説明

整流スイッチユニット、整流回路及びスイッチング電源装置

【課題】出力電圧が高電圧であっても同期整流を行うことが出来るとともに、コストパフォーマンスに優れている整流スイッチユニット、整流回路及びスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】整流スイッチユニット1は、ノーマリオフMOSFET6と、アノードが上記ソースに接続され、カソードが上記ドレインに接続されるボディダイオードDbと、ソースが上記ノーマリオフMOSFET6のドレインに接続され、ゲートが上記ノーマリオフMOSFET6のソースに接続されたノーマリオンMOSFET5と、一方の入力端子が上記ドレインに接続され、他方の入力端子に、電圧源50から閾値電圧−Vthが入力され、上記一方の入力端子の電圧と閾値電圧−Vthとの比較結果を示す信号を出力するセンサ2と、ノーマリオフMOSFET6のオン及びオフを指示する信号を、ノーマリオフMOSFET6に出力する制御回路30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期整流を行う整流スイッチユニット、整流回路及びスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電流を整流する方式の1つとして、同期整流方式が挙げられる(以下同期整流と称する)。同期整流では、上記電流の方向が、時間に応じて変化する回路において採用され、上記電流の方向と、上記整流する素子のオン・オフとが同期している。即ち、上記電流が所望の方向に流れる時には、上記整流素子をオンして上記電流を流す(通流する)。これに対して、上記電流が所望の方向とは逆方向に流れる時には、上記整流素子をオフして上記電流を阻止する。
【0003】
このような同期整流は、従来、出力電圧が比較的低いスイッチング電源装置に適用されていた。ここで述べる比較的低い出力電圧とは、例えば、12V〜24V程度の電圧である。上述したスイッチング電源装置に適用される同期整流の内の1つでは、整流素子であるFET(field-effect transistor:電界効果トランジスタ)のドレイン−ソース間電圧をモニタする。これにより、FETのドレイン−ソース間電圧の方向が負(ソース−ドレイン間電圧が正)でかつ、所定の閾値電圧を越えるか否かを検出する。そして、当該検出結果に応じて、FETをオン・オフする。これにより、同期整流を行っていた。
【0004】
上述したスイッチング電源装置では、出力電圧が比較的低い。よって、FETがオフしている時に、ドレイン−ソース間電圧をモニタする回路である検出回路に印加される電圧も低い。従って、上記検出回路は、高い耐圧を必要としなかった。
【0005】
一方、従来、出力電圧が比較的高いスイッチング電源装置では、同期整流を採用するメリットが無いと言われてきた。ここで述べる比較的高い出力電圧とは、例えば、200V〜500V程度の電圧である。
【0006】
しかし、近年、ワイドバンドギャップデバイス等の超オン抵抗デバイス(オン抵抗が著しく低いデバイス)が実用化されてきた。超オン抵抗デバイスの実用化に伴って、出力電圧が比較的高いスイッチング電源装置に同期整流を採用することにより、電力損失を低減することが出来るという効果を見込むことが出来るようになった。
【0007】
しかし、出力電圧に略等しい電圧であるFETのドレイン−ソース間電圧をモニタする上述した同期整流を、そのまま、出力電圧が比較的高いスイッチング電源装置に採用すると、上記検出回路を高耐圧にする必要が生じる。
【0008】
ここで、上述した出力電圧が比較的高いスイッチング電源装置における検出回路として、特許文献1では、以下の電圧検出回路が開示されている。即ち、特許文献1では、電位差の大きな電圧が出力される検出点で電圧検出を行う場合でも、検出回路を高耐圧にする必要がない電圧検出回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−278718号公報(2009年11月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6は、従来のスイッチング電源装置101の回路図である。図6のスイッチング電源装置101は、特許文献1の図6のスイッチング電源装置である。図6のスイッチング電源装置101において、出力電圧Voが200V〜500V程度の高電圧である場合に、電流の同期整流を行うと、以下の課題1,2が生じる。
【0011】
(課題1)
スイッチング素子SW52がオフすると、スイッチング素子SW52と抵抗R51との接続点の電圧が、ゼロから出力電圧Voのほぼ倍の値まで、急峻に上昇する。この高電圧を、抵抗R51と抵抗R52とで分圧する。この場合、電力効率の低下とコストの増大とを回避するために、抵抗R51の抵抗値を高くする必要がある。
【0012】
また、抵抗R51と容量Caとは、RC積分回路を構成しており、その時定数は、R51×Caである。抵抗R51の抵抗値が高いので、上記時定数が大きくなる。この結果、検出回路51に入力される電圧の波形がなまる(即ち、検出回路51に入力される電圧が立ち上がるまでに要する時間が長くなる)。よって、検出回路51を含む電圧検出回路全体としての応答速度が低下する。
【0013】
(課題2)
上述した課題1を解決するために、抵抗R51の抵抗値を小さくして時定数を小さくする場合を考える。この場合、抵抗R51に流れる電流と、抵抗R51の消費電力とが増加する。これにより、(1)電力効率が低下する。これとともに、(2)抵抗R51として、定格消費電力(電力容量)の高い抵抗を用いる必要が生じて、コストが増大する。
【0014】
図7は、従来のスイッチング電源装置102の回路図である。図7のスイッチング電源装置102は、特許文献1の図1のスイッチング電源装置であり、図6における検出回路51を含む電圧検出回路に相当する電圧検出回路113を備えている。図6のスイッチング電源装置101の電圧検出回路と、図7のスイッチング電源装置102の電圧検出回路113との間における、構成要素の対応関係の一部を以下に示す。
【0015】
第1に、図7のスイッチング素子SW102が、図6のスイッチング素子SW52に相当する。第2に、図7の抵抗R101が、図6の抵抗R51に相当する。第3に、図7の抵抗R102が、図6の抵抗R52に相当する。第4に、図7の容量Caが、図6の容量Caに相当する。第5に、図7の検出回路121が、図6の検出回路51に相当する。
【0016】
電圧検出回路113は上記課題1である応答速度の影響を比較的小さくした回路ではあるが、やはり抵抗R101と容量Caで構成される積分回路を撤廃することはできていない。このため、出力電圧が200V〜500V程度のスイッチング電源装置に適用しようとすると応答速度の影響は無視しきれない。また抵抗R101の抵抗値を小さくしようとすると上記課題2が生じる。
【0017】
また、検出回路121が低耐圧となる代わりにSW121を高耐圧とする必要があるという新たな課題もある。
【0018】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、出力電圧が高電圧であっても同期整流を行うことが出来るとともに、コストパフォーマンスに優れている整流スイッチユニット、整流回路及びスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の整流スイッチユニットは、上記課題を解決するために、ソース−ドレイン間に流れる電流を整流する第1スイッチング素子と、アノードが上記ソースに接続され、カソードが上記ドレインに接続されるダイオードと、ソースが上記第1スイッチング素子のドレインに接続され、ゲートが上記第1スイッチング素子のソースに接続されたノーマリオンの第2スイッチング素子と、一方の入力端子が上記ドレインに接続され、他方の入力端子に、電圧源から所定の閾値電圧が入力され、上記一方の入力端子の電圧と上記所定の閾値電圧との比較結果を示す信号を出力する比較部と、上記比較結果を示す信号に応じて、上記第1スイッチング素子のオン及びオフを指示する信号を、上記第1スイッチング素子に出力する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
上記発明によれば、上記第1スイッチング素子のソースと上記第2スイッチング素子のドレインとの間に印加される電圧がゼロから上昇すると、上記第2スイッチング素子のゲート−ソース間電圧には正の電圧が印加される。上記第2スイッチング素子はノーマリオンであるので、スレッショルド電圧は負の値である。つまり印加された正の電圧はこれを超えており、上記第2スイッチング素子は導通する。すると、上記ダイオードが導通して、上記ダイオードに流れる電流がゼロから増加するので、上記ダイオードの両端に発生する、上記ダイオードよる電圧降下がゼロから増加する。その結果、ある時に上記一方の入力端子に入力される電圧の絶対値が、上記所定の閾値電圧の絶対値よりも高くなり、上記比較部から出力される信号の論理が反転する。
【0021】
論理が反転した上記比較部の出力信号は、上記制御部にて上記第1スイッチング素子をオンするレベルに変換され、上記第1スイッチング素子に入力される。これにより、上記第1スイッチング素子のゲート−ソース間電圧がハイレベルとなるので、上記第1スイッチング素子がオンする。
【0022】
上記第1スイッチング素子がオンすることにより、上記第1スイッチング素子のソースから上記第2スイッチング素子のドレインに向けてソース電流を流すことが出来る。
【0023】
次に、上記第1スイッチング素子および第2スイッチング素子がオンして、上記第1スイッチング素子のソースから上記第2スイッチング素子のドレインにかけてソース電流が流れている場合を考える。この場合、上記第1スイッチング素子のオン抵抗に上記ソース電流が流れる。よって上記第1スイッチング素子のソースを正、上記第1スイッチング素子のドレインを負とする電圧であるソース−ドレイン間電圧が発生することとなる。
【0024】
上記ソース−ドレイン間電圧は、上記ソース電流が大きくなると高くなる。これに対して、上記ソース−ドレイン間電圧は、上記ソース電流が小さくなると低くなる。
【0025】
上記ソース電流がゼロ近辺まで減少し、上記一方の入力端子に入力される電圧の絶対値が、上記他方の入力端子に入力される上記閾値電圧の絶対値よりも低くなると、上記比較部から出力される信号の論理が反転する。論理が反転した上記比較部の出力信号は、上記制御部にて上記第1スイッチング素子をオフするレベルに変換され、上記第1スイッチング素子に入力される。これにより、上記第1スイッチング素子のゲート−ソース間電圧がローレベルとなるので、上記第1スイッチング素子がオフする。そして上記第1スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧が上昇し、上記第2スイッチング素子のゲート−ソース間電圧がスレッショルド電圧(負の値)を下回ると、上記第2スイッチング素子もオフする。上記第1および第2スイッチング素子がオフすることにより、上記ソース電流が阻止(遮断)される。
【0026】
以上のように、上記整流スイッチユニットでは、上記ソース電流が上記第1スイッチング素子のソースから上記第2スイッチング素子のドレインに向けて流れるタイミングと、上記第1および第2スイッチング素子のオンとが同期する整流である同期整流を行うことが出来る。
【0027】
より具体的には、上記同期整流では、上記ソース−ドレイン間電圧の絶対値が上記閾値電圧の絶対値を越えれば、上記第1および第2スイッチング素子がオンする。一方、上記ソース−ドレイン間電圧の絶対値が上記閾値電圧の絶対値を下回れば、上記第1および第2スイッチング素子がオフする。
【0028】
ここで、上記第1のスイッチング素子と上記第2スイッチング素子の接続はカスコード接続になっているため、上記第1スイッチング素子のドレインソース間には上記第2スイッチング素子のスレッショルド電圧オーダーの電圧しか印加されない。つまり、上記一方の入力端子に入力される電圧は、上記第1スイッチング素子のソースと上記第2スイッチング素子のドレインとの間に印加される高電圧よりも遥かに低い。よって、上記比較部として、高耐圧かつ高価なセンサを用いる必要が無くなる。
【0029】
従って、出力電圧が高電圧であっても同期整流を行うことが出来るとともに、コストパフォーマンスに優れている整流スイッチユニットを提供することが出来る。
【0030】
また、上記整流スイッチユニットは、従来の整流回路が備えていたRC積分回路を備えていない。よって、従来の整流回路において生じていた課題(〔発明が解決しようとする課題〕の(課題1))が生じない。
【0031】
即ち、従来の整流回路では、RC積分回路における電気抵抗の抵抗値を高くすると、時定数が大きくなる結果、電圧波形がなまって応答速度が低下していた。しかし、上記整流回路では、積分によって電圧波形がなまらないので、応答速度の低下は生じない。
【0032】
さらに、上記整流スイッチユニットは、構成上、上記一方の入力端子に入力される電圧を、抵抗により分圧しない。よって、従来の整流回路において生じていた課題(〔発明が解決しようとする課題〕の(課題2))が生じない。
【0033】
即ち、従来の整流回路では、(課題1)で問題となった時定数を小さくするために、抵抗の抵抗値を小さくすることにより、当該抵抗の消費電力が増大して、電力効率の低下と、コストの増大とを招いていた。しかし、上記整流スイッチユニットでは、抵抗に電流が流れることによる電力効率の低下、及び、定格消費電力(電力容量)の高い抵抗を用いることによるコストの増大は生じない。
【0034】
上記整流スイッチユニットでは、アノードが、上記第1スイッチング素子のソースに接続され、カソードが、上記第1スイッチング素子のドレインに接続される定電圧ダイオードをさらに備えてもよい。
【0035】
これにより、上記第1スイッチング素子のドレイン−ソース間に、過渡的な高電圧が印加されても、上記定電圧ダイオードに電流が流れることにより、上記第1スイッチング素子のドレイン−ソース間の電圧をクランプすることが出来る。従って、上記第1スイッチング素子を過渡的な高電圧から保護することが出来る。
【0036】
上記整流スイッチユニットでは、直列接続された複数のダイオードで構成されたダイオード列をさらに備え、上記直列接続された複数のダイオードの内、最終端に位置するダイオードのアノードが、上記第1スイッチング素子のドレインに接続され、上記直列接続された複数のダイオードの内、最先端に位置するダイオードのカソードが、上記第1スイッチング素子のソースに接続されてもよい。
【0037】
これにより、上記第1スイッチング素子のドレイン−ソース間に、過渡的な高電圧が印加されても、上記ダイオード列の全てのダイオードがオンして、上記第1スイッチング素子のドレイン−ソース間の電圧をクランプすることが出来る。従って、上記第1スイッチング素子を過渡的な高電圧から保護することが出来る。
【0038】
上記整流スイッチユニットでは、上記比較部は、上記他方の入力端子に入力される閾値電圧として第1電圧および上記第1電圧とは異なる第2電圧のいずれかを上記制御部からの指示に応じて選択できるものであり、上記制御部は、上記第1スイッチング素子がオフからオンになるとき、上記比較部に、上記第1電圧の選択を指示する信号を出力し、上記第1スイッチング素子がオンからオフになるとき、上記比較部に、上記第2電圧の選択を指示する信号を出力してもよい。
【0039】
上記第1スイッチング素子をオンさせる際と、上記第1スイッチング素子をオフさせる際とで、上記所定の閾値電圧の値を、個別に設定することにより、上記第1スイッチング素子のオン及びオフを、より高精度に制御することが出来る。
【0040】
上記整流スイッチユニットでは、一方の入力端子が上記第1スイッチング素子のドレインに接続された第1および第2の2つの比較部を備え、上記第1の比較部の他方の入力端子には閾値電圧として第1電圧が入力されているものであり、上記第2の比較部の他方の入力端子には閾値電圧として上記第1電圧とは異なる第2電圧が入力されているものであり、上記制御部は、上記第1スイッチング素子がオフからオンになるとき、上記第1の比較部の出力論理反転を適用して上記第1スイッチング素子に信号を出力し、上記第1スイッチング素子がオンからオフになるとき、上記第2の比較部の出力論理反転を適用して、上記第1スイッチング素子に信号を出力してもよい。
【0041】
上記第1スイッチング素子をオンさせる際と、上記第1スイッチング素子をオフさせる際とで、上記所定の閾値電圧の値を、個別に設定することにより、上記第1スイッチング素子のオン及びオフを、より高精度に制御することが出来る。
【0042】
上記整流スイッチユニットでは、上記第1スイッチング素子及び上記第2スイッチング素子は、金属・酸化物・半導体電界効果トランジスタである。これにより、各スイッチング素子のソース−ドレイン間に流れる電流を整流することが出来る。
【0043】
本発明の整流回路は、上記いずれかの整流スイッチユニットを備えているので、従来の整流回路よりもコストパフォーマンスに優れている。
【0044】
本発明のスイッチング電源装置は、上記整流回路を備えているので、従来のスイッチング電源装置よりもコストパフォーマンスに優れている。
【発明の効果】
【0045】
本発明の整流スイッチユニットは、以上のように、ソース−ドレイン間に流れる電流を整流する第1スイッチング素子と、アノードが上記ソースに接続され、カソードが上記ドレインに接続されるダイオードと、ソースが上記第1スイッチング素子のドレインに接続され、ゲートが上記第1スイッチング素子のソースに接続されたノーマリオンの第2スイッチング素子と、一方の入力端子が上記ドレインに接続され、他方の入力端子に、電圧源から所定の閾値電圧が入力され、上記一方の入力端子の電圧と上記所定の閾値電圧との比較結果を示す信号を出力する比較部と、上記比較結果を示す信号に応じて、上記第1スイッチング素子のオン及びオフを指示する信号を、上記第1スイッチング素子に出力する制御部と、を備えるものである。
【0046】
それゆえ、出力電圧が高電圧であっても同期整流を行うことが出来るとともに、コストパフォーマンスに優れている整流スイッチユニット、整流回路及びスイッチング電源装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る整流スイッチユニットの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る整流スイッチユニットにおけるノーマリオフMOSFETのオンを説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係る整流スイッチユニットにおけるノーマリオフMOSFETのオフを説明するための図である。
【図4】直列接続された複数のダイオードで構成されたダイオード列をツェナーダイオードの代わりに用いた、本発明の実施形態に係る整流スイッチユニットの構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る整流回路を適用したスイッチング電源装置の回路図である。
【図6】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【図7】従来の他のスイッチング電源装置の回路図である。
【図8】比較部を2つ備えた本発明の実施形態に係る整流スイッチユニットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の一実施形態について図1〜図5および図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0049】
(スイッチング電源装置103および整流回路20の構成)
図5は、本発明の実施形態に係る整流回路20を適用したスイッチング電源装置103の回路図である。図5のスイッチング電源装置103において、トランスの1次側の回路は、従来のスイッチング電源装置と同じ構成である。また、トランスの2次側の整流回路20には、以下で説明する整流スイッチユニット1が適用されている。
【0050】
(整流スイッチユニット1の構成)
図1は、本実施形態に係る整流スイッチユニット1の構成図である。整流スイッチユニット1は、センサ2(比較部)、信号処理回路3及びドライバ4を備えている。センサ2は、例えばコンパレータであり、反転入力端子の電圧と非反転入力端子の電圧との比較結果を示す信号を出力する。信号処理回路3及びドライバ4は、制御回路30(制御部)を構成する。制御回路30は、上記比較結果を示す信号に応じて、後述するノーマリオフMOSFET6のオン(ターンオン)及びオフ(ターンオフ)を指示する信号を、ノーマリオフMOSFET6のゲートに出力する。
【0051】
また、整流スイッチユニット1は、ノーマリオンMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor:金属・酸化物・半導体電界効果トランジスタ)5(第2スイッチング素子)を備えている。
【0052】
さらに、整流スイッチユニット1は、NチャネルのノーマリオフMOSFET6(第1スイッチング素子)を備えている。さらに、整流スイッチユニット1は、ツェナーダイオードDz(定電圧ダイオード)を備えている。そして、整流スイッチユニット1は、電圧源50を備えているが、電圧源50を備える代わりに、2つの電圧源51,52と、そのいずれかを選択するスイッチ7とを備えてもよい。ノーマリオンMOSFET5及びノーマリオフMOSFET6は、それぞれ、ソース−ドレイン間に流れる電流を整流する。
【0053】
さらに、整流スイッチユニット1には、入力ノードinと出力ノードoutとが設けられている。そして、ノーマリオフMOSFET6は、ボディダイオードDb(ダイオード)を有している。
【0054】
図1の整流スイッチユニット1において、入力ノードinと、ノーマリオフMOSFET6のソースと、ツェナーダイオードDzのアノードと、ボディダイオードDbのアノードと、ノーマリオンMOSFET5のゲートと、電圧源50の基準ポイントと、センサ2の基準ポイントは、互いに接続されている。
【0055】
センサ2の非反転入力端子(+)は、電圧源50の入力(または電圧源51,52の内、スイッチ7により選択されたいずれかの入力)に接続されている。電圧源50の入力が接続される場合は、閾値電圧−Vth(所定の閾値電圧)が入力される。電圧源51の入力が接続される場合は、閾値電圧−Vth1(第1電圧)、電圧源52の入力が接続される場合は、閾値電圧−Vth2(第2電圧)が入力される。各閾値電圧については、(閾値電圧)の項目にて後述する。
【0056】
センサ2の反転入力端子(−)には、ノーマリオンMOSFET5のソースと、ノーマリオフMOSFET6のドレインと、ツェナーダイオードDzのカソードと、ボディダイオードDbのカソードとに接続されている。
【0057】
センサ2の出力は、信号処理回路3の入力に接続されている。信号処理回路3の出力は、ドライバ4の入力に接続されている。ドライバ4の出力は、ノーマリオフMOSFET6のゲートに接続されている。なお、整流スイッチユニット1が電圧源51,52を備えている場合は、信号処理回路3の出力は、スイッチ7の制御入力にも接続されている。
【0058】
ノーマリオンMOSFET5のドレインは、出力ノードoutに接続されている。
【0059】
(整流スイッチユニット1の動作)
整流スイッチユニット1の動作を以下に説明する。なお、本実施形態に係る整流スイッチユニット1において、入力ノードinと出力ノードoutとの間の電圧を、電圧Vdsと称することとする。
【0060】
また、入力ノードinと、センサ2の反転入力端子(−)とのとの間の電圧を、電圧Vmと称することとする。電圧Vmとは即ち、ツェナーダイオードDzの両端電圧であるとともに、ノーマリオフMOSFET6のドレイン−ソース間電圧である。
【0061】
さらに、以下の説明は、閾値電圧を切り替える場合の説明であるが、図1に示すように、閾値電圧が−Vthで固定であってもよい。
【0062】
(整流スイッチユニット1のオン)
まず、図2を用いて、整流スイッチユニット1のオンについて説明する。図2は、本実施形態に係る整流スイッチユニット1のオンを説明するための図である。
【0063】
図2の整流スイッチユニット1において、ノーマリオフMOSFET6はオフしている。センサ2の非反転入力端子(+)に入力される閾値電圧は、ノーマリオフMOSFET6がオフした後に、閾値電圧−Vth2から閾値電圧−Vth1に切り替えられている。この閾値電圧の切り替えは、信号処理回路3の出力(制御回路30の出力)からスイッチ7の制御入力に入力される信号に基づいて行われる。
【0064】
ここで、整流スイッチユニット1の入力ノードinと出力ノードoutとの間に印加される電圧がゼロから上昇すると、ノーマリオンMOSFET5のゲート−ソース間電圧にはスレッショルド電圧(負の値)を超える正の電圧が印加され、ノーマリオンMOSFET5は導通する。すると、ボディダイオードDbが導通して、ボディダイオードDbに流れる電流Ifが増加し始める。これにより、ボディダイオードDbの両端に発生する、ボディダイオードDbによる電圧降下Vfが徐々に高くなる結果、センサ2の反転入力端子(−)に入力される電圧−Vfが、センサ2の非反転入力端子(+)に入力される閾値電圧−Vth1よりも低くなる。即ち、−Vf<−Vth1(絶対値比較ならばVf>Vth1)となる。すると、センサ2から出力される信号のレベルが反転する。例えば、この場合はローレベルからハイレベルへ反転するが、反転入力端子と非反転入力端子を入れ替え、ハイレベルからローレベルへ反転してもよい。レベルが反転したセンサ2の出力信号は、制御回路30によって(即ち、信号処理回路3及びドライバ4によって)適切なレベルに変換されたのち、ノーマリオフMOSFET6のゲートに入力される。これにより、ノーマリオフMOSFET6のゲート−ソース間電圧Vgsがハイレベルとなるので、ノーマリオフMOSFET6がオンする。
【0065】
なお、信号処理回路3における信号処理には、センサ2から出力される信号と、他の信号とのAND(論理積)やOR(論理和)等が含まれる。しかし、上記信号処理は、必要に応じて省略してもよい。
【0066】
ノーマリオフMOSFET6がオンすることにより、ノーマリオフMOSFET6のソース−ドレイン間に電流を流すことが出来る。整流スイッチユニット1では、ノーマリオフMOSFET6がオンすることにより、2つのMOFETが同時にオンすることとなる。よって、入力ノードin→ノーマリオフMOSFET6のソース−ドレイン間→ノーマリオンMOSFET5のソース−ドレイン間→出力ノードoutの経路で、電流(後述する図3のソース電流Is)が流れる。従って、整流スイッチユニット1では、入力ノードinから入力されて、出力ノードoutから出力される電流であるソース電流Isを、ノーマリオンMOSFET5とノーマリオフMOSFET6とで整流することが出来る。
【0067】
(整流スイッチユニット1のオフ)
次に、図3を用いて、整流スイッチユニット1のオフについて説明する。図3は、本実施形態に係る整流スイッチユニット1のオフを説明するための図である。
【0068】
上述したように、整流スイッチユニット1において、ノーマリオンMOSFET5とノーマリオフMOSFET6とが共にオンすると、ソース電流Isが流れる。
【0069】
ここで、ノーマリオフMOSFET6がオンして、ノーマリオフMOSFET6のソース−ドレイン間にソース電流が流れている場合を考える。この場合、ノーマリオフMOSFET6のオン抵抗にソース電流Isが流れる。よって、ノーマリオフMOSFET6のソースを正、ノーマリオフMOSFET6のドレインを負とする電圧であるソース−ドレイン間電圧Vsdが発生することとなる。
【0070】
ソース−ドレイン間電圧Vsdは、ソース電流Isが大きくなると高くなる。これに対して、ソース−ドレイン間電圧Vsdは、ソース電流Isが小さくなると低くなる。
【0071】
図3の整流スイッチユニット1において、ノーマリオフMOSFET6はオンしている。センサ2の非反転入力端子(+)に入力される閾値電圧は、ノーマリオフMOSFET6がオンした後に、閾値電圧−Vth1から閾値電圧−Vth2に切り替えられている。
この閾値電圧の切り替えは、信号処理回路3の出力(制御回路30の出力)からスイッチ7の制御入力に入力される信号に基づいて行われる。
【0072】
ソース電流Isがゼロ付近まで減少すると、ソース−ドレイン間電圧Vsdの極性を反転した電圧であって、センサ2の反転入力端子(−)に入力される電圧−Vsdが、センサ2の非反転入力端子(+)に入力される閾値電圧−Vth2よりも高くなる。即ち、−Vth2<−Vsd(絶対値比較ならばVth2>Vsd)となる。すると、センサ2から出力される信号のレベルが反転する。例えば、この場合はハイレベルからローレベルへ反転するが、反転入力端子と非反転入力端子とを入れ替え、ローレベルからハイレベルへ反転してもよい。レベルが反転したセンサ2の出力信号は、制御回路30によって(即ち、信号処理回路3及びドライバ4によって)適切なレベルに変換された後、ノーマリオフMOSFET6のゲートに入力される。これにより、ノーマリオフMOSFET6のゲート−ソース間電圧Vgsがローレベルとなるので、ノーマリオフMOSFET6がオフする。そしてノーマリオフMOSFET6のドレイン−ソース間電圧が上昇し、そしてノーマリオンMOSFET5のゲート−ソース間電圧がスレッショルド電圧を下回ると、ノーマリオンMOSFET5もオフする。ノーマリオフMOSFET6とノーマリオンMOSFET5とが共にオフすることにより、入力ノードinから出力ノードoutまで流れていたソース電流Isが、阻止(遮断)される。
【0073】
以上のように、整流スイッチユニット1では、ソース電流IsがノーマリオフMOSFET6のソースからノーマリオンMOSFET5のドレインに向けて流れるタイミングと、ノーマリオフMOSFET6およびノーマリオンMOSFET5のオンとが同期する整流である同期整流を行うことが出来る。
【0074】
より具体的には、上記同期整流では、ソース−ドレイン間電圧Vsdの絶対値が閾値電圧Vth(Vth1)の絶対値を越えれば、ノーマリオフMOSFET6およびノーマリオンMOSFET5がオンする。一方、ソース−ドレイン間電圧Vsdの絶対値が閾値電圧Vth(Vth2)の絶対値を下回れば、ノーマリオフMOSFET6およびノーマリオンMOSFET5がオフする。
【0075】
ここで、ノーマリオフMOSFET6とノーマリオンMOSFET5との接続はカスコード接続になっているため、ノーマリオフMOSFET6のドレインソース間にはノーマリオンMOSFET5のスレッショルド電圧と同オーダーの電圧しか印加されない。つまり反転入力端子に入力される電圧は、入力ノードinと出力ノードoutとの間にオフ時に印加される高電圧(即ち図2の電圧Vds)よりも遥かに低い。よって、センサ2として、高耐圧かつ高価なセンサを用いる必要が無くなる。
【0076】
従って、出力電圧が高電圧であっても同期整流を行うことが出来るとともに、コストパフォーマンスに優れている整流スイッチユニット1、整流回路20及びスイッチング電源装置103を提供することが出来る。
【0077】
また、整流スイッチユニット1は、従来の整流回路が備えていたRC積分回路を備えていない。よって、従来の整流回路において生じていた課題(〔発明が解決しようとする課題〕の(課題1))が生じない。
【0078】
即ち、従来の整流回路では、RC積分回路における電気抵抗の抵抗値を高くすると、時定数が大きくなる結果、電圧波形がなまって応答速度が低下していた。しかし、整流スイッチユニット1では、積分によって電圧波形がなまらないので、応答速度の低下は生じない。
【0079】
さらに、整流スイッチユニット1は、センサ2の反転入力端子(−)に入力される電圧を、抵抗により分圧しない。よって、従来の整流回路において生じていた課題(〔発明が解決しようとする課題〕の(課題2))が生じない。
【0080】
即ち、従来の整流回路では、(課題1)で問題となった時定数を小さくするために抵抗R51の抵抗値を小さくすることにより、抵抗R51の消費電力が増大して、電力効率の低下と、コストの増大とを招いていた。しかし、整流スイッチユニット1では、抵抗に電流が流れることによる電力効率の低下、及び、定格消費電力(電力容量)の高い抵抗を用いることによるコストの増大は生じない。
【0081】
(ダイオード列8)
図1の整流スイッチユニット1では、電圧VmをクランプするためにツェナーダイオードDzを用いている。これにより、ノーマリオフMOSFET6のドレイン−ソース間に、過渡的な高電圧が印加されても、ツェナーダイオードDzに電流が流れることにより、ノーマリオフMOSFET6のドレイン−ソース間の電圧のピークを抑えることが出来る。従って、ノーマリオフMOSFET6を過渡的な高電圧から保護することが出来る。
【0082】
しかし、本実施形態に係る整流スイッチユニット1において、過渡的な高電圧から保護する構成要素は、ツェナーダイオードDzに限定されない。
【0083】
即ち、図1の整流スイッチユニット1において、ツェナーダイオードDzの代わりに、直列接続された複数のダイオードで構成されたダイオード列8(多段直列ダイオード、図4参照)を用いて電圧Vmをクランプしてもよい。この場合、直列接続された複数のダイオードの内、最終端に位置するダイオード8eのアノードが、ノーマリオフMOSFET6のドレインに接続される。これとともに、直列接続された複数のダイオードの内、最先端に位置するダイオード8fのカソードが、ノーマリオフMOSFET6のソースに接続される。これにより、ノーマリオフMOSFET6のドレイン−ソース間に、過渡的な高電圧が印加されても、ダイオード列8の全てのダイオードがオンして、ノーマリオフMOSFET6のドレイン−ソース間の電圧のピークを抑えることが出来る。従って、ノーマリオフMOSFET6を過渡的な高電圧から保護することが出来る。
【0084】
(閾値電圧)
本実施形態に係る整流スイッチユニット1における閾値電圧について、以下に説明する。
【0085】
まず、整流スイッチユニット1の閾値電圧は、固定の閾値電圧−Vthであってもよい。この場合は、整流スイッチユニット1は、電圧源50を備えればよい。
【0086】
次に、整流スイッチユニット1の閾値電圧は、ノーマリオフMOSFET6がオンする際に、上記非反転入力端子に入力される閾値電圧−Vth1でもよい。同様に、整流スイッチユニット1の閾値電圧は、ノーマリオフMOSFET6がオフする際に、上記非反転入力端子に入力される閾値電圧−Vth2でもよい。この場合は、整流スイッチユニット1は、2つの電圧源51,52と、それらを選択するスイッチ7とを備えればよい。
【0087】
閾値電圧が2種類(−Vth1及び−Vth2)存在する場合の、整流スイッチユニット1の動作について、以下に説明する。
【0088】
閾値電圧が2種類存在する整流スイッチユニット1では、制御回路30は、ノーマリオフMOSFET6をオフさせた後に、閾値電圧を、閾値電圧−Vth2から閾値電圧−Vth1へ切り替える信号を、信号処理回路3の出力からスイッチ7の制御入力へ出力する。
【0089】
同様に、制御回路30は、ノーマリオフMOSFET6をオンさせた後に、閾値電圧を、閾値電圧−Vth1から閾値電圧−Vth2へ切り替える信号を、信号処理回路3の出力からスイッチ7の制御入力へ出力する。
【0090】
以上のように、整流スイッチユニット1では、電圧源は、閾値電圧−Vth1および閾値電圧−Vth1とは異なる閾値電圧−Vth2を出力するもの、即ち2つの電圧源51,52であってもよい。2つの電圧源51,52は、外部からの指示に応じて、スイッチ7による選択で閾値電圧−Vth1および閾値電圧−Vth2のいずれかを、閾値電圧−Vthとして出力するものである。制御回路30は、ノーマリオフMOSFET6のオフを指示する信号を出力した後、スイッチ7に、閾値電圧−Vth1の出力を指示する信号(即ち電圧源51を選択する信号)を出力してもよい。同様に、制御回路30は、ノーマリオフMOSFET6のオンを指示する信号を出力した後、スイッチ7に、閾値電圧−Vth2の出力を指示する信号(即ち電圧源52を選択する信号)を出力してもよい。
【0091】
ノーマリオフMOSFET6をオンさせる際と、ノーマリオフMOSFET6をオフさせる際とで、閾値電圧の値を、個別に設定することにより、ノーマリオフMOSFET6のオン及びオフを、より高精度に制御することが出来る。
【0092】
(比較部を2つ備えた整流スイッチユニット1’)
図8は、比較部を2つ備えた本発明の実施形態に係る整流スイッチユニット1’の構成図である。整流スイッチユニット1’では、一方の入力端子がノーマリオフMOSFET6のドレインに接続されたセンサ2,2’(第1および第2の比較部)を備えている。センサ2の他方の入力端子には、閾値電圧として、閾値電圧−Vth1が入力されているものであり、センサ2’の他方の入力端子には、閾値電圧として、閾値電圧−Vth1とは異なる閾値電圧−Vth2が入力されている。
【0093】
制御回路30は、ノーマリオフMOSFET6がオフからオンになるとき、センサ2の出力論理反転を適用して、ノーマリオフMOSFET6に信号を出力する。また、ノーマリオフMOSFET6がオンからオフになるとき、センサ2’の出力論理反転を適用して、ノーマリオフMOSFET6に信号を出力する。
【0094】
ノーマリオフMOSFET6をオンさせる際と、ノーマリオフMOSFET6をオフさせる際とで、閾値電圧の値を個別に設定することにより、ノーマリオフMOSFET6のオン及びオフを、より高精度に制御することが出来る。
【0095】
〔適用例〕
上述した整流スイッチユニット1の整流回路およびスイッチング電源装置への適用について、以下に説明する。前述の通り、図5は、本発明の実施形態に係る整流回路20を適用したスイッチング電源装置103の回路図である。トランスの1次側の回路は従来のスイッチング電源装置と同じ構成であり、トランスの2次側の整流回路20には、以上で説明した整流スイッチユニット1が適用されている。
【0096】
図5のスイッチング電源103において、トランス2次側巻線の一端と、整流器スイッチユニット1の出力ノードoutとが接続されている。また、出力キャパシタの正側端子と、トランス2次側巻線の他端とが接続されている。さらに、出力キャパシタの負側端子と、整流スイッチユニット1の入力ノードinとが接続されている。
【0097】
出力キャパシタの両端電圧が出力電圧Voである。
【0098】
トランス2次側巻線の両端電圧が両端電圧Vtrである。両端電圧Vtrはトランス2次側巻線の他端を基準とする向きを正と置く。
【0099】
両端電圧Vtrが正の場合、整流スイッチユニット1における電圧Vdsは、出力電圧Voと両端電圧Vtrとの和の電圧になる。
【0100】
また、両端電圧Vtrは、出力電圧Voに略等しい電圧である。
【0101】
よって、出力電圧Voが、24V程度の低電圧であった場合は、整流スイッチユニット1の電圧Vdsは、50V程度となる。
【0102】
これに対して、出力電圧Voが、250V程度の高電圧であった場合は、整流スイッチユニット1の電圧Vdsは、500V程度となる。
【0103】
ここで、図1の整流スイッチユニット1に戻る。
【0104】
入力ノードinと、センサ2の反転入力端子(−)とのとの間の電圧である電圧Vmは、過渡状態を含めても、上限は10V程度(ノーマリオンMOSFET5のスレッショルド電圧と同オーダー)である。何故ならば、ノーマリオフMOSFET6とノーマリオンMOSFET5とがカスコード接続されているためである。
【0105】
ノーマリオフMOSFET6がオフすると、そのドレイン−ソース間電圧が上昇する。ノーマリオフMOSFET6のドレイン−ソース間電圧は、ノーマリオンMOSFET5のゲート−ソース間電圧を反転した電圧(ソース−ゲート間電圧)である。従って、この電圧の大きさ(絶対値)がノーマリオンMOSFET5のスレッショルド電圧にまで達した瞬間、ノーマリオンMOSFET5もオフする。この結果、出力電圧Voが250V程度の高電圧であっても、電圧Vmの上限は、ノーマリオンMOSFET5のスレッショルド電圧と同オーダーである10V程度となる。
【0106】
ノーマリオフMOSFET6を保護するためのダイオードであって、定電圧ダイオードであるツェナーダイオードDzの定電圧Vzは、10V程度である。ノーマリオフMOSFET6の耐圧は、40V〜50Vである。
【0107】
以上のように、本実施形態に係る整流スイッチユニット1は、出力電圧が高電圧であるスイッチング電源装置103に適用する場合でも、センサ2の耐圧を高くする必要は無い。よって、従来のスイッチング電源装置よりもコストパフォーマンスに優れたスイッチング電源装置を提供することが出来る。
【0108】
なお、本実施形態に係る整流スイッチユニット1が適用されるスイッチング電源装置が、スイッチング電源装置103に限定されないことは、言うまでも無い。本実施形態に係る整流スイッチユニット1は、出力電圧が高電圧であるとともに、同期整流が求められるスイッチング電源装置(DCDC変換装置のみでなくインバータも含む)に適用することが出来る。
【0109】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の整流スイッチユニットは、スイッチング電源装置に適用することが出来る。特に、出力電圧が250V程度の高電圧であり、同期整流が行われるスイッチング電源装置に好適に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0111】
20 整流回路
1,1’ 整流スイッチユニット
2 センサ(比較部、第1の比較部)
2’ センサ(第2の比較部)
3 信号処理回路
4 ドライバ
5 ノーマリオンMOSFET(第2スイッチング素子)
6 ノーマリオフMOSFET(第1スイッチング素子)
7 スイッチ
8 ダイオード列
8e 最終端に位置するダイオード
8f 最先端に位置するダイオード
30 制御回路(制御部)
50〜52 電圧源
103 スイッチング電源装置
Db ボディダイオード(ダイオード)
Dz ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)
If 電流
Is ソース電流
Vds 電圧
Vf 電圧降下
Vgs ゲート−ソース間電圧
Vm 電圧
Vo 出力電圧
Vsd ソース−ドレイン間電圧
Vtr 両端電圧
Vz 定電圧
in 入力ノード
out 出力ノード
−Vf 電圧
−Vsd 電圧
−Vth 閾値電圧(所定の電圧)
−Vth1 閾値電圧(第1電圧)
−Vth2 閾値電圧(第2電圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース−ドレイン間に流れる電流を整流する第1スイッチング素子と、
アノードが上記ソースに接続され、カソードが上記ドレインに接続されるダイオードと、
ソースが上記第1スイッチング素子のドレインに接続され、ゲートが上記第1スイッチング素子のソースに接続されたノーマリオンの第2スイッチング素子と、
一方の入力端子が上記ドレインに接続され、他方の入力端子に、電圧源から所定の閾値電圧が入力され、上記一方の入力端子の電圧と上記所定の閾値電圧との比較結果を示す信号を出力する比較部と、
上記比較結果を示す信号に応じて、上記第1スイッチング素子のオン及びオフを指示する信号を、上記第1スイッチング素子に出力する制御部と、を備えることを特徴とする整流スイッチユニット。
【請求項2】
アノードが、上記第1スイッチング素子のソースに接続され、カソードが、上記第1スイッチング素子のドレインに接続される定電圧ダイオードをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の整流スイッチユニット。
【請求項3】
直列接続された複数のダイオードで構成されたダイオード列をさらに備え、
上記直列接続された複数のダイオードの内、最終端に位置するダイオードのアノードが、上記第1スイッチング素子のドレインに接続され、
上記直列接続された複数のダイオードの内、最先端に位置するダイオードのカソードが、上記第1スイッチング素子のソースに接続されることを特徴とする請求項1に記載の整流スイッチユニット。
【請求項4】
上記比較部は、上記他方の入力端子に入力される閾値電圧として第1電圧および上記第1電圧とは異なる第2電圧のいずれかを上記制御部からの指示に応じて選択できるものであり、
上記制御部は、
上記第1スイッチング素子がオフからオンになるとき、上記比較部に、上記第1電圧の選択を指示する信号を出力し、
上記第1スイッチング素子がオンからオフになるとき、上記比較部に、上記第2電圧の選択を指示する信号を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の整流スイッチユニット。
【請求項5】
一方の入力端子が上記第1スイッチング素子のドレインに接続された第1および第2の2つの比較部を備え、
上記第1の比較部の他方の入力端子には閾値電圧として第1電圧が入力されているものであり、
上記第2の比較部の他方の入力端子には閾値電圧として上記第1電圧とは異なる第2電圧が入力されているものであり、
上記制御部は、上記第1スイッチング素子がオフからオンになるとき、上記第1の比較部の出力論理反転を適用して上記第1スイッチング素子に信号を出力し、上記第1スイッチング素子がオンからオフになるとき、上記第2の比較部の出力論理反転を適用して、上記第1スイッチング素子に信号を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の整流スイッチユニット。
【請求項6】
上記第1スイッチング素子及び上記第2スイッチング素子は、金属・酸化物・半導体電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の整流スイッチユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の整流スイッチユニットを備えることを特徴とする整流回路。
【請求項8】
請求項7に記載の整流回路を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−205356(P2012−205356A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66135(P2011−66135)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】