説明

数値制御装置及びプログラムライセンス用プログラム

【課題】 ライセンスにより使用可能となるプログラムの不正使用を防止することができ、且つ数値制御装置のコントローラが故障して数値制御装置の基板を交換した場合にも、ユーザ側の作業者のみでライセンス認証を簡単に行えるようにすること。
【解決手段】 ライセンスキーIDタグの機械固有ID番号Mc及びプログラム特定情報Lcと、コントローラ内のRAMに記憶された機械固有ID番号M及びプログラム特定情報L1とが照合される(S6)。これらが一致した場合(S7;Yes)、ライセンスキーIDタグから読取られたライセンス期間終期Tcがコントローラ内のRAMに記憶されたライセンス期間終期T2以降の場合は(S8;Yes)、ライセンス期間終期T2がライセンス期間終期Tcで更新される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置及びプログラムライセンス用プログラムに関し、特にライセンスにより使用可能となるプログラムの不正使用を防止し、且つライセンス認証を簡単に行えるように構成したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NC工作機械を数値制御する数値制御装置は、複数種類の加工処理に対応した複数の加工プログラムを記憶したプログラム記憶メモリを備え、加工の種類に応じて加工プログラムが選択され、選択された加工プログラムに基づいてワークに加工を施すように制御している。
【0003】
数値制御装置には、ライセンスなしで使用できる標準制御方法のプログラム以外に、例えば、標準の制御方法のプログラムに基づいて加工を施すよりも、高速且つ高精度に加工を施すことができるライセンスにより使用可能となるオプションの制御方法のプログラムも予め記憶されている。このようなオプションのプログラムは、これに対応するライセンスキーを購入したユーザのみがこのプログラムを使用できるようになっている。
【0004】
具体的には、プログラムを特定するプログラム特定情報とライセンス期間終期とを含むライセンス情報が含まれたパスワードを機械メーカーの作業員が入力し、数値制御装置がパスワードに含まれたライセンス情報を読出して、オプションのプログラムの使用許諾を認証している。
【0005】
このような方法でライセンス認証を行う場合、ライセンスを受けた機械から出力したバックアップデータを別のNC工作機械に入力することで、別のNC工作機械でオプションのプログラムを使用させるなどの不正使用が起こる虞がある。
【0006】
特許文献1に記載のNCデータの不正複写防止方法では、数値制御装置のROMに数値制御装置の固有ID番号を記憶しておき、数値制御装置のSRAMのバックアップデータをメモリカードに保存する際に、ROMの固有ID番号をメモリカードに記憶させる。メモリカードに保存したバックアップデータにより再セットアップ作業を行う際、数値制御装置のROMの固有ID番号とメモリカードの固有ID番号とを照合し、これらが一致した場合のみ再セットアップ作業を行えるようにしている。
【0007】
ところで、数値制御装置の基板には、CPUやROMやRAMなどから構成されるコントローラが設けられているが、このコントローラは加工処理中連続的に動作しているため、コントローラに掛かる負荷が非常に大きい。そのため、コントローラが故障する場合があり、その場合数値制御装置の基板ごと交換する必要がある。
そこで、特許文献1では、数値制御装置のコントローラが故障して別の固有ID番号を記憶したROMを設けた基板と交換したため、数値制御装置の固有ID番号とメモリカードの固有ID番号とが一致しない場合にパスワードによる認証を行うことで、再セットアップ作業を行えるようにしている。
【特許文献1】特開平11−249967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、通常、このようなパスワードは販売者側で管理しているため、別の固有ID番号を記憶した基板と交換した場合、オプションの加工プログラムを使用する際には、ユーザ側の作業者のみでパスワードによる認証を行うことができず、販売者側の作業員に来てもらう必要があるため大変手間がかかる。また、販売者側にとってもパスワードの管理が面倒である。
【0009】
本発明の目的は、数値制御装置及びプログラムライセンス用プログラムにおいて、ライセンスにより使用可能となるプログラムの不正使用を防止することができ、且つ数値制御装置のコントローラが故障して数値制御装置の基板を交換した場合にも、ユーザ側の作業者のみでライセンス認証を簡単に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の数値制御装置は、ライセンスにより使用可能となるプログラムを記憶したプログラム記憶手段を有し、加工プログラムに基づいてワークに加工を施すように制御する数値制御装置において、固有ID情報を含むライセンス情報を入力する入力手段と、数値制御装置の固有ID情報を記憶し且つ数値制御装置に固定されたRFIDタグ及びこのRFIDタグから前記固有ID情報を読取り可能なRFIDリーダーと、前記入力手段から入力されたライセンス情報と、前記RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、前記情報照合手段による照合結果に基づいて、前記ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
入力手段は、固有ID情報を含むライセンス情報を記憶したRFIDタグ及びこのRFIDタグからライセンス情報を読取り可能なRFIDリーダーで構成されてもよいし、固有ID情報を含むライセンス情報をパスワードで直接入力するキーボードなどで構成されてもよい。
【0012】
この数値制御装置では、入力手段により固有ID情報を含むライセンス情報が入力されると、数値制御装置に固定されたRFIDタグから数値制御装置の固有ID情報がRFIDリーダーによって読取られる。
次に、情報照合手段により入力手段から入力されたライセンス情報と、RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とが照合され、この照合結果に基づいて、ライセンス認証手段によりライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾が認証される。
【0013】
このように、数値制御装置の固有ID情報と入力手段により入力されたライセンス情報に含まれる固有ID情報とを照合し、この照合結果に基づいてプログラムの使用許諾の認証が行われるので、異なる固有ID情報を有する別の工作機械ではこのプログラムの使用が許諾されない。これにより、ライセンスにより使用可能となるプログラムの不正使用を防止することができる。
【0014】
請求項2の数値制御装置は、請求項1の発明において、前記入力手段は、前記固有ID情報を含むライセンス情報を記憶したRFIDタグと、このRFIDタグからライセンス情報を読取り可能なRFIDリーダーとを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3の数値制御装置は、請求項1又は2の発明において、前記ライセンス情報は、数値制御装置の固有ID情報と、前記プログラムを特定するプログラム特定情報と、ライセンス期間の終期とを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項4の数値制御装置は、請求項1〜3の何れかの発明において、前記情報照合手段において使用する現在時刻を計時する時計手段と、前記時計手段の現在時刻が所定時間以上遅れ方向へ不正に調整されたことを検知可能な時計不正調整検知手段とを設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項5のプログラムライセンス用プログラムは、ライセンスにより使用可能となるプログラムを記憶したプログラム記憶手段と、固有ID情報を含むライセンス情報を入力する入力手段と、数値制御装置の固有ID情報を記憶し且つ数値制御装置に固定されたRFIDタグ及びこのRFIDタグから前記固有ID情報を読取り可能なRFIDリーダーとを有し、加工プログラムに基づいてワークに加工を施すように制御する数値制御装置に装備されたコンピュータを、前記入力手段に前記ライセンス情報の入力を行わせる入力指令手段と、前記RFIDリーダーにRFIDタグから固有ID情報を読取らせる読取り手段と、前記入力手段から入力されたライセンス情報と、前記RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、前記情報照合手段による照合結果に基づいて、前記ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
このプログラムライセンス用プログラムでは、入力指令手段により入力手段にライセンス情報の入力が行われると、読取り手段によりRFIDリーダーにRFIDタグから固有ID情報が読取られる。
次に、情報照合手段によって、入力手段から入力されたライセンス情報と、RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とが照合される。この照合結果に基づいて、ライセンス認証手段によりライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾が認証される。これにより、請求項1の場合とほぼ同様の作用が得られる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、入力手段と、数値制御装置に固定されたRFIDタグ及びこのRFIDタグから固有ID情報を読取り可能なRFIDリーダーと、入力手段から入力されたライセンス情報とRFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段とを備えたので、異なる固有ID情報を有する別の工作機械ではこのプログラムの使用が許諾されない。これにより、ライセンスにより使用可能となるプログラムの不正使用を防止することができる。
【0020】
さらに、数値制御装置に固定されたRFIDタグに固有ID情報を記憶したので、数値制御装置のコントローラが故障した場合、数値制御装置の基板を交換しても、RFIDタグを交換せずに済むので、RFIDタグに記憶した固有ID情報をそのまま使用することができる。それ故、数値制御装置の基板を交換した場合にも、ユーザ側の作業者のみでライセンス認証を簡単に行うことができるうえ、販売者側においてもパスワードの管理が不要になる。
【0021】
請求項2の発明によれば、入力手段は、固有ID情報を含むライセンス情報を記憶したRFIDタグと、このRFIDタグからライセンス情報を読取り可能なRFIDリーダーとを備えたので、RFIDタグをRFIDリーダーに近接させるだけで、RFIDタグに記憶したライセンス情報を入力することができ、ユーザ側の作業者はライセンス認証を一層簡単に行うことができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、ライセンス情報は、数値制御装置の固有ID情報と、プログラムを特定するプログラム特定情報と、ライセンス期間の終期とを含むので、プログラムの不正使用を確実に防止することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、情報照合手段において使用する現在時刻を計時する時計手段と、時計手段の現在時刻が所定時間以上遅れ方向へ不正に調整されたことを検知可能な時計不正調整検知手段とを設けたので、時計手段の現在時刻を所定時間以上遅らせて、ライセンスの期間の終期を不正に延長することを防止することができる。しかも、時計手段のバッテリーが消耗し時計手段の現在時刻がズレた場合に、所定時間以内であれば遅れ方向に対する時刻調整を行うことができるので利便性を損なうことはない。
【0024】
請求項5の発明によれば、入力手段にライセンス情報の入力を行わせる入力指令手段と、RFIDリーダーにRFIDタグから固有ID情報を読取らせる読取り手段と、入力手段から入力されたライセンス情報と、RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、情報照合手段による照合結果に基づいて、ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段として機能させるので、請求項1の場合とほぼ同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の数値制御装置は、固有ID情報を含むライセンス情報を入力する入力手段と数値制御装置の固有ID情報を記憶し且つ数値制御装置に固定されたRFIDタグ及びこのRFIDタグから固有ID情報を読取り可能なRFIDリーダーと、入力手段から入力されたライセンス情報と、RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、情報照合手段による照合結果に基づいて、ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段とを設けたものである。
【0026】
本発明のプログラムライセンス用プログラムは、数値制御装置に装備されたコンピュータを、入力手段にライセンス情報の入力を行わせる入力指令手段と、RFIDリーダーにRFIDタグから固有ID情報を読取らせる読取り手段と、入力手段から入力されたライセンス情報と、RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、情報照合手段による照合結果に基づいて、ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段として機能させるものである。
【実施例】
【0027】
NC工作機械1は、図1に示すように、工作機械本体2と、加工プログラムに基づいてワークに加工を施すように制御する数値制御装置3より構成されている。
工作機械本体2は、図示しない主軸を回転させる主軸モータ11と、主軸をX方向に移動させるX軸モータ12と、主軸をY方向に移動させるY軸モータ13と、主軸を上下に移動させるZ軸モータ14と、複数の工具を収納した工具マガジン16を有するツールチェンジャー15等を有する。工作機械本体2には操作パネル4が設けられ、この操作パネル4には、キーボード20と、液晶ディスプレイ21と、後述のRFIDリーダ39等が設けられている。
【0028】
次に、加工プログラムに基づいてワークに加工を施すように工作機械本体2を制御する数値制御装置3について説明する。
数値制御装置3は、CPU31とROM32とRAM33とプログラムメモリ34とを有するマイクロコンピュータからなるコントローラ30と、モータ駆動回路35と、数値制御装置3の機械固有ID番号(これが固有ID情報に相当する)を記憶する固有IDタグ38(RFIDタグ)と、固有IDタグから機械固有ID番号を読取り可能なRFIDリーダー37と、現在時刻を計時する時計36(時計手段)と、機械固有ID番号を含むライセンス情報を記憶したライセンスキーIDタグ40(RFIDタグ)と、ライセンスキーIDタグ40からライセンス情報を読取り可能なRFIDリーダー39等を有する。尚、ライセンスキーIDタグ40とRFIDリーダー39が、機械固有ID番号を含むライセンス情報を入力する入力手段に相当する。
【0029】
コントローラ30には、モータ駆動回路35と、時計36と、RFIDリーダー37と、キーボード20と、液晶ディスプレイ21と、RFIDリーダー39が夫々接続されている。モータ駆動回路35は、工作機械本体2の各モータ11〜14とツールチェンジャー15と工具マガジン16を夫々駆動可能に工作機械本体2に接続されている。ROM32には、工作機械本体2を駆動制御する各種の制御プログラム、液晶ディスプレイ21に各種の表示情報を表示させる表示制御プログラム、後述するライセンス照合制御プログラム、ライセンス期間確認制御プログラム、時計不正調整検知制御プログラム等が記憶されている。
【0030】
さらに、ROM32には、オプションのプログラムのライセンス期間が過ぎる何日前から液晶ディスプレイ21に警告表示させるかを設定するライセンス期間超過警告期間Twと、時計36の現在時刻がズレた場合に作業者が遅れ方向へ調整可能な時間幅を設定する時計戻し制限時間Tb等が記憶されている。
【0031】
図2に示すように、RAM33には、固有IDタグ38から読取られる機械固有ID番号M0と、時計36の現在時刻が定期的に記録される定期記録時間情報Tsと、ライセンスにより使用可能となるオプションのプログラムのプログラム特定情報L1と、オプションのプログラムのライセンス期間の超過を液晶ディスプレイ21に警告表示させる警告時期を示すライセンス期間警告時期T1と、ライセンスキーIDタグ40から読取られたオプションのプログラムのライセンス期間の終期を示すライセンス期間終期T2等が記憶される。但し、このRAM33は常にバックアップ電源でバックアップされており、NC工作機械1のメインスイッチが遮断されても、RAM33の記憶内容は記憶保持されるようになっている。
【0032】
さらに、RAM33には、ライセンスキーIDタグ40から読取られる機械固有ID番号を含むライセンス情報が一時的に記憶される。ROM32(プログラム記憶手段)には、ライセンスなしで使用可能な標準のプログラムと、ライセンスにより使用可能となるオプションのプログラムが記憶されている。
【0033】
固有IDタグ38は、記憶部と送受信部と整流部とを有する半導体チップと、アンテナコイルにより構成され、この固有IDタグ38は、数値制御装置3の筐体の内面に固定されている。図3に示すように、固有IDタグ38の記憶部には、数値制御装置3の機械固有ID番号Mが記憶されている。
【0034】
数値制御装置3の筐体内において固有IDタグ38に近接する位置には、RFIDリーダー37が固有IDタグ38の記憶部に記憶した機械固有ID番号Mを読取り可能に設けられている。RFIDリーダー37がコントローラ30からの信号を受信したとき、固有IDタグ38の記憶部内の機械固有ID番号Mが信号化されてRFIDリーダー37に読取られ、この信号化された機械固有ID番号Mがコントローラ30に送信される。
【0035】
ライセンスキーIDタグ40は、記憶部と送受信部と整流部とを有する半導体チップと、アンテナコイルにより構成され、このライセンスキーIDタグ40は、オプションのプログラムのライセンス認証を行う際に使用される。図4に示すように、ライセンスキーIDタグ40の記憶部には、数値制御装置3の機械固有ID番号Mcと、オプションのプログラムを特定するプログラム特定情報Lcと、オプションのプログラムのライセンス期間の終期を示すライセンス期間終期Tc等のライセンス情報が記憶されている。
【0036】
操作パネル4に設けたライセンスキー読取りスイッチ(図示略)をオンした後、ライセンスキーIDタグ40をRFIDリーダー39に近接させると、ライセンスキーIDタグ40の記憶部内のライセンス情報が信号化されてRFIDリーダー39に読取られ、この信号化されたライセンス情報がコントローラ30に送信される。
【0037】
次に、数値制御装置3のコントローラ30が実行するライセンス照合制御について、図5のフローチャートに基づいて説明する。尚、図中Si(i=1,2,3・・・)は各ステップを示す。
先ず、ライセンスキー読取りスイッチをオンするとライセンス照合制御が開始され、各種情報が読込まれる(S1)。RFIDリーダー39によりライセンスキーIDタグ40が読取られた場合(S2;Yes)、ライセンスキーIDタグ40から読取られたライセンス情報がコントローラ30内のRAM33に記憶される(S3)。
【0038】
次に、RFIDリーダー37により固有IDタグ38が読取られ(S4)、固有IDタグ38から読取られた機械固有ID番号Mがコントローラ30内のRAM33に記憶され(S5)、ライセンスキーIDタグ40の機械固有ID番号Mc及びプログラム特定情報Lcと、コントローラ30内のRAM33に記憶された機械固有ID番号M及びプログラム特定情報L1とが照合される(S6)。これらが一致した場合(S7;Yes)、ライセンスキーIDタグ40から読取られたライセンス期間終期Tcが、コントローラ30内のRAM33に記憶されたライセンス期間終期T2以降であるか否かが判定され、ライセンス期間終期Tcがライセンス期間終期T2以降の場合は(S8;Yes)、ライセンス期間終期T2がライセンス期間終期Tcで更新され、且つライセンス期間警告時期T1がライセンス期間終期Tcをライセンス期間超過警告期間Twで減算した結果で更新されて(S9)、この処理を終了する。
【0039】
一方、機械固有ID番号Mc及びプログラム特定情報Lcと機械固有ID番号M及びプログラム特定情報L1が一致しない場合は(S7;No)、「ライセンス内容が異なります」と液晶ディスプレイ21に警告表示され(S10)、ライセンス期間終期T2の更新は行われずにこの処理を終了する。また、ライセンス期間終期Tcがライセンス期間終期T2以前の場合は(S8;No)、「古いライセンスキーを読込みました」と液晶ディスプレイ21に警告表示され(S11)、ライセンス期間終期T2の更新は行われずにこの処理を終了する。
【0040】
次に、数値制御装置3のコントローラ30が実行するライセンス期間終期確認制御について、図6のフローチャートに基づいて説明する。尚、図中Si(i=20,21,22・・・)は各ステップを示す。
ライセンスにより使用可能となるオプションのプログラムを実行するとき、又は定期的にこのライセンス期間終期確認制御が開始され、各種情報が読込まれる(S20)。このプログラムのライセンス期間警告時期T1と時計36の現在時刻tとが照合され(S21)、現在時刻tがライセンス期間警告時期T1を過ぎている場合(S22;Yes)、「ライセンスキーを読取らせて下さい」と液晶ディスプレイ21に警告表示される(S23)。
【0041】
一方、現在時刻tがライセンス期間警告時期T1を過ぎていない場合は(S22;No)、このプログラムの使用許可が有効化されて(S28)、スタートにリターンする。次に、プログラムのライセンス期間終期T2と現在時刻tとが照合され(S24)、現在時刻tがライセンス期間終期T2を過ぎている場合(S25;Yes)、プログラムの使用許可が無効化され(S26)、「ライセンス期間が過ぎています」と液晶ディスプレイ21に警告表示されて(S27)、リターンする。但し、現在時刻tがライセンス期間終期T2を過ぎていない場合は(S25;No)、S28に移行する。
【0042】
次に、数値制御装置3のコントローラ30が実行する時計不正検知制御について、図7のフローチャートに基づいて説明する。尚、図中Si(i=30,31,32・・・)は各ステップを示す。
NC工作機械1の電源がオンされたときにこの時計不正検知制御が開始され、各種情報が読込まれる(S30)。時計36の設定変更が行われたか否かが判定され、時計36の設定変更が行われた場合(S31;Yes)、入力値Tiが現在時刻tから時計戻し制限時間tbを減算した時刻よりも遅れ方向であるか否かが判定される。
【0043】
入力値Tiが現在時刻tから時計戻し制限時間tbを減算した時刻よりも遅れ方向の場合(S34;Yes)、「入力した時間が不正です」と液晶ディスプレイ21に警告表示され(S35)、その入力値Tiが無効化される。次に、時刻定期記録周期になったか否かが判定され時刻定期記録周期になった場合(S32;Yes)、定期記録時間情報Tsが現在時刻tで更新されて(S33)、スタートにリターンする。
【0044】
一方、入力値Tiが現在時刻tから時計戻し制限時間tbを減算した時刻よりも進み方向の場合は(S34;No)、現在時刻tが入力値Tiで更新される(S37)。但し、時計36の設定変更が行われていない場合は(S31;No)、S32に移行する。
尚、情報照合手段は、図5に示すフローチャートのS6とコントローラ30により構成され、ライセンス認証手段は、図5に示すフローチャートのS7〜S9とコントローラ30により構成され、時計不正調整検知手段は、図7に示すフローチャートのS34,S35とコントローラにより構成されている。
【0045】
次に、数値制御装置3の作用、効果について説明する。
このように、数値制御装置3は、入力手段としてライセンスキーIDタグ40及びRFIDリーダー39と、数値制御装置3に固定された固有IDタグ38及びこの固有IDタグ38から機械固有ID番号を読取り可能なRFIDリーダー37とを備え、コントローラ30によって、入力手段から入力されたライセンス情報とRFIDリーダー37により読取られた機械固有ID番号とを照合し、ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するので、異なる機械固有ID番号を有する別のNC工作機械1ではこのプログラムの使用が許諾されない。これにより、ライセンスにより使用可能となるオプションのプログラムの不正使用を防止することができる。
【0046】
さらに、数値制御装置3に固定された固有IDタグ38に機械固有ID番号を記憶したので、数値制御装置3のコントローラ30が故障した場合、数値制御装置3の基板を交換しても、固有IDタグ38を交換せずに済むので、固有IDタグ38に記憶した機械固有ID番号をそのまま使用することができる。それ故、数値制御装置3の基板を交換した場合にも、ユーザ側の作業者のみでライセンス認証を簡単に行うことができるうえ、販売者側においてもパスワードの管理が不要になる。しかも、小型の固有IDタグ38に記憶した情報を書き換えたり、固有IDタグ38を交換することは困難なため、コントローラ30のROM32に機械固有ID番号を記憶した場合よりも、オプションのプログラムの不正使用に対する防止力が一層高まる。
【0047】
入力手段として、固有ID情報を含むライセンス情報を記憶したライセンスキーIDタグ40と、このライセンスキーIDタグ40からライセンス情報を読取り可能なRFIDリーダー39とを備えたので、ライセンスキーIDタグ40をRFIDリーダー39に近接させるだけで、ライセンスキーIDタグ40に記憶したライセンス情報を入力することができ、ユーザ側の作業者はライセンス認証を一層簡単に行うことができる。
【0048】
ライセンス情報は、数値制御装置3の機械固有ID番号Mcと、プログラムを特定するプログラム特定情報Lcと、ライセンス期間終期Tcとを含むので、プログラムの不正使用を確実に防止することができる。
【0049】
情報照合手段において使用する現在時刻を計時する時計36と、コントローラ30により時計36の現在時刻が所定時間以上遅れ方向へ不正に調整されたことを検知できるので、時計36の現在時刻を所定時間以上遅らせて、ライセンス期間の終期を不正に延長することを防止することができる。しかも、時計36のバッテリーが消耗し時計36の現在時刻がズレた場合に、所定時間以内であれば遅れ方向に対する時刻調整を行うことができるので利便性を損なうことはない。
【0050】
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1]ライセンスにより使用可能となるオプションのプログラムは複数であってもよいし、加工以外の用途で使用されるプログラムであってもよい。
2]入力手段としてライセンスキーIDタグ40及びRFIDリーダー39を設けずに、入力手段をキーボード20で構成してもよい。この場合、機械固有ID番号を含むライセンス情報をパスワードで入力する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の数値制御装置を有するNC工作機械の構成図である。
【図2】コントローラのRAMに記憶した情報を示す図である。
【図3】固有IDタグに記憶した情報を示す図である。
【図4】ライセンスキーIDタグに記憶した情報を示す図である。
【図5】ライセンス照合制御のフローチャートである。
【図6】ライセンス期間終期確認制御のフローチャートである。
【図7】時計不正検知制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
3 数値制御装置
32 ROM
36 時計
37,39 RFIDリーダー
38 固有IDタグ
40 ライセンスキーIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライセンスにより使用可能となるプログラムを記憶したプログラム記憶手段を有し、加工プログラムに基づいてワークに加工を施すように制御する数値制御装置において、
固有ID情報を含むライセンス情報を入力する入力手段と、
数値制御装置の固有ID情報を記憶し且つ数値制御装置に固定されたRFIDタグ及びこのRFIDタグから前記固有ID情報を読取り可能なRFIDリーダーと、
前記入力手段から入力されたライセンス情報と、前記RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、
前記情報照合手段による照合結果に基づいて、前記ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段と、
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記入力手段は、前記固有ID情報を含むライセンス情報を記憶したRFIDタグと、このRFIDタグからライセンス情報を読取り可能なRFIDリーダーとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記ライセンス情報は、数値制御装置の固有ID情報と、前記プログラムを特定するプログラム特定情報と、ライセンス期間の終期とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記情報照合手段において使用する現在時刻を計時する時計手段と、
前記時計手段の現在時刻が所定時間以上遅れ方向へ不正に調整されたことを検知可能な時計不正調整検知手段とを設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の数値制御装置。
【請求項5】
ライセンスにより使用可能となるプログラムを記憶したプログラム記憶手段と、固有ID情報を含むライセンス情報を入力する入力手段と、数値制御装置の固有ID情報を記憶し且つ数値制御装置に固定されたRFIDタグ及びこのRFIDタグから前記固有ID情報を読取り可能なRFIDリーダーとを有し、加工プログラムに基づいてワークに加工を施すように制御する数値制御装置に装備されたコンピュータを、
前記入力手段に前記ライセンス情報の入力を行わせる入力指令手段と、
前記RFIDリーダーにRFIDタグから固有ID情報を読取らせる読取り手段と、
前記入力手段から入力されたライセンス情報と、前記RFIDリーダーにより読取られた固有ID情報とを照合する情報照合手段と、
前記情報照合手段による照合結果に基づいて、前記ライセンス情報で特定されたプログラムの使用許諾を認証するライセンス認証手段と、
して機能させることを特徴とするプログラムライセンス用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−234561(P2008−234561A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76611(P2007−76611)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】