説明

断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材

【課題】 断熱施工済み断熱材の劣化度を簡便かつ迅速に診断できるようにする。
【解決手段】 断熱施工済み断熱材2の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法であって、特定温度で表示色が変化する示温表示部6を、予め、断熱施工時に断熱用部材2の外部露出面に設けておいて、示温表示部における表示色の変化に基づいて、断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法と、断熱施工済み断熱材の劣化度を診断可能な断熱材劣化診断設備と、断熱劣化度を診断可能な断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
電力や化学プラントなどにおいて機器や配管に施工してある断熱施工済み断熱材は、長期使用のうちに雨水や結露水が侵入して断熱性能が劣化し、熱エネルギーのロスが生じるので、適宜、断熱材の劣化度を診断して、必要に応じて交換するなどのメンテナンスを実施する必要がある。
断熱材の劣化度を診断する従来の技術では、断熱施工済み断熱材の一部をサンプルとして取り出して、そのサンプルの熱伝導率や含水率などの物性を調べたり(以下、従来技術1という)、断熱施工済み断熱材の表面温度を赤外線サーモグラフィ装置で求めたり、断熱施工済み断熱材の放散熱量を熱流量計や表面温度計などの計測機器で求めて(以下、従来技術2という)、その劣化度を診断している(周知・慣用技術であり、先行技術文献情報を開示できない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術1は、サンプルとして取り出した断熱材の物性を調べるので、高い信頼性で劣化度を診断できるが、断熱施工済み断熱材からサンプルを取り出しても支障がないように、診断時期がプラントなどの稼働停止時に限られるといった制約を受け易いとともに、物性を調べるために時間や経費も掛かり、劣化度を簡便かつ迅速に診断できない欠点がある。
また、上記従来技術2は、非破壊で断熱施工済み断熱材の劣化度を診断できるが、断熱材を施工してある現場に、高価な赤外線サーモグラフィ装置や計測機器を搬入して設置する必要があるので、それらの装置や機器を搬入できる診断時期や、それらの装置や機器を設置して診断できる箇所に制約を受け易いとともに、それらの装置や機器の操作にも熟練を要し、劣化度を簡便かつ迅速に診断できない欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、断熱施工済み断熱材の劣化度を簡便かつ迅速に診断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1特徴構成は、断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法であって、特定温度で表示色が変化する示温表示部を、予め、断熱施工時に断熱用部材の外部露出面に設けておいて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、前記断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する点にある。
【0005】
〔作用及び効果〕
特定温度で表示色が変化する示温表示部を、診断時期に制約を受けないように、予め、断熱施工時に所望の断熱用部材の外部露出面に設けておいて、特に熟練を要することなく、離れた位置からでも示温表示部を必要に応じて目視して、示温表示部における表示色の変化に基づいて、断熱施工済み断熱材の劣化度を非破壊で診断できるので、所望の時期に所望の箇所を安価に診断することができ、断熱施工済み断熱材の劣化度を簡便かつ迅速に診断できる。
【0006】
本発明の第2特徴構成は、断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法であって、特定温度で表示色が変化する示温表示部を、劣化診断時に断熱用部材の外部露出面に設けて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、前記断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
特定温度で表示色が変化する示温表示部を、必要に応じて、所望の劣化診断時に所望の断熱用部材の外部露出面に設けて、特に熟練を要することなく、離れた位置からでも示温表示部を目視して、示温表示部における表示色の変化に基づいて、断熱施工済み断熱材の劣化度を非破壊で診断できるので、示温表示部を断熱施工時に設けておくことなく、所望の時期に所望の箇所を安価に診断することができ、断熱施工済み断熱材の劣化度を簡便かつ迅速に診断できる。
【0008】
本発明の第3特徴構成は、断熱施工済み断熱材の劣化度を診断可能な断熱材劣化診断設備であって、特定温度で表示色が変化する示温表示部を、断熱用部材の外部露出面に設けておいて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、前記断熱施工済み断熱材の劣化度を診断可能に構成してある点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
特定温度で表示色が変化する示温表示部を、断熱用部材の外部露出面に設けておいて、示温表示部における表示色の変化に基づいて、断熱施工済み断熱材の劣化度を診断可能に構成してあるので、断熱施工時や断熱施工後の都合の良いときに、示温表示部を所望の断熱用部材の外部露出面に設けておけば、特に熟練を要することなく、離れた位置からでも示温表示部を必要に応じて目視して、非破壊で診断することができ、断熱施工済み断熱材の劣化度を簡便かつ迅速に診断できる。
【0010】
本発明の第4特徴構成は、断熱劣化度を診断可能な断熱材であって、特定温度で表示色が変化する示温表示部を外部露出面に設けて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、断熱施工後の断熱劣化度を診断可能に構成してある点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
特定温度で表示色が変化する示温表示部を外部露出面に設けて、示温表示部における表示色の変化に基づいて、断熱施工後の断熱劣化度を診断可能に構成してあるので、所望の断熱施工箇所に使用することにより、特に熟練を要することなく、離れた位置からでも示温表示部を必要に応じて目視して、非破壊で診断することができ、断熱施工済み断熱材の劣化度を簡便かつ迅速に診断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明による断熱材劣化診断方法の実施に使用する断熱材劣化診断設備を示し、電力や化学プラントなどにおける高温配管1の外周面を、ロックウールやガラス繊維などで半割円筒状に形成してある複数の断熱材2で断熱施工して、断熱施工済み断熱材2の劣化度を診断可能に構成してある。
【0013】
前記断熱材2の各々は、図1(イ)に示すように、緊縛材3で配管1に固定して、その外周面を鋼板製の外装材4で覆ってあり、図1(ロ)に示すように、一部の外装材4(4a)の管周方向で隣り合う外装材4との接続箇所近くに四角い窓孔5を形成して、断熱材2(2a)の外周面を外部に臨ませてある。
尚、断熱材2や緊縛材3や外装材4などの断熱施工用資材を総称して、断熱用部材という。
【0014】
そして、断熱材2(2a)の断熱性能が劣化した結果、その断熱材2(2a)が特定温度以上に加熱されると表示色が変化する示温表示部6を、図1(イ)に示すように、断熱材2(2a)の外周面のうちの窓孔5を通して外部に露出させる外部露出面に、予め、断熱施工時に設けておいて、断熱材2(2a)の劣化が進行するに伴う示温表示部6における表示色の変化に基づいて、断熱施工済み断熱材2の劣化度を診断できるようにしてある。
【0015】
前記示温表示部6は、ガラスクロスや不織布などの可撓性を備えた基布7に、特定温度において変色する周知の示温塗料(示温機能材料)を塗布して構成してあり、基布7を無機質接着剤で断熱材2(2a)の外周面に接着固定してある。
【0016】
また、示温表示部6の表示色の変化を変色前の色と比較して分かるように、変色前の色を表示する基準色表示部8を温度変化によっては変色し難い塗料で、示温表示部6に並べて基布7に設けて、窓孔5に臨ませてある。
【0017】
〔第2実施形態〕
図2は、断熱施工済み断熱材2の劣化度を診断可能な本発明による断熱材劣化診断方法の別実施形態を示し、示温表示部6を設けてある基布7を、劣化診断時に断熱用部材の外部露出面、具体的には、断熱材2(2a)の外周面を覆う外装材4の外面に接着固定して、示温表示部6における表示色の変化に基づいて、断熱施工済み断熱材2の劣化度を間接的に診断できるようにしてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0018】
〔第3実施形態〕
図3は、本発明による示温表示部付き断熱材2を示し、予め、工場などにおいて、示温表示部6を、断熱施工時に外部に露出させる外部露出面に設けておいて、示温表示部6における表示色の変化に基づいて、断熱施工後の断熱材2の断熱劣化度を診断可能に構成してある。
その他の断熱材2の構成は第1実施形態と同様である。
【0019】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、示温表示部を断熱材の目地部に沿って設けても良い。
2.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、示温表示部を、配管や機器の下面側などの水が流下して溜まりやすい箇所に施工してある断熱部材の外部露出面に設けても良い。
3.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、示温表示部として、示温塗料を断熱用部材の外部露出面に塗布して設けても良い。
4.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、マグネット付きシート材に設けてある示温表示部を使用して、外装材などの金属板に吸着固定しても良い。
5.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、示温表示部を設けてある市販のラベルを使用しても良い。
6.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、示温表示部として、一定温度以上の温度上昇で変色し、温度下降により復色して繰り返し使用できる可逆性の示温表示部を設けても、一定温度以上の温度上昇で変色し、温度下降しても復色しない不可逆性の示温表示部を設けても、これらの示温表示部の複数を適宜組み合わせて設けても良い。
7.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、配管以外に、プラントなどにおける各種機器に施工済みの断熱材の劣化度を診断するために使用しても良い。
8.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、無機繊維系断熱材の他、発泡プラスチック系断熱材,木質繊維系断熱材,真空断熱材などの劣化度を診断するために使用しても良い。
9.本発明による断熱材劣化診断方法と断熱材劣化診断設備及び断熱材は、LNG用タンクやLNG用配管などを低温に維持する為の施工済みの断熱材の劣化度を診断するために使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態を説明する斜視図
【図2】第2実施形態を説明する斜視図
【図3】第3実施形態を説明する斜視図
【符号の説明】
【0021】
2 断熱材(断熱用部材)
6 示温表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法であって、
特定温度で表示色が変化する示温表示部を、予め、断熱施工時に断熱用部材の外部露出面に設けておいて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、前記断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法。
【請求項2】
断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法であって、
特定温度で表示色が変化する示温表示部を、劣化診断時に断熱用部材の外部露出面に設けて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、前記断熱施工済み断熱材の劣化度を診断する断熱材劣化診断方法。
【請求項3】
断熱施工済み断熱材の劣化度を診断可能な断熱材劣化診断設備であって、
特定温度で表示色が変化する示温表示部を、断熱用部材の外部露出面に設けておいて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、前記断熱施工済み断熱材の劣化度を診断可能に構成してある断熱材劣化診断設備。
【請求項4】
断熱劣化度を診断可能な断熱材であって、
特定温度で表示色が変化する示温表示部を外部露出面に設けて、前記示温表示部における表示色の変化に基づいて、断熱施工後の断熱劣化度を診断可能に構成してある断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−250794(P2006−250794A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69349(P2005−69349)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000244084)明星工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】