電源の供給を制御する制御信号の信号レベルが、電源供給の許可を示す信号レベルから、電源供給の停止を示す信号レベルに遷移するタイミングに同期して、フィルタ処理後の端子電圧の電圧レベルを取得するマイコン10とを有し、マイコン10は、取得した端子電圧の電圧レベルに基づいて制御信号に対する処理を行う構成を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶のバックライト光源としてLED(Light Emitting Diode)を使用した表示装置の故障判定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来の液晶パネルのバックライト部の要部構成と、このバックライト部を制御するマイコン10とを示す。バックライト部には、バックライト40の駆動部20と、バッテリ電源を昇圧する昇圧回路30と、複数のLEDを備えたバックライト40とを有している。なお、図1には簡単のため複数のLEDを直列に接続したLED列を1列だけ示しているが、複数列からなるLED列であってもよい。
【0003】
駆動部20は、バッテリ(図中にはVccと示す)からの電源供給を受けて動作する。駆動部20は、マイコン10から出力される制御信号に従って昇圧回路30内のnチャネルMOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:以下、nMOSと略記する)31のゲートに供給する制御電圧を制御する。また、駆動部20には、バックライト40の低圧側端子Tに接続した定電流源21が設けられている。定電流源21は、マイコン10から出力される制御信号がONになると駆動し、バックライト40のLED列に規定の電流(例えば、80mA)を流す。
【0004】
昇圧回路30は、コイルL、ダイオードD、コンデンサC、nMOS31を有している。コイルLとnMOS31とでいわゆる昇圧チョッパ回路を構成している。
昇圧回路30は、コイルLの一方の端子をバッテリに接続している。他方の端子は、nMOS31のドレイン、及びダイオードDのアノード端子に接続している。ダイオードDのカソード端子側は、コンデンサCと、バックライト40の高圧側端子Sとに接続している。コンデンサCは、バックライト40に供給される電圧の平滑用として用いられる。
【0005】
バックライト40は、複数のLEDを直列に接続したLED列で構成される。
また、バックライト40の低圧側端子Tには、フィルタ回路50が接続され、フィルタ回路50の出力がマイコン10のA/D((Analogue/Digital)入力ポート11に入力される。フィルタ回路50は、抵抗RとコンデンサCとを備えるローパスフィルタである。
【0006】
マイコン10から駆動部20には制御信号が出力される。駆動部20は、制御信号の電圧レベルが“H”レベルのときにnMOS31をオンし、“L”レベルのときにnMOS31をオフする。
nMOS31がオンになると、バッテリからの電流がコイルLに流れ、コイルLにエネルギーが蓄積される。その後、nMOS31がオフになるとコイルLに逆起電力、すなわち昇圧電圧が発生する。コイルLで発生した昇圧電圧はダイオードDを介して平滑コンデンサCを充電する。この昇圧動作が高周波で繰り返され、平滑コンデンサCに出力電圧が発生する。この出力電圧によってバックライト40のLEDに電流が流れる。バックライト40のLEDに電流を流すときには、定電流源21がバックライト40に流れる電流量が一定となるように制御する。
【0007】
マイコン10は、バックライト40の低圧側端子Tの電圧をモニタしてバックライト40のLEDに故障が生じているか否かを判定する。但し、バックライト40の低圧側端子Tの電圧は、ノイズによりマイコン10が誤検知する可能性があるので、マイコン10はフィルタ回路50でフィルタ処理した電圧をモニタ信号として入力する。なお、マイコン10は、モニタ信号をA/D入力ポート11から入力する。入力したモニタ信号は、マイコン10内に設けられたAD変換器(不図示)によってAD変換された後に、マイコン10内のCPU等によって処理される。
【0008】
特許文献1には、PWM制御によってスイッチングパルスの幅を調節して負荷(LED)に一定の電圧を印加する直流−直流コンバータにおいて、負荷(LED)の短絡又は開放によって直流−直流コンバータに過電流又は過電圧が印加されることを防止する技術が開示されている。具体的には、図1に示すバックライト40の低圧側端子Tの電圧を測定し、基準電圧よりも大きい電圧を測定すると、PWM制御によるスイッチングパルスのオン時間をゼロにしている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−325396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の開示技術には、以下に示す問題がある。
第1に、バックライト40の低圧側端子Tの電圧をマイコン10に入力する場合、フィルタ処理や分圧処理によって加工した電圧をマイコン10に入力する。このとき、マイコン10がスイッチングパルスの立ち上がりに同期して低圧側端子Tの電圧をモニタすると、低圧側端子Tの電圧が安定した状態となるまでに時間がかかり、マイコン10の処理が待たされるという問題が生じる。マイコン10の処理に待ち時間が発生すると、他の処理に影響が出る。例えば、液晶パネルのタッチ操作に応じた操作に遅れが生じる。
【0011】
また、第2に、特許文献1では異常電圧を検出すると一律にPWM制御のスイッチングパルスのオン時間をゼロに制御しており、バックライトに生じた異常レベルに応じた最適な制御がなされていない。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、処理待ち時間を生じさせることなく、制御手段に負荷の異常状態を表す信号をモニタさせることができる故障判定装置を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、負荷の故障度合いに応じて最適な制御を行うことができる故障判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために請求項1記載の故障判定装置の発明は、負荷に駆動電源が供給されているときに、該負荷の下流側の端子電圧を入力してフィルタ処理を施すフィルタ手段と、前記負荷への前記駆動電源の供給を制御する制御信号の信号レベルが、電源供給の許可を示す信号レベルから、電源供給の停止を示す信号レベルに遷移するタイミングに同期して、前記フィルタ処理後の前記端子電圧の電圧レベルを取得する制御手段とを有し、前記制御手段は、取得した前記端子電圧の電圧レベルに基づいて前記制御信号を生成する構成を備えている。
【0015】
請求項1記載の発明は、フィルタ処理後の信号を取得する場合であっても、制御手段に待ち時間が発生せず、制御手段の処理効率を改善することができる。
【0016】
請求項2記載の故障判定装置の発明は、定電流駆動される負荷に流す電流量を制御する制御信号を生成する信号生成手段と、前記制御信号のオンデューティに従って前記負荷に駆動電流が供給されているときに、前記負荷の下流側の端子電圧をモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段によってモニタされた前記端子電圧の電圧レベルにより前記負荷の故障度合いを判定する判定手段とを有し、前記信号生成手段は、前記負荷の故障度合いに応じて前記制御信号のデューティ比を制御する構成を備えている。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、負荷の下流側の端子電圧をモニタすることで負荷に生じる故障を判定し、負荷の故障度合いに応じた制御に切り替えることができる。
【0018】
請求項3記載の故障判定装置の発明は、請求項2記載の発明において、前記判定手段は、前記負荷の故障度合いと前記制御信号のデューティ比とに基づいて、故障による危険度を判定し、前記信号生成手段は、前記危険度に基づいて前記制御信号のデューティ比を制御する構成を備えている。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、故障による危険度を判定して、危険度に応じた制御に切り替えることができる。
【0020】
請求項4記載の故障判定装置の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記モニタ電圧の電圧レベルが第1しきい値よりも高くなった回数をカウントするカウント手段を有し、前記判定手段は、前記カウント手段のカウント値が所定回数を超えた場合に前記負荷に故障が発生していると判定し、前記信号生成手段は、前記制御信号のオンデューティを、前記判定手段で故障が発生していると判定された時の制御信号のオンデューティよりも小さく変更する構成を備えている。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、負荷の故障度合いを精度よく判定し、判定した故障度合いに応じた制御に切り替えることができる。
【0022】
請求項5記載の故障判定装置の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の発明において、前記判定手段は、前記モニタ電圧の電圧レベルが第2しきい値よりも高い場合に前記負荷に重度の故障が発生していると判定し、前記信号生成手段は、オンデューティが0%の制御信号を生成する、又は前記制御信号の生成を停止する構成を備えている。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、故障による危険度を精度よく判定して、危険度に応じた制御に切り替えることができる。
【0024】
請求項6記載の故障判定装置の発明は、請求項4記載の発明において、前記カウント手段は、前記モニタ電圧の電圧レベルが前記第1しきい値よりも高くなったときの前記制御信号のオンデューティに応じて、加算するカウント値を変更する構成を備えている。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、制御信号のオンデューティが、負荷に駆動電流を駆動する時間に比例する点に着目し、制御信号のオンデューティに応じて加算するカウント値を変更することで、故障によって生じる危険度を精度よく判定することができる。
【0026】
請求項7記載の故障判定装置の発明は、請求項2から6のいずれか一項記載の発明において、前記判定手段は、前記負荷の周囲の温度を測定する温度センサの測定温度に基づいて、前記制御信号のデューティ比を制御する構成を備えている。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、負荷による発熱量に応じて制御を切り替えることができる。
【0028】
請求項8記載の故障判定装置の発明は、請求項2から7のいずれか一項記載の発明において、前記負荷が定電流駆動されているときに、該負荷の下流側の端子電圧を入力してフィルタ処理を施すフィルタ手段を有し、前記モニタ手段は、前記制御信号の信号レベルが、前記負荷への駆動電流の供給を許可する信号レベルから、前記駆動電流を停止させる信号レベルに遷移するタイミングに同期して、前記フィルタ処理後の前記端子電圧の電圧レベルをモニタする構成を備えている。
【0029】
請求項8記載の発明によれば、フィルタ処理後の信号を取得する場合であっても、端子電圧のモニタ時に待ち時間が発生せず、処理効率を改善することができる。
【0030】
請求項9記載の故障判定装置は、請求項1又は2記載の故障判定装置において、前記下流側の端子電圧は、前記負荷と前記負荷を定電流駆動する定電流ドライバとの接続ノードにおける端子電圧である構成を備えている。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、フィルタ処理後の信号を取得する場合であっても、制御手段に待ち時間が発生せず、制御手段の処理効率を改善することができる。
【0032】
また、本発明によれば、負荷の下流側の端子電圧をモニタすることで負荷に生じる故障を判定し、負荷の故障度合いに応じた制御に切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例1】
【0034】
図2には、故障判定装置を車両のカーナビゲーション装置に適用した実施例の構成を示す。なお、図1に示す従来の構成と同一の装置については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施例のバックライト部は、図1に示す従来のバックライト部と同様に、駆動部20と、昇圧回路30と、バックライト40とを有しており、マイコン10からの制御信号によってバックライト40の点灯と消灯とが制御される。より具体的には、制御信号がオン状態のときにバックライト40に電流が流れてLEDが点灯する。また、制御信号がオフ状態のときにはバックライト40には電流が流れず、LEDは消灯する。
【0036】
マイコン10には、フィルタ回路50によってフィルタ処理されたモニタ信号と、温度センサ60によって測定されたセンサ信号とがA/D入力ポート11から入力される。
モニタ信号は、バックライト40の低圧側端子Tの電圧をフィルタ回路50でフィルタ処理した信号である。また、温度センサ60は、バックライト40やマイコン10の周囲の温度を測定し、測定した温度をマイコン10に出力する。
なお、バックライト40の低圧側端子Tは、バックライト40とバックライト40を定電流駆動する定電流源21との接続ノードである。
【0037】
図3にマイコン10のハードウェア構成を示す。マイコン10は、マイコン10による制御処理を実現するためのプログラムが格納されたROM102と、ROM102に格納されたプログラムを読み込んで処理を実行する中央処理装置(CPU)101と、プログラムを実行する際に使用される一時的なデータを保存するRAM103と、データの入出力部104などから構成される。CPU101がROM102に格納されたプログラムに従った制御を行うことで、CPU101が本発明の制御手段、モニタ手段、判定手段、信号生成手段、カウント手段として機能する。なお、これらの手段によって実行される処理の詳細については、図4〜7を参照しながら後ほど説明する。
【0038】
図4には、マイコン10がモニタ信号を取り込むタイミングを示す。なお、図4(A)及び図4(B)にはマイコン10から駆動部20に出力される制御信号の波形と、バックライトの低圧側端子Tの電圧波形と、マイコン10のAD入力ポート11の電圧波形(すなわち、モニタ信号の電圧波形)とを示す。
図4(A)では、マイコン10が駆動部20に出力する制御信号の立ち上がりタイミングを開始タイミングとして、マイコン10のA/D入力ポート11に入力されるモニタ信号が安定した電圧レベルになったときに、マイコン10がモニタ信号を取り込む場合を示している。安定した電圧レベルとは、モニタ信号の電圧レベルが設定されたしきい値電圧以下となり、しきい値電圧以下の電圧レベルを所定時間以上維持した場合をいう。
図4(A)に示すように、制御信号の立ち上がりタイミングを開始タイミングとすると、マイコン10はモニタ信号の電圧レベルが安定するまで待機しなければならず、マイコン10の処理が遅れるという問題が生じる。
そこで、本実施例のマイコン10は、図4(B)に示すように、制御信号の立ち下がりタイミングに同期して、A/D入力ポート11に入力されるモニタ信号を取得する。
制御信号が立ち下がるときには、モニタ信号の電圧レベルは安定した状態にあるので、マイコン10は待機することなくモニタ信号を取得することができる。
【0039】
このように本実施例は、マイコン10が制御信号の立ち下がりに同期して、モニタ信号を取得することにより、マイコン10の処理に待ち時間を生じさせない。このため、マイコン10の処理効率を改善して液晶パネルのタッチスイッチの反応が悪くなる等の問題を生じさせない。
【0040】
なお、上述した実施例では、マイコン10は制御信号の立ち下がりタイミングに同期してモニタ信号を取得するとして説明したが、バックライト40への電源供給を停止するタイミングを示す信号の状態であればよい。すなわち、制御信号の立ち下がりタイミングでバックライト40への電源供給を開始し、制御信号の立ち上がりタイミングでバックライト40への電源供給を停止する場合には、制御信号の立ち上がりタイミングに同期して、マイコン10はモニタ信号を取得する。
【実施例2】
【0041】
添付図面を参照しながら本発明の第2実施例を説明する。なお、本実施例の構成は、上述した第1実施例と同一であるので実施例の構成に関する説明は省略する。
【0042】
本実施例では、バックライト40の低圧側端子Tに生じる電圧をフィルタ回路50でフィルタ処理し、フィルタ処理後の電圧をモニタ信号としてA/D入力ポート11より入力する。マイコン10は、A/D入力ポート11より入力したモニタ信号によりバックライト40の故障判定を行い、故障が発生している場合にはバックライト40の故障度合いに応じた制御に切り替える。
【0043】
図5と、図6及び図7に示すフローチャートとを参照しながら本実施例のマイコン10の処理手順を説明する。なお、図5(A)には、マイコン10から駆動部20に出力される制御信号の電圧波形を示す。図5(B)には、バックライト40の低圧側端子Tに生じる電圧波形を示す。図5(C)には、マイコン10のA/D入力ポート11の電圧波形(すなわち、モニタ信号波形)を示す。図5(D)には、異常レベルバッファのカウント値の推移を示す。異常レベルバッファについては後述する。
マイコン10は、まず、制御信号の立ち下がりタイミングになると(ステップS1/YES)、A/D入力ポート11に入力されるモニタ信号を取得する(ステップS2)。
次に、マイコン10は、取得したモニタ信号の電圧レベルと、LEDの異常を判定する第1異常判定しきい値とを比較する(ステップS3)。モニタ信号の電圧レベルが第1異常判定しきい値よりも低い場合には(ステップS3/YES)、マイコン10は、バックライト40のLEDに故障は発生していないと判定して、異常レベルバッファのカウント値を[1]減算する(ステップS4)。異常レベルバッファは、バックライト40の異常を判定するためのカウンタであって、モニタ信号の電圧レベルが異常を判定する第1異常判定しきい値以上である場合にカウントアップされる。また、ステップS4で異常レベルバッファの値が[0]である場合には、減算は行わない。異常レベルバッファのカウント値を減算すると(ステップS4)、マイコン10は、バックライト40の通常制御を行う(ステップS5)。
なお、バックライト40のLEDに故障が発生すると、故障したLEDでの電圧降下が発生しなくなり、バックライトの低圧側端子Tに生じる電圧が高くなる。例えば、バックライト40のLEDに故障が発生していない場合には、バックライト40の低圧側端子Tの電圧は1[V]程度となるが、LEDの1つが故障すると、この故障したLEDでの電圧降下が発生せず、バックライト40の低圧側端子Tの電圧は7〜8[V]程度になる。また、故障が発したLEDの個数が多くなれば多くなるほど、バックライト40の低圧側端子Tの電圧は高くなる。
【0044】
次に、モニタ信号の電圧レベルが第1異常判定しきい値以上であった場合には(ステップS3/NO)、マイコン10は、モニタ信号の電圧レベルを第2異常判定しきい値と比較する(ステップS6)。第2異常判定しきい値は、第1異常判定しきい値よりも電圧レベルが高く設定されたしきい値である。モニタ信号の電圧レベルがこの第2異常判定しきい値よりも高い場合(ステップS6/YES)、マイコン10はバックライト40の故障度合いが大きく、正常な表示動作に支障をきたすと判定して異常確定2の処理を行う(ステップS7)。異常確定2の処理には、制御信号のONデューティを0%にする、又は駆動部20への制御信号の出力を取りやめる、等が挙げられる。
【0045】
また、モニタ信号の電圧レベルが第2異常判定しきい値以下であると(ステップS6/NO)、マイコン10は、制御信号のONデューティが30%未満であるか否かを判定する(ステップS8)。制御信号のONデューティの割合が高いと、バックライト40に電流が流れている時間が長いことになる。従って、LEDに故障が発生していると、バックライト40の低圧側端子Tに発生する電力が大きくなり、マイコン10やバックライトのLEDに加わる熱量が大きくなる。最悪の場合、マイコン10やバックライトのLEDに発煙や発火の可能性もある。
そこで、マイコン10は、異常レベルバッファに加算する加算値を制御信号のONデューティに応じたものとする。マイコン10は、制御信号のONデューティが30%未満であった場合には、異常レベルバッファの値を[1]加算する(ステップS9)。また、制御信号のONデューティが30%以上で60%未満であった場合には(ステップS8/NO、かつS10/YES)、マイコン10は、異常レベルバッファの値を[2]加算する。また、制御信号のONデューティが60%以上であった場合には(ステップS10/NO)、マイコン10は異常レベルバッファの値を[3]加算する(ステップS12)。
【0046】
図5を参照しながらより具体的に説明する。図5には、図5に示す区間(a)と(b)との間と、区間(d)と区間(e)との間でLEDに故障が発生している場合を例示している。
図5に示す区間(b)では制御信号号のONデューティが60%以上(90%)であるので、図5(D)に示すように異常レベルバッファのカウント値を[3]加算している。また、区間(c)では、制御信号のONデューティが30%未満(25%)であるので、異常レベルバッファのカウント値を[1]加算している。また、区間(d)では、制御信号のONデューティが30%以上で60%未満(50%)であるので、異常レベルバッファのカウント値を[2]加算している。
なお、図5に示す区間(e)では、図5(C)に示すようにモニタ信号の電圧レベルが第2異常判定しきい値を超えたため、異常確定2の制御が行われたことを示している。
【0047】
次にマイコン10は、異常レベルバッファのカウント値を判定する(ステップS13)。異常レベルバッファのカウント値が5未満であった場合には(ステップS13/YES)、マイコン10は通常制御を継続して、今後の経過によって処理を変更する。
また、異常レベルバッファのカウント値が10以上であった場合には(ステップS15/NO)、マイコン10は異常確定2の制御を行う(ステップS16)。
【0048】
また、異常レベルバッファのカウント値が5以上で10未満となった場合には(ステップS15/YES)、マイコン10はモニタ信号のONデューティが30%以上であるか否かを判定する(ステップS17)。図5に示す例では、区間(d)のときに異常レベルバッファのカウント値が5以上となっている。このとき、マイコン10は、制御信号のONデューティが30%未満であった場合には(ステップS17/YES)、通常制御を継続して(ステップS14)、今後の経過を監視する。
また、モニタ信号のONデューティが30%以上であった場合(ステップS17/NO)、マイコン10は、温度センサ60で測定されるバックライト40やマイコン10の周囲の温度が85℃以下であるか否かを判定する(ステップS18)。バックライト40やマイコン10の周囲の温度が85℃よりも大きくなると(ステップS18/YES)、マイコン10は危険度が高いと判定して異常確定2の制御を行う(ステップS16)。また、バックライト40やマイコン10の周囲の温度が85℃以下であった場合には(ステップS18/NO)、マイコン10は異常確定1の制御を行う(ステップS19)。
異常確定1の制御には、例えば、制御信号のONデューティの上限を30%に固定する、制御信号のONデューティを半分にする、異常確定1の制御に入ったときの制御信号のONデューティによって以降のONデューティを変更する、等が挙げられる。
例えば、異常が確定したときの制御信号のONデューティが50%未満であれば、異常確定後の制御信号のONデューティを10%とし、異常が確定したときの制御信号のONデューティが50%以上であれば、異常確定後の制御信号のONデューティを30%とする。
【0049】
以上の説明より明らかなように本実施例は、モニタ信号の電圧レベルによってバックライト40の故障度合いを判定すると共に、モニタ信号の電圧レベルと制御信号のONデューティとに基づいて、マイコン10やLEDに加わる電力状態を判定している。
従って、LEDを点灯させる制御信号のONデューティをLEDの故障度合いに応じて変更したり、マイコン10やLEDに発火や発煙の危険性があると判定した場合には、速やかにLEDを消灯させることができる。
【0050】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来の液晶パネルのバックライト部の要部構成と、このバックライト部を制御するマイコンとを示す図である。
【図2】実施例の液晶パネルのバックライト部の要部構成と、このバックライト部を制御するマイコンとを示す図である。
【図3】マイコンのハードウェア構成を示す図である。
【図4】(A)は従来のマイコンのモニタ信号の取得タイミングを示す図であり、(B)は実施例1でのマイコンのモニタ信号の取得タイミングを示す図である。
【図5】(A)はマイコンから駆動部に出力される制御信号の電圧波形を示し(B)はバックライトの低圧側端子Tの電圧波形を示し、(C)はマイコンのAD入力ポートの電圧波形を示し、(D)は異常レベルバッファのカウント値の推移を示す図である
【図6】マイコンの処理フローを示すフローチャートである。
【図7】マイコンの処理フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
10 マイコン
20 駆動部
21 定電流源
30 昇圧回路
40 バックライト
50 フィルタ回路
60 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に駆動電源が供給されているときに、該負荷の下流側の端子電圧を入力してフィルタ処理を施すフィルタ手段と、
前記負荷への前記駆動電源の供給を制御する制御信号の信号レベルが、電源供給の許可を示す信号レベルから、電源供給の停止を示す信号レベルに遷移するタイミングに同期して、前記フィルタ処理後の前記端子電圧の電圧レベルを取得する制御手段とを有し、
前記制御手段は、取得した前記端子電圧の電圧レベルに基づいて前記制御信号を生成することを特徴とする故障判定装置。
【請求項2】
定電流駆動される負荷に流す電流量を制御する制御信号を生成する信号生成手段と、
前記制御信号のオンデューティに従って前記負荷に駆動電流が供給されているときに、前記負荷の下流側の端子電圧をモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段によってモニタされた前記端子電圧の電圧レベルにより前記負荷の故障度合いを判定する判定手段とを有し、
前記信号生成手段は、前記負荷の故障度合いに応じて前記制御信号のデューティ比を制御することを特徴とする故障判定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記負荷の故障度合いと前記制御信号のデューティ比とに基づいて、故障による危険度を判定し、
前記信号生成手段は、前記危険度に基づいて前記制御信号のデューティ比を制御することを特徴とする請求項2記載の故障判定装置。
【請求項4】
前記モニタ電圧の電圧レベルが第1しきい値よりも高くなった回数をカウントするカウント手段を有し、
前記判定手段は、前記カウント手段のカウント値が所定回数を超えた場合に前記負荷に故障が発生していると判定し、
前記信号生成手段は、前記制御信号のオンデューティを、前記判定手段で故障が発生していると判定された時の制御信号のオンデューティよりも小さく変更することを特徴とする請求項2又は3記載の故障判定装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記モニタ電圧の電圧レベルが第2しきい値よりも高い場合に前記負荷に重度の故障が発生していると判定し、
前記信号生成手段は、オンデューティが0%の制御信号を生成する、又は前記制御信号の生成を停止することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項記載の故障判定装置。
【請求項6】
前記カウント手段は、前記モニタ電圧の電圧レベルが前記第1しきい値よりも高くなったときの前記制御信号のオンデューティに応じて、加算するカウント値を変更することを特徴とする請求項4記載の故障判定装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記負荷の周囲の温度を測定する温度センサの測定温度に基づいて、前記制御信号のデューティ比を制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項記載の故障判定装置。
【請求項8】
前記負荷が定電流駆動されているときに、該負荷の下流側の端子電圧を入力してフィルタ処理を施すフィルタ手段を有し、
前記モニタ手段は、前記制御信号の信号レベルが、前記負荷への駆動電流の供給を許可する信号レベルから、前記駆動電流を停止させる信号レベルに遷移するタイミングに同期して、前記フィルタ処理後の前記端子電圧の電圧レベルをモニタすることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項記載の故障判定装置。
【請求項9】
前記下流側の端子電圧は、前記負荷と前記負荷を定電流駆動する定電流ドライバとの接続ノードにおける端子電圧であることを特徴とする請求項1又は2記載の故障判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−284576(P2009−284576A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131297(P2008−131297)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】