説明

断熱二重壁を有する排気系部品

自動車の排気系に用いる排気系部品(18、10)。排気系部品は、排気系部品を排気系に用いる時に排気ガスが流れる空間(9、11;21)を囲む二重壁を含む。二重壁は、その間の空隙を画定する第1および第2の金属壁(12、14;26、28)から構成されている。空隙は、チョップドケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーでできた断熱材料(16)を含む。断熱材料は、例えば、エンドコーンプリフォームの形態とすることができる。排気系部品は排気管(18)とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に、内燃機関を有する自動車の排気系に用いる排気系部品に関する。本発明は、特に、排気系部品の二重壁の空隙に用いる断熱材料に関する。本発明は更に、自動車の排気系および断熱材料のエンドコーンプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両、特に自動車にプラスチックや電子部品がより多く使われるようになり、これらの品目を熱い排気系部品から断熱することがより重要になってきている。現在、車の個々の部品や特定の領域は、熱遮蔽や断熱により保護されていたり、熱を避けるために排気系から十分な距離をおいて配置されている。熱遮蔽や断熱は、プラスチックガソリンタンクのように、保護すべき品目が大きいとコストが高くなり、排気系からかかる品目を離して配置するのが必ずしも可能ではなかったり実際的ではなかったりする。より経済的なやり方は、熱源を断熱することである。この場合は、排気ガスが流れ、排気ガスにより加熱される排気系部品である。排気系部品としては、例えば、排気管や触媒コンバータが挙げられる。
【0003】
汚染防止装置は、一般に、モノリシック構造の形態で基材上にコートされる1種類以上の触媒を含有している。金属モノリスが用いられてきたとはいえ、モノリシック構造は、一般的にセラミックである。触媒は、排気ガス中の一酸化炭素および炭化水素を酸化する、窒素酸化物を還元する、またはその両方を行う。ディーゼル微粒子フィルタまたはトラップは、一般的に多孔性結晶セラミック材料から作成されたハニカムモノリシック構造を持つ壁フローフィルタの形態である。ハニカムモノリシック構造の交互のセルは、排気ガスが1つのセルに入って、多孔性壁を通って他のセルに流れて、構造から出るように栓がされているのが一般的である。
【0004】
これらの汚染防止装置の一般的な構造において、モノリシック構造は金属筐体で囲まれている。モノリシック構造は、一般的に車両の排気管より直径が大きいため、金属筐体は一般的にコンバータとモノリスの入口および/または出口の間に移行ゾーンを含んでいる。エンドコーン領域と呼ばれるこの移行ゾーンは、モノリシック構造に好適な直径から、排気管に連結するのに好適な直径まで狭くなっている。エンドコーンは、通常、円錐形状であり、汚染防止装置の入口側と出口側の両方に提供できる。
【0005】
汚染防止装置は、「消灯」または一酸化炭素および炭化水素の酸化が始まる前に、特定の温度、例えば、250℃以上に達していなければならない。従って、エンジンの近くに配置されているのが好ましい。更に、汚染防止装置とコンバータの筐体の間は通常は断熱されており、熱損失を最小にして、「消灯」されるまでの時間を減らすために、エンジンと汚染防止装置の間の排気系部品を断熱するのも好ましい。車を、特に寒冷時に始動する時には、ますます厳しくなる大気基準を満足させるために、これは非常に重要なことである。
【0006】
一般的に、触媒コンバータのエンドコーン領域は断熱されている。エンドコーン領域は、一般的に、外側金属コーンと内側金属コーンを含み、2つのコーンの間で画定された空隙を備えた二重壁構造を有している。断熱材料を、内側と外側金属筐体の間の空隙に配置させることができる。断熱は、マットの形態や三次元形態とすることができる。
【0007】
排気系部品に用いるために多くの異なる断熱材料が開示されている。例えば、米国特許第5,024,289号明細書には、二重壁排気管の内側と外側壁の間の空隙に用いられる断熱材料が開示されている。触媒コンバータのエンドコーン領域の断熱に用いるために、汚染防止装置を触媒コンバータの金属筐体に装着するのにも一般的に用いられている膨張性材料が提案されている。これらの膨張性マット材料は、保持マットとしてではなく断熱としてのみ機能する必要があるだけのため、汚染防止装置の装着に用いる時よりも低い組立て密度で用いられている。かかる膨張性シート材料は、例えば、米国特許第3,916,057号明細書および同第4,305,992号明細書に記載されている。これらの断熱材料は、通常、膨張性材料として蛭石と、マットを保持する有機バインダーとを含有している。例えば、国際公開第98/50688号パンフレットには、触媒コンバータのエンドコーン領域において断熱材料としてのかかる膨張性材料の使用が開示されている。しかしながら、使用に際して、大きな蛭石粒子は、マットのマット形成穴に対して振動して、断熱特性を減じ、最悪の場合には、マットが壊れてしまう。コーン領域から逃げるマットの粒子または片によって、モノリスセルが詰まり、背圧が非常に高くなって、触媒コンバータが故障してしまう可能性がある。
【0008】
アモルファス、耐火、セラミックファイバーマットも、触媒コンバータのエンドコーン領域の断熱材料として試されたが、これらのマットは、通常、エンドコーン断熱材としての長期耐久性を与えるだけの十分な弾力性に欠けていた。更に、車両に生じる振動に際してマットが壊れる。米国特許第5,250,269号明細書には、高温でアニールすることにより、耐火セラミックファイバーの弾力性を大幅に増大させる方法が記載されている。それでも、耐震性はまだ十分ではない。更に、アニール工程により製造工程が増え、製造の簡便性が減り、コストが上がる。
【0009】
多結晶ファイバーもまたエンドコーン断熱に用いられてきた。これらのファイバーは、排気系部品中の断熱材料として通常よく機能するが、上述した材料よりも遥かに高価なため、排気系部品に使用するのに製造する魅力に欠ける。
【0010】
例えば、排気管や触媒コンバータのエンドコーンをはじめとする排気系の様々な部品を断熱するのに用いることのできる他の断熱材料を見出すことが望まれている。特に、排気系部品の二重壁の壁の間の空隙に用いて、排気系を自動車で用いる時に生じる振動により断熱材料が壊れる傾向の少ない断熱材料を見出すことが望まれている。一般的に、かかる断熱材料は環境によりやさしく、断熱材料は、簡便な方法かつ低コストで製造できるのが好ましい。断熱材料は、例えば、一般的なガソリンエンジンで生じるような高温条件と、例えば、ディーゼルエンジン、特に、ターボディーゼルエンジンで生じるような低温条件との両方で用いることができるのも望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一面において、排気系部品を排気系に用いる時に排気ガスが流れる空間を囲む二重壁であって、チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーでできた断熱材料を含む空隙をそれらの間で画定する第1および第2の金属壁から構成されている二重壁を含む、自動車の排気系に用いる排気系部品が提供される。
【0012】
チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーでできた断熱材料は、排気系部品の二重壁の空隙に用いると良好な断熱特性を与えることを見出した。更に、かかる断熱材料は、容易かつ簡便な方法で低コストで製造することができる。また、断熱材料は、通常、自動車の使用時に生じるような振動に対する良好な耐震性を与える。断熱材料は更に、ガソリンエンジンからのような高温排気および、例えば、ディーゼルエンジン、特にターボディーゼルエンジンからの低温排気に用いるよう容易に設計することができる。
【0013】
本発明の更なる面において、上記の排気部品を含む排気系が提供される。更に、本発明は、チョップドガラスファイバーでできた断熱材料を含むエンドコーンプリフォームを提供する。
【0014】
本明細書において使用した場合に、「エンドコーンプリフォーム」という用語とは、触媒コンバータのエンドコーンを断熱するのに好適な形状および寸法を有していて、三次元円錐形が、形成後重力がかかってもその形状を維持する三次元円錐形のことを意味する。
【0015】
本明細書において使用した場合に、「ガラスファイバー」という用語は、ガラスからなるファイバーのことを意味し、ガラスという用語は、実質的に結晶化せずに剛性状態まで冷却した溶融無機生成物のことを意味する。
【0016】
以下、添付の概略図を用いて本発明を更に説明および例証するが、本発明はこれらの例示のための実施形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に用いる断熱材料は、チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーを含む。チョップドという用語は、ファイバーが切断またはチョッピングにより個別化されていることを意味する。個別の(すなわち、ファイバーが互いに分離している)ファイバーとするには、ファイバーのトウまたはヤーンを、例えば、ガラスロービングカッター(例えば、カリフォルニア州パコマのフィン&フラム(Finn&Fram,Inc.,Pacoma,Calif.)より「型番90ガラスロービングカッター(MODEL 90 GLASS ROVING CUTTER)」という商品名で市販)を用いてチョップして、所望の長さ(一般的に約0.5〜約15cmの範囲)とすることができる。ファイバーの直径はほぼ均一であり、平均の直径が±3μm以内のファイバーの量は、通常、ガラスファイバーの総重量の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%である。得られたファイバーは、実質的にショットフリーであり、ファイバー重量に基づいて2重量%未満、好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.5重量%未満のショットを含有している。理論により拘束されることは望むところではないが、特に、ファイバーを実質的にショットフリーで製造できるということによって、断熱材料がその完全性および断熱特性を経時にわたって維持し、断熱材料の耐震性が改善されるものと考えられる。ガラスファイバーは、一般的に、ケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバー、すなわち、マグネシウム、アルミニウムおよびケイ素の酸化物を含むガラスファイバーである。ただし、他のガラス組成を用いてもよい。
【0018】
ケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーとしては、10〜30重量%の酸化アルミニウム、52〜70重量%の酸化ケイ素および1〜12重量%の酸化マグネシウムを含むガラスファイバーが例示される。上述した酸化物の重量パーセンテージは、Al23、SiO2およびMgOの理論量に基づいている。さらに、ケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーが追加の酸化物を含有していてもよいものと考えられる。例えば、存在させてもよい追加の酸化物としては、酸化ナトリウムまたは酸化カリウム、酸化ホウ素および酸化カルシウムが挙げられる。ケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーとしては、約55%のSiO2、11%のAl23、6%のB23、18%のCaO、5%のMgOおよび5%のその他の酸化物の組成を一般的に有するE−ガラスファイバー、約65%のSiO2、25%のAl23および10%のMgOの組成を一般的に有するSおよびS−2ガラスファイバー、60%のSiO2、25%のAl23、9%のCaOおよび6%のMgOの組成を一般的に有するR−ガラスファイバーが具体的に例示される。E−ガラス、S−ガラスおよびS−2ガラスは、例えば、アドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)より入手可能であり、R−ガラスはサンゴバンベトロテックス(Saint−Gobain Vetrotex)より入手可能である。
【0019】
断熱材料は、ケイ酸アルミニウムガラスファイバーに加えてその他のファイバーを含有していてもよいが、断熱材料を作成するファイバーの一般的に少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%が、ケイ酸アルミニウムガラスファイバー、好ましくはケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーであるのが好ましい。断熱材料を作成するファイバーの数平均直径は5μm以上であるのが好ましく、長さは0.5〜15cmであるのが好ましい。断熱材料は、直径3μm以下のファイバーを実質的に含まない、または含まないのが好ましい。実質的に含まないとは、かかる直径の小さなファイバーの量が断熱材料中のファイバーの総重量の2重量%以下、好ましくは1重量%以下であることを意味する。直径3μm以下のファイバーを含まない、または含んでも少量の断熱材料は、使用中および/または製造中にファイバーが断熱材料から万一移動しても健康上のリスクが低いという利点を与える。断熱材料のガラスファイバーはボンドされているのが好ましいため、断熱材料は、一般的にマット、通常は不織マットである。
【0020】
断熱材料から不織マットを製造する好ましい方法において、カットまたはチョップドファイバーは、従来の2つのゾーンのラロシュオープナー(Laroche Opener)(例えば、フランス、クールラヴィルのラロシュS.A.(Laroche S.A.,Cours la Ville,France)より市販)に通過させることにより分離することができる。ガラスファイバーはまた、ハンマーミル、好ましくはブローディスチャージハンマーミル(例えば、オハイオ州ティフィンのC.S.ベル(C.S.Bell Co.,Tiffin,Ohio)より「ブロワディスチャージ型番20ハンマーミル(BLOWER DISCHARGE MODEL 20 HAMMER MILL)」という商品名で市販)に通過させることによっても分離することができる。あまり効率的ではないが、イリノイ州シカゴのW.W.グレインジャー(W.W.Grainger,Chicago,Ill)より「デイトンラジアルブロワ(DAYTON RADIAL BLOWER)」型番3C539、31.1cm(12.25インチ)、3馬力という商品名で市販されているような従来のブロワを用いてファイバーを個別化することができる。チョップドファイバーは、通常、ラロシュオープナーを1回通過させる必要があるだけである。ハンマーミルを用いるときは、通常、2回通過させなければならない。ブロワのみを用いる場合は、ファイバーは、一般的に、少なくとも2回通過させる。不織マットへと形成される前に、ファイバーの少なくとも50重量パーセントが個別化しているのが好ましい。
【0021】
約15cmを超えるカットまたはチョップドファイバーもまた不織マットを作成するのに有用であるが、処理が難しい傾向にある。ファイバーの分離によって、不織マットを作成するファイバーの嵩だか性を増大(すなわち、バルク密度を減少)させる傾向があり、これによって、得られるマットの密度が減少する。
【0022】
破損が最小のチョップドまたはカットファイバーの処理および分離を促すために、帯電防止潤滑材(例えば、ニュージャージー州ハットフィールドのスミコ(Simco Co.Inc.,Hatfield,N.J.)より「ニュートロスタット(NEUTROSTAT)」)を、ファイバーを分離しながらハンマーミルにスプレーすることができる。
【0023】
不織マットを製造する方法によれば、チョップド個別ファイバー(好ましくは長さが約2.5〜約5cm)を従来のウェブ形成機(ニューヨーク州マセドンのランドーマシーン(Rando Machine Corp.,Macedon,N.Y)より「ランドーウェバー(RANDO WEBBER)」、またはデンマークのスキャンウェブ(ScanWeb Co.,Denmark)より「ダンウェブ(DAN WEB)」という商品名で市販されている)に供給し、ファイバーをワイヤスクリーンまたはメッシュベルト(例えば、金属またはナイロンベルト)上に延伸する。「ダンウェブ(DAN WEB)」型のウェブ形成機を用いる場合には、ファイバーはハンマーミルそしてブロワを用いて個別化するのが好ましい。長さ約2.5cmを超えるファイバーは、ウェブ形成プロセス中に交絡する傾向がある。マットの取扱い性を促進させるために、マットをスクリム上で形成またはスクリム上に配置させることができる。ファイバーの長さに応じて、得られるマットは、支持体(例えば、スクリム)を必要とせずにニードルパンチ機に移動させるのに十分な取扱い性を有している。
【0024】
不織マットはまた、従来の湿式成形またはテキスタイルカーディングを用いて作成することもできる。湿式形成プロセスについて、ファイバーの長さは約0.5〜約6cmであるのが好ましい。テキスタイルプロセスについて、ファイバーの長さは約5〜約10cmであるのが好ましい。
【0025】
ガラスファイバーをマットに保持するために、不織マットはニードルパンチしてもよい。ニードルパンチされた不織マットとは、例えば、バーブドニードルにより複数回マットを完全に、または部分的に(好ましくは完全に)貫通させることによりファイバーを物理的に交絡させたマットのことの指す。不織マットは、従来のニードルパンチング装置(例えば、ドイツのディーロ(Dilo、Germany)より「ディーロ(DILO)」という商品名で市販されているニードルパンチャー、バーブドニードル(例えば、ウィスコンシン州マニトワックのフォスターニードルカンパニー(Foster Needle Company,Inc.,Manitowoc,Wis.)より市販されている)を用いてニードルパンチして、ニードルパンチされた不織マットとすることができる。ファイバーを交絡させるニードルパンチングには、一般的には、マットの圧縮と、バーブドニードルでマットをパンチングし引き抜くことが含まれる。マットの面積当たりのニードルパンチの最適数は、特定の用途に応じて異なる。一般的に、不織マットをニードルパンチすると、約5〜約60ニードルパンチ/cm2となる。マットをニードルパンチして、約10〜約20ニードルパンチ/cm2とするのが好ましい。
【0026】
ニードルパンチされた不織マットは、単位面積値当たりの重量が約400〜約2000g/m2の範囲、他の態様においては厚さが約0.5〜約3センチメートルの範囲であるのが好ましい。5kPAの負荷での一般的な嵩密度は0.08〜0.25g/ccである。
【0027】
不織マットはまた、従来の技術(不織マットのステッチボンディングの教示について、その開示内容がここに参考文献として組み込まれる米国特許第4,181,514号明細書(レフコヴィッツ(Lefkowitz)ら参照)を用いてステッチボンドすることができる。一般的に、マットは有機スレッドでステッチボンドされる。有機または無機シート材料の薄層は、スレッドがマットを切断するのを防ぐ、または最小にするために、ステッチボンディング中、マットの片側または両側に配置させることができる。ステッチスレッドが使用中に分解されないのが望ましい場合には、セラミックや金属(例えば、ステンレス鋼)のような無機スレッドを用いることができる。ステッチの間隔は、ファイバーがマットの全領域を均一に圧縮するよう、通常、3〜30mmである。
【0028】
ファイバーはまた、バインダーによりファイバーをボンディングすることによりマットへ形成してもよい。バインダーは、クレイやコロイドシリカのような無機物であっても有機物であってもよい。有機バインダーは、マットを取り扱うのに必要な弾力性を与えるが、操作中には燃え尽きるものが好ましい。有機バインダーは乾燥基準で約1〜20重量%の量で用いることができる。好適な有機バインダー材料としては、水性ポリマーエマルジョン、溶剤系ポリマーおよび100%の固体ポリマーが挙げられる。水性ポリマーエマルジョンは、ラテックス形態の有機バインダーポリマーおよびエラストマー(例えば、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、ブタジエン−アクリロニトリルラテックス、アクリレートおよびメタクリレートポリマーおよびコポリマーのラテックス)である。溶剤系ポリマーバインダーは、アクリル、ポリウレタンまたはゴム系有機ポリマーのようなポリマーとすることができる。100%固体のポリマーとしては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびその他エラストマーが挙げられる。
【0029】
好ましくは、有機バインダー材料としては、水性アクリルエマルジョンが挙げられる。エージング特性および非腐食性燃焼生成物のため、アクリルエマルジョンが好ましい。有用なアクリルエマルジョンとしては、ローム・アンド・ハース(ペンシルバニア州、フィラデルフィア)(Rohm and Haas,Philadelphia,PA.)より「ロープレックス(RHOPLEX)TR−934」(44.5重量%の固体のアクリルコポリマーの水性エマルジョン)および「ロープレックス(RHOPLEX)HA−8」(45.5重量%固体のアクリルエマルジョンの水性エマルジョン)という商品名で、ICIレジンUS(マサチューセッツ州、ウィルミントン)(ICI Resins US,Wilmington,Mass)より「ネオクリル(NEOCRYL)XA−2022」(60.5%固体のアクリル樹脂の水性分散液)という商品名で、エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ(ペンシルバニア州、アレンタウン)(Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown,Pa)よりエアフレックス(Airflex)(登録商標)600BP DEV(55重量%固体のエチレン酢酸ビニルアクリレートターポリマーの水性エマルジョン)という商品名で市販されているものが挙げられる。有機バインダー材料は1種類以上の可塑剤も含むことができる。可塑剤は、ポリマーマトリックスを軟化させる傾向があり、組成物から作成されたシート材料の可撓性および成形性に寄与する。
【0030】
バインダー付きマットは、従来の製紙プロセスにより作成することができる。製紙プロセスにおいて、チョップドガラスファイバーは水およびバインダーと混合されて、固体10%未満の混合物またはスラリーが形成される。スラリーを凝集剤および排水保持助剤化学薬品で凝集させる。次に、凝集した混合物を製紙機に入れてマットに形成し、脱水し、乾燥する。マットはまた、マットをバインダーに含浸させ、過剰のバインダーを搾って硬化することによって形成してもよい。バインダーは、スプレーによりマット表面に適用してもよい。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、マットは、ガラスファイバーの複数の層から構成されていてもよい。かかる層は、用いるファイバーの平均直径、用いるファイバーの長さおよび/または用いるファイバーの化学組成において互いに区別される。その組成および程度は少ないがファイバー直径により、ある温度のファイバーの耐熱性および機械的強度は異なるため、ファイバー層はコストを最小にしつつ性能を最適にするように選択することができる。例えば、E−ガラス層と組み合わせたS−2ガラス層からなる不織マットは、排気系部品の断熱材料として用いることができる。使用中、S−2ガラス層は、排気系部品の二重壁の熱い内壁に直接配置され、E−ガラス層は排気系部品の二重壁の冷たい外壁に配置される。層を組み合わせたマットは、S−2ガラスファイバーのみからなるマットと比べて、大幅にコストの減じたE−ガラスファイバーのみからなるマットよりもかなりの高温に耐えられる。層状マットは、まず、前述した形成技術を用いて、特定の種類のファイバーを有する別個の不織層を形成することにより作成することができる。これらの層を併せてニードルボンドして、所望の別個の層を有する最終マットを形成する。
【0032】
断熱材料は、使用中は、熱い排気ガスが流れる排気系部品の内部空間を囲む二重壁の第1の(外)壁と第2の(内)壁との間を画定する空隙に断熱材料が望ましい様々な排気系部品に用いることができる。断熱材料は、一般的に、0.1〜0.45g/cm3、好ましくは0.2〜0.3g/cm2の実装密度で空隙に装着される。断熱特性は低実装密度で増大するが、断熱材料の密度が低すぎると、排気系部品が振動したときにファイバーが緩んでしまう。
【0033】
断熱材料は、排気管の二重壁の断熱や、コンバータの入口または出口と汚染防止装置の汚染防止モノリスとの間を画定する移行ゾーンにある触媒コンバータのような汚染防止装置の二重壁の断熱に特に有用である。この移行ゾーンは、一般的に円錐形であるため、本発明ではエンドコーンとも呼ばれる。
【0034】
図1に、本発明による排気系部品の一実施形態を示す。排気管18の長手方向断面の概略を示してある。排気管18は、第1の金属外壁14と、第2の金属内壁12とからなる二重壁を有している。その間で、外壁14と内壁12は空隙を画定しており、そこには上述したチョップドガラスファイバーでできた断熱材料16が含有されている。排気管の二重壁は、内部空間21を囲んでおり、自動車の排気系において排気管を用いると排気ガスがその中を流れる。
【0035】
図2に、排気系部品が汚染防止装置10、例えば、触媒コンバータを含む実施形態を示す。汚染防止装置10は、入口5と汚染防止モノリス8の間を画定する略円錐形の移行ゾーン4(入口コーン)と、出口7と汚染防止モノリス8の間を画定する略円錐形の移行ゾーン6(出口コーン)とを備えた筐体2を有している。缶またはケースとも呼ばれる筐体2は、この目的で業界に公知の好適な材料から作成することができ、一般的には、金属、好ましくはステンレス鋼である。筐体2内に配置されているのは、セラミックか金属のいずれかのハニカムモノリシック本体で形成されたモノリシック触媒要素のような汚染防止モノリス8である。汚染防止モノリス8の周囲にあるのは、通常は膨張性材料でできた装着マット22である。装着マット22は、熱い排気ガスが汚染防止装置を流れて、ケースと汚染防止モノリスの間の空隙が広がるときに、汚染防止モノリス8の十分な保持力を維持するものでなければならない。
【0036】
入口コーン4と出口コーン6は、上述した組成を有する断熱材料30に存在する中間の空隙を画定する金属内壁28と金属外壁26とから構成される二重壁を有している。入口および出口コーンの金属壁26および28は、一般的に、ステンレス鋼または、インコネル(INCONEL)(登録商標)600のような市販の合金でできている。汚染防止モノリス8とケース2の間の空隙とは違い、入口および出口コーンの内壁と外壁の間を画定する空隙は、熱いガスが入口および出口コーンの二重壁に囲まれた内部空間9および11を流れると狭くなる傾向がある。内壁28が熱くなると、冷たい金属外壁26よりも膨張するため、空隙は狭くなる傾向がある。従って、断熱材料30は、繰り返しの加熱および冷却サイクル後、空隙を適切に充填し断熱し続けられるよう十分な弾力性を有するものでなくてはならない。本発明において用いる断熱材料は、装着マット22に一般的に用いられる膨張性材料に対して良好な弾力性を有している。
【0037】
汚染防止装置のエンドコーンの二重壁に用いるには、断熱材料は、エンドコーンプリフォームへと形成されるのが好ましい。断熱材料のかかるエンドコーンプリフォームは、国際公開第98/50688号パンフレットに開示された方法のいずれかに従って得ることができる。第1のかかる方法は、断熱材料をコーンへと形成可能な断熱不織マット材料に複数のスリットを作成し、断熱材料がコーン形状を維持するよう断熱材料と密着させて形状保持材料を与えるものである。形状保持要素は、例えば、剛体化溶液、断熱材料または熱収縮性フィルムの一表面にラミネートされた金属ホイルであってもよい。更なる方法は、断熱マット材料のシートを半月形に切断し、シートの両端を、例えば、接着テープのような形状保持要素により取り付けるものである。
【0038】
国際公開第98/50688号パンフレットに開示された方法に加えて、以下の方法を用いることができる。この方法は、チョップドガラスファイバーと任意の好適な有機または無機バインダーの水性スラリーを調製し、スラリーを処理して成形プリフォームを作成し、水を除去してエンドコーンプリフォームへと成形された断熱材料を作成するものである。本発明のスラリー組成物は、一般的に、平均長さが3cm未満のガラスファイバーを含有している。平均長さは、一般的に約0.3cmより大きい。
【0039】
ガラスファイバーに加えて、本発明のスラリーは、ガラスファイバーを存在させて形成された無機コロイド材料を含むことができる。無機コロイド材料は、例えば、組み合わせると金属水酸化物を形成する2種類以上の水溶性前駆体をスラリーに添加することにより形成することができる。スラリー中に無機コロイド材料が形成されることによって、コロイドの凝集を最小にし、コロイドをスラリー全体に均一に分配させるのを向上させる傾向がある。
【0040】
無機コロイド金属酸化物の一例としては、アルカリ金属アルミン酸塩とアルミニウム塩の反応により形成された水酸化アルミニウムである。より具体的には、水酸化アルミニウムは、例えば、アルミン酸ナトリウムと硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムまたはこれらの混合物の反応から形成することができる。無機コロイド材料は、通常、スラリー中に、ガラスファイバーの重量に基づいて約30%未満の量で存在する。無機コロイド材料は、ガラスファイバーの保持を補助する無機バインダーとして機能することができる。無機バインダーは、成形プリフォームを形成するためのスラリーの処理中、有機バインダーより有利である。有機バインダーの中には、フィルムを形成して、脱水システムの一部となるスクリーンを遮断する恐れのあるものがある。例えば、いくつかの成形体がスクリーンを有している。
【0041】
水性スラリーは、一般的に、スラリーの重量に基づいて約30重量パーセントまでの固体を含有している。例えば、スラリーは、スラリーの重量に基づいて約20重量パーセントまたは約10重量パーセントまでの固体を含有している。スラリーは、一般的に、スラリーの重量に基づいて少なくとも約1パーセントの固体を含有している。例えば、スラリーは少なくとも約2重量パーセントまたは少なくとも3重量パーセントの固体を含有することができる。ある実施形態において、スラリーは約1〜約10、約2〜約8または約3〜約6重量パーセントの固体を含有することができる。固体が多いと、断熱材料を作成するのに水を除去する必要が少なくなるため有利である。しかしながら、固体のパーセントの高いスラリーは混合し難い傾向がある。
【0042】
スラリーに用いる水は、地下水または塩および有機化合物のような不純物を除去すべく処理された水とすることができる。ある実施形態において、水は、脱イオン水、蒸留水またはこれらの組み合わせである。有機バインダーを、無機コロイド材料の他にスラリー組成物に含めることができる。有機バインダーは、成形三次元断熱材料の可撓性および取扱い特性を改善する傾向がある。より可撓性の断熱材料は、汚染防止装置のエンドコーン領域において、内側と外側筐体の間により簡単に配置させることができる。有機バインダーは断熱材料の重量に基づいて約20重量パーセントまでの量で用いることができる。ある実施形態において、有機バインダーは、断熱材料の重量に基づいて約10重量パーセントまで、約5重量パーセントまで、または約3重量パーセントまでの量で存在させる。
【0043】
好適な有機バインダー材料としては、水性ポリマーエマルジョン、溶剤系ポリマーおよび溶剤を含まないポリマーが挙げられる。水性ポリマーエマルジョンは、ラテックス形態の有機バインダーポリマーおよびエラストマー(例えば、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、ブタジエン−アクリロニトリルラテックス、アクリレートおよびメタクリレートポリマーおよびコポリマーのラテックス)を含むことができる。溶剤系ポリマーバインダーは、アクリル、ポリウレタン、酢酸ビニル、セルロースまたはゴム系有機ポリマーのようなポリマーを含むことができる。溶剤を含まないポリマーとしては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびその他エラストマーが挙げられる。
【0044】
ある実施形態において、有機バインダー材料としては、水性アクリルエマルジョンが挙げられる。アクリルエマルジョンは、良好なエージング特性および非腐食性燃焼生成物が得られる傾向があり有利である。好適なアクリルエマルジョンとしては、これらに限られるものではないが、ローム・アンド・ハース(Rohm and Hass)(ペンシルバニア州フィラデルフィア)(Philadelphia,PA)よりロープレックス(RHOPLEX)TR−934(44.5重量パーセント固体の水性アクリルエマルジョン)およびロープレックス(RHOPLEX)HA−8(45.5重量パーセント固体のアクリルコポリマーの水性エマルジョン)という商品名で、ICIレジンUS(ICI Resins US)(マサチューセッツ州ウィルミントン)(Wilmington,MA)より入手可能なネオクリル(NEOCRYL)XA−2022(60.5パーセント固体のアクリル樹脂の水性分散液)という商品名で、エアプロダクツ・アンド・ケミカル社(Air Products and Chemical,Inc.)(ペンシルバニア州アレンタウン)(Allentown,PA)よりエアフレックス(AIRFLEX)600BP DEV(55重量パーセント固体のエチレンビニルアクリレートターポリマーの水性エマルジョン)という商品名で販売されているような市販品が挙げられる。
【0045】
有機バインダー材料は1種類以上の可塑剤も含むことができる。可塑剤は、ポリマーマトリックスを軟化させる傾向があり、断熱材料の可撓性および成形性を向上させることができる。
【0046】
その他の添加剤もまた水性スラリー組成物に含めることができる。かかる添加剤としては、消泡剤、凝集剤、界面活性剤等を挙げることができる。強度向上剤は、例えば、有機ファイバーおよびガラスファイバー等を含むことができる。好適な有機ファイバーはレーヨンおよびセルロースファイバーを含む。
【0047】
1つ以上の排気系部品を自動車の排気系に組み合わせて用いることができる。例えば、排気系部品は、車、バン、トラックやバスのような道路に用いる自動車の排気系に用いることができる。排気系は、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンを用いる自動車に用いることができる。
【0048】
本発明を、以下の本発明を限定するものではない実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0049】
実施例で用いた材料
S−2:
ガラスファイバー、直径約9μm、長さ1.0インチ(25.4mm)までチョップされたもの、401 S−2ガラスチョップドストランド(Glass Chopped Strands)としてアドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)(AGY)(米国サウスカロライナ州のエーケン(Aiken, South Carolina/USA))より入手可能
E:
チョップドガラスストランド、直径9μm、長さ1インチ(25.4mm)までチョップされたもの、アドバンスドガラスファイバーヤーンズLLC(Advanced Glassfiber Yarns LLC)(AGY)(米国、サウスカロライナ州のエーケン(Aiken, South Carolina/USA))製
R:
ガラスファイバー(一般組成60%SiO2、25%Al23、9%CaOおよび6%MgO)、直径約10μm、長さ36mmまでチョップドされたもの、(ドイツ、ヘルツォーゲンラスのサンゴバンベトロテックスドイチュランド(Saint−Gobain Vetrotex Deutschland GmbH,Herzogenrath/Germany)より入手可能
【0050】
試験方法
A.熱振動試験
熱振動試験を用いて、エンドコーンアセンブリに用いる本発明のマットの好適性を評価する。
【0051】
試験断熱材料を特別の二重壁エンドコーンへと組立て、入口側を溶接した。二重壁エンドコーンの出口側は開けておき、断熱マットの保持圧が低くなりすぎた場合に材料が自由に出るようにしてある。デフレクタプレートを内側コーンの下部に溶接して、排気ガスを二重壁エンドコーンの表面に偏向する。
【0052】
エンドコーンアセンブリを、試験アセンブリに振動を与えるために用いる4,000ポンド(1818kg)までのロードを加速するよう設計された従来のシェーカテーブル(米国コネチカット州のウォリングフォードのアンホルツ−ディッキー(Unholtz−Dickie Corp.Wallingford,Conn./USA)より市販)に装着する。入口軸は、シェーカテーブルの上部に対して垂直の関係に(垂線)あった。エンドコーンアセンブリを天然ガスバーナー熱源に接続する。
【0053】
エンドコーンアセンブリを1075℃入口ガス温度まで1時間加熱することにより予備調整する。これによって、実際の試験を開始する前に有機材料が燃え尽きる。アセンブリをシェーカテーブルから取り去って、冷却後秤量する。
【0054】
コーンアセンブリをシェーカテーブルに再装着し、振動および温度サイクルを実施する。試験の振とうセグメント中、「サインオンランダム」タイプの振動を用いて、さらに応力を生成し、使用条件下での試験アセンブリの加速エージングをシミュレートした。入口ガス温度を、それぞれ1時間、以下の手順で振動(サインオンランダムタイプ)ステップと共に23℃(圧縮空気を用いて)〜1075℃で15分間毎にサイクルさせる。
ステップ1 53.2gまでのピークのサインオンランダム振動
ステップ2 58.7gまでのピークのサインオンランダム振動
ステップ3 66.5gまでのピークのサインオンランダム振動
ステップ4 77.5gまでのピークのサインオンランダム振動
ステップ5 93.0gまでのピークのサインオンランダム振動
上記において、「g」は比重を表す。
【0055】
振動および熱サイクル完了後、エンドコーンアセンブリを上下ひっくり返し、振とうしてばらばらになった材料を除去した。エンドコーンを再び秤量し、予備調整後の重量と比較する。このようにして、振とう試験の結果としての断熱材料の重量減少を求めることができる。エンドコーン材料はまた、目視検査することもできる。
【0056】
B.実条件備品試験(RCFT)
本試験は、モノリスまたはディーゼル微粒子トラップを備えた汚染防止装置の一般使用中の実際の条件をモデル化して、これらのモデル化された使用条件下での実装材料が出す圧力を測定するものである。RCFT方法は、自動汚染防止装置の材料の側面(Material Aspects in Automotive Pollution Control Devices)、ハンスボーデ(Hans Bode)編、ウィリーVCH(WIley−VCH)2002、206〜208頁に詳細が記載されている。この場合、RCFT装置を用いて、二重壁エンドコーンの条件をシミュレートしつつ断熱マットにより生じる圧力を求めた。
【0057】
独立制御される2つの50.8mm×50.8mmの加熱ステンレス鋼プラテンを異なる温度まで加熱して、それぞれ金属内側コーンと金属外側コーン温度をシミュレートした。同時に、触媒コンバータの内側および外側コーンの温度および熱膨張係数から計算した値によりプラテン間のスペースまたは空隙を減らした。通常使用の触媒コンバータについては、内側コーン温度は約700℃、外側コーン温度は約400℃であることを意味する。
【0058】
RCFTの3回のサイクルを各マット試料で実施した。
【0059】
実施例1
直径約10μm、長さ36mmまでチョップドされたサンゴバンベトロテックスドイチュランド(Saint−Gobain Vetrotex)より入手したRガラスファイバー(60%SiO2、25%Al23、9%CaOおよび6%MgO)を以下の方法によりウェブへと処理した。ガラスファイバーを2ゾーンラロシュ(Laroche)オープナーで開繊した。第1のゾーンの供給速度は2m/分であり、リッカーリン(Lickerin)ロール速度は2,500回転/分であった。第2のゾーンの供給速度は4m/分であり、リッカーリン(Lickerin)ロール速度は2,500回転/分であった。出力速度は6.5m/分であった。
【0060】
開繊したファイバーを従来のウェブ形成機(ニューヨーク州マセドンのランドーマシーン(Rando Machine Corp.,Macedon, N.Y)より「ランドーウェバー(Rando Webber)」という商品名で市販)に供給して、ファイバーを多孔性金属ロール上にブローして連続ウェブを形成した。連続ウェブを従来のニードルタッカーでニードルボンドした。ニードル速度は100サイクル/分であり、出力速度は1.1m/分であった。マットの「面積当たりの重量」は所望により調整することができた。
【0061】
実施例1のマットに、試験方法で上述した熱振動試験および実条件備品試験(RCFT)を行った。実施例1のマットは、熱振動試験において僅か4.14gの重量減少を示した。熱振動試験結果を表2にまとめてある。
【0062】
実施例1のRCFTデータを表3にまとめてある。実施例1のマットは、3回の温度サイクル中少なくとも5kPaの圧力を保持していた。これは、エンドコーン内で材料を信頼性良く保持する十分な圧力が与えられたことを示している。
【0063】
実施例2
実施例1で用いたのと同じ方法によりS−2ガラスファイバーのみを含むマットを作成した。このマットにRCFTを行った。結果を表3にまとめてある。このマットは、3回の温度サイクル中少なくとも17kPaの圧力を保持していた。これは、エンドコーン内で材料を信頼性良く保持する十分な圧力が与えられたことを示している。
【0064】
実施例3
2つの別個に作成した層を併せてラミネートすることにより2層のマットを作成した。第1の層はR−ガラスから構成されていた。第2の層はE−ガラスから構成されていた。各層を実施例1に記載した方法により作成した。2層をニードルボンディングにより合わせた。このやり方で形成された実装マットは異なる組成のガラスの2つの別個の層を有していた。実施例3の2層マットの組成は表1にまとめてある。
【0065】
実施例3の2層マットに、RCFTの2枚のプラテンの熱い方に向けてS−ガラス層を配置してRCFTを行った。このマットは、3回の温度サイクル中少なくとも5kPaの圧力を保持していた。これは、エンドコーン内で材料を信頼性良く保持する十分な圧力が与えられたことを示している。
【0066】
比較例1
比較例1(C1)は、市販の膨張性汚染防止装置実装マットから構成されていた。約55%の未膨張の蛭石、約37%のファイバーおよび約8%の有機バインダーを含んでいる。ファイバーは、直径約2〜3ミクロン、長さが0.5インチ(1.27cm)以下の溶融形成されたアモルファスのショット含有アルミナ/シリカファイバーである。C1のマットの面積当たりの目付重量は4070g/m2であった。
【0067】
比較例1は、表2にまとめてあるように、熱振動試験中、大きな重量減少を示した。
【0068】
比較例2
比較例2(C2)は、市販の膨張性汚染防止装置実装マットから構成されていた。約55%の未膨張の蛭石、約37%のファイバーおよび約8%の有機バインダーを含んでいる。ファイバーは、直径約2〜3ミクロン、長さが0.5インチ(1.27cm)以下の溶融形成されたアモルファスのショット含有アルミナ/シリカファイバーである。C2のマットの面積当たりの目付重量は3100g/m2であった。
【0069】
比較例2も、表2にまとめてあるように、熱振動試験中、大きな重量減少を示した。
【0070】
比較例2にはまた、実条件備品試験(RCFT)を行った。サイクルのピーク温度(700℃/400℃)で生成された圧力は非常に高かったものの、3回のサイクル後の残留圧力は僅か1kPaであり、信頼性良い保持には不十分な圧力であった。
【0071】
比較例3
比較例3(C3)は、市販の減少蛭石膨張性汚染防止装置実装マットから構成されていた。約37%の未膨張の蛭石、約54%のファイバーおよび約9%の有機バインダーを含んでいる。ファイバーは比較例1および2と同じであった。
【0072】
比較例3は、表2にまとめてあるように、熱振動試験中、大きな重量減少を示した。
【0073】
比較例4
比較例4(C4)は、高アルミナ多結晶セラミックファイバーでできた市販の非膨張性汚染防止装置実装マットから構成されていた。ファイバーは実質的にショットフリーであり、平均直径は5ミクロンである。
【0074】
比較例4は、表2にまとめてあるように、熱振動試験中、ほとんど重量減少を示さなかった。
【0075】
比較例5
比較例5(C5)は、ドイツのブランド−エルビスドルフ、ベルヒェムファイバーマテリアルズ(Belchem Fiber Materials GmbH,Brand−Erbisdorf,Germany)より入手したファイバー直径9ミクロンのベルコテックス(Belcotex)(登録商標)シリカガラスファイバーでできたバインダーを含まない不織ファイバーマットから構成されていた。
【0076】
比較例5に、実条件備品試験(RCFT)を行った。3回のサイクル後の残留圧力は僅か1kPaであり、マットを適所に信頼性良く保持するには不十分な圧力であった。RCFTの結果は表3にまとめてある。
【0077】
比較例6
比較例6(C6)は、ジョージア州オーガスタのサーマルセラミクス(Thermal Ceramics,Augusta,Georgia)よりカオウール(Kaowool)(登録商標)バルクファイバー(Bulk Fibers)として入手可能な溶融形成されたアモルファスのショット含有アルミナシリケートセラミックファイバーから作成された湿式マットから構成されていた。ファイバーの直径は2〜3ミクロン、長さは約0.5インチ(1.27cm)である。
【0078】
比較例6に、実条件備品試験(RCFT)を行った。3回のサイクル後の残留圧力は僅か1kPaであり、信頼性良い保持には不十分な圧力であった。RCFTの結果は表3にまとめてある。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】断熱材料を含む二重壁を有する排気管の長手方向の概略断面図である。
【図2】入口と出口コーンを有する汚染防止装置の長手方向の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系部品を排気系に用いる時に排気ガスが流れる空間を囲む二重壁であって、チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーでできた断熱材料を含む空隙をそれらの間に画定する第1および第2の金属壁から構成されている二重壁を含む、自動車の排気系に用いる排気系部品。
【請求項2】
前記チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーがケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーである請求項1に記載の排気系部品。
【請求項3】
前記チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーの数平均直径が5μm以上であり、長さが0.5〜15cmである請求項1または2に記載の排気系部品。
【請求項4】
前記チョップドケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーが、前記ガラスファイバーの総重量に基づいて10〜30重量%の量の酸化アルミニウムと、52〜70重量%の量の二酸化ケイ素と、1〜12重量%の量の酸化マグネシウムとを含み、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素および酸化マグネシウムの重量パーセントはそれぞれAl23、SiO2およびMgOとして理論基準で計算される請求項3に記載の排気系部品。
【請求項5】
前記チョップドケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーは、E−ガラス、S−ガラス、S2−ガラス、R−ガラスおよびこれらの混合物からなる群より選択される請求項3に記載の排気系部品。
【請求項6】
前記断熱材料がガラスファイバー組成が異なる2層以上の層を含む請求項1に記載の排気系部品。
【請求項7】
前記断熱材料が前記チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーを少なくとも90重量%含む請求項1に記載の排気系部品。
【請求項8】
前記チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーが一緒に結合せしめられており、前記断熱材料の実装密度が0.1〜0.45g/cm3である請求項1に記載の排気系部品。
【請求項9】
前記排気系部品が排気管である請求項1〜8のいずれか一項に記載の排気系部品。
【請求項10】
前記排気系部品が、汚染防止モノリスと、前記汚染防止モノリスと汚染防止装置の入口または出口の間を画定する少なくとも1つの移行ゾーンとが装着された金属筐体を含む汚染防止装置であり、前記汚染防止装置が前記移行ゾーンに前記二重壁を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の排気系部品。
【請求項11】
前記断熱材料がマットまたはエンドコーンプリフォームを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の排気系部品。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の排気系部品を含む、自動車に用いる排気系。
【請求項13】
チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーでできた断熱材料を含むエンドコーンプリフォーム。
【請求項14】
前記チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーがケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーである請求項13に記載のエンドコーンプリフォーム。
【請求項15】
前記チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーの数平均直径が5μm以上であり、長さが0.5〜15cmである請求項13または14に記載のエンドコーンプリフォーム。
【請求項16】
前記チョップドケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーが、前記ガラスファイバーの総重量に基づいて10〜30重量%の量の酸化アルミニウムと、52〜70重量%の量の二酸化ケイ素と、1〜12重量%の量の酸化マグネシウムとを含み、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素および酸化マグネシウムの重量パーセントはそれぞれAl23、SiO2およびMgOとして理論基準で計算される請求項14に記載のエンドコーンプリフォーム。
【請求項17】
前記チョップドケイ酸マグネシウムアルミニウムガラスファイバーは、E−ガラス、S−ガラス、S2−ガラス、R−ガラスおよびこれらの混合物からなる群より選択される請求項14に記載のエンドコーンプリフォーム。
【請求項18】
前記断熱材料が前記チョップドケイ酸アルミニウムガラスファイバーを少なくとも90重量%含む請求項13に記載のエンドコーンプリフォーム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−524777(P2006−524777A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507528(P2006−507528)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/008989
【国際公開番号】WO2004/094794
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】