説明

新生物疾患の治療のための抗体組成物および方法

哺乳動物被験体の新生物疾患を治療するための抗体組成物および方法を提供する。哺乳動物被験体における癌の診断方法も提供する。本発明は、さらに、哺乳動物被験体の新生物疾患の診断方法に関する。抗体組成物は、インスリン様成長因子Iに結合する単離モノクローナル抗体である。別の抗体組成物組は、インスリン様成長因子Iに結合し、インスリン様成長因子IIと交差反応性を示すか結合するモノクローナル抗体である。単離モノクローナル抗体は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウサギ、ラット、またはマウス抗体である。インスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体組成物は、例えば、m705およびm706である。インスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIの両方に結合する単離ヒトモノクローナル抗体組成物は、m708およびm708.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年4月7日に出願された米国仮出願第60/790,512号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
分野
本発明は、一般に、哺乳動物被験体の新生物疾患の治療のための抗体組成物および方法に関する。単離ヒトモノクローナル抗体は、インスリン様成長因子Iまたはインスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIの両方に結合する。本発明は、さらに、哺乳動物被験体の癌の診断方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
癌療法は、分裂および増殖の速度が加速された細胞が癌を発症させる傾向があるという理論に基づく。最近、多数の疫学研究が、高循環レベルの強力な分裂促進因子であるインスリン様成長因子(IGF)−Iが、いくつかの一般的な癌(乳癌、前立腺癌、肺癌、および結腸直腸癌が含まれる)のリスク増加に関連することを一貫して示している。IGF結合タンパク質(IGFBP)−3(血清中の主なIGF−I結合タンパク質で、多くの場合、IGF−Iの分裂促進作用を抑制する)は、これらの癌のリスクに逆に関連する。
【0004】
機能的に、IGF−Iは細胞増殖を刺激するだけでなく、アポトーシスも阻害する。これらの分裂促進効果および抗アポトーシス効果の組合せは、腫瘍成長に影響を及ぼし得る。癌関連細胞活性に対するその直接的作用に加えて、IGFファミリーのメンバーは、癌の発症および進行に関与する種々の分子(性ステロイドホルモン、腫瘍抑制遺伝子産物、および他の成長因子が含まれる)とも相互作用する。さらに、IGF−I(ヒトの成長および発達の調節に関連するペプチドホルモン)の発現および産生は、栄養および身体的活動による影響を受ける。IGFファミリーメンバーの分子構造および物理学的機能を理解するための実験により、発癌における分裂促進成長因子の役割が洞察される。非特許文献1。
【0005】
IGFは、培養ヒト乳癌細胞の増殖を刺激する。この刺激は、受容体(受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバーであるインスリン様成長因子受容体1(IGFR)によって媒介される。そのリガンド(IGF−IまたはIGF−II)によって活性化された場合、IGFR1は、2つの主な基質IRS−1およびShc上のチロシン残基をリン酸化し、その後に、Ras/Rafおよびホスファチジルイノシトール3 ’−キナーゼ/AKT経路を介してシグナル伝達する。IGFR1は、形質転換で極めて重要な役割を果たす。IGFR1ノックアウトマウス由来の細胞は、種々のウイルスおよび細胞の癌遺伝子(SV40ラージT抗原および活性化rasが含まれる)による形質転換に耐性を示すのに対して、野生型マウス由来の線維芽細胞は、これらの癌遺伝子によって容易に形質転換されうる。
【0006】
血漿IGF−Iレベルの上昇と前立腺癌、乳癌、および結腸癌のリスクとが関連するという疫学的証拠が増加しつつある。患者由来の乳癌組織が、隣接する正常組織よりもIGFR1発現がより高く、IGFR1と乳房上皮細胞の形質転換との間の関連が示唆される。アンチセンスストラテジー、中和抗体(抗IR3または抗IGF−I)、または受容体のドミナントネガティブ短縮を使用してIGFR1を阻害した場合、腫瘍細胞の形質転換能力が弱められることが報告されている。非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7。新生物疾患および転移癌を治療するための多標的療法の改良が当該分野で必要である。
【非特許文献1】YuおよびRohan、J.Natl.Cancer Inst.(2000年)92:1472−1489
【非特許文献2】Hailey,J.ら、Molecular Cancer Therapeutics(2002年)1:1349−1353
【非特許文献3】Maloney E.K.ら、Cancer Res.(2003年)63:5073−5083
【非特許文献4】Burtrum D.ら、Cancer Res.、(2003年)63:8912−8921
【非特許文献5】Luら、J.Biol.Chem.(2004年)279:2856−2865
【非特許文献6】Miyamotoら、Clin.Cancer Res.(2005年)11:3494−3502
【非特許文献7】Goyaら、Cancer Research(2000年)64:6252−6258
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明は、一般に、哺乳動物被験体の新生物疾患の治療のための抗体組成物および方法に関する。本発明は、さらに、哺乳動物被験体の新生物疾患の診断方法に関する。抗体組成物は、インスリン様成長因子Iに結合する単離モノクローナル抗体である。別の抗体組成物組は、インスリン様成長因子Iに結合し、インスリン様成長因子IIと交差反応性を示すか結合するモノクローナル抗体である。単離モノクローナル抗体は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウサギ、ラット、またはマウス抗体である。インスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体組成物は、例えば、m705およびm706である。インスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIの両方に結合する単離ヒトモノクローナル抗体組成物は、m708およびm708.2である。モノクローナル抗体m705、m706、m708、およびm708.2は、ヒトインスリンに結合しない。m705は、配列番号1を含むV鎖アミノ酸配列および配列番号2を含むV鎖アミノ酸配列を有する。m706は、配列番号3を含むV鎖アミノ酸配列および配列番号4を含むV鎖アミノ酸配列を有する。m708は、配列番号5を含むV鎖アミノ酸配列および配列番号6を含むV鎖アミノ酸配列を有する。m708.2は、配列番号7を含むV鎖アミノ酸配列および配列番号8を含むV鎖アミノ酸配列を有する。
【0008】
その重鎖可変領域中に配列番号7に記載のアミノ酸配列または配列番号7と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離モノクローナル抗体を提供する。
【0009】
その軽鎖可変領域中に配列番号8に記載のアミノ酸配列または配列番号8と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離モノクローナル抗体を提供する。
【0010】
その重鎖可変領域または軽鎖可変領域中に配列番号7および8にそれぞれ記載のアミノ酸配列またはそれぞれ少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離モノクローナル抗体を提供する。1つまたは複数の本発明の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つのCDR配列(V:QSISS(配列番号9)、V:AAS(配列番号10)、V:QQSYSTPSTF(配列番号11)、V:GGTFSSYA(配列番号12)、V:GIIPILGIA(配列番号13)、またはV:ARGPRGYSYNFDY(配列番号14)が含まれるが、これらに限定されない)を含む抗体を提供する。さらなる態様では、抗体には、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体、IgA抗体、分泌性IgA抗体、IgD抗体、またはIgE抗体が含まれるが、これらに限定されない。抗体は、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプであり得る。抗体は、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプであり得る。抗体は、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体、IgA抗体、分泌性IgA抗体、IgD抗体、またはIgE抗体であり得る。抗体は、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプであり得る。抗体は、IgG4κアイソタイプまたはIgG4λアイソタイプであり得る。詳細な態様では、抗体は、ヒト、非ヒト霊長類、ウサギ、ラット、マウス、またはその組合せである。
【0012】
本発明の単離モノクローナル抗体は、1つまたは複数の以下の特徴:(i)インビトロMCF−7乳癌細胞アッセイにおいて約4nMまたはそれを超える抗体濃度でIGF−I受容体のリン酸化を阻害すること、(ii)IGF−I受容体へのIGF−I結合またはIGF−II結合を阻害すること、または(iii)細胞遊走アッセイにおいて細胞遊走を阻害することを有する。
【0013】
別の態様では、本発明の単離モノクローナル抗体は、分析物として組換えヒトインスリン様成長因子Iまたはヒトインスリン様成長因子IIを使用し、リガンドとして抗体を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した場合、約10−8Mまたはそれ未満の解離平衡定数(K)を有する。
【0014】
さらなる態様では、約10−1またはそれを超える結合親和性でヒトインスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIに結合することができる単離モノクローナル抗体を提供する。さらなる態様では、約10−1またはそれを超える結合親和性でヒトインスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIに結合することができる単離モノクローナル抗体を提供する。詳細な態様では、単離モノクローナル抗体は、インタクトな抗体、インタクトなIgG抗体、インタクトなIgG体、インタクトなIgG抗体、インタクトなIgG抗体、インタクトなIgM抗体、インタクトなIgA抗体、インタクトなIgA抗体、インタクトな分泌IgA抗体、インタクトなIgD抗体、またはインタクトなIgE抗体であり、抗体が真核細胞中でグリコシル化される。さらなる態様では、単離モノクローナル抗体は、抗体フラグメントまたは単鎖抗体である。抗体は、モノクローナル抗体であり得る。抗体は、F(ab’)フラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、またはFdフラグメントであり得る。抗体は、抗原特異的抗体であり得る。
【0015】
さらなる態様では、本発明の単離モノクローナル抗体は、(i)リンカーペプチドを介して免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した配列番号8に記載の可変軽鎖アミノ酸配列または配列番号8と少なくとも90%相同な可変軽鎖配列に融合した配列番号7に記載の可変重鎖アミノ酸配列または配列番号7と少なくとも90%相同な可変重鎖配列、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。抗体は、所定の抗原と、例えば、少なくとも10−1、少なくとも10−1、または少なくとも1010−1の平衡結合定数(Ka)で結合する。
【0016】
ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離ヒトモノクローナル抗体を提供する。1つの態様では、抗体は、V:QSISS(配列番号9)、V:AAS(配列番号10)、V:QQSYSTPSTF(配列番号11)、V:GGTFSSYA(配列番号12)、V:GIIPILGIA(配列番号13)、またはV:ARGPRGYSYNFDY(配列番号14)の少なくとも1つのCDR配列を含む。
【0017】
配列番号1に記載のそのヒト重鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号1と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体を提供する。配列番号2に記載のそのヒト軽鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号2と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体を提供する。配列番号3に記載のそのヒト重鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号3と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体を提供する。配列番号4に記載のそのヒト軽鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号4と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体を提供する。配列番号5に記載のそのヒト重鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号5と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離ヒトモノクローナル抗体を提供する。配列番号6に記載のそのヒト軽鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号6と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離ヒトモノクローナル抗体を提供する。1つまたは複数の本発明の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0018】
本発明のタンパク質/抗体の重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列をコードする単離核酸を提供する。本発明の核酸および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。本発明の抗体の免疫グロブリン可変ドメイン配列をコードする1つまたは複数の核酸を含む組換え細胞を提供する。抗体が、本発明のタンパク質である、抗体のHC可変ドメインを含むポリペプチドをコードする第1の核酸配列および抗体のLC可変ドメインを含むポリペプチドをコードする第2の核酸配列を含む宿主細胞。核酸が発現する条件下にて宿主細胞中で本発明の核酸を発現させ、その後に抗体を回収する工程を含む、インスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIに結合することができる抗体を調製する方法。
【0019】
抗体がヒト定常領域を含み、ここで、抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)のヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIへの結合を競合的に阻害し、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性または少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。抗体または抗原結合フラグメントは、ヒト定常領域およびヒト可変領域を含むことができる。抗体または抗原結合フラグメントは、少なくとも1つのヒト軽鎖および少なくとも1つのヒト重鎖を含むことができる。さらなる態様では、軽鎖は、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の軽鎖の全ての抗原結合領域を含む。重鎖は、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の重鎖の全ての抗原結合領域を含むことができる。軽鎖は、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の軽鎖の全ての抗原結合領域を含むことができ、重鎖は、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の重鎖の全ての抗原結合領域を含む。
【0020】
抗体がヒト定常領域を含み、ここで、抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)の抗原結合領域を含み、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性または少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。抗体がヒトIgG定常領域を含み、ここで、抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)のヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIへの結合を競合的に阻害し、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性または少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。抗体がヒトIgG定常領域を含み、ここで、抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)の抗原結合領域を含み、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性または少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0021】
(a)サンプルを提供する工程、(b)ポリペプチドリガンドのヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIへの結合を可能にする条件下で、(a)のサンプルをヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを含むポリペプチドに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体m708またはm708.2と接触させる工程、および(c)サンプル中の抗体m708またはm708.2のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIとの結合を検出する工程を含み、ここで、結合の検出が、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIの存在を示し、それにより、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIが検出される、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを検出する方法を提供する。
【0022】
(a)サンプルを提供する工程、(b)ポリペプチドリガンドのヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIへの結合を可能にする条件下で、(a)のサンプルをヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを含むポリペプチドに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体m708またはm708.2と接触させる工程、および(c)サンプル中の抗体m708またはm708.2のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIとの結合を検出する工程を含み、ここで、結合の検出が、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIの存在を示し、それにより、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIが検出される、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを検出する方法を提供する。
【0023】
(a)サンプルを提供する工程、(b)ポリペプチドリガンドのヒトインスリン成長因子Iへの結合を可能にする条件下で、(a)のサンプルをヒトインスリン成長因子Iを含むポリペプチドに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体m705またはm706と接触させる工程、および(c)サンプル中の抗体m705またはm706のヒトインスリン成長因子Iとの結合を検出する工程を含み、ここで、結合の検出が、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iの存在を示し、それにより、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iが検出される、サンプル中のヒトインスリン成長因子Iを検出する方法を提供する。
【0024】
核酸が発現する条件下にて宿主細胞中で本発明の核酸を発現させ、その後に抗体を回収する工程を含む、インスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIに結合することができる抗体を調製する方法。
【0025】
(a)候補ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子I結合ポリペプチドを発現するファージを含むファージライブラリーを提供する工程、(b)ファージライブラリーをヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIタンパク質と接触させる工程、および(c)ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIタンパク質のファージへの結合を検出し、それにより、ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIに特異的なポリペプチドリガンドを同定する工程を含む、ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIに特異的なポリペプチドリガンドを同定する方法を提供する。
【0026】
哺乳動物被験体の新生物疾患を軽減または消失させるのに有効な量で、インスリン様成長因子Iに特異的に結合する配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を有する抗体を含む薬学的組成物を哺乳動物被験体に投与する工程を含む、哺乳動物被験体の新生物疾患を治療する方法。1つの態様では、抗体は、インスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIに特異的に結合する。さらなる態様では、抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む。抗体を細胞毒性剤に連結することができる。細胞毒性剤は、細胞毒性薬物または放射性同位体であり得る。1つの詳細な態様では、新生物疾患は、固形腫瘍、血液学的悪性疾患、白血病、結腸直腸癌、良性または悪性乳癌、子宮癌、子宮平滑筋腫、卵巣癌、子宮内膜癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、前立腺癌、前立腺肥大、下垂体癌、腺筋症、腺癌、髄膜腫、黒色腫、骨の癌、多発性骨髄腫、CNS癌、神経膠腫、または星状芽細胞腫である。さらに詳細な態様では、新生物疾患は、哺乳動物被験体の腫瘍細胞転移である。新生物疾患は、哺乳動物被験体の乳癌転移である。
【0027】
被験体の血液または組織から試験サンプルを得る工程であって、試験サンプルが細胞集団を含む、工程、細胞集団内の細胞上のIGF−Iマーカーの存在または不在を検出するための配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、IGF−Iマーカーによって検出された細胞集団を分析して、哺乳動物被験体における新生物疾患を示すかまたは新生物疾患のリスクがあることを示す細胞、細胞上または細胞中のIGF−Iマーカーの存在を同定および特徴づける工程、を含む、新生物疾患を有すると疑われるか新生物疾患のリスクがあると疑われる哺乳動物被験体の癌を診断する方法を提供する。
【0028】
癌の診断方法は、細胞集団内の細胞上または細胞中のIGF−IIマーカーおよびIGF−Iマーカーの存在または不在を検出するために配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、IGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーによって検出された細胞集団を分析して、哺乳動物被験体における新生物疾患を示すかまたは新生物疾患のリスクがあることを示す細胞、細胞上または細胞中のIGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーの存在を同定および特徴づける工程をさらに含む。
【0029】
診断方法では、検体中の細胞上または細胞中のIGF−IマーカーまたはIGF−IIマーカーの存在は、哺乳動物被験体における転移癌の存在を示す。診断方法では、検体中の細胞上または細胞中のIGF−IマーカーまたはIGF−IIマーカーの存在は、哺乳動物被験体における早期癌の存在を示す。診断方法では、検体中の細胞上または細胞中のIGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーの存在は、哺乳動物被験体が無病状態または測定不可能な疾患状態であることを示す。診断方法のさらなる態様では、検体中の細胞上または細胞中のIGF−IマーカーまたはIGF−IIマーカーの存在または不在により、癌療法または癌の回復中の療法管理をモニタリングする。さらなる態様では、本方法は、抗体に関連する部分を画像化する工程を含む。画像化部分を、磁気共鳴分光法、X線分光法、または陽電子放出断層撮影(PET)によって画像化することができる。結合は、共有結合または非共有結合であり得る。新生物疾患には、固形腫瘍、血液学的悪性疾患、白血病、結腸直腸癌、乳癌、子宮癌、子宮平滑筋腫、卵巣癌、子宮内膜癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、前立腺癌、前立腺肥大、下垂体癌、腺筋症、腺癌、髄膜腫、黒色腫、骨の癌、多発性骨髄腫、CNS癌、神経膠腫、または星状芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
哺乳動物被験体における癌治療のための薬物候補化合物をスクリーニングする方法であって、治療有効量の薬物候補化合物を癌を有する疑いのある被験体に投与する工程、薬物候補化合物での治療前および治療後に被験体の血液または組織から試験サンプルを得る工程であって、試験サンプルが、腫瘍細胞を含む疑いのある細胞集団を含む、得る工程、試験サンプル中の細胞上のIGF−Iマーカーの存在または不在を検出するための配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、IGF−Iマーカーによって検出される細胞集団を分析して、薬物候補化合物での治療後と比較して、薬物候補化合物での治療前の試験サンプル中の腫瘍細胞を同定する工程を含み、治療前の検体中の腫瘍細胞の数と比較して、治療後の検体中の腫瘍細胞の数の減少が、哺乳動物被験体の癌治療における薬物候補化合物の有効性を示す、方法。
【0031】
別の態様では、哺乳動物被験体の癌治療のための薬物候補化合物をスクリーニングする方法は、試験サンプル中の細胞上のIGF−IIマーカーおよびIGF−Iマーカーの存在または不在を検出するための配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、およびIGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーによって検出される細胞集団を分析して、薬物候補化合物での治療後と比較して薬物候補化合物での治療前の試験サンプル中の腫瘍細胞を同定する工程を含み、治療前の検体中の腫瘍細胞の数と比較して、治療後の検体中の腫瘍細胞の数の減少が、哺乳動物被験体の癌治療における薬物候補化合物の有効性を示す。癌は、転移癌または早期癌であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
詳細な説明
本発明は、一般に、哺乳動物被験体の新生物疾患の治療のための抗体組成物および方法に関する。本発明は、さらに、哺乳動物被験体の新生物疾患の診断方法に関する。抗体組成物は、インスリン様成長因子Iに結合する単離モノクローナル抗体である。別の抗体組成物組は、インスリン様成長因子Iに結合し、インスリン様成長因子IIと交差反応性を示すか結合するモノクローナル抗体である。単離モノクローナル抗体は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウサギ、ラット、またはマウス抗体である。インスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体組成物は、例えば、m705およびm706である。インスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIの両方に結合する単離ヒトモノクローナル抗体組成物は、m708およびm708.2である。モノクローナル抗体m705、m706、m708、およびm708.2は、ヒトインスリンに結合しない。
【0033】
インスリン様成長因子(IGF)は、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスの調節で役割を果たす分裂促進因子である。IGFの影響は、インスリン様成長因子受容体(IGF−1R)によって媒介される。インスリン様成長因子I(IGF−I)およびインスリン様成長因子II(IGF−II)は、I型インスリン様成長因子受容体(IGF−1R)への結合を介した影響を媒介する。IGF−1Rは、多数の腫瘍によって過剰発現され、増殖、運動性、およびアポトーシスからの防御を媒介する。腫瘍によって過剰発現されるその主なリガンドは、IGF−Iである。IGF−1R媒介シグナル伝達の阻害は、細胞外標的または細胞内標的で起こり得る。細胞外IGFはIGF−1Rに結合し、活性化チロシンキナーゼがPBキナーゼ/AktおよびMAPK経路を含むシグナル伝達経路によって媒介される増殖および細胞生存を増強する。IGF−1Rの阻害は、細胞外および細胞内の両方にて複数のレベルで起こり得る。LeRoith D、Helman L、Cancer Cell 5:201−202、2004年。
【0034】
IGF−Iのその受容体への結合の阻害により、細胞増殖に必要なシグナル伝達を阻害することができる。抗体ヒトナイーブファージライブラリーのスクリーニングにより、IGF−Iに特異的であるが、IGF−IIおよびインスリンと交差反応しない2つの抗体(m705およびm706)を同定した。2つの抗体m708およびm708.2は、IGF−IおよびIGF−IIと交差反応する。M708は、IGF−Iに対して結合親和性が最も高く、IgGに変換された。全ての抗体は、IGF−IおよびIGF−IIの受容体(IGF−1R)結合を競合した。IgGm708は、1nMのIC50にてMCF−7乳癌細胞株中でIGF−1Rによって媒介されたシグナル伝達を強く阻害した。阻害機構は、IGF−IIの結合についてIGF−1Rを打ち負かすことによって起こる。これは、IGF−Iに対する高nMレンジの親和性と一致する。これらの抗体は、癌治療に関する癌の治療上の処置および診断アッセイの両方に有用である。
【0035】
本発明が、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生体系に制限されず、勿論、変化させることができると理解すべきである。本明細書中で使用した専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図しないとも理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、明確に別なふうに占めされない限り、単数形「a」、「an」、および「the」には、複数形が含まれる。したがって、例えば、「細胞」への言及には、2つまたはそれを超える細胞の組合せなどが含まれる。
【0036】
量および一時的持続時間などの測定可能な値をいう場合、本明細書中で使用される、用語「約」は、かかる値が開示の方法を実施するのに適切な場合、既定値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を含むことを意味する。
【0037】
他で定義しない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本明細書中に記載の方法および材料に類似するか等価な任意の方法および材料を本発明の試験の実施で使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書中に記載する。本発明における説明および特許請求の範囲では、以下の専門用語を使用する。
【0038】
「患者」、「被験体」、または「哺乳動物」は、交換可能に選択され、哺乳動物(ヒト患者および非ヒト霊長類など)、実験動物(ウサギ、ラット、およびマウスなど)、および他の動物をいう。動物には、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物および非哺乳動物(ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリなど)、両生類、および爬虫類)が含まれる。
【0039】
「治療(Treating)」または「治療(treatment)」には、疾患の症状、合併症、または生化学的徴候の発症の防止、疾患、容態、または障害(例えば、癌、転移癌、または転移乳癌)の症状の緩和、そのさらなる発症の停止または阻害のための本発明の抗体組成物、化合物、または薬剤投与が含まれる。治療は、予防的(疾患の発症の防止もしくは遅延またはその臨床的または亜臨床的症状の発症の防止)であるか、疾患発症後の症状の治療的抑制または緩和であり得る。
【0040】
「癌」または「悪性疾患」を同義語として使用し、これは、無制限の細胞の異常な増殖、罹患細胞が局所または血流およびリンパ系から身体の他の部分に拡大する(すなわち、転移する)能力ならびに多数の特徴的構造および/または分子の特徴のいずれかによって特徴づけられる多数の疾患のいずれかをいう。「癌の」または「悪性細胞」は、特定の構造的特徴、分化の欠如、ならびに浸潤および転移能力を有する細胞と理解される。癌の例は、乳癌、肺癌、脳腫瘍、骨肉腫、肝臓癌、腎臓癌、結腸癌、および前立腺癌である(編者:DeVitaら、Cancer PrinciplesおよびPractice of Oncology、第6版、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、PA、2001年(本引例は、全ての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0041】
「癌関連」は、対象細胞における悪性疾患の発症に対する核酸およびその発現もしくはその欠如、またはタンパク質およびそのレベルもしくは活性またはその欠如の関係をいう。例えば、癌は、発現しないか、正常で健康な細胞中よりも低いレベルで発現する特定の遺伝子の発現に関連し得る。逆に、癌関連遺伝子は、悪性細胞(または形質転換された細胞)で発現しないか、正常で健康な細胞中での発現よりも悪性細胞中で低いレベルで発現する遺伝子であり得る。
【0042】
癌の文脈では、用語「形質転換」は、悪性となるように正常な細胞が受ける変化をいう。真核生物では、用語「形質転換」を使用して、細胞培養における正常細胞の悪性細胞への変換を説明することができる。
【0043】
「増殖細胞」は、活発に細胞分裂し、指数関数的に成長する細胞である。「細胞増殖制御不能」は、通常では必ず細胞分裂が適切に制限される細胞周期の制御を失った細胞の性質をいう。かかる制御を失った細胞は、刺激性のシグナルを利用することなく正常よりも速く増殖し、阻害シグナルに応答しない。
【0044】
「進行癌」は、もはや原発性腫瘍部位に局在しない癌またはAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)によるIII期またはIV期の癌を意味する。
【0045】
「十分に許容される」は、処置の結果として生じ、治療法の決定に影響を及ぼす健康状態の有害な変化が存在しないことをいう。
【0046】
「転移性」は、免疫欠損マウスの乳房脂肪体および/または循環への注射の際の免疫欠損マウスの肺、肝臓、骨、または脳に続発性の腫瘍病変を確立することができる腫瘍細胞(例えば、ヒト乳癌細胞)をいう。
【0047】
「非転移性」は、乳房脂肪体および/または循環への注射の際に免疫欠損マウスにおける肺、肝臓、骨、もしくは脳、または乳癌転移物の他の標的器官中に続発性腫瘍病変を確立することができない腫瘍細胞(例えば、ヒト乳癌細胞)をいう。非転移物として本明細書中で使用され、且つ本明細書中で取り組んだヒト腫瘍細胞は、免疫欠損マウスの乳房脂肪体への注射の際に原発性腫瘍を確立することができるが、原発性腫瘍から拡大することができない。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「リンパ球」は、当該分野の通常の意味を有し、血液、リンパ、およびリンパ様組織中で見出される任意の単核の非食作用白血球(例えば、Bリンパ球およびTリンパ球)をいう。
【0049】
本明細書中で使用される、用語「ポリペプチドフラグメント」は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端が欠失しているが、残りのアミノ酸配列は、例えば、全長cDNA配列から推定された天然に存在する配列中の対応する位置と同一であるポリペプチドをいう。フラグメントは、典型的には、少なくとも5、6、8、または10アミノ酸長、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長、通常少なくとも50アミノ酸長、さらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。本明細書中で使用される場合、用語「アナログ」は、推定アミノ酸配列の一部と実質的に同一であり、少なくとも1つの以下の性質:(1)安定な結合条件下でのIGF−IまたはIGF−IIへの特異的結合、(2)IGF−IまたはIGF−IIのIGF−I受容体への結合を遮断する能力、または(3)インビトロまたは生体内でのIGF−I発現細胞またはIGF−II発現細胞の成長を阻害する能力を有する少なくとも25アミノ酸のセグメントからなるポリペプチドをいう。典型的には、ポリペプチドアナログは、天然に存在する配列に関して保存的アミノ酸置換(または付加もしくは欠失)を含む。アナログは、典型的には、少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50アミノ酸長以上であり、しばしば、全長の天然に存在するポリペプチドほどの長さであり得る。
【0050】
ペプチドアナログは、テンプレートペプチドに類似の性質を有する非ペプチド薬として製薬産業で一般に使用されている。これらの非ペプチド化合物型は、「ペプチド模倣物(peptide mimetics)」または「ペプチド模倣物(peptidomimety)」と命名されている。Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986年);VeberおよびFreidinger、TINS p.392(1985年);およびEvansら、J.Med.Chem.30:1229(1987年)(本明細書中で参考として援用される)。かかる化合物は、しばしば、コンピュータ化した分子モデリングを使用して構築される。治療的に有用なペプチドに構造が類似のペプチド模倣物を使用して、類似の治療効果または予防効果を得ることができる。一般に、ペプチド模倣物は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理学的活性を有するポリペプチド)(ヒト抗体など)と構造が類似しているが、当該分野で周知の方法によって、−CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−、および−CHSO−からなる群から選択される結合に任意選択的に置換される1つまたは複数のペプチド結合を有する。コンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の同型のD−アミノ酸への体系的置換(例えば、D−リジンへのL−リジンの置換)を使用して、より安定なペプチドを生成することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異型を含む制約されたペプチドを、当業者に公知の方法(例えば、ペプチドを環状化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基の付加)によって生成することができる(RizoおよびGierasch、Ann.Rev.Biochem.61:387(1992年)(本明細書中で参考として援用される)。
【0051】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的に同一」は、デフォルトギャップウェイトを使用してプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントした場合、2つのペプチド配列が少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族水酸基の側鎖を有するアミノ酸群はセリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0052】
本明細書中で考察されるように、アミノ酸配列の変動を少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%相同に維持する場合、抗体分子または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列の変動が小さく、本発明に含まれることが意図される。特に、保存的アミノ酸置換が意図される。保存的アミノ酸置換は、全相同性に対するものではなく、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%相同に維持することができる。保存的置換は、その側鎖に関連するアミノ酸ファミリー内で起こるものである。遺伝子コードされたアミノ酸は、一般に、以下のファミリーに分類される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、ならびに(4)無電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは、以下である。セリンおよびトレオニンは脂肪族ヒドロキシファミリーである。アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリーである。アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは脂肪族ファミリーである。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンからイソロイシンまたはバリン、アスパラギン酸からグルタミン酸、トレオニンからセリンへの単独の置換、またはアミノ酸から構造的に関連するアミノ酸への類似の置換が、特に、置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を含まない場合に、得られた分子の結合または性質に大きな影響を及ぼさないと予想することが妥当である。アミノ酸の変化によって機能的ペプチドが得られるかどうかを、ポリペプチド誘導体の特定の活性のアッセイによって容易に決定することができる。アッセイを、本明細書中に詳述する。当業者は、抗体分子または免疫グロブリン分子のフラグメントまたはアナログを容易に調製することができる。フラグメントまたはアナログの好ましいアミノ末端およびカルボキシル末端は、機能ドメインの境界付近に生じる。構造ドメインおよび機能ドメインを、ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列データと公的または独自の配列データベースとの比較によって同定することができる。好ましくは、コンピュータ化された比較方法を使用して、公知の構造および/または機能の他のタンパク質中で起こる配列モチーフまたは予想されるタンパク質の高次構造ドメインを同定する。公知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列の同定方法は公知である。Bowieら、Science 253:164(1991年)。したがって、上記の例は、当業者が本発明の構造ドメインおよび機能ドメインを定義するために使用することができる配列モチーフおよび構造の高次構造を認識することができることを証明している。
【0053】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させる置換、(2)酸化に対する感受性を減少させる置換、(3)タンパク質複合体形成に対する結合親和性を変化させる置換、(4)結合親和性を変化させる置換、(5)このようなアナログの他の物理化学的または機能的性質を付与するか改変する置換である。アナログには、天然に存在するペプチド配列以外の配列の種々のムテインが含まれる。例えば、天然に存在する配列(好ましくは、分子内接触するドメインの外側のポリペプチドの一部)中に1つまたは複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)を行うことができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造の特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸が親配列で起こるらせんを破壊することや親配列を特徴づける他の二次構造型を破壊する傾向があるべきではない)。当該分野で認識されているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins,StructuresおよびMolecular Principles(編者:Creighton、W.H.FreemanおよびCompany、New York(1984年));Introduction to Protein Structure(編者:C.BrandenおよびJ.Tooze、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991年));およびThorntonら、Nature 354:105(1991年)(それぞれ本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0054】
「抗体」または「抗体ペプチド」は、インタクトな抗体、またはインタクトな抗体と特定の結合を競合するその結合フラグメントをいう。結合フラグメントを、組換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によって産生する。結合フラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、および単鎖抗体が含まれる。インタクトな抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中で、HCVRまたはVHと略す)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH、CH、およびCH)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中で、LCVRまたはVと略す)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C)から構成される。VおよびV領域を、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が点在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分類することができる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で整列した3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主組織または因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)が含まれる)への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。用語「抗体」には、IGF−IまたはIGF−IIに結合する能力を保持するインタクトな抗体の抗原結合部分が含まれる。結合の例には、以下が含まれる:(i)Fabフラグメント(V、V、C、およびCH1ドメインからなる1価のフラグメント、(ii)F(ab’)フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結した2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント)、(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら、Nature 341:544−546、1989年)、および(vi)単離相補性決定領域(CDR)。
【0055】
「二重特異性」または「二重機能性」抗体以外の抗体は、その各合部位が同一であると理解される。抗体は、過剰な抗体によって受容体の対抗受容体への結合量が、(インビトロ競合結合アッセイで測定した場合)少なくとも約20%、40%、60%、または80%、より通常には約85%を超えて減少する場合、受容体の対抗受容体への接着が実質的に阻害される。
【0056】
「Fab抗体」または「Fabフラグメント」は、免疫グロブリン定常領域の全てまたは一部を欠き、且つ抗体のFab領域を含む抗体フラグメントをいう。Fab抗体を、本明細書中に記載のように調製する。
【0057】
「単鎖抗体」または「単鎖Fv(scFv)」は、Fvフラグメントの2つのドメイン(VおよびV)の抗体融合分子をいう。Fvフラグメントの2つのドメイン(VおよびV)は個別の遺伝子にコードされるにもかかわらず、組換え法を使用して合成リンカーによって連結して1つのタンパク質鎖にし、それにより、VおよびV領域が対合して1価の分子(単鎖Fv(scFv)としても公知)を形成することができる(例えば、Birdら、Science 242:423−426、1988年;およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879−5883、1988年を参照のこと)。かかる単鎖抗体は用語「抗体」フラグメントに含まれ、これを、インタクトな抗体の組換え技術または酵素的切断もしくは化学的切断によって調製することができる。
【0058】
「ヒト配列抗体」には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域(存在する場合)を有する抗体が含まれる。本発明のヒト配列抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的変異誘発または生体内での体細胞変異によって導入される変異)。例えば、PCT公開番号WO01/14424号およびWO00/37504号に記載のように、かかる抗体を、非ヒトトランスジェニック動物に生成することができる。しかし、本明細書中で使用される場合、用語「ヒト配列抗体」は、別の哺乳動物種(マウスなど)の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフティングされた抗体(例えば、ヒト化抗体)が含まれることを意図しない。
【0059】
また、組換え免疫グロブリンを産生することができる。例えば、Cabillyの米国特許第4,816,567号(その全体および全目的のために本明細書中で参考として援用される)およびQueenら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029−10033、1989年を参照のこと。
【0060】
「モノクローナル抗体」は、単一分子組成の抗体分子調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の抗体特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域(存在する場合)を有する単一の結合親和性を示す抗体をいう。1つの実施形態では、ヒトモノクローナル抗体を、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)から得たB細胞を含むハイブリドーマによって産生する。
【0061】
「ポリクローナル抗体」は、細胞表面受容体またはリガンドに対する1つを超える(2つまたはそれを超える)異なる抗体の調製物(例えば、IGF−I受容体へのIGF−IまたはIGF−II結合)をいう。かかる調製物は、一連の異なるエピトープに結合する抗体を含む。IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体は、IGF−IまたはIGF−II上のエピトープに結合し、IGF−I受容体へのIGF−IまたはIGF−II結合を阻害する。同様に、IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体は、IGF−1受容体に結合し、それにより、IGF−I受容体へのIGF−IまたはIGF−IIの結合を阻害するように作用することができる。本発明での使用に適切なこれらおよび他の抗体を、当該分野で周知であり、そして/または本明細書中に引用した文献に記載の方法にしたがって調製することができる。好ましい実施形態では、本発明で使用した抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体は、「ヒト抗体」(例えば、ヒトから単離された抗体)であるか、「ヒト配列抗体」(前に定義)である。
【0062】
「免疫細胞応答」は、免疫細胞が生化学的に変化し、それにより、免疫細胞の移動、標的細胞の死滅、食作用、抗体、免疫応答の他の可溶性エフェクターの産生などが起こる外部刺激または内部刺激(例えば、抗原、細胞表面受容体、IGF−I、IGF−II、IGF−I受容体、サイトカイン、ケモカイン、および他の細胞)に対する免疫系細胞の応答をいう。
【0063】
「免疫応答」は、癌細胞、転移腫瘍細胞、転移性乳癌細胞、侵入病原体、病原体に感染した細胞または組織、または自己免疫または病理学的炎症の場合、正常なヒト細胞または組織を選択的に損傷するか、破壊するか、ヒトの体内から消失する、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、および補体が含まれる)の共同作用をいう。
【0064】
「Tリンパ球応答」および「Tリンパ球活性」を、Tリンパ球に依存する免疫応答の構成要素(例えば、ヘルパー細胞、細胞傷害性キラー細胞、またはサプレッサーTリンパ球へのTリンパ球の増殖および/または分化、抗体産生を生じるか防止するヘルパーTリンパ球によるBリンパ球へのシグナルの伝達、細胞傷害性Tリンパ球による特定の標的細胞の死滅、ならびに他の免疫細胞の機能を調整するサイトカインなどの可溶性因子の放出)をいうために本明細書中で交換可能に使用される。
【0065】
癌治療
抗体組成物によるIGF−I受容体へのIGF−IまたはIGF−II結合の遮断により、患者癌細胞に対する記憶または分泌性免疫応答を増強することができる。IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体を、免疫原(癌細胞、精製腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、および炭水化物分子が含まれる)、細胞、免疫を刺激するための免疫刺激サイトカインおよび細胞表面抗原をコードする遺伝子を使用するか単独で使用してトランスフェクトした細胞など)と組合せることができる。
【0066】
IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体は、ワクチン接種プロトコールに従った場合、有効である。腫瘍に対するワクチン接種についての多数の実験ストラテジーが考案されている(Rosenberg、ASCO Educational Book Spring:60−62、2000年;Logothetis、ASCO Educational Book Spring:300−302、2000年;Khayat、ASCO Educational Book Spring:414−428、2000年;Foon、ASCO Educational Book Spring:730−738、2000年を参照のこと。Restifoら、Cancer:PrinciplesおよびPractice of Oncology、61:3023−3043、1997年も参照のこと。これらのストラテジーの1つでは、自己腫瘍細胞または同種腫瘍細胞を使用してワクチンを調製する。これらの細胞ワクチンは、腫瘍細胞が導入されてGM−CSFを発現する場合に最も有効であること示されている。GM−CSFは、腫瘍ワクチン接種のための抗原提示の強力なアクチベーターであることが示されている。Dranoffら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、90:3539−43、1993年。
【0067】
IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体は、GMCSF修飾腫瘍細胞ワクチンをブーストし、多数の実験腫瘍モデル(乳癌(Hurwitzら、1998年、上記)、原発性前立腺癌(Hurwitzら、Cancer Research、60:2444−8、2000年)、および黒色腫(van Elsasら、J.Exp.Med.、190:355−66、1999年)など)においてワクチン効率を改善する。これらの例では、非免疫原性腫瘍(B16黒色腫など)は、免疫系による破壊に感受性が与えられた。腫瘍細胞ワクチンを、特にIL12などの他の免疫アクチベーターおよび同時刺激分子を発現するように修飾することもできる。
【0068】
「抗新生物薬」は、ヒトにおける新生物(特に、悪性(癌)病変(癌腫、肉腫、リンパ腫、または白血病など))の発症または進行を阻害する機能的性質を有する薬剤をいうために本明細書中で使用される。転移の阻害は、しばしば、抗新生物薬の性質である。
【0069】
「固形腫瘍」には、肉腫、黒色腫、癌腫、または他の固形腫瘍癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
「肉腫」は、胎児結合組織のような物質で構成された腫瘍をいい、一般に、線維性または均一な物質中に埋め込まれたぎっしり詰まった細胞から構成される。肉腫には、以下が含まれるが、これらに限定されない:軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉種、アベメシー肉腫、脂肪肉腫、脂肪肉縮、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫、絨毛癌、胎芽性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞性肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫、傍骨肉種、網状赤血球肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、および末梢血管拡張性肉腫(telangiectatic sarcoma)。
【0071】
「黒色腫」は、皮膚および他の器官のメラノサイト系から生じる腫瘍をいう。黒色腫には、例えば、末端部黒子黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫(subungal melanoma)、および表在性黒色腫が含まれる。
【0072】
「癌腫」は、周辺組織に浸潤して転移する傾向のある上皮細胞から構成される悪性の新規の成長をいう。例示的な癌腫には、例えば、小葉癌(acinar carcinoma)、小葉癌(acinous carcinoma)、腺嚢性腺癌(adenocystic carcinoma)、腺様嚢胞癌、腺様癌、副腎皮質の腺癌、胞巣状癌、肺胞上皮癌、基底細胞癌、基底細胞癌、類基底細胞癌、基底扁平細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支癌、脳状癌腫、胆管細胞癌、絨毛癌、粘液癌、面皰性乳癌、子宮体部癌、篩状癌(cribriform carcinoma)、鎧状癌、皮膚癌、円筒状癌(cylindrical carcinoma)、円柱細胞癌、管癌、硬性癌、胎児性癌、脳様癌、類上皮癌、腺上皮癌、外方発育癌、潰瘍癌、線維癌、膠様癌、膠状癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌、巨大細胞癌、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母組織癌、血様癌、肝細胞癌、ヒュルツル細胞癌、硝子状癌、副腎癌、乳児型胎児性癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌、クロムペッカー癌(Krompecher’s carcinoma)、クルチツキー細胞癌、大細胞癌、レンズ状癌、レンズ様癌(carcinoma lenticulare)、脂肪腫様癌、リンパ上皮癌、髄様癌、髄様癌、黒色癌、軟性癌、粘液癌、粘液分泌癌、粘液細胞癌、類表皮癌、粘膜癌(carcinoma mucosum)、粘膜癌、粘液腫様癌、鼻咽腔癌(naspharyngeal carcinoma)、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨骨腫、乳頭状癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、有棘細胞癌(prickle cell carcinoma)、軟性癌、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫様癌、シュナイダー癌(schneiderian carcinoma)、スキルス癌、子宮膣部癌(carcinoma scroti)、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、バレイショ状癌、球状細胞癌(spheroidal cell carcinoma)、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平癌(squamous carcinoma)、扁平上皮癌、線状癌(string carcinoma)、血管拡張癌、毛細管拡張癌(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節性癌(carcinoma tuberosum)、結節癌、疣状癌、およびカルシノーマ・ビフロサム(carcinoma viflosum)が含まれる。
【0073】
「白血病」は、血液形成器官の進行性悪性疾患をいい、一般に、白血球ならびに血液および骨髄中のその前駆体の歪められた増殖および発達によって特徴づけられる。白血病は、一般に、以下に基づいて臨床的に分類される:(1)急性または慢性疾患の持続時間および特徴、(2)関連する細胞の型(骨髄性(骨髄性)、リンパ性(リンパ行性)、または単球性)、および(3)血液中の異常細胞数の増加または非増加(白血球性または無白血病性(亜白血病))。白血病には、例えば、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血病性白血病、非白血球性白血病(aleukocythemic leukemia)、好塩基性白血病、芽細胞性白血病(blast cell leukemia)、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、幹細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病(Gross’ leukemia)、毛様細胞白血病、ヘモブラスティック白血病(hemoblastic leukemia)、血球母細胞性白血病(hemocytoblastic leukemia)、組織球性白血病、幹細胞性白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンリンパ性白血病、リンパ性白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核芽球性白血病、小骨芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄性顆粒球性白血病(myeloid granulocytic leukemia)、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病(Naegeli leukemia)、形質細胞性白血病、プラズマ細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーデル球性白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、亜白血病性白血病、および未分化細胞性白血病が含まれる。
【0074】
さらなる癌には、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺癌、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵臓性インスラノーマ(malignant pancreatic insulanoma)、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚病変、睾丸癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、尿生殖路癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、および前立腺癌が含まれる。
【0075】
抗体の構造
基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことが公知である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分により、主にエフェクター機能を担う定常領域が定義される。ヒト軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、抗体のイソ型は、それぞれ、IgM、IgD、IgA、およびIgEとして定義される。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域が約12またはそれを超えるアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖は約10アミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(編者:Paul,W.、第2版、Raven Press、N.Y.(1989年)(全ての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。各軽鎖および/または重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0076】
したがって、インタクトなIgG抗体は2つの結合部位を有する。二機能性抗体または二重特異性抗体を除き、2つの結合部位は同一である。
【0077】
全ての鎖は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を示す。各対の2つの鎖由来のCDRがフレームワーク領域と一列に並び、特異的エピトープと結合することができる。N末端からC末端まで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987年および1991年))またはChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196:901−917(1987年);Chothiaら、Nature 342:878−883(1989年)の定義に従う。
【0078】
二重特異性抗体または二機能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および異なる結合部位を有する人為的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体を、種々の方法(ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結が含まれる)によって産生することができる。例えば、SongsivilaiおよびLachmann Cln.Exp.Immunol.79:315−321(1990年)、Kostelnyら、J.Immunol.148:1547−1553(1992年)を参照のこと。さらに、二重特異性抗体を、「二特異性抗体」として形成することができる(Holligerら、PNAS USA 90:6444−6448、1993年または「Janusins」(Trauneckerら、EMBO J.10:3655−3659、1991年およびTrauneckerら、Int J Cancer 7:51−52、1992年)。二重特異性抗体の産生は、従来の抗体の産生と比較して比較的骨の折れる集中的な過程であり得、二重特異性抗体の収率および純度は、一般に、低い。二重特異性抗体は、1つの結合部位を有するフラグメントの形態(例えば、Fab、Fab’、およびFv)で存在しない。
【0079】
FabまたはscFvファージライブラリー
転移細胞上のリガンドまたは細胞表面受容体(例えば、IGF−I、IGF−II、またはIGF−I受容体)に特異的に結合する抗体組成物を同定するためのファージディスプレイライブラリーアプローチは、Fabまたは単鎖Fv(scFv)ファージライブラリーが使用されている。例えば、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、85:5879−5883、1988年;Chaudharyら、Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.、87:1066−1070、1990年;Zhangら、J.Virol.78:9233−9242、2004年を参照のこと。バクテリオファージコートタンパク質上に提示されたFabまたはscFvライブラリーの種々の実施形態が記載されている。例えば、ファージディスプレイアプローチの改良点も公知である。WO96/06213およびWO92/01047号(Medical Research Councilら。)およびWO97/08320号(Morphosys)(本明細書中で参考として援用される)に記載のように、Fabライブラリーのディスプレイは公知である。例えば、WO92/01047号(CAT/MRC)およびWO91/17271号(Affymax)に記載のように、Fabライブラリーのディスプレイが公知である。
【0080】
ディスプレイベクターにクローン化されたハイブリッド抗体またはハイブリッド抗体フラグメントを、転移細胞に関連する適切な抗原(例えば、転移性腫瘍細胞上の細胞表面受容体に対する細胞表面受容体またはリガンド)に対して選択し、良好な結合活性を維持した変異型を同定することができる。これは、抗体または抗体フラグメントがファージ粒子またはファージミド粒子の表面上に存在するためである。例えば、Barbas III ら、Phage Display、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2001年(その内容が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。例えば、Fabフラグメントの場合、軽鎖および重鎖のFd産物はlacプロモーターの調節下にあり、各鎖は、細菌宿主の細胞膜周辺腔に向かうように融合されたリーダーシグナルを有する。抗体フラグメントが適切にアセンブリするのはこの空間である。重鎖フラグメントは、ファージコートタンパク質ドメインとの融合物として発現し、アセンブリされた抗体フラグメントを新規に作製されたファージ粒子またはファージミド粒子のコート内に組み込むことが可能である。新規のファージミド粒子の生成には、必要とされる全てのファージ遺伝子を含むヘルパーファージを付加する必要がある。一旦抗体フラグメントのライブラリーがファージまたはファージミドの表面上に提示されると、パニングと呼ばれる過程が続く。これは、i)ファージまたはファージミド粒子の表面上にディスプレイされた抗体が所望の抗原に結合し、ii)非結合剤を洗い流し、iii)結合した粒子を抗原から溶離し、iv)溶離した粒子を新鮮な細菌宿主に曝露して、さらなる選択ラウンドのための富化プールを増幅する方法である。典型的には、3または4ラウンドのパニングを行い、その後に特異的結合について抗体クローンをスクリーニングする。この方法では、抗体ディスプレイテクノロジーを非常に首尾よく使用して、ファージ/ファージミド粒子によって結合表現型(抗体)を遺伝子型(DNA)に結合する。しかし、他のベクター形式を、選択および/またはスクリーニングのためのこのヒト化過程(溶解性ファージベクター(修飾T7またはλZap系)への抗体フラグメントライブラリーのクローニングなど)のために使用することができる。
【0081】
所望のハイブリッド抗体および/またはハイブリッド抗体フラグメントの選択後、これらを、当業者に公知の任意の技術(例えば、原核細胞または真核細胞の発現など)によって大量に産生することができることが意図される。例えば、ハイブリッド抗体またはフラグメントを、元の種の抗体結合特異性を保持する必要があるCDRおよび(必要に応じて)可変領域フレームワークの最小部分が元の種の抗体に由来し(本明細書中に記載の技術に従って操作した場合)、抗体の残りの部分が本明細書中に記載のように操作することができる標的種の免疫グロブリンに由来する抗体重鎖をコードする発現ベクターを構築し、それにより、ハイブリッド抗体重鎖の発現のためのベクターが産生するための従来の技術の使用によって産生することができる。
【0082】
詳細な実施形態では、Fabまたは単鎖Fv(scFv)抗体ライブラリーを、種々の癌疾患を有する5、10、15、または20人またはそれを超える患者の末梢血リンパ球から調製することができる。次いで、完全なヒト高親和性FabまたはscFv抗体を、合成シアリルルイスおよびルイスBSA抱合体の使用によって選択することができる。1つの研究では、膵膵臓腺癌細胞の細胞表面上に結合するELISA、BIAcore、およびフローサイトメトリーによって証明したところ、これらのヒトscFv抗体は、シアリルルイスおよびルイスに特異的であった。ヌクレオチド配列決定により、少なくとも4つの固有のscFv遺伝子が得られることが明らかとなった。Kd値は1.1〜6.2×10Mであり、これは、二次免疫応答由来のmAbの親和性に匹敵した。これらの抗体は、炭水化物抗原の構造および機能の探索およびヒト腫瘍疾患の治療で有益な試薬であり得る。Maoら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:6953−6958、1999年。
【0083】
さらに詳細な実施形態では、ファージディスプレイされた組合せ抗体ライブラリーを使用して、転移細胞に関連する適切な抗原(例えば、転移性腫瘍細胞上の細胞表面受容体または細胞表面受容体に対するリガンド)に対する広範な種々の抗体を生成および選択することができる。ファージコートタンパク質pVIIおよびpIXを使用して、抗体Fv領域のヘテロ二量体構造をディスプレイすることができる。本テクノロジーの態様を拡大して、糸状バクテリオファージのpIX上にディスプレイされた4.5×10メンバーの巨大なヒトFabまたは単鎖Fv(scFv)ライブラリーを構築した。さらに、ライブラリーの多様性、質、および有用性を、6つの異なるタンパク質抗原に対するFabまたはscFvクローンの選択によって証明した。とりわけ、90%を越える選択されたクローンは、わずか3ラウンドのパニング後にその各抗原について正の結合を示した。分析したFabまたはscFvはまた、高親和性であることも見出された。例えば、速度分析(BIAcore)により、ブドウ球菌エンテロトキシンBおよびこれら毒素Bサブユニットに対するFabまたはscFvがそれぞれナノモルおよびナノモル以下の解離定数を有し、免疫化から得たmAbに匹敵するかそれを越える親和性が付与されることが明らかとなった。2つの間の配列相同性が80%超であるにもかかわらず、非常に離れたタンパク質間だけでなく、より密接に関連するタンパク質(例えば、トウゴマ(「リシン」)凝集素(RCA60およびRCA120))の場合にも高特異性が達成された。結果により、pIXディスプレイライブラリーの能力が、pIIIディスプレイ形式の能力を潜在的に越え、広範な種々の標的抗原のパニングに理想的に適合することが示唆された。Gaoら、Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.99:12612−12616、2001年。
【0084】
抗体または他の結合剤と抗原との間の特異的結合は、少なくとも10−6Mの結合親和性を意味する。好ましい結合剤は、少なくとも約10−7M、より好ましくは10−8M〜10−9M、10−10M、10−11M、または10−12Mの親和性で結合する。用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができる抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面系列からなり、通常、特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。変性溶媒の存在下で後者ではなく前者への結合が喪失するという点で、高次構造および非高次構造のエピトープを区別する。
【0085】
「エピトープ」は、1つまたは複数の抗体またはT細胞受容体の抗原結合領域で抗体またはT細胞受容体によって認識および結合することができる任意の分子の一部をいう。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面系列からなり、特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。「エピトープの阻害および/または中和」は、抗体に結合した場合に、生体内、インビトロ、またはin situ、より好ましくは生体内でエピトープを含む分子または生物の生物活性(IGF−IまたはIGF−IIのIGF−I受容体への結合が含まれる)が喪失するエピトープを意図する。抗体は、解離定数が1μM未満、好ましくは100nM未満、最も好ましくは10nM未満である場合に特異的に抗原に結合すると言われている。変性溶媒の存在下で後者ではなく前者への結合が喪失するという点で、高次構造および非高次構造のエピトープを区別する。
【0086】
本発明の抗体ならびにそのフラグメントおよび領域によって認識されるエピトープは、以下のIGF−IまたはIGF−IIのアミノ酸配列のそれぞれまたは両方の少なくとも1つのアミノ酸を含む5つまたはそれを超えるアミノ酸を含むことができ、それにより、本発明の抗体、そのフラグメント、および可変領域によって認識され、そして/またはこれらに結合する、抗IGF−IまたはIGF−II活性を有するIGF−IまたはIGF−IIの組織分布的または三次元のエピトープが得られる。IGF−IまたはIGF−II中和および/または結合活性を決定するためのスクリーニング方法も本発明中に提供する。本発明の文脈では、抗IGF−Iまたは抗IGF−II中和活性またはIGF−IまたはIGF−II阻害活性は、IGF−IまたはIGF−II中和化合物がIGF−IまたはIGF−IIの少なくとも1つの生物活性を遮断する能力(IGF−IまたはIGF−IIのIGF−I受容体への結合の防止、細胞内プロセシング(生物活性IGF−IまたはIGF−IIの転写、翻訳、または翻訳後修飾、細胞表面上の発現、分泌、またはアセンブリなど)によるIGF−IまたはIGF−II産生の遮断など)をいう。さらに、IGF−IまたはIGF−II中和化合物は、代謝経路(IGF−IまたはIGF−II産生の上方制御または下方制御に関与する経路など)の制御の誘導によって作用することができる。あるいは、IGF−IまたはIGF−II中和化合物は、IGF−IまたはIGF−IIに対する細胞感受性を、かかる感受性の減少によって調整することができる。IGF−IまたはIGF−II中和化合物を、抗体またはそのフラグメントもしくは一部からなる群から選択することができ、本発明にしたがって使用する場合、IGF−IまたはIGF−II活性をインビトロ、in situ、または生体内で中和するペプチド、ペプチド模倣化合物、または有機模倣化合物を、IGF−IまたはIGF−II中和化合物と見なす。IGF−IまたはIGF−II中和化合物のIGF−IまたはIGF−II中和活性を決定するために使用することができるスクリーニング方法には、インビトロまたは生体内アッセイが含まれ得る。かかるインビトロアッセイには、(i)約4nMまたはそれを超える抗体濃度でのインビトロMCF−7乳癌細胞アッセイでのIGF−I受容体のリン酸化の阻害、(ii)IGF−I受容体へのIGF−I結合またはIGF−II結合の阻害、または(iii)細胞遊走アッセイでの細胞遊走の阻害のためのアッセイが含まれ得る。あるいはまたはさらに、IGF−IまたはIGF−II中和化合物のIGF−IまたはIGF−II中和活性の生体内試験を、本明細書中に記載のように、約4nMまたはそれを超える抗体濃度でのインビトロMCF−7乳癌細胞アッセイでのIGF−I受容体リン酸化の阻害についてのインビトロアッセイを使用して試験することができる。
【0087】
「中和」は、ヒトIGF−IまたはIGF−IIのその受容体(IGF−1R)への結合の防止またはIGF−IまたはIGF−IIのその受容体を介したシグナル伝達(結合が起こるはずである)の阻害によってIGF−IまたはIGF−II活性を阻害する抗体をいう。例えば、MCF−7乳癌細胞のリン酸化アッセイで測定したところ、IGF−IまたはIGF−II活性を90%有効、好ましくは95%有効、最も好ましくは100%有効に阻害する場合、mAbは中和されている。
【0088】
「薬剤」を、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製した抽出物を示すために本明細書中で使用する。
【0089】
「変化した抗体」は、選択した宿主細胞での発現によって得ることができる、変化した免疫グロブリンコード領域によってコードされるタンパク質をいう。かかる変化した抗体は、操作した抗体(例えば、キメラ抗体またはヒト化抗体)または免疫グロブリン定常領域の全部または一部を欠く抗体フラグメント(例えば、Fv、Fab、またはF(ab)など)である。
【0090】
「変化した免疫グロブリンコード領域」は、本発明の変化した抗体をコードする核酸配列をいう。変化した抗体がCDRグラフティング抗体またはヒト化抗体である場合、非ヒト免疫グロブリン由来の相補性決定領域(CDR)をコードする配列を、ヒト可変フレームワーク配列を含む第1の免疫グロブリンパートナーに挿入する。任意選択的に、第1の免疫グロブリンパートナーを、第2の免疫グロブリンパートナーに作動可能に連結する。
【0091】
「高親和性」は、表面プラズモン共鳴によって決定した場合、ヒトIGF−IまたはIGF−IIに対する3.5×1011Mまたはそれ未満のKによって特徴づける結合親和性を有する抗体をいう。
【0092】
「ヒトIGF−IまたはIGF−IIに対する結合特異性」は、ヒトIGF−IまたはヒトIGF−IIに対する高い親和性を意味する。モノクローナル抗体m705およびm706は、ヒトIGF−Iに高い結合親和性を有するが、ヒトインスリンに結合しない。モノクローナル抗体m708およびm708.2は、ヒトIGF−IまたはヒトIGF−IIに対して高い結合特異性を有するが、ヒトインスリンに結合しない。
【0093】
用語Fv、Fc、Fd、Fab、またはF(ab)を、その標準的な意味で使用する(例えば、Harlowら、Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、(1988年)を参照のこと)。
【0094】
「操作抗体」は、選択されたアクセプター抗体の軽鎖および/または重鎖可変ドメインの一部が選択されたエピトープに対して特異性を有する1つまたは複数のドナー抗体由来の類似の部分に置換された変化した抗体の1つの型(すなわち、全長合成抗体(例えば、抗体フラグメントと対立するものとしてのキメラ抗体またはヒト化抗体))を説明する。例えば、かかる分子には、未修飾の軽鎖(またはキメラ軽鎖)と会合したヒト化重鎖またはその逆によって特徴づけられる抗体が含まれ得る。操作抗体を、ドナー抗体の結合特異性を保持するためにアクセプター抗体の軽鎖および/または重鎖可変ドメインのフレームワーク領域をコードする核酸の変化によって特徴づけることもできる。これらの抗体は、アクセプター抗体由来の1つまたは複数のCDR(好ましくは全て)の本明細書中に記載のドナー抗体由来のCDRとの置換を含むことができる。
【0095】
「キメラ抗体」は、アクセプター抗体由来の軽鎖および重鎖の定常領域と会合したドナー抗体由来の天然に存在する可変領域(軽鎖および重鎖)を含む操作抗体の1つの型をいう。
【0096】
「ヒト化抗体」は、非ヒトドナー免疫グロブリン由来のそのCDRを有し、分子の残りの免疫グロブリン由来部分が1つ(または複数)のヒト免疫グロブリンに由来する操作抗体の1つの型をいう。さらに、フレームワーク支持残基を、
結合親和性を保持するように変化させることができる。例えば、Queenら、Proc.Natl Acad Sci USA、86:10029−10032、1989年、Hodgsonら、Bio/Technology、2:421、1991年を参照のこと。
【0097】
「ドナー抗体」は、免疫グロブリンコード領域が変化し、それにより、ドナー抗体に特徴的な抗原特異性および中和活性を有する変化した抗体が発現するように、その可変領域、CDR、または他の機能的フラグメントもしくはそのアナログの核酸配列を第1の免疫グロブリンパートナーに提供する抗体(モノクローナルまたは組換え)をいう。
【0098】
「アクセプター抗体」は、その重鎖および/または軽鎖フレームワーク領域および/またはその重鎖および/または軽鎖定常領域をコードする核酸配列の全て(または任意の部分であるが、好ましくは全て)を第1の免疫グロブリンパートナーに提供する、ドナー抗体と異種の抗体(モノクローナルまたは組換え)をいう。好ましくは、ヒト抗体は、アクセプター抗体である。
【0099】
CDRは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列と定義する。例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版、U.S.Department of HealthおよびHuman Services、National Institutes of Health(1987年)を参照のこと。免疫グロブリンの可変部分中には、3つの重鎖および軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。したがって、本明細書中で使用される場合、「CDR」は3つ全ての重鎖CDRまたは3つ全ての軽鎖CDR(または、適切な場合、全重鎖CDRおよび全軽鎖CDRの両方)をいう。
【0100】
「CDR」は、抗原またはエピトープへの抗体の結合のための接触残基のほとんどを提供する。本発明の目的のCDRは、ドナー抗体の重鎖および軽鎖可変配列に由来し、天然に存在するCDRのアナログが含まれる。アナログはまたは、アナログが由来するドナー抗体と同一の抗原結合特異性および/または中和能力を共有するか保持する。
【0101】
「抗原結合特異性または中和能力の共有」は、例えば、mAb(m705、m706、m708、またはm708.2)を一定レベルの抗原親和性によって特徴づけることができるが、適切な構造環境下でm705、m706、m708、またはm708.2の核酸配列によってコードされるCDRがより低いかより高い親和性を有し得ることを意味する。それにもかかわらず、かかる環境下でのm705、m706、m708、またはm708.2のCDRが元のモノクローナル抗体と同一のエピトープを認識すると予想される。例示的な重鎖CDRには、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7が含まれ、例示的軽鎖CDRには、配列番号2、配列番号4、配列番号6、および配列番号8が含まれる。例えば、表1および2を参照のこと。
【0102】
「機能的フラグメント」は、フラグメントが由来する抗体と同一の抗原結合特異性および/または中和能力を保持する部分的な重鎖または軽鎖可変配列(例えば、免疫グロブリン可変領域のアミノ末端またはカルボキシ末端での軽微な欠失)である。
【0103】
「アナログ」は、少なくとも1つのアミノ酸によって修飾されたアミノ酸配列である。ここで、修飾は、化学的であるか、少数のアミノ酸(すなわち、たった10個)の置換または再構成であり得、修飾により、アミノ酸配列が未修飾配列の生物学的特徴(例えば、抗原特異性および高親和性)を保持可能になる。例えば、CDRコード領域内またはその周囲に一定のエンドヌクレアーゼ制限部位が作製される場合、(サイレント)変異を置換によって構築することができる。
【0104】
アナログは、対立遺伝子の変動としても生じ得る。「対立遺伝子の変動または修飾」は、本発明のアミノ酸またはペプチド配列をコードする核酸配列の変化である。かかる変動または修飾は、遺伝暗号の縮重に起因し得るか、所望の特徴が得られるように意図的に操作することができる。これらの変動または修飾により、任意のコードされたアミノ酸配列が変化しても変化しなくてもよい。
【0105】
「担体因子」または「エフェクター因子」は、ドナー抗体の変化した抗体、および/または天然もしくは合成の軽鎖もしくは重鎖、またはドナー抗体の他のフラグメントを従来の手段によって会合することができる非タンパク質担体分子をいう。かかる非タンパク質担体には、診断分野で使用される従来の担体(例えば、ポリスチレンまたは他のプラスチックビーズ、ポリサッカリド(BIAcore(登録商標)(Pharmacia)systemで使用される)または医学分野で有用であり、且つヒトおよび動物への投与で安全な他の非タンパク質物質)が含まれ得る。他のエフェクター因子には、大環状化合物(重金属原子のキレート化用)または放射性同位体が含まれ得る。かかるエフェクター因子は、変化した抗体の半減期を増加させるのにも有用であり得る(例えば、ポリエチレングリコール)。
【0106】
免疫応答成分を、当業者に周知の種々の方法によってインビトロで検出することができる。例えば、(1)細胞傷害性Tリンパ球を、放射性標識した標的細胞とインキュベートし、これらの標的細胞の溶解を放射能の放出によって検出することができ、(2)ヘルパーTリンパ球を、抗原および抗原提示細胞とインキュベートし、サイトカインの合成および分泌を標準的な方法によって測定することができ(Windhagenら、Immunity、2:373−80、1995年)、(3)抗原提示細胞を全タンパク質抗原とインキュベートし、MHC上の抗原提示をTリンパ球活性化アッセイまたは生物物理学的方法のいずれかによって検出することができ(Hardingら、Proc.Natl.Acad.Sci.、86:4230−4、1989年)、(4)肥満細胞をそのFc−ε受容体と架橋する試薬とインキュベートし、ヒスタミン放出を酵素免疫アッセイによって測定することができる(Siraganianら、TIPS、4:432−437、1983年)。
【0107】
同様に、モデル生物(例えば、マウス)またはヒト患者のいずれかにおける免疫応答産物を、当業者に周知の種々の方法によって検出することもできる。例えば、(1)ワクチン接種に反応した抗体産生を、臨床検査で現在使用されている標準的な方法(例えば、ELISA)によって容易に検出することができ、(2)免疫細胞の炎症部位への移動を、皮膚表面を掻爬し、これを滅菌容器に入れて掻爬部位上の移動細胞を捕捉することができ(Petersら、Blood、72:1310−5、1988年)、(3)分裂促進因子または混合白血球反応に応答した末梢血単核球の増殖を、3H−チミジンを使用して測定することができ、(4)PBMC中の顆粒球、マクロファージ、および他の食細胞の食作用を、PMBCを標識粒子と共にウェルに入れることによって測定することができ(Petersら、Blood、72:1310−5、1988年)、そして(5)免疫系細胞の分化を、CD4およびCD8などのCD分子に対する抗体でのPBMCの標識およびこれらのマーカーを発現するPBMC画分の測定によって測定することができる。
【0108】
便宜上、免疫応答を、本発明で、しばしば、「一次」または「二次」免疫応答として記載する。一次免疫応答(「防御」免疫応答とも記載される)は、特定の抗原(例えば、細胞表面受容体、リガンド、IGF−I、IGF−II、またはIGF−I受容体)へのいくつかの最初の曝露(例えば、初期「免疫化」)の結果として個体で得られる免疫応答をいう。かかる免疫化は、例えば、抗原(例えば、抗原を示すか提示するいくつかの病原体による初期感染に由来)へのいくつかの天然の曝露の結果としてか、個体中のいくつかの腫瘍の癌細胞(例えば、転移性乳癌細胞)によって提示される抗原から生じ得る。あるいは、免疫化は、抗原を含むワクチンでの個体のワクチン接種の結果として起こり得る。例えば、ワクチンは、癌細胞(例えば、転移性乳癌細胞)由来の1つまたは複数の抗原を含む癌ワクチンであり得る。
【0109】
一次免疫応答は、経時的に脆弱または減少するようになり、さらに、消失し得るか、少なくとも検出できないほど減少するようになり得る。したがって、本発明はまた、「二次」免疫応答(本明細書中で、「記憶」免疫応答とも記載される)に関する。用語「二次免疫応答」は、一次免疫応答が既に得られた後に個体で誘発される免疫応答をいう。したがって、二次または免疫応答を誘発して、例えば、脆弱または減少しつつある既存の免疫応答を増強するか、消失したかもはや検出できない以前の免疫応答を再生することができる。二次免疫応答を誘発するために投与することができる薬剤は、一次免疫応答を「高める」ということができるので、以後、「追加免疫」という。
【0110】
例として(制限されない)、二次免疫応答を、一次免疫応答を誘発した抗原の個体への再導入(例えば、ワクチンの再投与)によって誘発することができる。しかし、抗原に対する二次免疫応答を、実際の抗原を含むことができない他の薬剤の投与によって誘発することもできる。例えば、本発明は、個体へのIGF−IまたはIGF−IIに対する抗体の投与によって二次免疫応答を増強する方法を提供する。かかる方法では、実際の抗原は、必ずしもIGF−IまたはIGF−IIに対する抗体と共に投与する必要はなく、抗体を含む組成物は必ずしも抗原を含む必要はない。二次免疫応答または記憶免疫応答は、体液性(抗体)応答または細胞応答のいずれかであり得る。二次または記憶体液性応答は、最初の抗原提示で生成された記憶B細胞の刺激の際に起こる。遅延型過敏(DTH)反応は、CD4細胞によって媒介される細胞性二次または記憶免疫応答型である。抗原への第1の曝露により、免疫系が初回刺激され、さらなる曝露によってDTHが起こる。
【0111】
「免疫学的交差反応性」または「免疫学的反応性」は、同一(「免疫学的反応性」)または異なる(「免疫学的交差反応性」)抗原を使用して生成された抗体と特異的反応性を示す抗原をいう。一般に、抗原は、IGF−I、IGF−II、もしくはIGF−I受容体、またはそのサブシーケンスである。
【0112】
「免疫学的反応条件」は、抗原の特定のエピトープに対して生成された抗体が、実質的に他の全てのエピトープへの結合よりも検出可能に高い程度に(一般に、上記バックグラウンド結合の少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドの少なくとも5倍)エピトープに結合可能な条件をいう。免疫学的反応条件は、抗体結合反応形式に依存し、典型的には、免疫アッセイプロトコールで使用される条件である。免疫アッセイの形式および条件の説明については、HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、New York、1988年を参照のこと。
【0113】
「細胞表面受容体」は、シグナルを受け、かかるシグナルを細胞の原形質膜を通して伝達することができる分子および分子の複合体をいう。本発明の「細胞表面受容体」の例は、転移細胞上のIGF−I受容体である。
【0114】
「非特異性T細胞活性化」は、その抗原特異性と無関係のT細胞の刺激をいう。
【0115】
「エフェクター細胞」は、免疫応答の認識および活性化期と対照的な免疫応答のエフェクター期に関与する免疫細胞をいう。例示的な免疫細胞には、骨髄またはリンパ起源の細胞(例えば、リンパ球(例えば、B細胞およびT細胞(細胞傷害性T細胞(CTL)が含まれる)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、肥満細胞、および好塩基球)が含まれる。エフェクター細胞は、特定のFe受容体を発現し、特異的免疫機能を実施する。エフェクター細胞は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導することができる(例えば、ADCCを誘導することができる好中球)。例えば、FcαRを発現する単球、マクロファージ、好中球、好酸球、およびリンパ球は、標的細胞の特異的死滅および免疫系の他の成分への抗原提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。エフェクター細胞は、標的抗原、標的細胞、転移性癌細胞、または微生物を貪食することもできる。
【0116】
「標的細胞」は、本発明のAbまたはAb組成物によってターゲティングすることができる被験体(例えば、ヒトまたは動物)における任意の望ましくない細胞をいう。標的細胞は、ヒトIGF−I受容体を発現または過剰発現する細胞であり得る。ヒトIGF−I受容体を発現する細胞には、腫瘍細胞(例えば、乳癌細胞または転移性乳癌細胞)が含まれ得る。
【0117】
抗体組成物の転移性癌細胞(例えば、転移性乳癌細胞)のための目的の標的には、細胞表面受容体、成長因子受容体、IGF−I、IGF−II、IGF−I受容体(例えば、Burtrum D.ら、Cancer Res.、63:8912−8921、2003年;Luら、J.Biol.Chem.279:2856−2865、2004年;Miyamotoら、Clin.Cancer Res.11:3494−3502、2005年;Goyaら、Cancer Research 64:6252−6258、2004年を参照のこと)、抗体(抗イディオタイプ抗体および癌(転移癌および転移性乳癌など)に存在する自己抗体が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。他の標的は、インテグリン、セレクチン、および免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーなどの接着タンパク質である。Springer、Nature、346:425−433、1990年;Osborn、Cell、62:3、1990年;Hynes、Cell、69:11、1992年。目的の他の標的は、成長因子受容体(例えば、FGFR、PDGFR、EGF、her/neu、NGFR、およびVEGF)およびそのリガンドである。他の標的は、Gタンパク質受容体であり、サブスタンスK受容体、アンギオテンシン受容体、α−およびβアドレナリン作動性受容体,セロトニン受容体、およびPAF受容体が含まれる。例えば、Gilman、Ann.Rev.Biochem.56:625−649、1987年を参照のこと。他の標的には、イオンチャネル(例えば、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、カリウムチャネル、多剤耐性を媒介するチャネルタンパク質)、ムスカリン受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、グルタミン酸受容体、およびドーパミン受容体が含まれる(Harpoldの米国特許第5,401,629号および米国特許第5,436,128号を参照のこと)。他の標的は、サイトカイン(インターロイキンIL−1〜IL−13、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、β、およびγ、腫瘍増殖因子β(TGF−β)、コロニー刺激因子(CSF)、および顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)である。編者:Aggrawalら、Human Cytokines:Handbook for Basic & Clinical Research、Blackwell Scientific、Boston、Mass.、1991年を参照のこと。他の標的は、ホルモン、酵素、ならびに細胞内および細胞間メッセンジャー(アデニルシクラーゼ、グアニルシクラーゼ、およびホスホリパーゼCなど)である。薬物も目的の標的である。標的分子は、ヒト、哺乳動物、または細菌の分子であり得る。他の標的は、抗原(ウイルスおよび細菌の両方の微生物病原体由来のタンパク質、糖タンパク質、および炭水化物など)および腫瘍である。さらなる他の標的は、米国特許第4,366,241号(その全体および全ての目的のために本明細書中で参考として援用される)に記載されている。標的によってスクリーニングされるいくつかの薬剤は、単に標的に結合する。他の薬剤は、標的をアゴナイズまたはアンタゴナイズする。
【0118】
抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体の組合せ発現
本明細書中に記載の教示に基づいた公知の技術を使用した本発明にしたがって、IGF−1RへのIGF−IまたはIGF−II結合を阻害する組換えヒト抗体を提供する。例えば、編者:Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley Interscience、N.Y.(1987、1992、1993年);およびSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)(その内容全体が、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0119】
本発明の抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体をコードするDNAは、少なくとも1つの重鎖定常領域(C)、重鎖可変領域(V)、軽鎖可変領域(V)、および軽鎖定常領域(C)をコードするゲノムDNAまたはcDNAであり得る。マウスV領域抗原結合フラグメントをコードするDNAの供給源としての染色体遺伝子フラグメントの使用に対する都合の良い代替法は、例えば、Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 84:3439(1987年)およびJ.Immunology 139:3521(1987)(引例全体が本明細書中で参考として援用される)によって報告されたキメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのcDNAの使用である。cDNAの使用には、所望のタンパク質を合成するために、宿主細胞に適切な遺伝子発現エレメントを遺伝子に組合せる必要がある。cDNA配列を適切なRNAスプライシング系を欠く細菌または他の宿主中で発現することができるという点で、cDNA配列の使用は、ゲノム配列(イントロンを含む)よりも有利である。
【0120】
かかるオリゴヌクレオチドを合成するためのかかる技術は周知であり、例えば、Wuら、Prog.Nucl.Acid.Res.Molec.Biol.21:101−141(1978年)および編者:Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley Interscience(1987、1993年)(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。
【0121】
遺伝暗号が縮重するので、1つを超える遺伝暗号を使用して、特定のアミノ酸をコードすることができる(Watsonら、下記)。遺伝暗号を使用して、1つまたは複数の異なるオリゴヌクレオチドを同定することができ、各オリゴヌクレオチドは、アミノ酸をコードすることができるであろう。特定のオリゴヌクレオチドが、実際に、実際の抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体のコード配列を構築する可能性を、抗IGF−IまたはIGF−II抗体またはフラグメントを発現する真核細胞または原核細胞における異常な塩基対合関係および特定のコドンが(特定のアミノ酸をコードするために)実際に使用される頻度を考慮することによって評価することができる。かかる「コドン利用規則(codon usage rules)」は、Latheら、J.Molec.Biol.183:1−12(1985年)に開示されている。Latheの「コドン利用規則」を使用して、抗IGF−IまたはIGF−II可変領域配列または定常領域配列をコードすることができる理論的に「最も起こりそうな」ヌクレオチド配列を含む単一のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド組を同定する。
【0122】
単一のオリゴヌクレオチドのみによってアミノ酸配列をコードすることができる場合があるが、類似のオリゴヌクレオチド組のいずれかによってアミノ酸をコードすることができる場合が多い。重要には、この組の全メンバーがペプチドフラグメントをコードすることができるオリゴヌクレオチドを含み、したがって、ペプチドフラグメントをコードする遺伝子と同一のオリゴヌクレオチド配列を潜在的に含むのに対して、これらの組のたった1つのメンバーが遺伝子のヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列を含む。このメンバーは組内に存在し、且つ組の他のメンバーの存在下でさえもDNAとハイブリッド形成することができるので、タンパク質をコードする遺伝子をクローニングするために単一のオリゴヌクレオチドを使用するのと同一の様式で、分画されていないオリゴヌクレオチド組を使用することが可能である。
【0123】
抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体またはフラグメント(可変領域または定常領域が含まれる)をコードすることができる理論的に「最も起こりそうな」配列を含むオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド組を使用して、「最も起こりそうな」配列または配列組とハイブリッド形成することができる相補オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド組の配列を同定する。かかる相補配列を含むオリゴヌクレオチドをプローブとして使用して、可変領域または定常領域の抗IGF−Iまたは抗IGF−II遺伝子を同定および単離することができる(Sambrookら、下記)。
【0124】
可変または定常抗IGF−Iまたは抗IGF−II領域のフラグメントをコードすることができる(またはかかるオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド組に相補的な)適切なオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド組を同定し(上記手順を使用)、合成し、当該分野で周知の手段によって、DNA、より好ましくは、抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体またはその可変領域もしくは定常領域を発現することができる細胞由来のcDNA調製物とハイブリッド形成する。「最も起こりそうな」可変または定常抗IGF−Iまたは抗IGF−II領域ペプチドコード配列に相同な一本鎖オリゴヌクレオチド分子を、当業者に周知の手順を使用して合成することができる(Belagajeら、J.Biol.Chem.254:5765−5780(1979年);Maniatisら、In:Molecular Mechanisms in the Control of Gene Expression、編者:Nierlichら、Acad.Press、NY(1976年);Wuら、Prog.Nucl.Acid Res.Molec.Biol.21:101−141(1978年);Khorana、Science 203:614−625(1979年))。さらに、自動化合成機の使用によってDNAを合成することができる。核酸ハイブリッド技術は、Sambrookら、(下記)およびHayrnesら、(In:Nucleic Acid Hybridization、A Practical Approach、IRL Press、Washington、DC(1985年))(引例が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。上記技術などまたはこれに類似の技術により、ヒトアルデヒドデヒドロゲナーゼの遺伝子(Hsuら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3771−3775(1985年))、フィブロネクチン(Suzukiら、Bur.Mol.Biol.Organ.J.4:2519−2524(1985年))、ヒトエストロゲン受容体遺伝子(Walterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:7889−7893(1985年))、組織型プラスミノゲンアクチベーター(Pennicaら、Nature 301:214− 221(1983年))、ヒト満期(term)胎盤アルカリホスファターゼ相補DNA(Keunら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8715−8719(1985年))を首尾よくクローニングすることができた。
【0125】
抗IGF−Iまたは抗IGF−II可変領域または定常領域をコードするポリヌクレオチドの別のクローニング方法では、発現ベクターのライブラリーを、DNA、より好ましくはcDNA(抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体または可変領域もしくは定常領域を発現することができる細胞由来)の発現ベクターへのクローニングによって調製する。次いで、ライブラリーを、IGF−1Rへの抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体(m705,m706,m708,またはm708.2など)の結合を競合的に阻害し、抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体またはそのフラグメントと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができるヌクレオチド配列を有するタンパク質を発現することができるメンバーについてスクリーニングする。この実施形態では、DNA、より好ましくはcDNAを、抗IGF−Iまたは抗IGF−II抗体またはフラグメントを発現することができる細胞から抽出および精製する。精製したcDNAを断片化して(剪断、エンドヌクレアーゼ消化など)、DNAまたはcDNAフラグメントのプールを産生する。次いで、このプール由来のDNAまたはcDNAフラグメントを発現ベクターにクローニングして、各メンバーがλファージライブラリー中などに固有のクローン化DNAまたはcDNAフラグメントを含む、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、哺乳動物、酵母、昆虫、または真菌)中での発現のための発現ベクターのゲノムライブラリーを産生する。例えば、Ausubel、下記、Harlow、下記、Colligan、下記;Nyyssonenら、Bio/Technology 11:591−595(Can 1993年);Marksら、Bio/Technology 11:1145−1149、1993年を参照のこと。一旦かかる可変または定常抗IGF−Iまたは抗IGF−II領域をコードする核酸が単離されると、核酸を、核酸をコードする他の定常または可変重鎖または軽鎖と共に宿主細胞中で適切に発現し、それにより、阻害活性を有するIGF−IまたはIGF−IIに結合する組換えMAbを得ることができる。かかる抗体は、好ましくは、抗原結合を担う相補決定残基を有するフレームワーク残基を含むマウスまたはヒト抗IGF−Iまたは抗IGF−II可変領域を含む。好ましい実施形態では、上記核酸によってコードされる抗IGF−Iまたは抗IGF−II可変軽鎖または重鎖は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の少なくとも5アミノ酸のエピトープに結合する。
公知の方法によって、本発明のマウス抗体およびキメラ抗体の定常(C)領域、フラグメント、および領域をコードするヒト遺伝子は、ヒト胎児肝臓ライブラリーに由来し得る。ヒトC領域遺伝子は、任意のヒト細胞(ヒト免疫グロブリンを発現および産生する細胞が含まれる)に由来し得る。ヒトCH領域は、ヒトH鎖の公知のクラスまたはアイソタイプ(γ、μ、α、δ、またはεが含まれる)およびそのサブタイプ(G1、G2、G3、およびG4など)のいずれかに由来し得る。H鎖アイソタイプが抗体の種々のエフェクター機能を担うので、C領域の選択は、所望のエフェクター機能(補体結合または抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性など)によって導かれるであろう。好ましくは、C領域は、γ1(IgG)、γ3(IgG)、γ4(IgG)、またはμ(IgM)に由来する。
【0126】
ヒト抗体および抗体のヒト化
ヒト抗体は、マウスまたはラットの可変領域および/または定常領域を有する抗体に関連する一定の問題を回避する。かかるマウスまたはラット由来タンパク質の存在により、抗体が急速にクリアランスされるか、患者による抗体に対する免疫応答が生じ得る。マウスまたはラット由来抗体の使用を回避するために、ヒト化抗体を構築するか、げっ歯類が完全なヒト配列を有する抗体を産生するようにげっ歯類へのヒト抗体機能の導入によって完全なヒト抗体を生成することができることを前提とした。
【0127】
YAC中でメガ塩基サイズのヒト遺伝子座をクローニングおよび再構築し、これらをマウス生殖系列に導入することができることにより、非常に巨大であるか粗野にマッピングされた遺伝子座の機能的成分の解明およびヒト疾患の有用なモデルの生成に対する強力なアプローチが得られる。さらに、マウス遺伝子座のそのヒト等価物への置換のためのかかるテクノロジーの利用により、発達中のヒト遺伝子産物の発現および調節、他の系との伝達、ならびに疾患の誘導および進行への関与を独自に洞察することができる。
【0128】
かかるストラテジーの重要な実際の適用は、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。外因性Ig遺伝子が不活化されたマウスへのヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座の導入により、抗体のプログラミングされた発現およびアセンブリの基礎をなす機構ならびにB細胞発達におけるその役割を研究する機会が付与される。さらに、かかるストラテジーは、完全なヒトモノクローナル抗体(Mab)の産生のための理想的な供給源(ヒト疾患における抗体療法の期待に応える重要な道標)を提供することができる。完全なヒト抗体は、マウスまたはマウス誘導Mabに固有の免疫原反応およびアレルギー反応を最小にし、それにより、投与した抗体の有効性および安全性を増加させると期待される。完全なヒト抗体の使用は、反復抗体投与が必要な慢性および再発性のヒト疾患(炎症、自己免疫、および癌など)の治療で実質的利点が得られると期待することができる。
【0129】
この目的に対する1つのアプローチは、かかるマウスがマウス抗体の非存在下で豊富なヒト抗体を産生することを期待して、ヒトIg遺伝子座の巨大フラグメントを使用してマウス抗体産生を欠損したマウス株を操作する。巨大なヒトIgフラグメントにより、巨大で変更可能な遺伝子多様性ならびに抗体の産生および発現の適切な調節を保持するであろう。抗体の多様性および選択ならびにヒトタンパク質に対する免疫学的寛容の欠如についてのマウス機構の活用により、これらのマウス株中に再生されたヒト抗体レパートリーから任意の目的の抗原(ヒト抗原が含まれる)に対する抗親和性抗体が得られるはずである。ハイブリドーマテクノロジーを使用して、所望の特異性を有する抗原特異的ヒトMabを容易に産生し、選択することができる。
【0130】
この一般的ストラテジーを、1994年に公開された本発明者らの第1のXenoMouse(商標)株の生成と併せて証明した。Greenら、Nature Genetics 7:13−21、1994年を参照のこと。XenoMouse(商標)株を、コア可変領域および定常領域の配列を含んだヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖系列配置フラグメントをそれぞれ含む酵母人工染色体(YAC)を使用して操作した(同上)。YACを含むヒトIgにより、抗体の再構成および発現についてマウス系に適合することが証明され、不活化マウスIg遺伝子と置換することができた。B細胞構築を誘導して、完全なヒト抗体の成体様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトMabを生成する能力によってこれを証明した。これらの結果により、より多数のV遺伝子、さらなる調節エレメント、およびヒトIg定常領域を含むヒトIg遺伝子座のより大きな部分の導入により、感染および免疫化に対するヒト体液性応答に特徴的な実質的に完全なレパートリーを再現することができることも示唆される。Greenらの研究は、最近、ヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座のメガ塩基サイズの生殖系列配置YACフラグメントの導入によって約80%を超えるヒト抗体レパートリーの導入に拡大して、XenoMouse(商標)マウスを産生した。Mendezら、Nature Genetics 15:146−156、1997年、GreenおよびJakobovits、J.Exp.Med.188:483−495、1998年、および1996年12月3日に出願された米国特許出願第08/759,620号(その開示が、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0131】
かかるアプローチは、1990年1月12日出願の米国特許出願第07/466,008号、1990年11月8日出願の同第07/610,515号、1992年7月24日出願の同第07/919,297号、1992年7月30日出願の同第07/922,649号、1993年3月15日出願の同第08/031,801号、1993年8月27日出願の同第08/112,848号、1994年4月28日出願の同第08/234,145号、1995年1月20日出願の同第08/376,279号、1995年4月27日出願の同第08/430,938号、1995年6月5日出願の同第08/464,584号、1995年6月5日出願の同第08/464,582号、1995年6月5日出願の同第08/463,191号、1995年6月5日出願の同第08/462,837号、1995年6月5日出願の同第08/486,853号、1995年6月5日出願の同第08/486,857号、1995年6月5日出願の同第08/486,859号、1995年6月5日出願の同第08/462,513号、1996年10月2日出願の同第08/724,752号、および1996年12月3日出願の同第08/759,620号でさらに考察および説明されている。Mendezら、Nature Genetics 15:146−156、1997年およびGreenおよびJakobovits、J.Exp.Med.188:483−495、1998年も参照のこと。1996年6月12に付与された欧州特許第EP0463151B1号、1994年2月3日公開の国際特許出願番号WO94/02602号、1996年10月31日公開の国際特許出願番号WO 96/34096号、および1998年6月11日公開のWO 98/24893号も参照のこと。上記で引用した各特許、出願、および引例の開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0132】
別のアプローチでは、他の者(GenPharm International,Inc.が含まれる)は、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチを使用した。ミニ遺伝子座アプローチでは、外因性Ig遺伝子座を、Ig遺伝子座由来の小片(各遺伝子)の封入によって模倣する。したがって、1つまたは複数のV遺伝子、1つまたは複数のD遺伝子、1つまたは複数のJ遺伝子、μ定常領域、および第2の定常領域(好ましくは、γ定常領域)を、動物に挿入するための構築物に形成する。このアプローチは、Suraniらに付与された米国特許第5,545,807号、LonbergおよびKayに付与された米国特許第5,545,806号、同第5,625,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,789,650号、および同第5,814,318号、KrimpenfortおよびBernsに付与された米国特許第5,591,669号、Bernsらに付与された米国特許第5,612,205号、同第5,721,367号、同第5,789,215号、ChoiおよびDunnに付与された米国特許第5,643,763号、1990年8月29日出願のGenPharm国際米国特許出願第07/574,748号、1990年8月31日出願の米国特許出願第07/575,962号、1991年12月17日出願の米国特許出願第07/810,279号、1992年3月18日出願の米国特許出願第07/853,408号、1992年6月23日出願の米国特許出願第07/904,068号、1992年12月16日出願の米国特許出願第07/990,860号、1993年4月26日出願の米国特許出願第08/053,131号、1993年7月22日出願の米国特許出願第08/096,762号、1993年11月18日出願の米国特許出願第08/155,301号、1993年12月3日出願の米国特許出願第08/161,739号、1993年12月10日出願の米国特許出願第08/165,699号、1994年3月9日出願の米国特許出願第08/209,741号、(その開示が、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。欧州特許第0546073B1号、国際特許出願番号WO92/03918号、WO92/22645号、WO92/22647号、WO92/22670号、WO93/12227号、WO94/00569号、WO94/25585号、WO96/14436号、WO97/13852号、およびWO98/24884号(その開示全体が、本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。Taylorら、1992年、Chenら、1993年、Tuaillonら、1993年、Choiら、1993年、Lonbergら、1994年、Taylorら、1994年、およびTuaillonら、1995年、Fishwildら、1996年(その開示全体が、本明細書中で参考として援用される)をさらに参照のこと。
【0133】
Ig遺伝子座を有するトランスジェニックマウスを、ミニ遺伝子座アプローチの使用によって産生した。ミニ遺伝子座アプローチの利点は、迅速にIg遺伝子座の一部を含む構築物を生成し、動物に導入できることである。しかし、同等に、ミニ遺伝子座アプローチの有意な欠点は、理論的には、少数のV、D、およびJ遺伝子の封入によって導入される多様性が不十分であることである。実際、公開された研究では、この懸念を支持するようである。ミニ遺伝子座アプローチの使用によって産生された動物のB細胞の発達および抗体産生は阻害されるようである。したがって、本発明の周辺の研究は、一貫して、より高い多様性を達成し、動物の免疫レパートリーを再構築するために、Ig遺伝子座の大半を導入する傾向にある。
【0134】
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答により、産業においてキメラ抗体または他のヒト化抗体が調製されている。キメラ抗体がヒト定常領域およびマウス可変領域を有する一方で、特に、抗体の慢性または複数回投与の利用において一定のヒト抗キメラ抗体(HACA)応答が認められることが期待される。したがって、HAMAまたはHACA応答の懸念および/または影響を無効にするために、IGF−IまたはIGF−IIに対する完全なヒト抗体を得ることが望ましいであろう。
【0135】
ヒト化およびディスプレイテクノロジー
ヒト抗体生成に関して上記で考察されたように、免疫原性が減少した抗体産生には利点がある。適切なライブラリーを使用したヒト化技術およびディスプレイ技術に関して、これをある程度達成することができる。マウス抗体または他の種由来の抗体を、当該分野で周知の技術を使用してヒト化または霊長類化することができると認識されるであろう。例えば、WinterおよびHarris、Immunol Today 14:43−46、1993年およびWrightら、Crit.Reviews in Immunol 12:125−168、1992年を参照のこと。目的の抗体を、組換えDNA技術によって、C1、C2、C3、ヒンジドメイン、および/またはフレームワークドメインを対応するヒト配列に置換するように操作することができる(WO92/02190号、ならびに米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,792号、同第5,714,350号、および同第5,777,085号を参照のこと)。また、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIgcDNAの使用は、当該分野で公知である(Liuら、PNAS USA 84:3439、1987年およびJ.Immunol.139:3521、1987年)。mRNAを、ハイブリドーマまたは抗体を産生する他の細胞から単離し、これを使用して、cDNAを産生する。目的のcDNAを、特定のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応によって増幅することができる(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号)。あるいは、ライブラリーを作製し、スクリーニングして目的の配列を単離する。次いで、抗体の可変領域をコードするDNA配列を、ヒト定常領域配列に融合する。ヒト定常領域の遺伝子配列を、Kabatら、(1991年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、NIH出版番号:91−3242に見出すことができる。ヒトC領域の遺伝子は、公知のクローンから容易に利用可能である。アイソタイプの選択は、所望のエフェクター機能(補体結合または抗体依存性細胞傷害など)によって導かれるであろう。好ましいアイソタイプは、IgG、IgG、IgG、およびIgGである。特に好ましい本発明の抗体のアイソタイプは、IgGおよびIgGである。いずれかのヒト軽鎖定常領域(κおよびλ)を使用することができる。次いで、キメラヒト化抗体を、従来の方法によって発現する。
【0136】
抗体フラグメント(Fv、F(ab’)、およびFabなど)を、例えば、プロテアーゼまたは化学的切断によるインタクトなタンパク質の切断によって調製することができる。あるいは、短縮遺伝子をデザインする。例えば、F(ab’)フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子には、CH1ドメインおよびH鎖のヒンジ領域をコードするDNA配列、その後に短縮分子を生成するための翻訳終始コドンを含むであろう。
【0137】
1つのアプローチでは、重鎖および軽鎖のJ領域をコードするコンセンサス配列を使用して、その後のヒトC領域セグメントへのV領域セグメントへの連結のためにJ領域に有用な制限部位を導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドをデザインすることができる。C領域のcDNAを、部位特異的変異誘発によって、ヒト配列中の類似の位置に制限部位が配置されるように修飾することができる。
【0138】
発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが含まれる。都合のよいベクターは、機能的に完全なヒトCまたはC免疫グロブリン配列をコードし、任意のVHまたはVL配列を容易に挿入し、発現することができるように操作された適切な制限部位を有するベクターである。かかるベクターでは、通常、挿入されたJ領域中のスプライスドナー部位とヒトC領域に先行するスプライスアクセプター部位との間でスプライシングが起こり、ヒトCHエクソン内で起こるスプライス領域でもスプライシングが起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域下流の未変性染色体部位で起こる。得られたキメラ抗体を、任意の強力プロモーター(レトロウイルスLTR(例えば、SV−40初期プロモーター(Okayamaら、Mol.Cell.Bio.3:280、1983年)、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gormanら、P.N.A.S.79:6777、1982年)、およびマロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedlら、Cell 41:885、1985年)、未変性1gプロモーターなどが含まれる)に連結することができる。
【0139】
さらに、かかる技術が当該分野で周知であるので、ヒト抗体または他の種由来の抗体を、ディスプレイ型テクノロジー(ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボゾームディスプレイ、および当該分野で周知の技術を使用した他の技術が含まれるが、これらに限定されない)によって生成し、得られた分子をさらなる操作(親和性成熟など)に供することができる。WrightおよびHarris、上記、HanesおよびPlucthau、PNAS USA 94:4937−4942、1997年(リボゾームディスプレイ)、ParmleyおよびSmith、Gene 73:305−318、1988年(ファージディスプレイ)、Scott、TIBS 17:241−245、1992年、Cwirlaら、PNAS USA 87:6378−6382、1990年、Russelら、Nucl.Acids Research 21:1081−1085、1993年、Hoganboomら、Immunol.Reviews 130:43−68、1992年、ChiswellおよびMcCafferty、TIBTECH W.80−84、1992年、および米国特許第5,733,743号。ディスプレイテクノロジーを利用してヒトでない抗体を産生する場合、上記のようにかかる抗体をヒト化することができる。
【0140】
これらの技術を使用して、IGF−I発現細胞またはIGF−II細胞、IGF−IまたはIGF−II、またはIGF−IまたはIGF−IIの諸形態(forms)、そのエピトープまたはペプチド、およびその発現ライブラリーに対する抗体を生成することができ(例えば、米国特許第5,703,057号を参照のこと)、その後、上記のように上記の活性についてスクリーニングすることができる。
【0141】
他の療法のデザインおよび生成
本発明によれば、IGF−IまたはIGF−IIに関する本明細書中で産生および特徴づけた抗体の活性に基づいて、他の治療様式(他の抗体、他のアンタゴニスト、または抗体以外の化学的部分が含まれる)のデザインを容易にする。かかる様式には、類似の結合活性または機能性を有する抗体、進歩した抗体治療薬(二重特異性抗体、免疫毒素、および放射性標識治療薬など)、ペプチド治療薬の生成、遺伝子療法(特に、細胞内抗体、アンチセンス治療薬、および小分子)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、上記で考察するように、本発明の抗体のエフェクター機能を、種々の治療で使用するためのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgMへのアイソタイプスイッチングによって変更することができる。
【0142】
進歩した抗体治療薬の生成に関連して、補体結合が所望の特質である場合、例えば、二重特異性物質、免疫毒素、または放射性標識の使用による細胞死滅のための補体の依存を回避することが可能かもしれない。
【0143】
二重特異性抗体に関して、(i)一方がIGF−IまたはIGF−IIに特異性を有し、他方が共に抱合する第2の分子に特異性を有する2つの抗体、(ii)IGF−IまたはIGF−IIに特異的な第1の鎖および第2の分子に特異的な第2の鎖を有する単一の抗体、または(iii)IGF−IまたはIGF−IIに特異性を有する単鎖抗体および他の分子を含む二重特異性抗体を生成することができる。かかる二重特異性抗体を、例えば、(i)および(ii)と共に周知の技術を使用して生成することができる。例えば、Fangerら、Immunol Methods 4:72−81、1994年およびWrightおよびHarris、上記を参照のこと、(iii)に関しては、例えば、Trauneckerら、Int.J.Cancer 7:51−52、1992年を参照のこと。
【0144】
さらに、「κボディ(kappabody)」(I11ら、Protein Eng 10:949−57、1997年)、「ミニボディ(minibody)」(Martinら、EMBOJ.13:5303−9、1994年)、「二特異性抗体」(Holligerら、PNAS USA 90:6444−6448、1993年)、または「ジャヌシン(Janusin)」(Trauneckerら、EMBOJ W.3655−3659、1991年)およびTrauneckerら、Int J Cancer 7:51−52、1992年)も調製することができる。
【0145】
免疫毒素に関して、抗体を、当該分野で周知の技術を使用して、免疫毒素として作用するように修飾することができる。例えば、Vitetta、Immunol Today 14:252、1993年を参照のこと。米国特許第5,194,594号も参照のこと。放射性標識抗体の調製に関して、かかる修飾抗体を、当該分野で周知の技術を使用して、容易に調製することもできる。例えば、Junghansら、Cancer ChemotherapyおよびBiotherapy 655−686(第2版、編者:ChafierおよびLongo、Lippincott Raven、1996年)を参照のこと。米国特許第4,681,581号、同第4,735,210号、同第5,101,827号、同第5,102,990号(再発行第35,500号)、同第5,648,471号、および同第5,697,902号も参照のこと。各免疫毒素および放射性標識分子は、IGF−IまたはIGF−IIを発現する細胞、特に、本発明の抗体が有効な細胞を死滅させる可能性が高いであろう。
【0146】
治療ペプチドの生成に関して、IGF−IまたはIGF−IIおよびその抗体(本発明の抗体など)(小分子に関して以下に考察)に関連する構造情報の利用またはペプチドライブラリーのスクリーニングにより、IGF−IまたはIGF−IIに指向する治療ペプチドを生成することができる。ペプチド治療薬のデザインおよびスクリーニングは、Houghtenら、Biotechniques 13:412−421、1992年、Houghten PNAS USA 82:5131−5135、1985年、Pinallaら、Biotechniques 13:901−905、1992年、BlakeおよびLitzi−Davis、BioConjugate Chem.3:510−513、1992年に関して考察する。抗体に関して上記で考察するようにペプチド部分に関して類似の様式で、免疫毒素および放射性標識分子を調製することができる。
【0147】
抗原への抗体の結合に関する重要な情報を、ファージディスプレイ実験によって収集することができる。一般に、本発明の抗体との結合についてランダムペプチドを発現するファージライブラリーのパニングによってかかる実験を行い、結合するペプチドを単離することができるかどうかを決定する。うまくいけば、結合するペプチドから一定のエピトープ情報を収集することができる。
【0148】
一般に、バクテリオファージM13系に基づいたランダムペプチドを発現するファージライブラリーを、New England Biolabsから購入することができる(7量体および12量体ライブラリー、それぞれ、Ph.D.−7 Peptide 7−mer Library Kit およびPh.D.−12 Peptide 12−mer Library Kit)。7量体ライブラリーは、約2.0×10個の独立クローン(independent clone)の多様性を示し、全てではないがほとんどが20=1.28×10個の有力な7量体配列である。12量体ライブラリーは、を含む。約1.9×10個の独立クローンを含み、20l2=4.1×10l5個の12量体配列の潜在的配列空間の非常に小さなサンプリングのみを示す。各7量体および12量体ライブラリーを、プレートを適切な抗体を捕捉するための抗体(例えば、IgG抗体のためのヤギ抗ヒトIgGFc)でコーティングし、その後に洗浄するという製造者の説明書に従ってパニングおよびスクリーニングする。結合ファージを、0.2Mグリシン−HCl(pH2.2)で溶離する。一定のストリンジェンシー(0.5%Tween)での3ラウンドの選択/増幅後、DNA配列決定の使用により、1つまたは複数の抗体と反応性を示すライブラリー由来のクローンを特徴づけることができる。ペプチドの反応性を、ELISAによって決定することができる。ペプチドのエピトープ分析のさらなる考察については、ScottおよびSmith、Science 249:386−390、1990年;Cwirlaら、PNAS USA 87:6378−6382、1990年;Feliciら、J.Mol.Biol.222:301−310、1991年、およびKuwabaraら、Nature Biotechnology 15:74−78、1997年も参照のこと。
【0149】
従来技術による遺伝子および/またはアンチセンスのデザインも、本発明によって容易になる。かかる様式を、IGF−IまたはIGF−II機能の調整のために利用することができる。これに関して、本発明の抗体により、これに関する機能アッセイが容易にデザインおよび使用される。アンチセンス治療薬のデザインおよびストラテジーは、国際特許出願番号WO94/29444号で詳細に考察されている。遺伝子療法のデザインおよびストラテジーは周知である。しかし、特に、細胞内抗体に関与する遺伝子治療技術の使用は、特に有利であることを証明することができる。例えば、Chenら、Human Gene Therapy 5:595−601、1994年、およびMarasco、Gene Therapy 4:11−15、1997年を参照のこと。遺伝子治療薬に関する一般的デザインおよび考慮すべき事項も、国際特許出願番号WO97/38137号で考察されている。本発明の抗体(mAb(m705、m706、m708、m708.2)または他の抗体など)をコードする遺伝子材料を、適切な発現系(ウイルス、弱毒化ウイルス、非ウイルス、裸の発現系、またはその他)に含め、宿主中の抗体の生体内生成のために宿主に投与することができる。
【0150】
本発明によって小分子治療薬を想定することもできる。薬物を、本発明に基づいて、IGF−IまたはIGF−IIの活性を調整するようにデザインすることができる。IGF−IまたはIGF−II分子の構造および本発明の他の分子(本発明の抗体(IGF−1R)など)との相互作用から収集した知識を利用して、さらなる治療様式を合理的にデザインすることができる。これに関して、X線結晶学、コンピュータ援用(または支援)分子モデリング(CAMM)、定量的または定性的構造−活性関係(QSAR)、および類似のテクノロジーなどの合理的薬物デザイン技術を利用して、創薬することができる。合理的デザインにより、IGF−IまたはIGF−II活性の修飾または調整に使用することができる分子またはその特定の形態と相互作用することができるタンパク質または合成構造を予想することが可能である。かかる構造を、化学合成するか、生体系で発現することができる。このアプローチは、Capseyら、Genetically Engineered Human Therapeutic Drugs(Stockton Press、NY、1988年)で概説されている。実際、公知または説明された他の分子(本発明の抗体など)との構造−活性関係に基づいた分子(ペプチド、ペプチド模倣物、または小分子などのいずれか)の合理的デザインは、一般に、日常的作業となっている。例えば、Fryら、Proc Natl Acad Sci USA 95:12022−7、1998年;Hoffmanら、JMoI Biol 282:195−208、1998年;Ginalskiら、Acta Biochim Pol 44:557−64、1997年;Joukoら、Biochem J 322:927−35、1997年;Singhら、J Med Chem 40:1130−5、1997年;Mandelら、Nat Biotechnol 14:323−8、1996年;Monfardiniら、Proc Assoc Am Physicians 108:420−31、1996年;Furetら、J Comput Aided Mol Des 9:465−72、1995年を参照のこと。
【0151】
さらに、組合せライブラリーをデザインおよび合成し、スクリーニングプログラム(高処理スクリーニングなど)で使用することができる。
【0152】
トランスジェニックマウスにおける抗体の調製
本発明の抗体を、挿入されたゲノムを産生するヒト抗体の実質的部分を有するが、内因性のマウス抗体産生を欠損させているトランスジェニックマウスを利用して調製することが好ましい。次いで、かかるマウスは、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を産生することができ、且つ、マウス免疫グロブリン分子および抗体の産生を欠損されている。しかし、特に、マウスおよびマウス由来の抗体のトランスジェニック産生の好ましい実施形態は、1996年12月3日出願の米国特許出願第08/759,620号(その開示が、本明細書中で参考として援用される)に開示されている。Mendezら、Nature Genetics 15:146−156、1997年(その開示が、本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。
【0153】
かかるテクノロジーの使用により、本発明者らは、種々の抗原に対する完全なヒトモノクローナル抗体を産生した。本質的に、本発明者らは、XenoMouse(商標)マウス株を目的の抗原で免疫化し、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(B細胞など)を回収し、かかる回収した細胞を骨髄型細胞株と融合して、不死ハイブリドーマ細胞株を調製し、かかるハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。本発明者らは、IGF−IまたはIGF−IIに特異的な抗体の調製のために、本発明のこれらの技術を利用した。ここに、本発明者らは、IGF−IまたはIGF−IIに特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株の産生を記載する。さらに、本発明者らは、かかる細胞株によって産生された抗体の特徴づけ(かかる抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の分析)を提供する。
【0154】
mAb(m705、m706、m708およびm708.2)の293のフリースタイル細胞株由来の抗体を、本明細書中に考察されるように発現した。上記細胞株によって産生された各抗体は、完全なヒトIgG重鎖およびヒトIgG軽鎖のいずれかである。一般に、本発明の抗体は、固相または液相のいずれかによって測定した場合、非常に高い親和性、典型的には、約10−9M〜約10−11MのKを有する。
【0155】
認識されるように、本発明の抗体を、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株中で発現することができる。特定の抗体のcDNAまたはゲノムクローンをコードする配列を、適切な哺乳動物または非哺乳動物宿主細胞の形質転換に使用することができる。形質転換を、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための任意の公知の方法(例えば、ウイルス(またはウイルスベクター)へのポリヌクレオチドのパッケージングおよびウイルス(またはベクター)での宿主細胞の形質導入が含まれる)または当該分野で公知のトランスフェクション手順(米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号(これら特許は、本明細書中で参考として援用される)に例示)によって行うことができる。使用した形質転換手順は、形質転換される宿主に依存する。哺乳動物への異種ポリヌクレオチドの導入方法は、当該分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、微粒子銃、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、ペプチド抱合、デンドリマー、および核へのDNAの直接的微量注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から利用可能な多数の不死化細胞株(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、および多数の他の細胞株が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。非哺乳動物細胞(細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および植物細胞が含まれるが、これらに限定されない)を使用して、組換え抗体を発現することもできる。グリコシル化を消失させるための抗体CH2ドメインの部位特異的変異誘発は、非ヒトグリコシル化に起因する免疫原性、薬物動態学、および/またはエフェクター機能のいずれかの変化を防止するのに好ましいかもしれない。発現方法を、どの系が最も高い発源レベルを生じ、構成性のIGF−IまたはIGF−II結合性を有する抗体が産生されるのかを決定することによって選択する。
【0157】
さらに、産生細胞株由来の本発明の抗体(または抗体由来の他の部分)の発現を、多数の公知の技術を使用して増強することができる。例えば、グルタミン合成酵素およびDHFR遺伝子発現系は、一定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。高発現細胞クローンを、従来の技術(限界希釈クローニングおよびマイクロドロップテクノロジーなど)を使用して同定することができる。GS系は、欧州特許第0216846号、同第0256055号、および同第0323997号、ならびに欧州特許出願番号89303964.4号で全部または一部が考察されている。
【0158】
本発明の抗体を、目的の免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列にトランスジェニックな哺乳度物または植物の生成およびこれらから回収可能な抗体の産生によってトランスジェニックに産生することもできる。哺乳動物におけるトランスジェニック産生に関して、抗体を、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物のミルク中で産生し、これから回収することができる。例えば、米国特許第5,827,690号、同第5,756,687号、同第5,750,172号、および同第5,741,957号を参照のこと。
【0159】
本発明の抗体の機能分析に関して、かかる抗体は、IGF−IまたはIGF−IIおよびIGF−1Rへのその結合の強力なインヒビターであることが証明された。例えば、本発明の抗体(例えば、mAb(m705、m706、m708およびm708.2))は、IGF−IまたはIGF−IおよびIGF−IIに結合することが証明された。図2を参照のこと。例えば、本発明の抗体(例えば、mAb(m708.2))は、MCF−7乳癌細胞中でのIGF−1Rのリン酸化を阻害することが示された。
【0160】
結果は、本発明により、新生物疾患の治療について、本発明の抗体が本発明の抗体をIGF−IまたはIGF−IIに対する現在の治療抗体よりも有効にすることができる一定の質を有することを証明した。
【0161】
特に、本発明の抗体(mAb(m705、m706、m708およびm708.2))は、非常に望ましい性質を有する。上記に考察されるように、その構造上の特徴、機能、または活性により、さらなる抗体または他の分子のデザインまたは選択を容易にする基準が得られる。
【0162】
治療計画
本発明は、薬学的に許容可能な担体と共に配合した抗体(例えば、IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体(モノクローナル、ポリクローナル、または単鎖Fv、そのインタクトなフラグメントまたは結合フラグメント)の1つまたは組合せを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの組成物は、複数の(例えば、2つまたはそれを超える)本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分の組合せを含む。いくつかの組成物では、組成物の各抗体またはその抗原結合部分は、個別の予め選択した抗原のエピトープに結合するモノクローナル抗体またはヒト配列抗体である。
【0163】
予防的適用では、薬学的組成物または薬物を、疾患、その合併症、および疾患発症中に示される中間的病理学的表現型の生化学的、組織学的、および/または行動上の症状が含まれる)のリスクを消失または減少させるか、重症度を減少させるか、発症を遅延させるのに十分な量で疾患または容態(すなわち、新生物疾患)に感受性を示すか、そうでなければリスクのある患者に投与する。治療的適用では、組成物または薬物を、疾患(その合併症および疾患発症中の中間的病理学的表現型が含まれる)の症状(生化学的、組織学的、および/または行動上の症状)の治癒または少なくとも部分的停止に十分な量でかかる疾患を罹患している疑いがあるか、既に罹患している患者に投与する。治療または予防上の処置を達成するのに適切な量を、治療または予防有効用量と定義する。予防計画および治療計画では、通常、十分な免疫応答が達成されるまで、薬物を数回投与する。典型的には、免疫応答をモニタリングし、免疫応答が減少し始めた場合、繰り返し投与する。
【0164】
有効投薬量
癌関連病態および疾患(例えば、本明細書中に記載の転移癌)の治療のための本発明の抗体組成物(例えば、IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体)の有効量は、多数の異なる要因(投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトまたは動物であるかどうか、投与した他の薬物、および処置が予防または治療のいずれであるのかが含まれる)に応じて変化する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック動物が含まれる)も治療することができる。治療投薬量は、安全性および有効性が最適になるように増減する必要がある。
【0165】
抗体の投与のために、投薬量は、約0.0001〜100mg/kg宿主体重、より通常には0.01〜5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重であり得るか、1〜10mg/kgの範囲内であり得る。例示的治療計画は、2週間毎に1回、1ヶ月に1回、または3〜6ヶ月毎に1回の投与を伴う。いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2つまたはそれを超えるモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、各抗体の投薬量は、表示の範囲内である。抗体を、通常、多様な場合に投与する。1回の投与の間隔は、毎週、毎月、または毎年であり得る。患者の血中抗体レベルの測定によって示されるように、間隔は不規則であってもよい。いくつかの方法では、1〜1000μg/ml、いくつかの方法では、25〜300μg/mlの血漿抗体濃度が達成されるように、投薬量を調整する。あるいは、抗体を、徐放性処方物として投与することができ、この場合、必要な投与頻度はより低い。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変化する。一般に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体がこれに続く。投薬量および投与頻度は、処置が予防または治療のいずれであるかに応じて変化し得る。予防的適用では、比較的低い投薬量を、長期間にわたって比較的頻繁でない間隔で投与する。患者によっては、その余生にわたって治療を受け続ける。治療的適用では、時折、疾患の進行が減少するか終了するまで、好ましくは、患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的高い投薬量を比較的短い間隔で投与する必要がある。その後、患者に、予防的投薬計画を実施することができる。
【0166】
免疫原をコードする核酸の用量は、約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mg、または30〜300μgDNA/患者の範囲である。感染性ウイルスベクターの用量は、用量あたり10〜100またはそれを超えるビリオンで変化する。
【0167】
投与経路
免疫応答を誘導するための抗体組成物(例えば、IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体)を、癌関連容態および疾患(例えば、転移癌)の治療のためには、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、または筋肉内手段によって投与することができ、予防および/または治療上の処置のためには、脳障害をターゲティングする抗体調製物の吸入薬として投与することができる。免疫原の最も典型的な投与経路は皮下経路であるが、他の経路が等しく有効であり得る。次の最も一般的な経路は、筋肉内注射である。この注射型は、腕または脚の筋肉に最も典型的に行われる。いくつかの方法では、薬剤を、沈殿物が蓄積した特定の組織に直接注射する(例えば、頭蓋内注射)。抗体投与には静脈内注入による筋肉注射が好ましい。いくつかの方法では、特定の治療抗体を、頭蓋に直接注射する。いくつかの方法では、抗体を、徐放性組成物またはデバイス(Medipad(商標)デバイスなど)として投与する。
【0168】
本発明の薬剤を、任意選択的に、種々の疾患(種々の癌関連疾患が含まれる)の治療に少なくとも部分的に有効な他の薬剤と組合せて投与することができる。腫瘍が脳に転移した場合、本発明の薬剤を、血液脳関門(BBB)への本発明の薬剤の通過を増大させる他の薬剤と共に投与することもできる。
【0169】
処方物
免疫応答を誘導するための抗体組成物(例えば、IGF−IまたはIGF−IIに対する抗体)を、癌関連容態および疾患(例えば、転移癌)の治療のために、しばしば、活性治療薬(すなわち、種々の他の薬学的に許容可能な成分)を含む薬学的組成物として投与する。(Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1980年を参照のこと)。好ましい形態は、意図する投与様式および治療的適用に依存する。組成物は、所望の処方物に応じて、動物またはヒトへの投与のための薬学的処方物を処方するために一般に使用されるビヒクルとして定義される薬学的に許容可能な非毒性担体または希釈剤を含むこともできる。組合せの生物活性に影響を及ぼさないように希釈剤を選択する。かかる希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、薬学的組成物または処方物は、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤なども含むことができる。
【0170】
薬学的組成物は、巨大でゆっくり代謝される高分子(タンパク質、キトサンなどのポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびコポリマー(ラテックス官能化セファロース(商標)、アガロース、およびセルロースなど)、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(油滴またはリポソームなど))も含むことができる。さらに、これらの担体は、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能することができる。
【0171】
非経口投与のために、本発明の組成物を、水、油、生理食塩水、グリセロール、またはエタノールなどの滅菌液体であり得る薬学的担体との生理学的に許容可能な希釈剤中の物質の溶液または懸濁液の注射用調剤として投与することができる。さらに、補助剤(湿潤剤、乳化剤、界面活性剤、およびpH緩衝化剤など)が組成物中に存在することができる。薬学的組成物の他の成分は、石油、動物、植物、または合成起源の油(例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、および鉱物油)の成分である。一般に、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射液のための好ましい液体担体である。抗体を、有効成分が徐放可能な様式などで処方することができるデポー注射または埋め込み調製物の形態で投与することができる。例示的組成物は、5mg/mlのモノクローナル抗体を含み、この抗体を、50mM L−ヒスチジン、150mM NaClからなり、HClでpH6.0に調整した水性緩衝液中に配合する。
【0172】
典型的には、組成物を、溶液または懸濁液のいずれかの注射液として調製し、注射前に液体ビヒクルで溶液または懸濁液にするのに適切な固体形態も調製することができる。上記で考察するように、調製物を、リポソームまたは微粒子(アジュバント効果を増強するためのポリラクチド、ポリグリコリド、またはコポリマーなど)中に乳化またはカプセル化することもできる。Langer、Science 249:1527、1990年、およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28:97−119、1997年。本発明の薬剤を、有効成分が徐放またはパルス放出可能な様式などで処方することができるデポー注射または埋め込み調製物の形態で投与することができる。
【0173】
他の投与様式に適切なさらなる処方物には、経口、鼻腔内、および肺処方物、座剤、および経皮塗布用の処方物が含まれる。
【0174】
座剤について、結合剤および担体には、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれ、かかる座剤を、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で有効成分を含む混合物から形成することができる。さらなる処方物は、医薬品用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムなどの賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性処方物、または粉末の形態を取り、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の有効成分を含む。
【0175】
局所適用により、経皮または皮内に送達することができる。コレラ毒素、その解毒誘導体もしくはサブユニット、または他の類似の細菌毒素との薬剤の同時投与によって局所投与を容易にすることができる。Glennら、Nature 391:851,1998。混合物または化学的架橋によって得た連結分子、または発現による融合タンパク質としての成分の使用によって同時投与を行うことができる。
【0176】
あるいは、皮膚パッチまたはトランスフェロソームを使用して、経皮送達を行うことができる。Paulら、Eur.J.Immunol.25:3521−24、1995年;Cevcら、Biochem.Biophys.Acta 1368:201−15、1998年。
【0177】
薬学的組成物を、一般に、無菌であり、実質的に等張で、米国食品医薬品局の全ての適切製造(GMP)規範(Good Manufacturing Practice(GMP)regulations)に完全に則った組成物として処方する。
【0178】
診断での使用
診断試薬として使用するための本発明の抗体および抗体組成物の特徴。転移性腫瘍細胞(例えば、転移性乳癌細胞)を同定するための診断方法で使用するためのヒト抗体を、好ましくは、上記の方法を使用して産生する。本方法により、任意の所望の抗原に対して任意のエピトープ結合特異性および非常に高い結合親和性を有する、実質的に無制限の数の本発明の抗体および抗体組成物が得られる。一般に、その標的に対する抗体の結合親和性がより高いほど、免疫アッセイでよりストリンジェントな洗浄条件を行って、標的抗原を除去することなく非特異的に結合した材料を除去することができる。したがって、上記アッセイで使用した本発明の抗体および抗体組成物は、通常、10、10、1010、1011、または1012−1の結合親和性を有する。さらに、診断試薬として使用した抗体は、標準的条件下にて、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも5時間、より好ましくは少なくとも1時間で平衡に到達するのに十分なオンレート(on−rate)を有する。
【0179】
特許請求の範囲に記載の方法で使用される本発明の抗体および抗体組成物は、免疫反応性(すなわち、正確に折り畳まれる抗体分子の比率)が高く、その結果、これらは、その標的抗原に特異的に結合することができる。上記のように、大腸菌中での抗体をコードする配列の発現によってこれを行うことができる。かかる発現により、通常、少なくとも80%、90%、95%、または99%の免疫反応性が得られる。
【0180】
いくつかの本発明の方法は、本発明の抗体および抗体組成物のポリクローナル調製物を診断試薬として使用し、他の方法は、モノクローナル単離物を使用する。ポリクローナル混合物の使用は、1つのモノクローナル抗体からできた組成物に関して多数の利点を有する。標的上の複数の部位への結合により、ポリクローナル抗体または他のポリペプチドは、単一の部位に結合するモノクローナルよりも強いシグナル(診断用)を生成することができる。さらに、ポリクローナル調製物は、多数のプロトタイプ標的配列の変異型(例えば、対立遺伝子変異型、種変異型、株変異型、薬物誘導性エスケープ変異型)に結合することができるのに対して、モノクローナル抗体は、プロトタイプ配列またはより狭い範囲のその変異型にのみ結合することができる。しかし、モノクローナル抗体は、密接に関連する抗原の存在下または潜在的存在下での単一の抗原の検出に有利である。
【0181】
上記の方法にしたがって調製したポリクローナルヒト抗体を使用した方法では、調製は、典型的には、異なるエピトープ特異性を有する抗体と意図する標的抗原との組合せを含む。モノクローナル抗体を使用したいくつかの方法では、異なるエピトープ結合特異性を有する2つの抗体を有することが望ましい。エピトープ結合特異性の相違を、競合アッセイによって決定することができる。
【0182】
サンプルおよび標的。任意の種類のサンプルのための診断試薬としてヒト抗体を使用することができるにもかかわらず、これらは、ヒトサンプルの診断試薬として最も有用である。サンプルを、患者の任意の組織または体液から得ることができる。サンプルの好ましい供給源には、全血、血漿、精液、唾液、涙、尿、糞便物質、汗、口腔内物質(buccal)、皮膚、および毛髪が含まれる。サンプルを、内部臓器の生検または癌から得ることもできる。サンプルを、診断または研究のために患者から得るか、コントロールとしてか基礎研究のために非罹患個体から得ることができる。
【0183】
任意の標的抗原型を検出するために、本方法を使用することができる。例示的標的抗原には、ヒトに疾患を発症させる細菌、真菌、およびウイルスの病原体(HIV、肝炎(A、B、およびC)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア属、マラリア、リーシュマニア属、黄色ブドウ球菌、緑膿菌など)が含まれる。他の標的抗原は、その発現レベルまたは組成がヒト疾患または他の表現型と相関したヒトタンパク質である。かかる抗原の例には、接着タンパク質、ホルモン、成長因子、細胞受容体、自己抗原、自己抗体、およびアミロイド沈着物が含まれる。他の目的の標的には、癌胎児性抗原などの腫瘍細胞抗原が含まれる。他の目的の抗原は、クラスIおよびクラスII MHC抗原である。
【0184】
診断アッセイ形式。ヒト抗体を使用して、種々の標準的アッセイ形式で所与の標的を検出することができる。かかる形式には、免疫沈降、ウェスタンブロッティング、ELISA、放射免疫アッセイ、および免疫測定アッセイ(immunometric assay)が含まれる。HarlowおよびLane、上記;米国特許第3,791,932号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,879,262号、同第4,034,074号、同第3,791,932号、同第3,817,837号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,850,578号、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、および同第4,098,876号(それぞれ、その全体および全ての目的のために本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0185】
免疫測定アッセイまたはサンドイッチアッセイは、好ましい形式である。米国特許第4,376,110号、同第4,486,530号、同第5,914,241号、および同第5,965,375号(それぞれ、その全体および全ての目的のために本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。かかるアッセイは、固相に固定されたある抗体または抗体集団および溶液中の別の抗体または抗体集団を使用する。典型的には、細胞または細胞集団溶液を標識する。抗体集団を使用する場合、集団は、典型的には、標的抗原内の異なるエピトープ特異性で結合する抗体を含む。したがって、この集団を、固相抗体および液体抗体の両方に使用することができる。モノクローナル抗体を使用する場合、異なる結合特異性を有する第1および第2のモノクローナル抗体を、固相および液相のために使用する。固相抗体および液体抗体を、標的抗原に順番または同時に接触させることができる。固相抗体を最初に接触させる場合、アッセイを、順方向アッセイ(forward assay)という。逆に、溶液抗体を最初に接触させる場合、アッセイを、逆方向アッセイ(reverse assay)という。標的を両抗体に同時に接触させる場合、アッセイを、同時アッセイという。標的の抗体との接触後、サンプルを、通常約10分〜約24時間、通常1時間インキュベートする。次いで、洗浄工程を行って、診断試薬として使用した抗体に非特異的に結合したサンプル成分を除去する。固相抗体および液体抗体を個別の工程で結合させる場合、結合工程のいずれかまたは両方の後に洗浄することができる。洗浄後、典型的には、標識した溶液抗体の結合を介して固相に連結した標識の検出によって結合を定量する。通常、所与の抗体組または抗体集団および所与の反応条件について、既知濃度の標的抗原を含むサンプルから検量線を作成する。次いで、試験されるサンプル中の抗原濃度を、検量線からの補間によって読み取る。分析物を、平衡状態で結合した標識溶液抗体の量から測定するか、平衡に到達する前の一連の測定点での結合した標識溶液抗体の速度の測定によって測定することができる。かかる曲線の勾配は、サンプル中の標的濃度の尺度である。
【0186】
上記方法での使用に適切な支持体には、例えば、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、および誘導化ナイロン膜が含まれ、アガロース、デキストランベースのゲル、ディップスティック(dipstick)、微粒子、ミクロスフィア、磁性粒子、試験管、マイクロタイターウェル、SEPHADEX(商標)(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway N.J.)などの粒子も含まれる。吸収または共有結合によって固定することができる。任意選択的に、抗体を、リンカー分子(アビジンなどの表面結合リンカーへの結合のためのビオチンなど)に連結することができる。
【0187】
標識
アッセイで使用される特定の標識または検出可能な基は、アッセイで使用される抗体の特異的結合を有意に妨害しない限り、本発明の重要な態様ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的性質を有する任意の物質であり得る。かかる検出可能な標識は、免疫アッセイ分野で十分に開発されており、一般に、かかる方法で有用なほとんどの任意の標識を、本発明に適用することができる。したがって、標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明で有用な標識には、磁性ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、およびローダミンなど)、放射性標識(例えば、H、14C、35S、125I、121I、112In、99mTc)、他の造影剤(微小気泡(超音波画像診断用)、18F、11C、15O、(陽電子放出断層撮影用)、99mTC、111In(単一光子放出型コンピュータ断層撮影用)など)、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されている西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびその他の酵素)、および比色標識(コロイド状金または有色ガラスビーズまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびラテックスなど)が含まれる。かかる標識の使用を記載した特許には、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号、および同第4,366,241号(それぞれ、その全体および全ての目的のために本明細書中で参考として援用される)が含まれる。Handbook of Fluorescent ProbesおよびResearch Chemicals、第6版、Molecular Probes,Inc.、Eugene OR.)も参照のこと。
【0188】
当該分野で周知の方法にしたがって、標識を、所望のアッセイ成分と直接または間接的にカップリングすることができる。上記のように、広範な種々の標識を使用することができ、標識の選択は、必要な感度、化合物との抱合のしやすさ、安定性要件、利用可能な装置、および使い捨てで提供されるかに依存する。
【0189】
非放射性標識を、しばしば、間接的手段によって付着する。一般に、リガンド分子(例えば、ビオチン)を、分子に共有結合する。次いで、リガンドは、本質的に検出可能であるか、シグナル系(検出可能な酵素、蛍光化合物、または化学発光化合物など)に共有結合する抗リガンド(例えば、ストレプトアビジン)分子に結合する。多数のリガンドおよび抗リガンドを使用することができる。リガンドが天然の抗リガンド(例えば、ビオチン、チロキシン、およびコルチゾール)を有する場合、標識された天然に存在する抗リガンドと併せて使用することができる。あるいは、任意のハプテン化合物または抗原化合物を抗体と組合せて使用することができる。
【0190】
分子を、例えば、酵素またはフルオロフォアとの抱合によってシグナル発生化合物に直接抱合することもできる。標識としての目的の酵素は、加水分解酵素(特に、ホスファターゼ,エステラーゼ、およびグリコシダーゼ)、または酸化還元酵素(特に、ペルオキシダーゼ)であろう。蛍光化合物には、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれる。化学発光化合物には、ルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン(例えば、ルミノール)が含まれる。使用することができる種々の標識系またはシグナル生成系の概説については、米国特許第4,391,904号(その全体および全ての目的のために本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0191】
標識の検出手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、標識が放射性標識である場合、検出手段には、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィなどの写真用フィルムが含まれる。標識が蛍光標識である場合、適切な波長の光での蛍光色素の励起および得られた蛍光の検出によって検出することができる。蛍光を、写真フィルムおよび電荷結合素子(CCD)または高電子倍増管などの電子感知器の使用によって視覚的に検出することができる。同様に、酵素標識を、適切な酵素基質の準備および得られた反応産物の検出によって検出することができる。最終的に、簡潔な熱量測定標識を、標識に会合した色の観察によって簡潔に検出することができる。したがって、種々のディップスティックアッセイでは、抱合した金はしばしば桃色を示す一方で、種々の抱合ビーズはビーズの色を示す。
【0192】
いくつかのアッセイ形式は、標識成分を使用する必要がない。例えば、凝集アッセイを使用して、標的抗体の存在を検出することができる。この場合、抗原コーティング粒子を、標的抗体を含むサンプルによって凝集する。この形式では、成分は標識される必要は無く、標的抗体の存在を、簡潔な目視によって検出する。
【0193】
頻繁に、IGF−IまたはIGF−IIタンパク質およびIGF−IまたはIGF−IIに対する抗体を、検出可能なシグナルを供給する物質の結合(共有結合または非共有結合のいずれか)によって標識する。
【0194】
毒性
好ましくは、治療有効用量の本明細書中に記載の抗体組成物は、実質的な毒性を生じることなく治療上の利点が得られるであろう。
【0195】
本明細書中に記載のタンパク質の毒性を、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手段(例えば、LD50(集団の50%が死亡する用量)またはLD100(集団の100%が死亡する用量)の決定)によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養系および動物研究から得たデータを、ヒトでの使用に有毒ではない投薬量範囲の構築で使用することができる。本明細書中に記載のタンパク質の投薬量は、循環濃度の範囲内であることが好ましく、毒性がほとんど無いか全く無い有効用量が含まれる。使用する投薬形態および使用する投与経路に応じて、投薬量は、この範囲内で変化することができる。正確な処方、投与経路、および投薬量を、患者の状態を考慮して各医師によって選択することができる。(例えば、Finglら、1975年、In:The Pharmacological Basis of Therapeutics、Ch.1を参照のこと)。
【0196】
キット
本発明の組成物(例えば、モノクローナル抗体ヒト配列抗体ヒト抗体多特異性分子、および二重特異性分子)および使用説明書を含むキットも、本発明の範囲内である。キットは、さらに、少なくとも1つのさらなる試薬、または1つまたは複数のさらなる本発明のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体と異なる抗原中のエピトープに結合する相補活性を有するヒト抗体)を含むことができる。キットは、典型的には、キットの内容物の意図する用途を示す標識を含む。用語「ラベル」は、キット上またはキット共に供給されるか、そうでなければキットに付随する任意の書面または記録物が含まれる。
【0197】
本明細書中に記載されており、以下の実施例に記載されている以下のcDNAクローンを、ブダペスト条約に基づいて、_付けでAmerican Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110−2209に寄託するであろう。m705 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。m705 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。m706 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。m706 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。m708 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。m708 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。m708.2 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。m708.2 VのcDNAクローンは、_付けのATCCアクセッション番号:_を有する。
【0198】
他の実施形態および使用は、本開示を考慮して、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0199】
例示的実施形態
(実施例1)
ヒトIGFIに対するファージディスプレイされたヒトFabの選択
全てではないがほとんどの現在利用可能なIGF−IIに対する抗体はヒトではなくマウス起源である。IGF−IIに対するヒトmAbを構築するために、本発明者らは、最近構築された1010個の異なるファージディスプレイされたFabを含む巨大なナイーブヒトFabライブラリーを使用した。組換えヒトIGFIをダイナルビーズに抱合し、抗体ライブラリーパニングのための標的抗原として使用した。3ラウンドのパニング後、200個の各ファージクローンのスクリーニングを、標的としてIGFIを使用したファージELISAによって行った。IGFIに有意に結合し、配列決定したクローンのうち、3つのFabは固有の配列を有し、これらを可溶性Fabとして細菌中に発現させ、精製し、結合活性について試験した。m705およびm706と命名した2つのFabは、IGFIのみと特異的結合を示した一方で、1つのFab(m708)は、ELISAでIGFIおよびIGFIIの両方に有意なレベルで結合し、親和性成熟および特徴づけのために選択した。
【0200】
材料と方法に記載のように、2×10個の独立クローンを、軽鎖シャフリングm708変異体ライブラリーの構築後に得た。IGFI抱合ビーズに対して2ラウンドのパニングを行い、第2ラウンドのパニング由来の200クローンを、ファージELISAによってスクリーニングし、DNA配列決定およびELISA結合試験後に5個の固有のクローンを同定し、IGFIおよびIGFIIの両方に対して最も高い結合活性を示したクローンm708.2を、さらなる特徴づけのために選択した。
【0201】
表1:同定されたCDR1、CDR2、およびCDR3を有するm705およびm706抗体のタンパク質配列
【0202】
【化1】

表2:m708およびm708.2は、IGF−IおよびIGF−IIに対する交差反応性モノクローナル抗体である。同定されたCDR1、CDR2、およびCDR3を有するVおよびV抗体のタンパク質配列
【0203】
【化2】

表1は、IGF−I特異的モノクローナル抗体m705およびm706のVおよびV領域を示す。各抗体のCDR領域に下線を引いている。表1は、IGF−I特異的およびIGF−II特異的モノクローナル抗体m708およびm708.2のVおよびV領域を示す。各抗体のCDR領域に下線を引いている。m708およびm708.2のCDR領域の配列は以下である:V:QSISS(配列番号9)、V:AAS(配列番号10)、V:QQSYSTPSTF(配列番号11)、V:GGTFSSYA(配列番号12)、V:GIIPILGIA(配列番号13)、およびV:ARGPRGYSYNFDY(配列番号14)。
【0204】
図1は、IGF−IまたはIGF−IおよびIGF−IIに結合するIGF−Iに対して選択されたヒトモノクローナル抗体を示す。m705(No.5)およびm706(No.6)は、IGF−Iと反応するが、IGF−IIと反応しない。m708(No.8)は、IGF−IおよびIGF−IIと交差反応する。
【0205】
図2は、IGF−IおよびIGF−IIへのIgG 708.2結合のELISA結合アッセイを示す。コントロールとしてm708Fabおよびm606Fab結合を使用して、ヒトIGF−IおよびIGF−IIへのm708.2FabのELISA結合アッセイを示す。IgG708.2 Fabにより、IGF−IおよびIGF−IIの両方に対する結合親和性が証明される。IgG606 Fabにより、IGF−IIに対する結合親和性が証明される。IgG708 Fabにより、IGF−IIに対する結合親和性よりも高いIGF−Iに対する結合親和性が証明される。
【0206】
(実施例2)
IGF−1Rおよびインスリン受容体リン酸化の阻害
図3は、IgG 708.2がMCF−7細胞中でのIGF−1Rのリン酸化を阻害することを示す。MCF−7細胞を、無血清培地中で6時間枯渇させ、その後に表示濃度のIgG708.2を含む1.5nM IGF−Iまたは10nM IGF−IIを含む処置培地を添加した。20分後、細胞を冷却し、溶解した。IGF−1Rを免疫沈降し、リン酸化受容体を、ホスホチロシン特異的モノクローナル抗体で検出した。IGF−1Rの全量を、免疫沈降のために使用した同一のポリクローナル抗体によって検出した。
図4は、IGF−Iに対して選択されたヒトモノクローナル抗体による可溶性IGF−1RへのIGF−I結合の阻害を示す。m705およびm708の濃度は400nMであった。m706の濃度は100nMであった。IGF−Iの濃度は50nMであり、IGF−IIの濃度は500nMであった。
【0207】
図5は、抗IGF−IIヒト抗体IgG1m708.2によるMCF7細胞中のIGF−IIおよびIGF−I誘導性IGF−1Rリン酸化の用量依存性阻害を示す。m708の濃度は0〜125nMであった。IGF−Iの濃度は1.5nMであり、IGF−IIの濃度は10nMであった。
【0208】
図6は、IgG1708.2による細胞運動の阻害を示す。癌細胞の運動性は、腫瘍転移に不可欠である。細胞遊走アッセイを行い、IgGm708.2が8μmの膜孔を介したMCF−7細胞の移動を阻害することができるかどうかを試験した。濃度40nmol/LのIgGm708.2は、5%ウシ胎児血清を含む培地中で40%の細胞遊走を阻害した。
【0209】
図7は、ELISAアッセイによるIGF−IおよびIGF−IIへのモノクローナル抗体m705、m706、およびm708の結合特異性を示す。データは、m705およびm706がIGF−Iに特異的に結合し、m708がIGF−IおよびIGF−IIの両方に結合することを示す。
【0210】
図8は、IGF−IとIGF−I受容体との間の結合に対するモノクローナル抗体m705、m706、およびm708の結合競合を示す。m705、m706、およびm708は、それぞれ、IGF−IとIGF−I受容体との間の結合の競合的阻害を示した。
【0211】
図9は、モノクローナル抗体m708.2IgGのIGF−IIへの結合を示す。IGFIIへのm708.2 IgGの結合親和性Kdは、約0.8×10−10Mである。
【0212】
モノクローナル抗体m705およびm706は、ヒトIGF−Iに対して高い結合親和性を有するが、ヒトインスリンに結合しない。モノクローナル抗体m708およびm708.2は、ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIに対して高い結合親和性を有するが、ヒトインスリンに結合しない。
【0213】
(実施例3)
材料と方法
ファージディスプレイFabライブラリーパニング。組換えヒトIGFを使用して、1010個の固有のクローンを含むヒトナイーブFabファージライブラリーをスクリーニングした。Zhangら、J.Virol.78:9233−9242,2004。組換えヒトIGFIを、ライブラリーパニングの標的として、磁性ビーズ上に抱合した。第1ラウンドのパニングで10μgの抗原を使用した。1012個の増幅ファージをパニングに使用し、洗浄後、ビーズ上に結合したファージを直接使用して、指数関数的に増殖したTG1細胞に感染させ、M13KO7ヘルパーファージによってレスキューした。2μg抗原を使用してパニングを2回繰り返し、各ラウンド後に10回洗浄した。第3ラウンド後に200個の各クローンを選別し、ファージELISAスクリーニングのために2YT培地を含む96ウェルプレート中でインキュベートした。
【0214】
軽鎖シャフリングファージディスプレイライブラリーの生成および選択。元のヒトFabファージディスプレイライブラリーを、シャフリングライブラリーにおけるVLレパートリーの供給源として使用した。元のライブラリー由来のファージミド調製物を、NcoIおよびSpeIで最初に消化し、その後にアガロースゲルで電気泳動して、全VHレパートリーを検出した。クローンm708のVドメインをコードする遺伝子を、Stratageneの誤りがちなPCRキットによって増幅して無作為な変異を導入し、次いで、重複伸長スプライシング(splicing by overlap extension)(SOE)PCRによってCH1遺伝子フラグメントと融合した。融合フラグメントを、NcoIおよびSpeIで消化し、ゲルから精製し、精製骨格ベクターにライゲーションして、VLシャフリングFabレパートリーを作製した。大腸菌TG1細胞を、エレクトロポレーションを介してライゲーション混合物で形質転換した。形質転換されたTG1細胞を、100μg/mlアンピシリンおよび2%グルコースを含む2YT寒天プレート上にプレートした。37℃で一晩のインキュベーション後、プレート上で成長した全てのコロニーを、5mlの2YTAG培地に掻き取り、1.2mlの50%グリセロール(最終濃度10%)と混合し、等分し、変異ライブラリーストックとして−70℃で保存した。
【0215】
IGF−Iに対するVLシャフリングライブラリーの選択。ライブラリーストック(100μl)を、20mlの2YT培地中で対数期まで成長させ、M13K07介助ファージでレスキューし、2YT培地(100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのカナマイシンを含む2YT)中にて30℃で一晩増幅させた。ファージ調製物を、4%PEG、0.5M NaCl中で沈殿させ、ファージライブラリーストックとして1mlのPBS中に再懸濁した。最初のライブラリーパニングに記載のように、ヒトIGFI抱合磁性ビーズに対して2ラウンドのバイオパニングを行った。
【0216】
FabからIgG1への変換。pComb3H中のFabを、重鎖および軽鎖を同時発現することが可能なpDR12にクローニングした。例えば、Barbas IIIら、Phage Display、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2001年を参照のこと。簡潔に述べれば、重鎖可変領域を、XbaIおよびSadI部位を介してpDR12に最初にクローニングした。次いで、軽鎖配列(VL+CL)を、HindIIIおよびEcoRI部位を介してpDR12にクローニングした。
【0217】
FabおよびIgG1の発現。HB2151細胞を、Fab配列を含むpCombIIIプラスミドで形質転換した。単一の新鮮なクローンを、2YT培地+100Ag/mLアンピシリン+0.2%グルコースに接種した。培養物を、A600=0.5まで37℃にて250rpmで浸透した。イソプロピル−L−チオ−h−D−ガラクトピラノシド(1mmol/L)を添加して、発現を誘導した。30℃で一晩の成長後、培養物を回収した。細菌を、5,000×gで15分間遠心分離した。ペレットを、ポリマイシンB(10,000単位/mL)を含むPBS中に際懸濁した。可溶性fabを、室温で45分間のインキュベーションによって周辺質から放出させた。抽出物を、15,000gで30分間明澄化した。透明な上清を、タンパク質Gカラムでの精製のために回収した。
【0218】
IgG1を、293フリースタイル細胞中で発現させた。製造者(Invitrogen)の説明書に従って、293Fectinを使用して、293フリースタイル細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの4日後、培養上清を回収した。IgGを、タンパク質Aカラムで精製した。
【0219】
ELISA結合アッセイ。ナローウェルの96ウェルプレートに、抗原を50ng/ウェルにて4℃で一晩コーティングした。ファージELISAのために、各パニングラウンド由来の1010個のファージを、抗原とインキュベートした。結合したファージを、抗M13−HRPポリクローナル抗体(Pharmacia,Piscataway,NJ)で検出した。可溶性Fab結合アッセイのために、抗Flag HRP抱合体を使用して、結合を検出した。
【0220】
表面プラズモン共鳴による運動速度定数および親和性の決定。種々のFabとヒトIGFIおよびIGF−IIとの間の相互作用を、Biacore 1000装置(Pharmacia)を使用した表面プラズモン共鳴テクノロジーによって分析した。IGFIおよびIGF−IIを、カルボジイミドカップリング化学を使用して、センサーチップ(CM5)に共有結合によって固定した。非特異的結合および屈折率の変化のためにコントロール基準表面を調製した。相互作用の速度反応の分析のために、150mmol/L NaCl、3mmol/L EDTA、および0.005%P−20(pH7.4)を含むランニング緩衝液を使用して、種々の濃度のFabを30AL/分の速度で注入した。非線型データ分析プログラムBIAevaluation 3.2の使用によって、結合基および解離期のデータを、1:1ラングミュアグローバルモデル(Langumir global model)に同時に適合させた。全ての実験を、25℃で行った。
【0221】
リン酸化アッセイ。MCF−7細胞を、1.0×10/ウェルで、完全成長培地を含む6ウェルプレートに播種した。一晩の培養後、細胞を無血清DMEMでリンスし、無血清DMEM中で6時間培養した。細胞を、種々の濃度の組換えFabまたはIgGと30分間インキュベートし、次いで、IGF−IIを最終濃度10nmol/Lまで添加した。いくつかの場合、抗体およびIGF−IIを、予め混合せずに同時に培地に添加する。IGFII添加から20分後、細胞を氷上で冷却し、冷PBSでリンスし、1mlの溶解緩衝液(50mmol/L HEPES(pH7.4)、150mmol/L NaCl、10%グリセロール、1%Triton X−100、1.5mmol/L MgCl、2mmol/L バナジウム酸ナトリウム、およびプロテアーゼインヒビター)中で溶解した。溶解物を、氷上で30分間保持し、その後に17,000×gで30分間遠心分離した。上清を、免疫沈降のために使用した:20ALのタンパク質Gセファロース4Bおよび2Agのウサギ抗IGF−1Rh(C−20、Santa Cruz Biotechnologies、Santa Cruz、CA)。十分な洗浄後、免疫沈降物を、4%〜12%NUPAGEで泳動し、ポリビニリデンジフルオリド膜に移し、抗ホスホチロシンmAb 4G10でブロッティングした。膜を剥ぎ取り、C−20ポリクローナル抗体で再探索して、総IGF−1RまたはC−19を検出し、それにより、免疫沈降物中のインスリン受容体を検出した。類似の手順をAktおよびMAPKにも使用したが、ホスホ−Aktおよびホスホ−MAPKを認識する抗体を使用してウェスタンブロットを行った。
【0222】
細胞遊走アッセイ。孔サイズ8μmのポリカーボネート膜を備えたトランスウェル培養プレートを、製造者(Corning Life Sciences Q5)の説明書に従って使用した。簡潔に述べれば、下のウェルは、5%ウシ胎児血清および種々の濃度の抗体を含む2.6mL DMEMを含んでいた。5%ウシ胎児血清および無血清DMEMを含むDMEMを、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして使用した。上のインサートは、1.5mlの0.5×10個のMCF−7単一細胞懸濁液を含む無血清DMEMを含んでいた。細胞を、37℃でインキュベートした。4時間後、上部の膜に付着した細胞を、綿棒で拭き取った。膜の下側の細胞を、Hema3キット(Fischer)で染色した。膜をトランスウェルから取り出し、顕微鏡スライドガラス上にマウントし、顕微鏡下で細胞を計数した。
【0223】
物理的性質(分子量など)または化学的性質(化学式など)のための範囲を本明細書中で使用する場合、本明細書中の範囲および特定の実施形態の全ての組合せおよびサブコンビネーションが含まれることが意図される。
【0224】
本明細書中に引用または記載した各特許、特許出願、および刊行物は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0225】
当業者は、本発明の実施形態の多数の変更形態および修正形態を実施することができ、かかる変更形態および修正形態を本発明の精神を逸脱することなく実施することができると認識する。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内に含まれるように全てのかかる変形形態を対象とすることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】図1は、IGF−IまたはIGF−IおよびIGF−IIに結合するIGF−Iに対して選択されたヒトモノクローナル抗体を示す。
【図2】図2は、IGF−IおよびIGF−IIへのIgG708.2結合のELISA結合アッセイを示す。
【図3】図3は、IgG708.2がMCF−7細胞中でのIGF−1Rのリン酸化を阻害することを示す。
【図4】図4は、IGF−Iに対して選択されたヒトモノクローナル抗体による可溶性IGF−1RへのIGF−I結合の阻害を示す。
【図5】図5は、抗IGF−IIヒト抗体IgG1m708.2によるMCF7細胞中のIGF−IIおよびIGF−I誘導性IGF−1Rリン酸化の用量依存性阻害を示す。
【図6】図6は、IgG708.2による細胞運動の阻害を示す。
【図7】図7は、ELISAアッセイによるIGF−IおよびIGF−IIへのモノクローナル抗体m705、m706、およびm708の結合特異性を示す。
【図8】図8は、IGF−IとIGF−I受容体との間の結合に対するモノクローナル抗体m705、m706、およびm708の結合競合を示す。
【図9】図9は、モノクローナル抗体m708.2IgGのIGF−IIへの結合を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離モノクローナル抗体であって、その重鎖可変領域中に配列番号7に記載のアミノ酸配列または配列番号7と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項2】
ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離モノクローナル抗体であって、その軽鎖可変領域中に配列番号8に記載のアミノ酸配列または配列番号8と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項3】
ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離モノクローナル抗体であって、その重鎖可変領域または軽鎖可変領域中に配列番号7および8にそれぞれ記載のアミノ酸配列またはそれぞれ少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、単離モノクローナル抗体。
【請求項4】
:QSISS(配列番号9)、V:AAS(配列番号10)、V:QQSYSTPSTF(配列番号11)、V:GGTFSSYA(配列番号12)、V:GIIPILGIA(配列番号13)、またはV:ARGPRGYSYNFDY(配列番号14)の少なくとも1つのCDR配列を含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体、IgA抗体、分泌性IgA抗体、IgD抗体、またはIgE抗体である、請求項2に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプである、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプである、請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体、IgA抗体、分泌性IgA抗体、IgD抗体、またはIgE抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプである、請求項2に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプである、請求項2に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgG抗体、IgM抗体、IgA抗体、IgA抗体、分泌性IgA抗体、IgD抗体、またはIgE抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプである、請求項3に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が、IgGκアイソタイプまたはIgGλアイソタイプである、請求項3に記載の抗体。
【請求項14】
前記抗体が、ヒト抗体、非ヒト霊長類抗体、ウサギ抗体、ラット抗体、マウス抗体、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の抗体。
【請求項15】
前記抗体が、ヒト抗体、非ヒト霊長類抗体、ウサギ抗体、ラット抗体、マウス抗体、またはそれらの組合せである、請求項2に記載の抗体。
【請求項16】
前記抗体が、ヒト抗体、非ヒト霊長類抗体、ウサギ抗体、ラット抗体、マウス抗体、またはそれらの組合せである、請求項3に記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体が、1つまたは複数の以下の特徴:(i)インビトロMCF−7乳癌細胞アッセイにおいて約4nMまたはそれを超える抗体濃度でIGF−I受容体のリン酸化を阻害すること、(ii)IGF−I受容体へのIGF−I結合またはIGF−II結合を阻害すること、または(iii)細胞遊走アッセイにおいて細胞遊走を阻害することを有する、請求項3に記載の抗体。
【請求項18】
分析物として組換えヒトインスリン様成長因子Iまたはヒトインスリン様成長因子IIを使用し、リガンドとして前記抗体を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した場合、約10−8Mまたはそれ未満の解離平衡定数(K)を有する、請求項3に記載の抗体。
【請求項19】
前記抗体が、約10−1またはそれを超える結合親和性でヒトインスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIに結合することができる、請求項3に記載の方法。
【請求項20】
インタクトな抗体、インタクトなIgG抗体、インタクトなIgG抗体、インタクトなIgG抗体、インタクトなIgG抗体、インタクトなIgM抗体、インタクトなIgA抗体、インタクトなIgA抗体、インタクトな分泌IgA抗体、インタクトなIgD抗体、またはインタクトなIgE抗体であり、該抗体が真核細胞中でグリコシル化される、請求項3に記載の抗体。
【請求項21】
抗体フラグメントまたは単鎖抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項22】
(i)リンカーペプチドを介して免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した配列番号8に記載の可変軽鎖アミノ酸配列または配列番号8と少なくとも90%相同な可変軽鎖配列に融合した配列番号7に記載の可変重鎖アミノ酸配列または配列番号7と少なくとも90%相同な可変重鎖配列、(ii)該ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)該CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である、請求項4に記載の抗体。
【請求項23】
前記抗体が、所定の抗原と少なくとも1010−1の平衡結合定数(Ka)で結合する、請求項3に記載の抗体。
【請求項24】
前記抗体が、所定の抗原と少なくとも10−1の平衡結合定数(Ka)で結合する、請求項3に記載の抗体。
【請求項25】
前記抗体が、所定の抗原と少なくとも10−1の平衡結合定数(Ka)で結合する、請求項3に記載の抗体。
【請求項26】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項27】
前記抗体がF(ab’)フラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、またはFdフラグメントである、請求項3に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体が抗原特異的抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項29】
ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離ヒトモノクローナル抗体.
【請求項30】
:QSISS(配列番号9)、V:AAS(配列番号10)、V:QQSYSTPSTF(配列番号11)、V:GGTFSSYA(配列番号12)、V:GIIPILGIA(配列番号13)、またはV:ARGPRGYSYNFDY(配列番号14)の少なくとも1つのCDR配列を含む、請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
配列番号1に記載のそのヒト重鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号1と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項32】
配列番号2に記載のそのヒト軽鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号2と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項33】
配列番号3に記載のそのヒト重鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号3と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項34】
配列番号4に記載のそのヒト軽鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号4と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iに結合する単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項35】
配列番号5に記載のそのヒト重鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号5と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項36】
配列番号6に記載のそのヒト軽鎖可変領域中のアミノ酸配列または配列番号6と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む、ヒトインスリン様成長因子Iおよびヒトインスリン様成長因子IIに結合する単離ヒトモノクローナル抗体。
【請求項37】
請求項1に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項38】
請求項2に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項39】
請求項31に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項40】
請求項32に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項41】
請求項33に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項42】
請求項34に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項43】
請求項35に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項44】
請求項36に記載の抗体および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項45】
単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体がヒト定常領域を含み、ここで、該抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)のヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIへの結合を競合的に阻害し、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項46】
前記抗体または抗原結合フラグメントがヒト定常領域およびヒト可変領域を含む、請求項45に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項47】
少なくとも1つのヒト軽鎖および少なくとも1つのヒト重鎖を含む、請求項45に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項48】
前記軽鎖が、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の軽鎖の全ての抗原結合領域を含む、請求項47に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項49】
前記重鎖が、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の重鎖の全ての抗原結合領域を含む、請求項47に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項50】
前記軽鎖が、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の軽鎖の全ての抗原結合領域を含み、前記重鎖が、m708.2(ATCCアクセッション番号:_)の重鎖の全ての抗原結合領域を含む、請求項47に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項51】
単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体がヒト定常領域を含み、ここで、該抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)の抗原結合領域を含み、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項52】
単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体がヒトIgG定常領域を含み、ここで、該抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)のヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIへの結合を競合的に阻害し、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項53】
単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体がヒトIgG定常領域を含み、ここで、該抗体または抗原結合フラグメントが、(i)m708.2抗体(ATCCアクセッション番号:_)の抗原結合領域を含み、(ii)表面プラズモン共鳴によって決定した場合、会合定数(Ka)として測定される少なくとも1×10リットル/モルの親和性でインビボでヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの中和エピトープに結合する、単離組換え抗IGF−I抗体および抗IGF−II抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項54】
サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを検出する方法であって、(a)サンプルを提供する工程、(b)ポリペプチドリガンドのヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIへの結合を可能にする条件下で、(a)のサンプルをヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを含む該ポリペプチドに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体m708またはm708.2と接触させる工程、および(c)該サンプル中の抗体m708またはm708.2のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIとの結合を検出する工程を含み、ここで、結合の検出が、該サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIの存在を示し、それにより、該サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIが検出される、方法。
【請求項55】
サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを検出する方法であって、(a)サンプルを提供する工程、(b)ポリペプチドリガンドのヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIへの結合を可能にする条件下で、(a)のサンプルをヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIを含む該ポリペプチドに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体m708またはm708.2と接触させる工程、および(c)該サンプル中の抗体m708またはm708.2のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIとの結合を検出する工程を含み、ここで、結合の検出が、該サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIの存在を示し、それにより、該サンプル中のヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIが検出される、方法。
【請求項56】
サンプル中のヒトインスリン成長因子Iを検出する方法であって、(a)サンプルを提供する工程、(b)ポリペプチドリガンドのヒトインスリン成長因子Iへの結合を可能にする条件下で、(a)のサンプルをヒトインスリン成長因子Iを含む該ポリペプチドに特異的に結合するヒトモノクローナル抗体m705またはm706と接触させる工程、および(c)サンプル中の抗体m705またはm706のヒトインスリン成長因子Iとの結合を検出する工程を含み、ここで、結合の検出が、該サンプル中のヒトインスリン成長因子Iの存在を示し、それにより、該サンプル中のヒトインスリン成長因子Iが検出される、方法。
【請求項57】
請求項1、2、31、32、33、34、35、または36に記載のタンパク質/抗体の重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列をコードする単離核酸。
【請求項58】
請求項57に記載の核酸および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項59】
請求項1、2、31、32、33、34、35、または36に記載の抗体の免疫グロブリン可変ドメイン配列をコードする1つまたは複数の核酸を含む組換え細胞。
【請求項60】
抗体のHC可変ドメインを含むポリペプチドをコードする第1の核酸配列および該抗体のLC可変ドメインを含むポリペプチドをコードする第2の核酸配列を含む宿主細胞であって、該抗体が、請求項1、2、31、32、33、34、35、または36に記載のタンパク質である、宿主細胞。
【請求項61】
インスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIに結合することができる抗体を調製する方法であって、核酸が発現する条件下にて宿主細胞中で請求項57に記載の核酸を発現させ、その後に該抗体を回収する工程を含む、方法。
【請求項62】
ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIに特異的なポリペプチドリガンドを同定する方法であって、(a)候補ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子I結合ポリペプチドを発現するファージを含むファージライブラリーを提供する工程、(b)該ファージライブラリーをヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIタンパク質と接触させる工程、および(c)該ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIタンパク質のファージへの結合を検出し、それにより、ヒトインスリン成長因子Iおよびインスリン成長因子IIに特異的なポリペプチドリガンドを同定する工程を含む、方法。
【請求項63】
哺乳動物被験体の新生物疾患を治療するための方法であって、該哺乳動物被験体の該新生物疾患を軽減または消失させるのに有効な量で、インスリン様成長因子Iに特異的に結合する配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を有する抗体を含む薬学的組成物を該哺乳動物被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項64】
前記抗体が、インスリン様成長因子Iおよびインスリン様成長因子IIに特異的に結合する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記抗体が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列をさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体を細胞毒性剤に連結する、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞毒性剤が細胞毒性薬物である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞毒性剤が放射性同位体である、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記新生物疾患が、固形腫瘍、血液学的悪性疾患、白血病、結腸直腸癌、良性または悪性乳癌、子宮癌、子宮平滑筋腫、卵巣癌、子宮内膜癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、前立腺癌、前立腺肥大、下垂体癌、腺筋症、腺癌、髄膜腫、黒色腫、骨の癌、多発性骨髄腫、CNS癌、神経膠腫、または星状芽細胞腫である、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記新生物疾患が、前記哺乳動物被験体の腫瘍細胞転移である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記新生物疾患が、前記哺乳動物被験体の乳癌転移である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
新生物疾患を有すると疑われるか新生物疾患のリスクがあると疑われる哺乳動物被験体の癌を診断する方法であって、
該被験体の血液または組織から試験サンプルを得る工程であって、該試験サンプルが細胞集団を含む、工程、
該細胞集団内の細胞上のIGF−Iマーカーの存在または不在を検出するための配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、
該IGF−Iマーカーによって検出された該細胞集団を分析して、該哺乳動物被験体における細胞、新生物疾患を示すかまたは新生物疾患のリスクがあることを示す細胞、細胞上または細胞中のIGF−Iマーカーの存在を同定および特徴づける工程
を含む、方法。
【請求項73】
前記細胞集団内の細胞上または細胞中のIGF−IIマーカーおよび前記IGF−Iマーカーの存在または不在を検出するために配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、該IGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーによって検出された細胞集団を分析して、前記哺乳動物被験体における細胞、新生物疾患を示すかまたは新生物疾患のリスクがあることを示す細胞、細胞上または細胞中のIGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーの存在を同定および特徴づける工程をさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
検体中の前記細胞上または細胞中のIGF−IマーカーまたはIGF−IIマーカーの存在が、前記哺乳動物被験体における転移癌の存在を示す、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
検体中の前記細胞上または細胞中のIGF−IマーカーまたはIGF−IIマーカーの存在が、前記哺乳動物被験体における早期癌の存在を示す、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
検体中の前記細胞上または細胞中のIGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーの不在が、前記哺乳動物被験体が無病状態または測定不可能な疾患状態であることを示す、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
検体中の前記細胞上または細胞中のIGF−IマーカーまたはIGF−IIマーカーの存在または不在により、癌療法または癌の回復中の療法管理をモニタリングする、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
前記抗体に結合した画像化部分をさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
前記画像化部分を、磁気共鳴分光法、X線分光法、または陽電子放出断層撮影(PET)によって画像化することができる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記結合が共有結合である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記結合が非共有結合である、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記新生物疾患が、固形腫瘍、血液学的悪性疾患、白血病、結腸直腸癌、乳癌、子宮癌、子宮平滑筋腫、卵巣癌、子宮内膜癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、前立腺癌、前立腺肥大、下垂体癌、腺筋症、腺癌、髄膜腫、黒色腫、骨の癌、多発性骨髄腫、CNS癌、神経膠腫、または星状芽細胞腫である、請求項72に記載の方法。
【請求項83】
哺乳動物被験体における癌治療のための薬物候補化合物をスクリーニングする方法であって、
治療有効量の該薬物候補化合物を、癌を有する疑いのある該被験体に投与する工程、
該薬物候補化合物での治療前および治療後に該被験体の血液または組織から試験サンプルを得る工程であって、該試験サンプルが、腫瘍細胞を含む疑いのある細胞集団を含む、工程、
該試験サンプル中の細胞上のIGF−Iマーカーの存在または不在を検出するための配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、
該IGF−Iマーカーによって検出される細胞集団を分析して、該薬物候補化合物での治療後と比較して、該薬物候補化合物での治療前の試験サンプル中の該腫瘍細胞を同定する工程を含み、治療前の検体中の該腫瘍細胞の数と比較して、治療後の検体中の該腫瘍細胞の数の減少が、該哺乳動物被験体において該癌を治療することにおける薬物候補化合物の有効性を示す、方法。
【請求項84】
前記試験サンプル中の細胞上のIGF−IIマーカーおよび前記IGF−Iマーカーの存在または不在を検出するための配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む抗体を提供する工程、および該IGF−IマーカーおよびIGF−IIマーカーによって検出される細胞集団を分析して、前記薬物候補化合物での治療後と比較して該薬物候補化合物での治療前の試験サンプル中の前記腫瘍細胞を同定する工程をさらに含み、治療前の検体中の該腫瘍細胞の数と比較して、治療後の検体中の該腫瘍細胞の数の減少が、前記哺乳動物被験体において該癌を治療することにおける該薬物候補化合物の有効性を示す、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記癌が、転移癌または早期癌である、請求項83に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−533028(P2009−533028A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504498(P2009−504498)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/066180
【国際公開番号】WO2007/118214
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(507143347)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (2)
【Fターム(参考)】