説明

文字多重装置

【課題】 ユーザの指示を受けることなく自動的に視認性を向上させる。
【解決手段】 文字データ格納部12は文字データ102を格納し、文字多重部11は文字データ102を入力された映像データ101を表示している監視映像内の文字多重領域104に多重する。文字多重領域設定部13は監視映像内の文字多重領域104を設定すると共に、映像データ105の時間的変化を示す動き量106に基づき、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量を算出し、文字多重領域104における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合に、映像データの動き量が最小の監視映像内の他の領域を文字多重領域104として再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伝送業者が実施しているMPEG(Moving Picture Experts Group)−2を使用した映像・音声伝送システムにおける文字多重装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字多重装置の従来の技術として、例えば特許文献1では、監視カメラ番号等を示すための文字データと、文字位置情報を予め登録することで、テレビモニタの画面上の監視テレビカメラの映像中の被写体と表示文字との重複表示が発生しない文字発生装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−029733号公報(段落0009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の文字多重装置は以上のように構成されているので、文字データと文字多重領域情報を登録した後で、例えば、河川監視において、監視映像内の文字多重領域で、河川氾濫等の動きが発生した場合に文字に隠れてしまい視認性が低下すると共に、視認性を向上させるために文字多重領域の移動を行うには、再度、ユーザが文字多重領域の変更等の指示を行う必要があるという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、監視映像内の文字多重領域で映像の動きが発生した場合に、ユーザの指示を受けることなく自動的に視認性を向上させることができる文字多重装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る文字多重装置は、文字データを格納している文字データ格納部と、該文字データ格納部に格納されている文字データを入力された映像データを表示している監視映像内の文字多重領域に多重する文字多重部と、上記監視映像内の文字多重領域を設定すると共に、映像データの時間的変化を示す動き量に基づき、上記監視映像内の文字多重領域における映像データの動き量を算出し、上記文字多重領域における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合に、映像データの動き量が、上記文字多重領域における映像データの動き量よりも小さい上記監視映像内の他の領域を文字多重領域として再設定する文字多重領域設定部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明により、監視映像内の文字多重領域で映像の動きが発生した場合に、ユーザの指示を受けることなく自動的に視認性を向上させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による映像符号化機能を有する文字多重装置の構成を示すブロック図である。図1に示す映像符号化機能を有する文字多重装置1は、文字多重部11、文字データ格納部12、文字多重領域設定部13、映像符号化部14及び映像符号化部14内の動き抽出部15を備えている。
【0009】
次に動作について説明する。
文字多重部11は、文字データ格納部12に格納されている文字データ102を、入力された映像データ101を表示している監視映像内の文字多重領域設定部13により設定された文字多重領域104に多重して、文字データ102が多重された映像データ105を出力する。文字データ格納部12はユーザにより入力された文字データ102を格納し、格納している文字データ102を文字多重部11に出力する。
【0010】
文字多重領域設定部13は、ユーザにより入力された文字多重領域情報103により監視映像内の文字多重領域104を初期設定して文字多重部11に出力すると共に、動き検出部15により抽出された映像データ105の時間的変化を示す動き量106に基づき、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量を算出し、算出した文字多重領域104における映像データの動き量と予め設定された閾値とを比較し、文字多重領域104における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合、つまり、文字多重領域104の映像に動きがあり、注目すべき文字多重領域104の映像の視認性が低下し、文字多重領域104を移動する必要があると判定した場合に、映像データの動き量が最小の監視映像内の他の領域を文字多重領域104として再設定して文字多重部11に出力する。
【0011】
一方、文字多重領域設定部13は、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量が閾値以下の場合、つまり、文字多重領域104の映像に動きがなく、文字多重領域104を移動する必要がないと判定した場合には、ユーザにより入力され初期設定された文字多重領域104のままとする。
【0012】
映像符号化部14は文字データ102が多重された映像データ105を符号化してMPEG−2データ107を出力すると共に、内部の動き量抽出部15により符号化で得られる映像データ105の時間的変化を示す動き量106を抽出する。
【0013】
図2はこの発明の実施の形態1による映像符号化機能を有する文字多重装置における文字多重領域設定部13の処理手順を示すフローチャートである。
ステップST11において、文字多重領域設定部13は、動き検出部15により検出された映像データ105の時間的変化を示す動き量106に基づき、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量を算出する。
【0014】
ステップST12において、文字多重領域設定部13は、算出した監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量と予め設定された閾値とを比較し、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量が閾値より小さい場合には、上記ステップST11の処理に戻り、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量が閾値より大きい場合には、ステップST13の処理に移行する。
【0015】
ステップST13において、文字多重領域設定部13は、文字多重領域104となり得る監視映像内の他の領域を複数抽出し、動き検出部15により検出された映像データ105の動き量106に基づき、抽出した各領域における映像データの動き量を算出する。
【0016】
図3は文字多重領域設定部13が文字多重領域104となり得る監視映像内の他の領域を複数抽出する場合の説明図である。図3において、文字多重領域Aはユーザにより初期設定された文字多重領域104であり、文字数等による文字多重領域Aの幅Lにより、文字多重領域104となり得る監視映像内の他の領域が決定される。図3では、領域B及び領域Eは文字多重領域104となり得るが、領域C及び領域Dは文字多重領域104となり得ない。この場合、文字多重領域設定部13は、文字多重領域104となり得る領域B及び領域Eを抽出し、動き検出部15により検出された映像データ105の動き量106に基づき、抽出した領域B及び領域Eにおける映像データの動き量を算出する。
【0017】
図2のステップST14において、文字多重領域設定部13は、映像データの動き量が最小の領域を選択し、文字多重領域104として再設定して文字多重部11に出力する。図3の例では、映像データの動き量が最小の領域B又は領域Eが選択され、文字多重領域104として再設定される。文字多重部11では、文字データ格納部12に格納されている文字データ102を文字多重領域設定部13により再設定された文字多重領域104に多重して、文字データ102が多重された映像データ105を出力するが、文字データ102は映像データの動き量が最小の領域に移動しているので、監視映像の視認性を向上することができる。
【0018】
ここで、例えば、カメラがパーンした場合のように、映像データの動き量106が監視映像全体として均一となる場合には、文字多重領域設定部13は、監視映像全体が動いていると判定し、文字多重領域の映像に動きがないものとして文字多重領域の再設定を停止する。
【0019】
ステップST15において、文字多重領域設定部13は、文字多重領域の移動を映像の動きとして判定することを防ぐために、任意の時間、映像データの動き量の判定を停止するようにマスクをかける。このマスクの処理は任意の時間で解除する。即ち、上記ステップST14の文字多重領域104の再設定のときのみ、上記ステップST11の文字多重領域における映像データの動き量の算出を停止する。マスク処理が終了したら上記ステップST11の処理をリスタートする。
【0020】
図4は図2のステップST15におけるマスク処理手順を示すフローチャートである。
ステップST21において、文字多重領域設定部13は映像データの動き量の判定を停止するようにマスクをかける。ステップST22において、文字多重領域設定部13は任意時間経過を待ち、ステップST23において、文字多重領域設定部13はマスク解除してリスタートする。以上の処理により、文字多重領域の移動が映像の動きとして判定することを防ぎ、監視映像内の文字多重領域で映像の動きが発生した場合にのみ、文字多重領域を移動することが可能となる。
【0021】
以上のように、この実施の形態1によれば、文字多重領域設定部13が、動き検出部15により抽出された映像データ105の動き量106に基づき、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量を算出し、算出した文字多重領域104における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合に、映像データの動き量が最小の監視映像内の他の領域を文字多重領域104として再設定することにより、監視映像内の文字多重領域で映像の動きが発生した場合に、ユーザが文字多重領域104を再設定することなく、自動的に視認性を向上させることができるという効果が得られる。
【0022】
また、この実施の形態1によれば、文字多重領域設定部13が、映像符号化部14内の動き抽出部15により抽出された符号化で得られる映像データ105の動き量106に基づき、文字多重領域104を再設定することにより、文字多重領域104の再設定のための専用の動き量抽出回路を設けることに比べて、回路規模を縮小することができるという効果が得られる。
【0023】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2による映像符号化機能を有する文字多重装置の構成を示すブロック図である。図5に示す映像符号化機能を有する文字多重装置1は、文字多重部11、文字データ格納部21、文字多重領域設定部22、映像符号化部14及び映像符号化部14内の動き抽出部15を備えている。
【0024】
次に動作について説明する。
文字多重部11は、文字データ格納部21に格納されている文字データ102を、入力された映像データ101を表示している監視映像内の文字多重領域設定部22により設定された文字多重領域104に多重して、文字データ102が多重された映像データ105を出力する。文字データ格納部21はユーザにより入力された文字データ102をその属性と共に格納し、格納している文字データ102とその属性を文字多重部11に出力すると共に、文字多重領域設定部22からの文字属性変更指示111に基づき、格納している文字データ102の属性を変更して文字多重部11に出力する。
【0025】
文字多重領域設定部22は、ユーザにより入力された文字多重領域情報103により監視映像内の文字多重領域104を設定して文字多重部11に出力すると共に、動き検出部15により抽出された映像データ105の時間的変化を示す動き量106に基づき、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量を算出し、算出した文字多重領域104における映像データの動き量と予め設定された閾値とを比較し、文字多重領域104における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合、つまり、文字多重領域104の映像に動きがあり、注目すべき文字多重領域104の映像の視認性が低下し、文字多重領域104の文字データ102の属性を変更する必要があると判定した場合に、文字データ格納部21に格納されている文字データ102の属性を変更させるための文字属性変更指示111を文字データ格納部21に出力する。このとき、文字多重領域設定部22は、例えば、注目すべき文字多重領域104の映像の視認性を向上させるために、文字を半透明にするよう文字属性変更指示111を文字データ格納部21に出力する。
【0026】
一方、文字多重領域設定部22は、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量が閾値以下の場合、つまり、文字多重領域104の映像に動きがなく、文字データ102の属性を変更する必要がないと判定した場合には、文字属性変更指示111を文字データ格納部21に出力しない。即ち、文字データ102の属性はユーザにより初期設定されたままとなる。
【0027】
映像符号化部14は文字データ102が多重された映像データ105を符号化してMPEG−2データ107を出力すると共に、内部の動き量抽出部15により符号化で得られる映像データ105の時間的変化を示す動き量106を抽出する。
【0028】
図6はこの発明の実施の形態2による映像符号化機能を有する文字多重装置における文字多重領域設定部22の処理手順を示すフローチャートである。
ステップST31の処理は上記実施の形態1の図2のステップST11の処理と同じであり、ステップST32の処理は図2のステップST12の処理と同じである。
【0029】
ステップST33において、文字多重領域設定部22は、文字データ格納部21に格納されている文字データ102の属性を変更させるための文字属性変更指示111を文字データ格納部21に出力する。文字データ格納部21は、文字多重領域設定部22からの文字属性変更指示111に基づき、文字データ102の属性を変更して文字多重部11に出力し、文字多重部11では、属性が変更された文字データ102を文字多重領域設定部22により設定されている文字多重領域104に多重して、文字データ102が多重された映像データ105を出力するが、文字データ102は属性が変更されて、文字多重領域104内の文字は、例えば半透明に表示されるので、監視映像の視認性を向上することができる。
【0030】
ここで、例えば、カメラがパーンした場合のように、映像データの動き量106が監視映像全体として均一となる場合には、文字多重領域設定部22は、監視映像全体が動いていると判定し、文字多重領域104の映像に動きがないものとして文字属性変更指示111の出力を停止する。
【0031】
ステップST34において、文字多重領域設定部22は、文字データ102の属性変更を映像の動きとして判定することを防ぐために、任意の時間、映像データの動き量の判定を停止するようにマスクをかける。このマスクの処理は任意の時間で解除する。即ち、上記ステップST33の文字データ102の属性変更のときのみ、上記ステップST31の文字多重領域における映像データの動き量の算出を停止する。マスク処理が終了したら上記ステップST31の処理をリスタートする。このステップST34の処理は上記実施の形態1の図4と同じである。
【0032】
以上のように、この実施の形態2によれば、文字多重領域設定部22が、動き検出部15により抽出された映像データ105の動き量106に基づき、監視映像内の文字多重領域104における映像データの動き量を算出し、算出した文字多重領域104における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合に、文字多重領域104の文字データ102の属性を変更するよう指示することにより、監視映像内の文字多重領域104で映像の動きが発生した場合に、ユーザが文字データ102の属性を再設定することなく、自動的に視認性を向上させることができるという効果が得られる。
【0033】
また、この実施の形態2によれば、文字多重領域設定部22が、映像符号化部14内の動き抽出部15により抽出された符号化で得られる映像データ105の動き量106に基づき、文字データ102の属性を変更するよう指示することにより、文字データ102の属性変更のための専用の動き量抽出回路を設けることに比べて、回路規模を縮小することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態1による映像符号化機能を有する文字多重装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による映像符号化機能を有する文字多重装置における文字多重領域設定部の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による映像符号化機能を有する文字多重装置における文字多重領域設定部が文字多重領域となり得る監視映像内の他の領域を複数抽出する場合の説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による映像符号化機能を有する文字多重装置における文字多重領域設定部のマスク処理手順を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2による映像符号化機能を有する文字多重装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2による映像符号化機能を有する文字多重装置における文字多重領域設定部の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 文字多重装置、11 文字多重部、12 文字データ格納部、13 文字多重領域設定部、14 映像符号化部、15 動き抽出部、21 文字データ格納部、22 文字多重領域設定部、101 映像データ、102 文字データ、103 文字多重領域情報、104 文字多重領域、105 文字データが多重された映像データ、106 動き量、107 MPEG−2データ、111 文字属性変更指示。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字データを格納している文字データ格納部と、
該文字データ格納部に格納されている文字データを入力された映像データを表示している監視映像内の文字多重領域に多重する文字多重部と、
上記監視映像内の文字多重領域を設定すると共に、映像データの時間的変化を示す動き量に基づき、上記監視映像内の文字多重領域における映像データの動き量を算出し、上記文字多重領域における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合に、映像データの動き量が、上記文字多重領域における映像データの動き量よりも小さい上記監視映像内の他の領域を文字多重領域として再設定する文字多重領域設定部とを備えた文字多重装置。
【請求項2】
文字多重領域設定部は、映像データの時間的変化を示す動き量が監視映像全体として均一となる場合には、文字多重領域の再設定を停止することを特徴とする請求項1記載の文字多重装置。
【請求項3】
文字多重領域設定部は、文字多重領域の再設定をする際に、監視映像内の文字多重領域における映像データの動き量の算出を停止することを特徴とする請求項1記載の文字多重装置。
【請求項4】
文字データを格納している文字データ格納部と、
該文字データ格納部に格納されている文字データを入力された映像データを表示している監視映像内の文字多重領域に多重する文字多重部と、
上記監視映像内の文字多重領域を設定すると共に、映像データの時間的変化を示す動き量に基づき、上記監視映像内の文字多重領域における映像データの動き量を算出し、上記文字多重領域における映像データの動き量が所定の闘値より大きい場合に、上記文字データ格納部に格納されている文字データの属性を変更するよう指示する文字多重領域設定部とを備えた文字多重装置。
【請求項5】
文字多重領域設定部は、映像データの時間的変化を示す動き量が監視映像全体として均一となる場合には、文字データの属性変更の指示を停止することを特徴とする請求項4記載の文字多重装置。
【請求項6】
文字多重領域設定部は、文字データの属性変更の指示をする際に、監視映像内の文字多重領域における映像データの動き量の算出を停止することを特徴とする請求項4記載の文字多重装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−74231(P2007−74231A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257883(P2005−257883)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】