説明

新規なポリイミド

【課題】特定の反復単位からなる新規なポリイミドを提供することを目的とするものである。
【解決手段】ジアミン成分として、少なくとも一部に1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレンを含むことを特徴とする反復単位からなる新規なポリイミドを提供する。前記ポリイミドは、水蒸気透過性、水蒸気と有機蒸気の分離度に優れており、例えば、エタノールなどの有機化合物の蒸気を含む有機蒸気混合物を蒸気透過法により分離させるガス分離膜として好適に使用することができる、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の反復単位からなるポリイミドに関する。そのポリイミドは、例えば、ガス分離膜として好適に使用することができ、水蒸気透過性、水蒸気と有機蒸気との分離度、水蒸気と有機蒸気とに対する高温耐久性などが優れている。そして、そのガス分離膜は、有機蒸気混合物を接触させて、有機蒸気を分離・回収する方法に好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応によって得ることが出来る。従来から知られているポリイミドは、この高分子特有の高耐熱性に加え、力学的強度、寸法安定性に優れ、難燃性、電気絶縁性等を併せて有している。そのため、これらのポリイミドは、電気・電子機器等の分野で使用されており、すでに、耐熱性が要求される分野に広く用いられ、今後益々、使用分野や量的拡大が期待されているものである。
【0003】
さらに、ポリイミドは他の樹脂と比較し各種気体透過選択性に優れているため、近年ポリイミド系樹脂を素材とした分離膜の研究が盛んに行われている。
【0004】
近年、エネルギー源として、バイオマスを発酵させて製造したエタノール水溶液を脱水・精製して得られるバイオエタノールが注目を集めている。ところが、エタノールと水とは、共沸混合物を形成するため、通常の蒸留では96重量%以上に脱水・精製することは不可能である。よって、99重量%以上といった高純度エタノールを得るためには、シクロヘキサンなどのエントレーナーを加えた共沸蒸留法などが行われている。一方、分離膜は、共沸混合物を形成している水とエタノールとの有機蒸気混合物であっても、各成分の透過性の違いを利用し容易に分離することができる。このため、共沸蒸留法よりも省エネルギーシステムを構築することを可能とする手法として、分離膜によりエタノール蒸気と水蒸気とを分離することでエタノール水溶液を脱水して高純度のエタノールを得る方法が、期待されている。
【0005】
一般に、ガス分離膜モジュールを用いた有機蒸気分離は、以下のように行われる。有機化合物を含む液体化合物を加熱蒸発させて生成した有機蒸気混合物を、混合ガス導入口からガス分離膜モジュールに供給する。有機蒸気混合物が分離膜に接して流通する間に、分離膜を透過した透過蒸気と、分離膜を透過しなかった非透過蒸気とに分離し、透過蒸気を透過ガス排出口から、非透過蒸気を非透過ガス排出口から回収する。透過蒸気は分離膜の透過速度が速い成分(以下、高透過成分と記載することもある)に富み、非透過蒸気は高透過成分が少なくなる。この結果、有機蒸気混合物は、高透過成分に富んだ透過蒸気と、高透過成分が少ない非透過蒸気とに分離される。このときの高透過成分の透過速度とそれ以外の成分の透過成分の比を分離度と定義している。
【0006】
特許文献1には、有機物を含む水溶液を気化させて生成させた有機蒸気と水蒸気とを含む気体混合物(有機蒸気混合物)から、水分(水蒸気)を選択的に除去することによって高い濃度の有機溶媒を得るためのガス分離膜脱水プロセス(有機蒸気脱水)にポリイミド製気体分離膜を用いることが提案されている。そして、前記ポリイミド気体分離膜を形成するポリイミドとして、ジアミン成分として、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル(以下、34DADEとも記載することがある)、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(以下、44DADEとも記載することがある)およびジアミノジフェニルメタン(以下、DADMとも記載することがある)からなる群から選ばれた少なくとも一種のジアミンから誘導される芳香族ジアミン骨格を含む芳香族ポリイミドが開示されている。
【0007】
しかしながら、ビス(アミノフェノキシ)ナフタレン(以下、APNとも記載することがある)類から誘導されるジアミン骨格を含むポリイミドについては言及されていない。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−267415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、エタノールなどの有機化合物水溶液の脱水を行う場合には、水蒸気の透過速度が十分でないと、より広面積の分離膜が必要になり、脱水に要する時間が長くなるという問題がある。また、水蒸気とエタノール蒸気などの有機蒸気との分離度が十分でないと、エタノールなどの有機化合物の透過損失が大きくなるという問題がある。
【0010】
また、有機蒸気混合物を分離膜に供給する際、効率的に分離を行うために、通常、前記有機蒸気混合物の供給圧力を上昇させる。つまり、ガス分離膜は、恒常的に高温かつ高圧の有機蒸気と接しており、水分を含む液体を分離する場合には、水蒸気とも接することとなる。したがって、高温かつ高圧の有機蒸気や水蒸気に接した状態でも、ガス分離膜が変化しないこと、即ち水蒸気と有機蒸気とに対する高温耐久性が必要である。
【0011】
すなわち、本発明は、例えば、エタノールなどの有機化合物の蒸気を含む有機蒸気混合物を蒸気透過法により分離させるガス分離膜として好適に使用することができる、特に水蒸気透過性、水蒸気と有機蒸気との分離度、水蒸気と有機蒸気とに対する高温耐久性などが改良されたガス分離膜として利用できる、特定の反復単位からなるポリイミドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特定の反復単位からなるポリイミドを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0013】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で示される反復単位からなるポリイミドに関する。
【0014】
【化1】

〔式中、Aは少なくとも一部が下記化学式(2)で示される化学構造からなる2価の基であり、Bは4価の基である。〕
【0015】
【化2】

【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の反復単位からなるポリイミドを提供することができる。このポリイミドは、例えば、ガス分離膜として好適に使用することができる。このポリイミドからなるガス分離膜は、例えば有機蒸気と水蒸気とを主として含む有機蒸気混合物を接触させることにより、前記水蒸気を選択的に透過させて、有機蒸気混合物のガス分離を行うことに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、下記一般式(1)で示される反復単位からなるポリイミドである。
【0019】
【化3】

〔式中、Aは少なくとも一部が下記化学式(2)で示される化学構造からなる2価の基であり、Bは4価の基である。〕
【0020】
【化4】

【0021】
上記の反復単位からなるポリイミドは、公知な製造方法で容易に製造することができる。例えば、下記化学式(3)で示されるジアミンを含む下記一般式(4)で示されるジアミンと下記一般式(5)で示されるテトラカルボン酸二無水物とを、略等モル、有機溶媒中に溶解させ、約100℃以下、特に60℃以下の温度で重合してポリアミック酸にし、このポリアミック酸溶液をドープ液として使用し、基材上に塗布または流延して薄膜を形成させ、加熱、昇温しながら溶媒を徐々に除去するとともに、アミド−酸結合をイミド化し、次いで150〜350℃の温度で乾燥・熱処理する方法によって製造することができる。その他、下記化学式(3)で示されるジアミンを含む下記一般式(4)で示されるジアミンと、下記一般式(5)で示されるテトラカルボン酸二無水物とを、略等モル、フェノール系溶媒中、約140℃以上の温度で重合およびイミド化して、フェノール系溶媒に溶解したポリイミド溶液を得、これをドープ液として使用し、基材上に塗布または流延して薄膜を形成させ、加熱、昇温しながら溶媒を徐々に除去し、150〜350℃の温度で乾燥・熱処理する方法によって製造することができる。
【0022】
ドープ液の調製に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系化合物、フェノール、クレゾール、キシレノール、モノハロゲン化フェノール、モノハロゲン化アルキルフェノールなどのフェノール系化合物などを挙げることができる。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

〔式中、Aは2価の基である〕
【0025】
【化7】

〔式中、Bは4価の基である〕
【0026】
上記の製造方法において、一般式(1)中のAは、一般式(4)で示されるジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の残基である。本発明において、前記ジアミンと同様に、一般式(1)で示される反復単位からなるポリイミドに2価の基Aを導入することができる成分を、ジアミン成分と呼ぶ。例えば、一般式(1)で示される反復単位からなるポリイミドは、下記一般式(6)で示されるジイソシアネートと、上記一般式(5)で示されるテトラカルボン酸とを重合、イミド化することによっても製造することができる。この場合には、前記ジイソシアネートをジアミン成分とする。
【0027】
【化8】

【0028】
〔式中、Aは2価の基である〕
【0029】
上記の製造方法において、一般式(1)中のBは、上記一般式(5)で示されるテトラカルボン酸二無水物から、カルボキシル基に由来する基を除いた4価の残基である。本発明において、前記テトラカルボン酸と同様に、一般式(1)で示される反復単位からなるポリイミドに4価の基Bを導入することができる成分を、テトラカルボン酸成分と呼ぶ。例えば、下記一般式(7)で示されるテトラカルボン酸、下記一般式(8)で示されるテトラカルボン酸ジエステルなどもテトラカルボン酸成分として挙げることができる。
【0030】
【化9】

〔式中、Bは4価の基である〕
【0031】
【化10】

〔式中、Bは4価の基であり、Rは1価の基である〕
【0032】
以下、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを有機溶媒中で重合、イミド化することによる製造方法を例に挙げて説明する。
【0033】
本発明のポリイミドにおいて、ジアミン成分の少なくとも一部は、前記化学式(3)で示される化学構造からなるビス(アミノフェノキシ)ナフタレン類である。本発明の全ジアミン成分のうち、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、特に好ましくは40モル%以上が、前記化学式(3)で示される化学構造からなるビス(アミノフェノキシ)ナフタレン類である。本発明におけるビス(アミノフェノキシ)ナフタレン類とは、化学式(3)で示されるとおり、ナフタレンの2つの芳香環のうち、一方の芳香環に2つのアミノフェノキシ基が結合している化学構造のものを意味する。具体的には、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ナフタレン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレンを挙げることができる。この中でも、下記化学式(9)で示される、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレンが好ましい。
【0034】
【化11】

【0035】
本発明のポリイミドにおいて、ジアミン成分は、前記化学式(3)で示されるジアミン以外のジアミンを含んでも良い。前記ジアミンは、例えば、前記一般式(4)のAが、脂肪族基、環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接または架橋員により相互に連結した非縮合多環式芳香族基からなる群から選ばれる2価の基であるものが挙げられる。その中でも、芳香族ジアミンが好ましく、特に、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル及び/または4,4'−ジアミノジフェニルエーテルを含むものが好ましい。その他に、例えば、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−アミノフェニル)プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、o−トリジン、o−トリジンスルホン、o−、m−又はp−フェニレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノピリジンなども好ましい。
【0036】
本発明のポリイミドにおいて、テトラカルボン酸成分は、例えば、前記一般式(5)で示されるテトラカルボン酸二無水物であり、Bが、脂肪族基、環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接または架橋員により相互に連結した非縮合多環式芳香族基などから選ばれる4価の基であるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。例えば、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸類、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸類、ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン類、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン類、ビス〔(ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン類、ビス〔(ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン類などが挙げられる。その中でも、Bが下記化学式(10)で示されるビフェニルテトラカルボン酸類、および/または、Bが下記化学式(11)で示される2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン類が好ましい。
【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
前記のビフェニルテトラカルボン酸類としては、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸、あるいは、2,2,3',3'−ビフェニルテトラカルボン酸、および、それらの酸二無水物、または、酸エステル化物などを挙げることができる。
【0040】
前記の2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン類としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、あるいは、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、および、それらの酸二無水物、または、酸エステル化物などを挙げることができる。
【0041】
本発明のポリイミドは、例えば有機蒸気混合物を分離するガス分離膜として好適に使用できる。以下、ガス分離膜としての用途について説明する。
【0042】
本発明のポリイミドは、例えば、厚さ0.01〜5μmの緻密層と、厚さ10〜200μmの多孔質層とを有する非対称性構造をもつ分離膜として好適に使用できる。その中でも緻密層と多孔質層とを連続的に有することが好ましい。
【0043】
分離膜の形状には特に制限はないが、有効表面積が広く、耐圧性が高いという利点を持つため、中空糸膜が好ましい。
【0044】
本発明のポリイミドからなるガス分離膜は、水蒸気の透過速度P'H2Oが、1.0×10-3cm3/cm2・sec・cmHg〜10.0×10-3cm3(STP)/cm2・sec・cmHgであることが好ましく、1.2×10-3cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上であることがより好ましく、1.5×10-3cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上であることがより好ましい。通常は、6.0×10-3cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下である。有機物水溶液から連続的に水蒸気を除去するには、水蒸気の透過速度が大きいことが望ましい。水蒸気の透過速度が前記の値を下回る場合には、水蒸気除去に要する時間が長くなる、もしくは水蒸気除去に用いる膜面積が大きくなるために、工業的な実施に著しく不利となる。
【0045】
また、本発明のポリイミドからなるガス分離膜は、ガス分離性能、例えば、水蒸気とエタノール蒸気との分離度(P'H2O/P'EtOH)が50〜10000であることが好ましく、該分離度が75以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましく、150以上であることが特に好ましい。分離度が前記の値を下回る場合には、有機物蒸気の透過損失が大きくなり、工業的に不利である。
【0046】
本発明のガス分離膜は、ポリイミドとして、前記のジアミン成分を含むポリイミドを用いる以外は、従来のポリイミドからなるガス分離膜の製造方法に準じて製造することができる。例えば、中空糸膜のガス分離膜は以下のようにして製造することができる。
【0047】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との略等モルを、有機溶媒中で重合・イミド化反応させて、ポリイミド溶液として得ることができる。
【0048】
重合・イミド化反応は、有機溶媒中にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを所定の組成比で加え、室温程度の低温で重合反応させてポリアミド酸を生成し次いで100〜250℃好ましくは130〜200℃程度に加熱して加熱イミド化するか又はピリジンや無水酢酸などを加えて化学イミド化する2段法、または、有機溶媒中にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを所定の組成比で加え、100〜250℃好ましくは130〜200℃程度の高温で重合・イミド化反応させる1段法によって好適に行われる。加熱によってイミド化反応を行うときは、脱離する水またはアルコールを除去しながら行うことが好適である。有機溶媒に対するテトラカルボン酸成分とジアミン成分の使用量は、溶媒中のポリイミドの濃度が5〜50重量%程度好ましくは5〜40重量%にするのが好適である。
【0049】
重合・イミド化反応で得られたポリイミド溶液は、そのまま用いることもできる。また、例えば得られたポリイミド溶液をポリイミドに対し非溶解性の溶媒中に投入してポリイミドを析出させて単離後、改めて有機溶媒に所定濃度になるように溶解させてポリイミド溶液を調製し、それを用いることもできる。
【0050】
ポリイミドを溶解する有機溶媒としては、得られるポリイミドを好適に溶解できるものであれば限定されるものではないが、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールのようなフェノール類、2個の水酸基をベンゼン環に直接有するカテコール、レゾルシンのようなカテコール類、3−クロルフェノール、4−クロルフェノール(後述のパラクロロフェノールに同じ)、3−ブロムフェノール、4−ブロムフェノール、2−クロル−5−ヒドロキシトルエンなどのハロゲン化フェノール類などからなるフェノール系溶媒、又はN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド類からなるアミド系溶媒、あるいはそれらの混合溶媒などを好適に挙げることができる。
【0051】
本発明のポリイミドから非対称膜を得るためには、例えば、ポリイミドを有機溶媒に溶解したポリイミド溶液を用いて、相転換法を行うことが出来る。相転換法は、ポリマー溶液を凝固液と接触させて相転換させながら膜を形成する公知の方法である。本発明ではいわゆる乾湿式法が好適に採用される。乾湿式法は、膜形状にしたポリマー溶液の表面の溶媒を蒸発させて薄い緻密層を形成し、次いで凝固液(ポリマー溶液の溶媒とは相溶し、ポリマーは不溶な溶剤)に浸漬し、その際生じる相分離現象を利用して微細孔を形成して多孔質層を形成させる相転換法であり、Loebらが提案(例えば、米国特許3133132号)したものである。
【0052】
本発明のポリイミドからなるガス分離膜は、乾湿式紡糸法を採用することによって、非対称中空糸膜として好適に得ることができる。乾湿式紡糸法は、乾湿式法を紡糸ノズルから吐出して中空糸状の目的形状としたポリマー溶液に適用して非対称中空糸膜を製造する方法である。より詳しくは、ポリマー溶液をノズルから中空糸状の目的形状に吐出させ、吐出直後に空気又は窒素ガス雰囲気中を通した後、ポリマー成分を実質的には溶解せず且つポリマー混合液の溶媒とは相溶性を有する凝固液に浸漬して非対称構造を形成し、その後乾燥し、更に必要に応じて加熱処理して分離膜を製造する方法である。紡糸ノズルは、ポリイミド溶液を中空糸状体として押し出すものであればよく、チューブ・イン・オリフィス型ノズルなどが好適である。通常、押し出す際のポリイミド溶液の温度範囲は約20℃〜150℃、特に30℃〜120℃が好適である。また、ノズルから押し出される中空糸状体の内部へ気体または液体を供給しながら紡糸がおこなわれる。
【0053】
本発明のポリイミドを乾湿式紡糸法により非対称中空糸膜を得る際に、ノズルから吐出させるポリイミド溶液は、ポリイミドの濃度が5〜40重量%更には8〜25重量%になるようにするのが好ましく、100℃での溶液粘度(回転粘度)が100〜20000poise、好ましくは200〜15000poise、特に500〜10000poiseであることが好ましい。凝固液への浸漬は、一次凝固液に浸漬して中空糸状などの膜の形状が保持できる程度に凝固した後、案内ロールに巻き取られ、次いで二次凝固液に浸漬して膜全体を十分に凝固させることが好ましい。凝固液は、特に限定するものではないが、水や、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどの低級アルコール類や、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどの低級アルキル基を有するケトン類、さらには、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミン類、あるいは、それらの混合物が好適に用いられる。凝固した膜の乾燥は炭化水素などの溶媒を用いて凝固液と置換した後乾燥する方法が効率的である。加熱処理は用いられている多成分のポリイミドの各成分ポリマーの軟化点又は二次転移点よりも低い温度で実施されることが好ましい。
【0054】
本発明のポリイミドからなるガス分離膜は、ガス分離膜の一方の側に、有機化合物を含む液体混合物を加熱蒸発させて生成した有機蒸気混合物(原料ガス)を、好ましくは70℃以上、より好ましくは80〜200℃、特に好ましくは100〜160℃の温度で接触させて、高透過成分を選択的に透過させ、ガス分離膜の透過側から、高透過成分に富んだ有機蒸気を得て、一方ガス分離膜の非透過側(原料ガスの供給側)から、高透過成分が実質的に除去された有機蒸気を得るガス分離方法に好適に用いることが出来る。
【0055】
前記のガス分離方法は、水を含むアルコール類溶液の脱水操作に好適に用いることができる。特に、エタノール、イソプロパノールの脱水に好適に用いることができる。水を含むアルコール溶液の脱水操作においては、高透過成分は水である。
【0056】
前記の分離方法において、ガス分離膜の供給側と透過側との高透過成分の分圧差を確保するために、例えば、ガス分離膜の透過側を減圧に保持することが好ましい。より好ましくは、透過側の圧力を1〜500mmHgの減圧下に制御する。ガス分離膜の透過側を減圧に保持することによって、高透過成分を選択的にできるだけ速く透過させ、ガス分離膜の供給側に供給された原料ガスの有機蒸気混合物から、高透過成分を選択的に除去することが容易になる。その場合には、前記の減圧の程度が高いほど蒸気の透過速度が大きい。
【0057】
ガス分離膜の供給側と透過側との高透過成分の分圧差を確保するために、前記透過側を減圧に保持する手段のほかに、供給側の圧力を高圧に保持する、乾燥状態の気体をキャリアガスとして透過側に流通させるなどの手段が挙げられる。該手段は特に限定されるものではなく、2つ以上の手段を同時に用いても構わない。
【0058】
前記のガス分離方法においては、ガス分離膜へ供給する有機蒸気混合物の圧力を、常圧または加圧下で行うことができる。特に好ましくは有機蒸気混合物の圧力を0.1〜2MPaG、さらに好ましくは0.15〜1MPaGの加圧下で行う。また、ガス分離膜の透過側の圧力は、加圧、常圧または減圧下で行うことができるが、特に減圧下で行われることが好ましい。
【0059】
また、前記のガス分離方法においては、ガス分離膜の透過側に乾燥状態の気体をキャリアガスとして流通させながら、ガス分離を行うことにより、水蒸気を選択的に透過除去することが容易になるので好適である。前記キャリアガスは、高透過成分を含まないか、少なくとも高透過成分の分圧が非透過ガスより小さい濃度であるガスであれば特に制限はなく、例えば、窒素、空気などが使用できる。窒素はガス分離膜の透過側空間から供給側空間への逆浸透が起こりにくく、不活性であるために、防災上も好ましいキャリアガスである。そのほか、高透過成分を分離した非透過ガスの一部をキャリアガス導入口に循環し、キャリアガスとして使用することも好適である。
【0060】
原料ガスの有機蒸気混合物は、どのような方法で製造されたものであってもよいが、一般的には、有機化合物の水溶液を、該有機化合物の沸点または共沸温度より高い温度に加熱して、蒸発させることによって得ることができる。有機蒸気混合物は、前記の有機化合物の水溶液などの有機化合物を含む液体混合物を、蒸発(蒸留)装置によって加熱蒸発させることなどにより得られる。得られた有機蒸気混合物は、常圧状態乃至0.1〜2MPaG程度の加圧状態で、本発明のガス分離膜を用いた有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールへ供給される。加圧状態の有機蒸気混合物は、加圧蒸発器で直接加圧状態の有機蒸気混合物を得ても良いし、常圧蒸留器で得られた常圧状態の有機蒸気混合物をベーパーコンプレッサーによって加圧することで得ても構わない。
【0061】
また、有機蒸気混合物は、有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールへ供給され、透過ガス排出口から排出されるまでの間で凝縮しない程度以上に十分高温に過熱された過熱蒸気として供給されることが好ましい。
【0062】
本発明のポリイミドからなるガス分離膜を用いた有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールへ供給される有機蒸気混合物は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上の温度のものである。
【0063】
前記の有機蒸気混合物は、その有機蒸気の濃度が特に限定されるものではないが、本発明では、有機蒸気の濃度が50重量%以上、特に70〜99.8重量%程度であることが好ましい。
【0064】
前記の有機蒸気となる有機化合物としては、沸点0℃以上200℃以下、好ましくは常温(25℃)で液体で且つ沸点が150℃以下の有機化合物が好ましい。該有機化合物の沸点が0℃以上200℃以下であるのは、中空糸膜の使用温度範囲、有機蒸気混合物を過熱蒸気化するための設備、精製分離成分を凝集し回収するための設備や取扱いの容易さを考慮したときに実用的だからである。
【0065】
このような有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコールなどの炭素数が1〜6の低級脂肪族アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機カルボン酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ペンタノン、3−ヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ピナコリンなどの炭素数が3〜6の脂肪族ケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル、および、ジブチルアミン、アニリンなどの有機アミン類を挙げることができる。
【0066】
本発明のポリイミドからなるガス分離膜を用いた有機蒸気分離用ガス分離膜モジュールは、特に、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール水溶液を蒸発して得られた水蒸気とアルコール蒸気とからなる有機蒸気混合物を、脱水して高純度のアルコール蒸気を得る場合に好適に採用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
以下の各例で用いた化学物質の略号は次のとおりである。
s−BPDA:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
6FDA:2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(なお、この化合物は4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス(無水フタル酸)ともいう。)
APN:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレン
34DADE:3,4'−ジアミノジフェニルエーテル
44DADE:4,4'−ジアミノジフェニルエーテル
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PCP:4−クロロフェノール
【0069】
(ガラス転移点の測定)
ポリイミド膜を切削し、幅2mm、長さ4mmの試験片を作成した。前記試験片を、動的固体粘弾性測定装置(TA Instruments社製、RSAIII)を用いて、引っ張りモード(周波数10Hz)、最大歪0.2〜1.0%、窒素雰囲気下で測定した。tanδ(損失弾性率E''/貯蔵弾性率E')のピークトップをガラス転移温度(Tg)とした。
【0070】
(機械的特性の測定)
前記試験片を、引張り試験機を用いて、クロスヘッドスピード2mm/min、チャック間距離20mmとして、引張り破断伸度、最大応力、ヤング率の測定を行った。測定は、温度23℃、湿度50%RHの調湿条件下にサンプルを10時間保持した後に行った。
【0071】
(ポリイミド中空糸膜用ポリイミド溶液の調整)
所定量のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、パラクロロフェノール(PCP)とともに、加熱装置と攪拌機と窒素ガス導入管および排出管とが付設されたセパラブルフラスコに秤取って入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、190℃の温度で10時間重合することにより、所定の濃度のポリイミドのPCP溶液を調製した。
【0072】
(ポリイミド中空糸膜の紡糸)
前記ポリイミドのPCP溶液を400メッシュのステンレス製金網でろ過して、紡糸用ドープとした。このドープを中空糸紡糸ノズルを備えた紡糸装置に仕込み、中空糸紡糸ノズルから窒素雰囲気中に中空糸状に吐出させ、次いで中空糸状成形物を75重量%エタノール水溶液からなる一次凝固浴に浸漬し、更に一対の案内ロールを備えた二次凝固浴(凝固液:75重量%エタノール水溶液)中の案内ロール間を往復させて凝固を完了させ、湿潤状態の非対称構造をもつ中空糸膜をボビンに巻き取った。この非対称中空糸膜をエタノール中で十分洗浄し、次いでイソオクタンでエタノールを置換した後、100℃でイソオクタンを蒸発乾燥し、さらに230〜250℃で加熱処理をすることにより、ポリイミドによって構成された非対称中空糸膜を得た。
【0073】
(ガス分離膜モジュールの製造)
前述のようにして製造した中空糸膜6本を束ね裁断して中空糸膜の糸束を形成し、その糸束の一方の端を中空糸端部が開口するようにエポキシ樹脂で固着し、他方の端を中空糸端部が閉塞されるようにエポキシ樹脂で固着して中空糸膜エレメントを製造した。次いで、原料の混合ガス供給口、透過ガス排出口、および非透過ガス排出口を有する容器に前記糸束エレメントを内設して、中空糸膜の有効長さ:約8.0cm、および、有効面積約7.5cm2 である糸束エレメントを内蔵するガス分離膜モジュールを製造した。
【0074】
(中空糸膜の蒸気透過速度の測定方法)
60重量%濃度のエタノール水溶液を、大気圧下において蒸発器で気化させたエタノール蒸気と水蒸気とを含む有機蒸気混合物を、さらに、ヒーターで過熱することにより100℃として、前記のガス分離膜モジュールに供給し、前記糸束エレメントを構成している中空糸膜の外側の表面(中空糸膜の供給側)に接触させ、中空糸膜の内側(中空糸膜の透過側)を3mmHgの減圧に維持して、有機蒸気分離を行った。
【0075】
前述の有機蒸気分離において、透過ガス排出口から得られた、水蒸気の濃度の高い透過ガスを、約−50℃の冷却トラップで凝縮して、凝縮物を捕集し、一方、中空糸膜の非透過ガス排出口(供給側)から得られた未透過ガス(水蒸気の除去された乾燥ガス)は、前記蒸発器に戻し、循環して使用しながら、有機蒸気混合物のガス分離を行った。尚、有機蒸気混合物の組成が測定値に影響を与えるほど変化しないように、サンプルの中空糸膜を透過する有機蒸気量に比べて大過剰量のエタノール水溶液を用いた。
【0076】
前記のトラップで捕集した凝縮物の重量を測定すると共に、水およびエタノールの濃度をガスクロマトグラフィー分析法により分析することにより透過した水蒸気およびエタノール蒸気の量を求めた。
【0077】
前述のようにして得た各成分蒸気の透過量から、水蒸気の透過速度P'H2Oと、エタノールに対する水蒸気の分離度(α:P'H2O/P'EtOH)とを算出し、気体分離性能を評価した。透過速度(P')の単位はcm3(STP)/cm2・sec・cmHgである。
【0078】
(緻密膜の蒸気透過係数測定方法)
蒸気透過係数は、膜面積14.65cm2のステンレス製のセルにポリイミド膜を設置し、80重量%濃度のエタノール水溶液を蒸発器で気化させ、エタノール蒸気と水蒸気とを含む有機蒸気混合物を製造し、さらに、ヒーターで加熱することにより130℃とした前記有機蒸気混合物を分離膜に接触させ、透過側を3mmHgの減圧に維持して、有機蒸気分離を行った。
【0079】
前述の有機蒸気分離において、透過ガス排出口から得られた水蒸気の濃度の高い透過ガスを、約−50℃の冷却トラップで凝縮して、凝縮物を捕集し、一方、中空糸膜の非透過ガス排出口(供給側)から得られた未透過ガス(水蒸気の除去された乾燥ガス)は、前記蒸発器に戻し、循環して使用しながら、有機蒸気混合物のガス分離を行った。尚、有機蒸気混合物の組成が測定値に影響を与えるほど変化しないように、サンプルの分離膜を透過する有機蒸気量に比べて大過剰量のエタノール水溶液を用いた。
【0080】
前記のトラップで捕集した凝縮物の重量を測定すると共に、水およびエタノールの濃度をガスクロマトグラフィー分析法により分析することにより透過した水蒸気およびエタノール蒸気の量を求めた。
【0081】
前述のようにして得た各成分蒸気の透過量から、水蒸気の透過係数PH2O、エタノール蒸気の透過係数PEtOHおよび、エタノールに対する水蒸気の分離度(α:PH2O/PEtOH)を算出し、蒸気分離性能を評価した。透過係数(P)の単位はBarrer(1Barrer=10-10cm3(STP)・cm/cm2・sec・cmHg)である。
【0082】
(実施例1)
攪拌機、窒素ガス導入管の設けられたセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)108.2gを入れ、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)からなるテトラカルボン酸成分8.8g及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレン(APN)10.3gを加え、25℃で10時間保持して重合した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に流延し、100℃で3時間、200℃で2時間、次いで300℃で1時間熱処理を行ってポリイミド膜を形成させた後、ガラス板から、厚さ約30μmのポリイミド緻密膜を取り出した。
【0083】
このポリイミド緻密膜の水蒸気透過係数(PH2O)は、608Barrerであり、エタノール蒸気と水蒸気との分離度は2000以上であり、ガラス転移点は、290℃、引張り破断伸度は256kgf/mm2、最大応力は14kgf/mm2、破断伸度は13%であった。
【0084】
(実施例2)
攪拌機、窒素ガス導入管の設けられたセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)57.9gを入れ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス(無水フタル酸)(6FDA)5.8g及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレン(APN)4.5gを加え、25℃で10時間保持して重合した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に流延し、100℃で3時間、200℃で2時間、次いで300℃で1時間熱処理を行ってポリイミド膜を形成させた後、ガラス板から、厚さ約30μmのポリイミド緻密膜を取り出した。
【0085】
このポリイミド緻密膜の水蒸気透過係数(PH2O)は、970Barrerであり、エタノール蒸気と水蒸気との分離度は2000以上であり、引張り破断伸度は215kgf/mm2、最大応力は10kgf/mm2、破断伸度は9%であった。
【0086】
(実施例3)
3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)からなるテトラカルボン酸成分26.1gと、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレン(APN)40モル%と4,4−ジアミノジフェニルエーテル(44DADE)60モル%とからなるジアミン成分23.1gとを、パラクロロフェノール(PCP)220gとともに加熱装置と攪拌機と窒素ガス導入管および排出管とが付設されたセパラブルフラスコに秤取って入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、190℃の温度で10時間重合することにより、PCP中のポリイミドの固形分濃度が17重量%であるポリイミドのPCP溶液を調製した。この溶液の100℃での粘度は2700p(poise)であった。
【0087】
前記ポリイミドのPCP溶液を紡糸することにより、外径が約500μmであって、内径が約300μmである連続した長尺の中空糸を作成した。前記中空糸によりガス分離膜モジュールを作成し、水蒸気の透過速度(P'H2O)および、エタノールに対する水蒸気の分離度(α:P'H2O/P'EtOH)とを測定した。
【0088】
水蒸気の透過速度(P'H2O)は、2.17×10-3cm3/cm2・sec・cmHgであり、分離度(α)は、243であった。
【0089】
(実施例4)
3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)からなるテトラカルボン酸成分23.2gと、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ナフタレン(APN)40モル%と4,4−ジアミノジフェニルエーテル(44DADE)50モル%と3,4−ジアミノジフェニルエーテル(34DADE)10モル%からなるジアミン成分25.7gとを、パラクロロフェノール(PCP)200gとともに加熱装置と攪拌機と窒素ガス導入管および排出管とが付設されたセパラブルフラスコに秤取って入れ、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、190℃の温度で10時間重合することにより、PCP中のポリイミドの固形分濃度が17重量%であるポリイミドのPCP溶液を調製した。この溶液の100℃での粘度は1300p(poise)であった。
【0090】
前記ポリイミドのPCP溶液を紡糸することにより、外径が約500μmであって、内径が約300μmである連続した長尺の中空糸を作成した。前記中空糸によりガス分離膜モジュールを作成し、水蒸気の透過速度(P'H2O)および、エタノールに対する水蒸気の分離度(α:P'H2O/P'EtOH)とを測定した。
【0091】
水蒸気の透過速度(P'H2O)は、2.35×10-3cm3/cm2・sec・cmHgであり、分離度(α)は、224であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される反復単位からなるポリイミド。
【化1】

〔式中、Aは少なくとも一部が下記化学式(2)で示される化学構造からなる2価の基であり、Bは4価の基である。〕
【化2】


【公開番号】特開2010−202864(P2010−202864A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22800(P2010−22800)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】