説明

新規なアポトーシス調整タンパク質、そのタンパク質をコードするDNAおよびその使用方法

【課題】アポトーシス調整タンパク質の新規なファミリーを提供すること、およびヌクレオチド配列およびアミノ酸残基配列、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの使用方法もまた提供すること。
【解決手段】Cdn-1、Cdn-2、およびCdn-3と呼ばれる新規なBcl-2ホモログ、ならびにそれらの誘導体をコードする実質的に精製されたDNA、ならびにCdn-1およびCdn-2ヌクレ
オチドを発現する組換え細胞およびトランスジェニック動物、実質的に精製されたCdn-1
およびCdn-2タンパク質およびそれらの組成物、上記ヌクレオチドおよびタンパク質を利
用する診断方法および治療方法、Cdn-1およびCdn-2の発現およびタンパク質活性および相互作用を刺激する薬学的物質ならびにCdn-1およびCdn-2の発現およびタンパク質活性および相互作用を調整する薬学的物質をスクリーニングする方法、Cdnと相互作用するタンパ
ク質のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願第08/320,157号の一部継続出願である。米国特許出願第08/320,157号は、1993年11月30日に提出された米国特許出願第08/160,067号の一部継続出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、アポトーシス調整活性を有する新規なタンパク質、そのタンパク質をコードする組換えDNA、そのタンパク質を含む組成物およびこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アポトーシスは、個々の細胞死につながる正常な生理学的プロセスである。このプログラムされた細胞死のプロセスは、種々の正常のおよび病原性の生物学的事象に関与し、そして多くの無関係な刺激により誘導され得る。アポトーシスの生物学的調節の変化はまた、加齢の間にも起こり、そして加齢に伴う多くの健康状態および疾患の原因ともなっている。アポトーシスの最近の研究は、細胞死に至る一般的な代謝経路が幅広い種々のシグナルにより開始され得ることを示唆している。これらのシグナルには、ホルモン、血清成長因子涸渇、化学療法剤、電離線、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染が挙げら
れる。Wyllie (1980) Nature 284:555-556;Kanterら、(1984)Biochem. Biophys. Res. Commun. 118:392-399;DukeおよびCohen (1986) Lymphokine Res.5:289-299;Tomeiら、(1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 155:324-331;Krumanら、(1991)J.Cell. Physiol. 148:267-273;AmeisenおよびCapron (1991) Immunology Today 12:102;およびSheppardおよびAscher(1992) J.AIDS 5:143。アポトーシスの生物学的制御をする物質は、従って、幅広い種々の状態において治療的有用性を有する。
【0004】
アポトーシス性細胞死は、細胞の収縮、クロマチン縮合、細胞質小疱形成(blebbing)、膜透過性の増大、およびヌクレオソーム内DNA開裂によって特徴付けられる。Kerrら、(1992) FASEB J.6:2450;およびCohenおよびDuke (1992) Ann. Rev. Immunol. 10:267。小疱(bleb)は、小さく、膜のカプセルで包まれた球形であり、アポトーシス細胞の表面から切り取られ、周囲の細胞組織に損傷を与えるスーパーオキシドラジカルを産生し続け得、そして炎症プロセスに関与し得る。
【0005】
Bcl-2は、濾胞性リンパ腫における一般的な染色体転座部位t(14:18)で発見され、bcl-2の異常な過剰発現を引き起こす。Tsujimotoら、(1984)Science 226:1097-1099;およびClearyら、(1986) Cell 47:19-28。bcl-2の正常な機能は、アポトーシスの防御である;B細胞におけるbcl-2の無調節な発現は、リンパ腫の発達における重要な因子であり得る増
殖B細胞の数の増大につながると考えられている。McDonnellおよびKorsmeyer(1991) Nature 349:254-256;および概説は、Edgington (1993) Bio/Tech. 11:787-792参照。Bcl-2
はまたγ線照射により誘導される細胞死をブロックし得る。Sentmanら、(1991)Cell 67:879-888;およびStrasser (1991) Cell 67:889-899。現在では、bcl-2がほとんどのタイプのアポトーシス性細胞死を阻害すること、そしてフリーラジカル生成部位において酸化防止経路を、および小胞体によるCa++の流動を調節することにより機能すると考えられていることは公知である。Lanら、(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. 91:6569-6573;Hockenbery
ら、(1993) Cell 75:241-251。
【0006】
アポトーシスは正常な細胞事象であるが、それはまた病的な状態および種々の傷害によ
っても誘導され得る。アポトーシスは、以下に挙げる種々の状態に関与するがそれらに限定されない;心臓血管疾患;癌後退;免疫調節;ウイルス疾患;貧血;神経学的障害;下痢および赤痢を含むがそれらに限定されない胃腸障害;糖尿病;脱毛;器官移植物の拒絶;前立腺肥大;肥満;眼障害;ストレス;および加齢。
【0007】
Bcl-2は、タンパク質のファミリーに属し、それらのいくつかはクローン化され配列決
定されている。WilliamsおよびSmith(1993) Cell 74:777-779。本明細書に引用される全
ての参考文献は、前出および後出のどちらも、本明細書中に参考として援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって、以下が提供される:
(項目1)Cdnをコードする実質的に精製されたヌクレオチド配列を含む組成物。
(項目2)前記ヌクレオチド配列がゲノムDNA由来である、項目1に記載の組成物。
(項目3)前記CdnがCdn-1である、項目1に記載の組成物。
(項目4)図3に示すヌクレオチド配列を有する項目3に記載の組成物。
(項目5)前記CdnがCdn-2である、項目1に記載の組成物。
(項目6)図5に示すヌクレオチド配列を有する、項目5に記載の組成物。
(項目7)Cdnをコードする組換えDNAベクターを含む組成物。
(項目8)前記CdnがCdn-1である、項目7に記載の組成物。
(項目9)ヌクレオチド配列が図3に示される、項目8に記載の組成物。
(項目10)前記CdnがCdn-2である、項目7に記載の組成物。
(項目11)ヌクレオチド配列が図5に示される、項目10に記載の組成物。
(項目12)前記組換えDNAベクターが、誘導可能プロモーターの制御下で前記Cdnをコードする配列を発現する、項目7に記載の組成物。
(項目13)Cdnをコードする組換えDNAベクターでトランスフェクトされた細胞を含む組成物。
(項目14)前記CdnがCdn-1である、項目13に記載の組成物。
(項目15)ヌクレオチド配列が図3に示される、項目14に記載の組成物。
(項目16)前記CdnがCdn-2である、項目13に記載の組成物。
(項目17)ヌクレオチド配列が図5に示される、項目16に記載の組成物。
(項目18)Cdnをコードする組換えDNAベクターを含むトランスジェニック動物。
(項目19)前記CdnがCdn-1である、項目18に記載のトランスジェニック動物。
(項目20)前記Cdnのヌクレオチド配列が図3に示される、項目19に記載のトランス
ジェニック動物。
(項目21)前記CdnがCdn-2である、項目18に記載のトランスジェニック動物。
(項目22)前記Cdnのヌクレオチド配列が図5に示される、項目21に記載のトランス
ジェニック動物。
(項目23)実質的に精製されたCdnタンパク質を含む組成物。
(項目24)前記タンパク質がCdn-1である、項目23に記載の組成物。
(項目25)ヌクレオチド配列が図3に示される、項目24に記載の組成物。
(項目26)前記CdnがCdn-2である、項目23に記載の組成物。
(項目27)ヌクレオチド配列が図5に示される、項目26に記載の組成物。
(項目28)前記タンパク質が組換えDNAによって発現される、項目23に記載の組成物

(項目29)前記タンパク質が天然のタンパク質である、項目23に記載の組成物。
(項目30)項目23に記載のタンパク質および薬学的に受容可能な緩衝液を含む組成物。
(項目31)前記タンパク質が治療上効果的な量で存在する、項目30に記載の組成物。(項目32)Cdnを認識するが、Bclファミリーの他のメンバーとは実質的に応答性でない
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む、組成物。
(項目33)生物学的サンプル中のCdnタンパク質の存在を検出する方法であって、以下
の工程:
a)細胞サンプルを得る工程;
b)抗体のために該細胞を溶解するかまたは透過性にする工程;
c)抗Cdn特異的抗体を該細胞サンプルに添加する工程;
d)該細胞サンプルを、該抗体が該cdnと複合体化し得る条件下で維持する工程;およ

e)形成された該抗体−cdn複合体を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目34)前記CdnがCdn-1である、項目33に記載の方法。
(項目35)ヌクレオチド配列が図3に示される、項目34に記載の方法。
(項目36)前記CdnがCdn-2である、項目33に記載の方法。
(項目37)ヌクレオチド配列が図5に示される、項目36に記載の方法。
(項目38)前記細胞サンプルがT細胞を含む、項目32に記載の方法。
(項目39)生物学的サンプル中のCdn遺伝子の発現を検出する方法であって、該cdnをコードするRNAの存在を同定する工程を包含する、方法。
(項目40)Cdn-1mRNAまたはCdn-2 mRNAを同定する前記方法がノーザンブロッティング
である、項目39に記載の方法。
(項目41)CdnmRNAを同定する方法であって、以下の工程:
a)細胞サンプルを得る工程;
b)該細胞サンプルからRNAを得る工程;
c)該Cdnの独特の領域に対応するプライマーを用いて、該RNAにポリメラーゼ連鎖反応を行う工程;および
d)該ポリメラーゼ連鎖反応の生成物の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目42)アポトーシス誘導細胞死を調整する方法であって、Cdnの内在性レベルを調
整する工程を包含する、方法。
(項目43)前記CdnがCdn-1である、項目40に記載の方法。
(項目44)ヌクレオチド配列が図3に示される、項目43に記載の方法。
(項目45)前記CdnがCdn-2である、項目42に記載の方法。
(項目46)ヌクレオチド配列が図5に示される、項目45に記載の方法。
(項目47)前記Cdnが、内在性cdn遺伝子の発現を調整することにより増加する、項目41に記載の方法。
(項目48)前記発現されるCdn遺伝子が組換え遺伝子によりコードされる、項目46に
記載の方法。
(項目49)前記遺伝子の発現が誘導可能プロモーターの制御下にある、項目48に記載の方法。
(項目50)前記細胞が、動物からとり出されてエクスビボでトランスフェクトされており、そして該トランスフェクトされた細胞を該動物に再導入する工程をさらに包含する、項目49に記載の方法。
(項目51)前記細胞がTリンパ球である、項目50に記載の方法。
(項目52)前記組換え遺伝子がインビボで細胞にトランスフェクトされる、項目49に記載の方法。
(項目53)アポトーシスの治療が必要な患者において、治療上効果的な量のCdnを投与
する工程を包含する、アポトーシスの治療方法。
(項目54)前記CdnがCdn-1である、項目53に記載の方法。
(項目55)ヌクレオチド配列が図3に示される、項目54に記載の方法。
(項目56)前記CdnがCdn-2である、項目53に記載の方法。
(項目57)ヌクレオチド配列が図5に示される、項目56に記載の方法。
(項目58)前記Cdnが、スーパーオキシドジスムターゼが適用されてきた任意の適応症
に投与される、項目53に記載の方法。
(項目59)Cdnと、Cdnに特異的に結合するタンパク質との間の相互作用をアッセイする方法であって、以下の工程;
精製されたCdnを、該Cdnに結合し得るタンパク質を含む細胞溶解物と、該タンパク質と該Cdnとの結合を可能にする条件下で、接触させる工程;
該Cdnを単離する工程;
該単離されたCdnを、該タンパク質に特異的な結合パートナーと、該パートナーと該Cdnとの結合を可能にする条件下で、接触させる工程;および
該タンパク質に結合した結合パートナーの量を測定する工程、
を包含する、方法。
(項目60)前記細胞溶解物が酵母の溶解物である、項目59に記載の方法。
(項目61)前記結合パートナーが抗体である、項目59に記載の方法。
【0009】
(発明の要旨)
Cdn-1、Cdn-2、およびCdn-3と呼ばれる新規なBcl-2ホモログ、ならびにそれらの誘導体をコードする実質的に精製されたDNA、ならびにCdn-1およびCdn-2ヌクレオチドを発現す
る組換え細胞およびトランスジェニック動物が提供される。実質的に精製されたCdn-1お
よびCdn-2タンパク質およびそれらの組成物もまた提供される。上記ヌクレオチドおよび
タンパク質を利用する診断方法および治療方法もまた提供される。Cdn-1およびCdn-2の発現およびタンパク質活性および相互作用を刺激する薬学的物質ならびにCdn-1およびCdn-2の発現およびタンパク質活性および相互作用を調整する薬学的物質をスクリーニングする方法もまた提供される。Cdnと相互作用するタンパク質のスクリーニング方法もまた提供
される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、新規なBcl-2ホモログであるCdn-1およびCdn-2をコードする実質的に精製さ
れたヌクレオチド配列;それによってコードされるタンパク質;Cdn-1およびCdn-2ヌクレオチドを含む組成物、およびCdn-1およびCdn-2タンパク質を含む組成物およびそれらの使用方法を包含する。同時係属中の米国特許出願第08/160,067号では、Cdn-1をcdi-1と呼び、そして同時係属中の米国特許出願第08/320,157号ではCdnをcdn、およびCdnをCDNと呼んでいることに注意されたい。名称は変わっているが、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は同じままである。本発明はさらに、クローン化されたCdn-1またはCdn-2遺伝子を発現する組換え細胞およびトランスジェニック動物を包含する。Cdn-1によってコードされるヌク
レオチド配列および予測されるアミノ酸残基の配列を図3に示す;そしてCdn-2のそれら
を図5に示す。Cdn遺伝子によってコードされるタンパク質が、アポトーシスを調整し得
ることがこのたび見出された。エプスタイン−バーウイルス(EBV)形質転換体リンパ芽球
腫細胞株(lymphoblastoid cell line)では、Cdn-1はFas仲介アポトーシスを減少させることが示された。マウス前駆体(progenitor)B細胞株FL5.12では、Cdn-2およびCdn-1の誘導体の発現によりIL-3誘導アポトーシスが減少するが、Cdn-1の発現はアポトーシスを僅か
に増加させた。従って、細胞タイプ、発現されるCdnの誘導体またはタイプ、およびアポ
トーシスの誘導方法に応じて、アポトーシスは、Cdnの発現およびCdnの濃度を制御することにより、特異性の高い様式で調整され得る。
【0011】
本明細書中で用いられる「Cdn」は、本明細書に記載される核酸分子(ヌクレオチド)
( Cdn-1、Cdn-2、Cdn-3、およびそれらの誘導体)をいい、「Cdn」はそれらによってコ
ードされるタンパク質(Cdn-1、Cdn-2、Cdn-3、およびそれらの誘導体)をいう。本発明
はCdn-1およびCdn-2ヌクレオチド配列を含む。これらのヌクレオチドは、Cdn-1のcDNA、
ゲノム由来DNA、ならびにDNAのような合成または半合成ヌクレオチドおよびそのコーディ
ング領域をコードするRNAおよびそのコーディング領域に相補的なRNAを含むがこれらに限定されない。これらのヌクレオチドは、少なくともCdnの1つのフラグメントのmRNA、お
よびCdnをコードするDNAまたはmRNAのいずれかに結合し得る他のヌクレオチドに対して相補的であり得る。これらの相補的ヌクレオチドは、三重らせんを形成し得るヌクレオチドおよびアンチセンスヌクレオチドを含むがそれらに限定されない。この相補的ヌクレオチドは、本明細書に記載されているベクターの1つにより内因的に発現され得るか、またはオリゴヌクレオチド療法の分野で公知の方法により外的に付加され得る。Reedら、(1990)Cancer Res. 50:6565-6570。Cdn-1 cDNAのヌクレオチド配列とその制限エンドヌクレアーゼ部位の位置を図3に示す。本明細書の実施例に記載されるように、Cdn-1mRNAは、ノー
ザンブロット分析によりヒトの種々の器官および組織において検出されている。これらの器官には、図4に示すように、肝臓、心臓、骨格筋、肺、腎臓、および膵臓が挙げられる。
【0012】
同様に、Cdn-2のcDNA、ゲノムDNA、および合成または半合成ヌクレオチドは、本発明のさらなる実施態様である。Cdn-2遺伝子のヌクレオチド配列、ならびにCdn-2タンパク質の予測されるアミノ酸配列、および制限エンドヌクレアーゼ認識部位の位置を図5に示す。
【0013】
本明細書に示される実施例は、Cdn-1がヒト第6染色体上に位置し、Cdn-2がヒト第20染色体上に位置することを示す。このファミリーのメンバーにはCdn-3もありそれはヒト第11染色体上にある。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、Cdn-1のおよその位置が6p21-23であることを示した。Cdn-2およびCdn-3偽遺伝子である可能性もある。こ
れらは内因的に発現され得ないが、適切なプロモーター配列を提供する組換えベクターからは発現され得る。従って、Cdn-2およびCdn-3ヌクレオチド配列のどちらも本発明に包含され、同様にそれらの組換え構築物およびそれらによってコードされるタンパク質も包含される。
【0014】
上記遺伝子およびタンパク質の誘導体は、そのタンパク質の任意の部分、またはこのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、このタンパク質の部分はアポトーシス調整活性を保持している。図11は、Cdn-1のこのような3つの誘導体を示す。これらは、ア
ポトーシス調整活性を保持していることが示されている。誘導体Cdn1-Δ1、Cdn1-Δ2およびCdn1-Δ3、およびそれらによってコードされるタンパク質は、本発明に包含される。
【0015】
本発明は、CdnDNA配列に対する改変(例えば、欠失、置換および付加)を含み、特に、ゲノムDNAの非コーディング領域における改変を含む。このような変化はクローニングを
容易にし、そして遺伝子の発現を改変するのに有用である。
【0016】
本発明はさらに、種々の置換されたヌクレオチドを含む。コードされるアミノ酸残基を変化させないか、あるいは結果として保存的に置換されるアミノ酸残基となるかのいずれかである置換が、コーディング領域内で起こり得る。コードされるアミノ酸残基を変化させないヌクレオチドの置換は、異なる系での遺伝子発現を最適化させるのに有用である。適切な置換は当業者に公知であり、例えば、特定の発現系における好ましいコドンの使用を反映するように行われる。
【0017】
本発明は、Cdnの機能的に等価な改変体および誘導体を含み、それらはCdnの特性を高め得るか、減少させ得るか、またはそれに重大な影響を与え得ない。例えば、コードされるアミノ酸配列は変化しないDNA配列の変化、および結果としてアミノ酸残基の保存的置換
に至るDNA配列の変化、1つまたは2、3のアミノ酸の欠失または付加、およびアミノ酸
アナログによるアミノ酸残基の置換は、Cdnの特性に重大な影響を与えない変化である。
【0018】
相互に保存的に置換され得るアミノ酸残基には以下のものが挙げられるが、それらに限
定されない:グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/トレオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシン。Cdnの特性に重大な影響を与えない任意の保存的ア
ミノ酸置換は、本発明に包含される。
【0019】
本発明はさらに、Cdnの変異体を含む。この変異体は、発現すると内因的に発現されたCdnの活性を妨害する。このような変異体は、任意の当該分野で公知の方法により作製され得、そしてそれらが天然のCdnの活性に影響を及ぼす能力により活性に関してスクリーニ
ングされる。
【0020】
本発明の実施に有用な核酸操作の技法は当該分野で公知であり、以下の種々の文献に記載されているが、それらに限定されない;Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、第1〜3巻、Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、Greene Publishing and Wiley-Interscience: New York (1987)、および定期改訂版。
【0021】
本発明はさらに、内部にCdnヌクレオチド配列をクローン化した種々のDNAベクターを包含する。適切なベクターは、細菌、哺乳動物、酵母および昆虫の発現系において用いられる任意の当該分野で公知のベクターを含むがそれらに限定されない。特定のベクターが当該分野で公知であり、本明細書中で詳細に記載する必要はない。
【0022】
ベクターはまた、Cdnヌクレオチド配列の発現用の誘導可能プロモーターを提供し得る
。誘導可能プロモーターは、遺伝子の実質的な構成発現を許さずにむしろある特定の状況下でのみ発現を可能にするプロモーターである。このようなプロモーターは、以下の種々の刺激により誘導され得るが、それらに限定されない;ベクターを含む細胞のリガンド、金属イオン、他の化学物質または温度変化への曝露。このプロモーターはまた、細胞特異的であり得、これはすなわち、特定の細胞タイプにおいてのみ誘導可能であり、そしてしばしば特定の時間の間のみ誘導可能であり得る。このプロモーターはさらに、細胞周期特異的であり得、これはすなわち細胞周期の特定の段階の間のみ誘導されるかまたは誘導可能であり得る。このプロモーターは細胞タイプ特異的かつ細胞周期特異的であり得る。当該分野で公知の任意の誘導可能なまたは誘導不能なプロモーターが、本発明における使用に適切である。好ましくは、用いられるプロモーターは誘導可能である。
【0023】
本発明はさらに、上記ベクターでトランスフェクトされた種々の発現系を含む。適切な発現系は、細菌、哺乳動物、酵母および昆虫を含むがこれらに限定されない。特定の発現系およびそれらの使用は当該分野で公知であり、本明細書では詳細に記載しない。
【0024】
本発明は、Cdnヌクレオチド配列によるエクスビボトランスフェクションを含む。ここ
で、人間を含む動物から取り出した細胞を、Cdnヌクレオチドを含むベクターでトランス
フェクトし、動物に再び導入する。適切なトランスフェクト細胞は、個々の細胞または全組織に含まれている細胞を含む。さらに、エクスビボトランスフェクションは、当該動物またはヒト被験体以外の動物に由来する細胞のトランスフェクションを含み、最終的にはその細胞は当該動物またはヒト被験体に導入される。そのような移植は、同種移植、異種移植、および胎児組織移植を含むがそれらに限定されない。さらに、例えば、適切なベクターの肺への投与によるインビボトランスフェクションが用いられ得る。
【0025】
本質的にはこの様式でいかなる細胞または組織タイプも処理し得る。適切な細胞は、心筋細胞およびリンパ球を含むがそれらに限定されない。例えば、リンパ球を取り出して組換えDNAでトランスフェクトし、そしてHIV陽性患者に再導入すると、再導入されたT細胞の半減期は増大し得る。
【0026】
一例として、HIV感染患者の上記方法による治療において、白血球をその患者から取り
出し、CD4+細胞を得るために選別する。次いで、このCD4+細胞をCdnヌクレオチドを含む
ベクターでトランスフェクトし、患者に再導入する。あるいは、選別されていないリンパ球を、細胞特異的プロモーターの制御下の少なくとも1つのCdnヌクレオチドを含む組換
えベクターでトランスフェクトし、その結果、CD4+細胞のみにそのヌクレオチドを発現させ得る。この場合、理想的なプロモーターは、CD4プロモーターであり得るが、任意の適
切なCD4+T細胞特異的プロモーターも用い得る。
【0027】
さらに、本発明は、上記のベクターによりインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。インビボトランスフェクションの適切な方法は当該分野で公知であり、Zhuら、(1993) Science 261:209-211によって記載された方法を含むがそれに限定されない。インビボ
トランスフェクションは、アテローム硬化症にかかっている患者の予防的処置として有用である。Cdnレベルの調整は、脳梗塞および心筋梗塞の結果起こる、アポトーシス関連再
灌流損傷の予防として役立ち得る。脳卒中および心臓発作の危険が高いこれらの患者においては、アポトーシスおよび動脈の閉塞に関連した再灌流損傷が予防され得るか、少なくとも軽減され得る。
【0028】
梗塞は、塞栓、血栓、または肉眼で見える領域の壊死を生じる圧迫が原因となっておこる動脈血または静脈血供給の突然の不足によって引き起こされ、心臓、脳、脾臓、腎臓、腸、肺、および精巣も影響を受けやすい。アポトーシスは、その領域への血液の再灌流の際に、梗塞部の周囲の組織に起こる;従って、Cdnレベルの調整は、内因的産生の生物学
的改変物質により誘導される変化により、インビボトランスフェクションにより、またはアンチセンス療法により達成され、心臓発作または脳卒中により引き起こされる障害の重篤度を減少させるのに効果的であり得る。
【0029】
Cdnヌクレオチド配列を含む組換えDNAベクターを有するトランスジェニック動物もまた本発明に包含される。トランスジェニック動物の作製法は当該分野で公知であり、本明細書で詳細に記載される必要はない。トランスジェニック動物を作製するのに用いられる方法の概説は、例えば、PCT公開WO93/04169を参照されたい。好ましくは、このような動物
は、細胞特異的プロモーターの制御下で組換えCdnを発現し、そしてよりさらに好ましく
は細胞周期特異的プロモーターの制御下で発現する。
【0030】
他の実施態様において、診断方法は、タンパク質レベルまたはmRNAレベルのいずれかにおけるCdnの発現を検出するために提供される。特異的にCdnを認識するいかなる抗体もCdn診断における使用に適している。Cdnの異常なレベルは、不適当なアポトーシスに関連する病気を有する患者の組織中に見出されるようである;その結果、診断方法はこのようなアポトーシスの欠損に関連する生物学的状態を検出し、そしてモニターするのに有用である。検出方法もまたCdn関連治療の成功をモニターするのに有用である。
【0031】
組換えDNAにより発現されるかまたは生物学的ソース(例えば、組織)由来のCdnの精製または単離は、当該分野において公知の任意の方法により達成され得る。タンパク質精製方法は当該分野において公知である。一般に、実質的に精製されたタンパク質は、他の混入細胞物質(特に、タンパク質)を含まないタンパク質である。好ましくは、精製されたCdnは80パーセントを越えて純粋であり、そして最も好ましくは95パーセントを越えて純
粋である。下述のような臨床使用において、Cdnは好ましくは高度に精製されており、少
なくとも約99パーセント純粋であり、そして発熱物質および他の混入物を含まない。
【0032】
タンパク質精製の適切な方法は、当該分野において公知であり、そして以下を包含するが、これらに限定されない:アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティー
クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、HPLCおよびFPLC。タンパク質の実質的な分解を生じないいかなる精製スキームも、本発明における使用に適する。
【0033】
本発明はまた、それぞれ図3および5に示すアミノ酸残基配列を有する実質的に精製されたCdnを包含する。本発明は、特性に顕著に影響しないCdnの機能的に等価な変異体および同一の全体アミノ酸配列を保持するが増強または減弱した活性を有する変異体を包含する。例えば、アミノ酸残基の保存的置換、1または少数のアミノ酸の欠失または付加、およびアミノ酸アナログによるアミノ酸残基の置換は本発明の範囲内である。Cdnの特性に
有意に影響しないいかなる保存アミノ酸置換も本発明に包含される。
【0034】
適切な抗体は、Cdnを抗原として、または好ましくはBcl-2ファミリーの他の遺伝子産物との実質的な相同性を欠くCdn領域を包含するペプチドを使用することにより産生される
。抗体を用いてタンパク質を検出する方法、およびタンパク質または合成ペプチドを用いて抗体を産生する方法は当該分野において公知であり、本明細書に詳細に記述されない。
【0035】
Cdnタンパク質発現はまた、Cdn mRNAのレベルを測定することによりモニターされ得る
。特異的mRNA種を検出するための任意の方法が、この方法における使用に適する。これはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて容易に達成される。好ましくは、PCRのために選択されたプライマーは、Bcl遺伝子ファミリーの他のメンバーとの実質的な相同性を欠くCdn遺伝子の領域に相当する。あるいは、ノーザンブロットは、Cdnに特異的なプローブを用
いることによりCdn mRNAを検出するために利用され得る。PCRおよびノーザンブロットを
利用する方法は、当該分野において公知であり、本明細書に詳細に記述されない。
【0036】
Cdnを用いる処理方法はまた、mRNAまたはタンパク質の上昇または低下するレベルによ
りCdnの細胞発現を調整することを包含する。Cdnの細胞発現を調整する適切な方法は以下を包含するが、これらに限定されない:生物学的改変物質を用いて内因性発現を増加させること;Cdn遺伝子が過剰発現されるかまたはアンチセンスヌクレオチドが発現されるよ
うにCdnヌクレオチドをコードするベクターを用いて細胞をトランスフェクトすること;
および内因性Cdnと他のタンパク質(例えば、Bcl-2ファミリーの他のメンバー)との相互作用を妨害する変異体Cdnを発現すること。細胞トランスフェクションは上記で議論され
ており、そして当該分野において公知である。Cdnの内因性レベルを調整するための適切
な指標は悪性腫瘍および心臓特異的発現を包含するが、それらに限定されない。心臓特異的発現は、特に、心臓保護を提供するために、心臓病に罹患しやすい患者を包含するがこれに限定されない指標における使用、および化学療法(例えば、アドリアマイシン)を包含するがこれに限定されない心臓毒の治療の進歩における使用に適する。
【0037】
Cdnの内因性発現を調整することは、Cdnの発現を調整することまたはCdn mRNAの分解を調整することのいずれかにより、Cdnのレベルを直接的または間接的に変える生物学的改
変物質に、細胞を曝すことにより達成され得る。適切な生物学的改変物質は、分子および他の細胞を包含するがこれらに限定されない。適切な分子は、以下を包含するが、これらに限定されない:薬物、サイトカイン、小分子、ホルモン、インターロイキンとレクチンと他の刺激剤(例えば、PMA、LPS)との組み合わせ、二特異的抗体、および細胞機能またはタンパク質発現を改変する他の試剤。好ましくは、適切な生物学的改変物質は、HT-29
細胞におけるCdn発現レベルを増加させるγIFNである。さらに、生物学的改変物質は、内因性Cdnの活性を妨害する内因性Cdnおよび変異体Cdnの発現を改変するCdnヌクレオチドを包含する。細胞は、生理学的に有効な濃度でこのような生物学的改変物質に曝され、そしてCdnの発現は、生物学的改変物質に曝されないコントロールに対して測定される。コン
トロールに対するCdnの発現を変えるこれらの生物学的改変物質は、さらなる研究のため
に選択される。
【0038】
Cdnの内因性レベルを減少させる方法は、アンチセンスヌクレオチド治療、ならびにア
ンチセンス構築物および生物学的改変物質による発現のダウンレギュレーションに対するセンスを送達する方法を包含するが、これらに限定されない。アンチセンス治療は当該分野において公知であり、そしてその適用は当業者に明らかである。
【0039】
治療的に有効な生物学的改変物質についてのスクリーニングは、発現を変化させることあるいはCdn mRNAまたはCdnの半減期を変えることのいずれかにより、Cdnのレベルを直接的または間接的に調整し得る生物学的改変物質に細胞を曝すことにより行われる。生物学的改変物質はまた、他のBcl-2ファミリーのメンバーおよび他の遺伝子産物(例えば、プ
ロテアーゼ)の両方とのCdn-1の相互作用を妨害し得る。適切な生物学的改変物質は、分
子および他の細胞を包含するが、それらに限定されない。適切な分子は、以下を包含するが、これらに限定されない:薬物、サイトカイン、小分子、ホルモン、インターロイキンとレクチンと他の刺激剤(例えば、PMA、LPS)との組み合わせ、二特異性抗体、Cdnヌク
レオチド、Cdn変異体、および細胞の機能またはタンパク質発現を改変する他の試剤。細
胞を、少なくとも1つのCdn(好ましくは、Cdn-1)の発現を誘起することが公知である条件下で増殖し、生理学的に有効な濃度でこのような生物学的改変物質に曝し、そして、Cdnの発現が、生物学的改変物質に曝されないコントロールに対して測定される。コントロ
ールに対するCdnの発現を調整するこれらの生物学的改変物質は、さらなる研究のために
選択される。細胞生存性もまた、変更されたCdn発現が細胞死によるものでないことを確
実にするためにモニターされる。
【0040】
Cdn発現を調整する(増加させるまたは減少させる)ための生物学的改変物質の能力の
決定において、内因性発現のレベルが測定され得るか、または、Cdn特異的プロモーター
配列の制御下での組換え融合タンパク質のレベルが測定され得る。融合タンパク質はリポーター遺伝子によりコードされる。
【0041】
リポーター遺伝子は当該分野において公知であり、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)およびβ−ガラクトシダーゼを包含するが、これらに限定されな
い。Cdn-1およびCdn-2の発現は、上述のように、タンパク質またはmRNAレベルのいずれかによりモニターされ得る。リポーター遺伝子の発現は、酵素アッセイ、または抗体に基づくアッセイ(例えば、ELISAおよびRIA)によりモニターされ得、これもまた当該分野において公知である。可能性のある調剤は、任意の治療剤または当該分野において公知の化学物質、あるいは天然のソース(例えば、真菌類のブロスおよび植物抽出物)由来の任意の特徴づけられていない化合物であり得る。好ましくは、適切な調剤は実質的に細胞障害性および発癌性のない調剤である。
【0042】
Cdnの内因性レベルを調整するための適切な指標は、Cdn媒介アポトーシスが関連する任意のものである。これらは、様々なタイプの悪性腫瘍、および制御されない細胞増殖(例えば、湿疹)を生じる他の障害、またはB細胞リンパ腫を包含するがこれに限定されない通常のプログラム細胞死(例えば、悪性腫瘍)の欠陥を包含するがこれらに限定されない。
【0043】
本発明はまた、Cdnの発現を調整するために生物学的改変物質を用いる患者の治療を含
む治療方法および組成物を包含する。有効濃度および投薬方法は経験的に導き出し得る。このように導き出されたものは、当業者の技術範囲内であり、そして例えば、患者の年齢、体重および性、ならびに病気のタイプおよび重篤度に依存する。あるいは、患者は、天然または組換えCdnのいずれかを用いて直接的に治療され得る。Cdnは実質的に純粋であり、そして発熱物質を含まないべきである。適切なグリコシル化を確保するために組換えCdnは哺乳動物細胞株において産生されることが好ましい。Cdnはまた、昆虫細胞株において産生され得る。
【0044】
治療組成物について、それらの発現または活性を調整する実質的に純粋なCdn、または
生物学的改変物質、またはオリゴヌクレオチドの治療有効量が、生理食塩液およびリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を包含するがこれらに限定されない生理学的に受容される緩衝液
中に懸濁され、そして患者に投与される。好ましくは、投与は静脈内である。他の投与方法は、以下を包含するがこれらに限定されない:皮下、腹腔内、胃腸、および、例えば、心筋梗塞症に関連する細胞死を処置するために心臓内のような特定の器官への直接投与。
【0045】
適切な緩衝液および投与方法は当該分野において公知である。Cdnまたは生物学的改変
物質の有効濃度は、そのために、経験的に決定される必要があり、そして病気のタイプおよび重篤度、病気の進行、および患者の健康に依存する。このような決定は当業者の技術範囲内である。
【0046】
Bcl-2は抗酸化経路において作用すると考えられる。Veisら、(1993)Cell75:229-240
。従って、Cdnを含む治療は、スーパーオキシドが含まれる状態における使用が適してい
る。Cdn発現のモジュレーターの投与により、Cdnの細胞外濃度の上昇を生じ、これはアポトーシスに関連するブレブにより産生され得るスーパーオキシドの蓄積を直接的に阻害する方法を提供すると考えられる。従って、治療方法は、スーパーオキシド媒介細胞損傷を阻害することを包含するが、これに限定されない。
【0047】
Cdnまたは生物学的改変物質の治療使用のための適切な指標は、そのためにフリーラジ
カル媒介細胞死を含む指標であり、そしてスーパーオキシドジスムターゼによる処置が可能であると以前考えられていた症状を包含するがこれに限定されない。このような指標は以下を包含するが、これらに限定されない:HIV感染、自己免疫疾患、心筋症、神経障害
、肝炎および他の肝臓病、骨粗鬆症、ならびに敗血症を包含するがこれに限定されないショック症候群。
【0048】
脳の様々な領域由来のメッセンジャーmRNAに対するクローン化Cdn DNAのハイブリダイ
ゼーションは、研究された領域の各々においてCdn-1の高レベルの発現を示した(図8)
。従って、神経学的疾病は、Cdnの治療の適用が示される他の領域である。
【0049】
本発明は、さらに、CdnとCdnに特異的に結合するタンパク質との間の相互作用をアッセイする方法を包含する。アッセイは、精製されたCdnを、タンパク質が結合するのに十分
な条件下でCdnと結合し得るタンパク質を含む細胞溶解産物と接触させること、および、
タンパク質の存在をアッセイすることを伴う。
【0050】
代表的には、アッセイ工程は、タンパク質を特異的結合パートナー(例えば、直接的または間接的に標識され得る抗体)と接触させることを包含する。適切なアッセイは、タンパク質、インビトロで翻訳されたCdn、およびタンパク質を含む細胞溶解産物に対する抗
体を提供するELISAを包含する。Matchmaker(Clontech)のような酵母遺伝子系もまたア
ッセイにおける使用に適する。
【0051】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるが、本発明を限定しない。明細書に記載されている場合を除いて、すべてのクローニング技術は本質的にSambrookら(1989)により記述されており、そしてすべての試薬は製造業者の指示書に従って使用した。
【実施例】
【0052】
実施例1
Cdn-1 cDNAの同定およびクローニング
6つの公知Bcl-2ファミリーのメンバーのアミノ酸配列比較(図6)は、重要な配列同
一物、すなわちアミノ酸144〜150および191〜199を有する2つの領域を示した。新規なBcl-2ファミリーのメンバーを同定するために、これらの領域における配列に基づいた縮重PCRプライマーを設計し(図1)、そしてPCRをヒト心臓cDNAおよびヒトBリンパ芽球腫細胞株(WI-L2)cDNAを用いて行った。PCRを、HotStart/Ampliwax技術(Perkin Elmer Cetus)を用いて行った。PCRプライマーおよび鋳型cDNAの最終濃度は、それぞれ4μMおよび0.1〜0.2ng/mlであった。cDNA合成の条件は、下述のようなcDNAライブラリーのファースト
ストランドcDNA合成の条件と同一であった。PCRを、最初の10サイクルの間のアニーリン
グおよび伸長温度が36℃であった以外は、Kieferら(1991)Biochem.Biophys.Res.Commun.176:219-225により記述されている方法に従って、Parkin Elmer Cetus DNA サーマルサ
イクラーで行った。PCRの後、試料を、5ユニットのDNAポリメラーゼI、クレノウフラグ
メントを用いて37℃で30分間処理し、そして次いで7%ポリアクリルアミド、1×TBE(Tris/ボレート/EDTA)ゲル上で電気泳動により分画した。170〜210塩基対の間に移動す
るDNAをゲルから切り出し、10mM Tris-HCl pH7.5、1mM EDTA(TE)中で穏やかに振とう
しながら16時間受動的に溶出し、Elutip-Dカラム(Schleicher and Schuell)を通して精製し、pCR-Scriptベクター(Stratagene)にライゲートし、そしてEscherichia coli XL1-Blue MRF株、(Stratagene)中へ形質転換した。心臓およびWI-L2 PCR産物の両方を含む形質転換体(ホワイトコロニー)由来のプラスミドDNAを、Magic Miniprep DNA精製シス
テム(Promega)を用いて単離し、そしてDNAインサートを、Sangerら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA74:5463-5467(USB,Sequenase version 2.0)に従ったジデオキシ鎖停止法
により配列決定した。11の心臓PCR産物のDNA配列分析は、Bcl-x(Boiseら(1993)Cell74:597-608)と同一の2つの配列およびBcl-2ファミリーに関連しない10つの他の配列を示
した。
【0053】
11のWI-L2 PCR産物のDNA配列分析から、1つのBcl-x配列、他のBcl-2ファミリーのメンバーであるbax(Oldvaiら(1993)Cell 74:609-619)と同一の5つの配列、4つの関連しない配列、およびCdn-1と呼ばれる1つの新規なBcl-2関連配列を得た。PCR産物によりコ
ードされた独特のCdn-1アミノ酸配列を、図6においてアミノ酸151〜190(最上列)で示
す。
【0054】
Cdn-1 cDNAを単離するために、ヒト心臓cDNAライブラリー(Clontech)およびZapfら(1990)J.Biol.Chem. 265:14892-14898により記述されるように構築されたWI-L2 cDNAライブラリーを、Cdn-1 PCR DNAインサートをプローブとして用いてスクリーニングした。DNAを、FeinbergおよびVogelstein(1984)Anal.Biochem.137:266-267により記述された方法に従って32P-標識し、そしてKieferら(1991)により記述された方法に従って両方のライブラリーからの150,000の組換えクローンをスクリーニングするために使用した。8つの
陽性クローンをWI-L2 cDNAライブラリーから得た。WI-L2 cDNAライブラリーからの4つのクローンおよび心臓cDNAライブラリーからの2つのクローンを、さらに精製し、そしてcDNAインサートを含むプラスミドDNAをλZAPIIベクター(Stratagene)から切り出した(図2)。2つの最長クローン、W7(2.1kb)およびW5(2.0kb)を配列決定し、そしてCdn-1
プローブ配列を含むことを示し、それ故それらの確実性を確認した。心臓cDNAライブラリーからの2つのクローンを精製した。cDNAをpBlsc中にサブクローンし、そして配列決定
した。心臓cDNAはまた、Cdn-1をコードしていた。
【0055】
W7 DNA配列を、推定アミノ酸残基配列と共に図3に示す。Cdn-1の推定アミノ酸配列を
、他のBcl-2ファミリーのメンバーとの最大配列同一性についても並列し、そして図6に
示す。見られ得るように、アミノ酸100〜200の間でCdn-1と他のファミリーのメンバーと
の間に重要な配列同一性がある。この中央領域を越えて、配列保存が急激に減少する。Bcl-2のように、Cdn-1は、疎水性のシグナルペプチドまたはN−連結グリコシル化部位のどちらかを含まない細胞内タンパク質であるようである。Cdn-1は、LMW5-HLを除くすべてのBcl-2ファミリーのメンバーでも観察される疎水性C−末端を含み、Bcl-2のような抗アポ
トーシス活性の部位が膜結合細胞小器官(例えば、ミトコンドリア膜、小胞体または核膜)に局在することを示唆する。Hockenberyら(1990);Chen-Levyら(1989)Mol.Cell.Biol.9:701-710;Jacobsenら(1993)Nature 361:365-369;およびMonighanら(1992)J.Histochem.Cytochem.40:1819-1825。
【0056】
実施例2
cDNAクローンのノーザンブロット分析
ノーザンブロット分析を、Lehrachら(1977)Biochem. 16:4743-4651およびThomas(1980)Proc. Natl. Acad.Sci. USA 77:5201-5205に記載されている方法に従って行った。さら
に、ヒト複数組織のノーザンブロットをClontechから購入した。Bcl-2およびCdn-1cDNAのコーディング領域を、FeinbergおよびVogelstein(1984)Anal. Biochem. 137:266-267に記載されているランダムプライミング法によって標識した。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件をKieferらによって記載されている方法に従って行った。詳細には、Bcl-2およ
びCdn-1クローンのクレノウ-標識したフラグメントを、1×10cpm/ミリリットルの最終濃度で、各々のプローブについて、複数ヒト組織ノーザンブロット(Clontech 7760-1)に
ハイブリダイズした。ブロットを高ストリンジェンシーで洗浄した。
【0057】
図4に示す結果は、試験を行った全ての器官(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎
臓、および膵臓)においてCdn-1が発現するが、Bcl-2は発現しないかあるいは心臓、脳、肺、および肝臓においてほんの低レベルで発現することを示す。従って、Cdn-1はヒト器
官全体にわたりBcl-2よりも広く発現するようであり、これらの組織においてアポトーシ
スを調節することに重要であり得る。
【0058】
実施例3
組換えCdn-1の発現
バキュロウイルス系で組換えCdn-1を発現させるために、実施例1で作成したCdn-1 cDNAを用いて、実施例1に記載されているようなPCR法によって、クローニングを促進するために制限部位を含有する遺伝子の3'および5'フランキング領域由来のプライマーを使用して、新規なCdn-1ベクターを作成した。プラスミドを、ジデオキシターミネーター法(Sangerら、1977)によって、配列決定キット(USB、Sequenase、バージョン2.0)および内部プ
ライマーを用いて配列決定した。これにより、PCRから変異が生じないことを確認した。
【0059】
クローンを、プラスミドとAcNPV野生型のバキュロウイルスとの間のオーバーラップ配
列のインビボでの相同組換えによって、組換えウイルスを作成するために用いた。昆虫Spodoptera frugiperdaクローン9(SF9)細胞のトランスフェクションから48時間後、組換えウイルスを収集し、PCRによって同定し、そしてさらに精製した。組換えバキュロウイル
スの選択、スクリーニング、および増殖のための標準的な手順を行った(Invitrogen)。ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で、バキュロウイ
ルス系で産生したタンパク質の分子量を、アミノ酸配列に従って予想したCdn-1の分子量
と比較した。
【0060】
さらに、類似のクローンは、好ましくは酵母細胞内発現系中で、当該分野で公知の任意の方法(Barrら、(1992)Transgenesis JAH Murray編、(Wiley and Sons)55-79頁に記載
されている方法を含む)によって発現され得る。
【0061】
実施例4
哺乳動物系におけるCdn-1の発現
Cdn-1コーディング配列を、実施例1で作成したプラスミドから切り出し、プラスミドpCEP7、pREP7、pcDNA3(Invitrogen)中へ、適合性の制限酵素部位に導入した。pCEP7を、pREP7のRSV3'-LTRをXbaI/Asp718を用いて除去し、pCEP4(Invitrogen)由来のCMVプロモータ
ーに置換することによって作成した。25μgの各々のCdn-1-含有プラスミドをBリンパ芽
球腫細胞WI-L2株中にエレクトロポレートし、そしてCdn-1を発現する安定なハイグロマイシン耐性形質転換体またはG418耐性形質転換体(pcDNA3構築物、図8)を選択した。
【0062】
Cdnのコーディング領域はまた、他の細胞タイプ(心筋細胞、GTI-7のような神経細胞株、およびヒト結腸腺癌細胞HT29株のようなTNF感受性細胞を含むがこれらに限られない)
中へ安定に組み込む能力のある発現ベクターにライゲートし得、Cdn-1によるアポトーシ
スの調節をモニターするための多様なアッセイシステムを提供する。
【0063】
実施例5
野生型Bリンパ芽球腫細胞 WI-L2-729 HF2株および過剰のCdn-1を発現する形質転換細胞
におけるCdn-1およびその誘導体の抗アポトーシス活性の効果
2×10のWI-L2細胞および実施例4に記載されているようにCdn-1をコードするベクターを用いて形質転換したWI-L2細胞を、抗fas実験のために10%ウシ胎児血清(FBS)、また
は血清欠乏実験のために0.1% FBSを加えたRPMI中で増殖した。抗fas実験の場合においては、新鮮な培地で洗浄した後、細胞を10%FBSを加えたRPMIに懸濁し、抗fas抗体に曝し、アポトーシス誘導剤に応答する細胞死のキネティックスをFACScanを用いてフローサイト
メトリーによって分析した。血清欠乏実験の場合においては、WI-L2細胞を0.1%FBSを加
えたRPMI中に再懸濁し、アポトーシスを、Hendersonら、(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8479-8483に記載されている方法に従ってモニターした。アポトーシスを誘導する他の方法は、主要な心筋細胞における酸素欠乏、NGF使用中止、神経細胞GTI-7株におけるグルタチオン枯渇、またはHT29細胞株へのTNF添加を包含するが、それらに限定されない
。アポトーシスを、細胞死の間に、細胞の縮小およびプロピジウムヨーダイド(PI)の透過性を測定することによって評価した。さらに、アポトーシス細胞死を評価する任意の他の方法も用いられ得る。
【0064】
図9は抗Fas処理に対する種々のWI-L2形質転換体の抗アポトーシス応答を示す。図8は、血清欠乏に対する種々のWI-L2形質転換体の抗アポトーシス応答を示す。図9において
は、3×10の細胞を含有する2連のウェルを、50ng/mlの細胞致死性の抗Fas抗体とともに24時間インキュベートした。次いで、細胞死をFACScanを用いるフローサイトメトリー
によって分析した。各々の構築物から発現したタンパク質を下段に示す。多くの構築物は短縮型または欠失変異体であるので、発現した正確なアミノ酸もまた示される。見られ得るように、全ての形質転換体は、pREP7ベクターのみを含有するコントロールの形質転換
体と比較した場合、いくらかの保護効果を有した。最もアポトーシス抵抗性の形質転換体は、90%を超える細胞が抗fas処理で生存したCdn-1Δ2発現細胞株であった。顕著な保護
はまた、全長Cdn-1(1-211)およびCdn-1Δ2を発現する形質転換体、次いでBcl-2ΔおよびBcl-2発現細胞株に観察された。
【0065】
Cdn-1Δ1およびCdn-1Δ2では、全長のCdn-1の全長のそれぞれN末端59および70個のア
ミノ酸をコードするヌクレオチドが欠損している。Cdn-1Δ2の発現が、全長Cdn-1よりも
アポトーシスをブロックすることにおいて効果的であるという観察は、小さな短縮型のCdn-1分子が強力な治療剤であり得ることを示唆する。
【0066】
実施例6
他のCdn遺伝子の決定およびCdn-2遺伝子のクローニング
ヒトゲノムDNAおよびヒト/ネズミ体細胞DNAパネルのサザンブロット分析は、少なくとも3つのCdnが遺伝子に関連し、染色体6、11および20中に存在することを示した。3つ
のハイブリッドDNAのPCR/配列分析は、Cdn-1が染色体6上にあり、2つの密接に関連した配列が染色体20(Cdn-2を示す)および染色体11(Cdn-3を示す)上にあることを示した。
発明者らは、Cdn-2およびCdn-3遺伝子をクローニングし、それらを配列決定した。興味深
いことに、Cdn-2およびCdn-3の両方ともイントロンを含有せず、ゲノムに戻ったプロセスされた遺伝子の全特徴を有している。Cdn-3はヌクレオチドの欠失を有し、フレームシフ
ト、および初期の終結を引き起こし、そのためおそらく偽遺伝子である。しかし、両者ともプロモーターエレメント[CCAAT,TATAAAボックス]を有するが、おそらくCdn-2およびCdn-3特異的プローブを用いたノーザンブロット分析によって決定されるように転写されない。
【0067】
コスミドベクターpWE15(Stratagene,La Jolla, CA)中のヒト胎盤ゲノムライブラリーからの900,000クローンを、Cdn-1のコーディング領域全体を含有する950bp BglII-HindIII cDNAプローブを用いてスクリーニングした。このプローブをFeinbergおよびVogelstein (1984) Anal.Biochem. 137:266-267の方法に従って32P標識した。ライブラリーを、高ス
トリンジェンシーハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下で、Sambrookら、(1989)Molecular Cloning、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されているようにプロセスし、スクリーニングした。10個の2重陽性クローンを、上記のように再プレートし、スクリーニングすることにより、さらに精製した。プラスミドDNAを、WizardMaxiprep DNA精製システムを用いて、供給者(Promega Corp.、Madison、WI)により記載されているように精製し、EcoRI制限酵素マッピングおよびサザンブロッティングによって分
析した。サザンブロッティングおよびハイブリダイゼーション条件のために用いたプローブは、上記と同じであった。
【0068】
コスミドクローンを、EcoRI制限分析およびサザンブロッティングによって判断するこ
とで2つの群に分けた。コスミドクローン(cos)1〜4および7は、EcoRIで生じたDNAフ
ラグメントの1つの明瞭なパターンを示し、単一の6.5kbでハイブリダイズするEcoRI DNAフラグメントを含有した。Cos2およびCos9を、5.5kbでハイブリダイズするEcoRI DNAフラグメントを含有することを特徴とする第2群に分けた。cos2由来の6.5kbのDNAフラグメントおよびcos9由来の5.5kbのDNAフラグメントを、pBluescriptSK(Stratagene,La Jolla,CA)中に、標準的な分子生物学的技術(Sambrookら、上述)を用いてサブクローニングした。プラスミドDNAを単離し、2つのサブクーロン、A4(cos2由来)およびC5(cos9由来)からのDNAインサートを、BamHI、HindIII、およびEcoRIを用いてマッピングし、上述のようにサザンブロッティングによって分析した。両方のクローンからのより小さな制限フラグメントをM13シークエンシングベクター中にサブクローニングし、DNA配列を決定した。
【0069】
A4の配列は、Cdn-1と97%のアミノ酸配列の同一性を示すオープンリーディングフレー
ムを含有する(図5)。Cdn-1とこの遺伝子の高度の配列同一性は、それが新たなCdn-1関連遺伝子であり、従ってCdn-2と呼ばれることを示す。コードされたCdn-2タンパク質とBcl-2ファミリーの他のメンバーとの配列比較を図6に示す。Cdn-2は保存領域BH1およびBH2を含有し、これはBcl-2ファミリーを証明するものであり、そして他のメンバーに対する
より低い全体の配列同一性(約20%〜30%)を示す。この同一性もまた、Bcl-2ファミリー
の特徴である。Cdn-3は、より短くかつ関連のないポリペプチドにおいて得られるフレー
ムシフトを有し、従ってCdn-1、Cdn-2、または他のBcl-2ファミリーのメンバーの構造的
特徴を含有しない。
【0070】
実施例7
Cdn-1、Cdn-2、およびCdn-3遺伝子の染色体局在化
ヒト/ネズミ体細胞ハイブリッドDNAのパネル(NIGMS、Camden、NJ製のパネル#2 DNA)のサザンブロット分析および中期染色体のインサイチュでの蛍光ハイブリダイゼーション(FISH)を用いて、Cdn遺伝子をヒト染色体に対してマッピングした。サザンブロッティ
ングについては、5μgのハイブリッドパネルDNAをEcoRIまたはBamHI/HindIIIで切断し、0.8%または1%アガロースゲル上で分画し、ニトロセルロースに写し、Cdn-1プローブとハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は上述のとおりであった。
FISHについては、Cdn-2サブクローンであるA4を、Bionick Labeling System(Gibco BRL、Gaithersburg、MD)を用いてビオチン化し、In Situ Hybridization,A Practical Approach、1992年、 D.G.Wilkinson編、137〜158頁、IRL Press、OxfordにViegas-Pequignotにより記載されている方法に従って、正常ヒト繊維芽細胞由来の中期染色体にハイブリダイズした。FITC結合アビジンおよび、ビオチン化ヤギ抗アビジンを用いるプローブ検出は、Pinkelら、(1988)Proc.Natl. Acad. Sci. USA 85:9138-9142に記載の方法に従った。
【0071】
サザンブロット分析は、ヒトDNAコントロールにおいて、長さが約12kb、11kb、および5.5kbの3つのハイブリダイズしているEcoRIバンドを示した。体細胞ハイブリッドDNAの分析は、12kbのバンドが2つの異なるサンプル中、つまりヒト染色体6のみを含有するNA10629、および、ヒト染色体1およびXの両方ならびに、重要なことにはp21への染色体6の末端小粒の部分を含有するNA07299中にあることを示した。11kbのバンドは、ヒト染色体20を含有するNA13140中にあった。5.5kbのハイブリダイズしているバンドは、ヒト染色体11を含有するサンプルNA10927A中にのみ見いだされた。Cdn-1、Cdn-2、またはCdn-3についてのプライマーを用いた3つのハイブリッドDNAサンプルのPCR/DNA配列決定分析は、NA10629(染色体6を含有するハイブリッドDNA)、およびNA07299(染色体1、Xおよび6pter>p21を含有するハイブリッドDNA)中に、Cdn-1配列を示し、Cdn-1遺伝子が染色体6、p21への末端小粒上に存在することを示した。Cdn-2配列は、NA13140中に見いだされ、Cdn-2
遺伝子が染色体20上に存在することを示した。そしてCdn-3配列はNA10927A中に見いださ
れ、Cdn-3遺伝子が染色体11上に存在することを示した。
【0072】
実施例8
FL5.12細胞中のCdn-1およびCdn-2によるアポトーシスの調整
FL5.12は、IL-3依存性リンパ系始原細胞株(McKearnら、(1985)Proc. Natl. Acad. Sci
USA 82:7414-7418)である。これはIL-3の投与中止の後にアポトーシスを被ることを示しているが、Bcl-2の過剰発現によって細胞死から保護される。Nunezら、(1990)J.Immunol. 144:3602-3610;およびHockenberyら、(1990) Nature 348:334-336。Cdn-1およびCdn-2のアポトーシスを調整する能力を評価するために、Cdn-1、Cdn-2、Cdn-1の2つの短縮形態(以下に記載)およびBcl-2をコードするcDNAを、哺乳動物の発現ベクターであるpcDNA3(Invitrogen、SanDiego、CA)中にライゲートし、マウス始原Bリンパ球細胞株FL5.12
中に、抗生物質G418を含有する培地中でエレクトロポレーションおよび選択によって安定に導入した。次いで、大量の形質転換体について以下に記載のようにアッセイを行った。
【0073】
FL5.12細胞の生存性に関する過剰発現した遺伝子の効果を、IL-3の投与中止後の種々の時点で調査し、図10に示した。細胞生存性を、フローサイトメーター(Becton Dickinson FACScan)上でプロピジウムヨーダイド(PI)排除によって評価した。Bcl-2発現は、細胞を
細胞死から著しく保護したが、Cdn-1はベクターコントロールと比較した場合、細胞死を
増強したようであった。Cdn-2発現は、より早い時点では、細胞死からの低いレベルの保
護を与えたが、後の時点では顕著ではなかった。興味深いことに、Cdn-1Δ2は、細胞死に対して中程度の保護を与えた。Cdn-1のN末端112アミノ酸を含有する分子であるCdn-1-112もまた、Bcl-2よりも低いレベルであるがFL5.12細胞を部分的に保護するようであった。
【0074】
実施例7に示すように、WI-L2細胞のCdn-1およびCdn-1Δ2の発現により、抗Fas媒介ア
ポトーシスおよび血清投与中止に応答する細胞生存が増大した。合わせて考えると、これらのデータは、種々のCdn分子が、ポジティブまたはネガティブな様式で、細胞タイプお
よびアポトーシス刺激に依存して、アポトーシスを調整し得ることを示唆する。従って、それらの分子は、様々な癌の場合のように、心臓における虚血後の再灌流組織損傷のような細胞死を防止すること、またはアポトーシスコントロールを免れている細胞中における細胞死を誘導することに効果的である。
【0075】
実施例9
INF-γはHT-29細胞におけるCdn-1mRNA発現を誘導する
ヒト結腸癌細胞株HT-29が、IFN-γで処理した後のみに、抗Fas抗体またはTNFの細胞障
害性効果に対して感受性であることが示されている。Yoneharaら、(1989)J.Exp. Med. 169:1747-1756。これらのIFN-γ処理細胞は、血清偏向(serum deviation)またはシクロヘキシミド処理の後にアポトーシスが増強されたことも示す。アポトーシス刺激に対する、HT-29細胞のこの誘導された感受性は、部分的には、IFN-γ処理後に見られるTNFレセプターおよびFas抗原の同時アップレギュレーションによるものであり得る。Yoneharaら(1989)
。しかし、血清欠乏またはシクロヘキシミド処理の後に見られる細胞死の増加は、他のアポトーシスメカニズムがIFN-γによって誘導され得ることを示唆する。
【0076】
Bcl-2ファミリーのメンバーのレベルのIFN-γによる調整は、HT-29細胞のアポトーシス刺激に対する感受性を誘導するための、他の可能なメカニズムである。Cdn-1、Bax、またはBcl-xs発現の増加および/またはBcl-2またはBcl-XL発現の減少により、細胞致死剤に
対する細胞の感受性が増強し得た。この可能性を試験するために、未処理およびINF-γ処理HT-29細胞におけるBcl-2ファミリーメンバーのmRNAレベルをノーザンブロット分析により、実施例2に記載された方法および条件を用いて調査した。Cdn-1 mRNAレベルは、IFN-γ誘導後、およそ10倍に増加した。一方、BaxおよびBcl-xのmRNAレベルは、未変化のままであった。Bcl-2 mRNAは、未処理およびIFN-γ処理した細胞の両方で、検知可能レベル以下であった。Bcl-xsのBcl-xL転写物に対する割合が、IFN-γ処理では増加し得たが、転写物間のサイズの小さな違いのために、ノーザンブロット分析により検出されなかった可能性が残ったままであった。これは、Boiseら、(1993)Cell 74 :597-608に記載されている
ように、未刺激の胸腺細胞対PMA+イオノマイシン刺激した胸腺細胞の場合である。半定
量的PCRを用いると、それらはBcl-xSのBcl-xLに対する割合が、刺激の後に増加すること
を示した。類似のPCR技術を用いると、Bcl-xSのBcl-xL mRNAに対する割合が、HT-29細胞
のIFN-γ処理の後に変化しないままであり、主要な転写物がBcl-xL(>90%)であることが示された。
【0077】
従って、IFN-γ処理後のCdn-1転写物およびHT-29腫瘍細胞株のアップレギュレーションと細胞死に対する感受性の増加との間には正の相関関係がある。これらの結果は、腫瘍細胞中に、Cdn-1のポジティブモジュレーターがあり、そしてそれらのモジュレーターが、
適切なアポトーシス誘導剤と同時投与される場合、いくつかの腫瘍を処置するために有用であり得ることを示す。
【0078】
上記の発明は理解を明確にする目的のために例示と実施例によって詳細に記載
されているが、特定の変更および改変が実施され得ることは当業者にとって明らかである。従って、明細書の記載および実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでなく、本発明は添付の請求の範囲によって明確に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、Cdn-1プローブを単離するために用いたBcl-2ファミリーPCRプライマーを示す。
【図2】図2は、実施例1で記載した方法によって得たCdn-1クローンを示す。
【図3−1】図3は、Cdn-1 cDNAのヌクレオチド配列およびそれによってコードされたCdn-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図3−2】図3は、Cdn-1 cDNAのヌクレオチド配列およびそれによってコードされたCdn-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図3−3】図3は、Cdn-1 cDNAのヌクレオチド配列およびそれによってコードされたCdn-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図4】図4は、Bcl-2およびCdn-1の両者に特異的なプローブを用いた多数の組織のノーザンブロット分析の結果を示す。
【図5−1】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図5−2】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図5−3】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図5−4】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図5−5】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図5−6】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図5−7】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図5−8】図5は、Cdn-2遺伝子およびフランキング配列の配列、ならびにCdn-2タンパク質の対応する予測されるアミノ酸配列を示す。
【図6】図6は、Cdn-1、Cdn-2および公知のBcl-2ファミリーメンバーのN末端アミノ酸配列の比較を示す。
【図7−1】図7は、Cdn-3遺伝子のヌクレオチド配列およびCdn-3タンパク質の予測されるアミノ酸配列を示す。
【図7−2】図7は、Cdn-3遺伝子のヌクレオチド配列およびCdn-3タンパク質の予測されるアミノ酸配列を示す。
【図7−3】図7は、Cdn-3遺伝子のヌクレオチド配列およびCdn-3タンパク質の予測されるアミノ酸配列を示す。
【図7−4】図7は、Cdn-3遺伝子のヌクレオチド配列およびCdn-3タンパク質の予測されるアミノ酸配列を示す。
【図7−5】図7は、Cdn-3遺伝子のヌクレオチド配列およびCdn-3タンパク質の予測されるアミノ酸配列を示す。
【図7−6】図7は、Cdn-3遺伝子のヌクレオチド配列およびCdn-3タンパク質の予測されるアミノ酸配列を示す。
【図7−7】図7は、Cdn-3遺伝子のヌクレオチド配列およびCdn-3タンパク質の予測されるアミノ酸配列を示す。
【図8】図8は、0.1% FBS中のWI-L2形質転換体の血清涸渇誘導アポトーシスにおけるCdn-1およびいくつかのその誘導体の抗アポトーシス効果を示す。
【図9】図9(WIL-2形質転換体の抗Fas誘導アポトーシス(50ng/mL抗FAS)に対する応答)は、WI-L2細胞のFAS誘導アポトーシスにおけるCdn-1およびいくつかのその誘導体の抗アポトーシス効果を示す。
【図10】図10は、FL5.12細胞におけるCdn-1およびCdn-2によるアポトーシスの調整を示す。
【図11】図11は、Cdn-1誘導体タンパク質Δ1、Δ2、およびΔ3を示す。N末端残基を矢印で示す。この誘導体タンパク質の残りの部分は完全長Cdn-1と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cdnをコードする実質的に精製されたヌクレオチド配列を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図5−6】
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【図5−7】
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【図5−8】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−252391(P2007−252391A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155798(P2007−155798)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【分割の表示】特願2005−267710(P2005−267710)の分割
【原出願日】平成6年11月30日(1994.11.30)
【出願人】(500352579)タノックス インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】