説明

文字入力方法及びそれを用いるキーボード

【課題】疲労を防止しつつ高速入力が可能で、更に学習が容易な文字入力方式及びそれを用いるキーボードを提供する。
【解決手段】第1発明では、標準キーボードの各段の文字キーの選択を親指キーと他の指キーとの同時打鍵により実現する。第2発明では、たとえば片手の指の2キー同時打鍵による子音選択と、その後のもう片方の指による1キー打鍵による母音選択とにより日本語のローマ字入力を実現する。これらの発明によれば、キー数の削減と指の移動防止とを実現できるため、疲労が少なく、かつ、習熟後の入力が非常に高速となる。また、学習が容易なため、標準キーボード習熟者であっても移行が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字入力方式及びそれを用いるキーボードの改良に関する。本発明はたとえば英字(アルファベット)や日本語文字などを入力するために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
少ないキー数で他種類の文字を入力することができる種々のキーボード入力法(キー数低減型入力法とも称する)がキーボードの小型化のために提案されている。
同一キーの連続打鍵回数の変更により複数の文字を入力する方法(同一キー連続打鍵方式又は単に連続打鍵方式とも言う)が携帯電話に広く採用されている。しかし、アルファベット又は日本字の入力のために同一キーを複数回押すことは入力速度が遅く疲れるという欠点がある。
複数のキー打鍵の組み合わせの変更により複数の文字を入力する方式(複数キー組み合わせ方式)として、複数キー同時打鍵方式(同時打鍵方式とも言う)と複数キー逐次打鍵方式(逐次打鍵方式とも言う)とが知られている。
【0003】
同時打鍵方式は、同時に押される複数のキーの組み合わせにより文字を入力する。同時打鍵方式の一つの問題は、この組み合わせをキーボードの各キートップ面に刻印できないため複数キーの組み合わせと文字との関係の学習が難しいことにある。
逐次打鍵方式は、たとえば5個の母音と10個以上の子音との行列テーブルにまず1乃至複数の子音を入力し、その後で一つの母音を入力することにより日本字を出力する日本語ローマ字式入力法として広く使用されている。しかしながら、文字入力のために約20個のキーを必要とするため、キーボードの小型化には限界がある。
【0004】
特許文献1は、日本語入力において、5つの母音キーと多数の子音キーと一つの母音確定キーとをもち、一方の手による母音キーの打鍵による母音入力時に他方の手により母音確定キーを押すことを提案している。特許文献1を含む多数のキー数節約型文字入力法が過去に提案されている。しかし、携帯電話の文字入力に用いられる連続打鍵方式および日本語ローマ字入力に用いられる逐次打鍵方式を除いてそれらはほとんど普及していない。携帯電話の連続打鍵方式は入力能率が悪い欠点があり、日本語ローマ字入力法は日本字以外の文字(たとえば英字)の入力には利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−138996
【発明の概要】
【0006】
仕事及び趣味の分野で、キーボードによる文字入力の比重は益々増大している。このため、高速入力可能で疲労しにくく、しかも携帯容易な小型キーボードで入力可能なキー数低減型入力法は潜在的に大きな需要が存在する。
しかしながら、たとえ高速入力可能で疲労しにくく、しかも携帯容易な小型キーボードで入力可能な入力法が開発されたとしても、その普及は学習が容易でなければその普及は困難であることは、多数の特殊キーボードの開発の歴史が証明している。
【0007】
学習が容易でなければ、既に習熟している標準キーボードから新しい入力法への移動を考慮することはない。従来のキー数低減型タイピング入力法は、この容易な学習について考慮が不足していた。このため、各国毎に標準キーボードを用いた文字入力が広く用いられている。一般的に、これらの標準キーボードはQWRTY配列キーボード又はその変形である。たとえば、英語使用国ではQWRTY配列キーボードが、日本ではJISキーボードが、フランスではAZERTY配列キーボードが、ドイツではQWRTZ配列キーボードが標準キーボードとして用いられている。
キー数節約方式キーボードの普及の条件について更に考察する。
第1の条件は、「ブラインドタッチタイピングの学習が容易なこと」である。第2の条件は、「ブラインドタッチ学習後の文字入力速度が、標準キーボードのブラインドタッチタイピングのそれより格段に速く、しかも疲労が少ない」ことである。この利点が無ければ、キーボード使用者は、慣れている標準キーボードから新しい入力方式に移行したいとは思わない。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、従来よりも文字入力が格段に速くかつ容易であり、かつ、学習が容易な文字入力方法及びこの文字入力方式に好適なキーボードを提供することをその目的としている。つまり、本発明は、「クイックラーニング」及び「イージータイピング」の点で従来方式よりも優れた文字入力方式を提供することをその目的としている。また、本発明は「クイックラーニング」及び「イージータイピング」のが可能なうえ携帯が容易な文字入力方法及びそれを用いるキーボードを提供することをその目的としている。
文字入力に関する2つの独立発明が開示される。第1の発明は、英数字の入力法に関し、第2の発明は日本語のローマ字入力法による日本字の入力法に関する。これら2つの入力法は類似しており、かつ、同一キーボードで適宜切り替え使用されるため、一緒に説明される。
【0009】
第1発明は、左上に配列されて親指以外の左手の4つの指により打鍵される左上キー1〜5と、左下に配列されて左親指により打鍵される左下キー11と、右上に配列されて親指以外の右手の4つの指により打鍵される右上キー6〜0と、右下に配列されて左親指により打鍵される右下キー12とをもつキー装置を準備し、標準キーボードの上段の10個の文字である上段文字の一つ、標準キーボードの中段の10個の文字である中段文字の一つ、標準キーボードの下段の10個の文字である下段文字の一つを順番にキー1〜0に割付け、キー1〜0の一つの打鍵である単独キー打鍵モードでの単独キー打鍵と、キー1〜0の一つとキー11とをほぼ同時に打鍵する第1連続打鍵モードでの2キー連続打鍵と、キー1〜0の一つとキー12とをほぼ同時に打鍵する第2連続打鍵モードでの2キー連続打鍵とにより、前記上段文字、中段文字及び下段文字の選択を行うことをその特徴としている。
【0010】
すなわち、この発明は、3段に配列された標準キーボード(英字使用国ではQWRTY配列キーボード)の文字キー配列の各段の選択を左右の親指による段選択キー(11、12)により行い、親指以外の8つの指により10個の文字選択キーにより行い、かつ、段選択キー(11、12)と文字選択キーとの打鍵を連続打鍵によりすなわち時間的に重複して行う。
本発明の第1の効果は、文字入力において指移動が無いため、長文入力でも指の疲労が小さく、しかも高速に入力できることである。本発明の第2の効果は、標準キーボードと本質的に同じ文字キー配列を採用し、親指以外のキーに対応する合計8本の指が打鍵すべき文字が標準キーボードとほとんど同じであるため学習が非常に容易であることである。本発明の第3の効果は、キー数が少ないため、たとえば携帯電話などの小型キーボードに適用できることである。
【0011】
好適な態様において、前記単独キー打鍵モードにより前記中段文字を出力し、前記キー1〜5の打鍵とほぼ同時にキー11を同時打鍵し、前記キー6〜0の打鍵とほぼ同時にキー12を同時打鍵することにより前記上段文字及び前記下段文字のいずれか一方を出力し、前記キー1〜5の打鍵とほぼ同時にキー12を同時打鍵し、前記キー6〜0の打鍵とほぼ同時に前記キー11を同時打鍵することにより前記上段文字及び前記下段文字のいずれか他方を出力する。この態様によれば、たとえば比較的使用頻度が高い段の文字を同じ手の親指との同時打鍵で入力できるので疲労が少ない。
好適態様において、前記単独キー打鍵モードにより前記中段文字を出力し、前記第1連続打鍵モードにより前記上段文字及び前記下段文字のいずれか一方を出力し、前記第2連続打鍵モードにより、前記上段文字及び前記下段文字のいずれか他方を出力する。この態様によれば、キー11、12の一方を下段選択キーとし、他方を上段選択キーとすることができるため、学習が容易となる。
【0012】
好適態様において、キー1〜4のうちの2キーの同時押し、及び、キー7〜0のうちの2キーの同時押しにより、数字又は符号を出力する。つまり、親指以外の2キーの同時押しにより数字又は符号をキー数を増加することなく高速入力することができ、疲労も少ない。キーボードも更に小型化することができる。
好適態様において、キー11、12の両方をあらかじめ押した状態にてキー1〜0を押すことによりもしくはキー11、12とキー1〜0との3キー同時打鍵により、数字又は符号を出力する。これにより、キー数を増加することなく、数字又は符号を高速入力することができ、疲労も少ない。キーボードも更に小型化することができる。
好適態様において、キー11又は12を2回連続打鍵した後、キー1〜0の一つを押すことにより、数字又は符号を出力する。これにより、キー数を増加することなく、数字又は符号を高速入力することができ、疲労も少ない。キーボードも更に小型化することができる。
【0013】
第2発明は、左上に配列されて親指以外の左手の4つの指により打鍵される4つの左上キーと、左下に配列されて左親指により打鍵される一つの左下キーと、右上に配列されて親指以外の右手の4つの指により打鍵される4つの右上キーと、右下に配列されて左親指により打鍵される一つの左下キーとを準備し、前記左(又は右)上の4つのキー及び左(又は右)下の1つのキーの1回打鍵又は2キー同時打鍵により日本語出力用の少なくとも14個の英子音のうちの必要な子音を出力した後、前記右(又は左)上の4つのキー又は右(左)下の1つのキーの1回打鍵により5つの母音のうちの必要な母音を出力することにより、前記子音と前記母音との組み合わせにより定義される日本字を出力することをその特徴としている。
【0014】
すなわち、この発明は、日本語のローマ字入力の実行に際して、14又はそれ以上の子音の選択を片手の5本の指の1キー打鍵及び2キー同時打鍵により行う。また、母音をもう一つの手の5本の指の単独打鍵により行う。このようにすれば、疲労が少なく、高速入力が可能となる。また、ほとんどの種類の子音の入力を指を動かすことなく行うため、従来のように多数の子音キーの位置を学習する必要がない。更に、キー数が少ないため、携帯電話搭載キーボードのような小型のキーボードを実現することができる。なお、この第2発明の日本字入力法と既述した第1発明の英数字入力法と一緒に実施することにより、日本字及び英数字入力の入力において、上記効果を実現することができる。
【0015】
好適態様において、左(又は右)上の4つのキーの打鍵により子音(K、S、T、H)を出力し、左(又は右)下の1つのキーの打鍵により子音(N)を出力し、左(又は右)上の4つのキーと左(又は右)下の1つのキーとの同時打鍵により子音(G、Z、D、B)を出力し、左(又は右)上の4つのキーのうち互いに隣接する2キーの同時打鍵により子音(M、R、W)を出力する。
このようにすれば、濁音用子音キー(G、Z、D、B)とそれと類似し、しかも日本語50音テーブルの最初の4列を構成し、使用頻度が高い清音用子音キー((K、S、T、H)を4本の指に振り分けることができ、学習が容易で各指の疲労が少ない。また、「ん(日本字nn)」を入力するための2回連続打鍵を力が強い親指で行えるため、指の疲労が少ない。次に使用頻度が高い子音(M、R、W)を互いに隣接する2キーの同時打鍵により行うため、打鍵が容易となる。つまり、隣接2指は同時に動かし易いため、学習が容易であり、同時打鍵における疲労が少ない。
【0016】
好適態様において、左(又は右)上の4つのキーのうち互いに隣接しない2キーの同時打鍵により子音(P、F)を出力する。互いに隣接しない2指の同時打鍵は学習が遅く、かつ、疲労を伴うが子音(P、F)の入力頻度が小さいため、問題は生じない。
好適態様において、打鍵により子音Yを出力するキーであるキー(Y)は、前記左(又は右)上の4つのキー、前記左(又は右)下の1つのキー、前記右(又は左)上の4つのキー及び前記右(左)下の1つのキーのいずれでもない他のキーにより構成される。すなわち、ぎゃ(日本字GYA)、じゃ(日本字ZYA)、ぢゃ(日本字DYA)、びゃ(日本字BYA)、ぴゃ(日本字PYA)、及びそれらのAをU又はOに置換した日本字(以下、拗音とも言う)は、子音と母音との間に子音Yを入力する必要がある。この子音Yの入力は、左手又は右手のいずれで行ってもよく、あるいは、子音入力側の2キーの同時打鍵で行うこともできる。
【0017】
好適態様において、前記キー(Y)は、母音(I)又は母音(E)を出力するキーに隣接して配置される。たとえば、キー位置変更ソフトを用いて標準キーボード(QWRTY配列キーボード)のキー(I)の直下のキーをキー(Y)として用いることができる。このようにすれば、指の疲労が少なく、かつ、高速入力が可能である。
好適態様において、逐次打鍵される複数のキーの逐次打鍵結果としての所定のキーシーケンスとそれに対応する所定の日本字との間の関係を表すテーブルを準備し、子音を出力するキー(Key1)と、子音を出力するキー(Key2)と、母音を出力するキー(Key3)がをこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する所定の日本字(JP1)との関係を示す定義式1を前記テーブルに書き込み、前記キー(Key2)と、前記キー(Key1)と、前記キー(Key3)とがこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する前記所定の日本字(JP1)との関係を示す定義式2を前記テーブルに書き込み、前記2つのキー(Key1、Key2)の2キー同時打鍵と、その直後の前記キー(Key3)との逐次打鍵結果を前記テーブルに代入して前記所定の日本字(JP1)を出力する。このようにすれば、上記した2キー同時打鍵を容易に実現することができる。
【0018】
好適態様において、子音Yを出力するキー(KeyY)を準備し、前記キー(Key1)と、前記(Key2)と、前記キー(KeyY)と、前記キー(Key3)とがこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する所定の日本字(JP2)との関係を示す定義式3を前記テーブルに書き込み、前記キー(Key2)と、前記キー(Key1)と、前記キー(KeyY)と、前記キー(Key3)とがこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する前記所定の日本字(JP2)との関係を示す定義式4を前記テーブルに書き込み、前記キー(Key1、Key2)の2キー同時打鍵と、その直後の前記キー(KeyY)とキー(Key3)との逐次打鍵結果を前記テーブルに代入して前記所定の日本字(JP2)を出力する。
このようにすれば、上記した中間に子音Yを含むキーシーケンスにおける2キー同時打鍵を容易に実現することができる。
好適態様において、前記テーブルは、逐次入力されるローマ字のキーシーケンスを日本字に変換するために用いられる日本語のローマ字入力法をコンピュータにより演算するためのプログラムであるIMEのローマ字変換テーブルからなる。このようにすれば、たとえば日本語のローマ字入力のためのIME(日本語入力ソフト)に設けられているキーシーケンス定義用テーブル(一般にローマ字テーブルとも呼ばれる)を書き換えることにより、上記した2子音キー同時打鍵を容易に実現することができる。
【0019】
独立発明1又は2の文字入力法を実施するためのキーボードの好適な態様において、文字入力のための左上キー1〜5及び左下キー11が配置されるマウス状の左キーボード(201)と、文字入力のための右上キー6〜0と及び右下キー12が配置されるマウス状の右キーボード(202)とを有し、左キーボード(201)は、掌が載せられるグリップ(203)と、左上キー1〜5及び左下キー11が設けられてグリップ(203)から延在するプレート(204)を有し、右キーボード(202)は、掌が載せられるグリップ(205)と、右上キー6〜0及び右下キー12が設けられてグリップ(205)から延在するプレート(206)を有し、左キーボード(201)及び右キーボード(202)の少なくとも一方は、マウスを兼ねる。
このキーボードは、文字入力中にカーソルを移動しても指を文字入力用のノーマルポジションから動かす必要がないため、高速入力が可能となる。また、キー数が少ないため、マウスを兼ねるキーボードを小型化することができ、このマウス兼キーボードの移動が容易となる。
好適な態様において、左キーボード(201)のグリップ(203)は、左手の掌で押すマウスの左クリックのためのプッシュスイッチ(207)を有し、右キーボード(202)のグリップ(205)は、右手の掌で押すマウスの右クリックのためのプッシュスイッチ(208)を有する。これにより、左クリック動作及び右クリック動作を簡単に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の文字入力法に用いられるキーボードを示す模式図である。
【図2】標準(QWRETY)配列の中段文字入力のためのキー配列を示す図である。
【図3】標準(QWRETY)配列の上段文字入力のためのキー配列を示す図である。
【図4】標準(QWRETY)配列の下段文字入力のためのキー配列を示す図である。
【図5】標準(QWRETY)配列の記号又はファンクションキーの入力のためのキー配列を示す図である。
【図6】実施例2、3で用いる日本字入力のための子音及び母音を出力する状態を示す図である。
【図7】図6のキー配列におけるキーYの位置を変更した図である。
【図8】図6のキー配列におけるキーYの位置を変更した図である。
【図9】図6のキー配列におけるキーYの位置を変更した図である。
【図10】図6のキー5,6の位置を変更した図である。
【図11】図6のキー5,6の位置を変更した図である。
【図12】キーKとキーSとの2字同時打鍵において、キーKが先行する場合を示すタイミングチャートである。
【図13】キーKとキーSとの2字同時打鍵において、キーSが先行する場合を示すタイミングチャートである。
【図14】実施例1〜3の文字入力法を用いる実施例4の携帯電話の模式平面図である。
【図15】実施例5のキーボードの模式平面図である。
【図16】図15のA−A線矢視模式断面図である。
【図17】図15のB−B線矢視模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の文字入力方法及びそれを用いるキーボードの好適な実施形態を以下に説明する。
(実施例1)
実施例1の文字入力方式を以下に説明する。キーボードのキー配列を図1に示す。100は英字(ローマ字とも言う)、日本字、数字を入力するためのキーボードである。なお、ここで言う英字や日本字は英文や日本文に付随する符号を含む。0〜9、11、12はキーボードの上面に昇降可能に支持されるキートップ(キーとも言う)である。キー0〜9、11、12は、周知のようにスプリングにより上方へ軽く付勢されている。
キー0〜9は左右一列に配列されている。キー11、12は、キー1〜9、0よりも手前側に位置して左右一列に配列されている。5本の左指はキー1〜4、11上に置かれ、5本の右指はキー7〜9、0、12上に置かれる。左親指はキー11上に、右親指はキー12上に置かれる。残りの左指はキー1〜4上に、残りの右指はキー7〜9、0上に置かれる。キー4上の人差し指を移動してキー5が打鍵され、キー7上の人差し指を移動してキー6が打鍵される。
【0022】
このキーボードのキー配列は、たとえば標準キーボードのキー群の一部により代用されることができる。たとえば、キー1〜0は、標準キーボードの文字入力用の3段のキー群のうちの中段のキーにより代用でき、キー11、12はSPACEキーの左右両側のキーにより代用できる。
小指及び親指も左右に動き易いため、キー1の左側、キー0の右側、キー11の左右、キー12の左右にもキーが配置されている。好適には、標準キーボードの同様にキー1の左側にはSHIFTキー又はCAPSLOCKキーが配置され、キー0の右側にはENTERキーが配置される。
図1では、文字入力以外に用いられるこれらのキーの図示は省略されている。
【0023】
(英字の入力モード)
まず、英字(ローマ字又はアルファベットとも呼ばれる)の入力モードを説明する。この実施例では、英字の入力において、QWRETY配列を利用する。QWRETY配列では、英字は3段(上段、中段、下段)に配置されている。
(1)QWRETY配列の中段文字の入力
QWRETY配列の10個の中段文字(A、S、D、F、G、H、J、K、L、;)の入力方法を図2を参照して説明する。キー1〜9、0はQWRETY配列の中段文字(A、S、D、F、G、H、J、K、L、;)と同じ位置に配列される。したがって、キー1〜9、0を押すことにより、QWRETY配列の中段文字は直接に入力される。
【0024】
(2)QWRETY配列の上段文字の入力
QWRETY配列の10個の上段文字(Q、W、E、R、T、Y、U、I、O、P)の入力方法を図3を参照して説明する。文字Qはキー1、11の同時押しにより入力される。文字Wはキー2、11の同時押しにより入力される。文字Eはキー3、11の同時押しにより入力される。文字Rはキー4、11の同時押しにより入力される。文字Tはキー5、11の同時押しにより入力される。つまり、4本の左指と左親指との同時押しにより、文字(Q、W、E、R、T)が入力される。文字Yはキー6、12の同時押しにより入力される。文字Uはキー7、12の同時押しにより入力される。文字Iはキー8、12の同時押しにより入力される。文字Oはキー9、12の同時押しにより入力される。文字Pはキー0、12の同時押しにより入力される。つまり、4本の右指と右親指との同時押しにより、文字(Q、W、E、R、T)が入力される。図3において、各上段キーとキー11又は12とを結ぶ直線は、同時押しされる2キーの組み合わせを示す。
【0025】
すなわち、QWRETY配列の上段文字は、親指と、この親指と同じ側の4本の左指との同時押しにより入力される。親指の筋肉は他の指のそれよりも強い。更に、親指は他の指より離れているため、親指を押す動作は、掌を親指側に傾ける動作によりアシストされることができる。その結果、親指打鍵頻度の増大は大きな問題とはならない。
【0026】
(3)QWRETY配列の下段文字の入力
QWRETY配列の10個の下段文字(Z、X、C、V、B、N、M、,./)の入力方法を図4を参照して説明する。文字Zはキー1、12の同時押しにより入力される。文字Xはキー2、12の同時押しにより入力される。文字Cはキー3、12の同時押しにより入力される。文字Vはキー4、12の同時押しにより入力される。文字Bはキー5、12の同時押しにより入力される。つまり、4本の左指と右親指との同時押しにより、文字(Z、X、C、V、B)が入力される。文字Nはキー6、11の同時押しにより入力される。文字Mはキー7、11の同時押しにより入力される。符号(,)はキー8、11の同時押しにより入力される。符号(.)はキー9、11の同時押しにより入力される。符号(/)はキー0、11の同時押しにより入力される。つまり、4本の右指と左親指との同時押しにより、文字(N、M)と3つの下段符号(,./)とが入力される。図4において、各上段キーとキー11又は12とを結ぶ直線は、同時押しされる2キーの組み合わせを示す。
(変形態様)
上記実施例では、同じ手の2指による2キー同時押しにより上段キーを選択し、異なる手の親指と親指以外の4指による2キー同時押しにより下段キーを選択した。その代わりに、左手の親指(キー11)とキー1〜0との2キー同時押しにより上段キーを選択し、右手の親指(キー12)とキー1〜0との2キー同時押しにより下段キーを選択するようにしてもよい。あるいは、左手の親指(キー11)とキー1〜0との2キー同時押しにより下段キーを選択し、右手の親指(キー12)とキー1〜0との2キー同時押しにより上段キーを選択するようにしてもよい。
【0027】
(4)QWRETY配列の残りの数字、符号の入力
QWRETY配列の残りの符号及びその他の文字又はファンクションキーの入力方法を図5を参照して説明する。左側の4つのキー1〜4のうちのいずれか2つのキーの同時押しにより、6つのファンクションキーF1〜F6が入力される。右側の4つのキー7〜9、0のうちのいずれか2つのキーの同時押しにより、6つのファンクションキーF7〜F12が入力される。つまり、同じ手の親指以外で押される2つのキーの同時押しにより、12個のファンクションキーが入力される。図5において、各上段キーうちの2つを結ぶ線は、同時押しされる2キーの組み合わせを示す。
【0028】
(5)数字の入力
QWRETY配列の10個の数字(1〜0)は、キー11、12の両方をあらかじめ押した状態にて、キー1〜9、0を押すことにより入力することができる。
もしくは、キー(1〜0)を押す前に、キー11、12の両方を押すことにより数字入力モードにシフトし、キーの番号と同じ数字を入力し、その後、キー11、12の両方を押すことにより、数字入力モードを解除することにより、10個の数字(1〜0)を入力してもよい。
【0029】
(6)他のキー入力
キー11を2回連続打鍵した後、キー1〜0の一つを押すことにより数字(1〜0)の一つを出力する。更に、キー12を2回連続打鍵した後、キー1〜0の一つを押すことにより、その他の符号を出力することができる。もちろん、数字とその他の符号とを逆としてもよい。
【0030】
(2キー同時押しと1キー押しとの判別)
キー1〜9、0のうちの2つのキーの同時押しを行っても、これら2つのキーのオン状態の開始時点はわずかに異なる。これは、最初のキーが押された後、次のキーが押されるまでは、1キー押し状態が生じることを意味する。そこで、1キー押しと、2キー同時押しとの判別のために、1つのキーの押し状態でこの1キーがオフしたらこの1キーの打鍵が最終的に確定し、1つのキーの押し状態で他のキーが押されたら、この押されている2キーの同時打鍵と最終的に確定すればよい。このようにすれば、1キー打鍵と2キー同時打鍵とを素早く判別することができる。
【0031】
(7)日本字語のローマ字入力
日本字のローマ字入力法を図6を参照して説明する。ローマ字入力では、15個の子音(KSTHNMRWGZDBPFY)と、5つの母音(AIUEO)とが用いられる。この実施態様では、6つの子音キー(KSTHNY)と、5つの母音キー(AIUEO)が用いられる。なお、ここで言う子音キーとは、これら6つの子音を単独打鍵で入力するキーを意味し、ここで言う母音キーとは、5個の母音を単独打鍵で入力するキーを意味する。キー配列を図6に示す。子音キー(KSTH)は左上段に配置され、子音キー(N)は左下段に配置され、子音キー(Y)と母音キー(AIUE)は右上段に配置され、母音キー(O)は右下段に配置されている。
【0032】
(7−1)子音(KSTHN)の入力
子音(KSTHN)は、キー(1234、11)の単独打鍵により入力される。
(7−2)母音(AIUEO)の入力
母音(AIUEO)は、キー(7890、12)の単独打鍵により入力される。
(7−3)子音(GZDB)の入力
子音(GZDB)は、4つの左上キー(1〜4)のいずれか一つと親指キー11の同時打鍵により入力される。KとG、SとZ、TとD、HとBとが同じ指を使用するため、キー配列学習が容易である。
(7−4)子音(MRWPF)の入力
子音(MRWPF)のうち比較的使用頻度が高い子音(MRW)は、親指を除く4本の左指のうち互いに隣接する2指の連続打鍵により入力される。隣接2指は同時に動かすことが比較的容易である。使用頻度が少ない子音(P、F)は、左上キー(4,2)、(4,1)の同時打鍵により入力される。
【0033】
(7−5)子音(Y)の入力
子音(Y)は、キー6の入力により入力される。
結局、子音(KSTHN)の位置を覚えると、子音(GZDB)が連想により容易に覚えられることができる。子音(MRW)はその他の子音という意識と隣接2指同時押しという記憶から容易に覚えられることができる。子音(PF)は、頻度が小さい文字のため押しにくい位置にあるという意識と人差し指は用いるという意識とから容易に覚えることができる。子音(Y)は右手側にあるという意識から容易に覚えることができる。なお、子音(Y)を右手側に配置したのは、子音(Y)が左手による子音入力の後で用いられることが多い(たとえばKYAなど)ので、左手の指を連続押しすることを回避することにより左手指の疲労を回避するためである。もう一つの理由は、図6からわかるように、左から右への打鍵キーの配置が打鍵ローマ字の順番になり、子音(Y)の位置を覚えやすいためである。
【0034】
つまり、この実施例では、図2〜図4で説明した英字(アルファベット)の配置と、図6で説明した日本字のローマ字入力のための子音、母音の配置とが異なっている。日本字のローマ字入力に習熟すると、ローマ字を意識して日本字を打鍵することはない。また、ほとんどの日本人にとって、英語(すなわちアルファベット)を打つ機会は多くはない。したがって、通常の日本人にとって、図6の1キー打鍵位置と、2キー同時打鍵位置とを記憶するだけでよい。英字を入力する場合には、図略のモード切り替えキーの打鍵により、日本字入力モードから英字入力モードに切り替えることにより、デスプレイの下方に図2〜図4に示す英字配列を表示することが好適である。この表示は習熟後、消すことができる。
【0035】
日本語と英語との両方を頻繁に打鍵する必要がある研究者などは、QWRETY配列をブラインドタッチできるのが普通である。したがって、英語入力のためにはすでに覚えたQWRETY配列に非常に類似した図2〜図4のQWRETY配列に類似する英字入力を用い、日本語のローマ字入力法においてだけ図6の日本字配列を覚えればよい。つまり、英字をQWRETY配列によりブラインドタッチタイピング入力する熟練者であっても、日本語入力においては、図6や図7に示す打鍵指の組み合わせの容易な学習により、疲れが少なく日本語の高速ブラインドタッチタイピングを行うことができる。
【0036】
(変形態様1)
右手側のキー群により子音を発生し、左手側のキー群により母音を発生してもよい。この場合には、子音Yを発生するキーは母音発生キーと同じく左手側に配置されることが好適である。
図6において、同時打鍵される2字の組み合わせの一つが称していない。そこで同時打鍵されるこの2字の組み合わせを利用すれば、もう一つ子音を入力できることがわかる。この子音を子音Yとすることができる。この場合には、図6〜図9に示すキーYを省略することができる。
【0037】
(変形態様2)
図7は、文字(Y)を入力するためのキーを文字(I)を入力するキー8の直下に配置した例である。日本語のローマ字入力法においてYの直前に入力される母音はA、U、Oであるため、このYキー配置によれば、右手の同一指を移動させて連続使用することがなく、疲れが少なく入力能率が高い。発明者は、通常のQWRETY配列キーボードのキー位置をカスタマイズすることによりこのY配置方式を数年以上使用している。その他、キー(Y)をキー(O)の横に配置してもよく(図8参照)、キー(Y)をキー(K)の横に配置してもよい(図9参照)。5つの母音キートップ(AIUEO)と5つの右指との間の関係を変更してもよい。左手で母音を入力し、右手で子音を入力し、左手で母音を入力してもよい。
【0038】
(変形態様3)
人差し指の移動を要求するキー5、6の位置も変更可能である。人差し指を横に移動するよりも、それと直角すなわち上段側や下段側に移動する方が移動が簡単である。図10はキー5、6をキー4、7の下段に配置する例を示し、図11はキー5、6をキー4、7の上段に配置する例を示す。
【0039】
(効果)
上記実施例のキー入力方式の効果を以下に説明する。
この実施例は、広く用いられているQWRETY配列における指の段間移動を親指キーの打鍵で置換することにより英字(アルファベット)を入力する。この方式によれば、従来のQWRETY配列のキーボードの使用者がこの実施例のキー配列に習熟するのが容易となるという効果を奏する。更に、新しいキー配列、特に2キー同時打鍵式キー配列の学習は、QWRETY配列のような1キー打鍵式キー配列よりも学習が困難である。学習が容易でない新キー配列は普及が困難である。この実施例のQWRETY配列類似のキー配列はこの点で他の新キー配列に比べて普及が容易である。
【0040】
更に詳しく説明する。
この実施例の効果は、学習が容易なことである。QWRETY配列の中段文字は、従来のQWRETY配列と同じ方法で入力される。QWRETY配列の上段文字は、同じ側の手の親指を同時押しするだけであり、学習が容易である。QWRETY配列の下段文字は、反対側の手の親指を同時押しするだけであり、学習が容易である。数字(1〜9、0)は、両手の親指をあらかじめ押すことにより、あるいは両手の親指とこれらの数字の同時押しにより入力されるため、学習が容易である。
この実施例の他の効果は、従来のQWRETY配列キーボードに比べて各指の移動がほとんど無いことである。英字、数字、日本字の入力において、人差し指を隣接キートップに移動する以外に指を移動する必要がない。これは、多量の文章を入力するプロフェッショナル作業者の疲労を大幅に軽減する。
【0041】
この実施例の更に他の効果は、使用キー数が少ないため、キーボードを従来のQWRETY配列キーボードよりも大幅に小型化することができることである。キー数が少ないため、従来のプレート状のキーボードの他、掌(パーム)で握るタイプ、各指に嵌めた指輪に固定された加速度センサにおり指移動を検出するタイプなど、バラエティに富む種々の携帯型キーボードが可能となる。
この実施例のキーボードは、従来のQWRETY配列キーボードよりも親指の使用頻度が高い。しかし、親指の筋肉は他の指よりも格段に強いため、疲労は少なく、親指が他の指よりも先に疲労することはない。また、親指は他の指から離れているため、掌を親指側へ傾ける動作により親指打鍵を大幅にアシストすることができる。
【0042】
(実施例2)
日本字入力に関する実施例2の文字入力方式を図6を参照して以下に説明する。この実施例は、日本語入力のために使用される市販のローマ字入力タイプのIME(日本語入力ソフト)に内蔵される英字(ローマ字とも呼ばれる)の逐次組み合わせと日本字との組み合わせテーブルを書き換えることにより、2キー同時打鍵のプログラムを完成することをその特徴としている。たとえばATOK(ジャストシステム社のIME)やマイクロソフト社のIMEは、英字の逐次組み合わせと日本字との関係を示すテーブルを書き換え可能に有している。この書き換えを通じて、日本語のローマ字入力における2キー同時打鍵動作をプログラムすることができる。したがって、この実施例のテーブル書き換え法によれば、2キー同時打鍵を判別するソフトを組み込む必要が無く、既存のパーソナルコンピュータに実施例1と同等の日本語のローマ字入力法を容易に導入することができる。以下、具体的に説明する。
【0043】
まず、市販のキーカスタマイズソフトを利用して、QWRETY配列キーボードの任意のキーにキー(1〜4、7〜0、11、12)に相当する11個の英字(K、S、T、H、N、A、I、U、E、O、Y)を設定する。
次に、IMEの「ローマ字と日本語文字との関係を定義するテーブル」に、2キー同時打鍵方式を定義する。
たとえば、図6において、ローマ字(K、S)を2字同時打鍵した後、ローマ字(O)を逐次入力すると「モ(日本語のMO)」が出力される。これは、IMEの上記テーブルに、ローマ字逐次入力(K、S、O)=モ(日本語のMO)と、ローマ字逐次入力(S、K、O)=モ(日本語のMO)とを定義するのに等しい。つまり、2つのキー(たとえばK、S)の同時打鍵は、2つのキーの一方(たとえばK)が先行する第1の2キー逐次打鍵と、2つのキーの他方(たとえばS)が先行する第2の2キー逐次打鍵との組み合わせに等しい。そこで、上記2つの2キー逐次打鍵定義式を上記テーブルに書き込めばよい。
【0044】
図12は、同時打鍵される英字K(キートップ4)及び英字S(キートップ3)のうち、英字Kが英字Sよりも先行して打鍵される場合を示す。図13は、同時打鍵される英字K(キートップ4)及び英字S(キートップ3)のうち、英字Sが英字Kよりも先行して打鍵される場合を示す。
「ぎゃ(日本字GYA)」は、2キー同時打鍵「K、N」に続いて「Y」と「A」とを逐次打鍵してなされる。これは、ローマ字逐次入力「K、N、Y、A」=ぎゃ(日本字GYA)と、ローマ字逐次入力「N、K、Y、A」=ぎゃ(日本字GYA)とを上記テーブルに定義することによりなされる。
【0045】
(変形態様)
上記実施例2では、たとえば市販のキーカスタマイズソフトにより、QWRETY配列キーボードの任意のキーにキー(1〜4、7〜0、11、12)に相当する英字(K、S、T、H、N、A、I、U、E、O)を設定した。
このキーカスタマイズを行うことなく、テーブルの書き換えだけで、図56に示す打鍵配列により日本字入力を行うこともできる。つまり、図6に示す日本字入力のための11個の英字(K、S、T、H、N、A、I、U、E、O、Y)をキーボードに設定することなく、逐次入力キー列と日本字との関係を示すIMEの変換テーブルに、QWRETY配列のキーをそのまま使うことができる。たとえば、図6において、キー(1〜4)としてQWRETY配列のキー(Q、W、E、R)を採用し、キー(7〜0)としてQWRETY配列のキー(U、I、O、P)を採用し、キー(11)としてQWRETY配列のキー(C)を採用し、キー(12)としてQWRETY配列のキー(M)を採用することができる。ただし、この場合には、2キー同時打鍵により入力される子音の他、1キー打鍵による子音も上記テーブルに定義する必要がある。けれども、この態様によれば、QWRETY配列を全く変更する必要がないため、QWRETY配列による英字入力が容易となる。
【0046】
(実施例3)
実施例3の文字入力方式を図6を参照して以下に説明する。この実施例は図3〜図5に示す英数字入力のために、実施例2で説明した市販のローマ字入力タイプのIME(日本語入力ソフト)に内蔵される英字定義テーブルの逐次組み合わせを使用する点にその特徴がある。
つまり、実施例2で説明したIME(たとえばATOK)は、逐次入力される複数のローマ字(英字とも言う)の組み合わせと、出力すべき文字との関係を示すテーブルへ、複数の英字を逐次入力し、それに対応する1つの日本字を出力する。
【0047】
そこで、実施例2で示すローマ字と日本語文字とのテーブルと同様の第2テーブルを準備する。この第2テーブルを用いれば、図3〜図5に示す2キー同時打鍵や、既述した数字入力のための3字同時打鍵を判別することができる。つまり、図略のモード選択キーの打鍵により英字入力力モードと日本字入力モードとのどちらかを選択する。日本字入力力モードでは、上記した変換テーブルを採用し、英字入力モードでは上記した第2テーブルを選択する。
【0048】
以下、具体的に説明する。
まず、第2テーブルのうち図3〜図5に示す英字などを出力するための2キー同時打鍵テーブルを説明する。
たとえば、図3において、キートップ(5,11)の2キー逐次打鍵(5が先行する)=英字(T)と、キートップ(11,5)の2キー逐次打鍵(11が先行する)=英字(T)を第2テーブルに書き込む。これにより、キートップ5とキートップ11とを同時打鍵することにより、英字(T)を出力することができる。他の英字や符号も同様に定義することができる。これにより、2字同時打鍵による英字出力プログラムを簡素化することができる。
【0049】
数字も同様に、第2テーブルを用いて出力することができる。ただし、数字は、10個のキー(1〜0)の一つとキー(11)と、キー(12)との3字同時打鍵により入力される。たとえば、数字4を出力するためには、キートップ(4、11、12)をこの順番に逐次打鍵する場合と、キートップ(4、12、11)をこの順番に逐次打鍵する場合と、キートップ(11、4、12)をこの順番に逐次打鍵する場合と、キートップ(11、12、4)をこの順番に逐次打鍵する場合と、キートップ(12、4、11)をこの順番に逐次打鍵する場合と、キートップ(12、11、4)をこの順番に逐次打鍵する場合とに分けられる。そこで、(4、11、12)=4、(4、12、11)=4、(11、4、12)=4、(11、12、4)=4、(12、4、11)=4を3次逐次入力テーブルに書き込めばよい。なお、上記式の左辺は、逐次入力の順番を示す。
【0050】
(変形態様)
実施例3では、図2〜図5に示す英字入力法の実施のためにIMEのテーブルを用いたが、IMEを用いず、単にキー入力の組み合わせと出力英字との関係を示す上記テーブルだけを用いて英字又は数字の出力を行ってもよい。つまり、英字入力に用いる上記第2テーブルは、上記IMEに設ける必要は無く、IMEと同様、キー逐次入力と出力英字との組み合わせが記載された第2テーブルを利用するIMEと類似の英語入力プログラムを用いても良い。これには、すべてのキーが打鍵されていない第1の時点と、その後のすべてのキーが打鍵されていない第2の時点との間の期間に逐次打鍵される2乃至3個のキーの逐次入力信号列を上記テーブルに入力することにより、対応する英字を求め、それを出力すればよい。
以上説明した実施例1〜3で説明した英字、数字、日本字の入力力法は、広く用いられている従来の標準型キーボードにより実施できることは当然であるが、文字入力用のキー数が少ないことを利用して携帯電話などのモバイル装置では、打ち易い小型のキーボードを新しく設計することができる。
【0051】
(実施例4)
上記した文字入力法を実現可能な携帯型キーボードの一例を図14を参照して説明する。図14は、携帯電話101を示す模式平面図である。102は必要な電子回路を内蔵するケースである。103はケース102の上面に設けられたキーボードである。104はカバープレート105に設けられた電子デスプレイである。カバープレート105を閉じることによりキーボード103はカバープレート105に覆われる。この種のキーボード付きの携帯電話101は既に市販されているため、これ以上の説明は省略する。
【0052】
キーボード103は、マトリックス配列された合計36個のキーすなわちキートップをもつ。キーボード103は、12個の上段キー(SHIHFT、1〜0、ENTER)と、12個の中段キー(CAPSLOCK、X1〜X0、BS)と、12個の下段キー(X11〜13、CTRL、11、SPACE、ESC、12、ALT、X14〜X16)をもつ。キーX1〜X16は、任意に定義可能なキーであり、たとえばBS、DEL、ESC、TAB、INSなどの編集キーやカーソルキー、更には符号キーなどとして用いられる。キーボード103は、ケース102の上面に左右外側へスライド可能に設けられてもよい。
【0053】
キー1〜0、11、12はいままで説明した文字(数字)キーである。これらの文字(数字)キーは、上記実施例で説明した文字入力に用いられる。ノーマルポジションにおいて、キー11に左親指が、キー1〜4に他の4本の左指が、キー12に右親指が、キー7〜0に他の4本の右指が置かれる。このキーボードを用いた英字、数字、日本字の入力方式については既に説明されているため、説明は省略される。
【0054】
(実施例5)
上記した文字入力法を実現可能な特殊キーボードの一例を図15〜図17を参照して説明する。図15はこのキーボードの模式平面図、図16は図15のA−A線矢視模式断面図、図17は図15のB−B線矢視断面図である。
このキーボードは、左キーボード201と右キーボード202とからなる。左キーボード201はグリップ203とプレート204とをもつ。右キーボード202はグリップ205とプレート206とをもつ。
【0055】
グリップ203はその上面には左掌が載せられる台であり、グリップ205はその上面には右掌が載せられる台である。グリップ203の前部にはプレート204が固定され、グリップ205の前部にはプレート206が固定されている。プレート204及びグリップ203の底面はデスク上面に接している。プレート206及びグリップ205の底面はデスク上面200に接している。右キーボード202は、マウスであり、右キーボード202をデスク上面に沿って移動することにより、カーソルが移動する。グリップ203、205にはプッシュスイッチ207、208がそれぞれ内蔵されている。グリップ203のプッシュスイッチ207を掌で押すことによりマウスの左クリックがなされ、グリップ205のプッシュスイッチ208を掌で押すことによりマウスの右クリックがなされる。209は、左キーボード201の移動軌跡を検出するためのマウスボール(トラックボール)である。
【0056】
プレート204にはキー1〜5、11、X1〜X5、SHIFT、CAPS、CTRL、SPACEが設けられている。プレート206にはキー7〜0、12、X6〜X0、ENTER、BS、ESC、ALTが設けられている。更に、プレート204に隣接するグリップ203の前端面にはキーX10〜X14が設けられ、プレート206に隣接するグリップ205の前端面にはキーX17〜X21が設けられている(図17参照)。ただし、図15では、キーX10〜X14、X17〜X21が太い黒線により模式的に図示されている。ノーマルポジションにおいて、左手の5本の指は、キー1〜4、11の上に配置され、右手の5本の指は、キー7〜0、12の上に配置されている。
【0057】
実施例1〜3に説明したキー数が少ない文字入力方法を用いると、キーボードと一体化したマウスを容易に移動できる。このキーボードによれば、文字キーX7〜X0、X12がマウスに一体に配置されているため、文字入力中のカーソル移動及びクリック動作において、指をノーマルポジションから動かす必要がない。更に、左キーボード201の左グリップ203に左クリック用のプッシュスイッチ207を設け、右キーボード202のグリップ205に右クリック用のプッシュスイッチ208を設けているため、クリックも容易となる。なお、左クリック用のプッシュスイッチ207も右クリック用のプッシュスイッチ208に並んでグリップ203に設けてもよい。
【0058】
(変形態様)
上記実施例では、左キーボード201及び右キーボード202はほぼ線対称形状としたが、マウスとして動かされる右キーボード202のキー数を減らすことにより、右キーボード202を更に小型化することも可能である。たとえば、キーX6〜X0を省略してもよい。また、マウスとして動作する右キーボード202とデスク上面との間の摩擦抵抗を減らすために、右キーボード202の底面に複数のフリー回転ボールを設けたり、複数の突起を設けたりしてもよい。
【0059】
(変形態様)
学習を容易とするために、キー11の打鍵、キー12の打鍵、キー11、12の同時打鍵(又は先行打鍵)、キー11の2回打鍵、キー12の2回打鍵がなされた場合に、キー1〜0がどのキーに相当するかをデスプレイの下部に表示することが好ましい。わずか1行であるため、デスプレイの文字表示領域の縮小は小さい。習熟後、このキー配列の表示は省略可能である。
【符号の説明】
【0060】
1〜5、11 左指打鍵キー(キートップ)
6〜0、12 右指打鍵キー(キートップ)
100、103 キーボード
101 携帯電話
102 ケース
104 電子デスプレイ
105 カバープレート
201 左キーボード
202 マウスを兼ねる右キーボード
203、205 グリップ
204、206 キーが配列されるプレート
207、208 プッシュスイッチ
209 マウスボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左上に配列されて親指以外の左手の4つの指により打鍵される左上キー1〜5と、左下に配列されて左親指により打鍵される左下キー11と、右上に配列されて親指以外の右手の4つの指により打鍵される右上キー6〜0と、右下に配列されて左親指により打鍵される右下キー12とをもつキー装置を準備し、
標準キーボードの上段の10個の文字である上段文字の一つ、標準キーボードの中段の10個の文字である中段文字の一つ、標準キーボードの下段の10個の文字である下段文字の一つを順番にキー1〜0に割付け、
キー1〜0の一つの打鍵である単独キー打鍵モードでの単独キー打鍵と、キー1〜0の一つとキー11とをほぼ同時に打鍵する第1連続打鍵モードでの2キー連続打鍵と、キー1〜0の一つとキー12とをほぼ同時に打鍵する第2連続打鍵モードでの2キー連続打鍵とにより、前記上段文字、中段文字及び下段文字の選択を行うことを特徴とする文字入力方法。
【請求項2】
前記単独キー打鍵モードにより前記中段文字を出力し、
前記キー1〜5の打鍵とほぼ同時にキー11を同時打鍵し、前記キー6〜0の打鍵とほぼ同時にキー12を同時打鍵することにより、前記上段文字及び前記下段文字のいずれか一方を出力し、
前記キー1〜5の打鍵とほぼ同時にキー12を同時打鍵し、前記キー6〜0の打鍵とほぼ同時に前記キー11を同時打鍵することにより、前記上段文字及び前記下段文字のいずれか他方を出力する請求項1記載の文字入力方法。
【請求項3】
前記単独キー打鍵モードにより前記中段文字を出力し、
前記第1連続打鍵モードにより前記上段文字及び前記下段文字のいずれか一方を出力し、
前記第2連続打鍵モードにより、前記上段文字及び前記下段文字のいずれか他方を出力する請求項1記載の文字入力方法。
【請求項4】
キー11、12の両方をあらかじめ押した状態にてキー1〜0を押すことによりもしくはキー11、12とキー1〜0との3キー同時打鍵により、数字又は符号を出力する請求項1記載の文字入力方法。
【請求項5】
キー11又は12を2回連続打鍵した後、キー1〜0の一つを押すことにより、数字又は符号をを出力する請求項1記載の文字入力方法。
【請求項6】
左上に配列されて親指以外の左手の4つの指により打鍵される4つの左上キーと、左下に配列されて左親指により打鍵される一つの左下キーと、右上に配列されて親指以外の右手の4つの指により打鍵される4つの右上キーと、右下に配列されて左親指により打鍵される一つの左下キーとを準備し、
前記左(又は右)上の4つのキー及び左(又は右)下の1つのキーの1回打鍵又は2キー同時打鍵により日本語出力用の少なくとも14個の英子音のうちの必要な子音を出力した後、前記右(又は左)上の4つのキー又は右(左)下の1つのキーの1回打鍵により5つの母音のうちの必要な母音を出力することにより、前記子音と前記母音との組み合わせにより定義される日本字を出力することを特徴とする文字入力方法。
【請求項7】
左(又は右)上の4つのキーの打鍵により子音(K、S、T、H)を出力し、
左(又は右)下の1つのキーの打鍵により子音(N)を出力し、
左(又は右)上の4つのキーと左(又は右)下の1つのキーとの同時打鍵により子音(G、Z、D、B)を出力し、
左(又は右)上の4つのキーのうち互いに隣接する2キーの同時打鍵により子音(M、R、W)を出力する請求項6記載の文字入力方法。
【請求項8】
左(又は右)上の4つのキーのうち互いに隣接しない2キーの同時打鍵により子音(P、F)を出力する請求項7記載の文字入力方法。
【請求項9】
打鍵により子音Yを出力するキーであるキーYは、前記左(又は右)上の4つのキー、前記左(又は右)下の1つのキー、前記右(又は左)上の4つのキー及び前記右(左)下の1つのキーのいずれでもない他のキーにより構成される請求項7記載の文字入力方法。
【請求項10】
前記キーYは、母音(I)又は母音(E)を出力するキーに隣接して配置される請求項9記載の文字入力方法。
【請求項11】
逐次打鍵される複数のキーの逐次打鍵結果としての所定のキーシーケンスとそれに対応する所定の日本字との間の関係を表すテーブルを準備し、
子音を出力するキー(Key1)と、子音を出力するキー(Key2)と、母音を出力するキー(Key3)がをこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する所定の日本字(JP1)との関係を示す定義式1を前記テーブルに書き込み、
前記キー(Key2)と、前記キー(Key1)と、前記キー(Key3)とがこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する前記所定の日本字(JP1)との関係を示す定義式2を前記テーブルに書き込み、
前記2つのキー(Key1、Key2)の2キー同時打鍵と、その直後の前記キー(Key3)との逐次打鍵結果を前記テーブルに代入して前記所定の日本字(JP1)を出力する請求項7記載の文字入力方法。
【請求項12】
子音Yを出力するキー(KeyY)を準備し、
前記キー(Key1)と、前記(Key2)と、前記キー(KeyY)と、前記キー(Key3)とがこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する所定の日本字(JP2)との関係を示す定義式3を前記テーブルに書き込み、
前記キー(Key2)と、前記キー(Key1)と、前記キー(KeyY)と、前記キー(Key3)とがこの順番で入力される所定のキーシーケンスとそれに相当する前記所定の日本字(JP2)との関係を示す定義式4を前記テーブルに書き込み、
前記キー(Key1、Key2)の2キー同時打鍵と、その直後の前記キー(KeyY)とキー(Key3)との逐次打鍵結果を前記テーブルに代入して前記所定の日本字(JP2)を出力する請求項11記載の文字入力方法。
【請求項13】
前記テーブルは、逐次入力されるローマ字のキーシーケンスを日本字に変換するために用いられる日本語のローマ字入力法をコンピュータにより演算するためのプログラムであるIMEのローマ字変換テーブルからなる請求項6記載の文字入力方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか記載の文字入力法を実施するためのキーボードであって、
文字入力のための左上キー1〜5及び左下キー11が配置されるマウス状の左キーボード(201)と、文字入力のための右上キー6〜0と及び右下キー12が配置されるマウス状の右キーボード(202)とを有し、
左キーボード(201)は、掌が載せられるグリップ(203)と、左上キー1〜5及び左下キー11が設けられてグリップ(203)から延在するプレート(204)を有し、
右キーボード(202)は、掌が載せられるグリップ(205)と、右上キー6〜0及び右下キー12が設けられてグリップ(205)から延在するプレート(206)を有し、
左キーボード(201)及び右キーボード(202)の少なくとも一方は、マウスを兼ねるキーボード。
【請求項15】
左キーボード(201)のグリップ(203)は、左手の掌で押すマウスの左クリックのためのプッシュスイッチ(207)を有し、
右キーボード(202)のグリップ(205)は、右手の掌で押すマウスの右クリックのためのプッシュスイッチ(208)を有する請求項14記載のキーボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−211447(P2010−211447A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56046(P2009−56046)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(507348676)有限会社 スリ−アイ (35)
【Fターム(参考)】