説明

断熱部材およびそれを用いた建築用部材

【課題】断熱部材の断熱パネルとして長期における断熱性能が優れ、環境に優れる住宅等の省エネルギー化に貢献できる断熱パネルを提供すること。
【解決手段】真空断熱材1は、グラスウールからなる芯材3と、ゲッター剤4と、芯材3およびゲッター剤4を収納した外包材2とを備え、外包材2の内部を真空封止している。更に、断熱部材10の断熱パネル7は、連通気泡フォーム9中に真空断熱材1を挟み外被材5を備え、外被材5の内部を減圧封止してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱部材およびそれを用いた建築用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点より、家電製品や産業機器並びに住宅等の建築構造物の省エネルギー化の対策として、特に建築物に対する高断熱化が求められている。その際、断熱パネルの性能向上を図ろうとすると、断熱層の厚さを厚くしなければならないため、スペースや施工の問題が生じてくる。そこで、グラスウールやフォーム樹脂に比べ断熱性能に優れた真空断熱材が提案されている。真空断熱材はガスバリア性を有する外包材中に断熱性に優れた芯材を入れ、内部を真空にすることで作製される。
【0003】
真空断熱材は初期の熱伝導率が非常に優れる。しかし、芯材を包む外包材の溶着部やラミネートフィルムからのガス侵入および真空断熱材の内部に付着する水分等により、真空度が徐々に低下して次第に断熱性能の劣化が生じる。冷蔵庫等では、省エネ化のために真空断熱材が多く用いられている。その際、真空断熱材の長期信頼性は、約10〜15年を想定して性能劣化を進めているが、時間的に制約があり電気部品の寿命を推定させるアレニウスプロットを用いている。
【0004】
建築構造物などの断熱部材における断熱パネルもやはり長期の信頼性試験が必要であり、冷蔵庫よりも長く25年以上の劣化抑制が要求される。また、断熱部材の真空断熱材は特に外部からの衝撃等に対して運搬,保管,施工まで真空断熱材を損傷させずに、長期間において高強度を維持させる必要がある。
【0005】
これまでの真空断熱材の保護材としては、断熱性能の点から独立気泡を有するウレタン発泡体(熱伝導率:20mW/m・K以上)で覆った断熱パネルを用いてきた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−219866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
独立気泡の発泡体を保護材として用いた従来の真空断熱材では、発泡体の気泡内に空気よりも熱伝導率が低い発泡ガスをトラップしているため、初期状態では熱伝導率の低い発泡体となる。一方、発泡ガスを独立気泡内にトラップするとウレタン樹脂との親和性が良いためガス透過係数が大きく、炭酸ガス等が気泡内部と大気中のガス分圧の差で気泡膜を通して外部へ透過排出され、外部から透過係数の低い空気が侵入しないため気泡内部が減圧されフォームの収縮が発生し易くなる。また、独立気泡内に存在する発泡ガスは、時間経過と共に空気中へ放散すると同時に空気が断熱材の内部に侵入することで、断熱材の熱伝導率が劣化してしまう問題がある。
【0008】
また、発泡樹脂の注入は、真空断熱材の狭い空間に原料を充填しなければならず、型への装着,型からの取り外しや、真空断熱材が流動性を阻害することで発生するボイドの改善が必要になる。また、ウレタン発泡体の反応温度が約120℃に到達するため、高温により真空断熱材がダメージを受け、熱伝導率が劣化する問題がある。このことから、真空断熱材を発泡樹脂で覆う直接注入では、真空断熱材の型への取り付け、発泡体の流れを考慮した型の作製が必要になる。更に、気泡内への空気侵入や空気中の水分の吸着(吸湿)、発泡剤の炭酸ガスが気泡内に残留し空気中で置換される等の理由により、施工まで保管(倉庫等:環境温度が約50℃)するとフォームの寸法変化や収縮および熱伝導率の劣化が促進され、高性能かつ長期の信頼性が要求される建築物の断熱材としては問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、初期の熱伝導率に優れ、熱伝導率の劣化を低減できる断熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するため、本発明の第1の態様では、グラスウールの芯材と、ゲッター剤と、前記芯材および前記ゲッター剤を収納するガスバリア性の外包材とを備え、前記外包材の内部を減圧密封した真空断熱材と、前記真空断熱材の周囲を覆うように配置され、連通気泡を有する発砲体で構成される被覆材と、前記真空断熱材及び前記被覆材を収納する外被材と、を備え、前記外被剤の内部が減圧密封された断熱部材とした。
【0011】
この断熱部材によれば、グラスウールの芯材を備えた高性能な真空断熱材と連通気泡を有する発砲体からなる被覆材を組み合わせて、更に減圧密封する構成とすることで長期間において熱伝導率の劣化が少ない建築用の断熱部材が実現できる。被覆材として連通気泡を有する発泡体とすることで独立気泡の発泡体で問題であった気泡内への空気侵入や水分吸着および寸法変化や収縮が発生せず熱伝導率の劣化が防止できるようになる。
【0012】
係る本発明の第1の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)減圧下における前記被覆材の熱伝導率が10mW/m・K以下であること。
【0013】
この断熱部材によれば、被覆材の連通気泡が真空層中に存在することで、熱伝導率を10mW/m・K以下とすることができる。これにより、高性能な真空断熱材と共に熱伝導率が優れる被覆材を組み合わせることで、断熱性能が優れる断熱部材を提供することができる。
(2)前記真空断熱材および連通の被覆材が独立に形成され、前記連通体からなる被覆材の圧縮強度が0.15MPa以上の断熱パネルであること。
【0014】
この断熱パネルによれば、真空断熱材と連通体の被覆材が独立することで、真空断熱材を型セットで発泡充填することやウレタン発泡体の反応温度による高温ダメージを受けずに圧縮強度が維持され、真空断熱材の保護・補強および施工が両立できるようになる。
(3)前記発泡体が水または炭酸ガスからなる発泡剤で形成されていること。
【0015】
この断熱部材によれば、被覆材に水または炭酸ガスの発泡剤を用いて形成された発泡体を適用することにより、環境性に優れるとともに、長期にわたり圧縮強度等も安定な被覆材とすることができる。
(4)前記外被材が金属箔からなること。
【0016】
この断熱部材によれば、真空断熱材と連通気泡を有する発砲体の被覆材を組み合わせて金属箔を用い減圧封止することによりハイバリア性の断熱パネルが得られ、建築用に適した長期の性能維持が可能になる。更にハイバリア性の観点からは真空断熱材をラミネートフィルムからなる外包材で真空封止することが望ましい。
(5)住宅の断熱材を構成する面に設置した断熱部材の断熱パネルを備えた建築構造物、並びに建築構造物に適用される建築用部材。
【0017】
この断熱パネルによれば、高性能な断熱性能および高強度が維持される断熱部材であり、光熱費やCO2発生量の削減および壁厚等も薄くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、初期の熱伝導率に優れ、熱伝導率の劣化を低減でき、長期における断熱性能が優れた断熱部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の断熱部材である断熱パネルの断面模式図である。
【図2】従来の断熱部材である断熱パネルの断面模式図である。
【図3】本発明の断熱部材を用いた建築構造物の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。本発明の断熱部材は、グラスウールの芯材とゲッター剤を外包材に挿入し真空封止した真空断熱材の周囲を連通気泡を有する被覆材で覆い、その外周が外被材で被覆され、外皮材の内部を減圧して密封した構成を有する。真空断熱材および連通気泡を有する被覆材を含む内部が外被材中で減圧密封してなる構成とすることで、ハイバリア性となり長期で高性能と高強度の両立が図れる断熱パネル(断熱部材)とすることができる。
【0021】
グラスウールの芯材を用いた真空断熱材は熱伝導率が約1.5mW/m・K程度と優れた特性を有する。それに比べ、ウレタン発泡体等の断熱材は熱伝導率が約20mW/m・K以上と高く、真空断熱材に比べ約15倍以上断熱性能が劣る。このことから、真空断熱材に組み合わせる発泡断熱材やシート材についても、熱伝導率が優れる被覆材を用いることができれば断熱パネルとしての断熱性能が大幅に向上させることができる。
【0022】
本発明では真空断熱材を被覆する材料に、独立気泡ではなく大部分が連通気泡の発泡体を設けて、外部の空気と置換しても収縮することが少ない圧縮強度の高い連通体を用いた。しかし、連通発泡体は独立気泡のように発泡ガスが存在しないことから断熱性能が劣るため、連通の被覆材であっても熱伝導率を低減させるために被覆材も含め減圧中で構成した断熱部材とすることで本発明を達成した。その際、真空断熱材を従来のように独立気泡のウレタンフォーム中に埋めるのではなく、真空断熱材と被覆材を別々に形成することで型への充填発泡がなくなり、ポリオールとイソシアネートが反応してフォームを形成する温度(約120℃)による高温ダメージで劣化を受けることもない。更に、連通気泡の発泡体である被覆材を包む外被材を金属箔から構成されるハイバリア性とすることにより、作製された断熱パネルは長期でも優れた断熱性能と高強度の両立が図れる断熱部材が実現できる。
【0023】
〈芯材〉
真空断熱材の芯材は大気圧からその形状を保持するスペーサの機能を持ち、減圧時の圧縮応力を受けて高空隙を有するグラスウールの芯材が好ましい。芯材を構成するグラスウールの繊維径は、大きいと繊維の接触が線に近くなり接触熱抵抗の低減により熱伝導率が高く、逆に繊維径が極細になると取扱いが不便となり原料が非常に高価になる。そのため、グラスウールとしては、真空断熱材の芯材は真空時の圧縮応力でも高空隙が得られ熱伝導率が低減できる平均繊維径が約3〜6μmの繊維を用いることが好ましい。また、グラスウールを約250℃,1時間のエージング処理で吸着水分を除去したもの用いることが好ましい。また、アウトガスの発生により熱伝導率が高くなるのを避けるために、バインダー等の結合剤を含まないものが好ましい。なお、平均繊維径は走査式電子顕微鏡を用い、約10本の繊維を含む視野の繊維直径を測定したものとする。
【0024】
〈ゲッター剤〉
ゲッター剤は、真空断熱材および被覆材の信頼性を向上させる目的で使用される。ゲッター剤としては、二酸化炭素,酸素,窒素等のガス,水蒸気を吸収するものであればよく、ドーソナイト,ハイドロタルサイト,金属水酸化物のゲッター剤またはモレキュラーシーブス,シリカゲル,酸化カルシウム,ゼオライト,疎水性ゼオライト,活性炭,水酸化リチウム等の吸収剤が利用できる。
【0025】
〈被覆材〉
本発明の連通気泡を有する被覆材としては、発泡体が好ましくウレタンフォーム,イソシアヌレートフォーム,フェノールフォーム,チレンフォーム等が利用できる。例えば、ウレタンフォームは、ウレタン結合やウレア結合とイソシアヌレート結合を有するものである。イソシアヌレート結合は、イソシアネート基を触媒により三量化させて生成され機械的強度や耐熱性を向上させることができる。通常の方法で得られる硬質ポリウレタンフォームとしては、独立気泡率が概ね80%以上であり独立気泡率を上げれば断熱性能は向上する。しかし、断熱性能よりも被覆材として寸法安定性や収縮を改善するため、発泡体気泡の大部分を連続化させることで断熱性能と圧縮強度等が両立できることがわかった。ここで、連通気泡率としては、発泡体の気泡のうち連通気泡の割合が70%以上であることが望ましい。
【0026】
気泡の連続体としては、例えばグリセリンにプロピレンオキシドを付加させた長鎖ポリエーテルポリオールの配合、ステアリン酸カルシウムやミスチリン酸カルシウムのようなモノカルボン酸の金属塩を配合して気泡の連続化を促す方法がある。ウレタンフォームを作製するには、ポリオール液とイソシアネート液を均一に混合可能であれば種々の装置が使用でき、例えば小型ミキサー,注入発泡用の低圧や高圧発泡機,スラブ発泡用の低圧や高圧発泡機,連続ライン用の低圧や高圧発泡機,吹き付け用のスプレー発泡機等があげられる。即ち、ポリウレタンの連通フォームは、ポリオール混合物とポリイソシアネートを触媒,発泡剤,整泡剤,連通化剤の存在下において反応させることで、フォーム密度が約25〜35kg/m3程度の被覆材のパネルが得られる。発泡剤には水,炭酸ガス,イソシアネートと水との反応で発生する炭酸ガスが使用され、地球温暖化やCO2発生量の削減といった環境保護に対しても考慮したものである。なお、無機繊維等を発泡体と併用することも可能である。
【0027】
〈外包材,外被材〉
また、ハイバリア性を有する外包材や外被材としては、内部に気密部を設け芯材や被覆材を覆うものであり、減圧封止で芯材の形状を反映する材質が好ましい。外包材に用いるラミネートフィルムは最内層を熱溶着層として、中間層にガスバリア層のアルミニウム箔またはアルミニウム蒸着層を有し、最外層に表面保護層を設けたラミネートフィルムが適用できる。しかし、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層はそれ自身が熱の良伝導物質であるため、ヒートブリッジによる断熱性能の低下を抑制させるために厚さを10μm以下とすることが好ましい。具体的には、最外層にはポリアミドフィルムで耐突き刺し性を向上し、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムを設け、最内層には高密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリプロピレン等を設けたプラスチックラミネートフィルムである。
【0028】
また、被覆材を包む外被材としては、真空断熱材のガスバリア性を十分に保護させるため、ステンレス箔やアルミ合金箔等の金属箔が好ましい。熱伝導率の観点からステンレス箔の箔厚は約20〜50μm、アルミ合金箔の箔厚は約15〜30μmとすることが好ましい。また、金属箔の溶着層には可溶性のポリイミドワニスを用い、太さが約10〜30mm、厚みが約10〜50μmになるように塗布形成し、ヒートシールしたものである。具体的には、ステンレス箔上に印刷機等を用いポリイミドワニスを周縁部に額縁状に塗布し、その塗膜を約70℃で半固化して一対のステンレス箔同士を熱プレス機で約200℃の温度と約1.0kg/cm2の圧力をかけ、密閉シールしたハイバリア性の外被材である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明による実施例について説明する。なお、この実施例によって発明が限定されるものではない。
【0030】
図1は、本発明の断熱部材の断面模式図である。また、図2は従来の断熱部材の断面模式図である。
【0031】
本実施例の断熱部材は、真空断熱材1および連通気泡を有する被覆材9を組み合わせた断熱部材7である。真空断熱材1は、グラスウールの芯材3とゲッター剤4を外包材2で包み、外包材2の内部を減圧密封して構成される。この真空断熱材1の周囲を被覆材9で覆い、更に被覆材9の外周を外被材5で包み、減圧密封した断熱部材である。被覆材9には連通気泡を有するウレタン発泡体等を用いている。
【0032】
一方、従来(比較例)の断熱部材は、図1と同様の真空断熱材の周囲を独立気泡の発泡体で構成される被覆材8で覆ったものである。
【0033】
図3は、本実施例の断熱部材を用いた建築構造物の概略断面図である。本実施例の建築構造物は、コンクリート基礎12上の土台13に柱14を組み、柱14と柱間に設けられている門柱15との間に断熱部材10が配置されている。この際、断熱部材10に釘打ち可能部を設けることで、柱または門柱への釘打ちによる固定ができ、建築構造物の断熱性能を長期にわたり高める効果を有する。
【0034】
(実施例1)
実施例1の断熱パネルは以下のように作製した。まず、真空断熱材を以下の手順で作製した。芯材としては、平均繊維径が4.5μmのグラスウールを250℃,1時間のエージング処理したものを使用した。また、ガス吸着のゲッター剤としてモレキュラーシーブス13Xを用いた。また、外包材としては、熱溶着層の高密度ポリエチレンとアルミ箔(約6μm)とナイロンおよびポリエチレンテレフタレートのラミネートフィルムを用いた。まず、外包材の中に芯材とゲッター剤を入れ、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内の内部圧力が1.5Paになるまで排気した後、外包材の端部をヒートシールによって真空封止した。作製した真空断熱材の大きさは、400mm×400mm×10mmであった。英弘精機(株)製のAUTO−Λを用い、測定温度条件10℃で熱伝導率を測定したところ、熱伝導率は1.5mW/m・Kであった。
【0035】
次に、真空断熱材を保護する被覆材には、イソシアネートと水との反応で発生する炭酸ガスを発泡剤とした連通気泡を有する発泡ウレタンの連通パネルを用いた。この連通気泡を有する発泡ウレタンは、ポリオールと、水と、触媒と、整泡剤と、連通化剤とを混合したプレミックス成分とイソシアネートを高圧発泡機で混合撹拌して、型に充填注入させて発泡したものである。このような発泡ウレタンの作製方法の一例としては以下である。m−トリレンジアミン系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、トリエタノールアミン系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを20重量部、o−トリレンジアミン系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、蔗糖系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを20重量部の混合ポリオール成分100重量部に、水15部および反応触媒としてテトラメチルヘキサメチレンジアミン1.2重量部とトリメチルアミノエチルピペラジン2部、整泡剤として有機シリコーン化合物X−20−1614を2重量部、連通化剤のステアリン酸カルシウムを10重量部、イソシアネートとしてミリオネートMRのジフェニルメタンイソシアネート多核体を125部用いて、型に充填注入させて発泡させることで作製できる。
【0036】
更に、断熱部材を断熱パネルとするため、上記作製の真空断熱材と連通ウレタンパネルの被覆材を組み合わせて断熱性能を長期間維持するため、ハイバリア性の外被材として金属箔を選定して用いた。その際、金属箔として厚さ30μmのステンレス箔上にポリイミドワニスを額縁状に塗膜し半固化させ、一対のステンレス箔同士を熱プレス機で圧力をかけ三方を密閉シールした。その後、連通ウレタンの被覆材パネル(大きさ:500mm×500mm×30mm)中に真空断熱材とゼオライトを外被材に入れ、真空包装機のロータリーポンプで8分、拡散ポンプで8分、真空チャンバー内の内部圧力が1.0Paになるまで排気後、外被材の最終端部をヒートシールで減圧封止した。
【0037】
連通パネルの減圧下における熱伝導率および圧縮強度を調べたところ、独立気泡を有する発泡ウレタンに比べて5.5mW/m・Kと0.18MPaと優れるものであった。また、断熱パネルの初期熱伝導率を測定したところ、4.0mW/m・Kであった。その後、断熱パネルを60℃の恒温槽中に約90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、7.2mW/m・Kと劣化が小さいものであった。このことから、真空断熱材を連通ウレタンの被覆材に挿入した断熱パネルは、従来の独立気泡のウレタンパネルに比べ被覆材として熱伝導率が5.5mW/m・Kと優れた連通パネルを用い、更にハイバリア性の外被材で保ったことから、高性能な断熱パネルとなり施工までの保管等でも寸法変化や収縮が小さく、熱伝導率が長期間でも劣化が少ない断熱部材の断熱パネルが提供できる。
【0038】
なお、表1の各物性・特性は下記のようにして調べた。真空断熱材と、被覆材と、真空断熱材と被覆材を組み合わせた断熱パネルの熱伝導率は、英弘精機社製HC−071型(熱流計法、平均温度10℃)を用いて評価した。更に、低温や高温での寸法変化率および収縮については、150mm×300mm×25tmmに切断したフォームを−20℃で48時間放置、70℃で48時間放置した時の厚さを寸法変化率、収縮を評価した。なお、圧縮強度は50mm×50mm×25tmmに切断した各々のフォームを送り速度4mm/minで負荷して、10%変形時の荷重を元の受圧面積で除した値を圧縮強度として評価したものである。
【0039】
【表1】

【0040】
(比較例1)
比較例1の断熱パネルは以下のように作製した。まず、真空断熱材を以下の手順で作製した。芯材としては、繊維径が5.5μmのグラスウールを使用した。ガス吸着のゲッター剤としてモレキュラーシーブス13Xを用いた。また、外包材としては、熱溶着層の高密度ポリエチレンとアルミ箔(約6μm)とナイロンおよびポリエチレンテレフタレートのラミネートフィルムを用いた。外包材の中に芯材とゲッター剤を入れ、真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内に入れ、チャンバーの内部圧力が1.5Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールし真空封止で作製した。真空断熱材を測定温度条件10℃で熱伝導率を測定したところ、1.7mW/m・Kであった。
【0041】
また、真空断熱材を保護する被覆材としては、ポリオールと、代替フロンの発泡剤(HFC−141b)と、触媒と、整泡剤をプレミックス成分とイソシアネートを高圧発泡機で混合撹拌して、型に充填注入させて発泡して作製した独立気泡の発泡ポリウレタンとした。真空断熱材を型内にセットして、上記の発泡ポリウレタンを充填注入させた建材用部材の断熱パネルを作製した。発泡ポリウレタンの熱伝導率と圧縮強度を測定したところ、20.5mW/m・Kで0.12MPaと劣った。また、表1のように代替フロンを発泡剤に使用しているため、環境負荷(CO2排出量,エコリサイクル性)が不良で、ウレタンフォームの寸法変化率や収縮(−20℃および70℃に48h放置した時の厚さ変化率)が大きく劣るものであった。また、測定温度条件10℃で初期の熱伝導率を測定したところ、8.2mW/m・Kと高くなる。更に、60℃の恒温槽中に90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、18.2mW/m・Kまで劣化した。このことから、長期間での断熱性能が大きく劣る建材用部材の断熱パネルであった。
【0042】
(実施例2)
実施例2の断熱パネルは以下のように作製した。まず、真空断熱材は平均繊維径が5.6μmのグラスウールからなる芯材を、300℃1時間のエージング処理後に実施例1と同様にラミネートフィルムを用いて真空断熱材を作製した。測定温度条件10℃で熱伝導率を測定したところ、1.6mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する被覆材には、炭酸ガスを発泡剤とする連通気泡を有するウレタン発泡体の連通パネルを用いた。
このウレタン発泡体は、ポリオールと、少量の水と、触媒と、整泡剤と、連通化剤を混合したプレミックス成分とイソシアネートを高圧発泡機で混合撹拌し、型に充填注入させて発泡したものである。
【0043】
断熱パネルとするため、上記作製の真空断熱材と連通ウレタンパネルの被覆材を組み合わせて断熱性能を長期間維持するため、ハイバリア性の外被材として金属箔を用いた。その際、金属箔として厚さ30μmのステンレス箔上にポリイミドワニスを額縁状に塗膜し半固化させ、一対のステンレス箔同士を熱プレス機で圧力をかけ三方を密閉シールした。
その後、連通ウレタンの被覆材パネル(大きさ:500mm×500mm×30mm)中に真空断熱材とゼオライトを外被材に入れ、真空包装機のロータリーポンプで8分、拡散ポンプで8分、真空チャンバー内の内部圧力が1.0Paになるまで排気後、外被材の最終端部をヒートシールで減圧封止した。
【0044】
連通パネルの減圧下における熱伝導率および圧縮強度を調べたところ、独立気泡を有する発泡ウレタンに比べ4.8mW/m・Kと0.19MPaと優れるものであった。また、断熱パネルの初期熱伝導率を測定したところ、4.2mW/m・Kであった。その後、断熱パネルを60℃の恒温槽中に約90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、8.4mW/m・Kと劣化が小さいものであった。このことから、真空断熱材を連通ウレタンの被覆材に挿入した断熱パネルは、従来の独立気泡のウレタンパネルに比べ被覆材として熱伝導率が4.8mW/m・Kと優れた連通パネルを用いて、更にハイバリア性の外被材で保ったことから、高性能な断熱パネルとなり施工までの保管等でも寸法変化や収縮が少なく、熱伝導率が長期間でも劣化が小さい断熱部材の断熱パネルが提供できる。
【0045】
(比較例2)
比較例2の断熱パネルは以下のように作製した。繊維径が7.2μmのグラスウールからなる芯材とガス吸着のゲッター剤(モレキュラーシーブス13X)を、ラミネートフィルムからなる外包材内に挿入し真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内に入れ、チャンバーの内部圧力が1.5Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールして真空封止で真空断熱材を作製した。測定温度条件10℃で真空断熱材の熱伝導率を測定したところ、2.6mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する独立気泡のイソシアヌレート発泡体としては、ポリオールに炭化水素のシクロペンタン発泡剤と、触媒と、整泡剤をプレミックス成分とイソシアネートを高圧発泡機で混合撹拌して、型に充填注入させて発泡した独立気泡のパネルとした。真空断熱材を型内にセットして、上記の発泡イソシアヌレートを充填注入させた建材用部材の断熱パネルを作製した。発泡イソシアヌレートの熱伝導率と圧縮強度を測定したところ、24.2mW/m・Kで0.11MPaと劣った。また、表1のように炭化水素を発泡剤に使用しているため、シクロペンタンの可燃性や環境負荷(CO2排出量,エコリサイクル性)が不良で、イソシアヌレートフォームの寸法変化率や収縮(−20℃および70℃に48h放置した時の厚さ変化率)が大きく劣るものであった。また、測定温度条件10℃で初期の熱伝導率を測定したところ、7.6mW/m・Kと高くなる。更に、60℃の恒温槽中に90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、17.8mW/m・Kまで劣化した。
このことから、長期間での断熱性能が大きく劣る建材用部材の断熱パネルであった。
【0046】
(実施例3)
実施例3の断熱パネルは以下のように作製した。まず、真空断熱材には平均繊維径が3.0μmのグラスウールからなる芯材を、250℃で1時間のエージング処理後に実施例1と同様にラミネートフィルムを用い真空断熱材を作製した。10℃の初期熱伝導率を測定したところ1.3mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する被覆材には、イソシアネートと水との反応で発生する炭酸ガスを発泡剤とした連通気泡を有するイソシアヌレート発泡体の連通パネルを用いた。このイソシアヌレート発泡体は、ポリオールと、水と、触媒と、整泡剤と、連通化剤とを混合したプレミックス成分とイソシアネートを高圧発泡機で混合撹拌して、型に充填注入させて発泡したものである。このような発泡イソシアヌレートの作製方法の一例としては以下である。グリセリン系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、プロピレングリコール系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、ペンタエリスリトール系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを20重量部、ソルビトール系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを20重量部の混合ポリオール成分100重量部に、水13部および反応触媒として三量化のテトラメチルヘキサメチレンジアミン1.0重量部とペンタメチルジエチレントリアミン2部、整泡剤として有機シリコーン化合物X−20−1614を2重量部、連通化剤のミスチリン酸カルシウムを10重量部、イソシアネートとしてポリメチレンポリフェニルイソシアネートを125部用いて、型に充填注入し、発泡させることで作製できる。
【0047】
更に、断熱部材の断熱パネルとするため、上記作製の真空断熱材と連通イソシアヌレートパネルの被覆材を組み合わせて断熱性能を長期間維持するため、ハイバリア性の外被材として金属箔を選定して用いた。その際、金属箔として厚さ20μmのアルミ合金箔上にポリイミドワニスを額縁状に塗膜し半固化させ、一対のアルミ合金箔同士を熱プレス機で圧力をかけ三方を密閉シールした。その後、連通イソシアヌレートの被覆材パネル(大きさ:500mm×500mm×30mm)中に真空断熱材とゼオライトを外被材に入れ、真空包装機のロータリーポンプで8分、拡散ポンプで8分、真空チャンバー内の内部圧力が1.0Paになるまで排気後、外被材の最終端部をヒートシールで減圧封止した。
【0048】
連通パネルの減圧下における熱伝導率および圧縮強度を調べたところ、独立気泡を有する発泡ウレタンに比べ5.1mW/m・Kと0.23MPaと優れるものであった。また、断熱パネルの初期熱伝導率を測定したところ、4.1mW/m・Kであった。その後、断熱パネルを60℃の恒温槽中に約90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、7.5mW/m・Kと劣化が小さいものであった。このことから、真空断熱材を連通ウレタンの被覆材に挿入した断熱パネルは、従来の独立気泡のウレタンパネルに比べ被覆材として熱伝導率が5.1mW/m・Kと優れた連通パネル体を用いて、更にハイバリア性の外被材で保ったことから、高性能な断熱パネルとなり施工までの保管等でも寸法変化や収縮が少なく、熱伝導率が長期間でも劣化が小さい断熱部材の断熱パネルが提供できる。
【0049】
(実施例4)
実施例4の断熱パネルは以下のように作製した。まず、真空断熱材には平均繊維径が6.0μmのグラスウールからなる芯材を、300℃1時間のエージング処理後に実施例1と同様にラミネートフィルムからなる外包材を用い真空断熱材を形成した。測定温度条件10℃で熱伝導率を測定したところ、1.6mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する被覆材には、炭酸ガスを発泡剤とする連通気泡を有するイソシアヌレート発泡体の連通パネルを用いた。このイソシアヌレート発泡体は、ポリオールと、少量の水と、触媒と、整泡剤と、連通化剤とを混合したプレミックス成分とイソシアネートを高圧発泡機で混合撹拌して、型に充填注入させて発泡したものである。
【0050】
更に、断熱部材の断熱パネルとするため、上記作製の真空断熱材と連通イソシアヌレートパネルの被覆材を組み合わせて断熱性能を長期間維持するため、ハイバリア性の外被材として金属箔等を選定して用いた。その際、金属箔として厚さ30μmのステンレス箔上にポリイミドワニスを額縁状に塗膜し半固化させ、一対のステンレス箔同士を熱プレス機で圧力をかけ三方を密閉シールした。その後、連通イソシアヌレートの被覆材パネル(大きさ:500mm×500mm×30mm)中に真空断熱材とゼオライトを外被材に入れ、真空包装機のロータリーポンプで8分、拡散ポンプで8分、真空チャンバー内の内部圧力が1.0Paになるまで排気後、外被材の最終端部をヒートシールで減圧封止した。
【0051】
連通パネルの減圧下における熱伝導率および圧縮強度を調べたところ、独立気泡を有する発泡ウレタンに比べ4.6mW/m・Kと0.25MPaと優れるものであった。また、断熱パネルの初期熱伝導率を測定したところ3.9mW/m・Kであった。その後、断熱パネルを60℃の恒温槽中に約90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、7.3mW/m・Kと劣化が小さいものであった。このことから、真空断熱材を連通イソシアヌレートの被覆材に挿入した断熱パネルは、従来の独立気泡のウレタン断熱パネルに比べ被覆材として熱伝導率が4.6mW/m・Kと優れた連通パネルを用いて、更にハイバリア性の外被材で保ったことから、高性能な断熱パネルとなり施工までの保管等でも寸法変化や収縮が少なく、熱伝導率が長期間でも劣化が小さい断熱部材の断熱パネルが提供できる。
【0052】
(実施例5)
実施例5の断熱パネルは以下のように作製した。まず、真空断熱材には平均繊維径が5.2μmのグラスウールからなる芯材を、280℃で1時間のエージング処理後にラミネートフィルムを用い真空断熱材を形成した。測定温度条件10℃で熱伝導率を測定したところ、1.7mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する被覆材には、フェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂を水の発泡剤と、ヒマシ油系イオン性界面活性剤の整泡剤と、フェノールスルホン酸の酸硬化剤と、ステアリン酸カルシウムの連通化剤とを混合撹拌して、型に充填注入させて発泡した連通気泡を有するフェノール発泡体の連通パネルを用いた。
【0053】
更に、断熱部材の断熱パネルとするため、上記作製の真空断熱材と連通フェノールパネルの被覆材を組み合わせ真空断熱材の断熱性能を長期間維持するため、ハイバリア性の外被材として金属箔等を選定して用いた。その際、金属箔として厚さ20μmのアルミ合金箔上にポリイミドワニスを額縁状に塗膜し半固化させ、一対のアルミ合金箔同士を熱プレス機で圧力をかけて三方を密閉シールした。その後、連通フェノールの被覆材パネル(大きさ:500mm×500mm×30mm)中に真空断熱材とゼオライトを外被材に入れ、真空包装機のロータリーポンプで8分、拡散ポンプで8分、真空チャンバー内の内部圧力が1.0Paになるまで排気後、外被材の最終端部をヒートシールで減圧封止した。
【0054】
連通パネルの減圧下における熱伝導率および圧縮強度を調べたところ、独立気泡を有する発泡ウレタンに比べ5.3mW/m・Kと0.17MPaと優れるものであった。また、断熱パネルの初期熱伝導率を測定したところ、4.5mW/m・Kであった。その後、断熱パネルを60℃の恒温槽中に約90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、8.6mW/m・Kと劣化が小さいものであった。このことから、真空断熱材を連通フェノールの被覆材に挿入した断熱パネルは、従来の独立気泡のウレタン断熱パネルに比べ被覆材として熱伝導率が5.3mW/m・Kと優れた連通パネルを用いて、更にハイバリア性の外被材で保ったことから、高性能な断熱パネルとなり施工までの保管等でも寸法変化や収縮が少なく、熱伝導率が長期間でも劣化が小さい断熱部材の断熱パネルが提供できる。
【0055】
(実施例6)
実施例6の断熱パネルは以下のようにして作製した。まず、真空断熱材には平均繊維径が4.8μmのグラスウールからなる芯材を、250℃1時間のエージング処理後に実施例1と同様にラミネートフィルムからなる外包材を用い真空断熱材を形成した。測定温度条件10℃で熱伝導率を測定したところ、1.5mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する被覆材には、炭酸ガスと水を発泡剤とする連通気泡を有するスチレン発泡体の連通パネルを用いた。この発泡スチレンフォームは、ポリスチレン樹脂100重量部に対し滑剤としてステアリン酸バリウム0.5重量部を約200℃に加熱して溶融混練し、発泡剤として水2重量部と炭酸ガス2重量部を樹脂中に圧入した。その後、押し出し機、冷却機で混練しながら冷却し、スリットダイより発泡樹脂温度を約110〜140℃にて大気中へ発泡させた後、スリットダイに密着させて設置した成形金型と成型ロールにより、押出し発泡充填したものである。
【0056】
更に、断熱パネルとするため、上記作製の真空断熱材と連通スチレンパネルの被覆材を組み合わせて断熱性能を長期間維持するため、ハイバリア性の外被材として金属箔を選定して用いた。その際、金属箔として厚さ30μmのステンレス箔上にポリイミドワニスを額縁状に塗膜し半固化させ、一対のステンレス箔同士を熱プレス機で圧力をかけ三方を密閉シールした。その後、連通スチレンの被覆材パネル(大きさ:500mm×500mm×30mm)中に真空断熱材とゼオライトを外被材に入れ、真空包装機のロータリーポンプで8分、拡散ポンプで8分、真空チャンバー内の内部圧力が1.0Paになるまで排気後、外被材の最終端部をヒートシールで減圧封止した。
【0057】
連通パネルの減圧下における熱伝導率および圧縮強度を調べたところ、独立気泡を有する発泡ウレタンに比べ3.9mW/m・Kと0.16MPaと優れるものであった。また、断熱パネルの初期熱伝導率を測定したところ3.8mW/m・Kであった。その後、断熱パネルを60℃の恒温槽中に約90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、7.0mW/m・Kと劣化が小さいものであった。このことから、真空断熱材を連通スチレンの被覆材に挿入した断熱パネルは、従来の独立気泡のウレタン断熱パネルに比べ被覆材として熱伝導率が3.9mW/m・Kと優れた連通パネルを用いて、更にハイバリア性の外被材を保ったことから、高性能な断熱パネルとなり施工までの保管等でも寸法変化や収縮が少なく、熱伝導率が長期間でも劣化が小さい断熱部材の断熱パネルが提供できる。
【0058】
(比較例3)
比較例3の断熱パネルは以下のように作製した。繊維径が6.1μmのグラスウールからなる芯材とガス吸着のゲッター剤(モレキュラーシーブス13X)を、ラミネートフィルムからなる外包材内に挿入し真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内に入れ、チャンバーの内部圧力が1.5Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールし真空封止で真空断熱材を作製した。測定温度条件10℃で真空断熱材の熱伝導率を測定したところ、2.3mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する被覆材には独立気泡のフェノール発泡体を用いた。このフェノール発泡体は、フェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂のシクロペンタン発泡剤と、ヒマシ油系イオン性界面活性剤の整泡剤と、フェノールスルホン酸の酸硬化剤をプレミックスして型に充填注入させて発泡したものである。このフェノール発泡体の熱伝導率と圧縮強度を測定したところ、26.5mW/m・K,0.10MPaと劣った。また、表1のようにシクロペンタンは可燃性を有し環境負荷(CO2排出量,エコリサイクル性)が不良で、フェノールフォームの寸法変化率や収縮(−20℃および70℃に48h放置した時の厚さ変化率)が大きく劣るものであった。その後、真空断熱材を型内にセットして、上記のフェノール発泡体を充填注入させた建材用部材の断熱パネルを作製した。測定温度条件10℃で初期の熱伝導率を測定したところ、8.5mW/m・Kと高くなり、更に60℃の恒温槽中に90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、18.5mW/m・Kまで劣化した。このことから、長期間での断熱性能が大きく劣る建材用部材の断熱パネルであった。
【0059】
(比較例4)
比較例4の断熱パネルは以下のように作製した。繊維径が2.9μmのグラスウールからなる芯材とガス吸着のゲッター剤(モレキュラーシーブス13X)を、ラミネートフィルムからなる外包材内に挿入し真空包装機のロータリーポンプで10分、拡散ポンプで10分、真空チャンバー内に入れ、チャンバーの内部圧力が1.5Paになるまで排気後、外包材の端部をヒートシールし真空封止で真空断熱材を作製した。測定温度条件10℃で真空断熱材の熱伝導率を測定したところ、1.5mW/m・Kであった。また、真空断熱材を保護する被覆材には独立気泡のスチレン発泡体を用いた。このスチレン発泡体は、スチレン系単量体を分散剤等により水中に分散させ重合開始剤を加え、懸濁重合により重合したスチレン樹脂に脂肪族炭化水素のイソブタン発泡剤を含侵させた粒子(粒径0.5〜1.0mm程)を成形金型内に入れ、粒子を蒸気等により予備発泡後に加熱して作製したものである。このスチレン発泡体の熱伝導率と圧縮強度を測定したところ、29.5mW/m・K,0.08MPaと劣った。また、表1のようにイソブタンは可燃性を有し環境負荷(CO2排出量,エコリサイクル性)が不良で、スチレンフォームの寸法変化率や収縮(−20℃および70℃に48h放置した時の厚さ変化率)が大きく劣るものであった。
その後、真空断熱材を型内にセットして、上記のスチレン発泡体を充填注入させた建材用部材の断熱パネルを作製した。測定温度条件10℃で初期の熱伝導率を測定したところ、9.2mW/m・Kと高くなり、更に60℃の恒温槽中に90日間放置後の熱伝導率を再測定したところ、19.8mW/m・Kまで劣化した。このことから、長期間での断熱性能が大きく劣る建材用部材の断熱パネルであった。
【0060】
(実施例7)
実施例7は、図3に示すように断熱部材を用いて建築構造物に使用した例である。図3は建築構造物の概略断面図である。建築構造物では、コンクリート基礎上の土台に柱を組み、柱および柱間に設けられている門柱に熱伝導率が優れる断熱パネルを断熱部材として使用し、釘等により固定する。本実施例の断熱部材は、真空断熱材および連通気泡を有する被覆材を組み合わせた断熱パネルからなるものであって、真空断熱材としてはグラスウールからなる芯材、被覆材としては連通気泡を有するウレタン発泡体等で形成され、真空断熱材が連通体の被覆材中に配置される建材用部材の断熱パネルである。この時、断熱部材の断熱パネルとしては、以下のように作製したものである。真空断熱材にはグラスウールからなる芯材およびガス吸着のゲッター剤をラミネートフィルムからなる外包材に入れ、真空包装機で真空封止して熱伝導率が約1.5mW/m・K程の高性能な真空断熱材を用いたものである。また、真空断熱材を保護する被覆材には、イソシアネートと水との反応で発生する炭酸ガスを発泡剤とする連通気泡を有するウレタン発泡体の連通パネルを用いた。このウレタン発泡体は、ポリオールと、水と、触媒と、整泡剤と、連通化剤とを混合したプレミックス成分とイソシアネートを高圧発泡機で混合撹拌して、型に充填注入させて発泡したものである。発泡ウレタンとしては、ポリオールがm−トリレンジアミン系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、トリエタノールアミン系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを20重量部、o−トリレンジアミン系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを30重量部、蔗糖系にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを20重量部の混合ポリオール成分100重量部に、水15部および反応触媒としてテトラメチルヘキサメチレンジアミン1.2重量部とトリメチルアミノエチルピペラジン2部、整泡剤として有機シリコーン化合物X−20−1614を2重量部、連通化剤のステアリン酸カルシウムを10重量部、イソシアネートとしてミリオネートMRのジフェニルメタンイソシアネート多核体を125部で発泡充填した。
【0061】
この連通ウレタンパネルを真空断熱材と同様に外包材に入れ、真空包装機で真空封止して熱伝導率が5.5mW/m・K程の高性能な被覆材を用いたものである。更に、真空断熱材と連通ウレタンパネルの被覆材を組み合わせて断熱性能を長期間維持するため、ステンレス箔等とポリイミドワニスでハイバリア性の外被材を作製し連通ウレタンの被覆材中に真空断熱材を入れ、真空包装機で減圧封止して熱伝導率が約4.0mW/m・K程の高性能な断熱パネルを断熱部材に用いたものである。外壁との間に通気層を設けるため、断熱部材、柱や門柱の順に設けられ、外壁仕上げ材を固定する。断熱部材を柱と柱または柱と門柱または門柱と門柱に固定する場合、断熱部材の端部近傍を釘等で固定し建築構造物の完成後における熱伝導率が低く有効に機能する断熱パネルを断熱部材に適用することで、断熱パネルを挿入しなかったものに比べて断熱性能を長期間維持する効果が得られ、環境に優れる住宅等の省エネルギー化の建築構造物が提供できる。
【0062】
本発明によれば、真空断熱材と連通気泡の発泡体を組み合わせて構成することにより、長期の断熱性能における劣化が小さい断熱部材とすることができる。真空断熱材を覆う断熱材が独立気泡の発泡体を充填注入しないため、型セットやウレタン発泡体の反応温度(約120℃)が真空断熱材におよぼすダメージを受けることなく長期の性能維持が可能となる。しかも、真空断熱材と連通気泡を有する被覆材が共に真空層中に存在するため、空気侵入や空気中の水分吸着もなくフォームの寸法変化や収縮が抑えられ、水やそりに強い効果を有する。また、真空断熱材を覆う被覆材に熱伝導率(10mW/m・K以下)、圧縮強度(0.15MPa以上)が優れる連通体を使用すること、および、ハイバリア性の外被材としたことで高性能な断熱パネルとなり、施工までの保管(約50℃)等においても圧縮強度や熱伝導率を長期間維持することができる断熱部材を得ることができる。
【0063】
さらに、建築構造物の完成後における熱伝導率が低く有効に機能する断熱パネルを断熱部材に適用することで、環境に優れる住宅等の省エネルギー化に有効な建築構造物である。
【0064】
また、この断熱部材は、保温や保冷が必要な各製品にも適用することが可能であり、たとえば車両,建築部材,自動車,医療機器等である。特に、熱交換部を含み断熱性が必要な機器全般に有効であり、車両等に適用することで断熱壁の省スペース化が可能となり、車内空間が拡大されるとともに断熱効果で結露等の問題が解決される。
【符号の説明】
【0065】
1 真空断熱材
2 外包材
3 芯材
4 ゲッター剤
5 外被材
6,7,10 断熱部材
8 被覆材(独立気泡フォーム)
9 被覆材(連通気泡フォーム)
11 建築構造物
12 コンクリート基礎
13 土台
14 柱
15 門柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラスウールの芯材と、ゲッター剤と、前記芯材および前記ゲッター剤を収納するガスバリア性の外包材とを備え、前記外包材の内部を減圧密封した真空断熱材と、
前記真空断熱材の周囲を覆うように配置され、連通気泡を有する発砲体で構成される被覆材と、
前記断熱パネル及び前記被覆材を収納する外被材と、を備え、
前記外被剤の内部が減圧密封された断熱部材。
【請求項2】
請求項1において、減圧下における前記被覆材の熱伝導率が10mW/m・K以下であることを特徴とする断熱部材。
【請求項3】
請求項1において、前記被覆材の圧縮強度が0.15MPa以上であることを特徴とする断熱部材。
【請求項4】
請求項1において、前記発泡体が水または炭酸ガスからなる発泡剤により形成されたことを特徴とする断熱部材。
【請求項5】
請求項1において、前記外被材が金属箔からなることを特徴とする断熱部材。
【請求項6】
請求項1に記載の断熱部材を用いた建築用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−13114(P2012−13114A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148466(P2010−148466)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】