説明

新生児対象における神経保護剤としてのキセノンの使用

本発明は、新生児対象において1種又は複数の麻酔誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。本発明はさらに、キセノンとセボフルランとの組合せ及び、低酸素性虚血性損傷に先立って投与するための前処理剤としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻酔薬の技術分野に関する。より詳しくは、本発明は新生児及び/又は胎児対象において使用するのに適した麻酔剤に関する。
【背景技術】
【0002】
キセノンの麻酔特性は50年を越す期間、医療専門家に知られてきた(Cullen and Gross, 1951)。しかし、患者では、いくつかのめざましい臨床有効性が示されたものの(Luttropp et al., 1994; Lynch et al., 2000)、キセノン麻酔の日常使用は実現しなかった。このことは、液体空気の分留によるキセノンの製造に関係するかなりの費用と大きく関連しており、したがって、キセノンの全精製量のうち比較的少ない割合しか麻酔に利用できない(Hanne Marx et al., 2001)。結果として、キセノンの使用は、相当な費用便益効果がある特定の領域に限定されることが多い。このような領域の1つが新生児麻酔であり、この領域では、キセノンは、他の通常用いられる新生児麻酔薬、例えば、亜酸化窒素で見られる有害な副作用がない可能性がある(Layzer, 1978; Amos et al., 1982; Jevtovic-Todorovic et al., 1998)。
【0003】
新生児の傷害が長期間持続する作用を引き起こすことは、当技術分野では十分に実証されている(Anand and Scalzo, 2000; Balduini et al., 2000; Jevtovic-Todorovic et al., 2003)。したがって、新生児において、神経発達に変更をきたす可能性がある薬物(例えば、アポトーシスによる神経変性を引き起こすアルコール、フェンシクリジン、ケタミン、NO、イソフルラン、ベンゾジアゼピン、バルビツレート及び抗痙攣薬(Olney et al., 2002d))を用いる場合には、ある程度慎重さをとることが賢明である。このことは特に、単回の曝露しか必要でないことが多いことを考えると、麻酔における用量でも、同じことがいえる(Ikonomidou et al., 2001; Young et al., 2003)。
【0004】
正常な神経発達
正常な神経発達は、慎重に調節された(Butler, 1999)、増殖、分化、遊走及びシナプス形成をはじめとする一連の事象である。グルタミン酸は、これらのプロセスすべてにおいて役割を有すると考えられており(Ikonomidou and Lechoslaw, 2002)、例えば、遊走標的領域の高濃度のグルタミン酸は、検出するために用いられるNMDA受容体に加え(Komuro and Rakie, 1993)、神経細胞の化学誘引物質としての役割を示唆する(Behar et al., 1999)。種々の解剖学的領域における特定のNMDA受容体サブタイプ(例えば、NR2B及びNR2D)の興味深い発見は、遊走制御の正確な性質の解明に役立ち得る(Behar et al., 1999)。同一グループによる研究から、種が異なると、遊走制御に用いられるメディエーターが異なり、GABA(ラット)又はグルタミン酸(マウス)のいずれかが用いられることが現在、明らかとなっている(Behar et al., 2001)。
【0005】
シナプス形成(脳の急成長)は、高レベルの生理学的細胞死(最大1%(Olney et al., 2002b))を特徴とする、シナプスが急速に構築される期間である。これには、広範な皮質視床及び視床皮質投射の形成が含まれる(Molar and Blakemore, 1995)。種間発生学の限りない複雑さにもかかわらず、神経発達における節目は同じ順序で起こる傾向があるために比較できることがわかっている(Clancy et al., 2001)。このことによって、7日齢のラットの仔(Olney et al., 2002a)から0〜8ヶ月のヒト(Ikonomidou et al., 1999; Jevtovic-Todorovic et al., 2003)までのシナプス形成(synaptogenic)活性のピークの期間を推定することが可能である。しかし、NMDA受容体サブタイプの分析に基づけば、ヒトは妊娠の第3期の始めから数歳までと、シナプス形成の期間が長期に及んでいる可能性が高い(Dobbing and Sands, 1979; Jevtovic-Todorovic et al., 2003)。
【0006】
発達中の神経系におけるアポトーシス
1972年(Kerr et al., 1972)に最初に正式に記載されたアポトーシスは、細胞数の削減、調整、制御及び細胞の廃棄などのプロセスにおける正常な神経発達の本質的特徴である。アポトーシスは、その目的のみに用いられる細胞タンパク質による開始、関与及び遂行を含む「活性な細胞死」と特徴付けられている(Sloviter, 2002)。アポトーシスの重要な役割は、アポトーシスの遺伝子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションは致死遺伝子型をもたらすという事実によって強調される(Yoshida et al., 1998; Rinkenberger et al., 2000)。
【0007】
未成熟なCNSにおける生理学的細胞死(PCD)の制御は、神経栄養的な仮説によって支配されていると現在考えられている。それによれば、神経細胞の生存を促進するシナプス標的に到達できなかった神経細胞は(Sherrard and Bower, 1998)、環境による栄養支援の中止に伴う特殊な形の細胞自殺を開始する(Young et al., 1999)(ニューロトロフィン及び電気刺激の両方による)(Brenneman et al., 1990)。「生存経路」の複雑な分岐性と収束性のために、多数のリガンド及び機構が神経細胞の生存を維持するのに関与している。神経細胞のサイトゾル及びミトコンドリアは、細胞の運命を決定する、抗アポトーシス性(例えば、Bcl−2及びcAMP応答結合タンパク質)又はアポトーシス促進性(例えば、Bad、Bax及びカスパーゼファミリー)のいずれかである分子の平衡のとれた組合せにうまく対応している。Bcl−2及びその関連ペプチドはCNSの発達において特に重要であると考えられている(Yuan and Yanker, 2000)が、これは、新生児における高レベルの発現と、Bcl−2の実験的過剰発現が栄養支援の欠乏を覆し(Garcia et al., 1992)、さらにPCDをも完全に防ぎ得る(Martinou et al., 1994)という事実とから明らかである。Bcl−2の変異体(Bcl−X)は、神経細胞がそのシナプス標的を見い出す前の神経細胞の発達の維持において特別な役割を有している可能性がある(Motoyama et al., 1995)。
【0008】
新生児における神経変性
1999年、新生児ラットにおけるNMDA受容体アンタゴニストの使用によって、特定のパターンの神経変性(グリア細胞とは異なる)が生じることを示すデータが公開された(Ikonomidou et al., 1999)。電子顕微鏡では、この神経変性はアポトーシス性細胞死と同一であり、背外側視床核において最も明白であった。背外側視床核は、学習及び記憶に関与している脳の領域のひとつである(Goen et al., 2002)。この現象は、その後、他の薬物を用いて他の脳領域において実証されている(Monti and Contestabile, 2000)。
【0009】
Jevtovic-Todorovicらによって行われたその後の研究によって、新生児ラットは、シナプス形成(synaptogenic)期間の間、麻酔薬の有害な副作用に対して脆弱であるということが示された。前記ラットは、麻酔剤に曝露された後に、背外側及び前腹側視床核などの領域において(及び頭頂部皮質の第II層である程度まで)、変質している神経細胞数がベースラインの最大68倍に増加することを示した(Jevtovic-Todorovic et al., 2003)。後日、この増加の結果として、行動試験における機能的神経障害がみられた。具体的には、GABA作動性麻酔薬イソフルラン(Gyulai et al., 2001)は、それ自体で、用量依存的に神経変性を生じさせ、ミダゾラムの連続添加(二重GABA作動性カクテル)、次いでNOの連続添加(三重カクテル)で相乗作用的な神経変性が生じた(Jevtovic-Todorovic et al., 2003)。このプロセスは、ラットでは、麻酔薬以外の領域のGABA作動性薬剤に対する曝露、例えば、抗痙攣薬治療及び母体の薬物乱用で起こることがわかっている(Bittigau et al., 2002; Farber and Olney, 2003)。
【0010】
この種の神経変性の臨床徴候は、出生した1000人につき1〜2人の幼児で胎児アルコール症候群(FAS)として検出され(Moore and Persaud, 1998)、異常な顔立ち、小頭症及び精神遅滞を特徴とする(Olney et al., 2002c)。妊娠中の母親による過度の飲酒によって、胎児脳において極めて高レベルのエタノール(二重GABA作動性薬剤及びNMDA受容体アンタゴニスト(Farber and Olney, 2003))が生じ、これが次には前記で論じた種類の神経変性を誘発すると考えられている(Ikonomidou et al., 2000)。注目されるのは、この作用機序が現在の麻酔処置のものと酷似していることである。
【0011】
【非特許文献1】Cullen and Gross, 1951
【非特許文献2】Luttropp et al., 1994; Lynch et al., 2000
【非特許文献3】Hanne Marx et al., 2001
【非特許文献4】Layzer, 1978; Amos et al., 1982; Jevtovic-Todorovic et al., 1998
【非特許文献5】Anand and Scalzo, 2000; Balduini et al., 2000; Jevtovic-Todorovic et al., 2003
【非特許文献6】Olney et al., 2002d
【非特許文献7】Ikonomidou et al., 2001; Young et al., 2003
【非特許文献8】Butler, 1999
【非特許文献9】Ikonomidou and Lechoslaw, 2002
【非特許文献10】Komuro and Rakie, 1993
【非特許文献11】Behar et al., 1999
【非特許文献12】Behar et al., 2001
【非特許文献13】Olney et al., 2002b
【非特許文献14】Molar and Blakemore, 1995
【非特許文献15】Clancy et al., 2001
【非特許文献16】Olney et al., 2002a
【非特許文献17】Ikonomidou et al., 1999; Jevtovic-Todorovic et al., 2003
【非特許文献18】Dobbing and Sands, 1979; Jevtovic-Todorovic et al., 2003
【非特許文献19】Kerr et al., 1972
【非特許文献20】Sloviter, 2002
【非特許文献21】Yoshida et al., 1998; Rinkenberger et al., 2000
【非特許文献22】Sherrard and Bower, 1998
【非特許文献23】Young et al., 1999
【非特許文献24】Brenneman et al., 1990
【非特許文献25】Garcia et al., 1992
【非特許文献26】Martinou et al., 1994
【非特許文献27】Yuan and Yanker, 2000
【非特許文献28】Motoyama et al., 1995
【非特許文献29】Ikonomidou et al., 1999
【非特許文献30】Goen et al., 2002
【非特許文献31】Monti and Contestabile, 2000
【非特許文献32】Jevtovic-Todorovic et al., 2003
【非特許文献33】Gyulai et al., 2001
【非特許文献34】Bittigau et al., 2002; Farber and Olney, 2003
【非特許文献35】Moore and Persaud, 1998
【非特許文献36】Olney et al., 2002c
【非特許文献37】Farber and Olney, 2003
【非特許文献38】Ikonomidou et al., 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、新生児において使用するのに適した、安全で、効果的で、神経発達に対する副作用が全くない麻酔剤を提供することを目指す。より具体的には、本発明は、神経発達に悪影響を及ぼすことが知られているその他の麻酔薬と併用するのに適した新生児対象用の麻酔剤を提供することを目指す。詳しくは、本発明は、イソフルラン及び/又はセボフルラン、及び/又はデスフルランなどの既知の麻酔剤の副作用を予防又は軽減できる薬剤を含む、新生児に用いるための麻酔薬の組合せを提供することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの広い態様では、本発明は、対象、好ましくは、新生児対象において1種又は複数の麻酔(麻酔薬)誘発性神経障害を治療及び/又は予防及び/又は軽減するためのキセノンの使用に関する。
【0014】
本発明の種々の態様は、添付の特許請求の範囲及び以下の詳細な説明に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において1種又は複数の麻酔誘発性神経障害を治療及び/又は予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0016】
NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、NO、ケタミン及びイソフルランなどのその他の薬剤をはじめとする麻酔薬に対する曝露が、脳発達のシナプス形成段階の間にアポトーシス性神経変性を誘発することは当技術分野では十分に証明されている。
【0017】
キセノンは、それ自体NMDA受容体アンタゴニストであり、成体ラットにおいてケタミン及びNOによって生じる特徴的な毒性を欠いているだけでなく、それらの毒性を和らげることが研究によって実証されている。本明細書に詳述される実験では、新生児の神経発達ラットモデルにおいてキセノンの特性を調べた。
【0018】
麻酔のインビボラットモデルを、組織学及び免疫組織化学の両方と併せて用い、麻酔剤の種々の組合せによって誘発されたアポトーシスを同定及び定量化した。キセノンは、イソフルランとは異なり、対照で観察されたベースラインを上回るアポトーシス性神経変性を全く誘発しなかった。さらに、亜酸化窒素はイソフルラン誘発性アポトーシスを促進するのに対し、キセノンは損傷の程度を低下させることがわかった。
【0019】
総括する目的で、7日齢のスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラットをいくつかのガスの組合せ(75%窒素、75%亜酸化窒素、75%キセノン、0.75%イソフルラン、75%亜酸化窒素+0.75%イソフルラン、60%キセノン+0.75%イソフルラン)のうちの1種とともに25%酸素に6時間曝露した(n=3〜5匹/群)。麻酔後ラットを屠殺し、その脳を処理してアポトーシスの重篤度を評価した(カスパーゼ−3免疫組織化学、c−Fos免疫組織化学及びデオルモス(DeOlmos)銀染色を用いて)。
【0020】
Oもキセノンも単独で投与した場合には、海馬又は皮質においてカスパーゼ−3陽性細胞の有意な増加を引き起こさなかった(皮質の値:各々22.5±5.9及び19.7±9.6vs対照19.3±6.4;p>0.05)。対照的に、イソフルラン単独は、両領域において変性神経細胞数を有意に増加させた(76.5±11.4;p<0.01)。同様に、セボフルラン単独は、1.5%セボフルランを投与した場合に、20.0±2陽性細胞という対照値から42±2陽性細胞への変性神経細胞の有意な増加を引き起こした。イソフルランと組み合わせた場合には、NOはイソフルラン誘発性アポトーシスをかなり促進し(232.0±19.9;空気に対してp<0.001)、他方、キセノンは損傷を低減した(26.7±3.9;空気に対してp>0.05)。
【0021】
これらのデータから、キセノンは、NMDA受容体遮断を示すその他の麻酔薬とは異なり、新生児ラットにおいてアポトーシス性神経変性を促進しないことが示唆される。実際、キセノンはイソフルラン誘発性アポトーシスから保護すると思われる。
【0022】
本明細書において、用語「新生児対象」とは、生まれたばかりの対象を指す。新生児対象は、誕生後4週間までの哺乳類であることが好ましい。新生児対象は2週間までの哺乳類であることがより好ましく、誕生後、1週間までであることがさらにより好ましい。
【0023】
新生児対象がヒトであることがいっそうより好ましい。
【0024】
好ましい一実施形態では、新生児対象は胎児手術を受けているか、胎児手術を必要とする対象である。
【0025】
好ましい一実施形態では、新生児対象は、緊急手術又は後年、待機手術を必要とする生命にかかわる状態である対象である。
【0026】
別の好ましい実施形態では、新生児対象は、分娩の際又は帝王切開の際に母体に投与される麻酔薬又は鎮痛薬レジメンの一部としてキセノンを間接的に与えられる。
【0027】
医薬は、対象、好ましくは、新生児対象において1種又は複数の麻酔誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するためのものであることが好ましい。
【0028】
本明細書において、用語「神経障害を予防及び/又は軽減する」とは、1種又は複数の神経障害の重篤度を、キセノンの非存在下で麻酔薬を用いて治療を受けた対象と比較して低下させることを指す。
【0029】
神経障害は、学習、記憶、神経運動、神経認知及び/又は精神認知障害であることが好ましい。
【0030】
さらにより好ましい実施形態では、神経障害は神経運動又は神経認知障害であり得る。本明細書において、用語「神経運動障害」には、強度、平衡及び移動性の障害を含むよう当業者によって理解される意味が与えられる。同様に、用語「神経認知障害」には、学習及び記憶の障害を含むよう当業者によって理解される意味が与えられる。このような神経認知障害は、通常、ランド(Randt)記憶検査のショートストーリーモジュール(short-story module)[Randt C, Brown E. Administration manual: Randt Memory Test. New York: Life Sciences, 1983]、改訂ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale Revised)の数唱下位検査(Digit Span subtest)と符合作業下位検査(Digit Symbol subtest)[Wechsler D. The Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised (WAIS-R). San Antonio, Tex.: Psychological Corporation, 1981.]、改訂ベントン視覚記銘検査(Benton Revised Visual Retention Test)[Benton AL, Hansher K. Multilingual aphasia examination. Iowa City: University of Iowa Press, 1978]及びトレイルメイキングテスト(Trail Making Test)(パートB)[Reitan RM. Validity of the Trail Making Test as an indicator of organic brain damage. Percept Mot Skills 1958;8:271-6]などの十分に確立された基準によって評価できる。その他の適した神経運動及び神経認知検査は、Combs D, D'Alecy L:Motor performance in rats exposed to severe forebrain ischemia:Effect of fasting and 1,3-butanediol.Stroke 1987; 18: 503-511及びGionet T, Thomas J, Warner D, Goodlett C, Wasserman E, West J: Forebrain ischemia induces selective behavioral impairments associated with hippocampal injury in rats. Stroke 1991;22:1040-1047に記載されている。
【0031】
好ましい一実施形態では、神経障害は神経変性である。
【0032】
本明細書において、用語「神経変性」とは、細胞収縮、辺縁趨向及び膜に封入されたアポトーシス小体の形成を伴うクロマチン凝集を指し、カスパーゼ3抗体を適用すると、神経変性している神経細胞が3,3’−ジアミノベンジジン(dab)の適用で黒色に染まる。
【0033】
別の好ましい実施形態では、神経障害は神経細胞アポトーシスに付随する。
【0034】
別の好ましい実施形態では、神経障害は神経細胞壊死に付随する。
【0035】
別の好ましい実施形態では、神経障害は、学習、記憶、神経運動又は精神認知障害である。
【0036】
本発明の第2の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0037】
本発明の第3の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0038】
本発明の第3の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0039】
上記の態様のすべてについて、麻酔薬は揮発性麻酔剤であることが好ましい。揮発性麻酔薬の例としては、イソフルラン、セボフルラン及びデスフルランが挙げられる。
【0040】
上記の態様のすべてについて、麻酔薬はイソフルラン、セボフルラン又はデスフルランなどのGABA作動性薬剤、又はNMDA受容体アンタゴニスト麻酔薬(例えば、ケタミン又は亜酸化窒素)のいずれかであることが好ましい。
【0041】
麻酔薬はイソフルラン、セボフルラン又はデスフルランであることがより好ましい。
【0042】
イソフルランは、中枢神経系を抑制し、結果として起こる意識の喪失によって全身麻酔を誘導、維持するハロゲン化揮発性麻酔薬である。麻酔を維持している間中、高い割合のイソフルランが肺によって排出される。投与を停止すると、残存するイソフルランの大部分は肺から変わりなく排出される。イソフルランの溶解度は低いので、ヒトではイソフルラン麻酔からの回復は迅速である。
【0043】
イソフルランには軽い刺激があるので、吸入は咳を防ぐために、通常、短時間作用型バルビツレート又はその他の静脈誘導剤の選択によって先行される。イソフルランは、小さな子供では、投与の際に唾液分泌及び咳の増加を誘発し得る。イソフルランを用いて直面する有害反応は、その他のハロゲン化麻酔薬を用いて観察されるものと同様であり、これには、低血圧症、呼吸抑制及び不整脈が含まれる。イソフルランを用いる間に直面するその他の軽微な副作用としては、白血球数の増加(手術侵襲がない場合でさえ)、並びにまた、術後期の間の震え、悪心及び嘔吐がある。軽度、中程度及び重篤な(時には致命的な)術後肝機能異常も稀に報告されている。これについての因果関係は分かっていない。
【0044】
イソフルランは、より深いレベルの麻酔で脳の血流の増加を引き起こし、これが脳脊髄液圧の上昇を引き起こす場合がある。これは、必要に応じて、麻酔前又は麻酔中に患者に過換気させることによって、防ぐか改善することができる。イソフルランは、その他のハロゲン化麻酔薬同様、頭蓋内圧が上昇している患者には慎重に使用しなくてはならない。
【0045】
イソフルランは強力な全身の動脈及び冠動脈の拡張薬である。正常な健常な患者では、全身血圧に対する作用は容易に制御され、特に低血圧を誘導する手段として使用されてきた。しかし、「冠動脈スチール」という現象は、イソフルランは冠動脈疾患を有する患者には慎重に使用しなくてはならないことを意味する。特に、心内膜下虚血の患者はより影響を受けやすいことが予測できる。
【0046】
セボフルラン、フッ素化メチルイソプロピルエーテルは、比較的好ましく、刺激がないものであり、術前及び術中に全身麻酔をもたらすために用いられる。セボフルランは吸入によって投与される。血液/ガス分配係数が0.6しかないので、発現及び回復時間は速い。
【0047】
必要なセボフルランの用量は、年齢、健康状態、その他の医薬との相互作用及び実施される手術の種類に応じ、患者毎に異なる。副作用としては、脈、低血圧症、頻脈、興奮、喉頭痙攣、気道閉塞、咳、めまい、眠気、唾液量の増加、悪心、震え、嘔吐、発熱、低体温、運動、頭痛が挙げられる。セボフルランは人体では極めて徐々に代謝されるので、腎毒性の危険性が高い。セボフルランは、小児に用いると、興奮の増大を引き起こすことがわかっている。
【0048】
本発明との関連において、キセノンは対象に麻酔剤と同時に、組み合わせて、逐次又は別個に投与できる。
【0049】
本明細書において、「同時に」とは、キセノンを麻酔剤と時を同じくして投与することを意味するために用いられ、他方、用語「組み合わせて」は、同時でない場合には、キセノンと麻酔薬の両方が治療効果を示す時間枠内でキセノンを「逐次」投与すること、すなわち、キセノンと麻酔薬の両方が同一時間枠内で治療的に作用することが可能であることを意味するために用いられる。したがって、「逐次」投与では、キセノンが麻酔剤の前後5分、10分又は凡そ1時間内に投与されることが可能であり得る。
【0050】
特に好ましい一実施形態では、キセノンを揮発性麻酔剤の前に対象に投与する。キセノンは、アポトーシス性又は壊死性の損傷のすべての種類に対する対象の脆弱性を変化させることが可能であることが研究によって示されている。
【0051】
好ましい一実施形態では、低酸素性虚血性損傷、又はアポトーシス依存性である(すなわち、アポトーシスが細胞死への経路である)か、壊死依存性である(すなわち、壊死が細胞死への経路である)いずれかの他の損傷の前にキセノンを投与する。すなわち、キセノンが前処理剤として機能する。
【0052】
別の特に好ましい実施形態では、キセノンを揮発性麻酔剤の後に投与する。したがって、好ましい一実施形態では、低酸素性虚血性損傷、又はアポトーシス依存性である(すなわち、アポトーシスが細胞死への経路である)か、壊死依存性である(すなわち、壊死が細胞死への経路である)いずれかの他の損傷の後にキセノンを投与する。
【0053】
本明細書において「別個に」とは、「組み合わせて」又は「逐次」と対照的に、キセノンを投与することと対象に麻酔剤を曝露することとの間の隔たりが相当であること、すなわち、対象が麻酔剤に曝露される時にはキセノンは血流中に治療上有効量ではもはや存在しない可能性があること、又は対象がキセノンに曝露されるときには麻酔剤は血流中に治療上有効量ではもはや存在しない可能性があることを意味するために用いる。
【0054】
キセノンを麻酔剤と逐次又は同時に投与することがより好ましく、同時投与がより好ましい。
【0055】
キセノンを麻酔剤の前、又は同時に投与することがより好ましく、同時投与がより好ましい。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態では、キセノンを治療上有効量で投与する。
【0057】
別の好ましい実施形態では、キセノンを治療上有効量未満で投与する。これに関連して、用語「治療上有効量未満」とは、麻酔を生じさせるのに通常必要であるものよりも少ない量を意味する。一般に、約70%キセノンの雰囲気は麻酔を誘導又は維持するのに十分である。したがって、キセノンの治療上有効量未満は、約70%キセノン未満に相当する。
【0058】
キセノンと麻酔剤の組合せが相乗作用を有すること、すなわち、この組合せが相乗的であることがさらにより好ましい。
【0059】
本発明の別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象においてイソフルラン誘発性及び/又はセボフルラン誘発性及び/又はデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における(i)キセノン、並びに(ii)イソフルラン、セボフルラン及びデスフルランから選択される麻酔薬との使用に関する。
【0060】
本発明の別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象においてイソフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における(i)キセノン、及び(ii)イソフルランの使用に関する。
【0061】
本発明の別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における(i)キセノン、及び(ii)セボフルランの使用に関する。
【0062】
本発明の別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象においてデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における(i)キセノン、及び(ii)デスフルランの使用に関する。
【0063】
本発明のさらに別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象においてイソフルラン誘発性及び/又はセボフルラン誘発性及び/又はデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0064】
本発明のさらに別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔を提供するための医薬の調製における(i)キセノン、並びに(ii)イソフルラン、セボフルラン及びデスフルランから選択される麻酔薬の使用であって、キセノンの量が麻酔誘発性損傷を軽減又は予防するのに十分である使用に関する。
【0065】
本発明の別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔を提供するための医薬の調製におけるキセノン及びイソフルランの使用であって、キセノンの量がイソフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用に関する。
【0066】
本発明の別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔を提供するための医薬の調製におけるキセノン及びセボフルランの使用であって、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用に関する。
【0067】
本発明の別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔を提供するための医薬の調製におけるキセノン及びデスフルランの使用であって、キセノンの量がデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用に関する。
【0068】
上記の態様のすべてについて、キセノンを製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体と組み合わせて投与することが好ましい。
【0069】
本明細書に記載される種々の異なる形の薬剤組成物のためのこのような適した賦形剤の例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」, 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見い出すことができる。
【0070】
治療的使用のための許容される担体又は希釈剤は、製薬の技術分野ではよく知られており、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。適した担体の例として、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。適した希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。
【0071】
薬剤担体、賦形剤又は希釈液の選択は、意図される投与経路及び標準的な薬務に関連して選択することができる。本薬剤組成物には、担体、賦形剤又は希釈液として、又は担体、賦形剤又は希釈液に加え、任意の適した結合剤(類)、滑沢剤(類)、沈殿防止剤(類)、コーティング剤(類)、可溶化剤(類)を含めることができる。
【0072】
適した結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、フリーフローラクトース、βラクトース、コーンシロップなどの天然糖、アラビアガム、トラガカントなどの天然及び合成ゴム又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0073】
適した滑沢剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0074】
薬剤組成物には保存料、安定剤及び染料を加えてもよい。保存料の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化物質及び懸濁剤も使用できる。
【0075】
キセノンはまた、別の製薬上活性な物質と組み合わせて投与してもよい。この物質は、GABA作動性活性を促進する麻酔剤又は鎮静剤をはじめとする任意の適した製薬上活性な物質であり得る。このようなGABA作動性薬剤の例としては、プロポフォール及びベンゾジアザピン(benzodiazapine)が挙げられる。
【0076】
キセノンはまた、L型カルシウムチャネルブロッカー、N型カルシウムチャネルブロッカー、サブスタンスPアンタゴニスト、ナトリウムチャネルブロッカー、プリン受容体ブロッカー、又はそれらの組合せなどのその他の有効成分と組み合わせて投与できる。
【0077】
キセノンはいずれかの適した送達機構、又は2種以上の適した送達機構によって投与できる。
【0078】
特に好ましい一実施形態では、キセノンを灌流によって投与する。本発明との関連において、用語「灌流」とは、特殊な人工心肺を用いての患者への酸素/キセノン混合物の導入と、患者からの二酸化炭素の除去とを指す。一般用語では、人工心肺は心臓及び肺の機能に取って代わり、外科医に無血の静止手術野を提供する。人工心肺技師が患者の血液を人工換気して酸素及び二酸化炭素のレベルを制御する。本発明との関連において、人工心肺技師はまた、キセノンを患者の血液に導入する。次いで、人工心肺技師が血液を動脈系に押し戻して、心臓手術の間、栄養を含む血液流を患者の重要な臓器及び組織すべてに提供する。
【0079】
好ましい一実施形態では、医薬はガス剤である。
別の高度に好ましい実施形態では、キセノンを吸入によって投与する。
【0080】
好ましい一実施形態では、本医薬は、酸素、窒素又はそれらの混合物、より詳しくは空気をさらに含む。
【0081】
別の好ましい実施形態では、本医薬は、ヘリウム、NO、CO、CO、NO、その他のガス状化合物及び/又は吸入可能医薬をさらに含む。
【0082】
別の好ましい実施形態では、キセノンを別の不活性ガス、例えば、アルゴン又はクリプトンと混合する。
【0083】
別の好ましい実施形態では、キセノンを酸素又は酸素含有ガスと混合する。
【0084】
極めて好ましい一実施形態では、本医薬は、約10〜約80容量%のキセノン、より好ましくは、約20〜約80容量%のキセノンを含み、残りは酸素を含む二成分のガス状混合物である。別の好ましい実施形態では、本医薬は約30〜約75容量%のキセノンを含み、残りは酸素を含む。
【0085】
別の極めて好ましい実施形態では、本医薬は、約10〜約80容量%のキセノン、より好ましくは、約20〜約80容量%のキセノンを含み、残りは酸素及び窒素を含む三成分のガス状混合物である。別の好ましい実施形態では、本医薬は約30〜約75容量%のキセノンを含み、残りは酸素及び窒素を含む。
【0086】
別の好ましい実施形態では、本医薬は、約5〜約90容量%のキセノン、より好ましくは、約10〜約80容量%のキセノン、さらにより好ましくは、約10〜約50容量%のキセノン、さらにより好ましくは、約10〜約30容量%のキセノンを含む。
【0087】
別の好ましい実施形態では、本医薬は液剤又は溶液剤である。
特に好ましい一実施形態では、本医薬は脂質乳剤である。
【0088】
液剤は、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、皮内、腹膜内又は筋肉内に注射できる、滅菌溶液又は滅菌可能溶液から調製された溶液剤又は乳剤の形で投与することが好ましい。
【0089】
特に好ましい一実施形態では、キセノンを脂質乳剤の形で投与する。経静脈製剤は、通常、所望の臨床作用を達成するようキセノンの溶解度を十分に高める、脂質乳剤(例えば、市販のイントラリピッド(Intralipid)(登録商標)10、イントラリピッド(登録商標)20、イントラファット(Intrafat)(登録商標)、リポフンジン(Lipofundin)(登録商標)S又はリポシン(Liposyn)(登録商標)乳剤、又は溶解度を最大にするよう特別に製剤されたもの)を含む。この種の脂質乳剤に関するさらなる情報は、G. Kleinberger and H. Pamperl, Infusionstherapie, 108-117 (1983) 3に見い出すことができる。
【0090】
ガスを溶解させるか分散させる本発明の脂質相は、通常、8〜30個の炭素原子を含む飽和並びに不飽和長鎖及び中鎖脂肪酸エステルから形成されている。これらの脂質は、水溶液中でリポソームを形成する。例としては、魚油及び植物油、例えば、大豆油、アザミ油又は綿実油が挙げられる。本発明の脂質乳剤は、通常、乳剤中の脂肪の割合が通常5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である水中油型乳剤である。この種の水中油型乳剤は、大豆リン脂質などの乳化剤の存在下で調製されることが多い。
【0091】
本発明のリポソームを形成する脂質は、天然のものであっても合成ものであってもよく、これらとしては、コレステロール、糖脂質、スフィンゴミエリン、グルコ脂質、スフィンゴ糖脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールが挙げられる。
【0092】
本発明の脂質乳剤にはまた、さらなる成分を含めてもよい。これらとしては、抗酸化物質、脂質相の周りの水相の浸透圧を血液と等張にする添加物又はリポソームの表面を修飾するポリマーが挙げられる。
【0093】
脂質乳剤には相当な量のキセノンを添加できることが立証されている。キセノンは、20℃、常圧で、最も単純な手段によってさえ、乳剤1mlあたり0.2〜10ml以上の濃度に溶解又は分散させることができる。溶解されるガスの濃度は、温度、圧力及び脂質濃度を含むいくつかの因子に応じて変わる。
【0094】
本発明の脂質乳剤にはガス状キセノンをロードすることができる。一般に、装置には、乳剤と、乳剤に浸漬した焼結ガラスバブラーを通したガス又は蒸気状の麻酔薬とを注入する。乳剤は、選択した分圧で、麻酔ガス又は蒸気と平衡を保つことが可能である。ガスタイト容器中に保存すると、これらの脂質乳剤は、従来の保存期間の間、麻酔薬がガスとして放出されないよう十分な安定性を示す。
【0095】
本発明の脂質乳剤には、キセノンが飽和水準であるように入れることができる。或いは、キセノンは、例えば、乳剤の投与によって所望の薬剤活性が生じるならば、より低い濃度で存在してもよい。
【0096】
本発明に用いるキセノンの濃度は、所望の臨床作用を達成するのに必要とされる最小濃度であり得る。個々の患者に最も適するであろう急性用量を決定することは医師には通常のことであり、この用量は年齢、体重及び個々の患者の応答で異なる。もちろん、より高い用量域又は低い用量域がふさわしい個々の例があり、このようなものは本発明の範囲内である。
【0097】
医薬は、静脈内送達、脊椎送達又は経皮送達に適した形のものであることが好ましい。
【0098】
本発明のさらなる態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経障害を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0099】
本発明のさらなる態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0100】
本発明のさらなる態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0101】
本発明のさらなる態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経細胞損傷を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0102】
対象、好ましくは、新生児対象においてイソフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びイソフルランを投与することを含む方法。
【0103】
対象、好ましくは、新生児対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びセボフルランを投与することを含む方法。
【0104】
対象、好ましくは、新生児対象においてデスフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びデスフルランを投与することを含む方法。
【0105】
対象、好ましくは、新生児対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをイソフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がイソフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である方法。
【0106】
対象、好ましくは、新生児対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをセボフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である方法。
【0107】
対象、好ましくは、新生児対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをデスフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である方法。
【0108】
上記の方法のすべてについて好ましい実施形態は、対応する使用態様について上記で示したものと同一である。
【0109】
本発明のさらに別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において1種又は複数の麻酔誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤に関する。
【0110】
本発明のさらに別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤に関する。
【0111】
本発明のさらに別の態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤に関する。
本発明のさらなる態様は、対象、好ましくは、新生児対象において麻酔誘発性神経細胞壊死を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤に関する。
【0112】
好ましい実施形態では、本発明の麻酔製剤は麻酔薬をさらに含む。
【0113】
麻酔剤はGABA作動性薬剤であることがより好ましい。
【0114】
麻酔剤はイソフルラン、セボフルラン又はデスフルランであることがさらにより好ましい。
【0115】
本発明のさらなる態様は、60%キセノンと、0.75%イソフルランと、25%酸素と、窒素として残りを含む麻酔製剤に関する。
【0116】
キセノン
キセノンは、麻酔ガスとして、心安定性(Stowe et al., 2000)、低い血液−ガス係数(Nakata et al., 1997)(キセノンの迅速な導入及び出現時間を意味するもの)及び強力な鎮痛作用(Ma et al., 2004)をはじめ、多数の望ましい性質を示す。キセノンが極めて希少かつ高価なガスであり、必然的にその用途が制限されることを踏まえると、キセノンは予防的術中神経保護麻酔薬として適所を見い出すことができる(Mayumi Homi et al., 2003)。
【0117】
キセノンの神経保護作用は、ラットへの興奮毒の投与(Ma et al 2002)、ラットへの心肺バイパス(Ma et al 2003b)、マウスにおける中大脳動脈閉塞(Homi et al, 2003)、ブタにおける心停止(Schmidt et al 2005)及び新生児ラットにおける低酸素性虚血(Ma et al, 2005)を含む急性神経細胞損傷のインビボモデルで観察されている。キセノンは、ガベスチネル(gavestinel)(Ma et al, 2005)又はジゾルシピン(dizolcipine)(Ma et al 2003a)、臨床的に検査されている2種のその他のNMDAアンタゴニストのいずれよりもより有効な神経保護剤であった。
【0118】
インビトロ研究によって、キセノンはグルタミン酸及び酸素グルコース欠乏誘発性興奮毒性の両方から保護できることが示された(Wilhelm et al., 2002; Ma et al., 2003a)。キセノンは、インビボでは麻酔濃度(75%)で、興奮毒性傷害から用量依存的に保護し、MK801と同様の神経保護効力を有することが示された(Ma et al., 2002)。さらに、同一の実験によって、この比較的高用量のキセノンでさえ、後帯状皮質又は膨大後皮質にはいかなる神経毒性の証拠もないことが示された。より最近の研究から、キセノンベースの麻酔薬は心肺バイパスに付されたラットにおいて機能的神経学的改善を提供することが示されている(Ma et al., 2003b)。
【0119】
キセノンは、電気生理学実験から、GABA媒介性作用はほとんどないか全くない(Franks et al., 1998)NMDA受容体の強力なシナプス後(De Sousa et al., 2000)非競合阻害薬と位置付けられてきた。これは麻酔作用の後の機構であり得るが、キセノンがいまだ解明されていない他の作用部位を有することはほぼ確実である。この理論は、他のNMDA受容体アンタゴニストの神経毒作用を減弱することによって、かかるアンタゴニストに反して作用するキセノンの能力によって支持される(Nagata et al., 2001)。
【0120】
今日まで、新生児に対するキセノンの作用については比較的少ないデータしかない。安全性に関しては、キセノンはNOとは対照的に、インビトロにおいて軸索伸展のPKC制御を干渉せず(Fukura et al., 2000)、又はインビボで催奇性を示さない(Lane et al., 1980)ことが研究により示されている。効力に関しては、キセノンは新生児ラットにおいて有効な鎮痛剤であることが示されている(Ma et al., 2004)。
【0121】
麻酔のインビボラットモデル:プロトコール
予備実験により、75%キセノン+0.75%イソフルランは、10分以内に試験対象の100%に無呼吸を誘発し、新生児ラット仔には高すぎる用量であることが示唆された。このことは、キセノンが亜酸化窒素よりもより強力な麻酔薬及び鎮痛薬であるというデータが存在することによって支持される(Sanders et al., 2003)。75%亜酸化窒素+0.75%イソフルランと同等のMACである可能性が高い濃度として60%キセノン+0.75%イソフルランに置き換えた。
【0122】
スプラーグドーリー(Sprague-Dawley)は、初期の研究に用いられたラットとは特定の表現型の相違を示す近交系である。具体的には、これまでに用いられた高用量レジメン(Jevtovic-Todorovic et al., 2003)、例えば、75%NO+1%イソフルラン+6mg/kgミダゾラムを再現しようとすると、ラットは高度の感受性を示した。麻酔薬曝露を終えるための介入がない場合、死亡率は100%であったであろう。したがって、各群のガス濃度を、無呼吸を引き起こさずに麻酔状態を誘導するよう適応させなくてはならなかった。
【0123】
神経変性の特性決定
第二銅−銀技術(the Cupric-Silver technique)(デオルモス(DeOlmos)銀染色)は、神経変性の密度及び分布を明らかにするのに優れていることが繰り返し示されている(Beltramino et al., 1993; Jevtovic-Todorovic et al., 2003)。このプロセスは銀親和性(損傷に対する全般的なCNS応答(O'Callaghan and Jensen, 1992))を明らかにして累積的な神経変性を示すものであり、そのため、遺伝子産物及び酵素活性化を同定するその他の技術におけるような、マーカー発現の時間枠が小さいことを取り巻く問題は当てはまらない(DeOlmos and Ingram, 1971)。
【0124】
カスパーゼ−3免疫組織化学法は、神経細胞アポトーシスの適したマーカーとして働くようであった。細胞質酵素であるので、活性化カスパーゼ−3で染色された細胞はその全体が染色され、このために定量化は比較的容易になった。
【0125】
アポトーシスシグナル伝達カスケードの最後で、カスパーゼ−9がカスパーゼ−3(システインプロテアーゼ)を活性化するため、カスパーゼ−3はアポトーシス関与点の下流にある細胞のマーカーである。銀染色を広く平行させながらの、カスパーゼ−3免疫組織化学法は、生理学的細胞死の定量化目的と特性決定の両方にとって優れたものである(Olney et al., 2002b)。
【0126】
c−Fosは、細胞質事象と核遺伝子転写を結び付けるのにおいて役割を果たす前初期遺伝子の1種である(Walton et al., 1998)。遺伝子発現のレギュレーターとして、c−Fosは神経細胞の活性化状態を示す。かかる状態は、可能性が考えられる相違する数種類の外部刺激の結果であり、これにはアポトーシス細胞死(Dragunow and Preston, 1995)及び疼痛(Duckhyun and Barr, 1995に概説される)が含まれる。c−Fosはこれまでに、成体ラットにおいてNMDA受容体アンタゴニストの神経毒性の感受性マーカーであることがわかっており(Ma et al., 2002)、NMDA受容体活性化の評価にとって有効である(Hasegawa et al., 1998)。c−Fos免疫組織化学プロトコール(Ma et al., 2002)によって、活性化された核を黒に染色する、脊髄ホルマリン検査での定量化の全基礎が形作られた。
【0127】
麻酔誘発性アポトーシス
既存のデータから、発達中のヒト脳は、子宮内及び人生の最初の1年の両方で胎児表現型から成人表現型に類似するものへと、極めて動的な変換を受けるということが推定できる。このプロセスは、シナプスの極めて早いターンオーバー(1日に20%もの高さ(Okabe et al., 1999))及び高レベルのバックグラウンドアポトーシス(Hua and Smith, 2004)という特徴を有する。これは、シナプス標的に到達できない神経細胞が、おそらくはエネルギー効率を維持するために排除されるためである。この研究は、神経発生(シナプス形成)のこの決定的な段階の間の特定の麻酔剤への曝露が、発達中の脳においてアポトーシスを引き起こすことを確認するものである。実験により、イソフルラン、即ちよく用いられるGABA作動性吸入剤への曝露が、皮質においてアポトーシスレベルの4倍の上昇を誘発することが実証された。また、亜酸化窒素(単一の薬剤としては神経変性性を全く示さないが)は、イソフルラン誘発性アポトーシスを対照に見られるものの12倍に大幅に増強することによってその神経変性潜在力を示す。同様の結果が海馬から得られ、これでは、イソフルラン及びイソフルラン−亜酸化窒素混合物がアポトーシスレベルを上昇させた(それぞれ、4倍及び7倍)。
【0128】
海馬、すなわち辺縁系の一部を形成する皮質組織の特殊化した層は、記憶形成において重要な機能を有する(Aggleton and Brown, 1999)。海馬の神経細胞は、シナプスの効力が、特定のパターンの神経活性によって徐々に増強される、「長期増強」(LTP)として知られる現象を示す能力を有する。このプロセスが細胞レベルでの記憶の基礎であると考えられている。一般的には、海馬の処理は、海馬と海馬傍回(海馬台)の両方で起こり、その後、脳弓に投影される。海馬及び海馬台における神経細胞損傷の広がりを考えると、新生児として高レベルの麻酔薬に曝露されたラットが、成人として学習障害の徴候を示すこと(Jevtovic-Todorovic et al., 2003)は驚くことではなく、同じ研究においてLTP抑制の発見によって裏付けられている。
【0129】
小児麻酔の明確なかかわりを前提として、このプロセスの背後の機構を特性決定するために多数の研究が進行中である。GABA受容体とNMDA受容体両方の活性化は、神経細胞の生存シグナル伝達に影響を及ぼすことが知られている(Brunet et al., 2001; Bittigau et al., 2002)。この点を考慮して、エタノール中毒にしたマウスが、このプロセスの研究のための動物モデルの基礎を形作ってきた。カスパーゼ−3はアポトーシス細胞の優れたマーカーであるが、高度に分岐した死シグナル伝達カスケードの最終エフェクターとしてのその位置からは、アポトーシスの機構への洞察がほとんど得られない。カスパーゼ−3活性化は、アポトーシスの外因性の「死受容体」媒介性経路と内因性の「ミトコンドリア」経路両方に共通のステップである(Green, 2000)。
【0130】
Youngらは、一連の適格な実験を用いて単一経路に調査を絞り込みたいと考えた。二重免疫組織化学−免疫蛍光、ウエスタンブロット解析及びノックアウトマウスの組合せを用いて経路特異的成分、中でも、Bax及びシトクロムc(内因性)及びカスパーゼ−8(外因性)を明らかにした(Young et al., 2003)。エタノールで処理した野生型マウスはエタノール誘発性アポトーシスの特徴的なパターンを示すのに対し、同様の処理を施したホモ接合体Bax−ノックアウトマウスはアポトーシスの徴候を実質的に全く示さないことがわかった。実際、アポトーシスレベルは対照の生理学的細胞死において見られるものよりも低かった。さらに、Bax−ノックアウトマウスはカスパーゼ−8活性化が起こらないことを証明した。これにより、麻酔誘発性アポトーシスにおいて内因性アポトーシス経路が関与していることが明らかである。ミトコンドリア周辺が中心となっているこの経路は、神経細胞のサイトゾル中のアポトーシス促進性及び抗アポトーシス性メディエーターの組合せによって制御されている。発生中の神経細胞との関連では、Bcl−X(Bcl−2ファミリーのメンバー)は主に抗アポトーシス性であるのに対し、Baxはアポトーシス促進性である(Yuan and Yanker, 2000)。Youngらは、エタノール、二重NMDA受容体アンタゴニスト及びGABA作動性薬剤は、Baxを、通常不活性状態で保存されているミトコンドリア膜から取り外す能力を有するという仮説を立てた。Baxは、サイトゾル中にあると(Bcl−Xによって抑制されない場合は)活性な複合体の一部となり、これが次にはミトコンドリア膜に戻り、ミトコンドリア膜を破壊することができる(Korsmeyer et al., 2002)。その後のミトコンドリア内容物(具体的には、シトクロムc−細胞エネルギー産生の通常の部分)のサイトゾルへの輸送が、極めて強力なアポトーシス促進シグナルを生じさせると考えられている。サイトゾルのシトクロムcはApaf−1及びカスパーゼ−8と複合体を形成し、次いで、これがカスパーゼ−3を活性化し、さらなるカスケードの開始をもたらし、最終的に、細胞骨格タンパク質及びDNA両方の特徴的な切断を引き起こす(Dikranian et al., 2001)。もちろん、この分析から、麻酔薬がこの経路と相互作用する正確な点を同定することは不可能である。また、個々の種類の薬剤がアポトーシスを誘発でき(例えば、イソフルラン単独(Jevtovic-Todorovic et al., 2003)及びケタミン単独(Ikonomidou et al., 1999))、したがって、二重GABA作動性薬剤及びNMDA受容体アンタゴニストの使用は2種の受容体相互作用間のあり得る相違を区別しないが、次の細胞内カスケードは下流に収束し得る(Brunet et al., 2001; Bittigau et al., 2002)。イソフルラン及び又は亜酸化窒素が、おそらくは細胞内カルシウム輸送を混乱させることによって、細胞内Bax/Bcl−2比を調節不全にできるということは全くあり得ることである。
【0131】
シナプス形成の間のキセノンの使用:単一の薬剤としてのキセノン
血液脳関門は、血液からCNSへの多数の水溶性物質の輸送を効率的に遮断する。これは、星状細胞の覆いを重ね合わせ、輸送機構が比較的ない堅く結合されたネットワークによって達成される。しかし、これらの手段のうち、キセノン、すなわち小さな非極性原子の有効な障害物は1つもなく、脳において麻酔濃度に迅速に到達できる(Sanders et al., 2003)。キセノンは、シナプスにあると、通常の開口チャネル遮断を生じない機構によってではあるが、NMDA受容体の非競合遮断によってその麻酔作用を生じると考えられている。
【0132】
本研究の結果は、75%キセノンを用いて麻酔状態を誘導することは、新生児脳においてアポトーシス性神経変性を引き起こさないことを示す。研究により、NMDA受容体の遮断がこのプロセスの重要な要素であり(おそらくは電気刺激又は栄養刺激の欠乏によって)、MK801、ケタミン、フェンシクリジン(PCP)及びカルボキシピペラジン−4−イル−プロピル−1−ホスホン酸(CCP)の使用で有害な作用が生じることが完全に証明されている(Ikonomidou et al., 1999)。したがって、キセノン、すなわち強力なNMDA受容体アンタゴニスト(いくつかの関連では75%キセノンでMK801に相当する(Ma et al., 2002))が同様のアポトーシス性神経変性を誘発しないことは特異なことである。NMDA受容体遮断の際にアポトーシスを引き起こす、栄養刺激の欠如に関連する多量の生物学的に真実味のある証拠を考慮すると(Haberny et al., 2002に概説される)、キセノンは、今のところ不確定の標的(キセノンの独特の薬力学的特性及び薬物動態特性を考えると、膜、細胞質、ミトコンドリア又は核であり得る)によって媒介される新規の抗アポトーシス性を有するという提案をしたくなる。少なくとも理論上はキセノンの、NMDA受容体の独特の遮断が原因であり得るが(例えば、新生児において発現の異なる分布又は異なるレベルを有するNMDA受容体サブユニット、例えば、NR2B若しくはNR2D、又はシナプス外NMDA受容体での優先的作用によってさえ(Hardingham et al., 2002))、NMDA受容体アンタゴニスト媒介性神経毒性に正反対に対抗するキセノンの能力は、関与する他の系が存在することを示唆する(Nagata et al., 2001)。したがって、キセノンはNMDA受容体アンタゴニストとして、細胞内シグナル伝達カスケードを通じてある程度のアポトーシス促進性シグナル伝達を誘発している可能性があるが、理論上の抗アポトーシス作用が同時に、まさにそのカスケードを下流位置で混乱させる(また、その結果、イソフルラン誘発性シグナル伝達を遮断する)ということがあり得る。
【0133】
シナプス形成の間のキセノンの使用:イソフルランと組み合わせたキセノン
発明者らは、この研究で、60%キセノンの同時投与は、0.75%イソフルラン誘発性アポトーシスを4倍、空気に曝露された対照と統計的に異ならないレベルに阻害できることを実証した。これによりキセノンは、薬理学的に誘発されるアポトーシスのフレームワーク内で抗アポトーシス作用を有するという仮説が導かれる。
【0134】
キセノンの1つの詳細に明らかにされた独特の特徴は、GABA受容体での作用がないことであり、キセノンの、CNSに対する非定型の作用のいくつかを裏打ちできるのはこの特性である。このため、GABA受容体でのイソフルランの作用のあらゆる直接的拮抗作用を除外することは合理的に安全である。唯一残る可能性は、キセノン直接によってか、又はおそらくは、その他の経路、例えば、ドーパミン作動性のものの調節を含む間接ルートのいずれかにより提案されるイソフルラン又は亜酸化窒素誘発性アポトーシス経路の下流の混乱である(Ma et al., 2002)。
【0135】
キセノン単独と、イソフルランと組み合わせたキセノンのデータ間の比較により、キセノンはイソフルランによって誘発される神経細胞損傷の程度を低減できるが、生理学的細胞死のプロセス(対照において見られる)に対しては最小の影響力しかないということが示唆される。このことは、キセノンは病的アポトーシス促進性シグナル伝達を混乱させることができるということを示唆する。キセノンが内因性「生存」経路を増強するとすれば(例えば、Bcl−Xのアップレギュレーションによって)、75%キセノンへの曝露でのPCDレベルの低下を期待することは理にかなっているが、そうではないことは明らかである。しかし、関与する機構への理解の欠如を考えると、このことは高度に推測的である。従来麻酔薬によって乗っ取られるアポトーシス経路が、PCDを制御するものと同一であるかどうかは現在のところわかっていない。亜酸化窒素(現在のところ最も近い比較できる薬剤であるガス状NMDA受容体アンタゴニスト)と比較して、キセノンの作用機序に関与する種々の経路を徹底的に分析することにより、答えが見い出せる可能性がある。
【0136】
臨床上の意義
キセノンの価格とMAC値を踏まえると、キセノンによる麻酔を維持するために別の薬剤を共に用いることは、(最先端の回収−再生利用システムを用いてでさえ)臨床的のみならず、経済的にも必要なことである。薬剤の組合せを用いる本研究は、イソフルランの使用が、個々の薬剤としては神経細胞アポトーシスを誘発するものの、新生児におけるこの目的に適していることを示唆する。
【0137】
実験により、キセノンは麻酔誘発性アポトーシスの治療法として潜在性があることが明らかとなった。したがって、小児麻酔におけるキセノンの使用(経済的に実現可能な用量での)は、現在の一般的な麻酔プロトコールの安全性を著しく高める可能性がある。
【0138】
要するに、これらのデータは新生児におけるキセノンの安全及び有効な使用に信頼を与えるものである。キセノンは、臨床上適用できる用量で新生児神経細胞アポトーシスを誘発しないことがわかっている現在唯一の既知の麻酔薬である。このことは、小児における安全かつ強力な麻酔薬及び潜在性のある神経保護麻酔剤として、キセノンベースの麻酔薬が費用効果的な適所を得る可能性を開くものである。
【0139】
キセノン/セボフルランの組合せ
本発明のさらなる態様はキセノンとセボフルランを含む組合せに関する。この組合せは相乗的組合せであることが好ましい。
【0140】
出願人による研究は、驚くべきことに、個々の薬剤としては完全に効果がない濃度のキセノンとセボフルランとの組合せを、低酸素障害に先立って対象に投与すると、目覚ましい神経保護を提供することを示した。すなわち、キセノンとセボフルランとを組み合わせると、続いて起こる低酸素障害に対して意外かつ予期しない相乗的保護を示す。
【0141】
理論に拘束されるものではないが、保護作用は抗アポトーシス性ではなく抗壊死性である、すなわち、保護作用は壊死による細胞死の阻止から起こると考えられる。細胞死はアポトーシス又は壊死によって生じ得る。前者では、刺激によって、最終的に細胞死を導く事象のカスケードが開始される。アポトーシスは「プログラムされた細胞死」と呼ばれることも多く、正常な生理学的発達の一部である。対照的に、壊死は細胞の死を直接的に誘発する刺激と関連しており、常に病的過程である。
【0142】
出願人による研究は、個々の薬剤として投与した場合に効果がないキセノンとセボフルランの用量が、組合せでは相乗的に働き、その結果、単独で用いられるガスの対応する濃度よりもLDH放出が大幅に減少することを実証した。実験は、0.67%のセボフルランも12.5%のキセノンもLDH放出の大幅な減少はもたらさず、したがって、キセノン又はセボフルランを個別の前処理剤として用いることでは、虚血性損傷からの大きな保護は得られないということを示した。しかし、2種のガスを前処理剤として併用すると、LDH放出は大幅に減少した。さらに、これらの実験の詳細は添付の実施例に見ることができる。
【0143】
好ましい一実施形態では、キセノンを治療上有効量未満で投与する。これに関連して、用語「治療上有効量未満」とは、麻酔を生じさせるのに通常必要であるものよりも低い量を意味する。一般に、約70%キセノンの雰囲気は麻酔を誘導又は維持するのに十分である。したがって、キセノンの治療上有効量未満は、約70%キセノン未満に相当する。
【0144】
同様に、好ましい一実施形態では、セボフルランを治療上有効量未満で投与する。これに関連して、用語「治療上有効量未満」とは、麻酔を生じさせるのに通常必要であるものよりも低い量を意味する。一般に、約2.5%セボフルランの雰囲気は麻酔を誘導又は維持するのに十分である。したがって、セボフルランの治療上有効量未満は、約2.5%セボフルラン未満に相当する。
【0145】
本発明の別の態様は、キセノンと、セボフルランと、製薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む薬剤組成物に関する。薬剤組成物は麻酔製剤であることが好ましい。
【0146】
好ましい一実施形態では、本製剤は約10〜約30%のキセノンと、約1〜約5%のセボフルラン(v/v)とを含み、残りは酸素又は窒素又はその混合物を含む。本製剤は10〜約20%のキセノンと、約2〜約4%のセボフルランを含み、残りは酸素又は窒素又はその混合物を含むことがより好ましい。
【0147】
本発明の高度に好ましい一実施形態では、本製剤は約12.5%のキセノンと、約0.67%のセボフルランと、約25%酸素と、残りの窒素とを含む。
【0148】
本発明のさらなる態様は、対象において1種又は複数のセボフルラン誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む前記製剤に関する。
【0149】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む前記製剤に関する。
【0150】
本発明のさらに別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む前記製剤に関する。
【0151】
本発明の一態様は、神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供するための医薬の調製におけるキセノン及びセボフルランの使用に関する。
【0152】
本発明の別の態様は、神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供するための医薬の調製におけるキセノンの使用であって、前記医薬がセボフルランと併用される使用に関する。
【0153】
本発明の別の態様は、神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供するための医薬の調製におけるセボフルランの使用であって、前記医薬がキセノンと併用される使用に関する。
【0154】
本発明のさらなる態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における(i)キセノン及び、(ii)セボフルランの使用に関する。
【0155】
本発明の別の態様は、対象において1種又は複数のセボフルラン誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。神経障害は神経細胞の壊死に付随することが好ましい。
【0156】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0157】
本発明の別の態様は、対象において神経細胞の壊死を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0158】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0159】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0160】
本発明の別の態様は、対象において麻酔を提供するための医薬の調製におけるキセノン及びセボフルランの使用であって、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用に関する。
【0161】
本発明のさらに別の態様は、神経細胞の壊死又は神経細胞の壊死に付随する状態を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0162】
神経細胞の壊死に付随する状態としては、例えば、虚血性梗塞及び外傷性梗塞が挙げられる。
【0163】
本発明のさらなる態様は、対象において神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンとセボフルランとの組合せを投与することを含む方法に関する。
【0164】
キセノン及びセボフルランは、低酸素性虚血性損傷に先立って投与することが好ましく、低酸素性虚血性損傷の少なくとも1時間前がより好ましく、少なくとも2時間前がより好ましい。特に好ましい一実施形態では、キセノン及びセボフルランを低酸素性虚血性損傷の約2〜約24時間前に投与する。
【0165】
対象は哺乳類であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【0166】
本発明のすべての態様について、対象は新生児対象であることが好ましい。
【0167】
好ましい一実施形態では、キセノン及びセボフルランを、分娩に先立って及び/若しくは分娩の間、又は、帝王切開に先立って及び/若しくは帝王切開の間に母体に投与することによって新生児対象に投与する。
【0168】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経障害を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0169】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0170】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0171】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞の壊死を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0172】
本発明の別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法に関する。
【0173】
本発明のさらに別の態様は、対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びセボフルランを投与することを含む方法に関する。
【0174】
本発明の別の態様は、対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをセボフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である前記方法に関する。
【0175】
本発明の別の態様は、対象において神経細胞の壊死又は神経細胞の壊死に付随する状態を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む前記方法に関する。
【0176】
本発明の別の態様は、対象において神経細胞の壊死又は神経細胞の壊死に付随する状態を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む前記方法に関する。
【0177】
本発明のさらに別の態様は、低酸素障害から保護するための前処理剤として用いるための医薬の調製におけるキセノン及びイソフルランの使用に関する。
【0178】
本明細書を通じて用いられる、用語「前処理剤」とは、続いて起こる低酸素障害から生じ得る神経細胞損傷を軽減及び/又は予防できる医薬を指す。一般に、前処理剤は、損傷を与える可能性がある事象、例えば、侵襲的手術、心肺バイパス(CPB)、臓器移植、分娩の前に、受精胚の子宮移植(体外受精の一部として)、神経血管の外科的処置、脳腫瘍切除などの前に投与できる。前処理剤はまた、対象が続いてさらなる損傷性事象を起こす危険があり得る場合、例えば、卒中患者の場合には、1又は複数の損傷性事象の後に投与してもよい。
【0179】
キセノンは、前処理剤として用いる場合には、低酸素性虚血性損傷に先立って投与することが好ましく、低酸素性虚血性損傷の少なくとも1時間前がより好ましく、少なくとも2時間前がさらに好ましい。特に好ましい一実施形態では、キセノンを低酸素性虚血性損傷の約2〜約24時間前に投与する。
【0180】
本発明のさらに別の態様は、低酸素障害から保護するための前処理剤として使用するための医薬の調製におけるキセノンの使用であって、前記医薬がセボフルランと併用される使用に関する。
【0181】
本発明のさらに別の態様は、低酸素障害から保護するための前処理剤として使用するための医薬の調製におけるセボフルランの使用であって、前記医薬がキセノンと併用される使用に関する。
【0182】
本発明のさらなる態様は、低酸素障害から対象を保護する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンとセボフルランとの組合せを投与することを含む前記方法に関する。
【0183】
本発明を限定されない実施例によって、及び以下の図面を参照してさらに説明する。
【0184】
実施例
材料及び方法
本研究は1986年のUK動物(科学的処置)法(Animals (Scientific Procedures) Act)に従い、研究プロトコールは内務省の承認を受けている。
【実施例1】
【0185】
麻酔ガスに対する曝露
動物
7日齢のスプラーグ−ドーリー(Sprague-Dawley)ラット仔を特注の麻酔チャンバーの個々のウェルに入れ、群A〜Fに無作為に分け、6種のガスの組合せのうちの1種を6時間与えた。これまでの研究により、NMDA受容体アンタゴニストは、出生後7日に最大の神経変性作用を及ぼすことが確立されている(Ikonomidou et al., 1999)。
【0186】
ガス送達
群Bには、目盛り付き麻酔設備によって送達される75%亜酸化窒素と25%酸素とを与えたのに対し、群Cには、75%キセノンを25%酸素とともに、キセノン送達用に改変された特製の麻酔設備によって与えた(Air Products, Surrey, UKによって改変されたOhmeda)。群Dは、0.75%イソフルランとともに25%酸素に曝露させた。残る2群はガスの組合せ、すなわち、25%酸素+75%亜酸化窒素+0.75%イソフルラン(群E)及び25%酸素+60%キセノン+15%窒素+0.75%イソフルラン(群F)に曝露させた。キセノンのコスト高のために、開回路で使用することは不可能であり、そのため、群C及び群Fには閉回路系を用いてガスを与えたが(図1A)、その他の群すべてのガスは高流量開回路で送達した。
【0187】
モニタリング
すべてのラットは、温度自動調節器を組み合わせた水浴を用いる間、正常体温を維持した。ガス濃度はS/5スパイロメトリモジュール(Datex-Ohmeda, Bradford, UK)を用いてモニターし、ラット自体を呼吸困難の徴候について定期的に調べた。ガス状キセノンの不活性な化学特性に鑑みて、特別な439XEモニター(Air Products, Surrey, UK)を用い、高周波分析に基づいて麻酔濃度のキセノンの送達を確認した。
【0188】
組織灌流、摘出及び固定化
免疫組織化学を行うことになっているラットは、麻酔の直後に100mg/kgのペントバルビタールナトリウムIPで屠殺したのに対し、デオルモス(DeOlmos)銀染色用のラットは、18時間回復させた後に同じ手順を施した。開胸術を実施し、心尖部に挿入したニードルによって大動脈にカニューレ処置した。次いで、10mlの1%ヘパリン溶液で仔を灌流し、過剰の溶液は右心房の切開を通してそのままにした。組織を固定するために、0.1Mリン酸バッファー中、4%パラホルムアルデヒド20mlを同じ経心経路によって注入した。次いで、全脳を摘出し、パラホルムアルデヒド灌流液中で固定させ、4℃で冷蔵保存した。24時間後、脳をリン酸バッファー及び1%ナトリウムアジドを含む30%スクロース溶液に移し、脳が沈むまで(約48時間)冷蔵で維持した。
【0189】
切片作製
処理すると、注目する領域−冠状切片−十字縫合から3.6mmを支障なく含むようブロックを切断した(図1B)。次いで、このブロックをO.C.T.溶液中に包埋し、凍結した。次いで、このブロックを、クリオスタット(Bright Instrument Company Ltd., Huntingdon, UK)を用いて、各30μmの厚みの約120のスライスに冠状に切断した。この切断切片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を入れた6ウェルプレートに移した。
【0190】
染色プロトコール
デオルモス(DeOlmos)銀染色
デオルモス(DeOlmos)銀染色は、確立されたプロトコールに従って実施した(DeOlmos and Ingram, 1971)。浮遊切片を接着性ポリジン(polysine)スライド上にマウントし、蒸留水で洗浄し、次いで、銅−銀混合物(2.5%硝酸銀1000ml、0.5%硝酸銅15ml、ピリジン40ml及び95%エチルアルコール80ml)中でインキュベートした。4日後、切片を回収し、100%アセトンで5分間処理し、次いで、新しく調製したアンモニア硝酸銀保存液(蒸留水300ml、0.36%NaOH200ml、濃水酸化アンモニウム90ml及び20%硝酸銀10ml)に15分間移した。アンモニア硝酸銀の直後に、10%非中和ホルマリン24ml、1%クエン酸14ml、100%エタノール200ml及び蒸留水1762mlからなる還元液にスライドを2分間入れた。処理を完了するために、0.5%フィリシアン化カリウムで黄色に染色されたバックグラウンドを有する切片を、1%チオ硫酸ナトリウム中で1分間漂白し、次いで、蒸留水中で洗浄した。次いで、70%、90%及び100%エタノール中でこれらの切片を徐々に脱水した。次いで、100%キシレンに5分間2回曝露することによってエタノールを除去した。キシレンでまだ湿っている間に、2滴のスティロライトカバースリップ媒質(BDH, Poole, UK)をスライドに加え、次いで、カバースリップをのせた。光学顕微鏡の前に、軽くたたいて気泡を出しながら、スライドグラスを一晩乾燥させた。
【0191】
カスパーゼ−3免疫組織化学法
全ブロックの約20の代表するスライスを各々入れた、切断したブロック各々に由来する無作為なウェルを、3mlのパスツールピペットを用いて、印のついたシルク底のウェルに移した。次いで、75rpmに設定した振盪機上、PBS5ml中でこれらの切片を5分間洗浄した。この洗浄手順をさらに2回反復し、毎回PBSを交換した。切片をクエンチするために、切片を振盪機上、メタノール35ml、PBS15ml及び30%H保存液500μlを含む溶液中、室温で30分間インキュベートした。次いで、クエンチ溶液を除去し、切片をPBS中で3回洗浄した。切片をPBST(0.5%Trutib-X(Promega Corporation, Madison, WI)及び1500μlの正常ヤギ血清(NGS)(Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)を含有するPBS)50mlを用い、室温で60分間ブロックした。一次抗体とともにインキュベーションするために、切片を50rpmの振盪機上、ウサギ抗切断カスパーゼ3抗体(New England Biolabs, Hertfordshire, UK)16μl(1:1500)、PBST50ml及びNGS500μlで作製した溶液中、4℃で一晩維持した。翌日、切片をPBST中で3回洗浄し、次いで、PBST50ml、NGS750μl及びヤギ抗ウサギIgG抗体(Chemicon International, Temecula, CA)250μlで作製した溶液中で二次抗体とともに60分間インキュベートした。PBST中でさらに3回洗浄した後、Vectastain ABCキット(Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)から新しく調製したABC溶液中で切片を60分間インキュベートした。次いで、PBSで3回交換することによってABC溶液を洗い流し、一方で、ペルオキシダーゼ基質キット(Vector Laboratories Inc. Burlingame, CA)から、蒸留水、バッファー、DAB保存液、H及びニッケル溶液を含めた、新しい3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)溶液を調製した。スライスを室温でDAB溶液に4分間浸漬し、直ちに、PBSで3回洗浄して染色を終了させ、次いで、蒸留水で3回洗浄した。
【0192】
切片を顕微鏡用スライドグラス上に載せるために、ウェル内容物を蒸留水中に浮かべ、細い絵筆を用いて個々の切片をスーパーフロスト(superfrost)スライドグラスに移した。載せると、スライドグラスを一晩乾燥させた。次いで、スライドグラスの処理を完了するために、デオルモス(Deolmos)銀染色用には、サンプルスライドグラスを脱水し、清澄にし、カバースリップをのせた。
【0193】
c−Fos免疫組織化学法
c−Fos免疫組織化学法は、カスパーゼ−3免疫組織化学と平行して、そのプロトコールに3つの変更を加えて実施した。カスパーゼ−3プロトコールではNGSを用いたのに対し、c−Fosのウェルには正常ロバ血清(NDS)(Chemicon International, Temecula, CA)を用いた。用いた一次抗体は20μl(1:2500)のヤギ抗c−Fos抗体(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)であり、二次抗体は250μlのロバ抗ヤギ抗体(Chemicon International, Temecula, CA)とした。c−Fos免疫染色のその他の段階はすべて、カスパーゼ−3免疫組織化学プロトコールと同一とした。
【0194】
定量化
BX-60光学顕微鏡(Olympus, Southall, UK)で、十字縫合から3.6mmの辺りの一方の脳半球の冠状切片中のDAB染色された(黒色)細胞数をカウントすることによって、変性神経細胞又は活性化神経細胞数を調べ、Axiocamデジタルカメラ(Zeiss, Gottingen, Germany)で顕微鏡写真例を撮った。皮質及び海馬の両方について、3スライスにわたってデータを集め、その後、変性神経細胞の平均数を算出した。銀染色法で染色したそれらの切片は、正式にカウントせずに顕微鏡下で写真を撮った。
【0195】
データ解析
すべての結果は、平均±標準偏差として表されている。統計分析には、平均の分散のパラメトリックな反復測定分析と、それに続く、群A〜Fにわたる多重比較のためのニューマン−クールスの検定(Newman-Keuls test)を含めた。<0.05のP値を統計的に有意と考えた。
【0196】
ホルマリン検査
ホルマリン検査は確立されたプロトコール(Ma et al., 2004)に従って実施し、群Eを群Fと比較した。一腹の仔に由来するラットを4群のうちの1つに無作為に分け、異なる注射及びガスを与えた:空気+ホルマリン、空気+生理食塩水、60%キセノン+0.75%イソフルラン+ホルマリン又は75%亜酸化窒素+0.75%イソフルラン+ホルマリン。すべてのラットをそれぞれのガス混合物に15分間曝露させ、次いで、左後足にホルマリン(10μlの5%ホルマリン)又は等容積の生理食塩水のいずれかを注射した。さらに90分間ガス曝露した後、主研究と同様に、動物/脊髄サンプルを犠牲にし、灌流し、固定化した。全脊髄から腰膨大を含めてブロックを切断した。クリオスタットで30μmの横断切片を切断し、この切片をc−Fos免疫組織化学用に処理した。染色した後、各群から最大c−Fos発現を示す3つの切片を選択し、写真を撮り、脊髄を先に報告されている領域に分けた(図1C)(Duckhyuan and Barr, 1995)。次いで、統計分析のためにc−Fos陽性細胞の平均数を領域別に算出した。
【0197】
結果
デオルモス(DeOlmos)銀染色
神経変性を受けている領域の非特異的マーカーとしてのデオルモス(DeOlmos)銀染色により、海馬及び特定の皮質層の両方が特に明らかとなった。麻酔薬に曝露された切片において、これらの領域は、取込みが最小であった偽麻酔薬に付された対照とは対照的に、黒色染色によって表される広範囲の銀取込みを示した(図2)。
【0198】
カスパーゼ−3免疫組織化学
皮質の活性化カスパーゼ−3
カスパーゼ−3活性化を示す神経細胞は、黒色の細胞体及び軸策染色としてバックグラウンドと容易に区別できた。染色は、19.3±6.4(平均±SD)、n=4のような、空気に曝露されたラットにおける皮質カスパーゼ−3活性化のバックグラウンドレベルというレベルを達成した(図3A)。個々の薬剤としては、75%NOも75%キセノンも、カスパーゼ−3陽性細胞の有意な増加を誘発しなかったのに対し(それぞれ、22.5±5.9、n=3及び19.7±9.6、n=3、空気に対してp>0.05)、0.75%イソフルラン単独の投与により、中程度のレベルの活性化カスパーゼ−3染色が生じた(76.5±11.4、n=5、空気に対してp<0.01)(図4)。
【0199】
75%NOは、0.75%イソフルランと組み合わせると、イソフルラン誘発性アポトーシスをかなり促進し(232.0±19.9、n=6、空気に対してp<0.001)、他方、60%キセノンは損傷を低減した(26.7±3.9、n=4、空気に対してp>0.05)(図5)。
【0200】
海馬の活性化カスパーゼ−3
75%NOも75%キセノンも、ベースラインを上回るカスパーゼ−3陽性細胞の有意な増加を示さなかった(対照の5.2±1.8に対して、それぞれ、3.7±1.4及び5.0±3.2、p>0.05)(図3B)。対照的に、0.75%イソフルラン単独は変性神経細胞数を有意に増加させ(22.1±9.6、空気に対してp<0.01)、同様に、0.75%イソフルランと75%NOの組合せも有意に増加させた(34.8±20.2、空気に対してp<0.01)(図6)。60%キセノンと0.75%イソフルランとの二重投与により、神経細胞損傷の程度が5.8±2.6に低下した、空気に対してp=<0.05。
【0201】
脊髄C−Fos発現(ホルマリン検査)
両方のガスの組合せ(75%NO+0.75%イソフルラン及び60%キセノン+0.75%イソフルラン)が、ホルマリン注射した陽性対照に対して、脊髄のすべての領域においてc−Fos発現を抑制することによる鎮痛作用を示した(p<0.001)(図7)。c−Fos発現が最大であった薄層A/Bでは、キセノンの組合せが、亜酸化窒素の組合せによって誘発されるものよりもより大きな鎮痛作用を与えた(それぞれ、15.0±1.7対22.3±4.3、p<0.05)。
【実施例2】
【0202】
方法
神経細胞のグリア共培養
BALB/cマウスの出生後早期の(1〜2日齢の)仔から大脳新皮質全体(海馬、基底核及び髄膜を欠く)を採取した。これらの仔にはイソフルランで麻酔し、次いで、断頭し、頭部を直ちに4°CのHSG溶液、すなわち、根本的にはハンクス平衡塩溶液(HBSS, GibroBRL)から作製され、NaHCO(0.04M)、スクロース(0.2M)及びD−グルコース(0.3M)で強化し、また抗生物質抗真菌溶液(AAS, GibroBRL)も含有する等張性の高スクロースグルコース溶液に入れた。顕微解剖プロセスの間中、脳組織を4°CのHSG溶液中に維持した。
【0203】
次いで、脳組織を0.25%トリプシン中に浸漬し、37℃、5%CO及び95%大気で満たされた振盪空気チャンバー中に50分間入れた。次いで、混合物にDNアーゼを加え、振盪空気チャンバー中にさらに15分間戻した。次いで、この混合物を4℃、1600rpmで10分間遠心分離し、上清を注意深く廃棄した。次いで、細胞を再懸濁し、次いで、密度6.25×10個細胞/cmで24マルチウェルプレート(Costar, Cambridge, MA)に入れ、20mMグルコース、26mM NaHCO、10%胎児ウシ血清、10%熱不活化ウマ血清、AAS(Gibco, Paisley, UK)、2mMグルタミン(Sigma, Poole, UK)及び10ng/mlネズミ上皮成長因子(EGF)(GibcoBRL)で増強したイーグル最小必須培地からなる培地中で培養した。グリア細胞は、プレーティングの約1週間後にコンフルエンスに達した。
【0204】
同様の手順を用いて、妊娠14〜16日の胎児BALB/cマウスから皮質の神経細胞を採取し、対応する遺伝子系統に由来するグリア細胞のコンフルエントな単層上に密度1.25×10個細胞/cmでプレーティングした。神経細胞はプレーティングの10日後にコンフルエンスに達した。
【0205】
純粋神経細胞培養
妊娠BALB/cマウスの帝王切開によって、19日齢の胎児マウスから神経細胞を採取した。6〜9匹のマウスの脳を胎児マウスから摘出し、解剖して、海馬、基底核及び髄膜を欠く大脳新皮質全体を単離した。再度、顕微解剖プロセスの間中、脳組織を4°CのHSG溶液中に維持した。この後、上記で記載した同様のプレーティング手順を実施した。細胞を密度1.2×10細胞/cmで24マルチウェルプレート(Cater, Cambridge, MA)上にプレーティングし、培養物を37℃、加湿5%CO環境中で維持した。培養培地として、B27、グルタミン及びAASを補給したニューロベーサル(Neurobasal)培地を用いて神経細胞を再懸濁した。10mlのニューロベーサル(Neurobasal)培地につき、以下のサプリメントを添加した:B27 200μl、抗生物質100μl及びグルタミン25μl。これらの細胞の培地交換は、予め加温した37°Cの培養培地(ニューロベーサル(Neurobasal)培地、B27、グルタミン及びAAS)を用いて2、5及び7日に実施した。神経細胞プレーティングの5日後に、細胞培養物に100μl/10mlのシトシンアラビノシド(CAヒドロクロリド、Sigma)を加え、非神経細胞の細胞分裂を停止させた。神経細胞の細胞培養物は7日目に使用する準備ができた。
【0206】
前処理
専用の1.4リットルの気密性温度制御ガスチャンバーを用いて細胞を前処理した。このチャンバーは吸気弁と吹き出し弁と、効率的で連続的なガスの送達を確実にするための内部扇風機とを備えていた。ガス流速は100ml/分とし、そのためチャンバーをフラッシュし、45分間平衡化させ、その後閉鎖系を確立した。細胞は、流量計を用いて適当なガス濃度を用い、閉鎖系の内側で2時間前処理した。セボフルランはバポライザー(vaporiser)(Datex-Ohmeda)を用いて送達した。
【0207】
ガス飽和溶液の調製−脱酸素化平衡塩溶液(BSS)は、焼結ガスバブラーを通して5%CO及び95%Nを、37℃インキュベーター中、ドレクセル(Drechsel)容器に入れたBSS中にバブリングすることによって作製した。
【0208】
酸素グルコース欠乏
脳における虚血性損傷のモデルとするために、神経細胞を酸素グルコース欠乏に付した。細胞を前処理した24時間後、培養物をHEPESバッファー溶液(1M NaOHを用いてpH7.4に滴定した、120mM NaCl、5.4mM KCL、0.8mM MgCl、15mMグルコース及び20mM HEPES)で2回洗浄した。次いで、培養物を、予め加温した、グルコースを除いた脱酸素化BSS(116mM NaCl、5.4mM KCL、0.8mM MgSO、1mM NaHPO、1.8mM CaCl、26mM NaHCO)で1回洗浄し、次いで、2M HClを用いてpH7.4に滴定した。次いで、培養培地を600μlの脱酸素化BSSで置換し、次いで、直ちに37℃、気密性ガス曝露チャンバーに入れ、5%CO及び95%Nからなる麻酔環境に対して平衡化させた。細胞をこの無酸素環境に75分間曝露させた。酸素グルコース欠乏は、培養物をガスチャンバーから取り出し、培地を交換することによって終結させた。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイをすることになっている培養物は、25mM グルコース及び38mM NaHCOで増強したイーグル最小必須培地で1回洗浄し、置換したのに対し、FACS用の純粋神経細胞培養物は、B27、グルタミン及びAASを補給したニューロベーサル(Neurobasal)培地で1回洗浄し、置換した。
【0209】
LDH測定
神経細胞損傷の量は、標準化された比色定量酵素キット(Sigma, Poole, UK)を用い、培養培地中に放出されたLDHの量によって評価した。この技術はこれまでに記載されている(Wilhelm et al 2002)。LDH評価は酸素グルコース欠乏の16時間後に実施した(図8)。
【0210】
FACS評価
酸素グルコース欠乏の24時間後、細胞をFACS分析用に染色した。培養培地を除去し、HEPESバッファー溶液で2回洗浄した。次いで、0.4μl/mlアネキシンV(Sigma-Aldrich, Poole, UK)を含む、100μlの1×結合バッファー(BB)溶液(50mM HEPES、750mM NaCl、12.5mM CaCl、5mM MgCl、20%BSA)を添加し、氷上で10分間インキュベートさせた。次いで、細胞を1×BBで2回洗浄し、次いで、リン酸バッファー溶液(PBS)中1%ウシ胎児血清(FBS)中0.8μg/mlヨウ化プロピジウム(Sigma-Aldrich, Poole, UK)を加え、氷上で5分間インキュベートさせた。これにPBS中1%PBSでの2回の洗浄を続け、次いで、400μlの0.25%トリプシン/EDTAを添加し、37℃で5分間インキュベートさせた。次いで、800μlのPBS中1%FBSを添加して反応を停止させ、細胞を回収し、1200gで10分間の遠心分離のために試験管に加えた。上清を廃棄し、細胞を300μlのPBS中1%FBSで再懸濁した。可能であれば、ステップは神経細胞死の量を低減させるよう氷上で実施した。
【0211】
フローサイトメトリー分析のために、単一のアルゴンレーザーを備えるFACSCalibur(Becton Dickinson, Sunnyvale, CA)を用いた。励起は488nmで実施し、用いた発光フィルターは515〜545BP(緑色、FITC)及び600LP(赤色、PI)とした。サンプルあたり少なくとも10,000個の細胞を分析した。データ獲得はCell Quest3.3(Becton Dickinson)を用いて実施し、データ解析はCell Quest Pro(Becton Dickinson)を用いて実施した(図9)。
【0212】
統計分析
統計分析はInstatを用いて実施した。データは平均+/−SEMとして表した。群内及び群間のデータの統計分析は、反復測定の分散分析とそれに続くスチューデント−ニューマン−クールスの検定(Student-Newman-Keuls test)を用いて実施した。結果はP<0.05であれば有意であると考えられる。
【0213】
結果
キセノン前処理
キセノンを用いた2時間の前処理により、酸素グルコース欠乏後のLDH放出の濃度依存性低下がもたらされる(図10)。LDH放出は50%及び75%のキセノンによって、それぞれ対照値の55+/−12%及び49+/−12%に大幅に低下した(p<0.05)。12.5%のキセノンは、LDH放出を83+/−7%に低下させ、25%のキセノンはLDH放出を対照の70+/−11%に低下させた。12.5%及び25%のキセノンは、濃度を高めるにつれLDH放出が低減する傾向を示したが、結果は有意ではなかった(p>0.05)。
【0214】
セボフルラン前処理
また、2時間のセボフルラン前処理によっても、LDH放出の濃度依存性低下がもたらされる(図11)。1.9%より高いセボフルランの濃度は、LDH放出の有意な低下をもたらした。1.9%未満のセボフルランの濃度は、LDH放出を有意に低下させず、したがって、神経細胞に、酸素グルコース欠乏からの何らかの保護を提供しなかった(p>0.05)。2.7%のセボフルランは、LDHの、対照の64+/−6%への有意な減少をもたらした(p<0.05)。LDH放出は、3.3%セボフルランという濃度で対照の37+/−5%へ最大に低下した(p<0.001)。0.67%のセボフルランは、対照の97+/−5%へのLDH放出の低下をもたらし、有効でないことがわかり、1.3%のセボフルランはLDH放出の低下を全くもたらさなかった(対照の100+/−11%)。
【0215】
キセノン及びセボフルラン組合せ前処理
組合せ中の効果のない用量のキセノン及びセボフルランが一緒になって相乗的に働き、LDH放出の、用いたガス単独の対応する濃度よりもより大きな低下をもたらした。初期の実験では(図12)、データは、0.67%のセボフルラン及び12.5%のキセノンは、LDH放出の有意な低下をもたらさず、したがって、虚血性損傷からの有意な保護は与えない(p>0.05)とわかるということを示した。しかし、プレコンディショナーとして2種のガスを併用した場合には、LDH放出は対照の59+/−5%に有意に低下した(p<0.001)。
【0216】
組合せ前処理を用いた、壊死細胞集団、生存細胞集団及びアポトーシス細胞集団の評価
キセノン、セボフルラン及び組合せ前処理の背後の機構を推定するために、FACSを用いて、ガスが抗アポトーシス性によってその作用を発揮するのか、抗壊死機構によってその作用を発揮するのかを調べた。この技術には、純粋神経細胞培養物を用いることが必要である。
【0217】
生存細胞が蛍光を発したかどうかを調べるため、及び生存細胞領域を規定するために、対照は、損傷がなく、前処理されていない染色されなかった細胞とした。酸素グルコース欠乏後の神経細胞損傷の量を低減するためのプレコンディショナーとして用いたキセノン及びセボフルラン組合せの有効性は、LDHアッセイから得られたデータと一致している(図13)。偽前処理(前処理されていない、損傷を受けた細胞)、12.5%キセノン及び0.67%セボフルランでは、対照と比較して有意により少ない生存細胞集団が含まれていた(p<0.001)。組合せ前処理には、23+/−1%の生存細胞集団が含まれており、12.5%キセノン及び0.67%セボフルランの9%と比較して酸素グルコース欠乏モデルにおける神経細胞損傷量の低下における2種のガスの相乗効果が裏付けられた(P<0.001)。
【0218】
対照群は17+/−1%の壊死集団を含んでいたのに対し、偽前処理、12.5%キセノン前処理、0.67%セボフルラン前処理は、それぞれ、70+/−2%、75+/−2%及び81+/−2%の壊死集団を含んでいた。しかし、組合せ中のキセノン及びセボフルランは、それぞれ9+/−1%(p<0.001)及び17+/−1%(p<0.001)のアポトーシス集団を含む、キセノン単独及びセボフルラン単独と比較して、35%+/−3%というより高いアポトーシス集団を含んでいた。
【0219】
キセノンとセボフルランとの組合せは、41+/−2%(p<0.001)という有意に低下した壊死細胞集団を含んでいた。これらのデータは、キセノン及びセボフルランは、プレコンディショナーとして併用する場合には、抗壊死機構によって実質的な神経保護を提供するということを示唆する。
【0220】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することのない、本発明の記載される方法の種々の改変及び変法は、当業者には明らかである。本発明を、具体的な好ましい実施形態に関連して記載してきたが、化学又は関連分野の当業者には自明である本発明を実施するための記載される様式の種々の改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0221】
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【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】6時間(神経変性実験)又は105分(ホルマリン検査)の間、麻酔したラットを示す図である。脳を摘出すると、注目する領域を含むよう切片を切断した:冠状切片−十字縫合から3.6mm(神経変性実験)又は脊髄の腰膨大の横断切片(ホルマリン検査)。図1A: 閉鎖循環式キセノン麻酔の設備。図1B:新生児ラット脳を通る矢状面図及びカウントのために用いた横断スライスを表す図。図1C:新生児ラットの脊髄の腰膨大を通る横断切片の図−点線は、これまでに用いられたプロトコールから採用したカウント領域の境界を表す(Duckhyun and Barr, 1995)。
【図2】銀染色した切片を示す図である。デオルモス(DeOlmos)銀染色を用いて免疫組織化学法のために注目する可能性ある領域を決定した。種々のガスの組合せを用いてラットに麻酔し、その脳を摘出し、デオルモス(DeOlmos)銀染色用に切片を切断した。非特異的神経変性の領域は黒く染色される(×4倍)。図2A:低度の銀取込みを示す、対照動物の皮質の顕微鏡写真。図2B:特定の皮質層における銀取込みを示す、75%亜酸化窒素+0.75%イソフルランに曝露されたラットの皮質の顕微鏡写真。図2C:低度の銀取込みを示す、対照動物の海馬の顕微鏡写真。図2D:広範囲の銀取込みを示す、75%亜酸化窒素+0.75%イソフルランに曝露されたラットの海馬の顕微鏡写真。
【図3】新生児ラットにおいて麻酔薬に対する曝露によって誘発された皮質及び海馬のアポトーシス性神経変性:平均データを示す図である。7日齢の新生児ラットの皮質におけるカスパーゼ−3免疫染色で測定される、偽麻酔又は麻酔薬(75%亜酸化窒素、75%キセノン、0.75%イソフルラン、75%亜酸化窒素+0.75%イソフルラン又は75%キセノン+0.75%イソフルラン)に対する曝露によって皮質及び海馬において誘発されたアポトーシス性神経変性。図3A:全処理群から得た皮質からの平均データ(平均±SD、n=3)。**空気に対してp<0.01、***空気に対してp<0.001。図3B:全処理群から得た海馬からの平均データ(平均±SD、n=3)。**空気に対してp<0.01。
【図4】個々の麻酔剤に曝露された新生児ラットにおける皮質のアポトーシス性神経変性を示す図である。皮質のカスパーゼ−3免疫染色を示し、アポトーシスに向かうことになっている細胞を明らかにする(黒色染色)顕微鏡写真(×4倍)。ガス曝露に対応する顕微鏡写真(×4倍):6時間の、空気(A)、75%亜酸化窒素(B)、75%キセノン(C)又は0.75%イソフルラン(D)。
【図5】麻酔剤の組合せに曝露された新生児ラットにおける皮質のアポトーシス性神経変性を示す図である。6時間の、75%亜酸化窒素+0.75%イソフルラン(A)、又は60%キセノン+0.75%イソフルラン(B)のいずれかに曝露された新生児ラットの皮質におけるカスパーゼ−3染色を比較する顕微鏡写真(×4倍)。亜酸化窒素及びキセノンは両方ともNMDA受容体アンタゴニストと位置付けられているという事実にもかかわらず、イソフルラン誘発性アポトーシスを調節する場合にはそれらは正反対に対抗する特性を示す(それぞれ、増強及び軽減)。強力光顕微鏡(×20倍)によって、カスパーゼ−3が細胞質酵素であることと一致して、染色されている神経細胞全体が確認された(C)。
【図6】新生児ラットにおいて麻酔薬に対する曝露によって誘発された海馬のアポトーシス性神経変性を示す図である。6時間のガス曝露の後、海馬のカスパーゼ−3免疫染色を実施して、アポトーシスに向かうことになっている細胞を明らかにした(黒色染色)。ガス曝露に対応する顕微鏡写真(×4倍):空気(A)、75%亜酸化窒素(B)、75%キセノン(C)又は0.75%イソフルラン(D)、75%亜酸化窒素+0.75%イソフルラン(E)及び60%キセノン+0.75%イソフルラン(F)。
【図7】ホルマリン検査から得た結果を示す図である。左後足へのホルマリン注射に対する侵害受容反応を、脊髄におけるc−Fos発現によって定量化するホルマリン検査を用いて、(75%亜酸化窒素+0.75%イソフルラン)の鎮痛の可能性を(60%キセノン+0.75%イソフルラン)と比較した。図7A:全処理群から得た平均データ(平均±SD、n=3)。***ホルマリン注射した対照に対してp<0.001、O+イソフルランに対してp<0.05。図7B:75%亜酸化窒素+0.75%イソフルランの脊髄スライスの顕微鏡写真。図7C:60%キセノン+0.75%イソフルランの脊髄スライスの顕微鏡写真。
【図8】LDHアッセイプロトコールの流れ図を示す図である。
【図9】前処理後の壊死細胞集団、生存細胞集団及びアポトーシス細胞集団を評価するプロトコールの流れ図を示す図である。
【図10】キセノン濃度に対するLDH放出のグラフを示す図である。細胞を2時間前処理し、続いてOGD(酸素グルコース欠乏)を行った。
【図11】セボフルラン濃度に対するLDH放出のグラフを示す図である。細胞を2時間前処理し、続いてOGDを行った。
【図12】キセノン前処理、セボフルラン前処理、前処理の組合せに対するLDH放出のグラフを示す図である。細胞を2時間前処理し、続いてOGDを行った。
【図13】壊死細胞集団、生存細胞集団及びアポトーシス細胞集団のFACS分析を用いる、組合せ前処理を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生児対象において1種又は複数の麻酔誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項2】
神経障害が神経変性である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
神経障害が神経細胞アポトーシスに付随する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
神経障害が神経細胞壊死に付随する、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
神経障害が、学習、記憶、神経運動、神経認知又は精神認知障害である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
新生児対象において麻酔誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項7】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項8】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞壊死を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項9】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項10】
麻酔薬がGABA作動性薬剤である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
麻酔薬がイソフルラン、セボフルラン又はデスフルランである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
新生児対象においてイソフルラン誘発性及び/又はセボフルラン誘発性及び/又はデスフルラン誘発性の神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における、(i)キセノン、並びに(ii)イソフルラン、セボフルラン及びデスフルランから選択される麻酔薬の使用。
【請求項13】
新生児対象においてイソフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における、(i)キセノン、及び(ii)イソフルランの使用。
【請求項14】
新生児対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における、(i)キセノン、及び(ii)セボフルランの使用。
【請求項15】
新生児対象においてデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における、(i)キセノン、及び(ii)デスフルランの使用。
【請求項16】
新生児対象においてイソフルラン誘発性及び/又はセボフルラン誘発性及び/又はデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における、キセノンの使用。
【請求項17】
新生児対象において麻酔を提供する医薬の調製における(i)キセノン、並びに(ii)イソフルラン、セボフルラン及びデスフルランから選択される麻酔薬の使用であって、キセノンの量が麻酔誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用。
【請求項18】
新生児対象において麻酔を提供する医薬の調製におけるキセノン及びイソフルランの使用であって、キセノンの量がイソフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用。
【請求項19】
新生児対象において麻酔を提供する医薬の調製におけるキセノン及びセボフルランの使用であって、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用。
【請求項20】
新生児対象において麻酔を提供する医薬の調製におけるキセノン及びデスフルランの使用であって、キセノンの量がデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用。
【請求項21】
キセノンを製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体と組み合わせて投与する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
医薬がガス剤である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
医薬を吸入によって投与する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
キセノンを灌流によって投与する、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
医薬が液剤又は溶液剤である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
医薬が脂質乳剤である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
医薬が静脈内送達、脊椎送達又は経皮送達に適した剤形である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
新生児対象において麻酔誘発性神経障害を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項29】
神経障害が神経変性である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
神経障害が神経細胞アポトーシスに付随する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
神経障害が神経細胞壊死に付随する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
神経障害が、学習、記憶、神経運動、神経認知又は精神認知障害である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
新生児対象において麻酔誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項34】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項35】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞壊死を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項36】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞損傷を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項37】
麻酔薬がGABA作動性薬剤である、請求項28〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
麻酔薬がイソフルラン、セボフルラン又はデスフルランである、請求項28〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
新生児対象においてイソフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びイソフルランを投与することを含む方法。
【請求項40】
新生児対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びセボフルランを投与することを含む方法。
【請求項41】
新生児対象においてデスフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びデスフルランを投与することを含む方法。
【請求項42】
新生児対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをイソフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がイソフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である方法。
【請求項43】
新生児対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをセボフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である方法。
【請求項44】
新生児対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをデスフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がデスフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である方法。
【請求項45】
キセノンを製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体と組み合わせて投与する、請求項28〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
医薬がガス剤である、請求項28〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
医薬を吸入によって投与する、請求項28〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
キセノンを灌流によって投与する、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項49】
医薬が液剤又は溶液剤である、請求項28〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
医薬が脂質乳剤である、請求項50に記載の方法。
【請求項51】
新生児対象において1種又は複数の麻酔誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤。
【請求項52】
新生児対象において麻酔誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤。
【請求項53】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤。
【請求項54】
新生児対象において麻酔誘発性神経細胞壊死を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤。
【請求項55】
麻酔薬をさらに含む、請求項51〜54のいずれか一項に記載の麻酔製剤。
【請求項56】
麻酔薬がGABA作動性薬剤である、請求項55に記載の麻酔製剤。
【請求項57】
麻酔薬がイソフルラン、セボフルラン又はデスフルランである、請求項57に記載の麻酔製剤。
【請求項58】
約60%のキセノンと、約0.75%のイソフルランと、約25%の酸素と、残りの窒素とを含む麻酔製剤。
【請求項59】
キセノン及びセボフルランを含む組合せ。
【請求項60】
キセノンと、セボフルランと、製薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項61】
麻酔製剤である、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
約12.5%のキセノンと、約0.67%のセボフルランと、約25%の酸素と、残りの窒素とを含む、請求項61に記載の麻酔製剤。
【請求項63】
対象において1種又は複数のセボフルラン誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤。
【請求項64】
対象においてセボフルラン誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤。
【請求項65】
対象においてセボフルラン誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための麻酔製剤であって、キセノン、並びに製薬上許容される希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む製剤。
【請求項66】
神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供する医薬の調製におけるキセノン及びセボフルランの使用。
【請求項67】
神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供する医薬の調製におけるキセノンの使用であって、前記医薬をセボフルランと併用する使用。
【請求項68】
神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供する医薬の調製におけるセボフルランの使用であって、前記医薬をキセノンと併用する使用。
【請求項69】
低酸素障害から保護するための前処理剤として用いるための医薬の調製におけるキセノン及びイソフルランの使用。
【請求項70】
低酸素障害から保護するための前処理剤として用いるための医薬の調製におけるキセノンの使用であって、前記医薬をセボフルランと併用する使用。
【請求項71】
低酸素障害から保護するための前処理剤として用いるための医薬の調製におけるセボフルランの使用であって、前記医薬をキセノンと併用する使用。
【請求項72】
対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するための医薬の調製における(i)キセノン、及び(ii)セボフルランの使用。
【請求項73】
対象において1種又は複数のセボフルラン誘発性神経障害を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項74】
神経障害が神経細胞壊死に付随する、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
対象においてセボフルラン誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項76】
対象においてセボフルラン誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項77】
対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項78】
対象において麻酔を提供するための医薬の調製におけるキセノン及びセボフルランの使用であって、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減又は予防するのに十分である使用。
【請求項79】
神経細胞壊死又は神経細胞壊死に付随する状態を治療及び/又は軽減及び/又は予防するための医薬の調製におけるキセノンの使用。
【請求項80】
対象において神経保護及び/又は麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンとセボフルランとの組合せを投与することを含む方法。
【請求項81】
キセノン及びセボフルランを低酸素性虚血性損傷に先立って投与する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
キセノン及びセボフルランを低酸素性虚血性損傷の少なくとも約2時間前に投与する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
キセノン及びセボフルランを低酸素性虚血性損傷の約2〜約24時間前に投与する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
キセノン及びセボフルランを分娩に先立って、及び/若しくは分娩の間、又は、帝王切開に先立って、及び/若しくは帝王切開の間に母体に投与する、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
低酸素障害から対象を保護する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンとセボフルランとの組合せを投与することを含む方法。
【請求項86】
対象においてセボフルラン誘発性神経障害を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項87】
対象においてセボフルラン誘発性神経変性を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項88】
対象においてセボフルラン誘発性神経細胞アポトーシスを治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項89】
対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項90】
対象においてセボフルラン誘発性神経細胞損傷を予防及び/又は軽減する方法であって、前記対象にキセノン及びセボフルランを投与することを含む方法。
【請求項91】
対象において麻酔及び/又は鎮痛を提供する方法であって、キセノンをセボフルランと組み合わせて投与することを含み、キセノンの量がセボフルラン誘発性神経細胞損傷を軽減及び/又は予防するのに十分である方法。
【請求項92】
対象において神経細胞壊死又は神経細胞壊死に付随する状態を治療及び/又は軽減及び/又は予防する方法であって、前記対象に治療上有効量のキセノンを投与することを含む方法。
【請求項93】
本明細書に本質的に記載され、添付の図面に参照例が示される使用、方法又は麻酔製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−509981(P2008−509981A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526573(P2007−526573)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003253
【国際公開番号】WO2006/018655
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(504405707)プロテクソン リミテッド (3)
【Fターム(参考)】