説明

新規な抗腫瘍化合物

本発明は、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤として有用であり、また乾癬の治療において有用である、新規なカハラリド抗腫瘍化合物、特にカハラリドFの類似体を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカハラリド抗腫瘍化合物、特にカハラリドFの類似体(この場合、脂肪族5-メチルヘキサン酸は4-メチルヘキサン酸で置換されている)、それらの化合物を含有する医薬組成物、ならびに抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤としてのそれらの使用および乾癬の治療におけるそれらの使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
カハラリド化合物は、ハワイの草食性海洋種である軟体動物Elysia rufescensと、その餌である緑藻Bryopsis種から単離されるペプチドである。カハラリドA〜Fは、Hammanら、J. Am. Chem. Soc.、1993、115、5825-5826に記載されている。
【0003】
カハラリドA〜Gは、Hamann, M.ら、J. Org. Chem、1996、61、6594-6600: 「Kahalalides: bioactive peptides from a marine mollusk Elysia rufescens and its algal diet Bryopsis sp.」に記載されている。
【0004】
カハラリドHおよびカハラリドJは、Scheuer P.J.ら、J. Nat. Prod. 1997、60、562-567: 「Two acyclic kahalalides from the sacoglossan mollusk Elysia rufescens」に記載されている。
【0005】
カハラリドOは、Scheuer P.J.ら、J. Nat. Prod. 2000、63(1) 152-4: 「A new depsipeptide from the sacoglossan mollusk Elysia ornata and the green alga Bryopsis species」に記載されている。
【0006】
カハラリドKについては、Kan, Y.ら、J. Nat. Prod. 1999 62(8) 1169-72: 「Kahalalide K: A new cyclic depsipeptide from the hawaiian green alga bryopsis species」を参照されたい。
【0007】
関連の報告については、Goetzら、Tetrahedron、1999、55; 7739-7746: 「The absolute stereochemistry of Kahalalide F」; Albericio, F.ら、Tetrahedron Letters、2000、41、9765-9769: 「Kahalalide B. Synthesis of a natural cyclodepsipeptide」; Becerroら、J. Chem. Ecol. 2001、27(11)、2287-99: 「Chemical defenses of the sarcoglossan mollusk Elysia rufescens and its host Alga bryopsis sp.」も参照されたい。
【0008】
カハラリド化合物のうち、カハラリドFはその抗腫瘍活性から最も期待されているものである。その構造は、環状部分としての6個のアミノ酸と、末端脂肪酸基を有する7個のアミノ酸の環外鎖とを含んでおり、複雑である。ヒト肺癌A-549およびヒト結腸癌HT-29のin vitro細胞培養物に対するその活性については、EP610078に報告されている。また、カハラリドFには抗ウイルス性および抗菌性があることが証明されている。
【0009】
前臨床のin vivo試験では、雌マウスにおける単回ボーラス静注後のカハラリドFの最大耐量(MTD)は280μg/kgになることが測定された。前記MTD静注を上回る単回投与は、動物が死に至る神経毒性の徴候を示し、極めて有毒であったが、280μg/kgのカハラリドFは、1日1回を5回というスケジュールに従って繰り返し投与することが可能である。その場合には、急性毒性の明白な証拠はみられない。Supko, F.ら、Proceedings of the 1999 AACR NCI EORTC International Conference, abstract 315: 「Preclinical pharmacology studies with the marine natural product Kahalalide F」を参照されたい。
【0010】
WO 02 36145には、カハラリドFを含有する医薬組成物および癌治療におけるこの化合物の新規な用途が記載されている。なお、この出願は引用によりその全体を本明細書に援用する。
【0011】
WO 03 33012(本発明者らはこれに基づいて優先権を主張している)には、カハラリド化合物の腫瘍学における臨床使用が記載されている。なお、この出願は引用によりその全体を本明細書に援用する。
【0012】
GB 0304367(本発明者らはこれにも基づいて優先権を主張している)には、乾癬および関連疾患の治療におけるカハラリド化合物の使用が記載されている。なお、この出願は引用によりその全体を本明細書に援用する。
【0013】
天然カハラリド化合物および合成カハラリド化合物の合成と細胞障害活性は、WO 01 58934に記載されている。なお、この出願は引用によりその全体を本明細書に援用する。WO 01 58934には、カハラリドFの合成と、その末端脂肪酸鎖が他の脂肪酸で置換されている類似構造を有する化合物の合成も記載されている。
【非特許文献1】Hammanら、J. Am. Chem. Soc.、1993、115、5825-5826
【非特許文献2】Hamann, M.ら、J. Org. Chem、1996、61、6594-6600: 「Kahalalides: bioactive peptides from a marine mollusk Elysia rufescens and its algal diet Bryopsis sp.」
【非特許文献3】Scheuer P.J.ら、J. Nat. Prod. 1997、60、562-567: 「Two acyclic kahalalides from the sacoglossan mollusk Elysia rufescens」
【非特許文献4】Scheuer P.J.ら、J. Nat. Prod. 2000、63(1) 152-4: 「A new depsipeptide from the sacoglossan mollusk Elysia ornata and the green alga Bryopsis species」
【非特許文献5】Kan, Y.ら、J. Nat. Prod. 1999 62(8) 1169-72: 「Kahalalide K: A new cyclic depsipeptide from the hawaiian green alga bryopsis species」
【非特許文献6】Goetzら、Tetrahedron、1999、55; 7739-7746: 「The absolute stereochemistry of Kahalalide F」;
【非特許文献7】Albericio, F.ら、Tetrahedron Letters、2000、41、9765-9769 「Kahalalide B. Synthesis of a natural cyclodepsipeptide」
【非特許文献8】Becerroら、J. Chem. Ecol. 2001、27(11)、2287-99: 「Chemical defenses of the sarcoglossan mollusk Elysia rufescens and its host Alga bryopsis sp.」
【非特許文献9】Supko, F.ら、Proceedings of the 1999 AACR NCI EORTC International Conference, abstract 315: 「Preclinical pharmacology studies with the marine natural product Kahalalide F」
【特許文献1】WO 03 33012
【特許文献2】GB 0304367
【特許文献3】WO 01 58934
【特許文献4】WO 02 36145
【非特許文献10】Philip Skehanら、(1990)、「New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer drug screening」、J. Natl. Cancer Inst., 82: 1107-1112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
さらなる抗腫瘍化合物、特に特性が改善されたさらなるカハラリド化合物の提供が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、カハラリド類似体化合物の1つが有望な活性を示し、in vivoモデルにおいて抗腫瘍効果が改善されたことを思いがけず見出した。
本発明は、式1:
【0016】
【化1】

【0017】
の化合物、ならびにその製薬上許容される塩、プロドラッグ、互変異性体、および溶媒和物を対象とする。
【0018】
本化合物は、4-メチルヘキサン酸末端脂肪酸鎖を有するカハラリドFに相当し、これ以降、4-メチルヘキサン酸KFと呼ぶ。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明は、式2:
【0020】
【化2】

【0021】
を有する、(4S)-メチルヘキサン酸を含有している化合物、ならびにその製薬上許容される塩、プロドラッグ、互変異性体、および溶媒和物を対象とする。この化合物は、これ以降、(4S)-メチルヘキサン酸KFと呼ぶ。
【0022】
また本発明は、先に定義した化合物と、製薬上許容される担体、ビヒクルまたは希釈剤とを含む医薬組成物を開示する。
【0023】
さらに本発明は、癌または乾癬に罹患している任意の哺乳動物、特にヒトを治療する方法であって、前記罹患個体に治療上有効な量の上記定義の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0024】
本発明は、特に他の治療に好反応しない難治性癌に罹患している患者の治療に用いることができる。特に、本発明の組成物は、他の化学療法を試みたが作動しなかった後に用いることができる。
【0025】
特に、本発明は、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、黒色腫、結腸直腸癌、腎臓癌、卵巣癌、NSCL癌、上皮癌、膵臓癌、およびHer2/neu発癌遺伝子を過剰発現する腫瘍に罹患している患者の治療を開示する。
【0026】
別の態様では、本発明は、薬剤の製造における上記定義の化合物の使用を対象とする。好ましい実施形態では、薬剤は、癌、乾癬、ウイルス感染または真菌感染症の治療用薬剤である。
【0027】
さらに本発明は、上記定義の化合物を含む医薬組成物を含有する容器と、これとは別の再溶解剤を含有する容器とを含むキットを提供する。また、再溶解の方法も提供する。
【0028】
さらに本発明は、上記定義の化合物の調製方法を対象とする。この方法では、出発原料として4-メチルヘキサン酸を用いるのが好ましい。好ましい実施形態では、4-メチルヘキサン酸は(4S)-メチルヘキサン酸である。最も好ましい実施形態では、この方法は固相合成法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明者らは、カハラリドFに対して活性が有意に改善されたカハラリドFの類似体を同定した。比較例で示すように、4-メチルヘキサン酸KFは、in vivoの癌モデルにおいて予期しない有意に改善された効果があった。これは、4-メチルヘキサン酸KFと5-メチルヘキサン酸KFの間の構造の差がわずかであることを考えると驚くべきことである。
【0030】
本発明の化合物は、5-メチルヘキサン脂肪酸鎖の代わりに4-メチルヘキサン脂肪酸鎖を有するカハラリドFであり、式1:
【0031】
【化3】

【0032】
の構造を有している。
【0033】
特に、本発明者らには、化合物が式2:
【0034】
【化4】

【0035】
で定義の立体化学を有していることが好ましい。
【0036】
しかし、本発明の化合物は不斉中心を有しており、従って、種々の鏡像体形態およびジアステレオマー形態で存在する。本発明は、本発明の化合物のすべての光学異性体と立体異性体、およびその混合物の使用、ならびにそれらを使用または含有することができるすべての医薬組成物および治療方法に関する。
【0037】
便宜上、本発明者らは、本発明の化合物(特に、化合物1および化合物2)を4-メチルヘキシルカハラリドF化合物、すなわち4-mehexKF化合物と呼ぶ。本発明の4-mehexKF化合物は、他のカハラリド化合物をほとんど含まないか、または実質的に含まないか、または全く含まないのが好ましい。例えば、本発明の4-mehexKFは、5-メチルヘキシル側鎖を有するカハラリドFを含んでいないのが好ましい。特に、本発明の4-mehexKFは、他のカハラリド(特にカハラリドF)を多くとも25%、10%、5%、2%、1%、または0.5%、あるいは0.5%未満で含有しているのが好ましい。関連する態様では、本発明の4-mehexKFは、実質的に純粋な形態で提供する。他のカハラリドを含まないか、ある程度までしか含まない4-mehexKF化合物は、本発明の医薬組成物と治療方法に特に適している。
【0038】
本発明は、本発明の化合物およびその製薬上許容される塩を含んでおり、この場合、1個または複数個の水素、炭素または他の原子はそのアイソトープで置換する。このような化合物は、代謝薬物動態試験および結合アッセイにおいて研究ツールおよび診断ツールとして有用となり得る。
【0039】
本明細書では、本発明の化合物(式1および式2の化合物を含む)は、その製薬上許容される誘導体またはプロドラッグを含むものとして定義されている。「製薬上許容される誘導体またはプロドラッグ」とは、服用者に投与した際に、本発明の化合物またはその代謝産物もしくは残基を(直接的または間接的に)提供することができる、本発明の化合物のすべての製薬上許容される塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、このような化合物を患者に投与した場合に、(例えば、経口投与した化合物を血液中に速やかに吸収させることによって)本発明の化合物のバイオアベイラビリティーを高め、特定の生物学的区画への親化合物の送達を促進し、注射による投与が可能となるように溶解性を高め、代謝を変化させるか、あるいは排出速度を変化させるものである。
【0040】
本発明の化合物の塩は、式1または式2の化合物中の窒素に由来する酸付加塩を含み得る。その治療活性は、本明細書で定義の本発明の化合物に由来する部分に存在し、他の成分が何であるかは、治療目的および予防目的では、患者に製薬上許容され得ることが好ましいが、それほど重要ではない。製薬上許容される酸付加塩の例としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸、ならびに有機酸、例えば、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびメタンスルホン酸およびアリールスルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸に由来するものが含まれる。好ましい塩はトリフルオロ酢酸塩である。
【0041】
本発明の化合物は、WO 01 58934に記載されている合成法に従って、例えば、WO 01 58934の実施例3の5-メチルヘキサン酸の代わりに適当な(S)または(R)体4-メチルヘキサン酸を添加することによって調製することができる。従って、また本発明は、式1または式2の化合物の調製方法を包含している。この方法では、出発原料として4-メチルヘキサン酸を用いるのが好ましい。最も好ましくは、出発原料は(4S)-メチルヘキサン酸である。この合成は、固相合成法であるのが好ましい。合成に関するさらなる詳細は、実施例に記載する。
【0042】
本発明の方法は、固相合成法の利点を利用して、鏡像的(enantio-)、立体化学的制御の(stereocontrolled)、迅速な方法で出発原料から実施することができる。固相合成法では、構築物中の分子は、すべての合成操作中、不溶性担体に結合されている。
【0043】
本発明の化合物の医薬用製剤は、任意の適当な経路、例えば、経口経路(口腔内経路または舌下経路を含む)、直腸経路、鼻腔経路、局所経路(口腔内経路、舌下経路、または経皮経路を含む)、経膣経路、あるいは非経口経路(皮下経路、筋肉内経路、静脈内経路または皮内経路を含む)による投与に適し得る。このような製剤は、薬学分野で周知の任意の方法によって、例えば、有効成分を1種または複数の担体または賦形剤と結合させることによって調製することができる。
【0044】
本発明の化合物の医薬組成物は、静脈内投与に好適な組成物とともに液体(溶液、懸濁液またはエマルジョン)を含むのが好ましい。また、本医薬組成物は純粋化合物を含有しているか、あるいは任意の担体または他の薬理学的に活性のある化合物と組み合わせて含んでいてもよい。本医薬組成物に関するさらなる教示は、WO 02 36145(引用によりその全体を本明細書に組み入れる)で確認することができる。
【0045】
従って、非イオン界面活性剤と有機酸の組合せは、再溶解に適した本発明の化合物の凍結乾燥形態を提供する充填剤を用いた使用に好適である。再溶解は、乳化可溶化剤、アルカノールおよび水の混合物で行うのが好ましい。
【0046】
凍結乾燥組成物は、主に、例えば少なくとも90%の充填剤、または少なくとも95%の充填剤を含むのが好ましい。充填剤の例は周知であり、ショ糖およびマンニトールが挙げられる。他の充填剤も使用可能である。
【0047】
凍結乾燥組成物中の非イオン界面活性剤は、好ましくはソルビタンエステル、さらに好ましくはポリエチレンソルビタンエステルであり、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンアルカノエート、特にポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(例えば、ポリソルベート80)である。一般に、非イオン界面活性剤は、本組成物の数%、例えば、本組成物の0〜5%、例として、2〜3または4%を含む。
【0048】
凍結乾燥組成物中の有機酸は一般に脂肪酸であり、好ましくはヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくは、ヒドロキシポリカルボン酸、特にクエン酸である。一般に有機酸は、本組成物の数%、例えば本組成物の0〜5%、例として、2〜3または4%を含む。
【0049】
凍結乾燥組成物中の本発明の化合物の量は、一般的には、混合物の1%未満、多くの場合、混合物の0.1%未満である。好適な量は、組成物100mg当たり50μgから200μgの範囲であり、およそ100μgである。
【0050】
再溶解剤用の乳化可溶化剤は、好適には、ポリエチレングリコールエステル、特に脂肪酸エステル、さらに好ましくは、PEGオレエート(PEG-35オレエート等)を含む。乳化可溶化剤は、好適には、再溶解剤の0〜10%、一般的には約3〜7%、およそ約5%である。アルカノールは通常エタノールであり、再溶解剤の0〜10%、一般的には約3〜7%、およそ5%であるのが適当である。残りの再溶解剤は水であり、静脈注射に適した再溶解溶液を提供する。
【0051】
さらに、0.9%の生理的食塩水による再溶解した溶液の希釈は、カハラリド化合物の点滴に好適となり得る。適した点滴器具は、ポリエチレン製容器ではなく、好ましくはガラス容器を含む。チューブはシリコーンであるのが好ましい。
【0052】
従って、好ましい再溶解剤は、2〜7%、およそ5%の乳化可溶化剤と、2〜7%、およそ5%のアルコールと、残部の水を含むのが好ましい。
【0053】
製剤は、密閉アンプルおよびバイアル等の単位投与量容器または多回投与量容器中に入れることができ、使用直前に滅菌液体担体(例えば、注射剤用水)の添加だけが必要である、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。
【0054】
従って本発明は、凍結乾燥組成物を含有する容器と、これとは別の再溶解剤を含有する容器とを含むキットをさらに提供する。また再溶解の方法も提供する。
【0055】
本発明の化合物または組成物の投与は静脈注射による。72時間以内、さらに好ましくは1〜24時間、最も好ましくは約1時間または約3時間の点滴時間を用いることができる。病院で1泊することなく治療を実施することができる短時間の点滴時間が特に望ましい。しかし、必要に応じて、点滴は約24時間、あるいはそれ以上の時間であってもよい。
【0056】
投与はサイクルで行うが、好ましい投与方法では、患者に対して本発明の化合物の静脈注射を各サイクルの最初の週に行い、サイクルの残りの時間に患者を回復させる。各サイクルの好ましい継続期間は、1週間、3週間または4週間のいずれかであり、必要に投じて、複数サイクルを実施することができる。代わりの投薬プロトコルでは、本発明の化合物は、3週間毎に連続5日間およそ1時間投与する。他のプロトコルは改変プロトコルとして講じることができる。
【0057】
投与延長および/または投与短縮およびスケジュール調整は、治療に対する個々の患者の耐性に基づき必要とされる場合に行う。特に、投与短縮は、肝臓トランスアミナーゼまたはアルカリホスファターゼが正常血清濃度よりも高い患者に推奨される。
【0058】
一態様では、本発明は、癌に罹患しているヒト患者を治療する方法であって、前記患者に1200mcg/m2/日未満、好ましくは930mcg/m2/日未満、さらに好ましくは800mcg/m2/日未満の用量で本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。好適には、用量は少なくとも320mcg/m2/日である。好ましくは、その用量は、400〜900mcg/m2/日、好ましくは500〜800mcg/m2/日、さらに好ましくは600〜750mcg/m2/日の範囲である。特に、用量は約650〜700mcg/m2/日であるのが好ましい。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、癌に罹患しているヒト患者を治療する方法であって、前記患者に930mcg/m2/日未満の用量で5日間、毎日、本発明の化合物を投与し、続いて、カハラリド化合物を投与しない1〜4週間の休止期間を設定することを含む方法を提供する。用量は、好ましくは650〜750mcg/m2/日であり、さらに好ましくは約700mcg/m2/日である。点滴時間は好ましくは1〜24時間であり、さらに好ましくは1〜3時間である。特に、約1時間または約3時間の点滴時間が好ましい。休止期間は好ましくは2〜3週であり、さらに好ましくは約2週である。
【0060】
また本発明は、癌に罹患しているヒト患者を治療する方法であって、前記患者に、週に1回、800mcg/m2/日未満の用量で本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。用量は、好ましくは600〜700mcg/m2/日であり、さらに好ましくは650mcg/m2/日である。点滴時間は、好ましくは1〜24時間であり、さらに好ましくは1〜3時間である。特に、約1時間の点滴時間が好ましい。
【0061】
用量に関する教示を上述したが、本化合物の適切な用量は、特定の製剤、投与様式、および治療する特定の位置、宿主および腫瘍に応じて変わり得る。他の要因、例えば、年齢、体重、性別、食事、投与回数、排出の速度、宿主の症状、薬剤の併用、反応感度、および疾患の重症度も考慮に入れる。投与は、最大耐量内で連続的にまたは定期的に行うことができる。
【0062】
本発明は、特に、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、黒色腫、結腸直腸癌、腎臓癌、卵巣癌、NSCL癌、上皮癌、膵臓癌、およびHer2/neu発癌遺伝子を過剰発現する腫瘍に罹患している患者の治療に関する。最も好ましくは、本発明は、肝細胞癌、黒色腫、乳癌および前立腺癌の治療を教示する。
【0063】
さらに本発明は、哺乳動物の真皮細胞の過剰増殖が関与する皮膚病を治療する方法であって、哺乳動物に非毒性で有効な量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。皮膚病は好ましくは乾癬である。本発明は、好ましくは、乾癬(特に重症の乾癬)に罹患しているヒト患者の治療を教示する。
【0064】
本発明の化合物および組成物は、他の製剤と一緒に用いて併用療法を提供することができる。他の製剤は同じ組成物の一部を形成していてもよく、あるいは、同時に、または異なる時間に投与する個別の組成物として提供することができる。他の化学療法剤、ホルモン剤または抗体製剤との組合せが考えられるが、他の製剤の特性は特に限定されるものではない。本発明の化合物および他の製薬上有効な1種または複数の製剤の量と投与の相対的なタイミングは、所望する組合せの治療効果を達成するように選択する。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
〈(4S)-メチルヘキサン酸KFの調製〉
基本手順と本方法の最初のステップは、WO 01 58934に記載のとおりである。
(4S)-MeHex-D-Val-Thr(tBu)-Val-D-Val-D-Pro-Orn(Boc)-D-allo-Ile-D-allo-Thr(Val-Alloc)-D-allo-Ile-D-Val-O-TrtCl-樹脂:
Fmoc基を除去し、Fmoc-Val-OH(678mg、2mmol、4当量)、Fmoc-Thr(tBu)-OH(992mg、2.5mmol、5当量)、Fmoc-D-Val-OH(678mg、2mmol、4当量)、および(4S)-MeHex-OH(195mg、1.5mmol、3当量)を、90分間、DIPCDI(233μL、1.5mmol、および3当量;310μL、2mmol、4当量;ならびに388μL、2.5mmol、5当量)と、HOBt(230mg、1.5mmol、および3当量;307mg、2mmol、および4当量;ならびに395mg、2.5mmol、5当量)を用いて、上述のペプチジル-樹脂(実施例3)に連続して添加した。すべてのケースにおいて、90分のカップリング後、ニンヒドリン試験はネガティブであった。Fmoc基の除去と洗浄は、基本手順に記載のように実施した。
【0066】
(4S)-MeHex-D-Val-Thr(tBu)-Val-D-Val-D-Pro-Orn(Boc)-D-allo-Ile-D-allo-Thr(Val-Z-Dhb-Phe-Alloc)-D-allo-Ile-D-Val-O-TrtCl-樹脂:
Arの雰囲気下、PhSiH3(617μL、5mmol、10当量)の存在下において、Alloc基をPd(PPh3)4(58mg、0.05mmol、0.1当量)で除去した。DMF(1.25mL)中にAlloc-Phe-Z-Dhb-OH(666mg、2mmol、4当量)とHOAt(273mg、2mmol、4当量)を溶解し、ペプチジル樹脂に添加した。次いで、DIPCDI(310μL、2mmol、4当量)を添加した後、混合物を5時間撹拌した。この場合、ニンヒドリン試験はネガティブであった。DMFとCH2C12で洗浄した後、ペプチジル樹脂のアリコートをTFA-H2O(1:99)で1分間処理し、生成物をMALDI-TOF-MS(C88H146N146O21の計算値、1,736.18)で特性決定した。実測値:m/z 1,758.67 [M+Na]+、1,774.62 1,618.2 [M+K]+
【0067】
(4S)-MeHex-D-Val-Thr(tBu)-Val-D-Val-D-Pro-Orn(Boc)-D-allo-Ile-D-allo-Thr(Val-Z-Dhb-Phe-H)-D-allo-Ile-D-Val-OH:
DMFとCH2C12で洗浄した後、Arの雰囲気下、PhSiH3(617μL、5mmol、10当量)の存在下において、Alloc基をPd(PPh3)4(58mg、0.05mmol、0.1当量)で除去した。保護ペプチドをTFA-CH2Cl2(1:99)(5×30秒)により樹脂から切り離した。濾液をH2O(4mL)で回収し、H2Oを部分的にロータベーパー(rotavapor)中で除去した。次いで、ACNを添加してH2O除去中に出現した固形物を溶解し、その溶液を凍結乾燥して表題化合物639mg(387μmol、収率77%)を得た。HPLC(条件A、tR10.5分)によって確認したところ、純度は>95%であった。
【0068】
(4S)-MeHex-D-Val-Thr-Val-D-Val-D-Pro-Orn-D-allo-Ile-cyclo(D-allo-Thr-D-allo-Ile-D-Val-Phe-Z-Dhb-Val)=(4S)メチルヘキサン酸KF
保護ペプチド(実施例6)(639mg、387μmol)をCH2Cl2(390mL、1mM)中に溶解し、HOBtを溶解するための最少量のDMF中に溶解したHOBt(237mg、1.55mmol)、DIEA(203μL、1.16mmol、3当量)およびDIPCDI(240μL、1.55mmol、4当量)を添加した。この混合物を1時間撹拌し、次いで、環化ステップの経過をHPLCにより確認した。溶媒を減圧蒸発により除去した。保護環状ペプチドをTFA-H20(19:1、85mL)中に溶解し、この混合物を1時間撹拌した。溶媒を減圧蒸発により除去し、ジオキサンを添加し(30mL)、溶媒を減圧蒸発により除去し(この方法は3回繰り返した)、次いで、H2O(40mL)を添加し、凍結乾燥した。粗生成物をHPLC(Kromasil C8 5μm、205×50mm)、水(+0.05%TFA)に溶解した定組成44%アセトニトリル(+0.05%TFA)、55mL/h、220nmでの検出により精製し、表題生成物(192mg、0.13mmol、収率26%、92.3%)を得た。MALDI-TOF-MS、C75H124N14O16の計算値、1,477.9。実測値:m/z 1,500.12 [M+Na]+、1,515.97 [M+K]+。本化合物の1H-NMR(2.5mM、500MHz、H2O-D2O(9:1))のスペクトルを表Iに示す。
【0069】
【表1】

【0070】
1H-NMR分光分析[1H、NOESY、TOCSY(278K)]は、Varian Unity Plus (500MHz)で実施した。ケミカルシフト(d)は、TMSを基準として低磁場側にppmで表される。カップリング定数は、ヘルツで表される。
【0071】
(実施例2)
〈(4R)-メチルヘキサン酸KFの調製〉
適当なステップで(4S)-MexHexを(4R)-MexHexに置き換えるという点を除いて、樹脂1gから開始し、実施例1に記載の実験手順を実施した。生成物(220mg、0.15mmol、30%、純度92.3%)は、ES-MS、C75H124N14O16、1,477.9で特性決定した。実測値:m/z 1,499.07 [M+Na]+、1,514.94 [M+K]+
【0072】
(実施例3)
〈in vitroにおける細胞障害活性〉
これらのアッセイの最終目的は、試験対象のサンプルに細胞を連続曝露する手段によって、「in vitro」の腫瘍細胞培養物の増殖を阻害することである。
【0073】
細胞系
名称 ATCC番号 種 組織 特性
P-388 CCL-46 マウス 腹水 リンパ腫
K-562 CCL-243 ヒト 白血病 赤白血症(胸水)
A-549 CCL-185 ヒト 肺 肺癌「NSCL」
SK-MEL-28 HTB-72 ヒト 黒色腫 悪性黒色腫
HT-29 HTB-38 ヒト 結腸 結腸腺癌
LoVo CCL-229 ヒト 結腸 結腸腺癌
LoVo-Dox ヒト 結腸 結腸腺癌(MDR)
SW620 CCL-228 ヒト 結腸 結腸腺癌(リンパ節転移)
DU-145 HTB-81 ヒト 前立腺 前立腺癌、
アンドロゲン受容体でない
LNCaP CRL-1740 ヒト 前立腺 前立腺腺癌
アンドロゲン受容体を伴う
SK-BR-3 HTB-30 ヒト 乳癌 乳腺癌、Her2/neu+、(胸水)
MCF-7 HTB-22 ヒト 乳癌 乳腺癌(胸水)
MDA-MB-231 HTB-26 ヒト 乳癌 乳腺癌、Her2/neu+、(胸水)
IGROV-1 ヒト 卵巣 卵巣腺癌
IGROV-ET ヒト 卵巣 ET-743耐性細胞であることを 特徴とする卵巣腺癌
SK-OV-3 HTB-77 ヒト 卵巣 卵巣腺癌(悪性腹水)
OVCAR-3 HTB-161 ヒト 卵巣 卵巣腺癌
HeLa CCL-2 ヒト 頚部 頚部類上皮癌
HeLa-APL CCL-3 ヒト 頚部 アプリジン耐性細胞である ことを特徴とする頚部類上 皮癌
A-498 HTB-44 ヒト 腎臓 腎癌
PANC-1 CRL-1469 ヒト 膵臓 膵臓類上皮癌
HMEC1 ヒト 内皮
【0074】
スルホローダミンB(SRB)反応を用る比色定量タイプのアッセイは、細胞増殖と生存率の定量測定に適当であるとされている[Philip Skehanら、(1990)、「New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer drug screening」、J. Natl. Cancer Inst., 82: 1107-1112で記載の技術以降]。
【0075】
このアッセイの形態は、直径9mmの96ウェル細胞培養マイクロプレートを用いる(Faircloth、1988; Mosmann、1983)。細胞系のほとんどは、異なるヒトの癌タイプに由来した、American Type Culture Collection (ATCC)から入手したものである。
【0076】
0.1g/lのペニシリンと0.1g/lの硫酸ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640 10%FBS中に細胞を保持し、次いで、37℃、5%CO2および湿度98%でインキュベートする。この実験において、細胞はトリプシンを用いてサブコンフルエント培養物から回収し、プレーティング前に新しい培地中に再懸濁した。
【0077】
細胞は、195μl培地のアリコート中、1ウェル当たり5×103細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに播種する。細胞は、18時間薬剤非含有培地中で増殖させることによりプレート表面に接着し得る。その後、サンプルをDMSO/EtOH/PBS(0.5:0.5:99)中に溶解し、5μlのアリコートを10〜10-8μg/mlの範囲で添加する。48時間曝露した後、抗腫瘍作用をSRB法によって測定する。すなわち、50%(wt/vol)氷冷トリクロロ酢酸(TCA)50μlを添加し、4℃で60分間インキュベートすることにより細胞を固定する。プレートを脱イオン水で洗浄し乾燥する。SRB溶液100μl(1%酢酸中0.4%wt/vol)を各マイクロタイターウェルに添加し、室温で10分間インキュベートする。未結合のSRBを1%酢酸で洗浄して除去する。プレートを風乾し、結合している細胞株をトリス緩衝液で可溶化する。吸光度は490nmの単一波長で自動分光測光プレートリーダーにより測定する。
【0078】
三連のウェルから得たデータの平均+/-SD値を算出する。細胞応答に関するいくつかのパラメーターは計算することができる:GI=増殖阻害、TGI=総増殖阻害(細胞増殖抑制作用)、およびLC=細胞致死(細胞毒性)。
【0079】
結果を表IIに示すが、化合物間に有意な差はない。
【0080】
【表2】

【0081】
(実施例4)
〈in vitroにおける毒性〉
正常細胞に対する薬剤の細胞毒性を評価するために、本発明者らは、ウェルにつき5000個の細胞密度で、ATCCの指示により維持した正常細胞系(AML-12(正常マウス肝細胞)およびNRK-52E(正常ラット腎臓細胞))で播種されている96ウェルプレートを用いた。各プレート中の細胞は一晩静置し、その後、試験薬剤を添加した。各ウェル(100μl培地)に対し、培地に溶解した薬剤10μlを濃度を変えて(最終濃度1×10-10〜0.01mg/ml)添加し、さらに、5%CO2、37℃で一晩インキュベートした。すべての試験は少なくとも3回繰り返し、複数回アッセイした。24時間後、MTSアッセイ(CellTiter 96、水溶性)を製造業者(Promega)の指示に従って(すべての細胞タイプについて)実施した。細胞生存率(ミトコンドリア活性)は、ホルマザン基質の酵素変換によって測定する。
【0082】
表IIIの結果から明らかであるように、化合物5-メチルヘキサン酸KFと(4S)-メチルヘキサン酸KFの間に有意な差はない。
【0083】
【表3】

【0084】
(実施例5)
〈CD-1マウスおよび無胸腺動物におけるin vivoでのMTD〉
最大耐量(MTD)は、CD-1マウスと無胸腺マウス(雄雌両マウス)において、各薬剤につき、単回ボーラス投与後と、5回の毎日投与(5DD)後に測定する。結果を表IVに示すが、化合物5-メチルヘキサン酸KFと(4S)-メチルヘキサン酸KFの間に有意な差はない。
【0085】
【表4】

【0086】
(実施例6)
〈胸部異種移植片におけるin vivoでの効果(5DD)〉
最大耐量(MTD)の4分の3濃度における5-メチルヘキサン酸KFおよび(4S)-メチルヘキサン酸KFの各効果は、メス無胸腺マウスを用いて、連続5日間(すなわち、QD×5)静脈内(iv)ボーラス注射の用法を行った後(0〜4日)、胸部異種移植片を分析した。各化合物は、ビヒクル[Cremophor-EL/エタノール/水(5:5:90)]に溶解した新鮮な調製バイアル溶液として提供した。(QD×5スケジュールの)各日用量は、動物20グラム当たり0.2mlの注射用量で静注により投与した。
【0087】
ビヒクル対照群に対する対応治療群の最終的な腫瘍増殖の評価(すなわち、%ΔT/ΔC)によると、すべての群において最低値(最適値)は薬物治療開始後3日目に得られることが明らかとなった。さらに、ペアワイズ(pair-wise)統計分析(Mann-Whitneyの非母数方法を用いる)によれば、この2つの化合物の間には、非常に類似している構造である点と前の実施例の見解からすると予期されない有意な効果の差があることが明らかとなった。
【0088】
ここに記載の効果試験と前に実施した毒性試験(実施例4)に基づくと、少なくとも1.33の治療係数(1×MTD/0.75×MTD、薬剤が毒性である場合の用量/薬剤が有効である場合の用量)を(4S)-メチルヘキサン酸KFに割り当てることができる。さらに、生物学的関連の所見としては、胸部における(4S)-メチルヘキサン酸KFは、比較の同一MTD用量での前立腺異種移植片(実施例7)に比べて抗腫瘍効果が持続して長かった。要約すると、(4S)-メチルヘキサン酸KFは、胸部異種移植片においてより効果のある異性体であることが明らかであり、かつその生物学的作用の持続期間は、(4S)-メチルヘキサン酸KFがこのタイプの腫瘍において長期にわたって持続効果を有していることを示唆している。
【0089】
【表5】

【0090】
(実施例7)
〈前立腺異種移植片におけるin vivoでの効果(5DD)〉
1回用量における5-メチルヘキサン酸KFおよび(4S)-メチルヘキサン酸KFの各効果は、オス無胸腺マウスを用いて、連続5日間(すなわち、QD×5)静脈内(iv)ボーラス注射の用法を行った後(0〜4日)、前立腺異種移植片を分析した。各化合物は、ビヒクル[Cremophor-EL/エタノール/水(5:5:90)]に溶解した新鮮な調製バイアル溶液として提供した。(QD×5用法の)各日用量は、動物20グラム当たり0.2mlの注射用量で静注により投与した。
【0091】
ビヒクル対照群に対する対応治療群の最終的な腫瘍増殖の評価(すなわち、%ΔT/ΔC)によると、すべての群において最低値(最適値)は薬物治療開始後3日目に得られることが明らかになった。さらに、ペアワイズ(pair-wise)統計分析(Mann-Whitneyの非母数方法を用いる)によれば、有意な効果は262μg/kg/日用量の(4S)-メチルヘキサン酸KFで達成されることが明らかとなった。ここに記載の効果試験と前に実施した毒性試験(実施例4)に基づくと、少なくとも1.33の治療係数(1×MTD/0.75×MTD、薬剤が毒性である場合の用量/薬剤が有効である場合の用量)を(4S)-メチルヘキサン酸KFに割り当てることができる。結果を下表VIに挙げる。
【0092】
【表6】

【0093】
(実施例8)
〈ヒト腫瘍細胞系のパネルを用いての中空糸中のカハラリドF類似体の抗腫瘍活性〉
上述のカハラリドF類似体の抗腫瘍活性について、ヒト腫瘍細胞系のパネル、すなわちSK-Hep-1(肝臓癌)、HepG2(肝細胞癌)、Panc-1(膵臓癌)およびMel-28(黒色腫)を用いて、中空糸(HF)系で試験した。ヒト腫瘍細胞をin vitroでHF中に封入した後、in vivoでメス無胸腺マウス内へ移植した。
【0094】
5-メチルヘキサン酸KFおよび(4S)-メチルヘキサン酸KFの用量は、無胸腺マウスで実施した先のMTD試験に基づいて選択し、325μg/kg/日の用量を得た(実施例5を参照)。連続する1日5回の投与を動物20グラム当たり0.2mlの注射用量で腹腔内(ip)投与した。
【0095】
全体として、KF-4(S)-Metは、肝臓癌(sc)、肝細胞癌(ipとscの両方)、膵臓癌(ip)に対して統計的に有意な抗腫瘍活性を示し、膵臓癌および黒色腫ではsc区画で有意な(すなわち、P=0.059)傾向にあることが示唆された。一方、KF-5-Metは、ごくわずかの腫瘍タイプ、すなわち膵臓癌(ipとscの両方)および黒色腫(sc)でのみ活性であったが、試験した肝臓癌のすべてのタイプで活性ではなかった。この結果の要約を下表に挙げるが、これによれば、化合物間の相違が明白である。
【0096】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】

の化合物、ならびにその製薬上許容される塩、プロドラッグ、互変異性体および溶媒和物。
【請求項2】
式2:
【化2】

を有する化合物、ならびにその製薬上許容される塩、プロドラッグ、互変異性体および溶媒和物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物と、製薬上許容される担体、ビヒクルまたは希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項4】
癌または乾癬に罹患している任意の哺乳動物、好ましくはヒトを治療する方法であって、前記罹患個体に治療上有効な量の請求項1または2に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項5】
哺乳動物がヒトであり、かつ癌に罹患している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
患者が、他の治療に好反応しない難治性癌に罹患している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
癌が、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、黒色腫、結腸直腸癌、腎臓癌、卵巣癌、NSCL癌、上皮癌、膵臓癌、およびHer2/neu発癌遺伝子を過剰発現する腫瘍から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
薬剤の製造における請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項9】
癌、乾癬、ウイルス感染または真菌感染の治療用薬剤の製造における請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1または2に記載の化合物を含む医薬組成物を含有する容器と、これとは別の再溶解剤を含有する容器とを含むキット。
【請求項11】
請求項1または2に記載の化合物の調製方法。
【請求項12】
出発原料として4-メチルヘキサン酸を用いることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(4S)-メチルヘキサン酸を用いることを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2006−517195(P2006−517195A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501483(P2005−501483)
【出願日】平成15年10月20日(2003.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/033207
【国際公開番号】WO2004/035613
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505036641)ファーマ・マール・エス・アー・ウー (11)
【Fターム(参考)】