新脈管形成抑制のための方法および組成物
【課題】新脈管形成抑制のための方法および組成物の提供。
【解決手段】本発明は、タンパク質分解化または変性コラーゲンと特異的に結合するが、ネイティブ三重らせん形態のコラーゲンと結合しないアンタゴニストを投与することによる組織における新脈管形成の抑制方法を記載する。本発明のアンタゴニストは、例えばI型、II型、III型、IV型、V型変性コラーゲンおよびそれらの組合せを標的にし得る。腫瘍増殖、腫瘍転移の、または再狭窄の療法的処置のためのこのようなアンタゴニストを利用する方法は、in vivoおよびex vivoの両方の正常または罹患組織における新脈管形成の診断マーカーとしてこのようなアンタゴニストを用いるための方法であるので、これも記載する。
【解決手段】本発明は、タンパク質分解化または変性コラーゲンと特異的に結合するが、ネイティブ三重らせん形態のコラーゲンと結合しないアンタゴニストを投与することによる組織における新脈管形成の抑制方法を記載する。本発明のアンタゴニストは、例えばI型、II型、III型、IV型、V型変性コラーゲンおよびそれらの組合せを標的にし得る。腫瘍増殖、腫瘍転移の、または再狭窄の療法的処置のためのこのようなアンタゴニストを利用する方法は、in vivoおよびex vivoの両方の正常または罹患組織における新脈管形成の診断マーカーとしてこのようなアンタゴニストを用いるための方法であるので、これも記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、米国特許仮出願番号第60/114,877号(1999年1月6日提出)、第60/114,878号(1999年1月6日提出)、第60/152,496号(1999年9月2日提出)、第60/143,534号(1999年7月13日提出)(これらの記載内容はともに、参照により本明細書中に含まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府後援
本発明は、米国国立衛生研修所により契約番号R29CA74132-01下で連邦政府後援により成された。
【0003】
技術分野
本発明は、一般的に薬剤の分野に関し、ならびに特に、組織における新脈管形成を抑制し、変性またはタンパク質分解形態のコラーゲン、例えばI、II、III、IVおよびV型コラーゲンのアンタゴニストを用いて新脈管形成を検出するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
腫瘍増殖および転移は、毎年多数の人々に強い影響を及ぼしている。実際、優に600,000を超える癌の新規症例が、米国だけで毎年診断されている(Varner, J.A., Brooks, P.C., and Cheresh, D.A.(1995)Cell Adh. Commun. 3, 367-374)。固形腫瘍はすべて、最小サイズ以上に腫瘍を継続的に拡張するためには新規の血管増殖を要する、ということを多数の研究が示唆してきたことは重要である(Varner et al. 1995; Blood, C.H. and Zetter, B.R.(1990)Biochim. Biophys. Acta. 1032:89-118; Weidner N. et al.(1992)J. Natl. Cancer Inst. 84:1875-1887; Weidner, N. et al.(1991), N. Engl. J. Med. 324:1-7; Brooks, P.C. et al.(1995)J. Clin. Invest. 96:1815-1822; Brooks, P.C. et al.(1994)Cell 79:1157-1164, Brooks, P.C. et al.(1996).Cell 85, 683-693; Brooks, P.C. et al.(1998)Cell 92:391-400)。有意には、広範な種々のその他のヒト疾患は、黄斑変性および糖尿病性網膜症のような眼疾患を含めた非調節化血管発生により特性化される。さらに、多数の炎症性疾患も、非制御化新生血管形成、例えば関節炎および乾癬に関連がある(Varner et al.1995)。新脈管形成は、新しい血管が先在する血管から発生する生理学的過程である(Varner et al.1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al. 1992)。この複雑な過程は、増殖因子、細胞接着受容体、マトリックス分解酵素および細胞外マトリックス構成成分を含めた種々の分子の共働を必要とする(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992)。したがって、新脈管形成を遮断するよう意図された療法は、固形腫瘍の増殖を有意にもたらし得る。実際、腫瘍新生血管形成の遮断は、種々の動物モデルにおいて腫瘍増殖を有意に抑制し得るという明らかな証拠が提供されており、ヒト臨床データは、この主張を同様に支持し始めている(Varner, J.A., Brooks, P.C., and Cheresh, D.A.(1995)Cell Adh. Commun. 3, 367-374)。すべての固形腫瘍の増殖は、最小サイズ以上に腫瘍を継続的に拡張するためには新規の血管増殖を要する、ということを多数の研究が示唆してきたことは重要である(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992; Weidner et al.1991; Brooks et al.1995; Brooks et al.1994; Brooks et al.1997)。
【0005】
このために、多数の研究者が、新脈管形成を開始する増殖因子およびサイトカインに対するそれらの抗脈管形成アプローチに焦点を合わせた(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992; Weidner et al.1991; Brooks et al.1995; Brooks et al.1994; Brooks et al.1997)。しかしながら、新脈管形成を刺激する能力を有する多数の異なる増殖因子およびサイトカインが存在する。単一サイトカインを遮断することの療法的利点は、この重複性による限定利点のみを有し得る。しかしながら、その他の抗脈管形成標的には注意がほとんど向けられていなかった。新脈管形成は、新規の血管発生を促すミクロ環境を提供するためには、血管周囲の細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質分解的改造を要する、ということを近年の研究は示唆している(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992; Weidner et al.1991; Brooks et al.1995; Brooks et al.1994; Brooks et al.1997)。細胞外マトリックスタンパク質コラーゲンは、動物における総タンパク質質量の25%以上およびECM内の大多数のタンパク質を構成する。コラーゲンは、多数の形態で存在する繊維状多鎖三重らせんタンパク質である(Olsen, B.R.(1995)Curr. Opin. Cell Biol.7,720-727; Van der Rest, M.,and Garrone, R.(1991)FASEB 5,2814-2823)。少なくとも18の遺伝的に異なる種類のコラーゲンが同定されており、その多くが別個の組織分布および機能を有する(Olsen 1995; Van der Rest and Garrone 1991)。I型コラーゲンは、細胞外マトリックス中で最もたくさんあるコラーゲン型である。I型、III型、IV型およびV型コラーゲンは、in vivoでのすべての先在する血管と関連があることが示されている。I型およびIV型コラーゲンは、それぞれα1(I)およびα2(I)およびα1(IV)およびα2(IV)と呼ばれる主鎖から成る。成熟コラーゲン分子は、三重らせん中に撚り合わされた2つのα1鎖および1つのα2鎖から成る。in vivoでは、コラーゲンは普通は成熟三重らせん形態で見出される。成熟三重らせんコラーゲンのネイティブ三次元構造の変性は、新脈管形成を制御する潜在調節領域を露呈し得る。これらの潜在調節領域の拮抗作用は、新脈管形成の診断および抑制のための認識されていない手段を提供し得る。
【0006】
新脈管形成の抑制は腫瘍増殖を制限するための有用な療法であり得る、ということが提唱されている。新脈管形成の抑制は、(1)βFGF(繊維芽細胞増殖因子)のような「脈管形成分子」の放出の抑制、(2)例えば抗βFGF抗体の使用による脈管形成分子の中和、および(3)抗原性刺激に対する内皮細胞応答の抑制により提唱された。この後者の戦略は注目を受け、Folkman et al., Cancer Biology, 3:89-96(1992)は、新脈管形成を抑制するために用いられ得るコラゲナーゼ阻害剤、基底膜代謝回転阻害剤、脈管形成抑制ステロイド、真菌由来新脈管形成阻害剤、第4血小板因子、トロンボスポンジン、関節炎薬、例えばD−ペニシラミンおよび金チオマレート、ビタミンD、類似体、α−インターフェロン等を含めたいくつかの内皮細胞応答阻害剤を記載している。新脈管形成のさらに別の提唱阻害剤に関しては、Blood and Zetter 1990; Moses et al.(1990)Science 248:1408-1410; Ingber et al.(1988)Lab. Invest., 59:44-51;および米国特許第5,092,885号、第5,112,946号、第5,192,744号および第5,202,352号を参照されたい。前記の参考文献中に記載された新脈管形成の阻害剤はどれも、変性またはタンパク質分解化コラーゲンを標的にしていない。
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
本発明は、新脈管形成を抑制する変性またはタンパク質分解化コラーゲンのアンタゴニストを提供する。アンタゴニストは、変性またはタンパク質分解化コラーゲンと特異的に結合するが、しかしネイティブ形態の同一コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。アンタゴニストは、変性I型コラーゲン、変性II型コラーゲン、変性III型コラーゲン、変性IV型コラーゲンまたは変性V型コラーゲンを含めたあらゆる変性コラーゲンに、あるいはそれらの組合せに特異的であり得る。例えば、一実施態様では、アンタゴニストは、ネイティブ三重らせんI型コラーゲンと比較して変性I型コラーゲンに特異的であるが、しかし実質的低減化親和性でその他の変性コラーゲン、例えばIV型コラーゲンと結合する。別の実施態様では、アンタゴニストは変性IV型コラーゲンに特異的である。アンタゴニストは、変性I、II、III、IVおよびV型コラーゲンに対しても特異的である。
【0008】
アンタゴニストは、変性コラーゲンとは免疫反応するが、ネイティブ形態のコラーゲンとは実質的により低い程度に免疫反応する抗体またはその機能的断片であり得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。アンタゴニストは、変性コラーゲンに対する特異性を有するが、しかし天然(ネイティブ)形態のコラーゲンに対しては特異性を有さないポリペプチドまたはペプチドでもあり得る。アンタゴニストは、小型有機分子またはオリゴヌクレオチドのような非ペプチドでもあり得る。
【0009】
したがって本発明は、組織における新脈管形成を抑制するための方法であって、新脈管形成抑制量の変性/タンパク質分解コラーゲンのアンタゴニストを含有する組成物を組織に投与することを包含する方法を記載する。
【0010】
処置される組織は、新血管形成が生じている罹患組織のような新脈管形成の抑制が望ましいあらゆる組織であり得る。組織例としては、炎症組織、固形腫瘍、転移、再狭窄を受けている組織等が挙げられる。
【0011】
本発明は、本発明のアンタゴニストを組織と接触させることによる組織における新脈管形成の検出方法も提供する。このような方法は、ex vivoおよびin vivoの両方に用いるのに適している。
【0012】
本発明のアンタゴニストをex vivoまたはin vivoで組織と接触させることにより腫瘍組織、転移および組織中への腫瘍浸潤を検出するための方法も提供される。
【0013】
本発明は、単数または複数の変性コラーゲンと特異的に結合するが、しかしネイティブ形態の単数または複数のコラーゲンとは実質的低減親和性で結合し、新脈管形成を抑制し得るアンタゴニストのスクリーニング方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、固相ELISAにおける細胞外マトリックス構成成分とのMabHUI77反応性を説明する。微小滴定プレート(96ウエル)を、各々10マイクログラム(μg)/ミリリットル(mL)の濃度で、ネイティブI型およびIV型コラーゲン、変性I型およびIV型コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンを含む細胞外マトリックス構成成分で被覆した。微小滴定プレートのウエルを、37℃で1時間、PBS中の1%BSAで遮断した。MabHUI77を1 ug/mLの濃度でウエルに付加し、37℃で2時間インキュベートさせた。インキュベーション後、ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、免疫反応性を検出した。基質としてo−フェニレンジアミンを用いて490 nmでELISAプレート読取機により、免疫反応性を測定した。Coll−I(ネイティブ三重らせんI型コラーゲン)、変性Coll−I(変性I型コラーゲン)、Coll−IV(ネイティブ三重らせんIV型コラーゲン)、変性Coll−IV(変性IV型コラーゲン)、VN(ビトロネクチン)、FN(フィブロネクチン)、FB(フィブリノーゲン)。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。
【図2】図2は、遺伝的に異なる形態のコラーゲンとのMabHUI77反応性を実証する。微小滴定プレートを10μg/mlの濃度で異なる形態のコラーゲンで被覆した。微小滴定プレートのウエルを、37℃で1時間、PBS中の1%BSAで遮断した。ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、免疫反応性を検出した。490 nmでELISAプレート読取機を用いて光学濃度を確定することにより、免疫反応性を測定した。Coll−I;三重らせんI型コラーゲン、DenColl−I;変性I型コラーゲン、Coll−II;三重らせんII型コラーゲン、DenColl−II;変性II型コラーゲン、Coll−III;三重らせんIII型コラーゲン、DenColl−III;変性III型コラーゲン、Coll−IV;三重らせんIV型コラーゲン、DenColl−IV;変性IV型コラーゲン、Coll−V;三重らせんV型コラーゲン;DenColl−V;変性V型コラーゲン。 棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。
【図3】図3は、MabHUI77が、in vivoでヒト黒色腫周囲の変性コラーゲンを同定することを示す。ヒトマウスキメラモデルおよびヒト腫瘍生検の両方からのヒト黒色腫の凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性コラーゲンの生成および局在化を調べた。ヒト黒色腫からの凍結組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、ヒト黒色腫細胞上に発現されたαvインテグリンに向けられるMabHUI77およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスFITC共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。左パネルは、ヒト黒色腫生検を示す(630X)。右パネルは、全厚ヒト皮膚内で増殖したM21ヒト黒色腫細胞株を示す(200X)。赤色はαvインテグリンを示し、緑色は変性コラーゲン発現を示す。黄色はαvインテグリンおよび変性コラーゲンの同時局在化を示す。
【0015】
【図4】図4は、MabHUI77がヒト黒色腫関連血管周囲の変性コラーゲンを同定することを示す。ヒト黒色腫生検の凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性コラーゲンの生成および局在化を調べた。ヒト黒色腫からの凍結組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、血管の既知のマーカーであるVIII因子に向けられるMabHUI77およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスフルオレセインイソチオシアネート(FITC)共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。左パネルは、腫瘍血管の輪郭を描くVIII因子に関して染色した(赤色)ヒト黒色腫生検を示す。右パネルは、ヒト腫瘍関連血管周囲の変性コラーゲン(緑色)を示す。
【図5】図5は、ヒト内皮細胞接着に及ぼすMabHUI77の作用を実証する。微小滴定プレート(96ウエル)を、10μg/mLの濃度でネイティブまたは変性I型またはIV型コラーゲンで被覆した。微小滴定プレートのウエルを37℃で1時間、PBS中の1%BSAでブロックした。次に、50 ug/mLの濃度で30分間、精製MabHUI77(50μg/mL)またはアイソタイプ適合化対照抗体の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞(HUVEC)を被覆化ウエルに付着させた。洗浄により非付着細胞を除去し、付着細胞をクリスタルバイオレットで染色した。600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞接着を定量化した。棒グラフデータは、3回ウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。データは、対照の%として表される。
【図6】図6は、ヒト内皮細胞移動に及ぼすMabHUI77の作用を実証する。ウエル横断移動小室からの膜を、25μg/mLの濃度で変性I型またはIV型コラーゲンで被覆した。全体で6時間、精製MabHUI77またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/mL)の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞(HUVEC)を移動させた。膜の上側面に残存する細胞を除去し、膜の下側面に移動した細胞をクリスタルバイオレットで染色した。600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞移動を定量化した。棒グラフデータは、3回ウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。データは、対照の%として表される。
【0016】
【図7】図7は、in vivoでの新脈管形成に及ぼす精製MabHUI77の全身投与の作用を実証する。βFGFをしみ込ませたフィルター円板を10日齢ヒヨコ胚の漿尿膜(CAM)上に載せた。24時間後、胚に20 ugのMabHUI77または対照を1回静注した。3日間のインキュベーション期間終了時に、フィルター円板および周囲CAM組織を取り出し、フィルター円板面積内の血管分枝点の数を計数することにより、新脈管形成を定量化した。典型的実験からのCAM組織の例を示す。
【図8】図8は、MabHUI77による新脈管形成実験の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。新脈管形成指数は、実験的処置胚からの分枝点の数−βFGFの不存在下でのCAMからの分枝点の数に等しい。
【図9】図9は、in vivoでの腫瘍増殖に及ぼす精製MabHUI77の全身投与の作用を示す。CS−1黒色腫細胞(5 x 106)を10日齢ヒヨコ胚のCAM上に接種した。24時間後、胚に100 ugの精製MabHUI77または対照を1回静注した。胚を、全体で7日間、インキュベートさせた。7日間のインキュベーション期間終了時に、その結果生じた腫瘍を切り取って、湿重量を測定した。写真は、MabHUI77を用いてまたは用いずに処置した胚から得られた代表的腫瘍を示す。
【図10】図10は、腫瘍の湿重量の定量を示す。棒グラフデータは、5〜12胚/条件からの腫瘍重量の平均±標準誤差を表す。
【0017】
【図11A】図11は、固相ELISAにおける細胞外マトリックス構成成分とのMabHUIV26反応性を実証する。微小滴定プレートを、各々25 ug/mlの濃度で、細胞外マトリックス構成成分で被覆した。A)MabHUIV26を1 ug/mlの濃度で付加し、1時間後、ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化IgGを付加した。プレートを被覆する前に15分間沸騰させることにより、変性I型コラーゲンおよびIV型コラーゲンを調製した。データはすべて、第二抗体の任意の非特異的結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。B)微小滴定プレートを、25 ug/mlで、三重らせんIV型コラーゲンで被覆した。濃縮(20x)HUVEC状態調節培地を、EDTA、アプロチニンまたはその両方の存在下または非存在下でウエルに付加し、1、6および24時間インキュベートさせた。次にプレートを洗浄し、遮断し、MabHUIV26または対照抗体とともにインキュベートした。データはすべて、非特異的第二抗体結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。図中では、以下の略語を用いる:Coll−I、I型コラーゲン;Coll−IV、IV型コラーゲン。
【図11B】図11は、固相ELISAにおける細胞外マトリックス構成成分とのMabHUIV26反応性を実証する。微小滴定プレートを、各々25 ug/mlの濃度で、細胞外マトリックス構成成分で被覆した。A)MabHUIV26を1 ug/mlの濃度で付加し、1時間後、ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化IgGを付加した。プレートを被覆する前に15分間沸騰させることにより、変性I型コラーゲンおよびIV型コラーゲンを調製した。データはすべて、第二抗体の任意の非特異的結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。B)微小滴定プレートを、25 ug/mlで、三重らせんIV型コラーゲンで被覆した。濃縮(20x)HUVEC状態調節培地を、EDTA、アプロチニンまたはその両方の存在下または非存在下でウエルに付加し、1、6および24時間インキュベートさせた。次にプレートを洗浄し、遮断し、MabHUIV26または対照抗体とともにインキュベートした。データはすべて、非特異的第二抗体結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。図中では、以下の略語を用いる:Coll−I、I型コラーゲン;Coll−IV、IV型コラーゲン。
【0018】
【図12】図12は、MabHUIV26が、ヒヨコ漿尿膜(CAM)内の血管周囲の変性IV型コラーゲンを同定することを実証する。bFGF誘導性および腫瘍誘導性新脈管形成からのCAMの凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性IV型コラーゲンの生成および局在化を調べた。凍結CAM組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、IV型コラーゲン分解酵素MMP−2またはVIII因子に向けられるMabHUIV26およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスFITC共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。上パネルは、脈管形成性血管周囲の変性IV型コラーゲンおよびMMP−2の同時局在化を示す。下パネルは、脈管形成性血管周囲の変性IV型コラーゲンおよびVIII因子の同時局在化を示す。左パネルは、bFGFにより刺激されたCAM組織を示す。右パネルは、その中で増殖するCS1黒色腫を伴うCAM組織を示す。上パネル中の赤色はMMP−2発現を示し、下パネル中では、VIII発現を示す。上および下の両方のパネル中の緑色は変性IV型コラーゲン発現を示す。黄色は同時局在化を示す。
【図13】図13は、MabHUIV26がヒト黒色腫関連血管周囲の変性IV型コラーゲンを同定することを示す。ヒト黒色腫生検の凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性IV型コラーゲンの生成および局在化を調べた。ヒト黒色腫からの凍結組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、血管の既知のマーカーであるVIII因子に向けられるMabHUIV26およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスFITC共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。赤色はVIII因子を示し、ヒト血管をマークする。緑色は、腫瘍関連脈管形成性血管と特異的に関連した変性IV型コラーゲンを示す。
【図14】図14は、ヒト内皮細胞接着に及ぼすMabHUIV26の作用を実証する。微小滴定プレート(96ウエル)を、ネイティブまたは変性IV型コラーゲンで被覆した。微小滴定プレートのウエルを37℃で1時間、PBS中の1%BSAでブロックした。次に、100 ug/mlの濃度で30分間、精製MabHUIV26またはアイソタイプ適合化対照抗体の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞を被覆化ウエルに付着させた。洗浄により非付着細胞を除去し、付着細胞をクリスタルバイオレットで染色した。次に、細胞を10%酢酸とともにインキュベートし、600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞接着を定量化した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【0019】
【図15】図15は、ヒト内皮細胞移動に及ぼすMabHUIV26の作用を示す。ウエル横断移動小室からの膜を、ネイティブまたは変性IV型コラーゲンで被覆した。全体で6時間、精製MabHUIV26またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/mL)の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞を被覆化膜の下側面に移動させた。膜の上側面に残存する細胞を除去し、膜の下側面に移動した細胞をクリスタルバイオレットで染色した。次に、膜を10%酢酸とともにインキュベートし、600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞移動を定量化した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【図16】図16は、in vivoでの新脈管形成に及ぼす精製MabHUIV26の全身投与の作用を実証する。bFGFをしみ込ませたフィルター円板を10日齢ヒヨコ胚の漿尿膜(CAM)上に載せた。24時間後、胚に20 ugのMabHUIV26または対照を1回静注した。3日間のインキュベーション期間終了時に、フィルター円板および周囲CAM組織を取り出し、フィルター円板面積内の血管分枝点の数を計数することにより、新脈管形成を定量した。図6は、典型的実験からのCAM組織の例を示す。
【図17】図17は、MabHUIV26による新脈管形成実験の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。新脈管形成指数は、実験的処置胚からの分枝点の数−bFGFの非存在下でのCAMからの分枝点の数に等しい。
【0020】
【図18】図18は、in vivoでの腫瘍増殖に及ぼす精製MabHUIV26の全身投与の作用を示す。CS−1黒色腫細胞(5 x 106)を10日齢ヒヨコ胚のCAM上に接種した。24時間後、胚に20 ugの精製MabHUIV26または対照を1回静注した。胚を、全体で7日間、インキュベートさせた。写真は、CAM組織内の対照またはHUIV26処置胚からの腫瘍の例を表す。
【図19】図19は、切り取った腫瘍のサイズ比較を示す。7日間のインキュベーション期間の終了時に、その結果生じた腫瘍を切り取って、全体サイズおよび湿重量に関して分析した。写真は、対照またはMabHUIV26処置胚から切り取った腫瘍のサイズの比較を表す。
【図20】図20は、腫瘍の湿重量の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件からの腫瘍重量の平均±標準誤差を表す。
【図21】図21は、SCIDマウス腫瘍モデル系で査定された腫瘍増殖に及ぼすMabHUIV26の作用を示す。SCIDマウスに2 x 106M21ヒト黒色腫細胞を皮下注射した。3日後、100 ugのMabHUIV26、アイソタイプ適合化対照抗体を毎日腹腔内注射するか、または処置を用いずに、24日処置を開始した。カリパス測定により腫瘍容積をモニタリングし、腫瘍容積を確定した。各群にはマウス5匹が含まれた。データは、各実験条件に関する腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。各実験条件に5または10匹のマウスが含まれる2つの別々の実験で、同様の結果を得た。
【0021】
【図22A】図22は、コラーゲンペプチドを含有するRGDとのMabHUIV26反応性の分析を示す。コラーゲンペプチド(100 ug/ml)を含有するRGD(A)または変性ヒトIV型コラーゲン(B)50 ulで、微小滴定プレートを被覆した。プレートをPBS中の1%BSAで遮断して、非特異的結合を阻止した。MabHUIV26(1.0 ug/ml、50ul/ウエル)を37℃で1時間、被覆プレートと結合させた。ペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、MabHUIV26結合を検出した。微小滴定プレート読取機を用いて光学濃度(O.D.)を測定することにより、免疫反応性を定量した。A)コラーゲンペプチドを含有するRGDに対する精製MabHUIV26の免疫反応性。B)コラーゲンペプチドまたは変性IV型コラーゲンを含有する可溶性RGDの存在下または非存在下での、固定化変性IV型コラーゲンに対するHUIV26結合の免疫反応性。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【図22B】図22は、コラーゲンペプチドを含有するRGDとのMabHUIV26反応性の分析を示す。コラーゲンペプチド(100 ug/ml)を含有するRGD(A)または変性ヒトIV型コラーゲン(B)50 ulで、微小滴定プレートを被覆した。プレートをPBS中の1%BSAで遮断して、非特異的結合を阻止した。MabHUIV26(1.0 ug/ml、50ul/ウエル)を37℃で1時間、被覆プレートと結合させた。ペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、MabHUIV26結合を検出した。微小滴定プレート読取機を用いて光学濃度(O.D.)を測定することにより、免疫反応性を定量した。A)コラーゲンペプチドを含有するRGDに対する精製MabHUIV26の免疫反応性。B)コラーゲンペプチドまたは変性IV型コラーゲンを含有する可溶性RGDの存在下または非存在下での、固定化変性IV型コラーゲンに対するHUIV26結合の免疫反応性。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【図23】図23は、変性I型コラーゲンにおけるヒト内皮索形成を示す。柔軟性ミリポア膜を、ネイティブまたは変性ヒトI型コラーゲンで被覆した。付加増殖因子または血清の非存在下で5時間、ヒト内皮細胞(HUVEC)をコラーゲンと相互作用させた。
【0022】
【図24】図24は、I型コラーゲンに関する内皮細胞生存の分析を示す。ネイティブまたはタンパク質分解化/変性ヒトI型コラーゲンで、微小滴定ウエルを被覆した。次に、付加増殖因子または血清の非存在下で5時間、HUVECをウエルに付着させた。5時間のインキュベーションの終了時に、付着細胞を取り出し、固定し、Apop Tagキットでアポトーシスに関して染色し、フローサイトメトリーで分析した。データは、アポトーシスを受け始めていたヒト内皮細胞のパーセンテージの平均±標準偏差を示した。データは、3回のウエルから得た。
【図25】図25は、内皮索形成に及ぼす潜在的I型コラーゲンドメインの作用を示す。ヒトI型コラーゲンアミノ酸配列および三次元構造の分析は、成熟三重らせんI型コラーゲン内で接近できない考え得る潜在的ドメインを明示した。ヒトI型コラーゲンの5つのこれらの考え得る潜在ドメインに対応して、合成ペプチドを生成した。これらの潜在ドメインを微小滴定ウエル上で固定し、前記と同様に内皮索形成検定を実行した。図に示したように、5つのコラーゲンペプチドはすべて、プレート化後1時間までに内皮細胞接着を支持した。しかしながら、ヒトコラーゲンペプチド−2は内皮索形成を促進し、18時間後の内皮細胞生存を増強することが示されたが、一方、他のペプチドは、18時間時点で、活性を、あるとしてもほとんど示さなかった。
【図26A】図26は、I型コラーゲンの潜在ドメインが別個のインテグリン受容体により内皮細胞を支持したことを示す。ヒトI型コラーゲンの潜在ドメインを表すペプチドを、微小滴定ウエル上に固定した。特定のインテグリンに向けられる機能遮断抗体の存在下または非存在下で、内皮細胞をペプチドに付着させた。ペプチドはすべて、種々のレベルに細胞接着を支持した。5つのペプチドすべてとの細胞接着は、αvβ3に向けられるMabLM609が細胞接着を遮断したため、インテグリンαvβ3の結紮によっていた。意外にも、ペプチド−2との細胞接着も、このペプチドとの細胞接着もβ1インテグリンに向けられるP4C10により遮断されたため、β1インテグリンによっていた。
【図26B】図26は、I型コラーゲンの潜在ドメインが別個のインテグリン受容体により内皮細胞を支持したことを示す。ヒトI型コラーゲンの潜在ドメインを表すペプチドを、微小滴定ウエル上に固定した。特定のインテグリンに向けられる機能遮断抗体の存在下または非存在下で、内皮細胞をペプチドに付着させた。ペプチドはすべて、種々のレベルに細胞接着を支持した。5つのペプチドすべてとの細胞接着は、αvβ3に向けられるMabLM609が細胞接着を遮断したため、インテグリンαvβ3の結紮によっていた。意外にも、ペプチド−2との細胞接着も、このペプチドとの細胞接着もβ1インテグリンに向けられるP4C10により遮断されたため、β1インテグリンによっていた。
【0023】
【図27】図27は、I型コラーゲンの潜在ドメインと反応性のMabの生成を実証する。I型コラーゲンの潜在ドメインを用いて、Mabヲ生成した。XL313と呼ばれるこれらのMabのうちの1つを、さらなる研究のために用いた。ヒトI型コラーゲンペプチドを微小滴定ウエル上で固定し、精製MabXL313結合を査定した。以下に示すように、MabXL313は、ヒトコラーゲンペプチド−2を特異的に認識した。さらに、MabXL313は、コラーゲンペプチド−4も認識したが、しかしながら、コラーゲンペプチド−4は成熟I型コラーゲン中には存在せず、XL313はその他の同様のI型コラーゲンペプチドと反応しなかった。
【図28】図28は、MabXL313が変性ヒトI型コラーゲンを特異的に認識することを示す。微小滴定ウエルを、ネイティブまたは変性ヒトI型またはIV型コラーゲンで被覆した。ネイティブまたは変性ヒトI型コラーゲンおよび変性IV型コラーゲンと結合するMabXL313の能力を、固相ELISAにより査定した。MabXL313は変性ヒトI型コラーゲンを特異的に認識するが、しかしネイティブI型コラーゲンは認識しなかった。さらに、MabXL313は、ネイティブまたは変性ヒトIV型コラーゲンと結合できなかった。
【図29】図29は、MabXL313がヒヨコにおける新脈管形成を阻害することを示す。bFGFを用いて、10日齢ヒヨコ胚のCAMで新脈管形成を誘導した。24時間後、胚に50 ugのMabXL313またはアイソタイプ適合化対照を1回注射した3日後、フィルター円板の面積内の血管分枝点の数を計数することにより、新脈管形成を定量した。A;典型的実験からのCAM組織の代表例。
【0024】
【図30】図30は、図29の新脈管形成実験の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。
【図31】図31は、ヒト繊維肉腫増殖に及ぼす精製MabXL313の全身投与の作用を示す。ヒト繊維肉腫細胞(5 x 106)を10日齢ヒヨコ胚のCAM上に接種した。24時間後、胚に50 ug/胚の濃度で精製MabXL313を1回静注した。7日後、腫瘍を切り取って、湿重量を確定した。腫瘍重量の定量。データは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。
【図32】図32は、I型コラーゲンのMMP切断部位における突然変異がin vivoで黒色腫増殖を抑制することを示す。I型コラーゲン内のMMP切断部位に突然変異を保有するトランスジェニックマウスを用いて、I型コラーゲンのタンパク質分解が腫瘍増殖および新脈管形成に一役を演じ得るか否かを確定した。Col alトランスジェニックマウスは、MMPの結合およびI型コラーゲンの切断を抑制する突然変異を有する。Col al B6トランスジェニックマウスまたは野生型対照B6マウスに、B16トランスジェニック黒色腫細胞を皮下注射した。腫瘍を11日間発達させて、カリパスを用いて腫瘍サイズをモニタリングした。以下で示すように、B16黒色腫細胞は、I型コラーゲンを容易にタンパク質分解し得るマウス内に大型増殖腫瘍を生成した。これに対比して、B16黒色腫細胞は、I型コラーゲンタンパク質分解が抑制されるB6 Col a1トランスジェニックマウスにおいては、腫瘍を生成する能力を、あるとしてもほとんど示さなかった。データは、5匹のマウス/条件からの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。
【図33A】図33は、MabXL313がB6マウスにおける腫瘍増殖を抑制することを示す。ルイス胚癌腫の増殖を、野生型B6マウスまたはCol a1トランスジェニックマウスで調べた。A;ルイス肺癌細胞を、野生型B6マウスまたはB6 col a1トランスジェニックマウスに皮下注射した。B;野生型B6またはcol a1 B6トランスジェニックマウス内のルイス肺癌腫増殖の比較。C;野生型B6対照マウスに類す肺癌細胞を注射した。24時間後、マウスを、MabXL313またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/注射)で全身処置した。腫瘍を11日間発達させて、カリパスにより腫瘍サイズをモニタリングした。データは、5匹のマウス/条件からの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。
【図33B】図33は、MabXL313がB6マウスにおける腫瘍増殖を抑制することを示す。ルイス胚癌腫の増殖を、野生型B6マウスまたはCol a1トランスジェニックマウスで調べた。A;ルイス肺癌細胞を、野生型B6マウスまたはB6 col a1トランスジェニックマウスに皮下注射した。B;野生型B6またはcol a1 B6トランスジェニックマウス内のルイス肺癌腫増殖の比較。C;野生型B6対照マウスに類す肺癌細胞を注射した。24時間後、マウスを、MabXL313またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/注射)で全身処置した。腫瘍を11日間発達させて、カリパスにより腫瘍サイズをモニタリングした。データは、5匹のマウス/条件からの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の説明
コラーゲン
本発明の方法は、あらゆる動物からのものを含めた多数のコラーゲン分子とともに用いるのに適している。一実施態様では、コラーゲンはヒトコラーゲンである。コラーゲンは、哺乳類、例えばラット、マウス、ブタ、ウサギなどから、あるいは鳥類、例えばニワトリからでもあり得る。一般に、コラーゲンは[Gly−Xaa−Xaa]n配列を含有する細胞外マトリックスタンパク質である。コラーゲンの種類は、当業界で周知である(例えば、Olsen, B.R.(1995)Curr. Opin. Cell Biol.7,720-727; Kucharz, E.J. The Collagens:Biochemistry and Pathophysiology, Springer-Verlag, Berlin, 1992; Kunn, K. in Structure and Function of Collagen Types, eds. R. Mayne and R.E. Burgeson, Academic Press, Orlando参照)。ヒトコラーゲンは、好ましいコラーゲンである。変性コラーゲンは、それがもはやネイティブ三重らせん形態を主として想定しないよう処理されたコラーゲンを指す。変性は、コラーゲンを加熱することにより成し遂げられ得る。一実施態様では、コラーゲンは、約100℃に約15分間加熱することによっても成し遂げられ得る。適切なカオトロープ剤としては、例えばグアニジニウム塩が挙げられる。コラーゲンの変性は、例えばタンパク質の吸光度、円二色性または蛍光のような光学的特性における分光学的変化により、核磁気共鳴により、ラマン分光法により、または任意のその他の適切な技法によりモニタリングし得る。変性コラーゲンは、変性全長コラーゲンを、ならびにコラーゲンの断片を指す。コラーゲンの断片は、ネイティブコラーゲン配列より短い任意のコラーゲン配列であり得る。実質的ネイティブ構造を有するコラーゲンの断片に関しては、変性は、ネイティブ全長コラーゲンに関するのと同様に実行され得る。断片は、それらが有意のネイティブ構造を有さないかまたはネイティブ三重らせん形態の有意のネイティブ構造を伴わない領域を保有するようなサイズのものであり得る。このような断片は、熱またはカオトロープ剤の使用を必要とせずに、全部または一部を変性される。変性コラーゲンという用語は、タンパク質分解化コラーゲンを包含する。タンパク質分解化コラーゲンは、タンパク質分解酵素の作用により断片化されたコラーゲンを指す。特に、タンパク質分解化コラーゲンは、メタロプロテイナーゼ、例えばMMP−1、MMP−2またはMMP−9でコラーゲンを処理することにより、あるいはコラーゲン分解活性を含有する細胞抽出物でコラーゲンを処理することにより調製され得るし、あるいは組織中の新生血管形成の部位に天然に生じるものである。
【0026】
コラーゲン内の潜在エピトープは、ネイティブコラーゲン内での認識に関して曝露されないが、しかし変性コラーゲンのアンタゴニストにより認識され得る配列である。潜在エピトープの配列は、アンタゴニストの特異性を確定することにより同定され得る。候補潜在エピトープは、例えばネイティブ三重らせんコラーゲンの三次元構造を調べることによっても同定され得る。曝露される溶媒でないか、または一部だけネイティブ構造中で曝露されるペプチド配列は、有力な潜在エピトープである。
【0027】
エピトープは、本発明のアンタゴニストにより認識される単数または複数のアミノ酸配列である。エピトープは、線状ペプチド配列であり得るか、または非連続アミノ酸配列で構成され得る。アンタゴニストは、1つ又はそれ以上の配列を認識し、したがってエピトープは1つより多くの別個のアミノ酸配列標的を限定し得る。アンタゴニストにより認識されるエピトープは、当業者に周知のペプチドマッピングおよび配列分析技法により確定され得る。
【0028】
アンタゴニスト
本発明のアンタゴニストは、変性コラーゲンと結合するが、しかしネイティブ形態のコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。「実質的低減化親和性」とは、変性コラーゲンに関する値の約3分の1の、さらに好ましくは約5分の1の、さらに好ましくは約10分の1以下の親和性である。同様に、「実質的に低い」とは、相対的親和性を示す場合に少なくとも約3倍の差を示す。アンタゴニストは、好ましくは、変性I、II、III、IVまたはV型コラーゲンおよびそれらの混合物のいずれかに特異的である。一実施態様では、アンタゴニストは変性I型コラーゲンと結合するが、しかし婦負tんぶI型コラーゲンならびに変性II、III、IVおよびV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。別の実施態様では、アンタゴニストは変性IV型コラーゲンと結合するが、しかしネイティブIV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。別の実施態様では、アンタゴニストは、変性I型、II型、III型、IV型およびV型コラーゲンと結合するが亜、しかしネイティブI型、II型、III型、IV型およびV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。
【0029】
見掛けの親和性は、酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)のような方法、または当業者によく知られた任意のその他の技法により確定され得る。真の親和性は、当業者に既知の技法により測定され得る。
【0030】
一実施態様では、アンタゴニストにより認識されるエピトープを含有するペプチドは、それ自体用いられ得る。一実施態様では、モノクローナル抗体HUI77、HUIV26およびXL313により限定されるエピトープは、抗脈管形成組成物としてそれ自体用いられ得る。
【0031】
本発明は、本発明の方法にしたがって用いるための候補変性コラーゲンアンタゴニストを同定するための検定方法も提供する。これらの検定方法では、候補アンタゴニストは、変性コラーゲンおよびネイティブコラーゲンの両方と結合するそれらの能力に関して評価され、さらに組織中の新脈管形成を抑制する場合のそれらの効力に関して評価され得る。
【0032】
ELISA
第一検定は、ELISAにより固相中の変性またはネイティブコラーゲンとのアンタゴニストの結合を測定する。本検定は、種々の種類のコラーゲンに関して有用であり、例えば、本検定は、I、II、III、IVおよびV型コラーゲンに関して、ならびにその他の細胞外マトリックス構成成分のために用いられ得る。
【0033】
本検定は、変性形態のコラーゲンに対する特異性を示すがネイティブ形態のコラーゲンに対しては特異性を示さない化合物を同定するためにも用いられ得る。特異性検定は、可能性のあるアンタゴニストが、変性およびネイティブコラーゲンを結合する能力に関して別々の検定小室で同時にスクリーニングされる平行ELISAを実行することにより実施される。
【0034】
変性コラーゲンのアンタゴニストは、本発明のアンタゴニストと結合に関して競合するそれらの能力によっても同定され得る。例えば、推定アンタゴニストは、結合検定、例えばELISAにおいて、既知のアンタゴニスト、例えばHUI77、HUIV26またはXL313の親和性に及ぼすそれらの作用をモニタリングすることによりスクリーニングされ得る。このようなアンタゴニストは、HUI77と同一の特異性を有し、同一潜在エピトープを認識すると思われる。アンタゴニストは、慣用的結合検定により推定アンタゴニストから選択されて、変性コラーゲンエピトープと結合するが既知のアンタゴニストとは結合しないものを確定し得る。
【0035】
アンタゴニストは、変性コラーゲンを含有する固体マトリックスと結合するそれらの能力によっても同定され得る。このような推定アンタゴニストは、溶液条件、例えば塩濃度、pH、温度などを変えた後に、収集される。推定アンタゴニストはさらに、適切な溶液条件下で、ネイティブコラーゲンが添付された固体マトリックスを通過するそれらの能力により同定される。
【0036】
本発明のアンタゴニストは、組織中の新脈管形成を変調するそれらの能力に関して検定され得る。当業者に既知の任意の適切な検定を用いて、このような作用をモニタリングし得る。いくつかのこのような技法は、本明細書中に記載されている。
【0037】
第二検定は、漿尿膜(CAM)中の新脈管形成を測定し、CAM検定と呼ばれる。CAM検定は、他の者により詳細に記載されており、さらに腫瘍組織の新脈管形成および新生血管形成の両方を測定するために用いられてきた(Ausprunk et al., Am. J. Pathol., 79:597-618(1975)およびOssonski et al., Cancer Res., 40:2300-2309(1980)参照)。
【0038】
CAM検定は、全組織の新生血管形成が起こり、そして実際のヒヨコ胚血管がCAM中にまたはCAM上で増殖する組織中に増殖しつつあるために、in vivo新脈管形成に関する十分認識された検定である。
【0039】
本明細書中で実証されるように、CAM検定は、新規の血管増殖の量および程度の両方に基づいた新生血管形成の抑制を説明する。さらに、腫瘍組織のようなCAM上に移植される任意の組織の増殖をモニタリングすることは容易である。最後に、本検定は、検定系中に毒性に関する内部対照が存在するために、特に有用である。ヒヨコ胚は任意の試験試薬に曝露され、したがって胚の健康は毒性の指標である。
【0040】
第三検定は、in vivoウサギ眼モデルにおける新脈管形成を測定し、ウサギ眼検定と呼ばれている。ウサギ眼検定は、他の者により詳細に記載されており、さらに、サリドマイドのような脈管形成阻害剤の存在下で新脈管形成および新生血管形成の両方を祖kていするために用いられてきた(D'Amato et al.(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. 91:4082-4085参照)。
【0041】
ウサギ眼検定は、角膜の縁から角膜中に増殖するウサギ血管により例示される新生血管形成が眼の天然透明角膜を通して容易に可視化されるため、in vivo新脈管形成に関する十分認識された検定モデルである。さらに、新生血管形成の刺激または抑制、あるいは新生血管形成の退行の程度および量は、長期間容易にモニタリングされ得る。
【0042】
最後に、ウサギは、任意の試験試薬に曝露され、したがってウサギの健康は試験試薬の毒性の指標である。
【0043】
第四検定は、キメラマウス:ヒトマウスモデルにおける新脈管形成を測定し、キメラマウス検定と呼ばれる。本検定は、他の者により詳細に記載されており、さらに、新脈管形成、新生血管形成および腫瘍組織の退行を測定するために本明細書中に記載されている(Yan, et al.(1993)J. Clin. Invest. 91:986-996参照)。
【0044】
キメラマウス検定は、移植皮膚片が組織学的に正常ヒト皮膚に非常によく似ており、実際のヒト血管が移植ヒト皮膚の表面で移植ヒト皮膚からヒト腫瘍組織に増殖中の場所で全組織の新生血管形成が生じているため、in vivo新脈管形成に関する有用な検定モデルである。ヒト移植片への新生血管形成の起源は、ヒト特異的内皮細胞マーカーを用いた新生血管系の免疫組織化学的染色により実証され得る。
【0045】
キメラマウス検定は、新生血管増殖の退行の量および程度の両方に基づいて新生血管形成の退行を実証する。さらに、腫瘍組織のような移植皮膚上に移植される任意の組織の増殖に及ぼす作用をモニタリングすることは容易である。最後に、本検定は、検定傾注に毒性に関する内部対照が存在するために有用である。キメラマウスは任意の試験試薬に曝露され、したがってマウスの健康は毒性の指標である。
【0046】
抗体
本発明は、一実施態様において、変性コラーゲンと結合するが、しかしネイティブコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する抗体の形態の変性コラーゲンアンタゴニストを記載する。抗体アンタゴニストは、新脈管形成を抑制し得る。本発明は、抗体を産生する細胞株、細胞株の生成方法、およびモノクローナル抗体の産生方法も記載する。
【0047】
本発明の抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。一実施態様では、用いられる抗体は、モノクローナルである。本発明のモノクローナル抗体は、単離変性コラーゲンと免疫反応するが、しかしネイティブ形態のコラーゲンとは実質的低減化親和性で免疫反応する抗体分子を包含する。一実施態様では、本発明の抗体は、変性I型コラーゲンに関する親和性より少なくとも約3倍、さらに好ましくは少なくとも約5倍、最も好ましくは少なくとも約10倍の親和性で変性I型を認識する。本発明の抗体は、好ましくは変性IV型コラーゲンも結合し得るし、ネイティブIV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。本発明の抗体は、I、II、III、IVおよびV型コラーゲンの各々とも結合し、ネイティブ形態の各々のコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。
【0048】
変性コラーゲンと優先的に結合する好ましいモノクローナル抗体としては、mAbHUI77、mAbHUIV26またはmAbXL313の免疫反応特徴を有するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0049】
本発明の抗体アンタゴニストは、当業者に既知の多数の方法により生成され得る。例えば、動物は変性コラーゲンまたはその断片で免疫感作され得る。このようにして生成される抗体は、変性タンパク質分解化コラーゲンと結合するそれらの能力に関して、およびネイティブ形態の同一コラーゲンに対する実質的低減化親和性に関して選択され得る。抗体は、例えば「差引き免疫感作」の方法により生成され得る(例えば、Brooks, P.C. et al.(1993)J. Cell. Biol. 122:1351-1359参照)。
【0050】
「抗体または抗体分子」という用語は、種々の文法的形態において、免疫グロブリン分子および/または免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、即ち抗体結合部位またはパラトープを含有する分子の集団を指す集合名詞として本明細書中で用いられる。
【0051】
「抗体結合部位」とは、抗原を特異的に結合する重および軽鎖可変部および超可変部から成る抗体分子の構造的部分である。
【0052】
本発明に用いるための抗体の例は、無傷免疫グロブリン分子、実質的無傷免疫グロブリン分子およびパラトープを含有する免疫グロブリン分子の一部、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびF(v)であり、抗体断片とも呼ばれる。
【0053】
別の好ましい実施態様では、本発明は、本発明のモノクローナル抗体に由来するFab断片を包含する切頭化免疫グロブリン分子を意図する。Fc受容体を欠くFab断片は可溶性であり、血清半減期に療法的利点を、そして可溶性Fab断片の使用様式に診断的利点をもたらす。可溶性Fab断片の調製は免疫学業界で一般的に既知であり、種々の方法により成し遂げられ得る。
【0054】
例えば、抗体のFabおよびF(ab’)2部分(断片)は、周知の方法により実質的に無傷の抗体上でそれぞれパパインおよび/プシンのタンパク質分解反応により調製される(例えば、米国特許第4,342,566号(Theofilopolous and Dixon)参照)。Fab’抗体部分も周知であり、(Fab’)サブ2部分から産生され、その後、メルカプトエタノールとの場合には2つの重鎖部分を連結するジスルフィド結合を還元し、そしてヨードアセトアミドのような試薬で結果的に生じるタンパク質メルカプタンをアルキル化する。無傷免疫グロブリン分子を含有する抗体が好ましく、本明細書中での説明のように利用される。
【0055】
「モノクローナル抗体」という語句は、その種々の文法形態で、特定のエピトープと免疫反応し得る1つの種のみの抗体結合部位を含有する抗体分子の集団を指す。したがってモノクローナル抗体は、各々が異なるエピトープに対して免疫特異的である複数の抗体結合部位を有する抗体分子、例えば二特異的モノクローナル抗体を含有する。
【0056】
モノクローナル抗体は、典型的には、1種類の抗体分子だけを分泌(産生)するハイブリドーマと呼ばれる単一細胞のクローン二より産生される抗体から成る。ハイブリドーマ細胞は、抗体産生細胞および骨髄腫またはその他の自己不朽性細胞株を融合することにより生成される。このような抗体の調製は、Kohler and Milstein, Nature 256:495-497(1975)(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)により最初に記載された。さらに別の方法は、Zola, Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques, CRC Press, Inc.(1987)により記載されている。そのようにして調製されるハイブリドーマ上清は、変性コラーゲンと免疫反応する抗体分子の存在に関してスクリーニングされ得る。
【0057】
要するに、モノクローナル抗体組成物が生成されるハイブリドーマを生成するために、骨髄腫またはその他の自己不朽性細胞株を、変性コラーゲンの供給源で超免疫感作された哺乳類の脾臓から得られるリンパ球と融合させる。
【0058】
ハイブリドーマを調製するために用いられる骨髄腫細胞株はリンパ球と同一種からであるのが好ましい。典型的には、129GIX.sup.+系統のマウスが好ましい哺乳類である。本発明に用いるための適切なマウス骨髄腫としては、アメリカ培養細胞コレクション(Rockville, Md.)からそれぞれCRL 1580およびCRL 1581の名称で入手可能なヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン感受性(HAT)細胞株P3X63-Ag8.653およびSp2/0-Ag14が挙げられる。
【0059】
脾臓細胞は、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)1500を用いて骨髄腫細胞と融合される。融合ハイブリッドは、選択的増殖培地、例えばHAT(ヒポキサンチンアミノプテリンチミジン)培地に対するそれらの感受性により選択される。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、実施例に記載される酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)を用いて同定される。
【0060】
本発明のモノクローナル抗体は、適切な特異性を有する抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する栄養培地を包含するモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することによっても産生され得る。培養は、ハイブリドーマが培地中に抗体分子を分泌するのに十分な条件下および期間中保持される。次に抗体含有培地が収集される。抗体分子は次に、周知の技法によりさらに単離される。
【0061】
これらの組成物の調製に有用な培地は、当業界で周知であり且つ市販されており、合成培地、近交系マウスなどを含む。合成培地の例は、4.5 g/Lグルコース、20nMグルタミンおよび20%ウシ胎仔血清を補足したダルベッコの最小必須培地(DMEM;Dulbecco et al., Virol. 8:396, 1959)である。近交系マウス系統の例は、Balb/cである。
【0062】
モノクローナル抗体、ハイブリドーマ細胞またはハイブリドーマ細胞培養のその他の産生方法も周知である。例えば、Sastry et al.(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728-5732;およびHuse et al.(1989)Science, 246:1275-1281により記載されているような免疫学的範囲からのモノクローナル抗体の単離方法を参照されたい。
【0063】
ハイブリドーマ細胞、ならびに本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を含有する培養も本発明により意図される。特に好ましいのは、モノクローナル抗体mAbHUI77、mAbHUIV26またはmAbXL313を分泌するハイブリドーマ細胞株である。
【0064】
本発明は、一実施態様において、MabHUI77、MabHUIV26またはMabXL313の免疫反応特徴を有するモノクローナル抗体を意図する。
【0065】
不適当な実験を伴わずに、モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体が予備選定標的分子と結合するのを妨げるか否かを確証することにより、あるモノクローナル抗体が本発明のモノクローナルと等価の特異性を有するか否かを確定することもできる。固相中に存在する場合の標的分子との結合に関する標準競合検定における本発明のモノクローナル抗体による結合の低減により示されるように、試験されるモノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と競合する場合には、2つのモノクローナル抗体は同一のまたは密接に関連するエピトープと結合すると思われる。
【0066】
モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するか否かを確定するためのさらに別の方法は、当該抗体のCDR領域のアミノ酸残基配列を決定することである。それらのCDR領域内に同一のまたは機能的に等価のアミノ酸残基配列を有する抗体分子は、同一結合特異性を有する。ポリペプチドのシーケンシング方法は、当業界で周知である。これは、別個のCDR領域を有する抗体が同一エピトープと結合し得ないことを示唆しない。
【0067】
抗体の免疫特異性、その標的分子結合能力および抗体がエピトープに対して示す付随的親和性は、抗体が免疫反応するエピトープにより限定される。エピトープ特異性は、少なくとも一部は、抗体の免疫グロブリンの重鎖の可変部のアミノ酸残基配列により、そして一部は軽鎖可変部アミノ酸残基配列により限定される。
【0068】
「〜の結合特異性を有する」という用語の使用は、等価モノクローナル抗体が同一または類似の免疫反応(結合)特徴を示し、予備選定標的エピトープとの結合に関して競合することを示す。
【0069】
ヒト化モノクローナル抗体は、特にそれらがヒトにおいて療法的に用いられ得る限りにおいて、ネズミモノクローナル抗体を上回る特定の利点を提供する。特に、ヒト抗体は、「外来」抗原ほど迅速に循環から掃去されず、外来抗原および外来抗体と同一方法で免疫系を活性化しない。「ヒト化」抗体の調製方法は、一般に当業界で周知であり、本発明の抗体に容易に適用され得る。
【0070】
したがって、本発明は、一実施態様において、抗原を結合する抗体の能力を実質的に妨げずに、ヒト免疫系の構成成分を導入するために移植することによりヒト化される本発明のモノクローナル抗体を意図する。
【0071】
本発明の抗体は、完全ヒト抗体、例えばHaard, H.J. et al.(1999)J. Biol. Chem. 274:18218-30にそしてWinter, G. et al.(1994)Annu. Rev. Immunol. 12:433-55に記載されているもののような、例えばヒト一本鎖または二本鎖抗体を表示する抗体ファージ表示ライブラリーからの選択により生成されるものであり得る。
【0072】
ポリペプチド
変性コラーゲンのアンタゴニストは、ポリペプチドまたはペプチドでもあり得る。ポリペプチドという用語は、連続アミノ酸残基のαアミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合により互いに連結される3またはそれ以上のアミノ酸の配列を指す。ペプチドという用語は、本明細書中で用いられる場合、一連の線状の、ポリペプチドの場合と同様に互いに連結された2またはそれ以上のものを指す。
【0073】
一実施態様では、本発明は、ポリペプチドの形態の変性コラーゲンアンタゴニストを意図する。変性コラーゲンのポリペプチドアンタゴニストは、変性コラーゲンと結合し得るが、しかしネイティブ形態のコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する任意のペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0074】
変性コラーゲンに関する選択性を有する好ましい変性コラーゲンアンタゴニストペプチドの同定は、実施例に記載されるELISAのような結合検定の典型的抑制において容易に同定され得る。
【0075】
ペプチドおよびポリペプチドアンタゴニストは、当業者に既知の多数の技法により生成され得る。例えば、二ハイブリッド系(例えば、Fields, S.(1989)Nature 340:245-6)は、コラーゲンペプチドと結合するライブラリーからタンパク質アンタゴニストを選択するための「餌」としてコラーゲンの断片を用い得る。考え得るアンタゴニストのライブラリーは、例えばcDNAライブラリーから得られ得る。別の実施態様では、考え得るアンタゴニストは、既知のコラーゲン結合タンパク質の変異体であり得る。このようなタンパク質は、無作為に突然変異原化されるか、あるいは遺伝子シャッフリングまたは配列分散性を生成するためのその他の利用可能な技法を施され得る。
【0076】
本発明のペプチドおよびポリペプチドアンタゴニストは、分子進化の技法によっても生成され得る。タンパク質のライブラリーは、突然変異誘発、遺伝子シャッフリングまたは分子構造分散性を生成するためのその他の利用可能な技法により生成され得る。多数の変異体を示すタンパク質プールは、例えばこのようなタンパク質プールを、変性コラーゲンが付着された固体マトリックス全体を通すことにより、変性コラーゲンと結合するそれらの能力に関して選択され得る。例えば、塩の勾配を用いた溶離は、変性コラーゲンに関する親和性を有する変異体の精製を提供する。ネガティブ選択工程も含まれ、それによりこのようなプールが、ネイティブコラーゲンが付着された固体マトリックス全体を通される。炉液は、ネイティブ形態のコラーゲンに対して親和性低減を示すプール内の変異体を含有する。
【0077】
本発明のペプチドおよびポリペプチドアンタゴニストは、ファージ表示によっても生成され得る。無作為化ペプチドまたはタンパク質は、ファージコートタンパク質との融合体のようなファジミド粒子の表面に発現され得る。一価ファージ表示の技法は、広範に利用可能である(例えば、Lowman H.B. et al.(1991)Biochemistry 30:10832-8参照)。無作為化ペプチドまたはタンパク質ライブラリーを発現するファージは、ネイティブコラーゲン分子が付着された固体マトリックスを用いて選別される。残りのファージは、ネイティブコラーゲンと結合しないか、または実質的低減化親和性でネイティブコラーゲンと結合する。次にファージは、変性コラーゲンが付着されていた固体マトリックスに対して選別される。結合ファージは、溶液条件の変更により、または、適切に意図された構築物に関しては、ファージコートタンパク質を無作為化ペプチドまたはタンパク質ライブラリーと連結するリンカー領域のタンパク質分解的切断により、単離され、固体マトリックスから分離される。単離ファージは、選定アンタゴニストの同一性を確定するためにシーケンシングされ得る。
【0078】
別の実施態様では、ポリペプチドは、ポリペプチドが変性コラーゲンのアンタゴニストであるが、しかしネイティブコラーゲンのアンタゴニストではない限りは、そのアミノ酸残基配列が本明細書中に示されるポリペプチドのあらゆる類似体、断片または化学的誘導体を含む。したがって、本発明のポリペプチドは、種々の変更、置換、挿入および欠失を施され得るが、この場合、このような変化は、その使用においてある種の利点を提供する。この点に関しては、本発明の変性コラーゲンアンタゴニストポリペプチドは、1つ又はそれ以上の変更が成され、そしてそれが本明細書中に記載したような1つ又はそれ以上の検定において変性コラーゲンアンタゴニストとして機能する能力を保持する詳述されるペプチドの配列と同一であるというよりむしろ、それに対応する。
【0079】
したがって、ポリペプチドは、ペプチド誘導体の種々の形態のいずれかで、アミド、タンパク質との複合体、環化ペプチド、重合ペプチド、類似体、断片、化学的修飾ペプチド、および誘導体を含むものであり得る。
【0080】
その他のアンタゴニスト
本発明のアンタゴニストは、天然物質、あるいは慣用的有機合成または組合せ有機合成により合成される化合物のような小型有機分子であり得る。化合物は、例えば、前記のカラム結合技法を用いることにより、変性コラーゲンと結合するそれらの能力に関して試験され得る。化合物は、同様のカラム結合技法により、ネイティブ形態のコラーゲンに対する低減化親和性に関しても選択される。
【0081】
本発明のアンタゴニストは、非ペプチド化合物でもあり得る。適切な非ペプチド化合物としては、例えばオリゴヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドは、本明細書中で用いられる場合、プリン、ピリミジンおよびその他の芳香族塩基を含有する任意のヘテロ高分子物質を指す。DNAおよびRNAオリゴヌクレオチドは、糖(例えば、2’アルキル化リボース)および主鎖修飾(例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド)を有するオリゴヌクレオチドであるので、本発明とともに用いるのに適している。オリゴヌクレオチドは、一般に見出されるプリンおよびピリミジン塩基、例えばアデニン、チミン、グアニン、シチジンおよびウリジン、ならびに複素環式環部分(例えば、7−デアザグアニン)内で、または環外位置で修飾される塩基を呈示し得る。オリゴヌクレオチドは、ポリアミド核酸などを含めた芳香族塩基も呈示し得る別個の構造を有するヘテロポリマーも包含する。
【0082】
本発明のオリゴヌクレオチドアンタゴニストは、当業者に既知の多数の方法により生成され得る。一実施態様では、多数の配列を含有するオリゴヌクレオチドのプールが生成される。プールは、例えば伸長工程でモノマーの混合物を用いる固相合成により生成され得る。オリゴヌクレオチドのプールは、変性コラーゲンまたはその断片が添付された固体マトリックス上にプールを含有する溶液を通すことにより分類される。変性コラーゲンと結合するプール内の配列は、固体マトリックス上に保持される。これらの配列は、異なる塩濃度またはpHの溶液で溶離される。選択された配列を、二次選択工程に付す。選択されたプールを、ネイティブコラーゲンが添付されていた二次固体マトリックス上を通す。カラムは、ネイティブコラーゲンと結合する配列を保持し、したがって変性コラーゲンに特異的な配列に関してプールを濃縮する。プールは増幅され、必要な場合には突然変異原化され、そしてプールが本発明のアンタゴニストの特徴を示すまで、工程が反復される。個々のアンタゴニストは、通常は前記の配列を宿主生物、例えば大腸菌中にクローニング後に、オリゴヌクレオチドプールの成員をシーケンシングすることにより同定され得る。
【0083】
疾患治療
本発明は一般的に、ネイティブコラーゲンでなく、変性コラーゲン中のある種のエピトープの結紮が新脈管形成を抑制する、という発見に関する。この発見は、新脈管形成が種々の疾患過程で演じる役割のために、重要である。新脈管形成を抑制することにより、疾患に介入し、症状を改善し、そしていくつかの場合には疾患を治癒することができる。
【0084】
新規の血管の増殖が疾患に関連した病理の原因であるかまたはそれに関与する場合、新脈管形成の抑制は疾患の有害作用を低減する。例としては、乾癬、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、再狭窄、黄斑変性等が挙げられる。新規血管の増殖が有害組織の増殖を支持するために必要とされる場合、新脈管形成の抑制は組織への血液供給を低減し、それにより血液供給要件を基礎にした組織塊の低減に寄与する。例としては、腫瘍が2〜3ミリ厚を超えて増殖するために、ならびに固形腫瘍転移の確立のために、新生血管形成が連続的要件である腫瘍の増殖が挙げられる。
【0085】
本発明の方法は、一部は、療法が新脈管形成に対して非常に選択的であるが、他の生物学的過程に対してはそうではないために、有効である。実施例に示されるように、新規の血管増殖のみが変性コラーゲンのアンタゴニストにより抑制され、したがって療法は成熟血管に悪影響を及ぼさない。これも実施例に示されるように、アンタゴニストは腫瘍中の血管形成部位と結合するが、しかし正常周囲組織とは結合しない。
【0086】
変性コラーゲン単独の結紮が新脈管形成を効率的に抑制し得るという発見は、おそらくは高特異性を有し、したがって相対的に低毒性である治療組成物の開発を可能にする。したがって、本発明は、1つ又はそれ以上の変性コラーゲンと結紮する能力を有する抗体ベースの新脈管形成の使用を開示するが、しかし変性コラーゲンとは特異的に結紮するが、ネイティブコラーゲンとはそうしないその他のアンタゴニストを設計し得る。本発明の発見の前には、新脈管形成ならびに新脈管形成に依存する任意の過程が、コラーゲン中の潜在エピトープを拮抗する試薬、即ちタンパク質分解化または変性コラーゲン中には見出されるが、ネイティブ形態の同一コラーゲン中には見出されないものの使用により、in vivoで抑制され得るということは知られていなかった。
【0087】
新脈管形成の抑制方法
本発明は、組織中の新脈管形成の抑制方法、ならびにそれにより、新生脈管形成に依存する組織中の事象を抑制するための方法を提供する。一般に、本方法は、新脈管形成抑制量の変性コラーゲンアンタゴニストを包含する組成物を組織に投与することを包含する。
【0088】
前記と同様に、新脈管形成は、「出芽」、脈管形成、または脈管伸長を含めた組織の新生血管形成を包含する種々の過程を含み、新脈管形成過程はすべて、血管中の細胞外マトリックスコラーゲンの崩壊を包含する。外傷性創傷治癒、黄体形成および胚形成を除いて、大多数の新脈管形成過程は疾患過程に関連しており、したがって本発明の治療法の使用は疾患に対して選択的である、と考えられる。
【0089】
新脈管形成が重要であると考えられ、血管由来疾患と呼ばれる種々の疾患が存在するが、それらの例としては、炎症性障害、例えば免疫性および非免疫性炎症、慢性関節リウマチおよび乾癬、脈管の不適切なまたは時機を失した浸潤、例えば糖尿病性網膜症、新生血管性緑内障、再狭窄、アテローム硬化性斑および骨粗鬆症における毛管増殖、癌関連障害、例えば固形腫瘍、固形腫瘍転移、血管繊維腫、水晶体後繊維増殖症、血管腫、カポジ肉腫、ならびに腫瘍増殖を支持するために新生血管形成を必要とするような癌が挙げられるが、これらに限定されない。その他の適切な腫瘍としては、黒色腫、癌腫、肉腫、繊維肉腫、神経膠腫および星状細胞腫が挙げられる。したがって、罹患組織における新脈管形成を抑制する方法は、疾患の症状を改善し、疾患によっては、疾患の治癒に寄与し得る。一実施態様では、本発明は組織における新脈管形成それ自体の抑制を意図する。組織中の新脈管形成の程度、したがって本発明の方法により達成される抑制の程度は、例えば免疫組織化学によりタンパク質分解かまたは変性コラーゲン−免疫陽性未熟および発生期の脈管構造を検出するための、実施例に記載されているような種々の方法により評価され得る。
【0090】
本明細書中に前記したように、種々の組織または組織化された組織から成る器官のいずれか、例えば皮膚、筋肉、腸、結合組織、関節、骨、ならびに脈管形成性刺激時に血管が浸潤し得るような組織は、疾患状態における新脈管形成を支持し得る。本明細書中で用いられる組織は、すべての体液、分泌物など、例えば血清、血液、脳脊髄液、血漿、尿、滑液、硝子体液も包含する。
【0091】
したがって、一関連実施態様では、治療される組織は炎症組織であり、抑制される新脈管形成は、炎症組織の新生血管形成が認められる炎症組織新脈管形成である。この種類においては、本方法は、関節炎組織における、例えば慢性関節リウマチ患者における、免疫または非免疫性炎症組織における、乾癬組織等における新脈管形成の抑制を意図する。
【0092】
その多数の実施態様において本発明において治療される患者は、望ましくはヒト患者であるが、しかし、本発明の原理は、本発明はすべての哺乳類に関して有効であり、これらは「患者」という用語に含まれるよう意図されるということを示すと理解されるべきである。この情況では、哺乳類は、新脈管形成に関連した疾患の治療が望ましいあらゆる哺乳類種、特に農業用および家畜哺乳類種を含むと理解される。このような患者は、例えばブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラバ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウスおよびラットであり得る。
【0093】
別の関連実施態様では、治療される組織は、糖尿病性網膜症、黄斑変性または新生血管性緑内障であり、そして抑制される新脈管形成は、網膜組織の新生血管形成が認められる網膜組織新脈管形成である。
【0094】
さらに別の関連実施態様では、治療される組織は、固形腫瘍、転移、皮膚癌、乳癌、血管腫または血管繊維腫、および同様の癌であり、抑制される新脈管形成は、腫瘍組織の新生血管形成が認められる腫瘍組織新脈管形成である。本発明の方法により治療可能な典型的固形腫瘍組織としては、肺、膵臓、乳房、結腸、喉頭、卵巣、カポジ肉腫および同様の組織が挙げられる。腫瘍組織新脈管形成およびその抑制の例は、実施例に記載される。
【0095】
腫瘍組織新脈管形成の抑制は、腫瘍増殖において新生血管形成が演じる重要な役割のために、特に好ましい実施態様である。腫瘍組織の新生血管形成の非存在下では、腫瘍組織は必要な栄養を獲得せず、増殖が遅く、さらなる増殖を終結し、退行し、結局は壊死性となって腫瘍は殺害される。
【0096】
言い換えれば、本発明は、本発明の方法にしたがって腫瘍新脈管形成を抑制することにより、腫瘍新生血管形成を抑制する方法を提供する。同様に、本発明は、脈管形成抑制方法を実施することによる腫瘍増殖の抑制方法を提供する。
【0097】
本方法は、転移の形成に対しても、(1)それらの形成は、転移癌細胞が原発性腫瘍を出ることができるよう原発性腫瘍の血管形成を必要とし、そして(2)二次部位におけるそれらの確立が転移の増殖を支持するための新生血管形成を必要とするために、特に有効である。
【0098】
関連実施態様では、本発明は、固形腫瘍に対して向けられる、そして転移の確立の制御のための慣用的化学療法のような他の療法を伴った本方法の実施を意図する。新脈管形成阻害剤の投与は、典型的には化学療法中またはその後に実行されるが、しかし、腫瘍組織への血管供給および栄養の準備により回復するために新脈管形成を誘導することにより腫瘍組織が毒性襲撃に応答中である化学療法のレジメン後に新脈管形成を抑制するのが好ましい。さらに、固形腫瘍が転移に対する予防処置として除去された外科手術後に新脈管形成抑制方法を施すのが好ましい。
【0099】
本発明が腫瘍新生血管形成の抑制に適用される限り、本方法は、腫瘍組織増殖の抑制に、腫瘍転移形成の抑制に、そして確立された腫瘍の退行に適用され得る。
【0100】
再狭窄は、血管形成術の成功を妨げる経皮経管的冠状動脈形成術の部位での平滑筋細胞(SMC)移動および増殖の過程である。再狭窄中の血管に関連したSMCの移動および増殖は、本発明の方法により抑制される新脈管形成の過程に関連がある。したがって、本発明は、血管系性術後の患者において本発明の方法により脈管形成関連過程を抑制することによる再狭窄の抑制も意図する。再狭窄の抑制のためには、変性コラーゲンアンタゴニストは、典型的には血管形成術後に、約2〜約28日間、さらに典型的には術後最初の約14日間、投与される。組織中の新脈管形成を抑制するための、したがって新脈管形成関連疾患の治療のための方法を実施するための本発明の方法は、新脈管形成が起きている、または起きるおそれがある組織を、変性またはタンパク質分解化コラーゲンとは結合し得るが、ネイティブ形態のコラーゲンとは結合しない治療的有効量の変性コラーゲンアンタゴニストと接触させることを含む。したがって、本方法は、本発明の変性コラーゲンアンタゴニストを含有する治療的有効量の生理学的耐容性組成物を患者に投与することを包含する。
【0101】
変性コラーゲンアンタゴニストの投与のための用量範囲は、本明細書中でさらに説明するようなアンタゴニストの形態およびその効力によっており、新脈管形成および新脈管形成により媒介される疾患症状が改善される所望の作用を生じるのに十分多い量である。用量は、高粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全等のような副作用を引き起こすほど多量ではない。一般に、用量は、患者の年齢、症状、性別および疾患の程度に伴って変わり、当業者により確定され得る。用量は、任意の合併症の事象において、個々の医師により調整され得る。
【0102】
治療的有効量は、治療中の組織において新脈管形成の測定可能な抑制を生じるのに十分な変性コラーゲンアンタゴニストの量であり、即ち、新脈管形成抑制量である。新脈管形成の抑制は、本明細書中に記載したような免疫組織化学により、または当業者に既知のその他の方法によりin-situに測定され得る。
【0103】
変性コラーゲンアンタゴニストの効力は、種々の手段により、例えばCAM検定における新脈管形成の抑制、in vivoウサギ眼検定、in vivoキメラマウス:ヒト検定等により測定され得る。
【0104】
モノクローナル抗体の形態での本発明の変性コラーゲンアンタゴニストの治療的有効量は、典型的には、生理学的耐容可能組成物中に投与される場合、約0.01マイクログラム(ug)/ミリリットル(mL)〜約100 ug/mL、好ましくは約1 ug/mL〜約5 ug/mL、そして通常は約5 ug/mLの血漿濃度を達成するのに十分な量である。言い換えれば、用量は、1日または数日間、1日1回またはそれ以上の回数投与で、約0.1 mg/kg〜約300 mg/kg、好ましくは約0.2 mg/kg〜約200 mg/kg、最も好ましくは約0.5 mg/kg〜約20 mg/kgで変わり得る。
【0105】
アンタゴニストがモノクローナル抗体の断片である場合、その量は、全抗体の質量と比較した断片の質量を基礎にして容易に調整され得る。好ましい血漿モル濃度は、約2マイクロモル(uM)〜約5ミリモル(mM)、好ましくは約100 uM〜1 mM抗体アンタゴニストである。
【0106】
ポリペプチドまたは小型分子の形態の本発明の変性コラーゲンアンタゴニストの治療的有効量は、典型的には、生理学的耐容可能組成物中に投与される場合、約0.1マイクログラム(ug)/ミリリットル(mL)〜約200 ug/mL、好ましくは約1 ug/mL〜約150 ug/mLの血漿濃度を達成するのに十分なポリペプチドの量である。約500 g/moleの質量を有するポリペプチドを基礎にして、好ましい血漿モル濃度は、約2マイクロモル(uM)〜約5ミリモル(mM)、好ましくは約100 uM〜1 mMポリペプチドアンタゴニストである。言い換えれば、体重当たりの用量は、1日または数日間、1日1回またはそれ以上の回数投与で、約0.1 mg/kg〜約300 mg/kg、好ましくは約0.2 mg/kg〜約200 mg/kgである。
【0107】
本発明のモノクローナル抗体またはポリペプチドは、注射により、または長時間の漸進的注入により、非経口的に投与され得る。治療される組織は典型的には全身投与により身体中でアクセスされ、したがって治療組成物の静脈内投与により最も高頻度に治療され、そして、標的化される組織が標的分子を含有する可能性がある送達手段が意図される。したがって、モノクローナル抗体、ポリペプチドおよびそれらの誘導体を含めたアンタゴニストは、静脈内に、腹腔内に、筋内に、皮下に、腔内に、経皮的に、局所的に、眼内に、経口的に、鼻腔内に投与され得るし、蠕動的手段により送達され得る。
【0108】
本発明のモノクローナル抗体またはポリペプチドを含有する治療組成物は、例えば単位投与量の注射により、慣用的には静脈内に投与される。「単位投与量」とは、本発明の治療組成物に関して用いられる場合、被験者のための単一用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な希釈剤、即ち担体またはビヒクルと共同して所望の治療効果を生じるよう算出された予定量の活性物質を含有する。
【0109】
実施例に示すような一実施態様では、変性コラーゲンアンタゴニストは1回用量で静脈内に投与される。
【0110】
組成物は、用量処方物に適合する方法で、治療的有効量で投与される。投与される量および時期は、治療される患者、活性成分を利用する患者の系の能力、および望ましい治療効果の程度によっている。投与に必要な活性成分の的確な量は、従事者の判断によっており、各個体に固有である。しかしながら、全身的適用のための適切な用量範囲は、本明細書中に開示されており、投与経路によっている。適切な投与レジメンも変動し得るが、しかし初期投与とその後の注射またはその他の投与による1時間またはそれ以上の間隔での反復投薬により典型化される。あるいは、in vivo療法のために特定化された範囲の血中濃度を保持するのに十分な連続静脈内注入が意図される。
【0111】
本発明の実施例により実証されるように、新脈管形成の抑制および腫瘍退行は、アンタゴニストとの初期接触後7日という早い時期に起こる。アンタゴニストへの付加的または長期曝露は、7日〜6週間、好ましくは約14〜28日が選択される。
【0112】
本発明は、本明細書中に記載した治療方法を実施するのに有用な治療組成物を意図する。本発明の治療組成物は、生理学的耐容可能担体を、活性成分としてその中に溶解または分散される本明細書中に記載したような変性コラーゲンアンタゴニストとともに含有する。好ましい実施態様では、治療用変性コラーゲンアンタゴニスト組成物は、治療目的で哺乳類またはヒト患者に投与される場合には、免疫原性でない。
【0113】
本明細書中で用いる場合、「製薬上許容可能な」、「生理学的に耐容可能な」という用語、ならびに文法上のその変型は、それらが組成物、担体、希釈剤および試薬を指す場合、相互交換可能的に用いられ、その物質が哺乳類にまたは哺乳類に関して投与可能であることを表す。
【0114】
その中に溶解または分散された活性成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当業界で十分理解されており、処方物を基礎にして限定される必要はない。典型的には、このような組成物は、液体の溶液または懸濁液として注射剤として調製されるが、しかしながら溶液または懸濁液に適し、使用前には液体である固体形態も調製され得る。調製物は、乳化もされ得る。
【0115】
活性成分は、製薬上許容可能で、活性成分と相溶性であり、本明細書中に記載した治療方法に用いるのに適した量である賦形剤と混合され得る。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそれらの組合せである。さらに、所望により、組成物は、活性成分の効力を増強する少量の補助物質、例えば湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤等を含有し得る。
【0116】
本発明の治療組成物は、その中の構成成分の製薬上許容可能な塩を含み得る。製薬上許容可能な塩としては、無機酸、塩酸またはリン酸、あるいは有機酸、例えば酢酸、酒石酸、マンデル酸等を用いて生成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基を用いて生成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて生成される塩も、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは鉄、ならびに有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導され得る。特に好ましいのは、TFAおよびHClの塩である。
【0117】
生理学的耐容可能担体は、当業界で周知である。液体担体の例は、活性成分の他に物質を含有しないか、または生理学的pH値での緩衝剤、例えばリン酸ナトリウム、生理学的塩またはその両方、例えばリン酸塩緩衝化食塩水を含有する滅菌水性溶液である。さらに別の水性担体は、1つより多い緩衝剤塩、ならびに塩化ナトリウムおよびカリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコールおよびその他の溶質を含有し得る。
【0118】
液体組成物は、水の他に、そして水を除いて、液相も含有し得る。このような付加的液相の例は、グリセリン、植物油、例えば綿実油、および水−油エマルションである。
【0119】
治療組成物は、典型的には総治療組成物の重量当たり少なくとも0.1重量%の量のアンタゴニストを含有するよう処方された、新脈管形成抑制量の本発明の変性コラーゲンアンタゴニストを含有する。したがって、例えば0.1重量%は、総組成物100グラム当たり0.1グラムの阻害剤である。
【0120】
抗体は、サイトトキシン、細胞傷害剤と共役され得る。このような共役体は、細胞溶解素または外毒素、例えばリシンA、ジフテリア毒素Aまたはシュードモナス外毒素およびそれらの断片を用いて作られ得る。細胞傷害剤は、毒性用量の放射能を脈管生成組織に局所的にデリバリーするために、同位元素で放射能標識され得る。
【0121】
本発明のアンタゴニストは、酵素を標的に送達するためにも用いられ得るが、この場合、酵素はプロドラッグを活性形態のドラッグに転換し得る−抗体特異的酵素活性化プロドラッグ療法(ADEPT)(例えば、Syrigos, K.N.(1999)Anticancer Res. 19:605-13参照)。要するに、本発明のアンタゴニストは、非毒性または不活性プロドラッグを毒性または活性薬に転換し得る酵素、例えばラクタマーゼ、プロテアーゼまたはエステラーゼと共役する。本発明のアンタゴニストは新脈管形成の部位に、特に腫瘍または転移の部位に局在するため、毒性薬は、 に向けられ得る。
【0122】
検出方法
本発明のアンタゴニストは、組織中の新脈管形成の検出にも適している。
【0123】
例えば、アンタゴニストが抗体である場合、アンタゴニストは組織をex vivoで染めるために免疫組織化学的技法に用いられ得る。免疫染色およびELISAのような免疫学的技法は、例えば、Receptor Binding Techniques, Methods in Molecular Biology, 106, ed. M. Keen, Human Press, 1999;Brook et al.(1998)Cell 92:391-400;Brooks et al.(1996)Cell 85:683-693およびBrooks et al.(1993)J. Cell. Biol. 122:1351-1359に記載されている。
【0124】
本発明のアンタゴニストは、標的組織と一旦結合すると、直接的にまたは間接的に検出され得る。直接検出は、検出可能標識、例えば蛍光色素、放射性タグ、常磁性重金属または診断染料を包含するアンタゴニストで実施され得る。
【0125】
あるいは、検出は、二次相互作用により生じ得る。例えば、アンタゴニストを認識する検出可能的標識化抗体は、アンタゴニストの位置を可視化するために用いられ得る。例えば、アンタゴニストがマウス起源のモノクローナル抗体である場合、適切に標識されるヤギ抗マウス抗体が用いられ得る。実施例は、例えばヤギ抗マウスペルオキシダーゼ共役化抗体の使用を説明する。当業者は、種々のアンタゴニストとともに用いるための適切な第二抗体を確定し得る。
【0126】
in vivo検出のためには、検出可能的標識化アンタゴニストを用いるのが好ましい。標識化アンタゴニストは、静脈内的に、筋内的に等で患者に投与される。患者内の検出に適した標識が特に好ましい。例えば、常磁性的標識化は、磁気共鳴造影により検出され得る。放射性タグ化アンタゴニストも検出され得る。
【実施例】
【0127】
実施例
実施例1
モノクローナル抗体HUI77
本実施例は、変性コラーゲン特異的モノクローナル抗体Mab HUI77の生成を説明する。
【0128】
差引き免疫感作(SI)と呼ばれる免疫学的技法により、Mab HUI77を生成し、単離した。差引き免疫感作法は、共通高抗原性エピトープの混合物内の稀少なおよび/またはあまり多くないエピトープに対する免疫応答を選択的に増強するために、マウス内の免疫応答を実験的に操作可能にする。要するに、BALB/cマウスにネイティブヒト三重らせんI型またはIV型コラーゲンを腹腔内注射した。三重らせんコラーゲンの注射後24および48時間目に、マウスに寛容剤であるシクロホスファミドを注射して、ネイティブ三重らせんI型およびIV型コラーゲン内の共通免疫優性エピトープに向けられる抗体を産生する活性化B細胞を殺害する。寛容化プロトコール後、次にマウスに熱変性ヒトI型またはIV型コラーゲンを注射して、熱変性後に曝露されるエピトープに対する免疫応答を刺激した。15分間沸騰させることにより、コラーゲンを変性させた。熱変性I型およびIV型コラーゲンの注射は、3週間毎に、全体で4〜5回の注射を施した。各マウスからの血清を、ネイティブ三重らせんおよび変性コラーゲンとの免疫反応性に関して試験した。三重らせんコラーゲンと比較した場合の変性コラーゲンに対する反応性に関して最高力価を実証するマウスを、ハイブリドーマの産生のために用いた。選択されたマウスからの脾臓細胞を、標準技法により骨髄腫細胞と融合させた。個々のハイブリドーマクローンを、三重らせんまたは変性I型およびIV型コラーゲンに対する抗体の産生に関して調べた。ネイティブ三重らせんI型およびIV型コラーゲンと比較した場合の変性I型またはIV型コラーゲンに対する選択的反応性を実証する抗体を産生したハイブリドーマクローンを選別した。標準技法により、Mabを精製した。
【0129】
図1に示すように、HUI77は、変性I型およびIV型コラーゲンを特異的に認識するが、しかしネイティブ三重らせんI型およびIV型コラーゲンとは、実質的低減化親和性で結合することが示された。特にHUI77は、ELISAにより測定した場合、ネイティブI型コラーゲンの場合より少なくとも約10倍より高い見掛けの反応性で変性I型コラーゲンと結合する。HUI77は、変性IV型コラーゲンとも、ネイティブIV型コラーゲンに関する値より約10倍高い親和性で結合する。さらに、Mab HUI77は、他のマトリックス構成成分、例えばラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチンまたはフィブリノーゲンとは実質的に結合せず、したがってI型およびIV型コラーゲン内の潜在エピトープとのその特異性を実証する。
【0130】
Mab HUI77は他の変性コラーゲンに対しても特異的であり、ネイティブ形態のこれらのコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。図2に示すように、HUI77は、変性III型、IV型および部位型コラーゲンとも、これらのコラーゲンのそれぞれのネイティブ形態より約7倍、約8倍および約10倍高い親和性で結合する。
【0131】
実施例2
固形腫瘍の検出
本実施例は、本発明のアンタゴニストが腫瘍性組織中の変性コラーゲンを検出するために用いられ得ることを示す。実施例1に記載されたモノクローナル抗体HUI77を用いて、正常および腫瘍性組織を間接的免疫染色した。図3に示すように、ヒト黒色腫生検の、ならびに全厚ヒト皮膚中で増殖させたM21黒色腫のMab HUI77を用いた間接免疫蛍光分析は、in vivoでヒト黒色腫と関連した変性形態のコラーゲンの生成を示す。腫瘍の非存在下で、正常組織中で、変性コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が検出されたことは重要であり、このことは、変性コラーゲンが固形ヒト腫瘍の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0132】
実施例3
ヒト腫瘍中の新脈管形成の検出
本実施例は、本発明のアンタゴニストがヒト腫瘍中の新脈管形成を検出するために用いられ得ることを実証する。変性コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が、腫瘍の非存在下で、正常血管周囲のMab HUI77を用いて検出されたことは重要であり、このことは、変性コラーゲンが血管形成性腫瘍関連血管の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0133】
実施例4
アンタゴニストは内皮細胞接着および移動を抑制する
本実施例は、本発明のある種のアンタゴニストが変性コラーゲンとのヒト内皮細胞接着を抑制し得ることを実証する。
【0134】
Mab HUI77は、対照抗体と比較して約40%、変性I型コラーゲンとのヒト内皮細胞接着を抑制する能力を示した。図5に要約したこれらの知見は、Mab HUI77が、変性I型コラーゲンとの内皮細胞接着に少なくとも部分的に関与するI型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。内皮細胞接着過程は腫瘍増殖および新脈管形成において一役を演じると考えられるため、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖に影響を及ぼし得る。
【0135】
Mab HUI77は、図6に示すように、対照抗体または無処置と比較して約80%、変性I型コラーゲンに関するヒト内皮細胞移動を抑制する能力も示した。これらの知見は、Mab HUI77が、変性I型コラーゲンに関する細胞移動に有意の役割を演じるI型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。細胞移動が腫瘍転移および新脈管形成において重要な役割を演じると考えられ、そして変性コラーゲンが悪性腫瘍細胞および脈管形成性血管と関連して検出される場合、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖および転移に有意の影響を及ぼし得る。
【0136】
実施例6
モノクローナル抗体HUI77による新脈管形成の抑制
本実施例は、本発明のアンタゴニストがヒヨコCAM検定において新脈管形成を有効に抑制することを示す。
【0137】
さらに、Mab HUI77の全身投与は、対照と比較した場合、βFGF誘導性新脈管形成を約90%抑制した(図7および8)。ヒヨコCAM検定における血管分枝点の数を計数することにより、脈管形成指数を測定した(図8)。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、正常静止血管で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るということは可能である。これらの知見は、Mab HUI77が有意の臨床用途を有し得る有効な抗脈管形成試薬であることを示す。
【0138】
実施例7
Mab HUI77による腫瘍増殖の抑制
本実施例は、本発明のアンタゴニストがin vivoで黒色腫における腫瘍増殖を有効に抑制することを示す。
【0139】
Mab HUI77の全身投与は、図9および10に示すように、対照と比較した場合、黒色腫腫瘍増殖を約53%抑制した。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、隣接組織で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るということは可能である。これらの知見は、Mab HUI77が有意の臨床用途を有し得る有効な抗腫瘍試薬であることを示す。
【0140】
実施例8
モノクローナル抗体HUIV26
実施例1に略記したような差引き免疫感作(SI)と呼ばれる免疫学的技法により、Mab HUIV26を生成した。図11に示すように、HUIV26は、変性IV型コラーゲンを特異的に認識するが、しかしネイティブ三重らせんI型またはIV型コラーゲンとは結合しないことが示された。さらにHUIV26は、他のマトリックス構成成分、例えばラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチンまたはフィブリノーゲンとは結合せず、したがってIV型コラーゲン内の潜在エピトープとのその特異性を実証する。
【0141】
図11Bに示すように、Mab HUIV26により認識されるIV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)は、HUVEC状態調節培地に曝露後に明示される。Mab HUIV26との反応性の量は、試験した24時間の期間中、増大した。これは、これらの婦負非細胞が、Mab HUIV26により認識されるIV型コラーゲン中の潜在部位を曝露し得るプロテアーゼを分泌するということを示す。IV型コラーゲン中の潜在部位を曝露するHUVECにより産生されるプロテアーゼは、キレート化剤、EDTAにより抑制される(図11B)。これは、メタロプロテアーゼがIV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)の曝露の開始に関与することを示唆する。図12に示すように、メタロプロテアーゼ、MMP−2は、IV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)と同時局在化して、CAM組織中の脈管形成部位でMab HUIV26と反応する。セリンプロテアーゼ阻害剤、アプロチニンは、HUVEC条件調節培地を用いて1時間インキュベーション後に、IV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)の曝露にほとんど影響を及ぼさなかった(図11B)。6および24時間時点では、アプロチニンの存在は、プロテアーゼ阻害剤の非存在下で観察された反応性の、それぞれ40および70%を遮断した。これは、後者時点(6および24時間)では、セリンプロテアーゼがIV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)の曝露を継続することを示唆する。
【0142】
実施例9
HUIV26による新脈管形成および腫瘍の検出
本実施例は、アンタゴニストが組織内の脈管形成過程を検出するために用いられ得ることを示す。
【0143】
図12に示すように、ヒヨコCAM組織の間接免疫蛍光分析は、in vivoでのβFGFまたは腫瘍誘導性脈管形成性血管と関連した変性IV型コラーゲンの生成および局在化を示す。bFGFまたは腫瘍の非存在下で、正常CAM組織中で、変性IV型コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が検出されたことは重要であり、このことは、変性IV型コラーゲンがin vivoでの脈管形成性血管の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0144】
ヒト黒色腫生検の、図13に示すような間接免疫蛍光分析は、in vivoでのヒト腫瘍関連血管周囲の変性IV型コラーゲンの生成および局在化を実証する。変性IV型コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が、腫瘍の非存在下で、正常血管周囲で検出されたことは重要であり、このことは、変性コラーゲンが血管形成性腫瘍関連血管の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0145】
実施例10
Mab HUIV26による細胞移動および接着の抑制
本実施例は、Mabが内皮細胞移動および接着を抑制し得ることを示す。
【0146】
Mab HUIV26は、対照抗体と比較して、変性IV型コラーゲンとのヒト内皮細胞接着を約70%抑制する能力を示した(図14)。これらの知見は、Mab HUIV26が、変性IV型コラーゲンとの内皮細胞接着に少なくとも部分的に関与するIV型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。IV型コラーゲンの組織分布、ならびに細胞接着過程は腫瘍増殖および新脈管形成において一役を演じるという事実にかんがみて、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖に有意の影響を及ぼし得る。
【0147】
Mab HUIV26は、対照抗体または無処置と比較して、変性IV型コラーゲンに関するヒト内皮細胞移動を70%抑制する能力を示した。これらの知見は、Mab HUIV26が、変性IV型コラーゲンに関する細胞移動に有意の役割を演じるIV型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。細胞移動が腫瘍転移および新脈管形成において重要な役割を演じると考えられ、そして変性コラーゲンが脈管形成性血管と関連して検出される場合、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖および転移に有意の影響を及ぼし得る。
【0148】
実施例11
HUIV26の全身投与による新脈管形成の抑制
Mab HUIV26の全身投与は、図16および17に示すように、対照と比較した場合、bFGF誘導性新脈管形成を約90%抑制した。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、正常静止血管で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るということは可能である。これらの知見は、Mab HUIV26が有意の臨床用途を有し得る有効な抗脈管形成試薬であることを示す。
【0149】
実施例12
腫瘍増殖の抑制
Mab HUIV26の全身投与は、対照と比較した場合、黒色腫腫瘍増殖を約80%抑制した(図18)。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、隣接組織で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るという可能性があるため、IC50値を確定するためにさらなる実験が目下進行中である。これらの知見は、Mab HUIV26が有意の臨床用途を有し得る有効な抗腫瘍試薬であることを示す。
【0150】
Mab HUIV26の全身投与は、SCIDマウスにおける黒色腫増殖を抑制した。処置の24日後に、Mab HUIV26処置マウスは、対照Mabで処置したマウスにおいて、または処置を施さなかったマウスにおいて観察された値の5%未満の平均腫瘍容積を有した。
【0151】
実施例13
HUIV26のエピトープ特異性
本実施例は、HUIV26が変性コラーゲン内のRGD配列と結合しないことを示す。
【0152】
図22に示すように、Mab HUIV26は、IV型コラーゲン中に見出されるペプチドを含有する固定化RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)のいずれかと反応できない(表1)。コラーゲン中に見出されるペプチドを含有する6つの異なる可溶性RGDは、Mab HUIV26による固定化変性IV型コラーゲンの認識を遮断できなかった(図22)。これらのデータは、Mab HUIV26がIV型コラーゲンに見出されるRGD配列を認識しないことを示唆する。
【0153】
表1.ヒトIV型コラーゲンのRGDドメイン
【0154】
【表1】
【0155】
実施例14
モノクローナル抗体XL313
その配列がヒトI型コラーゲンから得られる合成ペプチドで免疫感作することにより、Mab XL313を生成した。その配列は、I型コラーゲンの三次元構造内に埋もれるために、それを選択した。用いた11アミノ酸残基合成ペプチドの配列を以下に示す:
配列番号12:CysGlnGlyProArgGlyAspLysGlyGluCys
KGE(LysGlyGlu)配列は、XL313認識に非常に重要であることが判明した。Mab XL313は、配列番号1のペプチドと特異的に結合するが、しかしKGE配列が突然変異化されたペプチドに関しては、実質的低減化結合親和性を有する:
配列番号13: CysGlnGlyProArgGlyAspAlaAlaAlaCys
XL313と呼ばれるMabは、タンパク質分解化/変性I型コラーゲンと反応する高特異的抗体である。XL313がネイティブ三重らせん形態のI型コラーゲンと反応しないということは、重要である。図27に示すように、Mab XL313は、ヒトI型コラーゲンの潜在ドメインを認識するが、しかし他の同様のペプチドは認識しない。これらのデータは、Mab XL313が、新脈管形成および腫瘍増殖においてヒトコラーゲンペプチドにより限定される潜在コラーゲンドメインの役割を査定するための有用な試薬であり得る、ということを示唆する。図28に示すように、Mab XL313は、成熟三重らせん配座内で曝露されないヒトI型コラーゲン内の潜在ドメインを特異的に認識する。さらに、この潜在ドメインは、XL313がネイティブ三重らせんIV型コラーゲンと交差反応しないので、I型コラーゲンに特異的であると思われる。
【0156】
実施例15
Mab XL313は細胞接着および移動を抑制する
図23に示すように、5時間インキュベーションの終了時に、ネイティブI型コラーゲンに付着させたHUVECは集密的細胞単層を生成した。これに対比して、変性コラーゲンに付着したHUVECは、移動し始め、形態学的に再組織化されて、索様構造を形成した。これらのデータは、そのネイティブ三重らせん状態ではアクセスできないヒトI型コラーゲンの三次元構造内に隠された潜在ドメインが、内皮形態形成および索形成に一役を演じ得る、ということを示唆する。
【0157】
実施例16
変性コラーゲンはアポトーシスを抑制する
図24に示すように、タンパク質分解かコラーゲンとのヒト内皮細胞相互作用は、ネイティブI型コラーゲンまたは懸濁液中に保持された内皮細胞と比較して、アポトーシスを抑制する。これらのデータは、そのネイティブ三重らせん状態ではアクセスできないヒトI型コラーゲンの三次元構造内に隠された潜在ドメインが、内皮形態生存に一役を演じ得る、ということを示唆する。
【0158】
実施例17
XL313により認識されるエピトープ
図25に示すように、ヒトコラーゲン潜在ペプチド−2は、内皮細胞生存および索形成を支持すると思われるが、しかしヒトI型コラーゲン内の同様の潜在ペプチドは、あるとしてもほんの少ししか作用を示さない。これらのデータは、ペプチド−2により限定されるI型コラーゲンの潜在領域がin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖に重要な役割を演じ得る、ということを示唆する。
【0159】
実施例18
インテグリンの役割
図26に示すように、インテグリンαvβ3は、試験したI型コラーゲンのすべての潜在ペプチドドメインとの細胞相互作用の媒介に重要な役割を演じると思われる。興味深いことに、ペプチド−2もβ1インテグリン相互作用によっていた。これらのデータは、ペプチド−2が2つの別個のインテグリンにより細胞相互作用を支持することを示唆する。
【0160】
実施例19
Mab XL313は新脈管形成および腫瘍増殖を抑制する
図29および30に示すように、Mab XL313の全身投与は、対照と比較した場合、ヒヨコCAMモデルにおける新脈管形成を95%以上抑制した。これらのデータは、Mab XL313により限定されるI型コラーゲンの潜在ドメインが新脈管形成において重要な役割を演じることを示唆する。
【0161】
図31に示すように、Mab XL313は、おそらくは、in vivoでHT1080繊維肉腫腫瘍増殖を抑制する。これらの知見は、Mab XL313により限定される潜在ドメインがin vivoでの腫瘍増殖の調節において有意の役割を演じ得ることを示す。
【0162】
実施例20
コラーゲンのタンパク質分解は、腫瘍増殖にとって重要である
図32に示すように、突然変異がI型コラーゲン分子のMMP切断部位内に導入されたトランスジェニックマウスを、これらのマウスがそれらのI型コラーゲンをタンパク質分解する能力を損傷していたため、本実験に用いた。B16黒色腫細胞が、野生型対照マウスと比較した場合、I型コラーゲンタンパク質分解損傷を示すマウスにおいて腫瘍を形成する能力を、あるとしても極少ししか示さなかった、ということは重要である。これらのデータは、I型コラーゲンのタンパク質分解が、in vivoでの細胞増殖において重要な役割を演じるということを示唆する。
【0163】
B16黒色腫(メラノーマ)細胞を用いて実証されたように、ルイス肺癌細胞も、それらのI型コラーゲンをタンパク質分解する能力を損傷していたCol a1B6トランスジェニックマウスに注射した場合、腫瘍を形成する能力を、あるとしても極少ししか示さなかったが、しかしルイス肺癌細胞は、対照B6マウスにおいて大型で急速に増殖する腫瘍を形成する(図33)。タンパク質分解後に曝露されるだけであるI型コラーゲン内の潜在ドメインに特異的に向けられるMab
XL313は、野生型B6マウスにおけるルイス肺癌腫瘍増殖を約80%抑制した。本知見は、in vivoでのI型コラーゲンの潜在ドメインのタンパク質分解性曝露が腫瘍増殖に重要な役割を演じ得る、ということを示唆する。さらに、これらのデータは、Mab XL313がin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖の特異的阻害剤である、ということを示唆する。
【0164】
当明細書の本文中に引用された以下の出版物はすべて、それらの記載内容は、参照により本明細書中に含まれる
本発明の前記の記載内容は説明および解釈の目的で提示されたものであり、本発明は、本明細書中の厳密な方式または実施に限定されるものではない、と理解される。したがって、本発明の精神を逸脱しない限り当業者により変更が成され得るし、本発明の範囲は特許請求の範囲に関して解釈されるべきである、と理解される。
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、米国特許仮出願番号第60/114,877号(1999年1月6日提出)、第60/114,878号(1999年1月6日提出)、第60/152,496号(1999年9月2日提出)、第60/143,534号(1999年7月13日提出)(これらの記載内容はともに、参照により本明細書中に含まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府後援
本発明は、米国国立衛生研修所により契約番号R29CA74132-01下で連邦政府後援により成された。
【0003】
技術分野
本発明は、一般的に薬剤の分野に関し、ならびに特に、組織における新脈管形成を抑制し、変性またはタンパク質分解形態のコラーゲン、例えばI、II、III、IVおよびV型コラーゲンのアンタゴニストを用いて新脈管形成を検出するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
腫瘍増殖および転移は、毎年多数の人々に強い影響を及ぼしている。実際、優に600,000を超える癌の新規症例が、米国だけで毎年診断されている(Varner, J.A., Brooks, P.C., and Cheresh, D.A.(1995)Cell Adh. Commun. 3, 367-374)。固形腫瘍はすべて、最小サイズ以上に腫瘍を継続的に拡張するためには新規の血管増殖を要する、ということを多数の研究が示唆してきたことは重要である(Varner et al. 1995; Blood, C.H. and Zetter, B.R.(1990)Biochim. Biophys. Acta. 1032:89-118; Weidner N. et al.(1992)J. Natl. Cancer Inst. 84:1875-1887; Weidner, N. et al.(1991), N. Engl. J. Med. 324:1-7; Brooks, P.C. et al.(1995)J. Clin. Invest. 96:1815-1822; Brooks, P.C. et al.(1994)Cell 79:1157-1164, Brooks, P.C. et al.(1996).Cell 85, 683-693; Brooks, P.C. et al.(1998)Cell 92:391-400)。有意には、広範な種々のその他のヒト疾患は、黄斑変性および糖尿病性網膜症のような眼疾患を含めた非調節化血管発生により特性化される。さらに、多数の炎症性疾患も、非制御化新生血管形成、例えば関節炎および乾癬に関連がある(Varner et al.1995)。新脈管形成は、新しい血管が先在する血管から発生する生理学的過程である(Varner et al.1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al. 1992)。この複雑な過程は、増殖因子、細胞接着受容体、マトリックス分解酵素および細胞外マトリックス構成成分を含めた種々の分子の共働を必要とする(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992)。したがって、新脈管形成を遮断するよう意図された療法は、固形腫瘍の増殖を有意にもたらし得る。実際、腫瘍新生血管形成の遮断は、種々の動物モデルにおいて腫瘍増殖を有意に抑制し得るという明らかな証拠が提供されており、ヒト臨床データは、この主張を同様に支持し始めている(Varner, J.A., Brooks, P.C., and Cheresh, D.A.(1995)Cell Adh. Commun. 3, 367-374)。すべての固形腫瘍の増殖は、最小サイズ以上に腫瘍を継続的に拡張するためには新規の血管増殖を要する、ということを多数の研究が示唆してきたことは重要である(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992; Weidner et al.1991; Brooks et al.1995; Brooks et al.1994; Brooks et al.1997)。
【0005】
このために、多数の研究者が、新脈管形成を開始する増殖因子およびサイトカインに対するそれらの抗脈管形成アプローチに焦点を合わせた(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992; Weidner et al.1991; Brooks et al.1995; Brooks et al.1994; Brooks et al.1997)。しかしながら、新脈管形成を刺激する能力を有する多数の異なる増殖因子およびサイトカインが存在する。単一サイトカインを遮断することの療法的利点は、この重複性による限定利点のみを有し得る。しかしながら、その他の抗脈管形成標的には注意がほとんど向けられていなかった。新脈管形成は、新規の血管発生を促すミクロ環境を提供するためには、血管周囲の細胞外マトリックス(ECM)のタンパク質分解的改造を要する、ということを近年の研究は示唆している(Varner et al. 1995; Blood and Zetter 1990; Weidner et al.1992; Weidner et al.1991; Brooks et al.1995; Brooks et al.1994; Brooks et al.1997)。細胞外マトリックスタンパク質コラーゲンは、動物における総タンパク質質量の25%以上およびECM内の大多数のタンパク質を構成する。コラーゲンは、多数の形態で存在する繊維状多鎖三重らせんタンパク質である(Olsen, B.R.(1995)Curr. Opin. Cell Biol.7,720-727; Van der Rest, M.,and Garrone, R.(1991)FASEB 5,2814-2823)。少なくとも18の遺伝的に異なる種類のコラーゲンが同定されており、その多くが別個の組織分布および機能を有する(Olsen 1995; Van der Rest and Garrone 1991)。I型コラーゲンは、細胞外マトリックス中で最もたくさんあるコラーゲン型である。I型、III型、IV型およびV型コラーゲンは、in vivoでのすべての先在する血管と関連があることが示されている。I型およびIV型コラーゲンは、それぞれα1(I)およびα2(I)およびα1(IV)およびα2(IV)と呼ばれる主鎖から成る。成熟コラーゲン分子は、三重らせん中に撚り合わされた2つのα1鎖および1つのα2鎖から成る。in vivoでは、コラーゲンは普通は成熟三重らせん形態で見出される。成熟三重らせんコラーゲンのネイティブ三次元構造の変性は、新脈管形成を制御する潜在調節領域を露呈し得る。これらの潜在調節領域の拮抗作用は、新脈管形成の診断および抑制のための認識されていない手段を提供し得る。
【0006】
新脈管形成の抑制は腫瘍増殖を制限するための有用な療法であり得る、ということが提唱されている。新脈管形成の抑制は、(1)βFGF(繊維芽細胞増殖因子)のような「脈管形成分子」の放出の抑制、(2)例えば抗βFGF抗体の使用による脈管形成分子の中和、および(3)抗原性刺激に対する内皮細胞応答の抑制により提唱された。この後者の戦略は注目を受け、Folkman et al., Cancer Biology, 3:89-96(1992)は、新脈管形成を抑制するために用いられ得るコラゲナーゼ阻害剤、基底膜代謝回転阻害剤、脈管形成抑制ステロイド、真菌由来新脈管形成阻害剤、第4血小板因子、トロンボスポンジン、関節炎薬、例えばD−ペニシラミンおよび金チオマレート、ビタミンD、類似体、α−インターフェロン等を含めたいくつかの内皮細胞応答阻害剤を記載している。新脈管形成のさらに別の提唱阻害剤に関しては、Blood and Zetter 1990; Moses et al.(1990)Science 248:1408-1410; Ingber et al.(1988)Lab. Invest., 59:44-51;および米国特許第5,092,885号、第5,112,946号、第5,192,744号および第5,202,352号を参照されたい。前記の参考文献中に記載された新脈管形成の阻害剤はどれも、変性またはタンパク質分解化コラーゲンを標的にしていない。
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
本発明は、新脈管形成を抑制する変性またはタンパク質分解化コラーゲンのアンタゴニストを提供する。アンタゴニストは、変性またはタンパク質分解化コラーゲンと特異的に結合するが、しかしネイティブ形態の同一コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。アンタゴニストは、変性I型コラーゲン、変性II型コラーゲン、変性III型コラーゲン、変性IV型コラーゲンまたは変性V型コラーゲンを含めたあらゆる変性コラーゲンに、あるいはそれらの組合せに特異的であり得る。例えば、一実施態様では、アンタゴニストは、ネイティブ三重らせんI型コラーゲンと比較して変性I型コラーゲンに特異的であるが、しかし実質的低減化親和性でその他の変性コラーゲン、例えばIV型コラーゲンと結合する。別の実施態様では、アンタゴニストは変性IV型コラーゲンに特異的である。アンタゴニストは、変性I、II、III、IVおよびV型コラーゲンに対しても特異的である。
【0008】
アンタゴニストは、変性コラーゲンとは免疫反応するが、ネイティブ形態のコラーゲンとは実質的により低い程度に免疫反応する抗体またはその機能的断片であり得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。アンタゴニストは、変性コラーゲンに対する特異性を有するが、しかし天然(ネイティブ)形態のコラーゲンに対しては特異性を有さないポリペプチドまたはペプチドでもあり得る。アンタゴニストは、小型有機分子またはオリゴヌクレオチドのような非ペプチドでもあり得る。
【0009】
したがって本発明は、組織における新脈管形成を抑制するための方法であって、新脈管形成抑制量の変性/タンパク質分解コラーゲンのアンタゴニストを含有する組成物を組織に投与することを包含する方法を記載する。
【0010】
処置される組織は、新血管形成が生じている罹患組織のような新脈管形成の抑制が望ましいあらゆる組織であり得る。組織例としては、炎症組織、固形腫瘍、転移、再狭窄を受けている組織等が挙げられる。
【0011】
本発明は、本発明のアンタゴニストを組織と接触させることによる組織における新脈管形成の検出方法も提供する。このような方法は、ex vivoおよびin vivoの両方に用いるのに適している。
【0012】
本発明のアンタゴニストをex vivoまたはin vivoで組織と接触させることにより腫瘍組織、転移および組織中への腫瘍浸潤を検出するための方法も提供される。
【0013】
本発明は、単数または複数の変性コラーゲンと特異的に結合するが、しかしネイティブ形態の単数または複数のコラーゲンとは実質的低減親和性で結合し、新脈管形成を抑制し得るアンタゴニストのスクリーニング方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、固相ELISAにおける細胞外マトリックス構成成分とのMabHUI77反応性を説明する。微小滴定プレート(96ウエル)を、各々10マイクログラム(μg)/ミリリットル(mL)の濃度で、ネイティブI型およびIV型コラーゲン、変性I型およびIV型コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンを含む細胞外マトリックス構成成分で被覆した。微小滴定プレートのウエルを、37℃で1時間、PBS中の1%BSAで遮断した。MabHUI77を1 ug/mLの濃度でウエルに付加し、37℃で2時間インキュベートさせた。インキュベーション後、ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、免疫反応性を検出した。基質としてo−フェニレンジアミンを用いて490 nmでELISAプレート読取機により、免疫反応性を測定した。Coll−I(ネイティブ三重らせんI型コラーゲン)、変性Coll−I(変性I型コラーゲン)、Coll−IV(ネイティブ三重らせんIV型コラーゲン)、変性Coll−IV(変性IV型コラーゲン)、VN(ビトロネクチン)、FN(フィブロネクチン)、FB(フィブリノーゲン)。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。
【図2】図2は、遺伝的に異なる形態のコラーゲンとのMabHUI77反応性を実証する。微小滴定プレートを10μg/mlの濃度で異なる形態のコラーゲンで被覆した。微小滴定プレートのウエルを、37℃で1時間、PBS中の1%BSAで遮断した。ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、免疫反応性を検出した。490 nmでELISAプレート読取機を用いて光学濃度を確定することにより、免疫反応性を測定した。Coll−I;三重らせんI型コラーゲン、DenColl−I;変性I型コラーゲン、Coll−II;三重らせんII型コラーゲン、DenColl−II;変性II型コラーゲン、Coll−III;三重らせんIII型コラーゲン、DenColl−III;変性III型コラーゲン、Coll−IV;三重らせんIV型コラーゲン、DenColl−IV;変性IV型コラーゲン、Coll−V;三重らせんV型コラーゲン;DenColl−V;変性V型コラーゲン。 棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。
【図3】図3は、MabHUI77が、in vivoでヒト黒色腫周囲の変性コラーゲンを同定することを示す。ヒトマウスキメラモデルおよびヒト腫瘍生検の両方からのヒト黒色腫の凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性コラーゲンの生成および局在化を調べた。ヒト黒色腫からの凍結組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、ヒト黒色腫細胞上に発現されたαvインテグリンに向けられるMabHUI77およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスFITC共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。左パネルは、ヒト黒色腫生検を示す(630X)。右パネルは、全厚ヒト皮膚内で増殖したM21ヒト黒色腫細胞株を示す(200X)。赤色はαvインテグリンを示し、緑色は変性コラーゲン発現を示す。黄色はαvインテグリンおよび変性コラーゲンの同時局在化を示す。
【0015】
【図4】図4は、MabHUI77がヒト黒色腫関連血管周囲の変性コラーゲンを同定することを示す。ヒト黒色腫生検の凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性コラーゲンの生成および局在化を調べた。ヒト黒色腫からの凍結組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、血管の既知のマーカーであるVIII因子に向けられるMabHUI77およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスフルオレセインイソチオシアネート(FITC)共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。左パネルは、腫瘍血管の輪郭を描くVIII因子に関して染色した(赤色)ヒト黒色腫生検を示す。右パネルは、ヒト腫瘍関連血管周囲の変性コラーゲン(緑色)を示す。
【図5】図5は、ヒト内皮細胞接着に及ぼすMabHUI77の作用を実証する。微小滴定プレート(96ウエル)を、10μg/mLの濃度でネイティブまたは変性I型またはIV型コラーゲンで被覆した。微小滴定プレートのウエルを37℃で1時間、PBS中の1%BSAでブロックした。次に、50 ug/mLの濃度で30分間、精製MabHUI77(50μg/mL)またはアイソタイプ適合化対照抗体の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞(HUVEC)を被覆化ウエルに付着させた。洗浄により非付着細胞を除去し、付着細胞をクリスタルバイオレットで染色した。600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞接着を定量化した。棒グラフデータは、3回ウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。データは、対照の%として表される。
【図6】図6は、ヒト内皮細胞移動に及ぼすMabHUI77の作用を実証する。ウエル横断移動小室からの膜を、25μg/mLの濃度で変性I型またはIV型コラーゲンで被覆した。全体で6時間、精製MabHUI77またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/mL)の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞(HUVEC)を移動させた。膜の上側面に残存する細胞を除去し、膜の下側面に移動した細胞をクリスタルバイオレットで染色した。600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞移動を定量化した。棒グラフデータは、3回ウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。データは、対照の%として表される。
【0016】
【図7】図7は、in vivoでの新脈管形成に及ぼす精製MabHUI77の全身投与の作用を実証する。βFGFをしみ込ませたフィルター円板を10日齢ヒヨコ胚の漿尿膜(CAM)上に載せた。24時間後、胚に20 ugのMabHUI77または対照を1回静注した。3日間のインキュベーション期間終了時に、フィルター円板および周囲CAM組織を取り出し、フィルター円板面積内の血管分枝点の数を計数することにより、新脈管形成を定量化した。典型的実験からのCAM組織の例を示す。
【図8】図8は、MabHUI77による新脈管形成実験の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。新脈管形成指数は、実験的処置胚からの分枝点の数−βFGFの不存在下でのCAMからの分枝点の数に等しい。
【図9】図9は、in vivoでの腫瘍増殖に及ぼす精製MabHUI77の全身投与の作用を示す。CS−1黒色腫細胞(5 x 106)を10日齢ヒヨコ胚のCAM上に接種した。24時間後、胚に100 ugの精製MabHUI77または対照を1回静注した。胚を、全体で7日間、インキュベートさせた。7日間のインキュベーション期間終了時に、その結果生じた腫瘍を切り取って、湿重量を測定した。写真は、MabHUI77を用いてまたは用いずに処置した胚から得られた代表的腫瘍を示す。
【図10】図10は、腫瘍の湿重量の定量を示す。棒グラフデータは、5〜12胚/条件からの腫瘍重量の平均±標準誤差を表す。
【0017】
【図11A】図11は、固相ELISAにおける細胞外マトリックス構成成分とのMabHUIV26反応性を実証する。微小滴定プレートを、各々25 ug/mlの濃度で、細胞外マトリックス構成成分で被覆した。A)MabHUIV26を1 ug/mlの濃度で付加し、1時間後、ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化IgGを付加した。プレートを被覆する前に15分間沸騰させることにより、変性I型コラーゲンおよびIV型コラーゲンを調製した。データはすべて、第二抗体の任意の非特異的結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。B)微小滴定プレートを、25 ug/mlで、三重らせんIV型コラーゲンで被覆した。濃縮(20x)HUVEC状態調節培地を、EDTA、アプロチニンまたはその両方の存在下または非存在下でウエルに付加し、1、6および24時間インキュベートさせた。次にプレートを洗浄し、遮断し、MabHUIV26または対照抗体とともにインキュベートした。データはすべて、非特異的第二抗体結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。図中では、以下の略語を用いる:Coll−I、I型コラーゲン;Coll−IV、IV型コラーゲン。
【図11B】図11は、固相ELISAにおける細胞外マトリックス構成成分とのMabHUIV26反応性を実証する。微小滴定プレートを、各々25 ug/mlの濃度で、細胞外マトリックス構成成分で被覆した。A)MabHUIV26を1 ug/mlの濃度で付加し、1時間後、ヤギ抗マウスペルオキシダーゼ標識化IgGを付加した。プレートを被覆する前に15分間沸騰させることにより、変性I型コラーゲンおよびIV型コラーゲンを調製した。データはすべて、第二抗体の任意の非特異的結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。B)微小滴定プレートを、25 ug/mlで、三重らせんIV型コラーゲンで被覆した。濃縮(20x)HUVEC状態調節培地を、EDTA、アプロチニンまたはその両方の存在下または非存在下でウエルに付加し、1、6および24時間インキュベートさせた。次にプレートを洗浄し、遮断し、MabHUIV26または対照抗体とともにインキュベートした。データはすべて、非特異的第二抗体結合のために補正した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均光学濃度(O.D.)±標準偏差を表す。図中では、以下の略語を用いる:Coll−I、I型コラーゲン;Coll−IV、IV型コラーゲン。
【0018】
【図12】図12は、MabHUIV26が、ヒヨコ漿尿膜(CAM)内の血管周囲の変性IV型コラーゲンを同定することを実証する。bFGF誘導性および腫瘍誘導性新脈管形成からのCAMの凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性IV型コラーゲンの生成および局在化を調べた。凍結CAM組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、IV型コラーゲン分解酵素MMP−2またはVIII因子に向けられるMabHUIV26およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスFITC共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。上パネルは、脈管形成性血管周囲の変性IV型コラーゲンおよびMMP−2の同時局在化を示す。下パネルは、脈管形成性血管周囲の変性IV型コラーゲンおよびVIII因子の同時局在化を示す。左パネルは、bFGFにより刺激されたCAM組織を示す。右パネルは、その中で増殖するCS1黒色腫を伴うCAM組織を示す。上パネル中の赤色はMMP−2発現を示し、下パネル中では、VIII発現を示す。上および下の両方のパネル中の緑色は変性IV型コラーゲン発現を示す。黄色は同時局在化を示す。
【図13】図13は、MabHUIV26がヒト黒色腫関連血管周囲の変性IV型コラーゲンを同定することを示す。ヒト黒色腫生検の凍結組織切片に関する間接免疫蛍光法により、in vivoでの変性IV型コラーゲンの生成および局在化を調べた。ヒト黒色腫からの凍結組織切片をアセトン中で固定し、1%BSAで遮断して、血管の既知のマーカーであるVIII因子に向けられるMabHUIV26およびポリクローナル抗体で同時染色した。ヤギ抗マウスFITC共役化およびヤギ抗ウサギローダミン共役化第二抗体を用いたインキュベーションにより、抗体結合を検出した。赤色はVIII因子を示し、ヒト血管をマークする。緑色は、腫瘍関連脈管形成性血管と特異的に関連した変性IV型コラーゲンを示す。
【図14】図14は、ヒト内皮細胞接着に及ぼすMabHUIV26の作用を実証する。微小滴定プレート(96ウエル)を、ネイティブまたは変性IV型コラーゲンで被覆した。微小滴定プレートのウエルを37℃で1時間、PBS中の1%BSAでブロックした。次に、100 ug/mlの濃度で30分間、精製MabHUIV26またはアイソタイプ適合化対照抗体の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞を被覆化ウエルに付着させた。洗浄により非付着細胞を除去し、付着細胞をクリスタルバイオレットで染色した。次に、細胞を10%酢酸とともにインキュベートし、600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞接着を定量化した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【0019】
【図15】図15は、ヒト内皮細胞移動に及ぼすMabHUIV26の作用を示す。ウエル横断移動小室からの膜を、ネイティブまたは変性IV型コラーゲンで被覆した。全体で6時間、精製MabHUIV26またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/mL)の存在下または非存在下で、ヒト内皮細胞を被覆化膜の下側面に移動させた。膜の上側面に残存する細胞を除去し、膜の下側面に移動した細胞をクリスタルバイオレットで染色した。次に、膜を10%酢酸とともにインキュベートし、600 nmでの溶離染料の光学濃度(O.D.)を測定することにより、細胞移動を定量化した。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【図16】図16は、in vivoでの新脈管形成に及ぼす精製MabHUIV26の全身投与の作用を実証する。bFGFをしみ込ませたフィルター円板を10日齢ヒヨコ胚の漿尿膜(CAM)上に載せた。24時間後、胚に20 ugのMabHUIV26または対照を1回静注した。3日間のインキュベーション期間終了時に、フィルター円板および周囲CAM組織を取り出し、フィルター円板面積内の血管分枝点の数を計数することにより、新脈管形成を定量した。図6は、典型的実験からのCAM組織の例を示す。
【図17】図17は、MabHUIV26による新脈管形成実験の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。新脈管形成指数は、実験的処置胚からの分枝点の数−bFGFの非存在下でのCAMからの分枝点の数に等しい。
【0020】
【図18】図18は、in vivoでの腫瘍増殖に及ぼす精製MabHUIV26の全身投与の作用を示す。CS−1黒色腫細胞(5 x 106)を10日齢ヒヨコ胚のCAM上に接種した。24時間後、胚に20 ugの精製MabHUIV26または対照を1回静注した。胚を、全体で7日間、インキュベートさせた。写真は、CAM組織内の対照またはHUIV26処置胚からの腫瘍の例を表す。
【図19】図19は、切り取った腫瘍のサイズ比較を示す。7日間のインキュベーション期間の終了時に、その結果生じた腫瘍を切り取って、全体サイズおよび湿重量に関して分析した。写真は、対照またはMabHUIV26処置胚から切り取った腫瘍のサイズの比較を表す。
【図20】図20は、腫瘍の湿重量の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件からの腫瘍重量の平均±標準誤差を表す。
【図21】図21は、SCIDマウス腫瘍モデル系で査定された腫瘍増殖に及ぼすMabHUIV26の作用を示す。SCIDマウスに2 x 106M21ヒト黒色腫細胞を皮下注射した。3日後、100 ugのMabHUIV26、アイソタイプ適合化対照抗体を毎日腹腔内注射するか、または処置を用いずに、24日処置を開始した。カリパス測定により腫瘍容積をモニタリングし、腫瘍容積を確定した。各群にはマウス5匹が含まれた。データは、各実験条件に関する腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。各実験条件に5または10匹のマウスが含まれる2つの別々の実験で、同様の結果を得た。
【0021】
【図22A】図22は、コラーゲンペプチドを含有するRGDとのMabHUIV26反応性の分析を示す。コラーゲンペプチド(100 ug/ml)を含有するRGD(A)または変性ヒトIV型コラーゲン(B)50 ulで、微小滴定プレートを被覆した。プレートをPBS中の1%BSAで遮断して、非特異的結合を阻止した。MabHUIV26(1.0 ug/ml、50ul/ウエル)を37℃で1時間、被覆プレートと結合させた。ペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、MabHUIV26結合を検出した。微小滴定プレート読取機を用いて光学濃度(O.D.)を測定することにより、免疫反応性を定量した。A)コラーゲンペプチドを含有するRGDに対する精製MabHUIV26の免疫反応性。B)コラーゲンペプチドまたは変性IV型コラーゲンを含有する可溶性RGDの存在下または非存在下での、固定化変性IV型コラーゲンに対するHUIV26結合の免疫反応性。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【図22B】図22は、コラーゲンペプチドを含有するRGDとのMabHUIV26反応性の分析を示す。コラーゲンペプチド(100 ug/ml)を含有するRGD(A)または変性ヒトIV型コラーゲン(B)50 ulで、微小滴定プレートを被覆した。プレートをPBS中の1%BSAで遮断して、非特異的結合を阻止した。MabHUIV26(1.0 ug/ml、50ul/ウエル)を37℃で1時間、被覆プレートと結合させた。ペルオキシダーゼ標識化第二抗体を用いたインキュベーションにより、MabHUIV26結合を検出した。微小滴定プレート読取機を用いて光学濃度(O.D.)を測定することにより、免疫反応性を定量した。A)コラーゲンペプチドを含有するRGDに対する精製MabHUIV26の免疫反応性。B)コラーゲンペプチドまたは変性IV型コラーゲンを含有する可溶性RGDの存在下または非存在下での、固定化変性IV型コラーゲンに対するHUIV26結合の免疫反応性。棒グラフデータは、3回のウエルからの平均O.D.±標準偏差を表す。
【図23】図23は、変性I型コラーゲンにおけるヒト内皮索形成を示す。柔軟性ミリポア膜を、ネイティブまたは変性ヒトI型コラーゲンで被覆した。付加増殖因子または血清の非存在下で5時間、ヒト内皮細胞(HUVEC)をコラーゲンと相互作用させた。
【0022】
【図24】図24は、I型コラーゲンに関する内皮細胞生存の分析を示す。ネイティブまたはタンパク質分解化/変性ヒトI型コラーゲンで、微小滴定ウエルを被覆した。次に、付加増殖因子または血清の非存在下で5時間、HUVECをウエルに付着させた。5時間のインキュベーションの終了時に、付着細胞を取り出し、固定し、Apop Tagキットでアポトーシスに関して染色し、フローサイトメトリーで分析した。データは、アポトーシスを受け始めていたヒト内皮細胞のパーセンテージの平均±標準偏差を示した。データは、3回のウエルから得た。
【図25】図25は、内皮索形成に及ぼす潜在的I型コラーゲンドメインの作用を示す。ヒトI型コラーゲンアミノ酸配列および三次元構造の分析は、成熟三重らせんI型コラーゲン内で接近できない考え得る潜在的ドメインを明示した。ヒトI型コラーゲンの5つのこれらの考え得る潜在ドメインに対応して、合成ペプチドを生成した。これらの潜在ドメインを微小滴定ウエル上で固定し、前記と同様に内皮索形成検定を実行した。図に示したように、5つのコラーゲンペプチドはすべて、プレート化後1時間までに内皮細胞接着を支持した。しかしながら、ヒトコラーゲンペプチド−2は内皮索形成を促進し、18時間後の内皮細胞生存を増強することが示されたが、一方、他のペプチドは、18時間時点で、活性を、あるとしてもほとんど示さなかった。
【図26A】図26は、I型コラーゲンの潜在ドメインが別個のインテグリン受容体により内皮細胞を支持したことを示す。ヒトI型コラーゲンの潜在ドメインを表すペプチドを、微小滴定ウエル上に固定した。特定のインテグリンに向けられる機能遮断抗体の存在下または非存在下で、内皮細胞をペプチドに付着させた。ペプチドはすべて、種々のレベルに細胞接着を支持した。5つのペプチドすべてとの細胞接着は、αvβ3に向けられるMabLM609が細胞接着を遮断したため、インテグリンαvβ3の結紮によっていた。意外にも、ペプチド−2との細胞接着も、このペプチドとの細胞接着もβ1インテグリンに向けられるP4C10により遮断されたため、β1インテグリンによっていた。
【図26B】図26は、I型コラーゲンの潜在ドメインが別個のインテグリン受容体により内皮細胞を支持したことを示す。ヒトI型コラーゲンの潜在ドメインを表すペプチドを、微小滴定ウエル上に固定した。特定のインテグリンに向けられる機能遮断抗体の存在下または非存在下で、内皮細胞をペプチドに付着させた。ペプチドはすべて、種々のレベルに細胞接着を支持した。5つのペプチドすべてとの細胞接着は、αvβ3に向けられるMabLM609が細胞接着を遮断したため、インテグリンαvβ3の結紮によっていた。意外にも、ペプチド−2との細胞接着も、このペプチドとの細胞接着もβ1インテグリンに向けられるP4C10により遮断されたため、β1インテグリンによっていた。
【0023】
【図27】図27は、I型コラーゲンの潜在ドメインと反応性のMabの生成を実証する。I型コラーゲンの潜在ドメインを用いて、Mabヲ生成した。XL313と呼ばれるこれらのMabのうちの1つを、さらなる研究のために用いた。ヒトI型コラーゲンペプチドを微小滴定ウエル上で固定し、精製MabXL313結合を査定した。以下に示すように、MabXL313は、ヒトコラーゲンペプチド−2を特異的に認識した。さらに、MabXL313は、コラーゲンペプチド−4も認識したが、しかしながら、コラーゲンペプチド−4は成熟I型コラーゲン中には存在せず、XL313はその他の同様のI型コラーゲンペプチドと反応しなかった。
【図28】図28は、MabXL313が変性ヒトI型コラーゲンを特異的に認識することを示す。微小滴定ウエルを、ネイティブまたは変性ヒトI型またはIV型コラーゲンで被覆した。ネイティブまたは変性ヒトI型コラーゲンおよび変性IV型コラーゲンと結合するMabXL313の能力を、固相ELISAにより査定した。MabXL313は変性ヒトI型コラーゲンを特異的に認識するが、しかしネイティブI型コラーゲンは認識しなかった。さらに、MabXL313は、ネイティブまたは変性ヒトIV型コラーゲンと結合できなかった。
【図29】図29は、MabXL313がヒヨコにおける新脈管形成を阻害することを示す。bFGFを用いて、10日齢ヒヨコ胚のCAMで新脈管形成を誘導した。24時間後、胚に50 ugのMabXL313またはアイソタイプ適合化対照を1回注射した3日後、フィルター円板の面積内の血管分枝点の数を計数することにより、新脈管形成を定量した。A;典型的実験からのCAM組織の代表例。
【0024】
【図30】図30は、図29の新脈管形成実験の定量を示す。棒グラフデータは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。
【図31】図31は、ヒト繊維肉腫増殖に及ぼす精製MabXL313の全身投与の作用を示す。ヒト繊維肉腫細胞(5 x 106)を10日齢ヒヨコ胚のCAM上に接種した。24時間後、胚に50 ug/胚の濃度で精製MabXL313を1回静注した。7日後、腫瘍を切り取って、湿重量を確定した。腫瘍重量の定量。データは、5〜10胚/条件の平均±標準誤差を表す。
【図32】図32は、I型コラーゲンのMMP切断部位における突然変異がin vivoで黒色腫増殖を抑制することを示す。I型コラーゲン内のMMP切断部位に突然変異を保有するトランスジェニックマウスを用いて、I型コラーゲンのタンパク質分解が腫瘍増殖および新脈管形成に一役を演じ得るか否かを確定した。Col alトランスジェニックマウスは、MMPの結合およびI型コラーゲンの切断を抑制する突然変異を有する。Col al B6トランスジェニックマウスまたは野生型対照B6マウスに、B16トランスジェニック黒色腫細胞を皮下注射した。腫瘍を11日間発達させて、カリパスを用いて腫瘍サイズをモニタリングした。以下で示すように、B16黒色腫細胞は、I型コラーゲンを容易にタンパク質分解し得るマウス内に大型増殖腫瘍を生成した。これに対比して、B16黒色腫細胞は、I型コラーゲンタンパク質分解が抑制されるB6 Col a1トランスジェニックマウスにおいては、腫瘍を生成する能力を、あるとしてもほとんど示さなかった。データは、5匹のマウス/条件からの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。
【図33A】図33は、MabXL313がB6マウスにおける腫瘍増殖を抑制することを示す。ルイス胚癌腫の増殖を、野生型B6マウスまたはCol a1トランスジェニックマウスで調べた。A;ルイス肺癌細胞を、野生型B6マウスまたはB6 col a1トランスジェニックマウスに皮下注射した。B;野生型B6またはcol a1 B6トランスジェニックマウス内のルイス肺癌腫増殖の比較。C;野生型B6対照マウスに類す肺癌細胞を注射した。24時間後、マウスを、MabXL313またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/注射)で全身処置した。腫瘍を11日間発達させて、カリパスにより腫瘍サイズをモニタリングした。データは、5匹のマウス/条件からの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。
【図33B】図33は、MabXL313がB6マウスにおける腫瘍増殖を抑制することを示す。ルイス胚癌腫の増殖を、野生型B6マウスまたはCol a1トランスジェニックマウスで調べた。A;ルイス肺癌細胞を、野生型B6マウスまたはB6 col a1トランスジェニックマウスに皮下注射した。B;野生型B6またはcol a1 B6トランスジェニックマウス内のルイス肺癌腫増殖の比較。C;野生型B6対照マウスに類す肺癌細胞を注射した。24時間後、マウスを、MabXL313またはアイソタイプ適合化対照抗体(100μg/注射)で全身処置した。腫瘍を11日間発達させて、カリパスにより腫瘍サイズをモニタリングした。データは、5匹のマウス/条件からの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の説明
コラーゲン
本発明の方法は、あらゆる動物からのものを含めた多数のコラーゲン分子とともに用いるのに適している。一実施態様では、コラーゲンはヒトコラーゲンである。コラーゲンは、哺乳類、例えばラット、マウス、ブタ、ウサギなどから、あるいは鳥類、例えばニワトリからでもあり得る。一般に、コラーゲンは[Gly−Xaa−Xaa]n配列を含有する細胞外マトリックスタンパク質である。コラーゲンの種類は、当業界で周知である(例えば、Olsen, B.R.(1995)Curr. Opin. Cell Biol.7,720-727; Kucharz, E.J. The Collagens:Biochemistry and Pathophysiology, Springer-Verlag, Berlin, 1992; Kunn, K. in Structure and Function of Collagen Types, eds. R. Mayne and R.E. Burgeson, Academic Press, Orlando参照)。ヒトコラーゲンは、好ましいコラーゲンである。変性コラーゲンは、それがもはやネイティブ三重らせん形態を主として想定しないよう処理されたコラーゲンを指す。変性は、コラーゲンを加熱することにより成し遂げられ得る。一実施態様では、コラーゲンは、約100℃に約15分間加熱することによっても成し遂げられ得る。適切なカオトロープ剤としては、例えばグアニジニウム塩が挙げられる。コラーゲンの変性は、例えばタンパク質の吸光度、円二色性または蛍光のような光学的特性における分光学的変化により、核磁気共鳴により、ラマン分光法により、または任意のその他の適切な技法によりモニタリングし得る。変性コラーゲンは、変性全長コラーゲンを、ならびにコラーゲンの断片を指す。コラーゲンの断片は、ネイティブコラーゲン配列より短い任意のコラーゲン配列であり得る。実質的ネイティブ構造を有するコラーゲンの断片に関しては、変性は、ネイティブ全長コラーゲンに関するのと同様に実行され得る。断片は、それらが有意のネイティブ構造を有さないかまたはネイティブ三重らせん形態の有意のネイティブ構造を伴わない領域を保有するようなサイズのものであり得る。このような断片は、熱またはカオトロープ剤の使用を必要とせずに、全部または一部を変性される。変性コラーゲンという用語は、タンパク質分解化コラーゲンを包含する。タンパク質分解化コラーゲンは、タンパク質分解酵素の作用により断片化されたコラーゲンを指す。特に、タンパク質分解化コラーゲンは、メタロプロテイナーゼ、例えばMMP−1、MMP−2またはMMP−9でコラーゲンを処理することにより、あるいはコラーゲン分解活性を含有する細胞抽出物でコラーゲンを処理することにより調製され得るし、あるいは組織中の新生血管形成の部位に天然に生じるものである。
【0026】
コラーゲン内の潜在エピトープは、ネイティブコラーゲン内での認識に関して曝露されないが、しかし変性コラーゲンのアンタゴニストにより認識され得る配列である。潜在エピトープの配列は、アンタゴニストの特異性を確定することにより同定され得る。候補潜在エピトープは、例えばネイティブ三重らせんコラーゲンの三次元構造を調べることによっても同定され得る。曝露される溶媒でないか、または一部だけネイティブ構造中で曝露されるペプチド配列は、有力な潜在エピトープである。
【0027】
エピトープは、本発明のアンタゴニストにより認識される単数または複数のアミノ酸配列である。エピトープは、線状ペプチド配列であり得るか、または非連続アミノ酸配列で構成され得る。アンタゴニストは、1つ又はそれ以上の配列を認識し、したがってエピトープは1つより多くの別個のアミノ酸配列標的を限定し得る。アンタゴニストにより認識されるエピトープは、当業者に周知のペプチドマッピングおよび配列分析技法により確定され得る。
【0028】
アンタゴニスト
本発明のアンタゴニストは、変性コラーゲンと結合するが、しかしネイティブ形態のコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。「実質的低減化親和性」とは、変性コラーゲンに関する値の約3分の1の、さらに好ましくは約5分の1の、さらに好ましくは約10分の1以下の親和性である。同様に、「実質的に低い」とは、相対的親和性を示す場合に少なくとも約3倍の差を示す。アンタゴニストは、好ましくは、変性I、II、III、IVまたはV型コラーゲンおよびそれらの混合物のいずれかに特異的である。一実施態様では、アンタゴニストは変性I型コラーゲンと結合するが、しかし婦負tんぶI型コラーゲンならびに変性II、III、IVおよびV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。別の実施態様では、アンタゴニストは変性IV型コラーゲンと結合するが、しかしネイティブIV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。別の実施態様では、アンタゴニストは、変性I型、II型、III型、IV型およびV型コラーゲンと結合するが亜、しかしネイティブI型、II型、III型、IV型およびV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。
【0029】
見掛けの親和性は、酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)のような方法、または当業者によく知られた任意のその他の技法により確定され得る。真の親和性は、当業者に既知の技法により測定され得る。
【0030】
一実施態様では、アンタゴニストにより認識されるエピトープを含有するペプチドは、それ自体用いられ得る。一実施態様では、モノクローナル抗体HUI77、HUIV26およびXL313により限定されるエピトープは、抗脈管形成組成物としてそれ自体用いられ得る。
【0031】
本発明は、本発明の方法にしたがって用いるための候補変性コラーゲンアンタゴニストを同定するための検定方法も提供する。これらの検定方法では、候補アンタゴニストは、変性コラーゲンおよびネイティブコラーゲンの両方と結合するそれらの能力に関して評価され、さらに組織中の新脈管形成を抑制する場合のそれらの効力に関して評価され得る。
【0032】
ELISA
第一検定は、ELISAにより固相中の変性またはネイティブコラーゲンとのアンタゴニストの結合を測定する。本検定は、種々の種類のコラーゲンに関して有用であり、例えば、本検定は、I、II、III、IVおよびV型コラーゲンに関して、ならびにその他の細胞外マトリックス構成成分のために用いられ得る。
【0033】
本検定は、変性形態のコラーゲンに対する特異性を示すがネイティブ形態のコラーゲンに対しては特異性を示さない化合物を同定するためにも用いられ得る。特異性検定は、可能性のあるアンタゴニストが、変性およびネイティブコラーゲンを結合する能力に関して別々の検定小室で同時にスクリーニングされる平行ELISAを実行することにより実施される。
【0034】
変性コラーゲンのアンタゴニストは、本発明のアンタゴニストと結合に関して競合するそれらの能力によっても同定され得る。例えば、推定アンタゴニストは、結合検定、例えばELISAにおいて、既知のアンタゴニスト、例えばHUI77、HUIV26またはXL313の親和性に及ぼすそれらの作用をモニタリングすることによりスクリーニングされ得る。このようなアンタゴニストは、HUI77と同一の特異性を有し、同一潜在エピトープを認識すると思われる。アンタゴニストは、慣用的結合検定により推定アンタゴニストから選択されて、変性コラーゲンエピトープと結合するが既知のアンタゴニストとは結合しないものを確定し得る。
【0035】
アンタゴニストは、変性コラーゲンを含有する固体マトリックスと結合するそれらの能力によっても同定され得る。このような推定アンタゴニストは、溶液条件、例えば塩濃度、pH、温度などを変えた後に、収集される。推定アンタゴニストはさらに、適切な溶液条件下で、ネイティブコラーゲンが添付された固体マトリックスを通過するそれらの能力により同定される。
【0036】
本発明のアンタゴニストは、組織中の新脈管形成を変調するそれらの能力に関して検定され得る。当業者に既知の任意の適切な検定を用いて、このような作用をモニタリングし得る。いくつかのこのような技法は、本明細書中に記載されている。
【0037】
第二検定は、漿尿膜(CAM)中の新脈管形成を測定し、CAM検定と呼ばれる。CAM検定は、他の者により詳細に記載されており、さらに腫瘍組織の新脈管形成および新生血管形成の両方を測定するために用いられてきた(Ausprunk et al., Am. J. Pathol., 79:597-618(1975)およびOssonski et al., Cancer Res., 40:2300-2309(1980)参照)。
【0038】
CAM検定は、全組織の新生血管形成が起こり、そして実際のヒヨコ胚血管がCAM中にまたはCAM上で増殖する組織中に増殖しつつあるために、in vivo新脈管形成に関する十分認識された検定である。
【0039】
本明細書中で実証されるように、CAM検定は、新規の血管増殖の量および程度の両方に基づいた新生血管形成の抑制を説明する。さらに、腫瘍組織のようなCAM上に移植される任意の組織の増殖をモニタリングすることは容易である。最後に、本検定は、検定系中に毒性に関する内部対照が存在するために、特に有用である。ヒヨコ胚は任意の試験試薬に曝露され、したがって胚の健康は毒性の指標である。
【0040】
第三検定は、in vivoウサギ眼モデルにおける新脈管形成を測定し、ウサギ眼検定と呼ばれている。ウサギ眼検定は、他の者により詳細に記載されており、さらに、サリドマイドのような脈管形成阻害剤の存在下で新脈管形成および新生血管形成の両方を祖kていするために用いられてきた(D'Amato et al.(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. 91:4082-4085参照)。
【0041】
ウサギ眼検定は、角膜の縁から角膜中に増殖するウサギ血管により例示される新生血管形成が眼の天然透明角膜を通して容易に可視化されるため、in vivo新脈管形成に関する十分認識された検定モデルである。さらに、新生血管形成の刺激または抑制、あるいは新生血管形成の退行の程度および量は、長期間容易にモニタリングされ得る。
【0042】
最後に、ウサギは、任意の試験試薬に曝露され、したがってウサギの健康は試験試薬の毒性の指標である。
【0043】
第四検定は、キメラマウス:ヒトマウスモデルにおける新脈管形成を測定し、キメラマウス検定と呼ばれる。本検定は、他の者により詳細に記載されており、さらに、新脈管形成、新生血管形成および腫瘍組織の退行を測定するために本明細書中に記載されている(Yan, et al.(1993)J. Clin. Invest. 91:986-996参照)。
【0044】
キメラマウス検定は、移植皮膚片が組織学的に正常ヒト皮膚に非常によく似ており、実際のヒト血管が移植ヒト皮膚の表面で移植ヒト皮膚からヒト腫瘍組織に増殖中の場所で全組織の新生血管形成が生じているため、in vivo新脈管形成に関する有用な検定モデルである。ヒト移植片への新生血管形成の起源は、ヒト特異的内皮細胞マーカーを用いた新生血管系の免疫組織化学的染色により実証され得る。
【0045】
キメラマウス検定は、新生血管増殖の退行の量および程度の両方に基づいて新生血管形成の退行を実証する。さらに、腫瘍組織のような移植皮膚上に移植される任意の組織の増殖に及ぼす作用をモニタリングすることは容易である。最後に、本検定は、検定傾注に毒性に関する内部対照が存在するために有用である。キメラマウスは任意の試験試薬に曝露され、したがってマウスの健康は毒性の指標である。
【0046】
抗体
本発明は、一実施態様において、変性コラーゲンと結合するが、しかしネイティブコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する抗体の形態の変性コラーゲンアンタゴニストを記載する。抗体アンタゴニストは、新脈管形成を抑制し得る。本発明は、抗体を産生する細胞株、細胞株の生成方法、およびモノクローナル抗体の産生方法も記載する。
【0047】
本発明の抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。一実施態様では、用いられる抗体は、モノクローナルである。本発明のモノクローナル抗体は、単離変性コラーゲンと免疫反応するが、しかしネイティブ形態のコラーゲンとは実質的低減化親和性で免疫反応する抗体分子を包含する。一実施態様では、本発明の抗体は、変性I型コラーゲンに関する親和性より少なくとも約3倍、さらに好ましくは少なくとも約5倍、最も好ましくは少なくとも約10倍の親和性で変性I型を認識する。本発明の抗体は、好ましくは変性IV型コラーゲンも結合し得るし、ネイティブIV型コラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。本発明の抗体は、I、II、III、IVおよびV型コラーゲンの各々とも結合し、ネイティブ形態の各々のコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。
【0048】
変性コラーゲンと優先的に結合する好ましいモノクローナル抗体としては、mAbHUI77、mAbHUIV26またはmAbXL313の免疫反応特徴を有するモノクローナル抗体が挙げられる。
【0049】
本発明の抗体アンタゴニストは、当業者に既知の多数の方法により生成され得る。例えば、動物は変性コラーゲンまたはその断片で免疫感作され得る。このようにして生成される抗体は、変性タンパク質分解化コラーゲンと結合するそれらの能力に関して、およびネイティブ形態の同一コラーゲンに対する実質的低減化親和性に関して選択され得る。抗体は、例えば「差引き免疫感作」の方法により生成され得る(例えば、Brooks, P.C. et al.(1993)J. Cell. Biol. 122:1351-1359参照)。
【0050】
「抗体または抗体分子」という用語は、種々の文法的形態において、免疫グロブリン分子および/または免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、即ち抗体結合部位またはパラトープを含有する分子の集団を指す集合名詞として本明細書中で用いられる。
【0051】
「抗体結合部位」とは、抗原を特異的に結合する重および軽鎖可変部および超可変部から成る抗体分子の構造的部分である。
【0052】
本発明に用いるための抗体の例は、無傷免疫グロブリン分子、実質的無傷免疫グロブリン分子およびパラトープを含有する免疫グロブリン分子の一部、例えばFab、Fab’、F(ab’)2およびF(v)であり、抗体断片とも呼ばれる。
【0053】
別の好ましい実施態様では、本発明は、本発明のモノクローナル抗体に由来するFab断片を包含する切頭化免疫グロブリン分子を意図する。Fc受容体を欠くFab断片は可溶性であり、血清半減期に療法的利点を、そして可溶性Fab断片の使用様式に診断的利点をもたらす。可溶性Fab断片の調製は免疫学業界で一般的に既知であり、種々の方法により成し遂げられ得る。
【0054】
例えば、抗体のFabおよびF(ab’)2部分(断片)は、周知の方法により実質的に無傷の抗体上でそれぞれパパインおよび/プシンのタンパク質分解反応により調製される(例えば、米国特許第4,342,566号(Theofilopolous and Dixon)参照)。Fab’抗体部分も周知であり、(Fab’)サブ2部分から産生され、その後、メルカプトエタノールとの場合には2つの重鎖部分を連結するジスルフィド結合を還元し、そしてヨードアセトアミドのような試薬で結果的に生じるタンパク質メルカプタンをアルキル化する。無傷免疫グロブリン分子を含有する抗体が好ましく、本明細書中での説明のように利用される。
【0055】
「モノクローナル抗体」という語句は、その種々の文法形態で、特定のエピトープと免疫反応し得る1つの種のみの抗体結合部位を含有する抗体分子の集団を指す。したがってモノクローナル抗体は、各々が異なるエピトープに対して免疫特異的である複数の抗体結合部位を有する抗体分子、例えば二特異的モノクローナル抗体を含有する。
【0056】
モノクローナル抗体は、典型的には、1種類の抗体分子だけを分泌(産生)するハイブリドーマと呼ばれる単一細胞のクローン二より産生される抗体から成る。ハイブリドーマ細胞は、抗体産生細胞および骨髄腫またはその他の自己不朽性細胞株を融合することにより生成される。このような抗体の調製は、Kohler and Milstein, Nature 256:495-497(1975)(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)により最初に記載された。さらに別の方法は、Zola, Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques, CRC Press, Inc.(1987)により記載されている。そのようにして調製されるハイブリドーマ上清は、変性コラーゲンと免疫反応する抗体分子の存在に関してスクリーニングされ得る。
【0057】
要するに、モノクローナル抗体組成物が生成されるハイブリドーマを生成するために、骨髄腫またはその他の自己不朽性細胞株を、変性コラーゲンの供給源で超免疫感作された哺乳類の脾臓から得られるリンパ球と融合させる。
【0058】
ハイブリドーマを調製するために用いられる骨髄腫細胞株はリンパ球と同一種からであるのが好ましい。典型的には、129GIX.sup.+系統のマウスが好ましい哺乳類である。本発明に用いるための適切なマウス骨髄腫としては、アメリカ培養細胞コレクション(Rockville, Md.)からそれぞれCRL 1580およびCRL 1581の名称で入手可能なヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン感受性(HAT)細胞株P3X63-Ag8.653およびSp2/0-Ag14が挙げられる。
【0059】
脾臓細胞は、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)1500を用いて骨髄腫細胞と融合される。融合ハイブリッドは、選択的増殖培地、例えばHAT(ヒポキサンチンアミノプテリンチミジン)培地に対するそれらの感受性により選択される。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、実施例に記載される酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)を用いて同定される。
【0060】
本発明のモノクローナル抗体は、適切な特異性を有する抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する栄養培地を包含するモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することによっても産生され得る。培養は、ハイブリドーマが培地中に抗体分子を分泌するのに十分な条件下および期間中保持される。次に抗体含有培地が収集される。抗体分子は次に、周知の技法によりさらに単離される。
【0061】
これらの組成物の調製に有用な培地は、当業界で周知であり且つ市販されており、合成培地、近交系マウスなどを含む。合成培地の例は、4.5 g/Lグルコース、20nMグルタミンおよび20%ウシ胎仔血清を補足したダルベッコの最小必須培地(DMEM;Dulbecco et al., Virol. 8:396, 1959)である。近交系マウス系統の例は、Balb/cである。
【0062】
モノクローナル抗体、ハイブリドーマ細胞またはハイブリドーマ細胞培養のその他の産生方法も周知である。例えば、Sastry et al.(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728-5732;およびHuse et al.(1989)Science, 246:1275-1281により記載されているような免疫学的範囲からのモノクローナル抗体の単離方法を参照されたい。
【0063】
ハイブリドーマ細胞、ならびに本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を含有する培養も本発明により意図される。特に好ましいのは、モノクローナル抗体mAbHUI77、mAbHUIV26またはmAbXL313を分泌するハイブリドーマ細胞株である。
【0064】
本発明は、一実施態様において、MabHUI77、MabHUIV26またはMabXL313の免疫反応特徴を有するモノクローナル抗体を意図する。
【0065】
不適当な実験を伴わずに、モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体が予備選定標的分子と結合するのを妨げるか否かを確証することにより、あるモノクローナル抗体が本発明のモノクローナルと等価の特異性を有するか否かを確定することもできる。固相中に存在する場合の標的分子との結合に関する標準競合検定における本発明のモノクローナル抗体による結合の低減により示されるように、試験されるモノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と競合する場合には、2つのモノクローナル抗体は同一のまたは密接に関連するエピトープと結合すると思われる。
【0066】
モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するか否かを確定するためのさらに別の方法は、当該抗体のCDR領域のアミノ酸残基配列を決定することである。それらのCDR領域内に同一のまたは機能的に等価のアミノ酸残基配列を有する抗体分子は、同一結合特異性を有する。ポリペプチドのシーケンシング方法は、当業界で周知である。これは、別個のCDR領域を有する抗体が同一エピトープと結合し得ないことを示唆しない。
【0067】
抗体の免疫特異性、その標的分子結合能力および抗体がエピトープに対して示す付随的親和性は、抗体が免疫反応するエピトープにより限定される。エピトープ特異性は、少なくとも一部は、抗体の免疫グロブリンの重鎖の可変部のアミノ酸残基配列により、そして一部は軽鎖可変部アミノ酸残基配列により限定される。
【0068】
「〜の結合特異性を有する」という用語の使用は、等価モノクローナル抗体が同一または類似の免疫反応(結合)特徴を示し、予備選定標的エピトープとの結合に関して競合することを示す。
【0069】
ヒト化モノクローナル抗体は、特にそれらがヒトにおいて療法的に用いられ得る限りにおいて、ネズミモノクローナル抗体を上回る特定の利点を提供する。特に、ヒト抗体は、「外来」抗原ほど迅速に循環から掃去されず、外来抗原および外来抗体と同一方法で免疫系を活性化しない。「ヒト化」抗体の調製方法は、一般に当業界で周知であり、本発明の抗体に容易に適用され得る。
【0070】
したがって、本発明は、一実施態様において、抗原を結合する抗体の能力を実質的に妨げずに、ヒト免疫系の構成成分を導入するために移植することによりヒト化される本発明のモノクローナル抗体を意図する。
【0071】
本発明の抗体は、完全ヒト抗体、例えばHaard, H.J. et al.(1999)J. Biol. Chem. 274:18218-30にそしてWinter, G. et al.(1994)Annu. Rev. Immunol. 12:433-55に記載されているもののような、例えばヒト一本鎖または二本鎖抗体を表示する抗体ファージ表示ライブラリーからの選択により生成されるものであり得る。
【0072】
ポリペプチド
変性コラーゲンのアンタゴニストは、ポリペプチドまたはペプチドでもあり得る。ポリペプチドという用語は、連続アミノ酸残基のαアミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合により互いに連結される3またはそれ以上のアミノ酸の配列を指す。ペプチドという用語は、本明細書中で用いられる場合、一連の線状の、ポリペプチドの場合と同様に互いに連結された2またはそれ以上のものを指す。
【0073】
一実施態様では、本発明は、ポリペプチドの形態の変性コラーゲンアンタゴニストを意図する。変性コラーゲンのポリペプチドアンタゴニストは、変性コラーゲンと結合し得るが、しかしネイティブ形態のコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する任意のペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0074】
変性コラーゲンに関する選択性を有する好ましい変性コラーゲンアンタゴニストペプチドの同定は、実施例に記載されるELISAのような結合検定の典型的抑制において容易に同定され得る。
【0075】
ペプチドおよびポリペプチドアンタゴニストは、当業者に既知の多数の技法により生成され得る。例えば、二ハイブリッド系(例えば、Fields, S.(1989)Nature 340:245-6)は、コラーゲンペプチドと結合するライブラリーからタンパク質アンタゴニストを選択するための「餌」としてコラーゲンの断片を用い得る。考え得るアンタゴニストのライブラリーは、例えばcDNAライブラリーから得られ得る。別の実施態様では、考え得るアンタゴニストは、既知のコラーゲン結合タンパク質の変異体であり得る。このようなタンパク質は、無作為に突然変異原化されるか、あるいは遺伝子シャッフリングまたは配列分散性を生成するためのその他の利用可能な技法を施され得る。
【0076】
本発明のペプチドおよびポリペプチドアンタゴニストは、分子進化の技法によっても生成され得る。タンパク質のライブラリーは、突然変異誘発、遺伝子シャッフリングまたは分子構造分散性を生成するためのその他の利用可能な技法により生成され得る。多数の変異体を示すタンパク質プールは、例えばこのようなタンパク質プールを、変性コラーゲンが付着された固体マトリックス全体を通すことにより、変性コラーゲンと結合するそれらの能力に関して選択され得る。例えば、塩の勾配を用いた溶離は、変性コラーゲンに関する親和性を有する変異体の精製を提供する。ネガティブ選択工程も含まれ、それによりこのようなプールが、ネイティブコラーゲンが付着された固体マトリックス全体を通される。炉液は、ネイティブ形態のコラーゲンに対して親和性低減を示すプール内の変異体を含有する。
【0077】
本発明のペプチドおよびポリペプチドアンタゴニストは、ファージ表示によっても生成され得る。無作為化ペプチドまたはタンパク質は、ファージコートタンパク質との融合体のようなファジミド粒子の表面に発現され得る。一価ファージ表示の技法は、広範に利用可能である(例えば、Lowman H.B. et al.(1991)Biochemistry 30:10832-8参照)。無作為化ペプチドまたはタンパク質ライブラリーを発現するファージは、ネイティブコラーゲン分子が付着された固体マトリックスを用いて選別される。残りのファージは、ネイティブコラーゲンと結合しないか、または実質的低減化親和性でネイティブコラーゲンと結合する。次にファージは、変性コラーゲンが付着されていた固体マトリックスに対して選別される。結合ファージは、溶液条件の変更により、または、適切に意図された構築物に関しては、ファージコートタンパク質を無作為化ペプチドまたはタンパク質ライブラリーと連結するリンカー領域のタンパク質分解的切断により、単離され、固体マトリックスから分離される。単離ファージは、選定アンタゴニストの同一性を確定するためにシーケンシングされ得る。
【0078】
別の実施態様では、ポリペプチドは、ポリペプチドが変性コラーゲンのアンタゴニストであるが、しかしネイティブコラーゲンのアンタゴニストではない限りは、そのアミノ酸残基配列が本明細書中に示されるポリペプチドのあらゆる類似体、断片または化学的誘導体を含む。したがって、本発明のポリペプチドは、種々の変更、置換、挿入および欠失を施され得るが、この場合、このような変化は、その使用においてある種の利点を提供する。この点に関しては、本発明の変性コラーゲンアンタゴニストポリペプチドは、1つ又はそれ以上の変更が成され、そしてそれが本明細書中に記載したような1つ又はそれ以上の検定において変性コラーゲンアンタゴニストとして機能する能力を保持する詳述されるペプチドの配列と同一であるというよりむしろ、それに対応する。
【0079】
したがって、ポリペプチドは、ペプチド誘導体の種々の形態のいずれかで、アミド、タンパク質との複合体、環化ペプチド、重合ペプチド、類似体、断片、化学的修飾ペプチド、および誘導体を含むものであり得る。
【0080】
その他のアンタゴニスト
本発明のアンタゴニストは、天然物質、あるいは慣用的有機合成または組合せ有機合成により合成される化合物のような小型有機分子であり得る。化合物は、例えば、前記のカラム結合技法を用いることにより、変性コラーゲンと結合するそれらの能力に関して試験され得る。化合物は、同様のカラム結合技法により、ネイティブ形態のコラーゲンに対する低減化親和性に関しても選択される。
【0081】
本発明のアンタゴニストは、非ペプチド化合物でもあり得る。適切な非ペプチド化合物としては、例えばオリゴヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドは、本明細書中で用いられる場合、プリン、ピリミジンおよびその他の芳香族塩基を含有する任意のヘテロ高分子物質を指す。DNAおよびRNAオリゴヌクレオチドは、糖(例えば、2’アルキル化リボース)および主鎖修飾(例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド)を有するオリゴヌクレオチドであるので、本発明とともに用いるのに適している。オリゴヌクレオチドは、一般に見出されるプリンおよびピリミジン塩基、例えばアデニン、チミン、グアニン、シチジンおよびウリジン、ならびに複素環式環部分(例えば、7−デアザグアニン)内で、または環外位置で修飾される塩基を呈示し得る。オリゴヌクレオチドは、ポリアミド核酸などを含めた芳香族塩基も呈示し得る別個の構造を有するヘテロポリマーも包含する。
【0082】
本発明のオリゴヌクレオチドアンタゴニストは、当業者に既知の多数の方法により生成され得る。一実施態様では、多数の配列を含有するオリゴヌクレオチドのプールが生成される。プールは、例えば伸長工程でモノマーの混合物を用いる固相合成により生成され得る。オリゴヌクレオチドのプールは、変性コラーゲンまたはその断片が添付された固体マトリックス上にプールを含有する溶液を通すことにより分類される。変性コラーゲンと結合するプール内の配列は、固体マトリックス上に保持される。これらの配列は、異なる塩濃度またはpHの溶液で溶離される。選択された配列を、二次選択工程に付す。選択されたプールを、ネイティブコラーゲンが添付されていた二次固体マトリックス上を通す。カラムは、ネイティブコラーゲンと結合する配列を保持し、したがって変性コラーゲンに特異的な配列に関してプールを濃縮する。プールは増幅され、必要な場合には突然変異原化され、そしてプールが本発明のアンタゴニストの特徴を示すまで、工程が反復される。個々のアンタゴニストは、通常は前記の配列を宿主生物、例えば大腸菌中にクローニング後に、オリゴヌクレオチドプールの成員をシーケンシングすることにより同定され得る。
【0083】
疾患治療
本発明は一般的に、ネイティブコラーゲンでなく、変性コラーゲン中のある種のエピトープの結紮が新脈管形成を抑制する、という発見に関する。この発見は、新脈管形成が種々の疾患過程で演じる役割のために、重要である。新脈管形成を抑制することにより、疾患に介入し、症状を改善し、そしていくつかの場合には疾患を治癒することができる。
【0084】
新規の血管の増殖が疾患に関連した病理の原因であるかまたはそれに関与する場合、新脈管形成の抑制は疾患の有害作用を低減する。例としては、乾癬、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、再狭窄、黄斑変性等が挙げられる。新規血管の増殖が有害組織の増殖を支持するために必要とされる場合、新脈管形成の抑制は組織への血液供給を低減し、それにより血液供給要件を基礎にした組織塊の低減に寄与する。例としては、腫瘍が2〜3ミリ厚を超えて増殖するために、ならびに固形腫瘍転移の確立のために、新生血管形成が連続的要件である腫瘍の増殖が挙げられる。
【0085】
本発明の方法は、一部は、療法が新脈管形成に対して非常に選択的であるが、他の生物学的過程に対してはそうではないために、有効である。実施例に示されるように、新規の血管増殖のみが変性コラーゲンのアンタゴニストにより抑制され、したがって療法は成熟血管に悪影響を及ぼさない。これも実施例に示されるように、アンタゴニストは腫瘍中の血管形成部位と結合するが、しかし正常周囲組織とは結合しない。
【0086】
変性コラーゲン単独の結紮が新脈管形成を効率的に抑制し得るという発見は、おそらくは高特異性を有し、したがって相対的に低毒性である治療組成物の開発を可能にする。したがって、本発明は、1つ又はそれ以上の変性コラーゲンと結紮する能力を有する抗体ベースの新脈管形成の使用を開示するが、しかし変性コラーゲンとは特異的に結紮するが、ネイティブコラーゲンとはそうしないその他のアンタゴニストを設計し得る。本発明の発見の前には、新脈管形成ならびに新脈管形成に依存する任意の過程が、コラーゲン中の潜在エピトープを拮抗する試薬、即ちタンパク質分解化または変性コラーゲン中には見出されるが、ネイティブ形態の同一コラーゲン中には見出されないものの使用により、in vivoで抑制され得るということは知られていなかった。
【0087】
新脈管形成の抑制方法
本発明は、組織中の新脈管形成の抑制方法、ならびにそれにより、新生脈管形成に依存する組織中の事象を抑制するための方法を提供する。一般に、本方法は、新脈管形成抑制量の変性コラーゲンアンタゴニストを包含する組成物を組織に投与することを包含する。
【0088】
前記と同様に、新脈管形成は、「出芽」、脈管形成、または脈管伸長を含めた組織の新生血管形成を包含する種々の過程を含み、新脈管形成過程はすべて、血管中の細胞外マトリックスコラーゲンの崩壊を包含する。外傷性創傷治癒、黄体形成および胚形成を除いて、大多数の新脈管形成過程は疾患過程に関連しており、したがって本発明の治療法の使用は疾患に対して選択的である、と考えられる。
【0089】
新脈管形成が重要であると考えられ、血管由来疾患と呼ばれる種々の疾患が存在するが、それらの例としては、炎症性障害、例えば免疫性および非免疫性炎症、慢性関節リウマチおよび乾癬、脈管の不適切なまたは時機を失した浸潤、例えば糖尿病性網膜症、新生血管性緑内障、再狭窄、アテローム硬化性斑および骨粗鬆症における毛管増殖、癌関連障害、例えば固形腫瘍、固形腫瘍転移、血管繊維腫、水晶体後繊維増殖症、血管腫、カポジ肉腫、ならびに腫瘍増殖を支持するために新生血管形成を必要とするような癌が挙げられるが、これらに限定されない。その他の適切な腫瘍としては、黒色腫、癌腫、肉腫、繊維肉腫、神経膠腫および星状細胞腫が挙げられる。したがって、罹患組織における新脈管形成を抑制する方法は、疾患の症状を改善し、疾患によっては、疾患の治癒に寄与し得る。一実施態様では、本発明は組織における新脈管形成それ自体の抑制を意図する。組織中の新脈管形成の程度、したがって本発明の方法により達成される抑制の程度は、例えば免疫組織化学によりタンパク質分解かまたは変性コラーゲン−免疫陽性未熟および発生期の脈管構造を検出するための、実施例に記載されているような種々の方法により評価され得る。
【0090】
本明細書中に前記したように、種々の組織または組織化された組織から成る器官のいずれか、例えば皮膚、筋肉、腸、結合組織、関節、骨、ならびに脈管形成性刺激時に血管が浸潤し得るような組織は、疾患状態における新脈管形成を支持し得る。本明細書中で用いられる組織は、すべての体液、分泌物など、例えば血清、血液、脳脊髄液、血漿、尿、滑液、硝子体液も包含する。
【0091】
したがって、一関連実施態様では、治療される組織は炎症組織であり、抑制される新脈管形成は、炎症組織の新生血管形成が認められる炎症組織新脈管形成である。この種類においては、本方法は、関節炎組織における、例えば慢性関節リウマチ患者における、免疫または非免疫性炎症組織における、乾癬組織等における新脈管形成の抑制を意図する。
【0092】
その多数の実施態様において本発明において治療される患者は、望ましくはヒト患者であるが、しかし、本発明の原理は、本発明はすべての哺乳類に関して有効であり、これらは「患者」という用語に含まれるよう意図されるということを示すと理解されるべきである。この情況では、哺乳類は、新脈管形成に関連した疾患の治療が望ましいあらゆる哺乳類種、特に農業用および家畜哺乳類種を含むと理解される。このような患者は、例えばブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラバ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウスおよびラットであり得る。
【0093】
別の関連実施態様では、治療される組織は、糖尿病性網膜症、黄斑変性または新生血管性緑内障であり、そして抑制される新脈管形成は、網膜組織の新生血管形成が認められる網膜組織新脈管形成である。
【0094】
さらに別の関連実施態様では、治療される組織は、固形腫瘍、転移、皮膚癌、乳癌、血管腫または血管繊維腫、および同様の癌であり、抑制される新脈管形成は、腫瘍組織の新生血管形成が認められる腫瘍組織新脈管形成である。本発明の方法により治療可能な典型的固形腫瘍組織としては、肺、膵臓、乳房、結腸、喉頭、卵巣、カポジ肉腫および同様の組織が挙げられる。腫瘍組織新脈管形成およびその抑制の例は、実施例に記載される。
【0095】
腫瘍組織新脈管形成の抑制は、腫瘍増殖において新生血管形成が演じる重要な役割のために、特に好ましい実施態様である。腫瘍組織の新生血管形成の非存在下では、腫瘍組織は必要な栄養を獲得せず、増殖が遅く、さらなる増殖を終結し、退行し、結局は壊死性となって腫瘍は殺害される。
【0096】
言い換えれば、本発明は、本発明の方法にしたがって腫瘍新脈管形成を抑制することにより、腫瘍新生血管形成を抑制する方法を提供する。同様に、本発明は、脈管形成抑制方法を実施することによる腫瘍増殖の抑制方法を提供する。
【0097】
本方法は、転移の形成に対しても、(1)それらの形成は、転移癌細胞が原発性腫瘍を出ることができるよう原発性腫瘍の血管形成を必要とし、そして(2)二次部位におけるそれらの確立が転移の増殖を支持するための新生血管形成を必要とするために、特に有効である。
【0098】
関連実施態様では、本発明は、固形腫瘍に対して向けられる、そして転移の確立の制御のための慣用的化学療法のような他の療法を伴った本方法の実施を意図する。新脈管形成阻害剤の投与は、典型的には化学療法中またはその後に実行されるが、しかし、腫瘍組織への血管供給および栄養の準備により回復するために新脈管形成を誘導することにより腫瘍組織が毒性襲撃に応答中である化学療法のレジメン後に新脈管形成を抑制するのが好ましい。さらに、固形腫瘍が転移に対する予防処置として除去された外科手術後に新脈管形成抑制方法を施すのが好ましい。
【0099】
本発明が腫瘍新生血管形成の抑制に適用される限り、本方法は、腫瘍組織増殖の抑制に、腫瘍転移形成の抑制に、そして確立された腫瘍の退行に適用され得る。
【0100】
再狭窄は、血管形成術の成功を妨げる経皮経管的冠状動脈形成術の部位での平滑筋細胞(SMC)移動および増殖の過程である。再狭窄中の血管に関連したSMCの移動および増殖は、本発明の方法により抑制される新脈管形成の過程に関連がある。したがって、本発明は、血管系性術後の患者において本発明の方法により脈管形成関連過程を抑制することによる再狭窄の抑制も意図する。再狭窄の抑制のためには、変性コラーゲンアンタゴニストは、典型的には血管形成術後に、約2〜約28日間、さらに典型的には術後最初の約14日間、投与される。組織中の新脈管形成を抑制するための、したがって新脈管形成関連疾患の治療のための方法を実施するための本発明の方法は、新脈管形成が起きている、または起きるおそれがある組織を、変性またはタンパク質分解化コラーゲンとは結合し得るが、ネイティブ形態のコラーゲンとは結合しない治療的有効量の変性コラーゲンアンタゴニストと接触させることを含む。したがって、本方法は、本発明の変性コラーゲンアンタゴニストを含有する治療的有効量の生理学的耐容性組成物を患者に投与することを包含する。
【0101】
変性コラーゲンアンタゴニストの投与のための用量範囲は、本明細書中でさらに説明するようなアンタゴニストの形態およびその効力によっており、新脈管形成および新脈管形成により媒介される疾患症状が改善される所望の作用を生じるのに十分多い量である。用量は、高粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全等のような副作用を引き起こすほど多量ではない。一般に、用量は、患者の年齢、症状、性別および疾患の程度に伴って変わり、当業者により確定され得る。用量は、任意の合併症の事象において、個々の医師により調整され得る。
【0102】
治療的有効量は、治療中の組織において新脈管形成の測定可能な抑制を生じるのに十分な変性コラーゲンアンタゴニストの量であり、即ち、新脈管形成抑制量である。新脈管形成の抑制は、本明細書中に記載したような免疫組織化学により、または当業者に既知のその他の方法によりin-situに測定され得る。
【0103】
変性コラーゲンアンタゴニストの効力は、種々の手段により、例えばCAM検定における新脈管形成の抑制、in vivoウサギ眼検定、in vivoキメラマウス:ヒト検定等により測定され得る。
【0104】
モノクローナル抗体の形態での本発明の変性コラーゲンアンタゴニストの治療的有効量は、典型的には、生理学的耐容可能組成物中に投与される場合、約0.01マイクログラム(ug)/ミリリットル(mL)〜約100 ug/mL、好ましくは約1 ug/mL〜約5 ug/mL、そして通常は約5 ug/mLの血漿濃度を達成するのに十分な量である。言い換えれば、用量は、1日または数日間、1日1回またはそれ以上の回数投与で、約0.1 mg/kg〜約300 mg/kg、好ましくは約0.2 mg/kg〜約200 mg/kg、最も好ましくは約0.5 mg/kg〜約20 mg/kgで変わり得る。
【0105】
アンタゴニストがモノクローナル抗体の断片である場合、その量は、全抗体の質量と比較した断片の質量を基礎にして容易に調整され得る。好ましい血漿モル濃度は、約2マイクロモル(uM)〜約5ミリモル(mM)、好ましくは約100 uM〜1 mM抗体アンタゴニストである。
【0106】
ポリペプチドまたは小型分子の形態の本発明の変性コラーゲンアンタゴニストの治療的有効量は、典型的には、生理学的耐容可能組成物中に投与される場合、約0.1マイクログラム(ug)/ミリリットル(mL)〜約200 ug/mL、好ましくは約1 ug/mL〜約150 ug/mLの血漿濃度を達成するのに十分なポリペプチドの量である。約500 g/moleの質量を有するポリペプチドを基礎にして、好ましい血漿モル濃度は、約2マイクロモル(uM)〜約5ミリモル(mM)、好ましくは約100 uM〜1 mMポリペプチドアンタゴニストである。言い換えれば、体重当たりの用量は、1日または数日間、1日1回またはそれ以上の回数投与で、約0.1 mg/kg〜約300 mg/kg、好ましくは約0.2 mg/kg〜約200 mg/kgである。
【0107】
本発明のモノクローナル抗体またはポリペプチドは、注射により、または長時間の漸進的注入により、非経口的に投与され得る。治療される組織は典型的には全身投与により身体中でアクセスされ、したがって治療組成物の静脈内投与により最も高頻度に治療され、そして、標的化される組織が標的分子を含有する可能性がある送達手段が意図される。したがって、モノクローナル抗体、ポリペプチドおよびそれらの誘導体を含めたアンタゴニストは、静脈内に、腹腔内に、筋内に、皮下に、腔内に、経皮的に、局所的に、眼内に、経口的に、鼻腔内に投与され得るし、蠕動的手段により送達され得る。
【0108】
本発明のモノクローナル抗体またはポリペプチドを含有する治療組成物は、例えば単位投与量の注射により、慣用的には静脈内に投与される。「単位投与量」とは、本発明の治療組成物に関して用いられる場合、被験者のための単一用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な希釈剤、即ち担体またはビヒクルと共同して所望の治療効果を生じるよう算出された予定量の活性物質を含有する。
【0109】
実施例に示すような一実施態様では、変性コラーゲンアンタゴニストは1回用量で静脈内に投与される。
【0110】
組成物は、用量処方物に適合する方法で、治療的有効量で投与される。投与される量および時期は、治療される患者、活性成分を利用する患者の系の能力、および望ましい治療効果の程度によっている。投与に必要な活性成分の的確な量は、従事者の判断によっており、各個体に固有である。しかしながら、全身的適用のための適切な用量範囲は、本明細書中に開示されており、投与経路によっている。適切な投与レジメンも変動し得るが、しかし初期投与とその後の注射またはその他の投与による1時間またはそれ以上の間隔での反復投薬により典型化される。あるいは、in vivo療法のために特定化された範囲の血中濃度を保持するのに十分な連続静脈内注入が意図される。
【0111】
本発明の実施例により実証されるように、新脈管形成の抑制および腫瘍退行は、アンタゴニストとの初期接触後7日という早い時期に起こる。アンタゴニストへの付加的または長期曝露は、7日〜6週間、好ましくは約14〜28日が選択される。
【0112】
本発明は、本明細書中に記載した治療方法を実施するのに有用な治療組成物を意図する。本発明の治療組成物は、生理学的耐容可能担体を、活性成分としてその中に溶解または分散される本明細書中に記載したような変性コラーゲンアンタゴニストとともに含有する。好ましい実施態様では、治療用変性コラーゲンアンタゴニスト組成物は、治療目的で哺乳類またはヒト患者に投与される場合には、免疫原性でない。
【0113】
本明細書中で用いる場合、「製薬上許容可能な」、「生理学的に耐容可能な」という用語、ならびに文法上のその変型は、それらが組成物、担体、希釈剤および試薬を指す場合、相互交換可能的に用いられ、その物質が哺乳類にまたは哺乳類に関して投与可能であることを表す。
【0114】
その中に溶解または分散された活性成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当業界で十分理解されており、処方物を基礎にして限定される必要はない。典型的には、このような組成物は、液体の溶液または懸濁液として注射剤として調製されるが、しかしながら溶液または懸濁液に適し、使用前には液体である固体形態も調製され得る。調製物は、乳化もされ得る。
【0115】
活性成分は、製薬上許容可能で、活性成分と相溶性であり、本明細書中に記載した治療方法に用いるのに適した量である賦形剤と混合され得る。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそれらの組合せである。さらに、所望により、組成物は、活性成分の効力を増強する少量の補助物質、例えば湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤等を含有し得る。
【0116】
本発明の治療組成物は、その中の構成成分の製薬上許容可能な塩を含み得る。製薬上許容可能な塩としては、無機酸、塩酸またはリン酸、あるいは有機酸、例えば酢酸、酒石酸、マンデル酸等を用いて生成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基を用いて生成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて生成される塩も、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは鉄、ならびに有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導され得る。特に好ましいのは、TFAおよびHClの塩である。
【0117】
生理学的耐容可能担体は、当業界で周知である。液体担体の例は、活性成分の他に物質を含有しないか、または生理学的pH値での緩衝剤、例えばリン酸ナトリウム、生理学的塩またはその両方、例えばリン酸塩緩衝化食塩水を含有する滅菌水性溶液である。さらに別の水性担体は、1つより多い緩衝剤塩、ならびに塩化ナトリウムおよびカリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコールおよびその他の溶質を含有し得る。
【0118】
液体組成物は、水の他に、そして水を除いて、液相も含有し得る。このような付加的液相の例は、グリセリン、植物油、例えば綿実油、および水−油エマルションである。
【0119】
治療組成物は、典型的には総治療組成物の重量当たり少なくとも0.1重量%の量のアンタゴニストを含有するよう処方された、新脈管形成抑制量の本発明の変性コラーゲンアンタゴニストを含有する。したがって、例えば0.1重量%は、総組成物100グラム当たり0.1グラムの阻害剤である。
【0120】
抗体は、サイトトキシン、細胞傷害剤と共役され得る。このような共役体は、細胞溶解素または外毒素、例えばリシンA、ジフテリア毒素Aまたはシュードモナス外毒素およびそれらの断片を用いて作られ得る。細胞傷害剤は、毒性用量の放射能を脈管生成組織に局所的にデリバリーするために、同位元素で放射能標識され得る。
【0121】
本発明のアンタゴニストは、酵素を標的に送達するためにも用いられ得るが、この場合、酵素はプロドラッグを活性形態のドラッグに転換し得る−抗体特異的酵素活性化プロドラッグ療法(ADEPT)(例えば、Syrigos, K.N.(1999)Anticancer Res. 19:605-13参照)。要するに、本発明のアンタゴニストは、非毒性または不活性プロドラッグを毒性または活性薬に転換し得る酵素、例えばラクタマーゼ、プロテアーゼまたはエステラーゼと共役する。本発明のアンタゴニストは新脈管形成の部位に、特に腫瘍または転移の部位に局在するため、毒性薬は、 に向けられ得る。
【0122】
検出方法
本発明のアンタゴニストは、組織中の新脈管形成の検出にも適している。
【0123】
例えば、アンタゴニストが抗体である場合、アンタゴニストは組織をex vivoで染めるために免疫組織化学的技法に用いられ得る。免疫染色およびELISAのような免疫学的技法は、例えば、Receptor Binding Techniques, Methods in Molecular Biology, 106, ed. M. Keen, Human Press, 1999;Brook et al.(1998)Cell 92:391-400;Brooks et al.(1996)Cell 85:683-693およびBrooks et al.(1993)J. Cell. Biol. 122:1351-1359に記載されている。
【0124】
本発明のアンタゴニストは、標的組織と一旦結合すると、直接的にまたは間接的に検出され得る。直接検出は、検出可能標識、例えば蛍光色素、放射性タグ、常磁性重金属または診断染料を包含するアンタゴニストで実施され得る。
【0125】
あるいは、検出は、二次相互作用により生じ得る。例えば、アンタゴニストを認識する検出可能的標識化抗体は、アンタゴニストの位置を可視化するために用いられ得る。例えば、アンタゴニストがマウス起源のモノクローナル抗体である場合、適切に標識されるヤギ抗マウス抗体が用いられ得る。実施例は、例えばヤギ抗マウスペルオキシダーゼ共役化抗体の使用を説明する。当業者は、種々のアンタゴニストとともに用いるための適切な第二抗体を確定し得る。
【0126】
in vivo検出のためには、検出可能的標識化アンタゴニストを用いるのが好ましい。標識化アンタゴニストは、静脈内的に、筋内的に等で患者に投与される。患者内の検出に適した標識が特に好ましい。例えば、常磁性的標識化は、磁気共鳴造影により検出され得る。放射性タグ化アンタゴニストも検出され得る。
【実施例】
【0127】
実施例
実施例1
モノクローナル抗体HUI77
本実施例は、変性コラーゲン特異的モノクローナル抗体Mab HUI77の生成を説明する。
【0128】
差引き免疫感作(SI)と呼ばれる免疫学的技法により、Mab HUI77を生成し、単離した。差引き免疫感作法は、共通高抗原性エピトープの混合物内の稀少なおよび/またはあまり多くないエピトープに対する免疫応答を選択的に増強するために、マウス内の免疫応答を実験的に操作可能にする。要するに、BALB/cマウスにネイティブヒト三重らせんI型またはIV型コラーゲンを腹腔内注射した。三重らせんコラーゲンの注射後24および48時間目に、マウスに寛容剤であるシクロホスファミドを注射して、ネイティブ三重らせんI型およびIV型コラーゲン内の共通免疫優性エピトープに向けられる抗体を産生する活性化B細胞を殺害する。寛容化プロトコール後、次にマウスに熱変性ヒトI型またはIV型コラーゲンを注射して、熱変性後に曝露されるエピトープに対する免疫応答を刺激した。15分間沸騰させることにより、コラーゲンを変性させた。熱変性I型およびIV型コラーゲンの注射は、3週間毎に、全体で4〜5回の注射を施した。各マウスからの血清を、ネイティブ三重らせんおよび変性コラーゲンとの免疫反応性に関して試験した。三重らせんコラーゲンと比較した場合の変性コラーゲンに対する反応性に関して最高力価を実証するマウスを、ハイブリドーマの産生のために用いた。選択されたマウスからの脾臓細胞を、標準技法により骨髄腫細胞と融合させた。個々のハイブリドーマクローンを、三重らせんまたは変性I型およびIV型コラーゲンに対する抗体の産生に関して調べた。ネイティブ三重らせんI型およびIV型コラーゲンと比較した場合の変性I型またはIV型コラーゲンに対する選択的反応性を実証する抗体を産生したハイブリドーマクローンを選別した。標準技法により、Mabを精製した。
【0129】
図1に示すように、HUI77は、変性I型およびIV型コラーゲンを特異的に認識するが、しかしネイティブ三重らせんI型およびIV型コラーゲンとは、実質的低減化親和性で結合することが示された。特にHUI77は、ELISAにより測定した場合、ネイティブI型コラーゲンの場合より少なくとも約10倍より高い見掛けの反応性で変性I型コラーゲンと結合する。HUI77は、変性IV型コラーゲンとも、ネイティブIV型コラーゲンに関する値より約10倍高い親和性で結合する。さらに、Mab HUI77は、他のマトリックス構成成分、例えばラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチンまたはフィブリノーゲンとは実質的に結合せず、したがってI型およびIV型コラーゲン内の潜在エピトープとのその特異性を実証する。
【0130】
Mab HUI77は他の変性コラーゲンに対しても特異的であり、ネイティブ形態のこれらのコラーゲンとは実質的低減化親和性で結合する。図2に示すように、HUI77は、変性III型、IV型および部位型コラーゲンとも、これらのコラーゲンのそれぞれのネイティブ形態より約7倍、約8倍および約10倍高い親和性で結合する。
【0131】
実施例2
固形腫瘍の検出
本実施例は、本発明のアンタゴニストが腫瘍性組織中の変性コラーゲンを検出するために用いられ得ることを示す。実施例1に記載されたモノクローナル抗体HUI77を用いて、正常および腫瘍性組織を間接的免疫染色した。図3に示すように、ヒト黒色腫生検の、ならびに全厚ヒト皮膚中で増殖させたM21黒色腫のMab HUI77を用いた間接免疫蛍光分析は、in vivoでヒト黒色腫と関連した変性形態のコラーゲンの生成を示す。腫瘍の非存在下で、正常組織中で、変性コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が検出されたことは重要であり、このことは、変性コラーゲンが固形ヒト腫瘍の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0132】
実施例3
ヒト腫瘍中の新脈管形成の検出
本実施例は、本発明のアンタゴニストがヒト腫瘍中の新脈管形成を検出するために用いられ得ることを実証する。変性コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が、腫瘍の非存在下で、正常血管周囲のMab HUI77を用いて検出されたことは重要であり、このことは、変性コラーゲンが血管形成性腫瘍関連血管の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0133】
実施例4
アンタゴニストは内皮細胞接着および移動を抑制する
本実施例は、本発明のある種のアンタゴニストが変性コラーゲンとのヒト内皮細胞接着を抑制し得ることを実証する。
【0134】
Mab HUI77は、対照抗体と比較して約40%、変性I型コラーゲンとのヒト内皮細胞接着を抑制する能力を示した。図5に要約したこれらの知見は、Mab HUI77が、変性I型コラーゲンとの内皮細胞接着に少なくとも部分的に関与するI型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。内皮細胞接着過程は腫瘍増殖および新脈管形成において一役を演じると考えられるため、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖に影響を及ぼし得る。
【0135】
Mab HUI77は、図6に示すように、対照抗体または無処置と比較して約80%、変性I型コラーゲンに関するヒト内皮細胞移動を抑制する能力も示した。これらの知見は、Mab HUI77が、変性I型コラーゲンに関する細胞移動に有意の役割を演じるI型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。細胞移動が腫瘍転移および新脈管形成において重要な役割を演じると考えられ、そして変性コラーゲンが悪性腫瘍細胞および脈管形成性血管と関連して検出される場合、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖および転移に有意の影響を及ぼし得る。
【0136】
実施例6
モノクローナル抗体HUI77による新脈管形成の抑制
本実施例は、本発明のアンタゴニストがヒヨコCAM検定において新脈管形成を有効に抑制することを示す。
【0137】
さらに、Mab HUI77の全身投与は、対照と比較した場合、βFGF誘導性新脈管形成を約90%抑制した(図7および8)。ヒヨコCAM検定における血管分枝点の数を計数することにより、脈管形成指数を測定した(図8)。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、正常静止血管で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るということは可能である。これらの知見は、Mab HUI77が有意の臨床用途を有し得る有効な抗脈管形成試薬であることを示す。
【0138】
実施例7
Mab HUI77による腫瘍増殖の抑制
本実施例は、本発明のアンタゴニストがin vivoで黒色腫における腫瘍増殖を有効に抑制することを示す。
【0139】
Mab HUI77の全身投与は、図9および10に示すように、対照と比較した場合、黒色腫腫瘍増殖を約53%抑制した。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、隣接組織で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るということは可能である。これらの知見は、Mab HUI77が有意の臨床用途を有し得る有効な抗腫瘍試薬であることを示す。
【0140】
実施例8
モノクローナル抗体HUIV26
実施例1に略記したような差引き免疫感作(SI)と呼ばれる免疫学的技法により、Mab HUIV26を生成した。図11に示すように、HUIV26は、変性IV型コラーゲンを特異的に認識するが、しかしネイティブ三重らせんI型またはIV型コラーゲンとは結合しないことが示された。さらにHUIV26は、他のマトリックス構成成分、例えばラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチンまたはフィブリノーゲンとは結合せず、したがってIV型コラーゲン内の潜在エピトープとのその特異性を実証する。
【0141】
図11Bに示すように、Mab HUIV26により認識されるIV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)は、HUVEC状態調節培地に曝露後に明示される。Mab HUIV26との反応性の量は、試験した24時間の期間中、増大した。これは、これらの婦負非細胞が、Mab HUIV26により認識されるIV型コラーゲン中の潜在部位を曝露し得るプロテアーゼを分泌するということを示す。IV型コラーゲン中の潜在部位を曝露するHUVECにより産生されるプロテアーゼは、キレート化剤、EDTAにより抑制される(図11B)。これは、メタロプロテアーゼがIV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)の曝露の開始に関与することを示唆する。図12に示すように、メタロプロテアーゼ、MMP−2は、IV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)と同時局在化して、CAM組織中の脈管形成部位でMab HUIV26と反応する。セリンプロテアーゼ阻害剤、アプロチニンは、HUVEC条件調節培地を用いて1時間インキュベーション後に、IV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)の曝露にほとんど影響を及ぼさなかった(図11B)。6および24時間時点では、アプロチニンの存在は、プロテアーゼ阻害剤の非存在下で観察された反応性の、それぞれ40および70%を遮断した。これは、後者時点(6および24時間)では、セリンプロテアーゼがIV型コラーゲン中の潜在部位(単数または複数)の曝露を継続することを示唆する。
【0142】
実施例9
HUIV26による新脈管形成および腫瘍の検出
本実施例は、アンタゴニストが組織内の脈管形成過程を検出するために用いられ得ることを示す。
【0143】
図12に示すように、ヒヨコCAM組織の間接免疫蛍光分析は、in vivoでのβFGFまたは腫瘍誘導性脈管形成性血管と関連した変性IV型コラーゲンの生成および局在化を示す。bFGFまたは腫瘍の非存在下で、正常CAM組織中で、変性IV型コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が検出されたことは重要であり、このことは、変性IV型コラーゲンがin vivoでの脈管形成性血管の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0144】
ヒト黒色腫生検の、図13に示すような間接免疫蛍光分析は、in vivoでのヒト腫瘍関連血管周囲の変性IV型コラーゲンの生成および局在化を実証する。変性IV型コラーゲンの、あるとしてもほんの少しの証拠が、腫瘍の非存在下で、正常血管周囲で検出されたことは重要であり、このことは、変性コラーゲンが血管形成性腫瘍関連血管の特異的マーカーであり得ることを示唆する。
【0145】
実施例10
Mab HUIV26による細胞移動および接着の抑制
本実施例は、Mabが内皮細胞移動および接着を抑制し得ることを示す。
【0146】
Mab HUIV26は、対照抗体と比較して、変性IV型コラーゲンとのヒト内皮細胞接着を約70%抑制する能力を示した(図14)。これらの知見は、Mab HUIV26が、変性IV型コラーゲンとの内皮細胞接着に少なくとも部分的に関与するIV型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。IV型コラーゲンの組織分布、ならびに細胞接着過程は腫瘍増殖および新脈管形成において一役を演じるという事実にかんがみて、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖に有意の影響を及ぼし得る。
【0147】
Mab HUIV26は、対照抗体または無処置と比較して、変性IV型コラーゲンに関するヒト内皮細胞移動を70%抑制する能力を示した。これらの知見は、Mab HUIV26が、変性IV型コラーゲンに関する細胞移動に有意の役割を演じるIV型コラーゲン内の潜在エピトープと結合することを示唆する。細胞移動が腫瘍転移および新脈管形成において重要な役割を演じると考えられ、そして変性コラーゲンが脈管形成性血管と関連して検出される場合、この機能遮断抗体はin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖および転移に有意の影響を及ぼし得る。
【0148】
実施例11
HUIV26の全身投与による新脈管形成の抑制
Mab HUIV26の全身投与は、図16および17に示すように、対照と比較した場合、bFGF誘導性新脈管形成を約90%抑制した。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、正常静止血管で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るということは可能である。これらの知見は、Mab HUIV26が有意の臨床用途を有し得る有効な抗脈管形成試薬であることを示す。
【0149】
実施例12
腫瘍増殖の抑制
Mab HUIV26の全身投与は、対照と比較した場合、黒色腫腫瘍増殖を約80%抑制した(図18)。検定期間中に胚において毒性副作用が認められなかったことは重要である。さらに、あるとしても非常に少ないこのMabからの作用は、隣接組織で認められた。非常に低濃度のMabが用いられ、同様の作用を生じ得るという可能性があるため、IC50値を確定するためにさらなる実験が目下進行中である。これらの知見は、Mab HUIV26が有意の臨床用途を有し得る有効な抗腫瘍試薬であることを示す。
【0150】
Mab HUIV26の全身投与は、SCIDマウスにおける黒色腫増殖を抑制した。処置の24日後に、Mab HUIV26処置マウスは、対照Mabで処置したマウスにおいて、または処置を施さなかったマウスにおいて観察された値の5%未満の平均腫瘍容積を有した。
【0151】
実施例13
HUIV26のエピトープ特異性
本実施例は、HUIV26が変性コラーゲン内のRGD配列と結合しないことを示す。
【0152】
図22に示すように、Mab HUIV26は、IV型コラーゲン中に見出されるペプチドを含有する固定化RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)のいずれかと反応できない(表1)。コラーゲン中に見出されるペプチドを含有する6つの異なる可溶性RGDは、Mab HUIV26による固定化変性IV型コラーゲンの認識を遮断できなかった(図22)。これらのデータは、Mab HUIV26がIV型コラーゲンに見出されるRGD配列を認識しないことを示唆する。
【0153】
表1.ヒトIV型コラーゲンのRGDドメイン
【0154】
【表1】
【0155】
実施例14
モノクローナル抗体XL313
その配列がヒトI型コラーゲンから得られる合成ペプチドで免疫感作することにより、Mab XL313を生成した。その配列は、I型コラーゲンの三次元構造内に埋もれるために、それを選択した。用いた11アミノ酸残基合成ペプチドの配列を以下に示す:
配列番号12:CysGlnGlyProArgGlyAspLysGlyGluCys
KGE(LysGlyGlu)配列は、XL313認識に非常に重要であることが判明した。Mab XL313は、配列番号1のペプチドと特異的に結合するが、しかしKGE配列が突然変異化されたペプチドに関しては、実質的低減化結合親和性を有する:
配列番号13: CysGlnGlyProArgGlyAspAlaAlaAlaCys
XL313と呼ばれるMabは、タンパク質分解化/変性I型コラーゲンと反応する高特異的抗体である。XL313がネイティブ三重らせん形態のI型コラーゲンと反応しないということは、重要である。図27に示すように、Mab XL313は、ヒトI型コラーゲンの潜在ドメインを認識するが、しかし他の同様のペプチドは認識しない。これらのデータは、Mab XL313が、新脈管形成および腫瘍増殖においてヒトコラーゲンペプチドにより限定される潜在コラーゲンドメインの役割を査定するための有用な試薬であり得る、ということを示唆する。図28に示すように、Mab XL313は、成熟三重らせん配座内で曝露されないヒトI型コラーゲン内の潜在ドメインを特異的に認識する。さらに、この潜在ドメインは、XL313がネイティブ三重らせんIV型コラーゲンと交差反応しないので、I型コラーゲンに特異的であると思われる。
【0156】
実施例15
Mab XL313は細胞接着および移動を抑制する
図23に示すように、5時間インキュベーションの終了時に、ネイティブI型コラーゲンに付着させたHUVECは集密的細胞単層を生成した。これに対比して、変性コラーゲンに付着したHUVECは、移動し始め、形態学的に再組織化されて、索様構造を形成した。これらのデータは、そのネイティブ三重らせん状態ではアクセスできないヒトI型コラーゲンの三次元構造内に隠された潜在ドメインが、内皮形態形成および索形成に一役を演じ得る、ということを示唆する。
【0157】
実施例16
変性コラーゲンはアポトーシスを抑制する
図24に示すように、タンパク質分解かコラーゲンとのヒト内皮細胞相互作用は、ネイティブI型コラーゲンまたは懸濁液中に保持された内皮細胞と比較して、アポトーシスを抑制する。これらのデータは、そのネイティブ三重らせん状態ではアクセスできないヒトI型コラーゲンの三次元構造内に隠された潜在ドメインが、内皮形態生存に一役を演じ得る、ということを示唆する。
【0158】
実施例17
XL313により認識されるエピトープ
図25に示すように、ヒトコラーゲン潜在ペプチド−2は、内皮細胞生存および索形成を支持すると思われるが、しかしヒトI型コラーゲン内の同様の潜在ペプチドは、あるとしてもほんの少ししか作用を示さない。これらのデータは、ペプチド−2により限定されるI型コラーゲンの潜在領域がin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖に重要な役割を演じ得る、ということを示唆する。
【0159】
実施例18
インテグリンの役割
図26に示すように、インテグリンαvβ3は、試験したI型コラーゲンのすべての潜在ペプチドドメインとの細胞相互作用の媒介に重要な役割を演じると思われる。興味深いことに、ペプチド−2もβ1インテグリン相互作用によっていた。これらのデータは、ペプチド−2が2つの別個のインテグリンにより細胞相互作用を支持することを示唆する。
【0160】
実施例19
Mab XL313は新脈管形成および腫瘍増殖を抑制する
図29および30に示すように、Mab XL313の全身投与は、対照と比較した場合、ヒヨコCAMモデルにおける新脈管形成を95%以上抑制した。これらのデータは、Mab XL313により限定されるI型コラーゲンの潜在ドメインが新脈管形成において重要な役割を演じることを示唆する。
【0161】
図31に示すように、Mab XL313は、おそらくは、in vivoでHT1080繊維肉腫腫瘍増殖を抑制する。これらの知見は、Mab XL313により限定される潜在ドメインがin vivoでの腫瘍増殖の調節において有意の役割を演じ得ることを示す。
【0162】
実施例20
コラーゲンのタンパク質分解は、腫瘍増殖にとって重要である
図32に示すように、突然変異がI型コラーゲン分子のMMP切断部位内に導入されたトランスジェニックマウスを、これらのマウスがそれらのI型コラーゲンをタンパク質分解する能力を損傷していたため、本実験に用いた。B16黒色腫細胞が、野生型対照マウスと比較した場合、I型コラーゲンタンパク質分解損傷を示すマウスにおいて腫瘍を形成する能力を、あるとしても極少ししか示さなかった、ということは重要である。これらのデータは、I型コラーゲンのタンパク質分解が、in vivoでの細胞増殖において重要な役割を演じるということを示唆する。
【0163】
B16黒色腫(メラノーマ)細胞を用いて実証されたように、ルイス肺癌細胞も、それらのI型コラーゲンをタンパク質分解する能力を損傷していたCol a1B6トランスジェニックマウスに注射した場合、腫瘍を形成する能力を、あるとしても極少ししか示さなかったが、しかしルイス肺癌細胞は、対照B6マウスにおいて大型で急速に増殖する腫瘍を形成する(図33)。タンパク質分解後に曝露されるだけであるI型コラーゲン内の潜在ドメインに特異的に向けられるMab
XL313は、野生型B6マウスにおけるルイス肺癌腫瘍増殖を約80%抑制した。本知見は、in vivoでのI型コラーゲンの潜在ドメインのタンパク質分解性曝露が腫瘍増殖に重要な役割を演じ得る、ということを示唆する。さらに、これらのデータは、Mab XL313がin vivoでの新脈管形成および腫瘍増殖の特異的阻害剤である、ということを示唆する。
【0164】
当明細書の本文中に引用された以下の出版物はすべて、それらの記載内容は、参照により本明細書中に含まれる
本発明の前記の記載内容は説明および解釈の目的で提示されたものであり、本発明は、本明細書中の厳密な方式または実施に限定されるものではない、と理解される。したがって、本発明の精神を逸脱しない限り当業者により変更が成され得るし、本発明の範囲は特許請求の範囲に関して解釈されるべきである、と理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数の変性コラーゲンと特異的に結合するが、実質的低減化親和性でネイティブ三重らせん形態の前記単数又は複数のコラーゲンの各々と結合するアンタゴニストであって、該アンタゴニストは、新脈管形成を抑制し、かつ、該アンタゴンストは、モノクローナル抗体HUI77、HUIV26又はXL313の結合特異性を有する抗体であり、かつ、該低減化親和性は、前記変性コラーゲンに関する値の3分の1未満である、前記アンタゴニスト。
【請求項2】
前記変性コラーゲンがI型変性コラーゲン、II型変性コラーゲン、III型変性コラーゲン、IV型変性コラーゲン又はV型変性コラーゲンである、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項3】
前記変性コラーゲンが変性I型コラーゲンである、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項4】
前記変性コラーゲンが変性I型コラーゲン又は変性IV型コラーゲンである、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項5】
前記変性コラーゲンが変性II型コラーゲン、変性III型コラーゲン又は変性V型コラーゲンである、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項6】
モノクローナル抗体である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項7】
ポリクローナル抗体である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項8】
ヒト化又は化学的修飾化モノクローナル抗体である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項9】
モノクローナル抗体の断片である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項10】
細胞傷害剤又は細胞分裂抑制剤と混合される、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項11】
請求項1に記載のアンタゴニストにより認識されるエピトープをコードする配列を含有するペプチドであって、該配列が配列番号12である、前記ペプチド。
【請求項12】
炎症、乾癬、黄斑変性又は再狭窄、あるいは腫瘍増殖又は転移の間に誘導される組織中の新脈管形成の阻害用組成物の製造のための、単数または複数の変性コラーゲンと特異的に結合するが、実質的低減化親和性でネイティブ三重らせん形態の前記単数又は複数のコラーゲンの各々と結合する、新脈管形成を抑制する抗体であるアンタゴニストの使用。
【請求項13】
前記低減化親和性は、前記変性コラーゲンに関する値の約3分の1未満、好ましくは約1/5未満、より好ましくは約1/10未満である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記変性コラーゲンがI型変性コラーゲン、II型変性コラーゲン、III型変性コラーゲン、IV型変性コラーゲン又はV型変性コラーゲンである、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記アンタゴニストは、ハイブリドーマHUI77,HUIV26又はXL313により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性をもつ抗体である、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
ヒト化又は化学的修飾化モノクローナル抗体である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
モノクローナル抗体の断片である、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
細胞傷害剤又は細胞分裂抑制剤と混合される、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物は、化学療法剤、又は放射線とともに、静脈内、経皮的に、滑液包内に、筋肉内に、腫瘍内に、眼内に、鼻腔内に、腱鞘内に、局所的に、経口的に投与される、請求項12に記載の使用。
【請求項20】
前記組織は、哺乳動物内に存在し、特に、前記組織は、関節、眼、網膜又は血管腫である、請求項12に記載の使用。
【請求項21】
前記腫瘍又は転移は、黒色腫、肉腫、繊維肉腫、神経膠腫又は星状細胞腫である、請求項12に記載の使用。
【請求項1】
単数または複数の変性コラーゲンと特異的に結合するが、実質的低減化親和性でネイティブ三重らせん形態の前記単数又は複数のコラーゲンの各々と結合するアンタゴニストであって、該アンタゴニストは、新脈管形成を抑制し、かつ、該アンタゴンストは、モノクローナル抗体HUI77、HUIV26又はXL313の結合特異性を有する抗体であり、かつ、該低減化親和性は、前記変性コラーゲンに関する値の3分の1未満である、前記アンタゴニスト。
【請求項2】
前記変性コラーゲンがI型変性コラーゲン、II型変性コラーゲン、III型変性コラーゲン、IV型変性コラーゲン又はV型変性コラーゲンである、請求項1に記載のアンタゴニスト。
【請求項3】
前記変性コラーゲンが変性I型コラーゲンである、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項4】
前記変性コラーゲンが変性I型コラーゲン又は変性IV型コラーゲンである、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項5】
前記変性コラーゲンが変性II型コラーゲン、変性III型コラーゲン又は変性V型コラーゲンである、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項6】
モノクローナル抗体である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項7】
ポリクローナル抗体である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項8】
ヒト化又は化学的修飾化モノクローナル抗体である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項9】
モノクローナル抗体の断片である、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項10】
細胞傷害剤又は細胞分裂抑制剤と混合される、請求項2に記載のアンタゴニスト。
【請求項11】
請求項1に記載のアンタゴニストにより認識されるエピトープをコードする配列を含有するペプチドであって、該配列が配列番号12である、前記ペプチド。
【請求項12】
炎症、乾癬、黄斑変性又は再狭窄、あるいは腫瘍増殖又は転移の間に誘導される組織中の新脈管形成の阻害用組成物の製造のための、単数または複数の変性コラーゲンと特異的に結合するが、実質的低減化親和性でネイティブ三重らせん形態の前記単数又は複数のコラーゲンの各々と結合する、新脈管形成を抑制する抗体であるアンタゴニストの使用。
【請求項13】
前記低減化親和性は、前記変性コラーゲンに関する値の約3分の1未満、好ましくは約1/5未満、より好ましくは約1/10未満である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記変性コラーゲンがI型変性コラーゲン、II型変性コラーゲン、III型変性コラーゲン、IV型変性コラーゲン又はV型変性コラーゲンである、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記アンタゴニストは、ハイブリドーマHUI77,HUIV26又はXL313により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性をもつ抗体である、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
ヒト化又は化学的修飾化モノクローナル抗体である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
モノクローナル抗体の断片である、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
細胞傷害剤又は細胞分裂抑制剤と混合される、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物は、化学療法剤、又は放射線とともに、静脈内、経皮的に、滑液包内に、筋肉内に、腫瘍内に、眼内に、鼻腔内に、腱鞘内に、局所的に、経口的に投与される、請求項12に記載の使用。
【請求項20】
前記組織は、哺乳動物内に存在し、特に、前記組織は、関節、眼、網膜又は血管腫である、請求項12に記載の使用。
【請求項21】
前記腫瘍又は転移は、黒色腫、肉腫、繊維肉腫、神経膠腫又は星状細胞腫である、請求項12に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図24】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33A】
【図33B】
【図3】
【図4】
【図7】
【図12】
【図13】
【図16】
【図18】
【図23】
【図25】
【図29】
【図2】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図14】
【図15】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図24】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33A】
【図33B】
【図3】
【図4】
【図7】
【図12】
【図13】
【図16】
【図18】
【図23】
【図25】
【図29】
【公開番号】特開2011−84566(P2011−84566A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270823(P2010−270823)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2000−592305(P2000−592305)の分割
【原出願日】平成12年1月6日(2000.1.6)
【出願人】(592048844)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2000−592305(P2000−592305)の分割
【原出願日】平成12年1月6日(2000.1.6)
【出願人】(592048844)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (26)
【Fターム(参考)】
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