説明

新規な抗コリンエステラーゼ薬とフォルモテロールフォルモテロールとステロイドとを含む吸入用医薬品

本発明は、新規な抗コリンエステラーゼ薬とフォルモテロール塩とコルチコステロイドとを基準とした新規な医薬組成物に関し、その製造方法及びその呼吸器疾患治療への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な抗コリン作用薬とフォルモテロール塩とコルチコステロイドとを基礎とする新規な医薬組成物に関するものであり、その製造方法、ならびに呼吸器疾患治療における使用に関する。
(発明の説明)
本発明は、式1で表される抗コリン作用薬:
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、X-は塩化物、臭化物及びメタンスルホネートから選択されるアニオンを示し、好ましくは臭化物を示す)と、
フマル酸フォルモテロールとヘミフマル酸フォルモテロールから選択されるフォルモテロール塩であって、水和物及び/又は溶媒和物の形であってもよく、また、それぞれの鏡像異性体の1つ又は鏡像異性体の混合物の形であってもよいフォルモテロール塩と、
シクレソニド、ブデソニド、フロン酸モメタゾンから選択されるステロイドであって、それぞれ水和物及び/又は溶媒和物の形であってもよいステロイドとを含む、新規な医薬組成物に関する。
式1の塩は、国際特許出願WO02/32899より公知である。式1の塩に言及する場合は、製造可能ないずれの水和物及び溶媒和物も含むものである。
本特許出願の範囲において、下記式:











【0004】
【化2】

【0005】
で表される薬理学的に有効なカチオンを明示する場合は、1’を使って識別することができる。化合物1に言及する場合、カチオン1’を含むのは勿論のことである。
本発明の範囲において、シクレソニド、ブデソニド、フロン酸モメタゾンというステロイド類に言及する場合、それらのステロイド類から作成できる塩又は誘導体も含む。可能な塩又は誘導体の例としては、ナトリウム塩、スルホ安息香酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸、ニ水素リン酸塩、パルミチン酸塩、ピバリン酸塩又はフランカルボン酸塩が挙げられる。前記ステロイドは水和物の状態で存在可能な場合があり、フロン酸モメタゾンの場合は、フロン酸モメタゾン一水和物が特に重要である。
フォルモテロール塩は、鏡像異性体として純粋な状態で存在していてもよい。
本発明で使用できる鏡像異性体は、R,R-フォルモテロール、S,S-フォルモテロール、R,S-フォルモテロール及びS,R-フォルモテロールから選択されるが、なかでもR,R-フォルモテロールの鏡像異性体状態の塩が特に重要である。ホルメテロール塩は、水和物及び/又は溶媒和物の形で使用してもよい。本発明によると、フマル酸フォルモテロールニ水和物及びヘミフマル酸フォルモテロール一水和物が極めて重要である。
本発明の医薬組成物は、本発明では吸入により投与する。適切なカプセル(インハレット)に充填した好適な吸入用粉末を、本発明の適当な粉末吸入器を使って投与することが好ましい。
したがって、本発明の態様の1つは、有効成分1と、フォルモテロール塩と、ステロイドのシクレソニド、ブデソニド又はフロン酸モメタゾンの1種とを含む医薬組成物に関する。
本発明の別の態様は前記成分をそれぞれ別々の医薬製剤中に含む医薬キットに関する。
本発明のさらに別の態様は、治療上有効量の有効成分1と、フォルモテロール塩と、シクレソニド、ブデソニド又はフロン酸モメタゾンとに加え、医薬的に許容される担体を含む医薬品に関する。
医薬的に許容される賦形剤又は担体に加え、下記の医薬組合せを含む医薬品がとりわけ好ましい。
【0006】
− 1'-臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物及びシクレソニド、
− 1'-臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物及びブデソニド、
− 1'-臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物及びフロン酸モメタゾン一水和物、
− 1'-臭化物、フマル酸フォルモテロールニ水和物及びシクレソニド、
− 1'-臭化物、フマル酸フォルモテロールニ水和物及びブデソニド、又は、
− 1'-臭化物、フマル酸フォルモテロールニ水和物及びフロン酸モメタゾン一水和物。
フォルモテロール塩がヘミフマル酸フォルモテロールの状態、好ましくは、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物の状態で存在する医薬組成物が、本発明では特に重要である。
本発明は、炎症性及び/又は閉塞性の気道疾患、とりわけ喘息及び/又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を同時投与又は順次投与により治療する目的の、前記3種成分を治療上有効量含む医薬組成物を調製するための、前記医薬組合せの使用に関する。さらに、本発明の医薬組合せは、例えば、膵嚢胞性繊維症又はアレルギー性肺胞炎(農夫肺)を同時投与又は順次投与により治療する目的の薬を調製するために使用することもできる。本発明の有効物質の組合せは、治療において医薬有効物質のうちの1つに禁忌を示す場合は使用しない。
また、本発明は、炎症性又は閉塞性の気道疾患、とりわけ喘息及び/又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するために、前記医薬組成物の組合せを治療上有効量で同時又は順次使用することに関するものであるが、治療上の観点から、同時投与又は順次投与によるステロイド類又はベータ受容体刺激薬(betamimetics)を用いた治療に対して禁忌を示さないことを条件とする。さらに、本発明は、例えば、膵嚢胞性繊維症又はアレルギー性肺胞炎(農夫肺)を治療するため、前記医薬組成物の組合せの治療上有効量を同時又は順次に使用することに関する。
【0007】
ステロイドとしてシクレソニドを含む本発明の好適な医薬組合せでは、有効成分1を好ましくは臭化物の状態で15〜800μg、好ましくは50〜400μg、とりわけ50〜200μgと、フォルモテロール塩を3〜20μg、好ましくは4〜10μgと、シクレソニドを50〜400μg、好ましくは100〜400μgとを1日1回又は2回与えるように投与することが本発明では好ましい。
ステロイドとしてブデソニドを含む本発明の好適な医薬組合せでは、有効成分1を好ましくは臭化物の状態で15〜800μg、好ましくは50〜400μg、とりわけ50〜200μgと、フォルモテロール塩を3〜20μg、好ましくは4〜10μgと、ブデソニドを200〜800μg、好ましくは300〜500μgとを1日1回又は2回与えるように投与することが本発明では好ましい。
ステロイドとしてフロン酸モメタゾンを含む本発明の好適な医薬組成物では、有効成分1を好ましくは臭化物の状態で15〜800μg、好ましくは50〜400μg、とりわけ50〜200μgと、フォルモテロール塩を3〜20μg、好ましくは4〜10μgと、フロン酸モメタゾンを200〜800μg、好ましくは300〜500μgとを1日1回又は2回与えるように投与することが本発明では好ましい。
【0008】
本発明による有効成分の組合せは、吸入による投与が好ましい。このためには、構成成分を吸入に適した形態で使用できるようにしなければならない。
本発明による吸入用調剤としては、吸入用粉末、噴射剤含有定量エアロゾル又は噴射剤を含まない吸入用溶剤が挙げられる。前記有効成分の組合せを含む本発明の吸入用粉末は、有効成分のみから構成されていてもよいし、有効成分と医薬的に許容される賦形剤との混合物で構成されていてもよい。本発明の範囲では、担体という用語を賦形剤という用語のかわりに使うこともできる。本発明の範囲において、噴射剤を含まない吸入用溶剤という用語には、濃縮液又はすぐに使用可能な無菌の吸入液が挙げられる。本発明の調剤は、有効成分の組合せを1つの製剤に一緒に含んでいてもよいし、あるいは、2種又は3種の別個の製剤に含んでいてもよい。本発明の範囲内で使用できるこれらの製剤については、本明細書の次のパートでさらに詳細に説明する。
A)吸入可能な粉末:
本発明による吸入可能な粉末は、前記有効成分のみを含むか、又は、生理的に許容される適当な賦形剤と混合して含むかのいずれでもよい。
有効成分を生理的に許容される賦形剤と混合して含有させる場合、以下の生理的に許容される賦形剤を使用して本発明による吸入可能な粉末を調製することができる。単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース)、オリゴ糖及び多糖類(例えば、デキストラン)、多価アルコール類(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、あるいは、これら賦形剤の混合物。好ましくは、単糖類又は二糖類が使用され、ラクトース又はグルコースの使用が特に好ましく、限定はされないが、その水和物の形が好ましい。本発明のこの目的のためには、ラクトースがとりわけ好ましい賦形剤であり、ラクトース一水和物が最も好ましい。
【0009】
本発明による吸入可能な粉末の範囲において、賦形剤の最大平均粒子径は250μmまで、好ましくは10〜150μm、最も好ましくは15〜80μmの範囲である。上記の賦形剤に平均粒径1〜9μmのより微細な賦形剤画分を添加することが適切であると考えられる場合もあろう。これらのより微細な賦形剤も、本願明細書中で前に列挙した使用可能な賦形剤の群から選択される。最終的に本発明による吸入可能な粉末を調製するためには、平均粒径が好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmに微細化した有効成分を賦形剤混合物に添加する。粉砕、微粉化を行い、最後に構成成分を一緒に混合することによる本発明の吸入可能な粉末の製造方法は従来から公知である。本発明の吸入可能な粉末は、3種すべての有効成分を含む単一の粉末混合物の状態、または、前記有効成分のうちの2種、もしくは1種のみを含む別々の吸入粉末の状態のいずれかに調製し、投与することができる。
本発明の吸入可能な粉末は、従来から公知の吸入器を用いて投与することができる。
前記有効成分に加えて生理的に許容される賦形剤を1種以上含む本発明の吸入可能な粉末は、例えば、US4570630Aに記載されているような計量チャンバーを用いた供給源から一回分の投与量を放出する吸入器を用いて、又は、DE3625685Aに記載されているような他の手段で投与することができる。好ましくは、前記有効成分に加えて生理的に許容される賦形剤を含む本発明の吸入可能な粉末を、例えばWO94/28958に記載されているような吸入器で使用するカプセルに充填する(所謂インハレットの作成)。
【0010】
図1に、インハレット状態の本発明の医薬品組成物を使用するための、特に好ましい吸入器を示す。
カプセルから粉末状医薬組成物を吸入するための該吸入器(ハンディヘラー)は、2個の窓2を含むハウジング1と、空気導入口を有し、かつ、スクリーンハウジング4の上に固定されているスクリーン5を備えたデッキ3と、デッキ3に接続し、かつ、2本の尖ったピン7を備えバネ8に対して可動型の押しボタン9を有する吸入チャンバー6と、スピンドル10を介してハウジング1、デッキ3及びカバー11と連結し、跳ね上げ式で開閉可能なマウスピース12と、流動抵抗を調整するための空気孔13とによって特徴づけられる。
前述の好ましい使用のために、本発明による吸入可能な粉末をカプセル(インハレット)に充填する場合は、各カプセルの吸入可能な粉末の充填量は1〜30mg、好ましくは3〜20mg、さらに好ましくは5〜10mgであるとよい。本発明によれば、本願明細書に記載した前記有効成分の単回投与の投与量を一緒にして、または、別々にしてカプセルに収容する。
【0011】
B)噴射剤ガス含有吸入エアロゾル:
本発明による噴射剤ガス含有吸入エアロゾルは、噴射剤ガス中に前記有効成分を溶解又は分散させて含むことができる。前記有効成分は別々の調剤又は単一調剤中に含有させてもよく、その中で前記有効成分がそれぞれ溶解又は分散されているか、あるいは成分のうちの1種もしくは2種のみが溶解され他方が分散されているかのいずれかである。本発明の吸入エアロゾルの調製に使用できる噴射剤ガスについては、従来技術から既知である。適当な噴射剤ガスは、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物、及び、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンのフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物から選択される。上記噴射剤ガスは、単独でまたはその混合物として使用できる。特に好ましい噴射剤ガスは、TG134a及びTG227、ならびにこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。
本発明の噴射剤駆動型吸入エアロゾルには、補助溶剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑剤及びpH調節剤等の他の成分も含ませることができる。これらの成分はすべて、当分野において公知である。
【0012】
本発明による噴射剤駆動型吸入エアロゾルには、前記有効成分類を5質量%まで含有させるとよい。本発明のエアロゾルには、前記有効成分類の1種以上が、例えば0.002〜5質量%、0.01〜3質量%、0.015〜2質量%、0.1〜2質量%、0.5〜2質量%又は0.5〜1質量%含有される。
有効成分が分散状態で存在する場合は、該有効成分粒子の平均粒子径は10μmまでが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは1〜5μmである。
前述の本発明による噴射剤駆動型吸入エアロゾルは、当分野において公知の吸入器(定量噴霧吸入器(MDI))を用いて投与することができる。従って、本発明の別の態様としては、噴射剤駆動型エアロゾルを投与するのに適した1種又はそれより多くの吸入器と組み合わせた、前述のような噴射剤駆動型エアロゾル状態の医薬組成物に関する。更に、本発明は、前述の本発明による噴射剤ガスを含有したエアロゾルを収容することを特徴とした吸入器に関するものである。また、本発明は、適切なバルブを備えたカートリッジで、好適な吸入器にいれて使用でき、かつ本発明による上記の噴射剤ガス含有吸入エアロゾルの1種を収容する、カートリッジに関する。適当なカートリッジ、さらには本発明による噴射剤ガス含有吸入用エアロゾルをカートリッジに充填する方法については、従来技術から公知である。
【0013】
C)噴射剤を含有しない吸入可能な溶液又は懸濁液:
本発明による有効成分組成物は、噴射剤を含有しない吸入可能な溶液及び懸濁液の状態で使用することが特に好ましい。使用する溶媒は、水性溶媒又はアルコール系溶媒、好ましくはエタノール性溶液がよい。溶媒は水のみでもよいし、水とエタノールとの混合物でもよい。水に対するエタノールの相対的な割合は制限されないが、好ましくは、最大で70容量%まで、より好ましくは60容量%まで、さらに好ましくは30容量%までである。残りの容量を水で構成する。前記有効物質を別個に又は一緒に含有する溶液又は懸濁液は、適当な酸を用いてpH値が2〜7、好ましくは2〜5になるように調整する。pH値は無機又は有機の酸から選択される酸を用いて調整すればよい。とりわけ好適な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が挙げられる。特に好適な有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸等が挙げられる。推奨される無機酸は塩酸及び硫酸である。また、有効成分の1つと一緒になって酸付加塩をすでに形成している酸を使用することも可能である。有機酸の中では、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸が好ましい。所望であれば上記の酸の混合物を用いることもでき、特に、酸性化特性に加えて、例えば香料、酸化防止剤又は錯化剤としての別の特性を有する酸、例えばクエン酸又はアスコルビン酸等の場合は、混合して用いるとよい。本発明によると、塩酸を用いてpH値を調整することが特に好ましい。
本発明では、エデト酸(EDTA)又はその公知の塩の1つであるエデト酸ナトリウムを安定剤又は錯化剤として添加することは、本発明の処方においては不要である。実施形態によっては、この化合物またはこれらの化合物類を含んでもよい。推奨実施形態の1つは、エデト酸ナトリウム基準の含有量が、100mg/100ml未満、好ましくは50mg/100ml未満、さらに好ましくは20mg/100ml未満である。一般に、エデト酸ナトリウムの含有量が0〜10mg/100mlの範囲となる吸入可能な溶剤が好ましい。
【0014】
本発明による噴射剤を含有しない吸入用溶剤には、補助溶剤及び/又は他の賦形剤を添加することができる。好ましい補助溶剤は、ヒドロキシル基又は他の極性基を含むもので、例えばアルコール類、特にイソプロピルアルコール、グリコール類、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類である。本明細書における賦形剤及び添加剤という用語は、それ自体は活性物質ではないが、1種またはそれより多くの活性物質と共に薬理的に好適な溶媒中に処方して、該活性物質を含む調剤の定性的特性を改善することができる、薬理的に許容される任意の物質を意味する。これらの物質は薬理的作用を持たないことが好ましいが、所望の療法との関連において容易に認識できるような薬理作用は持たないか、少なくとも望ましくない薬理作用を有していないことが好ましい。賦形剤及び添加剤としては、例えば、大豆レシチン、オレイン酸、ポリソルベートなどのソルビタンエステル類、ポリビニルピロリドンなどの界面活性剤、他の安定剤、錯化剤、最終的な医薬調剤の品質保持期間を保証又は延長する酸化防止剤及び/又は保存剤、香味付与剤、ビタミン類及び/又は当分野において公知である他の添加剤が含まれる。また、等張剤として塩化ナトリウムなどの薬理的に許容される塩も添加剤に含まれる。
好ましい賦形剤としては、例えばpHの調節に使用されていないのであればアスコルビン酸、さらにはビタミンA、ビタミンE、トコフェロール及び人体で産生する同様なビタミン類及びプロビタミン類等の酸化防止剤が挙げられる。
保存剤を使用して病原体による汚染から調剤を保護することができる。適当な保存剤は当分野において公知のものであり、特に当分野において公知の濃度の、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンズアルコニウム又は安息香酸もしくは安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩である。上記保存剤は、好ましくは50mg/100mlまで、より好ましくは5〜20mg/100mlの範囲の濃度で含有されていることが好ましい。
【0015】
好ましい調剤は、溶媒の水および有効成分の組合せのほかに、塩化ベンズアルコニウム及びエデト酸ナトリウムのみを含むものである。エデト酸ナトリウムを含有させない推奨実施形態もある。
本発明の噴射剤を含有しない吸入溶剤は、特に、治療上必要な投与量にあたる少量の液体調剤を数秒間以内で霧状にして治療用の吸入に適したエアロゾルを生成することができるタイプの吸入器を用いて投与される。本発明の範囲内において、100μL未満、好ましくは50μL未満、より好ましくは20〜30μLの量の有効成分含有溶液を、好ましくは1回のスプレー操作で霧状にすることができ、その結果、平均粒径が20μm未満、好ましくは10μm未満のエアロゾルを、該エアロゾルのうちで吸入されうる部分が治療上の有効量に相当するように生成することのできる吸入器が好ましい吸入器である。
吸入用液状医薬組成物の定量を噴射剤無しで放出するタイプの装置については、例えば国際特許出願WO91/14468及びWO97/12687(特に図6a及び図6b参照)に記載されている。これらに記載されているネブライザー(装置)は、Respimat(登録商標)という名称で知られている。
【0016】
本発明の有効成分の組合せを含む本発明の吸入用エアロゾルを生成するのに、このネブライザー(Respimat(登録商標))は有利に使用することができる。この装置は、形状が円筒状で、長さ9〜15cm及び幅2〜4cm未満の取り扱い易いサイズであるために、患者は常に携行することができる。このネブライザーは、高圧を用いて小さなノズルから製薬調剤の所定の量を噴霧して、吸入用エアロゾルを生成するものである。
この好ましい噴霧器は、上部ハウジング部と、ポンプハウジングと、ノズルと、ロック機構と、バネハウジングと、バネと、貯蔵容器から本質的になり、
− 上部ハウジング部に固定され、一端にはノズル又はノズル装置を備えたノズル本体を有するポンプハウジング、
− バルブ本体を備えた中空プランジャー、
− 中空プランジャーが中に固定されており、上部ハウジング部に配置された動力取り出しフランジ、
− 上部ハウジング部に位置するロック機構、
− 内部にバネを収容し、回転軸受けによって上部ハウジング部に回動可能に取り付けられているバネハウジング、
− バネハウジング上に軸方向に取り付けられている下部ハウジング部、とによって特徴づけられる。
バルブ本体を備えた中空プランジャーは、WO97/12687に開示の装置に相応する。中空プランジャーは、ポンプハウジングのシリンダ内に一部が突き出ており、シリンダ内を軸方向に移動可能である。特に図1乃至図4、とりわけ図3及びそれに関連する説明部分に言及されている。バルブ本体を備えた中空プランジャーは、バネが作動した瞬間に、その高圧末端において、流体、即ち定量の有効成分溶液に対して5〜60MPa(約50〜600bar)、好ましくは10〜60MPa(約100〜600bar)の圧力を及ぼす。1回のスプレー量は好ましくは10〜50μL、特に好ましくは10〜20μLで、最も好ましいのは15μLである。
【0017】
バルブ本体は、好ましくは、バルブ本体に面した中空プランジャーの端部に取り付けられる。
ノズル本体内のノズルは微細構造を施されていることが好ましく、即ち、マイクロテクノロジーによって作製されたものであることが好ましい。微細構造を持つバルブ本体については、例えばWO94/07607に開示されており、この明細書の内容、特に図1及びその関連説明の内容を引用する。
ノズル本体は、例えば、強固に結合した2枚のガラス及び/又はシリコンシートからなり、2枚のうちの少なくとも1枚には、1本又はそれより多くの微細構造により作成された溝があり、この溝によってノズル入口端部がノズル出口端部と連結している。ノズル出口端部には、深さ2〜10μmで幅5〜15μm、好ましくは深さが4.5〜6.5μmで、長さが7〜9μmの少なくとも1個の円形又は非円形開口部がある。
ノズル開口部が複数個、好ましくは2個ある場合、ノズル本体内におけるノズルのスプレー方向は互いに平行に延びてもよいし、あるいはノズル開口方向において互いに対して傾斜させることも可能である。出口端部に少なくとも2つのノズル開口部を有するノズル本体において、スプレーの方向は、互いに対して20〜160度、好ましくは60〜150度、最も好ましくは80〜100度の角度がよい。ノズルの開口部は、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μm、最も好ましくは30〜70μmの間隔をおいて配置される。50μmの間隔が最も好ましい。したがって、スプレー方向はノズルの開口部近傍で一致することになる。
【0018】
液状医薬調剤は、600barまでの、好ましくは200〜300barの入口圧力でノズル本体に突き当たり、ノズル開口部を通って霧化され吸入用エアロゾル状態となる。このエアロゾルの好ましい粒径または液滴径は、20μmまで、好ましくは3〜10μmである。
ロック機構には、機械エネルギーを保存するためのバネ、好ましくは円筒状の圧縮コイルバネが含まれる。このバネは作動部材としての動力取出しフランジに作用するが、フランジの移動はロック部材の位置によって決まる。この動力取出しフランジの移動は、上部および下部の止め(stop)によって正確に定められている。上部ハウジング部が下部ハウジング部内のバネハウジングと反対に回転する際に発生する外部トルクによって、バネは、動力増速機、例えば螺旋状スラストギアを介して偏向させられると好ましい。この場合、上部ハウジング部及び動力取出しフランジは、単一又は多数のV字型ギアを有する。
互いに噛合する表面を有するロック部材は、動力取出しフランジの回りにリング状に配置されている。ロック部材は、例えば、本質的に径方向に弾性変形しうるプラスチックまたは金属のリングからなる。このリングは、噴霧器の軸に対して直角をなす面に配置される。バネを偏向させた後、ロック部材のロック表面は動力取出しフランジの通路内に移動し、バネが緩まないようにする。ロック部材はボタンによって作動する。この作動ボタンはロック部材に接続又は連結されている。ロック機構を作動するためには、作動ボタンをリング状平面に対して平行に移動させ、好ましくは噴霧器内に移動させ、これによって変形性リングはリング状平面で変形させられる。ロック機構の構成に関する詳細は、WO97/20590に示されている。
【0019】
バネハウジングの上から下部ハウジング部が軸方向にはめこまれ、マウント(mounting)、スピンドルの駆動装置及び流体用貯蔵容器を収容する。
噴霧器を作動させると、上部ハウジング部は下部ハウジング部に対して相対的に回転し、下部ハウジング部はバネハウジングを一緒に回転させる。結果として、バネは螺旋状スラストギアによって圧縮、偏向され、ロック機構が自動的に嵌合する。回転角は360度分の整数度、例えば180度が好ましい。バネが偏向されると同時に、上部ハウジング部における動力取出し部が所定の距離だけ移動し、中空プランジャーがポンプハウジング内のシリンダ内部に引き戻され、その結果として、流体の一部が貯蔵容器から吸い出され、ノズル前方の高圧チャンバーに送りこまれる。
所望であれば、噴霧用の流体を収容する交換可能な多数の貯蔵容器を順番に噴霧器に押し込んでおき、連続的に使用することもできる。貯蔵容器には、本発明による水性エアロゾル調剤が収容される。
噴霧工程は、作動ボタンを軽く押すことにより開始される。この結果、ロック機構が動力取出し部材用の通路を開ける。偏向されたバネによって、ポンプハウジングのシリンダ内にプランジャーが押し込まれる。流体が霧状態となって噴霧器のノズルから出る。
構成の更なる詳細については、PCT出願WO97/12683及びWO97/20590に開示されており、これらを本願明細書に引用する。
【0020】
噴霧器(ネブライザー)の構成部品は、その目的に適した材料で作られる。噴霧器のハウジング、さらには操作上許されるならば他の部品も同様に、例えば射出成型によって好ましくはプラスチックで作製される。医薬的な目的から生理学的に安全な材料を用いる。
WO97/12687の図6a/図6bは、本発明による水性エアロゾル調剤の吸入に有利に使用できるネブライザー(Respimat(登録商標))が示されているが、これを引用する。
WO97/12687の図6aは、バネが偏向した状態の噴霧器の長手方向断面図であり、一方、WO97/12687の図6bは、バネが緩んだ状態の噴霧器の長手方向断面図である。
上部ハウジング部(51)はポンプハウジング(52)を収容し、その端部には噴霧器ノズル用のホルダ(53)が取付けられている。ホルダにはノズル本体(54)及びフィルタ(55)がある。ロック機構の動力取出しフランジ(56)内に固定された中空プランジャー(57)は、ポンプハウジングのシリンダ内にその一部を突き出している。中空プランジャーは、その端部においてバルブ本体(58)を担持している。この中空プランジャーは、封止手段(59)によって封止されている。上部ハウジング部の内部には止め(60)があり、バネが緩んでいる状態の時には動力取出しフランジが止めに突き合わさっている。動力取出しフランジ上には止め(61)があり、バネが偏向すると動力取出しフランジがこの止めに突き合わさる。バネの偏向後、ロック部材(62)は、上部ハウジング部内の止め(61)と支持体(63)との間を移動する。作動ボタン(64)が、ロック部材に接続している。上部ハウジング部分は、マウスピース(65)で終端しており、その上に配置できる保護カバー(66)によって封止される。
【0021】
圧縮バネ(68)を備えたバネハウジング(67)は、カチッとはまる爪(69)及び回転軸受けによって上部ハウジング部に回動自在に取付けられている。下部ハウジング部(70)はバネハウジングの上からかぶせられている。バネハウジング内部には、噴霧用の流体(72)の交換可能な貯蔵容器(71)がある。この貯蔵容器はストッパー(73)により封止され、このストッパーを介して中空プランジャーは貯蔵容器内に突き出し、かつその端部が流体中に浸漬される(有効成分溶液の供給)。
機械的カウンタ用のスピンドル(74)は、バネハウジングのカバー内に取付けられている。上部ハウジング部に面したスピンドルの端部には、駆動ピニオン(75)がある。スライダ(76)はスピンドル用に配置されている。
上記のネブライザーは、本発明のエアロゾル調剤を噴霧して、吸入に適したエアロゾルを生成するのに適している。
本発明の調剤を、上記方法(Respimat(登録商標))を用いて噴霧する場合、吸入器の全操作(スプレー作動)の少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%の達成で、許容差が25%以下、好ましくは20%以下で、放出量が規定量に一致するとよい。好ましくは、5〜30mg、最も好ましくは5〜20mgの調剤が、規定量として1回ごとのスプレー動作で放出されることが好ましい。
【0022】
しかしながら、本発明の調剤は、上記以外の吸入器、例えば、ジェット流吸入器等を用いて噴霧することもできる。
したがって、更なる本発明の態様は、上記のような噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬調剤の投与に適した装置、好ましくは「Respimat(登録商標)」と組み合わせた、噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬調剤に関する。好ましくは、本発明は、「Respimat(登録商標)」という名称で公知の装置と組み合わせた、本発明による有効成分の組合せを特徴とする、噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液に関する。さらに、本発明は、前述したような本発明の噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液を収容していることを特徴とする、上記の吸入用装置、好ましくは「Respimat(登録商標)」に関するものである。
本発明による噴射剤を含有しない吸入可能な溶液又は懸濁液は、濃縮物又は直ぐに使用できる無菌吸入溶液もしくは懸濁液、ならびに「Respimat(登録商標)」用に設計された上記の溶液及び懸濁液の状態とすることができる。直ぐに使用可能な調剤とは、例えば等張性の食塩水を濃縮物に添加することにより作製できる。直ぐに使用できる無菌調剤は、ベンチュリの原理又は他の原理に基づいて超音波又は圧縮空気で吸入用エアロゾルを生成するエネルギー駆動型の自立型又は持運び可能なネブライザーを使用して投与することができる。
したがって、本発明の別の態様は、濃縮物又は直ぐに使用可能な無菌調剤の形態をとる、前述のような噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液を投与するのに適した装置と組合せた、該噴射剤を含有しない吸入溶液又は懸濁液状態の医薬組成物に関するもので、該装置が、ベンチュリの原理または他の方法によって超音波又は圧縮空気を用いて吸入用エアロゾルを生成する、エネルギー駆動式の自立型又は持運び可能なネブライザーであることを特徴とする。
【0023】
以下の実施例は、本発明の範囲を以下に述べる実施形態に限定することなしに、一例として本発明をより詳細に説明するものである。
(処方例)
A)吸入用粉末:
下記表は、1’−臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物、ブデソニド及び賦形剤のラクトース一水和物を含む本発明の吸入用粉末の例を記載する。







【0024】
【表1】





【0025】
下記表は、1’−臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物、シクレソニド及び賦形剤のラクトース一水和物を含む本発明の吸入用粉末の例を記載する。












【0026】
【表2】





【0027】
下記表は、1’−臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物、フロン酸モメタゾン及び賦形剤のラクトース一水和物を含む本発明の吸入用粉末の例を記載する。












【0028】
【表3】





【0029】
B)噴射剤含有吸入エアロゾル:
下記表は、1’−臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物、ブデソニドを含む本発明の噴射剤含有吸入エアロゾルの例を記載する。記載の量は質量%(処方総質量基準)である。










【0030】
【表4】

【0031】
下記表は、1’−臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物、シクレソニドを含む本発明の噴射剤含有吸入エアロゾルの例を記載する。記載の量は質量%(処方総質量基準)である。
【0032】
【表5】

【0033】
下記表は、1’−臭化物、ヘミフマル酸フォルモテロール一水和物、フロン酸モメタゾンを含む本発明の噴射剤含有吸入エアロゾルの例を記載する。記載の量は質量%(処方総質量基準)である。

【0034】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】インハレット状態の本発明の医薬品組成物を使用するための、特に好ましい吸入器を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される抗コリン作用薬:
【化1】

(式中、X-は塩化物、臭化物及びメタンスルホネートから選択されるアニオンを示し、好ましくは臭化物を示す)と、
フマル酸フォルモテロール及びヘミフマル酸フォルモテロールから選択されるフォルモテロール塩であって、水和物及び/又は溶媒和物の形であってもよく、また、それぞれの鏡像異性体の1つ又は鏡像異性体の混合物の形であってもよいフォルモテロール塩と、
シクレソニド、ブデソニド、フロン酸モメタゾンから選択されるステロイドであって、それぞれ溶媒和物及び/又は水和物の形であってもよいステロイドとを含み、さらに医薬的に許容される賦形剤を含有してもよい医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分1、フォルモテロール塩及びステロイドが1つの調剤中に一緒に含有されているか、あるいは、2つ又は3つの別個の調剤に含有されているかのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記有効成分1が臭化物の状態で存在することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が吸入に適した製剤の形態で存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、吸入用粉末、噴射剤含有定量エアロゾル及び噴射剤を含有しない吸入用溶液又は懸濁液から選択される製剤であることを特徴とする請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、前記有効成分1とフォルモテロール塩とステロイドとともに、単糖類、二糖類、オリゴ糖及び多糖類、多価アルコール類、塩類あるいはこれらの混合物から選択される医薬的に許容される好適な賦形剤を一緒に含む吸入可能な粉末であることを特徴とする請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、前記有効成分1とフォルモテロール塩とステロイドとを溶解又は分散状態で含有し、かつ、噴射剤ガスとして、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物あるいはメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンもしくはシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物を含む、噴射剤含有吸入用エアロゾルであることを特徴とする請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記噴射剤ガスが、TG134a、TG227又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、水、エタノール又は水とエタノールとの混合物を溶媒として含有する、噴射剤を含有しない吸入用溶液又は懸濁液であることを特徴とする請求項5記載の医薬組成物。
【請求項10】
炎症性及び/又は閉塞性呼吸器疾患の治療用医薬品を製造するための、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項11】
喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療用医薬品を製造するための、請求項10記載の組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−520621(P2008−520621A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541914(P2007−541914)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055782
【国際公開番号】WO2006/056526
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】