説明

文字認識装置および文字認識方法

【課題】置換候補文字の効率的な選択を可能とする文字認識装置および文字認識方法を提供する。
【解決手段】実施形態の文字認識装置は,認識結果文字列を生成する文字認識部と,修正文字指定部と,文字入力部と,文字変換部と,類似度算出部と,表示状態決定部と,を具備する。文字認識部は,文書画像データに基づき,文字認識して,認識結果文字列を生成する。文字変換部は,入力された文字データを変換して,複数の文字を生成する。類似度算出部は,指定された文字に対応する,文書画像データの文字画像データと,前記複数の文字それぞれとの複数の類似度を算出する。表示状態決定部は,算出された複数の類似度に基づいて,前記複数の文字の表示状態を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は,文字認識装置および文字認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの処理能力の向上とともに,文字認識技術が広く用いられるようになっている。文字認識の性能は年々向上しているが,それでも誤認識が生じることは避けられない。このため,オペレータによる認識テキストの修正作業が必要となる。
このような修正作業において,修正文字入力に用いるインプットメソッド(仮名漢字変換を行うIME,FEPや音声文字変換モジュールなど)の入力の効率が必ずしも良好とは言えない。例えば,漢字一文字のみを修正する際に,多数の候補が表示される。即ち,インプットメソッドを用いて置換候補を入力するときに,多数の候補からの選択が煩雑となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−293109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は,置換候補文字の効率的な選択を可能とする文字認識装置および文字認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の文字認識装置は,認識結果文字列を生成する文字認識部と,修正文字指定部と,文字入力部と,文字変換部と,類似度算出部と,表示状態決定部と,を具備する。文字認識部は,文書画像データに基づき,文字認識して,認識結果文字列を生成する。修正文字指定部は,認識結果文字列から修正する文字を指定する。文字変換部は,入力された文字データを変換して,複数の文字を生成する。類似度算出部は,指定された文字に対応する,文書画像データの文字画像データと,前記複数の文字それぞれとの複数の類似度を算出する。表示状態決定部は,算出された複数の類似度に基づいて,前記複数の文字の表示状態を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態の文字認識装置を表すブロック図である。
【図2】実施形態の文字認識結果表示を表す図である。
【図3】実施形態の文字の表示状態を表す図である。
【図4】実施形態の表示状態決定の手法を表す表である。
【図5】実施形態の文字認識装置の動作手順を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の実施形態においては,文字認識結果(認識結果文字列)の修正の際に,修正対象の文字画像と置換候補の文字間の類似性に基づき,置換候補を表示する。この結果,置換候補の効率的な選択が図られる。
【0008】
以下,図面を参照して,実施形態を詳細に説明する。図1は,実施形態に係る文字認識装置1の構成を示すブロック図である。文字認識装置1は,文書画像入力部10,文字認識部20,認識結果表示部30,修正文字指定部40,文字入力部50,文字変換部60,類似度算出部70,表示状態決定部80,変換文字表示・選択部90,文字置換部100を有する。文字認識装置1は,ハードウェア(例えば,CPU(Central Processing Unit),記憶装置(半導体メモリ,磁気記憶装置等),入力装置(キーボード,マウス等),表示装置(液晶表示装置等))と,ソフトウェア(プログラム)の組み合わせによって構成できる。
【0009】
文書画像入力部10は,文書画像データを入力する入力装置,例えば,スキャナーである。
文書画像データは,文字認識対象文書の画像を表すイメージデータである。
文字認識対象の文書は,所定の言語(例えば,日本語,中国語)の文章を含む。後述のように,文書画像データを文字認識した文字認識結果を訂正する際に,文字変換部60での仮名漢字変換等の文字変換の効率が問題となる。
【0010】
文字認識部20は,入力された文書画像データに基づき,文字認識して,認識結果文字列を生成する。文字認識部20は,文字画像データ抽出部,文字決定部,文字特徴データベースを含む。
【0011】
文字画像データ抽出部は,文書画像データから文字画像データ(後述の文字パターンデータに対応)を抽出する。文書画像データは,複数の文字,即ち,複数の文字画像データ(一文字の画像データ)を含む。このため,文書画像データから個別の文字画像データを抽出(分離)する。一般的には,文書画像データの画像を段落毎に区分し,その後に文字毎に区分(分離)する。文字間に間隙が有ることを用いて,文字画像が文字毎に区分され,一文字毎の文字画像データが抽出される。
【0012】
文字決定部は,文字画像データそれぞれに対応する文字(文字コード)を決定する。この決定に,文字特徴データベースが用いられる。
【0013】
文字特徴データベースは,文字それぞれの特徴を表す文字特徴データ(文字要素特徴データまたは文字パターンデータ)を有する。文字要素特徴データは,文字の構成要素(線素等)の特徴(例えば,線の本数,曲げの個数等)を表すデータである。文字パターンデータは,文字に対応する点素の集合(例えば,ドットマトリクス)を表すデータである。文字要素特徴データ,文字パターンデータはいずれも,文字それぞれの特徴を表す。
文字特徴データベースは,複数の文字それぞれの文字のパターン(文字パターンデータ)または文字要素の特徴(文字要素特徴データ)を記憶する記憶部として機能する。
【0014】
文字決定部は,文字画像データと,文字特徴データを対比して,その文字画像データと最も類似度の高い文字特徴データを選択する。即ち,文字画像データと,複数の文字特徴データ間の類似度が算出され,最も類似度の高い文字特徴データが選択される。この選択は,その文字画像データと最も対応する文字を識別する識別子(文字コード)の決定を意味する。
【0015】
文字決定部が,文書画像データから抽出された文字画像データそれぞれについて文字(文字コード)を決定することで,文書画像データに対応する文字列(文字コードの組み合わせ),即ち,認識結果文字列(文字認識結果データ)が生成される。
【0016】
認識結果表示部30は,認識結果文字列(文字認識結果データ)を表示装置,例えば,液晶表示装置に表示させる。
【0017】
図2は,認識結果表示部30による文字認識結果の表示画面の一例である。文書画像データフィールドF1,文字認識結果フィールドF2,置換候補フィールドF3,修正入力フィールドF4が表される。
【0018】
文書画像データフィールドF1は,文字認識対象文書の画像を表す文書画像データが表示される領域である。
【0019】
文字認識結果フィールドF2は,文書画像データからの文字認識処理によって生成された文字認識結果データに対応する文字列(認識結果文字列)が表示される領域である。ここでは,文字認識結果として「貴社の記者が活車で帰社した。」が文字認識結果フィールドF2に表示されている。
【0020】
文字認識結果フィールドF2中の文字には,誤認識候補文字C1,置換候補文字C2が表される。
【0021】
誤認識候補文字C1は,誤認識の可能性が高い文字であり,強調して表示される。例えば,文字画像データに対して,最も類似度の高い文字特徴データでの類似度が所定の閾値に達しない場合,その文字画像データの文字認識結果(決定された文字)が誤っている可能性が高い。
【0022】
なお,ここでは,網掛け文字で強調表示しているが,枠で囲む,太文字とする,表示色を付する(例えば,赤色とする)等,種々の強調表示を採用できる。
【0023】
修正対象文字C2は,修正対象の文字であり,強調して表示される。後述のように,修正文字指定部40によって,どの文字を修正するかが指定される。
【0024】
置換候補フィールドF3は,修正対象文字C2について,第2候補以降の文字(類似度が2番目以降の文字)が表される。修正対象文字C2を修正するために入力したい文字列が候補に含まれている場合は,置換候補フィールドF3中の文字を選択でき,オペレータの入力の手間を軽減できる。
【0025】
修正(置換)入力フィールドF4は,修正対象文字C2を修正(置換)するための,文字(または文字列)を入力する領域である。置換候補フィールドF3内に入力したい文字列が含まれない場合,修正入力フィールドF4に修正入力したい文字列が入力される。後述のように,文字入力部50により入力され,文字変換部60で変換され,変換文字表示・選択部90で選択された文字(または文字列)が入力される。
【0026】
修正文字指定部40は,文書画像データからの文字認識処理によって生成された文字認識結果データに対応する文字列(認識結果文字列)から修正する文字(または文字列)を指定する。この指定により,文字認識結果フィールドF2から修正対象文字C2が指定される。図2の例では,「活」という文字が修正対象文字C2として指定される。
【0027】
修正文字の指定には,種々の手法を利用できる。例えば,マウス,キーボードなどの入力機器で修正開始/終了位置を指定できる。また,認識結果文字列から修正候補文字(または文字列)を抽出し,この修正候補文字から修正対象文字C2を選択できる。文字認識の信頼度(文字認識部20で算出される類似度)や文法/単語の誤り(文法/単語の誤りのチェック結果)に基づいて,修正候補文字(または文字列)を抽出できる。例えば,認識結果文字列内の誤認識候補文字C1から修正対象文字C2を指定できる。
【0028】
文字入力部50は,修正対象文字C2を修正(置換)するための修正用文字(修正用文字データ)を入力するためのキーボード,音声入力装置等の入力デバイスである。
【0029】
図2の例では「汽車」の「汽」が「活」と誤認識されており,置換候補フィールドF3内にも正しい文字が提示されていないため,オペレータが修正入力フィールドF4に「汽」を入力して修正することとなる。この前提として,文字入力部50によって,修正用文字(または文字列)として仮名の「き」が入力される。
【0030】
文字変換部60は,入力された文字データ(修正用文字(または文字列))を変換して,複数の文字(置換候補文字(または文字列))を生成する。漢字のような文字数の多い文字種は,文字入力部50でそのまま入力するのが困難である。文字入力部50で入力された文字を文字変換部60で変換することで,最終的な文字または文字列が生成される(例えば,仮名漢字変換)。
【0031】
文字変換部60の一例として,いわゆるインプットメソッド(仮名漢字変換を行うIME(Input Method Editor),FEP(Front End Processor)や音声文字変換モジュールなど)を挙げることができる。なお,後述のように,仮名漢字変換に替えて,例えば,手書き文字入力での変換とすることもできる。
【0032】
文字変換部60は,変換辞書を有し,変換辞書を用いて,入力文字(変換前文字列)を変換文字(変換後文字列)に変換(生成)する。一般に,1つの変換前文字列に,複数の変換後文字列が対応することから,これらのどれを優先すべきかを表す優先度が導出される。
【0033】
変換辞書は,変換前文字列,変換後文字列,優先度基礎ポイントを対応して表す。
優先度基礎ポイントは,複数の変換後文字列の表示の優先度の基礎を規定する。即ち,基本的には,優先度基礎ポイントが高い変換後文字列が,優先して表示されるように,表示の優先度が定まる。
【0034】
但し,優先度の決定に際し,直前での使用履歴等が加味される。また,優先度基礎ポイントは,固定的なものではなく,使用履歴により順次に変更され,使用頻度の高い変換後文字列は,優先度基礎ポイントが追加される。このようにして,使用頻度が多いものや直前に使用した文字が上位となるように,優先度基礎ポイント等から優先度(得点)P1が算出され,表示順序等が決定される。
【0035】
ここでは,優先度(得点)が高いほど上位の候補になるものとし,第k番目の候補文字をC(k)としその得点をP1(k)とする。
P1(k)>=P1(k+1)
【0036】
この例では,「き」という仮名に対して,同じ読みの漢字として「木」,「期」,「機」,「旗」,「汽」など複数の候補(変換後文字列)が該当し,それぞれの優先度(得点)P1が導出される。
【0037】
ここで,優先度(得点)P1によって,複数の候補(変換後文字列)を表示することができる(図3(a)参照)。
しかし,優先度P1によって,ユーザが望む変換候補を常に上位候補として提示することは必ずしも容易でない。一般に,優先度P1によれば,変換候補のうち使用頻度が多いものを上位候補として提示され,「汽」のように一般的にそれほど用いられない文字は低い候補順位となる。このため,希望する「汽」を選択するまでに何度も変換キーやカーソルキーを押さなければならない可能性がある。
後述のように,本実施形態では,類似度算出部70によって算出される類似度P2を利用することで,表示状態の適正化が図られる。
【0038】
類似度算出部70は,修正が指定された文字(修正対象文字C2)の文字画像データと,複数の変換後文字それぞれとの複数の類似度(パタン間類似度)を算出する。この算出に,文字認識部20の文字特徴データベースを用いることができる。但し,文字認識部20とは別個に,類似度算出部70が,文字特徴データベースを有しても良い。
【0039】
詳しくは,修正対象文字C2の文字画像データ(または,文字画像データについての文字の構成要素(線素等)の特徴)と,複数の変換後文字の文字特徴データ(文字特徴データベース中の文字要素特徴データまたは文字パターンデータ)間の類似度が算出される。即ち,パタン間類似度とは,例えば,(a)修正対象文字C2の文字画像(一種の文字パタン)と文字特徴データベース中の文字パターン間の類似度,あるいは(b)修正対象文字C2の文字画像から抽出された文字要素特徴と文字特徴データベース中の文字要素特徴間の類似度を意味する。
【0040】
修正対象文字C2の文字画像(文字パタン)と文字変換部60によって生成された優先度P1が第k番目(優先度P1(k))の変換後文字の文字パターン(候補文字パタン)との類似度をP2(k)とする。類似度P2(k)として,例えば,特徴間のユークリッド距離の逆数を用いることで,より類似している文字パタン間であるほど高い類似度P2(k)を得ることができる。
【0041】
表示状態決定部80は,算出された複数の類似度P2(k)に基づいて,複数の変換後文字(置換候補)の表示状態を決定する。
表示状態決定部80は,次のように,優先度P1(k)類似度とP2(k)の加重和によって類似度P(k)を算出する。
P(k)=α・P1(k)+P2(k)
【0042】
重みづけ係数αは,優先度P1,類似度P2間での重み付けを調節するためのパラメータである。例えば,「α=0」とすると,類似度P2のみで表示状態が決定される。一方,αの値を大きくすると,類似度P中での優先度P1の重み付けが大きくなる。
【0043】
図2の例でより具体的に説明する。文字変換部60によって「き」の変換候補として「木」,「期」・・・などが生成される。一般的には,「き」の変換候補としては「汽」よりも「木」の方がよりもっともらしいため,文字変換部60で導出される優先度P1は「P1(1)>P1(6)」となっている(図4参照)。
【0044】
ここで,「貴社の記者が汽車で帰社した。」と書いてある文書画像中の「汽」の文字画像(文字パターン)と文字変換部60で生成された変換後文字(候補文字)の文字パターン間の類似度P2を考慮する。このとき,図4に示すように,変換後文字「汽」の文字パタンとの類似度P2(6)は,変換後文字「木」の文字パタンとの類似度P2(1)よりも大きい。即ち,類似度P2(6)は他の類似度P2よりも大きくなる。
この場合では,優先度P1と類似度P2の加重平均においても,類似度P(6)が類似度P(k)中で最大となる。なお,ここでは,「α=1」としている。
【0045】
表示状態決定部80は,類似度P(k)により,変換後文字(置換候補)の表示状態を決定する。この表示状態は,変換後文字(置換候補)の表示の順序,または変換後文字(置換候補)の強調表示を意味する。即ち,変換後文字(置換候補)が類似度P(k)の順に表示される。または,変換後文字(置換候補)が類似度P(k)の順に強調されて表示される。例えば,類似度P(k)が最も大きい,変換後文字(置換候補)が最上位あるいは強調されて表示される。
なお,強調表示として,網掛け文字,反転文字,枠で囲む,太文字とする,表示色を付する(例えば,赤色とする)等を採用できる。
【0046】
変換文字表示・選択部90は,変換後文字(置換候補)を表示装置,例えば,液晶表示装置に表示させ,オペレータに選択可能とする。
図3(b)は,変換文字表示・選択部90によって表示される変換後文字(置換候補)の一例を表す。ここでは,類似度P(k)が最大の変換後文字「汽」が最上位に表示される。即ち,優先度P1のみでは図3の(a)のような並び順での表示がされるものが,本実施形態では,図3の(b)のような並び順の表示となり,ユーザが望む変換候補を第一候補とすることができる。
【0047】
変換文字表示・選択部90によって,変換後文字(置換候補)が選択される。変換後文字の選択には,マウス,キーボード等を利用できる。選択された変換後文字は,修正入力フィールドF4内に表示される。
【0048】
文字置換部100は,文字認識結果フィールドF2内の修正対象文字C2を,変換文字表示・選択部90によって選択された変換後文字(置換候補,修正入力フィールドF4内の文字または文字列)に置換する。
【0049】
(文字認識装置1の動作手順)
図5は,文字認識装置1での処理の流れを示すフロー図である。
以下,「貴社の記者が活車で帰社した。」という認識文字列を「貴社の記者が汽車で帰社した。」という文字列に修正する例を用いて処理の流れを説明する。
【0050】
(1)文書画像の入力(ステップS11)
文書画像入力部10によって,文字認識対象とする文書の画像データ(文書画像データ)が入力される。ここでは,文字認識対象文書が,「貴社の記者が汽車で帰社した。」との文章(文字列)を含むものとする。
【0051】
(2)文字認識(ステップS12)
文字認識部20によって,文字認識処理がなされ,文書画像データから文字認識結果文書が生成される。例えば,次のような手順で,文字認識がなされる。
【0052】
1)文書画像データからの文字画像データの抽出
複数の文字(複数の文字画像データ)を含む文書画像データから一文字毎の文字画像データが抽出される。
【0053】
2)文字画像データに対応する文字(文字コード)の決定
文字特徴データベースを用いて,文字画像データそれぞれに対応する文字(文字コード)が決定される。
【0054】
3)文書画像データに対応する文字列(文字認識結果)の生成
全ての文字画像データに対応する文字(文字コード)が決定されることで,認識結果文字列(文字認識結果データ)が生成される。
【0055】
(3)文字認識結果の表示(ステップS13)
文字認識の結果が表示される。例えば,図2に示すように,文字認識結果フィールドF2内に文字認識の結果が表示される。
【0056】
(4)修正すべき文字があるかどうかの判断(ステップS14)
オペレータにより,入力文書中に修正すべき文字があるかどうかが判断される(ステップS14)。入力文書中に修正すべき文字列が存在しなくなるまで以後の修正作業が繰り返される。修正すべき文字列が存在しなくなれば処理の終了となる。
【0057】
(5)修正文字の指定(ステップS21)
修正文字指定部40によって,文字認識結果フィールドF2内の修正対象文字C2が指定される(ステップS21)。ここでは,認識結果文字列内の誤認識候補文字C1から「活」という文字が修正対象文字C2として指定されている。
【0058】
(6)修正用文字の入力(ステップS22)
文字入力部50でオペレータが修正用文字を入力する(ステップS22)。
図2の例では,「汽」が「活」と誤認識されており,修正入力フィールドF4に「汽」を入力して修正することとなる。この前提として,修正用文字として仮名の「き」が入力される。
【0059】
(7)入力文字の変換(ステップS23)
文字変換部60において,修正用文字列入力部で入力された修正用文字列(入力文字)に基づいて複数の置換候補文字列(変換後文字)が生成される(ステップS23)。
【0060】
変換辞書を用いて,入力文字(変換前文字列)が変換文字(変換後文字列)に変換される。このとき,1の変換前文字列に対して,複数の変換後文字列が対応し,これら変換後文字列それぞれの優先度P1が導出される。ここでは,「き」という仮名に対して,「木」,「期」,「機」,「旗」,「汽」など複数の候補(変換後文字列)およびそれぞれの優先度(得点)P1が導出される。
【0061】
(8)類似度の算出(ステップS24)
類似度算出部70によって,指定された文字(修正対象文字C2)の文字画像データと,複数の変換後文字列それぞれとの複数の類似度(パタン間類似度)P2が算出される。ここでは,「木」,「期」,「機」,「旗」,「汽」など複数の候補(変換後文字列)それぞれの類似度(パタン間類似度)P2(k)が導出される。
【0062】
(9)表示状態の決定(ステップS25)
表示状態決定部80によって,変換後文字(置換候補)の表示状態を決定される(ステップS25)。表示状態決定部80は,優先度P1(k)類似度とP2(k)の加重和によって,類似度P(k)を算出し,この類似度P(k)によって表示状態が決定される。
【0063】
(10)変換文字の表示・選択(ステップS26)
画面に文字変換候補(図3(b)参照)が表示され,選択される(ステップS26)。選択された変換後文字は,修正入力フィールドF4内に表示される。
【0064】
(11)修正文字の置換(ステップS27)
文字置換部100によって,文字認識結果フィールドF2内の修正対象文字C2が変換後文字(置換候補,修正入力フィールドF4内の文字または文字列)に置換される(ステップS27)。
【0065】
本実施形態によれば,文字認識結果中の誤認識された文字列を修正する際,文字認識に利用した文書画像中の文字画像と字形が似ている変換後文字(置換候補文字)を優先的に提示できる。このため,仮名漢字変換等での変換効率向上が実現できる。
【0066】
以上の実施形態では,文字変換部60での変換に,日本語入力のインプットメソッドで広く用いられている仮名漢字変換を用いることとして説明している。これに対して,他の変換手法を用いることも可能である。
【0067】
例えば,文字入力部50において手書きで文字入力し,文字変換部60においてこの手書き文字入力に基づいて,複数の変換後文字(置換候補文字(または文字列))を生成する。この場合,文字入力部50は,文字を表す軌跡のパターンが入力可能なタブレット等の入力デバイスである。文字変換部60は,対応する変換後文字列および文字パターンを含む変換辞書を有する。文字変換部60は,入力された軌跡のパターンと変換辞書の文字パターンから類似度P3を算出し,変換後文字を決定する。例えば,類似度P3の順に複数の変換後文字が生成される。
【0068】
この場合,表示状態決定部80は,次のように,表示状態を決定するための類似度P(k)として,類似度P3(k),P2(k)の加重和を利用できる。
P(k)=α・P3(k)+P2(k)
【0069】
この場合でも,文字画像での類似度P2を利用できることから,文字認識に利用した文字画像と字形が似ている変換後文字(置換候補文字)を優先的に提示できる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 文字認識装置
10 文書画像入力部
20 文字認識部
30 認識結果表示部
40 修正文字指定部
50 文字入力部
60 文字変換部
70 類似度算出部
80 表示状態決定部
90 変換文字表示・選択部
100 文字置換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書画像データに基づき,文字認識して,認識結果文字列を生成する文字認識部と,
前記認識結果文字列から修正する文字を指定する修正文字指定部と,
修正するための文字データを入力する文字入力部と,
前記入力された文字データを変換して,複数の文字を生成する文字変換部と,
前記指定された文字に対応する,文書画像データの文字画像データと,前記複数の文字それぞれとの複数の類似度を算出する類似度算出部と,
前記算出された複数の類似度に基づいて,前記複数の文字の表示状態を決定する表示状態決定部と,
を具備する文字認識装置。
【請求項2】
前記文字変換部が,前記入力された文字データに対する,前記複数の文字それぞれの優先度を導出し,
前記表示状態決定部が,前記導出された優先度および前記算出された類似度に基づいて,前記複数の文字の表示状態を決定する
請求項1記載の文字認識装置。
【請求項3】
前記複数の文字それぞれの文字のパターンまたは文字要素の特徴を記憶する記憶部,をさらに具備し,
前記記憶されたパターンまたは特徴に基づいて,前記類似度算出部が,前記複数の類似度を算出する,
ことを特徴とする請求項1または2に記載の文字認識装置。
【請求項4】
前記複数の文字の表示状態が,前記複数の文字の表示の順序または,前記複数の文字の強調表示である,
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の文字認識装置。
【請求項5】
文書画像データを入力する工程と,
前記入力された文書画像データに基づき,文字認識して,認識結果文字列を生成する工程と,
前記認識結果文字列から修正する文字を指定する工程と,
修正するための文字データを入力する工程と,
前記入力された文字データを変換して,複数の文字を生成する工程と,
前記指定された文字に対応する,文書画像データの文字画像データと,前記複数の文字それぞれとの複数の類似度を算出する工程と,
前記算出された複数の類似度に基づいて,前記複数の文字の表示状態を決定する工程と,
を具備する文字認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−43385(P2012−43385A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186679(P2010−186679)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】