説明

新規な栄養補助組成物

本発明は、1種のアミノ酸とタンパク質加水分解物とを含む組成物を記載している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な栄養補助組成物に関する。
【0002】
糖尿病は、これまで治療法がなかった一般に広まっている慢性疾患である。糖尿病の発生率と有病率は急激に増加しており、糖尿病は、先進国および発展途上国で最も一般的な代謝性疾患の1つである。糖尿病は、多くの病原体を原因とする複雑な疾患であり、インスリン分泌および/またはインスリン耐性の障害に関連する、炭水化物、タンパク質および脂肪の代謝障害を特徴とする。これにより、空腹時および食後の血中グルコース濃度が高まり、処置せずにおくと合併症を招く。この疾患の主な分類は2つあり、インスリン依存性糖尿病(IDDM、T1DM)とインスリン非依存性糖尿病(NIDDM、T2DM)である。T1DMは1型糖尿病であり、T2DMは2型糖尿病である。
【0003】
T1DMおよびT2DM糖尿病は、高血糖、高コレステロール血および高脂血に関連している。T1DMおよびT2DMのそれぞれにおける、絶対的インスリン欠乏およびインスリン不感受性は、肝臓、筋肉および脂肪組織によるグルコース利用の減少と、血糖値の上昇とを招く。コントロール不良の高血糖は、腎症、神経障害、網膜症、高血圧症、卒中および心臓病を含む、微小血管疾患および大血管疾患のリスク上昇に起因する死亡率の増加および早死にに結び付く。厳しい血糖コントロールがT1DMおよびT2DMの両方のこれらの合併症の予防の主な要因であることが最近実証された。したがって、薬剤または治療レジメンによる最適な血糖コントロールが、糖尿病の処置のための重要な手法である。
【0004】
T2DMの治療法は初めに、食習慣および生活習慣の変化を伴い、これらの手段が十分な血糖コントロールを維持できない場合、患者は経口血糖降下薬および/または体外からのインスリンによって処置される。T2DMの処置のためのこの経口薬剤としては、インスリン分泌を高めるもの(スルホニル尿素剤)、インスリンの肝臓への作用を改善するもの(ビグアニド剤)、インスリン感作剤(チアゾリジンジオン)およびグルコースの取込みを阻害する働きをする試剤(α−グルコシダーゼ阻害剤)が挙げられる。しかし、現在入手可能な試剤は一般に、高血糖、膵臓細胞機能の進行性低下から生じる高血糖の進行性悪化のため、長期間にわたって十分な血糖コントロールを維持できない。目標血糖値を維持できる患者の割合は、追加の/代替の薬剤の投与を必要とする時間が経つにつれ著しく低下する。さらに、薬剤には望ましくない副作用がある場合があり、高い一次的および二次的な事故発生率(failure rate)に結び付く。最後に、血糖降下薬の使用は、血糖値をコントロールするのに有効であり得るが、糖尿病の全ての合併症を予防することはできない。このため、全てのタイプの糖尿病のための現在の処置方法は、正常血糖および糖尿病性合併症の予防という理想を実現することはできない。
【0005】
したがって、T1DMおよびT2DMの処置における最適な治療法は、インスリンおよび経口血糖降下薬の投与に基本的に基づくものであるが、糖尿病の処置および予防のための副作用が最小限の安全で有効な栄養補助サプリメントに対する必要性がある。多くの患者は、高用量の薬剤に付随する副作用を最小限に抑えるとともに付加的な臨床的有益性をもたらし得る代替の治療法に関心がある。糖尿病の患者は、補助療法として用いることが可能な、抗糖尿病作用が緩やかで主な副作用がない「自然療法」として認識されている処置に特に関心がある。T2DMは、進行性の慢性疾患であり、通常、インスリンの生成に関与する膵臓細胞(ランゲルハンス島のβ細胞)にかなりの損傷が発生するまで認識されない。したがって、β細胞の損傷を防止し、ゆえに、リスクのある人、特にT2DMを発症するリスクの高い高齢者におけるT2DMの顕性化の進行を防止するのに用い得る食餌サプリメントの開発がますます関心を集めている。グルコースおよび脂質がβ細胞に損傷作用を及ぼすため、膵臓のβ細胞の保護は、血糖値および/または血中脂質値を低下させることによって行われ得る。血糖値の低下は、様々な機構によって、例えば、インスリン感受性を高めることによって、および/または肝臓におけるグルコースの産生を低減することによって達成され得る。また、血中脂質値の低下は、様々な機構によって、例えば脂質酸化および/または脂質貯蔵を高めることによって達成され得る。膵臓のβ細胞を保護するための別の可能な戦略は、酸化的ストレスを低減することであろう。酸化的ストレスはまたβ細胞の損傷を引き起こし、その結果インスリン分泌の減少およびT2DMの顕性化の進行が伴われる。
【0006】
したがって、T2DMは、多くの器官部位における合併した障害(すなわち、筋肉および脂肪組織におけるインスリン作用に対する耐性、膵臓のインスリン分泌の障害、肝臓におけるグルコースの産生の非抑制性)に起因する合併疾患である。それらの障害は、脂質異常および内皮機能不全に関連していることが多い。T2DMに多くの病態生理学的障害がある場合、併用療法が、その管理の代わりとなる手法である。
【0007】
本発明は、タンパク質加水分解物とロイシンとを含む新規な栄養補助組成物に関する。ロイシンを含む栄養補助組成物は、糖尿病あるいはX症候群および肥満などの耐糖能異常に関連する他の病態の処置または予防のための有効成分として、加水分解されていないタンパク質および炭水化物も含み得る。別の態様では、本発明は、前記処置または予防のための栄養補助サプリメントとして、例えば、正常な代謝機能の維持に不可欠であるが体内で合成されないビタミンおよびミネラルを含むマルチビタミン調製物への添加物としてのかかる組成物の使用に関する。さらに別の態様では、本発明は、1型および2型糖尿病の両方の処置、ならびに糖尿病前症または耐糖能異常(IGT)または肥満を患う個体におけるT2DMの予防のための方法に関し、該方法は、かかる処置を必要とする対象に対して、ロイシンおよびタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質および/または炭水化物を投与することを含む。
【0008】
本発明の組成物は、特に、T1DMおよびT2DMの両方の処置、ならびに糖尿病前症または耐糖能異常(IGT)または肥満を患う個体におけるT2DMの予防を特に目的とするものである。
【0009】
本発明は、1種のアミノ酸とタンパク質加水分解物とを含む組成物に関する。好ましくは、1種のアミノ酸はロイシンである。1種のアミノ酸または1種のアミノ酸はロイシンであるとは、本明細書では、本発明による使用を目的とした組成物または成分中に存在するアミノ酸のうち、存在するアミノ酸の少なくとも70重量%が1種のアミノ酸(ロイシンなど)であり、存在するアミノ酸の好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%が1種のアミノ酸であり、30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満の他のアミノ酸が存在することと理解される。1種のアミノ酸、好ましくはロイシンとタンパク質加水分解物との組合せは、好ましくは2型糖尿病または糖尿病前症のために血液中の血漿インスリンを増加させるのに用いられるのが有利である。
【0010】
意外なことに、この加水分解物と組み合わされた1種のアミノ酸を、好ましくは食後のグルコース濃度を低下させるかまたは食後の血中インスリン分泌を高めるために、2型糖尿病または糖尿病前症のために使用できることが分かった。意外なことに、ロイシンと加水分解物との組合せを使用することにより、例えばロイシンおよびフェニルアラニンなどの2種のアミノ酸と加水分解物との組合せと等しいかまたはそれより良好な結果さえ得られることが分かった。
【0011】
有効成分、すなわちロイシンとタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質および/または炭水化物との組合せを含む組成物は、相乗的にインスリン分泌を促進し、脂肪組織、骨格筋および肝臓などのインスリン感受性標的組織に対する糖処理を向上させ、それによって糖尿病の処置において相乗効果をもたらす。
【0012】
本明細書において使用する際の栄養補助という用語は、栄養上の分野および医薬分野の用途の両方における有用性を示している。したがって、新規な栄養補助組成物は、食品および飲料に対するサプリメントとして、ならびに、カプセルまたは錠剤などの固形剤あるいは溶液または懸濁液などの液剤であり得る、腸内または非経口の適用のための医薬製剤として使用され得る。上記から明らかであろうように、栄養補助組成物という用語はまた、ロイシンとタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質および/または炭水化物を含有する食品および飲料、ならびに上記有効成分を含有するサプリメント組成物を含む。
【0013】
タンパク質加水分解物は、タンパク源を1つのプロテアーゼまたはプロテアーゼの組合せを用いてインキュベートすることによって調製され得る。かかるプロテアーゼは、エンドプロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、またはジ−およびトリ−アミノペプチダーゼを含むがこれらに限定されない任意のタイプのプロテアーゼであってもよい。
【0014】
タンパク源は、基本的に任意のタンパク源であり得る。好ましい源は、カゼインまたはホエータンパクである。本発明によるホエータンパクを含む組成物は、乳汁、クリームおよび乳清などのホエータンパクを含む任意の組成物であり得る。ホエータンパク調製物は、ホエータンパク濃縮物(WPC)およびホエータンパク単離物(WPI)などのいくつかの形態で市販されている。また、加水分解に適したタンパク質基質としては、全乳、脱脂乳、酸カゼイン、レンネットカゼイン、酸ホエー製品、または乳清製品が挙げられる。また、小麦グルテン、粉砕大麦、および例えば、ダイズ、コメ、またはトウモロコシから得られるタンパク分屑のような植物基質が、適した基質である。
【0015】
タンパク質加水分解物は、該タンパク質基質を、1種のタンパク質分解酵素、または複数のタンパク質分解酵素の組合せと接触させることによって調製され得る。2種以上のプロテアーゼが用いられる場合に、これらのプロテアーゼは、タンパク質基質に同時に添加可能である。あるいは、プロテアーゼは、所定の順序でタンパク質に添加可能である。任意選択的に、次のプロテアーゼの添加の前に、加水分解プロセスの比較的早い段階で用いられた1種または複数のプロテアーゼの不活性化が行われる。かかる不活性化は、様々な方法で行われてもよく、最適な方法は、不活性化される必要のあるプロテアーゼに依存している。不活性化処理としては、熱処理およびpHの変更が挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、市販の加水分解物を用いることができる。
【0016】
タンパク質基質の加水分解度(DH)は重要なパラメータである。タンパク質加水分解物のために実現することが可能なDHは、具体的なプロテアーゼの選択、加水分解を進行させる時間、反応条件(pH、温度、塩濃度など)、およびプロテアーゼによって加水分解させる前のタンパク質基質の前処理を含むがこれらに限定されない多数のパラメータに依存している。本発明による方法に適した加水分解物のDHは、5〜50、好ましくは10〜40、より好ましくは15〜35の範囲であり得る。加水分解物は遊離アミノ酸を含有していてもよい。DHを決定するための方法は当業者には公知であり、例えば、チャーチ(Church)らによって記載されたOPA法がある(Anal Biochem(1985年)146、343頁)。
【0017】
加水分解物は、噴霧乾燥、限外ろ過、凍結乾燥、真空乾燥を含むがこれらに限定されない様々な方法でさらに処理することが可能である。乾燥した後、乾燥材料は、特定の粒度範囲の画分を得るために粉砕および/または篩過されてもよい。乾燥を促進するためか、または塊になる傾向または濡れ性などの乾燥された加水分解物の最終的な特性に影響を与えるために、化合物が加水分解物に添加されてもよい。
【0018】
本発明によれば、ロイシンおよびタンパク質加水分解物、あるいはロイシンおよび加水分解されていないタンパク質、あるいはロイシン、タンパク質加水分解物および炭水化物、あるいはロイシン、加水分解されていないタンパク質および炭水化物を含む組成物が、相乗的に膵臓のインスリン分泌を促進し、インスリン感受性標的組織に対する糖処理を向上させることが意外にも分かった。組成物の効果は、ロイシン、あるいはタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質、あるいは炭水化物が単独でもたらす効果を合わせることによって推定される予期された効果よりはるかに大きい。このように、ロイシン、およびタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質、および/または炭水化物を含む組成物は、相乗的に膵臓のインスリン分泌を促進し、インスリン感受性標的組織に対する糖処理を向上させる。したがって、ロイシン、およびタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質、および/または炭水化物を含む組成物は、T1DMおよびT2DMの両方の予防または処置、ならびに、糖尿病前症、耐糖能異常(IGT)または肥満を患う個体におけるT2DMの予防のために使用可能である。
【0019】
それぞれ異なる作用機序を有する、ロイシン、およびタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質、および/または炭水化物の組合せの使用は、糖尿病患者の目標血糖値を達成しそれを維持するのに有効である。
【0020】
上記で特定した有効成分の組合せは、その異なる作用のために、多器官への相乗的効果を利用するものと考えられた。この組合せは、個々の有効成分の別個の作用機序により、血糖コントロールを向上させるだけでなく、ある状況では薬剤用量を低減し、副作用をも最小限に抑える。それらの作用機序および作用部位が別個であることから、上記の食餌サプリメントの特定の組合せはまた、相乗効果を利用して、単一の試剤が達成可能であるよりも高いグルコース低下度を実現する。このように、T1DMおよびT2DMの治療処置の最適な治療法は基本的に、インスリンおよび経口血糖降下薬の投与に基づいているが、適切な栄養療法もまた、糖尿病の処置の成功のために主として重要なものである。
【0021】
ある食事において十分な量の必須栄養素不足分を得るために、マルチビタミンおよびミネラルサプリメントが、本発明の栄養補助組成物に添加されてもよい。マルチビタミンおよびミネラルサプリメントはまた、疾病の予防、ならびに、糖尿病で時として見られる生活習慣および不適切な日常的食習慣に起因する栄養の不足や欠乏の防止のために有用であり得る。また、酸化ストレスがインスリン耐性の形成に関係があるとされてきた。活性酸素種が、インスリン受容体のシグナル伝達カスケードを阻害することによって、インスリンに促進されるグルコースの取込みを妨げ得る。α−トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)などの抗酸化剤を用いた酸化ストレスのコントロールは、糖尿病の処置に有用であり得る。したがって、栄養の十分なバランスのとれた状態を維持するために、上述した作用物質にマルチビタミンサプリメントの摂取が加えられてもよい。
【0022】
1種のアミノ酸(好ましくはロイシン)およびタンパク質加水分解物の別の重要な用途は、グリコーゲンレベルを高める必要のある人のグリコーゲンレベルを高める、またはインスリン分泌を高める必要のある人のインスリン分泌を高めるための用途である。後者の用途は、例えば、運動選手または運動を行うその他の人に向けたものであり得る。タンパク質加水分解物およびアミノ酸(好ましくはロイシン)は、エネルギー補給物または代謝栄養素に使用するための添加剤として好適に用いられる。エネルギー補給物または代謝栄養素は、スポーツドリンク、栄養飲料または他の清涼飲料などの飲料、あるいは運動選手またはグリコーゲンレベルまたはインスリン産生を高める必要のある別の人に適した任意の他の栄養調製物の形態をとることが可能である。エネルギー補給物または代謝栄養素は、好ましくは経口摂取できる形態である。グリコーゲンレベルまたはインスリン分泌を高めることは、例えば、グリコーゲン蓄積の再形成を早め、損傷した筋肉タンパク質の再形成を早めることにつながる。
【0023】
スポーツドリンクは、運動選手の水分補給を助けるとともに、電解質、糖および他の栄養素を回復させるための飲料である。スポーツドリンクは通常、等張性である。つまり、スポーツドリンクは人体で見られるのと同じ割合の栄養素を含有している(出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Sports_drink)。
【0024】
栄養飲料は、使用者に活力を与えることを目的とした、(合法の)興奮剤、ビタミン(特にビタミンB群)およびミネラルを含有する飲料である。一般的な成分としては、カフェイン、ガラナ(ガラナの木から抽出したカフェイン)、タウリン、様々な形態の朝鮮人参、マルトデキストリン、イノシトール、カルニチン、クレアチン、グルクロノラクトンおよびイチョウが挙げられる。高いレベルの糖またはグルコースを含有するものがあってもよい。多くのかかる飲料は、着香および/または着色される(出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Energy_drink)。
【0025】
清涼飲料は、アルコールを含有する酒類に対して、アルコールを含有しない飲料である。一般に、この用語は冷たい飲料のみに用いられる。ホットチョコレート、茶およびコーヒーは清涼飲料とみなされていない。この用語は元々炭酸飲料だけを指すものであり、今でもこの用法で普通に用いられている(出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Soft_drink)。
【0026】
本発明の好ましい態様では、本発明の栄養補助組成物は、ロイシンおよびタンパク質加水分解物を含有する。ロイシンは好適には、本発明による組成物中に、1日の投与量が、投与しようとする対象の体重1kg当たり約0.001gから体重1kg当たり約1gまでとなるような量で存在する。食品または飲料は好適には、1回分当たり約0.05gから1回分当たり約50gまでのロイシンを含有する。栄養補助組成物が医薬調製物である場合、かかる製剤は、投与ユニット(例えば、カプセルまたは錠剤)当たり約0.001g〜約1gの量のロイシン、あるいは1日の投与量当たり約0.035gから1日の投与量当たり約70gの液剤を含有し得る。タンパク質加水分解物は好適には、本発明による組成物中に、1日の投与量が、投与しようとする対象の体重1kg当たり約0.01gから体重1kg当たり約3gまでとなるような量で存在する。食品または飲料は好適には、1回分当たり約0.1gから1回分当たり約100gまでのタンパク質加水分解物を含有する。栄養補助組成物が医薬調製物である場合、かかる製剤は、投与ユニット(例えば、カプセルまたは錠剤)当たり約0.01g〜約5gの量のタンパク質加水分解物、あるいは1日の投与量当たり約0.7gから1日の投与量当たり約210gまでの液剤を含有し得る。
【0027】
本発明の別の好ましい態様では、該組成物は、上記で規定したロイシンおよび加水分解されていないタンパク質を含有する。加水分解されていないタンパク質は好適には、本発明による組成物中に、1日の投与量が、投与しようとする対象の体重1kg当たり約0.01gから体重1kg当たり約3gまでとなるような量で存在する。食品または飲料は好適には、1回分当たり約0.1gから1回分当たり約100gまでの加水分解されていないタンパク質を含有する。栄養補助組成物が医薬調製物である場合、かかる製剤は、投与ユニット(例えば、カプセルまたは錠剤)当たり約0.01g〜約5gの量の加水分解されていないタンパク質、あるいは1日の投与量当たり約0.7gから1日の投与量当たり約210gまでの液剤を含有し得る。
【0028】
本発明のさらに別の好ましい態様では、該組成物は、ロイシン、およびタンパク質加水分解物または上記で規定した加水分解されていないタンパク質、および炭水化物を含有する。炭水化物は好適には、本発明による組成物中に、1日の投与量が、投与しようとする対象の体重1kg当たり約0.01gから体重1kg当たり約7gまでとなるような量で存在する。食品または飲料は好適には、1回分当たり約0.5gから1回分当たり約200gまでの炭水化物を含有する。栄養補助組成物が医薬調製物である場合、かかる製剤は、投与ユニット(例えば、カプセルまたは錠剤)当たり約0.05g〜約10gの量の炭水化物、あるいは1日の投与量当たり約0.7gから1日の投与量当たり約490gまでの液剤を含有し得る。
【0029】
本発明の好ましい栄養補助組成物は、ロイシン、およびタンパク質加水分解物または加水分解されていないタンパク質、および/または炭水化物、特に以下の組合せ:
ロイシンおよびタンパク質加水分解物;
ロイシンおよびタンパク質加水分解物および炭水化物;
ロイシンおよび加水分解されていないタンパク質;
ロイシンおよび加水分解されていないタンパク質および炭水化物;を含み、
最も好ましいのは、ロイシンおよびタンパク質加水分解物の組合せである。
【0030】
投与量範囲(70kgの人に対して)
ロイシン:1日当たり0.005〜70g
タンパク質加水分解物:1日当たり0.07〜210g
加水分解されていないタンパク質:1日当たり0.07〜210g
炭水化物:1日当たり0.1〜490g
【0031】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものである。
【0032】
医薬組成物は、以下に規定される成分を用いた従来の配合手順によって調製され得る。
【0033】
実施例1
軟ゼラチンカプセル
軟ゼラチンカプセルは、以下に規定される成分を用いた従来の手順によって調製される。
有効成分:ロイシン0.1g、タンパク質加水分解物0.3g
他の成分:グリセロール、水、ゼラチン、植物油
【0034】
実施例2
硬ゼラチンカプセル
硬ゼラチンカプセルは、以下に規定される成分を用いた従来の手順によって調製される。
有効成分:ロイシン0.3g、タンパク質加水分解物0.7g
他の成分:
充填剤:ラクトースまたはセルロースまたはセルロース誘導体適量
潤滑剤:必要に応じてステアリン酸マグネシウム(0.5%)
【0035】
実施例3
錠剤
錠剤は、以下に規定される成分を用いた従来の手順によって調製される。
有効成分:ロイシン0.4g、加水分解されていないタンパク質0.4g
他の成分:微結晶性セルロース、二酸化ケイ素(silicone dioxide)(SiO)、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム.
【0036】
B.食品は、以下に規定される成分を用いた従来の手順によって調製され得る。
【0037】
実施例4
果汁30%の清涼飲料
通常の1回分の量:240mL
有効成分:
ロイシンおよびタンパク質加水分解物、および炭水化物源としてマルトデキストリンがこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:1回分当たり0.5〜5g
タンパク質加水分解物:1回分当たり1.5〜15g
マルトデキストリン:1回分当たり3〜30g
【0038】
I.清涼飲料化合物は、以下の成分から調製される。
濃縮果汁および水溶性の香料
【0039】
1.1 濃縮オレンジ
[g]
ブリックス60.3°、酸味5.15%:657.99
濃縮レモン
ブリックス43.5°、酸味32.7%:95.96
オレンジ香料(水溶性) :13.43
アンズ香料(水溶性) :6.71
水 :26.46
【0040】
1.2 着色料
β−カロテン10% CWS :0.89
水 :67.65
【0041】
1.3 酸および抗酸化剤
アスコルビン酸 :4.11
クエン酸無水物 :0.69
水 :43.18
【0042】
1.4 安定化剤
ペクチン :0.20
安息香酸ナトリウム :2.74
水 :65.60
【0043】
1.5 油溶性香料
オレンジ香料(油溶性) :0.34
希釈されたオレンジ油 :0.34
【0044】
1.6 有効成分
有効成分(これは、上記の有効成分、すなわち、上記の濃度のロイシンおよびタンパク質加水分解物、およびマルトデキストリンを意味する)
【0045】
濃縮果汁および水溶性の香料を、空気を導入せずに混合する。着色料を脱イオン水に溶解させる。アスコルビン酸およびクエン酸を水に溶解させる。安息香酸ナトリウムを水に溶解させる。ペクチンを攪拌しながら添加し、沸騰させながら溶解させる。溶液を冷ます。オレンジ油および油溶性香料を予混合する。1.6の上記の有効成分を乾式混合し、その後、好ましくは濃縮果汁混合物(1.1)中へと攪拌する。
【0046】
清涼飲料化合物を調製するために、タラックス(Turrax)および次いで高圧ホモジナイザー(p=200バール、p=50バール)を用いて均質化の前に全てのパート3.1.1〜3.1.6を一緒に混合する。
【0047】
II.瓶詰めシロップは以下の成分から調製される。
[g]
清涼飲料化合物 :74.50
水 :50.00
糖シロップ、ブリックス60° :150.00
【0048】
瓶詰めシロップの成分を一緒に混合する。瓶詰めシロップを水で希釈して、1Lのそのまま飲める(ready to drink)飲料にする。
【0049】
変形例:
安息香酸ナトリウムを用いる代わりに、飲料を殺菌してもよい。また、飲料を炭酸にしてもよい。
【0050】
実施例5
五穀パン
通常の1回分の量:50g
有効成分:
ロイシンおよび加水分解されていないタンパク質および炭水化物(五穀粉の形態)がこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:1回分当たり0.5〜5g
加水分解されていないタンパク質:1回分当たり1.5〜15g
【0051】
他の成分 :[%]
五穀粉(炭水化物源) :56.8
水 :39.8
酵母 :2.3
塩 :1.1
【0052】
酵母を1部の水に溶解させる。全ての成分を一緒に混合して生地を形成する。混練時間の最後に塩を添加する。発酵させた後、生地をこね直し、分割して1塊のパンを形成する。焼く前に、パンの塊の表面に刷毛で水を塗り、粉を振り掛ける。
【0053】
手順:
混練:
菊練り(Spiral kneading)システム:第1ギアで4分間、第2ギアで5分間
生地の発酵:60分間
生地の温度:22〜24℃
発酵時間:30分間
焼成:
オーブン:ダッチオーブン
焼成温度:250/220℃
焼成時間:50〜60分間
【0054】
実施例6
クッキー(ミラノタイプ)(Type Milano)
通常の1回分の量:30g
有効成分:
ロイシンおよびタンパク質加水分解物および炭水化物(小麦粉、タイプ550の形態)がこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:1回分当たり0.3〜3g
タンパク質加水分解物:1回分当たり0.9〜9g
【0055】
他の成分 :[g]
小麦粉、タイプ550(炭水化物源) :41.0
糖 :20.5
脂肪/バター :20.5
全卵(液) :18.0
レモン香料 :適量
ベーキング剤 :適量
【0056】
全ての成分を混合しながらゆっくりと添加し、甘いショートペストリーを形成する。
【0057】
その後、ペストリーを少なくとも2時間保冷(4℃)にしてから、ペストリーを厚さ約5mmに引き伸ばす。クッキー片を型抜きし、焼成する前に表面に刷毛で卵黄を塗る。
【0058】
焼成:
オーブン:ファンオーブン
焼成温度:180℃
焼成時間:15分間
【0059】
実施例7
トースト
通常の1回分の量:100g
有効成分:
ロイシンおよび加水分解されていないタンパク質および炭水化物(小麦粉、タイプ550の形態)がこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:1回分当たり0.6〜6g
タンパク質加水分解物:1回分当たり1.8〜18g
【0060】
他の成分 :[%]
小麦粉、タイプ550(炭水化物源):55.4
水 :33.2
酵母 :2.8
塩 :1.1
脂肪/バター :5.5
モルト :0.6
乳化ベーキング剤 :1.4
【0061】
酵母を1部の水に溶解させる。全ての成分を一緒に混合して生地を形成する。混練時間の最後に塩を添加する。その後、生地をこね直し、分割して焼き型に入れて発酵させる。焼成した後、塊を型から直接外す。
【0062】
手順:
混練:
菊練りシステム:第1ギアで5〜6分間;第2ギアで3〜4分間
生地の発酵:なし
生地の温度:22〜24℃
発酵時間:40分間
焼成:
オーブン:ダッチオーブン
焼成温度:220℃
焼成時間:35〜40分間
【0063】
実施例8
ヨーグルト−固形タイプ;脂肪分3.5%
通常の1回分の量:225g
有効成分:
ロイシンおよびタンパク質加水分解物および炭水化物(糖の形態)がこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:1回分当たり0.5〜5g
タンパク質加水分解物:1回分当たり1.5〜15g
【0064】
他の成分:[%]
全乳(脂肪分3.8%):90.5
脱脂粉乳:2.0
糖(炭水化物源):5.0
培養液:2.5
【0065】
粉乳、安定化剤、糖および有効成分を添加する前に、乳汁を35℃に加熱する。この混合物を65℃に加熱して全ての成分を溶解させる。その後、混合物を65℃において高圧ホモジナイザー(p=150バール、p=50バール)で均質化する。このエマルジョンを次いで80℃で20分間殺菌する。45℃に冷却した後、天然ヨーグルト/培養液を添加して混合する。その後、この混合物をカップに満たし、pHが4.3に達するまで45℃で3〜4時間発酵させ、次いで4℃で貯蔵する。
【0066】
実施例9
ヨーグルト−シロップタイプ;脂肪分3.5%
通常の1回分の量:225g
ロイシンおよびタンパク質加水分解物および炭水化物(糖の形態)がこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:1回分当たり0.1〜1g
タンパク質加水分解物:1回分当たり0.3〜3g
【0067】
他の成分 :[%]
全乳(脂肪分3.8%) :90.2
脱脂粉乳 :2.0
安定化剤 :0.3
糖(炭水化物源) :5.0
培養液 :2.5
【0068】
粉乳、安定化剤、糖および有効成分を添加する前に、乳汁を35℃に加熱する。この混合物を65℃に加熱して全ての成分を溶解させた後、65℃において高圧ホモジナイザー(p=150バール、p=50バール)で均質化する。このエマルジョンを次いで80℃で20分間殺菌する。45℃に冷却した後、天然ヨーグルト/培養液を添加して混合してから、pHが4.3に達するまで45℃で3〜4時間発酵させる。冷却して激しく攪拌した後、ヨーグルトをカップに満たし、4℃で貯蔵する。
【0069】
実施例10
アイスクリーム;脂肪分8%
通常の1回分の量:85g
有効成分:
ロイシンおよびタンパク質加水分解物および炭水化物(糖およびグルコースシロップの形態)がこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:1回分当たり0.1〜1g
タンパク質加水分解物:1回分当たり0.3〜3g
【0070】
他の成分 :[g]
乳汁(脂肪分3.7%) :600.00
クリーム(脂肪分35%) :166.00
脱脂粉乳 :49.10
糖(炭水化物源) :109.00
グルコースシロップ80%(炭水化物源):70.00
アイスクリーム安定化剤 :5.00
香料 :適量
着色料 :適量
【0071】
糖、脱脂粉乳および安定化剤を、乳汁およびクリームに添加し、混合して45℃に加熱する。その後、有効成分だけでなく、原液としての着色料およびグルコースシロップを添加する。混合物を加熱し殺菌する(20分間、80℃)。次いで、均質化工程を行う。その後、混合物を一定の攪拌下で冷却し、香料を5℃で添加する。混合物を、少なくとも4時間の間5℃で成熟させ、次いでアイスクリーム機に通す(オーバーラン、約100%)。アイスクリームをカップに満たし、−20〜−30℃で貯蔵する。
【0072】
実施例11
ワインガム(Wine gum)
有効成分:
ロイシンおよびタンパク質加水分解物および炭水化物(糖結晶の形態)およびグルコースシロップDE 38)がこの食品中に組み込まれる。
ロイシン:30g当たり0.05〜0.5g
タンパク質加水分解物:30g当たり0.15〜1.5g
【0073】
他の成分 :[g]
ゼラチン 200ブルーム :80.0
水I :125.0
糖結晶(炭水化物源) :290.0
水II :120.0
グルコースシロップDE 38(炭水化物源):390.0
クエン酸 :10.0
香料 :2.0
着色料 :適量
収量 :約1000.0
【0074】
ゼラチンを水Iに分散し、流浴を加熱するかまたはマイクロ波を用いることによって攪拌して溶解させる。糖を水IIと混合し、透明の溶液が得られるまで沸騰させる。熱源から取り外す。溶解された糖溶液がまだ熱い間にグルコースシロップと混合する。ゆっくりとゼラチン溶液を添加する。表面の泡が取り除かれ、60〜65℃に達するまで静置する。攪拌下で、香料、クエン酸および着色料溶液ならびに有効成分を添加する。スターチトレー(starch tray)に型取られた型に入れ、室温で少なくとも48時間そのままにする。スターチ粉末を除去し、油またはロウでつやを出す。室温で乾燥させ、気密パウチに詰める。
【0075】
実施例12
この実施例は、1回投与分の炭水化物と組み合わせた追加のロイシンを用いたおよび用いない、インスリン分泌促進タンパク質加水分解物の同時摂取の後の、食後の血漿インスリンおよびグルコース反応を示している。10人の長期間診断されている男性の2型糖尿病患者および10人の健常な対照対象が3つの試験に参加し、これらの試験では、血漿グルコース、インスリンおよびアミノ酸反応を、様々な飲料組成物(炭水化物、CHO;炭水化物およびタンパク質加水分解物、CHO+PRO;あるいは炭水化物、タンパク質加水分解物および遊離ロイシン、CHO+PRO+LEU)の摂取後に測定した。CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験では、血漿インスリン反応が、CHO試験と比べた際に、2型糖尿病患者においてそれぞれ141および204%高く、対照においてそれぞれ66および221%高かった(P<0.05)。それに付随する血漿グルコース反応は、CHO試験と比べた際に、2型糖尿病患者においてそれぞれ15および12%低く、対照においてそれぞれ92および97%低かった(P<0.05)。血漿ロイシン濃度がインスリン反応と強い相関性があった(r=0.43、P<0.001)。本発明者らは、追加の遊離ロイシンを用いたおよび用いないタンパク質加水分解物の同時摂取が炭水化物摂取の後のインスリン反応を高め、それによって、長期間診断されている2型糖尿病患者における食後のグルコース異常をかなり低減することを結論付けた。
【0076】
対象および方法
対象
10人の長期間診断されている男性の2型糖尿病患者および10人の健常な年齢およびBMIの適合した対照対象を、この研究に参加するために選択した。対象の特徴を表1に示す。除外基準は、腎機能または肝機能の障害、肥満(BMI>35kg/m)、心臓病、高血圧症、糖尿病の合併症、および体外からのインスリン治療を受けていることであった。全ての2型糖尿病患者は経口血漿グルコース低下薬剤(メトホルミンおよび/またはスルホニル尿素)を用いた。血中グルコースを低下させる薬剤はスクリーニング前の2日間は通知されず、スルホニル尿素(メトホルミンではなく)は、各試験の前の2日間は通知されなかった。全ての対象には、事前の書面による同意書を提出する前に、実験手順の性質およびリスクについて知らせた。全ての臨床試験は、地元の医療倫理委員会(Medical Ethical Committee)によって認可された。
【0077】
【表1】

【0078】
スクリーニング
研究への選別の前に、全ての対象に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行った。対象は、一晩絶食後、自動車または公共交通機関で午前8.00に研究室に到着した。カテーテル(バクスター(Baxter)BV、ユトレヒト(Utrecht)、オランダ)を肘正中静脈に挿入し、安静時の血液サンプルを採取し、その後75gのグルコース(250mLの水に溶解させた)を摂取させた。1回分が摂取された後、30分間ごとにt=120分間になるまで血液を採取した。1999年の世界保健機関(World Health Organization)基準(参照:アルベルティ(Alberti),K.G.およびジメット(Zimmet),P.Z.(1998年)「糖尿病およびその合併症の定義、診断および分類、パート1:WHO協議の糖尿病の診断および分類に関する仮報告書(Definition、diagnosis and classification of diabetes mellitus and its complications.Part 1:diagnosis and classification of diabetes mellitus provisional report of a WHO consultation.)」Diabet Med 15:539〜553頁)に準拠して耐糖能異常および/または2型糖尿病を判断するために、血漿グルコース濃度を測定した。さらに、マリ(Mari)ら、J.J.(2001年)Diabetes Care 24:539〜548頁に記載されるように、血漿グルコースおよびインスリン濃度を用いて、2時間のOGTTの間の経口グルコースインスリン感受性(OGIS)−指数によりインスリン感受性感受性を評価した。
【0079】
計画
各対象は、少なくとも7日間隔離されて3つの試験に参加した。これらの試験では、血漿グルコース、インスリンおよびアミノ酸反応を、3種の異なる飲料組成物(CHO:炭水化物、CHO+PRO:炭水化物およびカゼインタンパク質加水分解物、あるいはCHO+PRO+LEU:炭水化物、カゼインタンパク質加水分解物およびロイシン)の摂取後に測定した。対象を背臥位にして4時間の間、安静状態を保った。飲料を無作為な順序で二重盲検法で与えた。
【0080】
プロトコル
対象は、一晩絶食後、自動車または公共交通機関で午前8.00に研究室に出向いた。テフロン(Teflon)製カテーテル(バクスター(Baxter)BV、ユトレヒト(Utrecht)、オランダ)を、静脈血採取のために肘正中静脈に挿入し、安静時の血液サンプルを採取した。t=0分間において、対象に1回分(4mL/kg)の実験の飲料を飲ませた。最初の1時間の間、15分間ごとに血液サンプルを採取し、その後、t=240分間になるまで30分間置きに血液を採取して、血漿グルコースおよびインスリン濃度を測定した。血漿アミノ酸濃度を1時間置きに測定した。
【0081】
試験前の食事および運動
実験期間全体にわたって、全ての対象は通常の食事および運動の習慣を維持した。さらに、対象は、各試験の前の少なくとも3日間は重労働および/または激しい運動トレーニングを控え、最初の試験の前の2日間にわたり食物摂取日記を記入し、他の試験の前に食物摂取をできるだけ同じように保った。各試験の前の晩に、対象は標準化された食事(体重1kg当たり43.80kJ;60エネルギー%(En%)の炭水化物、28En%の脂肪および12En%のタンパク質からなる)を摂取した。
【0082】
飲料
対象は、0.7g/kgの炭水化物(50%のグルコースおよび50%のマルトデキストリン、CHO)および0.3g/kgのカゼインタンパク質加水分解物(CHO+PRO)あるいは0.3g/kgのカゼインタンパク質加水分解物および0.1g/kgのロイシン(CHO+PRO+LEU)を含有する1回分の量(4mL/kg)を摂取した。グルコースおよびマルトデキストリンはアベベ(AVEBE)(フェーンダム(Veendam)、オランダ)から入手し、微結晶性ロイシンはビュファ(BUFA)(アイトヘースト(Uitgeest)、オランダ)から入手し、カゼインタンパク質加水分解物はDSMフードスペシャルティーズ(DSM Food Specialties)(デルフト(Delft)、オランダ)によって調製されたものであった。カゼイン加水分解物(インスバイタル(Insuvital)TM)は、中性プロテアーゼおよびプロリル特異的エンドプロテアーゼを用いたカゼイン酸ナトリウムの酵素による加水分解によって得られた。飲料は、飲料1リットル当たり0.2gのサッカリン酸ナトリウム、1.8gのクエン酸および5gクリームバニラ香料(クエストインターナショナル(Quest International)、ナールデン(Naarden)、オランダ)を添加することによって均一に着香された。
【0083】
血液サンプル分析
血液をEDTA含有チューブに採取し、1,000gおよび4℃で10分間遠心分離した。血漿のアリコートを液体窒素で急速に凍結させ、分析まで−80℃で保管した。グルコース濃度(ユニキット(Uni Kit)III、ロシェ(Roche)、バーゼル(Basel))をコバスファラ(COBAS FARA)半自動分析機(ロシェ(Roche))を用いて分析した。血漿インスリンを、ラジオイムノアッセイ(HI−14K、リンコリサーチ社(Linco research Inc.)、セントチャールズ(St.Charles)、米国)によって測定した。遊離アミノ酸を、内部標準としてノルバリンを用いてニンヒドリン・ポストカラム誘導体化法によって、イオン交換クロマトグラフィー(JEOL、アミノタック(AminoTac)JLC−500/V)を用いて分析した。分析の前にサンプルを5−スルホサリチル酸で除タンパク処理した。HbA1c含量を測定するために、3mLの血液サンプルをEDTA含有チューブに採取し、高速液体クロマトグラフィー(バイオラッドディアマット(Bio−Rad Diamat)、ミュンヘン(Munich)、独国)によって分析した。
【0084】
統計
データを平均値±SEMとして表す。血漿反応を、ベースライン値の上の曲線下面積として計算した。試験間の時間の経過にわたる血漿代謝産物濃度を比較するために、反復測定2元配置分散分析(ANOVA)を適用した。各群内の時間の変化を、反復測定1元配置ANOVAを用いて統計的有意性について調べた。特定の差異を示す有意なF比がある場合、シェッフェ(Scheffe)のポストホックテストを適用した。変数が時間に依存しない場合、多元配置ANOVAまたはスチューデントのt検定(Student’s t−test)を適用した。有意性を、0.05水準の信頼度に設定した。全ての計算を、スタットビュー(StatView)5.0(SASインスティチュート社(SAS Institute inc.)、ノースカロライナ州カリー(Cary,NC)、米国)を用いて行った。
【0085】
結果
血漿インスリン濃度
ベースライン血漿インスリン濃度は、群および試験の間で同様であり、2型糖尿病および対照群でそれぞれ平均して11.2±1.5および13.0±1.1mU/Lであった(図1A、P=0.1)。様々な飲料を摂取した後、2型糖尿病患者における血漿インスリン濃度は、CHO試験では上昇せず、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験では上昇した(P<0.05)。対照群では、飲料摂取後の最初の1時間の間、血漿インスリン濃度の大きな上昇が観察された(P<0.05)。この上昇は、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験で最も顕著であった。全ての試験では、両方の群の実験の最後の1時間の間に、血漿インスリン濃度はベースライン濃度に戻った。糖尿病群のインスリン反応(ベースライン値の上のAUC)は、CHO試験と比べた際に、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験においてそれぞれ141±40および204±37%高かった(P<0.05、図1B)。対照群では、インスリン反応は、CHO試験と比べた際に、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験においてそれぞれ66±20および221±82%高かった(P<0.05)。さらに、対照群では、CHO+PRO+LEU試験におけるインスリン反応は、CHO+PRO試験と比べて有意に高かった(P<0.05)。同じ試験内の群の間でインスリン反応に違いが観察されなかった。
【0086】
血漿グルコース濃度
空腹時の血漿グルコース濃度は、正常血糖の対照と比べて2型糖尿病患者においてより高かった(それぞれ8.6±0.6対5.7±0.1mmol/L、P<0.01)。全ての試験で、様々な飲料の摂取後、血漿グルコース濃度は、糖尿病患者においてその対応対照と比べて依然として有意に高かった(P<0.01、図2A)。飲料摂取後の最初の1時間の間、2型糖尿病患者において、血漿グルコース濃度が有意に上昇し、その後、値はほぼベースライン値まで戻った(図2A)。対照群における血漿グルコース濃度は、試験飲料の摂取後の最初の30分間の間、上昇し、その後、血漿グルコース濃度もまたベースライン値に戻った。対照群において、血漿グルコース濃度は、CHO試験と比べた際に、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験においてより急速に低下し、結果として、t=45分およびt=60分においてより低い血漿グルコース濃度となった(P<0.05、図2A)。食後のグルコース反応をベースライン値の上の曲線下面積(図2B)として表した後、グルコース反応は、CHO試験と比べた際に、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験で、2型糖尿病群においてそれぞれ15±5および12±3%まで低下され、対照群においてそれぞれ92±2および97±3%まで低下された(P<0.05)。全ての試験において、血漿グルコース反応は、対照と比べた際に、糖尿病患者において大幅に高かった(P<0.01、図2B)。2型糖尿病患者におけるグルコース反応は、付随するインスリン反応と逆相関の関係にあった(r=−0.48、P<0.01)。
【0087】
血漿アミノ酸濃度
空腹時の血漿アミノ酸濃度を表2に記録する。
【0088】
【表2】

【0089】
ベースラインにおいて、血漿必須アミノ酸(EAA):ロイシン(144.9±3.2対122.8±3.0μmol/L)、イソロイシン(79.1±2.3対66.0±2.0μmol/L)、リジン(204.2±5.4対187.8±4.7μmol/L)およびバリン(252.4±4.9対216.7±5.0μmol/L)、ならびに、非必須アミノ酸(NEAA):アラニン(431±17.0対370.3±19.2μmol/L)、グルタミン(109.7±5.9対94.3±4.3μmol/L)およびプロリン(94.7±5.8対77.1±3.1μmol/L)の濃度は、対応対照と比べて2型糖尿病患者においてより高かった(P<0.05)。血漿アルギニン(110±0.6対128.1±7.0μmol/L)およびアスパラギン酸(34.8±1.2対39.0±1.1μmol/L)の濃度は、対照対象と比べて2型糖尿病患者において基礎的な空腹状態においてより低かった(P<0.05)。次の血漿遊離アミノ酸反応の完全な概要を、ベースライン値の上の曲線下面積として計算し、表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
一般に、アミノ酸反応は、CHO試験で陰性であり、CHO+PRO試験で陽性であり、CHO+PRO+LEU試験におけるロイシンの同時摂取後には中間値であった。インスリン反応と血漿ロイシン(P<0.001)、シトルリン(P<0.001)、システイン(P<0.04)、リジン(P<0.001)、メチオニン(P<0.04)、オルニチン(P<0.01)およびプロリン(P<0.01)の増加との間には強い正相関が観察された。非必須アミノ酸(NEAA)の反応およびロイシンの補給を除いた必須アミノ酸(EAALEU)の反応を計算すると、2型糖尿病(図3A)および対照群(図3B)において以下の反応が観察された。2型糖尿病群においては、EAA−LEU反応は、CHO試験で陰性であり、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験で有意に高かった(それぞれ−27.7±5.8対31.2±6.1および11.5±4.6mmol/L/4時間、P<0.05)。さらに、EAA−LEU反応は、CHO+PRO試験と比べて、CHO+PRO+LEUでは有意に低かった(60±4%、P<0.05)。糖尿病患者において、血漿NEAA反応は、CHO試験で陰性であり、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験で有意に高かった(それぞれ−28.8±14.7対23.1±8.8および10.2±13.8mmol/L/4時間;P<0.05)。同様の知見が対照群で観察された。陰性の血漿EAA−LEU反応がCHO試験で観察され、有意に高いEAA−LEU反応がCHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験で観察された(それぞれ−35.0±6.7対37.9±5.1および12.7±4.1mmol/L/4時間;P<0.05)。CHO+PRO+LEU試験においてロイシンを添加することにより、CHO+PRO試験と比べて65±5%低い血漿EAA−LEU反応がもたらされた(P<0.05)。血漿NEAA反応はCHO試験で陰性であり、CHO+PROおよびCHO+PRO+LEU試験で有意に高かった(それぞれ−60.8±13.6対27.6±10.6および11.2±9.8mmol/L/4時間;P<0.05)。群の間でアミノ酸反応に違いが観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】2型糖尿病患者(T2D)および健常な対照対象(CON)に、炭水化物(CHO;白抜きのバー)、炭水化物およびタンパク質加水分解物(CHO+PRO;斜線入りのバー)、ならびに、炭水化物、タンパク質加水分解物および遊離ロイシン(CHO+PRO+LEU;黒塗りのバー)を摂取させた後4時間の期間にわたる平均値(±SEM)血漿インスリン濃度(A)および反応(B)。:CHO試験と比べて有意差あり。P<0.05。#:CHO+PRO試験と比べて有意差あり。P<0.05。同じ試験内の群の間でインスリン反応に違いが観察されなかった。1つの群につきn=10。
【図2】2型糖尿病患者(T2D)および健常な対照対象(CON)に、炭水化物(CHO;白抜きのバー)、炭水化物およびタンパク質加水分解物(CHO+PRO;斜線入りのバー)、ならびに、炭水化物、タンパク質加水分解物および遊離ロイシン(CHO+PRO+LEU;黒塗りのバー)を摂取させた後4時間の期間にわたる平均値(±SEM)血漿グルコース濃度(A)および反応(B)。:CHO試験と比べて有意差あり。P<0.05。#:糖尿病群と有意差あり。P<0.01。1つの群につきn=10。
【図3】2型糖尿病患者(A)および健常な対照対象(B)に、炭水化物(CHO)、炭水化物およびタンパク質加水分解物(CHO+PRO)、ならびに、炭水化物、タンパク質加水分解物および遊離ロイシン(CHO+PRO+LEU)を摂取させた後4時間の期間にわたる平均値(±SEM)血漿必須アミノ酸(ロイシンなし、EAA−LEU)および非必須アミノ酸(NEAA)の反応。:CHO試験と比べて有意差あり。P<0.05;#:CHO+PRO試験と比べて有意差あり。P<0.05。同じ試験内の群の間でアミノ酸反応に違いが観察されなかった。1つの群につきn=10。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種のアミノ酸とタンパク質加水分解物とを含む組成物。
【請求項2】
前記1種のアミノ酸がロイシンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
炭水化物をさらに含む請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
糖尿病前症または耐糖能異常(IGT)または肥満、あるいは確定した2型糖尿病を患う個体における2型糖尿病(T2DM)の処置または予防に適した請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
加水分解されていないタンパク質が存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
対象に対し、体重1kg当たり0.005gから体重1kg当たり約1gまでの1日の投与量を投与するのに十分な量のロイシンを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
対象に対し、体重1kg当たり0.01gから体重1kg当たり約3gまでの1日の投与量を投与するのに十分な量のタンパク質加水分解物を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
対象に対し、体重1kg当たり0.01gから体重1kg当たり約3gまでの1日の投与量を投与するのに十分な量の加水分解されていないタンパク質を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
対象に対し、体重1kg当たり0.01gから体重1kg当たり約7gまでの1日の投与量を投与するのに十分な量の炭水化物を含む請求項3のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を含む投与ユニット。
【請求項11】
前記投与ユニットの形態が固形である請求項10に記載の投与ユニット。
【請求項12】
0.01g〜約5gのロイシンを含む投与ユニット。
【請求項13】
前記投与ユニットが約0.1g〜約50gのタンパク質加水分解物を含む請求項10〜12のいずれか一項に記載の投与ユニット。
【請求項14】
前記投与ユニットが約0.1g〜約50gの加水分解されていないタンパク質を含む請求項10〜13のいずれか一項に記載の投与ユニット。
【請求項15】
前記投与ユニットが約0.3g〜約150gの炭水化物を含む請求項10〜14のいずれか一項に記載の投与ユニット。
【請求項16】
食品または飲料、あるいは食品または飲料のためのサプリメント組成物である請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
ロイシンとタンパク質加水分解物との組合せの使用であって、前記ロイシンが、投与しようとする対象の体重1kg当たり0.001gから体重1kg当たり約1gまでの1日の投与量を与えるのに十分な量で用いられ、前記タンパク質加水分解物が、投与しようとする対象の体重1kg当たり0.01gから体重1kg当たり約3gの1日の投与量を与えるのに十分な量で用いられる、使用。
【請求項18】
前記組合せが、食品または飲料、あるいは食品または飲料のためのサプリメント組成物中に存在する請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記組合せが、1型または2型糖尿病の処置、あるいは糖尿病前症または耐糖能異常(IGT)または肥満を患う個体における2型糖尿病の予防を目的とするものである請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記組合せが、1型または2型糖尿病の処置、あるいは糖尿病前症または耐糖能異常(IGT)または肥満を患う個体における2型糖尿病の予防のための医薬組成物を調製するために用いられる請求項19に記載の使用。
【請求項21】
1型および2型糖尿病の処置、ならびに糖尿病前症または耐糖能異常(IGT)または肥満を患う個体における2型糖尿病の予防のための方法であって、かかる処置を必要とする対象に対して、ロイシンおよびタンパク質加水分解物を投与することを含む方法。
【請求項22】
血漿インスリンを増加させるためのロイシンおよびタンパク質加水分解物の使用。
【請求項23】
2型糖尿病または糖尿病前症における、血漿インスリンを増加させるためのロイシンおよびタンパク質加水分解物の使用。
【請求項24】
2型糖尿病または糖尿病前症における、食後の血中グルコース濃度を低下させるためのロイシンおよびタンパク質加水分解物の使用。
【請求項25】
2型糖尿病または糖尿病前症における、食後の血中インスリン分泌を高めるためのロイシンおよびタンパク質加水分解物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−527020(P2008−527020A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551660(P2007−551660)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050213
【国際公開番号】WO2006/077202
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】