説明

新規な結晶構造を有する金属複合酸化物及びそのイオン伝導体としての用途

【課題】イオン伝導度を有する、新規な結晶構造を有する物質を開発する。
【解決手段】(a)ないし(c)の条件を満足する新規な結晶構造を有する金属複合酸化物であって、(a)空間群がFd−3mに属し、(b)格子定数が17.0±1.0Åの範囲にあり、(c)単位格子内の結晶学的配置が、陽イオンにより下記表のサイト占有率で占有されている金属複合酸化物。好ましくは、バリウム−タングステン複合酸化物および/またはその誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導度を示す新規な結晶構造を有する金属複合酸化物に関し、詳しくは、単位格子内の金属イオンサイト及び金属イオン欠陥の規則性からなされる結晶学的な特性により、イオン移動が容易になるチャンネルが形成されたバリウム−タングステン酸化物および/またはその誘導体、この酸化物を含むイオン伝導体、及びこのイオン伝導体を備える電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、イオン伝導体は、電気化学装置中の電解質、例えば、ガスセンサー、燃料電池として用いられる研究が極めて盛んになされている固体材料である。今まで知られている主な固体イオン伝導体をこれらの結晶構造によって分類すれば、下記表1の通りである[V. V. Kharton, F. M. B. Marques, A, Atkinson, Solid State Ionics, 174(2004) 135-149. P. Lacorre, F. Goutenoire, O. Bohnke, R. Retoux, Y. Laligant, Nature, 404(2000) 856-858. X. Turrillas, A. P. Sellars, B. C. H. Steele, Solid State Ionics, 28-30(1988) 465-469]。
【0003】
【表1】

【0004】
前記表1に記載の材料はいずれもポテンシャルを有している。しかしながら、これらの材料を用いる応用分野によってそれぞれ別々の長短所を有している。これは、各材料の結晶構造、イオン欠陥構造などの構造特性によって温度によるイオン伝導度及び物理化学的な特性が多彩に現れるためであると考えられる。
【0005】
例えば、今までは、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の応用分野において、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)が高温のSOFC電解質として最適な材料として知られている。しかしながら、600℃以下の低温用SOFCにおいては、ドープされたセリア型が一層好適である。また、電解質としてYSZではなく、他の材料(ドープされたセリアやLa0.8Sr0.2GaO3−δ)を用いる高温用SOFCの場合には、La0.9Sr0.1AlO3−δまたはGdZrなどの材料が陰極の保護層材料として使用可能である。これらのほかに、酸素ポンプに用いられるイオン伝導体膜は、電気伝導度とイオン伝導度両方を有する必要がある。そのため、電気伝導度をほとんど有さないYSZへの適用には適していないのに対し、ドープされたセリアなどの材料は適用可能である。また、氷晶石構造の化合物やLaYO型の高温の酸素イオン伝導体は、湿式大気中の低温ではプロトン伝導体として機能する。
【0006】
このように応用分野に応じて極めて様々な特性が要求されるため、イオン伝導度を有する新規な型の物質を開発することは極めて重要である。とりわけ、新規な結晶構造を有する材料を見出すことが極めて重要な理由は以下の通りである。すなわち、一応新規な結晶構造を有する物質が見出されると、数千ないし数万個に至るその誘導体化合物を合成及び開発することが可能になり、その結果、従来の技術から急発展する基礎が与えられるからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】V. V. Kharton, F. M. B. Marques, A, Atkinson, Solid State Ionics, 174(2004) 135-149.
【非特許文献2】P. Lacorre, F. Goutenoire, O. Bohnke, R. Retoux, Y. Laligant, Nature, 404(2000) 856-858.
【非特許文献3】X. Turrillas, A. P. Sellars, B. C. H. Steele, Solid State Ionics, 28-30(1988) 465-469.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、バリウムとタングステンを所定の割合にて混合して得られる新規な金属複合酸化物が、既知でない全く新規な結晶構造を有するだけではなく、このような新規な結晶構造により酸素イオン伝導度を有するということを見出した。また、このような新規な結晶構造を有する多数の誘導体化合物を合成して、これらのイオン伝導度を測定した結果、酸素イオン伝導度はバリウム−タングステン酸化物に固有の特性ではなく、単位格子内の金属サイト及び金属欠陥の規則的な配列による特有な結晶構造によるものであるということが明らかになった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、イオン伝導度を示す新規な結晶構造を有する金属複合酸化物、この金属複合酸化物を含むイオン伝導体、及びこのイオン伝導体を備える電気化学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記(a)ないし(c)の条件を満足する新規な結晶構造を有する金属複合酸化物を提供する。
ここで、新規な結晶構造は、(a)空間群がFd−3m(no.227)に属し、(b)格子定数が17.0±1.0Åの範囲にあり、(c)単位格子内の結晶学的配置が、陽イオンにより下記表1のサイト占有率で占有されている[ここで、単位格子内の結晶学的座標はInternational tables for crystallography(A巻, 第5版, Kluwer Academic Publishers, 2002年)の701頁に示す空間群No. 227, origin choice 2に基づく]。
【0011】
【表2】

【0012】
さらに、本発明は、前記金属複合酸化物を含むイオン伝導体及び前記イオン伝導体を備える電気化学装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ABO型ペロブスカイトの単位格子構造図である。
【図2】実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物(Ba1123)のX線(Cu Kα,λ=1.5405Å)回折パターン(XRDP)図である。
【図3】BaWOとBa1123のX線回折パターン(XRDP)図である。
【図4】実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物(Ba1123)のX線回折パターン(XRDP)を構造モデルの理論パターンと互いに比較したリートベルトプロファイルである。
【図5】中性子回折分析から計算した原子密度マップ(フーリエ合成マップ)である。
【図6】実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物(Ba1123)のa−b横断面に沿った1層の結晶構造図である。
【図7】実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物(Ba1123)の単位格子構造図である。
【図8】実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物(Ba1123)の温度による酸素イオン伝導度を示す図である。
【図9】実施例3に従って製造されたバリウム−ストロンチウム−タングステン複合酸化物(Ba10Sr23)のX線(Cu Kα,λ=1.5405Å)回折パターン図である。
【図10】本発明に従ってAサイトが置換された金属複合酸化物(Ba11−x24−δ)の酸素イオン伝導度を示す図である。
【図11】実施例7に従って製造されたバリウム−タングステン−タンタル複合酸化物(Ba11Ta22.5)のX線(Cu Kα,λ=1.5405Å)回折パターン図である。
【図12】本発明に従ってBサイトが置換された金属複合酸化物(Ba114−y24−δ)の酸素イオン伝導度を示す図である。
【図13】実施例8に従って製造されたバリウム−ストロンチウム−タングステン−タンタル複合酸化物(Ba10.5Sr0.53.5Ta0.522.75)のX線(Cu Kα,λ=1.5405Å)回折パターン図である。
【図14】本発明に従ってAサイト及びBサイトが置換された金属複合酸化物(Ba11−x4−y24−δ)の酸素イオン伝導度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、従来公知ではない新規な結晶構造を有する単一相の金属複合酸化物、好ましくは、バリウム−タングステン複合酸化物および/またはその誘導体を提供する。
【0016】
この金属複合酸化物は、これと類似した化学式を有するペロブスカイト構造、好ましくは、氷晶石構造上に金属欠陥が規則的に形成されたスーパーストラクチャーである。このような特性によれば、下記のような効果が得られる。
【0017】
1)本発明に係る金属複合酸化物において、金属イオンは、従来の化合物に周知の不規則的なまたは規則的な欠陥タイプとは区別される新規な金属欠陥タイプを有する。したがって、本発明の金属欠陥タイプによれば、前記表2に記載の8b,48f,32e,16d,16cサイトを金属イオンが占有しているのに対し、単位格子内の特定のサイト(すなわち、8aサイト(1/8,1/8,1/8))で金属欠陥が存在している。このような金属欠陥サイト(8a)の規則性により、イオンの容易な移動が可能なイオンチャンネルが自動的に形成されるので、イオンの移動にしたがって伝導度を示すイオン伝導体としての機能を、金属複合酸化物が行うことができる。
【0018】
2)一般に、酸素イオン伝導度を有する多くのペロブスカイト酸化物は、水分を含む雰囲気下で、水素イオン伝導度も同時に有することが知られている(T. Norby, Solid State Ionics, 125 (1999) 1-11; I. Animitsa, T. Norby, S. Marion, R. Glockner, A. Neiman, Solid State Ionics, 145, (2001) 357-364)。この事実を考慮して、上記のように金属複合酸化物内に形成されたイオンチャンネルを介して酸素イオン伝導度を示す本発明の金属複合酸化物は、前記イオンチャンネルを介して、水素イオン(プロトン)の移動が容易になると見られるので、酸素イオン伝導度だけではなく、水素イオン伝導度を同時に示すことができる。
【0019】
3)さらに、上記の新規な結晶構造が、バリウム−タングステン酸化物に固有の結晶構造ではなく、単位格子内の金属サイト及び金属欠陥の規則的な配列によることが証明されている。この事実の証明により、従来当業者に一般的な組成及び構成成分を単に変えるだけで、イオン伝導性物質の予測及び調製方法を根本的に変えることができる。
【0020】
4)加えて、本発明は、金属酸化物がイオン伝導度を示す根本的な理由、すなわち、8aサイトでの金属欠陥の規則性がイオンチャンネルの形成を可能にする最も重要な要因であることを最初に認識した。金属欠陥の規則性を分析して明らかにすることにより、このようなイオン伝導度を有する新規な結晶構造物質を開発できた。その結果、この物質は、当分野の発展の基礎を与えることができる。
【0021】
本発明に係る金属複合酸化物では、陽イオン(金属イオン)が、前記表2の結晶学的サイトを占有する。同時に、金属複合酸化物中の一部の陰イオン、好ましくは、少なくとも1種の陰イオンが結晶学的座標「96g(x,x,z)(このとき、0.40≦x≦0.60,0.59≦z≦0.66)」と、サイト占有率「0<O≦1」を有する。さらに、8a陽イオンサイト(1/8,1/8,1/8)でのサイト占有率は、より好ましくは0<O≦1である。最も好ましくは、8aサイト(1/8,1/8,1/8)が空であることである。すなわち、8aサイト(1/8,1/8,1/8)でのサイト占有率が零である。8aサイトでの占有率が下がるにしたがって、イオン伝導チャンネルを閉塞する因子が減少し、その結果、高いイオン伝導度が得られるからである。
【0022】
好ましくは、本発明に係る金属複合酸化物は、新規な結晶構造を100℃以上の温度で、すなわち、電気化学装置の動作温度範囲内で有する。しかしながら、必ずしもこの範囲に限定されることはなく、金属複合酸化物は、室温または高温で新規な結晶構造を有することができる。
【0023】
前記新規な結晶構造を有する金属複合酸化物は、下記式1ないし4で表わされる。
[化学式1]
11−x4−y24±δ (I)
[化学式2]
11−xA’4−y24±δ (II)
[化学式3]
11−x4−yB’24±δ (III)
[化学式4]
11−xA'4−yB'24±δ (IV)
【0024】
(式中、Aはアルカリ土類金属、Cd,Sn,Pb,Sm,Eu,Er,Tm及びYbからなる群から選ばれた少なくとも1種の2価元素であり、
A’は、1価のアルカリ金属元素と、3価の希土類、Bi(III),Sb(III)またはAs(III)と、Ce(IV),Pr(IV),Tb(IV),Th(IV)またはU(IV)の4価の希土類元素、及びZr(IV),Hf(IV)またはIIIBないしVIA族の陽イオン元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
Bは、酸素を除くVIA,VIIA,VIII及びVIBからなる群から選ばれた少なくとも1種の6価元素であり、
B’は、Li,Na,Mg,Ca,Sc,Y、希土類元素(元素番号63〜71)及びIIIBないしVA族の元素で6価未満の酸化状態を有する元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
Cは、S,F及びClからなる群から選ばれた少なくとも1種の陰イオンまたはH陽イオンであり、および
xは、0ないし11の10進数(0≦x≦11)であり、yは0ないし4の10進数(0≦y≦4)であり、zは0ないし8の10進数(0≦z≦8)であり、δは0ないし6の10進数(0≦δ≦6)である。)
【0025】
前記式1ないし4において、Aは、好ましくはBe,Mg,Ca,Sr,BaおよびRaからなるアルカリ土類金属群から選ばれる少なくとも1種の元素の組み合わせであり、より好ましくは、イオンサイズの大きい、Ba及びSr、またはBa及びCaの組み合わせである。
【0026】
前記式1ないし4において、A’は、好ましくは1価の元素または3価の元素を少なくとも1種含む。前記3価の元素は、好ましくはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu及びGdからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素である。より好ましくは、前記1価の元素がKであり、3価の元素がLa,GdおよびBiの少なくとも1種である。
【0027】
前記式1ないし4において、Bは、好ましくはW,MoおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。B’は、好ましくは還元性の大きい、Nb,Ta,V及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0028】
前記式1ないし4において、Cは、好ましくはH陽イオン(プロトン)である。湿式雰囲気下で吸収された水分HOにより、単位格子内に存在するH(プロトン)は、上述したイオンチャンネルを介して容易に移動し、イオン伝導体として機能できるからである。
【0029】
前記式1ないし4で表わされる金属複合酸化物の具体的な例としては、Ba1123,Ba10.5Sr0.523,Ba10Sr23,Ba10.5La0.523.25,Ba10La23.5,Ba113.5Ta0.522.75,Ba11Ta22.5またはBa10.5Sr0.53.5Ta0.522.75などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されることはない。金属複合酸化物は、上述した新規な結晶構造を有する化合物であればいかなるものであってもよい。
【0030】
本発明の新規な結晶構造を有する金属複合酸化物は、当業者に一般に知られた従来方法により、製造することができる。例えば、金属複合酸化物は、前記式1ないし4に記載の1種以上の元素を各々含む前駆体化合物を、それぞれ適宜なモル比にて混合した後、700℃ないし1700℃の温度で焼成を行い、次いで冷却することにより製造することができる。
【0031】
前記各前駆体化合物としては、前記式1ないし4に記載の1種以上の元素を含むあらゆるタイプの塩を用いることができる。前駆体化合物のモル比に制限はない。前駆体化合物は、最終的な製造物によって適切なモル比で混合することができる。
【0032】
好ましくは、前駆体化合物の混合物は、700℃以上の温度で、好ましくは700℃ないし1700℃で5〜72時間で焼成される。
【0033】
焼成方法としては、下記の従来方法を用いることができる。一つは、混合物をペレット状に製造して焼成する方法であり、もう一つは、混合物そのものを焼成する方法である。しかしながら、焼成方法の種類に特別な制限はない。
【0034】
焼成された混合物を室温まで冷却することにより、本発明に係る新規な結晶構造を有する単一相の金属複合酸化物、例えば、バリウム−タングステン酸化物及びその誘導体を得ることができる。このとき、冷却は室温で行ってもよく、あるいは焼成された混合物を、液体窒素または室温の水を用いて短時間冷却してもよい。
【0035】
上述の方法で製造した金属複合酸化物の結晶学的特異性を明らかにするために、金属複合酸化物の結晶構造と類似したABO型ペロブスカイト構造(図1参照)を分析した。
【0036】
図1に示したペロブスカイトでは、Bサイトの金属イオンは、酸素原子に配位し、正八面体を形成している。また、Aサイトの金属イオンは、12個の酸素原子に配位している。このABO型ペロブスカイトを8倍数した後、Bサイトを2種類の原子(B,B’)で置換すると、A(BB’)O24の化学式で表されるペロブスカイトが得られる。ここで、AとBをバリウムに、B’をタングステンにそれぞれ表記すれば、既知の氷晶石構造型のバリウム−タングステン酸化物であるBa1224となる。
【0037】
本発明に従って製造された金属複合酸化物、例えば、バリウム−タングステン酸化物(Ba1123)は、前記ペロブスカイト構造Ba1224中に、バリウムと酸素の欠陥をそれぞれ1/12及び1/24有することが分かった。また、Ba1223の結晶学的構造では、タングステン(W(2))多面体中のチャンネルの中心に規則的なバリウムの欠陥が観察されると同時に、このバリウムの欠陥にしたがって酸素チャンネルが形成されることが観察された(図7参照)。これは、既知の氷晶石構造(Fm3m,空間群no.225,格子定数〜8.5Å)中の規則的な金属欠陥により形成された新規な結晶構造である。
【0038】
本発明者らは、図6中にV及びVとして示した金属欠陥サイト(8a)の規則性が、酸素チャンネルの形成の最も重要な因子であることを最初に認識し、これを実証した。
【0039】
本発明にしたがって製造された金属複合酸化物の新規な結晶構造は、空間群Fd−3m(no.227)、格子定数約17.0±1.0Åを有し、金属イオンで占有された金属サイト(8b,48f,32e,16dおよび16c)、および金属欠陥を有する特定サイト(8a(1/8,/1/8,1/8))で定義される。結晶構造を形成する金属イオンの種類にかかわらず、図7に示すように、金属欠陥サイトは、イオンの移動を容易にするイオンチャンネルを自動的に形成する。このようなイオン伝導チャンネルを介して、金属複合酸化物のイオン伝導度を予測することが可能となる。
【0040】
また、本発明者らは、各種多様な金属が置換された多数の誘導体を合成して、これらのイオン伝導度を確認する実験を行った。本発明者らは、上述した新規な結晶構造がバリウム−タングステン酸化物に固有の結晶構造ではなく、単位格子内の金属サイト及び金属欠陥の規則的な配列によることを明らかにした。
【0041】
本発明は、新規な結晶構造を有する金属複合酸化物を含むイオン伝導体、好ましくは、酸素選択的またはプロトン選択的イオン伝導体を提供する。
【0042】
イオン伝導体は、イオンの移動に伴い電気伝導度を示す材料である。一般的に、イオン伝導体は、1成分を選択的に透過する分離因子を有する膜型で用いられる。
【0043】
本発明に係るイオン伝導体は、当業者に一般的に知られた従来方法を用いて製造することができる。例えば、イオン伝導体は、電場の印加のために伝導性電極をコーティングして製造することができる。このとき、本発明の金属複合酸化物は、イオン伝導体として単独で用いてもよく、目的または応用に応じて当業者に周知の他の材料と適切に混合してもよい。
【0044】
さらに、本発明は、新規な結晶構造を有する金属複合酸化物をイオン伝導体として備える電気化学装置を提供する。
【0045】
電気化学装置は、電気化学反応を引き起こすあらゆる装置を含み、制限されるものではなく、例として、酸素プローブ、燃料電池、化学膜反応器、酸素分離膜、酸素ポンプ、水素分離膜、水素ポンプ、水素ガスセンサー、水蒸気センサー、炭化水素センサー、水素抽出、水素圧力調節器、同位体濃縮、トリチウム技術、水蒸気電解、HS電解、HCl電解、炭化水素の水素化、脱水素化、NHの形成、電気化学セル、エレクトロクロミック素子、ガスセンサーまたはNOトラップが挙げられる。
【0046】
本発明に係る電気化学装置に含まれる金属複合酸化物、例えば、バリウム−タングステン酸化物またはその誘導体は、酸素またはプロトンイオン伝導体の役割を果たす。したがって、金属複合酸化物は、多孔質フィルタによる電気化学的ろ過、気相流出物の電気化学処理または不均質な触媒作用などのあらゆる用途に使用可能である。さらに、金属複合酸化物は、炭化水素の酸化を制御するための反応器の化学膜反応中で使用してもよく、または酸素分離膜に導入してもよい。さらに、金属複合酸化物は、水素を燃料とする燃料電池の電解質として用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明への理解を容易にするために好適な実施形態を挙げるが、後述する実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲が後述する実施例に限定されることはない。
【0048】
[実施例1〜8]金属複合酸化物
[実施例1]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)を、11:4の金属ベースモル比で秤量し、混合した。得られた混合物を1100℃の温度で20時間加熱した。次いで、加熱混合物を室温まで冷却し、再混合を行い、粉末状またはペレット状にした。この粉末またはペレットを、空気中で1100℃の温度で10時間加熱し、次いで、液体窒素により急冷し、バリウム−タングステン酸化物(Ba1123)を合成した。
【0049】
<Aサイトが置換された金属複合酸化物の製造>
[実施例2]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)に、炭酸ストロンチウム(SrCO)を加え、これらの金属ベースモル比を10.5:4:0.5(BaCO:WO:SrCO)で混合した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、バリウム−ストロンチウム−タングステン複合酸化物(Ba10.5Sr0.523)を製造した。
【0050】
[実施例3]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)に、炭酸ストロンチウム(SrCO)を加え、これらの金属ベースモル比を10:4:1(BaCO:WO:SrCO)で混合した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、バリウム−ストロンチウム−タングステン複合酸化物(Ba10Sr23)を製造した。
【0051】
[実施例4]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)に、酸化ランタン(La)を加え、これらの金属ベースモル比を10.5:4:0.5(BaCO:WO:La)で混合した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、Ba10.5La0.523.25を製造した。
【0052】
[実施例5]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)に、酸化ランタン(La)を加え、これらの金属ベースモル比を10:4:1(BaCO:WO:La)で混合した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、Ba10La23.5を製造した。
【0053】
<Bサイトが置換された金属複合酸化物の製造>
[実施例6]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)に、酸化タンタル(Ta)を加え、これらの金属ベースモル比を11:3.5:0.5(BaCO:WO:Ta)で混合した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、Ba113.5Ta0.522.75を製造した。
【0054】
[実施例7]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)に、酸化タンタル(Ta)を加え、これらの金属ベースモル比を11:3:1(BaCO:WO:Ta)で混合した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、Ba11Ta22.5を製造した。
【0055】
<Aサイト及びBサイトが置換された金属複合酸化物の製造>
[実施例8]
炭酸バリウム(BaCO)及び酸化タングステン(WO)に、炭酸ストロンチウム(SrCO)及び酸化タンタル(Ta)を加え、これらの金属ベースモル比を10.5:3.5:0.5:0.5(BaCO:WO:SrCO:Ta)で混合した以外は、前記実施例1の方法と同様にして、Ba10.5Sr0.53.5Ta0.522.75を製造した。
【0056】
[実験例1.金属複合酸化物の化学組成分析(ICP−AES)]
本発明に係る金属複合酸化物の化学組成を、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)により分析した。
【0057】
試料としては、実施例1ないし実施例8に従って製造されたバリウム/タングステン含有複合酸化物を用いた。各試料を粉砕し、ガラス製瓶に入れた後、濃硝酸で溶解し、過酸化水素により試料を完全に分解した。各試料を3種類の異なる体積に希釈し、ICP−AES装置(GDC Integra XMP)を用いて標準方法により分析した。
【0058】
実施例1により得られたバリウム−タングステン酸化物を用いて、ICP元素分析を行った。その分析の結果、バリウムとタングステンのモル比が11.00:4.00(±0.02)であることが分かった。酸素のモル数は、金属の酸化数と上記モル比に基づいて23と計算された。これより、実施例1のバリウム−タングステン酸化物が、Ba1123であることが確認できた。これは、既知のBa1224において、バリウム及び酸素の欠陥が、それぞれ1/12及び1/24であることを意味する。
【0059】
同様にして実施例2ないし実施例8の金属複合酸化物を分析した。これらの金属複合酸化物の化学組成を表3に示す。分析の結果、実施例1の金属複合酸化物と同様に、実施例2ないし実施例8の金属複合酸化物は、従来の金属複合酸化物とは異なる新規な物質であることが確認された。
【0060】
[実験例2.金属複合酸化物の結晶構造分析]
本発明に係る金属複合酸化物の結晶学的構造を、下記の分析方法で分析し、これらの金属複合酸化物が新規であり、公知のバリウム−タングステン化合物とは異なることを実証した。
【0061】
2−1.X線回折パターン(XRDP)及び中性子回折パターンを用いた結晶構造の分析
回折分析の試料としては、実施例1ないし8に従って製造された各バリウム/タングステン含有複合酸化物を用いた。
【0062】
これらの試料をそれぞれ細かく粉砕し、X線粉末回折用サンプルホルダーに充填した。次いで、Bruker D8-Advance XRDを用い、X線Cu Kα(λ=1.5405Å)、印加電圧40kV、印加電流50mVの条件で、0.02°ステップにてスキャンして測定を行った。さらに、中性子回折分析は、韓国原子力研究所製のHANARO HRPD設備を用いて行った。中性子は、2 He−3 マルチ検出器系とGe(331)モノクロメータ(λ=1.8361Å)を用い、0.05°ステップにてスキャンを行った。
【0063】
実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物のX線回折パターン(XRDP)を調べた結果、この回折パターンのピーク位置から17.19±05Åの格子定数を得た。そして、全てのピークを指標して、この回折パターンの消滅則を調べることにより、空間群Fd−3m(no.227)を決めた(図2参照)。また、この回折パターン上の全てのピークが指標されることから、実施例1のバリウム−タングステン酸化物は、不純物を有さない純粋な単一相であることが確認された。
【0064】
この方法と同様にして、実施例3のバリウム−ストロンチウム−タングステン複合酸化物(図9参照)、実施例7のバリウム−タングステン−タンタル複合酸化物(図11参照)及び実施例8のバリウム−ストロンチウム−タングステン−タンタル複合酸化物(図14参照)のX線回折パターン(XRDP)図から分析を行った。その結果、実施例2ないし8のバリウム/タングステン含有複合酸化物は、下記表3に示すように、実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物と同じ範囲の格子定数を有するだけではなく、空間群も同じであることが分かった。これより、本発明の金属複合酸化物が純粋な単一相であることが分かった。
【0065】
実施例1に従って製造したBa1123のXRDPを、従来公知のBaWO(Ba1224)のXRDPと比較した。その結果、本発明のBa1123では、主ピークとなる29°と30°の間に単一のピークが観察されたのに対し、BaWOでは、同じ角度に2つのピークが観察された(図3参照)。このことは、これらの2つの化合物Ba1123とBaWOが異なる構造を有することを裏付ける明らかな根拠となる。
【0066】
【表3】

【0067】
2−2.構造モデルの設定及び分析
本発明に係る金属複合酸化物の結晶構造を決定するために、前記実験例2−1による全てのピークに対してGSAS(A. C. LarsonおよびR. B. Von Dreele, “General Structure Analysis System,” Report no. LAUR086-748, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, NM 87545.)プログラムを用いたルバイルフィッティングを行い、構造因子を求めた。次いで、CRYSTALS(D. J. Watkin, C. K. Prout, J. R. Carruthers, P. W. Betteridge, CRYSTALS, Issue 10; Chemical Crystallography Laboratory, University of Oxford: Oxford, U. K. 1996)に基づいて、単結晶構造の解析方法を用いて結晶構造の分析を行った。この構造モデルの結晶学的なデータは、下記表4の通りである。
【0068】
【表4】

【0069】
2−3.リートベルトシミュレーション
本発明に従って製造されたバリウム/タングステン含有複合酸化物の回折パターン(XRDP)と、前記実験例2−2で設定した構造モデルの結晶学的なデータを用いて、X線及び中性子リートベルトシミュレーションを行った。
【0070】
リートベルトシミュレーションによれば、設定された構造モデルの信頼度は、R=6%を示し、リートベルトプロファイルが全範囲においてフィッティングしていることが確認できた(図4参照)。前記図4のリートベルトプロファイルのうちブラッグポジションの下方に現れる差分ピークは、全測定セクションにわたって測定値ピークと構造モデルのシミュレーションピークとが一致していることを示す。これは、構造モデルの設定による前記表4の結晶構造の解析が正しいこと、及び本発明の金属複合酸化物、例えば、バリウム/タングステン含有複合酸化物が単一相であることを裏付けている。
【0071】
また、図5は、中性子の回折分析により求めた(001)セクションのフーリエ合成マップ(原子密度マップ)を示すものである。ここで、表4に示すO2,O3及びO4の分布を詳しく調べてみれば、W(2)(16cサイト)が<110>方向にチャンネルを形成しており、これと同時に、W(2)辺りのO2,O3及びO4の酸素チャンネルも一緒に形成されていることが分かる。また、これら酸素原子の弱い原子密度により、これら酸素原子がいずれも部分的にのみ充填されている。前記表4に記載されたように酸素原子(すなわち、O2,O3およびO4)のサイト占有率は、1よりもはるかに小さい。
【0072】
図6は、実施例1に従って製造されたバリウム−タングステン酸化物(Ba1123)のa−b横断面の1層を示すものである。前記W(1),W(2)及びバリウム以外に酸素原子が小円付きでそれぞれ示してある。W(1)正八面体は、2つの隣接したバリウム原子を挟んで互いに離れているのに対し、W(2)多面体の配列では、2つの隣接したW(2)多面体間に8aサイト(1/8,1/8,1/8)でV,Vで表わされるバリウム原子の金属欠陥が観察される。特に、W(2)酸素多面体チャンネルの合間に前記8aサイトでVu,により表わされる欠陥が規則的に形成される。このとき、8aサイトに金属が充填されていれば、空間が狭いため、W(2)酸素多面体のチャンネルが形成できないことが予測される。このような構造的な側面からみたとき、金属欠陥の規則性が酸素チャンネルを形成して酸素の移動を容易にする上でもっとも重要な因子であることが判断できる。
【0073】
2−4.結晶内の酸素原子間の距離測定
上述した金属欠陥の規則性が、酸素チャンネルを形成する重要な因子であることを判断するために、単位格子内の酸素原子間の距離を測定した。
【0074】
前記表4のデータの構造を普通汎用される結晶学計算プログラムまたは構造シミュレーションプログラム(例えば、ATOMS for windows, Ver. 5, 1999, Shape Software, 521 Hidden Valley Road, Kingsport, TN 37663 USA)に基づいて調べてみた。
【0075】
その結果、実施例1のバリウム−タングステン酸化物内における酸素原子O2,O3及びO4間の距離は、2.2Å未満であることが確認できた。一般論から言うと、酸素原子はこのような近い距離上に同時に存在することはできない。そこで、これは、本発明の金属複合酸化物、例えば、バリウム−タングステン酸化物内の酸素原子は部分的にのみ充填されていることを確かめる別の判断根拠となる。また、これは、前記表4のデータと一致している(表4参照)。
【0076】
2−5.金属複合酸化物の結晶学的な構造の分析結果
上述したように、本発明の金属複合酸化物(例えば、バリウム/タングステン含有複合酸化物)は、立方体構造であり、その格子定数及び空間群はそれぞれ17.0±1.0Å,Fd−3m(no.227)であり、既知のいかなる構造ともはっきり区別される新規な構造であることが確認できた。また、本発明に係る金属複合酸化物の単位格子内の原子配置は、前記表4に示すのと同じであることが確認できた。
【0077】
図7は、前記表4に示すバリウム−タングステン酸化物(Ba1123)の結晶の構造モデルを示す図であって、正八面体であるW(1)、他のサイトに18個配位された多面体であるW(2)及びバリウム(灰色円)がそれぞれ示してある。ここで、前記W(2)の多面体は互いにチャンネルを形成していることが分かる。
【0078】
以上の結果をまとめてみると、本発明の金属複合酸化物の結晶構造は、前記表4に示すように、8b,48f,32eサイトにはBaが占有されていて、16dサイトにはW(1)が占有されており、16cサイトのW(2)のチャンネルに沿って8aサイトには金属欠陥が規則的に配置されており、この金属欠陥に沿ってW(2)酸素多面体チャンネルが形成されていることが分かる。また、上述したように金属欠陥に沿って形成された酸素チャンネルにより、本発明の金属複合酸化物は酸素イオン伝導が容易であると予測できる。
【0079】
[実験例2.酸素イオン伝導度の評価]
本発明に従って製造された金属複合酸化物のイオン伝導度を評価するために、下記のような実験を行った。
【0080】
試料としては、実施例1ないし実施例8に従って製造されたバリウム/タングステン含有複合酸化物を用いた。前記試料の伝導度は、0.1Hzないし32MHzの周波数範囲において複合インピーダンス分光装置により測定した。このとき、熱安定化後に水分を除去した空気下で約100mVの電位で約1時間で、電気ポテンシャルを測定した。
【0081】
測定の結果、本発明に係る新規な結晶構造を有する金属複合酸化物は、いずれの温度でも優れた酸素イオン伝導度を示すことが確認できた(図8、図10、図12及び図14参照)。これより、本発明の金属複合酸化物は、イオン伝導体として使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)ないし(c)の条件を満足する新規な結晶構造を有する金属複合酸化物であって、
(a)空間群がFd−3m(no.227)に属し、
(b)格子定数が17.0±1.0Åの範囲にあり、
(c)単位格子内の結晶学的配置が、陽イオンにより下記表1:
【表1】

のサイト占有率で占有されている[ここで、単位格子内の結晶学的座標はInternational tables for crystallography(A巻, 第5版, Kluwer Academic Publishers, 2002年)の701頁に示す空間群No. 227, origin choice 2に基づく]、金属複合酸化物。
【請求項2】
前記新規な結晶構造が、100℃超の温度で(a)ないし(c)の条件を満足することを特徴とする、請求項1に記載の金属複合酸化物。
【請求項3】
単位格子内の結晶学的配置が、少なくとも1種の陰イオンにより下記表2:
【表2】

のサイト占有率で占有されていることを特徴とする、請求項1に記載の金属複合酸化物。
【請求項4】
前記単位格子内の8aサイト(1/8,1/8,1/8)における陽イオン占有率が、0ないし1であることを特徴とする、請求項1に記載の金属複合酸化物。
【請求項5】
前記単位格子内の8aサイト(1/8,1/8,1/8)おける原子占有率が、0であることを特徴とする、請求項4に記載の金属複合酸化物。
【請求項6】
前記金属複合酸化物が、下記の一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)または一般式(IV):
11−x4−y24±δ (I)
11−xA’4−y24±δ (II)
11−x4−yB’24±δ (III)
11−xA'4−yB'24±δ (IV)
(式中、Aはアルカリ土類金属、Cd,Sn,Pb,Sm,Eu,Er,Tm及びYbからなる群から選ばれた少なくとも1種の2価元素であり、
A’は、1価のアルカリ金属元素と、3価の希土類元素、Bi(III),Sb(III)またはAs(III)と、Ce(IV),Pr(IV),Tb(IV),Th(IV)またはU(IV)の4価の希土類元素、及びZr(IV),Hf(IV)またはIIIBないしVIA族の陽イオン元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
Bは、酸素を除くVIA,VIIA,VIII及びVIBからなる群から選ばれた少なくとも1種の6価元素であり、
B’は、Li,Na,Mg,Ca,Sc,Y,希土類元素(元素番号63〜71)及びIIIBないしVA族の元素で6価未満の酸化状態を有する元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、
Cは、S,F及びClからなる群から選ばれた少なくとも1種の陰イオンまたはプロトン(H)であり、および
xは、0ないし11の10進数(0≦x≦11)であり、yは0ないし4の10進数(0≦y≦4)であり、zは0ないし8の10進数(0≦z≦8)であり、δは0ないし6の10進数(0≦δ≦6)である)
で表わされることを特徴とする、請求項1に記載の金属複合酸化物。
【請求項7】
前記一般式(I)ないし一般式(IV)で表わされる金属複合酸化物のうちAが、アルカリ土類金属群から選ばれた少なくとも1種の元素の組み合わせであることを特徴とする、請求項6に記載の金属複合酸化物。
【請求項8】
前記一般式(I)ないし一般式(IV)で表わされる金属複合酸化物のうちAが、Ba及びSrまたはBa及びCaの組み合わせであることを特徴とする、請求項7に記載の金属複合酸化物。
【請求項9】
前記一般式(II)ないし一般式(IV)で表わされる金属複合酸化物のうちA’が、1価の元素または3価の元素を少なくとも1種含むことを特徴とする、請求項6に記載の金属複合酸化物。
【請求項10】
前記3価の元素が、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu及びGdからなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類元素であることを特徴とする、請求項9に記載の金属複合酸化物。
【請求項11】
前記1価の元素がKであり、3価の元素がLa,GdおよびBiの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項9に記載の金属複合酸化物。
【請求項12】
前記一般式(I)ないし一般式(IV)で表わされる金属複合酸化物のうちBが、W,MoおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項6に記載の金属複合酸化物。
【請求項13】
前記一般式(III)ないし一般式(IV)で表わされる金属複合酸化物のうちB’が、Nb,Ta,V及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項6に記載の金属複合酸化物。
【請求項14】
前記一般式(I)ないし一般式(IV)で表わされる金属複合酸化物のうちCが、H陽イオン(プロトン)であることを特徴とする、請求項6に記載の金属複合酸化物。
【請求項15】
前記金属複合酸化物が、Ba1123,Ba10.5Sr0.523,Ba10Sr23,Ba10.5La0.523.25,Ba10La23.5,Ba113.5Ta0.522.75,Ba11Ta22.5またはBa10.5Sr0.53.5Ta0.522.75であることを特徴とする、請求項6に記載の金属複合酸化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−25656(P2012−25656A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167329(P2011−167329)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【分割の表示】特願2007−503845(P2007−503845)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】