説明

新規なベンズオキサゾリルカルバゾール化合物およびそれを有する有機発光素子

【課題】燐光発光のホスト材料として好ましく用いることができる新規有機化合物を提供する。
【解決手段】一般式[1]で示されるベンズオキサゾリルカルバゾール化合物を提供する。


式中、RおよびRは、それぞれ独立に無置換フェニル基、あるいは炭素数が1乃至6のアルキル基が置換された置換フェニル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規有機化合物であるベンズオキサゾリルカルバゾール化合物に関する。また、該新規化合物を有する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、透明基板上に、上下2層の電極と、これらの電極の間に発光層を含む有機化合物を積層した構造を有している。有機発光素子は、高速応答性、高効率、フレキシブル性を有する次世代のフルカラーディスプレイ技術の一つとして注目されており、材料技術開発および素子技術開発が精力的に行われている。有機発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子、あるいは有機EL素子とも呼ばれ、特に電界発光を利用するものを有機電界発光素子と呼ぶ場合がある。
【0003】
近年、高効率化を目的に、三重項励起子を経由した燐光発光を利用する形式の有機発光素子の開発が盛んに行われている。青色の燐光発光素子においては、発光材料(ゲスト材料)としてFIrpic(ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネートーN,C2)ピコリネートイリジウム)のようなIr(イリジウム)を用いた金属錯体が使用されている。
【0004】
最近では、発光効率の他に、環境保全の考え方から、特にディスプレイの低消費電力化のニーズが高まっており、素子の低電圧化を狙った開発も行われている。
【0005】
燐光発光素子では、ホスト材料の性能が素子性能に大きく反映されることから、ホスト材料開発が活発に行われている。
【0006】
燐光発光素子の高効率化と低電圧化を同時に達成するには、ホスト材料として、ゲスト材料に比べて最低三重項エネルギーが高く、且つ正孔と電子の輸送性が共に大きい事が必要である。しかし、現状では十分な実用レベルに到達していない。
【0007】
特許文献1では、アリール基を置換したベンズオキサゾール誘導体を電子注入組成物として用いた素子が開示されている。
【0008】
ベンズオキサゾール骨格は高い電子輸送性を示すため、電子輸送層としては好適に用いることができるが、アリール基は正孔輸送性が低い。すなわち、アリール基を置換したベンズオキサゾール誘導体では正孔輸送性が低いために、ホスト材料としては不適であった。
【0009】
特許文献2では、カルバゾールの窒素にフェニル基を置換した化合物が開示されている。このようなカルバゾール化合物は、高い最低三重項エネルギー、及び高い正孔輸送性を示すため広く用いられるが、電子輸送性は正孔輸送性ほど大きくなかった。そのため、素子化した際に、効率が低く、駆動電圧が高くなっていた。
【0010】
すなわち、燐光発光素子のホスト材料として、高効率化、低電圧化に対応するために、最低三重項エネルギーが高く、正孔と電子の輸送性が共に大きい新規な化合物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−093673号公報
【特許文献2】特開2005−154412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、新規な有機化合物を提供することを目的とする。また、発光効率が高く、低電圧駆動可能な有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般式[1]に示されるベンズオキサゾリルカルバゾール化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
但し、式中、RおよびRは、それぞれ独立に無置換フェニル基、あるいは炭素数が1乃至6のアルキル基が置換された置換フェニル基を表す。
【0016】
また、本発明の有機発光素子は、以下のような特徴を有する。
すなわち、互いに対向する一対の電極間に配置された少なくとも一層の有機層を有する有機発光素子において、有機層の少なくとも1層が、一般式[1]で示されるベンズオキサゾリルカルバゾール化合物を含有する発光層であることを特徴とする。
【0017】
【化2】

【0018】
但し、式中、RおよびRは、それぞれ独立に無置換フェニル基、あるいは炭素数が1乃至6のアルキル基が置換された置換フェニル基を表す。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燐光発光素子のホスト材料として有用な新規化合物を提供できる。また発光効率が高く、低電圧駆動可能な有機発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】有機発光素子とこれに接続するスイッチング素子とを示す断面構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般式〔1〕に示されることを特徴とする有機化合物である。
【0022】
【化3】

【0023】
但し、式中、RおよびRは、それぞれ独立に無置換フェニル基、あるいは炭素数が1乃至6のアルキル基が置換された置換フェニル基を表す。
およびRとしては、それぞれ独立に無置換のフェニル基、あるいは炭素数が1乃至6のアルキル基が置換された置換フェニル基であることで、最低三重項エネルギーを高く保つことができる。特にトリル基、キシリル基、メシチル基であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の分子構造は、カルバゾールに対してベンズオキサゾールを結合することが特徴である。これは、カルバゾールが置換基を有しているにも係らず、カルバゾールの三重項エネルギーと余り変わらないエネルギー状態を維持する事ができる。
また、カルバゾールの窒素原子にベンズオキサゾールが導入されている。これはベンズオキサゾール基の電子輸送性をカルバゾール基に付加することできるためこの位置にアリール基を置換したカルバゾール化合物よりも電子輸送性を向上している。
そして、カルバゾールの3位及び6位は電気化学的に活性であることが知られている。本発明の化合物は、この3位と6位にRおよびRの置換基を有しているので、電気化学的な安定性が図れ、発光素子に用いた際に安定した素子となる。
【0025】
このため、本発明に係るベンズオキサゾリルカルバゾール化合物は、発光ピーク波長が短い青色燐光発光のホスト材料として利用できる。
【0026】
本発明によるベンズオキサゾリルカルバゾール化合物の具体例を以下に示すが、本発明は以下の化合物に何ら限定されるものではない。
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
(有機化合物の合成)
本発明に係る有機化合物は、後述の実施例1で詳細に記載されるように、以下のような2段階の合成経路で合成できる。
【0034】
(第1段階)
【0035】
【化10】

【0036】
(第2段階)
【0037】
【化11】

【0038】
第1段階における出発物質A−02を変更することで、上記に示すような本発明のベンズオキサゾリルカルバゾール化合物をそれぞれ合成できる。
【0039】
(有機発光素子の説明)
次に本実施形態に係る有機発光素子を説明する。
【0040】
本実施形態に係る有機発光素子は、対向する一対の電極間に配置された少なくとも一層の有機層を有する有機発光素子であって、前記有機層のうち少なくとも一層が一般式[1]に示されるベンズオキサゾリルカルバゾール化合物を有する発光層であることを特徴とする。
【0041】
発光層に用いられる発光材料としては、既知のものが利用できるが、燐光発光材料をゲスト材料として発光層に有することが好ましい。ゲスト材料としては、例えばFIrpic、FIr6等の燐光発光性Ir錯体等が挙げられる。
【0042】
本発明の有機発光素子においてホール輸送層に使用する正孔輸送性材料としては、例えば、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)等が挙げられる。
【0043】
また、電子輸送層に使用する電子輸送性材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノールアルミニウム錯体等の有機金属錯体等が挙げられる。
【0044】
本発明者らは種々の検討を行い、本発明のベンズオキサゾリルカルバゾール化合物を発光層のホスト材料として用いた素子が、発光効率が高く、低電圧で駆動することを見出した。
青色の燐光発光素子では発光波長のピーク波長が450nm〜470nmと短波長であり、このような高い最低三重項エネルギーに対応できる公知のホスト材料は限られている。そして最低三重項エネルギーの高い材料として、カルバゾール化合物がある。
【0045】
ところで、正孔、電子、励起子などの高エネルギー化学種が高密度で存在する発光層では、使用する材料が化学的に安定であることが極めて重要である。
【0046】
しかし、カルバゾールは、化学的に活性の高い窒素−水素結合を持つため、そのままではホスト材料として利用できない。
【0047】
また、カルバゾールは高い正孔輸送性を示すが、電子輸送性は低い。
すなわち、三重項エネルギーを高く保ちながら、化学的安定性と正孔・電子の両方の電荷輸送性を両立する新規な化合物が求められていた。
【0048】
上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、本発明のベンズオキサゾリルカルバゾール化合物が燐光発光素子のホスト材料として有用であることを見出した。本発明の化合物は、カルバゾール化合物として三重項エネルギーを高く保ちながら、且つ化学的安定性と電子輸送性の改善が達成されている。
【0049】
本発明に係るベンズオキサゾリルカルバゾール化合物は、ベンズオキサゾールとカルバゾールとの結合位置に工夫が施されている。ベンズオキサゾールとカルバゾールは、カルバゾールの窒素とオキサゾール環上の炭素で結合している。そのため化学的に安定である。
これ以外の位置で両者を結合させた場合、カルバゾールの窒素−水素結合部分と、ベンズオキサゾールの2位の炭素−水素結合の2箇所の化学的に活性の高い箇所が残ってしまう。
また、ベンズオキサゾールは、従来電子輸送層として用いられており、電子輸送性が高い。
【0050】
すなわち上記したように、本発明のベンズオキサゾリルカルバゾール化合物は、化学的安定性を得ながら、正孔輸送性、電子輸送性共に優れ、且つ最低三重項エネルギーを高く保つことが可能である。これにより、ホスト材料として正孔と電子の良好な再結合の場を提供でき、エネルギーをゲスト材料に効率良く転移することができ、発光効率が高く、且つ低電圧駆動を実現できる有機発光素子が得られる。
【0051】
本実施形態に係る有機発光素子は本発明に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性材料あるいは輸送性材料あるいはホスト材料あるいはゲスト材料あるいは電子注入性材料あるいは電子輸送性材料等を一緒に使用することができる。
【0052】
本発明に係る有機発光素子としては、基板上に、順次陽極/発光層/陰極を設けた構成のものが挙げられる。他にも順次陽極/正孔輸送層/電子輸送層/陰極を設けた構成のものが挙げられる。また順次陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を設けたものや順次陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を設けたものを挙げることができる。あるいは順次陽極/正孔輸送層/発光層/正孔・エキシトンブロッキング層/電子輸送層/陰極を設けたものを挙げることができる。ただしこれら五種の多層型有機発光素子の例はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明に係る化合物を用いた有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機化合物層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、電子輸送層もしくはホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる二層から構成されるなど多様な層構成をとることができる。
【0053】
その場合の素子形態としては、基板側の電極から光を取り出すいわゆるトップエミッション方式でも、基板と逆側から光を取り出すいわゆるボトムエミッション方式でも良く、両面取り出しの構成でも使用することができる。
【0054】
ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料としては、ホール移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0055】
電子注入性材料あるいは電子輸送性材料としては、ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0056】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は単独で使用してもよいし複数併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0057】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で使用してもよいし、複数併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0058】
本実施形態に係る有機発光素子において、本実施形態に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で形成する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0059】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0060】
(有機発光素子の用途)
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどがある。
【0061】
表示装置は本実施形態に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部は複数の画素を有する。この画素は本実施形態に係る有機発光素子と発光輝度を制御するためのスイッチング素子の一例としてTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極または陰極とTFT素子のドレイン電極またはソース電極とが接続されている。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。
【0062】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの情報を入力する画像入力部を有し、入力された画像を表示部に出力する画像出力装置でもよい。また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部として、外部から入力された画像情報に基づいて画像を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0063】
次に、本実施形態に係る有機発光素子を使用した表示装置について図1を用いて説明する。
【0064】
図1は、本実施形態に係る有機発光素子と、有機発光素子に接続するスイッチング素子の一例であるTFT素子とを示した断面模式図である。本図では有機発光素子とTFT素子との組が2組図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
【0065】
図1の表示装置は、ガラス等の基板1とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜2が設けられている。また符号3は金属のゲート電極である。符号4はゲート絶縁膜であり、5は半導体層である。
【0066】
TFT素子8は半導体層5とドレイン電極6とソース電極7とを有している。TFT素子8の上部には絶縁膜9が設けられている。コンタクトホール10を介して有機発光素子の陽極11とソース電極7とが接続されている。表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0067】
有機化合物層12は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしている。陰極13の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層14や第二の保護層15が設けられている。
【0068】
本実施形態に係る表示装置においてスイッチング素子に特に制限はなく、単結晶シリコン基板やMIM素子、a−Si型の素子等を用いてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
[化合物H−08の合成]
[(1)中間体A−03の合成]
【0071】
【化12】

【0072】
上記のA−01(商品名;3,6−Dibromocarbazole、和光純薬工業)を13.2g(41mmol)とA−02(商品名;2,4,6−Trimethylohenylboronic Acid、和光純薬工業)を20g(122mmol)、Pd(PPhを0.938g(0.8mmol)、CsCOを40g(123mmol)、トルエンを150ml、エタノールを100ml、水を100mlを用意し、それらを容量500mlのフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌して反応させた。
【0073】
反応溶液を室温に戻し、分離した有機層を抽出、濃縮し、得られた残留物を、カラム精製(展開溶媒として;酢酸エチル:ヘプタン=1:4)し、中間体A−03の9.8g(24mmol)を得た。収率は60%であった。
【0074】
[(2)例示化合物H−08の合成]
【0075】
【化13】

【0076】
容量200mlのフラスコに、上記中間体A−03を2.5g(6.2mmol)、DMFを70ml、NaH(60重量%)を0.335g(8.3mmol)の順で投入した。室温で20分攪拌した後、上記A−04(商品名;2−Chlorobenzoxazole、東京化成)を1.2g(7.8mmol)投入した。終夜室温で攪拌し、その後水50mlを加え、反応を終了させた後、メタノールで洗浄吸引ろ過した。得られた残渣を、トルエン:エタノール=1:1で再結晶した。更に、得られた再結晶粉末を乾燥させ、昇華精製(10−4Pa、320℃)し、化合物H−08を1.53g(2.9mmol)得た。収率は47%であった。
NMR(CDCl);δ8.7(2H)、δ7.7(3H)、δ7.6(1H)、δ7.3−7.4(4H)、δ7.0(4H)、δ2.3(6H)、δ2.0(12H)。
MALDI−MS;520.3
(実施例2)
実施例1で得られた化合物H−08のトルエン溶液(濃度;10−3mol/l)の77Kにおける燐光の0−0バンドを分光蛍光光度計 日立 F−4500で測定したところ、最低三重項エネルギー準位は419nmだった。
【0077】
(実施例3)
[素子評価]
図1(a)に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作成した。
【0078】
基板15としてのガラス基板上に、陽極14としての酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜した。成膜されたITO膜をパターニングして、陽極の面積が4mmになるようにした。
【0079】
これを超純水、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄した。さらに、UV/オゾン洗浄を行い、透明且つ導電性を有する支持基板として使用した。
【0080】
次に、正孔注入材料として、下記式で示される下記構造式(I)で示される既知正孔輸送材料(商品名;4,4’,4’’−Tris(carbazol−9−yl)triphenylamine(俗名;TCTA)、Luminesence Technology社(台湾))を、ITO電極上に蒸着し、正孔輸送層を50nmの厚さで形成し、正孔輸送層を形成した。
【0081】
【化14】

【0082】
次に、上記正孔輸送層の上に、実施例1で得られたベンズイミダゾリルカルバゾール化合物H−08に対して、下記構造式(II)で示される燐光発光性Ir錯体が10重量%濃度になるように蒸着レートを変えて共蒸着し、40nmの発光層を設けた。蒸着時の真空度は2.0×10−5Paの条件で成膜した。
【0083】
【化15】

【0084】
更に発光層の上に、下記構造式(III)で示される化合物を蒸着して、30nmの電子輸送層を設けた。蒸着時の真空度は2.0×10−5Pa、成膜速度は0.1nm/secの条件であった。
【0085】
【化16】

【0086】
次に、陰極としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの膜厚で蒸着し、更にアルミニウム(Al)を120nm蒸着した。蒸着時の真空度は4.0×10−5Pa、成膜速度はフッ化リチウム(LiF)では0.015nm/sec、アルミニウム(Al)では0.4〜0.5nm/secの条件で成膜した。
【0087】
得られた有機発光素子は、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、エポキシ樹脂系接着材で封止した。
【0088】
この様にして得られた素子に、ITO電極を正極、LiF/Al電極を負極にして、発光輝度500cd/m時の印加電圧を測定したところ9.7Vであり、発光効率5.3lm/Wの青色の発光が観測された。
【0089】
(比較例1)
実施例1の化合物H−08に変えて、特許文献2に記載されている以下の比較化合物R−01を使用する以外は、実施例3と同様に素子を作成し、同様な評価を行った。発光輝度500cd/m時の印加電圧は13.8Vであり、発光効率3.0lm/Wの青色の発光が観測された。
【0090】
【化17】

【0091】
以上の結果から、本発明のオキサゾリルカルバゾール化合物を、有機発光素子用材料として用いることによって、発光効率が高く、低電圧駆動を実現することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の技術は、フルカラーディスプレイなどの表示装置だけでなく、照明機器、光電変換素子を使用した機器または電子写真機器などにも応用できる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]に示されるベンズオキサゾリルカルバゾール化合物。
【化1】


式中、RおよびRは、それぞれ独立に無置換フェニル基、あるいは炭素数が1乃至6のアルキル基が置換された置換フェニル基を表す。
【請求項2】
前記RおよびRが、トリル基、キシリル基、メシチル基のいずれかである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
対向する一対の電極間に配置された少なくとも一層の有機層を有する有機発光素子であって、前記有機層のうち少なくとも一層が、請求項1に記載の化合物を有する発光層であることを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
前記発光層は、ゲスト材料として燐光発光性Ir錯体を有する発光層である請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
請求項3乃至請求項4に記載の有機発光素子と薄膜トランジスタとを組み合わせて成る画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207794(P2011−207794A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75663(P2010−75663)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】