説明

新規な縮合環化合物およびこれを利用した有機電子素子

本発明は、新規の縮合環化合物およびこれを利用した有機電子素子に関する。本発明の化合物は、有機電子素子の有機物層材料として用いることができ、特に正孔注入、輸送、または抽出の役割を効率的に行うことができるため、効率および性能が優れた有機電子素子を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化合物およびこれを利用した有機電子素子に関する。
本出願は、2009年11月13日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2009−0109940号の出願日の利益を主張し、その内容すべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
有機電子素子とは、正孔および/または電子を利用した電極と有機物の間での電荷交流を必要とする素子を意味する。有機電子素子は、動作原理に応じて下記のように2つに大別することができる。1つ目は、外部の光源から素子に流入した光子によって有機物層でエキシトン(exiton)が形成され、このエキシトンが電子と正孔に分離し、この電子と正孔がそれぞれ異なる電極に伝達されて電流源(電圧源)として用いられる形態の電気素子である。2つ目は、2つ以上の電極に電圧または電流を加えて電極と界面をなす有機物半導体に正孔および/または電子を注入し、注入された電子と正孔によって動作する形態の電子素子である。
【0003】
有機電子素子の例としては、有機発光素子、有機太陽電池、有機感光体(OPC)、有機トランジスタなどがあり、これらはすべて素子の駆動のために正孔の注入または輸送物質、電子の注入または輸送物質、または発光物質を必要とする。以下では主に有機発光素子について具体的に説明するが、有機電子素子では、正孔の注入または輸送物質、電子の注入または輸送物質、または発光物質が共通した原理で作動する。
【0004】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象を意味する。有機発光現象を利用する有機発光素子は、通常、正極と負極およびこの間に有機物層を含む構造を有する。ここで、有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質で構成された多層の構造で形成される場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などで形成されることができる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけるようになれば、正極では正孔が、負極では電子が有機物層に注入されるようになり、注入された正孔と電子が出会ったときにエキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び底状態に落ちるときに光を放つようになる。このような有機発光素子は、自発光、高輝度、高効率、低い駆動電圧、広い視野角、高いコントラスト、高速応答性などの特性を有することが知られている。
【0005】
有機発光素子で有機物層として用いられる材料は、機能に応じて発光材料と電荷輸送材料、例えば、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料などに分類されることができる。また、発光材料は、発光色に応じて青色、緑色、赤色発光材料と、より優れた天然色を実現するために必要な黄色および橙色の発光材料に区分することができる。一方、発光材料として1つの物質のみを用いる場合、分子間の相互作用によって最大発光波長が長波長に移動し、色純度が低下したり発光相殺的効果によって素子の効率が減少したりする問題が発生するため、色純度の増加とエネルギー転移による発光効率を増加させるために、発光材料としてホスト/ドーパント系を用いることができる。
【0006】
有機発光素子が上述したような優れた特徴を十分に発揮するためには、素子内の有機物層を形成する物質、例えば、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などが安定かつ効率的な材料からなることが先立たなければならないが、未だに安定かつ効率的な有機発光素子用有機物層材料が十分に開発されていない状況にある。したがって、新しい材料の開発が依然として求められており、このような材料開発の必要性は上述した他の有機電子素子においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許公開第2003−0067773号公報
【特許文献2】米国特許第5,645,948号公報
【特許文献3】国際出願第05/097756号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有機電子素子に用いることができる新規の化合物およびこれを利用した有機電子素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記化学式(1)の化合物を提供する。
【化1】

前記化学式(1)において、
tは1または2であり、Zは下記化学式(2a)または化学式(2b)で表示され、
【化2】

nおよびmは独立に、1〜7の整数であり、uは1〜8の整数であり、
sは0〜10の整数であり、rは0、1または2であり、
qは1〜3の整数であり、qが2以上である場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
〜Rは独立に、水素、重水素、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、nまたはuが2以上である場合、Rは互いに同一または異なり、隣接するRが互いに連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、mが2以上である場合、Rは互いに同一または異なり、隣接するRが互いに連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、
Arは置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、sが2以上である場合、Arは互いに同一または異なり、
Ra〜Rhは独立に、水素、重水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、Ra〜Rhのうちの隣接する基は互いに連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができる。
【0010】
また、本発明は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極の間に配置された1層以上の有機物層を含む有機電子素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が、前記化学式(1)の化合物を含む有機電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る化合物は、有機電子素子の有機物層材料として用いることができ、特に正孔注入、輸送、または抽出の役割を効率的に行うことができるため、効率および性能が優れた有機電子素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、前記化学式(1)の化合物を提供する。
前記化学式(1)において、前記ReとRfは、それぞれ独立に、水素、重水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群より選択することもでき、これらは互いに連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができる。
【0013】
前記化学式(1)において、前記ReとRfが互いに連結して環基を形成した一例は、下記化学式(3)または(4)で表示することができる。
【化3】

【0014】
前記化学式(3)および(4)において、
n、m、u、s、r、q、R〜R、Ar、Ra〜RdおよびRgは、化学式(1)で定義したとおりであり、
pは1〜4の整数であり、
Riは独立に、水素、重水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群より選択されたり、隣接する置換基と連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、pが2以上である場合、Riは互いに同一または異なる。
【0015】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(5)〜(20)で表示することができる。
【0016】
【化4A】

【0017】
【化4B】

【0018】
【化4C】

【0019】
【化4D】

【0020】
【化4E】

【0021】
【化4F】

【0022】
【化4G】

【0023】
【化4H】

【0024】
前記化学式(5)〜(20)において、
Rb〜Rhは化学式(1)で定義したとおりであり、
Riおよびpは化学式(3)および(4)で定義したとおりであり、
Ra1、Ra2、R11〜R26、R31、R32、RおよびR’は独立に、水素、重水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、これらは隣接する基と連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、
xおよびyは独立に、1〜4の整数であり、xが2以上である場合、Rは互いに同一または異なり、yが2以上である場合、R’は互いに同一または異なる。
【0025】
前記化学式(1)〜(20)において、アルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、直鎖または分岐鎖のアルキル基を含む。
【0026】
前記化学式(1)〜(20)において、アリール基は単環式または多環式であることができ、炭素数は特に限定されないが6〜60であることが好ましい。単環式アリール基の例としては、フェニル基、ビフェニル基、トフェニル基、スチルベン基などがあり、多環式アリール基の例としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ファイレニル基、フェリレニル基、テトラセニル基、クライセニル基、フルオロレニル基、アセナフタセニル基、トリフェニレン基、フルオランテン(fluoranthrene)基などがあるが、本発明の範囲がこれらの例のみに限定されることはない。
【0027】
前記化学式(1)〜(20)において、アリーレン基は単環式または多環式であることができ、炭素数は特に限定されないが6〜60であることが好ましい。具体的な例としては、前記アリール基の2価基などがあるが、本発明の範囲がこれらの例のみに限定されることはない。
【0028】
前記化学式(1)〜(20)において、ヘテロ環基は二重原子であり、O、N、またはSを含むヘテロ環基であって、単環式または多環式であることができ、炭素数は特に限定されないが炭素数2〜60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、インドル基、ベンズオキサゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンズフラニル基、ジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されることはない。
【0029】
前記化学式(1)〜(20)において、アリールアミン基は、1つまたは2つのアリール基で置換されたアミン基であって、炭素数6〜60であることが好ましい。前記アリールアミン基に含まれるアリール基は、上述したとおりである。
【0030】
本発明において、「置換または非置換」とは、ハロゲン基、重水素、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C2−20アルキニル基、ニトリル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C3−60シクロアルキル基、C1−20アルコキシ基、C6−60アリールオキシ基、C1−20アルキルチオキシ基、C6−60アリールチオキシ基、C1−20アルキルスルホキシ基、C6−60アリールスルホキシ基、シリル基、ホウ素基、C1−20アルキルアミン基、C7−60アラルキルアミン基、C6−60アリールアミン基、C6−60アリール基、フルオレニル基、カバゾール基、アセチレン基、およびN、O、S原子のうちの1つ以上を含むヘテロ環基のうちの少なくとも1つの置換基で置換または非置換することを意味する。
【0031】
本発明において、R3、R31、およびR32は、置換または非置換のアリール基または置換または非置換のヘテロ環基であることが好ましく、置換または非置換のアリール基であることがより好ましく、例えばフェニルであることができる。
【0032】
本発明において、Arは、置換または非置換のアリーレン基または置換または非置換のヘテロ環基であることが好ましく、置換または非置換のアリーレン基であることがより好ましく、例えばフェニレンであることができる。
【0033】
本発明において、Ra、Ra1、Ra2、およびRdは、置換または非置換のアリール基または置換または非置換のヘテロ環基であることが好ましく、置換または非置換のアリール基のことがより好ましく、例えばフェニルまたはビフェニルであることができる。
【0034】
本発明において、tは2であることが好ましい。
【0035】
本発明において、R1、R2、R11〜R26、Rb、Rc、およびRe〜Riは水素であることができる。
【0036】
前記化学式(1)の化合物は、下記構造式で表されることが好ましいが、本発明の範囲がこれらにのみ限定されることはない。
【0037】
【化5A】

【0038】
【化5B】

【0039】
【化5C】

【0040】
【化5D】

【0041】
【化5E】

【0042】
【化5F】

【0043】
【化5G】

【0044】
前記化学式(1)の化合物は、スピロ構造の化学式にカバゾール基またはカバゾール基が置換されたアミン基を導入することによって製造することができる。必要な場合、カバゾール基またはカバゾール基が置換されたアミン基を導入する前または後に置換基をさらに導入することができる。前記化学式(1)の化合物の製造に用いられる反応および方法は、当技術分野に周知の方法を利用することができる。具体的な方法は以下の製造例に記述し、当業者は製造例を参照しながら化学式(1)の化合物の製造方法を決定することができる。
【0045】
また、本発明は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極の間に配置された1層以上の有機物層を含む有機電子素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は前記化学式(1)の化合物を含む有機電子素子を提供する。
【0046】
本発明に係る化合物は、有機電子素子で有機物層材料として用いることができる。特に、本発明に係る化合物は、有機電子素子で正孔注入、輸送、または抽出材料として用いることができる。
【0047】
前記有機電子素子は、有機発光素子、有機太陽電池、有機光感体(OPC)ドラム、および有機トランジスタからなる群より選択されることができる。
【0048】
また、前記有機電子素子は、有機発光素子であることができる。
【0049】
また、前記有機発光素子は、基板上に正極、1層以上の有機物層、および負極が順に積層された正方向構造の有機発光素子であることができる。
【0050】
また、前記有機発光素子は、基板上に負極、1層以上の有機物層、および正極が順に積層された逆方向構造の有機発光素子であることができる。
【0051】
前記有機発光素子の有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子注入および/または輸送層を含むことができる。
【0052】
本発明の有機電子素子は上述した化合物を利用し、1層以上の有機物層を形成することを除いては通常の有機電子素子の製造方法および材料によって製造することができる。
【0053】
以下、有機発光素子について例示する。
本発明の1つの実施状態において、有機発光素子は、第1電極と第2電極、およびこの間に配置された有機物層を含む構造であることができる。本発明の有機発光素子のうちの有機物層は、1層からなる単層構造であることもできるが、発光層を含む2層以上の多層構造であることもできる。本発明の有機発光素子の有機物層が多層構造である場合、これは例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などが積層された構造であることができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されることはなく、より少ない数の有機物層を含むことができる。例えば、本発明の有機発光素子は、基板、正極、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、および負極が順に積層された正方向構造を有することができる。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、逆方向構造の有機発光素子も含む。すなわち、本発明の有機発光素子は、基板、負極、電子輸送層、有機発光層、正孔輸送層、正孔注入層、および正極が順に積層された構造を有することができる。
【0054】
本発明に係る有機発光素子が多層構造の有機物層を有する場合、前記化学式(1)の化合物は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔輸送と発光を同時に行う層、発光と電子輸送を同時に行う層、電子輸送層、電子輸送および/または注入層などに含まれることができる。本発明において、前記化学式(1)の化合物は、特に正孔注入層、正孔輸送層または正孔注入、および輸送層に含まれることが好ましい。本発明において、前記化学式(1)の化合物は、特に正孔注入層に含まれることがより好ましい。
【0055】
この場合、本発明に係る有機発光素子は、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、キノリン、およびフェナントロリン基から選択される作用基を有する化合物を含む電子輸送層を含むことが好ましい。例えば、電子輸送層材料として、下記化学式(21)または(22)の化合物を利用することができる。
【0056】
【化6】

【0057】
前記化学式(21)において、R〜Rは互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C〜C30のアルキル基、C〜C30のアルケニル基、C〜C30のアルコキシ基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基、およびC〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換または非置換のC〜C30のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C〜C30のアルキル基、C〜C30のアルケニル基、C〜C30のアルコキシ基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基、およびC〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換または非置換のC〜C30のシクロアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C〜C30のアルキル基、C〜C30のアルケニル基、C〜C30のアルコキシ基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基、およびC〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換または非置換のC〜C30のアリール基、またはハロゲン原子、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、C〜C30のアルキル基、C〜C30のアルケニル基、C〜C30のアルコキシ基、C〜C30のシクロアルキル基、C〜C30のヘテロシクロアルキル基、C〜C30のアリール基、およびC〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択された1つ以上の基で置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール基であり、互いに隣接する基と脂肪族、芳香族、脂肪族ヘテロまたは芳香族ヘテロの縮合環を形成したりスピロ結合をなすことができ、Arは水素原子、置換または非置換の芳香族環、または置換または非置換の芳香族ヘテロ環であり、XはO、SまたはNRであり、Rは水素、C−Cの脂肪族炭化水素、芳香族環、または芳香族ヘテロ環である。
【0058】
【化7】

【0059】
前記化学式(22)において、XはO、S、NR、またはC−Cの2価炭化水素基であり、A、D、およびRbはそれぞれ水素原子、ニトリル基(−CN)、ニトロ基(−NO)、C−C24のアルキル、C−C20の芳香族環、またはヘテロ原子を含む置換された芳香族環、ハロゲン、または隣接環と融合環を形成することができるアルキレンまたはヘテロ原子を含むアルキレンであり、AとDは連結して芳香族またはヘテロ芳香族環を形成することができ、Bはnが2以上の場合は連結ユニットとして多数のヘテロ環を共役または非共役するように連結する置換または非置換のアルキレンまたはアリルレンであり、nが1である場合は置換または非置換のアルキルまたはアリールであり、nは1〜8の整数である。
【0060】
前記有機物層として採用される化合物として、前記化学式(21)の化合物の例としては、韓国特許公開第2003−0067773号に公知されている化合物を含み、前記化学式(22)の化合物の例としては、米国特許第5,645,948号に記載された化合物およびWO05/097756号に記載された化合物を含む。前記文献は、その内容すべてが本明細書に含まれる。
【0061】
本発明に係る有機発光素子は、上述した化学式(1)の化合物を有機発光素子の有機物層のうちの1層以上に用いることを除いては、通常の有機発光素子の製造方法および材料を用いて製造されることができる。例えば、本発明に係る有機発光素子は、スパッタリング(sputtering)や電子ビーム蒸発(e−beam evaporation)のようなPVD(physical vapor deposition)方法を利用し、基板上に金属または伝導性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いることができる物質を蒸着させることによって製造することができる。このような方法の他にも、上述したように、逆方向構造の有機発光素子を製作するために、基板上に負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を生成することもできる。
【0062】
前記有機物層は、多様な高分子素材を用いて蒸着法ではない溶媒工程(solvent process)、例えば、スピンコーティング、ディープコーティング、ドクターブレーディング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、または熱転写法などの方法により、より少ない数の層で製造することができる。
【0063】
前記正極物質としては、通常、有機物層に正孔注入が円滑に行われるように仕事関数が大きい物質が好ましい。本発明で用いることができる正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物、ZnO、AlまたはSnO、Sbのような金属と酸化物の組み合わせ、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロール、およびポリアニリンのような伝導性高分子などがあるが、これらにのみ限定されることはない。
【0064】
前記負極物質としては、通常、有機物層に電子注入が容易なように仕事関数が小さい物質であることが好ましい。負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属またはこれらの合金、LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されることはない。
【0065】
前記正孔注入物質としては、低い電圧で正極から正孔を適切に注入することができる物質であって、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポピリン(porphyrine)、オリゴチオフェン、アリールアミン系列の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系列の有機物、キナクリドン(quinacridone)系列の有機物、ペリレン(perylene)系列の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系列の伝導性高分子などがあるが、これらにのみ限定されることはない。
【0066】
前記正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔を輸送して発光層に移すことができる物質であって、正孔に対する移動性の大きい物質が適切である。具体的な例としては、アリールアミン系列の化合物、カバゾール系列の化合物、アントラセン系列の化合物、パイレン系列の化合物、伝導性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これらにのみ限定されることはない。
【0067】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子をそれぞれ輸送して結合させることによって可視光線領域の光を出すことができる物質であって、蛍光や燐鉱に対する量子効率が優れた物質が好ましい。具体的な例としては、8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯物(Alq)、カバゾール系列化合物、二量体化スチリル(dimerizeds tyryl)化合物、ビス−メチル8−ヒドロキシキノリンパラフェニルフェノールアルミニウム錯物(Balq);10−ヒドロキシベンゾキノリン金属化合物、ベンオキサゾール、ベンズチアゾール、およびベンズイミダゾール系列の化合物、アントラセン系列の化合物、パイレンの化合物、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系列の高分子、スピロ(spiro)化合物、ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらにのみ限定されることはない。
【0068】
前記電子輸送物質としては、負極から電子を適切に注入して発光層に移すことができる物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が適切である。具体的な例としては、8−ヒドロキシキノリンのAl錯物、Alqを含んだ錯物、有機ラジカル化合物、ヒドロキシプラボン−金属錯物、アントラセン系列の化合物、パイレン系列の化合物、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、およびベンズイミダゾール系列の化合物、ピリジル系列の化合物、フェナントロリン系列の化合物、キノリン系列の化合物、キナゾリン系列の化合物などがあり、またこれらの化合物が金属または金属化合物とドーピングして電子輸送層を形成することができるが、これらにのみ限定されることはない。
【0069】
本発明に係る有機発光素子は、用いられる材料によって前面発光型、後面発光型、または両面発光型であることができる。
【0070】
本発明に係る化合物は、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどを含む有機電子素子においても、有機発光素子に適用されるものと同様の原理で作用することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の理解を助けるために、好ましい実施例を提示する。下記実施例は理解を助けるためのものに過ぎず、これらにのみ限定されることはない。
【0072】
前記化学式(1)で表される化合物の合成のために、下記化学式a〜dの化合物を出発物質として用いることができる。
【0073】
【化8】

【0074】
<製造例1>化学式aで表される出発物質の製造
カバゾール(carbazole、1.672g、10mmol)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(1−bromo−2−iodobenzene、1.5mL、12mmol)、炭酸カリウム(KCO、2.7646g、20mmol)、ヨード化銅(CuI、95mg、0.5mmol)、およびキシレン25mLを窒素雰囲気下で還流(reflux)した。常温で冷却した後、生成物をエチルアセテートで抽出し、無水黄酸マグネシウム(MgSO)で水気を除去した後、減圧下で溶媒を除去した。ヘキサン溶媒を用いてシリカゲルカラムを通過させて化合物を得た後、溶媒を減圧下で除去して真空乾燥させ、所望する白色固体の前記化合物(800mg、25%収率)を得た。
MS:[M+H]=323.
【0075】
<製造例2>化学式bで表される出発物質の製造
化学式aで表される出発物質(6.96g、21.6mmol)を精製されたTHF300mlに溶かした後、−78℃に冷却した後、n−BuLi(2.5Min hexane、8.64ml、21.6mmol)をゆっくり滴下した。同じ温度で30分間に渡って撹拌した後、2,7−ジブロモ9−フルオレノン(2,7−dibromo−9−fluorenone、6.08g、18.0mmol)を加えた。同じ温度で40分間に渡って撹拌した後、常温に温度を上げて3時間さらに撹拌した。アンモニウムクロライド(NHCl)水溶液で反応を終了した後、エチルエーテルで抽出した。有機物層から無水黄酸マグネシウム(MgSO)で水を除去した後、有機溶媒も除去した。得られた固体をエチルアルコールに分散させて1日に渡って撹拌した後、ろ過して真空乾燥し、10.12g(96.7%収率)の中間物質を得た。得られた固体を10mlのアセト酸に分散させた後、濃い硫酸10滴を加えて4時間に渡って還流した。得られた固体をろ過してエチルアルコールで洗浄した後に真空乾燥し、(9.49g、96.8%収率)の化学式bを得た。
MS:[M+H]=563.
【0076】
<製造例3>化学式cで表される出発物質の製造
ジフェニルアミン(1.692g、10mmol)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(1−bromo−2−iodobenzene、1.5mL、12mmol)、炭酸カリウム(KCO、2.7646g、20mmol)、ヨード化銅(CuI、95mg、0.5mmol)、およびキシレン25mLを窒素雰囲気下で還流(reflux)した。常温で冷却した後、生成物をエチルアセテートで抽出し、無水黄酸マグネシウム(MgSO)で水気を除去した後、減圧下で溶媒を除去した。ヘキサン溶媒を用いてシリカゲルカラムを通過させて化合物を得た後、溶媒を減圧下で除去して真空乾燥させ、所望する白色固体の前記化合物c(2.27g、70%収率)を得た。
MS:[M+H]=324.
【0077】
<製造例4>化学式dで表される出発物質の製造
化学式cで表される出発物質(7.0g、21.6mmol)を精製されたTHF300mlに溶かした後、−78℃に冷却した後、n−BuLi(2.5Min hexane、8.64ml、21.6mmol)をゆっくり滴下した。同じ温度で30分間に渡って撹拌した後、2,7−ジブロモ9−フルオレノン(2,7−dibromo−9−fluorenone、6.08g、18.0mmol)を加えた。同じ温度で40分間に渡って撹拌した後、常温に温度を上げて3時間さらに撹拌した。アンモニウムクロライド(NHCl)水溶液で反応を終了した後、エチルエーテルで抽出した。有機物層から無水黄酸マグネシウム(MgSO)で水を除去した後、有機溶媒も除去した。得られた固体をエチルアルコールに分散させて1日に渡って撹拌した後、ろ過して真空乾燥して中間物質を得た。得られた固体を10mlのアセト酸に分散させた後、濃い硫酸10滴を加えて4時間に渡って還流した。得られた固体をろ過してエチルアルコールで洗浄した後、真空乾燥して(10.98g、90%収率)の化学式dを得た。
MS:[M+H]=564.
【0078】
<実施例1>
【化9】

【0079】
化学式1A(15g、46.55mmol)、アニリン(13g、139.66mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(6.7g、69.82mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.24g、0.46mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、化学式1B(13g、収率83.5%)を得た。
MS:[M+H]=334
【0080】
化学式1B(10.41g、31.13mmol)、化学式d(8g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式1(11.4g、収率75%)を得た。
MS:[M+H]=1072
【0081】
<実施例2>
【化10】

【0082】
化学式2A(18.5g、46.55mmol)、アニリン(13g、139.66mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(6.7g、69.82mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.24g、0.46mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、化学式2B(16g、収率83.7%)を得た。
MS:[M+H]=410
【0083】
化学式2B(12.78g、31.13mmol)、化学式d(8g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式2(13.51g、収率78%)を得た。
MS:[M+H]=1224
【0084】
<実施例3>
【化11】

【0085】
化学式2B(10.41g、31.13mmol)、化学式b(7.97g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式3(14g、収率81%)を得た。
MS:[M+H]=1222
【0086】
<実施例4>
【化12】

【0087】
化学式1B(10.41g、31.13mmol)、化学式b(7.97g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させて、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式4(11.96g、収率79%)を得た。
MS:[M+H]=1070
【0088】
<実施例5>
【化13】

【0089】
α−テトラロン(α−Tetralone、18g、123mmol)、フェニルヒドラジニウムクロライド(phenylhydrazinium choride、11g、76mmol)を少量のアセト酸(acetic acid)を入れ、エチルアルコール150mlに2時間に渡って窒素気流下で還流した。常温で冷却させた後、生じた生成物をろ過して乾燥し、化学式5A(17.6g、収率65%)を得た。
MS:[M+H]=219
【0090】
化学式5A(17.6g、80.5mmol)、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン(tetrachloro−1,4−benzoquinone、27.45g、111.7mmol)を窒素雰囲気下でキシレン(xylene)300mlで2時間に渡って還流させた。反応溶液にNaOH(10%)と水を入れて終了させ、有機層を抽出した。反応液を濃縮させてEtOHで再結晶し、化学式5B(16.7g、収率96%)を得た。
MS:[M+H]=217
【0091】
化学式5B(8.4g、38.6mmol)、ブロモベンゼン(7.3g、46.3mmol)をキシレン200mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド5.6g(57.9mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.19g、0.386mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、化学式5C(10.19g、収率90%)を得た。
MS:[M+H]=293
【0092】
化学式5C(10.19g、34.7mmol)をクロロホルム(300mL)に溶かし、N−ブロモスクシンイミド(6.18g、34.7mmol)を添加した後、5時間に渡って常温で撹拌した。反応溶液に蒸溜水を入れて終了させ、有機層を抽出した。反応液を濃縮させてEtOHで再結晶し、化学式5D(5.63g、収率43%)を得た。
MS:[M+H]=372
【0093】
化学式5D(17.3g、46.55mmol)、アニリン(13g、139.66mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(6.7g、69.82mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.24g、0.46mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、化学式5E(12g、収率67%)を得た。
MS:[M+H]=384
【0094】
化学式5E(11.97g、31.13mmol)、化学式b(7.97g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式5(11.26g、収率68%)を得た。
MS:[M+H]=1170
【0095】
<実施例6>
【化14】

【0096】
化学式5E(11.97g、31.13mmol)、化学式d(8g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式7(11.11g、収率67%)を得た。
MS:[M+H]=1172
【0097】
<実施例7>
【化15】

【0098】
化学式17A(15g、46.55mmol)、アニリン(13g、139.66mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(6.7g、69.82mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.24g、0.46mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、化学式17B(13g、収率83.5%)を得た。
MS:[M+H]=334
【0099】
化学式17B(10.41g、31.13mmol)、化学式d(8g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式17(10.47g、収率69%)を得た。
MS:[M+H]=1072
【0100】
<実施例8>
【化16】

【0101】
化学式17B(10.41g、31.13mmol)、化学式b(7.97g、14.15mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−ターシャリ−ブトキシド(4.0g、42.45mmol)、Pd[P(t−Bu)(0.07g0.14mmol)を添加した後、5時間に渡って窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸溜水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマル−ヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに撹拌した後に真空乾燥し、構造式18(12.26g、収率81%)を得た。
MS:[M+H]=1070
【0102】
<実験例1>
ITO(indium tin oxide)が1000Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を洗剤を溶かした蒸溜水に入れて超音波で洗浄した。このとき、洗剤としてはフィッシャー社(FischerCo.)製品を用い、蒸溜水としてはミリポア社(MilliporeCo.)製品のフィルタ(Filter)によって2次に渡ってろ過された蒸溜水を用いた。ITOを30分間に渡って洗浄した後、蒸溜水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間に渡って進行した。蒸溜水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールの溶剤で超音波洗浄をして乾燥させた後、プラズマ洗浄機に輸送させた。また、酸素プラズマを利用して前記基板を5分間に渡って洗浄した後、真空蒸着器に基板を輸送させた。
【0103】
上述したように準備されたITO透明電極上に、実施例1で製造された構造式1の化合物を500Åの厚さに熱真空蒸着して正孔注入層を形成した。
【0104】
前記正孔注入層上に正孔を輸送する物質である下記化学式の4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)(400Å)を真空蒸着して正孔輸送層を形成した。
【0105】
【化17】

【0106】
続いて、前記正孔輸送層胃に膜厚さ300Åで下記ようなGHとGDを20:1の重量比で真空蒸着して発光層を形成した。
【化18】

【0107】
前記発光層上に下記化学式の電子輸送層物質を200Åの厚さに蒸着して電子輸送層を形成した。
【化19】

【0108】
前記電子輸送層上に順に12Åの厚さのリチウムフルオライド(LiF)と2000Åの厚さのアルミニウムを蒸着して負極を形成した。
前記過程において、有機物の蒸着速度は0.3〜0.8Å/secに維持した。また、負極のリチウムフルオライドは0.3Å/sec、アルミニウムは1.5〜2.5Å/secの蒸着速度を維持した。蒸着時の真空度は1〜3×10−7に維持した。
【0109】
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmで3.6Vの電界を示し、31cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入および輸送層が役割をしているということを示す。
【0110】
<実験例2>
正孔注入および輸送層材料として実施例2で製造した構造式2の化合物を利用したことを除いては、実験例1と同じように実施して有機発光素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmで3.6Vの電界を示し、32cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入の役割をしているということを示す。
【0111】
<実験例3>
正孔注入および輸送層材料として実施例3で製造した構造式3の化合物を利用したことを除いては、実験例1と同じように実施して有機発光素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmで3.7Vの電界を示し、31cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入の役割をしているということを示す。
【0112】
<実験例4>
正孔注入および輸送層材料として実施例4で製造した構造式4の化合物を利用したことを除いては、実験例1と同じように実施して有機発光素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmで3.7Vの電界を示し、30cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入の役割をしているということを示す。
【0113】
<実験例5>
正孔注入および輸送層材料として実施例5で製造した構造式5の化合物を利用したことを除いては、実験例1と同じように実施して有機発光素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmde3.8Vの電界を示し、30cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入の役割をしているということを示す。
【0114】
<実験例6>
正孔注入および輸送層材料として実施例6で製造した構造式7の化合物を利用したことを除いては、実験例1と同じように実施して有機発光素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmde3.7Vの電界を示し、31cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入の役割をしているということを示す。
【0115】
<実験例7>
正孔注入および輸送層材料として実施例7で製造した構造式17の化合物を利用したことを除いては、実験例1と同じように実施して有機発光素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmで3.8Vの電界を示し、31cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入の役割をしているということを示す。
【0116】
<実験例8>
正孔注入および輸送層材料として実施例8で製造した構造式18の化合物を利用したことを除いては、実験例1と同じように実施して有機発光素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度10mA/cmで3.8Vの電界を示し、32cd/Aの効率を示す緑色の発光を現した。このように素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、正孔注入の役割をしているということを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)の化合物:
【化1】

[前記化学式(1)において、
tは1または2であり、Zは下記化学式(2a)または化学式(2b):
【化2】

で表示され、
nおよびmは独立に、1〜7の整数であり、uは1〜8の整数であり、
sは0〜10の整数であり、rは0、1、または2であり、
qは1〜3の整数であり、qが2以上の場合、括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
〜Rは独立に、水素、重水素、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、nまたはuが2以上の場合、Rは互いに同一または異なり、隣接するRが互いに連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、mが2以上の場合、Rは互いに同一または異なり、隣接するRが互いに連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、
Arは置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、sが2以上の場合、Arは互いに同一または異なり、
Ra〜Rhは独立に、水素、重水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、Ra〜Rhのうちの隣接する基は互いに連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができる]。
【請求項2】
前記化学式(1)が、下記化学式(3)または(4):
【化3】

[前記化学式(3)および(4)において、
n、m、u、s、r、q、R〜R、Ar、Ra〜RdおよびRgは化学式(1)で定義したとおりであり、
pは1〜4の整数であり、
Riは独立に、水素、重水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、隣接する置換基と連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、pが2以上の場合、Riは互いに同一または異なる]
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化学式(1)が、下記化学式(5)〜(20)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化4A】

【化4B】

【化4C】

【化4D】

【化4E】

【化4F】

【化4G】

【化4H】

[前記化学式(5)〜(20)において、
Rb〜Rhは化学式(1)で定義したとおりであり、
Riおよびpは化学式(3)および(4)で定義したとおりであり、
Ra1、Ra2、R11〜R26、R31、R32、RおよびR’は独立に、水素、重水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロ環基、および置換または非置換のアリールアミン基からなる群から選択され、これらは隣接する基と連結して脂肪族環、芳香族環、またはヘテロ環を含む単環または縮合環を形成することができ、
xおよびyは独立に、1〜4の整数であり、xが2以上の場合にRは互いに同一または異なり、yが2以上の場合、R’は互いに同一または異なる]。
【請求項4】
化学式(1)において、R3、Ra、およびRdがアリール基であり、tは2であり、Rb〜Rc、Re〜Rg、R1およびR2が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化学式(3)または(4)において、R3およびRaがアリール基であり、tは2であり、Rb〜Rc、Rg〜Ri、R1およびR2が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
前記化学式(1)が下記構造式で表される、請求項1に記載の化合物。
【化5A】

【化5B】

【化5C】

【化5D】

【化5E】

【化5F】

【化5G】

【請求項7】
第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極の間に配置された1層以上の有機物層を含む有機電子素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が請求項1〜6のいずれか一項に記載の化学式(1)の化合物を含む、有機電子素子。
【請求項8】
前記有機物層が、前記化学式(1)の化合物を含む、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入、および輸送層または正孔抽出層を含む、請求項7に記載の有機電子素子。
【請求項9】
前記有機物層が、前記化学式(1)の化合物を含む正孔注入層を含む、請求項7に記載の有機電子素子。
【請求項10】
前記有機電子素子が、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、キノリン、およびフェナントロリン基から選択される作用基を有する化合物を含む電子輸送層を含む、請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項11】
前記有機電子素子が、有機発光素子、有機太陽電池、有機感光体(OPC)ドラム、および有機トランジスタからなる群より選択される、請求項7に記載の有機電子素子。

【公表番号】特表2013−510848(P2013−510848A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538763(P2012−538763)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008013
【国際公開番号】WO2011/059271
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】