説明

新規な両親媒性物質、それを用いた薬剤搬送システム及び分子イメージングシステム

【課題】新規な両親媒性物質、当該新規な両親媒性物質を用いることによる、ナノキャリヤとして優れた生体適合性を示すナノ粒子、薬剤搬送システム及び当該システムにおいて有用なプローブ、及び、分子イメージングシステム及び当該システムにおいて有用なプローブを提供する。
【解決手段】親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーであって、前記親水性ブロックは、サルコシン単位を10個以上有する親水性ポリペプチド鎖であり、前記疎水性ブロックは、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位からなる群から選ばれる単位を必須構成単位として含み、且つ前記必須構成単位を5個以上有する疎水性分子鎖である、両親媒性ブロックポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な両親媒性物質、それを用いた薬剤搬送システム及び分子イメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−172522号公報に記載されているように、近年ナノテクノロジーへの関心が高まっており、ナノサイズ物質特有の性質を活かした新規機能性材料が開発されている。この新規機能性材料は、エネルギー、エレクトロニクス、及び医薬などの幅広い分野での応用が可能となっている。ナノテクノロジーは、なかでも、生体試料中の物質の検出、in vivo でのイメージングにおいて注目を浴びている。特に医薬の分野においては、リン脂質からなるナノ粒子であるリポソームなどが、薬剤搬送システム(ドラッグデリバリーシステム;DDS)における担体として用いられている。
【0003】
医薬の分野においては、特開2005−220045号公報に記載されているように、病気の診断および治療において、病気の初期段階でその病気により生体内に引き起こされる、器官・組織の形態および機能の変化を、迅速かつ精密な、且つ簡便な方法で検出することが望まれる。特に癌の早期診断および治療では、発癌初期に小さい病変部位を特定しその大きさを確定することが必要不可欠である。そのための診断方法として、内視鏡による生体検査、X線撮影、MRIおよび超音波撮影などの画像診断が挙げられる。また、放射線を指示薬剤に使用する場合は、半減期の問題があるため、指示薬としての寿命が制限される。また、診断装置の価格も非常に高価なものとなる。
【0004】
一方、蛍光や近赤外光を用いた指示薬を使用した画像診断も挙げられる。この方法においては、指示薬自身の寿命に大きな制限が無く、診断用の測定器の価格も、放射線を利用する物ほど高価ではなくなる。さらに、光は生体を非侵襲的に診断できる手段である。たとえば、腫瘍細胞の自家蛍光が、正常細胞の自家蛍光(450nmで励起、520nmで蛍光発生)よりも小さいことを利用した、内視鏡による自家蛍光観察法などが実用化されている。
【0005】
近赤外光を用いた診断法として、腫瘍部分に近赤外蛍光色素を集め、腫瘍部分をイメージングする近赤外蛍光撮影法も注目されている。この方法においては、励起光照射により近赤外領域に蛍光を放射する性質を持つ化合物を、造影剤として生体内に投与する。次に身体の外側から近赤外の波長である励起光を照射し、腫瘍部分に集まった蛍光造影剤から放射される蛍光を検出して、病変部位を確定するものである。その造影剤としてインドシアニングリーン誘導体を内包させたリポソームなどのナノ粒子が報告されている(特許文献1:特開2005−220045号公報参照)。
【0006】
一方、より生体適合性が高いペプチド性のナノ粒子も知られている。(非特許文献1:Journal of Controlled Release 50 (1998) 205-214、非特許文献2:Journal of Controlled Release 51 (1998) 241-248、非特許文献3:Journal of Colloid Interface Science 280 (2004) 506-510、及び、非特許文献4:Journal of American Chemical Society 2005, 127, 12423-12428参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−220045号公報
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(Journal of Controlled Release)」、第50巻、1998年、p.205−214
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(Journal of Controlled Release)」、第51巻、1998年、p.241−248
【非特許文献3】「ジャーナル・オブ・コロイド・インターフェイス・サイエンス(Journal of Colloid Interface Science)」、第280巻、2004年、p.506−510
【非特許文献4】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of American Chemical Society)」、2005年、第127巻、p.12423−12428
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内視鏡による生体検査、X線撮影、MRIおよび超音波撮影などの画像診断は、それぞれ優れた特徴を有するが、被験者へ、心理的圧迫、痛みや苦痛、被爆を強いるなどの侵襲性を有する。また、放射線を指示薬剤に使用する場合は、半減期の問題があるため、指示薬としての寿命が制限される。また、診断装置の価格も非常に高価なものとなる。
【0009】
一方、蛍光や近赤外光を用いた指示薬を使用する場合は、生体内には可視光領域に吸収を持つヘモグロビンなどが多く存在するため、生体のごく表面の情報しか収集できないという障壁がある。これに対し、近赤外領域(700〜1300nm)では、水素結合を有する各置換基の吸収が存在するものの、その吸収は比較的小さいため、近赤外光は生体組織を透過しやすい。かかる近赤外光の特性を利用すれば、身体に無用の負荷を与えることなく体内の情報を得ることも可能であると考えられる。また、測定対象を小動物、対表面に近い部位に特定すると、近赤外蛍光は、非常に有用な情報を与える可能性がある。
【0010】
特開2005−220045号公報などに記載のリポソームは、血液中でマクロファージなどの免疫系の細胞に認識され排除される。そのためマクロファージ様の細胞が多く存在する肝臓や脾臓などの細網内皮系(RES)などにリポソームは補足され、血液中での滞留性が好適ではない。滞留性向上のためにポリエチレングリコール(PEG)でコーティングしたリポソームも報告されている(特許文献:US5013556)。このリポソームにおけるPEGは、リポソーム表面の親水性を増し、リポソームがRESなどの免疫系から異物として認識されるのを防ぐ作用があると考えられている。しかし、このようなPEG化リポソームおよびその代謝物の、生体内での詳細な安全性については報告されていない。また、市販されているPEG化リポソームであるDoxil(R)においては、ヒトに投与した際に比較的高い頻度でアナフィラキシー様反応が起こることが報告されている(非特許文献:JOURNAL OF LIPOSOME RESEARCH,10(4),467-484(2000)参照)。従ってより安全性の高いナノ粒子が望まれている。
【0011】
また、ペプチド性のナノ粒子については、薬剤、特に造影剤を送達するための担体として実用化されたという報告はない。そこで、より優れた生体適合性を有し、安全性がより高く、薬剤や特に造影剤を効率的に患部に送達、集積するための担体として用いることができるナノ粒子の開発が望まれていた。
【0012】
本発明の目的は、新規な両親媒性物質を提供することにある。また、本発明の目的は、新規な両親媒性物質を用いることにより、ナノキャリヤとして優れた生体適合性を示すナノ粒子を提供することにある。さらに、本発明の目的は、薬剤搬送システム及び当該システムにおいて有用なプローブ、及び、分子イメージングシステム及び当該システムにおいて有用なプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、サルコシン(N-メチルグリシン)の10個以上の構成単位を有するペプチド鎖を親水性ブロックとする両親媒性ブロックポリマーが、自己組織化によりナノ粒子を形成すること、及び、そのナノ粒子が生体系で安定であり、病変患部に集積できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、以下の発明を含む。
下記(1)〜(6)は、両親媒性ブロックポリマーに関する。
(1)
親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーであって、
前記親水性ブロックは、サルコシン単位を10個以上有する親水性ポリペプチド鎖であり、
前記疎水性ブロックは、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位からなる群から選ばれる単位を必須構成単位として含み、且つ前記必須構成単位を5個以上有する疎水性分子鎖である、両親媒性ブロックポリマー。
【0015】
本明細書において、用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びそれらの修飾及び/又は化学的変更による誘導体を含む概念で用いる。さらに、本明細書において、「アミノ酸」は、α−、β−、γ−アミノ酸を含む。
【0016】
(2)
前記疎水性分子鎖は、
疎水性アミノ酸単位を5個以上有する疎水性ポリペプチド鎖、
ヒドロキシル酸単位を5個以上有する疎水性ポリエステル鎖、及び、
アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位の両方を合計5個以上有する疎水性デプシペプチド鎖、
からなる群から選ばれる、(1)に記載の両親媒性ブロックポリマー。
【0017】
(3)
シグナル基及びリガンドから選ばれる標識基をさらに有する、(1)又は(2)に記載の両親媒性ブロックポリマー。
上記(3)において、「シグナル基」は、検出によりイメージングを可能にする特性を有する基であり、蛍光基、放射性元素含有基、磁性基などを含む。
上記(3)において、「リガンド」は、当該両親媒性ブロックポリマーから分子集合体を作成し、当該分子集合体を投与した際に、標的部位へ分子集合体を特異的に結合させるためのリガンドや、当該分子集合体を投与した際に、標的部位へ搬送すべき薬剤やシグナル剤などの、分子・原子を配位させるためのリガンドを含む。
【0018】
(4)
前記標識基は、前記両親媒性ブロックポリマーの末端に結合している、(3)に記載の両親媒性ブロックポリマー。
上記(4)及び下記(5)において、「結合」とは、具体的には共有結合をいい、「結合している」とは,ポリマーの特定の箇所に、直接的に結合している形態と、適当なスペーサー基を介して間接的に結合している形態とを含む意味である。
本発明では、上記(4)のように、両親媒性ブロックポリマー分子を構成する末端の構成単位に、標識基を直接的又は間接的に、結合させることができる。
【0019】
(5)
前記標識基は、前記両親媒性ブロックポリマーを構成する前記単位に結合している、(3)又は(4)に記載の両親媒性ブロックポリマー。
本発明では、上記(5)のように、両親媒性ブロックポリマー分子を構成する内部及び末端の構成単位のうち少なくとも内部の構成単位に、標識基を、直接的又は間接的に結合させることができる。従って、両親媒性ブロックポリマー分子上の比較的自由な位置に、標識基を結合させることができる。このとき、親媒性ブロックポリマー1分子に、標識基を複数結合させることができる。
【0020】
下記(6)〜(13)は、分子集合体に関する。
「分子集合体」は、上記の両親媒性ブロックポリマー分子の凝集により、或いは自己集合的な配向会合により成り立つ構造体をいう。
(6)
(1)〜(5)のいずれかに記載の両親媒性ブロックポリマーの1種又は複数種からなる分子集合体。
【0021】
(7)
前記分子集合体は粒子状である、(6)に記載の分子集合体。
上記(7)の分子集合体は、薬剤搬送システム或いは分子イメージングシステムにおけるキャリアとして利用することができる。
【0022】
(8)
中空の粒子である、(7)に記載の分子集合体。
上記(8)の中空の粒子すなわちベシクルは、下記(9)〜(11)のように、内部に物質を保持することができる。本明細書では、このような分子集合体の形態を、内包型と記載することがある。下記(9)〜(11)の分子集合体は、内包型のキャリアとして利用することができる。
【0023】
(9)
内部に水相を有する粒子である、(8)に記載の分子集合体。
(10)
前記水相に薬剤が含まれる、(9)に記載の分子集合体。
【0024】
(11)
前記水相に、シグナル剤及び/又はリガンドが含まれる、(9)又は(10)に記載の分子集合体。
上記(11)において、「シグナル剤」は、検出によりイメージングを可能にする特性を有する物質であり、蛍光剤、放射性元素含有物質、磁性剤などを含む。
上記(11)において、「リガンド」は、当該分子集合体を投与した際に、標的部位へ搬送すべき薬剤やシグナル剤などの、分子・原子を配位させるためのリガンドを含む。
【0025】
さらに、本明細書では、上記(3)のような標識基が結合した両親媒性ブロックポリマーを含んで形成される分子集合体の形態を、結合型と記載することがある。本発明には、結合型及び内包型のいずれか一方又は両方の形態を有する分子集合体が含まれうる。
【0026】
分子集合体を構成する両親媒性ブロックポリマーが、上記(4)のように、両親媒性ブロックポリマー分子を構成する末端の構成単位に標識基が結合している場合、結合型の分子集合体は、下記(12)のように、その表面が標識基で修飾された形態を有しうる。
(12)
標識基が存在する場合、前記標識基が表面に露出している、(6)〜(11)のいずれかに記載の分子集合体。
【0027】
分子集合体を構成する両親媒性ブロックポリマーが、上記(5)のように、両親媒性ブロックポリマー分子を構成する構成単位に標識基が結合している場合、結合型の分子集合体は、その膜組織自体に標識基が包埋などの形で保持された形態を有しうる。
【0028】
(13)
粒子径が10〜500nmである、(6)〜(12)のいずれかに記載の分子集合体。
上記(13)において、「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒径、すなわち中心粒径をいう。
【0029】
下記(14)及び(15)は、上記分子集合体を用いた分子プローブ及び当該分子プローブを用いた薬剤搬送システム(ドラッグデリバリシステム;DDS)に関する。
(14)
(10)〜(13)のいずれかに記載の分子集合体からなる、薬剤搬送システム用分子プローブ。
(15)
(10)〜(13)のいずれかに記載の分子集合体を生体内に投与することを含む、薬剤搬送システム。
【0030】
上記(14)及び(15)において用いられる分子集合体は、内部に薬剤を含んだ水相を有している形態、及びリガンドによって配位された薬剤を有している形態から選ばれる形態を少なくとも有しうる。
【0031】
下記(16)及び(17)は、上記分子集合体を用いた分子プローブ及び当該分子プローブを用いた分子イメージングシステムに関する。
(16)
(11)〜(13)のいずれかに記載の分子集合体からなる、分子イメージングシステム用分子プローブ。
(17)
(11)〜(13)のいずれかに記載の分子集合体を生体内に投与することを含む、分子イメージングシステム。
【0032】
上記(16)及び(17)において用いられる分子集合体は、内部にシグナル剤を含んだ水相を有している形態、シグナル基が共有結合により導入されている形態、及びリガンドによって配位されたシグナル剤を有している形態から選ばれる形態を少なくとも有しうる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、新規な両親媒性物質を提供することができる。この両親媒性物質を用いて分子集合体を形成することにより、ナノキャリヤとして優れた生体適合性、安定性、及び生分解性を示すナノ粒子を提供することができる。さらに、当該両親媒性物質にさまざまな置換基を導入することで、さまざまな修飾形態を有するナノ粒子を容易に作成することが可能になる。
【0034】
本発明のナノ粒子は、薬剤を有するものとして調製することにより、薬剤搬送システムにおいて有用なプローブを提供することができる。このプローブは、病変部位や疾患部位に特異的に薬剤を集積することにより、当該部位の細胞に薬剤を作用させることが可能である。
また、本発明のナノ粒子は、シグナル剤を有するものとして調製することにより、分子イメージングシステムとして有用なプローブを提供することができる。このプローブは、病変部位や疾患部位に特異的にシグナル剤を集積することにより、当該部位のイメージングを行うことが可能である。
【0035】
本発明のナノ粒子は、従来から優れた特性を有するナノ粒子として知られている、水溶性高分子化合物ポリエチレングリコール(PEG)による修飾形態を有するナノ粒子と、少なくとも同等の血中滞留性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[1.両親媒性ブロックポリマー]
本発明の両親媒性ブロックポリマーは、以下の親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する。 以下本発明において、用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びそれらの修飾及び/又は化学的変更による誘導体を含む概念で用いる。さらに、本明細書において、アミノ酸は、α−、β−、γ−アミノ酸を含む。好ましくは、αアミノ酸である。
【0037】
[1−2−1.親水性ブロック]
親水性ブロックは、サルコシンに由来する構成単位を10個以上有する親水性ポリペプチド鎖である。サルコシンは水溶性が高く、また、サルコシンのポリマーはN置換アミドであることから通常のアミド基に比べてシス−トランス異性化が可能であり、さらにCa炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有するポリマーである。このように、高い親水性と高い柔軟性を併せ持つポリペプチドを用いることが、本発明にとって重要なポイントである。このような基本特性を有するポリペプチドであれば、本発明に適用可能である。
【0038】
サルコシン単位数の上限としては特に限定されないが、500程度である。本発明においては、しばしば10〜200、好ましくは10〜100程度のポリペプチド鎖が合成されうる。500程度を超えると、ポリペプチド鎖自体の合成が困難であり、構成単位数が200程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が10程度を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる。
【0039】
[1−2−2.疎水性ブロック]
一方疎水性ブロックは、アミノ酸に由来する構成単位及びヒドロキシル酸に由来する構成単位からなる群から選ばれる単位を必須構成単位として含み、且つ当該必須構成単位を5個以上有する疎水性分子鎖である。具体的には、疎水性分子鎖は、疎水性アミノ酸単位を5個以上有する疎水性ポリペプチド鎖;ヒドロキシル酸単位を5個以上有する疎水性ポリエステル鎖;及び、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位の両方を合計5個以上有する疎水性デプシペプチド鎖、が含まれる。
【0040】
本発明において、疎水性ブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、疎水性ブロックが、10以上のサルコシンを構成単位とする親水性ブロックに対して、相対的に疎水性が強い領域であり、当該親水性ブロックとコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。
【0041】
疎水性アミノ酸は、その多くが、脂肪族側鎖、芳香族側鎖などを有する。天然アミノ酸では、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、及びトリプトファンなどが挙げられる。非天然アミノ酸では、特に限定されないが、グルタミン酸メチルエステル、グルタミン酸ベンジルエステル、アスパラギン酸メチルエステル、アスパラギン酸エチルエステル、アスパラギン酸ベンジルエステルなどのアミノ酸誘導体が挙げられる。ヒドロキシル酸としては、特に限定されないが、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシイソ酪酸などが挙げられる。
【0042】
疎水性分子鎖において、その鎖を構成する構成単位の種類・比率は、鎖全体が疎水性となるように、当業者によって適宜決定される。
【0043】
疎水性分子鎖の構成単位数の上限としては特に限定されないが、500程度である。本発明においては、しばしば、5〜200、好ましくは10〜100程度の構成単位数を有する疎水性分子鎖が合成されうる。500程度を超えると、疎水性分子鎖自体の合成が困難であり、構成単位数が200程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が5を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる。
【0044】
[1−3.標識基など]
両親媒性ブロックポリマー分子は、当業者によって適宜選択された基をさらに含むことができる。当該基は、適当な鎖長を有する有機基や、機能性基などを含む。これらの基は、例えば、両親媒性ブロックポリマーが、後述の[2.分子集合体]に記載するような、薬剤搬送システムや分子イメージングシステムに用いられるキャリアとしての分子集合体に調製される場合に、当該分子集合体がキャリアとして有用となるような形態・機能などを持たせるための基となりうる。機能性基の例としては、後述するシグナル基、リガンドを含む標識基や、カルボキシルメチルセルロース、アミロースなどの多糖や、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリエチレングリコール鎖、ポリビニルアルコール鎖などの水溶性高分子が挙げられる。
【0045】
[1−3−1.シグナル基]
シグナル基は、検出によりイメージングを可能にする特性を有する基である。例えば、蛍光基、放射性元素含有基、磁性基などが挙げられる。これらの基を検出する手段は、当業者によって適宜選択される。
【0046】
蛍光基としては、特に限定されないが、フルオレセイン系色素、インドシアニン色素などのシアニン系色素、ローダミン系色素、量子ドットなどに由来する基が挙げられる。特に、本発明においては、近赤外蛍光基(シアニン系色素、量子ドットなどに由来する基)が好ましい。
【0047】
放射性元素含有基としては、特に限定されないが、18Fなどの放射性同位体でラベルした、糖、アミノ酸、核酸などに由来する基が挙げられる。
【0048】
磁性基としては、特に限定されないが、フェリクロームなどの磁性体を有するものや、フェライトナノ粒子、ナノ磁性粒子などにみられるものが挙げられる。
【0049】
[1−3−2.リガンド]
リガンドは、本発明の両親媒性ブロックポリマーから分子集合体を作成し、当該分子集合体を投与した際に、標的部位へ分子集合体を特異的に結合させるためのリガンドや、当該分子集合体を投与した際に、標的部位へ搬送すべき薬剤やシグナル剤などの、分子・原子を配位させるためのリガンドなどを含む。
【0050】
標的部位へ分子集合体を特異的に結合させるための、ターゲティングのためのリガンドとしては、当業者に公知のものが特に限定されることなく用いられるが、例えば、抗体、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)等の接着因子などが挙げられる。
標的部位へ搬送すべき薬剤やシグナル剤などの分子・原子を配位させるためのリガンドとしては、当業者に公知のものが特に限定されることなく用いられるが、遷移金属を配位できるトリカルボン酸等のリガンドが挙げられる。
【0051】
[1−3−3.標識基の結合形態]
標識基は、両親媒性ブロックポリマー1分子に1個又は複数個結合させることができる。この場合において、「結合」とは、具体的には共有結合をいい、「結合している」とは、ポリマーの特定の箇所に、直接的に結合している形態と、適当なスペーサー基を介して間接的に結合している形態とを含む意味である。スペーサー基としては特に限定されることなく、当業者によって適宜選択されるが、例えば、アルキル基などでもよいし、カルボキシルメチルセルロース、アミロースなどの多糖や、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリエチレングリコール鎖、ポリビニルアルコール鎖などの水溶性高分子でもよい。
【0052】
たとえば、標識は、両親媒性ブロックポリマーの末端に、直接的または間接的に結合させることができる。この形態は、標識基が比較的かさの高いもの(たとえば、ペプチドなどの高分子や蛍光物質由来基)である場合や、当該両親媒性ブロックポリマーから形成される分子集合体に、その表面が当該基によって修飾されている形態を持たせる目的がある場合に好ましく用いられる。この形態においては、しばしば、両親媒性ブロックポリマー1分子に1個の標識基が導入される。
【0053】
またたとえば、標識基は、両親媒性ブロックポリマーの構成単位に、直接的又は間接的に結合させることができる。この場合、標識基が結合すべき両親媒性ブロックポリマーの構成単位は、両親媒性ブロックポリマー分子の内部及び末端の構成単位のうち、少なくとも内部の構成単位が含まれる。従って、両親媒性ブロックポリマー分子上の比較的自由な位置に、標識基を結合させることができる。この形態は、標識基が比較的かさの小さいもの(たとえば、放射性元素含有基)である場合や、当該両親媒性ブロックポリマーから形成される分子集合体に、その膜組織自体に当該基が包埋などの形で保持された形態を持たせる目的がある場合に好ましく用いられる。この形態においては、しばしば、両親媒性ブロックポリマー1分子に、複数個の標識基が導入される。
【0054】
[1−4.両親媒性ブロックポリマーの合成法]
本発明の両親媒性ブロックポリマーの合成法としては、特に限定されるものではなく。公知のペプチド合成法、ポリエステル合成法、及び/又はデプシペプチド合成法を用いることができる。
ペプチド合成は、例えば、アミンなどの塩基を開始剤として、N−カルボキシアミノ酸無水物(アミノ酸NCA)を開環重合することなどによって行うことができる。
ポリエステル合成は、例えば、アミンなどの塩基を開始剤として、ラクチドを開環重合することなどによって行うことができる。
【0055】
デプシペプチド合成は、以下の方法などによって行うことができる。
例えば、オキシ酸をベンジルエステル誘導体に導きペプチド合成法に従ってN−保護アミノ酸を伸張させ、ベンジルエステルを除去して活性エステルに取り替えて、N−保護オリゴデプシペプチド活性エステルに誘導し、その後、N−保護基を外し、遊離アミノ基をもつオリゴデプシペプチド活性エステルの重縮合を行うという方法が挙げられる。
また、例えば、遊離オキシ酸をピリジン存在下、ニトロフェニルスルフェニル(Nps)−アミノ酸N−カルボン酸無水物と反応させてN−Nps−ジデプシペプチドを合成するという方法が挙げられる。
【0056】
[1−5.その他]
本発明の両親媒性ブロックポリマーの分子量については特に制限はない。例えば、両親媒性ブロックポリマーが、後述の[2.分子集合体]に記載するような、薬剤搬送システムや分子イメージングシステムにおけるキャリアとしての分子集合体に調製される場合には、キャリアに担持させる物質の種類、有効濃度、放出期間などを考慮し、当業者によって適宜決定される。
【0057】
[2.分子集合体]
本発明の分子集合体は、上記本発明の両親媒性ブロックポリマー分子の凝集により、或いは自己集合的な配向会合により成り立つ構造体である。従って、本発明の分子集合体としてはその形状については特に限定されない。すなわち、本発明の分子集合体には、ベシクル状、ミセル状、ロッド状、及びその他分子の凝集形態のあらゆるものを含む。両親媒性ブロックポリマーの分子構造や相互作用点などを制御することによって、様々な形の分子集合体を作成することができる。
【0058】
本発明の分子集合体が、ベシクル状、ミセル状などの粒子状のものである場合、当該分子集合体は、薬剤搬送システムや分子イメージングシステムにおけるキャリアとして利用することができる。
本発明の分子集合体は、中空粒子であるベシクルが好ましい。ベシクルは通常、中空である内部が水相であり、この水相に、内包すべき物質を含ませることができる。このような形態の分子集合体を、本発明では内包型分子集合体とする。
一方、本発明の分子集合体が、標識基が結合した両親媒性ブロックポリマーを含んで形成される場合、この分子集合体の形態を、本発明では結合型分子集合体とする。本発明には、結合型及び内包型のいずれか一方又は両方の形態を有する分子集合体が含まれうる。
【0059】
[2−1.内包型分子集合体]
内包型分子集合体に内包されうる物質としては、薬剤や、シグナル物質、リガンドなどが挙げられる。これらの物質は、分子集合体外部と等張の溶液又は懸濁液の形で封入されてよい。
【0060】
薬剤としては、対象疾患に適した剤を特に限定することなく用いることができる。具体的には、抗がん剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、ステロイド剤、ホルモン剤、血管新生阻害剤などが挙げられる。
内包する薬剤は、単独で又は複数種の組み合わせで用いることができる。
【0061】
シグナル剤は、検出によりイメージングを可能にする特性を有する物質であり、蛍光剤、放射性元素含有物質、磁性剤などを含む。
蛍光剤としては、特に限定されないが、フルオレセイン系色素、インドシアニン色素などのシアニン系色素、ローダミン系色素、量子ドットなどが挙げられる。特に、本発明においては、近赤外蛍光剤(シアニン系色素、量子ドットなど)が好ましい。
放射性元素含有物質としては、特に限定されないが、18Fなどの放射性同位体でラベルした、糖、アミノ酸、核酸などが挙げられる。
磁性剤としては、特に限定されないが、フェリクロームなどの磁性体や、フェライトナノ粒子、ナノ磁性粒子などが挙げられる。
【0062】
リガンドは、当該分子集合体を投与した際に、標的部位へ搬送すべき薬剤やシグナル剤などの分子・原子を配位させるためのリガンドを含む。このようなリガンドとしては、当業者に公知のものが特に限定されることなく用いられるが、遷移金属を配位できるトリカルボン酸等のリガンドが挙げられる。
シグナル剤及びリガンドは、単独で又は複数種の組み合わせで用いることができる。
【0063】
[2−2.結合型分子集合体]
結合型分子集合体を構成する両親媒性ブロックポリマーにおいて、当該両親媒性ブロックポリマー分子の末端の構成単位に標識基が結合している場合、当該結合型の分子集合体は、その表面が標識基で修飾された形態を有しうる。すなわち、標識基が分子集合体表面に露出している形態を有しうる。
【0064】
一方、結合型分子集合体を構成する両親媒性ブロックポリマーにおいて、当該両親媒性ブロックポリマー分子を構成する構成単位のうち少なくとも内部の構成単位に標識基が結合している場合、当該結合型の分子集合体は、その膜組織自体に標識基が包埋などの形で保持された形態を有しうる。
【0065】
結合型分子集合体においては、分子集合体1個につき、複数の標識基を含んでいて良い。たとえば、1分子に1個の標識を有する両親媒性ブロックポリマーを複数種用いて分子集合体を形成しても良いし、1分子に複数の標識を有する両親媒性ブロックポリマーを用いて分子集合体を形成しても良いし、無論、1分子に複数の標識を有する両親媒性ブロックポリマーを複数種用いて分子集合体を形成しても良い。
【0066】
[2−3.分子集合体の作成法]
分子集合体の作成法は特に限定されず、所望する分子集合体の形状、大きさ、特性、担持させる物質の種類、性質、含有量などに応じて、当業者が適宜選択することができる。例えば、インジェクト法、超音波法、エクルトルーダー法などを用いて調製することができる。
【0067】
本発明においては、これらの方法のうち、しばしばインジェクト法を用いて分子集合体が調製されうる。この方法においては、有機溶媒、例えばトリフルオロエタノール、エタノール、ヘキサフルオロイソプロバノール、ジメチルスルホキシドなどに、適宜選択した両親媒性ブロックポリマーを溶解し、得られた溶液を、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などの水系溶媒に分散させ、精製処理、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、フィルタリング、超遠心法などを行った後、有機溶媒を除去することによって分子集合体を調製することができる。
【0068】
分子集合体をベシクルとして調製する場合において、特に内包型のものを調製する場合は、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などの水系溶媒に、内包すべき物質を溶解又は懸濁させ、このようにして得られた水溶液又は懸濁液に、両親媒性ブロックポリマーを上記有機溶媒に溶解させて得られた溶液を分散させると良い。
【0069】
また、本発明の両親媒性ブロックポリマーをもちいて分子集合体を形成した後に、得られた分子集合体に対して、公知の方法によって表面修飾を行っても良い。
【0070】
[2−4.その他]
粒子状の分子集合体の粒径は、例えば10〜500nmである。10nmより小さいものは作成が難しく、500nmより大きいものは、特に生体内へ注射により投与する場合に、注射剤として好ましくない。
分子集合体の大きさは、上記本発明の両親媒性ブロックポリマーの鎖長を考慮することによって制御することが可能である。
【0071】
[3.分子プローブ、及びそれを用いた薬剤搬送システム及び分子イメージングシステム]
本発明の分子集合体は、薬剤搬送システム、及び分子イメージングシステムにおいて有用に用いられる。以下、このようなシステムに用いられることに向けられた分子集合体については、ナノ粒子と記載することがある。
【0072】
本発明のナノ粒子が、薬剤を有するものである場合、当該ナノ粒子は、薬剤搬送システム用分子プローブとして有用に用いることができる。ナノ粒子が薬剤を有する形態としては、内部に薬剤を含んだ水相を有している形態、及びリガンドによって配位された薬剤を有している形態から選ばれうる。
【0073】
また、本発明のナノ粒子が、シグナル剤(或いはシグナル基)を有するものである場合、当該ナノ粒子は、分子イメージングシステム用分子プローブとして有用に用いることができる。ナノ粒子がシグナル剤(或いはシグナル基)を有する形態としては、内部にシグナル剤を含んだ水相を有している形態、シグナル基が共有結合により導入されている形態、及びリガンドによって配位されたシグナル剤を有している形態から選ばれうる。分子イメージングシステム用分子プローブの具体例としては、PETプローブやMRIプローブなどが挙げられる。
【0074】
さらに、本発明のナノ粒子は、薬剤とシグナル剤(或いはシグナル基)との両方を有するものである場合、当該ナノ粒子は、薬剤搬送システム及び分子イメージングシステム両用の分子プローブとして有用に用いることができる。
【0075】
本発明のナノ粒子は血液中で安定であり、優れた生体適応性を示す。また、ナノ粒子を構成する両親媒性ブロックポリマーに、さまざまな基を導入することにより、分子集合体にさまざまな機能を付与することができる。
例えば生体親和性を有する基を導入することにより、選択的に特定の生体組織に結合させることができる。そのため、例えば、このナノ粒子に磁性物質、放射性物質、蛍光性物質(特に非侵襲的な分子イメージングが可能な近赤外蛍光色素)を内包させることにより、病変部位や疾患部位に特異的に集積させ、各種の診断装置をもちいて診断するということが可能となる。
また、両親媒性ペプチドの鎖長を変えることにより、粒子の大きさ、形状、組織選択性、生体内での分解速度、内包する薬剤やシグナル剤の徐放性等を調整することができる。さらに、組成や分子量が異なる両親媒性ペプチドを組み合わせて用いることによっても、粒子の特性を制御することが可能である。
【実施例】
【0076】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。特にことわりがない限りN,N−ジメチルホルムアミドは単蒸留を二回行ったものを使用した。
【0077】
[実施例1:化合物aの合成(Sar鎖N末端に疎水性ブロックを導入した例)]
サルコシン−NCA(Sar-NCA)(NCA:アミノ酸N−カルボキシ無水物)100mgのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)4.4ml溶液に、アルゴン雰囲気下、n−ヘキシルアミン5.7μlのN,N−ジメチルホルムアミド1.0ml溶液を加えた。この溶液を減圧下、室温で約5時間攪拌した。アラニン−NCA(Ala-NCA)150mgのN,N−ジメチルホルムアミド8.6ml溶液を加え、減圧下、室温で一晩攪拌した。その溶液にジエチルエーテルを加え、沈殿を得た。沈殿をジエチルエーテルで数回洗浄した後、減圧乾燥し、白色固体の化合物aを60mg得た。
【0078】
【化1】

【0079】
化合物aの同定は、1H-NMR(400MHz, TFA-d)によって行った。その結果、3.21ppmにサルコシンのN−メチル基のピーク、及び、0.86ppmに末端メチル基のピークが、積分比54:3で観測された。
【0080】
[実施例2:化合物bの合成(C末端に官能基を導入した例)]
サルコシン−NCA(Sar-NCA)100mgのN,N−ジメチルホルムアミド4.4ml溶液に、アルゴン雰囲気下、5−アミノ−2−(ビス((メトキシカルボニル)メチル)アミノ)ヘキサン酸メチル14mgのN,N−ジメチルホルムアミド1.0ml溶液を加えた。この溶液を減圧下、50℃で約5時間攪拌した。アラニン−NCA(Ala-NCA)150mgのN,N−ジメチルホルムアミド8.6ml溶液を加え、減圧下、50℃で一晩攪拌した。その溶液にジエチルエーテルを加え沈殿を得た。沈殿をジエチルエーテルで数回洗浄した後、減圧乾燥し、白色固体の化合物b0を50 mg得た。
【0081】
【化2】

【0082】
化合物b0 50mgのメタノール20 ml溶液に、10当量の1.0mol/l水酸化ナトリウム水溶液を加え4時間攪拌した。1 .0mol/l塩酸を加え反応を停止させた後、減圧乾燥し、メタノールに溶解させた。遠心分離を行い、上清を回収し、減圧乾燥を行うことにより、白色固体の化合物bを40mg得た。
【0083】
【化3】

【0084】
[実施例3:化合物cの合成(N末端に疎水性ポリエステル鎖の導入例)]
サルコシン−NCA(Sar-NCA)(200 mg、1.0 eq)のニトロベンゼン溶液に0.05 eqの2-メトキシエチルアミンをニトロベンゼン中に拡散させて加え、Sar-NCAの濃度を0.3 Mとした。アルゴン雰囲気下、室温にて3時間撹拌したのち、少量のニトロベンゼンに溶解させたラクチドを0.3 eq加え、120 ℃で更に一晩撹拌した。反応溶液は、溶媒を減圧留去したのち、サイズ排除クロマトグラフィー LH20(溶離液:DMF)にて精製し、ジエチルエーテル中で再沈殿させることによりcを回収した。
【0085】
【化4】

【0086】
[実施例4:化合物d1の合成(Sar鎖C末端に疎水性ペプチドブロックを導入した例)]
グルタミン酸メチルエステル−NCA(Glu(OMe)-NCA)108 mgのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(4.0 mL)にアルゴン雰囲気下、n−ヘキシルアミン2.93 mgをN,N−ジメチルホルムアミド1.0 mLに拡散させ加えた。
反応溶液をアルゴン雰囲気下、室温で3時間攪拌した後、サルコシン−NCA(Sar-NCA)200 mgのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(4 mL)を加え、アルゴン雰囲気下、室温でさらに一晩攪拌した。引き続き、氷浴にて反応溶液を冷却後、グリコール酸(glycolic acid)(5.0 eq)、O-(ベンゾトリアゾル-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)(5.0 eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(7.5 eq)を加え、0℃にて1時間、室温にて10時間、さらにHATU (2.5 eq)、DIEA (3.0 eq)を追加し、室温にて10時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。粗生成物はLH20カラム(溶離液:DMF)にて精製後、DMF/diethyl etherにて再沈殿させることにより回収し、真空乾燥した。
【0087】
【化5】

【0088】
上記実施例4で用いられたグルタミン酸メチルエステル−NCAの一部又は全部を、安定同位体を構成元素として有するグルタミン酸メチルエステル−NCAに置き換えて用いると、明らかに、1個又は複数個の安定同位体標識を導入することができることがわかる。すなわち、鎖の構成単位に安定同位体を導入することによって、PETプローブなどを合成することも容易にできることがわかる。
【0089】
[実施例5:d2の合成(Sar鎖C末端に疎水性ペプチドブロックを導入した例)]
グルタミン酸メチルエステル−NCA(Glu(OMe)-NCA)108 mgのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(4.0 mL)に、アルゴン雰囲気下、n−ヘキシルアミン2.93 mgをN,N−ジメチルホルムアミド1.0 mLに拡散させ加えた。
反応溶液をアルゴン雰囲気下、室温で3時間攪拌した後、サルコシン−NCA(Sar-NCA)133 mgのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(4 mL)を加え、アルゴン雰囲気下、室温でさらに一晩攪拌した。引き続き、氷浴にて反応溶液を冷却後、glycolic acid (5.0 eq)、HATU (5.0 eq)、DIEA (7.5 eq)を加え、0℃にて1時間、室温にて10時間、さらにHATU (2.5 eq)、DIEA (3.0 eq)を追加し、室温にて10時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。粗生成物はLH20カラム(溶離液:DMF)にて精製後、DMF/diethyl etherにて再沈殿させることにより回収し、真空乾燥した。
【0090】
【化6】

【0091】
[実施例6:化合物d1−ICGの合成(蛍光色素の導入例)]
上述のペプチドd1を5 mg (0.9 μmol, 1.0 eq )含むDMF溶液(0.2 mL)に、ICG-sulfo-OSu 1 mg (1μmol, 1.3 eq)を溶かしたDMF溶液(0.1 mL)を加え、室温で約7時間攪拌した。さらにHATU を0.4 mg (1μmol, 1.5 eq)、DIEAを0.26 μL (1.5 μmol, 2.25 eq)氷浴中で加えて攪拌した。1時間後に室温に戻し、さらに一晩攪拌を続けた。その後、glycolic acid 0.23mg(3.3 μmol, 5.0 eq)、HATU 1.3 mg (3.3 μmol, 5.0 eq)、DIEA 0.88 μL (5.0 μmol, 7.5 eq)を加え一晩攪拌を続けたのち、溶媒を減圧留去し蛍光剤(ICG-sulfo-Osu)をアミド結合で両親媒性ペプチドに導入できた。粗生成物はLH20カラム(溶離液:DMF)にて精製した(5.7 mg, 0.88 μmol)。
【0092】
【化7】

【0093】
実施例1〜6においては、化学式に示す構造を有する両親媒性ブロックポリマーを合成したが、いずれも、開始剤及びモノマーの比率を変えることによって、親水性ブロック及び疎水性ブロックを任意の長さで合成することが可能である。
【0094】
[実施例7:ナノ粒子の作成]
本実施例では、上記実施例で合成した化合物a、b、c、d1、及びd2を用いて、ナノ粒子を作成した。
【0095】
化合物b、c、d1及びd2については、それぞれ単独で、2,2,2−トリフルオロエタノールに溶解させ、0℃雰囲気下で水又は緩衝液中に分散させ、ナノ粒子分散液を得た。また、化合物aと化合物bとを、a:b=1:99、5:95、及び20:80(モル比)となる量で、それぞれ2,2,2−トリフルオロエタノールに溶解させ、0℃雰囲気下で水又は緩衝液中に分散させ、ナノ粒子分散液を得た。ナノ粒子分散液中の2,2,2−トリフルオロエタノールは、ゲルろ過クロマトグラフィー(担体:SephacrylTMS-100 HR(Amersham biosciences、溶離液:0.5MのNaClを溶解させた20mMリン酸緩衝液(pH7.4).)により除去した。
【0096】
上記のナノ粒子分散水溶液を0.8 μmのフィルターに通した後、これらの分散液について動的光散乱測定を行い、粒径平均値を求めた。その結果を表1に示す。これより、直径数十nmから数百nmのナノ粒子が形成された。
【0097】
【表1】

【0098】
上記実施例7の結果から、以下のことが分かる。両親媒性化合物aとbとの違いは、官能基の有無にあるが、ナノ粒子BやABに関する結果から、官能基の違いは、形成されるナノ粒子の粒子径には大きな影響はないことがわかる。別の見方をすれば、このような場合、両親媒性化合物の混合比率を変えることによって、粒子径の微妙なコントロールができることもわかる。
一方、ナノ粒子C、D1及びD2に関する結果からは、両親媒性化合物の鎖長の違いは、形成されるナノ粒子の粒子径に比較的大きく影響することがわかる。従って、両親媒性化合物の鎖長を変えることによって、ナノ粒子の大きさを簡単に変えられることが分かる。
【0099】
[実施例8:蛍光剤内包化ナノ粒子D1/FITCの作成例]
本実施例では、化合物d1から構成されるベシクル(ナノカプセル)D1に、蛍光剤FITCが内包された、蛍光剤内包化ナノ粒子D1/FITCを作成した。
【0100】
化合物d1の4mgを、72μlの2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)に溶解させた後、得られた溶液を、FITC-dextran(分子量4000)5mgを含む、外温0 ℃の10 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)、1.5mLにインジェクトし、ナノ粒子を形成した。10分間氷浴で攪拌した後、ゲルろ過クロマトグラフィーを行い、精製を行った。
【0101】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定を行った。図1に、GPCクロマトグラムを示す。さらに、図2に、図1におけるNo.11のフラクションを分画した後、再度同じ条件で同じカラムにかけることによって得られたGPCクロマトグラムを示す。分離条件は以下のとおりである。
【0102】
GPCによるD1/FITCの測定条件:
カラム担体:Sephacryl S-100 (GE health care)
溶離液:10 mM Tris-HCl pH 7.4 緩衝溶液
分画量:40 drops / tube
温度:4℃
検出波長:220nm及び490nm
【0103】
図1において、フラクションNo11付近に、粒子の形状で形成された、D1/FITCのナノカプセルD1部分由来のピーク、及び、フラクションNo20以降に、粒子として形成されなかった分子集合体由来のピークが観測された。さらに、図2において、フラクションNo11付近に、ナノ粒子D1/FITCのナノカプセルD1部分由来のピークと、ナノ粒子D1/FITCに内包されたFITC由来の蛍光ピークとの両方が観測された。これにより、ナノカプセルD1の形成、及びナノカプセルD1内への蛍光剤FITCの内包が達成されたことが確認できた。
【0104】
[実施例9:蛍光剤内包化ナノ粒子A1/PEG-DY675(分子プローブP1)の作成]
本実施例では、化合物a1から構成されるナノカプセルA1に、蛍光剤PEG-DY675が内包された、蛍光剤内包化ナノ粒子A1/PEG-DY675(分子プローブP1)を作成した。
以下に、蛍光剤PEG-DY675の構造を示す。
【0105】
【化8】

【0106】
化合物a1の4mgを72μlの2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)に溶解させた後、PEG-DY675 5 mgを含む、外温0 ℃の10 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)、1.5 mLに加え、ナノ粒子を形成した。10分間氷浴で攪拌した後、ゲルろ過クロマトグラフィーを行い、精製を行った。
【0107】
ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。図3に、GPCクロマトグラムを示す。図3のGPCクロマトグラムは、実施例8で行ったように、No.11のフラクション付近において、分子プローブP1のナノカプセル部分A1が形成されたことを確認し、その後、No.11のフラクションを分画して再度同じ条件で同じカラムにかけることによって得られたものである。
【0108】
GPCによるA1/PEG-DY675(P1)の測定条件:
カラム担体:Sephacryl S-100 (GE health care)
溶離液:10 mM Tris-HCl pH 7.4 緩衝溶液
分画量:40 drops / tube
温度:4℃
検出波長:490nm
【0109】
[実施例10:蛍光基結合ナノ粒子D1-ICG(分子プローブP2)の作成例]
本実施例では、化合物d1-ICGを用いることにより、ナノカプセルD1表面に蛍光基ICGが結合した形態を有する蛍光基結合ナノ粒子D1-ICG(分子プローブP2)を作成した。
d-ICGの2 mgを、72μlの2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)に溶解させた後、外温0 ℃の10 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)、1.5 mLにインジェクトし、ナノ粒子を形成した。10分間氷浴で攪拌した後、ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製を行った。
【0110】
ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。図4に、GPCクロマトグラムを示す。図4のGPCクロマトグラムは、実施例8で行ったように、No.11のフラクション付近において、分子プローブP2のナノカプセル部分D1が形成されたことを確認し、その後、No.11のフラクションを分画して再度同じ条件で同じカラムにかけることによって得られたものである。
【0111】
GPCによるD1-ICG(P2)の測定条件
カラム担体:Sephacryl S-100 (GE health care)
溶離液:10 mM Tris-HCl pH 7.4 緩衝溶液
分画量:40 drops / tube
温度:4℃
検出波長:800nm
【0112】
以上のことから、化学結合によりICGを導入した両親媒性ペプチドd1-ICGが、粒子径100nm程度のナノ粒子を形成しており、蛍光基ICGがナノカプセルD1に導入された形態を有するナノ粒子が得られたことが確認できた。
【0113】
[実施例11:分子プローブP2の血中安定性試験]
ラット(オス、7週齢)を用い、分子プローブP2を投与した後の、血漿中濃度の経時的変化を、蛍光検出により観察した。
ラットの尾静脈から、4mg/5ml/kg相当量の分子プローブP2 (0.8mg ペプチド/ml)を注射した。注射による分子プローブ投与から、1、3、6、12、24、48、72、及び96時間後に、尾静脈からヘパリン処理シリンジを用い、約0.5mlを採血した。
【0114】
採取した血液を遠心分離し、血漿を分取(マイクロ冷却遠心機使用;10000rpm,10min,4℃)し、マイクロプレートリーダを用いて蛍光強度を測定 ( 励起678nm, 蛍光 807nm )した。蛍光強度の変化を図5に示す。
【0115】
図5が示すように、分子プローブP2は、血管への注入から12時間経過した後も50%程度が血管中にとどまる事が確認された。
【0116】
一方、ICG(インドシアニン・グリーン)を単独投与した場合には、投与したICGは、1時間以内に体外に排出される。また、J Pharmacol Exp Ther. 2004 Feb; 308 (2): 419-425. Epub 2003 Nov 10.によると、標識体である99mTc-BMEDA(N,N-bis(2-mercaptoethyl)-N',N'-diethyl-ethylenediamine)を単独投与した場合には、投与した99mTc-BMEDAは、1時間後には90%以上が体外に排出され、一方、99mTc-BMEDAにより標識した、ポリエチレングリコール(PEG)鎖で表面修飾されたリポソームであるDoxil(R)を投与した場合には、50%程度のDoxil(R)が血管中にとどまった時間は、10時間程度であったことが示されている。
【0117】
従って、実施例11では、血液中において、本発明のナノ粒子が、PEG化されたリポソームと同等の安定性を有していることが分かる。このように、本発明のナノ粒子が血液中で長時間滞留することが可能であることは、必然的に、本発明のナノ粒子が、EPR(enhanced permeability and retention)効果による癌患部への薬剤集積化を可能にすることを示している。
【0118】
[実施例12:プローブP1を用いた蛍光造影試験]
ヒトがん細胞の皮下移植による担がんマウスを、次のとおり作成した。
動物は、Balb/c nu/nu mice (クレア)5〜6週令を用い、ヒトがん細胞(1X105個/0.1 ml)を皮下移植した。1週間後にがん組織が約3〜7mmに成長した時点で、マウスを下記造影試験に供した。
上記担がんマウスをネンブタールにより麻酔をし、その後、その眼窩静脈から、分子プローブ分散液を100μl投与した。プローブ分散液の投与後、腫瘍部位及びマウス全身の蛍光画像を、投与直後から毎日、4日間撮影した。
【0119】
蛍光造影試験においては、分子プローブとして、実施例9で合成したナノ粒子A1/PEG-DY675(分子プローブP1)を用いた。分子プローブP1は、蛍光剤としてDY675が内包されたナノ粒子である。検出器としては、GE Healthcareアマシャムバイオサイエンス:ImageQuantTM Imagerを使用した。670nmで励起して、700nmで経時的に測定を行った。
その結果得られた画像を、図6に示す。図6が示すように、癌患部へ、分子プローブP1が集積され、さらにその集積効果は4日間続く事が確認された。
【0120】
[実施例13:プローブP2を用いた蛍光造影試験]
分子プローブとして、実施例10で合成したナノ粒子D1-ICG(分子プローブP2)を用い、検出器ImageQuantTM Imagerを使用し、780nmで励起して807nmで、経時的に測定を行ったこと以外は、実施例12と同様にして、蛍光造影試験を行った。分子プローブP2は、蛍光基としてICGが表面に結合したナノ粒子である。
その結果得られた画像を、図7に示す。図7が示すように、癌患部へ、分子プローブP2が集積され、さらにその集積効果は3日以上続く事が確認された。
【0121】
以上の実施例12及び13の結果より、本発明のナノ粒子は、蛍光剤を内包したものと、表面に蛍光基を結合させたものと両方において、癌患部への集積が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】実施例8において作成した蛍光剤内包化ナノ粒子D1/FITCをGPC測定して得られたクロマトグラムである。
【図2】図1におけるNo.11のフラクションについて、再度GPC測定して得られたクロマトグラム
【図3】実施例9において作成した蛍光剤内包化ナノ粒子A1/PEG-DY675(分子プローブP1)をGPC測定して得られたクロマトグラムである。
【図4】実施例10において作成した蛍光基結合ナノ粒子D1-ICG(分子プローブP2)をGPC測定して得られたクロマトグラムである。
【図5】実施例11において行われた、分子プローブP2の血中安定性試験の結果を示す。
【図6】実施例12において行われた、プローブP1を用いたがん化マウスの蛍光造影試験の結果を示す。
【図7】実施例13において行われた、プローブP2を用いたがん化マウスの蛍光造影試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーであって、
前記親水性ブロックは、サルコシン単位を10個以上有する親水性ポリペプチド鎖であり、
前記疎水性ブロックは、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位からなる群から選ばれる単位を必須構成単位として含み、且つ前記必須構成単位を5個以上有する疎水性分子鎖である、両親媒性ブロックポリマー。
【請求項2】
前記疎水性分子鎖は、
疎水性アミノ酸単位を5個以上有する疎水性ポリペプチド鎖、
ヒドロキシル酸単位を5個以上有する疎水性ポリエステル鎖、及び、
アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位の両方を合計5個以上有する疎水性デプシペプチド鎖、
からなる群から選ばれる、請求項1に記載の両親媒性ブロックポリマー。
【請求項3】
シグナル基及びリガンドから選ばれる標識基をさらに有する、請求項1又は2に記載の両親媒性ブロックポリマー。
【請求項4】
前記標識基は、前記両親媒性ブロックポリマーの末端に結合している、請求項3に記載の両親媒性ブロックポリマー。
【請求項5】
前記標識基は、前記両親媒性ブロックポリマーを構成する前記単位に結合している、請求項3又は4に記載の両親媒性ブロックポリマー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の両親媒性ブロックポリマーの1種又は複数種からなる分子集合体。
【請求項7】
前記分子集合体は粒子状である、請求項6に記載の分子集合体。
【請求項8】
中空の粒子である、請求項7に記載の分子集合体。
【請求項9】
内部に水相を有する粒子である、請求項8に記載の分子集合体。
【請求項10】
前記水相に薬剤が含まれる、請求項9に記載の分子集合体。
【請求項11】
前記水相に、シグナル剤及び/又はリガンドが含まれる、請求項9又は10に記載の分子集合体。
【請求項12】
標識基が存在する場合、前記標識基が表面に露出している、請求項6〜11のいずれか1項に記載の分子集合体。
【請求項13】
粒子径が10〜500nmである、請求項6〜12のいずれか1項に記載の分子集合体。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の分子集合体からなる、薬剤搬送システム用分子プローブ。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の分子集合体を生体内に投与することを含む、薬剤搬送システム。
【請求項16】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の分子集合体からなる、分子イメージングシステム用分子プローブ。
【請求項17】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の分子集合体を生体内に投与することを含む、分子イメージングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−24816(P2008−24816A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198790(P2006−198790)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年6月18日〜23日 社団法人日本生化学会主催の「第79回日本生化学会大会」において文書をもって発表
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】