説明

新生物疾患又は自己免疫疾患を処置するためのプロドラッグとしてのフラザノベンゾイミダゾール

式(II):[式中、(a)は、非置換であるか、又は低級アルキル、ハロ−低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ−低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、低級アルキルカルボニルオキシ、アミノ、モノ(低級アルキル)アミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、モノ(低級アルケニル)アミノ、ジ(低級アルケニル)アミノ、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルキルカルボニルアミノ、置換アミノ(ここで、窒素上の2個の置換基は、窒素と一緒になって、ヘテロシクリルを形成する)、低級アルキルカルボニル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、シアノ、ハロゲン、及びニトロから独立して選択される1又は2個の更なる置換基により置換されているか;又は、2個の隣接する置換基がメチレンジオキシであることができる二価ベンゼン残基;あるいは非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、アミノ(低級アルキル、低級アルケニル及びアルキルカルボニルより選択される1又は2個の置換基により場合により置換されている)、ハロ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、もしくはハロゲンにより更に置換されている二価ピリジン残基(Z=N)を表し;Rは、水素、低級アルキルカルボニル、ヒドロキシ−低級アルキル又はシアノ−低級アルキルを表し;そしてRは、(b)、(c)及び(d)より選択される基を表す]で示される化合物;又はその薬学的に許容しうる塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換フラザノベンゾイミダゾールのプロドラッグ、その製造方法、及びそれを含む医薬組成物、新生物疾患(neoplastic diseases)及び自己免疫疾患の治療のための他の薬学的に活性な化合物の1種以上と場合により併用したその使用に関する。
【0002】
癌は、ヒトにおける死亡の第一因の一つである。新生物疾患に対する多様な薬物が開発され、手術及び放射線療法などの技術を利用できるが、新生物疾患を処置する代替的かつ改善された方法が依然として求められている。
【0003】
自己免疫疾患は、リンパ球の活性化及び増殖の終結に欠陥があることによる異常なリンパ球増殖に関連している。多くの場合そのような疾患は、リウマチ様関節炎などの炎症、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなどに関連している。そのような疾患の処置は、抗炎症剤及び免疫抑制剤を中心とするものであるが、多くの症例で重度の副作用が示されている。このため、副作用の少ない新規な作用機序の代替的な薬物が求められている。
【0004】
アポトーシスは、プログラム細胞死を起こす一連の細胞内イベントを説明するために用いられる用語である。様々なアポトーシス経路があり、その幾つかは特徴づけられているが、その他は未だに解明されていない。細胞分裂とアポトーシスの間のバランスが乱れると、癌、自己免疫障害、神経変性疾患、及び心臓血管疾患を含む、生命を脅かす疾患が起こる可能性がある。
【0005】
近年になり、プログラム細胞死(アポトーシス)が、細胞分裂と同じくらい多細胞生物の健康にとって重要であることが明らかとなった。発育又は組織修復の間繰り返される細胞分裂及び分化により、余剰の細胞又は有害でさえある細胞が生じる。組織の恒常性を維持するためには、これらの細胞を除去するか又は死滅させなければならない。生物の細胞増殖とアポトーシスの間の繊細な相互作用は、個々の細胞が分裂を経るか細胞周期を休止するか、又はプログラム細胞死にゆだねるかを決定する複雑な分子バランスに反映される。
【0006】
細胞増殖の調節異常、又は適切な細胞死の欠如は、広範囲の臨床的意義を有する。そのような調節異常に関連する多くの疾患は、過剰増殖、炎症、組織再構築及び修復を伴う。この分類でよく知られた適応症には、癌、再狭窄、新生内膜増殖、血管形成、子宮内膜症、リンパ球増殖性障害、移植関連病変(移植片拒絶)、ポリープ症、組織再構築の症例での神経機能喪失などが含まれる。そのような細胞は、細胞分裂の正常な調節制御が欠如している可能性があり、適切な細胞死を行うことができない可能性もある。
【0007】
アポトーシスは、ほとんどの種類の増殖性新生物疾患を阻害又は遅延させるため、アポトーシスを誘導することが、癌、特に典型的な化学療法、放射線療法及び免疫療法に耐性を示す癌のタイプを処置するための選択枝となる(Apoptosis and Cancer Chemotherapy, Hickman and Dive, eds., Blackwell Publishing, 1999)。自己免疫及び移植関連の疾患及び病変においても、アポトーシスを誘導する化合物を用いて、正常な細胞死の過程を復活させてもよく、それにより症状を根絶することができ、疾患を治癒しうる。更に、再狭窄、すなわち動脈壁の血管平滑筋細胞の蓄積、及び細菌及びウイルス感染細胞の根絶不能による永続的感染において、アポトーシスを誘導する化合物を使用してもよい。更に、アポトーシスは、上皮細胞、内皮細胞、筋細胞、及び細胞外マトリックスと接触していない他の細胞において、誘導又は再健することができる。これらの細胞は、潜在的に他の器官でコロニーを形成することができ、それにより新生物、子宮内膜症などの病変に発展することがある。
【0008】
WO2004/103994は、式(I):
【化1】


[式中、R、R〜R及びXは、癌細胞中のアポトーシスの誘導物質としての特定の広く定義された意味を有する]で示されるフラザノベンゾイミダゾール化合物を開示する。
【0009】
参考文献は更に、これらの化合物がプロドラッグの形態で投与され、ヒト又は動物中で分解されて、対応する式(I)の化合物が得られることを開示し、また、天然に存在するアミノ酸の、他の種類のプロドラッグアミドの間で、例えば、式(I)の化合物の適切なアミノ基及びアミノ酸の酸官能基から形成されるアミドがプロドラッグとして好適であることを述べている。
【0010】
WO2004/103994において例示されているようなフラザノベンゾイミダゾールの水溶解度は概して低い。このことが、医薬組成物、特に非経口投与用の組成物の調製についての問題となっている。この参考文献は、式(I)の化合物の水溶性塩の水溶液を、非経口投与用に使用することを非常に一般的に示唆しているに過ぎない。
【0011】
上記式(I)[式中、Rは、少なくとも1個のアミノ基により置換されているアリール又はヘテロアリール基を表す]のフラザノベンゾイミダゾール、ならびにグリシン(Gly)、アラニン(Ala)及びリジン(Lys)より選択される天然アミノ酸から誘導される選択されたアミドは、著しく改善した水溶解度を示し、インビボで親芳香族又はヘテロ芳香族アミンに開裂し、それによりプロドラッグとして作用することが現在見出されている。水溶解度の増大は医薬組成物の調製を容易にし、親薬物と比較して溶解度の向上した賦形剤に対する必要性を減少させる。このことは、これらの賦形剤が不要な毒性効果の原因となることがあるため、特別に好都合である(Excipient Toxicity and Safety; Weiner, Myra L.; Kotkoskie, Lois A.; Editors. (2000), Publisher: Dekker, New York, USA. Pharmacological effects of formulation vehicles: implications for cancer chemotherapy; ten Tije, Albert J.; Verweij, Jaap; Loos, Walter J.; Sparreboom, Alex; Clinical Pharmacokinetics (2003), 42(7), 665-685)。
【0012】
特にリジン(Lys)誘導プロドラッグについては、非常に強く増大した溶解度が、特に広いpH範囲にわたって、わずかに酸性の条件でも観察される。リジン誘導体のこれらの特異的な溶解度特性は、より高いpH値においても、薬学的に許容しうる組成物の調製の際にとりわけ優れた柔軟性を提供する。更に、マウスにおける薬物動態学的研究において、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)及びリジン(Lys)から誘導されたアミドプロドラッグが、他の天然アミノ酸から誘導されたものよりも著しく高い、動物の親薬物への曝露(AUC(曲線下面積)値と表される)を提供する。例えば、AUC値は、アスパラギン(Asn)、セリン(Ser)、グルタミン(Gln)又はアルギニン(Arg)などの他の非常に類似した天然アミノ酸から誘導したアミドプロドラッグの投与後に見出されたAUC値よりも50%以上高い。
【0013】
加えて、本出願の実施例1の特異的なLys誘導プロドラッグは、対応する親薬物よりも、より良い耐性があり、腫瘍の薬物へのより長い曝露を提供し、最大耐量の動物腫瘍モデルにおいてより高い有効性を有することが見出された。これらの驚くべき効果は更に、新生物疾患及び自己免疫疾患の治療におけるこのプロドラッグのより高い有効性を示唆する。
【0014】
全血インビトロアッセイでは、フラザン環のアミノ基から誘導されたアミノ酸アミドは、アミノ酸アミドが上記式(I)における残基Rの置換基である対応する誘導体よりも非効率に、親薬物に変換される。このことは、式(I)の化合物のアミノ基から誘導される全てのアミドならびに天然アミノ酸がプロドラッグとして等しく適しているわけではないことを示している。
【0015】
他の様々な種類のアミンプロドラッグが文献に記載されている(例えば、A. L. Simplicio, J. M. Clancy, J. F. Gilmer, Molecules 2008, 13, 519-546; Prodrugs: Challenges and Rewards, [in: Biotechnol.: Pharm. Aspects, 2007; 5(Pt.2)] V. J. Stella, R. T. Borchardt, M. J. Hageman, R. Oliyai, H. Maag, J. W. Tilley, Editors, USA. 2007, pages 102-131, Publisher: (Springer, New York, N. Y.); J. Rautio, H. Kumpulainen, T. Heimbach, R. Oliyai, D. Oh, T. Jarvinen, J. Savolainen, Nature Rev. Drug Discovery 2008, 7, 255-270)。しかし、全ての可能性のあるプロドラッグが全ての場合において効率的に親薬物に変換されるわけではなく、それは、フラザノベンゾイミダゾールのアミジン及びスルファマート誘導体により実証され、これらは、動物での研究における投与後、親薬物の定量化可能な血漿中濃度を与えない。このことは、既定の薬物のために、全ての必要な特性を組み合わせた好適なプロドラッグを特定しようとする課題を強調する。
【0016】
したがって、本発明は、式(II):
【化2】


[式中、
【化3】


は、
非置換であるか、又は低級アルキル、ハロ−低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ−低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、低級アルキルカルボニルオキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルキルカルボニルアミノ、置換アミノ(ここで、窒素上の2個の置換基は、窒素と一緒になって、ヘテロシクリルを形成する)、低級アルキルカルボニル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、シアノ、ハロゲン、及びニトロから独立して選択される1又は2個の更なる置換基により置換されているか;又は、2個の隣接する置換基がメチレンジオキシであることができる、二価ベンゼン残基;あるいは
非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、アミノ(低級アルキル、低級アルケニル及びアルキルカルボニルより選択される1又は2個の置換基により場合により置換されている)、ハロ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、もしくはハロゲンにより更に置換されている二価ピリジン残基(Z=N)を表し;
は、水素、低級アルキルカルボニル、ヒドロキシ−低級アルキル又はシアノ−低級アルキルを表し;そして
は、以下:
【化4】


より選択される基を表す]で示される化合物、及びその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0017】
式(II)のフラザノベンゾイミダゾールは改善した水溶解度を有するプロドラッグであり、インビボで開裂されて、式(I−II):
【化5】


[式中、R及びZは式(II)と同義である]で示される対応する親薬物を提供する。化合物は、細胞アッセイ及び全血においても開裂される。
【0018】
したがって、式(II)のフラザノベンゾイミダゾールは、WO2004/103994に詳細に記載されている対応する親薬物の同じ薬剤用途を有する。とりわけ、式(II)の化合物は、癌細胞においてアポトーシスを選択的に誘導し、新生物疾患及び自己免疫疾患の処置に使用することができる。したがって、本発明はまた、医薬として使用される式(II)の化合物に関する。本発明は更に、そのような化合物の合成方法、式(II)の化合物を含有する医薬組成物、新生物疾患及び自己免疫疾患の処置用の医薬組成物を調製するための式(II)の化合物の使用、ならびにそのような式(II)の化合物又はそれを含む医薬組成物を使用する新生物疾患及び自己免疫疾患の処置方法に関する。
【0019】
本出願の目的のため、接頭辞「低級」は、1〜最大7個の炭素原子、特に1〜最大4個の炭素原子を有するラジカル(当該ラジカルは直鎖、又は単一もしくは多数の枝分かれを有する分岐鎖のいずれかである)を示す。
【0020】
化合物、塩などについて複数形が使用される場合、これは単一の化合物、塩なども意味すると解する。
【0021】
二重結合は、原則として、E−又はZ−配置を有することができる。したがって、本発明の化合物は、異性体混合物又は単一の異性体として存在してもよい。特定されていない場合は、両方の異性体形態が意図される。
【0022】
式(II)において、特定の配置を有するとは示されていない不斉炭素原子は、(R)−、(S)−又は(R,S)−配置、好ましくは(R)−又は(S)−配置で存在してもよい。したがって、本化合物は、異性体の混合物又は純粋な異性体として、好ましくは鏡像異性体−純粋な立体異性体として存在してもよい。
【0023】
本発明は、式(I)の化合物の可能な互変異性体にも関する。
【0024】
低級アルキルは、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有し、ブチル、例えばn−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、プロピル、例えばn−プロピルもしくはイソプロピル、エチル、又はメチルである。好ましくは、低級アルキルは、メチル又はエチルである。
【0025】
シクロアルキルは、好ましくは、3〜7個の環原子を有し、非置換であるか、又は、例えば低級アルキルもしくは低級アルコキシにより置換されていてもよい。シクロアルキルは、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル又はメチルシクロペンチルである。
【0026】
アリールは、5〜10個の炭素原子を有する単環式もしくは二環式の縮合環芳香族基、例えばフェニル、1−ナフチルもしくは2−ナフチルを表すか、又はフェニル基を含む部分飽和二環式縮合環、例えばインダニル、ジヒドロ−もしくはテトラヒドロナフチルを表す。
【0027】
【化6】


が、二価ベンゼン残基を表し、更なる置換基を含む場合、これらは、好ましくは、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、アミノ(低級アルキル、低級アルケニル及びアルキルカルボニルより選択される1又は2個の置換基により場合により置換されている)、メチレンジオキシ、ハロ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル又はハロゲンであり、より好ましくは、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、メチレンジオキシ、ハロ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル又はハロゲンである。
【0028】
二価ベンゼン残基は、好ましくは、1,4−フェニレンである。
【0029】
ヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する芳香族基を表し、単環式又は二環式である。単環式ヘテロアリールは、窒素、硫黄及び酸素より選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含有する5又は6員ヘテロアリール基を含む。二環式ヘテロアリールは、9又は10員縮合環ヘテロアリール基を含む。ヘテロアリールの例は、ピロリル、チエニル、フリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、そのような単環式へテロアリール基のベンゾ縮合誘導体、例えばインドリル、ベンゾイミダゾリルもしくはベンゾフリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、又はプリニルを含む。
【0030】
【化7】


が、二価ピリジン基を表し、更なる置換基を含む場合、これらは、好ましくは、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、アミノ(低級アルキル、低級アルケニル及びアルキルカルボニルより選択される1又は2個の置換基により場合により置換されている)、ハロ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、又はハロゲンであり、より好ましくは、低級アルコキシ、アミノ又はハロゲンである。
【0031】
好ましくは、二価ピリジン基は、式:
【化8】


で示される基である。
【0032】
ヘテロシクリルは、好ましくは、窒素、酸素及び硫黄より選択される、1、2又は3個のヘテロ原子を含み、他に示さない限り、炭素又は窒素に結合していてもよい4〜10個の原子を含有する、飽和、部分飽和又は不飽和の、単環又は二環を示し、ここで環窒素原子は、低級アルキル、アミノ低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル及びアシルより選択される基により場合により置換されていてもよく、環炭素原子は、低級アルキル、アミノ低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、ヘテロアリール、低級アルコキシ、ヒドロキシ又はオキソにより置換されていてもよい。ヘテロシクリルの例は、ピロリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ジオキソラニル及びテトラヒドロピラニルである。
【0033】
アシルは、例えば、低級−アルキルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、アリールカルボニル、アリール−低級アルキルカルボニル又はヘテロアリールカルボニルを示す。アシルは、好ましくは、低級アルキルカルボニル、とりわけプロピオニル又はアセチルである。
【0034】
ヒドロキシ−低級アルキルは、好ましくは、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル又は2−ヒドロキシ−2−プロピルである。
【0035】
シアノ−低級アルキルは、好ましくは、シアノメチル及びシアノエチルを示す。
【0036】
ハロ−低級アルキルは、好ましくは、フルオロ−低級アルキル、特にトリフルオロメチル、3,3,3−トリフルオロエチル又はペンタフルオロエチルである。
【0037】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0038】
低級アルコキシは、特にメトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ又はtert−ブチルオキシである。
【0039】
塩は、特に薬学的に許容され得る塩である。そのような塩は、例えば、塩基性窒素原子を有する式(II)の化合物から、好ましくは、有機酸又は無機酸との酸付加塩として形成される。適切な無機酸は、例えば、ハロゲン酸、例えば塩酸、硫酸又はリン酸である。好適な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸又はアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、桂皮酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、2−、3−もしくは4−メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピルスルファミン酸、又は他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸である。
【0040】
単離又は精製の目的のために、薬学的に許容できない塩、例えばピクリン酸塩又は過塩素酸塩を使用することもできる。治療的使用のためには、薬学的に許容され得る塩又は遊離化合物(医薬調製物の形態で適用しうるもの)のみが用いられているため、これらは好ましい。
【0041】
例えば新規化合物の精製又は同定において、遊離形態の新規化合物と、中間体として使用されうる塩などのそれらの塩の形態のものとには密接な関係があることを考慮すると、前述出又は後述の遊離化合物を指す場合、適宜かつ便宜的に、対応する塩を指すとも理解されるべきである。
【0042】
式(II)の化合物は、対応する親薬物と同じように使用することができる。したがって、本発明はまた、医薬としての使用のための、とりわけ新生物疾患、自己免疫疾患、移植関連病変及び/又は変性疾患の処置用の、とりわけ固形新生物疾患の処置用の、前述のとおり定義した式(II)の化合物に関する。
【0043】
本発明の式(II)の化合物は、特に新生物疾患及び自己免疫疾患に対する治療有効性を示す。とりわけ、本発明の化合物は、悪性腫瘍、例えば、上皮性新生物、扁平上皮細胞新生物、基底細胞性新生物、移行細胞乳頭腫及び移行細胞癌、腺腫及び腺癌、付属器官及び皮膚付属器官新生物、粘液性類表皮新生物、嚢胞性新生物、粘液性及び漿液性新生物、導管性、小葉性及び髄様新生物、腺房細胞新生物、複合上皮性新生物、特殊な性腺新生物、傍神経節腫及びグロムス腫瘍、母斑及び黒色腫、軟部組織腫瘍及び肉腫、線維腫性新生物、粘液腫性新生物、脂肪腫性新生物、筋腫性新生物、複合性混合性及び間質性新生物、線維上皮性新生物、滑液様新生物、中皮性新生物、胚細胞新生物、トロホブラスト性新生物、中腎腫、血管腫瘍、リンパ管腫瘍、骨及び軟骨新生物、巨細胞腫、その他の骨腫瘍、歯原性腫瘍、神経膠腫、神経上皮腫性新生物、髄膜腫、神経鞘性腫瘍、顆粒細胞性腫瘍及び肺胞性軟部肉腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、他のリンパ網状新生物、形質細胞腫瘍、肥満細胞腫瘍、免疫増殖性疾患、白血病、その他の骨髄増殖性障害、リンパ増殖性障害、ならびに骨髄異形成症候群に対して活性である。
【0044】
とりわけ、本発明の式(II)の化合物は、固形新生物疾患、例えば、上皮性新生物、扁平上皮細胞新生物、基底細胞性新生物、移行細胞乳頭腫及び移行細胞癌、腺腫及び腺癌、付属器官及び皮膚付属器官新生物、粘液性類表皮新生物、嚢胞性新生物、粘液性及び漿液性新生物、導管性、小葉性及び髄様新生物、腺房細胞新生物、複合上皮性新生物、特殊な性腺新生物、傍神経節腫及びグロムス腫瘍、母斑及び黒色腫、軟部組織腫瘍及び肉腫、線維腫性新生物、粘液腫性新生物、脂肪腫性新生物、筋腫性新生物、複合性混合性及び間質性新生物、線維上皮性新生物、滑液様新生物、中皮性新生物、胚細胞新生物、トロホブラスト性新生物、中腎腫、血管腫瘍、リンパ管腫瘍、骨及び軟骨新生物、巨細胞腫、その他の骨腫瘍、歯原性腫瘍、神経膠腫、神経上皮腫性新生物、髄膜腫、神経鞘性腫瘍、顆粒細胞性腫瘍及び肺胞性軟部肉腫に対する治療有効性を示す。
【0045】
本発明の化合物は同様に、全ての臓器(皮膚、心臓、腎臓、骨髄、目、肝臓、脾臓、肺、筋肉、中枢及び末梢神経系、結合組織、骨、血管及びリンパ管、尿生殖器系、耳、軟骨、一次及び二次リンパ系、例えば骨髄、リンパ節、胸腺、胃腸管(中咽頭、食道、胃、小腸、結腸及び直腸を含む)、(上述の臓器の一部から単一細胞レベル及び下部構造、例えば幹細胞に至るまで))に関与する、自己免疫疾患、例えば全身性、円板状、又は亜急性皮膚エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、抗リン脂質症候群、CREST、進行性全身性硬化症、混合性結合組織病(シャープ症候群)、ライター症候群、若年性関節炎、寒冷凝集素病、本態性混合型クリオグロブリン血症、リウマチ熱、強直性脊椎炎、慢性多発性関節炎、重症筋無力症、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギラン・バレー症候群、皮膚筋炎/多発筋炎、自己免疫性溶血性貧血、血小板減少性紫斑症、好中球減少症、I型糖尿病、甲状腺炎(橋本病及びグレーブ病を含む)、アジソン病、多腺性症候群、天疱瘡(尋常性、落葉状、皮脂性及び増殖性(vegetans))、水疱性及び瘢痕性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、後天性表皮水疱症、線状IgA病、硬化性萎縮性苔癬、デューリング病、尋常性乾癬、滴状、汎発性膿疱性及び局所性膿疱性乾癬、白斑、円形脱毛症、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、全ての形態の糸球体腎炎、肺出血(グッドパスチャー症候群)、IgA腎症、悪性貧血及び自己免疫性胃炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む)、ベーチェット病、セリアック・スプルー病、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性心筋炎、肉芽腫性睾丸炎、睾丸炎を伴わない精子形成欠如、特発性及び後発性肺線維症、自己免疫病因の可能性のある炎症性疾患、例えば壊疽性膿皮症、紅色苔癬、サルコイドーシス(ロフグレン及び皮膚/皮下型を含む)、環状肉芽腫、アレルギー性I型及びIV型免疫反応、気管支喘息、花粉症、アトピー性、接触性及び空気伝染性皮膚炎(airborne-dermatitis)、大血管炎(巨細胞及び高安動脈炎)、中血管炎(結節性多発性動脈炎、川崎病)、小血管炎(ウェゲナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群、顕微鏡的多発性血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、本態性クリオグロブリン性血管炎、皮膚白血球破砕性脈管炎(cutaneous leukoklastic angiitis))、過敏症症候群、中毒性表皮壊死症(スティーブンス・ジョンソン症候群、多形性紅斑)、薬物副作用による疾患、I〜VI型(クームス分類)免疫反応形態による、皮膚的、臓器特異的及び全身的影響の全形態、急性及び慢性移植片対宿主病及び宿主対移植片病などの移植関連病変に対して活性である。
【0046】
式(II)の化合物は、単独で又は1種以上の他の治療剤と併用して投与することができ、可能な併用療法は、固定した組み合わせの形態をとるか、又は本発明の化合物及び1種以上の他の治療剤の投与を交互にもしくは互いに独立して行うか、又は固定した組み合わせと1種以上の他の治療剤とを併用投与する。その他に又はそれに加えて、式(II)の化合物を、特に、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科的介入、又はこれらの組み合わせを併用して腫瘍治療用に投与することができる。長期療法は、上記のとおり他の処置方策という面において補助療法と同様に、同じく可能である。他の可能な処置は、腫瘍の退縮後の患者の状態を維持する治療、又は、例えばリスクのある患者への化学予防療法である。特に好ましいのは、式(II)の化合物の放射線療法との併用である。
【0047】
可能な併用のための治療剤は、特に1種以上の細胞増殖抑制化合物又は細胞毒性化合物、例えば、インダルビシン、シタラビン、インターフェロン、ヒドロキシ尿素、ビスルファン、又はポリアミン生合成の阻害剤、タンパク質キナーゼ、特にセリン/トレオニンタンパク質キナーゼ、例えばタンパク質キナーゼCの阻害剤、又はチロシンタンパク質キナーゼ、例えば上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼの阻害剤、サイトカイン、負の増殖調節因子、例えばTGF−β又はIFN−β、アロマターゼ阻害剤、典型的な細胞増殖抑制剤、SH2ドメインのリン酸化タンパク質との相互作用の阻害剤、BcI−2の阻害剤、ならびにBcI−2ファミリーメンバー、例えばBax、Bid、Bad、Bim、Nip3及びBH3(タンパク質のみ(-only proteins))の調整物質を含む群より選択される1種以上の化学療法剤である。
【0048】
本発明の化合物は、ヒトの管理用(予防用、好ましくは、治療用)だけでなく、他の温血動物、例えば商業的に有用な動物、例えばマウス、ウサギ、ラット又はモルモットなどのげっ歯類の処置用のものでもある。そのような化合物は、他の化合物との比較を可能にする参考標準物質として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、1週間に1回の静脈内適用後のSW480結腸直腸癌異種移植片における実施例1のリジン−プロドラッグ及び対応する親薬物の抗腫瘍活性の比較を示す。
【図2】図2は、1週間に3回の静脈内適用後のSW480結腸直腸癌異種移植片における前記化合物の抗腫瘍活性の比較を示す。
【0050】
後述の式(II)の好ましい化合物の群を用いて、前述の一般的定義にある置換基の定義を合理的に用いて、例えば、より一般的な定義を、より具体的な定義又は特に、好ましいと特徴づけられた定義に置き換えてもよい。
【0051】
本発明の具体的な実施態様は、式(II)の化合物それ自体、すなわち塩の形態ではない化合物である。すなわち、塩形態は、本化合物の水性媒体に対する十分な溶解度を与えるために必要ではないことが見出されている。このことは、とりわけ、Rが、式:
【化9】


で示される基を表す、式(II)の化合物について当てはまる。
【0052】
これらの化合物は既に、pH6.5〜5の水性媒体に非常によく溶解する。
【0053】
好ましいのは、基:
【化10】


が、1,4−フェニレン、又は式:
【化11】


で示される基を表す、式(II)の化合物である。
【0054】
式(II)の化合物の別の好ましい群は、Rが、水素又はシアノ−低級アルキル、とりわけシアノエチルを表す、化合物である。
【0055】
式(II)の化合物の更なる特に好ましく選択されたものは、式:
【化12】


で示される化合物、特に、式:
【化13】


で示される化合物である。
【0056】
最も好ましいのは、式:
【化14】


を有する化合物、及びその薬学的に許容しうる塩、例えば塩酸塩である。
【0057】
本発明の化合物は、それ自体公知の方法、とりわけ、式(I−II):
【化15】


[式中、R及びZは、式(II)について定義されたとおりであり、そして、基:
【化16】


は、場合により、上記で定義された1又は2個の更なる置換基により更に置換されていることができる]で示される化合物、又は保護形態の官能基を含むそのような化合物の誘導体、あるいはその塩を、
(1)式(III):
【化17】


[式中、
10は、水素(Gly);メチル(Ala)及び保護されたアミノブチル(Lys)より選択され、
11は、適切なアミノ保護基である]で示されるアミノ酸でアシル化し、
(2)得られた化合物の保護された誘導体中の任意の保護基を除去して、式(II)の化合物を得て、所望であれば
(3)前記式(II)の化合物を上記塩に変換するか、又は式(II)の化合物の塩を対応する式(II)のフリー化合物もしくは別の塩に変換し、及び/又は異性体生成物化合物の混合物を個々の異性体に分離する方法により調製してもよい。
【0058】
式(I−II)の化合物の式(III)のアミノ酸でのアシル化は、通常適切な極性又は双極性非プロトン性溶媒の存在下、必要に応じて冷却又は加熱しながら、例えば、約−80℃〜約+150℃、より好ましくは、−30℃〜+120℃の温度範囲、特におよそ0℃前後〜使用する溶媒の還流温度の範囲にて、それ自体公知の手法で実行する。場合により、適切な塩基、とりわけ、ピリジンもしくはコリジンなどの芳香族塩基、又はトリエチルアミンもしくはジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミン、又は無機塩基性塩、例えば炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウムを加える。
【0059】
アシル化は、ペプチド化学においてそれ自体公知のアミド形成に使用される条件下で、例えば、カルボキシ基についての活性化剤、例えば、N,N’−ジエチル−、N,N’−ジプロピル−、N,N’−ジイソプロピル−、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド及びN−(3−ジメチルアミノイソプロピル)−N’−エチルカルボジイミド−塩酸塩(EDC)などのカルボジイミドを用い、又は薬剤、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、O−(7−アザ−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、2−(2−オキソ−1−(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TPTU)を用い、場合により適切な塩基、触媒又は共試薬の存在下で達成しうる。カルボキシ基は、例えば、塩化チオニル又は塩化オキサリルとの反応により、ハロゲン化アシル、好ましくは、塩化アシルとして、あるいは場合により適切な塩基、触媒又は共試薬の存在下、クロロギ酸エチルなどのハロゲノホルマートとの反応により、対称又は非対称無水物として活性化されてもよい。
【0060】
反応に関与させるべきでないため、式(I−II)もしくは(III)の化合物中に1種以上の他の官能基、例えばカルボキシ、ヒドロキシもしくはアミノが存在する場合又は保護される必要がある場合、それらは通常、アミド、特にペプチド化合物、セファロスポリン、ペニシリン、核酸誘導体及び糖(それらは当業者に公知である)の合成で適用されるような保護基である。アミノ基の適切な保護基は、例えば、カルバミン酸t−ブチル、カルバミン酸ベンジル又はカルバミン酸9−フルオレニルメチルである。
【0061】
保護基は、前駆体内に既に存在してもよく、関与する官能基が望まない二次反応、例えばアルキル化、アシル化、エーテル化、エステル化、酸化、加溶媒分解及び類似の反応を受けるのを防がなければならない。すなわち、望まない二次反応を受けずに、例えば生理学的条件と類似の条件下で、典型的には加溶媒分解、還元、光分解又は酵素活性により容易に除去されること、そして最終生成物中に存在しないことが保護基の特徴である。保護基が上述及び後述の反応に適していることは、専門家に公知であるか、又は容易に確証できる。
【0062】
そのような保護基によるそのような官能基の保護、保護基そのもの、及びそれらの除去反応は、例えばペプチド合成のための標準的参考図書、ならびに保護基に関する専門書、例えば、J. F. W. McOmie, "Protective Groups in Organic Chemistry", Plenum Press, London and New York 1973, in "Methoden der organischen Chemie" (Methods of organic chemistry), Houben-Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974及びT. W. Greene, G. M. Wuts "Protective Groups in Organic Synthesis", Wiley, New York, 2006に記載されている。
【0063】
所望であれば実施される追加の製造工程において、反応に関与すべきではない出発化合物の官能基が、非保護形態で存在してもよく、又は例えば「保護基」として先に述べた1種以上の保護基により保護されてもよい。その保護基は、その後記載された方法の一つにより、完全に又は部分的に除去される。
【0064】
塩形成基での式(II)の化合物の塩を、それ自体公知の手法で製造してもよい。つまり、式(II)の化合物の酸付加塩を、酸又は適切なアニオン交換試薬での処理により得てもよい。
【0065】
塩は、通常、例えば、酸付加塩について、適切な塩基性薬剤、例えばアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、又はアルカリ金属水酸化物、典型的には炭酸カリウム又は水酸化ナトリウムで処理することにより、遊離化合物に変換することができる。
【0066】
この章で述べられた変換に類似する反応を、適切な中間体のレベルで行ってもよいことが強調されなければならない。
【0067】
本明細書に記載された全ての工程は、公知の反応条件下で、好ましくは具体的に言及された条件下で、溶媒又は希釈剤(好ましくは使用される試薬に対して不活性であり、かつこれらを溶解できるもの)の非存在下又は通常は存在下で、触媒、縮合剤又は中和剤、例えば、イオン交換体、典型的にはカチオン交換体(例えば、H型)の非存在下又は存在下で、反応及び/又は反応物の種類に応じて、低温、常温、又は高温で、例えば、−100℃〜約190℃、好ましくは約−80℃〜約150℃の範囲で、例えば、−80℃〜60℃で、−20〜40℃で、室温で、又は使用される溶媒の沸点で、大気圧下、又は適宜加圧した密閉容器中で、及び/又は不活性雰囲気中で、例えば、アルゴン又は窒素下で、実施することができる。
【0068】
これらが塩形成基を含む場合、塩は、全ての出発化合物及び過渡的物質中に存在しうる。塩は、反応がそれにより妨害されないならば、そのような化合物の反応時にも存在しうる。
【0069】
全ての反応段階で、生成した異性体混合物は、個々の異性体、例えばジアステレオマーもしくは鏡像異性体に、又は異性体の混合物、例えばラセミ体もしくはジアステレオマー混合物に分離することができる。
【0070】
好ましい実施態様において、式(II)の化合物は、実施例に記載する製造法及び製造工程に従って、あるいはそれと同様に調製される。
【0071】
式(II)の化合物(その塩を含む)は、水和物又は溶媒和物の形態とすることもできる。
【0072】
式(I−II)及び(III)の出発物質は公知であり、市販であるか、あるいは当技術分野で公知の方法と同様に又はそれに従って合成することができる。式(I−II)の化合物の製造は、例えば、WO2004/103994に記載されており、例えば、以下の一般的な反応スキームに従って実行することができる。
【化18】

【0073】
式(II)の化合物はまた、対応するリジンアミドプロドラッグについて以下の反応スキームに示すように製造することができ、ここで、「Cbz」は、ベンジルオキシカルボニルを意味する。
【化19】

【0074】
この方法は、本式(II)の化合物を製造するために使用できるだけでなく、WO2004/103994に定義された式(I)の化合物のプロドラッグアミドを、一般に、任意の天然に存在するアミノ酸で、例えば、上記で定義された式(I−II)の化合物のプロドラッグアミドを、前記アミノ酸、すなわち、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン又はバリンで製造するためにも好都合に使用することができる。
【0075】
したがって、本発明はまた、
式(II−G):
【化20】


で示される化合物、又はその塩の製造方法であって、
(a)式:
【化21】


で示される化合物を、式:
【化22】


で示されるα−アミノ酸誘導体と、活性化剤、及び場合により適切な塩基、触媒又は共試薬の存在下、好ましくはO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)及び2,4,6−コリジンの存在下で、反応させて、式:
【化23】


で示される化合物を得る工程、
(b)工程(a)の生成物を、臭素又は臭化第二銅、好ましくは臭化第二銅などの臭素化剤と反応させて、式:
【化24】


で示されるブロモ化合物を得る工程、
(c)前記工程(b)で得られた前記ブロモ化合物を、式:
【化25】


で示される化合物と、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下で反応させて、式:
【化26】


で示される化合物を得る工程、
(d)存在する任意の保護基を、基「保護されたアミノ酸」から除去して、式(II−G)の化合物を得る工程、ならびに、場合により
(e)前記式(II−G)の化合物をその塩に変換する工程を含む方法
[式中、
式R及び
【化27】


は、上述の意味の一つを有し、
2−Gは、式:
【化28】


で示される基であり、
「アミノ酸」は、前記アミノ酸のα−炭素原子からカルボキシル基を除去することにより、天然のα−アミノ酸から誘導された残基を表し、そして
「保護されたアミノ酸」は、「アミノ酸」と同じアミノ酸であり、第一級アミノ基、及び必要であれば更に前記アミノ酸の他の官能基が適切な保護基により保護されていることを意味する。適切な保護基は当業者に公知であり、例えば、"Protective Groups in Organic Synthesis." Third Edition By Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts. John Wiley & Sons, New York. 1999. xxi + 779 pp. 16 × 24 cm. ISBN 0-471-16019-9に記載されている。
【0076】
本発明はまた、式 (II)の化合物を活性要素又は成分として含み、医薬として、とりわけ、上記疾患の処置に使用することができる医薬組成物に関する。
【0077】
温血動物、特にヒトへの経腸投与、例えば経鼻、口腔内、直腸、特に経口投与用、又は非経口投与、例えば静脈内、筋肉内又は皮下投与用の組成物が特に好ましい。組成物は、活性成分を、好ましくは薬学的に許容しうる担体と一緒に含む。活性成分の用量は、処置される疾患、及び動物種、その年齢、体重、及び個々の状態、個々の薬物動態学的データ、ならびに投与様式に依存する。
【0078】
本発明はまた、ヒト又は動物の体の予防的管理又は特に治療的管理の方法に、とりわけ新生物疾患、自己免疫疾患、移植関連病変、及び/又は変性疾患、特に上述のものを処置する方法に使用される医薬組成物に関する。
【0079】
本発明はまた、医薬活性成分として式(II)の化合物又はその塩を含む医薬調製物の調製方法、及びそのための式(II)の化合物の使用に関する。
【0080】
本発明はまた、生分解性ポリマーなどの局所薬物送達用のデポーシステムにおける式(II)の化合物の使用に関する。
【0081】
式(II)の化合物を、活性成分として、前記疾患に対して予防的に活性な量又は特に治療的に活性な量で含む、処置を必要とする温血動物、特にヒト又は哺乳類の新生物疾患、自己免疫疾患、移植関連病変、及び/又は変性疾患の予防的管理又は特に治療的管理のための医薬組成物が同様に好ましい。
【0082】
医薬組成物は、約1%〜約95%の活性成分を含む。単回投与形態は、好ましくは約20%〜約90%の活性成分を含み、単回投与式でない形態は、好ましくは約5%〜約20%の活性成分を含む。単位投与形態は、例えばコーティング錠及び非コーティング錠、アンプル、バイアル、坐剤、又はカプセル剤である。更なる投与形態は、例えば軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、フォーム剤、チンキ剤、リップスティック剤、滴剤、スプレー剤、分散剤などである。例は、活性成分約0.01g〜約1.0gを含有するカプセル剤である。
【0083】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の手法、例えば、従来の混合、造粒、コーティング、溶解、又は凍結乾燥法により製造される。
【0084】
活性成分の溶液、特に水溶液、とりわけ等張性の水溶液の使用が特に好ましく、例えば活性成分を単独で、又は担体、例えばマンニトールと一緒に含む凍結乾燥組成物の場合には、使用前に作製することができる。医薬組成物は、減菌されていてもよく、ならびに/あるいは賦形剤、例えば保存料、安定化剤、湿潤剤及び/又は乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩及び/又は緩衝液を含んでいてもよく、それ自体公知の手法、例えば従来の溶解及び凍結乾燥法により調製される。前記溶液又は懸濁液は、粘度上昇剤、典型的にはカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンもしくはゼラチン、又は可溶化剤、例えばTween 80(登録商標)(モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン)を含んでいてもよい。
【0085】
注射可能な調製物の製造は通常、例えばアンプル又はバイアルへの充填、及び容器の密閉と同じく、滅菌条件下で実施される。
【0086】
適切な担体は、特に充填剤、例として糖、例えば乳糖、ショ糖、マンニトールもしくはソルビトール、セルロース調製物、及び/又はリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウムもしくはリン酸水素カルシウム、ならびにまた結合剤、例としてデンプン、例えばトウモロコシ、小麦、米、もしくはジャガイモデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドンなど、ならびに/あるいは所望であれば、崩壊剤、例えば上述のデンプン、更にカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。さらなる賦形剤は、特に流動調整剤及び滑沢剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸又はその塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、及び/又はポリエチレングリコールもしくはその誘導体である。
【0087】
錠剤のコアは、とりわけ、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタンを含んでいてもよい濃縮糖溶液、あるいは適切な有機溶媒又は溶媒混合物中のコーティング溶液、又は腸溶性コーティングの調製のための適切なセルロース調製物、例えばフタル酸アセチルセルロース又はフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの溶液を使用することにより、適切で場合により腸溶性のコーティングを備えることができる。例えば同定目的で又は異なる用量の活性成分を指示するために、色素又は顔料を錠剤又は錠剤コーティングに加えてもよい。
【0088】
経口投与のための医薬組成物はまた、ゼラチンからなる硬カプセル、ならびにまたゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールからなる軟密封カプセルを含む。硬カプセルは、顆粒の形態の活性成分を、例えばトウモロコシデンプンなどの充填剤、結合剤、及び/又はタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの流動促進剤、ならびに場合により安定化剤と混和して含んでいてもよい。軟カプセルでは、活性成分は好ましくは、適切な液体賦形剤、例えば脂肪油、パラフィン油、もしくは液体ポリエチレングリコール、又はエチレンもしくはポリエチレングリコールの脂肪酸エステルに溶解又は懸濁させ、それに、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型の安定化剤及び界面活性剤を添加してもよい。
【0089】
直腸投与に適した医薬組成物は、例えば活性成分と坐剤基剤の組み合わせからなる坐剤である。適切な坐剤基材は、例えば、天然又は合成トリグリセリド、パラフィン炭水化物、ポリエチレングリコール、又は高級アルカノールである。
【0090】
非経口投与には、水溶性形態の活性成分、例えば水溶性塩の水溶液、あるいは粘度上昇物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストラン、ならびに所望であれば安定化剤を含有する水性注射用懸濁液が、特に好適である。場合により賦形剤を一緒に含む活性成分は、凍結乾燥物の形態であってもよく、好適な溶媒の添加により非経口投与前に溶液にしてもよい。
【0091】
溶液はそのまま使用され、例えば非経口投与では、輸液として用いることもできる。
【0092】
好ましい保存剤は、例えば、アスコルビン酸などの抗酸化剤、又はソルビン酸もしくは安息香酸などの殺菌剤である。
【0093】
本発明は更に、新生物疾患、自己免疫疾患、移植関連病変、及び/又は変性疾患の処置方法であって、式(II)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩(ここで、ラジカル及び記号は、式(II)について上記で定義した意味を有する)を、前記疾患に対して効果的な量で、そのような処置を必要とする温血動物に投与することを含む方法に関する。式(II)の化合物は、そのまま、又は特に医薬組成物の形態で、好ましくは、前記疾患に対して効果的な量で、そのような処置を必要とする温血動物、例えばヒトに、予防的又は治療的に投与することができる。体重約70kgの患者の場合、投与される一日用量は、本発明の化合物約0.01g〜約5g、好ましくは、約0.05g〜約1.5gである。
【0094】
本発明は特に、上述の一つ以上の疾患、とりわけ新生物疾患、自己免疫疾患、移植関連病変、及び/又は変性疾患の治療的及び予防的管理のための、式(II)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩、特に好ましいとされる式(II)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の、そのままでの又は薬学的に許容しうる少なくとも1個の担体を含む医薬製剤の形態での使用にも関する。
【0095】
各例で使用される医薬製剤(医薬)の好ましい用量、組成、及び調製は、上述されている。
【0096】
以下の実施例は、本発明の例示するものであり、本発明をその範囲に限定するものではない。
【0097】
実施例
略語:Cbz=ベンジルオキシカルボニル、DIPEA=N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン、DMAP=N,N−ジメチルアミノピリジン、DMF=N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO=ジメチルスルホキシド、eq=当量、ESI=エレクトロスプレーイオン化、HATU=O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、THF=テトラヒドロフラン。
【0098】
全ての試薬及び溶媒は商用品質であり、他に述べない限り、更に精製しないで使用する。
【0099】
報告される温度は、他に述べない限り、外部浴温度である。質量スペクトル(ESI−MS)は、Waters Micromass ZQ分光計、Varian 1200L 四重極MS分光計、又はAgileant 1100 LC/MSD分光計により記録する。DMSO−d、CDCl、アセトン−d、CDOD、DOを溶媒として使用する、Bruker Avance 400 MHz分光計、又はVarian Mercury Plus 400 MHz分光計を用いて、NMRスペクトルを得る。化学シフト(δ)は、ppmで表す。
【0100】
実施例1
(A) 3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリルの合成
【化29】

【0101】
(4−アセチル−フェニル)−カルバミン酸ベンジルエステル
【化30】


水60mLとジオキサン100mLの混合物中の4−アミノアセトフェノン10g(74mmol、1当量)の撹拌溶液に、0℃で、NaHCO12.43g(148mmol、2当量)及びクロロギ酸ベンジル15.3g(85mmol、1.15当量、純度95%)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌し、次に減圧下で濃縮して、ジオキサンを除去した。懸濁液を水70mL及び酢酸エチル150mLで希釈した。相を分離し、有機層をブライン2×50mLで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、生成物19.5gを固体として得た。
MS (ESI+): 270 [M+H]。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δppm: 10.18 (s, 1H), 7.92-7.89 (m, 2H), 7.61-7.58 (m, 2H), 7.46-7.33 (m, 5H), 5.18 (s, 2H), 2.51 (s, 3H)。
【0102】
[4−(2−ブロモ−アセチル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル
【化31】


エタノール740mL中の(4−アセチル−フェニル)−カルバミン酸ベンジルエステル18.5g(95%、65.3mmol、1当量)とCuBr 30.7g(138mmol、2.1当量)の混合物を2時間加熱還流した。室温に冷ました後、混合物を濾過し、残留物を酢酸エチル2000mLで洗浄した。1N NaOH水溶液を加えて、エタノールと酢酸エチルの酸性(pH<1)の合わせた濾液をpH5にした。次に水200mLを加えた。有機相を分離し、ブライン3×200mLで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗生成物23.78gを固体として得て、これを更に精製しないで次の工程で使用した。
MS (ESI+): 348 + 350 [M+H]。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) ppm: 10.26 (s, 1H), 8.00-7.90 (m, 2H), 7.65-7.59 (m, 2H), 7.46-7.34 (m, 5H), 5.19 (s, 2H), 4.84 (s, 2H)。
【0103】
(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−ヒドロキシイミノ−アセトニトリル
【化32】


氷酢酸50mL中の2−ベンゾイミダゾリルアセトニトリル10g(63.6mmol、1当量)の氷冷撹拌溶液に、最小量の水(10mL)に溶解した亜硝酸ナトリウム4.83g(70mmol、1.1当量)の溶液を滴下した。添加が完了したら、反応混合物を室温で1時間攪拌した。反応の過程で形成された沈殿物を濾過し、冷水2×20mL及びジエチルエーテル2×30mLで洗浄して、生成物11.8gを明黄色の固体として得た。
MS (ESI+): 187 [M+H]。
1H NMR(400MHz, DMSO-d6) ppm: 14.44 (ブロード, 1H), 13.15 (s, 1H), 7.80 - 7.20 (m, 4H)。
【0104】
4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルアミン
【化33】


水20mL中のヒドロキシルアミン塩酸塩13.2g(190mmol、3当量)の氷冷撹拌溶液に、水酸化カリウム15.3g(27.2mmol、4.3当量)をゆっくりと加えた。次に、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)60mL及び(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−ヒドロキシイミノ−アセトニトリル11.8g(63.4mmol、1当量)を加えた。氷浴を除去し、反応混合物を8時間加熱還流した(浴温度170℃)。室温に冷ました後、反応混合物を濾過し、残留物を水で洗浄して、所望の生成物の第一の産出物(6.2g)を得た。濾液を水150mLで処理した。得られた懸濁液を濾過し、水で洗浄して、第二の生成産出物(2.17g)を得た。両方の産出物を合わせ、次の工程で使用した。
MS (ESI+): 202 [M+H]。
1H NMR(400MHz, DMSO-d6) ppm: 13.7 (ブロード, 1H), 7.78 (ブロード, 2H), 7.35-7.32 (m, 2H), 6.84H (s, 2H)。
【0105】
3−[4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルアミノ]−プロピオニトリル
【化34】


ピリジン240mL中の4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルアミン18.2g(90.5mmol、1当量)の氷冷撹拌溶液に、ナトリウムメトキシド溶液30mL(MeOH中30%)(163mmol、1.8当量)、その後アクリロニトリル6mL(90.5mmol、1当量)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、その後それを減圧下で濃縮した。残留物を水250mLに懸濁し、酢酸エチル4×400mLで抽出した。合わせた有機層をブライン2×500mLで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を還流酢酸エチル約1000mLに溶解した。次にn−ヘキサン1700mLを溶液に加えた。得られた濁った混合物を室温で一晩放置し、形成された沈殿物を濾過して、生成物11.1gを明黄色の固体として得た。濾液を減圧下で濃縮乾固し、残留物をn−ヘキサン/酢酸エチルの1/1 混合物100mLに懸濁した。懸濁液を濾過して、更なる生成物4.7gを得た。
MS (ESI+): 255 [M+H]。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) ppm: 13.75 (ブロード, 1H), 7.81 (ブロード, 1H), 7.61 (ブロード, 1H), 7.37-7.34 (m, 2H), 7.21 (t, 1H, J=6 Hz), 3.68 (q, 2H, J=6 Hz), 2.94 (t, 2H, J=6 Hz)。
【0106】
[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル
【化35】


N,N−ジメチルホルムアミド90mL中の3−[4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルアミノ]−プロピオニトリル11.1g(95%、41.5mmol、1当量)の撹拌溶液に、炭酸カリウム7.84g(56.8mmol、1.3当量)、続いて[4−(2−ブロモ−アセチル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル23.25g(75%、50.1mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌した。次に、水700mLを加え、得られた懸濁液を酢酸エチル3×800mLで抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物を暗褐色の固体として得た。この粗生成物を2/1 酢酸エチル/メタノール混合物150mLに懸濁した。濾過により、所望の生成物12.63gを明褐色の粉末として得た。
MS (ESI+): 522 [M+H]。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) ppm: 10.33 (s, 1H), 8.09 (d, 2H, J=9 Hz), 7.91-7.82 (m, 2H), 7.71 (d, 2H, J=9 Hz) , 7.50-7.36 (m, 8H), 6.33 (s, 2H), 5.22 (s, 2H), 3.70-3.65 (m, 2H), 2.95 (t, 2H, J=6.5 Hz)。
【0107】
3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリル
【化36】


酢酸エチル700mLとメタノール500mLの混合物中の[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル6.4g(12.3mmol、1当量)の懸濁液に、10%パラジウム担持炭1.3gを加えた。反応混合物を、水素雰囲気下(1atm)、室温で3時間撹拌した。次に、それをセライトを通して濾過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を明黄色の固体として得て、これを7/5 酢酸エチル/メタノール混合物60mLに懸濁した。濾過により、所望の生成物3.5gをオフホワイトの固体として得た。濾液を濃縮し、残留物を、7/5 酢酸エチル/メタノール混合物5mLを用いて上記のとおり処理した。濾過により、生成物の第二の産出物0.45gを得た。
MS (ESI+): 388 [M+H]。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm: 7.89-7.87 (m, 1H), 7.83-7.77 (m, 3H), 7.47 (t, 1H, J=6 Hz), 7.42-7.38 (m, 2H), 6.67-6.65 (m, 2H), 6.28 (s, 2H), 6.19 (s, 2H), 3.70-3.66 (m, 2H), 2.95 (t, 2H, J=6.5 Hz)。
【0108】
(B)S−2,6−ジアミノ−ヘキサン酸[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−アミドの調製
手順I
【化37】

【0109】
S−{5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−5−[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニルカルバモイル]−ペンチル}−カルバミン酸ベンジルエステル
【化38】

【0110】
方法A
乾燥N,N−ジメチルホルムアミド10mL中のN,N−ジ−Z−L−リジン1.926g(4.65mmol;1.2当量)の溶液に、0℃で、4−メチルモルホリン0.862g(8.52mmol;0.937mL;2.2当量)及びクロロギ酸エチル0.572g(5.27mmol;0.503mL;1.36当量)を加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次に、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド10mL中の3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリル1.5g(3.87mmol;1当量)の溶液を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。変換が完了しないため、少量のN,N−ジメチルホルムアミド中のN,N−ジ−Z−L−リジン更に0.385g(0.93mmol;0.24当量)及び4−メチルモルホリン0.172g(1.7mmol;0.187mL;0.44当量)及びクロロギ酸エチル0.114g(1.05mmol;0.1mL;0.27当量)を加え、反応混合物を室温で一晩攪拌した。次に、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、5%クエン酸溶液及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタンとジイソプロピルエーテルの混合物で洗浄し、減圧下で乾燥させて、生成物2.38gをオフホワイトの固体として得た。
MS (ESI+): 784.5 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 10.5 (s, 1H), 8.12 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.91-7.84 (m, 4H), 7.66 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.48-7.26 (m, 14H), 6.35 (s, 2H), 5.06 (s, 2H), 5.00 (s, 2H), 4.21-4.15 (m, 1H), 3.69 (q, J = 6.5 Hz, 2H), 3.01-2.94 (m, 4H), 1.80-1.65 (m, 2H), 1.50-1.25 (m, 4H)。
【0111】
方法B
N,N−ジ−Z−L−リジン3.73g(9.0mmol;1.2当量)、2,3,5−コリジン1.82g(15mmol;1.95mL;2当量)及びHATU 5.7g(15mmol;2当量)を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド50mLに溶解し、混合物を室温で5分間攪拌した。次に、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド30mL中の3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリル2.9g(7.5mmol;1当量)の溶液を加え、混合物を室温で2日間攪拌した。N,N−ジ−Z−L−リジンを更に0.37g(0.9mmol;0.12当量)加え、混合物を室温で1日撹拌した。N,N−ジ−Z−L−リジン更に0.74g(1.8mmol;0.24当量)、2,3,5−コリジン0.36g(3mmol;0.39mL;0.4当量)及びHATU 1.14g(3mmol;0.4当量)を加え、反応混合物を室温で1日撹拌した。
次に、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水、5%クエン酸溶液及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシクロヘキサン/ジクロロメタン/酢酸エチル 1/2/2の混合物、その後ジクロロメタン/ジイソプロピルエーテル 1/1の混合物で洗浄した。次に、それを減圧下で乾燥させて、生成物4.26gをオフホワイトの固体として得た。
【0112】
S−2,6−ジアミノ−ヘキサン酸[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−アミド及びその塩酸塩(実施例1)
【化39】


THF 200mL、メタノール50mL及び2N塩酸3.5mLの混合物中のS−{5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−5−[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニルカルバモイル]−ペンチル}−カルバミン酸ベンジルエステル4.77g(6.09mmol;1当量)の溶液を、Pd/C 0.129g(10%)で処理し、得られた混合物を、水素雰囲気下(1atm)、室温で5時間撹拌した。次に、触媒を濾過により除去し、溶媒を減圧下で除去した。残留物を、水/アセトニトリル 3/1を溶離剤として用いるMCIゲルクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た。
塩酸塩への変換:生成物をジオキサン50mLとメタノール20mLの混合物に溶解し、ジオキサン中のHClの4M溶液4mLで処理した。次に溶媒を減圧下で除去した。残留物をジクロロメタンとジイソプロピルエーテルの混合物で洗浄し、減圧下で乾燥させて、生成物1.59gをオフホワイトの粉末として得た。
MS (ES+): 516.4 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 11.6 (s, 1H), 8.51 (s, 3H), 8.16 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.97-7.85 (m, 7H), 7.45-7.39 (m, 3H), 6.36 (s, 2H), 4.19-4.17 (m, 1H), 3.69 (q, J = 6.3 Hz, 2H), 2.95 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.81-2.79 (m, 2H), 1.99-1.88 (m, 2H), 1.65-1.61 (m, 2H), 1.50-1.46 (m, 2H)。
【0113】
手順II
【化40】

【0114】
S−[5−(4−アセチル−フェニルカルバモイル)−5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−ペンチル]−カルバミン酸ベンジルエステル
【化41】


電磁攪拌機を備えた250mLフラスコ中で、N,N’−ジベンジルオキシカルボニル−L−リジン5.0g(12.06mmol、1.0当量)、HATU 9.17g(24.13mmol、2.0当量)及び2,4,6−コリジン2.19g(18.10mmol、1.5当量)をN,N−ジメチルホルムアミド70mLに溶解し、次に4−アミノアセトフェノン1.96g(14.48mmol、1.2当量)を加えた。明黄色の混合物を10℃で18時間撹拌した。反応混合物を飽和NHCl水溶液40mLで希釈した。白色の沈殿物を濾過し、フィルターケーキを水及びイソプロピルエーテルで十分に洗浄して、所望の生成物5.3gを固体として得た。
MS (ESI+): 532.3 [M+H]。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm: 10.34 (s, 1H), 7.90 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.71 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.58 (m, 1H), 7.33-7.30 (m, 10H), 7.20 (m, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.95 (s, 2H), 4.10 (m, 1H), 2.96 (m, 2H), 2.50 (s, 3H), 1.71-1.27 (m, 6H)。
【0115】
S−{5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−5−[4−(2−ブロモ−アセチル)−フェニルカルバモイル]−ペンチル}−カルバミン酸ベンジルエステル
【化42】


電磁攪拌機を備えた100mLフラスコ中で、S−[5−(4−アセチル−フェニルカルバモイル)−5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−ペンチル]−カルバミン酸ベンジルエステル0.5g(0.94mmol、1.0当量)をクロロホルム15mL及び酢酸エチル15mLに溶解し、次に臭化第二銅0.53g(2.35mmol、2.5当量)をフラスコに加えた。暗緑色の混合物を78℃で6時間撹拌した。混合物を室温に冷まし、ジクロロメタン40mLで希釈し、濾過した。濾液を水20mLで洗浄し、相を分離した。水相をジクロロメタン10mLで2回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、粗生成物を得て、これをトルエン3mLからの再結晶化により精製して、所望の生成物350mgを明黄色の固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm: 10.39 (s, 1H), 7.95 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.73 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.60 (m, 1H), 7.39-7.20 (m, 10H), 7.13 (m, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.95 (s, 2H), 4.81 (s, 2H), 4.15 (m, 1H), 2.97 (m, 2H), 1.62-1.28 (m, 6H)。
【0116】
S−{5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−5−[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニルカルバモイル]−ペンチル}−カルバミン酸ベンジルエステル
【化43】


電磁攪拌機を備えた50mLフラスコ中で、S−{5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−5−[4−(2−ブロモ−アセチル)−フェニルカルバモイル]−ペンチル}−カルバミン酸ベンジルエステル1.3g(2.13mmol、1.0当量)及び3−[4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルアミノ]−プロピオニトリル569mg(2.24mmol、1.05当量)をN,N−ジメチルホルムアミド20mLに溶解し、次に炭酸カリウム441mg(3.19mmol、1.5当量)を室温でフラスコに加えた。混合物を室温で30分間攪拌した。
次にそれを飽和NHCl水溶液20mLで希釈した。得られた沈殿物を濾過し、水及びメタノールで十分に洗浄して、所望の生成物1.3gを明黄色の固体として得た。
【0117】
以下の化合物を、遊離塩基又は塩酸塩のいずれかとして上に記載した方法と同様にして調製した。
塩:
【表1】







【0118】
実施例12
[(4−{2−[2−(4−アミノ−フラザン−3−イル)−ベンゾイミダゾール−1−イル]−アセチル}−フェニルカルバモイル)−メチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化44】


N,N’−ジメチルホルムアミド1mL中のN−BOC−グリシン(CAS 4530−20−5)0.06g(0.34mmol;1.2当量)の撹拌溶液に、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート0.16g(0.43mmol;1.5当量)及びトリエチルアミン0.1mL(0.71mmol;2.5当量)を室温で加えた。室温で0.5時間撹拌した後、N,N’−ジメチルホルムアミド1mL中の2−[2−(4−アミノ−フラザン−3−イル)−ベンゾイミダゾール−1−イル]−1−(4−アミノ−フェニル)−エタノン(CAS 798577−83−0)0.1g(0.28mmol;1当量)の溶液を加えた。反応溶液を室温で一晩攪拌した。次に、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)0.08g(0.22mmol;0.75当量)及びトリエチルアミン0.05mL(0.35mmol;1.25当量)を含有するN,N’−ジメチルホルムアミド0.5mL中のN−BOC−グリシン0.03g(0.17mmol;0.6当量)の溶液を、室温で、反応溶液に加えた。同じ混合物を、更に24時間後、そして更に8時間後に再び加えた。次に、反応混合物を64時間(総反応時間120時間)更に攪拌した。反応混合物を酢酸エチル(10mL)で希釈し、次に水(10mL)、10%クエン酸水溶液(10mL)、ブライン(2×5mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、粗生成物を得た。
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/シクロヘキサン=1/1〜4/1)に付した。得られた物質をジクロロメタンから再結晶化して、所望の生成物0.085gを白色の粉末として得た。
MS (ESI+): 492.4 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 10.40 (s, 1H), 8.12 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.82 (d, J = 8.8 Hz; 2H), 7.40 (m, 2H), 7.11 (t, J = 6.0 Hz), 7.00 (s, 2H), 6.33 (s, 2H), 3.79 (d, J = 6 Hz, 2H), 1.41 (s, 9H)。
【0119】
2−アミノ−N−(4−{2−[2−(4−アミノ−フラザン−3−イル)−ベンゾイミダゾール−1−イル]−アセチル}−フェニル)−アセトアミド塩酸塩
【化45】


1,4−ジオキサン0.5mL中の[(4−{2−[2−(4−アミノ−フラザン−3−イル)−ベンゾイミダゾール−1−イル]−アセチル}−フェニルカルバモイル)−メチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル0.045g(0.09mmol;1当量)の撹拌溶液に、1,4−ジオキサン中の4M HCl溶液0.11mL(0.44mmol;5当量)を室温で滴下した。反応混合物を室温で2時間を撹拌した。次に、ジイソプロピルエーテル5mLを加え、得られた懸濁液を濾過し、ジイソプロピルエーテル(2×2mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、粗物質0.04gを得た。粗固体を、0.05% HClを含有する水/アセトニトリル(85/15〜70/30)の混合物を用いて溶離するMCIゲルカラムクロマトグラフィーに付して、所望の生成物0.014gを橙色の粉末として得た。
MS (ESI+): 392.4 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 11.21 (s, 1H), 8.29 (br.s., 3H), 8.16 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.84 (m, 2H), 7.41 (m, 2H), 7.1-6.9 (m, 2H), 6.36 (s, 2H), 3.95 (m, 2H)。
【0120】
実施例13(比較)
4−[1−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−フラザン−3−イルアミン
【化46】


0℃に冷却した乾燥テトラヒドロフラン15mL中の4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルアミン(CAS 332026−86−5)0.5g(2.49mmol;1.0当量)の撹拌懸濁液に、水素化ナトリウム0.075g(2.98mmol;1.2当量)を少量ずつ加えた。0〜5℃で10分間攪拌した後、得られた清澄な溶液を2−(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド0.54mL(2.91mmol;1,17当量)で処理した。反応溶液を0〜5℃で0.5時間撹拌し、次に酢酸エチル30mLで希釈した。溶液を水(20mL)及びブライン(20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固した。油状残留物をジイソプロピルエーテル(10mL)中で粉砕し、溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物0.78gをオフホワイトの固体として得た。
MS (ESI+): 332.4 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 8.01 (m, 2H), 7.65-7.53 (m, 2H), 7.13 (s, 2H), 6.22 (s, 2H), 3.72 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 0.96 (t, J = 8.0 H, 2H), 0.01 (s, 9H)。
【0121】
({4−[1−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−フラザン−3−イルカルバモイル}−メチル)−カルバミン酸ベンジルエステル
【化47】


ジクロロメタン4mL中のN−Z−グリシン(CAS 1138−80−3)1.42g(6.65mmol;2.9当量)の撹拌懸濁液に、1−クロロ−N,N−2−トリメチル−1−プロペニルアミン1.23mL(9.17mmol;4当量)を室温で滴下した。得られた清澄な溶液を1時間撹拌し、次に濃縮乾固して、対応する酸塩化物を無色の油状物として得た。密閉管中で、0〜5℃に冷却したテトラヒドロフラン10mL中の4−[1−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−フラザン−3−イルアミン0.8g(2.29mmol;1.0当量)の撹拌溶液を、水素化ナトリウム0.29g(11.5mmol;5当量)、次にテトラヒドロフラン5mL中の新たに調製した酸塩化物の溶液で少量ずつ処理した。添加の終わりに、氷浴を除去し、蓋をロックした。溶液を70℃に加熱し、この温度で21時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、次に酢酸エチル40mLで希釈した。水(30mL)を注意深く加え、2つの層を分離した。有機相をブライン(2×20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/シクロヘキサン=5/95〜55/45)により精製して、所望の生成物0.57gを白色の固体として得た。
MS (ESI+): 523.4 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm:11.76 (s, 1H), 8.29 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 7.89 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.78 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.53-7.29 (m, 5H), 6.08 (s, 2H), 5.08 (s, 2H), 4.02 ( J = 5.6 Hz, 2H), 3.59 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 0.84 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 0.01 (s, 9H)。
【0122】
{[4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルカルバモイル]−メチル}−カルバミン酸ベンジルエステル
【化48】


({4−[1−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−フラザン−3−イルカルバモイル}−メチル)−カルバミン酸ベンジルエステル0.55g(1.00mmol;1当量)を、室温で、トリフルオロ酢酸2.75mL(35.3mmol;35当量)に少量ずつ加えた。溶液を1時間撹拌し、次に減圧下で濃縮乾固した。残留物をTHF 3mLに溶解した。次に、8%炭酸水素ナトリウムの水溶液2mLを加えた。得られた二相混合物を50℃に加熱し、1.5時間激しく撹拌した。次に、混合物を酢酸エチル10mL及び水5mLで希釈し、有機層を分離し、ブライン(5mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、所望の生成物0.4gを白色の固体として得た。
MS (ESI+): 393.3 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 11.65 (s, 1H), 8.26 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.38-7.30 (m, 7H), 5.10 (s, 2H), 4.04 (d, J = 6.0 Hz, 2H)。
【0123】
[4−(2−{2−[4−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−アセチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル
【化49】


N,N’−ジメチルホルムアミド6mL中の{[4−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−フラザン−3−イルカルバモイル]−メチル}−カルバミン酸ベンジルエステル0.4g(0.97mmol、1当量)の撹拌溶液に、炭酸カリウム0.2g(1.4mmol;1.45当量)を室温で加え、続いて[4−(2−ブロモ−アセチル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル(CAS 157014−41−0)0.41g(1.16mmol;1.2当量)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次に酢酸エチル20mLで希釈した。溶液を水(2×10mL)及びブライン(2×10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固した。次に、残留物を高温の酢酸エチル(2mL)に溶解し、溶液を氷浴中に置いた。0.5時間後、得られた懸濁液を濾過し、固体を冷酢酸エチル(1mL)で洗浄して、所望の生成物0.2gを白色の粉末として得た。
MS (ESI+): 660.5 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 11.80 (s, 1H), 10.35 (s, 1H), 8.34 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.80 (m, 2H), 7.73 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.50-7.32 (m, 12H), 6.38 (s, 2H), 5.23 (s, 2H), 5.12 (s, 2H), 4.06 (d, J = 4.6 Hz, 2H)。
【0124】
2−アミノ−N−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イル)−アセトアミド塩酸塩
【化50】


1,4−ジオキサン中の4M HClの溶液0.19mL(0.86mmol;3当量)を含有するテトラヒドロフラン2mL及びメタノール2mL中の[4−(2−{2−[4−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−アセチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル0.2g(0.29mmol;1当量)と10% Pd/C 0.046g(0.04mmol;0.14当量)の混合物を、水素雰囲気下、室温で7時間撹拌した。次に混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/ジイソプロピルエーテル(1/1、v/v)の混合物2mLに懸濁し、懸濁液を濾過した。固体をジイソプロピルエーテル2mLで洗浄し、減圧下で乾燥させて、粗生成物を得た。固体を、MCIゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤 水/アセトニトリル=75/25〜65/35、HCl 0.1%を含有)により精製して、所望の生成物0.02gを明褐色の粉末として得た。
MS (ESI+): 392.3 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 11.29 (s, 1H), 8.46 (br.s., 3H), 7.95-7.83 (m, 4H), 7.41 (m, 2H), 6.98 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.22 (s, 2H), 4.23 (m, 2H)。
【0125】
実施例14(比較)
N’−[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−N,N−ジメチル−ホルムアミジン
【化51】


N,N−ジメチルホルムアミド1mL中のN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.05mLの溶液を、−10℃で、N,N−ジメチルホルムアミド3mL中の3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリル116mg(0.3mmol)及びオキシ塩化リン459mg(0.3mmol)の溶液にゆっくりと加えた。添加後、混合物を室温に温まるにまかせ、3日間撹拌した。次に、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、反応混合物をジクロロメタンで抽出した。沈殿物がジクロロメタン相に形成された。この沈殿物を濾過により回収し、水及びジクロロメタンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。残留物をアセトニトリルに溶解し、0℃で、溶液を水酸化ナトリウムの2N水溶液に加えた。得られたpH値は11を超えていた。混合物を室温で1時間攪拌した。形成された沈殿物を濾過により回収し、水及びアセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥させて、所望の生成物89mgを得た。
MS (ESI+): 443.2 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 8.00-7.97 (m, 3H), 7.91-7.83 (m, 2H), 7.49-7.38 (m, 3H), 7.11 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.32 (s, 2H), 3.69 (q, J = 6.5 Hz, 2H), 3.09 (s, 3H), 2.99 (s, 3H), 2.95 (t, J = 6.5 Hz, 2H)。
【0126】
実施例15(比較)
[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−スルファミン酸ナトリウム塩
【化52】


クロロスルホン酸50μL(0.75mmol)を、氷/エタノール浴中で冷却しながら、ピリジン603μL(7.5mmol)に滴下した。混合物を1時間撹拌した後、少量のピリジンに溶解した3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリル116mg(0.3mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。1N水酸化ナトリウム水溶液を、pH10に到達するまで加えた。次に、混合物を減圧下で濃縮した。残留物を水で処理し、遠心分離、続いて水での洗浄及び減圧下での乾燥により、固体生成物(143mg)を得た。
MS (ESI+): 468.1 [M+H]。
1H-NMR (DMSO-d6) ppm: 8.89 (s, 1H), 7.90-7.81 (m, 4H), 7.49-7.37 (m, 3H), 7.15 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.25 (s, 2H), 3.69 (q, J = 6.5 Hz, 2H), 2.95 (t, J = 6.5 Hz, 2H)。
【0127】
本発明の化合物の試験方法
動力学的溶解度の決定:
100%DMSO中の20mM又は10mM原液として提供される化合物を、緩衝水溶液中、1:40で希釈して、2.5%の残留DMSOと共に、それぞれ、0.5mM又は0.25mMの濃度にする。pH6.5の緩衝液は、NaOHで目的pHに調整した0.05M 3−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)からなる。pH5及びpH3の緩衝液を、市販の濃縮物(Titrisol(登録商標)、Merck)から調製する。次に、試料を穏やかに振とうしながら室温で6時間インキュベートし、続いてMultiScreen DV プレート(Durapore 親水性PVDF膜、孔径0.65μm、Millipore)を通して真空濾過する。濾液を20%アセトニトリルに調整し、UV分光法により分析して、吸収極大及び対応する波長を得る。濾液中の化合物の濃度を、20%アセトニトリルで補充した水性緩衝液中の各試料の3〜5つの公知の濃度を使用して構築した標準曲線の直線部分に基づいて計算する。
【0128】
プロドラッグから誘導した全てのアミノ酸は、親薬物と比較して、改善した水溶解度を示す。最も高い溶解度は、全てのプロドラッグについてpH3で得られる。pH5及びpH6.5では、リジンプロドラッグが最も高い溶解度を示す。
【表2】

【0129】
インビボ薬物動態学的研究:
伏在静脈スクリーニング法を用いた雄NMRIマウスへの静脈内投与後、化合物をインビボで評価する。
1mg/kgの用量の化合物を、ボーラスとして静脈投与する(5mL/kg)。連続的に血液試料(40μL)を伏在静脈の穿刺後に採血し、投薬前、静脈内投与後、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び24時間の時点毎に、2匹のマウスからヘパリンナトリウムでコートした毛細管内に集める。
【0130】
血液試料を計量し、血液を、アセトニトリル/水(80:20)及び内部標準からなる停止液300μl中でクエンチする。
化合物(プロドラッグ)及びその親薬物の血中濃度を、4〜40ng/mLの定量限界を伴うLC−MS/MS分析を用いて測定する。
【0131】
曲線下面積(AUC)の計算
算術平均血漿/血中濃度を、BLQ(定量限界未満)(必要であれば、0の値)を用いて計算する。
【表3】

【0132】
研究では、マウスを本発明のプロドラッグを用いて静脈内処理し、続いてそのプロドラッグの血中濃度を測定する。比較のために、他の天然アミノ酸に基づく類似のアミドプロドラッグも試験する。
【0133】
AUC値は、動物の薬物への総曝露を測定したものである。
【0134】
リジン、グリシン及びアラニン誘導プロドラッグが、化学的に最も密接に関連する天然アミノ酸に基づく比較プロドラッグよりも、親薬物の少なくとも50%高いAUC値を示すことが見出される。本発明のプロドラッグの投与後の親薬物への曝露におけるこの注目に値する増大は非常に驚くべきもので、予想外のものである。
【0135】
【表4】

【0136】
マウスへの実施例14及び実施例15の静脈内投与後、親薬物 3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリルの有意なレベルは検出されない。
【0137】
異種移植マウスにおける薬物動態学的研究
腫瘍の大きさが約150mm+/−10%に達したとき、ヒト結腸癌SW480細胞株を移植したCD−1 Nu/Nu雌マウスを、「親薬物」、即ち、3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリル、又は「実施例1」、即ち、S−2,6−ジアミノ−ヘキサン酸[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−アミド塩酸塩のいずれかで処理する。マウス(1化合物につき33匹)を、1週間に1回、10mg/kgの「親薬物」(ビヒクル:NMP 6.7%、Solutol HS15 10%、Kolidon12 8.3%、ミネラル除去の水中)、又は24.5mg/kgの「実施例1」(ビヒクル:pH5となる食塩水中の酢酸ナトリウム)を用い、2週間静脈内処理(5mL/kg)する。数匹の動物の>10%の体重減少により、適用容積はその後4mL/kgに減少し、その結果、その後の週では、用量は、「親薬物」が8mg/kg、そして「実施例1」が19.6mg/kgとなる。
4回目の適用(第4週)後は、「親薬物」及び「実施例1」群から、3匹のマウス/サンプリング点を、投与前、及び投与後5分、15分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、6時間及び24時間の時点で選択する。心臓穿刺により採血し、4℃での遠心分離まで、氷上で保持したKEDTA管に入れる。血漿は−20℃で保存する。検死時に、腫瘍を取り出し、計量する。腫瘍は−20℃で保存する。血漿及び腫瘍試料をLC−MS/MSにより分析する。薬物動態学的パラメーターを、WinNonLin 5.2を用いて計算する。「実施例1」についての全ての結果は遊離塩基を表す。
【0138】
結果
そのまま、又は「実施例1」の形態のいずれかで投与された「親薬物」の腫瘍分布が示される。腫瘍濃度は、投与後5分間における第1のサンプリング時において既に検出されている。腫瘍/血漿比は、約1である。腫瘍中の濃度が血漿中の濃度と類似するので、腫瘍中に蓄積はない。しかし、「実施例1」の投与後、腫瘍の「親薬物」及び「実施例1」への曝露は、薬物の投与後の曝露(半減期T1/25.4時間)と比較して、ほとんど2倍の長さである(T1/2 8.3及び9.6時間)。
【0139】
8mg/kgの「親薬物」の異種移植マウスへの静脈内投与後の血漿及び腫瘍組織における「親薬物」の薬物動態学的パラメーター
【表5】

【0140】
19.6mg/kgの「実施例1」の異種移植マウスへの静脈内投与後の血漿及び腫瘍組織における「親薬物」の薬物動態学的パラメーター
【表6】

【0141】
19.6mgの「実施例1」の異種移植マウスへの静脈内投与後の血漿及び腫瘍組織における「実施例1」の薬物動態学的パラメーター
【表7】

【0142】
インビボ有効性研究:
SW480結腸直腸癌異種移植片を有するマウスを使用して、実施例1のプロドラッグ(S−2,6−ジアミノ−ヘキサン酸[4−(2−{2−[4−(2−シアノ−エチルアミノ)−フラザン−3−イル]−ベンゾイミダゾール−1−イル}−アセチル)−フェニル]−アミド塩酸塩)及び対応する「親薬物」(3−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イルアミノ)−プロピオニトリル)の静脈内(i.v.)適用の抗癌有効性及び忍容性を、最大耐用量レベル(MTD)で試験し、そして比較する。有効性実験に先立って、1週間に1回投与された各化合物のMTDの測定を、腫瘍を有さない同じ細胞株のヌードマウスにおいて実行する。1週間に1回の静脈内ボーラスとして行う24.5mg/kgのプロドラッグ及び10mg/kgの親薬物の投与の結果、両方の群における数匹の動物において>10%の体重減少がもたらされる。したがって、腫瘍を有するマウスのMTDは15〜20%低いと測定され、その結果、用量は、プロドラッグが21mg/kg、そして親薬物が8mg/kgとなる。ヒト結腸直腸癌細胞(SW480)を、4〜8週齢の無胸腺ヌードマウスの背に皮下注射(4×10細胞)する。腫瘍の容積は、腫瘍の長さ(L)及び幅(l)のカリパス測定から、式(L×l)/2に従って決定する。腫瘍は、処理の開始前に、200mm(±10%)の容積に拡大させる。プロドラッグ及び親薬物を、それぞれ21mg/kg及び8mg/kgで1週間に1回、又はそれぞれ7.1mg/kg及び2.7mg/kgで1週間に3回(1/4/7日目)のいずれかで、24日間静脈内投与する(両方のスケジュールは同じ1週間の総用量を表す)。腫瘍の容積及び体重は毎日観察する。
【0143】
1週間に1回のスケジュール(図1参照)を用い、プロドラッグは、24日目に、親薬物の45%(p<0.001 対対照)に対して、34%の最終T/C(処理群対対照群中の腫瘍容積の比)(p<0.001 対対照)を導き出す。1週間に3回のスケジュール(図2参照)を用い、プロドラッグは、親薬物の54%(p=0.002 対対照)に対して、26%の最終T/C(24日目)(p<0.001対対照)を導き出す。観察された体重変化は全ての処理群において小さいものであった。しかし、親薬物群(1週間に3回の処理)中の1匹の動物は10日目に死亡した。
【0144】
プロドラッグの1週間に3回の投与により、対応する親薬物の投与に比べて、マウス異種移植片癌モデルにおいて、より良い有意な有効性がもたらされる(p<0.05)。
【0145】
図1は、投与スケジュールを用いた場合の処理時間の間の平均腫瘍容積の変化のグラフ表示を提供し、ここで、プロドラッグ及び親薬物は、それぞれ21mg/kg及び8mg/kgの用量で、週に1回、24日間与えられ、同じスケジュールで適切なビヒクル対照(5mL/kg)が投与される。データ点は、平均値+/−SEMを表す(n=7〜8匹の動物、各動物に1つの腫瘍を移植した)。
【0146】
図2は、投与スケジュールを用いた場合の処理時間の間の平均腫瘍容積の変化のグラフ表示を提供し、ここで、プロドラッグ及び親薬物は、5mL/kg中、それぞれ7.1mg/kg及び2.7mg/kgの用量で、週に3回(1/4/7日目)、24日間与えられ、同じスケジュールで適切なビヒクル対照(5mL/kg)が投与される。データ点は、ここでも、平均値+/−SEMを表す(n=7〜8匹の動物、各動物に1つの腫瘍を移植した)。
【0147】
実施例12のプロドラッグ(本発明)と実施例13のプロドラッグ(比較)の全血中でのプロドラッグ−薬物変換の比較
手順:
新たにヘパリン化したラットの血液495μLに、37℃で、分析物(プロドラッグ)の1mg/mL DMSO溶液5μLを添加する。t=0、5、15、30、60及び120分後、血液試料を採取し、沈殿させる。そうして、血液試料又は添加された血液試料50μLに、内部標準を含有するアセトニトリル150μLを加える。試料を遠心分離し、上澄み20μLをHPLC系に注入して、化合物濃度(プロドラッグ及び親薬物)をLC−MS/MS分析により決定する。
較正のために、標準曲線を、新たなヘパリンラット血液中の10〜10000ng/mLの化合物濃度範囲で作成する。そうして、血液を添加(新たなラット血液198μL中のDMSO溶液2μL)し(spike)、未知の試料のように沈殿させる。
【0148】
結果:
本発明のプロドラッグ2−アミノ−N−(4−{2−[2−(4−アミノ−フラザン−3−イル)−ベンゾイミダゾール−1−イル]−アセチル}−フェニル)−アセトアミド(実施例12)は、ラット血液中で、120分後、その親薬物2−[2−(4−アミノ−フラザン−3−イル)−ベンゾイミダゾール−1−イル]−1−(4−アミノ−フェニル)−エタノンに完全に変換されるのに対し、前記プロドラッグの位置異性体プロドラッグ2−アミノ−N−(4−{1−[2−(4−アミノ−フェニル)−2−オキソ−エチル]−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}−フラザン−3−イル)−アセトアミド(実施例13)の変換は著しく低い(120分後で約74%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化53】


[式中、
【化54】


は、
非置換であるか、又は低級アルキル、ハロ−低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ−低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、低級アルキルカルボニルオキシ、アミノ、モノ(低級アルキル)アミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、モノ(低級アルケニル)アミノ、ジ(低級アルケニル)アミノ、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルキルカルボニルアミノ、置換アミノ(ここで、窒素上の2個の置換基は、窒素と一緒になって、ヘテロシクリルを形成する)、低級アルキルカルボニル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、シアノ、ハロゲン、及びニトロから独立して選択される1又は2個の更なる置換基により置換されているか;又は、2個の隣接する置換基がメチレンジオキシであることができる、二価ベンゼン残基;あるいは
非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、アミノ(低級アルキル、低級アルケニル及びアルキルカルボニルより選択される1又は2個の置換基により場合により置換されている)、ハロ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、もしくはハロゲンにより更に置換されている二価ピリジン残基(Z=N)を表し;
は、水素、低級アルキルカルボニル、ヒドロキシ−低級アルキル又はシアノ−低級アルキルを表し;そして
は、以下:
【化55】


より選択される基を表す]で示される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
塩ではない、請求項1に記載の式(II)の化合物。
【請求項3】
【化56】


が、1,4−フェニレン、又は式:
【化57】


で示される基を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、水素又はシアノ−低級アルキルを表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式:
【化58】


で示される化合物より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がシアノエチルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式:
【化59】


で示される化合物より選択される、請求項5又は6に記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化60】


を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
式:
【化61】


で示される化合物の薬学的に許容しうる塩、とりわけ塩酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
(1)式(I−II):
【化62】


[式中、
及び基:
【化63】


は、式(II)のとおりである]で示される化合物、又は保護形態の官能基を含むそのような化合物の誘導体、あるいはその塩を、式(III):
【化64】


[式中、
10は、水素(Gly)、メチル(Ala)及び保護されたアミノブチル(Lys)より選択され、
11は、アミノ保護基である]で示されるアミノ酸でアシル化する工程、
(2)得られた化合物の保護された誘導体中の任意の保護基を除去して、式(II)の化合物又はその塩を得る工程、及び所望であれば
(3)得られた式(II)の化合物を塩に変換するか、又は得られた式(II)の化合物の塩を式(II)の化合物に変換する工程を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の式(II)の化合物の調製方法。
【請求項11】
式(II−G):
【化65】


で示される化合物、又はその塩の製造方法であって、
(a)式:
【化66】


で示される化合物を、式:
【化67】


で示されるα−アミノ酸誘導体と、活性化剤、及び場合により適切な塩基、触媒又は共試薬の存在下で、反応させて、式:
【化68】


で示される化合物を得る工程、
(b)工程(a)の生成物を臭素化剤と反応させて、式:
【化69】


で示されるブロモ化合物を得る工程、
(c)前記工程(b)で得られた前記ブロモ化合物を、式:
【化70】


で示される化合物と反応させて、式:
【化71】


で示される化合物を得る工程、
(d)存在する任意の保護基を、基「保護されたアミノ酸」から除去して、式(II−G)の化合物を得る工程、ならびに、場合により
(e)前記式(II−G)の化合物をその塩に変換する工程を含む方法
[式中、
式Rは、水素、低級アルキルカルボニル、ヒドロキシ−低級アルキル又はシアノ−低級アルキルを表し、
【化72】


は、
非置換であるか、又は低級アルキル、ハロ−低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ヒドロキシ−低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、低級アルキルカルボニルオキシ、アミノ、モノ(低級アルキル)アミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、モノ(低級アルケニル)アミノ、ジ(低級アルケニル)アミノ、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルキルカルボニルアミノ、置換アミノ(ここで、窒素上の2個の置換基は、窒素と一緒になって、ヘテロシクリルを形成する)、低級アルキルカルボニル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、シアノ、ハロゲン、及びニトロから独立して選択される1又は2個の更なる置換基により置換されているか;又は、2個の隣接する置換基がメチレンジオキシであることができる二価ベンゼン残基;あるいは
非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、アミノ(低級アルキル、低級アルケニル及びアルキルカルボニルより選択される1又は2個の置換基により場合により置換されている)、ハロ−低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、もしくはハロゲンにより更に置換されている二価ピリジン残基(Z=N)を表し;
2−Gは、式:
【化73】


で示される基であり、
「アミノ酸」は、前記アミノ酸のα−炭素原子からカルボキシル基を除去することにより、天然のα−アミノ酸から誘導された残基を表し、そして
「保護されたアミノ酸」は、「アミノ酸」と同じアミノ酸であり、第一級アミノ基、及び必要であれば更に前記アミノ酸の他の官能基が保護基により保護されていることを意味する]。
【請求項12】
「アミノ酸」が、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンより選択されるアミノ酸を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の製造のための、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
新生物疾患、自己免疫疾患、移植関連病変、及び/又は変性疾患の処置用の医薬として使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
固形新生物疾患の処置用の、請求項14又は15に記載の化合物。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の式(II)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩及び薬学的に許容しうる不活性担体を含む医薬組成物。
【請求項18】
水溶液である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
水性担体に可溶性である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
非経口投与用の組成物として調製された、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
新生物疾患、自己免疫疾患、移植関連病変、及び/又は変性疾患の処置用、とりわけ固形新生物疾患の処置用の医薬組成物の調製のための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の式(II)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500304(P2013−500304A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522131(P2012−522131)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060803
【国際公開番号】WO2011/012577
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(501241380)バジリア ファルマスーチカ アーゲー (24)
【氏名又は名称原語表記】Basilea Pharmaceutica AG
【Fターム(参考)】