説明

断熱構造

【課題】安価、小型且つ省スペースで、十分に断熱できる断熱構造を提供すること。
【解決手段】断熱構造30は、ユニット10の内部10aの気体13を本体部20の上部から吸気し、吸気した際に気体13を内部10aにて冷却し、気体15を本体部20の下部から上部を介して発熱体21に向けて送気することで、気体13,15を内部10aにて循環させる熱交換器31と、熱交換器31が気体13,15を内部10aにて循環させるために、背面20eと背板10eとの間と、側面20dと側板10dとの間と、内部20aとに形成される流路部51とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば精密装置における一方のユニットから発生する高温の熱がこのユニットに隣接する精密装置における他方のユニットに影響を及ぼさないように及びこれらユニットが設置される設置環境にこの熱が影響を及ぼさないように、一方のユニットから発生する熱を断熱する断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造装置や精密測定器などの精密装置は、複数のユニットを内部に有している。これらユニットは、精密装置が設置される環境の温度変化から多大な影響を受ける。そのためこの精密装置の内部において、一方のユニットから発生する高温の熱がこのユニットに隣接する精密装置の内部における他方のユニットに影響を及ぼさないように及びこれらユニットが設置される設置環境(精密装置の内部)にこの熱が影響を及ぼさないように、一方のユニットには、精密装置が設置される環境の温度を自身から発生する熱によって変化させないように、熱を断熱する高い断熱性能が要求されている。
【0003】
そのため一方のユニットは、断熱のために、断熱構造が配設されている。なお断熱構造は、他方のユニットにも配設されてもよい。また断熱構造は、一方のユニットと他方のユニットとの両方に配設されていてもよい。
【0004】
一般的に、ユニットは、精密装置の側面と背面とは数十mm離れて(隙間が設けられた状態で)精密装置の内部に設置されている。このときユニットの外面には、温調板、いわゆる断熱パネルが貼り付けられている。
【0005】
また例えば特許文献1には、効率よく電子機器を冷却することができる電子機器収容ラックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−302112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した断熱パネルは、例えば真空断熱材等の高価な材料をしているために、高価となってしまう。また断熱パネルが外面に貼り付けられていても、十分に断熱することが難しく、十分な効果が得られない虞が生じる。また断熱パネルが外面に貼り付けられることで、ユニット及び精密装置が大型化し、断熱パネルのためのスペースが必要となる。
【0008】
またユニットは、ユニットにおける発熱体を強制的に空冷し、断熱している。しかしながら、これでは、排気風量が多く、排気温度も高く、排気ダクト周辺の断熱が難しい。よって、発熱体の空冷では、十分に断熱できない。
【0009】
そのため本発明は、上記事情に鑑み、安価、小型且つ省スペースで、十分に断熱できる断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は目的を達成するために、発熱体が内部に配設されている本体部と前記本体部を覆う板とからなるユニットを内部にて少なくとも1つ有する装置において、前記発熱体から発生する熱によって前記装置の内部の温度を変化させないように、前記ユニットに配設され、断熱性能を有する断熱構造であって、前記本体部の内部に配設され、前記熱を有する前記ユニットの内部の熱気体を前記本体部の上部から下部に向かい送気し、送気した際に前記熱気体を前記ユニットの内部にて冷却し、冷却により生成された冷却気体を前記本体部の下部から前記本体部の上部を介して前記発熱体に向けて送気することで、前記冷却気体と前記熱気体とからなる前記ユニットの内部の気体を前記ユニットの内部にて循環させる熱交換器と、前記熱交換器が前記気体を前記ユニットの内部にて循環させるために、前記本体部の外周面側である前記本体部と前記板との間と、前記本体部の内部とに形成される流路部と、を具備することを特徴とする断熱構造を提供する。
【0011】
また本発明は目的を達成するために、前記熱交換器は、前記発熱体の下部且つ前記ユニットの高さ方向において前記発熱体と同一直線上に配設され、前記熱気体を前記発熱体側から吸気し、前記本体部の側面を覆う前記板の一部である側板側と前記本体部の背面を覆う前記板の一部である背板側とを介して前記本体部の上部に向けて前記冷却気体を送気して、さらに前記本体部の上部から前記発熱体に向けて前記冷却気体を送気して、前記ユニットの内部にて前記気体を循環させる循環部と、前記発熱体と前記循環部との間に配設され、前記循環部によって吸気された前記熱気体を冷却して前記冷却気体を生成する冷却部と、を有していることを特徴とする上記に記載の断熱構造を提供する。
【0012】
また本発明は目的を達成するために、前記冷却部は、冷却水を前記冷却部の外部から前記冷却部の内部に流入させる流入口と、前記流入口と連通し、前記冷却部の内部に配設され、流れる前記冷却水を介して前記熱気体と熱交換することで、前記熱気体を冷却して前記冷却気体を生成する冷却水流路部と、前記冷却水流路部と連通し、前記冷却部の内部から前記冷却部の外部に前記冷却水を流出させる流出口と、を有していることを特徴とする上記に記載の断熱構造を提供する。
【0013】
また本発明は目的を達成するために、前記流路部は、前記循環部が前記本体部の上部である前記本体部の上板側から前記本体部の底板側に向けて前記熱気体を吸気するために、前記発熱体と前記熱交換器との間にて前記発熱体と前記熱交換器とに沿って形成されている発熱体側流路部と、前記循環部が前記冷却気体を前記底板側から前記上板側に向けて送気するために、前記底板側と連通し、前記側面と前記側板との間に形成される側板側流路部と、前記循環部が前記冷却気体を前記底板側から前記上板側に向けて送気するために、前記底板側と連通し、前記背面と前記背板との間に形成される背板側流路部と、前記循環部が前記側板側流路部と前記背板側流路部とから送気された前記冷却気体を前記発熱体側流路部に向けて送気するために、前記上板の内部に形成され、前記発熱体側流路部と前記側板側流路部と前記背板側流路部とに連通する上板側流路部と、を有していることを特徴とする上記に記載の断熱構造を提供する。
【0014】
また本発明は目的を達成するために、前記側板と前記背板とは、断熱機能を有することを特徴とする上記に記載の断熱構造を提供する。
【0015】
また本発明は目的を達成するために、前記側面と前記側板との間と、前記背面と前記背板との間とに配設され、前記本体部の内部と前記本体部の外部とを断熱する断熱部材をさらに具備することを特徴とする上記に記載の断熱構造を提供する。
【0016】
また本発明は目的を達成するために、前記側板側流路部と前記背板側流路部とにおける前記冷却気体を、層流の状態で流すことで、前記ユニットの内部と外部とを断熱することを特徴とする上記に記載の断熱構造を提供する。
【0017】
また本発明は目的を達成するために、熱が発生する発熱体が内部に配設されている本体部と、前記本体部を覆う板と、前記本体部に配設され、外部との断熱のために、前記熱を有する前記ユニットの内部の熱気体を前記ユニットの内部にて冷却し、冷却により生成された冷却気体と前記熱気体とからなる前記ユニットの内部の気体を前記ユニットの内部にて循環させる熱交換器と、前記熱交換器が前記気体を前記ユニットの内部にて循環させるために、前記本体部の外周面側である前記本体部と前記板との間と、前記本体部の内部とに形成される流路部と、を具備することを特徴とするユニットを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価、小型且つ省スペースで、十分に断熱できる断熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、ユニットが内部に設置されている精密装置の概略斜視図である。
【図2】図2(A)は、ユニットの正面図である。図2(B)は、ユニットの側面図である。図2(C)は、ユニットの上面図である。
【図3】図3は、操作板をはずした状態のユニットの概略斜視図である。
【図4】図4(A)は、図2(A)における4A−4A線における断面図である。図4(B)は、図2(B)における4B−4B線における断面図である。図4(C)は、図2(B)における4C−4C線における断面図である。図4(D)は、図4(A)における円4D部分の拡大図である。
【図5】図5は、流路部における熱交換の状態を示す図である。
【図6】図6は、断熱構造の第1の変形例を示す図である。
【図7】図7は、断熱構造の第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1乃至図5を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお以下において、例えば図4(A)と図4(B)とに示すように、ユニット10の内部10aの気体を気体13,15とする。気体13は、発熱体21から発生する熱を有している熱気体であり、主に発熱体21の周辺、発熱体側流路部53に位置するものである。気体15は、気体13が冷却水と熱交換して生成される冷却された気体(冷却気体)であり、側板側流路部55と背板側流路部57と上板側流路部59とに位置するものである。
【0021】
図1に示すように例えば半導体製造装置や精密測定器などの精密装置1は、少なくとも1つのユニット10を内部1aに有している。なお図示の簡略化のために、図1では、ユニット10を1つのみ記載している。
【0022】
図1乃至図3に示すように、ユニット10は、本体部20と、本体部20の正面を覆う操作板10cと、本体部20の側面20dを覆う側板10dと、本体部20の背面20eを覆う背板10eとを有している。このように操作板10cと側板10dと背板10eとは、本体部20を覆う板である。なお図1に示すように、ユニット10は、操作板10cが精密装置1の外面1cと同一平面に設置されるように、内部1aに配設されている。また図1に示すように、側板10dと背板10eとが、精密装置1の側面1dと背面1eとから少なくとも微小に離れるように、ユニット10は内部1aに配設されている。なおユニット10が複数配設されている場合、側板10dと背板10eとは、隣り合う他のユニット10の側板10dと背板10eとからも少なくとも微小に離れる必要がある。
【0023】
次に操作板10cと側板10dと背板10eとについて説明する。
上述した操作板10cと側板10dと背板10eとは、中空構造となる。
操作板10cは、ユニット10を操作する。操作板10cは、本体部20に対して開閉可能な扉でもある。
【0024】
側板10dと背板10eとは、ユニット10の内部10aと外部10bとを断熱する断熱機能を有している。また図4に示すように、側面20dと側板10dとの間と、背面20eと背板10eとの間とには、本体部20の内部20aと本体部20の外部20bとを断熱する断熱部材であり、外部と内部流体を遮断する遮蔽部材であるパッキン11が配設されている。パッキン11は、さらに、側板10dと側面20dとを断熱し、背板10eと背面20eとを断熱する。
【0025】
次に図3と図4とを参照して本体部20について説明する。
図3と図4とに示すように、本体部20は、熱を発生する発熱体21と、発熱体21が載置される載置台23とを内部20aにそれぞれ複数有している。1つの発熱体21は、1つの載置台23に載置される。発熱体21は、例えばユニット10や精密装置1を駆動するプリント配線基板の集合体やCPUやモータなどの電子機器である。載置台23は、高さ方向に沿って、積層するように段となって配設されている。
【0026】
次に図3と図4とを参照して、ユニット10に配設されている断熱構造30について説明する。
この断熱構造30は、発熱体21から発生する熱によってユニット10が設置される環境(精密装置1の内部1a)の温度を変化させないように、断熱性能を有している。言い換えると、精密装置1は、断熱構造30を有しているユニット10を備えている。
【0027】
図3と図4とに示すように、断熱構造30は、ユニット10の内部10aの気体13を本体部20の上部から下部に向かい送気し(本体部20の上部から吸気し)、送気(吸気)した際に気体13を内部10aにて冷却し、気体15を本体部20の下部から上部を介して発熱体21に向けて送気することで、気体13,15を内部10aにて循環させる熱交換器31と、熱交換器31が気体13,15を内部10aにて循環させるために、本体部20の外面側である本体部20と板との間、つまり背面20eと背板10eとの間と、側面20dと側板10dとの間と、内部20aとに形成される流路部51とを有している。
【0028】
図3と図4とに示すように、熱交換器31は、内部20aに配設されている。熱交換器31は、発熱体21の下部である底板20g側、且つユニット10の高さ方向において、発熱体21と載置台23とに対して同一直線上に配設されているファン33と、最下層の発熱体21(載置台23)とファン33との間に配設される冷却部35とを有している。より詳細には、ファン33と冷却部35とは、最下層の載置台23Aよりも下方、且つこの載置台23Aの真下における底板20g側に配設されている。
【0029】
ファン33は、冷却部35よりも底板20g側に配設され、本体部20の最下層に位置する。ファン33は、気体13を発熱体21側から吸気し、内部20aから底板20g側を介して側板10d側と背板10e側とに送気して、側板10d側と背板10e側とを介して本体部20の上部(上面)となる上板20h(天板)に向けて気体15を送気して、さらに上板20hから発熱体21に向けて気体15を送気して、ユニット10の内部10aにて気体13,15を循環させる循環部である。
【0030】
冷却部35は、底板20g側に最も近接する(最下層の)載置台23Aとファン33との間に配設されている。より詳細には、冷却部35は、ユニット10の高さ方向において、ファン33の真上且つ載置台23Aの真下に配設されている。冷却部35は、ファン33によって吸気された気体13を冷却して気体15を生成する。この冷却部35は、冷却水を冷却部35の外部から冷却部35の内部に流入させる流入口37と、流入口37と連通し、冷却部35の内部に配設され、自身の内部に流れる冷却水を介して気体13と熱交換することで、気体13を冷却して気体15を生成する冷却水流路部である冷却パイプ39と、冷却パイプ39と連通し、冷却部35の内部から冷却部35の外部に冷却水を流出させる流出口41とを有している。
【0031】
流出口41は、流入口37よりも上方に配設されている。
冷却パイプ39は、上述したように、冷却水を通じて熱交換によって気体13を冷却する。冷却パイプ39は、1本のパイプが冷却部35の長手方向における両端にて折り返され、折り返されたパイプが冷却部35の短手方向に複数連接されている状態になるように形成されている。冷却パイプ39は、流入口37と同じ平面にこのように形成されている。さらに冷却パイプ39は、流出口41に向かってこの平面から下方に延設され、流出口41と同じ平面にて、上述したように形成されている。冷却パイプ39の直径は、例えば15mmである。冷却水の温度は、熱を冷却するように、後述する温度条件によって所望に調整されている。
なお冷却部35は、冷却パイプ39に接合され、気体13と熱伝達する放熱用フィンを有している。
【0032】
図4(A)と図4(B)とに示すように、流路部51は、発熱体21と熱交換器31との間にて発熱体21と熱交換器31とに沿って形成されている発熱体側流路部53と、側面20dと側板10dとの間に形成される側板側流路部55と、背面20eと背板10eとの間に形成される背板側流路部57と、本体部20の上面となる上板20h(天板)の内部20iに形成され、発熱体側流路部53と側板側流路部55と背板側流路部57とに連通する上板側流路部59とを有している。
【0033】
図4(A)と図4(B)とに示すように、発熱体側流路部53は、最も上層に配設されている発熱体21Aと上板20hとの間と、載置台23とこの載置台23の真下に配置されている発熱体21との間にも配設されている。発熱体側流路部53は、ファン33が上板20h側から底板20g側に向けて気体13を吸気するために、形成されている。気体13が流れる発熱体側流路部53が形成されるために、載置台23には開口部23aが配設されている。開口部23aは、ファン33と冷却部35と同一直線上に配設されている。
【0034】
図4(A)と図4(B)とに示すように、側板側流路部55と背板側流路部57とは、ファン33が気体15を底板20g側から上板20h側に送気するために、形成されている。側板側流路部55と背板側流路部57とは、底板20g側と連通している。図4(B)に示すように、側板側流路部55は、側面20dと側板10dとの間に形成される隙間である。そのため側板側流路部55は、2つ配設されている。また図4(A)に示すように、背板側流路部57は、背面20eと背板10eとの間に形成される隙間である。
【0035】
図4(A)と図4(B)とに示すように、上板側流路部59は、上板20hの内部20iに形成されている中空部である。上板側流路部59は、上板側流路部59と連通し、底板20gに対向し、上板20hに配設されている開口部59aを有している。開口部59aは、発熱体21Aの真上に配設されている。上板側流路部59は、後述する側面側流入開口部55bを介して側板側流路部55と連通し、後述する背面側流入開口部57bを介して背板側流路部57と連通している。上板側流路部59は、ファン33が側板側流路部55と背板側流路部57とから送気された気体15を発熱体側流路部53に送気するために、形成されている。上板側流路部59は、側板側流路部55と背板側流路部57とから送気された気体15が合成されて、開口部59aを介して発熱体側流路部53に送気される合成送気部でもある。
【0036】
また流路部51は、図4(B)に示すように側面20dの下部に配設されている側面側流出開口部55aと、図4(A)に示すように背面20eの下部に配設されている背面側流出開口部57aと、図4(B)とに示すように側面20dの上部に配設されている側面側流入開口部55bと、図4(A)に示すように、背面20eの上部に配設されている背面側流入開口部57bとを有している。
【0037】
図4(A)と図4(B)とに示すように、側面側流出開口部55aと背面側流出開口部57aとは、底板20gの平面方向において、ファン33と同一直線上に配設されている。
側面側流出開口部55aは、側板側流路部55と連通しており、ファン33から送気された気体15が内部20aから側板10d側、より詳細には側板側流路部55に流出する流出口である。
背面側流出開口部57aは、背板側流路部57と連通しており、ファン33から送気された気体15が内部20aから背板10e側、より詳細には背板側流路部57に流出する流出口である。
【0038】
図4(A)と図4(B)とに示すように、側面側流入開口部55bと背面側流入開口部57bとは、上板20hの平面方向において、上板側流路部59と同一直線上に配設されており、上板側流路部59と連通している。
側面側流入開口部55bは、側板側流路部55と連通しており、側板側流路部55から送気された15が内部20a、より詳細には上板側流路部59に流入する流入口である。
背面側流入開口部57bは、背板側流路部57と連通しており、背板側流路部57から送気された気体15が内部20a、より詳細には上板側流路部59に流入する流入口である。
【0039】
このように流路部51は気体13,15を内部10aで循環させるための循環経路であり、流路部51の一部(側板側流路部55と背板側流路部57)が本体部20の外周面側である側面20d側と背面20e側とに形成されている。
【0040】
なお断熱構造30には、断熱機能を有する側板10dと背板10eと、上述したパッキン11とも含まれる。
【0041】
またファン33から送気され、側板側流路部55と背板側流路部57とにおける気体15の温度は、発熱体21の発熱量と、熱交換器31の熱交換率と、冷却水の温度と、ファン33の送気量と、気体15の流量とからなる温度条件によって決まる。この気体15の温度は、精密装置1の外部1bの温度となるように、この温度条件(特に冷却水の温度)によって所望に調整される。
【0042】
また断熱構造30は、側板側流路部55と背板側流路部57とにおける気体15を、層流の状態で流すことにより、内部10aと外部10bとを断熱している。言い換えると、断熱構造30は、層流で流れる気体15によって形成される空気層を側板側流路部55と背板側流路部57とに形成する。これにより断熱構造30は、側面20dと側板10dとの間(側板側流路部55)と、背面20eと背板10eとの間(背板側流路部57)とに断熱層を形成し、内部10aと外部10bとを断熱する。
【0043】
断熱構造30が気体15を層流の状態で送気するために、側板側流路部55と背板側流路部57とは矩形の断面形状を有し、側板側流路部55と背板側流路部57とを送気する気体15の送量(流量)と、側板側流路部55と背板側流路部57との断面積と、図5に示すように側板側流路部55と背板側流路部57との厚みHとから構成される断熱条件が予め所望な値に設定されている。これにより気体15は層流の状態で側板側流路部55と背板側流路部57とに送気され、温度境界層が側板10dと背板10eとにまで達しない。よって、側板側流路部55と背板側流路部57とにおいて対流によるユニット10の内部10aからユニット10の外部10b(精密装置1の内部1a)への伝熱が抑制され、この抑制によってユニット10の内部10aからユニット10の外部10b(精密装置1の内部1a)への伝熱が抑制される。このように、本体部20の外周面側である側面20d側と背面20e側とに形成されている流路部51の一部(側板側流路部55と背板側流路部57)は、断熱パネルとして機能する。
【0044】
なお断熱条件が所望に設定されていないと、気体15が層流の状態で流路部51にて送気されず、側板側流路部55と背板側流路部57とにおいて乱流が発生してしまう。これによりユニット10の内部10aからユニット10の外部10bへの伝熱が側板側流路部55と背板側流路部57とを送気する気体15によって抑制されず、ユニット10の内部10aからユニット10の外部10bへの伝熱が抑制されないこととなる。
【0045】
なお図5に示すように、断熱条件が予め所望な値に設定されると、本体部20の内部20aの温度T1と、側面20dと背面20eとの温度T2とによって、温度差(T1−T2)が生じる。このとき熱伝達により、本体部20の内部20aの熱は側板側流路部55と背板側流路部57とに移行し、側板側流路部55と背板側流路部57との内部の温度は上昇する。しかし側板側流路部55と背板側流路部57とにおいて、気体15が層流の状態で送気されるために、側板10dと背板10eとの温度T3は内部温度T2には影響されない。また断熱機能を有する側板10dと背板10eと、パッキン11とによって、側板側流路部55と背板側流路部57とにおける温度とユニット10の外部の温度とに多少の差が生じても、熱貫流は抑えられる。
【0046】
次に本実施形態の動作方法について説明する。
図1に示すように、操作板10cが精密装置1の外面1cと同一平面に設置され、側板10dと背板10eとが精密装置1の側面1dと背面1eとから微小に離れた状態で、ユニット10は内部に配設される。側板10dと背板10eとは、隣り合う他のユニット10の側板10dと背板10eとからも少なくとも微小に離れる必要がある。
【0047】
操作板10cが開き、発熱体21が載置台23に載置される。このとき、発熱体21は、ユニット10の高さ方向において、熱交換器31と同一直線上に配設され、熱交換器31の真上に配設される。なお発熱体21は、予め載置台23に載置されていてもよい。操作板10cが閉じられ、ユニット10を操作するために、操作板10cが操作されると、発熱体21が駆動し、ユニット10及び精密装置1が駆動する。このとき発熱体21は発熱し、内部10aの温度は上昇する。
【0048】
同時に、ファン33が駆動し、冷却水が流入口37から流入し冷却パイプ39を流れ流出口41から流出する。このとき冷却水の温度を含む温度条件は、冷却水によって冷却される気体13の温度が精密装置1の外部1bの温度となるように、所望に調整される。
【0049】
図4(A)と図4(B)とに示すように、気体13は、ファン33によって、発熱体21側から発熱体側流路部53(開口部23a)を通じて冷却部35側に向かって吸気される。
ファン33によって冷却部35に送気された気体13は、冷却水が流れる冷却パイプ39と、放熱フィンとにおける熱交換によって冷却される。これにより気体15が生成される。
このとき気体13は、気体13の温度が精密装置1の外部の温度となるように、冷却水の温度等の温度条件よって冷却される。
冷却された気体15は、ファン33によって、図4(B)に示すように側面側流出開口部55aを通じて側板側流路部55に送気され、図4(A)に示すように背面側流出開口部57aを通じて背板側流路部57に送気される。
【0050】
気体15が側板側流路部55と背板側流路部57とに送気される際、上述した断熱条件が予め所望な値に設定されている。これにより気体15は層流の状態で側板側流路部55と背板側流路部57とを通過することにより、温度境界層が形成され、側板10dと背板10eとの温度上昇が抑制される。よって、側板側流路部55と背板側流路部57とにおいて対流によるユニット10の内部10aからユニット10の外部10b(精密装置1の内部1a)への伝熱が抑制され、この抑制によってユニット10の内部10aからユニット10の外部10b(精密装置1の内部1a)への伝熱が抑制される。このように気体15が層流の状態で流れ、本体部20の外周面側である側面20d側と背面20e側とに形成される流路部51の一部(側板側流路部55と背板側流路部57)は、断熱パネルとして機能する。
【0051】
そして、気体15が層流の状態で送気されるために、側面20dと背面20eとの温度T2と側板側流路部55と背板側流路部57とにおける温度上昇は、側板10dと背板10eとの温度T3に影響を与えない。また断熱機能を有する側板10dと背板10eと、パッキン11とによって、側板側流路部55と背板側流路部57とにおける温度とユニット10の外部の温度とに多少の差が生じても、熱貫流は抑えられる。
【0052】
また側板10dと背板10eとは、断熱機能としてユニット10の内部10aと外部10bとを断熱する。またパッキン11は、側面20dと側板10dとを断熱し、背面20eと背板10eとを断熱する。これによりユニット10の内部10aの熱がユニット10の外部10b(精密装置1の内部1b)に伝達することが防止される。
【0053】
層流の状態で流れる気体15は、図4(A)と図4(B)とに示すように、側板側流路部55と背板側流路部57とを通じて本体部20の上部(上板20h)に送気され、側板側流路部55から側面側流入開口部55bを通じて上板側流路部59に送気され、背板側流路部57から背面側流入開口部57bを通じて上板側流路部59に送気される。
【0054】
側面側流入開口部55bから上板側流路部59に送気された気体15と、背面側流入開口部57bから上板側流路部59に送気された気体15とは、上板側流路部59にて合成され、開口部59aを通じて発熱体側流路部53に送気される。そしてこの気体15は、発熱体側流路部53に送気される際に、発熱体21を冷却し、再びファン33によって冷却部35側に向かって吸気される。
【0055】
このように本実施形態では、気体13,15をユニット10の内部10aにて循環させるために、本体部20と板との間と、本体部20の内部20aとに流路部51を形成し、ユニット10の内部10aの気体13,15を、ファン33によって流路部51にて循環させつつ冷却部35によって冷却する。
【0056】
これにより本実施形態では、安価、小型且つ省スペースで、十分に容易に断熱できる断熱構造30を提供することができる。
【0057】
また本実施形態では、流路部51の一部(側板側流路部55と背板側流路部57)を本体部20の外周面側である側面20d側と背面20e側とに形成し、流路部51の一部にて気体15を層流の状態で送気することで、流路部51が断熱パネルの機能を果たすことができる。これにより本実施形態では、断熱パネルを用いないために、安価、小型且つ省スペースに断熱することができる。
【0058】
また本実施形態では、冷却された気体15をユニット10の外部10bから吸気して発熱体21に送気するのではなく、ユニット10の内部10aで気体13を冷却し、冷却された気体15を循環させるために、安価、小型且つ省スペースに断熱することができる。
【0059】
また本実施形態では、ファン33によって気体13,15をユニット10の内部10aにて容易に循環させることができる。また本実施形態では、冷却部35によって、ファン33によって吸気された気体13を冷却することができる。また本実施形態では、配管を、冷却部35における冷却パイプ39のみでよいために、断熱構造30を安価、小型且つ省スペースにすることができる。また本実施形態では、ファン33と冷却部35とを発熱体21と同一直線上に配設することで、気体13をムラなく吸気及び冷却することができる。また本実施形態では、冷却部35を発熱体21の下部である底板20g側に配設することで、冷却部35の冷却パイプ39における水漏れや水滴により発熱体21の損傷を防止することができる。
【0060】
また本実施形態では、冷却部35において外部から冷却水を流入させることで、常に温度条件における冷却水の温度を調整できるため、気体15の温度を制御することができる。
【0061】
また本実施形態では、放熱用フィンによってさらに効率よく気体13を冷却することができる。
【0062】
また本実施形態では、発熱体側流路部53によってユニット10の内部10aにて気体13,15を循環させる流路部51を形成することができ、上板側流路部59によって冷却された気体15を合成でき、開口部59aによって効率よく発熱体側流路部53(発熱体21)に向けて冷却された気体15を送気することができ、効率よく発熱体21を冷却することができる。
【0063】
また本実施形態では、流路部51を形成するための側板10dと背板10eとが断熱機能を有することで、断熱パネルを用いることなく、安価、小型且つ省スペースに断熱することができる。また本実施形態では、パッキン11によって、さらに断熱することができる。
【0064】
また本実施形態では、側板側流路部55と背板側流路部57とにおいて、気体15を層流の状態で送気することで、温調板を配設することなく、側面20dと側板10dとの間と、背面20eと背板10eとの間とで断熱層を形成でき、断熱することができる。
また本実施形態では、気体15を層流の状態で送気することで、側板側流路部55と背板側流路部57とにおいて対流によるユニット10の内部10aからユニット10の外部10b(精密装置1の内部1a)への伝熱を抑制でき、この抑制によってユニット10から精密装置1の内部1aへの伝熱を抑制できる。またこれにより本実施形態では、本体部20の外周面側である側面20d側と背面20e側とに形成されている流路部51の一部(側板側流路部55と背板側流路部57)を断熱パネルとして機能させることができる。
【0065】
なお本実施形態では、冷却部35を本体部20の下部(底板20g)に1つのみ配設したが、これに限定することはなく、図6に示すように、各発熱体21の下に分散して配設してもよい。これにより本実施形態では、ユニット10の内部10aの温度を均一化でき、ユニット10の内部10aの最高温度を抑えることができ、結果的に、断熱性能を向上させることができる。
【0066】
また本実施形態では、側板側流路部55を側面20dと側板10dとの間に形成し、背板側流路部57を背面20eと背板10eとの間に形成したが、これに限定する必要はない。本実施形態では、図7に示すように、例えば側板側流路部55を側板10dの内部に形成し、背板側流路部57を背板10eの内部に形成してもよい。
【0067】
このとき側板10dは、側面側流出開口部55aから送気(流出)された気体15を側板側流路部55に流入させる側板側流入開口部55cと、側板側流路部55から側面側流入開口部55bに気体15を送気(流出)する側板側流出開口部55dとを有している。側板側流入開口部55cの縁には、側面側流出開口部55aと側板側流入開口部55cの間における気体15の漏れを防止するパッキン61が配設されている。パッキン61は、側板側流出開口部55dの縁にも配設されている。
【0068】
また背板10eは、背面側流出開口部57aから送気(流出)された気体15を背板側流路部57に流入させる背板側流入開口部57cと、背板側流路部57から背面側流入開口部57bに気体15を送気(流出)する背板側流出開口部57dとを有している。背板側流入開口部57cの縁と背板側流出開口部57dの縁とは、パッキン61が配設されている。
【0069】
また本実施形態では、ファン33を本体部20の下部(底板20g側)に配設したが、これに限定する必要はなく、本体部20の上部、例えば開口部59aと最上段の発熱体21Aとの間に配設してもよい。
【0070】
なお本実施形態では、操作板にも、流路部51を配設してもよい。これにより本実施形態では、断熱性能をより向上させることができる。
【0071】
このように本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0072】
1…精密装置、1a…内部、1b…外部、10…ユニット、10a…内部、10b…外部、10c…操作板、10d…側板、10e…背板、13,15…気体,20…本体部、20a…内部、20b…外部、20d…側面、20e…背面、20g…底板、20h…上板、20i…内部、21…発熱体、30…断熱構造、31…熱交換器、33…ファン、35…冷却部、37…流入口、39…冷却パイプ、41…流出口、51…流路部、53…発熱体側流路部、55…側板側流路部、57…背板側流路部、59…上板側流路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が内部に配設されている本体部と前記本体部を覆う板とからなるユニットを内部にて少なくとも1つ有する装置において、前記発熱体から発生する熱によって前記装置の内部の温度を変化させないように、前記ユニットに配設され、断熱性能を有する断熱構造であって、
前記本体部の内部に配設され、前記熱を有する前記ユニットの内部の熱気体を前記本体部の上部から下部に向かい送気し、送気した際に前記熱気体を前記ユニットの内部にて冷却し、冷却により生成された冷却気体を前記本体部の下部から前記本体部の上部を介して前記発熱体に向けて送気することで、前記冷却気体と前記熱気体とからなる前記ユニットの内部の気体を前記ユニットの内部にて循環させる熱交換器と、
前記熱交換器が前記気体を前記ユニットの内部にて循環させるために、前記本体部の外周面側である前記本体部と前記板との間と、前記本体部の内部とに形成される流路部と、
を具備することを特徴とする断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−253905(P2011−253905A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126162(P2010−126162)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(507207498)株式会社五洋電子 (43)
【Fターム(参考)】