説明

新規なHCV侵入因子、オクルディン

ヒト・オクルディンタンパク質を、本質的なC型肝炎ウイルス(HCV)の細胞侵入因子であると特定する。オクルディンが、マウスおよび他の非ヒト細胞をHCV感染性にすること、およびヒト細胞のHCV感受性に必要とされることを示す。HCV感染を抑制するための関連方法、HCV発症機序に関するトランスジェニック動物モデル、HCVとオクルディンとの相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定する方法、HCV阻害剤もまた開示する。HCVとオクルディンとの相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定するのに有用なキットおよび細胞培養組成物もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年10月3日に出願された米国仮出願第61/102,588号と2009年1月2日に出願された米国仮出願第61/142,262号との両方に対する優先権の利益を主張し、両方ともその全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の組込み)
2009年9月29日に作成された16741バイト(オペレーティング・システムMS-Windows(登録商標)での測定)でファイル名「48602_84546_ST25.txt」に含まれる配列表は、本願と共に電子的に提出され、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。配列表は48個の配列を含む。
【0003】
(政府支援の表明)
本願の保護対象は、NIH、グラント番号AI072613のもと、合衆国政府による支援によりなされた。合衆国政府は本発明の権利の一部を有する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
C型肝炎ウイルス(HCV)は、世界的な肝疾患の主要因である。強く必要とされる特異的な抗ウイルス治療および有効なワクチンの開発は、この病原体の好都合な小動物モデルの欠如によって妨げられている。ヒトおよびチンパンジー宿主へのHCV親和性を制限する決定因子は未知である。ウイルスRNAの複製は、マウス細胞で実際に示されたが(25)(29)、これらの細胞は、HCV糖タンパク質を有するレンチウイルス粒子(HCVpp)(2)または細胞培養で産生されたHCV(HCVcc)に対して感染性ではなかった(未発表データ)。これは、侵入レベルでのブロックを示す。
【0005】
米国特許第6,252,045号は、オクルディン配列、オクルディン阻害剤の投与による増強された薬物送達およびオクルディン阻害剤を特定する方法を開示しており、ここでオクルディン阻害剤は、オクルディンの細胞外タンパク質配列との特異的な相互作用を通じ、傍細胞の透過性を高めるいずれかの試薬である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,252,045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の概要)
反復cDNAライブラリースクリーニングアプローチを通じて、我々は、ヒト・オクルディン(OCLN)が、マウス細胞をHCVppに対して感染性にさせうる本質的なHCV細胞侵入因子であることを特定した。同様に、OCLNはヒト細胞のHCV感受性に必要である。これは、非感染細胞でのOCLN過剰発現が、HCVppの取り込みを特異的に増強する一方で、許容細胞でのOCLNサイレンシングが、HCVppおよびHCVcc両方の感染を成立させなかったからである。OCLNに加えて、マウス細胞のHCVpp感染は、以前に特定されたHCV侵入因子であるCD81(20)、スカベンジャー受容体クラスBタイプI(SR−BI)(22)およびクローディン−1(CLDN1)(11)の発現を必要とした。ヒトまたはマウス起源のSR−BIおよびCLDN1タンパク質は、HCV侵入において同等に機能するが、OCLNとCD81の両方は、効率的な感染を可能にするためにはヒト起源のものでなければならない。COLNの種特異的決定因子は、OCLNの第2の細胞外ループにマップされた。新たなHCV侵入因子としてのOCLNの特定は、ウイルス侵入プロセスにおけるタイトジャンクション複合体の重要性をさらに強調するものであり、HCVの小動物モデルを開発することに対する大きな前進である。
【0008】
ウイルス糖タンパク質E1およびE2を有する脂質で覆われたヌクレオカプシドであるHCVビリオンは、ウイルス粒子成分と多くの細胞因子とが関与する高度に協調したプロセスでもって、宿主細胞に侵入するようである(26)。推定されるHCV侵入因子の長いリストに基づく強力な証拠が、テトラスパニンCD81(20)、SR−BI(22)およびタイトジャンクションタンパク質CLDN1(11)の一定の役割を裏付ける。しかしながら、3つすべてのヒト因子を過剰発現させた場合でも、多くのヒト細胞系およびすべての非霊長類細胞系がHCV侵入に対して耐性であることから(2)(図4c)、このリストは不完全なようである。
【0009】
非ヒト細胞をHCV侵入に対して感受性にさせる更なる因子を特定するために、我々は、高HCV許容性ヒト肝細胞癌Huh−7.5細胞系(3)から得られた相補DNAライブラリーのサイクリック・レトロウイルス・ベースのリパッケージング・スクリーン(cyclic retrovirus-based repackaging screen)を実施した。非許容性のマウス胎児線維芽細胞系NIH3T3を、HCV糖タンパク質を提示しウイルスの侵入のみを測定する欠損レンチウイルス粒子であるHCV偽粒子(HCV pseudoparticle)(HCVpp)(1)、(10)、(14)に対して感染可能にさせる遺伝子をスクリーンした(図4aおよび補助的な方法)。非ヒト細胞へのHCVの侵入を可能にしうる新しい成分を同定する可能性を最大にするために、我々は、ヒトCD81、SR−BIおよびCLDN1を過剰発現するNIH3T3サブクローンを利用した。このスクリーンは、ヒト・オクルディン(OCLN)が潜在的な新規のHCV侵入因子であると特定した。OCLNは、極性化上皮細胞のタイトジャンクション複合体に存在する4回膜貫通ドメインのタンパク質であり、そこでオクルディンは、傍細胞透過性および細胞接着を制御する機能を果たすようである(6、19)。NIH3T3細胞におけるヒトCD81、SR−BI、CLDN1およびOCLNの発現は、およそ120倍にまでHCVppの感染率を高めた(図4c)。
【0010】
OCLNがHCV侵入に必要とされることを確かめるため、我々は、OCLN発現とHCV感受性との間の関係をさまざまなヒト細胞系で調べた。本来的にHCV許容性のヒト肝細胞系(Huh−7.5およびHep3B)または以前に他の侵入因子を欠損することが示されたもの(肝細胞癌HepG2および胎児腎臓HEK293T)が、内因性のOCLNの容易に検出可能な濃度を発現することが分かった(図4d)。これらの細胞系において、OCLNのさらなる過剰発現はHCVppの感受性を高めなかった(図1a)。しかしながら、OCLNのサイレンシングは、Hep3B細胞のHCVpp感染を抑制し(図2f)、Huh−7.5細胞のHCVppおよびHCVcc感染の両方を抑制した(それぞれ図2eおよびg)。これは、OCLNが本来的に許容性細胞のHCV感染に必須であることを示す。水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質を有する偽粒子(VSVGpp)による感染は影響を受けなかったため、この阻害はHCV特異的であった(図2e−fの値はVSV−Gpp感染率に対して補正する)。対照的に、本来HCV耐性の腎癌細胞系の786−Oは、高濃度の主要なHCV侵入因子CD81、SR−BIおよびCLDN1を発現するが、Huh−7.5細胞よりも約17倍低いOCLNを発現する(図4d)。786−O細胞におけるOCLN過剰発現は、HCVpp感染を88倍超にまで特異的に高めた(図1a)。さらに、このHCVpp感染のOCLN依存性は、さまざまなHCV遺伝子型パネルにわたって観察された(図1b)。他のHCVpp耐性細胞系であるHeLa細胞由来の子宮頸癌系TZMは、内因性のCLDN1およびOCLNの両方を欠くことが見出された(Huh−7.5細胞よりもそれぞれ、>100倍および25倍未満のmRNA)(図4d)。これらの因子の過剰発現は組み合わさって、TZMのHCVpp感染率を450倍まで高めた。これらの結果は、OCLNが必須のHCV進入因子であることを示す。
【0011】
非ヒト細胞におけるHCV侵入の必要条件をさらに調べるために、我々は、ヒトCD81、SR−BI、CLDN1およびOCLNの1つ、2つ、3つまたはすべての組み合わせでマウスNIH3T3を形質転換した。発現レベルは、mCherry/CLDN1蛍光タンパク質融合体を発現させることによって(図5a)、またはCD81、SR−BI(図5a)およびOCLN(図5b)のFACS染色によって決定した。ヒト因子の組合せはいずれも、VSVGppの感染率を高めなかった(データは示さず、図3aの結果はVSVGppの値に対して規格化した)。ヒトCLDN1単独発現もSR−BI単独発現もいずれも、NIH3T3のHCVpp感染率を劇的に高めなかった(図3a)。反対に、ヒトOCLNまたはCD81のいずれかを発現する集団は、HCVpp感染率をわずかに高めたが(0.5倍)(図3a)、これら2つの因子の組合せを発現する細胞は、HCVppに関して1.2倍のより高い感染率であった(図3a)。しかしながら、4つすべての進入因子の完全なセットは、HCVpp許容性に関して、未処理のNIH3T3細胞よりも45倍も高いという、より大きな影響を与えた(図3a)。さらに、4つすべての因子の発現は、マウス胚性繊維芽細胞系のSTO5およびL929、ならびにマウス肝細胞系のAML12、Hepa1.6およびH2.35に対して、未処理細胞よりも4倍〜85倍高いHCV感受性を与えた(図1c)。VSVGppに対する許容性は、ヒト・タンパク質の発現によっては影響がなかった。これらのマウス細胞をHCVccで感染させる試みが失敗に終わったことは、以前に資料で裏付けられたように(24)(29)、これらの細胞中での不十分なウイルスRNA複製の結果のようである。
【0012】
4つの侵入因子のいずれがHCV種−特異的親和性に関与するかを調べるために、我々は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をヒトおよびマウスCD81、SR−BI、CLDN1およびOCLNのすべての組合せで形質転換した。4つすべてのヒト因子の発現は、CHO細胞のHCVpp感染率を336倍にまで特異的に高めた(図3b)。逆にいえば、4つのマウス・タンパク質の発現は、HCVppの感染率をわずか18倍にまで高めただけであった(図3b)。すべての組合せで、マウスSR−BIおよびCLDN1はヒト起源のものと同等に機能した(図3b)。これは、ヒト細胞において、90%の同一性を有するヒトおよびマウスCLDN1タンパク質は両方ともHCV侵入因子として同等に機能的であるという、我々の以前の観察(11)と一致するものであり、マウスおよびヒトSR−BIがHCV取り込みを同等に媒介できることをはじめて示すものである。以上で試験したマウス細胞はいずれも、マウスSR−BIまたはCLDN1のいずれも高レベルで発現していないことは注目すべきことであり、かくしてHCVppの許容性に関して、これらのタンパク質の形質転換に対する依存性が説明される。対照的に、CD81およびOCLNはCHO細胞およびNIH3T3細胞における種−特異的HCV侵入因子機能を発揮した。これらのヒト・タンパク質のいずれかを他の3つのマウス・タンパク質との関係で発現するCHO細胞は、マウス・タンパク質のみを発現する細胞よりもHCVppに対してわずかによい許容度であった(図3b)。さらに、ヒトCD81およびOCLN両方の発現は、マウスSR−BIおよびCLDN1と組み合わさって、4つすべてのヒト因子を発現する細胞と同じ様に、CHO細胞にHCVppによる感染性を与えた(図3b、ヒトCD81およびOCLNを有するいずれかと最後の棒を比較する)。これらの結果は、マウスおよびハムスターCD81をCD81欠損ヒト肝細胞癌の細胞系HepG2で発現させた場合、低レベルのHCV侵入(ヒトCD81よりも10倍超も低い)だけしか支援しないという、我々のこれまでの知見(13)と一致する。重要なことに、これらのデータは、CD81およびOCLNが、少なくともマウスおよびハムスター細胞との関係で最小のヒト特異的侵入因子を表すことを示す。
【0013】
CD81に関し、ラット・タンパク質とヒト・タンパク質との間のHCV侵入活性における種特異性の差異は、もっぱらその大きな細胞外ループに位置する(13)。91%同一性であるマウス・タンパク質とヒト・タンパク質との間に観察される機能的差異の要因をもたらすOCLN領域を決定するために、我々は、786−O細胞にキメラOCLN分子を発現させ、HCVpp許容性をアッセイした。これらの実験において、ヒトOCLNの第2細胞外ループ(EC2)を有するマウス・キメラが、全長のヒト・タンパク質と同程度の活性であり、マウスホモログよりも少なくとも4倍超の活性であった(図3d、それぞれmOCLN/hEC2をhOCLNとmOCLNとで比較する)。反対に、マウス・タンパク質のEC2を有するヒトOCLN変異体は、HCVpp感染性において全長マウス因子と同様に機能した(図3d、hOCLN/mEC2をmOCLNと比較する)。これらのデータは、OCLN HCV侵入因子機能のヒト特異的な決定因子が、EC2内に完全に含まれることを示す。
【0014】
本研究は、HCV宿主細胞侵入とHCV種親和性の両方を理解することの大きな前進を表す。我々が試験したヒト、マウスまたはハムスター細胞系はすべて、CD81、SR−BI、CLDN1およびOCLNを発現するように改変すると、HCV侵入を許容するようになった。これは、OCLNが細胞型特異的なHCV侵入因子のリストを完成させることを示し、HCV侵入に必要とされる他のいずれかの因子は偏在的に発現されているはずであることを示す。OCLNがタイトジャンクション複合体の主成分であるという事実は、HCV侵入に対するこの構造体と細胞極性の意義をさらに強調する。我々は以前に、CLDN1が、侵入プロセスの後半であって、ビリオン・インターナリゼーションの直前に作用することを示した(11)。タイトジャンクションでのこのCLDN1とOCLNとの密接な関係は、これら双方の因子が類似の時間枠内で機能しうることを示す。異なる細胞表面分布を有する複数の取込み因子の使用は、HCVがコクスサッキーウイルス(coxsackievirus)Bの協調された侵入経路と類似する侵入経路をたどるという仮説を強化する。コクスサッキーウイルスBは、はじめに管腔細胞表面上の一次受容体(崩壊促進因子)と相互作用し、続いてそのウイルス−受容体の複合体がタイトジャンクションに側方移動し、そこでコクサッキー・アデノウイルス(Adenovirus)受容体の補助受容体との相互作用に続いて、すぐに宿主細胞への取込みが生じる(7)。注目すべきことに、コクスサッキーウイルスB侵入もまたOCLNを要求する(8)。これは、このウイルスとHCVの類似の侵入機構を示す。Brazzoli et al.による最近の研究は、細胞表面上のCD81の、蛍光標識されたCD81抗体または可溶型のHCV糖タンパク質のいずれかによる初期の会合に続いて、GTPase依存的なアクチン再構成が生じ、CLDN1局在とOCLN局在双方が重なる細胞間接触領域にCD81結合型複合体が側方移動することが可能となることを実証しており(4)、HCV侵入のこの段階的モデルを支持する。
【0015】
HCV発症機序の研究、ならびにHCVウイルスを標的とする緊急の必要性のある有効な抗ウイルス物質および治療ワクチンおよび/または予防ワクチンの開発は、HCV感染および複製を裏づけることができる好都合な同系交配の小動物モデルの欠如によって著しく妨げられてきた。多くの障壁が確実に克服される必要があり、その後にマウスにおける完全なウイルス複製が達成されうる。マウス細胞におけるHCV RNA複製は非効率的であり(25)、(29)、ビリオン会合を支援するマウス細胞の能力は知られていない。しかしながら、我々の結果は、マウス細胞がHCV侵入を支援できない理由を明確に実証する。マウス細胞におけるHCV複製に対する主な障壁は、もはや、マウスCLDN1とSR−BIとの関係で、ヒトCD81およびOCLNの発現によって簡単に克服することができる。これは、HCV感染に関するマウスモデルを構築しうる明確なプラットフォームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
オクルディンタンパク質とのHCV相互作用を抑制する試薬と、対象の細胞とを接触させることを含みうる、C型肝炎ウイルス(HCV)による前記対象の感染を抑制、緩和または予防する方法であって、前記相互作用は、HCV侵入に必要とされるオクルディンの直接的もしくは間接的機能を含む、前記方法が、本明細書中で提供される。本方法の特定の実施形態において、対象は、マウス、ラット、サルまたはヒトである。本方法の特定の実施形態において、試薬は、オクルディンタンパク質の細胞外ループと結合する。特定の実施形態において、前記試薬は、抗体、アプタマーまたは組換えタンパク質からなる群より選択される。特定の実施形態において、前記試薬は抗体であり、該抗体はモノクローナル抗体または一本鎖抗体であってよい。
【0017】
また、本明細書中で提供されるものには、C型肝炎ウイルス(HCV)発症機序を研究するためのトランスジェニック動物モデルがあり、前記モデルは、当該動物におけるヒト・オクルディンのトランス遺伝子の発現を含み、それによって、前記のヒト・オクルディンのトランス遺伝子の発現が、前記動物をC型肝炎ウイルス(HCV)感染に対して許容性にすることを特徴とする。幾つかの実施形態において、トランスジェニック動物モデルは、前記動物が、マウス、サルおよびラットからなる群より選択されるものである。
【0018】
また、提供されるものは、C型肝炎ウイルス(HCV)感染の抑制物質をスクリーニングする方法であり、前記方法は、C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との結合を妨げるか又は弱める化合物ライブラリーをスクリーニングすることを含む。
【0019】
C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を特定する方法もまた提供され、前記方法は、a)工程 i)少なくともオクルディンタンパク質の細胞外ループまたはその保存的アミノ酸置換を含有する組換えタンパク質、あるいはii)オクルディンタンパク質の細胞外ループを含有する膜結合タンパク質の発現を提供する組換えベクターを含む細胞であって、前記オクルディンタンパク質のアミノ酸残基が前記細胞に対して細胞外に位置することを特徴とする、前記細胞のいずれかを提供すること;b)工程 (a)工程由来のタンパク質または細胞と、物質または化合物およびHCVエンベロープタンパク質、HCVエンベロープタンパク質ElおよびE2を発現する細胞、HCV偽型(pseudotyped)レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子、エクスビボHCV細胞培養粒子またはHCVとを接触させること;ならびにc)工程 前記化合物または物質が、工程(a)で提供されたタンパク質または細胞と、工程(b)で提供されたHCVエンベロープタンパク質、HCVエンベロープタンパク質E1およびE2を発現する細胞、HCV偽型レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子、エクスビボHCV細胞培養粒子またはHCVとの相互作用または融合を阻害するかどうかを決定し、それによってC型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定することを含む。本方法の特定の実施形態において、工程(a)の細胞は、CD81陽性細胞、SR−BI陽性細胞および/またはクローディン−1陽性細胞である。本方法の特定の実施形態において、工程(a)の細胞は、NIH3T3、L929、H2.35、Hepa1.6、AML12、CHO、786−0またはTZM細胞である。本方法の特定の実施形態において、組換えベクターは、DNAベクターまたはRNAベクターである。本方法の特定の実施形態において、工程(b)における物質は、抗体ライブラリー、アプタマーライブラリー、ペプチドライブラリー、組換えタンパク質ライブラリーまたはペプチドミメティックライブラリーにより提供される。本方法の特定の実施形態において、工程(a)の組換えタンパク質の相互作用の阻害が、工程(b)で提供されるHCVエンベロープタンパク質による、HCVエンベロープタンパク質E1およびE2を発現する細胞による、HCV偽型レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子による、エクスビボHCV細胞培養粒子による、またはHCVによる、前記組換えタンパク質の保持率をアッセイすることにより、工程(c)において決定され、ここに、前記組換えタンパク質の減少した保持率が、結合阻害の指標である。本方法の特定の実施形態において、工程(c)における相互作用または融合の決定が、レポータータンパク質をアッセイすることによって実施される。特定の実施形態において、C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を特定する方法が、i)オクルディンの細胞外タンパク質配列との特異的な相互作用を通じて傍細胞浸透性を高めない物質または化合物をスクリーニングすること;および/またはii)オクルディン依存性の細胞接着を阻害しない物質または化合物をスクリーニングすることからなる工程(s)のいずれか1つまたは両方をさらに含んでいてもよい。i)オクルディンの細胞外タンパク質配列との特異的な相互作用を通じて傍細胞浸透性を高めない物質または化合物をスクリーニングすること;およびii)オクルディン依存性の細胞接着を阻害しない物質または化合物をスクリーニングすることに関する技術は、限定するものではないが、出典明示によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,252,045号に開示される技術を含む。
【0020】
C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の細胞外ロープとの相互作用を妨げるか又は弱める試薬もまた提供し、前記試薬は抗体、アプタマー、ペプチド、ペプチドミメティック化合物または組換えタンパク質であって、前記相互作用はHCV侵入に必要とされるオクルディンの直接的または間接的な機能のいずれかを含む。特定の実施形態において、前記試薬は、オクルディンの細胞外タンパク質配列との特異的な相互作用を通じて傍細胞浸透性を高めない。特定の実施形態において、前記試薬は、オクルディン依存的な細胞接着を阻害しない。さらなる他の実施形態では、前記試薬は、オクルディンの細胞外タンパク質配列との特異的な相互作用を通じて傍細胞浸透性を高めず、かつオクルディン依存的な細胞接着を阻害しない。
【0021】
C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定するためのキットもまた提供し、前記キットは、i)オクルディンタンパク質の細胞外ループまたはその保存的なアミノ酸置換を含有する組換えタンパク質、またはii)オクルディンタンパク質の細胞外ループまたはその保存的アミノ酸置換を含有する膜結合タンパク質の発現を提供する組換えベクターであって、前記のオクルディンタンパク質のアミノ酸残基が前記膜結合タンパク質を発現する前記細胞に対して細胞外に位置することを特徴とする、前記組換えベクター、またはiii)前記組換えベクターを含む細胞のいずれか;およびC型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定するためのキットを使用するための取扱説明書を含む。特定の実施形態において、前記キットは、HCVエンベロープタンパク質、HCVエンベロープタンパク質E1およびE2をコードする組換えベクター、HCV偽型レトロウイルス粒子をコードする組換えベクター、HCV細胞培養粒子をコードする組換えベクター、または感染性HCV粒子をコードする組換えベクターをさらに含む。
【0022】
i)オクルディンタンパク質またはその保存的アミノ酸置換を含有する膜結合タンパク質の発現を提供する組換えベクターを含む細胞であって、前記のオクルディンタンパク質のアミノ酸残基が前記細胞に対して細胞外に位置することを特徴とする、前記細胞、およびii)HCVエンベロープタンパク質E1およびE2をコードする組換えベクターを含む細胞か、あるいはiii)HCV偽型レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子、エクスビボHCV細胞培養粒子またはHCV粒子のいずれかを含む、細胞培養組成物もまた提供する。前記細胞培養組成物の特定の実施形態において、HCV偽型レトロウイルスベクターは、HCV E1タンパク質、HCV E2タンパク質およびレポーター遺伝子を含有するパッキング可能なレトロウイルスゲノムを含む。前記細胞培養組成物の特定の実施形態において、パッキン可能なレトロウイルスゲノムは、HIVまたはMLVのパッキング可能なレトロウイルスゲノムである。前記の細胞培養組成物の特定の実施形態において、パッキング可能なレトロウイルスゲノムは、エンベロープ欠損レトロウイルスゲノムである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】OCLN発現はHCVppに対する感受性を与える。a、表示するヒト細胞系は、モック形質導入またはヒトpTRIP−mCherry−CD81(CD81)、pTRIP−Cerulean−CLDN1(CLDN1)、pTRIP−Venus−OCLN(OCLN)もしくはCLDN1とOCLNとの両方を発現するように形質導入した。次いで、これらの集団の並行培養物を、別々にGFPレポーターをコードするHCVppおよびVSVGppでチャレンジした。HCVpp感染率は、材料および方法に記載するように、非エンベロープ偽粒子(Env−pp)による感染からのシグナルを減算した後に、VSVGppの力価で除算したHCVppの力価として報告する。b、さまざまなHCV遺伝子型(丸括弧内は分離株の名前)由来の表示する糖タンパク質を有しGFPをコードする偽粒子を用いて、未処理の786−O細胞(黒)またはOCLN発現786−O細胞(白)に感染させた。c、表示するマウス細胞系は、モック形質導入したか、またはヒトpTRIP−mCherry−CD81(CD81)、pTRIP−SR−BI(SR−BI)、pTRIP−Cerulean−CLDN1(CLDN1)およびpTRIP−Venus−OCLN(OCLN)の組合せ(4×)を発現するよう形質導入したかのいずれかである。次いで、並行培養物および許容性のHuh−7.5細胞を、GFPレポーターをコードするHCVppおよびVSVGppでチャレンジし、上記のようにHCVpp感染率を計算した。少なくとも3重の試験結果の平均値および標準偏差(SD)を示す。
【図2】OCLNサイレンシングはHCV侵入を阻害する。Huh−7.5(左列)およびHep3B(右列)を、無関係のもの(irrelevant;灰色棒)、CD81(格子縞の棒)またはOCLN(黒棒)特異的siRNAプールでトランスフェクトした。発現レベルを決定するために、各細胞集団をCD81(aおよびb)およびOCLN(cおよびd)特異抗体で染色した。タンパク質発現は、フローサイトメトリーにより分析した。特異染色とアイソタイプ対照染色との間の比を示す。発現分析時に、並行してsiRNA処理した細胞を、HCVpp(eおよびf)およびHCVcc(g)でチャレンジした。材料および方法に記載するように、HCVpp感染率を計算し、規格化した。HCVcc感染は、アイソタイプ対照染色に対するウイルスタンパク質(NS5A)染色の比により定量した。試料はすべて無関係なsiRNA処理細胞に対して規格化する。dMFI、平均蛍光強度における差異。少なくとも3重の試験結果の平均値およびSDを示す。
【図3】ヒトOCLNおよびヒトCD81の発現は、HCV種親和性を決定する。(a)マウスNIH3T3を、ヒトpTRIP−CD81(CD81)、pTRIP−SR−BI(SR−BI)、pTRIP−mCherry−CLDN1(CLDN1)およびpTRIP−OCLN(OCLN)の組合せで形質導入した。ハムスターCHO(b)およびNIH3T3(c)細胞を、ヒト(H)およびマウス(M)pTRIP−mCherry−CD81(CD81)、pTRIP−SR−BI(SR−BI)、pTRIP−Cerulean−CLDN1(CLDN1)およびpTRIP−Venus−OCLN(OCLN)の組合せで形質導入した。d、OCLNの膜トポロジーの略図(12)。e、786−O細胞を、マウス/ヒトOCLNキメラで形質導入した。キメラはすべてN末端にVenus黄色蛍光タンパク質がタグ付けされた。形質導入した細胞(a、b、cおよびe)を、GFPレポーターをコードするHCVppおよびVSVGppでチャレンジし、HCVpp感染率は、方法で記載するように、計算し規格化した。少なくとも2重の試験結果の平均値およびSDを示す。
【図4】HCV侵入因子としてのOCLNの同定。a、ヒトCD81、SR−BIおよびmCherry/CLDN1を発現するNIH3T3細胞(N3xF26)に対してHCVpp感受性を与えるcDNAのスクリーンに関する。LMN8マウス白血病ウイルス(MLV)ベースのレトロウイルスベクター中の最初のHuh−7.5誘導(derived)ライブラリーは、ライブラリーDNAならびにMLV gag−polを発現するベクターおよびVSV−Gを発現するベクターを用いた293T細胞の同時トランスフェクションにより、VSVGpp中にパッケージした。次いで、未処理N3xF26細胞を、偽粒子ライブラリーを用いて形質導入して、ピューロマイシン耐性遺伝子(CSPW)をコードするHCVppでチャレンジし、続いて抗生物質選択を行った。生存コロニーをプールし、展開し、糖タンパク質を有さない偽粒子(Env−pp)、GFPレポーター(CSGW)をコードするHCVppおよびVSVGppに対する感受性について試験した。続いて、その集団をMLV gag−polおよびVSV−Gでトランスフェクトし、生存N3xF26細胞中に含有されるcDNA挿入物を含むLMN8ゲノムをコードするVSVGppを産生させた(サイクリック・パッキングレスキュー、CPR)。これらのリパッケージ偽粒子を用いて、後のスクリーニングラウンドのために未処理N3xF26細胞に形質導入した。CSPWプロウイルスは、HIV−1ベースであり、かくしてMLV gag−pol媒介型CPR工程の間にリパッケージされない。加えて、このプロウイルスは、形質導入細胞においてパッケージ可能なウイルスRNAの発現を妨げる3’LTR中の欠失を有する。b、N3xF26細胞のHCVppの許容性は、複数ラウンドのライブラリー形質導入および選択の間に増大した。未処理N3xF26細胞(最初の列)またはLMN8−cDNAライブラリーで形質導入された親の(第2列)もしくはリパッケージ(第3列および第4列)N3xF26細胞の一部を、GFPレポーター(CSGW)をコードするEnv−pp、HCVppまたはVSVGppに対する許容性について評価した。GFP発現は、感染後72時間でフローサイトメトリーにより測定した。アッセイ間で実施した作業を上部に記載する:ライブラリー−cDNAライブラリーの最初の形質導入;puro−ピューロマイシン耐性レポーター遺伝子をコードするHCVppによる形質導入後のピューロマイシン選択;CPR−MLV gag−polおよびVSV−Gでのトランスフェクション、N3xF26細胞集団に含有されるcDNAを偽粒子中にリパッケージすること、未処理N3xF26細胞への輸送およびさらなる選択。GFP陽性細胞の百分率を、各プロットの右上の隅に表示する。1回のリパッケージング工程を含む2ラウンドの選択後に、選択した集団における有効なHCVpp力価は、約100倍にまで増加した(第3列)。2回のリパッケージングを含む3ラウンドの選択後の有効なHCVpp力価は、未処理N3xF26細胞と比較して約20倍に増加したが(一番上の行)、VSV−Gpp(第2行)とEnv−pp(第3行)の有効な力価は、本質的に変化しなかったか、または減少さえした。3ラウンドの選択後のFACSにより単離された24の細胞クローンのうち、8つがOCLNをコードするcDNAを保有した。残りの16クローンでは、cDNAは見出されず、HCVppの非特異的な取り込みを通じて選択された形質導入されていない細胞を表すようであった。LMN8−OCLN cDNAクローンはすべて同一のアミノ末端切断型のOCLN cDNA断片を含み、それは最初の140アミノ酸のない、本質的に細胞内N末端テイルを除去したOCLNタンパク質を発現した。c、単離されたN末端切断型のOCLNをコードするLMN8−VSVGppおよび全長のOCLNをコードするpTRIP−VSVGppを用いて、未処理N3xF26細胞に形質導入した。これらの細胞を、次いで、GFPをコードする偽粒子でチャレンジした。HCVpp感染率は、材料および方法に記載したように、Env−ppシグナルを減算した後、VSVGppの力価で除算したHCVppの力価として報告する。値は、高許容性のHuh−7.5細胞の並行感染に対して規格化する。d、全RNAを、表示した細胞系から単離し、ヒトCD81、CLDN1およびOCLN mRNAレベルをRT定量PCRにより決定した。データは、GAPDH発現に対して規格化し、Huh−7.5細胞の百分率としてプロットした。少なくとも3重の試験結果の平均値および標準偏差(SD)を示す。
【図5】形質導入した細胞中でのHCV侵入因子の発現。マウスNIH3T3を、ヒトpTRIP−CD81(CD81)、pTRIP−SR−BI(SR−BI)、pTRIP−mCherry/CLDN1(CLDN1)およびpTRIP−OCLN(OCLN)の表示した組合せで形質導入した。CD81、SR−BIおよびCLDN1(a)ならびにOCLN発現(b)を感染時にフローサイトメトリーにより観察した。dMFI、平均蛍光強度の差異。少なくとも3重の試験結果の平均値およびSDを示す。
【図6】フローサイトメトリーにより分析した場合の、ヒト、マウスおよびハムスター細胞におけるHCV侵入の選択した生データ。ヒト(Huh7.5、786−O)、マウス(NIH3T3)およびハムスター(CHO)細胞を、表示するようにヒトpTRIP−mCherry−hCD81(hCD81)、pTRIP−Cerulean−hCLDN1(hCLDN1)、pTRIP−Venus−hOCLN(hOCLN)で形質導入し、次いで並行してHCVpp、VSVGppまたはEnv−ppでチャレンジした。他のすべての分析でHCV感染の計算に用いたものの中で代表的なFACSプロットを示す。
【図7】CD81、SR−BI、CLDN1およびOCLNは、非ヒト細胞への有効なHCVpp侵入のための最小のセットを構成する。(a)ハムスターCHO細胞を、表示したヒトpTRIP−mCherry−CD81(CD81)、pTRIP−SR−BI(SR−BI)、pTRIP−Cerulean−CLDN1(CLDN1)およびpTRIP−Venus−OCLN(OCLN)の組合せで形質導入した。形質導入した細胞を、GFPレポーターをコードするHCVppおよびVSVGppでチャレンジし、材料および方法に記載したようにHCVpp感染率を計算し規格化した。全RNAをCHO(b)およびNIH3T3(d)、ハムスター(c)およびマウス(d)の肝臓から単離し、ハムスターまたはマウスCD81、CLDN1およびOCLN mRNAレベルをRT定量PCRにより決定した。データはGAPDH発現に対して規格化した。少なくとも2重の実験結果の平均値およびSDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳しい説明)
以下の開示する実施形態は、さまざまな形態で具体化しうる本発明の単なる例示である。かくして、本明細書中で開示される具体的な構造および機能の詳細は、限定を示すものと解釈すべきではない。
【0025】
試薬および化学薬品はすべて商業的に入手可能であるか、または文献で見出される標準的な手順により調製することができるか、あるいは細胞もしくは分子生物学、有機化学、生化学、その他の類似の分野で当業者には公知なものである。
【0026】
(定義)
本明細書で用いられる用語「HCV」は、いずれかの主要なHCV遺伝子型、サブタイプ、分離株および/または擬似種を示す。HCV遺伝子型は、限定するものではないが、遺伝子型1、2、3、4、5および6を含み、HCVサブタイプは、限定するものではないが、サブタイプIa、Ib、2a、2b2c、3a、4a−4f、5a、および6aを含む。
【0027】
本明細書で用いられる語句「保存的アミノ酸置換」は、配列中の(複数の)アミノ酸における1つ以上の変更であって、他の(複数の)アミノ酸で置き換えられ、その電荷および極性が本来のアミノ酸のものと類似するものを意味する。タンパク質、ペプチドまたはペプチドミメティック化合物におけるアミノ酸の保存的な置換は、もとのアミノ酸が属する群のメンバーによって行われる。アミノ酸は、以下の4つの群に分けることができる。(1)酸性アミノ酸;(2)塩基性アミノ酸;(3)中性極性(neutral polar)アミノ酸;および(4)中性無極性アミノ酸。さまざまな群の中の代表的なアミノ酸には、限定するものではないが、(1)酸性(負に帯電している)アミノ酸、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性(正に帯電している)アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジンおよびリジン;(3)中性極性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミン;(4)中性無極性(疎水性)アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。保存的アミノ酸変更は、これらの群のうちの1つのアミノ酸を、同じ群の中の他のアミノ酸で置換することによって行うことができる。
【0028】
本明細書で用いられる「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、または合成抗体のいずれかである。
【0029】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」は、単一のエピトープを認識するいずれかの起源由来のいずれかの抗体である。
【0030】
本明細書で用いられる「一本鎖抗体」は、いずれかの軽鎖抗体、いずれかの重鎖抗体、または抗原認識部位を含むいずれかのそのフラグメントである。一本鎖抗体は、いずれの起源由来のものであってもよい。
【0031】
本明細書で用いられる「合成抗体」は、組換えDNA技術により作り出されるいずれかの抗体である。かくして、合成抗体は、限定するものではないが、ヒト化抗体、変異導入抗体、およびヒト、細菌、酵母またはバクテリオファージ発現ライブラリー由来の抗体を含む。
【0032】
本明細書で用いられる語句「ペプチドミメティック化合物」は、1つ以上の非天然のアミノ酸(例えば、非天然の側鎖、非天然のキラリティー、N置換アミノ酸、またはベータアミノ酸)を含有するペプチドアナログ、非天然のトポロジー(例えば、環状もしくは分枝)および/またはアミド(ペプチド)結合が部分的に若しくは全体的にエステル、チオエステルもしくは他の結合で置換されたペプチドアナログを意味する。
【0033】
本明細書で用いられる語句「化学的に誘導されたバリアント」は、ペプチドまたはペプチドミメティック化合物に関連して用いられる場合、共有結合で改変されたペプチドまたはペプチドミメティック化合物を意味する。共結合による改変は、限定するものではないが、アセチル化、アミド化、硫酸化、スクシニル化、メチル化、キレート結合(chelator linkage)または末端ブロッケージ(terminal blockage)を含む。
【0034】
本明細書で用いられる用語「対応する」は、1つのペプチド配列中の同等のアミノ酸を他のポリペプチド、ペプチドまたはペプチドミメティック化合物配列と比較する、アライメントする、または同定することに関連して用いられる場合に、他のポリペプチド配列と整列させたときに、もっとも高い同一性パーセンテージを与えうる比較またはアライメントを意味する。
【0035】
本明細書で用いられる語句「膜結合タンパク質」は、生理学的なpHおよび塩濃度のもとで細胞膜に結合しているタンパク質のいずれかを意味する。膜結合タンパク質の結合は、リン脂質二重層に直接結合すること、または膜に結合するタンパク質、糖タンパク質もしくは他の媒介物に結合することのいずれかによる。
【0036】
本明細書中で用いられる用語「細胞外」は、細胞の外側で、非細胞質領域を意味する。
【0037】
本明細書中で用いられる語句「C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用」は、HCVビリオンまたはそれから誘導された成分が細胞によって認識、結合および/または内在化するプロセス中のいずれかの過程を包含する。本明細書で用いられるように、相互作用は、HCV侵入に必要とされるオクルディンの直接的または間接的機能のいずれかを含む。
【0038】
オクルディンタンパク質とのHCV相互作用を阻害することによりHCV感染を抑制、緩和または予防する方法。
内因性のオクルディン機能を阻害することによりHCV感染を抑制する方法の変法は、本発明により考えられる。そのような方法としては、HCV侵入に必要とされる細胞性相互作用を提供する内因性のオクルディンの領域のブロッケージ、または内因性のオクルディンまたはオクルディン含有タンパク質複合体との相互作用を提供するHCVの領域のブロッケージのいずれかを含み得る。内因性のオクルディン機能を阻害することによってHCV感染を抑制することに関する類似の方法は、国際公開公報第2007/130646号にも記載される。
【0039】
結合してHCV感染を抑制することができる内因性のオクルディンの領域が特定されたため、さまざまな有効な細胞外領域結合性試薬が本明細書において考えられる。抗体に加えて、オクルディン細胞外ループに結合するアプタマーを、HCV感染を抑制するために用いることができる。本明細書で用いられるように、アプタマーは、標的に結合するいずれかのDNA、RNA、オリゴヌクレオチドまたは化学修飾されたオリゴヌクレオチドを含み得る。アプタマーの分離および同定は、開示されている(米国特許第5,582,981号、米国特許第6,867,289号、米国特許第7,179,894号)。あるいは、内因性のオクルディン細胞外ループに結合する組換え結合性タンパク質(recombinant binding protein)を、HCV感染を抑制するために用いることができる。本明細書で用いられる「組換え結合性タンパク質」は、組換えDNAまたはポリメラーゼ連鎖反応−媒介反応物により得られる、標的に結合するいずれかの非天然のタンパク質である。組換え結合性タンパク質は、免疫グロブリン重鎖の可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖の可変ドメイン、T細胞レセプタータンパク質のV.アルファ/V.ベータ・ドメイン、またはその組合せのポリペプチド結合性領域を含む。組換え結合性タンパク質の単離および同定は、開示されている(米国特許第6,010,884号および米国特許第6,297,053号)。
【0040】
HCV感染を抑制するためのHCV領域のブロッケージは、HCVと相互作用するオクルディンの細胞外ループの領域を模倣する試薬によっても行うことができる。理論により拘泥されることを意図するものではないが、オクルディンの細胞外ループの重要な領域を模倣する試薬とHCVとを接触させることで、HCVの細胞侵入およびHCV感染を許容する内因性のオクルディンとHCVとの生産的な相互作用を阻害することが期待される。これらの試薬は、HCVと内因性のオクルディンとの相互作用を競合的に阻害することが期待される。オクルディン細胞外ループを模倣する試薬の利点の1つには、それらのHCVの重要な領域との相互作用が増強されるようにし、一方で内因性のオクルディン細胞外ループを認識するいずれかの他の内因性の細胞性リガンドとの相互作用が最小となるように、当該試薬を最適化できることがある。オクルディンを模倣する試薬の最適化は、HCV感染を抑制、予防または緩和を提供し、一方で望ましくない副作用を最小にすることが期待される。
【0041】
HCVの抑制、予防または緩和試薬の対象への投与に関する上記で引用する方法のいずれかの実施に際して、これらの活性試薬を含むさまざまな医薬組成物を、さまざまな技術により投与し得ることが考えられる。そのような医薬組成物は、投与を目的とする分野で公知のさまざまな方法で製剤化することができる。本発明の医薬組成物を調製するために、有効量の特定の化合物を、塩基性塩または酸性塩の形態で、活性成分として、1つ以上の医薬上許容される担体および送達ビヒクルと組み合わせられる。容易に入手可能であり、当分野で周知な多くの医薬上許容される担体および送達ビヒクルが存在し、それらを用いて所望の調合物を作り出すことができる(すなわち、医薬組成物の経口、局所、直腸内、経皮投与を可能にし、非経口注射による投与、鼻腔内投与または吸入による投与を可能にする)。医薬上許容される担体および送達ビヒクルの代表例としては、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン;緩衝物質、例えばさまざまなリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物;水、塩類または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウムおよび亜鉛塩;コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース・ベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアリーレート、ワックス、ポリエチレン、ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂およびその他の類似物を含む。本明細書に記載される医薬組成物は、経口、経皮、注射剤(経皮、筋肉内、静脈内および皮内)、局所用、鼻腔内、吸入による投与に適した、または医療器具、例えばインプラント、カテーテルまたは他の装置への適用に適した単回剤形にさらに調製することができる。経口投薬量の投与を可能にする組成物を調製する際に、例えば懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤および溶剤などの液体調剤の経口送達を可能にする担体の場合には、水、グリコール、油、アルコールおよびその類似物などの当分野で公知の医薬上許容されるいずれかの担体を用いることができる。経口または直腸投与を可能にする固体の医薬上許容される担体が望ましい場合には、澱粉、糖、カオリン、潤滑剤、結合剤、セルロースおよびその誘導体、ならびに崩壊剤およびその類似物を用いて、例えば粉剤、ピル、カプセル剤および錠剤を調剤することができる。非経口投与を可能にする医薬上許容される担体に関し、医薬上許容される担体はしばしば無菌水を含み、例えば可溶性を増加させるためのさまざまな溶質が補充されてよい。医薬上許容される担体が食塩溶液、グルコース溶液またはその混合を含み、特定の周知の抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を対象患者の血液と等張性にする他の溶質を含んでいてもよい、注射可能な溶液を調剤することができる。
【0042】
HCVとオクルディンとの相互作用を阻害する化合物または物質の同定を提供する、さまざまなインビトロおよび細胞ベースのアッセイが本明細書において考えられる。オクルディンとのHCV相互作用の阻害を用いて、いずれかの主要なHCV遺伝子型、サブタイプ、分離株および/または擬似種による患者の感染を抑制、緩和または予防することができる。HCV遺伝子型は、限定するものではないが、遺伝子型1、2、3、4、5および6を含み、ならびにHCVサブタイプは、限定するものではないが、サブタイプIa、Ib、2a、2b、2c、3a、4a−4f、5aおよび6aを含む。さらに、当業者には、オクルディンのいずれかの領域と相互作用する物質または化合物であれば、HCV侵入を提供するオクルディン機能を乱しうることは明らかであろう。インビトロアッセイは、組換えオクルディンタンパク質とHCVまたはHCV成分との結合、相互作用または会合を決定するいずれかのアッセイを含む。組換えオクルディンとHCVまたはHCV成分との結合が、直接的なものであってもよいし、間接的なものであってもよいことは理解される。間接的な結合は、媒介物を介したオクルディンとHCVとの結合を必要とする。組換えオクルディンタンパク質を、インビトロ結合または相互作用アッセイに、可溶性形態または不溶性の形態、例えばリポソームのいずれかで用いることができる。結合アッセイに用いることができる他の不溶性形態には、組換えオクルディンタンパク質を固体支持体に連結した形態が含まれる。固体支持体は、ビーズ、マイクロタイタープレート、カラム材料、または結合アッセイのためにタンパク質を固定するのに適した他のいずれかの材料を含む。組換えオクルディンの可溶性形態は、可溶性、検出および/または保持を容易にする配列をさらに含んでいてもよい。可溶性を容易にすることができる配列は、限定するものではないが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼまたは大腸菌マルトース結合タンパク質由来の配列を含む。検出を容易にする配列は、いずれかのレポータータンパク質、いずれかのエピトープまたはいずれかのタンパク質結合ドメインを含む。当業者には、可溶性または検出を促進する外来配列はいずれも保持を容易にしうることを理解するであろう。保持は、固体支持体に対してタンパク質またはタンパク質リガンドを会合させるために、結合アッセイで典型的に用いられる。また、組換えタンパク質は、FLAG(商標)エピトープ(Stratagene, La Jolla, CA, USA)、mycエピトープ、ヒスチジンタグおよび他の類似物などの保持のための付加的な配列をさらに含む。
【0043】
組換えオクルディンタンパク質といずれかのHCVまたはHCV誘導物質、例えばHCV、HCVcc、HCVpp、粗精製HCV成分、精製HCVタンパク質または(複数の)組換えHCVタンパク質との結合または相互作用は、本明細書で考慮された方法で決定することができる。組換えオクルディンとHCV E1およびE2との結合または相互作用が、具体的に考えられる。
【0044】
そのような結合は、直接的であってもよいし、または間接的であってもよい。組換えオクルディンまたはHCVもしくはHCV誘導物質のいずれも、結合アッセイを容易にするために検出可能に標識化することができる。特定の実施形態において、組換えオクルディンおよびHCVまたはHCV由来物質は、それら各々の同時検出を可能にする別個の検出可能な標識で標識化される。結合アッセイにおいて、組換えオクルディンタンパク質は、HCVまたはHCV誘導物質と典型的に接触させ、ある形態の緩衝液交換を行い、結合を測定する。結合は、限定するものではないが、結合標識の検出、表面プラズモン共鳴またはシンチレーション近接アッセイを含む、いずれかの適切な技術または技術の組合せにより測定することができる。当業者は、オクルディン配列が細胞の細胞外表面に存在する方法は、HCV相互作用を可能にする様式で当該配列が存在する限り重要ではないことを認識するであろう。
【0045】
本方法の特定の実施形態では、組換え膜結合細胞外オクルディンアミノ酸残基を発現する細胞を、HCVエンベロープタンパク質、HCVエンベロープタンパク質E1およびE2、HCV偽型レトロウイルス粒子、HCVcc粒子、エクスビボHCVcc粒子またはHCVを発現する細胞のいずれかにより接触させる。組換えオクルディンを発現する細胞を(複数の)HCVエンベロープタンパク質により接触させた場合、前記(複数の)エンベロープタンパク質の結合が化合物または試薬により阻害されるかどうかを、緩衝液交換に続いて、エンベロープタンパク質の有無を観察することにより決定することができる。そのような結合分析は、検出可能に標識したエンベロープタンパク質を提供することにより容易になされる。エンベロープタンパク質、HCVpp、HCVcc、エクスビボHCVccまたはHCVを発現する細胞と組換えオクルディンを発現する細胞との結合は、エンベロープタンパク質の結合に関して記載した様式で観察することも可能である。HCVppまたはHCVccによる感染は、これらの種によりコードされるレポーター遺伝子の使用により観察することも可能であり、それらは、試薬または化合物に対する暴露に続いて、細胞に対するアッセイを可能にする。
【0046】
他の態様のオクルディン媒介型の細胞へのHCV侵入を模擬する、インビトロアッセイにおける組換えオクルディンタンパク質の使用もまた考えられる。そのようなアッセイは、HCV、HCVcc、エクスビボHCV、HCVpp、(複数の)HCVエンベロープタンパク質を発現する組換え細胞、HCV成分を含有する再構成されたリポソーム由来の生化学的なフラクションおよび組換えオクルディン発現細胞由来の他のフラクションもしくは再構成物質の使用を含み得る。
【0047】
結果的にHCVの細胞内への侵入をもたらすHCVとオクルディンとの相互作用をアッセイして、いずれかの態様のプロセスを干渉する化合物または物質を特定することもできる。エンベロープタンパク質、HCVpp、HCVcc、エクスビボHCVccまたはHCVを発現する細胞と組換えオクルディンを発現する細胞との生産的な相互作用または融合は、エンベロープタンパク質、HCVpp、HCVcc、エクスビボHCVccまたはHCVを発現する細胞から組換えオクルディンを発現する細胞へのタンパク質または核酸の移動を観察する技術によりアッセイすることもできる。特定の実施形態において、レポーター遺伝子の移動を観察する。レポーターが、HCVppまたは他の適切ないずれかのウイルスベクターから移動する場合、前記レポーターは、組換えオクルディンタンパク質を発現する細胞内への侵入の際にのみ発現するであろう。レポーターが、組換えオクルディンタンパク質を発現する細胞と融合する別個の細胞内に存在する場合、レポーター遺伝子は、細胞が融合し、当該レポーターが、組換えオクルディンタンパク質を発現する細胞内の因子に曝された場合にだけ発現するであろう。細胞融合に際してレポーターの発現を提供する方法は、限定するものではないが、レポーターと宿主細胞内に存在するトランス作用性の転写因子により調節されるプロモーターとを操作可能に連結することを含む。HCV、HCVccまたはエクスビボHCVccの侵入は、関連するHCV RNAを測定するためのハイブリダイゼーション−またはポリメラーゼ連鎖反応−ベースの方法のいずれかにより決定することもできる。複製可能なHCV RNAの細胞への侵入は、HCV RNAの複製を可能にし、結果的にHCV RNA複製のために実質的なシグナル増幅となる。定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)の使用によりHCV RNAを定量する場合、HCV由来のPCR産物は、いずれかの標識化したポリヌクレオチドプローブの使用により、エチジウムブロマイド、SYBRグリーンなどのインターカレーティング色素の使用により、蛍光色素がPCR反応で用いられたポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性(すなわち、TaqMan(商標)反応;Applied Biosystems, Foster City, CA)により放出された場合にのみ蛍光色素からの発光が検出されるような、蛍光色素および消光剤を含有するハイブリダイゼーションプローブの使用、または蛍光色素および消光剤が相補鎖のポリメラーゼ媒介型の合成により置き換えられる方法(すなわち、Scorpion(商標)またはMolecular Beacon(商標)プローブ)の使用により、検出することができる。mRNAレベルを定量するためのqRT−PCR分析を実施するさまざまな方法は、詳しく特徴づけられている(Bustin, S.A.; Journal of Molecular Endocrinology 29, 23, 2002)。ミスマッチした核酸複合体を認識する酵素作用により活性化される蛍光プローブ(すなわち、Invader(商標)、Third Wave Technologies, Madison, WI)もまた、RNAを定量するために用いることができる。当業者であれば、RNA定量技術、例えば、増幅に基づく定量的核酸配列(Quantitative Nucleic Acid Sequence Based Amplification;Q-NASBA(商標))を用いて、TIC807タンパク質をコードするmRNAを定量し、発現植物を特定することができる。HCV RNAを定量するための商業的に入手可能なキットには、COB AS(商標)TaqMan HCV Test(TaqMan HCV;Roche Molecular Systems Inc., Branchburg, N.J.)が挙げられる。レポーター遺伝子を含むHCVccもまた利用可能であり、かくして、HCVppについて記載した方法と同様に、チャレンジ後の感染の定量が可能である。
【0048】
HCV領域とオクルディンとの相互作用を阻害する物質を同定するために、多種多様なライブラリーにあたることができる。抗体の抗原認識領域を提示するファージベクターを含むバクテリオファージライブラリーは、1つの潜在的なオクルディン認識試薬の供給源であり、米国特許第6,265,150号に記載されている。抗原を組み合わせた多彩なタンパク質ライブラリーを作製する方法は、米国特許第5780225号および米国特許第6,303,313号に記載されている。抗原認識領域を得るためにライブラリーを使用する方法もまた、米国特許第5,395,750号に記載されている。所定の標的材料に結合するタンパク性の結合ドメインを有する結合タンパク質をコードする核酸を得る方法は、米国特許第5,223,409号に記載されている。酵母の抗体提示ライブラリーもまた、抗原認識領域を得るために用いることができ、米国特許第6,300,065号に記載されている。当業者であれば、そのような抗原認識配列は、続いて組換えファージ、細菌もしくは酵母ベクターから単離し、対象での使用に適した合成抗体を作り出すことができることは認識するであろう。これらの認識ドメインをヒト化抗体に再改変することが、具体的に考えられる。
【0049】
C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定するためのキット
本明細書中で考えられる特定の実施形態において、本方法およびキットはHCVの領域とオクルディンタンパク質との相互作用を検出する。
【0050】
キットは、i)オクルディンタンパク質またはその保存的アミノ酸置換を含有する組換えタンパク質、またはii)細胞外ループを発現するオクルディンタンパク質の発現を提供する組換えベクター、またはiii)前記組換えベクターを含む細胞、およびキットを使用するための取扱説明書のいずれかを含み得る。また、キットは、HCV、HCVcc、HCVpp、HCVエンベロープタンパク質を含む試料とオクルディンタンパク質を含む後述の組換えタンパク質、ベクターまたは細胞との相互作用を検出するための特定の(複数の)試薬も含んでいてよいる。提供される(複数の)試薬は、放射−、分光光度−、蛍光−または酵素−標識化されていてよい。提供される試薬はまた、他の物質により検出可能に標識化されていてよい。提供される試薬は、分光光学的に、発光学的に、または蛍光により検出することができる生成物に変換される基質を含んでいてよい。キットは、本発明の抗体と結合または相互作用することができる公知の放射標識またはハプテン標識化試薬を含んでいてよい。
【0051】
キットの(複数の)試薬は、溶液として提供されてよいし、固体支持体中にもしくは上に付着、別には堆積されていてよく、あるいは所望の粉剤として提供されてよい。(複数の)試薬が溶液で提供される場合、好ましくは、前記溶液は水溶液である。(複数の)試薬が固体支持体に対して付着されているか、別には固体支持体上に堆積されている場合、好ましくは、前記固体支持体はクロマトグラフィー媒体、複数のウェルを有する試験プレート、または顕微鏡のスライドでありうる。(複数の)試薬が乾燥粉末である場合、前記粉末は、備え付けられていてもよい適切な溶媒の付加により、再構成できる。
【0052】
容器は、一般に、組換えタンパク質、組換えベクター、細胞または検出試薬を入れることができるバイアルであってよく、好ましくは分割単位であることが好ましい。本発明のキットはまた、商業的販売のために厳重に密封された容器内に組換えタンパク質、組換えベクターおよび/または細胞を含ませる手段を典型的に含みうる。そのような容器は、所望のバイアルを保持することができる注射またはブロー成形プラスチック容器を含みうる。しかしながら、そのようなキットとしては、商業的販売のためではなく、研究グループ内での内部使用のために集めることも考えられる。かくして、当該キットの有用性は、商業的販売に限定されない。キットの取扱説明書は、キット内に含ませてもよいし、あるいは外部向けもしくは内部向けのウェブサイトまたは内部もしくは外部文書もしくは参照を参酌する様式で提供されてもよく、いずれであってもよい。
【0053】
本発明の原理および実用的な応用を分かりやすく説明し、他の当業者がさまざまな実施形態で、また考えられる特定の使用に適するようにさまざまな修飾を加えて本発明をよりよく利用できるように、実施形態を選び出し記載した。
【0054】
実施例
実施例1 補助的な材料および方法
細胞
293T、786−O、AML12、H2.35、Hep3B、Hepa1.6、HepG2、Huh−7.5、L929、NIH3T3、STO6およびTZM細胞は、10%胎児ウシ血清(FBS)を含むDMEM中で維持した。CHO細胞は、10%FBSを含むDMEM/F−12中で維持した。HepG2は、コラーゲンコートしたプラスチック上で生育させた。
【0055】
抗体および試薬
OCLNに対するマウス・モノクローナル抗体(クローンOC−3F10)はZymed Laboratories(San Francisco, CA)から購入した。マウス・抗CD81 1.3.3.22は、Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA)から入手した。精製されたマウス・IgG1は、BD Pharmingen(Franklin Lakes, NJ)からのものであった。マウス・抗NS5A抗体 9E10(15)およびヒト・抗SR−BI抗体C167(5)は、以前に記載されている。Alexa Fluor488コンジュゲート抗マウスIgG二次抗体は、Invitrogen(Carlsbad, CA)から入手し、R−フィコ・エリトリン(PE)ヤギ抗マウスIgG二次抗体は、Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.(West Grove, PA)から入手した。抗ヒトIgG4抗体およびストレプトアビジンAPCは、BD Biosciences Pharmingen(San Diego, CA)から入手した。
【0056】
DNAコンストラクト
下記するように、ヒトCD81、SR−BIおよびCLDN1を発現するNIH3T3クローンは、VSVGパッケージ・プロウイルスによるプログレッシブ形質導入に続き、細胞選別により得た。これらのプロウイルスゲノムは、HIVタンパク質を発現しないが、代わりに内部のCMVプロモーターを用いてクローン化した遺伝子を発現させる、pTRIP(23、27)自己不活性化レトロウイルスのプロウイルスに基づいた。以前に記載されたTRIPレトロウイルスプラスミドには、TRIP−CD81(28)およびTRIP−mCherry−CLDN1(11)が挙げられる。TRIP−hSR−BIは、プライマー 5’GAC GAG CTG TAC AGA TCT AGA ATG GGC TGC TCC GCC AAA GCG CGC TGG (配列番号:1)および5’G GCG GTC GAC CTA CAG TTT TGC TTC CTG CAG CAC AGA (配列番号:2)を用いて、ヒトSR−BI orfを増幅することによってクローン化した。この産物を、BglII/SalI断片とし、BamHI/XhoI消化したTRIP−GFPにクローン化し、かくしてGFPコード配列を置き換えた。TRIP−mSR−BIは、プライマー 5’GAC GAG CTG TAC AGA TCT AGA ATG GGC GGC AGC TCC AGG GCG CGC TGG (配列番号:3)および5’GGCG CTC GAG CTA TAG CTT GGC TTC TTG CAG CAC CGT (配列番号:4)を用いて、マウスSR−BI orfを増幅することにより構築した。次いで、この断片をBglII/XhoI断片とし、BamHI/XhoI消化したTRIP−GFPにクローン化し、かくしてGFPコード配列を置き換えた。
【0057】
CSGWおよびCSPWプラスミドは以前に記載されている(9)。LMN8−hOCLNは、レスキュードRT−PCR(rescued RT-PCR)産物を、PmlIおよびSfiIによりLMN8SfiIlink中にクローン化することにより作り出した(以下を参照のこと)。ヒトよびマウスOCLNの増幅に関し、Integrated Molecular Analysis of Genome Expression(I.M.A.G.E.)Consortium(image.llnl.gov)により構築された発現配列タグ(EST)クローン(それぞれMGC IRAT ヒト5179203およびLLAM3658586)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手した。TRIP−hOCLNは、プライマー 5’GAC GAG CTG TAC AGA TCT AGA ATG TCA TCC AGG CCT CTT GAA (配列番号:5)および5’GGGG CTCGAG CTA TGT TTT CTG TCT ATC ATA GTC (配列番号:6)を用いて相補OCLN orfを増幅し、このPCR産物を部分的なBglII/XhoI断片とし、pTRIPのBamHIおよびXhoI部位にクローン化して構築した。同じPCR産物を、部分的なBsrGI/XhoI断片とし、TRIP−GFPにクローン化し、TRIP−GFP−hOCLNと称するGFP−hOCLN融合体を作製した。このプラスミドの派生物のほとんどは、クローニングを容易にするために、hOCLN orf中のBglII部位が、オーバーラップPCRによるサイレント変異(AGA TCT GAAからAGg TCc GAAに)を挿入することによって壊された。GFPの代替物として、TRIP−Venus蛍光タンパク質レンチウイルス発現プラスミドを、プライマー 5’GGGG GGA TCC GGA ATG GTG AGC AAG GGC GAG GAG CTG TTC (配列番号:7)および5’GGG CTCGAG TTA CTT GTA CAG CTC GTC CAT GCC GAG AGT GAT (配列番号:8)を用いて、Venus(18)orf(Atsushi Miyawaki提供, RIKEN, Saitama, Japan)を増幅することによって作製した。結果として得られた産物を、BamHI/XhoI消化断片とし、同じ酵素で消化したpTRIP−GFP中にクローン化した。TRIP−Venus−hOCLNは、上記のhOCLN PCR産物を部分的なBsrGI/XhoI消化断片とし、TRIP−Venus中にクローン化した。TRIP−mOCLNは、プライマー 5’GAC GAG CTG TAC AGA TCT AGA ATG TCC GTG AGG CCT TTT GAA AGT CCA (配列番号:9)および5’GGGG CTCGAG CTA AGG TTT CCG TCT GTC ATA ATC (配列番号:10)を用いて、マウスOCLN orfを増幅することによって構築した(内部のBglII部位は、ATA AGA TCT GGA (配列番号:11)からATA AGg TCc GGA (配列番号:12)へのサイレント変異導入により壊した)。この産物を、BglII/Xho断片とし、TRIP−GFPのBamHI/XhoI部位にクローン化し、部分的なBsrGI/XhoI断片とし、同じく消化したTRIP−GFPにクローン化して、TRIP−GFP−mOCLNおよびTRIP−Venusを作製し、TRIP−Venus−mOCLNを作製した。マウス/ヒト・キメラは、CLDN1/CLDN7キメラの構築に関して以前に記載されたように(11)、オーバーラップPCR増幅によりTRIP−Venusの関係で作製した。TRIP−Venusを作製するために用いたものと同じ方法およびプライマーを用いて、TRIP−Ceruleanと称する、紺色(Cerulean)蛍光タンパク質(21)を発現するレンチウイルスベクターを構築した。前記プラスミドからのNdeI/BsrGI断片を、TRIP−GFP−hCLDN1およびTRIP−GFP−mCLDN1(11)中のGFP orfの場所にクローン化し、TRIP−Cerulean−hCLDN1およびTRIP−Cerulean−mCLDN1を作製した。
【0058】
ヒトCD81のN末端でのmCherry蛍光タンパク質融合体を発現するTRIP−mCherry−hCD81は、プライマー 5’GAG CTG TAC AAG GGA TCC GTC ATG GGA GTG GAG GGC TGC ACC AAG TGC ATC (配列番号:13)および5’GGGG CTCGAG TCA GTA CAC GGA GCT GTT CCG GAT GCC ACA (配列番号:14)を用いて、TRIP−hCD81(13)からCD81 orfを増幅し、それをBsrGI/XhoI消化断片とし、TRIP−mCherry−CLDN1(11)にクローン化することによって作製した。マウスCD81を発現するTRIP−mCherry−mCD81は、テンプレートとしてTRIP−CD81を用いて同じプライマーにより増幅し、同じ様式でクローン化した。
【0059】
レトロウイルスHuh−7.5細胞cDNAライブラリーは、cDNA挿入物が、HIVベースのpV1ベクターに代えてLMN8SfiIlinkと称するMLVベースのプロウイルスベクター(Paul D. Bieniaszにより寄贈, The Aaron Diamond AIDS Research Center, The Rockefeller University)にクローン化したことを除いて、本質的に以前に記載されたように(11)構築した。LMN8SfiIlinkは、pBMN−Z MLVプロウイルスに基づき、それはレトロウイルスLTRおよびパッキングシグナルを含有するMLVゲノムであるが、ウイルスタンパク質を発現せず、代わりにLacZ遺伝子をコードする。LMN8を作り出すために、LacZ遺伝子を、SMART cDNA Library Construction Kit(Clontech, Mountain View, CA)にしたがって、cDNAクローニングに適した2つのSfiI部位に置き換えた。最終的なLMN8Huh7.5cDNAライブラリーは、4×10クローンを含み、その65%が平均1,300bpの大きさの挿入物を有した。EGFP遺伝子がLN8SfiIlinkのSfiI部位に挿入されたLMN8GFPは、このプラスミドの変種である。
【0060】
偽粒子作出および感染アッセイ
偽粒子はすべて、(1)所望のレポーター遺伝子またはトランス遺伝子を含有するプロウイルス、(2)MLVまたはHIV gag−polのいずれか、および(3)適当なエンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドの同時トランスフェクションにより作出した。別に注記しない限り、本研究で用いたHCVppはH77 E1E2配列(170−746残基)を用いて作製した(12)。HCVpp作出に用いた他のE1E2配列(Con1、OH8、S52、ED43、SA13)は、以前に記載されている(17)。トランスフェクションの前日に、8×10の293T細胞を35mmディッシュに播種した。全1.5μgのDNAを、6μlのFuGENE6(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を用いてトランスフェクトし、培地を6時間後に交換した。上清を、トランスフェクション後24時間、48時間および72時間で回収し、プールし、そして濾過(0.45μm孔径)した。以下のプラスミドの組合せおよび比率(重量あたり)を用いた:GFPまたはピューロマイシンレポーターHCVppおよび対照を作出するために、(1)それぞれのレポーター遺伝子(CSGWまたはCSPW)をコードするプロウイルス、(2)HIV gag−polおよび(3)HCV株H77 E1E2、VSV−Gをコードするプラスミドまたは空ベクターを、1:1:4の比率でトランスフェクトした。トランス遺伝子送達のための偽粒子を作出するために、(1)所望のトランス遺伝子をコードするpTRIPプロウイルス、(2)HIV gag−polおよび(3)VSV−Gをコードするプラスミドを7:7:1の比率で同時トランスフェクトした。cDNAライブラリーをパッキンするために、(1)所望のトランス遺伝子を含有するいずれかのLMN8プロウイルス、(2)MLV gag−polおよび(3)VSVGをコードするプラスミドを、7:7:1の比率で同時トランスフェクトした。(サイクリックリパッケージングに関連した偽粒子作出についての詳細は以下を参照のこと)。偽粒子を用いた形質導入および感染アッセイはすべて、4μg/mlのポリブレンの存在下で実施した。
【0061】
GFPレポーターHCVppを用いた感染アッセイについて、2×10の細胞を48ウェルプレートに撒いた。翌日、細胞を、偽粒子を用いて6時間感染させた。この培地を交換し、細胞をさらに72時間培養した後、回収し、0.5%w/vのパラフォルムアルデヒドを用いて固定した。GFP発現は、LSR2フローサイトメトリー(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いて定量した。非エンベロープ偽微粒子(Evn−pp)由来のGFPシグナルの背景光を、VSVGppおよびHCVppシグナルから減算し、次いでHCVppシグナルをVSVGpp感染に対して規格化し[(HCVpp−NE)/(VSVG−NE)]、次いでHuh−7.5細胞におけるHCVpp感染に対して規格化して、実験の相互比較を可能にした。特に注記しない限り、感染実験の結果は、4回以上の独立した感染の平均値であり、キメラおよび変異OCLN分析の場合には、少なくとも2回の独立した形質導入集団の平均値である。エラーバーは、平均値の標準偏差を示す。
【0062】
hCD81、hSRBIおよび/またはhCLDN1を安定して発現するNIH3T3クローンの作製
NIH3T3マウス胚性線維芽細胞を、TRIPレンチウイルスをコードするVSVGppでトランスフェクトし、ヒトCD81、SR−BIまたはN末端mCherryタグ付CLDN1を発現させた。発現は、ヒトCD81に対する抗体を用い、ヒトSR−BIに対するAlexa488コンジュゲート・ヤギ抗マウスIgG抗体と組合せ、ビオチン化抗ヒトIgG4とストレプトアビジンAPCとの組合せで、または直接的なmCherry蛍光の検出により、可視化した。クローン集団は、FACS Ariaセルソーター(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いて単一細胞選別により作り出し、Huh−7.5細胞と同様の発現レベルを有するクローンを、形質導入の次のラウンドで選択した。この手順を繰り返し、ヒトホモログのCD81、SR−BIおよびCLDN1を単一、二重および三重の組合せで安定して発現する細胞クローンを得た。3つすべてのヒト・タンパク質を発現する最終的な三重形質導入クローンを、NIH3T3 N3xF26と称した。
【0063】
マルチカラー・フローサイトメトリー
レンチウイルス運搬(delivered)トランス遺伝子の発現とHCVpp許容性とを直接的に相互に関係づけるために、我々は、マルチカラー・フローサイトメトリーを用いた。HCVpp感染(GFP)、CD81(mCherry)、SR−BI(APC染色)、CLDN1(Cerulean)およびOCLN(Venus)からの蛍光を、LSR2フローサイトメーター(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)で区別した。
【0064】
cDNAライブラリースクリーニングおよびサイクリック・パッキングレスキュー
反復ライブラリースクリーニングアプローチの図式的概観を図4aで提供する。レトロウイルスLMN8ベクター中にクローン化されたcDNAは、上記のようにVSV−G糖タンパク質を有するMLVベースの偽粒子内にパックされた。LMN8ベクターはレポーター遺伝子をコードしないため、ヒトcDNAライブラリーを保有する偽粒子の力価は並行して作出されたLMN8−EGFP偽粒子からの力価を推定することにより見積もった。次いで、見積もったその力価を用い、目的の細胞系に対するGFPの測定可能な感染率に基づいて、目的の細胞系に対するライブラリーウイルスの有効な力価に近づけた。次いで、LMN8−ライブラリーを保有するVSVGppを用いて、ヒトCD81、SR−BIおよびmCherry−CLDN1を発現するNIH3T3(N3xF26)細胞を、約1の感染の多重度(multiplicity)で形質導入した。約1×10の細胞をスクリーニングの最初のラウンドで形質導入し;より少数を次のラウンドに用いた。前記ライブラリーを発現する細胞を、ピューロマイシン(CSPW)選択マーカーを保有するHCVppでチャレンジし、抗生物質選択を48時間後に行った。生存細胞クローンをプールし、MLV gag−polおよびVSV−Gを用いてトランスフェクトし、これらの細胞に存在するLMN8/cDNAゲノムを偽粒子中にリパッケージさせ、さらなる選択ラウンドのためにそれらを未処理のN3xF26細胞集団に移した。我々は、選択工程、すなわちライブラリー運搬(deliver)、ピューロマイシン耐性をコードするHCVppによる感染、続いてピューロマイシンによる選択を全体で3回実施した。各選択工程後に、集団の画分をGFPレポーターEnv−pp、HCVppおよびVSVGppによりチャレンジし、HCVpp感受性の分集団の存在を観察した(図4b)。最終の3回選択した集団の単一細胞クローンを得て、これらのクローンのゲノムDNAを、製造業者のプロトコルにしたがってDNeasy tissueキット(QIAGEN, Valencia, CA)により調製した。cDNA LMN8挿入物は、cDNAクローニング部位に隣接するLMN8配列に特異的なプライマー、5’ACCGCCCTCAAAGTAGAC (配列番号:15)および5’GCTTGCCAAACCTACAGG(配列番号:16)を用いて増幅した。これらのPCR産物はTAクローニングし、配列決定した。
【0065】
HCVcc作出および感染
この研究の実験に用いたJc1FLAG(p7−nsGluc2A)は、以前に記載されている(16)。HCVccは、以前に報告されたように作出した(15)。HCVccはトランスフェクション後48〜72時間後に上清から回収した。感染単位(組織培養感染量の中央値[TCID50])は、未処理のHuh−7.5細胞に対する限界希釈滴定により定量した。感染実験のために、Huh−7.5細胞を48ウェルプレートに播種した。翌日、HCVcc含有の上清を供し、72時間後に、一次抗体として9E10抗NS5Aを用い、PEコンジュゲート・ヤギ抗マウス二次抗体により染色して感染を検出し、シグナルはフローサイトメトリーによる分析で定量した。
【0066】
HCV侵入因子のRT−PCR定量
さまざまな細胞系におけるHCV侵入因子の発現を定量するために、全RNAをQIAGEN RNAアイソレーションキット(Valencia, CA)を用いて単離した。RETROSCRIPT FIRST STRAND SYNTHESIS Kit (Ambion, Austin, TX)を用い、製造業者の取扱説明書にしたがって、cDNAを合成した。定量PCRは、Light Cycler LC480機器(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)により、SYBRグリーンQuantitect Primer Assay (QIAGEN)を用いて、以下の遺伝子特異プライマーと組み合わせて実施した。
【0067】
【表1】

【0068】
CHO細胞およびハムスター肝臓におけるHCV侵入受容体発現の分析
CHO細胞およびハムスター肝臓におけるHCV侵入受容体発現の分析について、以下のPCRプライマーを用いてハムスター特異遺伝子を増幅した。
【0069】
【表2】

【0070】
マウス細胞およびマウス肝臓におけるHCV侵入受容体発現の分析
マウス細胞およびマウス肝臓におけるHCV侵入受容体発現の分析について、以下のPCRプリマーを用いて、マウス特異遺伝子を増幅した。
【0071】
【表3】

【0072】
RNA干渉
ヒトCD81、ヒトOCLNに対するsiRNA、および非標的化siRNAのプール(ON-TARGETplus SMARTpools)は、Dharmacon(Lafayette, CO)から購入した。Huh−7.5およびHep3B細胞は、製造業者の取扱説明書にしたがい、リバーストランスフェクトした。簡単には、トランスフェクションのために、1ウェルあたり0.5μlのRNAiMAX(Invitrogen, Carlsbad, CA)および50pmolのsiRNAを用いた。1ウェルあたり1×10細胞を、48ウェルプレートにてトランスフェクションミックスと共に播種した。トランスフェクションし播種した後48時間に、タンパク質発現をフローサイトメトリーで測定し、感染アッセイを行った。
【0073】
オクルディン・ジーンバンク・受入番号
ヒト−NM_002538 14−SEP−2008(配列番号:47のDNA配列;配列番号:48のタンパク質配列)。
【0074】
統計分析
統計分析はすべて、Prism4ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA)を用いて実施した。
【0075】
引用文献

【0076】

【0077】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウイルス(HCV)による対象の感染を抑制、緩和または予防する方法であって、前記対象の細胞を、オクルディンタンパク質とのHCV相互作用を阻害する試薬と接触させることを含み、前記相互作用が、HCV侵入に必要とされるオクルディンの直接的または間接的機能のいずれかを含む、方法。
【請求項2】
前記対象が、マウス、ラット、サルまたはヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試薬が、オクルディンタンパク質の細胞外ループに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬が、抗体、アプタマーおよび組換えタンパク質からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、モノクローナル抗体または一本鎖抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
C型肝炎ウイルス(HCV)発症機序の研究のためのトランスジェニック動物モデルであって、前記動物におけるヒト・オクルディン・トランス遺伝子の発現を含み、それによって前記ヒト・オクルディン・トランス遺伝子の発現が、前記動物をC型肝炎ウイルス(HCV)感染に対して寛容にする、モデル。
【請求項7】
前記動物が、マウス、サルおよびラットからなる群より選択される、請求項14に記載のトランスジェニック動物モデル。
【請求項8】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染の阻害物質をスクリーニングする方法であって、C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との結合を妨げるか又は弱める化合物について、ライブラリーをスクリーニングすることを含む、方法。
【請求項9】
C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定する方法であって、
a) i)少なくともオクルディンタンパク質の細胞外ループまたはその保存的アミノ酸置換を含む組換えタンパク質、あるいはii)オクルディンタンパク質の細胞外ループを含有する膜結合タンパク質の発現を提供する組換えベクターを含む細胞であって、前記オクルディンタンパク質のアミノ酸残基が前記細胞に対して細胞外に位置することを特徴とする、前記細胞のいずれかを提供すること;
b) 工程(a)由来のタンパク質または細胞を、物質または化合物、およびHCVエンベロープタンパク質、HCVエンベロープタンパク質ElおよびE2を発現する細胞、HCV偽型レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子、エクスビボHCV細胞培養粒子またはHCVと接触させること;および
c) 前記化合物または物質が、工程(a)で提供されたタンパク質または細胞と、工程(b)で提供されたHCVエンベロープタンパク質、HCVエンベロープタンパク質E1およびE2を発現する細胞、HCV偽型レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子、エクスビボHCV細胞培養粒子またはHCVとの相互作用または融合を阻害するかどうかを決定し、それによってC型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定することを含む、方法。
【請求項10】
工程(a)における細胞が、CD81陽性細胞、SR−BI陽性細胞、および/またはクローディン−1陽性細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)における細胞が、NIH3T3、L929、H2.35、Hepa1.6、AML12、CHO、786−0またはTZM細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記組換えベクターが、DNAベクターまたはRNAベクターである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)における物質が、抗体ライブラリー、アプタマーライブラリー、ペプチドライブラリー、組換えタンパク質ライブラリーまたはペプチドミメティックライブラリーにより提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)における組換えタンパク質の相互作用の阻害が、工程(b)で提供されたHCVエンベロープタンパク質による、HCVエンベロープタンパク質E1およびE2を発現する細胞による、HCV偽型レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子による、エクスビボHCV細胞培養粒子による、またはHCVによる、前記組換えタンパク質の保持率をアッセイすることで、工程(c)において決定され、ここに、前記組換えタンパク質の減少した保持率が、結合阻害の指標であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)における相互作用または融合の決定が、レポータータンパク質をアッセイすることにより行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の細胞外ループとの相互作用を妨げるか又は弱める試薬であって、前記試薬が、抗体、アプタマー、ペプチド、ペプチドミメティック化合物または組換えタンパク質であり、前記相互作用が、HCV侵入に必要とされる直接的または間接的機能のいずれかを含むことを特徴とする、試薬。
【請求項17】
オクルディンの細胞外タンパク質配列との特異的な相互作用を通じ、傍細胞透過性を高めないことを特徴とする、請求項16に記載の試薬。
【請求項18】
オクルディン依存性の細胞接着を阻害しないことを特徴とする、請求項16に記載の試薬。
【請求項19】
オクルディンの細胞外タンパク質配列との特異的な相互作用を通じて傍細胞透過性を高めず、かつオクルディン依存性の細胞接着を阻害しないことを特徴とする、請求項16に記載の試薬。
【請求項20】
C型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定するためのキットであって、i)オクルディンタンパク質の細胞外ループまたはその保存的なアミノ酸置換を含有する組換えタンパク質、またはii)オクルディンタンパク質の細胞外ループまたはその保存的アミノ酸置換を含有する膜結合タンパク質の発現を提供する組換えベクターであって、前記のオクルディンタンパク質のアミノ酸残基が、前記膜結合タンパク質を発現する細胞に対して細胞外に位置することを特徴とする、前記組換えベクター、またはiii)前記組換えベクターを含有する細胞のいずれか;およびC型肝炎ウイルスの領域とオクルディンタンパク質の領域との相互作用を妨げるか又は弱める化合物または物質を同定するためにキットを用いるための取扱説明書を含む、キット。
【請求項21】
HCVエンベロープタンパク質、HCVエンベロープタンパク質E1およびE2をコードする組換えベクター、HCV偽型レトロウイルス粒子をコードする組換えベクター、HCV細胞培養粒子をコードする組換えベクターまたは感染性HCV粒子をコードする組換えベクターをさらに含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
i)オクルディンタンパク質またはその保存的アミノ酸置換を含有する膜結合タンパク質の発現を提供する組換えベクターを含む細胞であって、前記のオクルディンタンパク質のアミノ酸残基が前記細胞に対して細胞外に位置することを特徴とする、前記細胞、および
ii)HCVエンベロープタンパク質E1およびE2をコードする組換えベクターを含む細胞、または
iii)HCV偽型レトロウイルス粒子、HCV細胞培養粒子、エクスビボHCV細胞培養粒子もしくはHCV粒子のいずれか、のいずれか、
を含む、細胞培養組成物。
【請求項23】
前記のHCV偽型レトロウイルスベクターが、レポーター遺伝子を含み、HCV E1タンパク質、HCV E2タンパク質およびパッキング可能なレトロウイルスゲノムを含む、請求項22に記載の細胞培養組成物。
【請求項24】
前記のパッキン可能なレトロウイルスゲノムが、HIVまたはMLVのパッキング可能なレトロウイルスゲノムである、請求項23に記載の細胞培養組成物。
【請求項25】
前記のパッキング可能なレトロウイルスゲノムが、エンベロープ欠損レトロウイルスゲノムである、請求項23に記載の細胞培養組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【公表番号】特表2012−504647(P2012−504647A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530253(P2011−530253)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059285
【国際公開番号】WO2010/040001
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(596171834)ザ ロックフェラー ユニヴァーシティ (11)
【Fターム(参考)】