整合が改善されたDMSフィルタ
リアクタンス素子(RE)と直列に配線されたDMSトラック(Dst)の整合を改善するために、信号を伝える導体区域(LAs)と並列に、DMSトラックとリアクタンス素子の間で、キャパシタンス素子(KE)が配置された横分路(QE)をアースにつなぐことが提案される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMSトラックおよびこれと配線されたリアクタンス素子を備えるフィルタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のハウジングに入っている広帯域のDMSフィルタは、入力インピーダンスと出力インピーダンスのわずかな変化しか生じないように、全通過帯域にわたって非常に良好に整合させることができる。公知のハウジングは、チップの上に設けられた金属接続面とともに、かなりの値に達する可能性のある寄生的な静電容量を形成する。したがってこのようなハウジングには、寄生的な静電容量の効果を補償するために、外部のインダクタンスが導入されるのが普通である。
【0003】
現在、大幅に小さいサイズと、改善された材料とを備えるハウジングが開発されている。裸のチップが基板の上にはんだ付けされるのベアダイ・アプリケーションも開発中である。さらに、たとえば標準セラミック支持体よりも大幅に誘電率の低いガラス支持体を使用するウェーハレベルパッケージは、静電容量の影響を著しく低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした新たなデザインの開発プロセスの過程で、静電容量を低減する最新開発に基づくデバイスの整合は、現在すでに適用されている外部インダクタンスを単に設定しなおすことでは、もはや可能ではないことが明らかとなっている。それによって実現可能な入出力のアドミタンスの変動幅は、依然として大きすぎるままである。
【0005】
本発明の課題はこうした問題を回避し、特に、静電容量が大幅に低減される高度に開発されたパッケージで、優れた整合を可能にするフィルタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明によると、請求項1の構成要件を備えるフィルタ構造によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、その他の請求項から明らかである。
【0007】
本発明は、入力部と出力部の間に配線された信号経路が基板の上に設けられたフィルタ構造を提供する。信号経路には、DMSトラックとリアクタンス素子が直列に配線されている。DMSトラックとリアクタンス素子の間には、アースにつながれた追加のキャパシタンス素子が配置された、信号経路に対する横分路が配置されている。
【0008】
予期に反して、このようなフィルタ構造ではDMSトラックとリアクタンス素子の間の整合が改善され、特に反射が低減されることが判明している。キャパシタンスの値を高く設定するほど、当初のうち、整合がいっそう改善されることが示されている。ただし、横分路でのキャパシタンスの増加にともない、たとえば帯域幅の減少といった別の問題が生じるので、特定の周辺条件に応じてキャパシタンス素子の厳密な設定を算定し、最適化する。
【0009】
リアクタンス素子はSAW(Surface Acoustic Wave表面弾性波)共振器として構成するのが好ましい。このことは、リアクタンス素子とDMSトラックを両方とも同じ圧電基板の上で同じテクノロジーにより製造できるという利点がある。
【0010】
キャパシタンスが比較的高いキャパシタンス素子は、インターディジタル構造として具体化することができる。これもやはり圧電基板上の金属被覆として、DMSトラックおよび場合によりリアクタンス素子と同じ技術で製作されていてよい。インターディジタル構造は互いに組み合わされた櫛形電極を含むことができ、この櫛形電極は、DMSトラックの変換器として利用されるインターディジタル構造のフィンガ間隔よりも短いフィンガ間隔を有しているのが好ましい。このことは、共振器としても作用するインターディジタル構造の共振周波数が、フィルタ構造にとって関心の対象となる周波数領域よりも上側に位置しており、したがって、フィルタ構造の伝達挙動が妨げられないという利点がある。
【0011】
インターディジタル構造における弾性波の励起は、DMS構造の変換器に対してフィンガ部が回転される適切な回転角の選択によっても、最低限に抑えることができる。たとえば90度が好適である。さらに、インターディジタル構造によって生成される場合がある表面弾性波の出力のDMSトラックへのフィードバック、または構造の表面に構成されているSAW共振器へのフィードバックは、キャパシタンス素子のインターディジタル構造が、DMSトラックの変換器のインターディジタル構造に対して90度だけ回転していれば回避することができる。
【0012】
キャパシタンス素子も、基板の表面で相応に構成された金属被覆によって具体化されているのが好ましい。1つの実施形態では、キャパシタンス素子は、重なり合って配置されていて絶縁層により相互に電気的に絶縁された2つの金属被覆を含んでいる。これらの金属被覆は平面的に広がっていてよい。しかしながら絶縁層の厚みによって、および絶縁層に使用する材料の適当な選択によって、キャパシタンスを調整し、特に高めることも可能である。このようにして、アース電位と接続された回線と、信号経路の信号を伝える回線との単純な交差として、十分に高いキャパシタンスをもつキャパシタンス素子を具体化することができる。
【0013】
しかしながらキャパシタンス素子の好ましい作用にとって決定的に重要なのは、DMSトラックとリアクタンス素子の間に位置する個所でキャパシタンス素子が信号経路と接続されていることである。キャパシタンス素子は、基板表面上に相並んで形成された2つの金属被覆面によって構成することもできる。このとき、これらの金属被覆面の一方はフィルタ構造のアース接続経路であってよい。第2の金属被覆面は、DMSトラックとリアクタンス素子の間で信号を伝える接続回線のうちの1つと接続されているか、または、金属被覆面をなすように拡張された接続回線で具体化されている。その場合、金属被覆面の広さを十分に大きく選択することによって、特に、信号経路と接続された金属被覆面のほうを広い幅ないし広い面積で構成することによって、または、信号経路とアース面の間の距離を狭くすることによって、キャパシタンス素子の好適な高いキャパシタンス値を設定することができる。
【0014】
さらに、基板の上に配置された金属被覆面と、チップの下面に配置された金属被覆とによって、キャパシタンス素子を具体化することが可能である。このようにしても、キャパシタンスを十分に高く設定することができる。圧電基板の誘電率が十分に高いからである。信号を伝える回線と、チップの外部でたとえばハウジングの上に配置される金属被覆面との間にある寄生的なキャパシタンスは、好適な解決法であるとはみなせない。そのためにはパッケージの大幅な変更が必要であり、そのうえ誘電体としての空気によっては、おそらく所要のキャパシタンス値を実現することができないからである。
【0015】
出力側で、ないしはリアクタンス素子の方向で、対称に作動することができるDMSトラックは、互いに対称に構成された信号経路の2つの区域を含んでおり、これらの区域は本発明によると、横分路に配置されたそれぞれ1つのキャパシタンス素子を介してアースにつながれていてよい。フィルタ構造が、DMSトラックと1つのリアクタンス素子また
は複数のリアクタンス素子との間に2つを超える信号経路を含んでいる場合、上記に準じて、これらの信号経路の各々が横分路およびそこに配置されたキャパシタンス素子によってアースにつながれる。
【0016】
フィルタ構造の信号経路の各々は、1ポート共振器として構成されたリアクタンス素子を含むことができる。互いに対称な2つの信号経路を備える、ないし対称に構成されて対称に作動可能な信号経路の各区域を備えるフィルタ構造は、2ポート共振器として構成されたリアクタンス素子の第1のポートと接続されていてよい。
【0017】
これ以上の数の信号経路は、リアクタンス素子として作用する、相応数の多ポート共振器と配線されていてよい。SAW共振器として構成されたリアクタンス素子は、2段階またはそれ以上の段階にカスケード化されていてよく、通常は同じ型式で製作される2つの共振器が、電気的に相前後して信号経路につながれる。
【0018】
DMSトラックは3つから9つの変換器を含んでいるのが好ましい。DMSトラックの変換器は2つのリフレクタの間に配置されていてよい。しかしながら、DMSトラックをDMS部分トラックに分割し、各々の部分トラックを2つのリフレクタの間に配置することも可能である。その場合、部分トラックは互いに並列に配線することができる。そして各々の部分トラックが1つの信号経路(信号部分経路)に配置される。信号経路(信号部分経路)が2つを超えていれば対称な作動形態が可能である。両方のDMSトラックは、基板上で相並んで配置されていてよく、このような実施形態により、分割されたDMSトラックで最大の対称性を実現可能である。しかしながら、並列につながれた2つのDMSトラックの音響トラックを、フィルタ構造の2つの信号経路のために相互にオフセットして配置することも可能である。
【0019】
DMSトラックは、電気的に直列につながれた、好ましくは中心部に配置された、2つの変換器を有することができる。このことは、DMSトラックの一方の側では、隣接する変換器のバスバーが相互に接続されて1つの共通のバスバーを形成しており、それに対して他方の側ではこれらが分離されていることによって、簡単な仕方で実現することができる。このように配線された2つの変換器はV字スプリット変換器とも呼ばれる。V字スプリット変換器は、特に、少なくとも一方の側で対称に作動可能なDMSトラックの場合に適している。分割された両方のバスバーで、互いに対称な2つの信号をピックアップすることができるからである。さらに、V字スプリット変換器の両方の接続部の各々は、DMSトラックの1つまたは複数の変換器と並列につながれていてよい。
【0020】
1つのDMSトラックの2つまたはそれ以上の変換器が並列につながれており、その際に、それぞれのバスバーが信号を伝える1つの共通の導体区域に統合されていると、キャパシタンス素子を含むただ1つの横分路が、この共通の導体区域と接続されるという利点がある。
【0021】
隣接する変換器のアース電位にあるバスバーが、それぞれ隣接の変換器のほうを向いた末端の延長されたフィンガ部を介して相互に接続されていると、フィルタ構造のDMSトラックでアース供給部の数を減らすことができる利点がある。このような接続は、末端の電極フィンガがアース電位にあるか、それとも信号を伝えるかに応じて、1つまたは複数の電極フィンガを含むことができる。このようにして、基板表面の通常の経路では条導体交差なしには実現可能ではない、変換器のアース接続を行うことができる。
【0022】
フィルタ構造では、カスケード化されたフィルタトラックが省略されるのが好ましい。このようなフィルタトラックは、個別のDMSトラックや、並列に配線されたDMSトラックよりも高い損失を有しているからである。その代わりに、選択特性を改善するための
対処として、リアクタンスフィルタの基本要素の数を十分に多く選択することができる。
【0023】
信号経路でDMSトラックと直列に配線されたリアクタンス素子は、フィルタ構造をいっそう急角度のエッジにし、選択性と1dB帯域幅を高め、整合を改善する役目を果たす。
【0024】
DMSトラックとリアクタンス素子の間に配置された横分路に加えて、フィルタ構造は、アースにつながれていて入力側または出力側に設けられたさらに別の横分路を有することができる。この横分路には、さらに別のリアクタンス素子が配置されていてよい。このリアクタンス素子も、同じくカスケード化されていてよいSAW共振器として構成されるのが好ましい。
【0025】
追加のキャパシタンス素子は、DMSトラックをリアクタンス素子に合わせて整合させる役目をする。整合素子がなければ、特に通過帯域の上側領域における整合が最善にならない。横分路のキャパシタンス素子により、そのキャパシタンスが約0.1から1.0pFの値を有していると良好な整合が実現される。すなわち、DMSトラックの変換器の典型的な平均の静電容量はたとえば0.5から1.0pFであるのに対して、キャパシタンス素子のキャパシタンスは、DMSトラックにおける変換器の平均の静電容量の0.1倍から2.0倍の値に相当している。キャパシタンス素子のこれよりも高いキャパシタンスは、もはや改善された整合にはつながらず、たとえば帯域幅の縮小などによる問題を引き起す。特にその場合、外部の誘導式の整合素子がさらに必要になる可能性がある。キャパシタンス素子のキャパシタンスが増すにつれて、たとえば既存の外部の直列の整合素子のインダクタンスを高めなくてはならず、ないしは、並列の整合素子のインダクタンスを下げなくてはならない。
【0026】
整合は、DMSトラックとリアクタンス素子とが、出力に関しても反射に関しても互いに整合されるように行われる。出力整合が実現されるのは、DMSトラックのインピーダンスが、リアクタンス素子のインピーダンスと複素共役の関係にあるときである。
【0027】
リアクタンス素子に合わせてDMSトラックを整合するさらに別の方法は、キャパシタンス素子をSAW共振器として構成することにある。この場合、共振器の静電容量を通じて整合を生成できるだけでなく、そのアドミタンスを通じてもフィルタ構造の伝達特性を改善することができ、そのために、たとえばSAW共振器の共振周波数が、通過帯域の左側エッジの領域に配置されている値に合わせて調整される。このようにして、通過帯域エッジをいっそう急角度に形成し、選択性を高めることができる。キャパシタンス素子としてのSAW共振器は、特に、通過周波数が2ギガヘルツ領域にある、すなわち少なくとも1.6ギガヘルツである、フィルタ構造にとって利点がある。このような並列共振器は上側の通過帯域において、そこで実質的にキャパシタンスとして作用することによって、所要の整合を成立させる。通過帯域の下側領域では部分的に誘導性である。したがって多くのケースでは、内部または外部の他の整合素子がなくても、このようなSAW共振器があるだけで整合を惹起することができる。
【0028】
DMSフィルタよりも低いフィンガ周期を選択することによって、キャパシタンス素子の共振周波数を通過帯域の上側の周波数へ移すのも好都合である。その場合、このSAW共振器は通過帯域で実質的に静電容量として作用し、そこで損失と結びつく音波を励起することがなく、その共振周波数ではほぼ短絡として作用するとともに、その帯域幅によって規定される遮断帯域を遮断する。
【0029】
キャパシタンス素子として利用される並列共振器は、直列のリアクタンス素子とともに、トポロジの観点からするとはしご形フィルタ構造の基本要素を形成しているが、提案さ
れるフィルタ構造は、文献から公知となっているはしご形基本要素とDMSトラックの直列回路をなすものではない。ここで適用される並列共振器と直列のリアクタンス素子との組み合わせは、それ自体に単独で着目すれば著しい不整合を有しているからであり、あるいは、並列共振器の共振が直列素子の共振を上回っている場合には、そもそも帯域通過特性を示すことがないからである。すなわち、上記の基本要素はフィルタ構造の選択特性を改善することを主眼として適用されるのではなく、基本的に、直列のリアクタンス素子に合わせた通過帯域全体でのDMSトラックの整合の役目を果たすものである。このようなフィルタ構造は、理想的なケースでは、整合素子としての他の外部コイルを省略することができる。基板上に配置された素子を通じて、フィルタ構造がすでに最善に整合されているからである。
【0030】
次に、実施例と添付の図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。各図面は純粋に模式的なものであり、縮尺に忠実に図示されているわけではないので、絶対的な寸法表示も相対的な寸法表示も図面から見てとることはできない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】1つの信号経路を備えるフィルタ構造の第1の単純な実施例である。
【図2】互いに対称な2つの信号経路を備える実施形態である。
【図3】2部分からなるDMSトラックを備える実施形態である。
【図4】容量性素子としてインターディジタル構造を備える実施例である。
【図5】信号経路と、DMSトラックの変換器のアース接続部との間に横分路がつながれている実施形態である。
【図6】アース面をなすように拡張された導体区域または接続面を備える、本例の特別な実施形態である。
【図7】容量性素子が条導体交差部の形態で製作されている実施形態である。
【図8】DMSトラックのV字スプリット変換器と、リアクタンス素子としての2ポート共振器とを備えるフィルタ構造である。
【図9】さらに別の構成において末端のフィンガ部が延長されており、それにより、アースと接続された向かい合うそれぞれのバスバーを接続している実施形態である。
【図10】リアクタンス素子としてカスケード化された2ポート共振器を備える類似の構成である。
【図11】別の変形例における2つのDMS部分トラックに分割されたDMSトラックである。
【図12】信号経路の内部でカスケード化された第1の2ポート共振器と、第1の2ポート共振器の出力部と並列にカスケード化された別の2ポート共振器とを備えるフィルタ構造である。
【図13】2つの信号経路と、これと並列につながれた2つの横分路にあるそれぞれ1つの1ポート共振器と、対称の出力部にある2ポート共振器とを備えるフィルタ構造である。
【図14】さまざまに異なる設定がなされたキャパシタンス値と、これに対してそれぞれ最善である出力部の並列コイルとを備える図2に示すフィルタ構造のシミュレーションされた通過曲線である。
【図15】同一のフィルタの入力反射係数S11である。
【図16】同一のフィルタのシミュレーションされた出力反射係数S22である。
【図17】両方の信号経路から分岐をするように横分路でアースにつながれた2つの追加の1ポート共振器を備える、容量性素子としての条導体交差部を備えるフィルタ構造の特別な実施形態である。
【図18】キャパシタンス素子があるときとないときの図9のフィルタ構造のパラメータS21である。
【図19】キャパシタンス素子があるときとないときの図9のフィルタ構造の個別コンポーネントのパラメータS22と、2ポート共振器のパラメータS11とを示すスミスチャートである。
【図20】キャパシタンス素子があるときとないときの図9のフィルタ構造のパラメータS22を示すスミスチャートである。
【図21】DMSトラック、基本要素、ならびに図17に示すフィルタ構造全体についての散乱パラメータS21,S11およびS22である。
【図22】DMSトラック、基本要素、ならびに図17に示すフィルタ構造全体についての散乱パラメータS21,S11およびS22である。
【図23】DMSトラック、基本要素、ならびに図17に示すフィルタ構造全体についての散乱パラメータS21,S11およびS22である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、第1の接続部T1と第2の接続部T2の間に信号経路が延びており、この信号経路でDMSトラックDStが、信号を伝える導線区域LASを介して、リアクタンス素子REと直列に配線された本発明の第1の単純な実施形態を示している。信号を伝える導線区域から横分路QZが分岐しており、この横分路に容量性素子KEが配置されている。横分路はアースと接続されている。DMSトラックDStのアース接続部は図面を見やすくする都合から図示しておらず、その個々の変換器やリフレクタ、およびリアクタンス素子REの厳密な構成なども同じく図示していない。このフィルタ構造は両側で非対称に作動可能であり、すなわち両側で「シングルエンド型」である。
【0033】
図2aは、第1の接続部T1ではシングルエンド型であり、第2の接続部T2,T2’では対称に作動可能であるフィルタ構造の単純な実施形態を示している。それに応じてDMSトラックDStは出力側で、対称に作動可能な2つの条導体区域LAS1,LAS2を介して、2つのリアクタンス素子RE1,RE2と接続されている。対称に作動可能な両方の条導体区域LASから、それぞれアースに向かって横分路が出ており、この横分路にそれぞれ容量性素子KE1,KE2が配置されている。この場合にも、DMSトラックDStとリアクタンス素子REは任意に構成可能である。図2bは、両方の出力側の接続部T2およびT2’に対する横分路に配置された外部の並列コイルLPを整合素子として備える構造を示している。図2cは、両方の出力側の接続部T2およびT2’に対して直列につながれた2つの外部の直列コイルLSを整合素子として備える構造を示している。
【0034】
図3は、それぞれリフレクタで区切られる第1および第2のDMS部分トラックDTS1,DTS2にDMSトラックが分割された、単純な実施形態を示している。ここでは両方の対称の導体区域は、対称な信号伝達を保証するのに好適である共通の4極のリアクタンス素子REに連通している。DMS部分トラックDTSとリアクタンス素子REを接続する両方の導体区域から、同じく横分路およびそこに配置されたアースに向かう容量性素子KEがそれぞれ分岐している。この構造は、出力側でT2/T2’に関して対称に作動させることができる。入力側ではT1/T1’に関する対称の動作が可能なだけでなく、T1とT1’の接続後、DMSトラックの変換器を適切に選択すれば非対称の動作も可能である。
【0035】
図4は、ここでは3つの変換器IDT1,IDT2,IDT3を備えるDMSトラックが図示されている、本発明の別の実施形態を示している。両方の外側の変換器IDT1,IDT3は、それぞれ1つの導体区域LAS1およびLAS2を介して、共振器として構成されたそれぞれ1つのリアクタンス素子RE1,RE2と接続されている。導体区域LAS1およびLAS2から、横分路およびこれに配置された容量性素子KE1,KE2がそれぞれ分岐している。容量性素子KE1,KE2は、ここではインターディジタル構造として構成されている。図示した実施形態では、さらにこのインターディジタル構造は、DMSトラックDSTのインターディジタル変換器に対して90度だけ回転している。そ
の追加または代替として、インターディジタル構造として構成された容量性素子KE1,KE2は、DMSトラックDSTのインターディジタル変換器のフィンガ間隔よりも小さいフィンガ間隔を有することもできる。このフィルタ構造はシングルエンド型/バランス型の動作を可能にし、すなわち非対称/対称の動作形態を可能にする。
【0036】
図5には、横分路およびこれに配置された容量性素子KEが、それぞれ1つの信号を伝える導体区域LASと、DMSトラックDSTの変換器のアース接続部MAWとの間につながれた、さらに別の可能性が一般的な形態で示されている。互いに対称な両方の導体区域LASは、本例では、共振器として構成された別々のリアクタンス素子RE1,RE2と接続されている。1つの変形例では、信号を伝える両方の導体区域LASを、1つまたは2つの容量性素子が配置された横分路と接続することも可能であり、この横分路が追加的にさらにアースと接続されることはない。対称性により、このような横分路の中心部は仮想的なアースに位置している。
【0037】
図5では、容量性素子KEはそれぞれインターディジタル構造として構成されていてよい。図6に示す別の構成では、容量性素子KEは、基板上ですぐ近傍に相並んで配置された2つの金属被覆面の形態で構成されている。第1の容量性素子KE1は、信号を伝える第1の金属被覆面MFS1と、同じく金属被覆面MFMとして構成された、DMSトラックDSTの変換器のアース接続部との間に形成されている。DMSトラックのここでは中央の変換器のアース接続部MAは、すでに公知のデバイスで通常となっているように、ボンディングワイヤまたはバンプとの電気接続を成立させるための拡張された接続面として構成されているのに対して、図6の実施形態では信号を伝える導体区域は異なっており、特にアース接続部のより近くを通っており、従来式の導体区域に比べて追加的に拡張および/または延長されている。第2の容量性素子KE2は、アース接続部MAないしその金属被覆面MFMと、第2の金属被覆面MFS2をなすように拡張された信号を伝える導体区域との間に形成されている。
【0038】
図7は、導体区域に対する横分路に配置された容量性素子が、DMSトラックのインターディジタル変換器のアースに位置する導体区域を備える、横分路の第2の条導体交差の形態で構成されたフィルタ構造の実施形態を示している。ここではDMSトラックDSTの中央のインターディジタル変換器のアース接続部MAと接続された、接地されている導体区域LAMから、条導体区域LAS1およびLAS2への接続部が左と右に向かって出ている。アースに位置する導体区域LAMと、条導体区域LAS1およびLAS2との間には、短絡を回避するために誘電体DEがそれぞれ配置されており、たとえば無機酸化物層または有機レジスト層が配置されている。誘電体は、導体交差部によって形成される容量性素子のキャパシタンスを十分な大きさで設定するために、高い誘電率で構成されるのが好ましい。さらに、少なくとも条導体交差部の領域で、両方の導体区域の重なり合いを増やすために、およびこれに伴って容量性素子のキャパシタンスを高めるために、互いに交差する導体区域を拡張することが可能である。
【0039】
図8は、厳密に言えば2つのインターディジタル変換器の直列回路に相当するV字スプリット変換器を、DMSトラックが中央のインターディジタル変換器として有している実施形態を示している。この直列回路は、図面の上側に位置する延長された共通のバスバーによって行われる。V字スプリット変換器は、その上側のバスバーによってアースと接続されていてよい。それに対して、V字スプリット変換器の分離された両方の下側のバスバーでは、対称の信号ないし互いに対称な2つの電位をピックアップすることができる。
【0040】
中央のV字スプリット変換器VSの両側には、それぞれ2つのインターディジタル変換器IDT1,IDT2ないしIDT3,IDT4が配置されている。DMSトラックDSTは両方の端部のところで、それぞれ1つのリフレクタ構造により区切られている。入力
側では、すなわち定義に基づいて第1の接続部T1と接続された側では、両方のインターディジタル変換器IDT2およびIDT3は並列につながれている。出力側では、第1の信号経路について、第1のインターディジタル変換器IDT1とV字スプリット変換器VSの第1の出力部とが並列につながれており、信号を伝える1つの導体区域にまとめられている。
【0041】
これに対応する形態で、V字スプリット変換器VSの第2の出力側の接続部は第4のインターディジタル変換器IDT4と並列につながれており、信号を伝える第2の導体区域としてまとめられている。信号を伝える両方の対称な導体区域から、それぞれ1つの横分路およびこれに配置された容量性素子KEがアースにつながれている。導体区域の出力側端部は4極のリアクタンス素子へと連通しており、このリアクタンス素子は出力側で、互いに対称に作動可能である両方の第2の接続部T2,T2’と接続されている。4極のリアクタンス素子REは、ここでは2ポートSAW共振器として構成されている。
【0042】
SAWフィルタ構造の場合に通常であるように、この場合にも、ならびに他のどの実施例においても、フィルタ構造を反対方向へ作動させることが可能であり、それにより、接続部T2,T2’は入力部と接続され、接続部T1は出力部と接続されることになる。すなわちこのようなフィルタ構造は、バランス型/シングルエンド型として作動可能である。
【0043】
図9は、図8の実施形態に比べて、中央のV字スプリット変換器が延長された末端の電極フィンガFVを追加的に備えるように構成された、フィルタ構造のさらに別の実施形態を示しており、この電極フィンガは、V字スプリット変換器の共通のバスバーを、隣接するインターディジタル変換器IDT2およびIDT3の両方のそれぞれ向かい合うバスバーと接続している。このようにして追加のアース接続なしで、V字スプリット変換器VSの共通のバスバーをアース電位に位置させることができ、このことは構造の対称性を高め、それによって両方の対称の出力部で、理想的な180度の位相差からの誤差が最低限に抑えられる。容量性素子は離散型の容量性素子として、特にインターディジタル構造として、または、図6に示すようにコンデンサプレートをなすように拡張された導体区域および接続面として構成されていてよい。
【0044】
改善された整合が図18から図20に示されている。図18は、図9に示すキャパシタンス素子を備える整合された構造の散乱行列すなわち通過挙動のシミュレーションされたパラメータS21を(曲線Fa)、キャパシタンス素子を有さない整合されていない構造との比較で示している(曲線Fu)。約1900MHz付近の通過帯域の右側のエッジのところに若干の改善が認められる。
【0045】
フィルタ構造の個別素子についての散乱行列の反射パラメータS11,S22のシミュレーションされた図が、図19にスミスチャートとして示されている。整合が良好であるとき、DMSトラックの出力部におけるS22(曲線3)は、リアクタンス素子/2ポート共振器の入力部におけるパラメータS11(曲線1)に対して複素共役として振る舞い、このことはx軸での反射に相当している。1900MHz付近の強調されている値(小さい四角を参照)は、個別コンポーネントないしその反射率について劣った整合を示している。それに対して曲線3は、キャパシタンス素子を含むDMSトラックのパラメータS22を示している。曲線3では、1900MHz付近の点が共振器の曲線1の対応する点に対してほぼ複素共役に振る舞っており、すなわち、良好な整合が成立していることがわかる。
【0046】
このことは、図20に示すキャパシタンス素子を備えるフィルタ構造全体の出力反射率S22と(曲線Fa)、キャパシタンス素子がない場合とによっても明らかである(曲線
Fu)。曲線Fuの1900MHz付近の値は不整合であるのに対して、曲線Faについては原点に位置しており、最善の整合を示している。
【0047】
図10は、図11と異なり、リアクタンス素子REが2重にカスケード化された2ポート共振器として追加的に構成された、フィルタ構造のさらに別の実施形態を示している。2重カスケード化は、ここではそれぞれ1トラックのSAW2ポート共振器である2つの4極のリアクタンス素子の相前後する配列を意味している。それにより共振器の性能が高くなり、特定のケースでは、カスケード化されていない場合に比べて多い変換器フィンガ数(>100)を適用することで、体積波損失ないしリフレクタ損失が低減される。
【0048】
図11は、DMSトラックが、それぞれ3つのインターディジタル変換器を備える2つのDMS部分トラックに分割された構造を示している。このとき、両方のDMS部分トラックDTS1,DTS2の各々を通って独自の信号経路が延びており、それにより、入力側で両方の第1の接続部T1,T1’にも対称の信号を印加することができ、この信号を両方のDMS部分トラックで互いに独立して伝えることができる。出力側では、信号を伝える両方の導体区域は、ここでは4極のリアクタンス素子として構成された、特にカスケード化された2ポート共振器として構成された、リアクタンス素子と直列に接続される。あるいは、適当な変換器の向きを選択することで、両方の第1の接続部T1,T1’を非対称の接続部と接続させることもできる。
【0049】
図12は、図10に示すようなフィルタ構造が出力側で、アースにつながれた別の4極のリアクタンス素子と追加的に並列に接続された、さらに別の実施形態を示している。アースにつながれた4極の並列のリアクタンス素子REPは、やはりカスケード化された2ポート共振器として構成されていてよい。並列のリアクタンス素子RPの両方の接続部は出力側でアースと接続されるか、または、図示しているように短絡されて、選択的に、アース接続部と接続されるか、もしくは接続されない。この構造は、フィルタ構造の両方の出力側の接続部T2,T2’が、4つの変換器が直列につながれている横分路で橋渡しされる等価回路図に相当している。
【0050】
図13は、DMSトラックDStが出力側で、信号を伝える2つの導体区域を介して4極のリアクタンス素子REと接続された、フィルタ構造のさらに別の実施形態を示している。リアクタンス素子REとDMSトラックDSTの間では、両方の導体区域はそれぞれ横分路を介して、ここではSAW1ポート共振器として構成された並列の共振器とともにアースにつながれている。このとき1ポート共振器の静電容量が、容量性素子としての役目を果たす。これに加えて、このような並列の1ポート共振器は出力側のリアクタンス素子REとともに、リアクタンス素子に合わせたDMSトラックの整合を改善する基本要素を形成することができる。並列共振器の共振周波数の選択に応じて、希望する遮断帯域での選択性も高めることができるが、重要なのは、共振器がフィルタの上側の通過領域で容量式に作用することである。
【0051】
図14は、さまざまに異なるキャパシタンス値をもつ容量性素子が算出ないしシミュレーションされた、出力部に並列コイルを備える図2のフィルタ構造の行列パラメータS21の形態のシミュレーションされた通過曲線を示している。各々のキャパシタンス値に対して、出力部にある並列コイルの最善の値が適用されている。キャパシタンスが高くなるほど、並列コイルのインダクタンスは低く選択されなくてはならない。容量性素子により、特に通過帯域の上側領域と上側の遮断帯域近傍の領域で、整合が改善されていることが示されている。このことは、入力ポートでの反射を表す図15に示す行列パラメータS11を見ると、いっそう明らかに示されている。この場合にも容量性素子によって反射が低減され、それによって通過帯域の上側領域での整合が改善される。
【0052】
図15と図16に示すSパラメータS11およびS22は、フィルタ全体の入力部ないし出力部での反射を表しており、容量性素子によって通過帯域の上側領域での整合に影響を与え、望ましい形で改善できることを同じく示している。容量性素子のキャパシタンス値の厳密な選択は、たとえば帯域幅といったフィルタ構造の他の特性とのトレードオフとしての最適化において算定される。
【0053】
図17には、信号経路と横分路の好ましい導線案内をもつことを特徴とするフィルタ構造が示されている。このフィルタ構造では、1つのDMSトラックDSTが、信号を伝える2つの導体区域LAS1,LAS2を介して、それぞれ1つの直列のリアクタンス素子RES1ないしRES2と接続されており、これらが出力部と接続されている。これに加えて、信号を伝える両方の導体区域LAS1,LAS2は横分路を介して接続されており、この横分路には、2つのSAW1ポート共振器が直列につながれており、したがってこれらの共振器は並列のリアクタンス素子をなしている。これら両方の並列の1ポート共振器の間の中央部では、任意選択で、図面に示すようにアースと接続された別の横分路が分岐する。
【0054】
これら両方の並列の1ポート共振器は、その静電容量を通じて本発明に基づく形態で、直列につながれたリアクタンス素子RES1,RES2に合わせたDMSトラックの整合を改善するための容量性素子として作用する。これに加えて、これらの1ポート共振器は、直列のリアクタンス素子RESとともに基本要素をそれぞれ形成するが、ただし、この基本要素はそれ自体単独では特に上側の通過帯域の領域において、そこで容量式に作用するために著しく不整合となっている。図21から図23は、DMSトラックについて(曲線d)、および、直列および並列のリアクタンス素子から形成されるリアクタンスフィルタの基本要素ついて(曲線g)、ならびに、図17に示すフィルタ構造全体について(曲線f)、散乱パラメータS21,S11およびS22を示している。個別素子の整合が劣っているにもかかわらず、追加の外部の整合素子を使うことなく、特に反射の少ない優れた全体的整合が得られる。
【0055】
さらに別の特別な点として、図17に示すフィルタ構造は、信号を伝える導体区域LASがアース電位を有する導体区域LAMと交差する2つの条導体交差を有している。交差領域では、両方の導体区域は絶縁性層によって互いに分離されている。これらの条導体交差部は、さらに別の2つの容量性素子をなしており、これらの容量性素子は、等価回路図では信号を伝える導体区域LASに対する横分路をなしており、条導体交差部の容量性素子を介してアースにつながれている。それに応じて、フィルタ構造の信号を伝える両方の導体区域LASの各々がアースに向かう2つの横分路を有しており、これらの横分路の2つは容量性素子としての条導体交差部を有しており、2つの横分路は容量性素子としてそれぞれ1つの1ポート共振器を有している。
【0056】
図示しているフィルタ構造は、いかなる外部の整合素子も使わないですませることができ、にもかかわらず良好に整合されている。特に、動作周波数が十分に高く、特に2ギガヘルツの領域(1.6ギガヘルツ以上)にあれば、特別に良好な整合を実現できることが見出されている。
【0057】
わずかな数の実施例を参照して説明した本発明は、これらの実施例の厳密な構成に限定されるものではない。むしろ、さまざまに異なる実施例に基づくDMSトラック、リアクタンス素子、および容量性素子の特別な構成を、相互に任意に組み合わせることが可能である。常に決定的に重要なのは、容量性素子が十分なキャパシタンスを備えていることであり、そのために、各々のフィルタ構造に存在する寄生キャパシタンスだけでは十分ではない。
【0058】
DMSトラック、容量性素子、リアクタンス素子といったフィルタ構造のすべての部材は、圧電基板の表面で金属被覆構造として構成されるのが好ましい。別案として、容量性素子は基板の上面および下面の金属被覆によって構成されていてよい。リアクタンス素子は、外部のLC素子の形態で具体化されていてもよい。しかしながら、同じくSAW構造として、特にDMSトラックに類似する金属被覆を備えるSAW共振器として、基板の表面に構成されているほうが好ましい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMSトラックおよびこれと配線されたリアクタンス素子を備えるフィルタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のハウジングに入っている広帯域のDMSフィルタは、入力インピーダンスと出力インピーダンスのわずかな変化しか生じないように、全通過帯域にわたって非常に良好に整合させることができる。公知のハウジングは、チップの上に設けられた金属接続面とともに、かなりの値に達する可能性のある寄生的な静電容量を形成する。したがってこのようなハウジングには、寄生的な静電容量の効果を補償するために、外部のインダクタンスが導入されるのが普通である。
【0003】
現在、大幅に小さいサイズと、改善された材料とを備えるハウジングが開発されている。裸のチップが基板の上にはんだ付けされるのベアダイ・アプリケーションも開発中である。さらに、たとえば標準セラミック支持体よりも大幅に誘電率の低いガラス支持体を使用するウェーハレベルパッケージは、静電容量の影響を著しく低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした新たなデザインの開発プロセスの過程で、静電容量を低減する最新開発に基づくデバイスの整合は、現在すでに適用されている外部インダクタンスを単に設定しなおすことでは、もはや可能ではないことが明らかとなっている。それによって実現可能な入出力のアドミタンスの変動幅は、依然として大きすぎるままである。
【0005】
本発明の課題はこうした問題を回避し、特に、静電容量が大幅に低減される高度に開発されたパッケージで、優れた整合を可能にするフィルタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明によると、請求項1の構成要件を備えるフィルタ構造によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、その他の請求項から明らかである。
【0007】
本発明は、入力部と出力部の間に配線された信号経路が基板の上に設けられたフィルタ構造を提供する。信号経路には、DMSトラックとリアクタンス素子が直列に配線されている。DMSトラックとリアクタンス素子の間には、アースにつながれた追加のキャパシタンス素子が配置された、信号経路に対する横分路が配置されている。
【0008】
予期に反して、このようなフィルタ構造ではDMSトラックとリアクタンス素子の間の整合が改善され、特に反射が低減されることが判明している。キャパシタンスの値を高く設定するほど、当初のうち、整合がいっそう改善されることが示されている。ただし、横分路でのキャパシタンスの増加にともない、たとえば帯域幅の減少といった別の問題が生じるので、特定の周辺条件に応じてキャパシタンス素子の厳密な設定を算定し、最適化する。
【0009】
リアクタンス素子はSAW(Surface Acoustic Wave表面弾性波)共振器として構成するのが好ましい。このことは、リアクタンス素子とDMSトラックを両方とも同じ圧電基板の上で同じテクノロジーにより製造できるという利点がある。
【0010】
キャパシタンスが比較的高いキャパシタンス素子は、インターディジタル構造として具体化することができる。これもやはり圧電基板上の金属被覆として、DMSトラックおよび場合によりリアクタンス素子と同じ技術で製作されていてよい。インターディジタル構造は互いに組み合わされた櫛形電極を含むことができ、この櫛形電極は、DMSトラックの変換器として利用されるインターディジタル構造のフィンガ間隔よりも短いフィンガ間隔を有しているのが好ましい。このことは、共振器としても作用するインターディジタル構造の共振周波数が、フィルタ構造にとって関心の対象となる周波数領域よりも上側に位置しており、したがって、フィルタ構造の伝達挙動が妨げられないという利点がある。
【0011】
インターディジタル構造における弾性波の励起は、DMS構造の変換器に対してフィンガ部が回転される適切な回転角の選択によっても、最低限に抑えることができる。たとえば90度が好適である。さらに、インターディジタル構造によって生成される場合がある表面弾性波の出力のDMSトラックへのフィードバック、または構造の表面に構成されているSAW共振器へのフィードバックは、キャパシタンス素子のインターディジタル構造が、DMSトラックの変換器のインターディジタル構造に対して90度だけ回転していれば回避することができる。
【0012】
キャパシタンス素子も、基板の表面で相応に構成された金属被覆によって具体化されているのが好ましい。1つの実施形態では、キャパシタンス素子は、重なり合って配置されていて絶縁層により相互に電気的に絶縁された2つの金属被覆を含んでいる。これらの金属被覆は平面的に広がっていてよい。しかしながら絶縁層の厚みによって、および絶縁層に使用する材料の適当な選択によって、キャパシタンスを調整し、特に高めることも可能である。このようにして、アース電位と接続された回線と、信号経路の信号を伝える回線との単純な交差として、十分に高いキャパシタンスをもつキャパシタンス素子を具体化することができる。
【0013】
しかしながらキャパシタンス素子の好ましい作用にとって決定的に重要なのは、DMSトラックとリアクタンス素子の間に位置する個所でキャパシタンス素子が信号経路と接続されていることである。キャパシタンス素子は、基板表面上に相並んで形成された2つの金属被覆面によって構成することもできる。このとき、これらの金属被覆面の一方はフィルタ構造のアース接続経路であってよい。第2の金属被覆面は、DMSトラックとリアクタンス素子の間で信号を伝える接続回線のうちの1つと接続されているか、または、金属被覆面をなすように拡張された接続回線で具体化されている。その場合、金属被覆面の広さを十分に大きく選択することによって、特に、信号経路と接続された金属被覆面のほうを広い幅ないし広い面積で構成することによって、または、信号経路とアース面の間の距離を狭くすることによって、キャパシタンス素子の好適な高いキャパシタンス値を設定することができる。
【0014】
さらに、基板の上に配置された金属被覆面と、チップの下面に配置された金属被覆とによって、キャパシタンス素子を具体化することが可能である。このようにしても、キャパシタンスを十分に高く設定することができる。圧電基板の誘電率が十分に高いからである。信号を伝える回線と、チップの外部でたとえばハウジングの上に配置される金属被覆面との間にある寄生的なキャパシタンスは、好適な解決法であるとはみなせない。そのためにはパッケージの大幅な変更が必要であり、そのうえ誘電体としての空気によっては、おそらく所要のキャパシタンス値を実現することができないからである。
【0015】
出力側で、ないしはリアクタンス素子の方向で、対称に作動することができるDMSトラックは、互いに対称に構成された信号経路の2つの区域を含んでおり、これらの区域は本発明によると、横分路に配置されたそれぞれ1つのキャパシタンス素子を介してアースにつながれていてよい。フィルタ構造が、DMSトラックと1つのリアクタンス素子また
は複数のリアクタンス素子との間に2つを超える信号経路を含んでいる場合、上記に準じて、これらの信号経路の各々が横分路およびそこに配置されたキャパシタンス素子によってアースにつながれる。
【0016】
フィルタ構造の信号経路の各々は、1ポート共振器として構成されたリアクタンス素子を含むことができる。互いに対称な2つの信号経路を備える、ないし対称に構成されて対称に作動可能な信号経路の各区域を備えるフィルタ構造は、2ポート共振器として構成されたリアクタンス素子の第1のポートと接続されていてよい。
【0017】
これ以上の数の信号経路は、リアクタンス素子として作用する、相応数の多ポート共振器と配線されていてよい。SAW共振器として構成されたリアクタンス素子は、2段階またはそれ以上の段階にカスケード化されていてよく、通常は同じ型式で製作される2つの共振器が、電気的に相前後して信号経路につながれる。
【0018】
DMSトラックは3つから9つの変換器を含んでいるのが好ましい。DMSトラックの変換器は2つのリフレクタの間に配置されていてよい。しかしながら、DMSトラックをDMS部分トラックに分割し、各々の部分トラックを2つのリフレクタの間に配置することも可能である。その場合、部分トラックは互いに並列に配線することができる。そして各々の部分トラックが1つの信号経路(信号部分経路)に配置される。信号経路(信号部分経路)が2つを超えていれば対称な作動形態が可能である。両方のDMSトラックは、基板上で相並んで配置されていてよく、このような実施形態により、分割されたDMSトラックで最大の対称性を実現可能である。しかしながら、並列につながれた2つのDMSトラックの音響トラックを、フィルタ構造の2つの信号経路のために相互にオフセットして配置することも可能である。
【0019】
DMSトラックは、電気的に直列につながれた、好ましくは中心部に配置された、2つの変換器を有することができる。このことは、DMSトラックの一方の側では、隣接する変換器のバスバーが相互に接続されて1つの共通のバスバーを形成しており、それに対して他方の側ではこれらが分離されていることによって、簡単な仕方で実現することができる。このように配線された2つの変換器はV字スプリット変換器とも呼ばれる。V字スプリット変換器は、特に、少なくとも一方の側で対称に作動可能なDMSトラックの場合に適している。分割された両方のバスバーで、互いに対称な2つの信号をピックアップすることができるからである。さらに、V字スプリット変換器の両方の接続部の各々は、DMSトラックの1つまたは複数の変換器と並列につながれていてよい。
【0020】
1つのDMSトラックの2つまたはそれ以上の変換器が並列につながれており、その際に、それぞれのバスバーが信号を伝える1つの共通の導体区域に統合されていると、キャパシタンス素子を含むただ1つの横分路が、この共通の導体区域と接続されるという利点がある。
【0021】
隣接する変換器のアース電位にあるバスバーが、それぞれ隣接の変換器のほうを向いた末端の延長されたフィンガ部を介して相互に接続されていると、フィルタ構造のDMSトラックでアース供給部の数を減らすことができる利点がある。このような接続は、末端の電極フィンガがアース電位にあるか、それとも信号を伝えるかに応じて、1つまたは複数の電極フィンガを含むことができる。このようにして、基板表面の通常の経路では条導体交差なしには実現可能ではない、変換器のアース接続を行うことができる。
【0022】
フィルタ構造では、カスケード化されたフィルタトラックが省略されるのが好ましい。このようなフィルタトラックは、個別のDMSトラックや、並列に配線されたDMSトラックよりも高い損失を有しているからである。その代わりに、選択特性を改善するための
対処として、リアクタンスフィルタの基本要素の数を十分に多く選択することができる。
【0023】
信号経路でDMSトラックと直列に配線されたリアクタンス素子は、フィルタ構造をいっそう急角度のエッジにし、選択性と1dB帯域幅を高め、整合を改善する役目を果たす。
【0024】
DMSトラックとリアクタンス素子の間に配置された横分路に加えて、フィルタ構造は、アースにつながれていて入力側または出力側に設けられたさらに別の横分路を有することができる。この横分路には、さらに別のリアクタンス素子が配置されていてよい。このリアクタンス素子も、同じくカスケード化されていてよいSAW共振器として構成されるのが好ましい。
【0025】
追加のキャパシタンス素子は、DMSトラックをリアクタンス素子に合わせて整合させる役目をする。整合素子がなければ、特に通過帯域の上側領域における整合が最善にならない。横分路のキャパシタンス素子により、そのキャパシタンスが約0.1から1.0pFの値を有していると良好な整合が実現される。すなわち、DMSトラックの変換器の典型的な平均の静電容量はたとえば0.5から1.0pFであるのに対して、キャパシタンス素子のキャパシタンスは、DMSトラックにおける変換器の平均の静電容量の0.1倍から2.0倍の値に相当している。キャパシタンス素子のこれよりも高いキャパシタンスは、もはや改善された整合にはつながらず、たとえば帯域幅の縮小などによる問題を引き起す。特にその場合、外部の誘導式の整合素子がさらに必要になる可能性がある。キャパシタンス素子のキャパシタンスが増すにつれて、たとえば既存の外部の直列の整合素子のインダクタンスを高めなくてはならず、ないしは、並列の整合素子のインダクタンスを下げなくてはならない。
【0026】
整合は、DMSトラックとリアクタンス素子とが、出力に関しても反射に関しても互いに整合されるように行われる。出力整合が実現されるのは、DMSトラックのインピーダンスが、リアクタンス素子のインピーダンスと複素共役の関係にあるときである。
【0027】
リアクタンス素子に合わせてDMSトラックを整合するさらに別の方法は、キャパシタンス素子をSAW共振器として構成することにある。この場合、共振器の静電容量を通じて整合を生成できるだけでなく、そのアドミタンスを通じてもフィルタ構造の伝達特性を改善することができ、そのために、たとえばSAW共振器の共振周波数が、通過帯域の左側エッジの領域に配置されている値に合わせて調整される。このようにして、通過帯域エッジをいっそう急角度に形成し、選択性を高めることができる。キャパシタンス素子としてのSAW共振器は、特に、通過周波数が2ギガヘルツ領域にある、すなわち少なくとも1.6ギガヘルツである、フィルタ構造にとって利点がある。このような並列共振器は上側の通過帯域において、そこで実質的にキャパシタンスとして作用することによって、所要の整合を成立させる。通過帯域の下側領域では部分的に誘導性である。したがって多くのケースでは、内部または外部の他の整合素子がなくても、このようなSAW共振器があるだけで整合を惹起することができる。
【0028】
DMSフィルタよりも低いフィンガ周期を選択することによって、キャパシタンス素子の共振周波数を通過帯域の上側の周波数へ移すのも好都合である。その場合、このSAW共振器は通過帯域で実質的に静電容量として作用し、そこで損失と結びつく音波を励起することがなく、その共振周波数ではほぼ短絡として作用するとともに、その帯域幅によって規定される遮断帯域を遮断する。
【0029】
キャパシタンス素子として利用される並列共振器は、直列のリアクタンス素子とともに、トポロジの観点からするとはしご形フィルタ構造の基本要素を形成しているが、提案さ
れるフィルタ構造は、文献から公知となっているはしご形基本要素とDMSトラックの直列回路をなすものではない。ここで適用される並列共振器と直列のリアクタンス素子との組み合わせは、それ自体に単独で着目すれば著しい不整合を有しているからであり、あるいは、並列共振器の共振が直列素子の共振を上回っている場合には、そもそも帯域通過特性を示すことがないからである。すなわち、上記の基本要素はフィルタ構造の選択特性を改善することを主眼として適用されるのではなく、基本的に、直列のリアクタンス素子に合わせた通過帯域全体でのDMSトラックの整合の役目を果たすものである。このようなフィルタ構造は、理想的なケースでは、整合素子としての他の外部コイルを省略することができる。基板上に配置された素子を通じて、フィルタ構造がすでに最善に整合されているからである。
【0030】
次に、実施例と添付の図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。各図面は純粋に模式的なものであり、縮尺に忠実に図示されているわけではないので、絶対的な寸法表示も相対的な寸法表示も図面から見てとることはできない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】1つの信号経路を備えるフィルタ構造の第1の単純な実施例である。
【図2】互いに対称な2つの信号経路を備える実施形態である。
【図3】2部分からなるDMSトラックを備える実施形態である。
【図4】容量性素子としてインターディジタル構造を備える実施例である。
【図5】信号経路と、DMSトラックの変換器のアース接続部との間に横分路がつながれている実施形態である。
【図6】アース面をなすように拡張された導体区域または接続面を備える、本例の特別な実施形態である。
【図7】容量性素子が条導体交差部の形態で製作されている実施形態である。
【図8】DMSトラックのV字スプリット変換器と、リアクタンス素子としての2ポート共振器とを備えるフィルタ構造である。
【図9】さらに別の構成において末端のフィンガ部が延長されており、それにより、アースと接続された向かい合うそれぞれのバスバーを接続している実施形態である。
【図10】リアクタンス素子としてカスケード化された2ポート共振器を備える類似の構成である。
【図11】別の変形例における2つのDMS部分トラックに分割されたDMSトラックである。
【図12】信号経路の内部でカスケード化された第1の2ポート共振器と、第1の2ポート共振器の出力部と並列にカスケード化された別の2ポート共振器とを備えるフィルタ構造である。
【図13】2つの信号経路と、これと並列につながれた2つの横分路にあるそれぞれ1つの1ポート共振器と、対称の出力部にある2ポート共振器とを備えるフィルタ構造である。
【図14】さまざまに異なる設定がなされたキャパシタンス値と、これに対してそれぞれ最善である出力部の並列コイルとを備える図2に示すフィルタ構造のシミュレーションされた通過曲線である。
【図15】同一のフィルタの入力反射係数S11である。
【図16】同一のフィルタのシミュレーションされた出力反射係数S22である。
【図17】両方の信号経路から分岐をするように横分路でアースにつながれた2つの追加の1ポート共振器を備える、容量性素子としての条導体交差部を備えるフィルタ構造の特別な実施形態である。
【図18】キャパシタンス素子があるときとないときの図9のフィルタ構造のパラメータS21である。
【図19】キャパシタンス素子があるときとないときの図9のフィルタ構造の個別コンポーネントのパラメータS22と、2ポート共振器のパラメータS11とを示すスミスチャートである。
【図20】キャパシタンス素子があるときとないときの図9のフィルタ構造のパラメータS22を示すスミスチャートである。
【図21】DMSトラック、基本要素、ならびに図17に示すフィルタ構造全体についての散乱パラメータS21,S11およびS22である。
【図22】DMSトラック、基本要素、ならびに図17に示すフィルタ構造全体についての散乱パラメータS21,S11およびS22である。
【図23】DMSトラック、基本要素、ならびに図17に示すフィルタ構造全体についての散乱パラメータS21,S11およびS22である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、第1の接続部T1と第2の接続部T2の間に信号経路が延びており、この信号経路でDMSトラックDStが、信号を伝える導線区域LASを介して、リアクタンス素子REと直列に配線された本発明の第1の単純な実施形態を示している。信号を伝える導線区域から横分路QZが分岐しており、この横分路に容量性素子KEが配置されている。横分路はアースと接続されている。DMSトラックDStのアース接続部は図面を見やすくする都合から図示しておらず、その個々の変換器やリフレクタ、およびリアクタンス素子REの厳密な構成なども同じく図示していない。このフィルタ構造は両側で非対称に作動可能であり、すなわち両側で「シングルエンド型」である。
【0033】
図2aは、第1の接続部T1ではシングルエンド型であり、第2の接続部T2,T2’では対称に作動可能であるフィルタ構造の単純な実施形態を示している。それに応じてDMSトラックDStは出力側で、対称に作動可能な2つの条導体区域LAS1,LAS2を介して、2つのリアクタンス素子RE1,RE2と接続されている。対称に作動可能な両方の条導体区域LASから、それぞれアースに向かって横分路が出ており、この横分路にそれぞれ容量性素子KE1,KE2が配置されている。この場合にも、DMSトラックDStとリアクタンス素子REは任意に構成可能である。図2bは、両方の出力側の接続部T2およびT2’に対する横分路に配置された外部の並列コイルLPを整合素子として備える構造を示している。図2cは、両方の出力側の接続部T2およびT2’に対して直列につながれた2つの外部の直列コイルLSを整合素子として備える構造を示している。
【0034】
図3は、それぞれリフレクタで区切られる第1および第2のDMS部分トラックDTS1,DTS2にDMSトラックが分割された、単純な実施形態を示している。ここでは両方の対称の導体区域は、対称な信号伝達を保証するのに好適である共通の4極のリアクタンス素子REに連通している。DMS部分トラックDTSとリアクタンス素子REを接続する両方の導体区域から、同じく横分路およびそこに配置されたアースに向かう容量性素子KEがそれぞれ分岐している。この構造は、出力側でT2/T2’に関して対称に作動させることができる。入力側ではT1/T1’に関する対称の動作が可能なだけでなく、T1とT1’の接続後、DMSトラックの変換器を適切に選択すれば非対称の動作も可能である。
【0035】
図4は、ここでは3つの変換器IDT1,IDT2,IDT3を備えるDMSトラックが図示されている、本発明の別の実施形態を示している。両方の外側の変換器IDT1,IDT3は、それぞれ1つの導体区域LAS1およびLAS2を介して、共振器として構成されたそれぞれ1つのリアクタンス素子RE1,RE2と接続されている。導体区域LAS1およびLAS2から、横分路およびこれに配置された容量性素子KE1,KE2がそれぞれ分岐している。容量性素子KE1,KE2は、ここではインターディジタル構造として構成されている。図示した実施形態では、さらにこのインターディジタル構造は、DMSトラックDSTのインターディジタル変換器に対して90度だけ回転している。そ
の追加または代替として、インターディジタル構造として構成された容量性素子KE1,KE2は、DMSトラックDSTのインターディジタル変換器のフィンガ間隔よりも小さいフィンガ間隔を有することもできる。このフィルタ構造はシングルエンド型/バランス型の動作を可能にし、すなわち非対称/対称の動作形態を可能にする。
【0036】
図5には、横分路およびこれに配置された容量性素子KEが、それぞれ1つの信号を伝える導体区域LASと、DMSトラックDSTの変換器のアース接続部MAWとの間につながれた、さらに別の可能性が一般的な形態で示されている。互いに対称な両方の導体区域LASは、本例では、共振器として構成された別々のリアクタンス素子RE1,RE2と接続されている。1つの変形例では、信号を伝える両方の導体区域LASを、1つまたは2つの容量性素子が配置された横分路と接続することも可能であり、この横分路が追加的にさらにアースと接続されることはない。対称性により、このような横分路の中心部は仮想的なアースに位置している。
【0037】
図5では、容量性素子KEはそれぞれインターディジタル構造として構成されていてよい。図6に示す別の構成では、容量性素子KEは、基板上ですぐ近傍に相並んで配置された2つの金属被覆面の形態で構成されている。第1の容量性素子KE1は、信号を伝える第1の金属被覆面MFS1と、同じく金属被覆面MFMとして構成された、DMSトラックDSTの変換器のアース接続部との間に形成されている。DMSトラックのここでは中央の変換器のアース接続部MAは、すでに公知のデバイスで通常となっているように、ボンディングワイヤまたはバンプとの電気接続を成立させるための拡張された接続面として構成されているのに対して、図6の実施形態では信号を伝える導体区域は異なっており、特にアース接続部のより近くを通っており、従来式の導体区域に比べて追加的に拡張および/または延長されている。第2の容量性素子KE2は、アース接続部MAないしその金属被覆面MFMと、第2の金属被覆面MFS2をなすように拡張された信号を伝える導体区域との間に形成されている。
【0038】
図7は、導体区域に対する横分路に配置された容量性素子が、DMSトラックのインターディジタル変換器のアースに位置する導体区域を備える、横分路の第2の条導体交差の形態で構成されたフィルタ構造の実施形態を示している。ここではDMSトラックDSTの中央のインターディジタル変換器のアース接続部MAと接続された、接地されている導体区域LAMから、条導体区域LAS1およびLAS2への接続部が左と右に向かって出ている。アースに位置する導体区域LAMと、条導体区域LAS1およびLAS2との間には、短絡を回避するために誘電体DEがそれぞれ配置されており、たとえば無機酸化物層または有機レジスト層が配置されている。誘電体は、導体交差部によって形成される容量性素子のキャパシタンスを十分な大きさで設定するために、高い誘電率で構成されるのが好ましい。さらに、少なくとも条導体交差部の領域で、両方の導体区域の重なり合いを増やすために、およびこれに伴って容量性素子のキャパシタンスを高めるために、互いに交差する導体区域を拡張することが可能である。
【0039】
図8は、厳密に言えば2つのインターディジタル変換器の直列回路に相当するV字スプリット変換器を、DMSトラックが中央のインターディジタル変換器として有している実施形態を示している。この直列回路は、図面の上側に位置する延長された共通のバスバーによって行われる。V字スプリット変換器は、その上側のバスバーによってアースと接続されていてよい。それに対して、V字スプリット変換器の分離された両方の下側のバスバーでは、対称の信号ないし互いに対称な2つの電位をピックアップすることができる。
【0040】
中央のV字スプリット変換器VSの両側には、それぞれ2つのインターディジタル変換器IDT1,IDT2ないしIDT3,IDT4が配置されている。DMSトラックDSTは両方の端部のところで、それぞれ1つのリフレクタ構造により区切られている。入力
側では、すなわち定義に基づいて第1の接続部T1と接続された側では、両方のインターディジタル変換器IDT2およびIDT3は並列につながれている。出力側では、第1の信号経路について、第1のインターディジタル変換器IDT1とV字スプリット変換器VSの第1の出力部とが並列につながれており、信号を伝える1つの導体区域にまとめられている。
【0041】
これに対応する形態で、V字スプリット変換器VSの第2の出力側の接続部は第4のインターディジタル変換器IDT4と並列につながれており、信号を伝える第2の導体区域としてまとめられている。信号を伝える両方の対称な導体区域から、それぞれ1つの横分路およびこれに配置された容量性素子KEがアースにつながれている。導体区域の出力側端部は4極のリアクタンス素子へと連通しており、このリアクタンス素子は出力側で、互いに対称に作動可能である両方の第2の接続部T2,T2’と接続されている。4極のリアクタンス素子REは、ここでは2ポートSAW共振器として構成されている。
【0042】
SAWフィルタ構造の場合に通常であるように、この場合にも、ならびに他のどの実施例においても、フィルタ構造を反対方向へ作動させることが可能であり、それにより、接続部T2,T2’は入力部と接続され、接続部T1は出力部と接続されることになる。すなわちこのようなフィルタ構造は、バランス型/シングルエンド型として作動可能である。
【0043】
図9は、図8の実施形態に比べて、中央のV字スプリット変換器が延長された末端の電極フィンガFVを追加的に備えるように構成された、フィルタ構造のさらに別の実施形態を示しており、この電極フィンガは、V字スプリット変換器の共通のバスバーを、隣接するインターディジタル変換器IDT2およびIDT3の両方のそれぞれ向かい合うバスバーと接続している。このようにして追加のアース接続なしで、V字スプリット変換器VSの共通のバスバーをアース電位に位置させることができ、このことは構造の対称性を高め、それによって両方の対称の出力部で、理想的な180度の位相差からの誤差が最低限に抑えられる。容量性素子は離散型の容量性素子として、特にインターディジタル構造として、または、図6に示すようにコンデンサプレートをなすように拡張された導体区域および接続面として構成されていてよい。
【0044】
改善された整合が図18から図20に示されている。図18は、図9に示すキャパシタンス素子を備える整合された構造の散乱行列すなわち通過挙動のシミュレーションされたパラメータS21を(曲線Fa)、キャパシタンス素子を有さない整合されていない構造との比較で示している(曲線Fu)。約1900MHz付近の通過帯域の右側のエッジのところに若干の改善が認められる。
【0045】
フィルタ構造の個別素子についての散乱行列の反射パラメータS11,S22のシミュレーションされた図が、図19にスミスチャートとして示されている。整合が良好であるとき、DMSトラックの出力部におけるS22(曲線3)は、リアクタンス素子/2ポート共振器の入力部におけるパラメータS11(曲線1)に対して複素共役として振る舞い、このことはx軸での反射に相当している。1900MHz付近の強調されている値(小さい四角を参照)は、個別コンポーネントないしその反射率について劣った整合を示している。それに対して曲線3は、キャパシタンス素子を含むDMSトラックのパラメータS22を示している。曲線3では、1900MHz付近の点が共振器の曲線1の対応する点に対してほぼ複素共役に振る舞っており、すなわち、良好な整合が成立していることがわかる。
【0046】
このことは、図20に示すキャパシタンス素子を備えるフィルタ構造全体の出力反射率S22と(曲線Fa)、キャパシタンス素子がない場合とによっても明らかである(曲線
Fu)。曲線Fuの1900MHz付近の値は不整合であるのに対して、曲線Faについては原点に位置しており、最善の整合を示している。
【0047】
図10は、図11と異なり、リアクタンス素子REが2重にカスケード化された2ポート共振器として追加的に構成された、フィルタ構造のさらに別の実施形態を示している。2重カスケード化は、ここではそれぞれ1トラックのSAW2ポート共振器である2つの4極のリアクタンス素子の相前後する配列を意味している。それにより共振器の性能が高くなり、特定のケースでは、カスケード化されていない場合に比べて多い変換器フィンガ数(>100)を適用することで、体積波損失ないしリフレクタ損失が低減される。
【0048】
図11は、DMSトラックが、それぞれ3つのインターディジタル変換器を備える2つのDMS部分トラックに分割された構造を示している。このとき、両方のDMS部分トラックDTS1,DTS2の各々を通って独自の信号経路が延びており、それにより、入力側で両方の第1の接続部T1,T1’にも対称の信号を印加することができ、この信号を両方のDMS部分トラックで互いに独立して伝えることができる。出力側では、信号を伝える両方の導体区域は、ここでは4極のリアクタンス素子として構成された、特にカスケード化された2ポート共振器として構成された、リアクタンス素子と直列に接続される。あるいは、適当な変換器の向きを選択することで、両方の第1の接続部T1,T1’を非対称の接続部と接続させることもできる。
【0049】
図12は、図10に示すようなフィルタ構造が出力側で、アースにつながれた別の4極のリアクタンス素子と追加的に並列に接続された、さらに別の実施形態を示している。アースにつながれた4極の並列のリアクタンス素子REPは、やはりカスケード化された2ポート共振器として構成されていてよい。並列のリアクタンス素子RPの両方の接続部は出力側でアースと接続されるか、または、図示しているように短絡されて、選択的に、アース接続部と接続されるか、もしくは接続されない。この構造は、フィルタ構造の両方の出力側の接続部T2,T2’が、4つの変換器が直列につながれている横分路で橋渡しされる等価回路図に相当している。
【0050】
図13は、DMSトラックDStが出力側で、信号を伝える2つの導体区域を介して4極のリアクタンス素子REと接続された、フィルタ構造のさらに別の実施形態を示している。リアクタンス素子REとDMSトラックDSTの間では、両方の導体区域はそれぞれ横分路を介して、ここではSAW1ポート共振器として構成された並列の共振器とともにアースにつながれている。このとき1ポート共振器の静電容量が、容量性素子としての役目を果たす。これに加えて、このような並列の1ポート共振器は出力側のリアクタンス素子REとともに、リアクタンス素子に合わせたDMSトラックの整合を改善する基本要素を形成することができる。並列共振器の共振周波数の選択に応じて、希望する遮断帯域での選択性も高めることができるが、重要なのは、共振器がフィルタの上側の通過領域で容量式に作用することである。
【0051】
図14は、さまざまに異なるキャパシタンス値をもつ容量性素子が算出ないしシミュレーションされた、出力部に並列コイルを備える図2のフィルタ構造の行列パラメータS21の形態のシミュレーションされた通過曲線を示している。各々のキャパシタンス値に対して、出力部にある並列コイルの最善の値が適用されている。キャパシタンスが高くなるほど、並列コイルのインダクタンスは低く選択されなくてはならない。容量性素子により、特に通過帯域の上側領域と上側の遮断帯域近傍の領域で、整合が改善されていることが示されている。このことは、入力ポートでの反射を表す図15に示す行列パラメータS11を見ると、いっそう明らかに示されている。この場合にも容量性素子によって反射が低減され、それによって通過帯域の上側領域での整合が改善される。
【0052】
図15と図16に示すSパラメータS11およびS22は、フィルタ全体の入力部ないし出力部での反射を表しており、容量性素子によって通過帯域の上側領域での整合に影響を与え、望ましい形で改善できることを同じく示している。容量性素子のキャパシタンス値の厳密な選択は、たとえば帯域幅といったフィルタ構造の他の特性とのトレードオフとしての最適化において算定される。
【0053】
図17には、信号経路と横分路の好ましい導線案内をもつことを特徴とするフィルタ構造が示されている。このフィルタ構造では、1つのDMSトラックDSTが、信号を伝える2つの導体区域LAS1,LAS2を介して、それぞれ1つの直列のリアクタンス素子RES1ないしRES2と接続されており、これらが出力部と接続されている。これに加えて、信号を伝える両方の導体区域LAS1,LAS2は横分路を介して接続されており、この横分路には、2つのSAW1ポート共振器が直列につながれており、したがってこれらの共振器は並列のリアクタンス素子をなしている。これら両方の並列の1ポート共振器の間の中央部では、任意選択で、図面に示すようにアースと接続された別の横分路が分岐する。
【0054】
これら両方の並列の1ポート共振器は、その静電容量を通じて本発明に基づく形態で、直列につながれたリアクタンス素子RES1,RES2に合わせたDMSトラックの整合を改善するための容量性素子として作用する。これに加えて、これらの1ポート共振器は、直列のリアクタンス素子RESとともに基本要素をそれぞれ形成するが、ただし、この基本要素はそれ自体単独では特に上側の通過帯域の領域において、そこで容量式に作用するために著しく不整合となっている。図21から図23は、DMSトラックについて(曲線d)、および、直列および並列のリアクタンス素子から形成されるリアクタンスフィルタの基本要素ついて(曲線g)、ならびに、図17に示すフィルタ構造全体について(曲線f)、散乱パラメータS21,S11およびS22を示している。個別素子の整合が劣っているにもかかわらず、追加の外部の整合素子を使うことなく、特に反射の少ない優れた全体的整合が得られる。
【0055】
さらに別の特別な点として、図17に示すフィルタ構造は、信号を伝える導体区域LASがアース電位を有する導体区域LAMと交差する2つの条導体交差を有している。交差領域では、両方の導体区域は絶縁性層によって互いに分離されている。これらの条導体交差部は、さらに別の2つの容量性素子をなしており、これらの容量性素子は、等価回路図では信号を伝える導体区域LASに対する横分路をなしており、条導体交差部の容量性素子を介してアースにつながれている。それに応じて、フィルタ構造の信号を伝える両方の導体区域LASの各々がアースに向かう2つの横分路を有しており、これらの横分路の2つは容量性素子としての条導体交差部を有しており、2つの横分路は容量性素子としてそれぞれ1つの1ポート共振器を有している。
【0056】
図示しているフィルタ構造は、いかなる外部の整合素子も使わないですませることができ、にもかかわらず良好に整合されている。特に、動作周波数が十分に高く、特に2ギガヘルツの領域(1.6ギガヘルツ以上)にあれば、特別に良好な整合を実現できることが見出されている。
【0057】
わずかな数の実施例を参照して説明した本発明は、これらの実施例の厳密な構成に限定されるものではない。むしろ、さまざまに異なる実施例に基づくDMSトラック、リアクタンス素子、および容量性素子の特別な構成を、相互に任意に組み合わせることが可能である。常に決定的に重要なのは、容量性素子が十分なキャパシタンスを備えていることであり、そのために、各々のフィルタ構造に存在する寄生キャパシタンスだけでは十分ではない。
【0058】
DMSトラック、容量性素子、リアクタンス素子といったフィルタ構造のすべての部材は、圧電基板の表面で金属被覆構造として構成されるのが好ましい。別案として、容量性素子は基板の上面および下面の金属被覆によって構成されていてよい。リアクタンス素子は、外部のLC素子の形態で具体化されていてもよい。しかしながら、同じくSAW構造として、特にDMSトラックに類似する金属被覆を備えるSAW共振器として、基板の表面に構成されているほうが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ構造において、
入力部と出力部の間に配線された信号経路が少なくとも区域的に圧電基板の上に配置されており、
前記信号経路にはDMSトラックとリアクタンス素子が直列に配線されており、
前記DMSトラックと前記リアクタンス素子の間には、追加のキャパシタンス素子を介してアースにつながれた、前記信号経路に対する横分路が配置されているフィルタ構造。
【請求項2】
前記入力部および/または前記出力部で整合のために並列インダクタンスおよび/または直列インダクタンスが用いられる、請求項1に記載のフィルタ構造。
【請求項3】
前記リアクタンス素子はSAW共振器として構成されている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項4】
前記追加のキャパシタンス素子はインターディジタル構造として構成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項5】
前記インターディジタル構造は互いに組み合わされた櫛形電極を含んでおり、そのフィンガ間隔は前記DMSトラックの変換器の平均のフィンガ間隔よりも短い、請求項1から4までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項6】
前記インターディジタル構造は前記DMSトラックの変換器に対して回転している、請求項4または5に記載のフィルタ構造。
【請求項7】
前記インターディジタル構造は前記DMSトラックの変換器に対して90°だけ回転している、請求項6に記載のフィルタ構造。
【請求項8】
前記キャパシタンス素子は前記基板の上に配置されて絶縁性層により電気的に相互に絶縁された2つの金属被覆面によって構成されている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項9】
前記キャパシタンス素子は前記基板の上に相並んで配置された2つの金属被覆面によって構成されており、第1の前記金属被覆面は前記フィルタ構造のアース接続経路によって形成されており、前記第2の金属被覆面は前記DMSトラックと前記リアクタンス素子との間で信号を伝える接続回線のうちの1つと接続されているか、または金属被覆面をなすように拡張された接続回線をなしている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項10】
前記キャパシタンス素子は前記基板の上面と下面に配置されたそれぞれ1つの金属被覆面によって構成されている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項11】
前記リアクタンス素子と前記DMSトラックとの配線は、対称に作動可能である、互いに対称に構成された信号経路の2つの区域を含んでおり、該区域は少なくとも1つの前記キャパシタンス素子が配置された横分路と接続されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項12】
前記横分路はアースと接続されている、請求項11に記載のフィルタ構造。
【請求項13】
各々の前記信号経路は1ポート共振器をリアクタンス素子として含んでいる、請求項1から12までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項14】
前記リアクタンス素子と前記DMSトラックとの配線は互いに対称に構成されて対称に作動可能な信号経路の2つの区域を含んでおり、これら両者はリアクタンス素子を構成する2ポート共振器の第1のポートと接続されている、請求項1から12までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項15】
前記リアクタンス素子はカスケード化されたSAW共振器を含んでいる、請求項1から14までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項16】
前記DMSトラックは3つから9つの変換器を含んでいる、請求項1から15までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項17】
前記DMSトラックの中心部に配置された2つの変換器は共通のバスバーを介して相互に接続されている、請求項1から16までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項18】
前記DMSトラックの隣接するそれぞれ2つの変換器ではそれぞれ他の変換器のほうを向く末端の電極フィンガのうちの少なくとも1つが延長されており、それにより該電極フィンガが第1の変換器のバスバーを、これにすぐ隣接する第2の変換器の向かい合うバスバーと接続するようになっている、請求項1から17までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項19】
ただ1つのDMSトラックだけが設けられており、この1つのDMSトラックは5つから7つの変換器を含んでいる、請求項1から18までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項20】
少なくとも1つの前記信号経路は入力側または出力側でそれぞれ1つの横分路を介してアースにつながれており、これら横分路の各々には並列のリアクタンス素子が配置されている、請求項1から19までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項21】
前記追加のキャパシタンス素子は0.1から1.0pFのキャパシタンスを有している、請求項1から20までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項22】
前記追加のキャパシタンス素子は前記DMSトラックの変換器の平均の静電容量の0.1倍から2.0倍に相当するキャパシタンスを有している、請求項1から21までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項23】
前記追加のキャパシタンス素子の単位ファラドで表したキャパシタンスCは、項2πfRCについては0.05から1.5の間の値が生じるように設定されており、ここでfは単位ヘルツでの動作周波数であり、Rは単位Ωでの前記信号経路の基準抵抗である、請求項1から22までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項24】
前記キャパシタンス素子はSAW共振器として構成されている、請求項1から23までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項25】
前記SAW共振器は通過領域の上側3分の1では容量式に振る舞う、請求項24に記載のフィルタ構造。
【請求項26】
前記キャパシタンス素子の変換器における平均のフィンガ周期は前記DMS構造における平均のフィンガ周期よりも短い、請求項24または25に記載のフィルタ構造。
【請求項27】
中心周波数は少なくとも1.7GHzであり、相対的な3dB帯域幅は少なくとも2%であり、前記リアクタンス素子と前記DMSトラックの間で信号を伝える導体区域に対して並列にアースにつながれたSAW共振器が前記キャパシタンス部材であり、それ以外の外部のコイルは整合素子として設けられていない、請求項26に記載のフィルタ構造。
【請求項1】
フィルタ構造において、
入力部と出力部の間に配線された信号経路が少なくとも区域的に圧電基板の上に配置されており、
前記信号経路にはDMSトラックとリアクタンス素子が直列に配線されており、
前記DMSトラックと前記リアクタンス素子の間には、追加のキャパシタンス素子を介してアースにつながれた、前記信号経路に対する横分路が配置されているフィルタ構造。
【請求項2】
前記入力部および/または前記出力部で整合のために並列インダクタンスおよび/または直列インダクタンスが用いられる、請求項1に記載のフィルタ構造。
【請求項3】
前記リアクタンス素子はSAW共振器として構成されている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項4】
前記追加のキャパシタンス素子はインターディジタル構造として構成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項5】
前記インターディジタル構造は互いに組み合わされた櫛形電極を含んでおり、そのフィンガ間隔は前記DMSトラックの変換器の平均のフィンガ間隔よりも短い、請求項1から4までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項6】
前記インターディジタル構造は前記DMSトラックの変換器に対して回転している、請求項4または5に記載のフィルタ構造。
【請求項7】
前記インターディジタル構造は前記DMSトラックの変換器に対して90°だけ回転している、請求項6に記載のフィルタ構造。
【請求項8】
前記キャパシタンス素子は前記基板の上に配置されて絶縁性層により電気的に相互に絶縁された2つの金属被覆面によって構成されている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項9】
前記キャパシタンス素子は前記基板の上に相並んで配置された2つの金属被覆面によって構成されており、第1の前記金属被覆面は前記フィルタ構造のアース接続経路によって形成されており、前記第2の金属被覆面は前記DMSトラックと前記リアクタンス素子との間で信号を伝える接続回線のうちの1つと接続されているか、または金属被覆面をなすように拡張された接続回線をなしている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項10】
前記キャパシタンス素子は前記基板の上面と下面に配置されたそれぞれ1つの金属被覆面によって構成されている、請求項1または2に記載のフィルタ構造。
【請求項11】
前記リアクタンス素子と前記DMSトラックとの配線は、対称に作動可能である、互いに対称に構成された信号経路の2つの区域を含んでおり、該区域は少なくとも1つの前記キャパシタンス素子が配置された横分路と接続されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項12】
前記横分路はアースと接続されている、請求項11に記載のフィルタ構造。
【請求項13】
各々の前記信号経路は1ポート共振器をリアクタンス素子として含んでいる、請求項1から12までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項14】
前記リアクタンス素子と前記DMSトラックとの配線は互いに対称に構成されて対称に作動可能な信号経路の2つの区域を含んでおり、これら両者はリアクタンス素子を構成する2ポート共振器の第1のポートと接続されている、請求項1から12までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項15】
前記リアクタンス素子はカスケード化されたSAW共振器を含んでいる、請求項1から14までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項16】
前記DMSトラックは3つから9つの変換器を含んでいる、請求項1から15までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項17】
前記DMSトラックの中心部に配置された2つの変換器は共通のバスバーを介して相互に接続されている、請求項1から16までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項18】
前記DMSトラックの隣接するそれぞれ2つの変換器ではそれぞれ他の変換器のほうを向く末端の電極フィンガのうちの少なくとも1つが延長されており、それにより該電極フィンガが第1の変換器のバスバーを、これにすぐ隣接する第2の変換器の向かい合うバスバーと接続するようになっている、請求項1から17までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項19】
ただ1つのDMSトラックだけが設けられており、この1つのDMSトラックは5つから7つの変換器を含んでいる、請求項1から18までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項20】
少なくとも1つの前記信号経路は入力側または出力側でそれぞれ1つの横分路を介してアースにつながれており、これら横分路の各々には並列のリアクタンス素子が配置されている、請求項1から19までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項21】
前記追加のキャパシタンス素子は0.1から1.0pFのキャパシタンスを有している、請求項1から20までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項22】
前記追加のキャパシタンス素子は前記DMSトラックの変換器の平均の静電容量の0.1倍から2.0倍に相当するキャパシタンスを有している、請求項1から21までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項23】
前記追加のキャパシタンス素子の単位ファラドで表したキャパシタンスCは、項2πfRCについては0.05から1.5の間の値が生じるように設定されており、ここでfは単位ヘルツでの動作周波数であり、Rは単位Ωでの前記信号経路の基準抵抗である、請求項1から22までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項24】
前記キャパシタンス素子はSAW共振器として構成されている、請求項1から23までのいずれか1項に記載のフィルタ構造。
【請求項25】
前記SAW共振器は通過領域の上側3分の1では容量式に振る舞う、請求項24に記載のフィルタ構造。
【請求項26】
前記キャパシタンス素子の変換器における平均のフィンガ周期は前記DMS構造における平均のフィンガ周期よりも短い、請求項24または25に記載のフィルタ構造。
【請求項27】
中心周波数は少なくとも1.7GHzであり、相対的な3dB帯域幅は少なくとも2%であり、前記リアクタンス素子と前記DMSトラックの間で信号を伝える導体区域に対して並列にアースにつながれたSAW共振器が前記キャパシタンス部材であり、それ以外の外部のコイルは整合素子として設けられていない、請求項26に記載のフィルタ構造。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2010−512077(P2010−512077A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539600(P2009−539600)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002154
【国際公開番号】WO2008/067793
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002154
【国際公開番号】WO2008/067793
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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