説明

故障診断方法および故障診断機能付きデジタルカメラ

【課題】故障診断機能付きデジタルカメラにおいて、故障診断をより正確にかつ容易に行う。
【解決手段】濃度チャート210を撮像しA/D変換して前工程モニタ用出力部232を通して得られた画像信号Gd1が示す濃度チャート210の診断用の濃度値W1と、予め求められた濃度チャート210の参照用の濃度値W2とを比較して撮影の前工程PFにおける故障を診断する。撮影の後工程を実行する後処理部102に基準信号導入部234を通して基準信号Skを入力する。この基準信号Skの入力に応じて後処理部102から後工程モニタ用出力部236を通して出力される測定信号Smと、予め求められた、正しく動作している後処理部102への基準信号Skの入力に応じてこの後処理部102から出力される参照信号Shとを比較して、後工程PBにおける故障を診断する。こうして、前工程PFおよび後工程PBに生じた故障を個別に特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は故障診断方法および故障診断機能付きデジタルカメラに関し、詳しくは、故障箇所を個別に特定することができる故障診断方法および故障診断機能付きデジタルカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自身の故障を診断するための機能を備えたデジタルカメラが知られている。このようなデジタルカメラとしては、撮像素子の受光する光量を増加および減少させる受光光量変更手段を備え、この受光光量変更手段による撮像素子の受光光量の増減に応じてこの撮像素子で撮像され表示された画像の輝度が変化するか否かを検査して、このカメラの故障を診断するものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−73296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、デジタルカメラの故障診断を行うにあたり、単に故障の有無を判定するだけではなく、デジタルカメラの故障箇所をも特定したいという要請がある。
【0004】
しかしながら、故障箇所を特定するにはデジタルカメラを分解して各部位の故障の状態を調べる必要があり、故障診断の作業が複雑になり作業者の負荷が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、デジタルカメラの故障診断を、より正確にかつ容易に行うことができる故障診断方法および故障診断機能付きデジタルカメラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の故障診断方法は、デジタルカメラの故障を診断する故障診断方法であって、所定の照明がなされた濃度チャートをデジタルカメラで撮像しA/D変換して得られた画像信号が示す濃度チャートの診断用の濃度値と、予め求められた濃度チャートの参照用の濃度値とを比較して撮像からA/D変換までのデジタルカメラによる撮影の前工程における故障を診断するとともに、A/D変換された画像信号が入力される、前工程につづく撮影の後工程を実行する後処理手段に対し前記画像信号の代わりに予め定められた基準信号を入力せしめ、この基準信号の入力に応じて後処理手段から出力される測定信号と、予め求められた、正しく動作している後処理手段への基準信号の入力に応じてこの後処理手段から出力される参照信号とを比較して後工程における故障を診断し、前工程に生じた故障および後工程に生じた故障それぞれを個別に特定することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の故障診断機能付きデジタルカメラは、被写体を撮像しA/D変換して得られた画像信号を出力する撮像からA/D変換までの撮影の前工程を実行する前処理手段と、前処理手段から出力された画像信号が入力される、前工程につづく撮影の後工程を実行する後処理手段とを備えた故障診断機能付きデジタルカメラであって、故障診断に用いる濃度チャートと、濃度チャートを故障診断用の所定位置へ移送する濃度チャート移送手段と、前記前処理手段から出力される画像信号をモニタするための、この画像信号を通して出力する前工程モニタ用出力手段と、後処理手段に対し、前記画像信号の代わりに予め定められた基準信号を入力せしめるための、この基準信号を通す基準信号導入手段と、後処理手段から出力される信号をモニタするための、この信号を通して出力する後工程モニタ用出力手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
前記故障診断機能付きデジタルカメラは、基準信号を記憶する基準信号記憶手段を備えたものとすることが望ましい。
【0009】
前記故障診断機能付きデジタルカメラは、濃度チャート移送手段により所定位置へ移送され所定の照明がなされた濃度チャートを前処理手段により撮像してA/D変換し前工程モニタ用出力手段を通して得た画像信号の示す前記濃度チャートの診断用の濃度値と、予め求められた濃度チャートの参照用の濃度値とを比較して前工程における故障の有無を判定する前工程故障判定手段を備えたものとすることができる。さらに、この故障診断機能付きデジタルカメラは、参照用の濃度値を記憶する参照濃度値記憶手段を備えたものとすることもできる。
【0010】
前記故障診断機能付きデジタルカメラは、後処理手段への基準信号の入力に応じてこの後処理手段から出力され後工程モニタ用出力手段を通して出力された測定信号と、予め求められた、正しく動作している後処理手段への基準信号の入力に応じてこの後処理手段から出力される参照信号とを比較して後工程における故障の有無を判定する後工程故障判定手段を備えたものとすることができる。さらに、この故障診断機能付きデジタルカメラは、参照信号を記憶する参照信号記憶手段を備えたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の故障診断方法は、所定の照明がなされた濃度チャートをデジタルカメラで撮像しA/D変換して得られた画像信号が示す濃度チャートの診断用の濃度値と、予め求められた濃度チャートの参照用の濃度値とを比較して撮像からA/D変換までのデジタルカメラによる撮影の前工程における故障を診断するとともに、A/D変換された画像信号が入力される、前工程につづく撮影の後工程を実行する後処理手段に対し画像信号の代わりに予め定められた基準信号を入力せしめ、この基準信号の入力に応じて後処理手段から出力される測定信号と、予め求められた、正しく動作している後処理手段への上記基準信号の入力に応じてこの後処理手段から出力された参照信号とを比較して後工程における故障を診断するようにしたので、前工程に生じた故障および後工程に生じた故障それぞれを個別に特定することができるので、より正確にかつ容易にデジタルカメラの故障診断を行うことができる。
【0012】
すなわち、従来のようにデジタルカメラを分解することなく、すなわち故障診断の作業を複雑にしたり作業者の負荷を増大させることなく、故障の生じた部位を特定することができるので、より正確にかつ容易にデジタルカメラの故障診断を行うことができる。
【0013】
本発明の故障診断機能付きデジタルカメラは、故障診断に用いる濃度チャートと、濃度チャートを故障診断用の所定位置へ移送する濃度チャート移送手段と、前処理手段から出力される画像信号をモニタするための、この画像信号を通して出力する前工程モニタ用出力手段と、後処理手段に対し、前記画像信号の代わりに予め定められた基準信号を入力せしめるための、この基準信号を通す基準信号導入手段と、後処理手段から出力される信号をモニタするための、この後処理手段から出力される信号を通して出力する後工程モニタ用出力手段とを備えるようにしたので、上記故障診断方法の場合と同様に、デジタルカメラを分解することなく、前工程に生じた故障、後工程に生じた故障それぞれを個別に正確に特定することができ、正確かつ容易にデジタルカメラの故障診断を行うことができる。
【0014】
また、濃度チャート移送手段により所定位置へ移送され所定の照明がなされた濃度チャートを前処理手段により撮像しA/D変換して前工程モニタ用出力手段を通して得られた画像信号の示す濃度チャートの診断用の濃度値と、予め求められた濃度チャートの参照用の濃度値とを比較して前工程における故障の有無を判定する前工程故障判定手段を備えれば、故障診断をより確実に実施することができる。
【0015】
また前記基準信号導入手段による後処理手段への基準信号の入力に応じてこの後処理手段から出力され後工程モニタ用出力手段を通して出力された測定信号と、予め求められた、正しく動作している後処理手段への基準信号の入力に応じてこの後処理手段から出力された参照信号とを比較して後工程における故障の有無を判定する後工程故障判定手段を備えれば、故障診断をより確実に実施することができる。
【0016】
さらに、基準信号を記憶する基準信号記憶手段、参照用の濃度値を記憶する参照濃度値記憶手段、あるいは参照信号を記憶する参照信号記憶手段を備えれば、故障診断をより容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の故障診断方法を実施する故障診断機能付きデジタルカメラの概略構成を示すブロック図、図2は濃度チャートが配された回転円板を示す図である。
【0018】
図示の故障診断機能付きデジタルカメラ100は、被写体を撮像しA/D変換して得られた画像信号を出力する、撮像からA/D変換までの撮影の前工程PFを実行する前処理部101と、前処理部101から出力された画像信号Gdが入力される、前工程PFにつづくその撮影の後工程PBを実行する後処理部102とを備えている。
【0019】
前処理部101は、デジタルカメラ100が備えるレンズ10および絞り部20をこの順に通して結像させた被写体の像を撮像する撮像素子であるカラー(RGB)画像撮像用のCCD素子32と、CCD素子32で取得された被写体を表す信号電荷Gcからアナログ信号Gaを生成するアナログ信号取得部34と、アナログ信号取得部34から出力されたアナログ信号Gaをデジタル信号Gdに変換して出力するA/D変換素子36とを備えている。
【0020】
なお、絞り部20は、開口部22、光を減衰させるNDフィルタ24、および後述する濃度チャート210が円周上に等間隔で配された回転円板26と、この回転円板26を回転させて上記フィルタやチャートを所定位置へ移送する回転移送部220とを有している。上記開口部22、NDフィルタ24、および濃度チャート210それぞれは、回転移送部220による回転円板26の回転により、レンズ10とCCD素子32との間における被写体をCCD素子32へ結像させる光路中に挿入され、CCD素子32へ通す光の光量を変化させる。
【0021】
なお、回転移送部220は、濃度チャート移送部に対応するものである。
【0022】
デジタルカメラ100により通常の撮影を行う場合には、開口部22、あるいはNDフィルタ24が、レンズ10を通して被写体をCCD素子32へ結像させる光路中の所定位置へ配置される。一方、デジタルカメラ100により故障診断を行う場合には、濃度チャート210が上記所定位置へ配置される。
【0023】
ここで、所定位置へ配置された濃度チャート210とCCD素子32とは隣接配置され、両者の間隔は約0.1mmとなる。すなわち、NDフィルタ24は回転円板26のレンズ側に配置され、濃度チャート210は回転円板26のCCD素子32側に配置されている。
【0024】
図2に示すように、この濃度チャート210は、3種類の互いに異なる濃度を有する領域210A,210B、210Cから形成されたものである。各領域210A,210B、210Cは、レンズ10の側から所定の照明がなされたときに、CCD素子32の側から3種類の互いに異なる濃度を有する領域として観察される。
【0025】
後処理部102は、ホワイトバランスゲインを変更するためのWBゲイン変更部52と、WBゲイン変更部52からの出力をγ変換するγ変換部54と、γ変換部54からの出力をY/C分離するY/C分離部56と、Y/C分離部56からの出力をJPEG変換するJ変換部58とを備え、この後処理部102に入力された信号はこの順に処理される。A/D変換素子36から出力されWBゲイン変更部52へ入力されたデジタル信号Gdは、上記各処理が施されてJ変換部58からカラー(RGB)画像を表す画像データGGdとして出力される。
【0026】
この故障診断機能付きデジタルカメラ100(以後、省略してデジタルカメラ100ともいう)は、前処理部101から出力される画像信号である上記デジタル信号Gdをモニタするための、このデジタル信号Gdを通して出力する前工程モニタ用出力部232を有している。また、後処理部102に対し、A/D変換素子36から出力されるデジタル信号Gdの代わりに予め定められた基準信号Skを入力せしめるための、この基準信号Skを通す基準信号導入部234を有している。さらに、後処理部102から出力される信号をモニタするための、この信号を通して出力する後工程モニタ用出力部236を有している。
【0027】
また、デジタルカメラ100は、基準信号Skを記憶する基準信号記憶部242、後述する、参照濃度値W2を記憶する参照濃度値記憶部244および参照信号Shを記憶する参照信号記憶部246を備えている。
【0028】
ここで、デジタルカメラ100の備える前工程故障判定部252は、濃度チャート移送部220により所定位置へ移送され上記のように所定の照明がなされた濃度チャート210を前処理部101により撮像しA/D変換して前工程モニタ用出力部232を通しA/D変換直後の画像信号Gd1を得る。そして、この画像信号Gd1が示す濃度チャート210の診断用の濃度値である測定濃度値W1と、予め求められた濃度チャート210の参照濃度値W2とを比較して前工程101における故障の有無を判定する。
【0029】
すなわち、この前工程故障判定部252は、測定濃度値W1と参照濃度値W2との差分値WSを求めこの差分値WSを所定値WHと比較して前工程101における故障の有無を判定し、その結果を前工程故障表示部292へ出力する。
【0030】
さらに、デジタルカメラ100の備える後工程故障判定部254は、基準信号導入部234による後処理部102への基準信号Skの入力に応じて後処理部102から出力され後工程モニタ用出力部236を通して出力された測定信号Smを得る。そして、この測定信号Smと、予め求められた、正しく動作している後処理部102への基準信号Skの入力に応じて後処理部102から出力される参照信号Shとを比較して後工程における故障の有無を判定する。
【0031】
すなわち、この後工程故障判定部254は、測定信号Smの値V1と参照信号Shの値V2との差分値VSを求めこの差分値VSを所定値VHと比較して、後工程102における故障の有無を判定し、その結果を後工程故障表示部294へ出力する。
【0032】
なお、デジタルカメラ100は、このデジタルカメラ100の各部を制御したり各部の動作の同期を取るためのコントローラ300を備えている。
【0033】
次に、上記デジタルカメラ100により故障診断を行う作用について説明する。
【0034】
はじめに、デジタルカメラ100のレンズ10を、規定の明るさに照明された輝度箱400に挿入する。
【0035】
次に、コントローラ300へ故障診断を行う指示が入力される。故障診断を行う指示が入力されたコントローラ300は、シャッタスピード、濃度チャート210の位置、WBゲイン変更部52におけるホワイトバランスゲイン(省略して、WBゲインともいう)、アナログ信号取得部34におけるアナログゲイン等を故障診断用に設定し以下のように各部の動作や各部の動作のタイミングを制御する。
【0036】
回転移送部220による回転円板26の回転により濃度チャート210を上記故障診断を行うための所定位置に配置する。これにより、濃度チャート210に対して予め定められた所定の照明がなされ、濃度チャート210中の領域210A,210B、210Cは、CCD素子32の側から3種類の互いに異なる濃度を有する領域として観察される状態となる。
【0037】
所定の照明がなされた濃度チャート210がCCD素子32に近接配置された状態で、このCCD素子32による撮像を実行する。CCD素子32で取得された信号電荷は、アナログ信号取得部34およびA/D変換素子36を通してデジタル信号Gdに変換されて前工程モニタ用出力部232を通して出力される。
【0038】
前工程モニタ用出力部232を通して出力されたA/D変換直後の画像信号Gdは前工程故障判定部252に入力され、前工程故障判定部252が、画像信号Gdの示す濃度チャート210中の領域210A,210B、210Cそれぞれに対応する測定濃度値W1(W1a、W1b、W1c)と、予め求められた濃度チャート210の参照濃度値W2(W2a、W2b、W2c)とを比較して前工程101における故障の有無を判定する。
【0039】
すなわち、この前工程故障判定部252は、測定濃度値W1(W1a、W1b、W1c)と参照濃度値記憶部244に記憶された参照濃度値W2(W2a、W2b、W2c)との差の絶対値である差分値WS(|W1a−W2a|、|W1b-W2b|、|W1c−W2c|)を求める。そして、差分値WSそれぞれを、この前工程故障判定部252に予め記憶された所定の閾値WHと比較して前工程101における故障の有無を判定し、その結果を前工程故障表示部292へ出力する。前工程故障表示部292は上記故障の有無の判定結果を表示する。
【0040】
ここで、前工程故障判定部252は、差分値WSを構成する上記3つの差分値のいずれかが閾値WHよりも大きいときに故障有りと判定し、いずれもが閾値WH以下のときに故障無しと判定する。なお、前工程故障判定部252による処理は、赤色、緑色、青色(R,G、B)の各色を表す各デジタル信号毎に実施される。
【0041】
なお、測定濃度値W1aは、複数のデジタル信号、例えば1000×350の各画素を表すデジタル信号によって表される領域210Aの濃度の平均値であり、測定濃度値W1bも、複数のデジタル信号によって表される領域210Bの濃度の平均値であり、測定濃度値W1cも、同様に、複数のデジタル信号によって表される領域210Cの濃度の平均値である。
【0042】
また、閾値WHは、予め前工程故障判定部252に記憶されている。
【0043】
つづいて、基準信号記憶部242に記憶された1000行×1000列からなる故障診断用の基準画像を表す基準信号Skが後処理部102へ入力される。後処理部102へ入力された基準信号Skは、WBゲイン変更部52、γ変換部54、Y/C分離部56、J変換部58によりこの順に処理されて後処理部10から後工程モニタ用出力部236を通して出力される。この後工程モニタ用出力部236を通して出力された故障診断用の出力画像を表す測定信号Smは、後工程故障判定部254へ入力される。
【0044】
後工程故障判定部254は、入力された測定信号Smと、参照信号記憶部246に記憶された故障診断用の参照画像を表す参照信号Shとを比較して後工程における故障を診断する。そして、その診断結果を後工程故障表示部294へ出力する。後工程故障表示部294は上記故障の有無の判定結果を表示する。
【0045】
ここで、後工程故障判定部254は、1000行×1000列からなる画像を表す測定信号Smを構成する各値V1(1、1)、V1(1、2)〜V1(1000、1000)と、1000行×1000列からなる画像を表す参照信号Shを構成する値V2(1、1)、V2(1、2)〜V2(1000、1000)との差分値(|V1(1、1)−V2(1、1)|、|V1(1、2)−V2(1、2)|、・・・|V1(1000、1000)−V2(1000、1000)|)を求める。これらの差分値のいずれかが閾値VHよりも大きいときに故障有りと判定し、いずれもが閾値VH以下のときに故障無しと判定する。
【0046】
なお、後工程故障判定部254による処理は、赤色、緑色、青色(R,G、B)の各色を表すデジタル信号毎に実施される。
【0047】
また、閾値VHは、後工程故障判定部254に予め記憶されているものである。
【0048】
上記前工程故障表示部292および後工程故障表示部294による故障の有無の判定結果の表示により、前処理部101により実行される前工程PFに生じた故障と後処理部102により実施される後工程PBに生じた故障それぞれを個別に特定することができる。
【0049】
本発明の故障診断機能付きデジタルカメラは、故障診断を行うための多くの機能を内臓したものであるが、このような場合に限らず、前工程を診断するための前工程故障判定部252、参照濃度値記憶部244、前工程故障表示部292、および後工程を診断するための基準信号記憶部242、後工程故障判定部254、参照信号記憶部246、後工程故障表示部294のうちの一部あるいは全部を外部に備えるようにしてもよい。
【0050】
<障診断機能付きデジタルカメラの変形例>
以下、故障診断を行うための機能の一部を外部に持たせてなる故障診断機能付きデジタルカメラについて説明する。図3は、故障診断を行うための機能の一部を外部に持たせるようにした故障診断機能付きデジタルカメラの変形例を示す図である。なお、上記デジタルカメラ100の場合と同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明については省略する。
【0051】
この変形例のデジタルカメラ100′は、故障診断を行うための、濃度チャート210、回転移送部220、前工程モニタ用出力部232、基準信号導入部234および後工程モニタ用出力部236を内臓しているが、その他の故障診断を行うための構成要素はパソコン500およびサーバ600が備えている。このデジタルカメラ100′は、説明済のデジタルカメラ100とは内臓している構成要素が違うが、パソコン500およびサーバ600を含む全体としての機能は、このデジタルカメラ100と全く同じである。
【0052】
デジタルカメラ100′とパソコン500とは前工程モニタ用出力部232、基準信号導入部234および後工程モニタ用出力部236を介してUSB、あるいはIEEE1394の規格による通信を行う、また、パソコン500とサーバ600とは公衆回線を利用したネットワークで通信可能となっている。
【0053】
パソコン500とサーバ600にはデジタルカメラ100′の故障診断を行うための種々の構成要素を振り分けることができるが、ここでは、パソコン500が前工程故障判定部252、前工程故障表示部292、後工程故障判定部254、および後工程故障表示部294を備え、サーバ600が参照濃度値記憶部244、基準信号記憶部242、および参照信号記憶部246を備えているものとする。
【0054】
このようにデジタルカメラ100′の故障診断を行うための各要素を振り分けた状態でこのデジタルカメラ100′の故障診断を行う場合について、図4から図7のフローチャートを用いて説明する。図4は工場出荷時に参照濃度値W2を取得し記録する工程を示すフローチャート、図5は工場出荷時に参照信号Shを取得し記録する工程を示すフローチャート、図6はデジタルカメラの前工程を診断する工程を示すフローチャート、図7はデジタルカメラの後工程を診断する工程を示すフローチャートである。
【0055】
はじめに、図4のフローチャートに示すように、デジタルカメラ100′の工場出荷時に、輝度箱400を規定値に設定するとともにCCD素子32の感度やシャッタスピードも規定値に設定する。
【0056】
その後、回転円板26を回転させて濃度チャート210を所定位置に配置してCCD素子32による撮像を実行する。
【0057】
CCD素子32で撮像されA/D変換素子36から前工程モニタ用出力部232を通して出力された画像信号Gd1が工場の測定装置700で測定される。測定された画像信号Gd1の示す濃度値が規定の参照濃度値W2になるように、アナログ信号取得部34のアナログゲインの値を調節する。
【0058】
工場の測定装置700からサーバ600へ上記調節されたアナログゲインの値Agおよび参照濃度値W2が転送されサーバ600に記録される。
【0059】
これとともに、図5のフローチャートに示すように、デジタルカメラ100′の工場出荷時に、WBゲイン変更部52によりホワイトバランスゲインを設定する。その後、工場の測定装置700から後処理部102へ基準信号Skを基準信号導入部234を通して入力する。
【0060】
基準信号Skが後処理部102で処理されこの後処理部102から出力された参照信号Shは、後工程モニタ用出力部236を通して工場の装置へ入力される。この参照信号ShはJPEG画像とこの画像のシリアルNoを含むものである。
【0061】
つづいて、工場の装置からサーバ600へ上記設定されたホワイトバランスゲインの値Bg、基準信号Sk、および参照信号Shが転送され、サーバ600に記録される。
【0062】
次に、デジタルカメラ100′は、工場から出荷され市場へ供給される。
【0063】
以下市場に供給されたデジタルカメラ100′の故障診断について説明する。
【0064】
なお、この故障診断は、例えばデジタルカメラのサービスステーションで行なわれるので、この故障診断では上記工場の測定装置700は用いられない。
【0065】
はじめに、デジタルカメラ100′に対してパソコン500が接続される。このパソコン500は公衆回線を介してサーバ600に接続されている。
【0066】
次に、図6のフローチャートに示すように、デジタルカメラ100′およびパソコン500を故障診断可能な診断モードON状態とし、前工程の診断を行う。
【0067】
コントローラ300の命令により、CCD素子32の感度やシャッタスピードが規定値に設定される。また、サーバ600に記録された工場出荷時のアナログゲインの値Agがパソコン500を通してコントローラ300に入力され、コントローラ300がアナログ信号取得部34のアナログゲインの値を上記値Agとなるように調節する。
【0068】
輝度箱400を規定値に設定し、レンズ20を輝度箱400に挿入する。
【0069】
その後、回転円板26を回転させて濃度チャート210を所定位置に配置してCCD素子32による撮像を実行する。
【0070】
CCD素子32で撮像されA/D変換素子36から前工程モニタ用出力部232を通して出力された画像信号Gd1がパソコン500に入力される。
【0071】
パソコン500に備えられた前工程故障判定部252は、この画像信号Gd1が示す濃度チャート210の診断用の濃度値を求め、この求められた測定濃度値W1と、サーバ600に記録された工場出荷時の参照濃度値W2との差分値を得、この差分値WSと閾値WHとを比較して前工程101における故障の有無を判定する。
【0072】
前工程101における故障が有る場合には、前工程故障表示部292が上記故障の有ることを表示する。
【0073】
前工程101における故障が無い場合には、故障診断に係るデータがパソコン500を経由してサーバに記録される。
【0074】
つづいて、図7のフローチャートに示すように、デジタルカメラ100′およびパソコン500を故障診断可能な診断モードON状態とした状態で、後工程の診断を行う。
【0075】
サーバ600に記録された工場出荷時のホワイトバランスゲインの値Bgが、パソコン500を経由してコントローラ300へ入力され、デジタルカメラ100′のWBゲイン変更部52によりホワイトバランスゲインの値が値Bgとなるように設定される。
【0076】
その後、サーバ600に記録された工場出荷時の基準信号Skが、パソコン500および基準信号導入部234を経由して後処理部102へ入力される。
【0077】
基準信号Skが入力された処理部102において処理され出力された測定信号Smは、後工程モニタ用出力部236を通してパソコン500へ入力される。この測定信号SmはJPEG画像とこの画像のシリアルNoを含むものである。
【0078】
パソコン500に備えられた後工程故障判定部254は、サーバ600に記録された工場出荷時の参照信号Shを入力し、この参照信号Shと測定信号Smとの差分値を得、この差分値VSと閾値VHとを比較して後工程102における故障の有無を判定する。
【0079】
後工程102における故障が有る場合には、後工程故障表示部294が上記故障の有ることを表示する。
【0080】
後工程102における故障が無い場合には、故障診断に係るデータがパソコン500を経由してサーバに記録される。
【0081】
上記のように、本発明の故障診断方法を実施する故障診断機能付きデジタルカメラによれば、故障診断をより正確にかつ容易に行うことができる。
【0082】
なお、本発明の故障診断機能付きデジタルカメラは、上記実施の形態や変形例のように構成されたものに限らず、前工程故障判定部252、参照濃度値記憶部244、前工程故障表示部292、基準信号記憶部242、後工程故障判定部254、参照信号記憶部246、および後工程故障表示部294のうちの一部を内臓したものとしてもよい。
【0083】
このように、本発明の故障診断機能付きデジタルカメラは、上記7つの構成要素を備えていないものとしてもよいし、7つの構成要素のうちのいずれか1つ以上を備えたものとしてもよい。このように、故障診断を行うためのデジタルカメラの備える構成要素と外部装置の備える構成要素との振り分けを変更しても、そのデジタルカメラにおける故障診断の手法は同じであり、上述の効果を同様に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の故障診断方法を実施する故障診断機能付きデジタルカメラの概略構成を示すブロック図
【図2】濃度チャートが配された回転円板を示す図
【図3】故障診断機能付きデジタルカメラの変形例を示す図
【図4】工場出荷時に参照濃度値を取得し記録する工程を示すフローチャート
【図5】工場出荷時に参照信号を取得し記録する工程を示すフローチャート
【図6】デジタルカメラの前工程の診断工程を示すフローチャート
【図7】デジタルカメラの後工程の診断工程を示すフローチャート
【符号の説明】
【0085】
10 レンズ
20 絞り部
22 開口部
24 NDフィルタ
26 回転円板
32 CCD素子
34 アナログ信号取得部
36 A/D変換素子
100 デジタルカメラ
101 前処理部
102 後処理部
210 濃度チャート
220 回転移送部
232 前工程モニタ用出力部
234 基準信号導入部
236 後工程モニタ用出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラの故障を診断する故障診断方法であって、
所定の照明がなされた濃度チャートを前記デジタルカメラで撮像しA/D変換して得られた画像信号が示す前記濃度チャートの診断用の濃度値と、予め求められた前記濃度チャートの参照用の濃度値とを比較して前記撮像からA/D変換までの前記デジタルカメラによる撮影の前工程における故障を診断するとともに、
前記A/D変換された画像信号が入力される、前記前工程につづく前記撮影の後工程を実行する後処理手段に対し前記画像信号の代わりに予め定められた基準信号を入力せしめ、該基準信号の入力に応じて前記後処理手段から出力される測定信号と、予め求められた、正しく動作している前記後処理手段への前記基準信号の入力に応じて該後処理手段から出力される参照信号とを比較して前記後工程における故障を診断し、
前記前工程に生じた故障および後工程に生じた故障それぞれを個別に特定することを特徴とする故障診断方法。
【請求項2】
被写体を撮像しA/D変換して得られた画像信号を出力する前記撮像からA/D変換までの撮影の前工程を実行する前処理手段と、
前記前処理手段から出力された画像信号が入力される、前記前工程につづく前記撮影の後工程を実行する後処理手段とを備えた故障診断機能付きデジタルカメラであって、
故障診断に用いる濃度チャートと、
前記濃度チャートを故障診断用の所定位置へ移送する濃度チャート移送手段と、
前記前処理手段から出力される画像信号をモニタするための、該画像信号を通して出力する前工程モニタ用出力手段と、
前記後処理手段に対し前記画像信号の代わりに予め定められた基準信号を入力せしめるための、該基準信号を通す基準信号導入手段と、
前記後処理手段から出力される信号をモニタするための、該信号を通して出力する後工程モニタ用出力手段とを備えたことを特徴とする故障診断機能付きデジタルカメラ。
【請求項3】
前記基準信号を記憶する基準信号記憶手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の故障診断機能付きデジタルカメラ。
【請求項4】
前記濃度チャート移送手段により所定位置へ移送され所定の照明がなされた前記濃度チャートを前記前処理手段により撮像しA/D変換して前記前工程モニタ用出力手段を通して得た画像信号の示す前記濃度チャートの診断用の濃度値と、予め求められた前記濃度チャートの参照用の濃度値とを比較して前記前工程における故障の有無を判定する前工程故障判定手段を備えたことを特徴とする請求項2または3記載の故障診断機能付きデジタルカメラ。
【請求項5】
前記参照用の濃度値を記憶する参照濃度値記憶手段を備えたことを特徴とする請求項4記載の故障診断機能付きデジタルカメラ。
【請求項6】
前記後処理手段への前記基準信号の入力に応じて該後処理手段から出力され前記後工程モニタ用出力手段を通して出力された測定信号と、予め求められた、正しく動作している前記後処理手段への前記基準信号の入力に応じて該後処理手段から出力される参照信号とを比較して前記後工程における故障の有無を判定する後工程故障判定手段を備えたことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載の故障診断機能付きデジタルカメラ。
【請求項7】
前記参照信号を記憶する参照信号記憶手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の故障診断機能付きデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−118304(P2009−118304A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290628(P2007−290628)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】