説明

新規な5−フェニル−3−ピリダジノン化合物

【課題】プラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1産生抑制作用を示し、組織線維化および血栓症に有用な新規化合物、および該化合物を含有する医薬の提供。
【解決手段】下式(1)で表される5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、および該化合物を含有する医薬。


(式中、R1及びR5は、水素原子、アルキル基等、R2、R3及びR4は、水素原子等、R6はアルキル基等、R7は水素原子等、R8は水素原子、アルキル基、アリール基等を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1(以下PAI−1と略す)産生抑制作用を有する5−フェニル−3−ピリダジノン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓形成は、正常時において止血血栓を形成し、出血を止める重要な生体反応である。しかし、異常な血栓形成は、日本や欧米において主要な死因の1つとして捉えられている虚血性疾患の原因となると考えられている。病的血栓が原因となる疾患は多数存在し、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心房内血栓、肺塞栓症、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固、虚血性脳疾患(脳梗塞、脳出血)、動脈硬化などが報告されている。現在、これらの病的血栓に対し、いくつかの薬剤が使用されている。代表的なものとして、抗血小板薬、凝血因子阻害薬、ビタミンK阻害薬、線維素溶解薬が挙げられる。
【0003】
線溶系はプラスミノーゲンをプラスミノーゲンアクチベータであるt−PA及びウロキナーゼが活性化することによって開始され、生じたプラスミンが血栓の構成成分であるフィブリンを分解することによって血栓溶解が進行する。このうちプラスミノーゲンアクチベータに対する生理的な制御因子は、血管内皮細胞や活性化血小板から放出されるPAI−1である。PAI−1は379個のアミノ酸で構成され、分子内にS−S結合をもたない分子量約50kDaの糖蛋白質である。PAI−1はt−PAの酵素活性中心と1:1のモル比で結合し、t−PA活性を阻害する。正常状態では、線溶系調節物質は互いにバランスを保ちながら出血にも血栓にもならず血管内をなめらかに血液が流れる。しかし、病的血栓症や血管内皮細胞ではt−PAの産生が低下し、PAI−1の分泌が亢進していると考えられている。従って、病的血栓において増加したPAI−1を阻害することによって、治療効果を示すことができると考えられる。
【0004】
一方で、血栓症だけではなく、組織の線維化に対しても線溶系が強く関与することが知られている。線維化は、肺、腎臓、肝臓、皮膚、脳神経、血管等の多くの臓器で観察される病態であるが、その治療法はおろか病理学的な原因すら解明されていない。肺線維症、肝硬変、腎硬化症、ケロイドといった線維性疾患では、病変局所におけるTGF−βの過剰な発現(活性化)が認められ、コラーゲンやフィブロネクチンといった細胞外マトリックスタンパクの異常な蓄積を引き起こしている。PAI−1はTGF−βによって産生が亢進され(非特許文献1)、また、肺線維症の動物モデルであるブレオマイシンにより誘発される肺線維症において組織中のPAI−1濃度が上昇している事も報告されている(非特許文献2)。さらに、PAI−1のノックアウトマウスを用いた結果、線維化の指標となるヒドロキシプロリン量の増加が抑制されており、逆にPAI−1を過剰発現させたマウスではヒドロキシプロリンの産生がコントロールよりも増加すると報告されている(非特許文献3)。また、PAI−1を阻害することにより増加するuPAを投与した際は形成された線維を溶解できることが報告されている(非特許文献4)。これらのことからPAI−1を阻害することにより、線維症に対して治療効果を示すことができると考えられる。
【0005】
これまでにも、PAI−1阻害を示す化合物が知られている。例えば、2,5−ピロリジン誘導体(特許文献1、2)、ブタジエン誘導体(特許文献3〜8)、ジケトピペラジン誘導体(特許文献9)、ナフチルインドール誘導体(特許文献10)等が報告されているが、現在までに臨床上適用されるには至っておらず、さらに有用な化合物の開発が望まれている。
【0006】
一方、5−フェニル−3−ピリダジノン骨格を有する化合物が報告されている。例えば、特許文献11には、ベータアドレナリン受容体拮抗作用を有する化合物が記載されている。特許文献12には、コリン作動性受容体リガンドとして作用する化合物の合成中間体が記載されている。特許文献13には、鎮痛作用を有する化合物の合成中間体が記載されている。特許文献14には、ホスホジエステラーゼIV阻害作用を有する化合物が記載されている。しかし、いずれの特許文献においても、PAI−1阻害作用、肺繊維症又は血栓症の予防及び/又は治療に有効であることを示す記載や示唆はなく、5−フェニル−3−ピリダジノン骨格を有する化合物が肺繊維症や血栓症等の疾患の予防及び/又は治療に有効であることは全く知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平7−149642号公報
【特許文献2】特開平7−149643号公報
【特許文献3】特開平7−165573号公報
【特許文献4】特開平7−165574号公報
【特許文献5】特開平10−287622号公報
【特許文献6】特開2003−89687号公報
【特許文献7】特開2004−203793号公報
【特許文献8】欧州公開特許0563798号公報
【特許文献9】WO95/32190号パンフレット
【特許文献10】WO03/000684号パンフレット
【特許文献11】特開昭60−89421号公報
【特許文献12】特開平4−234369号公報
【特許文献13】特開昭50−37800号公報
【特許文献14】特開平10−59950号公報
【非特許文献1】J.Biol.Chem.,263,3111(1988)
【非特許文献2】J.Clin.Invest.,96,1621(1995)
【非特許文献3】J.Clin.Invest.,97,232(1996)
【非特許文献4】Clin.Invest.Med.,17:69−76,(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、PAI−1産生抑制作用、組織線維化抑制作用及び線溶作用を有する化合物を見出し、線維症を呈する疾患、すなわち肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支喘息、肝炎、肝硬変、粥状動脈硬化症、強皮症、PTCA後の冠動脈再狭窄、間質性心筋炎、間質性膀胱炎、糸球体腎炎、血管炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、HIV腎症、IgA腎症、ループス腎症、間質性腎炎、尿管閉塞による閉塞腎、熱傷後の皮膚はんこん化の予防・進行抑制及び/又は治療のための医薬、及び病的血栓が原因となる疾患、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心房内血栓、肺塞栓症、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固、虚血性脳疾患(脳梗塞、脳出血)、動脈硬化症などの予防及び/又は治療のための医薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、PAI−1産生抑制作用を有する化合物の探索を行った結果、本発明の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物が強いPAI−1産生抑制作用、組織線維化抑制作用及び線溶作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記の通りである。
[1]下記一般式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式中、
1及びR5は、同一又は異なっていてもよく、独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、又はC3-7アシクロアルキル基を示し;
2、R3及びR4は、同一又は異なっていてもよく、独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、C1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、ハロC1-6アルキル基、カルバモイル基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C1-6アシル基を示し;
6はC1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、フェニル基又は5〜6員へテロアリール基(ここでフェニル基、5〜6員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)を示し;
7は水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、フェニル基又は5〜6員へテロアリール基(ここでフェニル基、5〜6員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)を示し;
8は水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、C6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基(ここでC6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)を示す。
[グループA]ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、C1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、ハロC1-6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1-6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C1-6アシル基、C6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基)
で表される5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【0012】
[2]一般式(1)のR2、R3及びR4が水素原子である、前記[1]に記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【0013】
[3]一般式(1)のR5が水素原子である、前記[1]又は[2]のいずれか1つに記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【0014】
[4]一般式(1)のR7が水素原子である、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【0015】
[5]前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物と、製薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物。
【0016】
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を含有することを特徴とするプラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1に媒介される病状又は症状の予防及び/又は治療のための医薬。
【0017】
[7]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を含有することを特徴とする組織線維化の予防及び/又は治療のための医薬。
【0018】
[8]前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を含有することを特徴とする血栓症の予防及び/又は治療のための医薬。
【0019】
[9]プラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1阻害用の製剤を製造するための、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【0020】
[10]組織線維化の予防及び/又は治療用の製剤を製造するための、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【0021】
[11]血栓症の予防及び/又は治療用の製剤を製造するための、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【0022】
[12]有効量の前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を投与することを特徴とする、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1の阻害方法。
【0023】
[13]有効量の前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を投与することを特徴とする、組織線維化の予防及び/又は治療方法。
【0024】
[14]有効量の前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を投与することを特徴とする、血栓症の予防及び/又は治療方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の化合物は、優れたPAI−1産生抑制作用を有しており、その線維素溶解作用によって線維症を呈する疾患(例えば、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支喘息、肝炎、肝硬変、粥状動脈硬化症、強皮症、PTCA後の冠動脈再狭窄、間質性心筋炎、間質性膀胱炎、糸球体腎炎、血管炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、HIV腎症、IgA腎症、ループス腎症、間質性腎炎、尿管閉塞による閉塞腎、熱傷後の皮膚はんこん化)の予防・進行抑制及び/又は治療のための医薬、病的血栓が原因となる疾患(例えば虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心房内血栓、肺塞栓症、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固、虚血性脳疾患(脳梗塞、脳出血)、動脈硬化症)の予防及び/又は治療のための医薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明における用語の定義は以下の通りである。
【0027】
本明細書中で使用するとき、「C1-6アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
本明細書中で使用するとき、「C1-4アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0029】
本明細書中で使用するとき、「C3-7アシクロアルキル基」とは、環状部分を有する炭素数3〜7のアルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
【0030】
本明細書中で使用するとき、「C6-10アリール基」とは、炭素数6〜10の単環式、多環式又は縮合環式の芳香族炭化水素基を意味し、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基等が挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用するとき、「5〜6員へテロアリール基」とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子の中から選ばれた1個以上のヘテロ原子を含有する単環式へテロアリール基を意味し、例えば、チアゾリル基、チエニル基、フリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、フラザニル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。
【0032】
本明細書中で使用するとき、「5〜10員へテロアリール基」とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子の中から選ばれた1個以上のヘテロ原子を含有する単環式又は縮合多環式へテロアリール基を意味し、例えば、チアゾリル基、チエニル基、フリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、フラザニル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、インダゾリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、プリニル基、プテリジニル基、シンノリニル基、クロメニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基等が挙げられる。
【0033】
本明細書中で使用するとき、「ハロゲン原子」とは、ハロゲノ基を意味し、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0034】
本明細書中で使用するとき、「ハロC1-6アルキル基」とは、前記C1-6アルキル基に1個以上のハロゲン原子が結合した基を意味し、例えば、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、4−フルオロブチル基、4−クロロブチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル基等が挙げられる。
【0035】
本明細書中で使用するとき、「窒素原子に1個以上のC1-6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基」とは、「無置換カルバモイル基(−CONH2)」、窒素上にC1-6アルキル基が1つ結合した「モノC1-6アルキルカルバモイル基(−CONHC1-6アルキル)」、窒素上にC1-6アルキル基が1つ結合した「ジC1-6アルキルカルバモイル基(−CON(C1-6アルキル)2)」を示す。
【0036】
「モノC1-6アルキルカルバモイル基」としては、例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、t−ブチルカルバモイル基、n−ペンチルカルバモイル基、2−メチルブチルカルバモイル基、2,2−ジメチルプロピルカルバモイル基、n−ヘキシルカルバモイル基等が挙げられる。
【0037】
「ジC1-6アルキルカルバモイル基」としては、例えば、ジメチルカルバモイル基、メチルエチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジ−n−プロピルカルバモイル基、ジイソプロピルカルバモイル基、ジ−n−ブチルカルバモイル基、ジイソブチルカルバモイル基、ジ−t−ブチルカルバモイル基、ジ−n−ペンチルカルバモイル基、ジ−2−メチルブチルカルバモイル基、ジ−2,2−ジメチルプロピルカルバモイル基、ジ−n−ヘキシルカルバモイル基等が挙げられる。
【0038】
本明細書中で使用するとき、「C1-6アルコキシ基」とは、前記「C1-6アルキル基」が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、4−メチルブトキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、4−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、2−メチルペントキシ基、1−メチルペントキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、1−エチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基等が挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用するとき、「C1-4アルコキシ基」とは、前記「C1-4アルキル基」が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0040】
本明細書中で使用するとき、「C1-6アルコキシカルボニル基」とは、前記「C1-6アルコキシ基」がカルボニル基(C=O)に結合した基を意味し、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、イソペントキシカルボニル基、ネオペントキシカルボニル基、4−メチルブトキシカルボニル基、1−エチルプロポキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、イソヘキシルオキシカルボニル基、4−メチルペントキシカルボニル基、3−メチルペントキシカルボニル基、2−メチルペントキシカルボニル基、1−メチルペントキシカルボニル基、3,3−ジメチルブトキシカルボニル基、2,2−ジメチルブトキシカルボニル基、1,1−ジメチルブトキシカルボニル基、1,2−ジメチルブトキシカルボニル基、1,3−ジメチルブトキシカルボニル基、2,3−ジメチルブトキシカルボニル基、1−エチルブトキシカルボニル基、2−エチルブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0041】
本明細書中で使用するとき、「C1-6アシル基」とは、前記「C1-6アルキル基」の1位にオキソ基が結合した基を意味し、直鎖又は分枝状であってもよい。従って、「C1-6アシル基」としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基等が挙げられる。
【0042】
本明細書中で使用するとき、「1個以上の置換基で置換されてもよい」、「窒素原子に1個以上のC1-6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基」等における「1個以上」とは、1個以上の置換可能な最大個数を示し、その数は特に制限はされない。2個以上の場合、置換基の種類は同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
その他、本明細書中に定義のない基については通常の定義に従う。
【0044】
本発明において、一般式(1)の好ましい様態は以下の通りである。
【0045】
一般式(1)中、R1としては、水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、又はC3-7アシクロアルキル基が挙げられる。より好ましくは、C1-6アルキル基である。C1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0046】
一般式(1)中、R2、R3及びR4としては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、C1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、ハロC1-6アルキル基、カルバモイル基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C1-6アシル基が挙げられる。より好ましくは、水素原子である。
【0047】
一般式(1)中、R5としては、水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、又はC3-7アシクロアルキル基が挙げられる。より好ましくは、水素原子である。
【0048】
一般式(1)中、R6としては、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、フェニル基又は5〜6員へテロアリール基(ここでフェニル基、5〜6員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)が挙げられる。より好ましくは、C1-6アルキル基である。C1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0049】
一般式(1)中、R7は、水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、フェニル基又は5〜6員へテロアリール基(ここでフェニル基、5〜6員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)が挙げられる。より好ましくは水素原子である。
【0050】
一般式(1)中、R8は水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、C6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基(ここでC6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)が挙げられる。より好ましくは、水素原子、C1-6アルキル基、C6-10アリール基である。C1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。C6-10アリール基としてはフェニル基がさらに好ましい。
【0051】
上記一般式(1)の化合物の中には不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在するものがあるが、この光学異性体も本発明に含まれる。また、上記一般式(1)の化合物及びその光学異性体の塩も本発明に含まれ、その塩としては、薬理学的に許容され得る塩が好ましく、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、及びシュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。さらに、本発明には、上記一般式(1)の化合物、その光学異性体及びそれらの塩の水和物及び溶媒和物も含まれ、溶媒和物の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム等が挙げられる。
【0052】
上記一般式(I)の化合物は、公知の方法(特開昭50−37800号公報、特開昭60−89421号公報、特開平4−234369号公報、特開平10−59950号公報)で製造できるが、製造方法の例を下記の反応図にて説明する。
【0053】
【化2】

【0054】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、前記と同じ基を示し、R’、R”は、C1-6アルキル基、C6-10アリールC1-6アルキル基等を示し、X、はハロゲン原子を示し、Pは、適当な保護基を示す。保護基Pの導入及びPの脱保護は公知の方法(Protective Groups in Organic Synthesis Third Edition,John Wiley & Sons,Inc.)を参考にして行うことができる。
【0055】
工程(1):ケトン誘導体(2)を塩基存在下、Wittig試薬を作用させ、ビニルエーテル体(3)を製造することができる。この反応は無溶媒下又は溶媒下で行われる。溶媒としては、反応を阻害しないものであればどのようなものでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。塩基は、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、t−ブトキシカリウム等が挙げられる。反応温度は−78℃から反応混合物が還流する温度の範囲である。この反応によって得られた化合物は、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の方法で精製される。
【0056】
工程(2):ビニルエーテル体(3)を酸触媒存在下、加水分解して、化合物(4)を合成する。この反応は無溶媒下又は溶媒下で行われる。溶媒としては、反応を阻害しないものであればどのようなものでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸、水等が挙げられる。酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、酪酸、リン酸等が挙げられる。反応温度は−78℃から反応混合物が還流する温度の範囲である。この反応によって得られた化合物は、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の方法で精製される。
【0057】
工程(3):化合物(4)を塩基の存在下、ハロゲン化酢酸エステル類を反応させ、4−ケト酪酸エステル(5)を合成する。この反応は無溶媒下又は溶媒下行われる。溶媒としては、反応を阻害しないものであればどのようなものでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。塩基は、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、t−ブトキシカリウム等が挙げられる。反応温度は−78℃から反応混合物が環流する温度の範囲である。この反応によって得られた化合物は、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の方法で精製される。
【0058】
工程(4):4−ケト酪酸エステル(5)とヒドラジン類を反応させ、2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン(6)を合成する。この反応は無溶媒下又は溶媒下で行われる。溶媒としては、反応を阻害しないものであればどのようなものでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、デカリン、テトラリン、酢酸、水等が挙げられる。反応温度は通常0〜120℃程度である。この反応によって得られた化合物は、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の方法で精製される。
【0059】
工程(5):2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン(6)の保護基(P)を適切な条件で脱保護し、フェノール体(1)を合成する。
【0060】
上記反応工程において用いられる出発物質は、商業的に入手可能な化合物又は既知の化合物から公知の方法に基づいて合成される。出発物質であるケトン誘導体(2)は、WO94/10118号公報に記載されている方法により製造できる。
【0061】
本発明化合物を治療剤として用いる場合、単独又は薬学的に可能な担体と複合して投与する。その組成は、化合物の溶解度、化学的性質、投与経路、投与計画等によって決定される。
【0062】
例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又は液剤等の剤型にして、経口投与してもよいし、注射剤(静脈内、筋肉内、皮下)、軟膏剤、坐剤、エアゾール剤等の剤型にして非経口投与してもよい。また、注射用の粉末にして用時調製して使用してもよい。経口、経腸、非経口、局所投与等に適した医薬用の有機又は無機の固体又は液体の担体若しくは希釈剤を本発明化合物と共に用いることができる。例えば、経口剤の場合には乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ショ糖などの賦形剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、硬化油などの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アラビアゴムなどの湿潤剤、その他必要に応じて界面活性剤、矯味剤などを使用して所望の投与剤型に調製することができる。
【0063】
また、非経口剤の場合には、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、寒天、トラガントガムなどの希釈剤を用いて、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、香料、着色剤などを使用することができる。製剤の調製法は常法によればよい。
【0064】
臨床投与量は、経口投与により用いる場合には、成人に対し本発明の化合物として、一般には、1日量0.01〜1000mgであり、好ましくは0.01〜100mgであるが、年令、病状、症状、同時投与の有無等により適宜増減することが更に好ましい。前記1日量の薬剤(本発明化合物)は、1日1回、又は適当間隔をおいて1日に2若しくは3回に分けて投与してもよいし、間欠投与してもよい。また、注射剤として用いる場合には、成人に対し本発明の化合物として、1回量0.001〜100mgを連続投与又は間欠投与することが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明を実施例及び実験例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例及び実験例に限定されるものではない。実施例のカラムクロマトグラフィーにおける溶出はTLC(Thin Layer Chromatography,薄層クロマトグラフィー)による観察下に行なわれた。TLC観察においては、TLCプレートとしてメルク(Merck)社製の60F254を、展開溶媒としてはカラムクロマトグラフィーで溶出溶媒として用いられた溶媒を、検出法としてUV検出器を採用した。カラム用シリカゲル(SiO2)は富士シリシア化学社製のシリカゲルPSQ60B又はPSQ100Bを用いた。NMRスペクトルは内部又は外部基準としてテトラメチルシランを用いて日本電子データム社製JNM−AL400で測定し、化学シフトをδ値で、カップリング定数をHzで示した。混合溶媒において( )内に示した数値は各溶媒の容量混合比である。また溶液における%は溶液100ml中のg数を表わす。また実施例中の記号は次のような意味である。
s :シングレット(singlet)
d :ダブレット(doublet)
t :トリプレット(triplet)
dd :ダブル ダブレット(double doublet)
m :マルチプレット(multiplet)
br s :ブロード シングレット(broad singlet)
J :カップリング定数(coupling constant)
【0066】
<実施例1>5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−2−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン(表1化合物No.1)の合成
(1)2−(ベンジルオキシ)−1−メトキシ−4−(1−メトキシ−1−プロペン−2−イル)ベンゼン
乾燥テトラヒドロフラン300mLに懸濁させたメトキシメチルトリフェニルホスフィンクロライド64.1gに−78℃でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液105mLを滴下し、そのままの温度で30分撹拌した。次いで、3−(ベンジルオキシ)−4−メトキシアセトフェノン24.0gの乾燥テトラヒドロフラン150mLを添加した。得られた溶液を徐々に室温まで加温し、塩化アンモニウム水溶液に注いだ。これを酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し残渣を得た。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2:5%酢酸エチル/ヘキサンから10%酢酸エチル/ヘキサンのグラジェントで溶出)にて精製し、標記化合物22.5g得た。
【0067】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.47−7.25(5.5H,m),7.11(0.5H,dd,J=8.4,1.7Hz),6.87−6.81(2.0H,m),6.23(0.5H,s),6.02(0.5H,s),5.16(1.0H,s),5.15(1.0H,s),3.88(1.5H,s),3.87(1.5H,s),3.67(1.5H,s),3.60(1.5H,s),1.91(1.5H,s),1.84(1.5H,s).
【0068】
(2)2−[3−(ベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]プロパナール
2−(ベンジルオキシ)−1−メトキシ−4−(1−メトキシ−1−プロペン−2−イル)ベンゼン21.1gをアセトン150mLに溶解し、濃塩酸12mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後アセトンを減圧下留去した。酢酸エチルで抽出後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去し残渣を得た。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2:10%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)にて精製し、標記化合物15.7gを得た。
【0069】
1H−NMR(CDCl3)δ:9.59(1H,d,J=1.3Hz),7.45−7.28(5H,m),6.90(1H,d,J=8.3Hz),6.77(1H,dd,J=8.3,2.0Hz),6.72(1H,d,J=2.0Hz),5.13(2H,s),3.88(3H,s),3.51(1H,q,J=6.8Hz),1.36(3H,d,J=7.1Hz).
【0070】
(3)エチル3−[3−(ベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−3−メチル−4−オキソブタノエート
2−[3−(ベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]プロパナール11.3gを乾燥テトラヒドロフラン200mL中、2.01gの水素化ナトリウムで処理し、テトラブチルアンモニウムヨージド772mgを加え室温で30分撹拌する。ついで、ブロモ酢酸エチル5.1mLを滴下し、80℃で4時間撹拌する。反応液を冷却後氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去し残渣を得た。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2:20%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)にて精製し、標記化合物7.11gを得た。
【0071】
1H−NMR(CDCl3)δ:9.42(1H,s),7.47−7.29(5H,m),6.88(1H,d,J=8.4Hz),6.82(1H,dd,J=8.5,1.9Hz),6.77(1H,brs),5.12(2H,s),4.03(2H,q,J=7.1Hz),3.87(3H,s),2.92(1H,d,J=15.5Hz),2.80(1H,d,J=15.5Hz),1.53(3H,s),1.15(3H,t,J=7.1Hz).
【0072】
(4)5−[3−(ベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−5−メチル−2−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン
3−[3−(ベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル]−3−メチル−4−オキソブタノエート2.33gを60%酢酸水溶液に懸濁し、フェニルヒドラジン1.42gを加え、18時間加熱環流した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し残渣を得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2:30%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)にて精製し、標記化合物2.05gを得た。
【0073】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.44−7.24(10H,m),6.92−6.85(3H,m),5.14(2H,s),3.89(3H,s),2.94(1H,d,J=16.4Hz),2.71(1H,d,J=16.4Hz),1.52(3H,s).
【0074】
(5)5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−2−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン
5−(3−(ベンジルオキシ)−4−メトキシフェニル)−5−メチル−2−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン2.05gをメタノール40mLに溶解し、5%パラジウム炭素を0.2g加えた後、水素雰囲気下、室温で9時間撹拌した。反応液をセライトを用いて濾過後、減圧下濾液を濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2:40%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)にて精製し、標記化合物1.62gを得た。
【0075】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.46−7.37(5H,m),7.28−7.24(1H,m),6.94(1H,d,J=2.0Hz),6.86−6.81(2H,m),5.66(1H,s),3.89(3H,s),3.00(1H,d,J=16.4Hz),2.74(1H,d,J=16.4Hz),1.58(3H,s).
【0076】
<実施例2>5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2,5−ジメチル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン(表1化合物No.2)の合成
実施例1(1)〜(5)と同様の手法を用い、フェニルヒドラジンのかわりにメチルヒドラジンを使用し標記化合物1.68gを得た。
【0077】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.16(1H,s),6.87(1H,d,J=2.2Hz),6.82(1H,d,J=8.4Hz),6.74(1H,dd,J=8.4,2.2Hz),5.65(1H,s),3.88(3H,s),3.35(3H,s),2.81(1H,d,J=16.5Hz),2.53(1H,d,J=16.5Hz),1.47(3H,s).
【0078】
<実施例3>5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン(表1化合物No.3)の合成
実施例1(1)〜(5)と同様の手法を用い、フェニルヒドラジンのかわりにヒドラジン一水和物を使用し標記化合物1.60gを得た。
【0079】
1H−NMR(CDCl3)δ:8.42(1H,s),7.14(1H,s),6.88(1H,d,J=2.2Hz),6.83(1H,d,J=8.3Hz),6.77(1H,dd,J=8.3,2.2Hz),5.69(1H,s),3.89(3H,s),2.82(1H,d,J=16.8Hz),2.55(1H,d,J=16.8Hz),1.51(3H,s).
【0080】
【表1】

【0081】
<実施例4>錠剤の製造
30gの5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−2−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン(表1化合物No.1)、乳糖253g、トウモロコシデンプン63g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40g、ステアリン酸カルシウム4gを混和し、通常の方法で圧縮して各錠剤が前記化合物10mgを含むようにする。
【0082】
<実施例5>カプセル剤の製造
30gの5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−5−メチル−2−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロピリダジン−3−オン(表1化合物No.1)、乳糖260g、トウモロコシデンプン66g、ステアリン酸カルシウム4gを混和した後、通常の方法でゼラチンカプセルに充填し各カプセルが前記化合物10mgを含むようにする。
【0083】
(実験例1)気道上皮細胞を用いたPAI−1産生抑制作用
組織中のPAI−1濃度を反映する、気道上皮細胞を用いたPAI−1産生作用に対する化合物の効果を検討した。実験にはヒト気道上皮細胞(BEAS−2B)を用いた。96wellのコラーゲンIコートプレートに2×105cell/mLに調製した細胞を0.1mLずつ添加し24時間培養を行なった後、10μMのTGF−βを含む培地を0.1mL添加し、24時間インキュベート後、培地上清のPAI−1量をELISAキットを用いて測定した。被験物質はジメチルスルホキシド(最終濃度0.1%以下)に溶解後リン酸緩衝液を用いて0.2,1,5及び25μMに調製し、前培養後に添加した。本発明化合物のPAI−1産生抑制作用をIC50値で表し、表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
(実験例2)ブレオマイシン誘発肺線維症モデルに対するPAI−1産生抑制作用
ブレオマイシンを気管内に投与する事により肺の線維化が引き起こされることが報告されている。その病理学的所見では肺胞壁の肥厚線維化、炎症性細胞の増加、ヒドロキシプロリン量の増加など臨床における特発性肺線維症と類似しており、肺線維症実験モデルとして多く用いられている(Biochem.Biophys.Res.Comm.,288,747(2001))。C57BL/6系マウス(6週齡、メス)へ生理食塩液に溶解した塩酸ブレオマイシン(ブレオ:日本化薬)6mg/kg,25μL/bodyを気管支内に500μLの圧縮空気と共に噴入した。気管内投与3週間後に肺ヒドロキシプロリン量の測定を行なった。被験物質は0.1、1及び10mg/kgの用量を0.5%カルボキシルメチルセルロース−ナトリウムに懸濁し1日1回経口投与した。本発明化合物の効果を、溶媒投与群の肺ヒドロキシプロリン量の増加に対する50%の抑制を示す化合物量(ED50)で表し、表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
(実験例3)Silica誘発肺線維症モデルに対するPAI−1産生抑制作用
Silicaを気管内に投与する事により肺の線維化が引き起こされることが報告されている。その病理学的所見では肺胞壁の肥厚線維化、ヒドロキシプロリン量の増加など臨床における間質性肺炎と類似しており、肺線維症実験モデルとして多く用いられている(J Toxicol Environ Health.37,425,(1992))。C57BL/6系マウス(6週齡、メス)へ生理食塩液に懸濁したSilica(石英標準試料:日本作業環境測定協会)0.1g/mL,40μLを2回点鼻投与した。Silicaの投与3週間後に肺ヒドロキシプロリン量の測定を行なった。被験物質は1及び10mg/kgの用量を0.5%カルボキシルメチルセルロース−ナトリウムに懸濁し1日1回経口投与した。本発明化合物の効果を、溶媒投与群の肺ヒドロキシプロリン量の増加に対する50%の抑制を示す化合物量(ED50)で表し、表4に示す。
【0088】
【表4】

【0089】
(実験例4)急性毒性
本発明の化合物No.1〜No.3を0.5%カルボキシルメチルセルロース−ナトリウムを含む生理食塩水に懸濁してddY系雄性マウスに腹腔内投与し、翌日生死を観察した。30mg/kgの投与量で死亡例が認められた化合物はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の化合物は、優れたプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1産生抑制作用を有しており、その線維素溶解作用によって肺線維症、腎線維症などの組織線維化疾患、慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息などの組織変性を呈する慢性呼吸器疾患及び虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心房内血栓、肺塞栓症、深部静脈血栓症などの病的血栓が原因となる疾患などの予防及び/又は治療に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式中、
1及びR5は、同一又は異なっていてもよく、独立して、水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、又はC3-7アシクロアルキル基を示し;
2、R3及びR4は、同一又は異なっていてもよく、独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、C1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、ハロC1-6アルキル基、カルバモイル基、カルボキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C1-6アシル基を示し;
6はC1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、フェニル基又は5〜6員へテロアリール基(ここでフェニル基、5〜6員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)を示し;
7は水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、フェニル基又は5〜6員へテロアリール基(ここでフェニル基、5〜6員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)を示し、R8は水素原子、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、C6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基(ここでC6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基は下記グループAから選ばれる1個以上の置換基で置換されてもよい)を示す、
[グループA]ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、C1-6アルキル基、C3-7アシクロアルキル基、ハロC1-6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1-6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C1-6アシル基、C6-10アリール基又は5〜10員へテロアリール基)
で表される5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【請求項2】
一般式(1)のR2、R3及びR4が水素原子である、請求項1に記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【請求項3】
一般式(1)のR5が水素原子である、請求項1又は2のいずれか1つに記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【請求項4】
一般式(1)のR7が水素原子である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の5−フェニル−3−ピリダジノン化合物、その光学異性体又はそれらの医薬上許容される塩もしくはこれらの水和物又は溶媒和物と、製薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を含有することを特徴とするプラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1に媒介される病状又は症状の予防及び/又は治療のための医薬。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を含有することを特徴とする組織線維化の予防及び/又は治療のための医薬。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を含有することを特徴とする血栓症の予防及び/又は治療のための医薬。
【請求項9】
プラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1阻害用の製剤を製造するための、請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項10】
組織線維化の予防及び/又は治療用の製剤を製造するための、請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項11】
血栓症の予防及び/又は治療用の製剤を製造するための、請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項12】
有効量の請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を投与することを特徴とする、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター−1の阻害方法。
【請求項13】
有効量の請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を投与することを特徴とする、組織線維化の予防及び/又は治療方法。
【請求項14】
有効量の請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物を投与することを特徴とする、血栓症の予防及び/又は治療方法。

【公開番号】特開2009−286732(P2009−286732A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141212(P2008−141212)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】