説明

新燃岳火山灰を活用した舗装構造及び施工方法

【課題】火山降灰の廃棄物処理上の問題を解決するばかりでなく、透水性と保水性を兼ね備え、水害対策を図ることができる新燃岳火山灰を用いた舗装構造及びその施工方法を提供する。
【解決手段】新燃岳火山灰とセメント系固化材とを所定の重量比で混和して第1の混合物M1を製造し、新燃岳火山灰と樹脂系バインダを所定の重量比で混和して第2の混合物M2を製造し、第2の混合物M2を路盤3上に転圧して保水層2を形成した後、第1の混合物M1を積層して透水層1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火山灰を原料とする道路等の舗装構造に関し、特に南九州地方霧島山系火山である新燃岳からの噴火降灰を活用する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火山の噴火により極めて大量に発生する火山灰は、資源活用や産業廃棄物としての処分も困難である。2011年1月から大規模に噴火し続けている霧島山系新燃岳からの降灰も、現状での有効な利用方法はない。本発明は、かかる憂慮する状況に対応するために提案されたものであり、路面等に堆積した新燃岳降灰を道路等の土木資材として再利用することを主たる目的とする。路面に堆積した火山灰は交通の妨げになり、田畑に堆積した火山灰は路地農作物等に多大な被害を与えるとともに、人体にも悪影響を及ぼして環境破壊を引き起こし、大きな社会問題となっている。かかる状況下において、自治体が所有する廃棄物処分場の許容量や新たな最終処分場の建設は、地域への保障問題等を抱え、迅速には対応できないのが現状である。
【0003】
従来、建築資材等に火山灰を再利用する技術として、有珠山の火山灰とスラグ、砂利及びセメントを混合して形成したブロック(特許文献1及び特許文献2参照)。千歳、苫小牧方面で採取された火山灰と、粘土、頁(けつ)岩を原料とした軽量骨材、タイル、ブロック、レンガ等の窯業製品の製造方法(特許文献3参照。)。火山灰を原料成分とする焼成体(特許文献4参照。)。国内の火山帯に無尽蔵に堆積している活性の火山灰を利用した人造栗石や人造ブロック(特許文献5参照。)。等が提案されている。
【0004】
また、石炭火力発電所等において、石炭の焼却により発生する石炭灰を、埋立地の造成に用いたり投棄処分したりすることなく再資源化する技術開発が嘱望され、石炭灰を道路の舗装材として利用する技術が提案されている。例えば、特許文献6には、火力発電所のボイラーから発生した多孔質の石炭灰(クリンカアッシュ)と、セメント系固化材と混和液とを所定の重量比で混和する工程と、この混合物を路盤上に転圧して舗装層1を形成する工程とを備え、透水性を有し、かつ、植物の発芽を抑える表面強度を有するようされた透水性防草舗装方法が開示されている。また、引用文献7には、クリンカアッシュとフライアッシュを所定の粒度分布となるように配合した雑草生育抑制機能を有する舗装材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−201055号公報
【特許文献2】特開2002−242107号公報
【特許文献3】特公平3−4619号公報
【特許文献4】特公平2−1792号公報
【特許文献5】特開平7−149551号公報
【特許文献6】特開2001−90012号公報
【特許文献7】特開2007−231565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術文献は、アスファルト舗装層における透水性や雑草等の植物の発芽を抑制する防草性についてのみ言及するに留まり、その保水性については不問にされている。例えば、豪雨による水害対策や夏場における舗装路面の上昇、それに依るヒートアイランド現象の対策まで講じた舗装技術については従来技術には何らの開示も示唆もされていない、本発明は、こうした技術的課題に鑑み、透水性と保水性を兼ね備え、雑草等の植物の発芽を抑制する防草性を有する舗装資材を提供することを目的とするものである。
【0007】
すなわち、透水性舗装と保水性舗装を一体化させ、本来廃棄物である火山灰の保水機能を生かし舗装材料として活用することで、廃棄物から資源へのリサイクルを図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明の石炭灰を用いた舗装構造は、新燃岳火山灰をセメント系固化剤で固化した保水層と、新燃岳火山灰を樹脂系バインダで固化した表透水層(表層)から構成したことを第1の特徴とし、新燃岳火山灰の粒径が1mm以下であることを第2の特徴とし、その施工方法を、火山灰とセメント系固化材とを所定の重量比で混和して第1の混合物を製造する工程と、火山灰と樹脂系バインダを所定の重量比で混和して第2の混合物を製造する工程と、前記第1の混合物を路盤上に転圧した後、前記第2の混合物を積層して舗装層を形成する工程とからなることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下記の優れた効果を有する。
(1)豪雨時に起こる都市部の下水や河川氾濫の抑制し、水害対策として有効である。
(2)保水層で保水した水の気化熱の作用により路面温度の上昇を抑制してヒートアイランド現象を緩和できる。
(3)雑草等の植物の発芽を抑制できる。
(4)廃棄物としての火山灰を有効活用でき、資源リサイクルの一助となり得る。
【0010】
本発明による透水性舗装材の特徴は火山灰を用いるから原料コストが極めて低くでき省資源面でも有効である しかも硬化物であるから成型のための熱エネルギーが不要であるばかりでなく製造設備を簡単にできる。もう一つの利点は火山灰は、川砂や山砂の細骨材よりも粗粒率が大きく、コンクリートに成型した場合ポーラスな構造になり易い粒度分布をもっている。また簡単なふるい工程だけで粒度を調整できる。したがって、製造コストも低くでき安価で透水性の優れたコンクリートを省資源面でも有利に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る火山灰を用いた舗装構造の一実施例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る火山灰を用いた舗装構造の実施形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、本発明で施工された地面は、粒状砕石が敷設してなる路盤3の上に、保水層2が形成され、さらに、この保水層2に積層して透水層1が設けられている。そして、透水層1の厚さtは、概ね10mm程度、保水層2の厚さtは、概ね50mm程度、路盤3の厚さtは100mm程度に設定されている。
【0014】
ここで、本発明に用いる新燃岳噴出火山灰(以下、単に火山灰という)について説明する。この火山灰についてX線回析結果から、粘土に類似した性質であることが判った。しかし、粒度については、粘土に比較して粗いことが判った。火山灰はSiO分が多く、酸性で強度も低いので、塩基度(CaO重量%/SiO重量%)の高いセメントと混合することにより、強度の高い材料とすることができる。
【0015】
以下、この発明の一実施例について説明する。但し、この実施例で使用した原料は、新燃岳の火山灰で、粒径が1mm以下の粉状原料である。
【0016】
[新燃岳噴火のマグマ物質の岩石学的検討]
平成23年(2011)年1月26日の新燃岳の噴火で噴出したマグマ物質(軽石)には、数cm大の軽石、火山灰を構成する軽石粒子の両方で、色彩の多様性がある。白色軽石は、全岩組成、石基組成のいずれでも茶色、灰色軽石に比べてSiOに富む。この組成多様性は、温度の異なる少なくとも2種類のマグマの、おそらく噴火直前の混合でもたらされ、白色軽石が低温マグマそのものである可能性が高い。これら端成分マグマの貯蔵深度の特定が、地球物理学的に観測される圧力源の解釈に必要とされる。1月26日噴火の噴出物の全岩組成は、過去の新燃岳噴出物の形成する組成範囲にあり、SiOに乏しいもの(茶色・灰色軽石)は、享保の噴火(1716年−1717年)と似た組成を持つ。
【0017】
次に、本発明の材料及び施工方法について説明する。
まず、火山灰とセメント系固化材及び混和液を所定の重量比で混和する。火山灰としては、好ましくは、1mm以下程度の粒径にふるいにかけて得られたものが用いる。重量比は、火山灰1mに対してセメント系固化材200kg、混和液120〜140リットルをミキサーで練り上げ、保水層2の材料となる第2の混合物M2を生成する。尚、セメント系固化材とは、水などの混和液で練ると、経時と共に硬化する粉末体をいうが、このセメント系固化材としては、例えば、焼石膏、マグネシアセメント、水硬石膏、天然セメント、ポルトランドセメント、アルミナセメントなどを用いることができる。
【0018】
次に、火山灰と樹脂系バインダを所定の重量比で混和する。重量比は、火山灰に1m対して樹脂系バインダを100kg以上配合してミキサーで練り上げ、透水層1の材料となる第1の混合物M1を生成する。本実施例において、樹脂系バインダとしては、通常モルタルに使用される全てのバインダを用いることができるが、本実施例ではエポキシ系樹脂を使用した。
【0019】
当透水性コンクリートの特徴は大きな空隙率を有することにある。本発明によると空隙率は15〜20%に達し高い透水性をもつ 従ってこの構築物により土中に自然に浸透していた雨水の透過を促進し地下水の急激な減少を防ぎそれによる地盤の沈下土中生物の生態の変化を防止すると共に樹木の順調な発育路面上の排水集中豪雨による河川の氾濫防止にも役立つ。当透水性コンクリートのもう一つの特徴は道路などに利用されても車の大きな荷重に十分耐えることができることである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、道路の舗装、ヒートアイランド対策工事、防草対策工事に適用できる。尚、ヒートアイランド対策を目的とする場合は、保水層の厚みを増せば貯水量が増大し、路面温度抑制の効果が上がる。また、防草対策を目的とする場合、保水層のみを施工する。このような舗装は、種子の成育に必要な太陽光線を遮断する以外に、圧縮強度が高く植物の種子を固い土に拘束する結果、その発芽を阻止したり、透水性に優れて種子を乾燥状態に維持する結果、その発芽ないし成育を阻止するという雑草成育抑制機能を地表面に具備するものである。
【符号の説明】
【0021】
1 透水層(第1の混合物層)
2 保水層(第2の混合物層)
3 路盤(粒状砕石)
M1 第1の混合物
M2 第2の混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新燃岳火山灰をセメント系固化剤で固化した保水層と、樹脂系バインダで固化した透水層から構成したことを特徴とする新燃岳火山灰を用いた舗装構造。
【請求項2】
新燃岳火山灰の粒径が1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の新燃岳火山灰を用いた舗装構造。
【請求項3】
新燃岳火山灰とセメント系固化材とを所定の重量比で混和して第1の混合物を製造する工程と、新燃岳火山灰と樹脂系バインダを所定の重量比で混和して第2の混合物を製造する工程と、前記第2の混合物を路盤上に転圧した後、前記第1の混合物を積層して舗装層を形成する工程とからなることを特徴とする新燃岳火山灰を用いた舗装構造の施工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−28941(P2013−28941A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165120(P2011−165120)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(508305258)日新興業株式会社 (4)
【出願人】(500535161)株式会社内山建設 (2)
【出願人】(594024903)株式会社愛亀 (2)
【出願人】(392030450)
【Fターム(参考)】