説明

新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素、それをコードする遺伝子およびその製造方法

【課題】新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素および当該シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸を提供する。
【解決手段】4,000菌株以上の微生物を分離し、その性質について鋭意研究につとめた結果、Photobacterium属に属する微生物菌体から、新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を生産する菌株を見出した。該菌株培養物から、新規なシチジン5’−モノホスホアシル酸合成酵素およびそれをコードする核酸を得ることからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素、当該酵素をコードする遺伝子、当該酵素を生産する微生物および当該酵素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合糖質の糖鎖は生体内において非常に重要な機能を有することが明らかになってきた。例えば、主に哺乳類細胞において、糖鎖は分化や発生における細胞間および細胞−細胞外マトリックス間のシグナル伝達や複合糖質のタグとして機能する重要な分子であることなどが明らかにされている。シアル酸(Sia)は、ノイラミン酸(Neu)のアミノ基やヒドロキシ基が置換された物質の総称であるが、このシアル酸は、糖鎖の非還元末端に存在することが多いため、糖鎖の機能発現において極めて重要な糖であると考えられている。たとえば、インフルエンザウィルスなどの感染には細胞表層のシアル酸含有糖鎖がきわめて重要な役割を果たしており、シアル酸含有糖鎖の研究は現在最も注目されている分野のひとつである。
【0003】
シアル酸含有糖鎖は一般にシアル酸転移酵素の触媒により合成されるため、シアル酸転移酵素は需要の高い酵素の一つである。β−ガラクトシド−α2,6−シアル酸転移酵素およびその遺伝子に関しては、動物、特に哺乳類由来のもの(Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141-145 (1993); Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735-17743 (1987))、細菌由来のものとして、フォトバクテリウム・ダムセラ(Photobacterium damselae)に属する微生物由来のもの(国際公開第WO98/38315号;米国特許6255094号公報、Yamamoto, T., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(2), 210-214 (1998), Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 123, 94-100 (1998), Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996))、また、酵素の種類は異なるが、パステレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のα2,3−シアル酸転移酵素(Yu, H., et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17618-17619 (2005))、海洋微生物由来のもの(Tsukamoto, H., et al., J. Biol. Chem., 282, 29794-29802 (2007)、Takakura, Y., et al., J. Biochem., 142, 403-412 (2007))などが挙げられる。
【0004】
シアル酸転移酵素は、糖供与体としてシチジン5’−モノホスホシアル酸(以下、CMP−Siaと略することがある)を用い、受容体となる糖鎖にシアル酸を転移させる。しかし、CMP−Siaを化学合成するには多くのステップを要するため、極めて高価である。その結果としてシアル酸含有糖鎖は高価になり、研究および医薬品として使用する際には改善すべき問題であるといわれてきた。そこで、以下の反応式を触媒する酵素シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を用いた酵素法が有力な手段として考えられている。
【0005】
【化1】

【0006】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素およびその遺伝子に関しては、動物、主に哺乳類由来のもの(Haft, R.F., et al., Mol. Micro. 19, 555-563 (1996); Rodriguez-Aparicio, L.B., Luengo, J.M., et al., J.Biol.Chem. 267, 9257-9263(1992))や、微生物由来のもの(Vann, W.F., et al., J. Biol. Chem. 262, 17556-17562 (1987); Bravo, I.G., et al., Biochem. J. 358, 585-598(2001); Tullius, M.V., et al., J. Biol. Chem. 271, 15373-15380(1996))が知られている。その中でも微生物由来の酵素は、哺乳類由来のものに比べて安定であり、かつ基質特異性が広いことが知られている(Mizanur R.M., Pohl N.L., Appl Microbiol Biotechnol. 80(5), 757-765 (2008))。例えば、シアル酸の中でもグリコリルノイラミン酸(NeuGc)は、癌などの疾病マーカーとして活用が期待されているが、哺乳類由来の酵素は、通常N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)とシチジン3リン酸からCMP−NeuAcを合成可能であるが、N−グリコリルノイラミン酸とシチジン3リン酸からCMP−NeuGcを合成できない。それに対し、微生物由来のものはグリコリルノイラミン酸をも基質にし、CMP−NeuGcを合成できる。
【0007】
また、酵素を用いた方法では化学合成と異なり1ステップでCMP−Siaの合成を完了することができる。
以上のような長所を持つことから、微生物由来の新たなシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO98/38315号パンフレット
【特許文献2】米国特許6255094号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hamamoto, T. , et al., Bioorg. Med. Chem., 1, 141-145 (1993)
【非特許文献2】Weinstein, J. , et al., J. Biol. Chem., 262, 17735-17743 (1987)
【非特許文献3】Yamamoto, T., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(2), 210-214 (1998)
【非特許文献4】Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 123, 94-100 (1998)
【非特許文献5】Yamamoto, T., et al., J. Biochem., 120, 104-110 (1996)
【非特許文献6】Yu, H., et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17618-17619 (2005)
【非特許文献7】Tsukamoto, H., et al., J. Biol. Chem., 282, 29794-29802 (2007)
【非特許文献8】Takakura, Y., et al., J. Biochem., 142, 403-412 (2007))
【非特許文献9】Haft, R.F., et al., Mol. Micro. 19, 555-563 (1996)
【非特許文献10】Rodriguez-Aparicio, L.B., et al., J.Biol.Chem. 267, 9257-9263(1992)
【非特許文献11】Vann, W.F., et al., J. Biol. Chem. 262, 17556-17562 (1987)
【非特許文献12】Bravo, I.G., et al., Biochem. J. 358, 585-598(2001)
【非特許文献13】Tullius, M.V., et al., J. Biol. Chem. 271, 15373-15380(1996)
【非特許文献14】Mizanur RM, Pohl NL., Appl Microbiol Biotechnol. 80(5), 757-765 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物に由来する新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素、およびそれをコードする遺伝子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは日本全国から4,000菌株以上の微生物を分離し、その性質について鋭意研究に努めた結果、フォトバクテリウム(Photobacterium)属に属する微生物の菌株から、新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を生産する菌株を見出し、本発明を完成させた。また、今回得られた新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列は、現在知られている哺乳類由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素および微生物由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列とは、20%以下の相同性%しか示さなかった。本発明は新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素およびそれをコードする核酸を提供する。
【0012】
本発明の好ましい態様
本発明は好ましくは以下の態様を含む。
[態様1]
単離されたタンパク質であって、以下
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列;または、
(b)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、および配列番号3からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるアミノ酸配列;
を含んでなる前記タンパク質。
【0013】
[態様2]
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有する単離されたタンパク質であって、以下:
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;
(b)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と60%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列、によりコードされるアミノ酸配列;
(d)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列、によりコードされるアミノ酸配列;および
(e)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、によりコードされるアミノ酸配列;
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、前記タンパク質。
【0014】
[態様3]
フォトバクテリウム属に属する微生物由来である、態様1または2に記載の単離されたタンパク質。
【0015】
[態様4]
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有する単離されたタンパク質であって、以下の特性:
(a)SDS−PAGE分析による62±4kDaまたは60±4kDaの分子量;および
(b)等電点電気泳動分析によるpH4.8〜pH5.2の等電点;
を有する、前記タンパク質。
【0016】
[態様5]
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性が、以下の特性:
(a)pH8〜pH9の至適pH;
(b)30℃〜40℃の至適温度;
(c)少なくとも5mMの至適MgCl濃度;
を有する、態様4に記載のタンパク質。
【0017】
[態様6]
シグナルペプチド切断後のN末端側のアミノ酸配列が配列番号5のアミノ酸配列を含み、そして内部配列として配列番号6および7の配列を含む、態様4または5に記載のタンパク質。
【0018】
[態様7]
単離された核酸であって、以下:
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする塩基配列;または、
(b)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、および配列番号3からなる群より選択される塩基配列;
を含んでなる、前記核酸。
【0019】
[態様8]
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって、以下:
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列、をコードする塩基配列;
(b)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と60%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列、をコードする塩基配列;
(c)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
(d)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列;および
(e)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
からなる群より選択される塩基配列を含んでなる、前記核酸。
【0020】
[態様9]
態様7または8に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
[態様10]
態様9に記載の発現ベクターで形質転換した宿主細胞。
【0021】
[態様11]
態様1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を発現するフォトバクテリウム属に属する単離された微生物。
【0022】
[態様12]
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
1)態様1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を生産する微生物を培養し;
2)培養した微生物または培養上清から、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質を単離する;
ことを含んでなる、前記製造方法。
【0023】
[態様13]
態様1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を生産する微生物が、フォトバクテリウム レイオグナシー(Photobacterium leiognathi)である、態様12に記載の方法。
【0024】
[態様14]
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有する組換えタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
1)態様7または8に記載の核酸を含んでなる発現ベクターで宿主細胞を形質転換し;
2)得られた形質転換細胞を培養し;そして、
3)培養した形質転換細胞またはその培養上清から、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質を単離する;
ことを含んでなる、前記製造方法。
【0025】
[態様15]
態様1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を特異的に認識する抗体。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされてきているシアル酸含有糖鎖の合成・生産手段を提供するという観点において貢献する。シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、それを含む糖鎖は糖鎖機能という観点から極めて重要な糖である。シアル酸含有糖鎖の合成には一般的にシアル酸転移酵素を用いるが、そのシアル酸転移酵素の供与体基質としてシチジン5’−モノホスホシアル酸は必須である。シチジン5’−モノホスホシアル酸は化学合成が困難で高価なことから、現在酵素を用いた合成が主流となっている。そのため、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は需要が高い酵素の一つであり、本発明の新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の提供は、そのような高い需要に応えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、JT−SHIZ−145株(寄託番号:NITE BP−695)の培養液濁度(O.D.600)と、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性の相関について示した図である。縦軸は、本培養開始後10時間目でのシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を100とし、相対活性で示した。
【図2−1】図2−1は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性における反応pHの影響を示すグラフである。トリス−塩酸バッファー(pH9)を用いたときのシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を100%とし、相対活性で示した。各バッファーは、最終濃度が100mMになるように反応液中に添加した。図中の略号は、それぞれ以下のものを示す:BisTris:Bis−Trisバッファー、KPB:リン酸バッファー、Tris−HCl:トリス−塩酸バッファー、CHES:CHESバッファー、CAPS:CAPSバッファー。
【図2−2】図2−2は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性における反応温度の影響を示すグラフである。35℃におけるシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を100%とし、相対活性で示した。
【図2−3】図2−3は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性における反応液中の各種金属塩の影響を示すグラフである。MgCl添加時におけるシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を100%とし、相対活性で示した。各金属イオンは、最終濃度が10mMになるように反応液中に添加した。
【図2−4】図2−4は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性における反応液中のMgCl濃度の影響を示すグラフである。反応液中のMgCl濃度が10mMの際のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を100%とし、相対活性で示した。
【図2−5】図2−5は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の等電点電気泳動ゲルを示した図である。記載された数字は、マーカータンパク質の等電点である。
【図3−1】図3−1は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の、各濃度のNeuAc溶液に対する反応性を示した図である。Y軸は各濃度のNeuAc溶液を基質として用いた際の酵素反応速度を示した(単位はn mol/min)。また、X軸はNeuAc溶液の反応溶液中における濃度を示した(単位はmM)。
【図3−2】図3−2は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の、各濃度のNeuAc溶液に対する反応性を、Lineweaver-Burkのプロットに表したものである。Y軸は各濃度のNeuAc溶液を基質として用いた際の酵素反応速度の逆数を示した。また、X軸はNeuAc溶液の反応溶液中における濃度の逆数を示した。図中に示されている計算式は、ミカエリス定数(Km)および最大速度(Vmax)を算出するのに用いた計算式である。
【図3−3】図3−3は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の、各濃度のCTP溶液に対する反応性を示した図である。Y軸は各濃度のCTP溶液を基質として用いた際の酵素反応速度を示した(単位はn mol/min)。また、X軸はCTP溶液の反応溶液中における濃度を示した(単位はmM)。
【図3−4】図3−4は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の、各濃度のCTP溶液に対する反応性を、Lineweaver-Burkのプロットに表したものである。Y軸は各濃度のCTP溶液を基質として用いた際の酵素反応速度の逆数を示した。また、X軸はCTP溶液の反応溶液中における濃度の逆数を示した。図中に示されている計算式は、ミカエリス定数(Km)および最大速度(Vmax)を算出するのに用いた計算式である。
【図4−1】図4−1は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素液を使用し、基質シアル酸として、NeuAcあるいはNeuGcを、CTPと反応させ、生産したCMP−Siaの面積を示したものである。NeuAcを基質とした場合のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を100%とし、相対活性で示した。
【図4−2】図4−2は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素液を、NeuAcおよびCTPに反応させた反応溶液を、さらにピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)およびβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素に反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.835分のピークはPA−ラクトース、5.103分のピークはPA−3’NeuAc−ラクトースである。
【図4−3】図4−3は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素液を、NeuAcおよびCTPに反応させた反応溶液を、さらにピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)と混合した場合のHPLC分析結果を示す図である。図4−2の実験に対してβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を反応液に混合していない対照実験の結果である。保持時間が3.834分のピークはPA−ラクトースである。
【図4−4】図4−4は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素液を、NeuGcおよびCTPに反応させた反応溶液を、さらにピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)およびβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素に反応させた反応溶液のHPLC分析結果を示す図である。保持時間が3.834分のピークはPA−ラクトース、4.763分のピークはPA−3’NeuGc−ラクトースである。
【図4−5】図4−5は、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素液を、NeuGcおよびCTPに反応させた反応溶液を、さらにピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)と混合した場合のHPLC分析結果を示す図である。図4−4の実験に対してβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素を反応液に混合していない対照実験の結果である。保持時間が3.834分のピークはPA−ラクトースである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素
本発明は、新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を提供する。本明細書において、「シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素」とは、シチジン3リン酸(CTP)とシアル酸を基質として、シチジン5’−モノホスホシアル酸の合成反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味する。本明細書において、「シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性」とは、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素について上述した活性を意味する。また、ここでいうシアル酸(Sia)とは、シアル酸ファミリーに属するノイラミン酸誘導体を示す。具体的には、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、5−デアミノ−5−ヒドロキシノイラミン酸(KDN)、ジシアル酸(ジN−アセチルノイラミン酸:Neu5Acα2,8(9)Neu5Ac)、9−O- アセチルノイラミン酸(9-O-acetyl-NeuAc)、4−O−アセチルノイラミン酸(4−O−acetyl−NeuAc)、8−スルホ−N−グリコリルノイラミン酸(N-glycoryl-8−sulfo-Neu)、などを示す。なお、ここでいうシアル酸(Sia)には、3−デオキシ−D−マンノ−オクツロン酸(KDO)も含む。
【0029】
本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は、配列番号2、または配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である。配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸28−543のアミノ酸配列のN末端にメチオニンを付加した配列に相当する。このN末端のメチオニンは、タンパク質発現のための開始コドンに由来するものであり、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素としての活性に影響を及ぼすものではない。また、タンパク質のN末端のメチオニンはしばしば細胞内プロセッシングによって脱落する場合がある。従って、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質という場合は、配列番号4と完全に一致するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である場合のみならず、N末端のメチオニンが欠失しているアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である場合も含む。
【0030】
また、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は、配列番号1、配列番号3の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質である。配列番号3の塩基配列は、配列番号1のヌクレオチド82−1632の塩基配列の5’末端に開始コドン(ATG)を付加した配列に相当する配列番号1、配列番号3の塩基配列は、それぞれ、配列番号2、配列番号4のアミノ酸配列をコードする。
【0031】
本発明の配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素において、配列番号2のアミノ酸1−27の配列は、微生物の菌体破砕液から単離および精製したシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を用いて行ったN末端アミノ酸配列解析では見つからなかった配列であり(後述する実施例2を参照)、疎水性アミノ酸に富んだ配列であるため、シグナルペプチドと考えられる。すなわち、当該微生物の菌体内において、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質が発現した後、同配列のアミノ酸27およびアミノ酸28の間で切断されると考えられる。従って、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は配列番号2のアミノ酸28−543のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であってもよい。また、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は、配列番号1のヌクレオチド82−1632の塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であってもよい。
【0032】
本発明はまた、上記の本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の変異体であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有する変異タンパク質をも包含する。このような変異タンパク質もまた、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素に含まれる。
【0033】
本発明の変異体タンパク質は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質であってもよい。置換は保存的置換であってもよく、これは特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることである。保存的置換の非限定的な例には、Ile、Val、LeuまたはAla相互の置換のような脂肪族基含有アミノ酸残基の間の置換、LysおよびArg、GluおよびAsp、GlnおよびAsn相互の置換のような極性残基の間での置換などが含まれる。
【0034】
アミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加による変異体は、野生型タンパク質をコードするDNAに、例えば周知技術である部位特異的変異誘発(例えば、Nucleic Acid Research, Vol.10, No. 20, p.6487-6500, 1982参照、引用によりその全体を本明細書に援用する)を施すことにより作成することができる。本明細書において、「1または複数のアミノ酸」とは、部位特異的変異誘発法により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度のアミノ酸を意味する。または、本明細書において「1または複数のアミノ酸」とは、1〜150個のアミノ酸、1〜100個のアミノ酸、1〜75個のアミノ酸、1〜50個のアミノ酸、1〜25個のアミノ酸、1〜15個のアミノ酸、1〜10個のアミノ酸、1〜8個のアミノ酸、1〜5個のアミノ酸、1〜3個のアミノ酸であってもよく、あるいは、1または数個のアミノ酸であってもよい。
【0035】
部位特異的変異誘発法は、例えば、所望の変異である特定の不一致の他は、変異を受けるべき一本鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて次のように行うことができる。即ち、プライマーとして上記合成オリゴヌクレオチドを用いてファージに相補的な鎖を合成させ、得られた二重鎖DNAで宿主細胞を形質転換する。形質転換された細菌の培養物を寒天にプレーティングし、ファージを含有する単一細胞からプラークを形成させる。そうすると、理論的には50%の新コロニーが一本鎖として変異を有するファージを含有し、残りの50%が元の配列を有する。上記所望の変異を有するDNAと完全に一致するものとはハイブリダイズするが、元の鎖を有するものとはハイブリダイズしない温度において、得られたプラークをキナーゼ処理により標識した合成プローブとハイブリダイズさせる。次に該プローブとハイブリダイズするプラークを拾い、培養してDNAを回収する。
【0036】
なお、酵素などの生物活性ペプチドのアミノ酸配列にその活性を保持しつつ1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を施す方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、および遺伝子を選択的に開裂し、次に選択されたヌクレオチドを除去、置換、挿入または付加し、次いで連結する方法もある。
【0037】
本発明の変異体タンパク質はまた、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質であってもよい。ヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加は、部位特異的変位誘発のほか上述した方法により行うことができる。
【0038】
本発明の変異体タンパク質はさらに、配列番号2、配列番号2のアミノ酸28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
【0039】
または、本発明の変異体タンパク質は、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
【0040】
2つのアミノ酸配列の同一性%は、視覚的検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
【0041】
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。または、2つのアミノ酸配列の同一性%は、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)などのプログラム、または、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索はデフォルト値を用いてよい。
【0042】
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マディソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereux, et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12: 387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess, Nucl. Acids Res., 14: 6745, 1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、米国国立医学ライブラリのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;WoottonおよびFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
【0043】
本発明の変異タンパク質はまた、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
【0044】
ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第3版,第6章,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に示され、例えば5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約42℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC、好ましくは5−6×SSC、0.5% SDS(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、及び例えば、約50℃−68℃、0.1−6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSC、0.5% SDSのハイブリダイゼーション条件(及び洗浄条件)を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。
【0045】
一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、0.5%程度のSDSを含み、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、より好ましくは0.2×SSC、あるいは0.1×SSCのハイブリダイゼーション)及び/又は洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、及びおよそ65℃−68℃、0.2ないし0.1×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間ないし1時間程度行う。
【0046】
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションとしては、例えば、キット中のhybridization bufferにBlocking試薬を5%(w/v)、NaClを0.5Mになるように加え、42℃で4時間行い、洗浄は、0.4% SDS、0.5xSSC中で、55℃で20分を2回、2xSSC中で室温、5分を一回行う、という条件が挙げられる。
【0047】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性は、公知の手法、例えば、J. Biol. Chem. 262, 17556-17562 (1987)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている方法で測定してもよい。例えば、基質としてCTP(シチジン3リン酸)およびN−アセチルノイラミン酸(NeuAc)を用いて酵素反応を行い、反応生成物であるシチジン5’−モノホスホシアル酸の量を評価することで酵素活性を評価することができる。なお、酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのシチジン5’−モノホスホシアル酸を合成する酵素量である。
【0048】
本発明の変異タンパク質はまた、上記に記載されたシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を抗原として作成したポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を用い、ウェスタンブロッティングなどの手法で抗原抗体反応を引き起こすタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質であってもよい。
【0049】
本発明の一態様において本発明の酵素は、フォトバクテリウム属に属する微生物由来である。本発明の酵素は、フォトバクテリウム属に属する微生物に由来するものであれば特に限定されるものではなく、フォトバクテリウム属に属する新種の微生物由来の酵素であってもよい。由来となる微生物としては、好ましくは、フォトバクテリウム・レイオグナシー(Photobacterium leiognathi)に属する微生物であり、更に好ましくは、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株(寄託番号:NITE BP−695)が挙げられる。
【0050】
本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の酵素学的性質および理化学的性質は、上記に定義したシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有することを特徴とするほか、限定するわけではないが、以下、
(a)シグナルペプチドを有する本発明のタンパク質においては、分子量がSDS−PAGE分析で62,000±4,000Da程度、または62,000±2,000Da程度であり、あるいはシグナルペプチドを持たない本発明のタンパク質においては、分子量がSDS−PAGE分析で60,000±4,000Da程度、または60,000±2,000Da程度である;
(b)等電点電気泳動により分析される等電点がpH4.8〜pH5.2程度、すなわち約pH5である;
(c)至適pHがpH8〜9の範囲である;
(d)至適温度が30〜40℃、好ましくは35℃〜40℃である;および
(e)その酵素活性のために金属塩の添加が必要であり、特に至適MgCl濃度が少なくとも5mMである;
からなる群より選択される特性の一つまたはそれより多くを有することを特徴としてもよい。
【0051】
また、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は、シチジン3リン酸(CTP)とシアル酸を基質として、シチジン5’−モノホスホシアル酸の合成反応を触媒する活性を有する。ここで、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素が基質とすることができるシアル酸として、N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)、N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)、5−デアミノ−5−ヒドロキシノイラミン酸(KDN)、9−O- アセチルノイラミン酸(9-O-acetyl-NeuAc)、4−O−アセチルノイラミン酸(4−O−acetyl−NeuAc)、8−スルホ−N−グリコリルノイラミン酸(N-glycoryl-8−sulfo-Neu)などが挙げられる。
【0052】
また、本発明のタンパク質には以下のタンパク質も含まれる。
(1)配列番号2、配列番号2のアミノ酸28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
(2)配列番号2、配列番号2のアミノ酸28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
(3)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも70%以上の同一性を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;または
(4)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるタンパク質。
【0053】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸
本発明は、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸を提供する。
本発明の核酸は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸である。本発明の核酸はまた、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸である。
【0054】
本発明の核酸は、上記の核酸の変異体であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。そのような核酸もまた、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸に含まれる。
【0055】
そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列を含んでなる核酸である。アミノ酸またはヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/付加は、上述した方法により導入することができる。
【0056】
また、そのような核酸の変異体は、配列番号2、配列番号2のアミノ酸82−543配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質、をコードする核酸である。本発明の核酸の変異体はまた、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも70%以上、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上、より好ましくは99.5%以上の同一性を有する核酸であって、該核酸はシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸である。ここで、アミノ酸配列または塩基配列の同一性は、上記に示した方法で決定することができる。
【0057】
そのような核酸の変異体はさらに、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、および配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件、または高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む核酸であって、該核酸はシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードする、前記核酸である。ここで、ストリンジェントな条件または高度にストリンジェントな条件とは、上記で定義したとおりである。
【0058】
上記の方法で得られた核酸および核酸の変異体は、各種微生物の遺伝子配列ライブラリを用いたサザンブロッティングなどの遺伝子配列スクリーニングにおいて、プローブとして使用することも可能である。
【0059】
また、本発明の核酸には、以下の核酸も含まれる。
(1)配列番号2、配列番号2のアミノ酸28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸;
(2)配列番号2、配列番号2のアミノ酸82−543配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコードする核酸;
(3)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と、少なくとも70%以上の同一性を有する核酸;または
(4)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、および配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含む核酸。
【0060】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を発現する微生物
本発明者らは、ビブリオ科フォトバクテリウム属に属する微生物が新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を発現することを見いだした。よって本発明は、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を発現する微生物を提供する。本発明の微生物は、フォトバクテリウム属に属し、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素生産能を有する微生物である。本発明の微生物は、好ましくは、フォトバクテリウム・レイオグナシー(Photobacterium leiognathi)に属する微生物であり、更に好ましくは、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株が挙げられる。フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株は、2008年12月26日付で寄託番号:NITE BP−695として、独立行政法人 製品評価基盤機構特許微生物寄託センター(NITE;千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。なお、上記のフォトバクテリウム属の微生物は一般に海洋性細菌であり、海水中または海産の魚介類から分離される。
【0061】
本発明の微生物は、例えば以下に説明するようなスクリーニング法を用いて分離することができる。海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類を微生物源とする。海水、海砂、海泥はそのままもしくは滅菌海水で希釈し、接種源とする。海産魚介類は表面の粘液等をループで擦り採って接種源としたり、内臓器を滅菌海水中で磨砕した液を接種源としたりする。これらをマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントアガー培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの平板培地上に塗布し、様々な温度条件下で生育する海洋性微生物を取得する。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)や塩化ナトリウム添加ニュートリエントブロス培地(ベクトン・ディッキンソン製)などの液体培地を用い、それぞれの微生物を培養する。微生物が十分生育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集める。集めた菌体に界面活性剤である0.3%トリトンX−100(関東化学製)、20%グリセリン(和光純薬株式会社製)を含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を添加し、菌体を懸濁する。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕する。この細胞破砕液を酵素溶液として、常法にしたがってシチジン5’−モノホスホシアル酸生合成活性を測定し、シチジン5’−モノホスホシアル酸生合成活性を有する菌株を得ることができる。
【0062】
本発明のフォトバクテリウム属に属する微生物である、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株は上記のスクリーニング法を用いることで得られた。得られた上記の菌株の菌学的性質および生理学生化学的性質については、実施例1に詳述する。
【0063】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を製造する方法
本発明は、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を製造する方法にも関する。
【0064】
(1)シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を発現する微生物を培養することによる当該酵素の製造方法
本発明の一態様において、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素はフォトバクテリウム属に属する微生物由来であり、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素生産能を有する微生物を培地に培養し、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を生産させ、これを採取することによって得られる。
【0065】
ここで用いる微生物としては、フォトバクテリウム属に属し、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素生産能を有する微生物であれば、いずれの菌株でも用いることができる。本発明の方法において用いるフォトバクテリウム属に属する微生物の例としては、フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株が挙げられる。
【0066】
上記微生物の培養に用いる培地としては、それらの微生物が利用し得る炭素源、窒素源、無機物等を含むものを用いる。炭素源としては、ペプトン、トリプトン、カゼイン分解物、肉エキス、ブドウ糖等が挙げられ、好ましくはペプトンを用いる。窒素源としては、酵母エキスを用いるのが好ましい。塩類としては、塩化ナトリウム、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、臭化カリウム、塩化ストロンチウム、ほう酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム等を適宜組み合わせて用いるのが好ましい。
【0067】
また、上記成分を含んだマリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)を用いてもよい。さらには、上記塩類を適度に含む人工海水を用い、これにペプトン、酵母エキス等を添加した培地を用いてもよい。培養条件は培地の組成や菌株によって多少異なるが、例えば、フォトバクテリウム属(Photobacterium leiognathi) JT−SHIZ−145株を培養する場合、培養温度は20〜30℃、好ましくは25〜30℃程度、培養時間は6〜48時間、好ましくは15〜24時間程度である。
【0068】
目的とする酵素は菌体内に存在するため、公知の菌体破砕法、例えば超音波破砕法、フレンチプレス破砕法、ガラスビーズ破砕法、ダイノミル破砕法などのいずれかの方法を行えばよく、その菌体破砕物から目的とする酵素を分離精製する。本発明の方法における好ましい菌体破砕法は超音波破砕法である。例えば、菌体破砕物から遠心分離により固形物を除去した後に、得られた菌体破砕液上清を市販の陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、CDP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、CMP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、疎水性カラム等のカラムクロマトグラフィーおよびネイティブ−PAGE等を適宜組み合わせて精製することができる。
【0069】
なお、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は完全に精製してもよいが、部分精製品でも十分な活性を有するため、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は精製品であってもよく、または部分精製品であってもよい。
【0070】
(2)組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を製造する方法
本発明は、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸を含む発現ベクター、および当該発現ベクターを含有する宿主細胞を提供する。
【0071】
本発明の組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を製造するためには、使用する宿主に応じて選ばれた発現ベクターに、哺乳動物、微生物、ウィルス、または昆虫遺伝子等から誘導された適当な転写または翻訳調節ヌクレオチド配列に機能可能に連結したシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸配列を挿入する。調節配列の例として、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに、転写および翻訳の開始および終結を制御する適切な配列が挙げられる。
【0072】
本発明のベクターに挿入されるシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸配列は、上述した本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸の塩基配列である。この配列は、リーダー配列(すなわち、シグナルペプチドをコードする配列)を含んでいても、含んでいなくてもよい。リーダー配列を含む場合、配列番号1のヌクレオチド1−81に相当するリーダー配列であってもよく、また他の生物源由来のリーダー配列に置き換えてもよい。リーダー配列を置き換えることによって、発現したタンパク質を宿主細胞の外に分泌させるように発現システムを設計することも可能である。
【0073】
また、本発明の組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質は、当該酵素をコードする核酸に続いて、Hisタグ、FLAGTMタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼなどをコードする核酸を連結した核酸をベクターに挿入することにより、融合タンパク質として発現することも可能である。本発明の酵素をこのような融合タンパク質として発現させることにより、当該酵素の精製および検出を容易にすることができる。
【0074】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質の発現に適する宿主細胞には、原核細胞、酵母または高等真核細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主で用いる適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, (1985)(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0075】
原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌または枯草菌が含まれる。大腸菌のような原核細胞を宿主として使用する場合、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質は、原核細胞内での組換えポリペプチドの発現を容易にするためにN末端メチオニン残基を含むようにしてもよい。このN末端メチオニンは、発現後に組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質から切り離すこともできる。
【0076】
原核宿主細胞内で用いる発現ベクターは、一般に1または2以上の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するか、または独立栄養要求性を付与する遺伝子である。原核宿主細胞に適する発現ベクターの例には、pBR322(ATCC37017)のような市販のプラスミドまたはそれらから誘導されるものが含まれる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有するので、形質転換細胞を同定するのが容易である。適切なプロモーターならびにシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸のDNA配列が、このpBR322ベクター内に挿入される。他の市販のベクターには、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, スウェーデン、ウプサラ)およびpGEM1(Promega Biotech.、米国、ウイスコンシン州、マディソン)などが含まれる。
【0077】
原核宿主細胞用の発現ベクターにおいて通常用いられるプロモーター配列には、tacプロモーター、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター、ラクトースプロモーター(Changら、Nature 275:615, 1978;およびGoeddelら、Nature 281:544, 1979、引用によりその全体を本明細書に援用する。)などが含まれる。
【0078】
また、組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を酵母宿主内で発現させてもよい。好ましくは、サッカロミセス属(Saccharomyces、例えば、S. cerevisiae )を用いるが、ピキア属(Pichia)またはクルイベロミセス属(Kluyveromyces)のような他の酵母の属を用いてもよい。酵母ベクターは、2μ酵母プラスミドからの複製起点の配列、自立複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択可能なマーカー遺伝子を含有することが多い。酵母α因子リーダー配列を用いて、組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質の分泌を行わせることもできる。酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適する他のリーダー配列も知られている。酵母を形質転換する方法は、例えば、Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 1929-1933, 1978(引用によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0079】
哺乳動物または昆虫宿主細胞培養系を用いて、組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を発現することもできる。哺乳動物起源の株化細胞系も用いることができる。哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳制御配列は、ウィルスゲノムから得ることができる。通常用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウィルス、アデノウイルス2などから誘導される。SV40ウィルスゲノム、例えば、SV40起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位から誘導されるDNA配列を用いて、哺乳動物宿主細胞内での構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝子要素を与えてもよい。哺乳動物宿主細胞内で用いるためのベクターは、例えば、OkayamaおよびBerg(Mol. Cell. Biol., 3: 280, 1983、引用によりその全体を本明細書に援用する。)の方法で構築することができる。
【0080】
本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を産生する1つの方法は、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、当該タンパク質が発現する条件下で培養することを含む。次いで、用いた発現系に応じてシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を培養培地または細胞抽出液から回収する。
【0081】
組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を精製する操作は、用いた宿主の型および本発明のタンパク質を培養培地中に分泌させるかどうかといった要因に従って適宜選択される。例えば、組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を精製する操作には、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、CDP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、CMP−ヘキサノールアミンアガロースカラム、疎水性カラム等のカラムクロマトグラフィーおよびネイティブ−PAGE等、またはそれらの組み合わせが含まれる。また、組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素に精製を容易にするタグなどを融合させて発現させた場合には、アフィニティークロマトグラフィーによる精製方法を利用してもよい。例えば、ヒスチジンタグ、FLAGTMタグ、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)などを融合させた場合には、それぞれ、Ni−NTA(ニトリロトリ酢酸)カラム、抗FLAG抗体を連結したカラム、またはグルタチオンを連結したカラム、などを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0082】
本発明の組換えシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は精製品であってもよく、または部分精製品であってもよい。
抗体
本発明は、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質に対する抗体を提供する。本発明の抗体は、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質、またはそのフラグメント、に対して作製してもよい。ここで、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のフラグメントは、当該酵素のアミノ酸配列中、少なくとも6アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、または少なくとも30アミノ酸を含む配列を有するフラグメントである。
【0083】
抗体は、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素またはそのフラグメントを、当該技術分野において抗体作製のために用いられる動物、例えば、限定されるわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギなどに免疫して作製してもよい。抗体はポリクローナル抗体であっても、またはモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、当業者に周知の抗体作製方法に基づいて作製することができる。
【0084】
本発明の抗体は、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は、本発明のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素タンパク質を、ウェスタンブロッティングやELISAなどのアッセイにおいて検出するのに用いることもできる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
実施例1: シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を生産する微生物のスクリーニングと菌株の同定
(1)スクリーニングと菌株同定
海水、海砂、海泥あるいは海産魚介類等のサンプルを細菌の探索源とした。これらサンプルをマリンブロスアガー2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる平板培地上に塗布し、15℃、25℃もしくは30℃で生育する微生物を取得した。常法に従い、得られた微生物を純粋培養した後、マリンブロス2216培地(ベクトン・ディッキンソン製)からなる液体培地を用いてそれぞれの微生物を培養した。微生物が十分成育した後に、培養液から菌体を遠心分離によって集めた。集めた菌体に、0.3%トリトンX−100(関東化学製)、20%グリセリン(和光純薬株式会社製)を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を添加し、菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕した。この細胞破砕液を粗酵素溶液としてシチジン5’−モノホスホシアル酸生合成活性を測定し、シチジン5’−モノホスホシアル酸生合成活性を有する菌株JT−SHIZ−145株(寄託番号:NITE BP−695)を得た。なお、JT−SHIZ−145株はイカの体表面から得られた。
【0087】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の活性は、以下の方法で測定した。CTP(275nmol)、シアル酸としてNeuAc(140nmol)、MgClを10mM濃度になるように添加し、上記に記した方法で調製した粗酵素溶液を含む反応溶液(50μl)を用いて酵素反応を行った。酵素反応は30℃で10分間から180分間程度行った。反応終了後、反応溶液10μlに80μlの50mMリン酸1カリウム水溶液(pH4.65)を加え、HPLCで反応生成物の分析を行った。HPLCシステムとしてShimadzu LC10A(島津製作所製)を用い、分析カラムにはShim-pack IC-A1(4.6mm ID×100mm L、島津GLC社製)を用いた。溶出液50mMリン酸1カリウム水溶液(pH4.65)で平衡化したカラムに80μlの反応液を注入した。CTP、CDP、CMPおよびCMP−NeuAcの溶出には溶出液を用い、流速を変化させた一液送液を行うことにより順次上記物質を溶出した。なお、分析は以下の条件で行った(流速:0.5ml/分(0〜8分)、1ml/分(9〜20分)、カラム温度:40℃、検出:UV(波長:280nm))。このHPLC解析で、CMP−NeuAcのピーク面積をあらかじめ濃度の分かっている標品CMP−NeuAc面積と比較することにより、反応生産物CMP−NeuAcの量を算出し、酵素活性を算出した。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのCMP−NeuAcを合成する酵素量である。
【0088】
(2)菌培養液濁度と酵素活性の相関
上記(1)で得られた菌株JT−SHIZ−145株をマリンブロス2216平板培地上で継代培養した。その菌体をループで採取、マリンブロス2216液体培地(以下MB培地と記載することがある)6mlに接種し、25℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
【0089】
本培養は、以下の手順で実施した。MB培地を1000ml容のコブ付フラスコに300ml張り込んだものを用意した。前培養液は分光光度計を用いてO.D.600の値を測定し、本培養培地300mlのO.D.600が0.25になるように前培養液を接種し、25℃、毎分180回転で合計24時間振とう培養した。培養液は2時間ごとに2mlずつ採取し、O.D.600の値を測定後、遠心して集菌し、0.3%トリトンX−100(関東化学製)、20%グリセロール(和光純薬株式会社製)を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を添加し、菌体を懸濁した。この菌体懸濁液を氷冷下、超音波処理し細胞を破砕した。この細胞破砕液を粗酵素溶液としてシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を測定した(図1)。その結果、菌体培養液の濁度(O.D.600)と、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性は比例関係にあることが判明した。
【0090】
実施例2:JT−SHIZ―145株からのシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の抽出、精製および精製タンパク質のアミノ末端アミノ酸配列の決定
(1)抽出及び精製
マリンブロス2216平板培地上で継代培養したJT−SHIZ―145株(寄託番号:NITE BP−695)のコロニーから菌体をループで採取し、マリンブロス2216液体培地(以下MB培地と記載することがある)6mlに接種し、25℃、毎分180回転で8時間振とう培養した。
【0091】
本培養は、以下の手順で実施した。300ml−MB培地を1000ml容のコブ付フラスコに300ml張り込み、これを12本(合計3.6L)用意した。各々のフラスコに前培養液6mlを接種し、25℃、毎分180回転で16時間振とう培養した。培養液を遠心分離し、菌体を回収した。湿重量で約10.8gを得た。
【0092】
この菌体を、175mlの0.3%トリトンX−100、20%グリセロールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)に懸濁し、氷冷下で超音波破砕した。菌体破砕液を4℃、100,000×gで1時間、遠心分離を行い、上清を得た。上清はポアサイズ0.45μmの滅菌フィルターユニット(ナルジェヌンク製)を通し、粗酵素液とした。
【0093】
この粗酵素液を、0.3%トリトンX−100、20%グリセロールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したHiLoad 26/10 Q Sepharose HP(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製)という陰イオン交換カラムに吸着させ、0.3%トリトンX−100、20%グリセロールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)から1M塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させた。その結果、塩化ナトリウム濃度が0.2M付近で溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
【0094】
回収した画分を0.3%トリトンX−100、20%グリセロールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で希釈し、予め0.3%トリトンX−100、20%グリセロールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したMonoQ 5/50 GL(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製)に吸着させ、0.3%トリトンX−100、20%グリセロールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)から1M塩化ナトリウムを含む同緩衝液へ直線濃度勾配法で溶出させ。その結果、塩化ナトリウム濃度が0.2M付近に溶出された酵素活性を有する画分を回収した。
【0095】
次に、この酵素活性を示す画分を、予め0.2Mの塩化ナトリウム及び0.3%トリトンX−100、20%グリセロールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したゲルろ過カラムHiLoad16/60 Superdex200 prep grade(GEヘルスケア ライフサイエンス株式会社製)に供して、ゲルろ過を行い、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を示す蛋白質画分を回収した。
【0096】
活性のあった画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した結果、目的酵素は単一のバンドを示し、約60,000の分子量を示した。精製された画分の比活性は、菌体破砕時の比活性に比べて19.3倍に上昇した(表1)。以上より、JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の比活性は0.164U/mgであった。
【0097】
粗酵素液からのJT−SHIZ−145株のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の精製について、上述したそれぞれの精製工程を経た試料の酵素活性を表1に示す。酵素活性は、実施例1に記載したのと同様に、表1脚注に示した反応条件で測定した。また、タンパク質の定量はCoomassie Protein Assay Reagent(PIERCE製)を用いて、添付されたマニュアルにしたがってタンパク質の定量を行った。酵素1単位(1U)は、1分間に1マイクロモルのCMP−NeuAcを生成する酵素量とした。
【0098】
【表1】

【0099】
(2)アミノ末端アミノ酸配列の決定
上記(1)で単一バンドまで精製した酵素溶液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した。泳動後にタンパク質をPVDF膜(Immunobilon-P・ミリポア社製)に転写し、CBBにて染色した後、目的のバンド部分を切り出し、株式会社島津製作所 分析計測事業部にアミノ酸配列分析を依頼した。その結果、アミノ末端がアラニンで始まる配列の20残基目(Ala Gln Val Pro Ala Asp Thr Lys Leu Ala Cys Lys Gln Glu Leu Val Arg Gly Asn Gly:配列番号5)まで確定することができた。
【0100】
(3)内部アミノ酸配列の決定
上記(1)で単一バンドまで精製した酵素溶液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(アクリルアミドゲルの濃度は12.5%)した。泳動後CBBにて染色し、目的のバンド部分を切り出し、株式会社アプロサイエンスに内部アミノ酸配列分析を依頼した。その結果、グリシンで始まる配列の12残基(Gly Leu Gly Val Thr Ala Val Leu Glu Asn Gln Glu:配列番号6)、グルタミン酸から始まる配列の11残基(Glu Thr Pro Ala Tyr Asn Phe Thr Pro Leu Ala:配列番号7)の2断片を確定することができた。
【0101】
(4)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする全遺伝子配列の決定
上記(2)(3)で決定したアミノ末端アミノ酸配列および内部アミノ酸配列をもとに、JT−SHIZ−145株の全ゲノム配列からシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする遺伝子配列を検索した。結果、配列表の配列番号1の配列を得た。この配列は、JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の全塩基配列である。フォトバクテリウム属 JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素遺伝子のORFは、1632塩基対からなり、543個のアミノ酸をコードしていた。このアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示した。
【0102】
また、この配列を元に、前述した遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)を用い、現在知られている主要な哺乳類由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列および微生物由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列との相同性%を、デフォルト値を用いたmaximum matching 解析により検索した。具体的には哺乳類由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列として、ウシ(Bos Taurus)由来(アクセッション番号:NP 001030475、XP 612905)、ヒト(Homo sapiens)由来(アクセッション番号:NP 061156)、およびマウス(Mus musculus)由来(アクセッション番号:NP 034038)、ならびに微生物由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列として、大腸菌(E. coli)由来(アクセッション番号:P13266)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)Pm70由来(アクセッション番号:NP 245124)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)由来(アクセッション番号:NP 273133)を用い、配列番号2のアミノ酸配列と比較した。表2に示したとおり、いずれの相同性も20%以下と低い値を示した。
【0103】
【表2】

【0104】
同様に、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトを通してBLASTプログラムを用い、同ウェブサイトのデータベース上のアミノ酸配列情報と、本酵素のアミノ酸配列全長と同一性が高いアミノ酸配列を検索した。なお、その際にはパラメーターはデフォルトを用い、参照するデータベースにはnon-redundant protein sequences (nr)を用いた。その結果、最も同一性が高いものはビブリオ属の微生物 Vibrio angustum S14 の、オリゴペプチドABC輸送体タンパク質(ペリプラズマ・オリゴペプチド結合タンパク質)と推定されるアミノ酸配列(アクセッション番号:ZP 01234945)であり、同一性は92%だった。
【0105】
実施例3:JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の酵素活性の至適pH、至適温度、至適金属塩濃度および等電点
実施例2−1で調製した精製酵素を用い、JT−SHIZ−145株(寄託番号:NITE BP−695)由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の至適pH、至適温度、至適金属塩濃度・種類、および等電点を調べた。
【0106】
(1)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の酵素活性の至適pH
Bis−Trisバッファー(pH6.0、pH6.5、およびpH7.0)、リン酸バッファー(pH7.0、pH7.5、およびpH8.0)、トリス−塩酸バッファー(pH8.0、pH8.5、およびpH9.0)、CHESバッファー(pH9.0、pH9.5、およびpH10.0)、CAPSバッファー(pH10.0、pH10.5、およびpH11.0)を調製し、これを用いて、30℃で各pHにおける酵素活性を測定した。各バッファーは、最終濃度が100mMになるように反応液中に添加した。
【0107】
その結果、図2−1に示すように、pH9.0において、酵素活性が最大であった。なお、各pHにおける酵素活性はトリス−塩酸バッファー(pH9.0)使用時における酵素活性を100とする相対活性で示した。
【0108】
(2)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の酵素活性の至適温度
トリス−塩酸バッファー(pH9.0、最終濃度100mM)を用いて、5℃から75℃までの5℃毎の反応温度において、酵素活性を測定した。
【0109】
その結果、図2−2に示すように、35℃において、酵素活性が最大であった。なお、各温度における酵素活性は35℃における酵素活性を100とする相対活性で示した。
(3)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の酵素活性に必要な金属塩
トリス−塩酸バッファー(pH9.0)を用いて、30℃で、反応液中に最終濃度10mMになるようにMgCl、MnCl、CaCl、FeSO、CuSOを加えたもの、および金属塩を添加しないものを調整し、酵素活性を測定した。
【0110】
その結果、図2−3に示すように、MgClを添加したものにおいて酵素活性は最大となった。また、金属塩を添加しない場合、酵素活性は全く消失していた。なお、各金属塩添加における酵素活性は、MgCl添加における酵素活性を100とする相対活性で示した。
【0111】
(4)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の酵素活性の至適MgCl濃度
トリス−塩酸バッファー(pH9.0、最終濃度100mM)を用いて、30℃で、反応液中のMgCl濃度をそれぞれ0mM、0.1mM、0.5mM、1.0mM、2.0mM、5.0mM、10.0mM、15.5mM、20.0mM、30.0mM、40.0mM、50.0mMに調整し、酵素活性を測定した。
【0112】
その結果、図2−4に示すように、5mM以上の濃度においてほぼ同程度の酵素活性の高さを維持した。なお、各MgCl濃度における酵素活性はMgCl濃度10.0mMにおける酵素活性を100とする相対活性で示した。
【0113】
(5)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の等電点
精製酵素を、等電点電気泳動ゲル(プレキャスト ID Novex(登録商標) IEF ゲル pH 3-10 IEF ゲル, インビトロジェン社製)を用い、定法に従って等電点電気泳動を行った。泳動後のゲルはCBB染色した。その結果、図2−5に示すように、等電点はpH5であった。
【0114】
実施例4:JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のCTPおよびNeuAcに対するKm値およびVmax値
実施例2−1で調製した精製酵素を用い、JT−SHIZ−145株(寄託番号:NITE BP−695)由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のCTPおよびNeuAcに対するミカエリス定数(Km)および最大速度(Vmax)を調べた。
【0115】
(1)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のNeuAcに対するミカエリス定数(Km)および最大速度(Vmax)
100mM、50mM、25mM、10mM、5mM、1mM、0.1mM濃度のNeuAc溶液を調製し、これらを用いて、35℃で各NeuAc濃度に対する酵素活性を測定した。その際、CTPは最終濃度が5mMになるように添加した。その結果を表3に示した。
【0116】
得られた結果を定常状態における反応速度式の導き方に従い、Michaelis-Mentenの式を変形したLineweaver-Burk法を用いて、ミカエリス定数および最大速度を算出した(図3−1、2)。結果、本酵素のNeuAcに対するミカエリス定数(Km)は2.234(mM)、最大速度(Vmax)は0.104(nmol/min)であることが示された。
【0117】
【表3】

【0118】
(2)JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のCTPに対するミカエリス定数(Km)および最大速度(Vmax)
50mM、25mM、10mM、5mM、2.5mM、1mM、0.1mM濃度のCTP溶液を調製し、これを用いて、35℃で各CTP濃度に対する酵素活性を測定した。その際、NeuAcは最終濃度が5mMになるように添加した。結果を表4に示した。
【0119】
得られた結果を定常状態における反応速度式の導き方に従い、Michaelis-Mentenの式を変形したLineweaver-Burk法を用いて、ミカエリス定数および最大速度を算出した(図3−3,4)。結果、本酵素のCTPに対するミカエリス定数(Km)は1.571(mM)、最大速度(Vmax)は0.116(nmol/min)であることが示された。
【0120】
【表4】

【0121】
実施例5:JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の各種シアル酸基質特異性(アセチル型、グリコリル型)の比較
材料および方法
JT−SHIZ−145株菌株(寄託番号:NITE BP−695)から調製した菌体破砕液を、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて電気泳動的に単一バンドまで精製したシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素を用いて、各種シアル酸からのCMP−Sia合成の有無を調べるために、以下の実験を行った。
【0122】
各種のシアル酸を用いたCMP−Sia合成反応
反応溶液50μl中に、基質CTP(275nmol、反応溶液中での最終濃度:5.5mM)、100mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で溶解した各種シアル酸(140nmol、反応溶液中での最終濃度:2.8mM)、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素(約0.65mU)、塩化マグネシウム(反応溶液中での最終濃度:10mM)からなる反応溶液を調製して、30℃で約16時間、酵素反応を行った。なお、基質として用いたシアル酸は、N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)とN−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を用いた。
【0123】
反応終了後、反応溶液10μlに80μlの50mMリン酸1カリウム水溶液(pH4.65)を加え、HPLCで反応生成物の分析を行った。HPLCシステムとしてShimadzu LC10A(島津製作所製)を用い、分析カラムにはShim-pack IC-A1(4.6mm ID×100mm L、島津GLC社製)を用いた。溶出液50mMリン酸1カリウム水溶液(pH4.65)で平行化したカラムに80μlの反応液を注入した。CTP、CDP、CMPおよびCMP−Siaの溶出には溶出液を用い、流速を変化させた一液送液を行うことにより順次上記物質を溶出した。なお、分析は以下の条件で行った(流速:0.5ml/min(0〜10分)、1ml/min(11〜20分)、カラム温度:40℃、検出:UV(波長:280nm))。
【0124】
上記の方法を用いて、それぞれの基質シアル酸から生成したCMP−Siaの有無を測定した。
結果
N−アセチルノイラミン酸またはN−グリコリルノイラミン酸を基質シアル酸として用いたところ、それぞれCMP−NeuAcまたはCMP−NeuGcが生成した(図4−1)。すなわち、N−アセチルノイラミン酸およびN−グリコリルノイラミン酸は、JT−SHIZ−145株由来シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素によるCMP−Sia合成のための基質シアル酸として利用可能であることが明らかとなった。なお、各基質シアル酸に対する相対活性は、N−アセチルノイラミン酸に対するシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を100とした場合を示す。
【0125】
CMP−Siaの形成確認
次に、産物が確かにCMP−Siaであることを明らかにするために、CMP−Siaを糖供与基質とする基質特異性を有するシアル酸転移酵素を用い、ピリジルアミノ化(PA)−ラクトースへのシアル酸転移反応を行った。この場合、PA−ラクトース以外のピリジルアミノ化糖鎖の生成は糖供与基質であるCMP−Siaの存在を示すものとなるので、それにより、本発明の酵素を用いてCMPとシアル酸との反応によりCMP−Siaが生成したことを示すことができる。
【0126】
シアル酸転移酵素としてJT−ISH−224由来β−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素液(WO2006/112253を参照)を用い、ピリジルアミノ化糖鎖を糖受容体基質として酵素反応を行った。ピリジルアミノ化糖鎖としては、ピリジルアミノ化ラクトース(Galβ1−4Glc−PA、タカラバイオ製)を用い分析した。上記の各CMP−Sia(NeuAcあるいはNeuGc)反応液5μlに1μlのβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素液(10mU)、2.5μlの10pmol/μl糖受容体基質、2.5μlの3M 塩化ナトリウム水溶液、1.5μlの1M カコジル酸バッファー(pH5.0)、および滅菌蒸留水を2.5μl加え、30℃下で1時間反応させた。反応終了後、HPLCで反応生成物の分析を行った。HPLCシステムとしてShimadzu LC10A(島津製作所製)を用い、分析カラムにはTakara PALPAK Type R(タカラバイオ製)を用いた。0.15% N−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン(pH5.0)で平衡化したカラムに80μlの溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を加えた反応液を注入した。ピリジルアミノ化糖鎖の溶出には溶出液A(100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)および溶出液B(0.5%、n−ブタノールを含む100mM 酢酸−トリエチルアミン、pH5.0)を用い、30〜50%溶出液Bの直線濃度勾配法(0〜20分)および100%溶出液B(21〜35分)により、順次ピリジルアミノ化糖鎖を溶出した。なお、分析は以下の条件で行った(流速:1ml/min、カラム温度:40℃、検出:蛍光(Ex:320nm、Em:400nm))。
【0127】
その結果、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素液をNeuAcおよびCTPに反応させた反応溶液を、さらにピリジルアミノ化ラクトース(PA−ラクトース)およびβ−ガラクトシド−α2,3−シアル酸転移酵素に反応させた場合、PA−ラクトース以外のピリジルアミノ化糖鎖が生成したことが示された。よって、JT−SHIZ−145株由来のシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素はN−グリコリルノイラミン酸を基質としCMP−Siaを合成できることが明らかとなった(図4−2、3、4、5)。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素およびそれをコードする核酸を提供することにより、生体内において重要な機能を有することが明らかにされてきている糖鎖の合成・生産手段を提供する。特に、シアル酸は、生体内の複合糖質糖鎖において非還元末端に存在することが多く、シアル酸含有糖鎖は糖鎖機能という観点から極めて重要な糖である。シアル酸含有糖鎖の合成はシアル酸転移酵素を用いた方法が最も有用だが、供与体基質としてシチジン5’−モノホスホシアル酸を必要とする。そのシチジン5’−モノホスホシアル酸は化学合成が困難で高価なことから、現在酵素を用いた合成が主流となっている。そこで、本発明の新規なシチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素は、糖鎖を応用した医薬品、機能性食品等の開発に利用することが可能である。
【受託番号】
【0129】
フォトバクテリウム・レイオグナシー JT−SHIZ−145株は、2008年 12月26日付で寄託番号:NITE BP−695として、独立行政法人 製品評価基盤機構特許微生物寄託センター(NITE)(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。
【配列表フリーテキスト】
【0130】
配列番号1:フォトバクテリウム・レイオグナシー由来、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸配列。
配列番号2:フォトバクテリウム・レイオグナシー由来、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列。
【0131】
配列番号3:シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素をコードする核酸配列;配列番号1のヌクレオチド82−1632に加えて、5’末端側に開始コドンATGを含む。
配列番号4:シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のアミノ酸配列;配列番号2のアミノ酸28−543に加えて、N末端側にメチオニンを含む。
【0132】
配列番号5:フォトバクテリウム・レイオグナシー由来、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素のシグナル配列切断後のN末端アミノ酸配列。
配列番号6:フォトバクテリウム・レイオグナシー由来、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の内部アミノ酸配列。
【0133】
配列番号7:フォトバクテリウム・レイオグナシー由来、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素の内部アミノ酸配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたタンパク質であって、以下
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列;または、
(b)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、および配列番号3からなる群より選択される塩基配列を含んでなる核酸によってコードされるアミノ酸配列;
を含んでなる前記タンパク質。
【請求項2】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有する単離されたタンパク質であって、以下:
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列;
(b)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と60%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列、によりコードされるアミノ酸配列;
(d)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列、によりコードされるアミノ酸配列;および
(e)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、によりコードされるアミノ酸配列;
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、前記タンパク質。
【請求項3】
フォトバクテリウム属に属する微生物由来である、請求項1または2に記載の単離されたタンパク質。
【請求項4】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有する単離されたタンパク質であって、以下の特性:
(a)SDS−PAGE分析による62±4kDaまたは60±4kDaの分子量;および
(b)等電点電気泳動分析によるpH4.8〜pH5.2の等電点;
を有する、前記タンパク質。
【請求項5】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性が、以下の特性:
(a)pH8〜pH9の至適pH;
(b)30℃〜40℃の至適温度;
(c)少なくとも5mMの至適MgCl濃度;
を有する、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
シグナルペプチド切断後のN末端側のアミノ酸配列が配列番号5のアミノ酸配列を含み、そして内部配列として配列番号6および7の配列を含む、請求項4または5に記載のタンパク質。
【請求項7】
単離された核酸であって、以下:
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする塩基配列;または、
(b)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、および配列番号3からなる群より選択される塩基配列;
を含んでなる、前記核酸。
【請求項8】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質をコードする単離された核酸であって、以下:
(a)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含むアミノ酸配列、をコードする塩基配列;
(b)配列番号2、配列番号2のアミノ酸残基28−543、配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列と60%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列、をコードする塩基配列;
(c)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列において、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加を含む塩基配列;
(d)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列;および
(e)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド82−1632、配列番号3からなる群より選択される塩基配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
からなる群より選択される塩基配列を含んでなる、前記核酸。
【請求項9】
請求項7または8に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項11】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を発現するフォトバクテリウム属に属する単離された微生物。
【請求項12】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
1)請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を生産する微生物を培養し;
2)培養した微生物または培養上清から、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質を単離する;
ことを含んでなる、前記製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を生産する微生物が、フォトバクテリウム レイオグナシー(Photobacterium leiognathi)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有する組換えタンパク質の製造方法であって、以下の工程:
1)請求項7または8に記載の核酸を含んでなる発現ベクターで宿主細胞を形質転換し;
2)得られた形質転換細胞を培養し;そして、
3)培養した形質転換細胞またはその培養上清から、シチジン5’−モノホスホシアル酸合成酵素活性を有するタンパク質を単離する;
ことを含んでなる、前記製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質を特異的に認識する抗体。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図2−5】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【公開番号】特開2011−223885(P2011−223885A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93908(P2010−93908)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】