説明

新規なヘパリン様硫酸化多糖類

【課題】本発明は、生物医学分野において用いるための、抗凝固活性、抗トロンビン活性、および血管形成活性を示す物質を提供することを目的とする
【解決手段】ヒアルロン酸およびヒアルロン酸エステルのような多糖類を硫酸化する誘導体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学、健康管理、および医薬への利用において有用である新規な生体物質の製造のための、多糖類およびその半合成誘導体、特にヒアルロン酸およびそのエステルおよびテトラアルキルアンモニウム塩のようなグリコサミノグリカンの均一な硫酸化、ならびにそのような生体物質自体に関する。トロンビン時間および全血凝固時間の両方の延長によって明示されるように、該硫酸化誘導体は抗トロンビン活性を示す。さらに、該硫酸化誘導体に接触させて置いた内皮細胞の形および増殖および溶血反応がないことは、これらの物質は有望なヘパリン様化合物であることが示される。
【背景技術】
【0002】
生物学的起源の多くの分子は高分子電解質であり、それらの相互作用は多種多様な生化学反応において非常に重要である。その結果、合成および/または半合成高分子電解質が現在使用されている。これら高分子電解質は天然高分子電解質の生物学的特徴を模倣し、出発物質と比較して幾らかの異なる特徴を有し得る。
【0003】
生物起源の高分子電解質には硫酸化多糖類、特にヘパリンおよびその誘導体が含まれ[D.A.Lane and U. Lindahl編, Heparin-Chemical and Biological Properties, Clinical Applications, Edward Arnold, London]、これらは細胞−基質相互作用、特にウイルス活性阻害の過程、血液凝固の過程、脂質除去等において重要な役割を果す。
【0004】
ヘパリンは、硫酸化グリコサミノグリカン群の中で最も生物学的に反応性である。その抗トロンビンおよび抗凝固特性はよく知られている。実際、心臓血管病の管理に広く使用され、開心術の成功の大きな一助となる。それにもかかわらず、ヘパリンの構造は単純でなく、変種の数のために完全には知られていない。市販のヘパリンは、抗凝固活性を変化させる分子量3,000〜37,500の範囲の、21個のヘパリンから成る[Nader等, (1974) Biochem. Biophys. Res. Commun. 57:488]。
【0005】
ヘパリンの抗血液凝固活性は構造的特徴、例えば、硫酸化度、解離度、COOおよびSO基の個々の配列、ならびに分子の形および大きさに因るものである。これらの因子は、ヘパリンのイオン結合能において重要であるため、生物学的活性に関係すると思われる[Stivala等, (1967) Arch. Biochem. Biophys. 122:40]。大きく陰性に荷電した性質のため、ヘパリンは陽イオンに強い親和性を有し、その活性はpHに依存する。
【0006】
容易に利用できる天然多糖類の殆どは、ヘパリン類似体を得る試みにおいて硫酸化されており[Hoffman等 (982) Carbohydrate Res. 2:115;Kindness等 (1980) Brit. J. Pharmac. 69:675;Horton等 (1973) Carbohydrate Res. 30:349;Okada等 (1979) Makromol. Chem. 180:813;Kikuchi等 (1979) Nippon Kagaku Kaishi 1:127;Manzac等 (1981) Proc. Third M.I.S.A.O. 5:504]、最近では、硫酸基、カルボキシル基、およびスルホン酸基をポリスチレン[Kanmaugue等 (1985) Biomaterials 6:297]およびポリウレタン[Ito等 (1992) Biomaterials 13:131]のような合成高分子に結合させた。これらの物質の抗凝固活性はヘパリンの活性よりもずっと低く、置換基の結合および型、置換度、ならびに配列に依存する。
【0007】
多糖類の硫酸化を可能にする幾つかの化学反応が知られているが[国際出願WO 88/00211号;欧州特許第0 340 628号;Nagasawa等 (1986) Carbohydrate Research 158:183-190]、該多糖類特有の化学的および化学物理学的特性の上に、抗凝固活性のような新規な特性をも有する硫酸化多糖類を得ることは未だなお可能ではない。
【0008】
【特許文献1】国際公開 WO 88/00211号
【特許文献2】欧州特許第0 340 628号
【非特許文献1】D.A.Lane and U. Lindahl編, Heparin-Chemical and Biological Properties, Clinical Applications, Edward Arnold, London
【非特許文献2】Nader等, (1974) Biochem. Biophys. Res. Commun. 57:488
【非特許文献3】Stivala等, (1967) Arch. Biochem. Biophys. 122:40
【非特許文献4】Hoffman等 (982) Carbohydrate Res. 2:115
【非特許文献5】Kindness等 (1980) Brit. J. Pharmac. 69:675
【非特許文献6】Horton等 (1973) Carbohydrate Res. 30:349
【非特許文献7】Okada等 (1979) Makromol. Chem. 180:813
【非特許文献8】Kikuchi等 (1979) Nippon Kagaku Kaishi 1:127
【非特許文献9】Manzac等 (1981) Proc. Third M.I.S.A.O. 5:504
【非特許文献10】Kanmaugue等 (1985) Biomaterials 6:297
【非特許文献11】Ito等 (1992) Biomaterials 13:131
【非特許文献12】Nagasawa等 (1986) Carbohydrate Research 158:183-190
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
多糖類の抗凝固特性に関連した構造的性質を研究する本試みは、第一に規則的な反復単位からなるよく定義された化学基を有するポリマーを選択すること、第二にそれらの化学構造を修飾することであった。
【0010】
故に、該分子は:
(1)モノマー単位の規則的な配列を含み、そして
(2)それらの構造を破壊することなく化学的に修飾され得なければならない。
哺乳動物の細胞外マトリックスの主成分であるヒアルロン酸はN−アセチルグルコサミンおよびグルクロン酸残基の交互単位からなり、故に適当な高分子と思われる。
【0011】
適当な硫酸化剤の使用による、多糖またはその半合成誘導体のうちの1つの高分子鎖に存在するアルコール性ヒドロキシルの硫酸化によって、出発物質のとは異なる化学物理学的特性および殆ど全ての生物学的特性を有する新規な誘導体を形成し得る。
【0012】
本発明において基質として用いられ得る高分子電解質多糖類にはグリコサミノグリカン類が含まれる。これらの中で先ず第一のものはヒアルロン酸およびその半合成誘導体である。幾つかの特に重要なヒアルロン酸の半合成誘導体は、脂肪族、アル脂肪族(araliphatic)、複素環式および脂環式系のアルコールとのそれらのエステルであり、米国特許第4,851,521号、4,965,353号、および5,202,431号、ならびに欧州特許第0 216 453号に記載された「HYAFF」と称されるものである。このような前処理した生体物質の硫酸化は本発明の新規な特徴である。この場合、硫酸化反応は均一相において起こらず、不均一相において生体物質の界面上で起こり、反応溶媒にさらしたヒドロキシル基を活性化する。
【0013】
生体物質上で直接得ることができる硫酸化度は重要な特性であり、綿密な速度論的調節を必要とする。マトリックスを構成する高分子の親水性を増大させることにより起こる、生体物質の可溶化を避けるために、出発生体物質の親水性度に依存しながらも、二量体単位あたりの−SO基の数があるレベルを超えてはならず、通常1.5〜2未満である。例えば、全てのカルボキシルがベンジル基とのエステル結合に関与するHYAFF 11フィルムの場合において、最大硫酸化度は1.5を超えるべきではない。
【0014】
硫酸化のために通常用いられる試薬には三酸化硫黄とピリジン間のコンプレックス(SO−ピリジン)が含まれる。
【0015】
約0〜60℃の温度範囲において、ジメチルスルホキシド、N,N'−ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドンのような非プロトン性溶媒中で、溶液中の多糖のテトラブチルアンモニウム塩に、または部分的エステルの場合、テトラブチルアンモニウム塩の形で残存するカルボキシル官能性をもつ多糖エステルの溶液に、硫酸化試薬を加えることによって反応を実施する。
【0016】
二糖単位あたりの硫酸基の数によって測定する、異なった硫酸化度は、SO−ピリジンの量を変化させることによって得られる。ヒドロキシルと硫酸化試薬間のモル比は1:1〜1:12の間で変化させ得る。
【0017】
驚いたことに、本発明者は、特殊かつ均一な方法で、高分子の特性(特にその分子量)の損失を引き起こすことなく、ヒアルロン酸およびその半合成誘導体の多糖鎖を硫酸化させ、そしてヒアルロン酸およびその半合成誘導体が以前に有していなかった生物学的および物理化学的特性を有する新規な高分子を得ることに成功した。
【0018】
この方法により、異なるレベルの硫酸化を有するが、同じ分子量を有する新規な高分子を得ることが可能である。出発物質として、カルボキシ基がテトラブチルアンモニウム塩で塩となっている生体高分子を用いることにより、新規な生物学的特性を有する高分子を得ることができる。該生体高分子は溶血性ではない。
【0019】
これら硫酸化多糖類の注目すべき特性は血液凝固時間を増加させる能力である。試験物質の存在下でヒト血液の試料にトロンビンを加えた時の、フィブリノーゲンがフィブリンに変わる時間を測定することにより、トロンビン時間試験を行なう。同じ血液試料だが、出発物質として用いた高分子の存在下でのトロンビン時間試験を比較値とする。試験は240秒を越えた時点で有意性を失う。試験物質の存在下でヒト血液試料が凝固するのにかかる時間を単に測定することにより、凝固時間を測定する。2時間を超過する時間は考慮に入れない。
【0020】
本発明の新規な生体高分子を用いて、生物医学、健康管理、および医薬分野における使用のための新規な生体物質を開発することが可能である。得られた生成物は、抗トロンビン活性、抗凝固活性、および抗ウイルス活性のような生体適合的および生物学的特性を有する。例えば、硫酸化ポリアニオンは、HIV阻害を含む抗ウイルス活性を示すことが示されている。また、本発明の新規な生体高分子を、細胞増殖過程、薬物放出系調節、さらに一般的には、内手術、体外酸素循環、癒着予防、永久的な生分解可能な移植、および透析において有利に用いることができる。
【0021】
例えば、デキストランのような他の硫酸化高分子の場合と同様に、約10,000〜50,000Daの範囲内の分子量を有する硫酸化ヒアルロン酸は、炎症性細胞の拡散において主な標的である腫瘍壊死因子(TNF)の生成を阻害する。故に硫酸化ヒアルロン酸を、ヒアルロン酸をベースとした生体物質または組成物の形態で、局所的抗炎症剤として用いることができる。
【0022】
故に、新規な高分子をゲル、クリーム、または軟膏の形態で製造することができ、意図する治療上用途に従い、糸、スポンジ、ガーゼ、膜、ガイド・チャネル、不織布およびミクロスフェアの形態で生体物質を製造するのに用いることができる。最後に、高分子の硫酸化度および分子量に依存して、抗ウイルス活性を示し、および/または細胞相互作用の種々の段階に介入するために用いることのできる高分子を製造することが可能である。また、これら生体高分子を被覆過程において用い、生物医学物体および装置のような支持物質の表面に新規な生物学的性質を賦与することができる。
【0023】
そのような硫酸化生体物質を、血液または高血管化組織と接触させることによる利用(例えば、内または外手術用の生体高分子透析チューブまたは膜の使用)において使用することができ、これによって細胞の癒着等を減少させることができる。特に、本発明の新規な可溶性硫酸化ヒアルロン酸誘導体を、ヒアルロン酸をベースとした生体物質の分野において既に周知の多種多様な利用において使用することができる。
【0024】
例えば、2.5よりも大きい硫酸化度を有するヒアルロン酸誘導体は、良好な抗凝固活性を示すが、出発高分子の分子量もまた、本発明の新規な硫酸化生体高分子の性質に影響を及ぼすことにおいて有意であり得る。
【0025】
特に、少なくとも4つの硫酸化ヒアルロン酸誘導体が、それらの分子量および硫酸化度のために注目に値する。
1.約10,000〜50,000Daの範囲の分子量を有し、かつ2.5、3.0、または3.5の硫酸化度を有するヒアルロン酸;
2.約50,000〜250,000Daの範囲の分子量を有し、かつ2.5、3.0、または3.5の硫酸化度を有するヒアルロン酸;
3.約250,000〜750,000Daの範囲の分子量を有し、かつ2.5、3.0、または3.5の硫酸化度を有するヒアルロン酸;および
4.約750,000〜1,250,000Daの範囲の分子量を有し、かつ2.5、約3.0、または3.5の硫酸化度を有するヒアルロン酸。
【0026】
当分野において知られているように、特定の分子量を除去するポイントを有する膜の使用により、上記の分子量を有するヒアルロン酸分画を得ることができる。
【0027】
ヒアルロン酸の半合成エステル誘導体、1.0および1.5まで硫酸化されたHYAFF 11高分子マトリックス(ヒアルロン酸の100%ベンジルエステル)、ならびに0.5および1.0まで硫酸化されたHYAFF 11p75(ヒアルロン酸の75%ベンジルエステル)が特に興味深い。
【0028】
本発明のさらなる適用可能範囲は、以下に挙げる詳細な説明および図面から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示の為だけとして提供するということが理解されるべきである。何故なら、この詳細な説明から本発明の真意および範囲内での種々の変化および改良が当業者に明らかになるであろうからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下の本発明の詳細な説明を、本発明の実施において当業者を助けるために提供する。たとえそうでも、本明細書中で議論される態様における改良および変形は、本発明的発見の真意または範囲から外れることなく当業者により為されることができるので、以下の詳細な説明は本発明を不適当に制限すると解釈すべきではない。
【0030】
本明細書中に引用されている各文献の内容はその全体が本明細書の一部を構成する。
【0031】
説明の目的のために、本発明による新規な硫酸化高分子の製造の幾つかの実施例を以下に挙げる。これら実施例はヒアルロン酸およびその半合成誘導体(例えば、テトラブチルアンモニウム塩およびエステル)に関するが、同じ方法を他のグリコサミノグリカン、アルギン酸、ゲラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミド、およびカルボキシメチルキチンのような他の多糖類、ならびにそれらのテトラブチルアンモニウム塩および脂肪族、アル脂肪族、複素環式および脂環式アルコールとの部分的エステルのような半合成誘導体に適用することができる[米国特許第4,851,521号、5,122,593号、5,300,493号、5,332,809号、および5,336,668号;欧州特許出願第93917681.4号;EP 0 216 453号、EP 0 251 905号、EP 0 342 557号、EP 0 518 710号、EP 0 603 264号、およびEP 0 605 476号;ならびに国際出願WO 93/06136号およびWO 94/03499号に記載]。
【実施例】
【0032】
実施例1
ヒアルロン酸ナトリウムの硫酸化(硫酸化度3)
ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。DMF(10ml)に溶解したSO−ピリジン(1.305g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した精製水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、0〜4℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度を核磁気共鳴(NMR)によって測定する。
【0033】
この実施例および以下の実施例におけるトロンビン時間および凝固時間を国際出願WO 92/11294に記載のように測定した。このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて42.2秒のトロンビン時間を有し、対照血液において測定した28分に比べて2時間を越える凝固時間を有する。
【0034】
実施例2
ヒアルロン酸ナトリウムの硫酸化(硫酸化度3.5)
ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。DMF(10ml)に溶解したSO−ピリジン(2.088g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で少なくとも1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。無水酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、4〜0℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水中に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度を核磁気共鳴(NMR)によって測定する。
このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて無限のトロンビン時間を有する。
【0035】
実施例3
ヒアルロン酸の部分的エチルエステル(カルボキシ基の75%がエチルエステルの形態)の硫酸化(硫酸化度3)
ヒアルロン酸の75%部分的エチルエステル(HYAFF−7p75)のテトラブチルアンモニウム塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。ジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)に溶解したSO−ピリジン(1.305g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で少なくとも1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。無水酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、4〜0℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度をNMRによって測定する。
このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて45秒のトロンビン時間を有し、対照血液の28分に比べて2時間を越える凝固時間を有する。
【0036】
実施例4
ヒアルロン酸の部分的エチルエステル(カルボキシ基の50%がエチルエステルの形態)の硫酸化(硫酸化度2.5)
ヒアルロン酸の50%部分的エチルエステル(HYAFF−7p50、カルボキシ基の50%をエタノールでエステル化)のテトラブチルアンモニウム塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。ジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)に溶解したSO−ピリジン(1.044g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で少なくとも1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。無水酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、4〜0℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度をNMRによって測定する。
このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて47秒のトロンビン時間を有し、対照血液の28分に比べて2時間を越える凝固時間を有する。
【0037】
実施例5
ヒアルロン酸の部分的エチルエステル(カルボキシ基の25%がエチルエステルの形態)の硫酸化(硫酸化度2)
ヒアルロン酸の部分的エチルエステル(HYAFF−7p25、カルボキシ基の25%をエタノールでエステル化)のTBA塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。ジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)に溶解したSO−ピリジン(0.783g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で少なくとも1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。無水酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、4〜0℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度をNMRによって測定する。
このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて49秒のトロンビン時間を有し、対照血液の28分に比べて2時間を越える凝固時間を有する。
【0038】
実施例6
ヒアルロン酸の部分的ベンジルエステル(カルボキシ基の75%がベンジルエステルの形態)の硫酸化(硫酸化度3.5)
ヒアルロン酸の部分的エチルエステル(HYAFF−11p75、カルボキシ基の75%をベンジルアルコールでエステル化)のテトラブチルアンモニウム塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。ジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)に溶解したSO−ピリジン(2.088g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で少なくとも1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。無水酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、4〜0℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度をNMRによって測定する。
このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて44秒のトロンビン時間を有し、対照血液の28分に比べて2時間を越える凝固時間を有する。
【0039】
実施例7
ヒアルロン酸の部分的ベンジルエステル(カルボキシ基の50%がベンジルエステルの形態)の硫酸化(硫酸化度3)
ヒアルロン酸の部分的エチルエステル(HYAFF−11p50、カルボキシ基の50%をベンジルアルコールでエステル化)のテトラブチルアンモニウム塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。ジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)に溶解したSO−ピリジン(1.305g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で少なくとも1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。無水酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、4〜0℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度をNMRによって測定する。
このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて46秒のトロンビン時間を有し、対照血液の28分に比べて2時間を越える凝固時間を有する。
【0040】
実施例8
ヒアルロン酸の部分的ベンジルエステル(カルボキシ基の25%がベンジルエステルの形態)の硫酸化(硫酸化度2)
ヒアルロン酸の部分的エチルエステル(HYAFF−11p25、カルボキシ基の25%をベンジルアルコールでエステル化)のテトラブチルアンモニウム塩(0.250g)を、ジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解する。ジメチルスルホキシド(DMSO)(10ml)に溶解したSO−ピリジン(0.522g)を窒素流下でこの溶液に加える。この溶液を4〜0℃の温度で少なくとも1時間振盪する。次いで、0℃に冷却した水(約200ml)を加える。この混合物のpHを、1M 水酸化ナトリウムの添加によって8.5〜9.5の値に合わせる。次いでこの誘導体をエチルアルコール(120ml)で沈澱させる。無水酢酸ナトリウムを飽和するまで加え、4〜0℃の温度で1〜24時間沈澱させておく。この沈澱物を遠心によって分離し(例えば、1,500rpmで15分間)、精製水に溶解し、次いで全ての残留試薬および反応生成物が完全に除去されるまで透析する。硫酸化度をNMRによって測定する。
このようにして得られた生成物は、出発高分子の11.3秒に比べて48秒のトロンビン時間を有し、対照血液の28分に比べて2時間を越える凝固時間を有する。
【0041】
実施例9
HYAFF 11フィルムの製造(硫酸化度1.5)
HYAFF 11のフィルム(0.250g)を、比率1:1のクロロホルム:ジメチルホルムアミドの混合物(250ml)浴に浸す。次いで、ジメチルホルムアミドにピリジン−SOコンプレックス(3.4g)を溶解することによって得られる溶液(50ml)を加える。
周囲温度で2時間この反応を進行させ、その後フィルムを取り出し、次いで蒸留水(100ml)浴に浸し、最後に水:エタノール(50:50)溶液に浸す。次いで、このフィルムを55℃で48時間オーブンで乾燥させる。
【0042】
実施例10
HYAFF 11p75フィルムの製造(硫酸化度1)
HYAFF 11p75のフィルム(0.250g)を、比率1:1のクロロホルム:ジメチルホルムアミドの混合物(250ml)浴に浸す。次いで、ジメチルホルムアミドにピリジン−SOコンプレックス(2.3g)を溶解することによって得られる溶液(50ml)を加える。
周囲温度で2時間この反応を進行させ、その後フィルムを取り出し、次いで蒸留水(約100ml)浴に浸し、最後に水:エタノール(50:50)溶液に浸す。このフィルムを55℃で48時間オーブンで乾燥させる。
【0043】
実施例11
可溶性硫酸化ヒアルロン酸およびヒアルロン酸エステルの生物学的特性
異なる硫酸化度を有する硫酸化ヒアルロン酸の存在下での全血凝固時間
この試験を、1ドナーからの血液を用い、ヒアルロン酸および硫酸化ヒアルロン酸について行った。対照は血液のみを含有した。
各試験について、各々5mlの血液を含有する3個の試験管を準備した。第一の試験管はブランクであり、第二および第三の試験管には、各々ヒアルロン酸(25mg)および硫酸化ヒアルロン酸(25mg)を溶解した。
この結果を図1に示す。図1から、反復単位あたり3.0および3.5個のSO基を有するヒアルロン酸の全血凝固時間(WBCT)は無限となったことが見られる。全血対照の凝固時間は約15分であった。ヒアルロン酸存在下の血液は45分後に凝固した。
【0044】
異なる硫酸化度を有する硫酸化ヒアルロン酸存在下でのトロンビン時間
異なる硫酸化度を有するヒアルロン酸のトロンビン時間を、Elvi 820 Digiclot(Logos S.p.A,Milan,Italy)を用いて測定した。この装置は37℃の温度にセットされたインキュベーション・プレートを有し、32個の試験管および4個の試薬バイアル(その内の2個は600rpmで強力に撹拌することができる)を収容する。それは2個のサーモスタット測定ウェルを含み、300rpmでのマグネティック・スターラーおよび遮光蓋を備えている。試薬の分配用の適応できる体積(0.1〜0.2ml)を有するマグネティック・ピペットが装置を活動させ、この装置は凝固塊形成に関する光学密度の僅かな変化によってさえ停止する。凝固を光度測定的にモニターする。最初に、ランプからの光線は525nmの干渉フィルターを通過し、最後に収容セルを通過する。光ダイオードにより、凝固塊形成についての血漿の光学密度の変化を測定する。光度シグナル・プロセッサーにより、殆ど1/10秒でデジタル・クロノメーターを停止させる。トロンビン時間試験を、試薬「Trombina」(Boehringer Mannheim GmbH Diagnostica)を用いて行う。この試験を、数名のドナーからの血液の遠心によって得られる血漿(血漿プール)を用いて、全試料について実行する。この血漿は前以て抗凝固剤(血液9mlにつきクエン酸ナトリウム溶液1ml)で処理しておいた。溶液を、リン酸塩緩衝溶液中1mg/mlのヒアルロン酸および硫酸化ヒアルロン酸の濃度で調製した。
【0045】
図1に要約するように、反復単位あたり2.5、3.0、および3.5個のSO基を有するヒアルロン酸はトロンビン時間を延長する。反復単位あたり2.0個のSO基を有するヒアルロン酸はトロンビン時間を延長しなかった、即ち、該トロンビン時間は対照のトロンビン時間と等しく、従ってこの特定の硫酸化ヒアルロン酸誘導体はヘパリン様抗凝固活性を持たないことが示される。ヒアルロン酸存在下でのトロンビン時間は対照のトロンビン時間と類似している。
また図1において、硫酸化ヒアルロン酸生成物(1mg)に対応するヘパリンの量が示されている(較正曲線によって測定)。
異なる硫酸化度を有する硫酸化ヒアルロン酸エステル存在下でのトロンビン時間
トロンビン時間を、ヒアルロン酸の硫酸化誘導体(ヒアルロン酸分子量=
200,000Da)、即ち、HYAFF 11(ヒアルロン酸の100%ベンジルエステル;硫酸化度2.0)、HYAFF 11p25(ヒアルロン酸の25%ベンジルエステル;硫酸化度3.0)、およびHYAFF 11p75(ヒアルロン酸の75%ベンジルエステル;硫酸化度3.5)が溶解している血漿についても測定した。
硫酸化HYAFF 11の場合、それ自身の濃度およびトロンビン濃度のTTへの影響を調べた。
硫酸化HYAFF 11についての結果を表1に示す。ヒアルロン酸は血漿に溶解するので比較として用いた[ここで、トロンビン濃度は国際単位(UI)である]。
【表1】

【0046】
これら結果から、ヒアルロン酸存在下よりも硫酸化HYAFF 11存在下での血漿のトロンビン時間の方がより長いことが開示されている。ヒアルロン酸、硫酸化ヒアルロン酸、およびトロンビンの濃度の影響に注意すべきである。ヒアルロン酸と比較して、トロンビンを6UIまたは0.6UIのいずれかで使用する場合、硫酸化HYAFF 11(8mg/ml)はトロンビン時間を有意に延長する。少量(2mg/ml)の硫酸化HYAFF 11のトロンビン時間の変化は有意ではない。
【0047】
表2において、硫酸化HYAFF 11p25および硫酸化HYAFF 11p75のトロンビン時間についての結果を示す。
【表2】

【0048】
表2のデータから、硫酸化HYAFF 11p25およびHYAFF 11p75の両方ともトロンビン時間を延長することが証明される。硫酸化HYAFF 11p75のより長いトロンビン時間は約0.15UI/mlのヘパリン活性に対応する。硫酸化HYAFF 11p25のより長いトロンビン時間は約0.25UI/mlのヘパリン活性に対応する。
【0049】
レプティラーゼ時間
レプティラーゼは、Bothrox atropsの毒において見いだされる酵素であり、そのフィブリノペプチド Aを分裂させることによってフィブリノーゲンを凝固させる。
レプティラーゼ時間を、硫酸化ヒアルロン酸または硫酸化ヒアルロン酸誘導体を0.1M リン酸緩衝生理的食塩水(1ml)に溶解し、次いでこの溶液(0.3ml)をヒト血漿(0.3ml)に加えることによって測定する。このレプティラーゼ時間は、硫酸化ヒアルロン酸または誘導体を含有するヒト血漿を37℃で2分間インキュベートし、次いでレプティラーゼ・リアクイティブ(Bothrox atropsの毒からのトロンビン抽出物の分画,Hemodiagnostica Diagnostica Stago, Boehringer Mannheim)を加え、自動的に凝固時間を測定することによって測定する(Elvi Digiclot 2 Coagulometer, Logos S.p.A., Milan, Italy)。
表3において、レプティラーゼ時間への硫酸化HYAFF 11、硫酸化HYAFF 11p25、および硫酸化HYAFF 11p75の影響を示す。
【表3】

【0050】
表3のデータから、硫酸化ヒアルロン酸誘導体はレプティラーゼ時間にどんな有意な影響も及ぼさないことが示される。
【0051】
実施例12
溶血試験
溶血検定によって、赤血球の原形質膜と物質の直接相互作用を測定する。
硫酸化ヒアルロン酸(25mg)をクエン酸ナトリウム(0.5ml)に溶解した。次いで、この試験管を新鮮なヒト血液(5ml)で充たした。対照は全クエン酸化血液のみを含有した。溶血試験をAlbanese等が記載したように行った[Biomaterials 15:129 (1994)]。
硫酸化ヒアルロン酸で得られた結果から、この物質はいかなる溶血活性も示さないことが示される。
【0052】
実施例13
不溶性硫酸化ヒアルロン酸誘導体の生物学的特性
異なる硫酸度を有する硫酸化ヒアルロン酸エステルの不溶性フィルム存在下でのトロンビン時間
トロンビン時間試験を、実質的に実施例11において異なる硫酸化度を有する硫酸化ヒアルロン酸について記載したように、直線キュベットに用いる硫酸化ヒアルロン酸エステルの不溶性フィルムの円について行った。血漿(1.2ml)を各キュベットに加え、次いでこれをフィルムの円と共に10分間インキュベートした。次いで、トロンビン試薬(0.2ml)を加え、凝固時間をモニターした。ヒアルロン酸の分子量およびエステルの硫酸化度を実施例11に示した。
この結果を表4に示す。
【表4】

【0053】
実施例14
硫酸化ヒアルロン細胞の存在下での培養ヒト臍静脈内皮細胞の増殖
ヒト臍静脈内皮細胞を、標準プロトコールに従い、コラーゲナーゼ分解によって臍索状組織から単離した。この細胞を、20%仔ウシ血清、L−グルタミン、およびゲンタマイシンを有するMedium 199(GIBCO Laboratories)中、37℃、5%CO雰囲気下で維持した。
この内皮細胞を多角形態によってのみ同定した。増殖実験については、培養物が集密状態に達した時に細胞を用いた。5mg/mlの濃度が得られるまで、ヒアルロン酸をMedium 199に溶解した。この検定を、物質と細胞の間で24、48、および72時間接触させるよう計画した。毎24時間、培地をウェルから除去し、滅菌PBS溶液でフィルムを濯いで非付着細胞を除去した。この細胞を倒立顕微鏡(DIAPHOT TMD Nikon)で分析し、Nikon カメラで写真を取った。次いで、この細胞をトリプシンで分離し、Burker chamber中で計数した。Trypan Blueを用いて死亡および生存細胞間を区別した。
図2はヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)増殖曲線を示す。
硫酸化ヒアルロン酸含有培地中の内皮細胞の数は時間がたつにつれて増加し、ヒアルロン酸含有培地中または純粋培地対照中よりも良好な増殖を示す。
【0054】
内皮細胞の形態を倒立顕微鏡を用いて調べた。硫酸化ヒアルロン酸含有培地中の内皮細胞は、形態的変化もなく、細胞組織における構造的変化もなく、よく広がっていた。
ヒアルロン酸存在下での内皮細胞および対照について、同じ形態が認められた。唯一の注目すべき相違は細胞増殖にあった。実際、1日後、硫酸化ヒアルロン酸含有培地中の細胞は殆ど集密的細胞単層であるが、ヒアルロン酸含有培地または純粋培地中の細胞は3日後にやっと集密状態に達した。
【0055】
実施例15
インビトロにおける血管形成誘導の評価
硫酸化ヒアルロン酸はヘパリンと同様にCu(II)イオンとコンプレックスを形成し、Cu(OH)L(L=「リガンド」)という化学量論的組成を有する[Barbucci等 (1995) Gazetta Chimica Italiana, 印刷中]。文献から知られているように、Cu(II)−ヘパリンコンプレックスは血管形成作用を示す[Alessandri等 (1983) Cancer Research 43:1790-1797]。
【0056】
故に、細胞移動法[Alessandri等 (1983) Cancer Research 43:1790-1797]を用いて、インビトロでの血管形成を誘導する硫酸化ヒアルロン酸の能力を調べた。
寒天での内皮細胞の移動を観察した。該方法を模式的に図3に示す。インビトロでの血管形成を誘導する試験試料の能力を、対照試料の方へよりもむしろ試験試料の方へ優先的に移動する内皮細胞の数によって測定することができる。
Alessandri等が記載した、Cu(II)−ヘパリンコンプレックスによって誘導される血管形成を評価するための細胞移動試験を0.1M トリス(pH7.5)緩衝溶液中で行った。しかし、トリス存在下において、形成されたコンプレックスは実際Cu(II)−トリスであって、Cu(II)−ヘパリンではないので、観察された血管形成作用はヘパリン存在下でのCu(II)−トリスコンプレックスに関係する。
本試験を0.1M PBS(pH7.4)緩衝溶液を用いて行った。このpHで、コンプレックス中にないCu(II)は水酸化物の形態で沈澱する。故に、Cu(II)−生物学的分子の溶液を、大きさが0.2ミクロンの孔を有するセルロース・フィルターで濾過して、試験に溶液を用いる前に水酸化銅沈澱を除去した。
反復単位あたり、1つは2.0個のSO基を有し、もう1つは3.5個のSO基を有する、2個の硫酸化ヒアルロン酸の試料を分析した。実験を折り返し行い、Cu(II)−ヘパリンコンプレックスおよびCu(II)−トリスコンプレックスを含有する試料もまた分析した。各実験において、Cu(II)−生物学的分子コンプレックスの血管形成作用を生物学的分子のみの血管形成作用と比較して評価した。特に、Cu(II)−硫酸化ヒアルロン酸を硫酸化ヒアルロン酸と比較し、Cu(II)−ヘパリンをヘパリンと比較した。Cu(II)−トリスの場合、対照試料は培地のみを含有した。
【0057】
図4A、4B、5A、5B、6A、および6Bで示されるように、Cu(II)−硫酸化ヒアルロン酸(反復単位あたり3.5個のSO基)コンプレックスは、Cu(II)−ヘパリンコンプレックスと同じ程度、インビトロでの血管形成を誘導できることを証明した。
図4Aおよび4Bで示されるように、硫酸化ヒアルロン酸のみの方へよりもむしろCu(II)−硫酸化ヒアルロン酸の方への内皮細胞による優先的な移動がある。ヘパリンの場合、内皮細胞はヘパリンのみの方へよりもむしろCu(II)-ヘパリンコンプレックスの方へ優先的に移動する(図5Aおよび5B)。
この効果はヘパリンよりも硫酸化ヒアルロン酸の場合より芳しい(図4A、5Aおよび4B、5Bの比較)。
一方、Cu(II)−トリスコンプレックスの場合(図6Aおよび6B)、培地のみの方へよりもむしろコンプレックスの方への細胞の優先的移動は見られない。
Cu(II)−硫酸化ヒアルロン酸含有試料(反復単位あたり2.0個のSO基)の効果はCu(II)−ヘパリンコンプレックスの効果よりもむしろCu(II)−トリスコンプレックスの効果に匹敵した。これから、反復単位あたりのSO基の数は、インビトロでの血管形成の誘導におけるヘパリン様活性を得るのに有意な影響を及ぼすことが証明される。
【0058】
実施例16
医薬組成物
本発明の新規な硫酸化ヒアルロン酸誘導体および他の硫酸化多糖類を含む医薬調製物および生体物質を、単独でかまたは他の化学高分子、例えばポリウレタン、ポリ乳酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルデンプン、および架橋高分子、またはヒアルロン酸エステル、塩、誘導体、コンプレックス、フラグメント、サブユニット、および/または薬理学的に許容し得る薬物と組み合わせて、生物医学、健康管理、および医薬分野における助けとして、ヒトに投与することができる。
【0059】
抗トロンビン活性および抗凝固活性のために、本発明の生体高分子は、ガイド・チャネル、バイパス、人工静脈、またはシャントのような生体物質を製造するのに用いて、血液透析、心臓病学、体外循環、およびさらに一般には、心臓血管系において使用するのに有利である。
Cu(II)−硫酸化ヒアルロン酸コンプレックスの血管形成活性を、毛細血管成長を刺激するのに使用することができる。
硫酸化ヒアルロン酸は、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびTNF−βの強力な阻害物質であることが最近証明された[Chang等 (1994) Journal of Leukocyte Biology 55:778-784]。従って、本発明の硫酸化ヒアルロン酸およびヒアルロン酸エステル生成物の、TNF介在炎症、全身毒性、および関連病理の治療における抗炎症剤としての治療使用もまた見いだすことができる。
【0060】
さらに、硫酸化ヒアルロン酸誘導体を、体外循環適用に用いる装置を製造するための血漿被覆のような技術を用いて、物質の表面の被覆として使用することができる。
また、本発明の硫酸化ヒアルロン酸誘導体を、ケラチノサイト増殖のような細胞増殖過程を促進するためにか、床ずれ、傷、熱傷、および皮膚潰瘍に罹患した患者の治癒を促進するためにか、または外科手術における抗癒着剤として、意図された治療使用に従い、ガーゼ、糸、ゲル、ヒドロゲル、スポンジ、膜、不織布、およびミクロスフェアの形態で用いることができる。
【0061】
高分子の硫酸化度および分子量に依存して、本発明の新規な硫酸化多糖類はまた、単独でか、または上記したもののような他の化学高分子と共にか、または架橋高分子またはヒアルロン酸エステル、塩、誘導体、コンプレックス、フラグメント、サブユニット、および/もしくは薬理学的に許容し得る薬物と共に、例えば、皮膚科学、眼科学、耳鼻咽喉科学、歯科学、婦人科学、泌尿器科学において、および細菌、真菌、またはウイルス感染の治療におけるドラッグ・デリバリー・システムとして用いることができる。
【0062】
本発明による、医薬物の組み合わせの例には以下のものが含まれる:
硫酸化ヒアルロン酸およびヒアルロン酸エステル(例えば、ベンジルまたはエチルエステル)の組み合わせ;
硫酸化ヒアルロン酸および架橋ヒアルロン酸エステルの組み合わせ;
硫酸化ヒアルロン酸および上記のような化学高分子の組み合わせ;
硫酸化ヒアルロン酸およびCu(II)イオンの組み合わせ;
硫酸化ヒアルロン酸および金属イオン(例えば、カルシウムまたは銀)の組み合わせ;
塩基性または非塩基性抗生物質、スルファミド系、抗ウイルス(例えば、アシクロビル)、ステロイド系抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾンまたはプレドニソロン)、非ステロイド系抗炎症剤(例えば、インドメタシン)、傷治癒物質(例えば、上皮増殖因子)、抗微生物、抗細菌、または消毒剤のような抗感染剤を伴う、硫酸化ヒアルロン酸およびヒアルロン酸エステルの組み合わせ;
塩基性または非塩基性抗生物質、スルファミド系、抗ウイルス(例えば、アシクロビル)、ステロイド系抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾンまたはプレドニソロン)、非ステロイド系抗炎症剤(例えば、インドメタシン)、傷治癒物質(例えば、上皮増殖因子)、抗微生物、抗細菌、または消毒剤のような抗感染剤を伴う、硫酸化ヒアルロン酸および架橋ヒアルロン酸の組み合わせ。
【0063】
本発明を以上のように記載したが、これらの方法は幾通りにも改良され得ることは明白である。これら改良法は本発明の真意および範囲から逸脱すると見なすべきではなく、当業者にとって明白と見なされる全改良法は以下の請求項の範囲内であると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】全血凝固時間(WBCT)およびトロンビン時間(TT)に及ぼす反復単位あたり、2.0、2.5、3.0、および3.5個のSO基で硫酸化されたヒアルロン酸の影響を示す。
【図2】、実施例14に記載のように、対照培地(◆)、硫酸化ヒアルロン酸含有培地(■)、およびヒアルロン酸含有培地(▲)中のヒト臍静脈内皮細胞の増殖を示す。
【図3】実施例15に記載のゼラチン−アガロース試験用に調製した皿の概要表示である。上図:中央のウェルおよび2mm離れて位置した隣接する2個のウェルを示す断面図。BACEを中央のウェルに置き、試験物質および対照を隣接するウェルに置く。下図:試験の準備をした皿。BACEを含有する第4のウェルを、3個の一列に並べたウェルから約2cm離して置く(図中、距離の割合を保守していない)。第4のウェルを試験物質の影響から遠くに移し、対照として利用して、ウェル外でのBACEの移動が未処理の場合均一なハロ−として起こることを確認する。
【図4A】図4A、4B、5A、5B、6A、および6Bは実施例15に記載のインビトロでの血管形成の誘導の評価の結果を示す。図4Aおよび4Bは、内皮細胞の、硫酸化ヒアルロン酸単独の方へよりもむしろCu(II)−硫酸化ヒアルロン酸の方への優先的移動を示す。
【図4B】図4Aおよび4Bは、内皮細胞の、硫酸化ヒアルロン酸単独の方へよりもむしろCu(II)−硫酸化ヒアルロン酸の方への優先的移動を示す。
【図5A】図5Aおよび5Bは、内皮細胞の、ヘパリン単独の方へよりもむしろCu(II)−ヘパリンの方への優先的移動を示す。
【図5B】図5Aおよび5Bは、内皮細胞の、ヘパリン単独の方へよりもむしろCu(II)−ヘパリンの方への優先的移動を示す。
【図6A】図6Aおよび6Bは、内皮細胞の、培地単独の方へよりもむしろCu(II)−トリスコンプレックスの方への優先的移動がないことを示す。
【図6B】図6Aおよび6Bは、内皮細胞の、培地単独の方へよりもむしろCu(II)−トリスコンプレックスの方への優先的移動がないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸、若しくはヒアルロン酸塩、またはヒアルロン酸エステルの一つ、またはこれらの多糖のいずれかの組み合わせである硫酸化多糖であって、反復単位あたりの硫酸基の数がヒアルロン酸の場合最大で2であり、ヒアルロン酸エステルの場合0.5−3.5の範囲である硫酸化多糖。
【請求項2】
多糖がヒアルロン酸の部分または全エステルである請求項1に記載の硫酸化多糖。
【請求項3】
ヒアルロン酸エステルが脂肪族、アルアリファティック、ヘテロサイクリック、またはシクロアリファティックアルコールの一つとのエステルである請求項2に記載の硫酸化多糖。
【請求項4】
硫酸化ヒアルロン酸ベンジルまたは硫酸化ヒアルロン酸エチルである請求項1または3に記載の硫酸化多糖であって、各場合エステル化度は25%、50%、75%、100%である硫酸化多糖。
【請求項5】
反復単位あたりの硫酸基の数が2未満である請求項1に記載の硫酸化多糖。
【請求項6】
反復単位あたりの硫酸化の程度がヒアルロン酸の場合0.5−2の間である請求項1に記載の硫酸化多糖。
【請求項7】
反復単位あたりの硫酸基の数が約1.5である請求項1に記載の硫酸化多糖。
【請求項8】
反復単位あたりの硫酸化の程度がヒアルロン酸エステルまたはヒアルロン酸の場合1.5である請求項1〜4のいずれかに記載の硫酸化多糖。
【請求項9】
約10,000および約50,000ダルトンに間の範囲の分子量を有する硫酸化ヒアルロン酸エステル、約50,000および約250,000ダルトンに間の範囲の分子量を有する硫酸化ヒアルロン酸エステル、または約750,000および1,250,000ダルトンに間の範囲の分子量を有する硫酸化ヒアルロン酸エステルの一つである硫酸化多糖であって、各場合において該硫酸化ヒアルロン酸エステルの硫酸化の程度が反復単位あたり2.5,3.0または3.5の硫酸基の一つである硫酸化多糖。
【請求項10】
100%ベンジルエステル、25%ベンジルエステル、50%ベンジルエステル、75%ベンジルエステル、100%エチルエステル、25%エチルエステル、50%エチルエステルおよび75%エチルエステルよりなる硫酸化エステルの群から選択される請求項5に記載の硫酸化多糖。
【請求項11】
硫酸化HYAF(登録商標)11,硫酸化HYAF(登録商標)11p25,硫酸化HYAF(登録商標)11p50,または硫酸化HYAF(登録商標)7p75の一つである請求項9に記載の硫酸化多糖。
【請求項12】
ヒアルロン酸エステルの分子量が約200000ダルトンである請求項11に記載の硫酸化多糖。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖を含む生医学的物体。
【請求項14】
該物体が硫酸化多糖で被覆されている請求項13に記載の生医学的物体。
【請求項15】
Cu−(II)硫酸化多糖ヒアルロン酸またはCu−(II)硫酸化多糖ヒアルロン酸エステルを含む複合体。
【請求項16】
硫酸化ヒアルロン酸若しくは硫酸化ヒアルロン酸エステルまたは硫酸化ヒアルロン酸および硫酸化ヒアルロン酸エステルの組み合わせ、および医薬的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物であって、反復単位あたりの硫酸基の数がヒアルロン酸については最大で2、ヒアルロン酸エステルについては0.5−3.5の範囲である医薬組成物。
【請求項17】
組成物がゲル、ハイドロゲル、クリーム、または軟膏である請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗炎症剤としての使用のための請求項16または17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ガイドチャンネル、バイパス、人工血管、シャント、ガーゼ、糸、ゲル、ハイドロゲル、フィルム、膜、スポンジ、不織組織またはマイクロスフェアの一つである製品であって、請求項16〜18のいずれかに記載の医薬組成物を含む製品。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれかに記載の医薬組成物で被覆した装置または生医学的物体。
【請求項21】
生医学的製品または医薬組成物の製造における請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖の使用。
【請求項22】
生医学的物体または装置を被覆するための請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖の使用。
【請求項23】
調節された薬剤放出システムの製造における請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖の使用。
【請求項24】
ヒトまたは動物において血管形成を刺激するための請求項15に記載の複合体の使用。
【請求項25】
単独での、または他の化学的高分子、塩、および血栓症、およびTNF媒介炎症により、および血餅により起こされる血栓症および他の病気、内部手術における非付着剤として、床ずれ、創傷、および皮膚潰瘍の治療のための医薬的に許容し得る薬剤よりなる群から選択される化合物と共にの、硫酸化ヒアルロン酸または硫酸化ヒアルロン酸エステルの使用であって、反復単位あたりの硫酸基の数が、ヒアルロン酸の場合最大で2であり、ヒアルロン酸エステルの場合0.5−3.5の範囲である硫酸化多糖の使用。
【請求項26】
ウイルス感染、HIV感染、細菌感染または真菌症感染の少なくとも1つの治療のための抗感染剤との組み合わる硫酸化ヒアルロン酸または硫酸化ヒアルロン酸エステルの使用。
【請求項27】
細菌、真菌、またはウイルス感染の治療のための調節されたドラッグデリバリー装置を製造するために抗感染剤と組み合わせた請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖の使用。
【請求項28】
TNF媒介炎症または全身性毒性の治療のための、または創傷、火傷、床ずれ、皮膚潰瘍の少なくとも一つの治療を促進するための請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖の使用。
【請求項29】
抗凝固性および非血栓生成性を有する生体物質の製造における請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖の使用。
【請求項30】
生医学的物体または装置が内部または外部手術のためのバイオポリマー透析チューブまたは膜を含む請求項22に記載の使用。
【請求項31】
抗ウイルス活性を有する生体物質の製造における抗感染剤と組み合わせた請求項1〜12のいずれかに記載の硫酸化多糖の使用。
【請求項32】
生体物質がHIV防止性を有する請求項31に記載の使用。
【請求項33】
少なくとも一つの細胞増殖過程を促進する生体物質の製造における硫酸化ヒアルロン酸または硫酸化ヒアルロン酸エステルの使用。
【請求項34】
生医学物体または装置が手術後の付着防止のためである請求項22に記載の使用。
【請求項35】
生医学物体または装置が血液または高度に脈管化された組織と接触する請求項22に記載の使用。
【請求項36】
体外酸素循環、透析チューブ、または内部または外部手術のための膜のための生医学的製品を被覆するための硫酸化ヒアルロン酸または硫酸化ヒアルロン酸エステルの使用。
【請求項37】
抗炎症性を有する生体物質の製造における抗感染剤と組み合わせた硫酸化ヒアルロン酸または硫酸化ヒアルロン酸エステルの使用。
【請求項38】
TNF媒介炎症の治療のための抗炎症性を有する生体物質の製造における抗感染剤と組み合わせた硫酸化ヒアルロン酸または硫酸化ヒアルロン酸エステルの使用。
【請求項39】
硫酸化剤の使用による非プロトン性の溶媒中における多糖を硫酸化することを含む硫酸化多糖の製造方法であって、硫酸化剤を溶液中で多糖のテトラアルキルアンモニウム塩またはエステルに加え、テトラアルキルアンモニウム塩はテトラブチルアンモニウム塩であり、硫酸化剤は3酸化硫黄およびピリジンの複合体(SO−ピリジン)であり、反応を0−60℃で行う方法。
【請求項40】
硫酸化多糖の製造方法であって、硫酸化剤を約0℃−約60℃の温度範囲で非プロトン性溶媒中で該多糖のテトラアルキルアンモニウム塩と反応させ、次に該硫酸化多糖を回収することを含み、該多糖の分子量は硫酸基の添加をのぞいては影響されず、該多糖はヒアルロン酸またはヒアルロン酸エステルである方法。
【請求項41】
請求項39または40に記載の方法であって、非プロトン性溶媒がジメチルスルホオキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、またはN−メチルピロリドンの一つである請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
硫酸化の程度が、用いる硫酸化剤の量を変化させることにより調節される請求項39または40に記載の方法。
【請求項43】
硫酸化剤に対するOHのモル比が1:1−1:12である請求項39または40に記載の方法。
【請求項44】
硫酸化生成物を、溶液のpHを8−10の間に上げることにより沈澱させる請求項39または40に記載の方法。
【請求項45】
pHが8.5−9.5の間である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ヒアルロン酸の反復単位あたりの2.5,3.0または3.5の硫酸基の硫酸化の程度を有する硫酸化ヒアルロン酸であって、それは次のもののうち一つである。
a.10,000−50,000ダルトンの範囲の分子量を有するヒアルロン酸;
b.50,000−250,000ダルトンの範囲の分子量を有するヒアルロン酸;
c.250,000−750,000ダルトンの範囲の分子量を有するヒアルロン酸;
d.750,000−1,250,000ダルトンの範囲の分子量を有するヒアルロン酸;
【請求項47】
請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸およびCu(II)を含む複合体。
【請求項48】
請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸を含む生医学的物体。
【請求項49】
該物体は該硫酸化ヒアルロン酸で被覆されている請求項48に記載の生医学的物体。
【請求項50】
硫酸化多糖のコーティングを有する被覆された生医学的物体であって、反復単位当たりの硫酸基の数が0.5−3.5の範囲であり、多糖はヒアルロン酸またはその塩である物体。
請求項48に記載の生医学的物体。
【請求項51】
硫酸化ヒアルロン酸またはその塩を含む生医学的製品であって、反復単位当たりの硫酸基の数が0.5−3.5であり、ヒアルロン酸または塩の分子量の範囲は約50,000−1,250,000ダルトンであり、生医学的製品はガイドチャンネル、バイパス、人工血管、シャント、ガーゼ、糸、ゲル、ハイドロゲル、フイルム、膜、スポンジ、不織組織またはマイクロスフェアの一つであり、生医学的製品は硫酸化ヒアルロン酸または塩で被覆された構造でない生医学的製品。
【請求項52】
硫酸化ヒアルロン酸またはその塩を含む少なくとも一つの細胞増殖課程を促進する生体物質であって、反復単位当たりの硫酸基の数が0.5−2.5の範囲であり、ヒアルロン酸の分子量は約50,000−約1,250,000ダルトンの間であり、その生体物質は硫酸化ヒアルロン酸または塩で被覆された構造でない生体物質。
【請求項53】
硫酸化ヒアルロン酸またはその塩の分子量が約100,000−約1,250,000ダルトンの間である請求項51に記載の生医学的製品。
【請求項54】
硫酸化ヒアルロン酸または塩の分子量が約200,000−1,250,000ダルトンの間である請求項51に記載の生医学的物体。
【請求項55】
硫酸化ヒアルロン酸または塩の分子量が約100,000−1,250,000ダルトンの間である請求項52に記載の生医学的物体。
【請求項56】
硫酸化ヒアルロン酸または塩の分子量が約200,000−1,250,000ダルトンの間である請求項52に記載の生医学的製品。
【請求項57】
硫酸化多糖の硫酸化の程度が反復単位あたり2.5,3.0または3.5である請求項50に記載の被覆された生医学的物体。
【請求項58】
請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸を含む医薬組成物。
【請求項59】
ゲル、ハイドロゲル、クリームまたは軟膏の一つである請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
抗炎症剤としての使用のための請求項58または59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
生医学的物体または医薬組成物の製造における請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸の使用。
【請求項62】
調節された薬剤放出システムの製造における請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸の使用。
【請求項63】
抗血栓性、抗凝固性または抗ウイルス性である生体物質の製造における請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸の使用。
【請求項64】
生体物質がHIVを阻害する請求項63に記載の使用。
【請求項65】
少なくとも一つの細胞増殖課程を促進する生体物質の製造における請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸の使用。
【請求項66】
少なくとも一つの細胞増殖課程が血管生成である請求項65に記載の使用。
【請求項67】
少なくとも一つの創傷、火傷、床ずれまたは皮膚潰瘍の治癒を促進するための薬剤の製造における請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸の使用。
【請求項68】
生医学的物体を被覆するための請求項46に記載の硫酸化ヒアルロン酸の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2007−262426(P2007−262426A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187244(P2007−187244)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【分割の表示】特願平7−524398の分割
【原出願日】平成7年3月23日(1995.3.23)
【出願人】(591057175)フィディーア・ファルマチェウティチ・ソシエタ・ペル・アチオニ (5)
【氏名又は名称原語表記】FIDIA FARMACEUTICI S.p.A.
【Fターム(参考)】