説明

新脈管形成を調節する為の新規化合物及びこれらの化合物を使用する処置方法

本発明は、組織の新脈管形成を調節する必要がある対象において当該調節をする為の方法に関係し、該方法は該対象に、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;該遺伝子によりコードされた又はこれら遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物、及びその機能的断片;該遺伝子の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこれら遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体から誘導された他の分子である;該遺伝子及びそのホモログの遺伝子又はmRNA遺伝子産物とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA若しくはアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)又はリボザイム;該遺伝子及びそのホモログの遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、及び、該遺伝子及びそのホモログと相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物から選ばれる化合物又は化合物の組み合わせの治療的に有効な量を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新脈管形成を調節することができる物の分野にある。より特には、本発明は、新脈管形成を調節することができる遺伝子産物に関し、及び、該遺伝子産物又はそれらの産生に干渉し、そして、それにより新脈管形成を刺激し又は阻害する化合物に関する。また、本発明は、該開示された化合物を、心臓血管疾患、脳血管疾患、及び末梢動脈疾患を包含する疾病、並びに、ガン及び糖尿病を含む(がこれらに限定されない)病理学的新脈管形成により特徴付けられる疾患の治療において使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発生中の胚において、原始的な脈管ネットワークが、脈管形成(Vasculogenesis)と呼ばれるプロセスにおいて中胚葉細胞のインシチュ分化により確立される。脈管形成(前駆幹細胞からの血管のデノボ形成)は、成人においても起こりえ、そして、脈管前駆細胞の動員及び分化、例えば骨髄から活発な脈管成長の部位へ、を含む。胚における新規脈管の生成及び成体における新血管新生を含む全てのより後のプロセスは、血管新生と呼ばれるプロセスにおける既存脈管系からの新たな毛細血管の発芽及び分裂により、主に支配される(Pepper et al., Enzyme & Protein, 1996 49:138-162; Breier et al., Dev. Dyn. 1995 204:228-239; Risau, Nature, 1997 386:671-674)が、循環する及び局在の幹細胞及び前駆細胞により媒介される脈管形成によっても支配される。新脈管形成(Neovascularisation)は、脈管形成及び脈管治癒が媒介される(新)血管新生及び脈管形成のプロセスとして定義される。新血管新生は、胚発生及び正常組織の成長、修復、及び再生に関与するだけでなく、雌の生殖サイクル、妊娠の確立及び維持にも関与し、創傷及び骨折の修復にも関与する。動脈形成(平滑筋細胞を含む大口径脈管の形成)は、新脈管形成プロセスの連続であると考えられている。このように、成体において、新たな脈管の形成は、血管新生、脈管形成、及び動脈形成(本明細書以下で、まとめて新脈管形成と呼ばれる)の相乗的プロセスである。
【0003】
正常な生理学的プロセスとしての血管形成及び脈管形成(新脈管形成)に加えて、異常な新脈管形成が、多くの病理学的プロセス、特には腫瘍成長及び転移、及び、血管増殖、特には微小脈管系の血管増殖が増加される他の状態、例えば糖尿病性網膜症、乾癬、及び関節症など、に関与する。新脈管形成の阻害は、これらの病理学的プロセスの予防又は緩和において有用である。他方、新脈管形成の促進は、例えば組織又は器官の移植に続く、脈管形成が確立され又は拡大されるべき状況、又は、例えば冠動脈性心疾患、虚血性脳血管疾患、末梢(狭窄)動脈疾患、及び閉塞性血栓血管炎などの、組織虚血及び/又は梗塞において血管周囲循環及び/又は側副循環の確立を刺激すべき状況において望ましい。新たな血管形成の3つのプロセス−血管形成、脈管形成、及び動脈形成(まとめて「新血管形成」)−の全てが、虚血及び梗塞への応答において役割を果たす。
【0004】
新脈管形成プロセスは、非常に複雑であり、及び、細胞周期における内皮細胞の維持、細胞外マトリックスの分解、周囲組織の遊走及び侵入、そして最後には、管形成を含む。該複雑な新脈管形成プロセスの下に横たわる分子メカニズムは、理解されているとは言い難い。
【0005】
非常に多くの生理学的及び病理学的プロセスにおける新脈管形成の重要な役割の故に、新脈管形成の制御に関与する因子が、広範に調査されてきた。多くの成長因子が、新脈管形成の制御に関与することが示されてきており、これらは、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)を含む。
【0006】
新脈管形成を調節することができる因子が当技術分野において知られている。特定のファミリーの内皮細胞特異的増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、及びそれらの対応する受容体が、内皮細胞増殖及び分化の刺激に及び分化した細胞のいくつかの機能に主に関与すると考えられている。これらの因子は、PDGF/VEGFファミリーのメンバーであり、そして、主に内皮受容体チロシンキナーゼ(RTKs、Flt/Flk、KDR)を介して作用するとみえる。
【0007】
しかしながら、当技術分野において、新脈管形成を調節する追加の因子についてのニーズがある。新脈管形成を調節する新規化合物を提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脈管の形成及び動脈の修復の制御に関与する遺伝子の同定に基づく。これらの遺伝子の遺伝子産物は、対象の組織における新たな脈管の形成を誘発し又は阻害する為に用いられうる。また、該遺伝子又は遺伝子産物に干渉する化合物も、脈管形成及び動脈修復を刺激する為に、又は異常な又は望ましくない新脈管形成(糖尿病性網膜症、炎症性新血管形成、アテローム性動脈硬化性プラーク安定化、又は腫瘍血管新生)を妨げて疾患進行を停止する為に用いられうる。これらの遺伝子及びそれらの産物は、身体の及び炎症の脈管損傷に続く生理学的動脈修復応答にも関与し、プラーク破綻及び心筋梗塞へのアテローム性動脈硬化進行及びアテローム性動脈硬化性プラーク不安定性を調節することが示された。
【0009】
それ故に、本発明は、第一の局面において、組織の新脈管形成の調節が必要である対象において組織の新血管形成を調節する為の方法を提供し、該方法は、該対象に、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選択される遺伝子によりコードされる遺伝子産物、又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物、並びにそれらの機能的断片;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体(bifunctional antibody)、細胞内抗体(intrabody)、及び抗体から得られた他の分子から選ばれたものである;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は該遺伝子のmRNA遺伝子産物とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)、又はリボザイム;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、及び、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物と相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物
から選ばれる化合物又は化合物の組み合わせの治療的に有効な量を投与することを含む。
【0010】
好ましくは、本発明の方法は、組織の新脈管形成を調節する必要がある対象において当該調節をする為の方法に関係し、該方法は該対象に、
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログを含む分離された核酸分子;
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01によりコードされた又はこの遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物、及びこれらの機能的断片;
- RIKEN cDNA 9430020K01の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこの遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体から得られた他の分子である;
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログの遺伝子又はmRNA遺伝子産物に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA);
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01又はそのホモログの遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、及び
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01又はそのホモログと又はその遺伝子産物と相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物、
から選ばれる化合物又は化合物の組み合わせの治療的に有効な量を投与することを含み、ここで該遺伝子ホモログは、該遺伝子の配列と少なくとも60%の配列同一性を有する。
【0011】
好ましい実施態様において、組織の新血管形成が必要な対象における該調節の為の方法は、
- 心臓血管疾患を患うリスクを処置し又は緩和し又は予防する、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)に続く動脈治癒を改善する、アテローム性動脈硬化症を処置し又は緩和し又は予防する、アテローム性動脈硬化性プラーク形成を処置し又は緩和し又は予防する、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)を処置し又は緩和し又は予防する;ガン、特には腫瘍血管新生を処置し又は緩和し又は予防する;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性又は過剰透過性の脈管を結果する増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態を処置し又は緩和し又は予防する;
- 動脈の再構築及び動脈の完全性/過剰透過性を誘発する為の処置;
- 化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらへの血栓形成のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置
の為のものである。
【0012】
他の局面において、本発明は、上記定義されたとおりの少なくとも1つの化合物の治療的に有効な量と、医薬的に許容できる添加物、キャリア、又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
好ましくは、上記で定義されたとおりの該医薬組成物中の該化合物は:
- RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01によりコードされる又はこの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物、並びにその機能的断片;
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体から得られた他の分子からなる群から選ばれたものである;
- RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は該遺伝子のmRNA遺伝子産物とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)又はリボザイム;
- RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子
- RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物と相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物
である。
【0014】
他の局面において、本発明は、対象を処置する方法であって、該対象に、治療的に有効な量の上記で定義されたとおりの該医薬組成物を投与することを含む前記方法を提供する。この処置は、適切には、
- 心臓血管疾患を患うリスクの処置又は緩和又は予防、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)に続く動脈治癒を改善する、アテローム性動脈硬化症の処置又は緩和又は予防、アテローム性動脈硬化性プラーク形成の処置又は緩和又は予防、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)の処置又は緩和又は予防;ガン、特には腫瘍血管新生の処置又は緩和又は予防;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性又は過剰透過性の血管を結果する増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態の処置又は緩和又は予防;
- 動脈の再構築及び動脈の完全性/過剰透過性を誘発する為の処置;
- 化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらに形成される血栓のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置
の為に必要とされる。
【0015】
他の局面において、本発明は、
- 心臓血管疾患を患うリスクの処置又は緩和又は予防、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)に続く動脈治癒を改善する、アテローム性動脈硬化症の処置又は緩和又は予防、アテローム性動脈硬化性プラーク形成の処置又は緩和又は予防、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)の処置又は緩和又は予防;ガン、特には腫瘍血管新生の処置又は緩和又は予防;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性又は過剰透過性の脈管を結果する増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態の処置又は緩和又は予防;
- 動脈の再構築及び動脈の完全性/過剰透過性を誘発する為の処置;
- 化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらへの血栓形成のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置
における、医薬としての使用の為の、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選択される遺伝子によりコードされる遺伝子産物、又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物、並びにそれらの機能的断片;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体(bifunctional antibody)、細胞内抗体(intrabody)、及び抗体に由来する他の分子から選ばれたものである;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は遺伝子のmRNA遺伝子産物とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)、又はリボザイム;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、及び、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5及びこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物にと相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物
を提供する。
【0016】
他の局面において、本発明は、図11、13、及び15-20のいずれか1つと少なくとも60%の配列同一性を有する配列を含む分離された核酸分子を提供する。図11(配列ID NO:1)は、マウスRIKEN cDNA 9430020K01遺伝子の配列を提供する。この遺伝子の機能はこれまで知られていなかった。本発明者らは、この遺伝子についての産業的な用途を提供する最初の者である。また、本明細書内に示された他の遺伝子の産業的な用途が提供される。
【0017】
他の局面において、本発明は、医薬としての使用の為の、上記で定義されたとおりの分離された核酸分子の遺伝子産物又は上記で定義されたとおりの核酸分子を含むベクターを提供する。
【0018】
好ましくは、上記で定義されたとおりの該遺伝子産物又はベクターは、減少した再脈管形成を患う患者の処置における使用の為のものである。好ましくは、該使用は、心臓血管虚血性疾患、脳血管虚血性疾患、及び/又は末梢動脈疾患を患う患者を処置する為であり、並びに固形腫瘍形成及び転移形成の進行を減衰する、及び、細胞増殖抑制治療の有効性を促進する。
【0019】
特に好ましい実施態様において、上記で定義されたとおりの本発明の(治療的)化合物は、心臓血管疾患を患うリスクの処置又は緩和又は予防、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)に続く動脈治癒を改善する、アテローム性動脈硬化症の処置又は緩和又は予防、アテローム性動脈硬化性プラーク形成の処置又は緩和又は予防、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)の処置又は緩和又は予防;ガン、特には腫瘍血管新生の処置又は緩和又は予防;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性又は過剰透過性の血管を結果する増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態の処置又は緩和又は予防; 動脈の再構築及び動脈の完全性/過剰透過性を誘発する為の処置; 及び/又は、化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらに形成される血栓のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置における使用の為のものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】種々の成体マウス組織におけるRIKEN cDNA 9430020K01遺伝子の発現パターンを示す図である。
【図2】受精後の種々の日での胚のマウス発生の間のRIKEN cDNA 9430020K01遺伝子の発現レベルを示す図である。
【図3】実施例1において記載されたとおりのHUVEC細胞の継代培養後3時間での2Dマトリゲル分析の結果を示す図である。(A)生理食塩水により処理された対照(ネットワークを示す);(B)sham(ニセ)の/スクランブルされたsiRNAにより処理された対照(ネットワークを示す);(C)RIKEN cDNA 9430020K01の標的とされたサイレンシング(単層を示す)。RIKEN cDNA 9430020K01のノックダウンは、細胞培養物における2Dマトリゲル新毛細血管ベッドの発達の不全を結果する。細胞は、対照条件(A、B)において見られたとおりの細胞の整列化及び管の形成を示さなかった。
【図4】実施例1において記載されたとおりの、5-2.5-1ng/mlの濃度におけるsiRNAトランスフェクションの96時間後の、HUVECにおけるRIKEN cDNA 9430020K01 mRNA発現を示す図である。
【図5】実施例1において記載されたとおりのRIKEN cDNA 9430020K01 RNA発現のsiRNAノックダウンの有効性を示す図である。A:24-48-72-96時間で測定された、スクランブルされた標的なしのsiRNA及び対照と比較した、特定の標的のあるsiRNAを用いる。スクランブルされたsiRNA(実線);siRNA無し(太い縞の線)及びRIK943を標的とするsiRNA(短い縞の線)による、時間にわたるHUVEC細胞の数(細胞増殖を示す)。RIK943サイレンシングは、結果として、細胞培養物における内皮細胞増殖の抑制をもたらす。0時間での相対的な細胞増殖、細胞の数が100%でセットされた。(B−D)子マウスの目におけるRIKEN cDNA 9430020K01に対して向けられた混合物としての3つのsiRNAの注入。siRNAの濃度は、5 ng/mlであった。(A)siRNAの注入後のマウスの網膜からの試料のqPCRにより測定されたときインビボでのRIK943 mRNA発現の下方制御。Y軸は、qPCRにより測定されたときの相対的なRNA発現レベル(0時間で、発現は100%にセットされる)を示す。暗い灰色のバー(右)は、siRNA RIK943を表す、明るい灰色のバー(左)は、shamのsiRNA(対照)を表す。(C)SEM顕微鏡写真が、RIK943の下方制御(右)が、対照(左)と比べて、新生児マウスの目における網膜脈管形成の完全な喪失を結果することを示す。(D)RIK943ノックダウン後の新生児マウスにおける、RIK943のサイレンシングの、分岐の数に対する(左のグラフ)、網膜脈管の数に対する(中央のグラフ)、及び、形成された網膜脈管の合計の管長さに対する(右のグラフ)効果の定量。バー表示は、図5Bと同じである。
【図6】実施例1の増殖アッセイの結果を示す図である。RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子に対して特異的にターゲティングするsiRNAにさらされたHUVEC細胞培養物の増殖は、shamの阻害(ターゲティングしないsiRNA)及び陰性対照と比較して、強く阻害される。Y軸は細胞の数を示し、X軸は100,000のsiRNAにより処理された細胞の継代培養後の時間を示す。
【図7A】ヨウ化プロピジウム(PI)細胞周期アッセイの結果を示す図である。HUVECは、実施例1の特異的なターゲッティングのsiRNAにさらされると、G1期における細胞周期停止を経験する。Y軸は、フローサイトメトリーにより測定されたときの、G1/Go期にある細胞を示す。
【図7B】ヨウ化プロピジウム(PI)細胞周期アッセイの結果を示す図である。HUVECは、実施例1の特異的なターゲッティングのsiRNAにさらされると、G1期における細胞周期停止を経験する。Y軸は、フローサイトメトリーにより測定されたときの、S/M/G2期にある細胞(B)の%を示す。
【図8A】実施例1において記載されるとおり、特異的なsiRNAにさらされた細胞(HUVEC)の数が、陰性対照又はターゲティングしないsiRNA(sham)による阻害と比較して、アポトーシス的になることを示す図である。Y軸は、フローサイトメトリーにより測定されたときの、細胞培養物中の生存細胞(A)の相対的な数を示す。
【図8B】実施例1において記載されるとおり、特異的なsiRNAにさらされた細胞(HUVEC)の数が、陰性対照又はターゲティングしないsiRNA(sham)による阻害と比較して、アポトーシス的になることを示す図である。Y軸は、フローサイトメトリーにより測定されたときの、アポトーシス前細胞(B)の相対的な数を示す。
【図8C】実施例1において記載されるとおり、特異的なsiRNAにさらされた細胞(HUVEC)の数が、陰性対照又はターゲティングしないsiRNA(sham)による阻害と比較して、アポトーシス的になることを示す図である。Y軸は、フローサイトメトリーにより測定されたときの、アポトーシス細胞(C)の相対的な数を示す。
【図9】実施例1において記載されるとおり、標的の無いsiRNAによる処理にさらされたHUVEC及び陰性対照と比較した、特異的なRIKEN cDNA 9430020K01を標的とするsiRNAにさらされたHUVECに対する、72時間後の、遊走アッセイの結果を示す図である。特異的にRIKEN cDNA 9430020K01を標的とするsiRNAにさらされたHUVECが、有意に減少された遊走活性を示した。
【図10】ヒトECにおけるFGD5の機能を示す図である。上のパネルは、shamのアデノウィルスにより処理された群を示し、下のパネルは、FGD5アデノウィルスをトランスフェクトされた群を示す。カラムは、インビトロでの被覆されたビーズのフィブリンゲルアッセイにおけるtip及びstalk細胞の形成に対する(ECはファロイジン染色により可視化された)(A)、インビボでのマトリゲルにおける新規脈管形成に対する(B)、及びインビボでの被覆されたビーズ上のEC増殖(ヘマトキシリン/エオシン染色された凍結切片)(C)に対するFGD5過剰発現の効果を示す。
【図11−1】下線付加されたフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列を有する配列ID NO:1を示す図である。
【図11−2】下線付加されたフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列を有する配列ID NO:1を示す図である。
【図12】配列ID NO:1(RIKEN cDNA 9430020K01)によりコードされたタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【図13−1】マウスFGD5のヌクレオチド配列(genbankアクセス番号NM_172731.2)を示す図である。
【図13−2】マウスFGD5のヌクレオチド配列(genbankアクセス番号NM_172731.2)を示す図である。
【図14】RIKEN cDNA 9430020K01によりコードされたマウスタンパク質とそのヒトのホモログのアラインメントを示す図である。
【図15】マウスTnfaip8 (genbankアクセス番号NM_134131.1)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図16】マウスTnfaip8l1 (genbankアクセス番号NM_025566.3)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図17】マウスAgtrl1 (genbankアクセス番号NM_011784.3)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図18】マウスApelin (genbankアクセス番号NM_013912)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図19−1】マウスStabilin 1 (genbankアクセス番号NM_138672.2)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図19−2】マウスStabilin 1 (genbankアクセス番号NM_138672.2)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図20−1】マウスStabilin 2 (genbankアクセス番号NM_138673.2)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図20−2】マウスStabilin 2 (genbankアクセス番号NM_138673.2)のヌクレオチド配列を示す図である。
【図21】マウスモデルにおける虚血後の特定の前駆細胞動員を示す図である。(A)心筋梗塞後の続く3日、特異的にcKit+/Flk+内皮前駆細胞が心臓において増加され、一方で、(B)Sca+/Flk+細胞数は、心筋梗塞後心臓組織において変化しなかった。後肢の虚血3日後、特異的にSca+/Flk+細胞が虚血の骨格筋において増加するが(D)、cKit+/Flk+レベルは変化しない(C)。すなわち、cKit+/Flk1+内皮前駆細胞(これは、急性心筋梗塞に続く(修復)応答に関与する)が、心筋梗塞の後に循環から特異的に動員されるが、後肢の虚血後に動員されない。
【図22】マウスモデルにおける虚血後のEPC(内皮前駆細胞)でのAgtrl-1発現及びapelin発現/レベルを示す図である(実施例2参照)。(A)平均のAgtrl-1発現は、cKit+/Flk+(これは高い発現を示す)を除き、種々のサブ集団において、相対的に低い。循環するapelinのレベル(Agtrl-1についての天然のリガンド)は、心筋梗塞後上方制御されるが、後肢の虚血後は上方制御されない(B)。虚血の心臓におけるapelinのmRNA及びタンパク質レベルは、心筋梗塞後に増加する(C及びE)が、後肢の虚血後は増加しない(D及びF)。すなわち、Agtrl1は、(急性心筋梗塞に続く(修復)応答に関与する)cKit+/Flk1+内皮前駆細胞において特異的に発現され、及び、急性心筋梗塞に続き、apelin (Agtrl1のリガンド)が、循環において、並びに、心筋において、タンパク質レベルで及びmRNAレベルで上方制御される。
【図23】マウスにおけるapelin注入後のEPC動員を示す図である(実施例2参照)。Apelinの全身注入が、骨髄において(A)及び血液において(C)、cKit+/Flk+内皮前駆細胞の数を増加する。Apelin注入は、これらの組織:B(骨髄)及びD(血液)、におけるSca+/Flk+細胞の数を変化させなかった。すなわち、apelinの全身注入は、骨髄並びに循環におけるcKit+/Flk1+の数を特異的に刺激する。
【図24】心筋梗塞そしてapelin処置後の、左室(LV)機能を示す図である(実施例2参照)。MI(心筋梗塞)の誘発の2週間後の未処理(A)、PBS(B)、及びapelinにより処理された(C)マウスの心エコー画像。Apelin処理は、左心室の短縮率(Fractional Shortening)を他の群(D)と比較して改善し、左心室及び心臓拡張における変化は無く(E)、これは収縮期の間のより良い収縮を示した。この実験の結果は、Apelinによる全身処理が、急性心筋梗塞の後の心臓機能を改善することである。
【図25】MIそしてapelin処理後の瘢痕形成を示す図である(実施例2参照)。MIの誘発後2週間での、未処理(A)、PBS(B)、及びapelin処理された(C)マウスのMassonトリクロム染色。Apelin処理は、他の群と比較して、境界域(D)の心筋厚を増大し、及び、梗塞長(E)を減少する。すなわち、apelin注入は、心筋梗塞後の梗塞サイズを減少する。
【図26】心筋梗塞そしてapelinr処理後の再血管形成を示す図である(実施例2参照)。MIの誘発後2週間での、未処理(A)、PBS(B)、及びapelin処理(C)のマウスのLectin染色。毛細血管密度が、PBS又は未処理の動物と比べて、apelinによって処理された動物において増加した(D)。すなわち、apelin注入は、心筋梗塞に続く新規脈管形成を刺激する。
【図27A】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(A)8.5dpcから16.5dpcのc57/bl6マウスの胚発生の間のFGD5発現、Flk1+及びFlk1-の細胞のqPCRにより分析された。FGD5発現は、Flk1+細胞において全ての時点で上方制御された。
【図27B】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(B)ゼブラフィッシュ幼生の、24時間での、ホールマウントin situハイブリダイゼーションは、背部大動脈、セグメント間脈管、及び後主静脈を含む、脈管系におけるFGD5の発現を明らかにした。
【図27C】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(C)成熟C57/bl6マウスの種々の組織におけるFGD5発現のqPCR分析(N=6動物)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 大動脈対種々の組織における発現。
【図27D−1】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(D)他のFGDファミリーメンバー(FRG、FGD1、FGD2、FGD3、FGD4、及びFGD6)のqPCR分析及び血管特異的CD31又はeNOSのパターン(N=4動物)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 動脈対種々の組織における発現。
【図27D−2】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(D)他のFGDファミリーメンバー(FRG、FGD1、FGD2、FGD3、FGD4、及びFGD6)のqPCR分析及び血管特異的CD31又はeNOSのパターン(N=4動物)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 動脈対種々の組織における発現。
【図27E】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(E)非関連細胞タイプ(Hela、肉腫)と比較した、ヒト内皮細胞(HUVEC、HAEC)を含む、初代細胞系列のqPCR分析。3つの別々の実験から得られたデータ。*P<0,05 HUVEC及びHAEC対hela及び肉腫細胞。値は平均±SEMを表す。
【図27F】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(F)成熟C57/bl6マウスの心筋の免疫組織学的染色は、内皮細胞マーカーIsolectin IB4(赤のCy-3シグナル)とFGD5タンパク質(緑のFITCシグナル)の共局在化を示した。400X倍率。
【図27G】FGD5が内皮細胞において特異的に発現されることを示す図である(実施例3参照)。(G)成熟C57/bl6マウスから得られた大動脈の低温切片の免疫組織学的染色。FGD5が、内皮及び外膜において検出される(緑のFITCシグナル)。FITCシグナルは、同形の対照とのインキュベーション後に観察されなかった。650X倍率。(*)は内腔領域を示す。
【図28−1】FGD5が、インビトロ及びエクスビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3を参照)。(A)FGD5サイレンシング又はshamのsiRNAトランスフェクション後の標準的2DMatrigelチューブ形成アッセイにおけるHUVECの代表的な管形成。HUVECは、Calcein-AM取り込みにより可視化された。400X倍率。該Matrigelアッセイの定量分析は、対照及びsham処理されたHUVECと比較した、(B)合計管長、(C)管の数、及び(D)分岐の数に対するFGD5ノックダウン(FGD5KD)の効果を示す(N=6の個々の実験)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 FGD5KD対対照及びshamのsiRNA、#P<0,10 FGD5KD対対照及びshamのsiRNA。
【図28−2】FGD5が、インビトロ及びエクスビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3を参照)。(E)Ad-FGD5又はshamアデノウィルス(Sham Ad)を用いたFGD5過剰発現に続く標準的matrigelアッセイにおけるHUVECの代表的管形成。HUVECが、Calcein-AM取り込みを用いて可視化された。400X倍率。該Matrigelアッセイの定量的分析は、対照及びshamアデノウィルスをトランスフェクトされたHUVECと比較し、(F)合計の管の長さ、(G)管の数、及び(H)分岐の数に対するFGD5過剰発現の効果を示す(N=6の個別の実験)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 Ad-FGD5対対照及びshamのアデノウィルス。
【図28−3】FGD5が、インビトロ及びエクスビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3を参照)。(I)代表的な顕微鏡写真が、Ad-FGD5又はshamのアデノウィルスをトランスフェクトされた大動脈リングを埋め込まれたmatrigelの微小脈管出芽を示す。400X倍率。(J)大動脈リングアッセイの定量的分析は、微小脈管面積に対するFGD5過剰発現の効果を示す(N=8の個々の大動脈外植片)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 Ad-FGD5対shamのアデノウィルス。
【図28−4】FGD5が、インビトロ及びエクスビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3を参照)。(K)FGD5発現が、被覆されたビーズアッセイにおける微小脈管出芽を妨げる。マトリゲル中のHUVECにより覆われたcytodexビーズの代表的な微小脈管出芽。HUVECは、Ad-FGD5によりトランスフェクトされ、そして、トランスフェクトされていない対照及びshamのアデノウィルス処理された対照と比較された。650X倍率。(L)トランスフェクトされていない群、shamのウィルスをトランスフェクトされた群、及びAd-FGD5をトランスフェクトされた群のファロイジン染色された微小脈管ネットワーク(Texasレッド蛍光シグナル)の代表的な顕微鏡写真。650×倍率。
【図28−5】FGD5が、インビトロ及びエクスビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3を参照)。顕微鏡写真の定量的分析は、(M)ビーズ当たりの相対的な出芽面積、及び、(N)複数の出芽を有するビーズの数に対するFGD5過剰発現の効果を示す。
【図28−6】FGD5が、インビトロ及びエクスビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3を参照)。(O)トルイジンブルー染色が、形成された管における管腔形成に対するFGD5の効果を示す。650X倍率。(P)顕微鏡写真の定量的分析は、トランスフェクトされていない対照及びshamのアデノウィルスをトランスフェクトされた対照と比較した、管腔形成を有するビーズの数に対するAd-FGD5過剰発現の効果を示す(N=6の別々の実験、実験当たり群当たり20ビーズの分析)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対対照及びshamのアデノウィルス。†P<0,05 対対照。
【図29−1】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(A)8日目での免疫欠損SCIDマウスにおけるHUVECにより覆われたcytodexビーズを含む、皮下に植えられたマトリゲルプラグの代表的な肉眼写真。HUVECは、Ad-FGD5をトランスフェクトされた、shamのアデノウィルスをトランスフェクトされた、又はトランスフェクトされていないものであった(対照)。20X倍率。(B)shamのアデノウィルス及びAd-FGD5群のマトリゲルプラグの代表的な肉眼写真、これにおいてAd-FGD5群から得られたプラグ内の赤血球の蓄積の欠如が明らかである。50X倍率。(C)組織学的ヘマトキシリン/エオシン染色が、shamのアデノウィルスをトランスフェクトされたHUVECに対して、Ad-FGD5をトランスフェクトされたHUVECにより覆われたビーズ上のHUVECの蓄積の低下を示す。400X倍率。(D)顕微鏡写真の定量的分析が、sham Adenovirusをトランスフェクトされたもの及びトランスフェクトされていない対照に対する、Ad-FGD5をトランスフェクトされたものにおける、細胞表面(ビーズ当たりmm2)に対するFGD5の効果を示す。
【図29−2】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(E)免疫組織学的染色が、cytodexビーズを囲むCD31/Cy3+ ECの蓄積を明らかにし、(F)これは青い蛍光DAPIシグナルとともに共局在化した。cytodexビーズの輪郭が、自動蛍光により可視化された。650X倍率。(G)細胞−ビーズのプラグデータの定量的分析が、FGD5の、Ad-FGD5群対shamのアデノウィルスをトランスフェクトされた群及びトランスフェクトされていない対照におけるビーズmm2当たりのCD31+表面積に対する効果を示す(N=群当たり8の動物、動物当たり20ビーズが分析された)。値は平均±SEMを表す。*P<0.05 対対照及びshamアデノウィルス群。
【図29−3】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(H)ホールマウントイソレクチンIB4染色(緑のFITCシグナル)により可視化された発達する網膜脈管系の代表的な顕微鏡写真。Ad-FGD5注入は、shamのアデノウィルス対照と比較したときに、脈管発達を厳しく妨げた。400X倍率。(I)高倍率(650X)顕微鏡写真は、管の崩壊及び短くなった芽を示す。(J)ホールマウントCD31免疫組織学的染色(赤のCy-3シグナル)が同様のパターンを示す。倍率700X。
【図29−4】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(K)Ad-FGD5を注入された網膜におけるFGD5発現のqPCR評価、注入後3日、shamウィルスを注入された対照と比較された。我々の実験の脈管面積の定量化は、FGD5過剰発現が、(L)管の数、(M)分岐の数、(N)合計管長さ(μm)における減少を誘発した一方で、(O)平均管長さ(μm)における効果は観察されなかったことを示す(N=32の子)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対shamウィルスを注入された目。
【図29−5】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(P)ad-FGD5又はshamアデノウィルスをトランスフェクトされた網膜における%Flk1+細胞のフローサイトメトリー評価、注入後3日。赤のヒストグラフが、アイソタイプの対照を表し、青のヒストグラフがFlk1+シグナルを示す。(Q)棒グラフが、生存(7AAD-)細胞集団中のFlk1+細胞のパーセントを示す。(R)死んだ細胞(7AAD+)のパーセント、アポトーシス細胞(Annexin V+)のパーセント、及び生存細胞(7AAD-/Annexin V-)のパーセントのドットブロットグラフ。(S)Flk1+集団中のアポトーシスAnnexin V+細胞の百分率の定量(N=6のマウスから得られたデータ)。*P<0,05 対shamアデノウィルスをトランスフェクトされたもの。出生後の野生型c57/bl6マウスにおける網膜の脈管発達の間の内因性FGD5機能の評価は、KDR+内皮細胞におけるFGD5の特異的な内因的発現が、開裂したcaspase 3の高レベルと相関することを示した。
【図29−6】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。出生後3、8、14日後でのマウス網膜のフローサイトメトリー評価は、(T)14日目でのKDR-細胞と比較したときの、FGD5+であるKDR+細胞の百分率における特異的な増加、及び(U)8日目からのKDR-集団と比較したときの、KDR+集団における開裂caspase 3+細胞の有意な増加を示した。
【図29−7】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(V)出生後3、8、及び14日目でのマウス網膜におけるKDR+細胞集団におけるFGD5及び開裂したcaspase 3シグナルを示すドットブロットグラフ、染色対照におけるシグナルを示すニセ(mock)を伴う。
【図29−8】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(W)KDR+細胞集団において、有意により高い数のFGD5+細胞が、FGD5-細胞と比較したときに、開裂したcaspase 3+であった。(X)FGD5の平均強度(MI)レベルは、KDR-細胞と比較したときに、KDR+細胞において有意により高く、そして、網膜脈管発達の間に徐々に増加した。(Y)FGD5のMIFレベルも、開裂caspase 3-の細胞と比較したときに、開裂caspase 3+の細胞集団において、より高かった。*P<0.05、それぞれの評価された時点についてN=8。脈管系のマウス網膜発達の間の内因性FGD5のsiRNAにより媒介されたサイレンシングは、結果として、過剰な出芽の持続をもたらした。
【図29Z−1】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(Z)ホールマウントイソレクチンIB4染色(緑のFITCシグナル)により可視化された発達する網膜脈管系の代表的な顕微鏡写真。SiFGD5注入が、結果として、sishamを注入された対照と比較したときに、分岐した管の剪定の欠如により過度の出芽の持続及び静脈及び動脈の乏しい分化をもたらした。500X倍率。我々の実験の脈管面積の定量は、FGD5サイレンシングが、分岐及び管の数、並びに合計管長さ(μm)の増加を誘発する一方で、平均管長さ(μm)における減少が観察された(N=18の子)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対sishamを注入された目。
【図29Z−2】FGD5がインビボで血管新生を阻害することを示す図である(実施例3参照)。(Z)ホールマウントイソレクチンIB4染色(緑のFITCシグナル)により可視化された発達する網膜脈管系の代表的な顕微鏡写真。SiFGD5注入が、結果として、sishamを注入された対照と比較したときに、分岐した管の剪定の欠如により過度の出芽の持続及び静脈及び動脈の乏しい分化をもたらした。500X倍率。我々の実験の脈管面積の定量は、FGD5サイレンシングが、分岐及び管の数、並びに合計管長さ(μm)の増加を誘発する一方で、平均管長さ(μm)における減少が観察された(N=18の子)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対sishamを注入された目。
【図30−1】FGD5が、EC増殖を阻害し、及び、細胞死を誘発する(実施例3を参照)。(A)shamのアデノウィルスをトランスフェクトされた(白い四角)、又はトランスフェクトされていない対照(黒い丸)と比較した、Ad-FGD5(黒い三角)をトランスフェクトされたHUVECの数。(B)グラフは、FGD5の、HUVEC中における3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラソディウムブロミド(MTT)プロセシングに対する効果を示す。(C)対照siRNAにより処理されたもの又は処理されていない対照と比較した、FGD5を標的とするsiRNAにより処理されたHUVECの細胞数、トランスフェクション後3日目(データは、4つの別々の実験から三重に得られた)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対shamアデノウィルス/shamのsiRNA及び処理されていない対照。(D)Ad-FGD5若しくはshamウィルスをトランスフェクトされたHUVEC、又はトランスフェクトされていない細胞におけるアポトーシスのフローサイトメトリー評価。
【図30−2】FGD5が、EC増殖を阻害し、及び、細胞死を誘発する(実施例3を参照)。(E)Annexin V+の細胞の合計パーセンテージの定量(データは、4つの異なる実験から得られた)。*P<0,05 対shamアデノウィルスをトランスフェクトされた細胞。Ad-FGD5及びshamアデノウィルスをトランスフェクトされたHUVECにおけるp53レベル(F)及びp21CIP1レベル(G)の代表的なウェスタンブロット分析。グラフは、バンド密度におけるLicor定量された差異を示す(データは、3つの別の実験から得られた。値は平均±SEMを示す)。*P<0,05 対shamアデノウィルスをトランスフェクトされた細胞。
【図30H】FGD5が、EC増殖を阻害し、及び、細胞死を誘発する(実施例3を参照)。(H)適切な対照と比較した、FGD5過剰発現及びサイレンシング後のNotchシグナル伝達経路遺伝子のRNA発現のqPCR分析(データは、6つの別の実験から二重に得られた)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対sham siRNA又はshamアデノウィルス処理された細胞。
【図31−1】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(A)HUVECの数、sham virus、Ad-FGD5、Ad-FGD5とsiRNA Hey1、Ad-FGD5とsham siRNA、及びShamウィルスとsham siRNAにより処理された群に続く3日目でのHUVECの数。*P<0,05 対shamウィルス及び対照。‡P<0,05 対Ad-FGD5とsiRNA Hey1。†P<0,05 対Ad-FGD5及びAd-FGD5とsiRNA Hey1。代表的イムノブロットと対応するグラフが、試験された群における(B)p53及び(C)p21CIP1バンド密度の定量を示す。*P<0,05 対対照、shamウィルス、及びAd-FGD5とsiRNA Hey1ノックダウン (データは、4つの異なる実験から二重に得られた)。値は平均±SEMを表す。
【図31−2】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(D)shamウィルス、Ad-FGD5、及びAd-FGD5とsiRNA Hey1をトランスフェクトされたHUVECにおけるアポトーシスのフローサイトメトリー分析。死細胞はPI+であり、アポトーシス細胞はAnnexin V+であり、及び生存細胞はPI-/Annexin V-である。(E) Annexin V+細胞の百分率の定量。*P<0,05 対Ad-FGD5とsiRNA Hey1、shamアデノウィルス、及び対照 (データは、4つの異なる実験から得られた)。平均±SEMの値が示される。
【図31F】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(F)処理されていないHUVEC、及びshamアデノウィルス、Ad-FGD5、又はAd-FGD5とsiRNA Hey1をトランスフェクトされたHUVECの細胞周期分布の分析。示された領域は、左から右に、サブG1、G1、及びS+G2画分をそれぞれ表す。
【図31G】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(G)種々の実験群におけるサブG1、G1、及びS+G2画分にある細胞の百分率の定量(データは、4つの別の実験から二重に得られた)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対Ad-FGD5とsiRNA Hey1ノックダウン、shamウィルス、及び対照。
【図31H】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(H)代表的な顕微鏡写真が、マトリゲル中のcytodexビーズ上に被覆されたHUVECの、ファロイジン染色された微小血管出芽(Texasレッド蛍光シグナル)を示す。HUVECsが、Ad-FGD5、又はAd-FGD5とsiRNA Hey1をトランスフェクトされ、そして、shamウィルス処理された対照と比較された。600X倍率。
【図31I】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(I)ビーズ当たりの相対的な出芽面積の分析が、FGD5過剰発現細胞におけるHey1ノックダウンの効果を示す。(N=3の別々の実験、1群当たり1実験当たり20のビーズの分析)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対shamウィルス。#P<0,05 対Ad-FGD5。
【図31J】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(J)ドットブロットグラフが、shamウィルス、Ad-FGD5、及びAd-FGD5とsiRNA p53をトランスフェクトされたHUVECにおけるアポトーシスを示す。
【図31K】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(K)Annexin V+細胞の百分率の定量。*P<0,05 対shamウィルス、及びFGD5とsiRNA p53 (データは、4つの異なる実験から得られた)。値は平均±SEMを表す。
【図31L】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(L)マトリゲル中のcytodexビーズ上に覆われたHUVECの代表的な微小血管出芽。HUVECは、Ad-FGD5又はAd-FGD5とsiRNA p53をトランスフェクトされ、そして、shamウィルス処理された対照と比較された。650X倍率。
【図31M】Hey1が、FGD5により誘発されたp53依存性アポトーシスを媒介する(実施例3参照)。(M)ビーズ当たりの相対的出芽面積についてのFGD5過剰発現細胞におけるp53ノックダウンの効果の定量的分析(N=3 別々の実験、実験当たり群当たり20のビーズの分析)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対shamウィルス。 #P<0,05 対FGD5とsiRNA p53。
【図32−1】FGD5がcdc42に結合しそして活性化する(実施例3参照)。(A)HUVECにおけるFGD5発現に続くcdc42、rac1、及びRhoAのタンパク質レベルのウェスタンブロット分析。(B)FGD5過剰発現HUVECから得られた細胞溶解物におけるFGD5の共免疫沈降(IP)。試料のウェスタンブロット分析は、cdc42の選択的沈降を示したが、Rac1又はRhoAの選択的沈降を示さず、一方で、マウスIgGアイソタイプを用いたIPは、有効な沈降を示さなかった。3つの異なる実験からの代表的ウェスタンブロット試料が示される。
【図32−2】FGD5がcdc42に結合しそして活性化する(実施例3参照)。Sham Ad又はAd-FGD5をトランスフェクトされたHUVECからの細胞溶解物におけるGTPを結合したスモールGタンパク質の化学発光測定が、血清活性化に応答した、(C)GTP-Rho-A、(D)GTP-Rac1、及び(E)GTP-cdc42のレベルを示す(データは4つの別々の実験から2重に得られた)。値は平均±SEMを表す。*P<0,05 対shamウィルス。
【図32−3】FGD5がcdc42に結合しそして活性化する(実施例3参照)。(F)3つの異なる実験の代表的な顕微鏡写真、HUVECの細胞質におけるFGD5の核周囲の局在化を示す(赤の蛍光シグナル;核は青のDAPIにより染色された)。FGD5シグナルは、cdc42(緑の蛍光シグナル)と共局在する。1000X倍率。(G)FGD5(赤いシグナル)は、接着斑マーカーザイキシン(緑のシグナル)と共局在しない。1000X倍率。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
【0022】
用語
【0023】
語「新脈管形成(neovascularisation)」は、本明細書内において用いられたときに、脈管形成及び血管新生の組み合わせられたプロセスの両方をいう。既存のものからの血管の発達をいう語「血管新生」と対照的に、「脈管形成(vasculogenesis)」は、既存血管がない場合の血管の形成である。脈管形成は、最初、胚発生の間にだけ起こると考えられていた、現在はこのプロセスは成体の有機体においても起こることが知られているけれども。脈管形成は、局所的な合図(例えば増殖因子及び細胞外マトリックス)に応答した内皮前駆細胞(血管芽細胞)の遊走及び分化並びに新血管(血管樹)の形成を含む。これらの血管樹は、次に、血管新生を通じて、剪定され及び延長される。循環する内皮前駆細胞(幹細胞の誘導体)が、程度は変わるが、新脈管形成に寄与すると知られている。
【0024】
語「虚血性心臓血管又は脳血管事象」又は短い「虚血性事象」は、本明細書において用いられるときに、器官又は組織への血液供給の妨害をいう。虚血性事象はしばしば血栓の結果でありえ、そして、アテローム性動脈硬化狭窄を有する患者において、塞栓がアテローム性動脈硬化症病変から除去されるときに、最もしばしば引き起こされる。その結果の狭窄、又はこの障害物に起因する動脈又は他の脈管の狭窄化若しくは閉塞が、結果として、非常に多くの悪い状態をもたらし、その多くが対象にとって重度の結果を有する。虚血性心臓血管又は脳血管事象は、本明細書内において言及されたときに、卒中/一過性虚血性発作又は脳血管発作、心筋梗塞、心筋虚血(狭心症)、心筋虚血に伴ういずれかの心筋症(例えば症候性大動脈狭窄、HOCM)、脳出血、周辺(不安定)狭心症(peripheral(unstable) angina pectoris)、間歇性跛行(末梢アテローム性動脈硬化症動脈疾患)、及び他の血管において生じる主な異常を包含するが、これらに限定されない。語「血管において生じる異常」は、冠状動脈及び脳血管事象並びに末梢血管疾患への言及を含む。語「虚血性心臓血管又は脳血管事象」は、しばしば、語「心臓血管、脳血管、及び末梢動脈疾患」(本明細書においてまとめて「心臓血管疾患」と呼ばれる)により広範に包含される病状の急性期である。そのような疾患は、脳血管疾患及びまた末梢動脈疾患を包含する。
【0025】
語「虚血」は、本明細書内において用いられるときに、血液供給の完全な又は相対的な不足、又は、器官、体の部分、又は組織への不十分な血流をいう。相対的な不足は、血液供給(酸素運搬)と血液要求(組織による酸素消費)との間の不一致をいう。概して血管内の要因に起因する、血液供給の制限は、最もしばしば、血栓塞栓症(血栓)又はアテローム性動脈硬化(脂質を含むプラークが動脈の管腔を塞ぐ)により血管の狭窄又は閉塞により引き起こされるが、これらに限定されない。虚血は、組織の損傷又は機能不全を結果としてもたらす。心筋の虚血は、狭心症をもたらし、及び本明細書内において、虚血性心臓疾患と呼ばれる。
【0026】
語「心臓血管疾患」(CVD)は、一般に、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、心筋症、脳血管障害(脳卒中)、脳血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、冠状動脈性心臓病(CHD)(冠動脈疾患(CAD)、虚血性心疾患、又はアテローム性動脈硬化性心疾患とも呼ばれる)、拡張型心筋症、拡張機能障害、心内膜炎、心不全、高血圧(高い血圧)、肥大型心筋症、心筋梗塞(心臓発作)、心筋炎、末梢血管疾患、小血管疾患、及び静脈血栓塞栓症を含む、心臓及び循環系に影響する多くの疾患を言う。本明細書内において用いられるときに、語「心臓血管疾患」は、虚血;身体的損傷(血管内膜切除(endartiectomie)、バルーン血管形成)に起因する又は慢性損傷(アテローム性動脈硬化症を含む)の結果としての動脈損傷(内皮系統への損傷);心筋損傷(心筋壊死);及び筋壊死への言及を含む。一般に、新脈管形成応答を引き起こすいずれかの生理学的又は病態生理学的状態が、語「心臓血管疾患」により、本明細書内において用いられるときに、包含される。
【0027】
語「病理学的新脈管形成」は、新脈管形成の望ましくない状態をいう。該語は、器官又は組織における望ましくない新脈管形成、例えば腫瘍における新脈管形成又は糖尿病を患う患者における網膜及び他の血管床における新血管の病理学的形成における新脈管形成をいうがこれらに限定されない。該語は、(アテローム性動脈硬化性プラーク新脈管形成に基づく)アテローム性動脈硬化性プラークの不安定化もいう。
【0028】
語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうために、本明細書内において交換可能に用いられる。該語は、1又はそれより多くのアミノ酸残基が、対応する天然に生じるアミノ酸のアナログ又は模倣物であるアミノ酸ポリマーにあてはまり、及び、天然に生じるアミノ酸ポリマーにあてはまる。ポリペプチドは、例えば糖タンパク質を形成する為の炭水化物残基の付加により、修正されてよい。語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、糖タンパク質及び任意の他の修飾を含むタンパク質、並びに、非糖タンパク質及び別に修飾されていないタンパク質を包含する。
【0029】
タンパク質又は遺伝子の「発現に影響する」及び「発現を調節する」という語は、本明細書内において用いられるときに、該発現を制御する、コントロールする、ブロックする、阻害する、刺激する、増強する、活性化する、模倣する、バイパスする、正しくする、除去する、及び/又は置換すると理解されるべきであり、より一般的な用語では、該発現に、例えばそのタンパク質をコードする遺伝子及び/又はその遺伝子産物それ自体の発現に影響を及ぼすことにより、干渉すると理解されるべきである。
【0030】
語「対象」又は「患者」は、本明細書内において交換可能に用いられ、そして、有機体;哺乳動物(例えばヒト、非ヒト霊長類、マウス、ブタ、ウシ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、サル、ヒツジ、又は他の非ヒト哺乳動物;及び、他の非哺乳動物(例えば非哺乳動物脊椎動物、例えばトリ(例えばニワトリ又はダック)、両生類、及び魚、及び非哺乳動物無脊椎動物を含む)を含むが、これらに限定されない。
【0031】
語「相同な」は、本明細書内において用いられるときに、2つのポリペプチドの間の又は2つの核酸分子の間の配列類似性又は配列同一性をいう。該2つの比較される配列の両方における位置が、同じ塩基又はアミノ酸のモノマーサブユニットにより占められる場合、例えばもし2つのDNA分子のそれぞれにおける位置がアデニンにより占められるならば、そのときはこれら分子はその位置で相同である。2つの配列の間の相同性の百分率は、比較された位置の数により割り算された、該2つの配列により共有されるマッチする又は相同な位置の数×100の関数である。相同配列(本明細書内において「ホモログ」と呼ばれる)は、好ましくは、互いに、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.5%超、又はそれより多くの%の配列同一性を有する。本明細書内において与えられる遺伝子及びそれらの配列は、マウスフォームである。当業者は、任意の哺乳類のホモログ、好ましくはヒトのホモログが、ここに含まれることが明らかに意図されることを理解するであろう。
【0032】
語「配列同一性」は、任意の或る核酸配列又はアミノ酸配列と標的核酸配列又は標的アミノ酸配列、それぞれの間の類似性の程度をいう。類似性の程度は、配列同一性のパーセントとして表される。配列同一性のパーセントは、整列された核酸配列におけるマッチした位置の数を決定し、整列されたヌクレオチドの総数によりマッチした位置の数を割り、そして100をかけることにより計算される。マッチした位置は、同一のヌクレオチドが整列された核酸配列における同じ位置で現れる位置をいう。配列同一性のパーセントは、任意のアミノ酸配列についても決定されうる。配列同一性のパーセントを決定する為に、クエリー核酸又はアミノ酸配列が、BLASTN version 2.0.14及びBLASTP version 2.0.14を含むBLASTZの独立型バージョン(stand-alone version)からのBLAST 2 Sequences(Bl2seq)プログラムを用いて、データベース核酸又はアミノ酸配列と比較される。このBLASTZの独立型バージョンは、米国政府の国立生物工学情報センターのウェブサイト((World Wide Web at "ncbi" dot "nlm" dot "nih" dot "gov")から得られる。Bl2seqプログラムをどのように使用するかを説明する指示は、BLASTZに付随するreadmeファイルに見られる。
【0033】
語「医薬的に許容できるキャリア」は、治療剤、例えば抗体又はポリペプチド、遺伝子、及び他の治療剤、の投与の為のキャリアをいう。該語は、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生をそれ自体は誘発しない任意の医薬的キャリアをいい、これは過度の毒性無く投与されうる。適切なキャリアは、大きな、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーのアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性なウィルス粒子など、でありうる。そのようなキャリアは、当技術分野の当業者に周知である。
【0034】
治療的組成物中の医薬的に許容できるキャリアは、液、例えば水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノールなど、を含みうる。追加的に、補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝性物質、及び同様物など、がそのようなビヒクル中に存在しうる。典型的には、該治療組成物は、液状の溶液又は分散物として注入可能なものとして調製され、注入の前の液状ビヒクル中の溶液又は懸濁物に適した固形物としても調製されうる。リポソームが、医薬的に許容できるキャリアの定義内に包含される。
【0035】
語「治療的に有効な量」は、本明細書内において用いられるときに、目的の疾患又は状態を処置し、改善し、又は予防するための治療剤の量、又は検出可能な治療的又は予防的効果を示すための治療剤の量をいう。その効果は、例えば、化学的マーカー又は抗原レベルにより検出されうる。治療的効果は、身体的症状の減少、例えば減少した体温、も包含する。対象のための正確な有効量は、該対象のサイズ及び健康状態、該状態の性質及び程度、並びに投与の為に選択された治療剤又は治療剤の組み合わせに依存するであろう。すなわち、正確な有効量を予め特定することは有用でない。しかしながら、或る状況の為の有効量は、通常の実験により決定されることができ、そして、臨床医の判断の範囲内である。特に、本発明の組成物は、対象における心臓血管事象又は脳血管事象及び/又は付随する生物学的又は身体的兆候の発生を処置し、改善し、又は予防する為に用いられうる。
【0036】
本発明の目的の為に、有効用量は、投与される個体において、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は抗体の組成物の約0.01mg/kg〜50mg/kg又は0.05mg/kg〜約10mg/kgであろう。
【0037】
語「機能的断片」は、機能的変異体又は機能的誘導体であるタンパク質の短くされたバージョンをいう。タンパク質の「機能的変異体」又は「機能的誘導体」は、そのアミノ酸配列が元のタンパク質のアミノ酸配列から、1又はそれより多くのアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加であって、そのアミノ酸配列における変化にもかかわらず、該機能的変異体又は誘導体が、当技術分野の当業者にとって検出可能である元のタンパク質の生物学的活性の少なくとも1つを少なくとも一部維持するような上記置換、欠失、及び/又は付加によって得られるタンパク質である。機能的変異体は、一般に、それが得られるタンパク質と、少なくとも50%の相同であり、(好ましくはアミノ酸配列が少なくとも50%同一である)、有利には少なくとも70%相同であり、さらにより有利には少なくとも90%相同である。機能的変異体は、タンパク質のいずれかの機能的な部分であってもよく、本件における該機能は特には新脈管形成を調節する能力であるが、これに限定されない。好ましくは、アミノ酸配列は、保存的置換によって主に又は保存的置換によってだけ、天然タンパク質配列と異なる。より好ましくは、該タンパク質は、天然タンパク質配列と70%又はそれより多く、80%又はそれより多く、90%又はそれより多くの、さらにより好ましくは95%又はそれより多くの配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、最適にはそれらの配列との100%同一性を有するアミノ酸配列を含む。「機能的」は、本明細書内において用いられるときに、哺乳類において機能的であること、好ましくはヒト患者において機能的であることを意味する。
【0038】
語「抗体」は、抗原結合性ペプチドへの言及を含み、及び、抗体、モノクローナル抗体をいい、完全なイムノグロブリン若しくは抗体又はイムノグロブリン分子の任意の機能的断片をいう。そのようなペプチドの例は、完全抗体分子、抗体断片、例えばFab、F(ab')2、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、及びそれらの任意の組み合わせ、又は抗体ペプチドの任意の他の機能的部分を包含する。語「抗体」は、イムノグロブリン遺伝子又は複数のイムノグロブリン遺伝子により実質的にコードされるポリペプチド、又は分析物(抗原)と特異的に結合し及び認識するその断片をいう。しかしながら、種々の抗体断片が無傷抗体の消化の観点で規定されうる一方で、当業者は、そのような断片が化学的に又は組み替えDNA方法論を用いることによってデノボで合成されうることを理解するであろう。すなわち、語「抗体」は、本明細書内において用いられるときに、抗体断片、例えばシングル鎖Fv、キメラ抗体(すなわち異なる種からの定常領域及び可変領域を含む)、ヒト化抗体(すなわち、非ヒト源からの相補性決定領域(CDR)を含む)、及びヘテロ結合抗体(例えば、二重特異的抗体)を包含する。
【0039】
語「誘発する」又は「刺激する」は、本明細書内において新脈管形成の文脈において用いられるときに、新血管の改善された成長をいい、及び、脈管構造の奇形を防ぐことへの言及を包含する。
【0040】
好ましい実施態様の説明
【0041】
RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子の遺伝子産物
【0042】
RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子が、マウス胚形成の間の脈管発達の種々のステージのゲノムワイドスクリーニングの際に発見され、これは既知のクローン並びに完全に未知であり且つ文書化されていないクローンを同定した(ESTクローン又はRIKENクローンと称される)。これらの候補遺伝子のいくつかは、両生類オルソログを有さなかった、そして、分離されたヒト大動脈及び高度に脈管形成された組織における遺伝子発現レベルを、他の無関係の器官に対して、qPCRによって比較することにより、それらの脈管系特異的発現によって、さらに選択された(図1参照)。次に、内皮特異的発現が、内皮初代細胞系列、より特にはHUVECを用いて、及びインビボでマウスにおいてさらに分析された。9430020K01Rikが、発達中のマウスにおける新脈管形成の間に上方制御され(図2参照)、及び、脈管ネットワークにおいて専ら発現された。
【0043】
RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子産物が、今まで知られている最も強力な顕著な新脈管形成制御遺伝子(産物)、VEGFファミリー、と比較したときの、同様のもしくはより強力な新脈管形成、すなわち新たな脈管の形成、を誘発する為の純然たる能力により選択された。
【0044】
Agtrl1/Apelin遺伝子の遺伝子産物
【0045】
Agtrl1遺伝子は、Gタンパク質に結合したレセプター遺伝子ファミリーのメンバーをコードする。該コードされたタンパク質は、アデニレートシクラーゼ活性を阻害するapelinレセプター(APJレセプターとしても知られている)であり、そして、その既知の機能の一つが、それが、高血圧的効果を発揮することによるアンジオテンシンIIの血圧作用に対する対抗制御的役割(a counter-regulatory role)を果たすことである。オルタナティブスプライシングから結果する2つの転写物変異体が同定され、その両方が本明細書内に示されている。Apelinは、該レセプターのタンパク質リガンドである。
【0046】
Agtrl1が、トランスクリプトームワイドスクリーニングにおいて、胚の脈管形成のレギュレーターとして同定された。ゼブラフィッシュ幼生のホールマウント(whole mount)インシチュデータが、受精後12時間(hpf)以降Agtrl1の脈管系特異的発現を示した。Agtrl-1ノックダウンが、ゼブラフィッシュ幼生における血管奇形成を結果すると分かった。モルホリノにより媒介されたAgtrl-1サイレンシングも、注入されていない幼生と比較して、Fli::gfpミュータントにおいて心臓及び血管の奇形を結果した。アノーテーション「Agtrl1/apelin」は、本明細書内において用いられるときに、該レセプター及びそのリガンドの組合せをいい、そして、リガンドにより媒介されたレセプター活性化への言及を含む。Agtrl1/apelinが、特定のEPC集団の動員を制御することが発見された。Agtrl1は、内皮細胞において及びcKit+/Flk+ EPC集団において特異的に発現された。Agtrl1特異的リガンドapelinの注入は、骨髄及び血液におけるcKit+/Flk+のEPC集団を増加した。
【0047】
心臓虚血後のapelinタンパク質及びRNAレベルの特異的な制御が研究され、そして、apelinが、心筋虚血(MI)後、虚血組織において、タンパク質レベル及びRNAレベルの両方において増加されるが、後肢虚血(HLI)4日後には増加されないことが発見された。
【0048】
さらに、Agtrl1が、EPC動員を成体有機体においてMIに応答して制御することが発見された。cKit+/Flk+/Agtrl1+のEPCの増加が、MI後の虚血組織において見られたが、HLIにおいて見られなかった一方で、apelinの局所的注入は、cKit+/Flk+のEPCを、HLIにおける虚血組織に補充する。
【0049】
Stabilin1及び2遺伝子の遺伝子産物
Stabilin1及び2は、マウス及びゼブラフィッシュの内皮細胞内張りにおいて(Stabilin 2)及びゼブラフィッシュのリンパ向性(lymphogenic)内張りにおいてインビボで特異的に発現される遺伝子産物である。ゼブラフィッシュ幼生におけるモルホリノにより媒介された遺伝子サイレンシングは、異常側枝形成を伴うセグメント間脈管形成の奇形を結果した。すなわち、本明細書内で言及されるstabilin類は、新脈管形成を誘発する特性を示す。
【0050】
TNFaip8l1遺伝子の遺伝子産物
【0051】
プロテイン8様1を誘発可能な腫瘍壊死因子α(TNFaip8l1)は、マウス及びゼブラフィッシュの内皮細胞内張りにおいて特異的に発現される。該タンパク質は、デスエフェクタードメイン(DED)を有し、これはカスパーゼにより媒介されるアポトーシスの阻害を示唆する。ゼブラフィッシュ幼生におけるモルホリノにより媒介された遺伝子サイレンシングは、異常な側枝形成を伴うセグメント間脈管形成の奇形を結果した。ヒト臍帯脈管内皮細胞(HUVEC)におけるこの遺伝子のインビトロノックダウンは、同様の効果を示した。TNFaip8l1についてサイレンシングされたHUVECは、サイレンシングされていない細胞と比べて、より少ない増殖及び遊走を示し、及び、管ネットワークをより少なく形成することができると分かった(新脈管形成の間の内皮の全ての基本的な機能)。これらの効果は、該サイレンシングされた細胞におけるアポトーシスの誘導により引き起こされると分かった。従って、TNFaip8l1は、抗アポトーシス機能性を示す。今、機能的な血行力学的関連血管床における未成熟漏出性新毛細血管血管床から、無関係の機能的でない毛細血管の除去及び既存脈管の成熟により、TNFaip8l1遺伝子が、脈管剪定(vascular pruning)、脈管の成熟及び再構築に関与することが発見された。TNFaip8l1遺伝子発現は、脈管剪定及び脈管成熟(反応性脈管形成、炎症、腫瘍新脈管形成、及び虚血性新脈管形成)をネガティブに制御する。TNFaip8l1遺伝子又はその遺伝子産物のサイレンシングは、虚血組織において、内皮細胞生存を誘発し及び新脈管の形成を促進し、そしてすなわち、虚血性疾患の単剤治療又は補助的治療として用いられうる。それ故に、本発明に従う該医薬組成物において、TNFaip8l1の遺伝子産物をブロックすることができる分子を含めることが有利である。
【0052】
TNFaip8遺伝子の遺伝子産物
【0053】
腫瘍壊死因子α誘発可能タンパク質8(TNFaip8)は、マウス及びゼブラフィッシュの内皮細胞内張りにおいて特異的に発現される。該タンパク質は、デスエフェクタードメイン(DED)を含み、これは、カスパーゼにより媒介されるアポトーシスの阻害を示唆する。ゼブラフィッシュ幼生におけるモルホリノにより媒介された遺伝子サイレンシングは、異常側枝形成を伴うセグメント間脈管形成の奇形を結果した。ヒト臍帯脈管内皮細胞(HUVEC)におけるこの遺伝子のインビトロノックダウンは、同様の効果を示した。TNFaip8についてサイレンシングされたHUVECは、サイレンシングされていない細胞と比較して、より少ない増殖及び遊走を示し、及び、管ネットワークをより少なく形成することができると分かった(新脈管形成の間の内皮の全ての基本的機能)。これらの効果は、サイレンシングされた細胞におけるアポトーシスの誘発により引き起こされると分かった。それ故に、TNFaip8は、抗アポトーシス機能性を示す。今、機能的血行力学的関連脈管床における未成熟漏出性新毛細血管血管床から、無関係な機能的でない毛細血管の除去及び既存脈管の成熟により、TNFaip8遺伝子が脈管剪定、脈管成熟及び再構築に関与することが発見された。TNFaip8遺伝子発現は、脈管剪定及び脈管成熟をネガティブに制御する(反応性脈管形成、炎症、腫瘍新脈管形成、及び虚血性新脈管形成)。TNFaip8遺伝子又はその遺伝子産物のサイレンシングは、虚血性組織において内皮細胞生存を誘発し、及び、新脈管の形成を促進し、すなわち、虚血性疾患についての単剤治療又は補助治療として用いられうる。それ故に、本発明に従う該医薬組成物に、TNFaip8の遺伝子産物をブロックすることができる分子を含めることが有利である。
【0054】
FGD5遺伝子の遺伝子産物
【0055】
FGD5は、精力的なスクリーニング後に選択された遺伝子である。脈管系におけるFGD5の特異的な時間的且つ空間的発現が、発達するゼブラフィッシュにおけるホールマウントインシチュハイブリダイゼーションによって及びFlk1+マウス血管芽細胞におけるqPCR及びゲノムワイドマイクロアレイ分析によって同定され、一方で、qPCR分析は、成体C57bl/6マウスにおける他の器官に対して大動脈及び頸動脈における増加したFGD5発現を示した。加えて、高いFGD5発現レベルが、関連しない細胞系列と比較して、初代ヒト内皮細胞(EC)において検出された。これらのデータは、FGD5が、成熟EC及び内皮前駆細胞において主に発現されることを示す。FGD5遺伝子は、すなわち、内皮特異的な機能を有する。siRNAトランスフェクションによるFGD5発現のノックダウンは、2DマトリゲルにおいてインビトロでヒトECの新規脈管を形成する能力を有意に増した一方で、FGD5cDNA発現性ベクターのアデノウィルストランスフェクションは、新規脈管形成を阻害した。同様の効果が、エクスビボの大動脈リング新脈管形成アッセイにおいて観察され、これにおいて、C57bl/6マウスから分離された大動脈セグメントにおけるFGD5のcDNAの過剰発現が、毛細血管構造の出芽を妨げた。加えて、sephadexビーズ上で増殖された、FGD5アデノウィルスをトランスフェクトされたECが、sham(ニセのもの)をトランスフェクトされた対照と比較して、インビトロフィブリンゲル環境において、stalk及びtip細胞の形成における重度の阻害を示した(図10A)。SCIDマウスにおける、FGD5を形質導入されたヒトECにより被覆されたsephadexビーズとのマトリゲルミックスのインビボでの皮下注入が、マトリゲルプラグにおいて、shamウィルスをトランスフェクトされたECを有するビーズを受け取った動物と比較して、新規脈管の形成をブロックし(図10B)、及び、EC増殖をブロックした(図10C)。FGD5のこの阻害機能は、EC生存に対するその効果により説明され、というのも、FGD5過剰発現は、フローサイトメトリー評価においてannexin V+細胞のパーセンテージの上昇により示されるアポトーシスを誘発し、一方で、該遺伝子のsiRNAノックダウンはannexin V+細胞(アポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞)の数を減少したからである。FGD5は、ウェスタンブロット分析により示されるとおり、EC増殖を阻害し、及び、P53-P21により媒介された細胞周期停止をアクティブにすることによりインビトロでアポトーシスを誘発した。さらなる研究は、P53誘発が、FGD5による共転写因子HEY1の制御に依存的であり、そして、HEY1経路のsiRNAブロックが、ECにおけるFGD5表現型を消し去ったことを示した。FGD5を介したHEY1上方制御は、レセプターnotch1/4及びそれらのリガンドDLL4の増加した発現と関連付けられ、これはnotch1/4シグナル伝達カスケードを介したHEY1の転写活性化を指し示す。
【0056】
FGD5は、新規脈管の形成の見込みある遺伝子制御因子であり、これは成熟した及び前駆の内皮細胞において特異的に発現される。FGD5は、早期の脈管剪定の見込みある制御因子であり、なぜならそれは、notchシグナル伝達カスケードにおけるHEY1共転写因子を介し細胞周期停止及びp53-p21媒介性アポトーシスを誘発するからである。
【0057】
理論にとらわれることなく、我々は、この遺伝子が、脈管再構築、剪定、成熟、及び脈管安定化において重要な役割を果たすと考える。FGD5遺伝子は、サイレンシングの際の新規毛細血管形成の促進とともに、EC選択、毛細血管剪定、及びEC生存の促進における顕著に見込みある遺伝子であると示された。加えて、マトリゲルプラグにおける細胞懸濁物中のFGD5の過剰発現が、腫瘍脈管形成を強力に防ぐ(図10B/Cにおいて示されるとおり)。すなわちFGD5遺伝子産物は、本明細書内において言及されるときに、新脈管形成を阻害する。
【0058】
マウス及び発達するゼブラフィッシュモデル研究における遺伝子FGD5の発現は、内皮前駆細胞及び成熟ECに制限されることが発見された。本発明の実施態様において、該局面は、他の細胞及び組織においても用いられ及び発現されうる。インビトロ及びインビボでの機能獲得及び喪失(gain and loss-of-function)アッセイは、FGD5が後期脈管再構築に関与して、余分な脈管構造を除去することを実証した。我々の研究は、FGD5が、その直接の標的cdc42に結合し及び活性化するRhoグアニン−ヌクレオチド交換因子として機能し、そして、内皮細胞においてHey1依存性のp53媒介アポトーシスを促進することを示す。これらの発見は、FGD5を、内皮細胞除去による後期脈管発達の間の脈管剪定の新規の、重要な制御因子として同定する。FGD5及びその遺伝子産物の治療的使用方法の実施態様のより多くの詳細が、実施例3に提供される。
【0059】
本発明の化合物
【0060】
本発明は、他の局面において、新脈管形成を(誘発又は阻害により)調節することができる化合物を提供する。本発明のこの実施態様は、とりわけ、HUVECにおけるRIKEN cDNA 9430020K01のノックダウンにおいて、細胞培養物はG1期における細胞周期停止により細胞増殖を顕著に阻害するという発見に基づく。また、付随して、より多くのアポトーシスが、RIKEN cDNA 9430020K01をサイレンシングされた内皮細胞において同定された。一致して、HUVECによる2Dマトリゲルアッセイにおける管形成が、RIKEN cDNA 9430020K01ノックダウンにより有意に減衰された一方で、HUVECの遊走が減少された。
【0061】
RIKEN cDNA 9430020K01の遺伝子機能が、マウス網膜モデルにおいて評価された。RIKEN cDNA 9430020K01のノックダウン及び過剰発現が、出生直後1日目でのC57bl/6子マウスの網膜におけるshRNA及びcDNA発現ベクターのレンチウィルス感染により誘発された。RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子は、マウス発生における胚の脈管形成の間、脈管系において特異的に発現される。RIKEN cDNA 9430020K01のノックダウンは、インビボでの網膜において、ECの細胞増殖を妨げ及びアポトーシスを増加する。
【0062】
同様の実験が、本明細書内に記載された他の遺伝子及び遺伝子産物について実施された。これらの他の遺伝子及び遺伝子産物について、該遺伝子又は遺伝子産物が新脈管形成プロセスを調節する様式に依存して、同様の又は反対の効果が、上記で示されたとおり観察された。
【0063】
それ故に、本発明は、新脈管形成を(誘発又は阻害により)調節することにおける使用の為の以下の化合物又は化合物の組み合わせを提供する:
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選ばれる遺伝子によりコードされる又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物、及びこれらの機能的断片;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体に由来する他の分子からなる群から選ばれたものである;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は該遺伝子のmRNA遺伝子産物に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA若しくはアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)又はリボザイム;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、及び
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子と又はこれらの遺伝子産物と相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物。
【0064】
当技術分野の当業者は、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2の発現が、新脈管形成を誘発し又は刺激する為に、増加されなければならないことを理解するであろう。同様に、これらの遺伝子産物の治療的投与は、新脈管形成を刺激するであろう。化合物、例えば抗体、アンチセンス分子、及び、これらの遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性に干渉する小分子などは、新脈管形成を阻害することにおける使用の為に必要とされる。
【0065】
当技術分野の当業者は、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5の発現が、新脈管形成を誘発し又は刺激する為に、減少されなければならないことを理解するであろう。同様に、これら遺伝子の遺伝子産物の治療的投与は、新脈管形成を阻害するであろう。化合物、例えば抗体、アンチセンス分子、及び、これらの遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性に干渉する小分子など、は新脈管形成を誘発し又は刺激することにおける使用の為に必要とされる。
【0066】
それ故に、本発明は、治療化合物として、本明細書内に記載された新脈管形成調節性遺伝子のポリペプチド遺伝子産物に対して向けられた抗体又はその誘導体(例えばscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体から得られた他の分子)を提供する。本発明の抗体は、例えばリガンド−レセプター相互作用又はタンパク質の酵素機能が妨害されるように、タンパク質の機能に干渉する効果を有する。非常に適切なブロッキング抗体はデンドリマーである。そのようなデンドリマーは、該ポリペプチド遺伝子産物の凝集を結果しうる。本明細書内において、レセプターアンタゴニストも一般に想定される。
【0067】
本発明はさらに、治療化合物として、本明細書内に記載された新脈管形成調節性遺伝子の遺伝子又はmRNAと、ストリンジェントな条件下で結合するアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA若しくはアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、モルホリノ、RNAi分子、又はリボザイムを提供する。
【0068】
好ましくは、本発明の上記化合物は医薬として用いられる。本発明の医薬は、病理学的新脈管形成の処置又は予防の為に適切に用いられうる。
【0069】
他の局面において、本発明はさらに、本発明に従う化合物及び、上記で説明されたとおりの適切な添加物、キャリア、又は希釈剤を含む、新脈管形成を阻害する為の医薬組成物を提供する。
【0070】
好ましくは、本発明に従う新脈管形成を阻害する為の医薬組成物はさらに、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/若しくはFGD5から選ばれる少なくとも1つの遺伝子産物、並びに/又は、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子の遺伝子産物に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、抗体から得られた他の分子、及び該遺伝子産物のアンタゴニストからなる群から選ばれたものである;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、 Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性に干渉する小分子;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子のmRNAとストリンジェントな条件下で結合するアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA若しくはアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子又はリボザイム
から選ばれる化合物を含む。
【0071】
本発明は、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5のいずれか一つによりコードされるレセプターに結合するリガンド;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5のいずれか一つによりコードされる遺伝子産物のアゴニスト; 及び/又は
-哺乳動物細胞においてRIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5のいずれか一つの過剰発現の為のベクター構築物であって、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5のいずれか一つをコードするコーディング核酸配列であって、哺乳動物細胞においてコーディング核酸配列の発現を駆動するプロモータと操作可能に連結された前記コーディング核酸配列、及び当該コーディング配列に操作可能に連結された転写終結配列を含む前記構築物;
及び
医薬的に許容できるキャリア
を含む医薬組成物を提供する。
【0072】
代替的な第二の局面において、本発明は、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5に特異的に結合するタンパク質、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5のアンタゴニスト、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5アゴニストスカベンジング化合物(agonist scavenging compound)、抗体、又は小分子インヒビター; 及び/又は
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5遺伝子産物をコードする遺伝子又はその転写物をRNA干渉によりサイレンシングする為のベクター構築物であって、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5をコードする遺伝子又はその転写物をRNA干渉によりサイレンシングすることができるshRNA、siRNA、又はmiRNA分子をコードする前記コーディング核酸配列であって、哺乳動物細胞においてコーディング核酸配列の発現を駆動するプロモーターと操作可能に連結された前記コーディング核酸配列、及び該コーディング配列と操作可能に連結された転写終結配列を含む前記構築物;
及び
医薬的に許容できるキャリア
を含む医薬組成物を提供する。
【0073】
以下の実施例において例示された化合物が、本発明の化合物の適切な実施態様である。
【0074】
医療用途
【0075】
本発明は、新脈管形成を誘発し又は刺激する為の方法であって、それが必要な対象において、遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物の活性を活性化し、増大させ、及び/又は、発現を増加すること、及び/又は、遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物の活性を妨害し、阻害し、及び/又は、発現を阻害することを含む前記方法を提供する。
【0076】
好ましい実施態様において、遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物の活性を活性化し、増加し、及び/又は、発現を増加するステップは、
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子の産物を、遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子の産物に結合するリガンド又は遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子の産物のアゴニストの治療的に有効な量と接触させること、及び/又は
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子を該対象の細胞において過剰発現させること、
により実施される。
【0077】
代替的な好ましい実施態様において、遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物の活性をブロックし、阻害し、及び/又は、発現を阻害するステップは、
-遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物を、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5に特異的に結合するタンパク質、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5のアンタゴニスト、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5のアゴニストスカベンジング化合物、抗体、又は小分子インヒビターの治療的に有効な量と接触させること、及び/又は
- TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5をコードする遺伝子を、RNA干渉(RNAi)を用いてサイレンシングすること
により実施される。
【0078】
本発明はまた、新脈管形成を阻害し又は防ぐ為の方法であって、それが必要な対象において、遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物の活性を活性化し、増加し、及び/又は、発現を増加すること、及び/又は、遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物の活性をブロックし、阻害し、及び/又は、発現を阻害することを含む前記方法を提供する。
【0079】
好ましい実施態様において、遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物の活性を活性化し、増加し、及び/又は、発現を増加するステップは、
-遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子の産物を、遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子の産物に結合するリガンド又は遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物のアゴニストの治療的に有効な量と接触させること、及び/又は
-遺伝子TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる遺伝子を該対象の細胞において過剰発現させること
により実施される。
【0080】
代替的な好ましい実施態様において、遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及び Stabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物を妨害し、活性を阻害し、及び/又は、発現を阻害するステップは、
-遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物を、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及び/又はStabilin 2に特異的に結合するタンパク質、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及び/又はStabilin 2のアンタゴニスト、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及び/又はStabilin 2のアゴニストスカベンジング化合物、抗体、又は小分子インヒビターの治療的に有効な量と接触させること、及び/又は
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、及びStabilin 2をコードする遺伝子をRNA干渉(RNAi)を用いてサイレンシングすること、
により実施される。
【0081】
本明細書内において定義されたとおりの遺伝子産物及び化合物は、治療的適用の為に必要とされる。本発明は、虚血性の心臓疾患、CNS及び末梢後肢疾患における、並びに、腫瘍学的疾患(例えば腫瘍)及び糖尿病における、該化合物の治療的使用方法を提供する。
【0082】
該遺伝子産物及び化合物のいくつかは、脈管形成促進効果を有し、そして、それ故に、局所的及び循環する内皮前駆細胞を刺激して、新規動脈を生成すること及び(アテローム性動脈硬化症の、未成熟の、又は過度に浸透性の)既存動脈の機能不全の修復を刺激することができる。これは、心臓血管虚血性疾患の治療又は、例えば限定された標的脈管、高い同時罹患率、又は小血管の疾患(とりわけ)の故に、従来の治療について現在受け入れ可能でない患者にとっての最終的な解決を可能にする。
【0083】
より特には、本発明の脈管形成促進性遺伝子産物は、疾患への生理学的応答の適切な活性化を刺激し、十分な脈管修復応答をもたらすことに役立ちうる。好ましい遺伝子産物は、ポリヌクレオチド(DNA、RNA、又は合成ヌクレオチド)及びポリペプチドを包含する。好ましいポリヌクレオチドはRNAを包含する。本発明はまた、医薬としての、本明細書内において同定されたとおりの遺伝子を含み又はその遺伝子産物の機能的断片をコードする核酸配列を含むベクターを含む。該ベクターは、遺伝子治療において適切に用いられることができ、これにおいて、本明細書内において同定された遺伝子は、標的細胞における適切なベクターからの定方向の(directed)発現に続き、それらの野生型カウンターパートの機能を模倣するドミナントネガティブ型の設計の為に用いられる。
【0084】
該遺伝子産物は、それらの抗脈管形成効果のために用いられてよく、そして、それ故に、脈管の形成を阻害することができる。血管新生の阻害は、これらの病理学的プロセスを防ぎ又は緩和することにおいて有用であり、及び/又は、組織化されていない過剰透過性の動脈血管床(腫瘍血管新生及び炎症性新脈管形成を含む)を、薬物療法及び介入について、より受け入れ可能な脈管完全性を有する構造化された血管樹へ再構築する。
【0085】
それ故に、脈管形成促進性遺伝子産物は、より低い程度の新脈管形成により特徴づけられる疾患を患う対象の処置の為に適切に用いられうる。そのような低い程度の新脈管形成は、該疾患に冒された特定の器官において又は器官の一部において起こりうる。この文脈において、語「低い」は、健康なヒトにおけるその同じ器官又は器官の一部の新脈管形成の程度よりも低いことを意味する。好ましい実施態様において、該対象は、心臓血管疾患を患う。新たな脈管の形成(新脈管形成)を促進することを目的とした治療は、障害の起きた(虚血の)心筋(又は脳血管)組織を救出し、進行中の虚血性損傷(梗塞サイズの減少とともに)及び後の心筋の有害な再構築を減衰し、最終的に、心筋機能の長期保存(及び心疾患の予防、脳血管アクシデントの減少、又は跛行の病状及び虚血性潰瘍を緩和する)をもたらす。理論にとらわれることなく、内皮前駆細胞(EPC)は心筋梗塞の発症後7〜10日後にだけ上方制御されるけれど、内皮前駆細胞(EPC)が、虚血の際に、例えば心筋梗塞(AMI)及び心不全(CHF)において、動員されると考えられる。本発明の脈管形成性遺伝子産物は、新たな脈管の形成に関与するだけでなく、これらのEPCの脈管修復応答の開始においても関与する。それ故に、関連する細胞集団における及び虚血の部位での局所的な、これらの脈管形成性遺伝子産物の発現(責任冠状動脈における注入又は静脈内注入)が、これらのAMI又はCHF患者の予後及びアウトカムを改善すると考えられる。
【0086】
本発明の化合物及び組成物は、身体損傷後の脈管回復を改善する為に、未成熟脈管の成熟を改善し並びに脈管透過性を減少する為に、及び、アテローム性動脈硬化症のプラーク安定性を修正する為に、及び固形腫瘍における脈管形成を調節する為に用いられうる。プラーク安定性の改善は、急性心筋梗塞又は脳血管事象を予防する局面において用いられてよく、及び、治療モデルによって、脈管形成を増大し又は減少することにより得られうる。腫瘍における脈管形成の調節は、ガン増殖を遅らせる為の脈管形成の予防又は阻害を含んでよく、他の実施態様において、ガンが薬剤により接近可能にする為に、ガンにおける脈管形成の刺激も含みうる。
【0087】
他の局面において、本発明は、対象を処置する方法であって、該対象に本発明の医薬組成物を心臓血管疾患(のリスク)を減少する為に有効な量で投与することを含む前記方法を提供する。該医薬組成物は、局所的経路、腸内経路、非経口経路、経皮投与、経粘膜経路、バッカル経路(歯肉線付近の頬を通じて吸収される)、吸入経路、又は大槽内経路を用いて又は膣坐剤を介してなどにより投与されうる。
【0088】
本発明はさらに、対象を処置する方法であって、該対象に、本発明に従う新脈管形成を阻害する為の医薬組成物を、病理学的新脈管形成(のリスク)を減少する為に有効な量で投与することを含む前記方法を提供する。
【0089】
本発明はさらに、対象を処置する方法であって、該対象に、本発明に従う新脈管形成を刺激する為の医薬組成物を、新脈管形成を誘発する為に有効な量で、好ましくは新脈管形成及び脈管再構築及び成熟を誘発し/調節する為に、例えば組織又は臓器移植後に(これらに限定されない)、又は、組織虚血又は梗塞(心臓血管虚血性疾患、脳血管疾患、及び末梢動脈疾患を含む)、及び閉塞性血栓血管炎、腫瘍血管新生、腫瘍転移、腫瘍治療反応性、脈管透過化及び転移、及び糖尿病性網膜症における、血管周囲及び/又は側副血行循環の確立を刺激する為に有効な量で、投与することを含む前記方法を提供する。
【0090】
好ましい実施態様において、該対象は、心臓血管疾患を患っている。新たな脈管の形成、再構築、又は成熟(新脈管形成)を促進することを目的とした治療は、障害のある(虚血性)心筋又は脳血管組織を助け、進行中の虚血性損傷(梗塞サイズ又はCVAの減少とともに)及び後の心筋の有害な再構築を減衰し、最終的に心筋機能の長期保存(及び心不全の予防)をもたらす。理論にとらわれることなく、内皮前駆細胞(EPC)は心筋梗塞の発症後7〜10日後にだけ上方制御されるが、これら細胞が虚血性心筋梗塞(AMI)及び心不全(CHF)の際に動員されると考えられる。本発明の血管形成性遺伝子産物は、新たな脈管形成においてだけでなく、これらEPCの脈管修復応答の開始においても関与する。それ故に、関連細胞集団における又は虚血の部位での局所的な、これらの脈管形成性遺伝子産物の発現(責任冠状動脈における注入又は静脈内注入)が、これらのAMI又はCHF患者の予後及びアウトカムを改善すると考えられる。
【0091】
すなわち、本発明は、ヒトの処置方法であって、該ヒトに、本発明に従う新脈管形成を誘発する為の医薬組成物を、心臓血管疾患、脳血管疾患、及び末梢動脈疾患を患うリスクを緩和し又は予防する為に、並びに腫瘍学的な患者に投与することを含む前記方法を提供する。
【0092】
以下の実施例に例示された方法が、本発明の方法の適切な実施態様である。
【0093】
医薬組成物
【0094】
上記化合物は、少なくとも1つの医薬的に許容できる添加物、例えば医薬的に許容できるキャリア、許容できる塩、乳化剤、又は保存料などをさらに含む、新脈管形成を刺激する為の医薬組成物中に適切に含まれる。
【0095】
好ましくは、新脈管形成を刺激する為の該医薬組成物は、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5から選ばれる少なくとも1つの遺伝子産物をさらに含む。アンジオテンシンレセプター2様1(Agtrl1)は、脈管系に限定された発現を示した遺伝子である。加えて、その後のゼブラフィッシュにおけるAgtrl1を標的とするモルホリノ注入による機能喪失(loss-of-function)研究が、心臓血管系の奇形を結果した。Agtrl1についての成体C57bl/6マウスにおける哺乳動物関連性が、フローサイトメトリーにより実証された:Agtrl1は、成熟ECにおいて高度に発現され、及び、cKit+/Flk1+細胞、循環するEPCの集団、においても検出された。この細胞集団は、心筋虚血後の虚血領域において増加された(P<0.001)が、後肢虚血後は増加されなかった。Apelin(Agtrl1の内因性リガンド)の産生も、心筋の梗塞領域において3倍だけ増大され(P<0.01)、及び、apelinの全身注入は、血液循環へのcKit+/Flk1+EPC動員を2倍だけ増加した(P<0.05)。虚血心筋におけるApelinの注入は、この特定の集団の増加したホーミングを、及び、虚血組織の新脈管形成における2倍増加を結果し(P<0.01)、その結果、心臓機能を改善し及び瘢痕化を減少した。これらの発見は、虚血の心臓組織への応答における増加したapelinレベルが、Agtrl1+のEPCにとっての特異的な化学的誘因物質として作用でき、梗塞した領域への遊走を刺激し及び次に新脈管形成及び心筋修復を促進したことをはじめて示す。それ故に、Agtrl1及び/又はApelinを治療的に活性な化合物として含む医薬組成物により、心臓血管疾患の処置において特に有利である。
【0096】
該遺伝子産物又は該ベクターを、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5の群から選ばれる遺伝子の産物の発現をブロックすることができる分子であるインヒビターと組み合わせることも有利である。これらの遺伝子は、国際公開第2009/075566号パンフレット、国際公開第2009/075579号パンフレット、国際公開第2009/075565号パンフレット、及び国際公開第2009/075578号パンフレットに記載されている。当業者は、当技術分野において既知の技術を用いて、そのようなインヒビターを、国際公開第2009/075566号パンフレット、国際公開第2009/075579号パンフレット、国際公開第2009/075565号パンフレット、及び国際公開第2009/075578号パンフレットにおいて与えられた配列情報に基づき作ることができる。この局面の一つの実施態様において、該インヒビターは、そのバイオマーカーをコードする遺伝子の発現産物に対して向けられた抗体及び/又は抗体誘導体である。治療抗体は例えば、細胞膜上に配置された遺伝子発現産物に対して有用であり、及び医薬組成物に含まれうる。また、抗体は、細胞内の、例えば細胞質の、遺伝子産物、例えばRNA、ポリペプチド、又は酵素に、これらの産物の活性を調節する為に、標的化されうる。好ましくは、そのような抗体は、細胞内抗体の形にあり、標的細胞の内側で、好ましくはプラーク形成性細胞(T細胞、内皮細胞、及び平滑筋細胞を包含する)、又は、アテローム性動脈硬化病変において見られる細胞、例えば白血球、マクロファージ、泡沫細胞、樹状細胞、及びマスト細胞並びにT細胞など、の内側で産生される。加えて、抗体は、それらに連結された少なくとも1つの毒性化合物の標的細胞への送達の為に用いられうる。
【0097】
本発明の好ましい実施態様において、該インヒビターは、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5をコードする遺伝子のタンパク質発現産物の活性を調節し又はその機能を干渉することができる小分子である。加えて、小分子は、少なくとも1つの連結された毒性化合物の該標的細胞への送達の為にも用いられうる。
【0098】
阻害の種々レベルで、核酸は、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5から転写されたmRNAを破壊することによりタンパク質の産生をブロックする為に用いられうる。これは、アンチセンス薬剤、リボザイム、により、又はRNA干渉(RNAi)により達成されうる。疾患プロセスにおけるこの早期段階で作用することにより、これらの薬剤は、疾患を引き起こすタンパク質の産生を防ぐ。本発明は、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及び/又はFGD5に対して向けられたアンチセンス薬剤、例えばアンチセンスRNA及びアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、リボザイム及びRNAi分子に関する。
【0099】
リボザイム
【0100】
トランス開裂する触媒的RNA(trans-cleaving catalytic RNA、リボザイム)は、エンドリボヌクレアーゼ活性を有するRNA分子である。リボザイムは、特定の標的について特異的に設計されており、及び、標的メッセージは特異的なヌクレオチド配列を含まなければならない。それらは、細胞のRNAのバックグラウンドにおいて、任意のRNA種を部位特異的に開裂する為に改変される。該開裂事象は、該mRNAを不安定にし、そして、タンパク質発現を防ぐ。重要なことに、リボザイムは、表現型効果を決定することにより、インビトロ又はインビボの文脈において未知の機能の遺伝子の機能を決定する目的で、未知の機能の遺伝子の発現を阻害する為に用いられうる。
【0101】
ひとつの一般に用いれるリボザイムモチーフはハンマーヘッドであり、これのための基質配列要求は最小である。ハンマーヘッドリボザイムの設計は、リボザイムの治療的使用におけるように、当技術分野で周知である。リボザイムは、例えば、米国特許第5,254,678号明細書に記載されたとおりに調製され及び用いられうる。HIV-I RNAのリボザイム開裂が、米国特許第5,144,019号明細書に記載されている;リボザイムを用いたRNA開裂の方法は、米国特許第5,116,742号明細書に記載されている;及びリボザイムの特異性を増加する為の方法が、米国特許第5,225,337号明細書に記載されている。ハンマーヘッド構造又はヘアピン構造のリボザイム断片の調製及び使用方法も、当技術分野で知られている。リボザイムは、また、ローリングトランスクリプション(rolling transcription)により作られうる。
【0102】
リボザイムのハイブリダイズする領域は、分岐構造として修正され又は調製されうる。リボザイムの基本的構造は、当技術分野の当業者によく知られた様式で化学的に変化されてもよく、及び、化学的に合成されたリボザイムが、モノマーのユニットにより修正された合成オリゴヌクレオチド誘導体として投与されうる。治療の文脈において、リポソームにより媒介されたリボザイム送達が、細胞の取り込みを改善する。
【0103】
リボザイムの治療的及び機能的なゲノム適用は、阻害されるべき遺伝子のコーディング配列の一部の知見を要求する。すなわち、多くの遺伝子について、核酸配列が、有効なリボザイムを構築する為に十分な配列を提供する。標的開裂部位は、標的配列中において選択され、及びリボザイムは、該開裂部位に隣接する5'及び3'ヌクレオチド配列に基づき構築される。レトロウィルスベクターは、該標的コーディング配列のmRNAを標的とする単量体及び多量体のハンマーヘッドリボザイムを発現する為に改変される。これらの単量体及び多量体リボザイムは、インビトロで、該標的mRNAを開裂する能力について試験される。細胞株は、該リボザイムを発現するレトロウィルスベクターを安定に形質導入され、そして、該形質導入が、ノザンブロット分析及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により確認される。該細胞は、標的mRNAの不活性化について、疾患マーカーの発現の減少又は該標的mRNAの遺伝子産物の減少のような指標によりスクリーニングされる。
【0104】
アンチセンス
【0105】
アンチセンスポリヌクレオチドは、RNAに特異的に結合する為に設計され、その結果RNA−DNA又はRNA−RNAハイブリッドの形成をもたらし、DNAの複製、逆転写、又はメッセンジャーRNA翻訳の停止をともなう。選択された配列に基づくアンチセンスポリヌクレオチドは、対応する遺伝子の発現を阻害しうる。
【0106】
アンチセンスポリヌクレオチドは、典型的には、細胞内で、転写鎖としてアンチセンス鎖を含むアンチセンス構築物からの発現により生成される。アンチセンスポリヌクレオチドは、対応するmRNAに結合し及び/又はその翻訳を阻害するであろう。それ自体として、アンチセンスは、癌遺伝子の発現を阻害する為に治療的に用いられうる。
【0107】
アンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(アンチセンスODN)はいずれも、インビトロで合成的に又は組み換えDNA技術により用いられ及び調製されうる。両方の方法が、当技術分野の当業者の範囲内に十分にある。ODNは、完全なアンチセンスRNAより小さく、そしてそれ故に、それらが、より容易に標的細胞に入ることができるという利点を有する。DNAseによるそれらの消化を回避する為に、ODN及びアンチセンスRNAは化学的に修飾されうる。所望の標的細胞を標的とする為に、該分子は、標的細胞上に見られるレセプターのリガンドに、又は、標的細胞の表面の分子に対して向けられた抗体に連結されうる。
【0108】
アンチセンスRNAは、ロックド核酸(LNA)への言及を含む。
【0109】
RNAi
【0110】
RNAiは、遺伝子の転写産物を特異的に標的とする為の相同な二本鎖RNAの導入をいい、結果としてヌル又は低形質の表現型をもたらす。RNA干渉は、イニシエーションステップ及びエフェクターステップを要求する。最初のステップにおいて、インプット二本鎖(ds)RNAが、ヌクレオチド「ガイド配列」へと処理される。これらは、一本鎖又は二本鎖でありうる。該ガイドRNAが、(RNAにより誘発されたサイレンシング複合体(RISC)と呼ばれる)ヌクレアーゼ複合体へ組み込まれ、これが第二のエフェクターステップにおいて、塩基対相互作用を通じて該ガイドRNAにより認識されるmRNAを破壊する為に作用する。RNAi分子は、すなわち、標的遺伝子の発現をサイレンシングすることにおける非常に強力な二本鎖RNA(dsRNA)である。本発明は、本発明のバイオマーカーをコードする遺伝子に相補的であるdsRNAを提供する。
【0111】
dsRNAの、その自身の配列に対応する遺伝子の発現を抑制する能力は、転写後遺伝子サイレンシング又はPTGSとも呼ばれる。細胞の細胞質内に正常にみられる唯一のRNA分子は、一本鎖mRNAの分子である。もし細胞が二本鎖RNA(dsRNA)の分子を見つけたならば、それは、酵素を用いて、それらを、一般に21塩基対を有する断片(約2ターンの二重らせん)へと切断する。次に、それぞれの断片のその二本鎖が、それがmRNAの分子の相補的センス配列に結合することができるようにアンチセンス鎖にさらすのに十分に分離される。これは、該mRNAのその領域における切断を誘発し、すなわち、ポリペプチドへ翻訳されるその能力を破壊する。特定の遺伝子に対応するdsRNAの導入は、その遺伝子の細胞の内因的発現をノックアウトするであろう。これは、選ばれた時間に、特に組織において行われうる。dsRNA断片を単に導入することのあり得る不利点は、遺伝子発現が一時的にだけ減少されることである。しかしながら、より恒久的な解決が、該細胞に、抑制されるべき遺伝子に対応するdsRNAを連続的に合成できるDNAベクターを導入することにより提供される。
【0112】
RNAi分子は、当技術分野の当業者に周知の方法により調製される。一般に、本発明のバイオマーカーをコードする遺伝子の少なくとも1つの配列と実質的に相同であり且つ該遺伝子の転写産物(の一部)と部分的に又は完全に二本鎖(ds)RNAを形成することができる1又はそれより多くの転写物を形成することができるヌクレオチド配列を含む分離された核酸配列が、RNAi分子として機能するであろう。該二本鎖領域は、10〜250、好ましくは10〜100、より好ましくは20〜50ヌクレオチド長のオーダーにありうる。
【0113】
RNAi分子は、好ましくは、形質導入された宿主細胞中の組み換えベクターから発現され、造血幹細胞がそれに非常に適している。
【0114】
RNAi分子の例はsiRNA及びmiRNAを包含する。
【0115】
抗体及び誘導体
【0116】
本発明において用いられる抗体は、鳥及び哺乳動物を包含する任意の動物(例えば、ヒト、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、又はニワトリ)起源からのものであってよい。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトの又はヒト化モノクローナル抗体である。本明細書内において用いられるときに、「ヒト」抗体は、ヒトイムノグロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を包含し、且つ、ヒトイムノグロブリンライブラリー(ヒトイムノグロブリン配列に相同であるイムノグロブリン配列の合成ライブラリーを含むがこれらに限定されない)から又はヒト遺伝子からの抗体を発現するマウスから分離された抗体を包含する。
【0117】
ヒトにおけるインビボでの治療的又は診断的使用方法及びインビトロでの検出アッセイを含むいくつかの使用方法にとって、ヒト抗体又はキメラ抗体を用いることが好ましい。完全ヒト抗体は、ヒト対象の治療的処置にとって特に望ましい。ヒト抗体は、上記で記載されたファージディスプレイ方法を含む当技術分野で既知の種々の方法により、ヒトイムノグロブリン配列又はヒトイムノグロブリン配列に相同な合成配列から得られた抗体ライブラリーを用いて作られうる。米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号明細書、及び、国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、及び国際公開第98/16654号パンフレットも参照されたい。それらのそれぞれが、そっくりそのまま引用することにより本明細書内に組み込まれる。
【0118】
本発明の方法とともに用いられるべき抗体は、修飾された誘導体、すなわち任意のタイプの分子の該抗体への共有結合により修飾された誘導体を包含する。加えて、該誘導体は、1又はそれより多くの非古典的アミノ酸を有しうる。
【0119】
本発明のいくつかの実施態様において、本発明ともに用いられるべき抗体は、修飾されていない抗体と比べたときに、哺乳動物における、好ましくはヒトにおける延長された半減期を有する。増加されたインビボでの半減期を有する抗体又はその抗原結合性断片は、当技術分野の当業者に既知の技術により生成されうる(例えば国際公開第97/34631号パンフレットを参照)。
【0120】
いくつかの実施態様において、本発明の方法とともに用いられるべき抗体は、一本鎖抗体である。一本鎖抗体の設計及び構築は当技術分野で周知である。
【0121】
いくつかの実施態様において、本発明とともに用いられるべき抗体は、細胞内エピトープに結合する、すなわち細胞内抗体である。細胞内抗体は、抗原に免疫特異的に結合することができる抗体の少なくとも一部を含み、及び、好ましくは、その分泌についてコードする配列を有さない。そのような抗体は、その抗原に細胞内で結合するであろう。一つの実施態様において、該細胞内抗体は、一本鎖Fv ("sFv")を含む。さらなる実施態様において、該細胞内抗体は、好ましくは、操作可能な分泌配列をコードせず、すなわち、該細胞内にとどまる。
【0122】
細胞内抗体の生成は、当業者に周知であり、例えば米国特許第6,004,940号明細書、米国特許第6,072,036号明細書、及び米国特許第5,965,371号明細書に記載されており、これらはそっくりそのまま引用することにより本明細書内に組み込まれる。
【0123】
ひとつの実施態様において、細胞内抗体は、細胞質において発現される。他の実施態様において、細胞内抗体は、種々の細胞内位置に局在化される。そのような実施態様において、特定の局在化配列が、特定の位置へ該細胞内抗体を向ける為の、ヌクレオチド内ポリペプチドへ結合されうる。
【0124】
本発明の方法とともに用いられるべき抗体又はその断片は、抗体の合成の為の当技術分野において既知の任意の方法により、特には化学的合成により又は、好ましくは、組み換え発現技術により、製造されうる。
【0125】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、組み換え技術、及びファージディスプレイ技術又はそれらの組み合わせを含む、当技術分野で既知の広くさまざまな技術を用いて調製されうる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で既知のものを含むハイブリドーマ技術を用いて製造されうる。本発明の抗体を作る為に用いられうるファージディスプレイ方法の例は、国際公開第97/13844号パンフレット並びに米国特許第5,580,717号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,780,225号、及び第5,969,108号明細書に開示されたものを包含し、これらはそれぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書内に組み込まれる。
【0126】
上記文献に記載されたとおり、ファージ選択後、該ファージからの抗体コーディング領域が分離され、そして、全体抗体(ヒト抗体を含む)を生成する為に、又は任意の他の所望の抗体結合性断片を生成する為に用いられ、そして、任意の望ましい宿主(哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及びバクテリアを含む)において、例えば以下に記載されるとおりに、発現されうる。当技術分野で既知の方法、例えば国際公開第92/22324号パンフレットに開示されたものなど、を用いた、Fab、Fab'、及びF(ab')2断片を組み換え的に製造する為の技術も採用されうる。
【0127】
治療的に有用なIgG、IgA、IgM、及びIgE抗体を製造することも可能である。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を製造する為の技術の詳細な議論及びそのような抗体を製造する為のプロトコールについて、例えば国際公開第98/24893号パンフレットを参照されたい。本明細書内で引用された全ての文献が、そっくりそのまま引用することにより本明細書内に組み込まれる。加えて、会社、例えばMedarex, Inc. (Princeton, NJ)、Abgenix, Inc. (Freemont、CA)、及びGenpharm (San Jose, CA)などが、上記で記載されたものに類似の技術を用いて、選択された抗原に対して向けられたヒト抗体を提供する為に従事しうる。
【0128】
該抗体、それらの誘導体又はアナログ(例えば本発明の抗体の重鎖若しくは軽鎖又はその一部又は本発明の一本鎖抗体)を製造する為に用いられる組み換え発現は、該抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築及び該ベクターの適切な宿主細胞における又はインビボでさえの発現を要求する。いったん本発明の抗体分子又は抗体の重鎖若しくは軽鎖又はその一部(好ましくは重鎖若しくは軽鎖可変ドメインを含むが必ずしも必要でない)をコードするポリヌクレオチドが得られると、該抗体分子の製造の為のベクターは、当技術分野で周知の技術を用いて組み換えDNA技術により製造されうる。すなわち、抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを発現することによりタンパク質を調製する為の方法が本明細書内に記載される。当技術分野の当業者に周知である方法が、抗体をコードする配列及び適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築する為に用いられうる。これらの方法は、例えば、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組み換えを包含する。すなわち、本発明は、プロモーターと操作可能に連結された、本発明の抗体分子、抗体の重鎖若しくは軽鎖、抗体の重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン、又はその一部、又は重鎖若しくは軽鎖のCDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは、該抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでよく(例えば国際公開第86/05807号パンフレット、国際公開第89/01036号パンフレット、及び米国特許第5,122,464号明細書を参照)、そして、該抗体の可変ドメインが、重鎖全体、軽鎖全体、又は重鎖及び軽鎖両方の全体の発現の為にそのようなベクターにクローン化されうる。
【0129】
該発現ベクターは、慣用の技術により宿主細胞に移され、そして、該トランスフェクトされた細胞が次に慣用の技術により培養されて、本発明の抗体を生産する。すなわち、本発明は、異種プロモーターと操作可能に連結された、本発明の抗体又はその断片、又はその重鎖若しくは軽鎖、又はその一部、又は本発明の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二本鎖抗体の発現の為の好ましい実施態様において、重鎖及び軽鎖をコードする複数のベクターが、完全イムノグロブリン分子の発現の為に、該宿主細胞において、以下に詳述されるとおり、共発現されうる。
【0130】
種々の宿主発現ベクターシステムは、本明細書内で定義されたとおりの抗体分子を発現する為に利用されうる。
【0131】
哺乳動物宿主細胞において、多くのウィルスに基づく発現システムが利用されうる。アデノウィルスが発現ベクターとして用いられる場合、関心のある該抗体コーディング配列が、アデノウィルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーター及び三成分リーダー配列(tripartite leader sequence)など、と連結されうる。このキメラ遺伝子が、次に、アデノウィルスゲノム中に、インビトロ又はインビボの組み換えにより挿入されうる。該ウィルスゲノムの非必須領域(例えば領域El又はE3)内における挿入が、生存可能であり且つ感染した宿主において該抗体分子を発現することができる組み換えウィルスを結果するであろう。特定の開始シグナルもまた、挿入された抗体コーディング配列の効率的な翻訳の為に要求されうる。これらのシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を包含する。さらに、該開始コドンは、挿入全体の翻訳を確実にする為に、該所望のコーディング配列のリーディングフレームと同調(in phase)していなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然の及び合成の、種々の起源のものであってよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどの含入により増大されうる。
【0132】
いったん本発明の方法とともに用いられるべき抗体分子が組み換え発現により製造されると、それはイムノグロブリン分子の精製の為の当技術分野で既知の任意の方法により、例えばクロマトグラフィー(例えばイオン交換、アフィニティー、特にはプロテインA後特異的抗原についてのアフィニティー、及びサイジングカラムクロマトグラフィー(sizing column chromatography))、遠心、異なる溶解度により、又はタンパク質精製の為の任意の他の標準的技術により、精製されうる。さらに、本発明の抗体又はその断片は、本明細書内に記載された又は精製を容易にするための当技術分野で既知の異種ポリペプチド配列と連結されうる。
【0133】
上記で述べられたとおり、さらなる局面に従い、本発明は、治療における使用の為の、上記定義されたとおりの抗体を提供する。
【0134】
治療的処置の為に、抗体は、インビトロで製造され、そして、その必要がある対象に施与されうる。該抗体は、対象に、任意の適切な経路により投与されてよく、好ましくはそのような経路に適合した医薬組成物の形で、且つ、意図された処置にとって有効である用量で、投与されうる。疾患の進行の速度を減少する為に又は疾患状態を排除する為に要求される該抗体の治療的に有効な用量は、当業者により容易に決定されうる。
【0135】
代わりに、抗体は、該対象それ自体により、上記で記載されえたとおりのインビボ抗体製造方法論を用いることによって、産生されうる。適切には、そのようなインビボ製造の為に用いられるベクターは、ウィルスベクターであり、好ましくは本明細書内で言及された特異的標的細胞についての標的細胞選択性を有するウィルスベクターである。
【0136】
それ故に、さらなる局面に従い、本発明は、上記定義されたとおりの抗体を、該治療効果を達成する為の対象の処置における使用の為の医薬の製造において使用する方法を提供する。該処置は、該医薬の、所望の治療効果を達成する為に十分な用量での投与を含む。該処置は、該抗体の繰り返しの投与を含みうる。
【0137】
さらなる局面に従い、本発明は、ヒトの処置の方法であって、上記定義されたとおりの抗体の、所望の治療効果を達成する為に十分な用量での投与を含む前記方法を提供する。該治療効果は、心臓血管事象又は脳血管事象を患うことのリスクの緩和又は予防でありうる。
【0138】
診断的及び治療的抗体が、好ましくは、キナーゼ又はホスファターゼのターゲティングの為のそれら夫々の適用において用いられ、これらはしばしば細胞の表面でレセプター分子と結合される。それ自体として、これらのレセプター分子と結合することができる抗体は、それらの、該キナーゼ又はホスファターゼに対する活性調節性効果をそれぞれのレセプターに結合することにより発揮しうる。また、トランスポータータンパク質も、該抗体が、細胞外に存在するときに、それらの活性調節性効果を発揮することができるであろうという同じ理由の故に、有利に標的とされうる。上記標的は、シグナル伝達分子と一緒に、より効果的な治療及びより容易な診断がそれにより可能であるので、本発明の抗体使用方法にとっての好ましい標的を代表する。
【0139】
該診断抗体は、適切には、変化したタンパク質レベル又はそれにおける構造的変化の決定の為のアッセイにおいて、遺伝子産物の、好ましくはタンパク質の定性的及び定量的検出の為に用いられうる。例えば、細胞内の、細胞抽出物における、上清中の、体液中のタンパク質レベルが、例えば免疫染色された標的細胞のフローサイトメトリー的評価により、好ましくは血液中の又は該血液中に存在する内皮前駆細胞(EPC)若しくは多形核白血球(PMN)におけるタンパク質レベルが決定されうる。代わりに、定量的タンパク質アッセイ、例えばELISA又はRIA、ウェスタンブロッティング、及び画像化技術(例えば共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いる)が、本明細書内に記載されたとおりの抗体とあわせて、心臓血管事象又は脳血管事象についての増加したリスクの診断の為に、用いられうる。
【0140】
送達方法
【0141】
いったん処方されると、本発明の医薬組成物は、(1)対象に直接に投与され、(2)対象から得られた細胞にエクスビボで送達され、又は(3)組み換えタンパク質の発現の為にインビトロで送達されうる。
【0142】
該組成物の直接の送達は一般的に、皮下の、腹膜内の、静脈内の、又は筋肉内の注入により達成されるであろうし、又は、組織の間質空間に送達されるであろう。該組成物は、プラーク又は病変に投与されてもよい。他の投与様式は、局所投与、経口投与、カテーテル投与、及び肺投与、坐剤、経皮施与、針、及びパーティクルガン又は皮下噴射器を包含する。投与処置は、一回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールでありうる。
【0143】
形質転換された細胞の対象へのエクスビボ送達及び再埋め込みの為の方法は、当業者に知られており、及び、国際公開第93/14778号パンフレットに記載されている。エクスビボ適用において有用な細胞の例は、例えば、幹細胞、特には造血細胞、リンパ細胞、マクロファージ、樹状細胞、又は腫瘍細胞を含む。
【0144】
一般に、エクスビボ適用及びインビトロ適用の両方の為の核酸の送達は、例えば、ウィルスを含むベクターを用いた遺伝子治療、デキストランにより媒介されたトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、polybrene(商標)により媒介されたトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチド(類)のリポソーム内の封入、及び該DNAの核への直接的マイクロインジェクションにより達成されてよく、これらはすべて当技術分野で周知である。
【0145】
種々の方法が、該治療的組成物を、体内の特定の部位に直接に投与する為に用いられる。例えば、標的場所は局在化され、そして、該治療組成物が該標的に直接に注入される。代わりに、標的場所に従事する動脈が同定され、そして、該組成物を該標的場所へ直接に送達する為に、該治療的組成物がそのような動脈に注入される。該アンチセンス組成物は、例えば該組成物の局所的施与により、アテローム性動脈硬化症病変の表面に直接に投与される。X線イメージングが、上記送達方法のいくつかにおいて助ける為に用いられる。
【0146】
アンチセンスポリヌクレオチド、サブゲノミックポリヌクレオチド、又は抗体を含む治療組成物の特定の組織への、レセプターにより媒介された標的化された送達も用いられる。レセプターにより媒介されたDNA送達技術は当技術分野で周知である。好ましくは、本発明の抗体を含む治療的組成物のレセプター媒介の標的化送達が、該抗体を特定の組織に送達する為に用いられる。
【0147】
アンチセンス、リボザイム、又はRNAiのポリヌクレオチドを含む医薬組成物が、約100ng〜約200mgのポリンヌクレオチドの範囲で遺伝子治療プロトコルにおいて局所的投与の為に投与される。約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、及び約20μg〜約100μgのポリヌクレオチドの濃度範囲も、遺伝子治療プロトコルの間に用いられうる。作用の方法及び形質転換及び発現の効率などのファクターが、該ポリヌクレオチドの最終的な効率にとって要求される用量に影響するであろう考慮要素である。より大きな発現がより広い組織領域にわたって望まれる場合、投与の逐次的プロトコルにおいてより多くの量のポリヌクレオチド又は再投与された同量が、又は、例えばアテローム性動脈硬化症部位の、種々の隣接する又は近くの組織部分へのいくつかの投与が、ポジティブな治療的アウトカムをもたらすために要求されうる。すべての場合において、臨床試験における通常の実験が、最適な治療的効果の為の特定の範囲を決定するであろう。遺伝子治療ベクター、特にはレトロウィルスベクターのより完全な説明が、U.S.Ser.No.08/869,309に含まれており、これは明確に本明細書内に組み込まれる。
【0148】
診断方法
【0149】
本明細書内で同定された遺伝子及び遺伝子産物は、新脈管形成プロセスに関連し、そして、それ故に、診断目的に適している。本発明は、それ故に、その実施態様として、対象における心臓血管疾患、好ましくは動脈損傷又は心筋損傷に関連した心臓血管疾患、さらにより好ましくは虚血に関連した心臓血管疾患の診断又は予後診断の方法も提供する。そのような方法は、該対象の循環流体の試料における、好ましくは該試料中の内皮前駆細胞(EPC)における、健康な対照に関して、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5並びにこれらのヒトのホモログからなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子、さらにより好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、又は全ての遺伝子の遺伝子発現レベルの増加又は減少を検出する工程を含む。非常に適切には、該遺伝子発現レベルの該増加又は減少は、mRNA又はタンパク質の、すなわち該1以上の遺伝子の発現産物の検出により検出される。すなわち、本明細書内で同定された遺伝子及び遺伝子産物が、患者における心臓血管疾患の診断又は予後診断の為のバイオマーカーとして用いられることができ、該バイオマーカーは、RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選ばれる遺伝子の発現産物を含み、その発現は脈管形成の間に制御される。該バイオマーカーの発現は、健康な対照の対象において観察された値に関して、上方制御された又は下方制御された発現産物であってよく、及び、例えば血管新生と比較して、脈管形成の間に上方制御され又は下方制御されうる。すなわち、該バイオマーカーは、本明細書内において同定された遺伝子のタンパク質又はRNA分子発現産物であってよく、又は、タンパク質プロファイル又はRNAプロファイルでありうる。対象における虚血の該診断又は予後診断の為の該バイオマーカーの使用が、明確に考慮される。代わりに、該バイオマーカーが、サロゲートエンドポイントマーカー(surrogate end-point markers)として、本明細書内に記載された治療方法の有効性を決定する為に用いられうる。RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5から選ばれる1つの遺伝子の発現が測定されうるが、好ましくはそれらの少なくとも2、3、4、5、6、7、又は全ての遺伝子の発現の組み合わせが、言及された遺伝子についての遺伝子発現のプロファイルを提供する為に決定される。
【0150】
本発明はさらに、対象における虚血の診断又は予後診断の為の方法を意図し及び提供し、該方法は、該対象の血液における、上記で記載されたとおりのバイオマーカーを検出することを含む。そのような方法は、適切には、マイクロアレイ(特には固形支持体に結合した上記で定義されたとおりの少なくとも2つのバイオマーカーに特異的に結合する特異的な結合性バートナーを含む)を用いることにより、タンデムマススペクトロメトリー(MS−MS)を用いることにより、MALDI−FTマススペクトロメトリーにより、MALDI-FT-ICRマススペクトロメトリー、MALDI Triple-quadマススペクトロメトリー、又はイムノアッセイにより、実施されうる。
【0151】
本発明に従う診断方法を実施する為のキット又はパーツもまた、本明細書内において想定される。そのようなキットは、上記で定義されたとおりの少なくとも1つのバイオマーカー、又は、該バイオマーカーに特異的に結合する特異的な結合性パートナーを含み、パーツの該キットは、任意的に、さらに、以下の1以上を含む:
- 少なくとも1つの参照試料又は対照試料;
- 該バイオマーカーについての参照値についての情報;
- 該特異的な結合性パートナーに結合することができる少なくとも1つの試験化合物;
- 該バイオマーカーと該特異的結合性パートナーとの間の結合を検出する為の少なくとも1つの検出可能マーカー。
【0152】
バイオマーカーに特異的に結合する診断試薬は、抗体又は、該バイオマーカーにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸分子を包含する。当業者は、特異的な結合性パートナーを用いることによって、タンパク質バイオマーカーのmRNAを検出する種々の方法をよく知っている。
【0153】
本明細書内で言及された全ての文献が、そっくりそのまま引用することにより本明細書内に組み込まれる。
【0154】
本発明は今、以下に記載された実験の部においてさらに説明される。
【0155】
実施例
【実施例1】
【0156】
RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子発現に関する治療方法
【0157】
マウス及びゼブラフィッシュの胚の脈管発達の(RNAマイクロアレイ分析を用いた)ゲノムワイドな分析を通じて、私たちは、動脈発達に関与する2000+の遺伝子を同定した。具体的には、Affymetrixチップによるマウス発生の間のFlk1+の細胞におけるRNA発現プロファイルのゲノムワイドなマイクロアレイ分析により、私達は、脈管形成が優勢である時間枠の間に特異的に上方制御される遺伝子を同定した。種を超えた(trans-species)アプローチを用いて、私達はさらに、マウス及びゼブラフィッシュにおける発生中の血管樹におけるこれらの候補遺伝子の発現、及び、若いマウス及びブタモデルにおける虚血の間のそれらの上方制御を選択し及び評価した。最後に、個々のクローンの誘発された発現が、安定虚血性冠状動脈疾患及び急性冠状動脈症候群を認められた患者から得られた血液試料の循環するPMLのサブセットにおけるqPCR分析により確かめられた。
【0158】
脈管の発達及び修復におけるこれらの新たに同定された制御遺伝子が、細胞培養物研究、マウス及びゼブラフィッシュゲノミクスの使用により、及び、末梢動脈虚血、心筋虚血、急性心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症発達(脆弱なプラーク発達を含む)、リンパ管形成(lymphangiogenesis)、網膜血管障害、及び腫瘍血管新生のいくつかの動物モデルにおいてさらに研究される。これらの脈管形成遺伝子の発現プロファイルはまた、明らかな末梢動脈疾患、心筋虚血(適切な抗虚血治療有り/無し)、急性心筋梗塞、心不全を有する患者及び経皮冠動脈治療介入(バルーン血管形成、ステント留置術)により処置された患者を含む、心臓血管疾患を有する選ばれた患者において、提案されたカスタマイズされたマイクロアレイ技術を用いて研究される。
【0159】
マウス胚形成の間の脈管発生の種々のステージのゲノムワイドなスクリーニングが、既知の並びに完全に未知且つ記録されていないクローン(ESTクローン又はRIKENクローンと称される)を同定した。これらの候補遺伝子のいくつかは、両生類のオルトログを有さず、及び、他の無関係な器官に対して、分離されたヒト大動脈及び高度に脈管形成した組織における遺伝子発現レベルをqPCRによって比較することにより、それらの脈管構造に特異的な発現によりさらに選択された。RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子の発現は、マウスの種々の器官において決定された。qPCRにより確立された発現は、高度に脈管形成した組織、例えば肺、大動脈、及び頸動脈において、無関係な器官、例えば腎臓、肝臓、脳、目、心臓、及び骨格筋などと比べて、高かった(図1参照)。
【0160】
次に、内皮特異的発現が、内皮初代細胞系(Human Umbilical Venous Endothelial Cell(HUVEC))を用いて及びマウスにおいてインビボでさらに分析された。RIKEN cDNA 9430020K01は、発生中のマウスにおいて脈管形成の間上方制御され、及び、脈管ネットワークにおいて専ら発現された。HUVEC細胞培養物において、RIKEN cDNA 9430020K01のノックダウンは、細胞増殖を、G1期における細胞周期停止により、顕著に阻害した。また、付随して、より多くのアポトーシスが、RIKEN cDNA 9430020K01をサイレンシングされた内皮細胞において同定された。一致して、HUVECによる2Dマトリゲルアッセイにおけるチューブ形成が、RIKEN cDNA 9430020K01ノックダウンにより有意に減衰された一方で、HUVECの遊走が減少された。次に、RIKEN cDNA 9430020K01の遺伝子機能が、マウス網膜モデルにおいて評価された。RIKEN cDNA 9430020K01のノックダウン及び過剰発現が、出生直後1日目での、C57bl/6子マウスの網膜におけるshRNA及びcDNA発現ベクターのレンチウィルス感染により誘発される。網膜の免疫組織学的評価が、脈管出芽を研究するために実施された。RIKEN cDNA 9430020K01のノックダウンは、細胞増殖を妨げ、及び、インビボでの網膜におけるECにおけるアポトーシスを増加する。
【0161】
この特定の遺伝子産物が、今までに既知の最も強力なホールマーク新脈管形成制御遺伝子(産物)、VEGFファミリー、と比較して、同等にもしくはより強力に新脈管形成、すなわち新たな脈管の形成、を誘発する為の該同定されたクローンの真の能力により選択された。この特定の遺伝子産物は、今まで完全に未知であり機能又は発現パターンについて記録されていない。
【0162】
HUVECの構成
【0163】
HUVECが、1チューブのHUVECの量で、2つの15cmプレートについて、それぞれ10mlの0.1%ゼラチンを有する2つの15cmプレートを覆うことにより調製された。次に、ゼラチンが除去され、そして、30分間室温で乾燥された。次に、20mlのEGM-2培地が添加された。1チューブのHUVECが、液体窒素から、37℃で解凍され、そして、1mlのHUVECが、15mlチューブ中の3mlのEGM-2培地に添加された。2mlの細胞懸濁物が、15cmプレートに添加され、そして、37℃、5%CO2に置かれた。培地が6時間後に新しくされた。
【0164】
HUVECが、10 mlの0.1%ゼラチンを有するプレートをコーティングすることにより継代された。次に、該ゼラチンが除去され、そして、30分間室温で乾燥された。つぎに、20 mlのEGM-2培地が該プレートに添加される。該培地が次に除去され、そして、該プレートがPBSにより洗浄される。HUVECはトリプシン処理される。細胞が、EGM−2培地に懸濁され、そして、5分間遠心される。そのペレットが、次に、プレート上のEGM-2において再懸濁され、そして、37℃で5%CO2において培養される。
【0165】
HUVECにおけるRIKEN cDNA 9430020K01遺伝子発現の阻害の効果を確立する為に、3つの異なる実験処置レジメが確立された:
1.RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子に対する特異的siRNAによるトランスフェクション
2.ターゲティングしないsiRNA(sham)によるトランスフェクション、及び
3.陰性対照
【0166】
レジメ1は、

を有する3つの異なるsiRNAの混合物による5-2.5-1ng/mlの濃度でのトランスフェクションからなった。(図5参照)
【0167】
これらのレジメに曝露されたHUVECの試料が、第一の曝露後最大で120時間までの種々の時点で採られた。
【0168】
標的とされた遺伝子のサイレンシングが、感染したHUVECにおけるRT−QPCRにより、

を有するフォワードプライマー及び

を有するリバースプライマーを用いて確かめられ、157 bpの産物を結果した。
【0169】
増殖アッセイが行なわれて、HUVECの該3つの異なるレジメへの曝露後1〜5日目でトリパンブルーを用いて、死細胞の数を数えた(図8A参照)。加えて、G1期及びG2期にある細胞の数が、ヨウ化プロピジウム染色を用いたFACS分析により確立された(図7A及びB参照)。
【0170】
アポトーシス細胞の数が、Annexin V-FITC Apoptosis Detection Kit I (BD Pharmingen(商標)カタログナンバー556547、ロット: 18354)を用いて決定された(図8B及びC参照)。
【0171】
RIKEN cDNA 9430020K01遺伝子の阻害の、管を形成するHUVECの能力に対する効果が、当技術分野で知られているとおりの2Dマトリゲル(管形成)アッセイにより、Calcein-AM染色を用いて、決定された(図3参照)。
【実施例2】
【0172】
Agtrl1/Apelin発現に関する治療方法
【0173】
材料及び方法
【0174】
全ての実験は、施設(エラスムス大学医療センター、ロッテルダム、オランダ)及び国のガイドラインに従い実施された。
【0175】
動物
【0176】
メスのC57BL/6Jマウス(8週齢)が、Jackson Laboratory(Bar Harbor、メイン州、米国)から得られ、そして、無作為に実験群に割り当てられた。
【0177】
インビボモデルにおいて用いられたApelinは、Sigma(Apelin-13 トリフルオロ酢酸塩; A6469-1mg)から得られた。
【0178】
手術手順
【0179】
マウス(12週齢)が秤量され、4%イソフルランにより鎮静され、挿管され、そして、麻酔の為の約2.5%イソフルランを有するO2-N2O (1:2、体積/体積)により圧力制御されて換気された。ApelinのEPC動員に対する効果を試験する為に、動物が、実験期間の間、Apelin 400ng/kg/分で皮下に埋め込まれた浸透圧ミニポンプにより処置された(Alzet、モデル1003D、Durect Corp、オランダ)。対照として、PBSが注入された。EPC動員が、Apelin又はPBSのふくらはぎ筋肉又は左心室への直接の注入により試験された。動物が、3日後に犠牲にされ、そして、組織が、次の分析の為に回収された。
【0180】
MIが、標準的な手順を用いて、左前下降冠状動脈(LAD)の7-0シルク縫合糸(B. Braun、Aesculap AG&CO.KG、Tuttlingen、ドイツ)による恒久的ライゲーションにより誘発された。HLIが、大腿動脈の6-0シルク縫合糸(B. Braun)による恒久的なライゲーションにより誘発された。shamの動物は、虚血の誘発無く、手術を受けた。MI後のApelinの効果を試験する為に、動物は、MIの誘発直後にApelin若しくはPBSの注入を受け又は注入受けなかった。動物は、3日目で又は2週目で犠牲にされた。犠牲にされるときに、血行動態測定が、前に記載されたとおりの麻酔下で実施された。簡潔に言うと、短軸及び長軸像M-mode LV心エコー検査法(ALOKA、Prosound SSD-4000; 日本)が実施され、そして、拡張末期でのLV直径(LVEDD)及び収縮末期でのLV直径(LVESD)が測定され、そして、短縮率(fractional shortening)が計算された。組織が、次の分析の為に回収された。それぞれの実験の終わりに、隔膜を含む左心室重量(LVW)、脛骨長(TL)、及び肺液重量が決定された。
【0181】
QPCR及びタンパク質分析
【0182】
mRNAレベルが、新たに分離された左心室及びふくらはぎ筋肉から決定された。RNAは、RNeasyキット(Qiagen、オランダ)を用いて抽出された。量及び質が、nanodrop及びAgilent 2100 Bioanalyzer電気泳動(Agilent Technologies、英国)の助けを受けて確認された。分離されたRNAはcDNAへと逆転写された(Iscript、Biorad、オランダ)。qPCRが、iCycler iQ Detection system (Bio-Rad、オランダ)におけるsybrgreenシグナルのリアルタイム蛍光評価により実施された。ApelinのmRNAレベルが分析され、そして、ハウスキーピング遺伝子HPRTについて規準化された。
【0183】
タンパク質レベルが、新たに分離された左心室、ふくらはぎ筋肉、及び血漿から評価された。40mgの組織がホモジナイズされ、0.1mol/lの酢酸中で10分間ボイルされ、そして次に、15000rpmで10分間遠心され、そして上清がBradford Assayにより合計タンパク質濃度を定量する為に用いられた。等量の合計タンパク質(300μg/ml)が、Apelin-12 EIAキット(Phoenix pharmaceutical、米国)において、製造者の処方に従い用いられた。
【0184】
フローサイトメトリー
【0185】
細胞分析が、BM、血液、心室、及び骨格筋について実施された。BM及び血液の単核細胞懸濁物が、密度遠心及び次のRPMIにおける洗浄により得られた。心室及び骨格筋の細胞懸濁物が、ホモジナイゼーション及び次の40mm細胞こし器(Falcon)での洗浄により分離された。分離された細胞が、Flk(ビオチンを結合した、BD Biosciences、ベルギー)、cKit(APC-Cy7を結合した、eBiosciences、英国)、Sca-1(APCを結合した、eBiosciences、英国)、及びAgtrl-1(LifeSpan Biosciences、シアトル、米国)に対する抗体により染色された。LIN+(Ter119、B220、CD11b、GR1、CD3、CD4、及びCD8、PEを結合した、Biosciences)細胞を排除する為の抗体(Ter119、B220、CD11b、GR1、CD3、CD4、及びCD8、全てeBiosciencesから)が、同様に含まれた。細胞は、該抗体混合物と15分間4℃でインキュベートされた。洗浄後、細胞がヤギ抗ウサギAlexa 488 (Invitrogen)及びストレプトアビジンPE-Cy7 (eBiosciences)と、15分間4℃でインキュベートされた。7AAD (BD biosciences、ベルギー)が、細胞死を評価する為に添加された。フローサイトメトリー分析が、FACSCanto (BD biosciences、ベルギー)の使用により実施され、そして次のデータ分析が、分析システム(Flowjo)により実施された。
【0186】
組織学的分析
【0187】
左心室がパラフィンに埋め込まれた。左心室を埋め込まれたパラフィンが、5mm片に長手方向に切断され、Masson'sトリクロムにより染色されて、梗塞サイズを決定した。毛細血管密度が、レクチン染色により評価された。簡潔には、切片が、脱ろうされ、水和され、そして、5%BSAにより15分間ブロッキングされた。切片が、PBS中で洗浄され、そして、BSからのレクチン(HRPを結合された、Sigma)と、さらなる120分間インキュベートされた。PBS中での洗浄後、切片がniDABにより3分間処理された。さらなる洗浄後、切片が、nuclear fast redにより対比染色され、そして、カバースリップされた。データ分析が、市販の画像分析システム(Impak C、Clemex Technologies、カナダ)を用いて実施された。
【0188】
統計的分析
【0189】
データは、適切な場合に、対にされていないスチューデントT検定又は一要因ANOVAを用いて分析された。有意性は、P<0.05である場合に認められた。データは平均±SEMとして提示される。
【0190】
ゼブラフィッシュ手順(及びモルホリノの手順)
【0191】
ゼブラフィッシュ
【0192】
ゼブラフィッシュは、標準的な飼育条件下で、Hubrecht Instituteで維持された。用いられたトランスジェニック系列は、Tg(kdr-l:GFP)s843(Jinら, 2005)及びTg(fli1:neGFP)y7(Romanら、2002)であった。
【0193】
Agtrl1bのTILLING
【0194】
ランダムにENU突然変異されたF1-ゼブラフィッシュのライブラリーが、agtrl1b遺伝子における変異について、DNAリシークエンシング(Wienholds、2002)によりスクリーニングされた。SNPについてのフィルタリング後、26のENU誘発された変異が検出され、そのうち一つが最初の膜貫通ドメイン直後の未成熟終止(W54Stop)をもたらした。該同定されたF1キャリアフィッシュ(agtrl1bhu4145)が、所望のトランスジェニックバックグラウンドへと交雑され、そして、いくつかの世代の間繁殖させられて(最大でF5)、何らかの望ましくないバックグラウンド変異を除去した。TILLINGの為に用いられたプライマーは、

であった。
【0195】
モルホリノ注入
【0196】
silent heart(SIH)に対するモルホリノ(MO)(5'-CATGTTTGCTCTGATCTGACACGCA-3') (Sehnertら、2002)が、Gene Tools(Gene Tools、LLC、Philomath、米国)から得られ、そして、0.2%フェノールレッドを有する水中に希釈された。1細胞期胚が、1nlの最大量を有する1ngのMOを注入された。
【0197】
この実施例に記載された研究の結果が図21〜26に提示される。
【0198】
図21において、急性心筋梗塞後、特異的にcKit+/Flk1+内皮前駆細胞が、循環中に動員される一方で、後肢虚血後は、特にSca1+/Flk1+細胞が循環中に動員されることが分かる。
【0199】
図22において、虚血後、Agtrl1がcKit+/Flk1+内皮前駆細胞(急性心筋梗塞後の(修復)応答に関与する)において特異的に発現されること、及び、急性心筋梗塞後、apelin(Agtrl1のリガンド)が、循環において並びに心筋において、タンパク質及びmRNAレベルについて制御されることが分かる。
【0200】
Apelinの全身的注入が、cKit+/Flk+内皮前駆細胞の数を、骨髄及び血液において増加する一方で、apelin注入は、Sca+/Flk+細胞の数をこれらの組織において変化させない(図23)。従って、apelinの全身注入は、骨髄並びに循環において、cKit+/Flk1+の数を刺激する。
【0201】
Apelin処置は、左心室の短縮率を改善し、そして、収縮期の間のより良い収縮を結果としてもたらした(図24)。それ故に、apelinにより全身的処置が、急性心筋梗塞後の心臓機能全体を改善するであろうことが結論付けられる。
【0202】
MIそしてapelin処置後の瘢痕形成についての研究は、apelin処置が、境界領域の心筋厚を増大させ、そして、梗塞長を減少することを示し(図25)、そしてそれ故に、apelin注入が、心筋梗塞後の梗塞長を減少すると示される。さらに、apelin注入は、心筋梗塞後の新たな脈管の形成を刺激する(図26)。Apelinの上記治療効果は、明確に、本発明の局面として同定される。
【実施例3】
【0203】
FGD5発現に関する治療方法
【0204】
材料及び方法
【0205】
マウス胚からのFlk+及びFlk-細胞の分離
【0206】
10〜15dpcのFVB/Nマウス胚が、回収され、単独細胞の懸濁物を得る為にPBS/10% FCS/0.12% collagenase type I(Sigma C-0130、オランダ)において消化された。単独細胞懸濁物が、1:50 Flk-1 PEマウス抗体(BD bioscience、オランダ)及び1:100 Hoechstにより標識化され、そして、Flk+/Hoechst-細胞について、>90%純度の為にFACS Divaセルソーターを用いてソートされた。細胞が、RLTバッファー中に溶解され、そして、pPCR分析の為に処理された。
【0207】
定量的PCR及びウェスタンブロット分析
【0208】
RNAeasyキット(Qiagen、オランダ)を用いてC57bl/6マウスからの種々の組織又は初代培養物から分離されたRNAが、キャピラリー電気泳動(Agilent 2100 Bioanalyzer、Agilent Technologies, オランダ)により質及び量について確認され、そして、cDNAへ逆転写された。qPCR反応は、iCycler iQ Detection System (Bio-Rad、オランダ)を用いたsybergreenシグナルのリアルタイム蛍光評価により実施された。qPCR分析は、マウスのFRG、FGD1-6、eNOS、及びCD31について、並びに、ヒトのVEGFR1/2、Notch1/4、DLL4、jagged1、ephrin B2/B4、NRP1/2、p53 及びHey1について実施された。標的遺伝子mRNA発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子(マウス試料においてヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hprt1)、及び、ヒト試料においてβアクチンに関して報告される(プライマー配列は表1及び2において与えられる)。ウェスタンブロット分析について、細胞培養物及び組織試料が、NP40バッファー中に溶解され、そして、SDS-PAGEウェスタンブロット及び、1:1000ラット抗p21CIP1、抗p53抗体(Abcam、英国)、1:500ウサギ抗cdc42、抗Rac1、及び抗-RhoA抗体(Abcam、英国)、及び1:500マウス抗FGD5抗体(Bioscience、オランダ)を用いて分析された。タンパク質のバンドは、Li-Cor検出システム(Westburg、オランダ)を用いて、前に記載されたとおりに(Cheng et al. 2009. Circulation 119, 3017-3027)可視化された。
【0209】
【表1】

【0210】
【表2】

【0211】
組織学的分析
【0212】
マウス左心室、及び大動脈/頸動脈が、OCT(Sakura Finetek、オランダ)に埋め込まれ、そして、液体窒素中で瞬間凍結された。5μmの凍結切片が、Alexa-fluor結合イソレクチンIB4(1:500、Invitrogen、オランダ)及び1:100マウス抗FGD5 (Bioscience、オランダ)を用いて二重染色され、FITC/ローダミン標識された抗マウスIgG抗体検出(1:500、Invitrogen、オランダ)、及び、ブロッキングの為のヤギFAB抗マウスIgG (H+L) (Jackson Immunoresearch Labs、米国)が続いた。
【0213】
初代細胞培養物の状態
【0214】
ペニシリン/ストレプトマイシンを有するEGM2培地(bullet kit及び2%FCSを補われたEBM2培地)(Lonza、オランダ)中の初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、Lonza、オランダ)が、ゼラチンにより覆われたプレート上で、37℃/5%CO2で培養された。3〜5継代の細胞培養物だけが、実験を通じて用いられた。免疫組織学的染色の為に、HUVECが、カバースリップ上で増殖され、そして、氷冷アセトン中で5分間固定され、続いて0.1%tritonX/PBSによる透過化、そして1:100マウス抗FGD5 (Bioscience、オランダ)により染色され、そして、シグナルのTSA-増幅(Roche、オランダ)が行なわれた。この後に、1:500ウサギ抗cdc42 (Abcam、英国)又はラット抗Zyxin (1:500、Abcam、英国)とのインキュベーション、そして1:500FITC標識された抗ウサギ/ラットIgG抗体(Invitrogen、オランダ)を用いた検出が行なわれた。カバースリップは、Vectashield/DAPI (Brunschwig、オランダ)を用いて標本を載せられ、そして、蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Inc.、オランダ)により画像化された。
【0215】
細胞培養物中の遺伝子移行及びsiRNAノックダウン
【0216】
市販のpAd/CMV/V5ゲートウェイシステム (Invitrogen、オランダ)が、製造者の推奨に従い、要求された組み換えアデノウィルスベクターを生成する為に用いられ、そして、アデノウィルス粒子アセンブリーの為に293細胞にトランスフェクトされた。ウィルス粒子は、細胞溶解物から回収され、そして、ウィルス力価がウィルスプラークアッセイにより決定された。ΔE1/E3-shamアデノウィルス(sham adenovirus)が、全ての研究において、対照アデノウィルスとして用いられた(Sham Ad)。サブコンフルエントなHUVEC培養物が、EGM2/0.2%FCSにおいて、2時間37℃/5%CO2 (moi100)で感染され、その結果、48時間でHUVECにおいて>90%の形質転換効率をもたらした(Invitrogen、オランダ)。標的とした遺伝子のノックダウンは、それぞれの遺伝子のmRNAに対して向けられた4つのsiRNA配列の混合物(Smartpool、Dharmacon、オランダ)の、50-60%サブコンフルエントHUVEC培養物におけるトランスファーにより達成された(実験に含める3日前)。対照として、細胞が、4つのターゲティングしないスクランブルsiRNAの混合物(Dharmacon、オランダ)をトランスフェクトされた。>80%のsiRNA形質転換効率が、FITC標識されたsiRNA (siglow、Dharmacon、オランダ)により確認されたときに、72時間で達成された。十分な過剰発現又はノックダウンが、形質転換後2及び3日目でのqPCR及びウェスタンブロット分析により確認された。
【0217】
インビトロ及びエクスビボの血管新生アッセイ
【0218】
管形成アッセイ:HUVECが、200μlのEGM2培地中3×104細胞/mlの密度で、96ウェルプレート中において、血清低減Matrigel(BD Biosciences、オランダ)上にプレートされ、そして24時間インキュベートされた。生存細胞が、製造者のプロトコルに従いCalcein-AM(BD Biosciences、オランダ)取り込み及び蛍光顕微鏡により可視化された。コーティングされたビーズアッセイ:HUVECのトリプシン処理されたシングル細胞懸濁物(トランスフェクション後24時間)が、4時間、Cytodexマイクロキャリアビーズ(Sigma、オランダ)と共インキュベートされた。EGM2培地中でビーズ当たり400細胞の割合で、前に記載されたとおり(Sainson et al. 2008. Blood 111、4997-5007)、HUVECによりコーティングされたマイクロビーズが、6ウェルプレートに移され、そして、一晩インキュベートされ、次に、付着していない細胞を除去する為に2回洗浄された。コーティングされたマイクロビーズが、1μgトロンビン(R&D Systems、英国)を補われた2.5%のヒトフィブリノーゲン/mlのEGM2(Calbiochem、オランダ)中に再懸濁され、12ウェルプレート中に蒔かれた。凝固したフィブリノーゲンゲルが、20ng/mlのbFGFを有する1mlのEGM2培地により覆われ、そして、6日目でローダミン−ファロイジン染色(Invitrogen、オランダ)又はトルイジンブルー染色により可視化された。内皮出芽のエクスビボ分析:C57bl/6マウスの大動脈が回収され、2mm厚さセグメントに切断され、そして、96ウェルプレート中の血清低減Matrigel(BD Biosciences、オランダ)中に置かれた。埋め込まれた大動脈セグメントが、次に、ウェル当たり200μlのEGM2培地により4日間インキュベートされ、次に、位相差顕微鏡により評価された。管形成アッセイの定量:Angiosys分析ソフトウェア(Angiosystems、英国)が、平均の管長さ及び合計の管長さ、並びに管及び分岐の数を決定する為に用いられた。被覆されたビーズの定量及び大動脈リングアッセイ:データ分析は、市販の画像分析システムを用いて実施された(Impak C、Clemex Technologies、カナダ)。
【0219】
マウス網膜血管新生モデル
【0220】
3日齢のC57bl/6の子マウスが、氷上に置くことにより麻酔された。33ゲージの針を用いて、0.5μlのAd-FGD5 (5x107 pfu)が、左の硝子体内に注入され、及び、0.5 μlのshamのアデノウィルス(5x107 pfu)が、右目に注入された。FGD5サイレンシング実験について、マウスFGD5を標的とする100nmolのaccell siRNAが、左において、および、ターゲティングしていない100nmolのスクランブルaccell siRNAが、右において、硝子体内に注入された(Dharmacon、オランダ)。3日目で、子マウスが犠牲にされ、そして、網膜が、ローダミン/FITCイソレクチンIB4(1:200)、ウサギ抗NG2抗体(1:200、Millipore、オランダ)、又はラット抗CD31抗体(1:500、R&D Systems、オランダ)、続いてAlexafluor標識化抗ウサギ/マウス二次抗体(1:500、Invitrogen、オランダ)により染色された。十分な導入遺伝子発現が、qPCR分析により確認された。網膜ECのフローサイトメトリー評価について、網膜が、PBS/10%FCS中の0.12%コラゲナーゼタイプI(Sigma C-0130、オランダ)において15分間ホモジナイズされ、3ミクロンメッシュ(BD Biosciences、オランダ)を通じてろ過され、そして、1:50PE-標識されたマウス抗Flk1抗体により染色され、次にAnnexin V及びPI染色された。Flk1+集団におけるアポトーシス細胞又は死細胞のパーセンテージが、フローサイトメトリー(FACScanto、BD Biosciences、オランダ)により定量された。
【0221】
インビボのコーティングされたビーズのアッセイ
【0222】
成熟SCIDマウス(10〜15週齢)が、皮下に、2.5ng/mlフィブリノーゲン及び20ng/mlヒトbFGFを補われた、300μlのMatrigel中の700ビーズ(ビーズ当たり400のHUVEC)を注入された。それぞれの動物について、1のshamのウィルス及び1のFGD5過剰発現ECを被覆されたビーズプラグが、脇腹に埋め込まれた。8日目で、固形化したMatrigelプラグが回収され、洗浄され、4%PFA/PBS中に固定化され、そしてOCT(Sakura Finetek、オランダ)に埋め込まれた。5μmの凍結切片が、ヘマトキシリン/エオシン染色により、又はラット抗CD31(1:500)及びローダミン標識された抗ラットIgG二次抗体 (1:500、R&D Systems、オランダ)により染色された。核の%及びCD31+細胞の%の定量について、データ分析が、市販の画像分析システム(Impak C、Clemex Technologies、カナダ)を用いて実施された。
【0223】
細胞増殖、アポトーシス、及び細胞周期の分析
【0224】
トランスフェクトされたHUVECが、EGM2/0.2%FCSにおける12時間の血清除去により、G0/G1期に同期された。細胞増殖評価の為に、細胞が、回収され、そして、血球計算板(トリパンブルーネガティブ)を用いて、種々の時点で定量された。細胞代謝評価の為の3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラソディウムブロミド(MTT)取り込み実験が、製造者のプロトコル(ATCC、米国)に従い実施された。細胞周期分析:細胞が活性化後0、4、及び12時間で回収され、そして70%エタノール/PBS中で15分間氷上で固定され、ヨウ化プロピジウムにより染色され(PI 1:300)、そしてフローサイトメトリーにより分析された。アポトーシス分析:細胞が活性化後0、4、及び12時間で回収され、Annexin V アポトーシス検出キット(BD Biosciences、オランダ)を用いてAnnexin V及びPIシグナルについて染色され、続いてフローサイトメトリー(FACScanto、BD Biosciences、オランダ)による試料の分析が行なわれた。
【0225】
スモールGタンパク質(Small G protein)活性化アッセイ及びFGD5−タンパク質複合体共免疫沈降
【0226】
GTP-RhoA、Rac1、及びcdc42の活性化レベルが、G-lisa検出システム(Tebu-Bio、オランダ)を用いて測定された。FGD5-タンパク質複合体共免疫沈降について、マグネチックビーズ(Dynabeads、Invitrogen、オランダ)が2.5μgの抗FGD5抗体 (Bioscience、オランダ)によりコーティングされそして架橋され、次に一晩4℃でトランスフェクトされたHUVECのタンパク質細胞溶解物と共免疫沈降された(100μlのインキュベーションバッファーの量の50μgの合計タンパク質)。ビーズが洗浄され、そして、該タンパク質試料が、溶出バッファー(Invitrogen、オランダ)により溶出され、次にウェスタンブロットにより分析された。
【0227】
結果
【0228】
マウス発生の間のFlk1+内皮血管芽細胞から分離されたRNA転写物のゲノムワイド発現プロファイリングが、早期胚発生の間のFLk1+血管芽細胞において特異的に上方制御された約2000の遺伝子の一つとして、FYVE、RhoGEF、及びPH domain-containing 5(FGD5)を同定した。Rhoグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)のFGDファミリーメンバーは、FGD1-6並びにFGD1-related cdc42-GEF(GRF)を含み、及び、Dblホモロジー(DH)ドメイン、FYVEドメイン、及びプレクストリンホモロジー(PH)ドメインを共有する。FGD5中のDHドメインの存在は、cdc42、Rac1、及びRhoAを含むスモールGTPアーゼの結合及び活性化を予測する。実際に、FGD1、FGD4、及びFRGも、インビトロで線維芽細胞及び内皮細胞において不活性GDP結合cdc42を活性GTP結合cdc42に転化することにより、cdc42制御活性を発揮することが示し、cdc42を介して、アクチン細胞骨格アセンブリー、糸状仮足形成、及びJNK経路活性化を調節することが示されている。しかしながら、FGD5の基本的な機能は未知である。ここに、私たちは、脈管発達におけるFGD5の潜在的な制御役割及び分子機能を明確にしようとした。
【0229】
FGD5は、マウス及びゼブラフィッシュの発生の間の内皮前駆細胞において、及び完全に分化したECにおいて特異的に発現される。
【0230】
FGD5は、マイクロアレイ分析及び続くqPCR検証により示されたとおり、マウスにおける胚発生の間にFlk1+血管芽細胞集団において特異的に発現された。FGD5mRNAは、脈管構造の大部分が確立される9dpcから15dpcまで、Flk1+前駆細胞において優勢に発現された(図27A)。発生中の血管樹におけるFGD5の特異的な脈管発現はまた、ゼブラフィッシュ幼生においてホールマウントインシチュハイブリダイゼーションにより検出された:FGD5 mRNA発現は、背部大動脈、後主静脈、及び、体節間動脈に局在化された(図27B)。qPCR分析を用いて、成熟C57/bl6マウスにおけるFGD5発現が、心臓、骨格筋、腎臓、肝臓、眼、及び脳の組織と比較したときに、大血管において優勢に発現され(図27C)、eNOS及びCD31を含む内皮特異的マーカーの発現プロファイルを密接に模倣する一方で、他のFGDファミリーメンバーは、より遍在的な発現パターンを示した(図27D)。インビトロで、FGD5は、無関係な細胞(Hela及び肉腫細胞、図27E)と比較したときに、ヒト動脈及び静脈の初代EC(HUVEC及びHAEC)において特異的に発現され、種々の種及び発生期における内皮特異的発現を強調する。免疫組織学的研究は、心筋の微小血管系において及び大動脈を含む大血管の内皮内張りにおいて、FGD5のECにおける選択的発現を実証した(図27F、G)。これらの発見はさらに、公の遺伝子発現データベース(NCBI、Gene Expression Omnibus)の分析により確認された。これらのデータは、FGD5を、胚の脈管発達の間のECにおいて及び成体の脈管系において特異的に発現されるFGDファミリーの優勢なアイソフォームとして区別する。
【0231】
FGD5は、ヒト内皮細胞培養物において血管新生を阻害する。
【0232】
培養されたEC(HUVEC)におけるFGD5機能が、FGD5を標的とするsiRNAのトランスフェクションによる又はヒトFGD5 cDNAをコードする組み換えアデノウィルスによる機能獲得及び喪失研究によって評価された。2Dマトリゲル管形成アッセイにおいて、siRNAにより媒介されたFGD5サイレンシングが、管長さ、分枝の数、及び増殖出芽の分岐の増加を結果した一方で(図28A〜D)、FGD5過剰発現は、管、枝、及び分岐の減衰された成長を誘発し(図2E〜H)、自然の脈管再構築の間の過剰な毛細血管の、酸素供給により誘発された剪定におけるFGD5の役割を示唆する。同様に、エクスビボマウス大動脈リングアッセイにおいて、アデノウィルスにより媒介されたFGD5過剰発現は、shamのウィルスを形質導入されたリングと比較して、微小血管系の外方成長(outgrowth)を有意に減少した(図28I、J)。加えて、血管新生のためのHUVEC被覆されたcytodexビーズを用いて確立されたモデルにおいて、FGD5過剰発現が、shamのウィルスをトランスフェクトされた対照と比較し、毛細血管様構造の出芽を阻害した(図28K〜P)。DAPI染色が用いられたときに、該アッセイの開始でのビーズへ付着した生存細胞の同程度の数を確認した。
【0233】
FGD5はインビボの血管新生を減少する。
【0234】
インビボでの血管新生におけるFGD5の役割の評価を拡張する為に、Ad-FGD5又はshamのアデノウィルスを形質導入されたHUVECにより覆われたビーズが、マトリゲル中に懸濁され、そして、免疫欠損SCIDマウスに皮下注射により注入された。移植後8日で回収されたマトリゲルプラグは、Ad-FGD5プラグにおけるプラグ脈管形成における減衰を明らかにする一方で、shamのプラグは、広範な新毛細血管ネットワークを示し(図29A、B)、及び、CD31+細胞のビーズ周囲の外方成長の増加を示した(図29C〜G)。同様に、出生後網膜血管新生の間、FGD5機能が、完全長マウスFGD5(mFGD5)cDNAをコードするアデノウィルスベクターを用いて評価された(図29K)。硝子体内注入によるアデノウィルスによるmFGD5過剰発現(0.5x107pfu)が、発生中のマウスの目における網膜脈管ネットワークを減少し(図29H)、これは表面血管系における脈管構造の切断により引き起こされた(図29I、J):コンピュータ支援の画像分析が、合計脈管管長さ、及び新毛細血管の分岐及び管の数における減少を同定し(図29L〜O)、mFGD5過剰発現が脈管密度を有意に減少することを示唆する。Ad-mFGD5又はshamのアデノウィルスの単回の硝子体内注入後のトランスフェクトされた網膜のフローサイトメトリー分析により示されるとおり、マウス網膜床におけるmFGD5過剰発現が、%Flk1+細胞の減少(P,Q)及びFLK1+細胞集団におけるアポトーシスの増加(R,S)に関連付けられた。これらのデータは、網膜脈管ネットワークの発達における顕著な役割をFGD5が果たすことを示し、脈管成長に対する抑制機能又は脈管再構築の間の余剰新毛細血管の除去における剪定機能を示す。フローサイトメトリー分析による網膜脈管系発達の間の内因性FGD5の発現レベルの評価は、FGD5+細胞集団におけるFLK1+(内皮)細胞のパーセンテージの有意な増加を示しており、これは開裂したカスパーゼ3+(アポトーシス)細胞フラクションにおけるFLK1+細胞の増加と一致した(図29T、U)。より重要なことに、FLK1+細胞集団において、開裂カスパーゼ3シグナルが、評価された種々の時点の全てで、FGD5発現と関連付けられた(図29R、S)。加えて、FGD5の高い平均強度(MI)レベルが、FLk1+且つ開裂カスパーゼ3+集団と関連付けられた(図29V,W)。総合して、これらのデータは、内因性の高いFGD5レベルが、ECアポトーシスと関連付けられることの証拠を提供する。siRNAにより媒介されたFGD5ノックダウンがさらに我々の発見を確認した。というのも、FGD5阻害が、脈管再構築プロセスの間に正常には除去された過剰分枝及び管構造の持続を結果したからである(図29V-Z)。
【0235】
FGD5は、内皮細胞における増殖を阻害し及びアポトーシスを誘発する。
【0236】
FGD5の観察された抗血管新生効果が、EC増殖率の変化に起因しうる。FGD5を発現するHUVECは、shamのウィルスをトランスフェクトされた対照と比較したときに、減少した細胞増殖率をインビトロで示した(図30A、B)。対照的に、siRNAにより媒介されたFGDノックダウンHUVECは、スクランブル(scrambled)siRNAの対照と比べて、細胞増殖の増加を示した(図30C)。次に、私たちは、Annexin V/ヨウ化プロピジウムのフローサイトメトリー評価を用いて、FGD5のアポトーシスに対する効果を分析した。FGD5過剰発現は、ECにおいてアポトーシスを促進し(図30D、E)、及び、p53及びp21CIP1タンパク質レベルの上方制御と関連付けられた(図30F、G)。これらのデータは、FGD5が、脈管剪定をもたらすp53依存性アポトーシス及びp21CIP1に関連した細胞周期停止に関与しうることを示す。
【0237】
FGD5により誘発されたアポトーシスは、Hey1-p53制御経路を介して媒介される。
【0238】
FGD5により媒介された脈管剪定に関与する下流シグナル伝達カスケードをさらに解明する為に、詳細に明らかにされた血管新生モジュレーターについての遺伝子発現プロファイルが、qPCRにより決定された。初代EC培養物におけるFGD5ノックダウン又は過剰発現は、VEGFA、Jagged1、NRP1、NRP2、ephrinB2、及びephB4のmRNA発現レベルを変化させなかった。対照的に、FGD5ノックダウンは、VEGFR1/Flt1を抑制し、及び、VEGFR2/KDR/Flk1発現を促進した(血管新生促進状態)一方で、FGD5過剰発現すると、VEGFR1 mRNAレベルが選ばれ、VEGFR2が減少された(抗血管新生状態、図30H)。加えて、FGD5ノックダウンは、Notch1及び4、並びにDLL4を含むNotch経路遺伝子の上方制御と関連付けられた(図30H)。興味深いことに、Hey1(Notchシグナル伝達経路の下流転写制御因子の一つ)が、FGD5のノックダウンにより著しく下方制御された (図30 H)。
【0239】
Hey1過剰発現は、以前に、p53媒介のアポトーシスを誘発すると示された。これは、Hey1が、FGD5誘発のアポトーシス応答をECにおいて媒介しうることを示唆するだろう。FGD5を発現するHUVECにおけるHey1ノックダウンが、FGD5による増殖阻害を正常化し(図31A)、p53及びp21CIP1上方制御を減少し(図31B、C)、及び、ECをFGD5により誘発されたアポトーシスから救う(図31D、E)一方で、スクランブルsiRNAとの共トランスフェクションは、効果を有さなかった。フローサイトメトリー分析を用いたヨウ化プロピジウム支援の評価は、FGD5がsub-G1アポトーシスフラクションを促進する一方で(図31 F、G)、S+G2/G1割合が減少したことを示唆し(sham及びFGD5ウィルスをそれぞれ形質導入されたHUVECについての、20/64=0.31と8/45=0.17の比較)、これはGolgi細胞周期停止を示唆する(図31F,G)。この細胞増殖抑制効果は、FGD5過剰発現するECにおけるHey1ノックダウンにより回復された(図31F,G)。同様に、インビトロのコーティングされたビーズのアッセイは、毛細血管外方成長のFGD5阻害も、付随するHey1サイレンシングにより回復されうることを示した(図31H、I)。
【0240】
FGD5により誘発されたアポトーシスはp53を介して媒介された。というのも、フローサイトメトリーによって示されるとおり(図31J、K)、及び該コーティングされたビーズアッセイにおけるFGD5過剰発現の増殖阻害効果が無効にされたとおり(図31L、M)、FGD5過剰発現HUVECのp53を標的とするsiRNAによる共トランスフェクションが、ECにおいてアポトーシスを誘発しなかったからである。これらのデータは、後期新血管新生の間のFGD5についてのアポトーシス促進機能を支持し、及び、Hey1-p53シグナル伝達カスケードがECにおける、FGD媒介のプログラムされた細胞死の誘発において必須であることを示す。
【0241】
FGD5はcdc42に結合し及び活性化する。
【0242】
FGD5の直接のタンパク質標的を決定する為に、私たちは、FGD5のDbl-ホモロジー(DH)ドメイン及びPHドメインがスモールGTPasesに結合し及び活性化できるかどうかを評価した。HUVEC中のFGD5-トランス遺伝子発現は、shamの対照と比較したときに、合計のcdc42、Rac1、又はRhoAタンパク質レベルに影響しなかった(図32A)。FGD5過剰発現HUVECのタンパク質ライセート中のFGD5に対する抗体を用いた共免疫沈降(IP)が、cdc42を、FGD5の選択的タンパク質結合性パートナーとして同定し(図32B)、一方で、cdc42-FGD5結合が、GEF活性アッセイにおいてcdc42の特異的活性化をもたらした(図32C〜E)。加えて、蛍光顕微鏡が、内因性FGD5が、ECの細胞質内の核周辺部位で、cdc42と共局在することを示した(図32F、G)。以前の研究は、FGD1、FGD4、及びFRGによるcdc42活性化を、培養された線維芽細胞におけるGTPを結合したcdc42への転化により実証した。同様に、FGD1及びcdc42の共局在化が、Hela細胞のGolgi複合体において観察された。該種々のFGDメンバーによるcdc42 GEF活性のこの保存は、オーバーラップする機能によるタンパク質ファミリーにおける余剰を示唆すると思われるが、ECにおけるFGD5の特異的な発現は、脈管形成におけるこの特定のFGDメンバーについてのユニークな役割を示す。
【0243】
以前の研究は、自然の加齢の間の全身的なcdc42活性の増加を示した。トランスジェニックマウス系列における構成的に高められたcdc42-GTPレベルは、DNA修復欠如、加速した細胞老化、及び増加したp53依存性アポトーシスを伴う早期老化をもたらした。同様に、細胞培養物におけるcdc42活性化は以前に細胞老化、及びアポトーシスと関連付けられ、一方で造血幹細胞におけるcdc42欠失が細胞周期進行のp21CIP1制御の欠失により、増殖を促進した。私たちのデータは、cdc42活性とp53媒介アポトーシスの間の直接的な関連性を、Hey1媒介性p53依存性細胞死をもたらす、ECにおけるcdc42-GTPへのFGD5媒介cdc42活性化として確認する。脈管発達の間、脈管叢が、脈管剪定(異常な新毛細血管を除去する為の活発なECアポトーシスにより主に媒介されるプロセス)によって再組織化される。以前に、EphB4/ephrinB2、FasL-Fas、thrombospondin 1、angiostatin、及びendostatinを含む多くの遺伝子が、アポトーシス促進的刺激をECへ与えることにより、血管新生における阻害機能を示すと同定された。脈管ネットワークの再構築の観点において、FGD5は、この特定のプロセスにおいて重要なEC選択的役割を果たすことができ、標的としたアポトーシスの誘発によって余剰な新脈管の脈管剪定に寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の新脈管形成の調節が必要である対象において当該調節をする為の方法であって、当該対象に、
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選択される遺伝子により又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物、並びにそれらの機能的断片;
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体から得られた他の分子から選ばれたものである;
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は該遺伝子のmRNA遺伝子産物とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)、又はリボザイム;
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、及び、
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子と、又はその遺伝子産物と相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物
から選ばれる化合物又は化合物の組み合わせの治療的に有効な量を投与することを含み、
該遺伝子ホモログが、該遺伝子の配列と少なくとも60%の配列同一性を有する、
前記方法。
【請求項2】
新脈管形成を調節する為の前記方法が、
心臓血管疾患(心臓血管及び脳血管虚血性疾患及び末梢動脈疾患を包含する)を患うリスクを処置し又は緩和し又は予防する、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)の後の動脈治癒を改善する、アテローム性動脈硬化症を処置し又は緩和し又は予防する、アテローム性動脈硬化性プラーク形成を処置し又は緩和し又は予防する、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)を処置し又は緩和し又は予防する;ガン、特には腫瘍血管新生、を処置し又は緩和し又は予防する;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性又は過剰透過性脈管をもたらす増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態を処置し又は緩和し又は予防する;
動脈の再構築並びに動脈の完全性及び/又は過剰透過性を誘発する為の処置;及び/又は
化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらへの血栓形成のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置
の為の方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に定義されたとおりの少なくとも1つの化合物の治療的に有効な量と、医薬的に許容できる添加物、キャリア、又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項4】
該化合物が、
RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;
遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01によりコードされる又はこの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物、並びにその機能的断片;
遺伝子RIKEN cDNA 9430020K01の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体から得られた他の分子からなる群から選ばれたものである;
RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は該遺伝子のmRNA遺伝子産物とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)又はリボザイム;
RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、又は
RIKEN cDNA 9430020K01及びそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は遺伝子産物と相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物
であり、
該遺伝子ホモログが、該遺伝子の配列と少なくとも60%の配列同一性を有する、
請求項3の記載の医薬組成物。
【請求項5】
対象を処置する方法であって、該対象に、請求項3又は4の医薬組成物の治療的に有効な量を投与することを含む前記方法。
【請求項6】
該処置が、
心臓血管疾患を患うリスクの処置又は緩和又は予防、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)の後の動脈治癒の改善、アテローム性動脈硬化症の処置又は緩和又は予防、アテローム性動脈硬化性プラーク形成の処置又は緩和又は予防、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)の処置又は緩和又は予防;ガン、特には腫瘍血管新生、の処置又は緩和又は予防;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性又は過剰透過性の脈管をもたらす増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態の処置又は緩和又は予防;
動脈の再構築及び動脈の完全性/過剰透過性を誘発する為の処置;
化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらへの血栓形成のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
心臓血管疾患を患うリスクの処置又は緩和又は予防、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)の後の動脈治癒の改善、アテローム性動脈硬化症の処置又は緩和又は予防、アテローム性動脈硬化性プラーク形成の処置又は緩和又は予防、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)の処置又は緩和又は予防;ガン、特には腫瘍血管新生、の処置又は緩和又は予防;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性又は過剰透過性の脈管をもたらす増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態の処置又は緩和又は予防;
動脈の再構築及び動脈の完全性/過剰透過性を誘発する為の処置;及び/又は
化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらへの血栓形成のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置
における、
医薬としての使用の為の、
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにそれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子を含む分離された核酸分子;
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選択される遺伝子によりコードされる又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされる遺伝子産物、並びにそれらの機能的断片;
RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5からなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物若しくはその機能的断片又はこれらの遺伝子のホモログによりコードされた遺伝子産物若しくはその機能的断片に対して向けられた抗体又はその誘導体、但し該誘導体は好ましくはscFv断片、Fab断片、キメラ抗体、二重機能的抗体、細胞内抗体、及び抗体から得られた他の分子から選ばれたものである;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5、並びにこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子又は該遺伝子のmRNA遺伝子産物とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合することができるアンチセンス分子、特にはアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、RNAi分子(siRNA又はmiRNA)、又はリボザイム;
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5並びにそのホモログからなる群から選ばれる遺伝子の遺伝子産物の生物学的活性を干渉する小分子、及び、
- RIKEN cDNA 9430020K01、Agtrl1、Apelin、Stabilin 1、Stabilin 2、TNFaip8l1、TNFaip8、及びFGD5及びこれらのホモログからなる群から選ばれる遺伝子と又はその遺伝子産物と相互作用することができる(グリコール)タンパク質、ホルモン、及び他の生物学的に活性な化合物
から選ばれる化合物。
【請求項8】
図11、13、及び15〜20のいずれか一つに記載されたとおりの配列と少なくとも60%の配列同一性を有する配列を含む分離された核酸分子。
【請求項9】
医薬としての使用の為の、請求項8に記載の分離された核酸分子の遺伝子産物又は請求項8に記載の該核酸分子を含むベクター。
【請求項10】
心臓血管疾患を患うリスクの処置又は緩和又は予防、身体的損傷(ステント留置術、医療的介入)の後の動脈治癒の改善、アテローム性動脈硬化症の処置又は緩和又は予防、アテローム性動脈硬化性プラーク形成の処置又は緩和又は予防、プラーク不安定化(脆弱なプラークの形成及び破綻)の処置又は緩和又は予防;ガン、特には腫瘍血管新生、の処置又は緩和又は予防;糖尿病性網膜症又は網膜の網膜症又は漏出性若しくは過剰透過性の脈管をもたらす増大した、異常な、未成熟な、加速された、及び/又は非協調的な脈管成長に関連したいずれかの状態の処置又は緩和又は予防;
動脈の再構築及び動脈の完全性/過剰透過性を誘発する為の処置;
化合物、グラフト、及び/又はデバイス(バルブ、脈管グラフト、脈管内プロテーゼ、脈管内ステント)の、それらへの血栓形成のリスクを減少する為の、再内皮化(re-endothelialisation)を刺激する為の処置
における使用の為の、請求項9に記載の遺伝子産物又はベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図27D−1】
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【図27D−2】
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【図27E】
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【図27F】
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【図27G】
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【図28−1】
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【図28−2】
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【図28−3】
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【図28−4】
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【図28−5】
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【図28−6】
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【図29−1】
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【図29−2】
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【図29−3】
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【図29−4】
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【図29−5】
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【図29−6】
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【図29−7】
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【図29−8】
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【図29Z−1】
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【図29Z−2】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図30H】
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【図31−1】
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【図31−2】
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【図31F】
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【図31G】
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【図31H】
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【図31I】
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【図31J】
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【図31K】
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【図31L】
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【図31M】
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【図32−1】
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【図32−2】
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【図32−3】
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【公表番号】特表2013−509874(P2013−509874A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537832(P2012−537832)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050736
【国際公開番号】WO2011/056073
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(505055789)エラスムス ユニバーシティ メディカル センター ロッテルダム (6)
【Fターム(参考)】