説明

新規なKCNQポリペプチド、それらのモジュレータ及び精神障害の治療におけるそれらの使用

本発明は、統合失調症、双極性障害、うつ病および他の気分障害などの精神障害の分野に関する。より詳細には、3つの新規なカリウムチャネルサブユニット、KCNQ2−125bx、KCNQ2−125by、KCNQ2−125bzに関する。また、この発明は、モジュレータのスクリーニングのためのKCNQ2サブユニットを含むカリウムチャネルの使用及び精神障害の治療のためのそのモジュレータの使用に関する。さらに、この発明は、精神障害の診断のためのKCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合失調症、双極性障害、うつ病および他の気分障害などの精神障害の分野に関する。より詳細には、3つの新規なカリウムチャネルサブユニット、KCNQ2−125bx、KCNQ2−125by、KCNQ2−125bzに関する。また、この発明は、モジュレータのスクリーニングのためのKCNQ2サブユニットを含むカリウムチャネルの使用及び精神障害の治療のためのそのモジュレータの使用に関する。さらに、この発明は、精神障害の診断のためのKCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1.KCNQカリウムチャネル
チャネルプロテインをコードする遺伝子又は自己抗体における突然変異のため、イオンチャネルにおける機能不全は、チャネル疾患(channelopathy)と称され、病状の原因にますます密接に関与している。例えば、カリウムチャネルの機能不全は、中枢及び抹消神経系の双方に影響を及ぼす神経障害(例えば、偶発的失調症、癲癇、神経性筋緊張病、パーキンソン病、先天的聴覚消失症、遺伝性QT延長症候群)のいくつかの病態生理学に関連している。カリウムチャネルは、かなりの程度の多様性及び偏在を示し、膜の脱分極及び細胞興奮性の制御の基本となる。カリウムチャネル疾患の共通の特徴は、膜ポテンシャルの再分極の減少又は欠損である。市販のカリウムチャネルのオープナーは、例えば、疼痛治療用に用いられる鎮痛薬である、フルピルチンなどである。
【0003】
KCNQポリペプチドは、カリウムチャネル系統群に属する。KCNQポリペプチドは、同価同義又は異価同義のカリウムチャネルを形成することに関与し、各ポリペプチドはそのチャネルのサブユニットに対応している。目下、KCNQ系統群の5種の異なる構成物、KCNQ1、KCNQ2、KCNQ3、KCNQ4及びKCNQ5が知られている。異価同義のKCNQカリウムチャネルは、KCNQ系統群の異なる構成物又はカリウムチャネル系統群のほかの構成物と関連するKCNQポリペプチドのいずれかを含むかもしれない。KCNQカリウムチャネルのいくつかは、KCNQ2及びKCNQ3を含み、M−電流を基礎とし、神経興奮性の重要な調節因子である。それらのアミノ末端及びカルボキシ末端の双方の末端は、膜の細胞内側に位置する。これらの末端は、他のプロテインとの相互作用及びチャネルの活性を調節することの双方に重要な役割を果たす。
【0004】
KCNQ1は、心臓、蝸牛、腸及び腎臓で発現される。それは、KCNE1遺伝子の生成物又はKCNE3遺伝子の生成物のいずれかと会合する。KCNQ1遺伝子の突然変異は、遺伝性QT延長症候群の一形態及び先天的聴覚消失症の一形態を引き起こすことが示されている。
KCNQ2は1996年に初めてクローン化された。1998年に、遺伝学者が、若年性欠神てんかんの先天的形態は、良性の家族性の新生児痙攣であるが、カリウムチャネルKCNQ2の突然変異によって引き起こされることを発見した(Singhら、Nat Genet, 1998, 18:25-9; Biervert ら、Science, 1998, 279:403-6)。より詳細には、Bievertらが、KCNQ2のカルボキシ末端から300以上のアミノ酸を欠損する5つの塩基対挿入がインビトロにおいてカリウム選択性電流の欠陥をもたらすことを示した。よって、KCNQ2における機能突然変異の欠損がてんかん症候群を引き起こすことが示された。Wangらは、KCNQ2が脳において発現すること及びKCNQ3と関連することを示した。さらに、彼らは、KCNQ2/3異価同義マルチマーがM−電流を基礎とすることを示した(Wangら、Science, 1998, 282:1890-3)。2000年に、Mainらは、KCNQ2が、抗痙攣薬として有効な化合物であるレチガビン(retigabine)の分子標的であり、レチガビンがKCNQ2/3カリウムチャネルオープナーとして作用することを示した(Mol Pharmacol, 2000, 58:253-62)。Biervertらは、KCNQ2遺伝子が、少なくとも18エキソンを有し、ゲノムDNAの50kbを超えて占有することを証明した(Genet., 1999, 104:234-240)。現在まで、可変スプライシングによって生成されるKCNQ2の6種の異なる異性体が示されている(例えば、SwissProt Accession No. O43526参照)。
【0005】
KCNQ4は内耳で発現され、KCNQ4遺伝子の突然変異体は先天的聴覚消失症の形態をもたらすことが示されている。
KCNQ5は脳及び骨格で発現され、KCNQ3とともに共同集結(コアセンブル)することができ、M−電流不均一における役割をも果たすかもしれないことが示唆されている。
【0006】
KCNQチャネルの活性はプロテインキナーゼA(PKA)及びc−Srcチロシンキナーゼ(Src)によって調節されることが示されている。Schroederらは、異価同義KCNQ2/KCNQ3チャネルによって生じる電流は細胞内サイクリックAMPによって増大させることができ、この作用はPKAが介在していることを示した。PKAは、電流強度を60%刺激した(Schroederら、エチオピア(2000) 41:1068-1069)。Gamperらは、 SrcのKCNQ2/KCNQ3異価同義チャネルとの共発現が、電流密度の4.5倍減少及び0mVでの活性化反応速度の2倍減速をもたらすことを示した。しかし、Srcは、KCNQ2異価同義マルチマーチャネルによって生じる電流に作用しない(J Neurosci. (2003) 23:84-95)。これらの結果から、キナーゼ及びホスファターゼによるKCNQチャネルの調節はニューロンの興奮性の制御に重要であると信じされている。
【0007】
ヒト及び動物もモデルでのKCNQチャネルの研究は、M−チャネルが、細胞、ネットワーク及び行動レベルでの興奮をどのように制御するかを理解するために非常に重要なことである。KCNQチャネルの生理学的な役割をより理解することは、新たな疾病に対する新しい標的を見出す有望な方法であり、よって、候補となる薬物の新規なスクリーニングの可能性をもたらす。
【0008】
2.PP2Aホスファターゼ
PP2Aホスファターゼは、2又は3つのサブユニットから構成される細胞内セリン/スレオニンプロテインホスファターゼである。PP2Aホスファターゼは、触媒サブユニット(PP2A/C)、骨格(scaffolding)サブユニット(PP2A/A)及び最後に調節サブユニット(PP2A/B)からなる。
調節サブユニットは、組織特異性、非細胞局在化及びPP2Aへの発達調節を与えるものと考えられている。11種より多くの種々の調節サブユニットが現在までに知られており、それらのうちの1種にPP2A/Bγがある。PP2A/Bγは、マーカーD4S2925とD4S3007との間のヒト染色体4p16に位置するPPP2R2Cに細胞の細胞質ゾルの分画において富化される。さらに、PPP2R2Cは発達的に調節される。
【0009】
3.精神障害
精神障害は、広範囲のCNS障害を包含する。精神障害は、例えば、気分障害、精神病障害、不安障害、小児期障害、摂食障害及び人格障害を包含し、これら全ての用語は、DSM−IVの分類(Diagnosis and Statistical Manual of Mental Dis又はders, Fourth Edition, American Psychiatric Association, Washington D.C., 1994)に従って定義されている。気分障害は、双極性I障害(大うつ病を伴う又は伴わない躁病)、双極性II障害(大うつ病を伴う軽躁病)、循環気質障害(軽躁病及び大うつ病の多数の短いエピソード)、気分変調障害(軽躁/躁病を伴わない長期大うつ病)及び大うつ障害(躁病を伴わない大うつ病)を含む。精神病性障害は、統合失調症、分裂感情性障害、総合失調症型障害、短期精神病性障害、妄想障害及び共有精神病障害を含む。双極性障害、総合失調症及びうつ病は3つの特に深刻で広く一般的な精神障害である。
【0010】
3.1.双極性障害
双極性障害は、人口の約1.3%で発生している比較的一般的な障害であり、重症で潜在的な能力障害の影響に関して精神科クリニックで認められる気分障害の約半分を構成することが報告されている。双極性障害は、障害の型が性に依存して異なることが見出されている;例えば、双極性障害I型は男性と女性との間で同程度に見出されるが、双極性障害II型は、報告によれば、女性の方がより一般的である。双極性障害の発症年齢は、典型的には13歳〜19歳であり、診断は、典型的には患者の20代早期になされる。双極性障害はまた、中高年においても、一般的には、神経学的障害または他の医学的状態の結果として発生する。患者の社会的発達に対する重度の影響に加えて、双極性患者における自殺完遂率は約15%であることが報告されている。
【0011】
双極性障害は、興奮相と、多くの場合にはうつ病相とによって特徴づけられる;興奮相(これは躁病または軽躁病と呼ばれる)およびうつ病相は交互に起こることがあり、または様々な混合状態で生じことがあり、そして異なる重症度で、様々な持続期間にわたって生じることがある。双極性障害は、種々の形態で存在し、そして種々の症状を示し得るために、双極性障害の分類は、これまで、双極性障害のサブタイプの定義をもたらし、そして異なる障害に罹患していると以前には考えられていた患者を含むように概念全体の拡大をもたらす広範な研究の主題であった。双極性障害は、多くの場合、一定の臨床的徴候、症状、治療および神経生物学的特徴を一般の精神病性疾患と共有しており、従って、正確な診断を行なうために精神科医に難題を与えている。さらに、双極性障害と様々な気分障害および精神病性障害との経過は非常に異なることがあるので、長期間にわたって疾患を管理する手段を提供するためには、できるだけ早期に疾患を特徴づけることが重要である。
【0012】
この疾患に関連する躁病は動作を損ない、精神病を引き起こし、そして多くの場合には入院をもたらす。この疾患は、疾患に関係する直接的および間接的な費用ならびに疾患に伴なう社会的不名誉の両方の点から、時には世代をこえて、患者の家族および親類に重い負担を負わせている。そのような不名誉は孤立および無視をもたらすことが多い。さらに、発症が早いほど、教育および社会的発達の中断の影響がひどくなる。
【0013】
双極性障害のDSM−IV分類は、躁病または軽躁病の程度および持続期間に基づいて4つの型の障害を区別し、そして同様に、典型的には医学的状態もしくはその治療に関して、または物質乱用に対して、典型的には明らかである2つの型の障害を区別している。躁病は、高揚した気分、誇大妄想気分または過敏性気分によって認められ、そして注意散漫、衝動的行動、活動亢進、誇大性、意気高揚、観念の競合、および精神的圧迫を受けた会話によってもまた認められる。躁病の特定の程度および持続期間によって特徴づけられる双極性障害の4つの型のうち、DSM−IVには、下記が含まれる:
【0014】
−双極性障害I型、これには、少なくとも1週間にわたって躁病を示す患者が含まれる;
−双極性障害II型、これには、躁病よりも穏やかな興奮症状によって特徴付けられる、少なくとも4日間にわたる軽躁病を示す患者が含まれるが、この患者は以前には躁病を示したことがないが、以前に大うつ病の症状発現に苦しんだことがある;
−特定不能(NOS)型双極性障害、これには、それ以外の点では双極性障害II型の特徴を示すが、興奮相については4日の持続期間を満たさない患者、または大うつ病の症状発現を伴なわない軽躁病を示す患者が含まれる;および
−循環気質、これには、軽躁病または大うつ病に対する基準を満たさないが、無症状の間隔が2ヶ月を越えることはなく2年間にわたって非常に多くの躁病性症状およびうつ病性症状を示す患者が含まれる。
【0015】
DSM−VIにおいて分類されるような双極性障害の残りの2つの型は、様々な医学的障害およびその治療によることが明らかであるか、またはそれらによって引き起こされる障害、そして物質乱用を伴うか、または物質乱用に関連する障害である。双極性障害を引き起こし得る医学的障害には、典型的には内分泌障害および脳血管損傷が含まれ、そして双極性傷害を引き起こす医学的治療には、グルココルチコイド、および興奮薬の乱用が含まれることが知られている。物質の使用または乱用に関連する障害は、「躁病性特徴または混合型特徴を伴なう物質誘発性気分障害」と呼ばれている。
【0016】
双生児および養子の研究からの証拠、そして世界的な発生率において変動がないことは、環境的リスク因子もまた、必要な原因または十分な原因または相互作用的な原因としていくらかのレベルで関与するが、統合失調症および双極性障害が本来的には遺伝的状態であることを示している。家族における双極性障害及び総合失調症の集合体は、これらの2つの別個の障害が、いくつかの共通の遺伝的な感受性を共有しているということを示唆している。双極性障害のいくつかの関連研究が報告されており、いくつかの感受性領域が同定されている。双極性障害に関連するその領域は、1q31-q32、4p16、7q31、12q23-q24、13q32、18p11.2、21q22及び22q11-q13を含む(Detera-Wadleighら、(1999) Proc Natl Acad Sci USA A96(10):5604-9)。これらの領域のいくつか、例えば、4p16、12q24、18p11、21q21及び22q11は、独立した研究者によって、たびたび結び付けられている。さらに、例えば、13q32及び18p11.2のような双極性障害に関連する領域は、総合失調症のゲノムスキャンにも結びつけられ、これらの2つの別個の障害が、いくつかの共通の遺伝的な感受性を共有していること確認している。しかし、双極性傷害及び/又は総合失調症の基礎をなす遺伝子は、また同定されていない。
【0017】
3.2.統合失調症
4500万人の統合失調症患者が世界には存在すると推定されており、開発途上国にはそのうちの3300万人以上の患者がいると推定される。先進諸国では、統合失調症が、成人集団の約1パーセントにおいてその生涯のどこかの時点で発生している。祖父母の一人が総合失調症であれば、その疾患に罹るリスクは約3%に増加し、両親の一人が総合失調症であれば、約10%に増加する。両親が総合失調症であれば、そのリスクは約40%にまで上昇する。大部分の統合失調症患者は全く働くことができない。統合失調症患者に対する標準化死亡比(SMR)は一般集団よりも2倍〜4倍高いと推定され、そして統合失調症患者の余命は、全体的には、一般集団の場合よりも20%短い。統合失調症患者における最も一般的な死亡原因は自殺であり(患者の10%で)、これは、一般集団の場合よりも20倍高いリスク性であることを表している。心臓疾患による死亡ならびに呼吸器系および消化器系の疾患による死亡もまた、統合失調症患者の間では増加している。
【0018】
統合失調症は、「陽性」症状または「陰性」症状のいずれかを伴なう一群の精神病を含む。陽性症状は、幻覚、妄想および思考障害からなり、一方、陰性症状には、感情の平板化、意欲の欠如および運動活動の低下が含まれる。
多くの生化学的異常が同定されており、その結果、近年には、神経伝達物質に基づく仮説がいくつか提唱されている。最も一般的な仮説は「ドーパミン仮説」であり、その変形の1つは、大脳辺縁系中心部のドーパミン経路の過剰活性がD2受容体のレベルで存在することを述べている。しかし、研究者らは、ドーパミン作動系の様々な受容体と統合失調症との関連を矛盾なく認識することができないでいる。
【0019】
3.3うつ病
うつ病は、世界中で3億4000万の人々が罹患する深刻な医学的疾患である。悲哀、喪失感または一時的な気分状態の正常な感情的経験とは対照的に、臨床的なうつ病は持続的であり、個人の活動能力を著しく妨げることがある。結果として、うつ病は世界中で能力障害の最も有力な原因である。
うつ病の症状には、抑うつ気分、活動における興味または喜びの減少、食欲または体重の変化、不眠または過眠、精神運動の激越または遅滞、疲労または気力喪失、無価値感または過度の罪責感、不安、集中できないことまたは決断的に行動できないこと、および死または自殺についての反復思考が含まれる。単極性大うつ病(すなわち、大うつ病性障害)の診断は、人が、同じ2週間の間のほぼ毎日、通常の機能においてこれらの症状および障害のうちの5つ以上を有するか否かで行なわれる。うつ病の発症は、一般的には、青年期後期または成人期初期に始まる。しかし、最近の証拠は、うつ病が、過去30年に生まれた人々では生涯のより早い時期に発生しつつあると考えられることを示唆している。
【0020】
世界保健機関は、2020年までに、うつ病が開発途上国では人々に対する不健康の最大の負荷になり、そしてそれまでに、うつ病が死亡および能力障害の2番目に大きな原因になると予想している。大うつ病が引き起こすほとんど耐えられない苦悩のほかに、大うつ病における大きなリスク性は自殺である。大うつ病に罹患して5年以内に、罹患者の推定25%が自殺を試みる。さらに、うつ病は、心臓発作、卒中、糖尿病およびガンの頻繁かつ重篤な合併症である。13年間に及ぶ1つの最近の研究によれば、大うつ病の病歴を有する人は、そのような病歴のない人々と比較して、心臓発作を経験する可能性が4倍であった。また、うつ病は、パーキンソン病およびアルツハイマー病などのCNS障害を伴なう患者の50%までにおける特徴となり得る。
【0021】
3.4.治療
現在、統合失調症、双極性障害、うつ病および他の気分障害などのCNS障害に対する治療法がないため、治療の目的は、症状の重症度を、可能であれば、寛解点まで軽減させることである。症状が類似しているため、統合失調症、うつ病および双極性障害は、いくつかの同じ医薬品を用いて処置されることが多い。
【0022】
3.4.1.双極性障害の治療
抑うつ障害エピソードはうつ病のように治療されるかもしれない。しかし、大部分の抗うつ薬は、うつ病から軽躁又は躁病への変化をもたらすかも知れず、時折、それらの間の急速な周期をもたらすかもしれない。従って、これらの薬物は短期間のみ使用され、気分に対するそれらの作用は、厳重にモニターされる。軽躁又は躁病への変化の最初の兆候で、抗うつ薬は中止される。うつ病−抑うつ性障害の大部分の人々はリチウム、カルバマゼピン及びジバルプロエクスのような気分安定作用を有する薬物が与えられる。
【0023】
リチウムは正常な気分に対して作用しないが、うつ病−抑うつ性疾患の人々の約70%において、躁うつの傾向を低減させる。医師は血液検査で血中のリチウム濃度をモニターする。リチウムの起こり得る副作用は、振せん、筋肉痙攣、悪心、嘔吐、下痢、口渇、頻尿及び体重増加を含む。
リチウムは、ざ瘡又は乾癬を悪化させ、甲状腺ホルモンの血中濃度の低下を引き起こし、まれに、頻尿を引き起こすかもしれない。血中においてリチウムが非常に高濃度であれば、持続的な頭痛、精神錯乱、嗜眠状態、痙攣及び異常心律動を引き起こすかもしれない。副作用は、年配者に起こりやすい。リチウムは発達中の胎児に心欠陥を引き起こすため、妊娠しようとする女性には、リチウムの摂取は中止しなければならない。
【0024】
新たな薬物治療は過去何年にもわたって展開されている。これらや、カルバマゼピン及びジバルプロエクスを含む。しかし、カルバマゼピンは赤血球及び白血球数を相当減少させるかも知れず、ジバルプロエキスは肝障害(主として小児に)を引き起こすかもしれない。医師による注意深いモニタリングにより、これらの問題はまれになり、特に、他の治療が報告されていないうつ病−抑うつ性障害の混合型又は急速な周期型の人々にとって、カルバマゼピン及びジバルプロエキスはリチウムの代替品として有用である。
【0025】
3.4.2.総合失調症の治療
総合失調症の場合、抗精神病薬による薬物療法が最も一般的かつ最も有益な治療である。統合失調症のために一般に処方されている抗精神病性薬物には、4つの主要な種類がある。第1に、クロルプロマジン(トラジン)によって例示される神経遮断薬は、陽性(精神病性)症状を軽減させ、その再発を防止することによって、統合失調症患者の治療に大変革を起こしている。クロルプロマジンが投与された患者は、精神病院から退院することが可能になり、そして地域社会プログラムまたは患者自身の家で生活することが可能になっている。しかし、これらの薬物は理想からほど遠いものである。約20%〜30%の患者が薬物に全く応答せず、他の患者は最終的には再発する。これらの薬物は、様々な重篤な神経学的副作用を引き起こすので、神経遮断薬と名づけられた。そのような副作用には、腕および下肢における硬直および振戦、筋痙攣、異常な身体運動およびアカシジア(休みなく歩き回り、そわそわすること)が含まれる。これらの副作用はとても煩わしいので、多くの患者は薬物を服用することを簡単に拒絶する。さらに、神経遮断薬は統合失調症のいわゆる陰性症状を改善せず、その副作用はこれらの症状を悪化させることさえあり得る。従って、神経遮断薬の明らかな有益な効果にもかかわらず、良好な短期応答を有する患者でさえも、全体的な機能が最終的には悪化する患者がいる。
【0026】
標準的な神経遮断薬におけるよく知られている欠陥により、新しい治療に対する探索が刺激され、非定型神経遮断薬と呼ばれる新しい種類の薬物がもたらされている。最初の非定型神経遮断薬であるクロザピンは、標準的な神経遮断薬に応答しない患者の約1/3に対して有効である。クロザピンは、陽性症状と同様に陰性症状を軽減させるようであり、または少なくとも陰性症状を標準的な神経遮断薬の場合よりも悪化させない。さらに、クロザピンは、全体的な機能に対して有益な効果を有しており、統合失調症患者における自殺の可能性を減少させることができる。クロザピンは標準的な神経遮断薬の煩わしい神経学的症状を生じさせないか、または、ホルモンであるプロラクチンの血中レベルを上昇させない。過剰なプロラクチンは、女性において月経不順および不妊症を生じさせることがあり、男性において性的不能または乳房拡大を生じさせることがある。標準的な神経遮断薬に耐えることができない多くの患者は、クロザピンを服用することが可能になった。しかし、クロザピンには様々な制限がある。クロザピンは、顆粒球減少症、すなわち、潜在的に致死的な白血球産生不能を生じさせ得るために、当初は市場から回収された。顆粒球減少症は依然として脅威であり、そのため、注意深い監視および定期的な血液検査が要求される。クロザピンはまた、発作および不安にさせる他の副作用(例えば、嗜眠状態、血圧低下、流涎、夜尿症および体重増加)を引き起こすことがある。従って、クロザピンは、通常的には、他の薬物に応答しない患者によってのみ服用される。
【0027】
研究者は、クロザピンの欠点がなく、クロザピンの長所を有する3番目の種類の抗精神病性薬物を開発した。これらの薬物の1つがリスペリドン(リスパダール)である。初期の研究により、リスペリドンは、陽性症状については標準的な神経遮断薬と同じくらい効果的であり、陰性症状についてはいくらかより効果的であり得ることが示唆される。リスペリドンは、クロザピンよりも多くの神経学的副作用をもたらすが、標準的な神経遮断薬よりも副作用が少ない。しかし、リスペリドンはプロラクチンのレベルを上昇させる。現在、リスペリドンは広範な精神病患者に処方されているが、多くの臨床医は、リスペリドンの方が安全であると考えているので、標準的な薬物に応答しない患者に対しては、リスペリドンをクロザピンの前に使用するようである。別の新しい薬物はオランザピン(ジプレキサ)である。これは、陽性症状については標準的な薬物と少なくとも同じくらい効果的であり、陰性症状についてはより効果的である。オランザピンは、通常の臨床的用量では神経学的副作用をほとんど有しておらず、プロラクチンのレベルを著しく上昇させない。オランザピンは、顆粒球減少症を含むクロザピンの非常に面倒な副作用の大部分を生じさせないが、オランザピンを服用する患者の一部は、鎮静化またはめまいが生じることがあるか、口渇を起こすことがあるか、あるいは体重が増加することがある。まれに、肝機能検査が一時的に異常になる。
【0028】
3.4.3.うつ病の治療
抗抑うつ薬は、いくつかのタイプが有用である。これらの抗抑うつ薬は、4種の主なカテゴリーに属する。三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤及び精神刺激薬である。三環系抗うつ薬は、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、マプロチリン、ネフェゾドン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トラゾドン、トリミプラミン及びベンラファキシンを含む。選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、例えば、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリンを含む。モノアミンオキシダーゼ阻害剤は、たとえば、イソカルボキサジド、パルギリン、フェネルジン及びトラニルシプロミンを含む。精神刺激薬は、例えば、デキストロアンフェタミン及びメチルフェニデートを含む。
【0029】
これら抗抑うつ薬のすべては、彼らが仕事を始める前、少なくとも数週間定期的に摂取しなければならない。いずれかの与えられた抗抑うつ薬が特定のヒトに作用するであろう見込みは、約65%である。しかし、これらの薬物の大部分は薬物の各タイプによって異なる副作用を有する。例えば、三環系抗うつ薬は、しばしば、鎮静を引き起こしたり、体重増加を招く。また、それらは、心拍数の増加、起立した際の血圧低下又はかすみ目のような副作用に関連することがある。
【0030】
このように、双極性障害、総合失調症失調症、うつ病及び他の気分障害などの精神障害の場合、治療のために使用されている公知の分子は、副作用を有しており、疾患の症状に対してのみ作用するだけである。その結果、関連した副作用を伴なわず、そしてそのようなCNS障害の原因となる機構に関与する標的に指向する新しい分子が強く求められている。従って、双極性障害及び総合失調症に関連するプロテインを同定することが必要である。双極性障害及び総合失調症に関連した新たな標的を提供することは、薬物の新たなスクリーニングを可能にし、その結果、これらの重篤な精神障害の治療に有効な新たな薬物をもたらす。
【0031】
さらに、診断手段も必要とされている。疾患の過程における初期に長期間治療せずに総合失調症を放置しているという証拠が増加していることは、成果にネガティブな影響を与えるかもしれない。しかし、疾患の第1エピソードを体験している患者は、しばしば、薬物の使用を遅らせる。患者は、彼らが病気であることを認識していないか、あるいは助けを求めることを恐れているかもしれない。家族の一員は、時折、問題が単純に消失することを望み、あるいは患者に治療を求めるように説得することができない。臨床医は、副作用の可能性があるので、診断がはっきりとしない場合、抗精神病を処方することを躊躇するかもしれない。実際、疾病の最初の発現で、総合失調症又は双極性障害は、例えば、薬物関連障害及びストレス関連障害から区別することが困難である。従って、双極性障害、総合失調症及び抑うつ病のような精神障害の感受性を検出する新たな方法が求められている。
【発明の開示】
【0032】
本発明は、KCNQ2カリウムチャネルの新規なスプライシング多型の同定に基づいている。
従って、第1の観点では、本発明は、
a)配列番号: 2のアミノ酸589から643の少なくとも10のアミノ酸のスパンを含むポリペプチド、
b)配列番号: 2のアミノ酸589から643を含むポリペプチド、
c)配列番号: 2のアミノ酸545から643を含むポリペプチド、
d)配列番号: 2を含むポリペプチド、
e)配列番号: 4を含むポリペプチド、
f)配列番号: 6を含むポリペプチド、
g)a)からf)のいずれかのムテインであって、そのアミノ酸配列が、a)からf)の配列の少なくとも1つと、少なくとも50 % 又は60 %又は70 %又は80 %又は90 %又は95%又は99%同一である、
h)中等度にストリンジェントな条件又は高いストリンジェントな条件下で、a)からf)のいずれかをコードするDNA配列の相補体にハイブリダイズするDNA配列によってコードされたa)からf)のいずれかのムテイン、
i)a)からf)のいずれかのムテインであって、アミノ酸配列におけるいずれかの変化が、a)からf)におけるアミノ酸配列への保存的アミノ酸置換である、からなる群から選択される単離されたKCNQ2−15bポリペプチドに指向する。
【0033】
さらに、本発明は、少なくとも1つのKCNQ2−15bポリペプチドを含むカリウムチャネルに関する。
さらに本発明は、KCNQ2−05bポリペプチド又はそれに相補的なポリヌクレオチドをコードする、精製されたKCNQ2−15bポリヌクレオチドに関する。
また、KCNQ2−15bポリヌクレオチドを含む表現ベクター、KCNQ2−15bポリヌクレオチドを含む表現ベクターを含むホストセル及びKCNQ2−15bポリヌクレオチドに特異的に結合する抗体は、本発明の範囲内のものである。
【0034】
さらに、本発明は、ポリペプチドの製造方法、つまり、ホストセル内のKCNQ2−15bポリペプチドの生成に適した条件下でKCNQ2−15bポリヌクレオチドを含む表現ベクターを有するホストセルを培養する工程を含む製造方法に関する。
本発明は、さらに、KCNQ2が精神障害の発症及び発達に関連することを見出したことに基づく。
【0035】
したがって、第2の観点では、本発明は、候補となるモジュレータをスクリーニングするための標的としてのKCNQ2ポリペプチドの使用に指向する。
さらに、本発明は、精神障害の治療用の医薬を製造するためのKCNQ2ポリペプチドのモジュレータの使用に関する。
また、本発明は、精神障害の治療のためのKCNQ2ポリペプチドのモジュレータの有効性を評価する方法に関し、その方法は、精神障害の動物モデルにそのモジュレータを投与することを含み、そのモジュレータが動物モデルにおける精神障害の代表的な性質を改善するという決定は、そのモジュレータが精神障害の治療用の薬物であることを示す。
本発明の構成において、KCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーを同定し、確認している。
【0036】
したがって、本発明の第3の目的は、個体が精神障害を患っているか、患うリスクにあるかどうかを診断するために少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーを使用することからなる。
さらに、本発明は、そのマーカーと精神障害とが有意に関係するかどうかを決定するために少なくとも1つのKCNQ2−関連バイアレリックマーカーを使用することを含む。
また、本発明は、生物学的サンプルにおけるKCNQ2−関連バイアレリックマーカー又はそれらの相補体でのヌクレオチドの同一性を決定する工程を含むゲノタイピング方法に関する。
【0037】
さらに、本発明は、生物学的サンプルにおけるKCNQ2−関連バイアレリックマーカー又はそれらの相補体でのヌクレオチドの同一性を決定する工程を含むゲノタイピング方法を用いて少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーでゲノタイピングする工程を含む、個体において精神障害を診断する方法に関する。
【0038】
(配列表に示された配列の簡単な説明)
配列番号1:KCNQ2−15bxのCDSからなるポリヌクレオチドに相当;
配列番号2:KCNQ2−15bxポリペプチドに相当;
配列番号3:KCNQ2−15byのCDSからなるポリヌクレオチドに相当;
配列番号4:KCNQ2−15byポリペプチドに相当;
配列番号5:KCNQ2−15bzのCDSからなるポリヌクレオチドに相当;
配列番号6:KCNQ2−15bzポリペプチドに相当;
配列番号7:KCNQ2−flポリペプチドに相当;
配列番号8から36:実施例1から4で使用したプライマー及びプローブに相当;
配列番号37:PP2A/BγサブユニットをコードするPPP2R2C遺伝子に相当、PP2A/Bγ関連バイアレリックマーカーを示す;
配列番号38:PP2A/Bγサブユニットに相当;
配列番号39から41:PP2A/Bγ関連バイアレリックマーカーのいくつかをマイクロシーケンシングするために使用するプライマーに相当;
配列番号42から47:KCNQ2遺伝子の領域に相当、KCNQ2関連バイアレリックマーカーを示す。
【0039】
(表の簡単な説明)
表1は、KCNQ2-fl、KCNQ2-15bx、KCNQ2-15by及びKCNQ2-15bzの構造を示す。
表2A及び2Bは、それぞれ、PPP2R2C及びKCNQ2遺伝子におけるPCRによるゲノムDNAの増幅のために使用されたプライマーの配置を示す。
表3は、それぞれ、PPP2R2C及びKCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーを示す。
表4A及び4Bは、それぞれ、PPP2R2C及びKCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーをマイクロシーケンシングするために使用されたプライマーを示す。
表5A及び5Bは、それぞれ、PPP2R2C及びKCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーに対するp値を示す。
表6A及び6Bは、それぞれ、PPP2R2C及びKCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーに対する遺伝子型オッズ比を示す。
表7A及び7Bは、PPP2R2Cに位置するバイアレリックマーカーの2セットに対するリスクハプロタイプを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、KCNQ2遺伝子、つまりKCNQ2-15bx、KCNQ2-15b及びKCNQ2-15bzの3種の新規なスプライシング多型のクローニング及びシーケンシングに由来する。これらのスプライシング多型は、全て、配列番号2のアミノ酸545から643に対応する新規なエキソン(エキソン15b)を表す。KCNQ2−15bx及びKCNQ2−15byが機能的同価同義四量体カリウムチャネルとして集結することができることを示すデータが提供される。本発明の構成では、これら新規なスプライシング多型が、インビトロ及びインビボの双方において、セリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A(PP2A/Bγ)Bγサブユニットと相互作用することを証明している。さらに、関連研究を実施例15を示しており、それは、KCNQ2遺伝子及びPP2A/Bγをコードする遺伝子の双方が、双極性障害に強力に関連していることを示した。KCNQ2遺伝子に位置し、双極性障害と関連する新規の確認されたバイアレリックマーカーが提供される。本発明の構成では、それは、さらにKCNQ2-15bx、KCNQ2-15b及びKCNQ2-15bzが(i)PP2Aによって脱リン酸化され、(ii)PKA及びGSK3βキナーゼによってリン酸化されることを示す。さらに、KCNQ2-15bx、KCNQ2-15b及びKCNQ2-15bzのリン酸化は公知の精神安定剤であるリチウムの存在で阻害される。
【0041】
したがって、本発明は、新規なKCNQ2ポリペプチドを提供し、双極性障害、総合失調症、うつ病及び他の気分障害のような精神障害の治療に有効な化合物を確認することを意味する。さらに、本発明は、それらのモジュレータをスクリーニングする標的としてのKCNQ2ポリペプチドの使用に関する。精神障害の治療のためのモジュレータの使用及び精神障害を診断するためのKCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーの使用も、本発明のさらなる側面である。
【0042】
1.定義
用語「治療する(treatまたはtreating)」は、症状を改善もしくは緩和すること、または症状の原因を一時的もしくは永続的に除くこと、または言及された障害もしくは症状の兆候の出現を防止もしくは遅延させることを意味する。また、ここで用いられている用語「治療」も用語「障害の防止」を含み、これは、例えば、障害の兆候の発現を医学的に有意な程度に遅延させることによって明らかになる。障害の治療は、例えば、障害に関連する兆候を減少させること、あるいは障害の徴候の再発を改善させることによって明らかになる。
【0043】
用語「精神障害」は、DSM−IV分類(精神障害の診断と統計の手引き[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Dis又はders]、改訂第4版、1994年)において、気分障害、精神病性障害、不安障害、小児期障害、摂食障害、人格障害、適応障害、自閉症、知覚障害、痴呆、多重梗塞性痴呆症及びトゥーレット症候群として特徴付けられる疾患を示す。
【0044】
用語「統合失調症」は、DSM−IV分類(精神障害の診断と統計の手引き[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Dis又はders]、改訂第4版、1994年)において、統合失調症として特徴付けられる症状を示す。
用語「双極性障害」は、DSM−IVにおいて双極性障害として特徴づけられる状態を示す。双極性障害は、DSM−IVに記載されるような双極性障害I型および双極性障害II型かもしれない。さらに、その用語には、さらに循環気質障害が含まれる。循環気質障害は、抑うつ性症状および軽躁症状が交互に生じることをいう。当業者は、病的な心理的状態に対する代わりの用語および疾病分類法および分類システムが存在すること、そしてこれらのシステムが医学的科学的進歩とともに進化することを認識する。
【0045】
用語「含む」、用語「からなる(から構成される)」または用語「から本質的になる(から本質的に構成される)」は、異なる意味を有しており、それぞれの用語は、本発明の範囲を変化させるために別の用語に代わって使用することができる。
【0046】
本明細書中で交換可能に使用される用語「オリゴヌクレオチド」および用語「ポリヌクレオチド」は、単鎖形態または二重鎖形態のいずれかで2つ以上のヌクレオチドのRNA、DNAまたはRNA/DNAハイブリッド配列を含む。用語「ヌクレオチド」は、単鎖形態または二重鎖形態のいずれかでいずれかの長さであるRNA、DNAまたはRNA/DNAハイブリッド配列を含む分子を記載するために形容詞として本明細書中では使用される。また、用語「ヌクレオチド」は、分子を意味する個々のヌクレオチドまたは種々のヌクレオチドを示すために、あるいはプリンもしくはピリミジン、リボースもしくはデオキシリボースの糖残基、およびリン酸基、またはオリゴヌクレオチド内もしくはポリヌクレオチド内のヌクレオチドの場合にはホスホジエステル結合を含む、より長い核酸分子における個々のユニットを示すために名詞として使用される。また、用語「ヌクレオチド」は、少なくとも1つの修飾、すなわち、(a)代替結合基、(b)プリンのアナログ形態、(c)ピリミジンのアナログ形態、または(d)糖のアナログ、例えば、類似的な結合基、プリン、ピリミジンおよび糖の修飾(例えば、PCT国際特許出願公開WO95/04064を参照のこと、その開示は参考として本明細書中に組み込まれる)を含む「修飾ヌクレオチド」を包含するために本明細書中では使用される。しかし、本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、50%を越える従来型のデオキシリボースヌクレオチドを含み、最も好ましくは90%を越える従来型のデオキシリボースヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチド配列は、合成、組換え、エクスビボ作製またはそれらの組み合せを含むいずれかの公知の方法によって、同様にこの分野で知られているいずれかの精製方法を用いることによって製造することができる。
【0047】
用語「単離された」は、物質が、その最初の環境(例えば、物質が天然に存在する場合には自然環境)から取り出されていることを必要とする。例えば、生きている動物に存在する天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチドまたはDNAまたはポリペプチドが、天然の系において共存する物質の一部またはすべてから分離されているとき、それらは単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部であることがあり及び/または組成物の一部であることがあり、従って、そのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、ベクターまたは組成物がその自然環境の一部ではないという点でやはり単離され得る。
【0048】
用語「プライマー」は、標的ヌクレオチド配列に対して相補的であり、標的ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションさせるために使用される特異的なオリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のいずれかによって触媒されるヌクレオチド重合のための開始点としての役割を果たす。
【0049】
用語「プローブ」は、サンプルに存在する特定のポリヌクレオチド配列を同定するために使用することができる規定された核酸セグメント(またはヌクレオチドアナログセグメント、例えば、本明細書中に規定されるようなポリヌクレオチド)で、同定される特定のポリヌクレオチド配列の相補的なヌクレオチド配列を含む核酸セグメントを意味する。
【0050】
用語「相補的」または用語「その相補体」は、相補的な領域の全体にわたって別の指定されたポリヌクレオチドとのワトソン&クリック塩基対形成を形成することができるポリヌクレオチドの配列を示すために本明細書中では使用される。この用語は、その配列にのみ基づくポリヌクレオチドの対に適用され、2つのポリヌクレオチドが実際に結合する状態の特定のセットのいずれにも適用されない。
【0051】
用語「ポリペプチド」は、ポリマーの長さには関係なくアミノ酸のポリマーを示す。従って、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質はポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後の修飾を規定しないし、排除もしない。例えば、グリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基などの共有結合的結合を含むポリペプチドは、明らかにポリペプチドの用語によって包含される。また、(例えば、天然に存在しないアミノ酸、関連しない生物学的系において天然に存在するだけであるアミノ酸、哺乳動物系に由来する修飾されたアミノ酸などを含む)1つ以上のアミノ酸アナログを含有するポリペプチド、置換された結合を有するポリペプチド、ならびにこの分野で知られている他の修飾体(天然に存在する修飾体および天然に存在しない修飾体の両方)もこの定義に含まれる。
【0052】
本明細書中で使用される用語「エキソン」は、同様に、アミノ酸がDNAのその部分によってコードされるのに応じて、スプライシングされたmRNAの部分をコードするDNAの部分を示す。その用語、スプライシング多型は、同様に対応ポリペプチドに応じるmRNAを示す。
【0053】
本明細書中で使用される用語「スプライシング多型(splice variant)」は、代わりのスプライシング事象によって生成された及び同じ遺伝子から形質転換された種々のmRNAを示す。
本明細書中で使用される用語「非ヒト動物」は、任意のヒト以外の脊椎動物、鳥類、より通常的には哺乳動物、好ましくは霊長類、飼育動物(ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、およびウマなど)、ウサギ、または齧歯類(より好ましくはラットまたはマウス)を示す。本明細書中で使用される用語「動物」は、任意の脊椎動物(好ましくは哺乳動物)を示すために使用される。用語「動物」および用語「哺乳動物」はともに、用語「非ヒト」が前に付かない限り、明らかにヒトを包含する。
【0054】
本明細書中で使用される用語「形質」及び「表現型」は、本明細書中では交換可能に使用され、例えば、疾患の症状または感受性などの生物のいずれかの臨床的に区別可能または検出可能または他の場合には測定可能な性質を示す。典型的には、用語「形質」または用語「表現型」は、統合失調症または双極性障害の症状または感受性を示すために、あるいは統合失調症または双極性障害に対して作用する薬剤に対する個体の応答を示すために、あるいは統合失調症または双極性障害に対して作用する薬剤に対する副作用の症状または感受性を示すために本明細書中では使用される。
【0055】
用語「アレル」は、ヌクレオチド配列の変異体を示すために本明細書中では使用される。典型的には、最初に同定されたアレルはオリジナルアレルと呼ばれ、これに対して、他の対立遺伝子は代替アレルと呼ばれる。二倍体生物はアレル形態についてホモ接合性またはヘテロ接合性であり得る。
【0056】
ここで用いられる用語「多型」は、種々のゲノム又は個体間又はそれらの中での2以上の代替のゲノム配列又は対立遺伝子の発現を示す。「多型の」は、特定のゲノム配列の2以上の変異体が集団で見出すことができる条件を意味する。「多型部位」は変異体が発現する位置である。多型は、1以上のヌクレオチドの置換、欠損又は挿入を含む。単一のヌクレオチドの多型は、単一の塩基対変化である。一般に単一のヌクレオチド多型は、多型部位で、他のヌクレオチドによって1つのヌクレオチドが置き換わることである。「単一ヌクレオチド多型(SNP)」は、単一の塩基対が異なる配列多型である。
【0057】
2.本発明のKCNQ2−15bポリペプチド
ここで用いられる用語「KCNQ2−15bポリペプチド」は、本発明の全てのポリペプチドを包含する。
好ましくは、KCNQ2−15bは、ペプチド、ポリペプチド又は
a)配列番号: 2のアミノ酸589から643の少なくとも10のアミノ酸のスパンを含むポリペプチド、
b)配列番号: 2のアミノ酸589から643を含むポリペプチド、
c)配列番号: 2のアミノ酸545から643を含むポリペプチド、
d)配列番号: 2を含むポリペプチド、
e)配列番号: 4を含むポリペプチド、
f)配列番号: 6を含むポリペプチド、
g)a)からf)のいずれかのムテインであって、そのアミノ酸配列が、a)からf)の配列の少なくとも1つと、少なくとも50 % 又は60 %又は70 %又は80 %又は90 %又は95%又は99%同一である、
h)中等度にストリンジェントな条件又は高いストリンジェントな条件下で、a)からf)のいずれかをコードするDNA配列の相補体にハイブリダイズしたDNA配列によってコードされたa)からf)のいずれかのムテイン、
i)a)からf)のいずれかのムテインであって、アミノ酸配列におけるいずれかの変化が、a)からf)におけるアミノ酸配列への保存的アミノ酸置換である、
からなる群から選択されるプロテインから選択される。
【0058】
本発明のKCNQ2−15bポリペプチドは、配列番号2の少なくとも10アミノ酸のスパンのアミノ酸配列を全て含み、そのスパンは、配列番号2のアミノ酸859から643の範囲内に入る。好ましくは、KCNQ2−15bポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸859から643を含む。
【0059】
本発明の実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチドは、配列番号2、配列番号4又は配列番号6のいずれかを含む。好ましくは、KCNQ2−15bポリペプチドは、配列番号2、配列番号4又は配列番号6からなる。さらに、ここで用いるように、「KCNQ2−15bx」は、配列番号2のポリペプチドを示し、「KCNQ2−15by」は、配列番号4のポリペプチドを示し、「KCNQ2−15bz」は、配列番号6のポリペプチドを示す。
【0060】
好ましい実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチドはPP2Aホスファターゼ(PP2A/Bγ)のBγサブユニットに結合することができる。言い換えると、このKCNQ2−15bポリペプチドは、結合がいずれかの適当なアッセイによってテストされた際、PP2A/Bγに結合する。そのようなアッセイには、例えば、実施例9で記載の酵母マッチング試験及び実施例6で記載の固相オーバーレイ・アッセイが包含される。さらにここで用いられている用語「KCNQ2−15b結合活性」又は「結合活性」は、PP2A/Bγに結合するKCNQ2−15bポリペプチドの能力を示す。
【0061】
他の好ましい実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチドはカリウムチャネルのサブユニットに対応する。より好ましい実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチドは本来のスプライシング事象を変更することによって生成されるKCNQ2−15bポリペプチドの異性体に対応する。そのようなKCNQ2−15bポリペプチドは、カリウムチャネルを形成するために、他のKCNQ2−15bポリペプチド又は他のカリウムチャネルサブユニットのいずれかと結合するかもしれない。さらにここで用いられている用語「KCNQ2−15b生物活性」又は「生物活性」は、KCNQ2−15bポリペプチドを含むカリウムチャネルの活性を示す。
【0062】
好ましい実施形態は、少なくとも1つのKCNQ2−15bポリペプチドを含むカリウムチャネルに指向する。カリウムチャネルは、いくつかのKCNQ2−15bポリペプチドを含む同価同義カリウムチャネルであってもよい。あるいは、カリウムチャネルは、他のKCNQポリペプチド及び/又は他のカリウムチャネルサブユニットに関連するKCNQ2−15bポリペプチドを含む異価同義カリウムチャネルであってもよい。KCNQ2−15b生物活性は、例えば、M電流の測定等の当業者に公知の方法によって測定することができる。
【0063】
さらに、ここで用いられている用語「KCNQ2−15b生物学的特性」、「生物学的特性」及び「活性」は、KCNQ2−15bポリペプチドの生物学的活性及び結合活性の双方を包含する。KCNQ2−15b生物学的特性は、さらに、限定されないが、例えば、KCNQ2−15b−特異的抗体結合、KCNQサブユニットへの結合及びカリウムチャネル活性の修飾を含む。
さらなる好ましい実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチドは、新規のエキソン15bを含む。用語「エキソン15b」は、配列番号2の545から643位のアミノ酸を示す。好ましくは、エキソン15bは、KCNQ2−15bポリペプチドの大部分のカルボキシ末端エキソンである。KCNQ2−15bポリペプチドは、さらに、KCNQ2遺伝子のエキソン1〜14のいずれかの組み合わせを含む。
【0064】
また、本発明は、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600又は610のアミノ酸フラグメントに指向する。
【0065】
さらに、実施形態では、ムテインに指向する。ここで用いられる用語「ムテイン」は、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzのアナログを示し、それは、天然KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzの1以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基によって置換されている又は欠損している、あるいは、1以上のアミノ酸が、野生型KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzと比較して得られた生成物の活性が著しく低下することなく、天然のKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bz配列に追加されている。これらのムテインは、公知の合成によって及び/又は部位指向変異誘発技術によって、あるいはそれらのための適当な他の公知技術のいずれかによって製造される。
【0066】
KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzのムテイン(本発明によって使用することができる)又はそれらをコードする核酸は、過度の実験なしに、ここに示された記載及びガイダンスに基づいて、当業者によって通常得られる置換ペプチド又はポリヌクレオチドに実質的に対応する配列の有限のセットを含む。
本発明によるKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzは、DNA又はRNAのような核酸によってコードされるプロテインを含み、それらは、穏やかな又は高度にストリンジェントな条件下で、本発明にしたがって、DNA又はRNAにハイブリダイズされ、KCNQ2−15bをコードする。用語「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション及びその後の洗浄条件(当業者が一般に「ストリンジェント」として示す)を示す(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N.Y., §§6.3及び6.4 (1987, 1992)、Sambrookら、(Sambrook, J. C., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY参照)。
【0067】
限定されないが、ストリンジェントな条件の例では、例えば、2 x SSC及び0.5% SDS、5分間;2 x SSC及び0.1% SDS15分間;0.1 x SSC及び0.5% SDS、37°Cにて30〜60分間、次いで、0.1xSSC及び0.5% SDS、68°Cにて30から60分間での研究下でのハイブリッドの計算Tm未満、12〜20℃の洗浄条件を含む。また、当業者においては、ストリンジェントな条件は、DNAの長さ、オリゴヌクレオチド(10〜40塩基等)又は混合オリゴヌクレオチドプローブに依存することが理解される。混合プローブを用いる場合、SSCに代えてテトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)を使用することが好ましい。
【0068】
本発明のポリペプチドは、本発明のKCNQ2−15bポリペプチドに、少なくとも50%同一、より好ましくは少なくとも60%同一、さらに好ましくは、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を有するムテインを含む。本発明の照会アミノ酸配列に少なくとも、例えば、95%「同一」のアミノ酸配列を含むポリペプチドであるということに関していえば、対象のポリペプチドのアミノ酸配列は、照会アミノ酸配列のそれぞれ100アミノ酸当たり、5つまでアミノ酸を変更することを含むかもしれないこと以外、対象のポリペプチドのアミノ酸配列は、照会配列と同一であることを意図する。言い換えると、照会アミノ酸配列に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列におけるアミノ酸配列の5%まで(100の内の5つ)挿入、欠損又は他のアミノ酸で置換されていてもよい。
【0069】
厳密に一致しない配列について、「%同一」を決定することができる。一般に、比較される2つの配列は、配列間で最大の相関関係を与えるために調節される。これは、整合の程度を高めるために、一方又は双方の配列に「ギャップ」を挿入してもよいことを含む。%同一は、比較される配列のそれぞれの全長にわたって決定されるかもしれない。つまり、同じ又は非常に類似する長さ、あるいはより短いものにわたる、規定された長さの配列(いわゆる局所整合)が特に適当であり、同等でない長さの配列により適切である。
2以上の配列の同一性及び相同性を比較する方法は、当該分野で公知である。よって、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1 (Devereux Jら、1984)、例えば、プログラムBESTFIT及びGAPは、2つのポリヌクレオチド間の同一性%ならびに2つのポリペプチド配列間の同一性%及び相同性%を決定するために使用することができる。BESTFITは、Smith及びWatermanの「局所相同性」アルゴリズム(1981)を用い、2つの配列間の類似性の最良の単一領域を見出している。配列間の同一性及び/又は類似性を決定する他のプログラムは、当該分野で公知であり、例えば、BLASTファミリーのプログラム (Altschul S Fら、1990;Altschul S Fら、1997、accessible through the home page of the NCBI at world wide web site ncbi.nlm.nih.gov) 及びFASTA (Pearson W R, 1990; Pearson 1988)が挙げられる。
【0070】
本発明によるムテインの好ましい変更は、「保存的」置換として知られているものである。KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzポリペプチドの保存的アミノ酸置換は、そのグループのメンバー間の置換が分子の生物学的機能を保存するであろう十分に類似する物理化学的性質を有するグループ内の同じアミノ酸を含むかもしれない(Grantham、1974)。特に、挿入又は欠損が、例えば、30以内、好ましくは10以内のうちの2、3のアミノ酸にのみになされ、機能構造、例えばシステイン残基に決定基であるアミノ酸を取り出さず又は置き代えない場合、アミノ酸の挿入及び欠損は、それらの機能を変更させることなく、上記に定義した配列において行われてもよいことは明らかである。そのような欠損及び/又は挿入によって生成されるプロテイン及びムテインは、本発明の範囲内のものである。
【0071】
好ましくは、保存的アミノ酸のグループは表Iに示すものである。より好ましくは、保存的アミノ酸のグループは表IIに示すものである。さらに好ましくは、保存的アミノ酸のグループは表IIIに示すものである。
【表I】

【0072】
【表II】

【0073】
【表III】

【0074】
本発明で用いられるKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzポリペプチドのムテインを得るために使用することができるプロテインでのアミノ酸置換体の製造の例は、Markらの米国特許第4,959,314号、第4,588,585号及び第4,737,462号;Kothsらの第5,116,943号;Namenらの第4,965,195号;Chongらの第4,879,111号;Leeらの第5,017,691号に記載;及び米国特許第4,904,584号(Shawら)のリジン置換プロテインに記載されたような、いずれかの公知の方法を含む。
好ましくは、本発明のムテインは、それが対応するKCNQ2−15bポリペプチドと実質的に同じ生物学的特性を示す。
【0075】
ある実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチド及びムテイン又はそれらのフラグメントは、上述した生物学的活性又は結合活性を有する。他の実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチド及びムテイン又はそれらのフラグメントは、上述した活性を有さない。本発明のポリペプチドの他の使用には、とりわけ、エピトープマッピングでのエピトープタグ及び当業者に公知の方法を用いたSDS−PAGEゲル又は分子ふるいゲルろ過カラムでの分子量標識のようなものを含む。そのようなポリペプチドは、ポリクローン及びモノクローン抗体を生成するために使用することができ、それらは、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by及びKCNQ2−15bz発現の検出又はKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by及びKCNQ2−15bzの精製のための分析に有用である。実施例の内容として、KCNQ2−15bポリペプチドのさらなる特有の使用は、そのようなポリペプチドの使用、つまりKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bz結合プロテインを捕獲するための酵母2−ハイブリッドシステムであり、それらは、以下にさらに詳細に説明するように、本発明による候補モジュレータである。
【0076】
3.本発明のKCNQ2−15bポリヌクレオチド
さらに、本発明は、上述したいずれかのKCNQ2−15bポリペプチドをコードするKCNQ2−15bポリヌクレオチド及びそれらに相補的な配列に指向する。
好ましい実施形態では、そのポリヌクレオチドは、
a)配列番号2の1776から1929ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、
b)配列番号2の1632から1929ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、
c)配列番号1を含むポリヌクレオチド、
d)配列番号3を含むポリヌクレオチド、
e)配列番号5を含むポリヌクレオチド、
f)a)からe)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
からなる群から選択されるポリヌクレオチドである。
【0077】
本発明は、スプライス変異体ならびにアレリック変異体及びKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzポリペプチドのフラグメントを含む、KCNQ2−15bポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、精製、単離及び/又は組換え核酸を包含する。好ましくは、そのフラグメントは、配列番号2の1776から1929位のヌクレオチドを含む。より好ましくは、配列番号2の1632から1929位のヌクレオチドを含む。
【0078】
本発明の好ましいKCNQ2−15bポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2又は配列番号5の少なくとも8、12、15、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700又は1800ヌクレオチドの連続的なスパンを含む単離及び/又は組換えポリヌクレオチドを含む。
さらなる好ましい実施形態では、精製KCNQ2−15bポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2又は配列番号5、それらの相補体及びそれらのフラグメントからなる群から選択されたポリヌクレオチドに、少なくとも70、80、85、90、95、96、97、98又は99% 同一のヌクレオチドを有する。
【0079】
本発明のほかの対象は、穏やかにストリンジェントな条件又は高いストリンジェントな条件下で、それらに相補的な配列及びそれらのフラグメントからなる群から選択されるポリヌクレオチドにハイブリッドする精製ポリヌクレオチドに関する。
【0080】
本発明の最も好ましいKCNQ2−15bポリヌクレオチドは、KCNQ2−15bxポリペプチド、KCNQ2−15byポリペプチド又はKCNQ2−15bzポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。KCNQ2−15bxポリヌクレオチドは、KCNQ2−15bxポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対応する。KCNQ2−15byポリヌクレオチドは、KCNQ2−15byポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対応する。KCNQ2−15bzポリヌクレオチドは、KCNQ2−15bzポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対応する。
【0081】
ある実施形態では、KCNQ2−15bポリヌクレオチドは、KCNQ2−15bポリペプチドをコードするコーディング配列(CDS)を含む又はからなる。他の実施形態では、そのKCNQ2−15bポリヌクレオチドは、KCNQ2−15bポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む又はからなる。さらなる実施形態では、そのKCNQ2−15bポリヌクレオチドは、KCNQ2−15bポリペプチドをコードする相補DNAを含む又はからなる。好ましいKCNQ2−15bポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3又は配列番号5の配列を有するCDSを含むポリヌクレオチド、これらCDSを含むmRNA及びこれらCDSを含むcDNAである。
【0082】
また、本発明は、プライマー及びプローブとして使用するKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzポリヌクレオチドのフラグメントを包含する。そのようなプライマーは、試験サンプルにおけるKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzポリヌクレオチド、相補体又はそれらの変異体の少なくとも複製の存在を検出するために有用である。本発明のプローブは、多くの目的に有用である。それらは、とりわけ、ゲノムDNAへのサザンハイブリゼーションに使用することができる。また、そのプローブは、PCR増幅生成物を検出するために使用することができる。それらはまた、他の技術を用いるKCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzmRNAにおけるミスマッチの検出に使用することもできる。それらはさらに、その部位でのハイブリゼーションに使用してもよい。
【0083】
本発明のポリヌクレオチド、プライマー及びプローブのいずれも、通常、例えば、マイクロアレイのような固体の基体に固定することができる。本発明の複数のオリゴヌクレオチドプライマー又はプローブを含む基体は、種々の組織に、プロセスの種々の段階(胎児発生、疾病治療)で及び患者対健常人においてのように種々の状況において、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bz遺伝子における標的配列を検出又は増幅のいずれにおいて用いてもよく、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzmRNAの配列のコード又は非コード変異体を検出するために用いてもよく、また、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzmRNAの発現を決定するために用いてもよい。
KCNQ2−15bポリヌクレオチドのクローニング又は構築方法は、当業者において公知である。例えば、実施例で記載された方法を、本発明のKCNQ2−15bポリヌクレオチドをクローン化又は構築するために用いることができる。
【0084】
4.本発明のベクター、ホストセル及びホスト器官
また、本発明は、本発明のKCNQ2−15bポリヌクレオチドを含むベクターに関する。より詳細には、本発明は、KCNQ2−15bポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。好ましくは、そのような発現ベクターは、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by又はKCNQ2−15bzポリペプチド、それらのムテイン又はそれらのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0085】
用語「ベクター」は、ここで、環状又は線状DNA又はRNA化合物のいずれかを設計するためにここで用いられ、それは、二重らせん又は一重らせん構造のいすれかであり、細胞ホスト又は単細胞もしくは多細胞ホスト器官に形質転換される本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。「発現ベクター」は、ベクターにおける適当なシグナルを含み、そのシグナルは、ホストセルにおける挿入ポリヌクレオチドの発現を誘導するウィルス性及び哺乳動物の源の双方からのエンハンサー/プロモータのような種々の調節因子を含む。例えば、優性薬物選択のような生成物を発現する恒久的な、安定な細胞クローンを確立するための選択可能マーカーは、それらがポリペプチドの発現に薬物選択マーカーの発現を結びつける要素であるので、一般に、本発明の発現ベクターに含まれる。
【0086】
さらに、発現ベクターは、KCNQ2−15bポリペプチド及び非相同のポリペプチド間の融合ポリペプチドを発現させる融合ベクターであってもよい。例えば、非相同ポリペプチドは、例えば、発光プロテインのような選択可能マーカー又は融合ポリペプチドの精製を可能にするポリペプチドであってもよい。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、コードされたポリペプチドを生成するためのホストセルにおいてコードされたポリペプチドを発現するために用いてもよい。本発明のポリヌクレオチドは、さらに、スクリーニング分析のためのホストセルにおけるコードされたポリペプチドを発現するために用いてもよい。スクリーニング分析は、さらに以下に詳細に述べるように、KCNQ2−15bポリペプチドの同定モジュレータ及び/又は結合パートナーのために特に興味深い。本発明のポリヌクレオチドは、また、有利な作用をもたらすためにホスト器官においてコードされたポリペプチドを発現するために用いてもよい。そのような方法では、コードされたプロテインは、ホスト器官において一過性に発現されてもよく、ホスト器官において持続的に発現されてもよい。コードされたポリペプチドは、ホスト器官を欠くプロテインであってもよく、あるいは、コードされたプロテインは、ホスト器官におけるプロテインの存在レベルを増大させてもよい。
【0087】
ある実施形態では、発現ベクターは、遺伝子治療ベクターである。遺伝子治療での適用を有するウィルス性のベクターシステムは、例えば、ヘルペスウィルス、痘疹ウィルス及び種々のRNAウィルスを起源としている。特に、ヘルペスウィルスベクターは、中枢神経系及び眼組織の細胞に導入された遺伝子発現の持続性に無類の戦略を提供するかもしれない。
本発明の他の目的は、KCNQ2−15bポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに、形質変換、トランスフェクション、形質導入されているホストセルを含む。また、上述したものの1つのように組換えベクターに形質変換、トランスフェクション、形質導入されるホストセルを含む。本発明のセルホストは、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含むことができる。
【0088】
当業者に公知のいずれかのホストセルを用いてもよい。好ましくは、本発明のポリヌクレオチド及び発現ベクターのための宿主として使用されるホストセルは、
a)原核生物のホストセル:大腸菌株(I.E.DH5-(株)、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium及びPseudomonas、Streptomyces及びStaphylococcusのような種からの株、
b)真核生物のホストセル:CHO (ATCC No. CCL-61)、ヒーラ細胞(ATCC No.CCL2; No.CCL2.1; No.CCL2.2)、Cv 1細胞(ATCC No.CCL70)、COS細胞(ATCC No.CRL1650; No.CRL1651)、Sf-9細胞(ATCC No.CRL1711)、C127細胞(ATCC No. CRL-1804)、3T3 (ATCC No. CRL-6361)、ヒト腎臓293(ATCC No. 45504; No. CRL-1573)、BHK (ECACC No. 84100501; No. 84111301)、AH109及びY184等のSaccharomyces cerevisiae株及びAspergillus niger株
を含む。
【0089】
本発明の他の目的は、組換え技術による上記ベクター及びホストセルを製造する方法を含む。発現ベクターを構築する及びそれを細胞に導出する公知の技術のいずれかを、本発明のベクターを構築する及び導出するために用いてもよい。そのような技術は、限定されないが、実施例で記載された技術を含む。
本発明の他の目的は、複数のその細胞に、クローン化された組換えKCNQ2−15bポリヌクレオチドを含む、遺伝形質を転換した動物である。用語「遺伝形質を転換した動物」又は「ホスト動物」は、本発明の核酸の一つを含むために遺伝的に及び人工的に操作したそれらのゲノムを有する動物を示すためにここで用いる。影響が及ぼされた細胞は、体性、胚芽細胞又は双方とすることができる。好ましい動物は、ヒトでない哺乳動物であり、本発明の核酸の挿入によって人工的及び遺伝的に変更されたそれらのゲノムを有するマウス(例えば、マウス)、ラット(例えば、ラット)及びうさぎ(例えば、うさぎ)から選択される属に属するそれらを含む。ある実施形態では、本発明は、ヒトでないホスト哺乳動物及び本発明の組換えベクター又はノックアウトベクターとの相同組換えによって分断されたKCNQ2−15bポリヌクレオチドを含む動物を包含する。
【0090】
好ましい実施形態では、これらの遺伝形質を転換した動物は、KCNQ2−15b機能に関する多様な病理学を研究するために良好な実験モデルとすることができる。特に、(i)自然発生KCNQ2−15bmRNAに結合するアンチセンスmRNA、又は(ii)KCNQ2−15bポリペプチドを発現するmRNAを転写する、遺伝形質を転換した動物は、双極性障害及び/又は他の気分障害のための良好な動物モデルとすることができる。
【0091】
5.本発明のポリペプチドの製造方法
本発明は、また、KCNQ2−15bポリペプチドの製造方法に関する。
ある実施形態では、本発明のKCNQ2−15bポリペプチドは、ヒト又はヒトでない動物の、直接単離された又は培養された細胞かどうかにかかわらず、組織及び細胞を含む、天然源から単離される。KCNQ2−15bの可溶形態は、体液から単離されてもよい。プロテインをスパンする天然膜を抽出及び精製する方法は、当該分野で公知であり、粒子を分断するための洗浄剤又はカオトロピック剤の使用と、それに続く、例えば、微分抽出及びイオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、密度による沈渣及びゲル電気泳動によるポリペプチドの分離を含む。実施例4に記載した方法を、例えば、使用してもよい。また、本発明のポリペプチドは、ここで記載されたそれらのように、プロテイン精製の技術としてよく知られている方法で、本発明のポリペプチド攻撃する抗体を用いて天然源から精製することができる。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明のKCNQ2−15bポリヌクレオチドは、当該分野で公知の通常の発現方法を用いて、組換えにより、生成される。所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、実施可能に、プロモータをいずれかの都合のよいホストに適した発現ベクターに結合される。真核生物及び原核生物ホストシステムの双方を、組換えポリペプチドを形成するのに用いることができる。ポリペプチドは、次いで、溶解した細胞、あるいは、可溶形態が生成されるのであれば、培養メディウムから単離され、その意図する用途のために必要な程度に精製される。
【0093】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、本発明のポリペプチドを製造する方法であり、その方法は、
a)KCNQ2−15bポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得、
b)そのポリヌクレオチドがプロモータに実現可能に結合されるように、そのポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入し、
c)その発現ベクターをホストセルに導入し、それによってそのホストセルはそのポリペプチドを精製する工程を含む。
【0094】
好ましい実施形態では、さらにその方法は、ポリペプチドを単離する工程を含む。当業者は、この方法のいずれの工程も、別個に行ってもよいことを認識するであろう。各工程の生成物は、それに続く工程を行うために、別の工程に移してもよい。
【0095】
さらなる実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CDSからなる。この実施形態のほかの観点では、ポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号5又はそれらのフラグメントからなるポリヌクレオチドである。
本発明のさらなる観点は、ポリペプチドを製造する方法に関し、その方法は、KCNQ2−15bポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含むホストセルをホストセル内のKCNQ2−15bポリペプチドの精製に適した条件下で、培養する工程を含む。好ましい実施形態では、その方法は、その培地からポリペプチドを精製する工程を含む。
【0096】
他の実施形態では、KCNQ2−15bポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドに、分泌又はリーダー配列、プロ配列、複合ヒスチジン残基又はGSTタグのような精製を助ける配列、あるいは組換え生産中の安定性のためのさらなる配列をコードする、さらなるヌクレオチド配列を添加することがしばしば有利である。KCNQ2−15bポリペプチドの可溶プロテインは、例えば、安定な可溶変異体を発生させるためにIg−Fc部位に結合させてもよい。
【0097】
本発明のポリペプチドは、限定されないが、微分抽出、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、イムノクロマトグラフィ及びレクチンクロマトグラフィを含む公知の方法によって、組換え細胞培地から回収及び精製することができる。
発現されたKCNQ2−15bポリペプチドは、いずれかの標準的なイムノクロマトグラフィ技術を用いて精製してもよい。そのような方法では、培養メディウム又はセル抽出物のような対象のポリペプチドを含む溶液を、クロマトグラフィマトリックスに付着したポリペプチドに対する抗体を有するカラムに適用する。組換えプロテインは、イムノクロマトグラフィカラムに結合する。その後、カラムを、非特異的結合プロテインを除去するために洗浄する。次いで、特異的に結合した分泌プロテインを、カラムから放出させ、標準的な技術を用いて回収する。
【0098】
6.本発明の抗体
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体に関する。より詳細には、その抗体は、本発明のポリペプチドのエピトープに結合する。本発明の抗体は、IgG (IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む)、IgA (IgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE又はIgM及びIgYを含む。用語「抗体」 (Ab) は、ポリペプチド又は少なくとも1つの結合ドメインに含まれるポリペプチドの群を示し、ここで、結合ドメインは、内表面形状に三次元結合空間を形成し、抗原の抗原性抗原決定基の特徴に相補的な分布を変化させるために、抗体化合物の可変ドメインのホールディングから形成され、それは、抗原と免疫学的反応を可能にする。好ましい実施形態では、抗原は、限定されないが、Fab、Fab' F(ab)2及びF(ab')2、Fd、一重鎖Fvs (scFv)、一重鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs (sdFv)ならびにVL 又はVHドメインのいずれかを含むフラグメントを含む、本発明の抗体フラグメントに結合するヒト抗原である。抗体は、鳥及び哺乳動物を含むいずれかの動物起源のものとすることができる。好ましくは、ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、馬又は鶏からのものである。本発明は、さらに、キメラの、ハイブリダイズされたヒトモノクローナル及びポリクローナル抗体を含み、それらは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する。
【0099】
本発明の好ましい抗体は、配列番号2の589から643アミノ酸内のエピトープを認識し、その1以上のアミノ酸は、抗体のKCNQ2−15bポリペプチドへの結合のために必要である。本発明の他の好ましい抗体は、配列番号2の545から643位の1以上のアミノ酸を認識し、1以上のアミノ酸は、抗体のKCNQ2−15bポリペプチドへの結合のために必要である。最も好ましくは、本発明の抗体は、エキソン15bを欠損するKCNQ2ポリペプチドではなく、エキソン15bを含むKCNQ2ポリペプチドに結合する。
本発明の好ましい実施形態は、本発明の抗体のKCNQ2−15bポリペプチドへの特異的な結合方法である。この方法は、抗体がポリペプチドに特異的に結合することができる条件下で、本発明の抗体にKCNQ2−15bポリペプチドを接触させる工程を含む。そのような条件は、当業者に公知である。この方法は、例えば、KCNQ2−15bポリペプチドを検出、精製又は活性化、あるいはその活性を阻害するために用いてもよい。
【0100】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドのモジュレータとして作用する抗体に関する。好ましい抗体は、それらが結合するKCNQ2−15bポリペプチドの結合活性又は生物学的活性を高めるモジュレータである。これらの抗体は、KCNQ2−15bポリペプチドの全ての生物学的性質又はその全てより少ない生物学的性質のモジュレータとして作用するかもしれない。
【0101】
7.本発明のポリペプチドの使用
本発明はまた、候補となるモジュレータをスクリーニングする標的としてのKCNQ2ポリペプチドの使用に指向する。ここで用いられているように、用語「KCNQ2ポリペプチド」は、KCNQ2遺伝子によってコードされるいずれかのポリペプチドを示す。よって用語「KCNQ2ポリペプチド」は、例えば、KCNQ2−15bポリペプチドのような、KCNQ2遺伝子によってコードされる全ての他のスプライス異性体及び全ての先に示した異性体(例えば、SwissProt Accession No. O43526参照)を包含する。さらに、ここで用いられるように、用語「KCNQ2−fl」は、配列番号7のポリペプチドを示す。
【0102】
ここで用いられているように、用語「モジュレータ」は、KCNQ2ポリペプチドのいずれかのポリペプチドを増減する化合物を指す。ここで用いられているように、「KCNQ2モジュレータ」は、KCNQ2ポリペプチドの活性を増減する化合物及び/又はポリペプチドをコードするKCNQ2mRNAの転写レベルを増減する化合物を指す。用語「モジュレータ」は、アゴニスト及びアンタゴニストの双方を包含する。
ここで用いられているように、「KCNQ2アンタゴニスト」は、KCNQ2ポリペプチドの活性を減少させる化合物及び/又はポリペプチドをコードするKCNQ2mRNAの発現レベルを減少させる化合物を指す。用語「アンタゴニスト」及び「阻害剤」は、同義とみなされ、この開示の全体にわたって変更可能に用いることができる。
【0103】
ここで用いられているように、「KCNQ2アゴニスト」は、KCNQ2ポリペプチドの活性を増加させる化合物及び/又はポリペプチドをコードするKCNQ2mRNAの発現レベルを増加させる化合物を指す。用語「アゴニスト」及び「活性剤」は、同義とみなされ、この開示の全体にわたって変更可能に用いることができる。
【0104】
KCNQ2ポリペプチドの活性を増減する又はKCNQ2mRNAの発現を増減するそれらの能力に対するモジュレータを試験するために用いることができる方法は、当該分野で公知であり、さらに以下に説明する。本発明の好ましいモジュレータは、KCNQ2−15bx、KCNQ2−15by、KCNQ2−15bz又はKCNQ2−flのモジュレータである。ここで述べ、当該分野で公知のKCNQ2活性を測定するアッセイは、インビトロ又はインビボのいずれかで行うことができる。
【0105】
本発明の候補となる化合物は、天然に生じる及び合成の化合物を含む。そのような化合物は、例えば、自然リガンド、小分子、アンチセンスmRNA、抗体、アプタマー及び短干渉RNAを含む。ここで用いられるように、用語「天然のリガンド」は、インビボでのPP2A/Bγを含むホスファターゼに結合するいずれかのシグナリング分子を指し、例えば、脂質、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ぺプチド、ポリペプチド、プロテイン、炭水化物及び無機分子のような分子を含む。ここで用いられるように、用語「小分子」は、有機化合物を指す。ここで用いられるように、用語「抗体」は、免疫系の細胞によって生成されるプロテイン又は抗原に結合するそれらのフラグメントを指す。ここで用いられているように、用語「アンチセンスmRNA」は、普通にmRNAに加工され、翻訳されたらせん構造に相補的な、あるいはそれらの領域に相補的なRNA分子を指す。ここで用いられているように、用語「アプタマー」は、人工的な核酸リガンドを指す(例えば、Ellington及びSzostak (1990) Nature 346:818-822参照)。ここで用いられるように、用語「短干渉RNA」は、配列−特異的転写後遺伝子サイレンシングを含む二重らせんRNAを指す(例えば、Elbashirら、 (2001) Genes Dev. 15:188-200参照)。
【0106】
そのような候補となる化合物は、例えば、生物学的ライブラリ、空間アドレス可能並行固相又は液相ライブラリ及びアフィニティークロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリ法を含む、当該分野で公知の無作為配列ライブラリ法における多数のアプローチのいずれかを用いて得ることができる。生物学的ライブラリアプローチは一般にペプチドライブラリが用いられ、一方、他の4種のアプローチはペプチド、非ペプチド、オリゴマー、アプタマー又は化合物の小分子ライブラリが用いられる。
【0107】
モジュレータのための候補となる化合物をスクリーニングするために用いることができる方法の一例は、
a)KCNQ2ポリペプチドを候補となる化合物に接触させ、及び
b)その候補となる化合物の存在下で、KCNQ2ポリペプチドの活性を試験する工程を含む方法であり、ここで、その化合物の非存在下での活性に比較してその化合物の存在下でのKCNQ2ポリペプチドの活性の差が、その化合物がそのKCNQ2ポリペプチドのモジュレータとなることを示す。
【0108】
あるいは、その分析は、
a)KCNQ2ポリペプチドを発現するセルを候補となる化合物と接触させ、及び
b)その候補となる化合物の存在下でのKCNQ2ポリペプチドの活性を試験する工程を含むセルベース分析であってもよく、ここで、その候補化合物の非存在下での活性に比較してその化合物の存在下でのKCNQ2ポリペプチドの活性における差が、その化合物がKCNQ2ポリペプチドのモジュレータとなることを示す。
モジュレータは、KCNQ2ポリペプチドのいずれかの活性を調節することができる。モジュレータは、例えば、細胞におけるKCNQ2mRNA発現を調節し、又はKCNQ2ポリペプチドを含むカリウムチャネルによって発生するM−電流を調節する。さらに、測定することができる活性は、PP2A/Bγに結合するKCNQ2及び他のカリウムチャネルサブユニットに結合するKCNQ2に結合するKCNQ2を含む。KCNQ2ポリペプチドのリン酸化の状態は、化合物をスクリーニングするために評価することができるKCNQ2のさらなる活性である。さらに好ましくは、KCNQ2ポリペプチドの活性は、M−電流を測定することによって評価される。上述した活性を試験する方法は、当業者に公知であり、例えば、さらに以下に説明するように行うことができる。
【0109】
本発明の好ましいモジュレータは、
−細胞内でのKCNQ2mRNA発現、
−KCNQ2ポリペプチドを含むカリウムチャネルによって発生するM−電流、
−KCNQ2ポリペプチドのPP2A/Bγへの結合、及び/又は
−KCNQ2ポリペプチドの他のカリウムチャネルサブユニットへの結合
を増減するモジュレータである。
【0110】
好ましい実施形態では、KCNQ2ポリペプチドの活性は、KCNQ2ポリペプチドを含むカリウムチャネルによって発生するM−電流を測定することによって評価される。カリウムチャネルによって発生するM−電流を測定する分析は、当業者に公知である。カリウムチャネルによって発生するM−電流の活性を測定するための電気生物学的分析は、例えば、Panら及びSchwakeら(Panら、(2001), J. Physiol., 531:347-358;Schwakeら、(2000), J. Biol. Chem., 275:13343-13348)によって示されている。また、膜ポテンシャル感受性色素を用いた高スループットの蛍光分析が、カリウムチャネルで化合物をスクリーニングするために示されている。例えば、EVOTECは、イオンチャネルの活性を試験するための分析を開発している(the world wide website evotecoai.com参照)。そのような分析では、同価同義KCNQ2チャネル及び異価同義チャネル双方の活性を試験することができる。試験することができる同価同義チャネルは、例えば、同価同義KCNQ2−fl及び同価同義KCNQ2−15bチャネルを含む。試験することができる異価同義チャネルは、例えば、異価同義KCNQ2−15b/KCNQ2−fl、異価同義KCNQ2−fl/KCNQ3及び異価同義KCNQ2−15b/KCNQ3チャネルを含む。
【0111】
他の好ましい実施形態では、KCNQ2ポリペプチドの活性は、KCNQ2ポリペプチドのPP2A/Bγへの結合を測定することによって評価される。KCNQ2ポリペプチドのPP2A/Bγへの結合は、例えば、実施例3に示したような酵母マッチング試験又は実施例6に示したような固相オーバーレイ分析によって測定することができる。
他の好ましい実施形態では、KCNQ2ポリペプチドの活性は、KCNQ2ポリペプチドの他のカリウムチャネルサブユニットへの結合を測定することによって評価される。また、この分析は、実施例3及び6に示したような酵母マッチング試験または固相オーバーレイ分析を用いて行うことができる。
【0112】
さらなる好ましい実施形態では、KCNQ2ポリペプチドの活性は、細胞内におけるKCNQ2mRNAレベルを測定することによって評価される。この実施形態では、活性は、プライマー及びKCNQ2mRNAに特異的なプローブで、例えば、ノーザンブロット、RT−PCR、定量RT−PCRを用いて測定することができる。用語「KCNQ2mRNA」は、ここで用いられているように、例えば、配列番号1、3、5及びEMBL 受入番号NM#172107、NM#172106、NM#004518、NM#172108及びNM#172109のようなKCNQ2遺伝子から翻訳された全ての代替スプライシング多型を包含する。プライマー及びプローブは、1つの特異的KCNQ2スプライシング多型を検出することもできるし、KCNQ2遺伝子から翻訳された全ての代替スプライシング多型を検出することもできる。あるいは、KCNQ2mRNAの発現は、ポリペプチドレベルで、ELISA分析又はRIA分析、ウェスタンブロットもしくは免疫組織化学的分析のようなイムノアッセイにおいてKCNQ2ポリペプチドへ特異的に結合する標識抗体を用いることによって、測定することができる。KCNQ2抗体は、1つの特異的なKCNQ2スプライシング多型を検出することもできるし、KCNQ2遺伝子から翻訳された全ての代替スプライシング多型を検出することもできる。
【0113】
他の実施形態では、KCNQ2ポリペプチドの活性は、実施例7で示したように、KCNQ2ポリペプチドのリン酸化状態を測定することによって、測定することができる。本発明の構成では、(i)KCNQ2−15bポリペプチドはPP2A/Bγサブユニットを含むPP2Aホスファターゼによって脱リン酸化され、PP2A/Bγサブユニットをコードする遺伝子は、双極性障害に関連する、及び(ii)GSK3β、精神安定剤によって阻害されるキナーゼによってリン酸化されることを見出している。よって、KCNQ2ポリペプチドのリン酸化状態は、KCNQ2ポリペプチドの生物学的活性に相関関係があると信じられている。KCNQ2ポリペプチドのリン酸化状態は、例えば、実施例7で示したような分析によって測定することができる。
ある好ましい実施形態は、候補となるモジュレータをスクリーニングするための標的として、KCNQ2−15bポリペプチドの使用に指向する。他の好ましい実施形態は、候補となるモジュレータをスクリーニングするための標的として、KCNQ2−flポリペプチドの使用に指向する。
KCNQ2ポリペプチドのモジュレータは、例えば、上記スクリーニングのいずれかによって認識することができ、精神障害の治療のための候補薬物となる。このように、本発明の好ましい実施形態は、精神障害の治療用の候補薬物のための候補となる化合物をスクリーニングするための標的としてのKCNQ2ポリペプチドの使用である。
【0114】
ここで用いているように、用語「精神障害」は、双極性障害、総合失調症、うつ病ならびに他の気分障害及び精神病性障害を含む。好ましくは、精神障害は、双極性障害、総合失調症又はうつ病である。最も好ましくは、精神障害は、双極性障害である。
本発明のさらなる観点は、精神障害の治療用薬物をスクリーニングするためにKCNQ2ポリペプチドのモジュレータを使用することである。精神障害の治療用薬物をスクリーニングするため及び/又は精神障害の治療のためのKCNQ2ポリペプチドのモジュレータの有効性を評価するために使用することができる方法の一例は、その精神障害の動物モデルにそのモジュレータを投与する工程を含む方法であり、ここで、そのモジュレータが、その動物モデルにおける精神障害の主な特徴を改善するという決定は、そのモジュレータが精神障害の治療用薬物となることを示す。
【0115】
精神障害のための動物モデル、及び化合物がその動物モデルにおける精神障害の主な特徴を改善したかどうかを決定する分析を説明し、用いる。例えば、上述した方法で用いることができる動物モデルは、限定されないが、ラットでの条件回避行動モデル、これは、抗精神病活性の標準的な行動試験予測である、Omnitech Digiscan動物活性モニターにおけるマウス及びラットでの行動活性評価、その目的は、抗精神病様CNS作用及び一般にCNS活性と関連する他の行動作用の多様性のために化合物を評価することであり、ラットにおけるアンフェタミン刺激行動の遮断、ラットにおける聴覚驚愕モデルのプレパルス阻害のためのプロトコル、アポモルフィン誘発漸増構造の阻害及びDOI誘発頭部攣縮及び引っかきの阻害を含む。好ましい動物モデルは、シナプス欠損及びAndrieuxらによって示された重篤な行動障害を伴うSTOP-/- マウスである(2002, Genes Dev., 16:2350-2364)。
【0116】
本発明のさらなる観点は、精神障害の治療のための医薬を製造するために、KCNQ2ポリペプチドのモジュレータを使用することに指向する。そのような医薬は、いずれかの生理的に許容される担体との組み合わせでのKCNQ2ポリペプチドのモジュレータを含む。生理的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法で製造することができる。生理的に許容される担体は、限定されないが、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載されたものを含む。KCNQ2ポリペプチド及び生理的に許容される担体を含む医薬組成物は、例えば、静脈内、局所、直腸、局部、吸入、皮下、皮内、筋肉内、口内、大脳内及び硬膜下腔内へ投与することができる。その組成物は、液体(例えば、溶液、懸濁液)、固体(例えば、丸剤、錠剤、座剤)又は半固体(例えば、クリーム、ゲル)の形態とすることができる。投与されるべき用量形態は、個々の必要、所望の作用、投与経路の選択に依存する。
【0117】
本発明のKCNQ2モジュレータ又は遺伝子治療ベクターを含むそのような医薬は、精神障害の治療用のいずれかの既知の薬物との組み合わせで用いることができる。モジュレータは、例えば、リチウム、カルバマゼピン又はジバルプロエキスのような双極性障害を治療するために用いられる精神安定剤との組み合わせで投与することができる。また、モジュレータは、例えば、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤及び精神刺激薬のような抗うつ薬との組み合わせで投与することができる。総合失調症及び他の精神病性障害を治療する際、モジュレータを、例えば、クロルプロマジン、クロザピン、リスペリドン又はオランザピンのような抗精神病薬との組み合わせで投与することができる。
【0118】
上述のすべての実施形態では、好ましいモジュレータは、KCNQ2−15bポリペプチド又はKCNQ2−flのモジュレータである。KCNQ2−15bポリペプチドの好ましいモジュレータは、配列番号2の545から643位に示されるエキソン15bを含むポリペプチドを特異的に調節するものである。好ましいKCNQ2−flのモジュレータは、配列番号7の588から872位に示されるエキソン16及び17を含むポリペプチドを特異的に調節するものである。
【0119】
さらに、本発明は、KCNQ2ポリペプチドの天然の結合パートナーをスクリーニングするための方法に関する。そのような方法は、実施例1で示された酵母2−ハイブリッドスクリーニングを含む。KCNQ2ポリペプチドの天然結合パートナーの同定は、PP2A/BγをコードするCDSを、KCNQ2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで置換することによって行うことができる。標的としてのKCNQ2ポリペプチドの使用は、双極性障害に含まれるプロテインの同定のために及び双極性障害及び他の気分障害の治療における新たな介入ポイントを提供するために非常に有用である。
【0120】
8.本発明のバイアレリックマーカー
本発明は、個体が、精神障害を患っているか又は患うリスクがあるかどうかを診断するための少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーの使用に関する。ここで用いられているように、「KCNQ2関連バイアレリックマーカー」は、KCNQ2遺伝子のエキソンに、KCNQ2遺伝子のイントロンに、又はKCNQ2遺伝子の調節領域に位置するバイアレリックマーカーを指す。KCNQ2関連バイアレリックマーカーは、実施例12における表3Bに示されたバイアレリックマーカーを包含する。ある実施形態では、単一のバイアレリックマーカーが、個々のゲノタイプを測定することによって精神障害を患っているか又は患うリスクがあるかどうかを診断するために用いられる。他の実施形態では、いくつかのバイアレリックマーカーの組み合わせを、個々のハプロタイプを測定することによって精神障害を患っているか又は患うリスクがあるかどうかを診断するために用いることができる。例えば、2−マーカーハプロタイプ、3−マーカーハプロタイプ又は4−マーカーハプロタイプを測定することができる。
【0121】
ここで用いられているように、用語「バイアレリックマーカー」は、集団におけるかなり高頻度で2アレルを有する多型を指し、好ましくは、単一ヌクレオチド多型を指す。本発明のバイアレリックマーカーの共通でないアレルの一般的な頻度は、1%を超えることが確認されており、好ましくはその頻度は10%を超え、より好ましくはその頻度は20%を超え(つまり、ヘテロ接合性率が少なくとも0.32)、さらに好ましくはその頻度は30%を超える(つまり、ヘテロ接合性率が少なくとも0.42)。この明細書では、用語「バイアレリックマーカー」は、多型及び多型を有する座の双方を指す。
【0122】
ここで用いられているように、用語「ゲノタイプ」は、個体又は試料において存在するアレルの同一性を指す。用語「ゲノタイプ」は、好ましくは、個体のゲノムに存在する単一バイアレリックマーカーの双方の複製の種類を指す。個体は、ゲノムに存在するバイアレリックマーカーの2つのアレルが同一であれば、ホモ接合とする。個体は、ゲノムに存在するバイアレリックマーカーの2つのアレルが異なれば、ヘテロ接合とする。
バイアレリックマーカーに対して試料又は個体を、用語「ゲノタイピングする」とは、特異的なアレル又はバイアレリックマーカーで個体によって担われる特異的なヌクレオチドを測定することを含む。
ここで用いられているように、用語「ハプロタイプ」とは、一つの染色体に存在するバイアレリックマーカーに強固に結合するアレルのセットを指し、それはともに遺伝によって受け継がれる傾向にある。
【0123】
個体が有するアレル、ゲノタイプ又はハプロタイプを測定する方法は、当業者によく知られており、以下でさらに説明する。
全ての実施形態では、好ましい「精神障害」は、双極性障害、総合失調症及びうつ病を含む。最も好ましい精神障害は双極性障害である。
本発明の文脈において、個体は、一般にヒトと理解される。
【0124】
実施例15に示されているように、バイアレリックマーカー30-2/62及び30-7/30は、双極性障害関連マーカーである。よって、本発明の好ましい実施形態は、バイアレリックマーカー30-2/62及び30-7/30の使用に指向する。バイアレリックマーカー30-2/62及び30-7/30の代替アレルは、実施例12の表3Bに示されている。配列番号43及び配列番号45におけるバイアレリックマーカー30-2/62及び30-7/30の位置も、それぞれ表3Bに示されている。他の好ましい実施形態は、30-2/62及び30-7/30に相補的なバイアレリックマーカー、つまりDNAの相補的なストランドに位置する、対応する代替アレルの使用に指向する。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、個体が精神障害を患っているか患うリスクにあるかどうかを診断するために、バイアレリックマーカー30-2/62及び30-7/30ならびにそれらの相補体を使用することに指向する。好ましくは、個体は、白色人種の個体である。より好ましくは、個体は、イギリス諸島起源の白色人種個体である。
【0125】
バイアレリックマーカー30-2/62及び30-7/30に対するリスクゲノタイプは、表6Bに示されている。「リスクゲノタイプ」とは、双極性障害を有する可能性が、他のゲノタイプを有する個体よりも、リスクゲノタイプを有する個体の方が高いことを意味する。バイアレリックマーカー30-2/62のリスクゲノタイプは、「AG」である。よって、本発明の好ましい実施形態は、個体が精神障害を患っているか患うリスクにあるかどうかを診断するために、バイアレリックマーカー30-2/62又はそれらの相補体を用いることであり、ここでバイアレリックマーカー30-2/62でのゲノタイプ「AG」の存在は、精神障害を患っているか患うリスクにある個体を示す。バイアレリックマーカー30-7/30に対するリスクゲノタイプは、「CC」である。よって、本発明の好ましい実施形態は、個体が精神障害を患っているか患うリスクにあるかどうかを診断するために、バイアレリックマーカー30-7/30又はそれらの相補体を用いることであり、ここでバイアレリックマーカー30-7/30でのゲノタイプ「CC」の存在は、精神障害を患っているか患うリスクにある個体を示す。
【0126】
さらに、本発明は、マーカーと精神障害との間に有意な相関関係があるかどうかを決定するために少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーを用いることに指向する。そのような決定は、例えば、以下の実施例10から15に記載されている方法(しかし、UCL及びラビモ集団とは異なる集団を用いる。そのような集団は、少数民族起源とは異なる)を使用することによって行うことができる。KCNQ2関連バイアレリックマーカーは、30-2/62及び30-7/30ならびにそれらの相補体からなる群から選択することができる。あるいは、KCNQ2関連バイアレリックマーカーは、30-4/58、30-17/37、30-84/37及び30-15/54ならびにそれらの相補体からなる群から選択してもよい。また、KCNQ2関連バイアレリックマーカーは、本明細書に特に開示されていないマーカーであってもよい。好ましくは、精神障害は、双極性障害、総合失調症及びうつ病からなる群から選択される。より好ましくは、精神障害は双極性障害である。
【0127】
さらに、本発明は、生物学的試料中のKCNQ2関連バイアレリックマーカー又はそれらの相補体でヌクレオチドの同一性を測定する工程を含むゲノタイピングする方法に指向する。好ましくは、その生物学的試料は、単一の被験者からのものである。バイアレリックマーカーでのヌクレオチドの同一性は、その個体のゲノムに存在するバイアレリックマーカーの双方の複製に対して測定されることが好ましい。好ましい実施形態では、バイアレリックマーカーでのヌクレオチドの同一性は、マイクロシーケンシング・アッセイによって測定される。好ましくは、バイアレリックマーカーを含む配列の部分が、ヌクレオチドの同一性の測定前に増幅されることである。増幅は、好ましくは、PCRによって行うことができる。そのようなゲノタイピングの方法は、例えば、本明細書の実施例10から14に記載されたプロトコルのいずれかを用いて行うことができる。さらにゲノタイピングの方法は、当業者によく知られており、他の既知のプロトコルを用いてもよい。
【0128】
バイアレリック多型を検出するためのゲノタイピングに用いることができる、当業者によく知られた方法は、従来のドットブロット分析、一重鎖構造多型分析(SSCP)(Oritaら、(1989) Proc Natl Acad Sci USA 86:2766-2770)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE) (Borresenら、(1988) Mutat Res. 202:77-83.)、ヘテロ二本鎖分析 (Lessa ら、(1993) Mol Ecol. 2:119-129)、ミスマッチ分割検出 (Grompeら、(1989) Proc Natl Acad Sci USA. 86:5888-5892)のような方法を含む。特別な多型部位に存在するヌクレオチドの同一性を測定するほかの方法は、米国特許第4,656,127号に記載されたような、特殊エキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体を用いる。オリゴヌクレオチドマイクロアッセイ又は固相捕獲可能ジデオキシヌクレオチド及びマススペクトル法も用いることができる(Wenら、(2003) World J Gastroenterol. 9:1342-1346;Kimら、(2003) Anal Biochem. 316:251-258)。好ましい方法は、シーケンシングアッセイ、マイクロシーケンシングアッセイ、酵素ベースミスマッチ検出法又はハイブリダイゼーションアッセイによってバイアレリックマーカー部位に存在するヌクレオチドの同一性を直接測定する方法を含む。
【0129】
ここで用いられているように、用語「生物学的試料」は、核酸を含む試料を指す。核酸のいかなる源も、精製されていようと、精製されていまいと、原料核酸として利用することができる。ただし、それは、所望の特別な核酸配列を含んでいるか、含んでいることが予想されるものである。DNA又はRNAは細胞、組織、体液等から抽出することができる。
ゲノタイピングの方法は、例えば、関連研究における症例−対照集団をゲノタイピングすることにおいて、ならびに与えられた形質に関連することが知られているバイアレリックマーカーのアレルの検出における個体をゲノタイピングすることにおいて使用することができる。本発明の文脈では、好ましい形質は、双極性障害、総合失調症及びうつ病からなる群から選択される精神障害であり、より好ましくは双極性障害である。
【0130】
したがって、好ましい実施形態は、個体起源の生物学的試料におけるKCNQ2関連バイアレリックマーカー又はそれらの相補体でヌクレオチドの同一性を測定する工程を含むゲノタイピング法を用いた少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーをゲノタイピングする工程を含む個体における精神障害を診断する方法に指向する。そのような診断方法は、さらに、ゲノタイピング工程の結果を、精神障害にかかるリスクと互いに関連づける工程を含んでいてもよい。一般に、ゲノタイピングされたKCNQ2関連バイアレリックマーカーのリスクアレル、リスクゲノタイプ又はリスクハプロタイプの存在は、精神障害にかかるリスクと互いに相関関係を有する。好ましくは、KCNQ2関連バイアレリックマーカーは、30-2/62及び30-7/30ならびにそれらの相補体からなる群から選択される。ある実施形態では、バイアレリックマーカー30-2/62218でのゲノタイプ「AG」の存在は、精神障害に罹るリスクを示す。他の実施形態では、バイアレリックマーカー30-7/30でのゲノタイプ「CC」の存在は、精神障害に罹るリスクを示す。好ましくは、精神障害は、双極性障害、総合失調症及びうつ病からなる群から選択される。より好ましくは、精神障害は双極性障害である。
【0131】
さらに、本発明は、個体のハプロタイプを測定するための少なくとも1つのKCNQ2−2関連バイアレリックマーカーの使用に指向する。個体のハプロタイプを測定する場合、それぞれ単一の染色体が独立的に試験されるべきである。個体のハプロタイプを測定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、非対称PCR増幅(Newtonら(1989) Nucleic Acids Res. 17:2503-2516;Wuら(1989) Proc.Natl. Acad. Sci. USA. 86:2757-2760)、制限希釈による単一の染色体の単離及びそれに続くPCR増幅(Ruanoら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87:6296-6300)及び十分に密接なバイアレリックマーカーに対して、特異的アレルの二重PCR増幅(Sarkar及びSommer、(1991) Biotechniques. 10:436- 440)を含む。
【0132】
よって、本発明はさらに、個体のハプロタイプを測定するために少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーの使用に指向する。例えば、個体における一セットのバイアレリックマーカーのハプロタイプを測定する方法は、a)少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーの個体をゲノタイピングし、b)第2のバイアレリックマーカーでヌクレオチドの同一性を測定することによって第2のバイアレリックマーカーの個体をゲノタイピングする工程を含んでいてもよい。好ましくは、双方のマーカーは、KCNQ2関連バイアレリックマーカーである。また、個体における少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーを含む2つより多いバイアレリックマーカーの組み合わせのハプロタイプを測定する方法は、本発明によって包含される。そのような方法において、工程(b)は、組み合わせの追加したマーカーのそれぞれで繰り返される。そのような組み合わせは、例えば、3、4又は5つのバイアレリックマーカーを含んでいてもよい。これらのバイアレリックマーカーは、すべてKCNQ2関連バイアレリックマーカーとすることができる。
【0133】
集団におけるハプロタイプ頻度を評価する場合、それぞれの個体にハプロタイプを対応付けることのない方法を用いてもよい。よって、本発明の他の局面は、a)少なくとも1つのKCNQ2関連バイアレリックマーカーのためにその集団におけるそれぞれの個体をゲノタイピングし、b)第2のバイアレリックマーカーでヌクレオチドの同一性を測定することによって第2のバイアレリックマーカーのためにその集団におけるそれぞれの個体をゲノタイピングし、及びc)工程a)及びb)で測定されたヌクレオチドの同一性に、ハプロタイプ決定方法を適用してその頻度を評価し得る工程を含む、集団における一セットのバイアレリックマーカーのハプロタイプの頻度を評価する方法を包含する。また、そのような方法は、2より多いバイアレリックマーカーの組み合わせで行ってもよい。工程(c)は、集団におけるハプロタイプの頻度を測定し又は評価する、当該分野で公知のいずれの方法を用いて行ってもよい。好ましくは、ハーディ‐ヴァインベルク平衡(ランダムマッチング)の仮定の下、ハプロタイプ頻度の最大尤度推定値を導く期待値−極大化(EM)アルゴリズム(Dempster ら(1977) JRSSB, 39:1-38;Excoffier及びSlatkin、(1995) Mol Biol Evol. 12:921-7)が、工程(c)を行うために用いられる。
【0134】
実施例
実施例1:酵母2ハイブリッドスクリーニング
1.pGBKT7-PPP2R2Cの構築
PPP2R2C遺伝子の領域をコードする全長は、PP2A/Bγサブユニットをコードし、はじめに配列番号8及び配列番号9の2つの遺伝子特異的プライマーを有するヒト胎児脳cDNAライブラリ(Marathon-Ready cDNA、クローンテック)から増幅した。この第1のPCR生成物を、次いで、配列番号10及び配列番号11のプライマーの新しい組み合わせで増幅した。増幅フラグメントは、cDNAの全長のヌクレオチド52-1540、EcoRI及びBamHIクローニング部位でそれぞれ延長されたゲンバンク受け入れ番号AF086924を包含する。得られた1503-bpフラグメントを、EcoRI及びBamHIで消化し、精製し、pGBKT7ベクター(クローンテック)のEcoRI及びBamHIクローニング部位に挿入した。
【0135】
2.酵母2ハイブリッドスクリーニング
PP2A/Bγサブユニットと相互作用するポリペプチドを見つけるために、酵母2ハイブリッドスクリーニングを行った。Saccharomyces cerevisiae株AH109 (MATa、trp1-901、leu2-3、112、ura3-52、his3-200、gal4Δ、gal80Δ、LYS2 :: GAL1UAS-GAL1TATA-HIS3、GAL2UAS-GAL2TATA-ADE2、URA3::MEL1UAS-MEL1TATA-lacZ)をpGBKT7-PPP2R2C 構造に形質変換した。酢酸リチウム形質変換を、製造業者の指示に従って行った(Matchmaker Two-Hybrid system、クローンテック)。次いで、ベイト(bait)を発現するMATa形質変換細胞を、Y187株で予め形質変換されたマッチマーヒト脳cDNAライブラリ(MATα、ura3-52、his3-200、ade2-101、trp1-901、leu2-3、112、gal4Δ、met-、gal80Δ、URA3::GAL1UAS-GAL1TATA-lacZ)に混合した。3種の独立したマッチングを、それぞれ、ヒト脳cDNAライブラリの、それぞれ5.106、5.106及び2.105 クローンで行った。プレートに含まれたSD/-Leu/-Trpメディウムにおいて生長することができる、得られた2倍体細胞を、さらに、ベイト−プレイ(prey)相互作用を確認するためにメディウム−ストリンジェンシーSD/-Leu/-Trp/-His選択メディウムで選択した。次いで、陽性のクローンを採取し、高ストリンジェンシーSD/-Leu/-Trp/-His/-Ade選択メディウムで培養した。SD/-Leu/-Trp及びSD/-Leu/-Trp/-His/-Adeメディウムで同時に生長することができるクローンのcDNAのみをシーケンシング及びさらなる研究のために保持した。
【0136】
3.酵母2−ハイブリッドスクリーニングの結果
494のクローンを得、シーケンシングし、分析した。これらのクローンの中で、2E11及び1D3クローンは、KCNQ2カリウムチャネルの新規なスプライシング多型をコードする部分的cDNAを含んでいた。2E11は、配列番号2のアミノ酸433から643をコードするcDNAを含み、1D3は配列番号2のアミノ酸454から643をコードするcDNAを含んでいた。全長スプライシング多型を、実施例2に示すようにクローン化し、シーケンシングした。
【0137】
実施例2:全長KCNQ2スプライシング多型のクローニング
1.クローン化及びシーケンシング
ヒト脳からのポリ(A)+mRNAであるサラムス(thalamus、クローンテック)を、2E11でクローン化した新規なスプライシング多型と特異的にハイブリダイジングする配列番号12のプライマーで、ネズミ科モロニー白血病ウィルス逆転写酵素(RT-PCR Advantage kit、クローンテック)を用いて逆転写(RT)した。フェノール−クロロホルム抽出及び精製工程の後、先のRT−PCTで得られた生成物を、以下の、配列番号13及び配列番号14の遺伝子特異的プライマーを用いて、直接、PCR増幅した。増幅されたフラグメントは、KCNQ2全長cDNA(ゲンバンク受け入れ番号AF033348)のヌクレオチド127-148を含む。これらのプライマーを、それぞれ、EcoRI及びBa/IIクローニング部位で延長した。PCR生成物は、EcoRI及びBa/II制限酵素(ニューイングランドバイオラボ)で消化し、精製し、次いで、pCMV-Mycベクター(クローンテック)のEcoRI及びBa/IIクローニング部位に結紮した。2つのpCMV-Myc-3H9及びpCMV-Myc-3H2クローンを、完全にシーケンシングした。pCMV-Myc-3H2に挿入された配列は、配列番号1を含み、pCMV-Myc-3H9に導入された配列は、配列番号3を含む。
同様に、cDNAを、ヒト胎児脳からのポリ(A)+mRNAライブラリからクローン化した。一つのクローンを得、完全にシーケンスした。その挿入物は、配列番号5を含んでいた。
【0138】
2.新規なスプライシング多型の詳細
配列番号1は、配列番号2(KCNQ2−15bx)のポリペプチドをコードし、配列番号3は、配列番号4(KCNQ2−15by)のポリペプチドをコードし、配列番号5は、配列番号6(KCNQ2−15bz)のポリペプチドをコードし、配列番号7は、全長KCNQ2ポリペプチド(KCNQ2―fl)に対応する。
【0139】
配列番号7、配列番号2、配列番号4及び配列番号6間の配列で示したように(図1)、3つのスプライシング多型は、KCNQ2と比較して新規なカルボキシル−末端を示す。配列番号2、配列番号4及び配列番号6の55のカルボキシ末端アミノ酸は、これら3つのスプライシング多型に特有のものである。これら55のアミノ酸は、配列番号2の589から643位でのアミノ酸に対応する。
【0140】
KCNQ2遺伝子のゲノム構造を、図3及び表1に示した。KCNQ2遺伝子は、17のエキソンを含む。いずれの新規なスプライシング多型も、KCNQ2遺伝子のエキソン15、16及び17に対応するエキソンを示していない。それらは全て、新規のエキソン、エキソン15bを示し、それは、配列番号2の545から643位でのアミノ酸をコードする。エキソン15及び15bによってコードされる44のはじめのアミノ酸は、同一である(配列番号2の545から588位のアミノ酸)。エキソン15bによってコードされる55の最後のアミノ酸は、エキソン15bに特有である(配列番号2の589から643位のアミノ酸)。さらに、新規なスプライシング多型は、KCNQ2―flのエキソン16及び17を示さない。これらのスプライシング多型の大部分のカルボキシ末端はエキソン15bである。さらに、配列番号2は、KCNQ2のエキソン1からエキソン14を含む。KCNQ2のエキソン12は、配列番号4で欠損している。KCNQ2のエキソン9及び12は、配列番号6で欠損している。
【0141】
2E11クローンの導入物は、部分cDNAに対応するが、それは、エキソン13、14及び15bを含む。
【0142】
【表1】

【0143】
実施例3:酵母マッチング試験
1.ベクターの構築
1.1.EX13−17(エキソン13、14、15、16及び17を含む)
pGADT7-EX13-17プラスミドを、以下のように構築した:1414−bpフラグメントを、はじめに、配列番号15及び配列番号16の2つの遺伝子特異的プライマーを用いてヒト胎児脳cDNAライブラリ(マラソン−レディー cDNA、クローンテック)からPCR増幅した。次いで、このはじめのPCR生成物を、配列番号17及び配列番号18の遺伝子特異的プライマーの第2セットで増幅した。これらのプライマーは、それぞれEcoRI及びBamHIクローニング部位で延長された。EcoRI及びBamHI制限酵素で消化した後、1338-bp精製フラグメントをpGADT7(クローンテック)の同クローニング部位に結紮した。
【0144】
1.2.EX13−15(エキソン13、14及び15を含む)
pGADT7-EX13-15プラスミドを以下のように得た。484-bpのフラグメントを配列番号19及び配列番号20のプライマー(それらは、それぞれ、EcoRI及びBamHIクローニング部位で延長された)を用いて、pGADT7-EX13-17構造の第1のPCR生成物から、PCR増幅した。次いで、得られたフラグメントを、 EcoRI及びBamHI で消化し、精製し、pGADT7(クローンテック)の同クローニング部位に結紮した。
【0145】
1.3. EX16-17(エキソン16及び17を含む)
pGADT7-EX16、17プラスミドを以下のように得た。883-bpのフラグメントを配列番号21及び配列番号22のプライマー(それらは、それぞれ、EcoRI及びBamHIクローニング部位で延長された)を用いて、pGADT7-EX13-17構造の第1のPCR生成物から、PCR増幅した。次いで、得られたフラグメントを、 EcoRI及びBamHI で消化し、精製し、pGADT7(クローンテック)の同クローニング部位に結紮した。
【0146】
1.4. EXsp15b(エキソン15bに特有の領域を含む)
pGADT7-EXsp15bプラスミドを以下のように得た。400-bpのフラグメントを、配列番号23(EcoRIクローニング部位で延長された)及び配列番号24プライマーを用いて、pACT2-2E11プラスミドから、PCR増幅した(実施例1参照)。次いで、得られたフラグメントを、 EcoRI及びXholで消化し、精製し、pGADT7(クローンテック)の同クローニング部位に結紮した。
【0147】
1.5.EXco15(エキソン15及び15bに共通の領域を含む)
pGADT7-EXco15ドメインプラスミドを以下のように構築した。146-bpのフラグメントを、配列番号25及び配列番号26のプライマー(それらは、それぞれ、EcoRI及びBamHIクローニング部位で延長された)を用いて、pACT2-2E11プラスミドから、PCR増幅した。次いで、得られたフラグメントを、 EcoRI及びBamHI で消化し、精製し、pGADT7(クローンテック)の同様のクローニング部位に結紮した。
【0148】
1.6.EX13−14(エキソン13及び14を含む)
pGADT7-EX13-14プラスミドを以下のように得た。300-bpのフラグメントを配列番号27及び配列番号28のプライマー(それらは、それぞれ、EcoRI及びBamHIクローニング部位で延長された)を用いて、pACT2-2E11プラスミドから、PCR増幅した。次いで、得られたフラグメントを、 EcoRI及びBamHI で消化し、精製し、pGADT7(クローンテック)の同クローニング部位に結紮した。
【0149】
2.酵母マッチング試験のプロトコル
酵母マッチング試験を、異なるパートナー間で相互作用ドメインをマッピングするために行った。選択されたSaccharomyces cerevisiaeマッチングパートナー株(AH109及びY184)を、問題のプラスミドとの組み合わせで試験すべきプラスミドに、別々に形質転換した。酢酸リチウム形質変換方法を、製造者の指示(マッチマーカー2ハイブリッドシステム、クローンテック)に従って行った。形質転換体を、適当なSDドロップアウトメディウム(クローンテック)上に選択した。用いるためにそれぞれのタイプの1つの新鮮なコロニーをワーキング・ストック・プレートから採取し、0.5mlのYPDメディウム(クローンテック)を含有する1本の1.5mlマイクロ遠心管に入れた。次いで、細胞を、200rpmで振盪させながら30℃で24時間インキュベートした。次いで、1:100希釈のマッチング培養株100μlを、適当なSDメディウム: SD/-Leu/-Trp及びSD/-Leu/-Trp/-His/-Ade上に広げた。選択メディウム上での生長から7から15日後、陽性のコロニーを計数した。
【0150】
3.KCNQ2ポリペプチド及びPP2A/Bγ間の直接マッチング試験結果
上述した各構築物び実施例1に記載したpGBKT7-PPP2R2C構築物間のマッチング試験を行った。その結果を図2に示す。記号「+」はコロニーが生長したことを示し、よって、試験ポリペプチドがPP2A/Bγと相互作用することが可能であることを示す。記号「−」はコロニーが生長しなかったことを示し、よって、試験ポリペプチドがPP2A/Bγと相互作用しなかったことを示す。
【0151】
EX13-17、EX16-17、EX13-14及びEXsp15bは、PP2A/B(と相互作用しない。EX13-15b、EX13-15及びEXco15は、PP2A/B(と相互作用する。EX13-15bは、PP2A/B(と相互作用し、これは、KCNQ2−15bポリペプチドはPP2A/B(と相互作用することができることを示す。EXsp15bではなく、EX13-15b、EX13-15及びEXco15は、PP2A/B(と相互作用するので、エキソン15とエキソン15bとの間の共通の領域は、この相互作用において役割を示す。さらに、EX13-17はPP2A/B(と相互作用を示さないので、エキソン15又はエキソン15bがKCNQ2ポリペプチドの大部分のカルボキシル末端に位置するという事実は、PP2A/B(との有効な相互作用にとって重要である。
【0152】
4.異なるKCNQ2ポリペプチド間の直接マッチング試験の結果
種々の上述した構築物間のマッチング試験を行った。その結果を図4に示す。4つのマッチング試験を構築物の各対で行い、その結果を図3に示す。記号「++」は、4つ全てのコロニーが生長したことを示す。記号「+」は4つのうち3つのコロニーが生長したことを示す。記号「+/−」は、4つのうち1つのコロニーが生長したことを示す。記号「−」は、コロニーが生長しなかったことを示す。
【0153】
この実験は、KCNQ2ポリペプチドが結合することができ、同質二量体を形成することができることを示す。また、KCNQ2−15bポリペプチドは、エキソン15を含むKCNQ2ポリペプチドと、それらのカルボキシ末端で結合することができ、異質二量体を形成することができる。
【0154】
実施例4:グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合プロテインの発現及び精製
1.プラスミドの構築
1.1.pGBKT7-2E11
酵母2−ハイブリッドスクリーニングから回収されたpACT2-2E11プラスミド をEcoRI及びBglIIで消化し、精製した後、得られた687-bpフラグメントを、pGBKT7ベクター(クローンテック)のEcoRI及びBamHIクローニング部位に挿入した。
【0155】
2.2.pGEX-2TK-2E11
KCNQスプライシング多型の部分cDNAを、配列番号29の遺伝子特異的プライマー又は配列番号30のpACT2ベクターにおけるプライマーを用いて、酵母2ハイブリッドスクリーニングから回収したpACT2-2E11プラスミドからPCR増幅した。これらのプライマーは、それぞれ、BamHI及びEcoRIクローニング部位で延長された。892-bpPCR生成物をBamHI及びEcoRIで消化し、精製し、pGEX-2TKベクター(アミシャム・ファルマシア・バイオテック)のBamHI及びEcoRI 部位に挿入した。この構構築物に用いられたpACT2プラスミドを以下のような2倍体細胞から回収した。2倍体細胞の新鮮なコロニーを5 mlのSD/-Leu/-Trp (クローンテック)に接種し、200から250rpmで振盪しながら30℃で一晩生長させた。一晩培養株の2mlに対応する細胞を、4300rpmで10分間遠心分離によってスピンダウンした。ペレットを100μlのザイモリエース(1U/(l) (セイカガク・コーポレーション)に再懸濁し、30℃で1時間インキュベートした。次いで、100μlのプロテイナーゼKミックス(100 mM NaCl、10 mM Tris-HCl pH [pH 8.0]、25 mM EDTA、0.5 % SDS、0.1 mg/ml プロテイナーゼK)を2.5時間で、40℃にて添加した。DNAを、2つの連続するフェノール:クロロホルム工程によって抽出し、0.3 Mの酢酸ナトリウム及びエタノール2.5容量で沈殿させた。DH10B ElectroMAXコンピテント細胞(インビトロゲン)をDNAで形質変換し、120 (g/ml アンピシリン補足寒天培地上で選択した。pGEX-2TK-2E11によってコードされたプロテインを、GST-2E11と名づけた。
【0156】
1.3.pGEX-2TK-PPP2R2C
PP2A/B(の全長cDNAのヌクレオチド55-1540を包含するPPP2R2Cの1485-bpフラグメント (ゲンバンク受け入れ番号AF086924)を配列番号31及び配列番号32の遺伝子特異的プライマー(それらは、それぞれ、BamHI及びEcoRIクローニング部位で延長された。)を用いて、pGBKT7-PPP2R2CプラスミドからPCR増幅した。フラグメントをBamHI及びEcoRIで消化し、精製し、pGEX-2TKベクター(アミシャム・ファルマシタ・バイオテック)の同クローニング部位に結紮した。pGEX-2TK-2E11によってコードされたプロテインをGST-PPP2R2Cと名づけた。
【0157】
1.4.pGEX-2TK-KCNQ2-Cter
全長cDNAのヌクレオチド1544-2924を包含するKCNQ2−flの1393−bkフラグメント (ゲンバンク受け入れ番号AF033348)を、配列番号33及び配列番号34の遺伝子特異的プライマー(それらは、それぞれ、XhoI及びEcoRIクローニング部位で延長された)を用いて、pCMV-HA-KCNQ2-iso1構築物からPCR増幅した。このPCR生成物をXhoI及びEcoRIで消化し、精製し、pGEX-2TK-2E11プラスミド767-bp XhoI-EcoRI フラグメントを同じ部位で置換した。pGEX-2TK-KCNQ2-Cter の構築物に用いたpCMV-HA-KCNQ2-iso1プラスミドを以下のように得た。KCNQ2-flの領域をコードする全長(全長cDNA のヌクレオチド126-2924を含む、ゲンバンク受け入れ番号AF033348)を、配列番号35及び配列番号36の遺伝子特異的プライマー(それらは、それぞれEcoRI 及びBgIIクローニング部位で延長された)を用いて、ヒト脳cDNAライブラリ(マラソン−レディcDNA、クローンテック)から、はじめに増幅した。PCR生成物を、EcoRI 及びBgIIで消化し、精製し、pCMV-HAベクター(クローンテック)の同じクローニング部位に結紮した。pGEX-2TK-2E11によってコードされたプロテインを、GST-KCNQ2-Cterと名づけた。
【0158】
2.発現及び精製
Kaelinら(1991, Cell, 64:521-532)に示された方法を適用して、グルタチオンSトランスフェラーゼ融合プロテインの発現及び精製を行った。MAX能DH5(F'IQ コンピテント細胞の一晩培養株(インビトロゲン)をpGEX2TKプラスミド又はpGEX2TK-2E11で形質変換し、pGEX2TK-KCNQ2-Cter及びpGEX2TK-PPP2R2Cの組替体を、アンピシリン(100μg/ml)含有のLBメディウム中で1:10に希釈し、37℃にて1時間インキュベートした。次いで、イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG、プロメガ)を最終濃度0.1 mMまで添加し、バクテリアを37℃にてさらに3時間生長させた。グルタチオン−セファロース4Bビーズ(アミシャム・バイオサイエンス)を用いて融合タンパクを回収するために、バクテリア培養株を5000 x gで、15分間、4℃にて遠心分離によってペレット化し、1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド (PMSF、シグマ)及び7mlバッファに対してプロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete(商標)ミニ、ロシュ)1錠が補足されたNETN (20mM Tris-HCl [pH 8.0]、120mM NaCl、1mM EDTA、0.5% ノニデットP-40、シグマ)1/10容量中で再懸濁した。次いで、バクテリアを穏やかな超音波処理によって氷中で溶解し、10,000 x gで、10分間、4℃にて遠心分離した。次いで、バクテリアの透明な溶解物のアリコート (1 ml)を1時間、4℃にて、50 (lのグルタチオン−セファロース4Bビーズ(それは、予め4回、1%アルブミン・ボビン(BSAフラクションV、シグマ)を含むNETN中で洗浄している)で振盪し、NETN中で再懸濁した(最終濃度1:1 [v/v])。次いで、グルタチオン−セファロース4BビーズをNETNで3回洗浄した。結合した組換えプロテインを回収するために、ビーズを2回より多く、100mM Tris-HCl [pH 8.0]、120 mM NaClで洗浄し、20 mMグルタチオン(シグマ)を含有する同バッファ中で溶出した。溶出された融合プロテインの定量を標準ブラッドフォード法(バイオラッド・プロテイン・アッセイ)で行った。
【0159】
実施例5:GST融合プロテインのインビトロでの標識付け
バクテリアの透明な溶解物1mlに対応する結合GST融合プロテインを有するビーズをNETNで3回、DTT (20 mM Tris-HCl [pH 7.5]、120 mM NaCl、12 mM MgCl2)なしのHMKバッファで1回洗浄した。 次いで、ビーズを30(lの反応混合物 (3 (l の10X HMK バッファ+20 mM DTT、40mM DTT中の10ユニットのプロテインキナーゼA触媒サブユニット[牛の心臓からのPKA 、250ユニット/バイアル、シグマ]、2 (lの[32P]-(ATP 6000 Ci/ミリモル及び24(lの蒸留水)中で再懸濁し、4℃にて、30分間インキュベートした。インキュベーションの間、ビーズをときどき揺り動かすこをよって再懸濁した。反応を1 mlのHMKストップバッファ (10 mM リン酸ナトリウム [pH 8.0]、10 mMピロリン酸ナトリウム、10 mM EDTA、1 mg/ml BSA)を添加することによって中止させ、ビーズをNETNバッファで5回洗浄した。放射性同位元素で標識した融合プロテインの溶解物を、先に述べたように、100 mM Tris-HCl [pH 8.0]、120 mM NaCl中に新たに調製した20 mMグルタチオン1 mlで溶出した。
【0160】
実施例6:固相オーバーレイ・アッセイ
1.固相オーバーレイ・アッセイのプロトコル
固相オーバーレイ・アッセイを、Kaelin 及び協力者によって示された方法(Kaelinら、1992, Cell, 70:351-364)を適用して行った。100 ng、10 ng及び0.1 ngのGST及びGST-2E11 組換えプロテインを、9% SDS-PAGEに溶解し、ニトロセルロース膜に電気ブロットによって転写した(ニトロセルロース転写膜プロトランBA 83、Schleicher及びSchuell)。次いで、その膜を、5% (w/v) 無脂肪ドライミルク、1 mM DTT、0.05%のノイデットP-40 を有するHBBバッファ (25 mM Hepes-KOH [pH 7.7]、25 mM NaCl、5 mM MgCl2) 中で、1時間、室温でブロックした。結合反応を、1% (w/v) 無脂肪ドライミルク、1 mM DTT、1 mM PMSF及びプローブとして用いた3.5 105 dpmの [32P]-(ATP GST-PPP2R2C組換えプロテインを有するHyb75バッファ (20 mM ヘペス [pH 7.7]、75 mM KCl、2.5 mM MgCl2、0.1 mM EDTA、0.05% Nonidet P-40)中で、室温で行った。 4.5時間のインキュベーションの後、その膜を、Hyb75バッファ、1 mM DTT、1% (w/v)無脂肪ドライミルクで、3回、室温で、15分間洗浄した。ブロットを、オートラジオグラフィーによって分析した。
【0161】
2.結果
この実験を、KCNQ2-15bポリペプチド及びPP2A/B(間の相互作用を確認するために行った。この実験では、PP2A/B(サブユニットを、プロテインがニトロセルロース膜に存在しない状態で、放射性同位元素で標識した。これにより、負荷されたプロテインがPP2A/B(と相互反応をした場合にのみ、オートラジオグラフィーによって視覚化され、シグナルが現れる。GST-2E11は、エキソン13、14及び15bを含むKCNQ2−15bポリペプチドとGSTとの間の融合プロテインに対応する。GSTは負の対照に対応する。GST-2E11組換えプロテインが負荷された3つのラインでは、約45kDのサイズのプロテインに対応する位置にバンドが現れた。これは、GST-2E11プロテインとして予想されたプロテインサイズに対応する。さらに、バンドの強度は、負荷されたGST-2E11の量に比例した。これにより、GST-2E11は、PP2A/B(と相互作用している。GSTプロテインが負荷された3つのラインでは、バンドは現れず、PP2A/B(がGSTプロテインと相互反応しないことを示す。よって、PP2A/B( とGST-2E11融合プロテインとの間の相互作用は、2E11をコードするプロテインの部分のためであって、GSTをコードするプロテインの部分のためではない。この実験は、KCNQ2−15bポリペプチドがPP2A/B(と、インビトロで相互作用することができることを示す。さらに、これは、KCNQ2-15bポリペプチドが、第3の結合パートナーなしで、PP2A/B(と相互作用することができることを示し、酵母2ハイブリッドアッセイによって排除することができない仮説を示す。
【0162】
実施例7:インビトロでの組換えGSK−3βキナーゼを用いたリン酸化及びインビトロでのHBT−14全細胞抽出物を用いた脱リン酸化アッセイ
1.リン酸化アッセイ
KCNQ2−15bのリン酸化状態がGSK3β、つまり、MAP1B、タウ及びシナプシン1へのその作用によって種々の細胞骨格プロセスを調節することによって中枢神経系で重要な役割を果たすキナーゼによって修飾されるかどうかを測定するために、リン酸化分析を行った。GSK3βは、双極性障害の治療において用いられている2つの精神安定剤、リチウムとバルポラートとによって阻害されることが知られている。
【0163】
1.1.プロトコル
GST−2E11融合プロテインの発現及び精製を、上述したように行った。1mlのバクテリアの透明溶解物に対応する結合した融合プロテインを有するビーズをNETN中で3回、DTTなしのHMKバッファ(20 mM Tris-HCl [pH 7.5]、120 mM NaCl、12 mM MgCl2)で1回洗浄した。ビーズを、240μlの反応混合物(24 (lの10X HMK バッファと20 mM DTT、40mM DTT中の40ユニットのプロテインキナーゼA触媒サブユニット [牛の心臓からのPKA、250 units/vial、シグマ] 、5 (l の24 mM ATP及び207 (lの蒸留水)中で再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。ビーズをNETNバッファで3回、GSK-3(反応バッファ (20 mM Tris-HCl [pH 7.5]、10 mM MgCl2、5 mM DTT) (ニューイングランドバイオラボ)で1回洗浄した。次いで、ビーズを、50 (lの反応混合物 (5 (lの10X GSK-3(反応バッファ、1 (lの[32P](ATP 10mCi/ml、50 U の組換えGSK-3([ニューイングランドバイオラボ]及び最終容量50 (lとなる蒸留水)中に再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。ENTNバッファで3回洗浄した後、リン酸化プロテインを2Xサンプルバッファ(125 mM Tris-HCl [pH 6.8]、4% SDS、20%グリセロール、1.4 Mの(-メルカプトエタノール)中で沸騰させ、10% SDS-PAGEによって再溶解し、オートラジオグラフィーで視覚化した。
【0164】
1.2.結果
このリン酸化分析では、試験すべき非放射性同位元素標識ポリペプチドを、GSK-3(、PKA及び放射性同位元素活性のATPの存在下でインキュベートした。次いで、プロテインを、10% SDS-PAGEマイグレーションによって再溶解し、オートラジオグラフィーで視覚化した。インキュベーションの間に試験すべきプロテインがGSK-3(及びPKA によってリン酸化された場合にのみ、シグナルがオートグラフィーによって視覚化される。GST-2E11プロテイン(エキソン13、14及び15b及びGSTポリペプチドとの間の融合プロテインに対応する)が負荷されたラインでは、約45kDのサイズのプロテインに対応する一に負荷されたバンドが現れた。これは、GST-2E11として予想されたプロテインサイズである。よって、GST-2E11プロテインは、GSK-3(及びPKA によって、インビトロでリン酸化される。負の対照に対応する3つの実験が、平行に行われた。1つの実験は、インキュベーションの間、GSK−3βキナーゼを添加することなしに行い、一つを、インキュベーションの間、PKAキナーゼを添加することなしに行い、一つを、GST-2E11プロテインに代えてGSTを用いて行った。負の対照に対応する3つのラインでは、バンドは現れなかった。したがって、この実験は、KCNQ2−15bポリペプチドが、インビトロで、GSK−3β及びPKAキナーゼによって相乗的にリン酸化されることを示す。
【0165】
この結果は、CREBホスホペプチド(これは、GSK−3β及びPKAによってリン酸化されることが知られている)がインキュベーションの間に添加された競合実験によって確認された。この競合実験では、5μgのCREB ホスホペプチド(ニューイングランドラボ)がキネーション混合物に添加された。バンドは、GST-2E11のサイズに対応する位置になおも現れたが、バンドの強度は極めて有意に弱かった。
【0166】
GST-2E11のリン酸化状態におけるLiClの影響を、さらに、それぞれ0、8.3、25、75及び225 mMの最終濃度でのキネーション混合物にLiClを添加することによって調べた。約45kDの位置に現れたバンドの強度は、LiClの存在で減少し、シグナル強度は、キネーション混合物に添加したLiCl濃度に相関して反対方向であった。約50mlのLiClの存在では、GST-2E11のリン酸化状態は、50%減少した。これは、LiCl、つまり双極性障害の治療において用いられているよく知られた精神安定剤が、インビトロにおいてKCNQ2−15bポリペプチドのリン酸化を阻害することを示す。
【0167】
2.脱リン酸化分析
脱リン酸化分析を、KCNQ2−15bポリペプチドのリン酸化状態がPP2Aによって修飾されるかどうかを測定するために行った。
【0168】
2.1.プロトコル
インビトロで、リン酸化されたGST-2E11融合プロテインを、ヒトグリア芽細胞腫、星状細胞腫のセルライン(ATCC番号:HTB-14)の全細胞抽出物500μgを用い、PP2Aホスホターゼ阻害剤オカダイックアシッド(シグマ)400μMあり又はなしで、30分間、室温でインキュベートした。HTB−14全細胞抽出物を以下のように調製した。細胞を、氷冷TBSバッファ(10 mM Tris-HCl [pH 8.0]、120 mM NaCl)で3回洗浄し、30分間、4℃にて、EBCバッファ(50 mM Tris-HCl [pH 8.0]、120 mM NaCl、0.5 % Nonidet P-40)中で溶解した。次いで、溶解物を10分間、13.000 x gで、4°Cにて、ペレット状の細胞デブリスに遠心分離した。上澄に存在するプロテインを標準ブラッドフォード法(バイオ−ラド・プロテイン・アッセイ)によって定量した。次いで、プロテインを10% SDS-PAGEに再溶解し、オードラジオグラフィーで視覚化した。
【0169】
2.2.結果
PP2AがGST-2E11プロテインを脱リン酸化する能力を有するかどうかを測定するために、先のアッセイで得られたリン酸化放射性同位元素標識GST-2E11プロテインを、PP2A ホスホターゼ含有HTB-14細胞抽出物の存在下でインキュベートした。この実験では、HTB-14細胞抽出物の存在下でインキュベートした後は、もはやPP2Aによって脱リン酸化されたプロテインは、放射性同位元素活性でなかった。よって、GST-2E11プロテインの脱リン酸化を、オートラジオグラフィーによるシグナル視覚化の消失によってモニターした。リン酸化GST-2E11プロテインとして現れるバンド強度のための参照として、10% SDS-PAGEゲルの一つのラインを、HTB-14細胞抽出物の非存在下でインキュベートされたリン酸化GST-2E11融合プロテインで負荷した。HTB-14細胞抽出物の存在下でインキュベートされたリン酸化GST-2E11融合プロテインで負荷したラインでは、バンドは非常に弱い強度であった。よって、GST-2E11融合プロテインは、HTB-14細胞抽出物の存在下でインキュベートされた場合、脱リン酸化される。GST-2E11融合プロテインがHTB-14細胞抽出物及びPP2Aホスホターゼ阻害剤として知られているオカダイックアシッドの存在下でインキュベートされた場合、バンドの強度は、リン酸化されたGST-2E11に対応するバンドの強度よりもわずかに弱いのみであった。よって、PP2Aホスホターゼは、HTB-14細胞抽出物の存在下でインキュベートされたGST-2E11融合プロテインで観察された脱リン酸化の役割を担っている。したがって、この実験は、インビトロにおいて、KCNQ2−15bポリペプチドは、PP2Aホスホターゼによって脱リン酸化されることを示す。
【0170】
実施例8:細胞培養、形質移入、免疫沈降及びウェスタンブロット解析
1.細胞培養
HEK293-H細胞(ジブコ・インビトロゲン・コーポレーション)を、0.1 mM 非必須アミノ酸及び10%ウシ胎仔血清 (ジブコ・インビトロゲン・コーポレーション)が捕捉されたDMEMメディウム(ジブコ・インビトロゲン・コーポレーション)中で生長させ、20 (gのpCMV-Myc-3H9又はpCMV-Myc-3H2プラスミド/60 mm皿で、 インビトロゲン燐酸カルシウムキットとプロトコルを用いて一時的に形質移入した。形質移入後48時間で、細胞を、氷冷リン酸バッファ(PBS、ジブコ・インビトロゲン・コーポレーション)で3回洗浄し、こすり落とし、2時間、4℃にて、プロテアーゼ阻害剤 (1 mM フェニルメチルスルホニルフルオライド、Complete(商標)ミニプロテアーゼ阻害剤カクテル1錠(ロシュ))及びホスファターゼ阻害剤 (1 mM Na3VO4 及び1 mM NaF)が捕捉された可溶化バッファ(150 mM NaCl、5 mM EDTA、1% Triton X-100、0.1% デオキシコール酸ナトリウム、10 mM Tris-HCl [pH 8.0]を含有する)中に溶解した。次いで、溶解物を、10分間、13.000 x g、4°Cにて、細胞デブリをペレット化するために遠心分離した。上澄に存在するプロテインを標準ブラッドフォード法(バイオラッド・プロテイン・アッセイ)によって定量した。
【0171】
2.免疫沈降
500 (g (最終容量:500 (l)の透明細胞溶解物を2時間4℃にて、1 (lのウサギ免疫前血清及び1%ウシのアルブミン (BSA fraction V、シグマ)で飽和させたプロテインA セファロースCL-4Bビーズ (アミシャム・ファルマシア・バイオテック) 50 (lを用いて、インキュベートした。次いで、涸渇上澄を、4℃で、1 (gの抗-Mycモノクローナル抗体 (Myc-Tag 9B11 モノクローナル抗体、セル・シグナアリング)を用いて一晩インキュベートした。次いで、1%ウシのアルブミンで飽和させたプロテインAセファロースCL-4Bビーズを添加し、その混合物を4℃にて、さらに2時間インキュベートした。氷冷可溶化バッファ免疫複合体を5回洗浄した後、2X サンプルバッファ (125 mM Tris-HCl [pH 6.8]、4% SDS、20% グリセロール、1.4 M (-メルカプトエタノール)中で沸騰させ、8% SDS-PAGEで再溶解し、付した。
【0172】
3.ウェスタンブロット
プロテインを、Towbinバッファ(Towbinら、1979, PNAS, 76:4350-4354)と電気転移装置を用いて、ニトロセルロース膜(ニトロセルロース膜転写膜プロトランBA 83、Schleicher及びSchuell)に転写した。転写後、ナトリウムアジド(0.1%)が捕捉されたTBST (10 mM Tris-HCl [pH 8.0]、150 mM NaCl, 0.05% Tween 20)中の5%無脂肪ドライミルク中で、2時間、ブロックし、次いで、室温にて、16時間、同バッファで1:1000に希釈された抗−Mycものモノクローナル抗体(Myc-Tag 9B11モノクローナル抗体、セル・シグナリング)を用いてインキュベートした。TBSTで数回洗浄した後、ブロットを、1:5000に希釈されたセイヨウワサビパーオキシターゼ−複合第2抗体(抗マウスIgG、Fab特異的、パーオキシターゼ複合体、シグマ)を用いてインキュベートし、ECLウェスタンブロット検出試薬(アミシャム・バイオサイエンス)によって展開した。
【0173】
実施例9:電気生理学的解析
1.プロトコル
ツメガエル属 laevis 卵母細胞へのcDNA注入
動物を麻酔し、卵巣片を外科的に取り出し、それぞれの卵母細胞を、96 mM NaCl、2 mM KCl、2 mM CaCI2、2 mM MgCl2及び5 mM HEPESを含有するpH 7.4の食塩水中で分割した。ステージV及びVIの卵母細胞を、小脳細胞を廃棄するために、室温で、2時間、食塩水中の0.2 mg/mlトリプシン阻害剤の存在下、コラゲナーゼタイプ1A (1mg/ml)で処理した。濃縮物を、260nmの吸光度で測定することによって決定した。KCNQ2、3H2及び3H9 K+チャネルに対応するDNAを、それぞれのcRNAを発生させるために、PECOベクターにサブクローン化した。cRNA濃縮物を260nmの吸光度で測定した。CRNA溶液を、圧力マイクロインジェクター (Inject+matic、ジュネーブ)を用いて注入した(約50 nL/卵母細胞)。次いで、卵母細胞を2から6日間、50U/mLペニシリンと50 U/mLストレプトマイシンを捕捉されたND96溶液中で保持した。
【0174】
電気生理学的測定
0.3 rmL 還流チャンバにおいて、単一の卵母細胞に、3M KClが充填された2つの標準ガラスマイクロ電極 (0.5から2 Mオーム抵抗)を突き刺し、Dagan TEV2OO増幅システム(米国)を用いて電圧固定法下で保持した。電気刺激、データ取得、解析を、pClamp ソフトウェア(Axon Instruments, USA)を用いて行った。増分脱分極電圧ステップ(10 mV増分)を適用して、-80 mVの保持電圧 (K+イオンの平衡電圧) 再分極から、「テイル電流」からK+チャネル非活性化を測定する-60mVまでの電流−電圧関係を得た。
【0175】
2.結果
KCNQ2-15bx及びKCNQ2-15by 同属四量体カリウムチャネルの活性を試験し、KCNQ2-fl同属四量体カリウムチャネルの活性と比較した。0.2 ng又は0.4 ngのDNAを卵母細胞に注入した。その結果を図5に示し、それは、カリウムチャネルによって生じるM−電流の強度を示す。約1 μAの強度が、0.4 ngのDNAを注入した場合にKCNQ2-fl同属四量体カリウムチャネルによって生じた電流として認められた。この値は、科学文献によって報告された値と同様であった。0.4 ngのDNAが注入された場合、KCNQ2-15bx同属カリウムチャネルは、約800 nAの電流を産生し、0.4 ngのDNAが注入された場合、KCNQ2-15by同属四量体カリウムチャネルは、約700 nAの電流を産生した。よって、KCNQ2-15bx及びKCNQ2-15byスプライシング多型は、インビボにおいて、機能的相同カリウムチャネルとして関連し得る。
【0176】
図6A及び6Bは、KCNQ2-15bx (図6A)及びKCNQ2-15by (図6B)同属四量体カリウムチャネルによって異なった電圧で発生した電流に対応する電圧クランプ・トレースを示す。このトレースで観察されるゆっくりとした活性化は、KCNQカリウムチャネル系統群の一員の特徴的な性質である。
【0177】
実施例10:影響個体又は非影響個体からのDNAサンプルの収集
ドナーは、血縁で健常者であった。100人からのDNAを抽出し、バイアレリックマーカーの検出のために試験した。
30 mlの末梢静脈血を、EDTAの存在下、各ドナーから採血した。細胞(ペレット)を2000 rpmで10分間の遠心分離した後に収集した。赤血球を、溶解液(50 ml最終濃度: 10 mM Tris pH7.6、5 mM MgCl2、10 mM NaCl)によって溶解した。溶解物溶液中にペレットを再懸濁した後、上澄に存在する赤血球の残渣を除去するために必要なだけ何度も遠心分離(10分間、2000 rpm)した。
白血球のペレットを、
−3 ml TE 10-2 (Tris-HCl 10 mM、EDTA 2 mM) / NaCl 0 4 M、
−200 μl SDS 10%、
−500 μl K-プロテイナーゼ (TE 10-2 / NaCl 0.4 M 中2 mg K-プロテイナーゼ)を含有する溶解物溶液3.7mlを用いて、42℃にて一晩溶解した。
【0178】
プロテインの抽出のため、1 ml飽和NaCl (6M) (1/3.5 v/v)を添加した。強い振盪の後、溶液を10000 rpmで、20分間遠心分離した。DNA沈降のため、2から3容量の100%エタノールを、先の上澄に添加し、溶液を2000 rpmで、30分間遠心分離した。DNA溶液を3回、70%エタノールで、塩を除去するために洗浄し、 2000 rpmで、20分間遠心分離した。ペレットを37℃で乾燥し、1 ml TE 10-1又は1 ml水で再懸濁した。DNA濃縮物を260 nm (1ユニットOD = 50 μg/ml DNA)でのODで測定して評価した。DNA溶液中のプロテインの存在を測定するために、OD 260 / OD 280比を測定した。OD 260 / OD 280比が1.8から2であるDNAプレパレーションのみを以下に続く実施例において使用した。各個体からのDNAの同量を混合することによってプールを構築した。
【0179】
実施例11:PCRによるゲノムDNAの増幅
実施例10のDNAサンプルの特定のゲノムシーケンスを、先に得られたDNAプールで増幅した。さらに、50個体のサンプルを同様に増幅した。
PCRアッセイを、以下のプロトコルを用いて行った。
最終容量 25 μl
DNA 2 ng/μl
MgCl2 2 mM
dNTP (それぞれ) 200 μM
プライマー(それぞれ) 2.9 ng/μl
Ampli Taq Gold DNA ポリメラーゼ 0.05 unit/μl
PCR バッファ(10x = 0.1 M TrisHCl pH8.3 0.5M KCl) 1x
最初のプライマーの各ペアをゲノムDNAシーケンスのシーケンス情報及びOSP スフトウェア(Hillier & Green, 1991)を用いて設計した。
【0180】
PPP2R2Cに位置するプライマーバイアレリックマーカー
配列番号37に示すPPP2R2Cのゲノム配列を、(i) Genset S.A.で構築されたBACクローン、 (ii) EMBL受け入れ番号:AC114815.5、AC004599.6、AC122939.3及びAC004689.5に対応するBACクローン及び (iii) RefseqN受け入れ番号:NT#006051に基づいて生命情報科学分析によって構築した。多型を実施例12及び13で示したように同定し、実施例14で示したように確認した。
【0181】
KCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカー
KCNQ2遺伝子に位置するバイアレリックマーカーを、セレラによって提供されたデータを用いて認定した。さらに、これらのマーカーのそれぞれを、実施例14に示した方法で確認した。
表2Aは、PPP2R2Cの特定の領域を増幅するために用いたプライマーのペアの配列番号37における位置を示す。表2Bは、KCNQ2の特定の領域を増幅するために用いた配列番号42から47のプライマーの位置を示す。プライマーの配位を第3のカラムに示す。記号 (+1)は、プライマーのシーケンスが配列番号37及び42から47の対応領域と同一であることを示す。記号 (-1)は、プライマーのシーケンスが配列番号37及び42から47の対応領域と相補的であることを示す。
【0182】
【表2】

【0183】
好ましくは、プライマーは、シーケンシングのために有用な増幅のためにターゲットとされた特定の塩基の共通オリゴヌクレオチドテイルの上流を含む。
これらのプライマーの合成は、GENSET UFPS24.1シンセサイザーで、ホスホラミジット法(phosphoramidite)に従って行った。
DNA 増幅をGenius II サーモサイクラーで行った。95°Cで10分間加熱した後、40サイクルを行った。それぞれのサイクルは、30秒間95°C、54°Cで1分間及び30秒間 72°Cからなる。最終延長のために、10分間72°Cで増幅を終了した。得られた増幅生成物の定量を、蛍光計および介入試薬(モレキュラープローブ)としてピコグリーンを用いて、96-ウェルマイクロタイタープレート上で測定した。
【0184】
実施例12:増幅されたゲノミDNAからのバイアレリックマーカーの同定
実施例11で得られた増幅DNAのシーケンシングをABI 377シーケンサーで行った。増幅生成物のシーケンスを、染色ターミネーター・サイクル・シーケンシング・プロトコルを用いて、自動ジデオキシ・ターミネーター・シーケンシング反応により測定した。シーケンシング反応の生成物をシーケンシング・ゲルに流し、シーケンスを、ゲル・イメージ解析(ABI プリズムDNAシーケンシング解析ソフトウェア(2.1.2バージョン)を用いて測定した。
さらに、シーケンスデータを増幅フラグメント内にバイアレリックマーカーが存在することを検出するために評価した。先に示したように、同じ位置で生じる種々の塩基から得られた電気泳動パターンの頂上ピークの存在に基づいて、多型調査を行った。
増幅フラグメントで検出されたバイアレリックマーカーの位置を、以下の表3A及び3Bに示す。
【0185】
【表3】

「BM」はバイアレリックマーカーを示す。All1及びAll2は、それぞれバイアレリックマーカーのアレル1及びアレル2を示す。BMのスタンダード欄の記号(+)又は(-)は、示された代替アレルが見いだされたストランドを示す。配列番号37及び42から47は、ストランド(+)に対応する。実施例に示したように、バイアレリックマーカー24-257/320は、ストランド(-)の109663位での多型「a又はg」に対応する。よって、配列番号37の109663位のヌクレオチドは「y」であり、それは、標準PCT命名法に従って、「t又はc」に対応する。バイアレリックマーカー24-247/216は、ストランド(+)の99505位での多型「a又はg」に対応する。よって、配列番号37の99505位のヌクレオチドは、「r」であり、標準PCT命名法に従って、「a又はg」に対応する。
【0186】
実施例13:オーバーラッピングBACからのゲノムDNAの比較による多型の同定
同じDNAドナーサンプル由来のマルチBACクローンからのゲノムDNA及び配列番号37のゲノムDNAの領域でのオーバーラップをシーケンシングした。シーケンシングは、ABI377シーケンサーで行った。増幅生成物のシーケンスを、染色ターミネーター・サイクル・シーケンシング・プロトコルで自動ジデオキシ・ターミネーター・シーケンシング反応を用いて測定した。シーケンシング反応の生成物を、シーケンシング・ゲルに流し、シーケンスを、ゲル・イメージ解析(ABI プリズムDNAシーケンシング解析ソフトウェア(2.1.2バージョン)を用いて測定した。
【0187】
実施例14:マイクロシーケンシングによる多型の変異体
さらに、実施例12及び13で同定されたバイアレリックマーカーを確認し、これらのそれぞれの頻度をマイクロシーケンシングによって測定した。マイクロシーケンシングは、実施例11に示された各個体のDNAサンプルに対して行った。
個体のベノムDNAの増幅を、表1A及び1Bに示されたPCRプラマーの同じセットを用いて、バイアレリックマーカーの検出のために上述したようにPCRによって行った。
マイクロシーケンスで用いた好ましいプライマーは、約19ヌクレオチドの長さであり、問題となる多型塩基のハイブリダイズされた即上流である。本発明による、マイクロシーケンシングに用いたプライマーを表4A及び4Bに示す。
【0188】
【表4】

【0189】
表2A及び2Bのプライマーのように、カラム「配位」における記号 (+1)は、プライマーのシーケンスが配列番号37及び42から47の対応領域と同一であることを示し、記号 (-1)は、プライマーのシーケンスが配列番号37及び42から47の対応領域と相補的であることを示す。
マイクロシーケンス反応を、以下のように行った。増幅生成物を精製した後、マイクロシーケンス反応混合物を、20μl最終容量: 10 pmolマイクロシーケンシングオリゴヌクレオチド、1 U サーモシーケンナーゼ (アミシャムE79000G), 1.25 μl サーモシーケンナーゼバッファ (260 mM Tris HCl pH 9.5、65 mM MgCl2)及び試験された各バイアレリックマーカーの多型部位でのヌクレオチドに相補的な2つの適当な蛍光のddNTPs (Perkin Elmer, Dye Terminator Set 401095)中に添加することによって、製造者の推奨に従って調製した。4分間、94°Cで保持した後、15秒間55°C, 5秒間 72°C及び10秒間 94°Cの20 PCRサイクルを、テトラッドPTC-225サーモサイクラー (MJリサーチ)中で行った。次いで、組み込まれていない染料ターミネーターをエタノール沈降によって除去した。ポリアクリルアミド・シーケンシング・ゲルに負荷する前に、サンプルを最終的にホルムアミド−EDTA負荷バッファに再懸濁し、2分間95℃で加熱した。データをABI PRISM 377 DNA シーケンサーによって収集し、GENESCANソフトウェア (Perkin Elmer)を用いて処理した。
【0190】
ゲル解析にしたがって、データを、各増幅フラグメントに存在するバイアレリックマーカーのアレルを決定するソフトウェアで自動的に処理した。
ソフトウェアは、上述のマイクロシーケンシング手順から得られたシグナルの強度が弱いか、正常か又は飽和しているかどうか、あるいはシグナルが不明瞭であるかどうかのようなファクターを評価する。さらに、そのソフトウェアは、顕著なピーク(形状及び高さ基準に従って)を同定する。顕著なピークのなかで、ターゲットとなる部位に対応するピークをそれらの位置に基づいて同定する。2つの顕著なピークが同じ位置に検出された場合、各サンプルを、その高さに基づいてホモ接合又はヘテロ接合の分類に類別する。
【0191】
実施例15:双極性障害と本発明のバイアレリックマーカーとの間の関連研究
5.1.影響又は非影響個体からのDNAサンプルの収集
関連研究を2つの異なる集団で行った。サンプルの一つの収集は、ホスピタル・ピネロ、ブエノスアイレス、アルゼンチン(「ラビモ」収集)によって提供された。もう一つのサンプルの収集は、ロンドン・ユニバーシティ・カレッジ(「UCL」収集)によって提供された。双方の収集は、双極性障害に影響されているか又は影響されていない個体によって構築されている。
【0192】
A)ラビモ収集
a)影響集団
双極性障害を患う患者(症例)から206 DNAサンプルをゲノタイピング解析のために収集した。
全ての患者は、双極性タイプI (ICD-10: F30.x, F31.x)又は双極性タイプII (ICD-10: F31.8)のDSM-IV及びICD-10基準を満たしていた。全ての患者は白色人種の民族起源の第2世代までであった。
医学的障害を患う又は薬物乱用の潜在的患者を全て除外した。
DSM−IV基準によれば、115症例が双極性タイプI、69症例が双極性タイプII、22症例が非分類であり、20症例(8.5%)が双極性障害のタイプに関する情報を欠いていた。
【0193】
症例の主なフェノタイプ・データは以下のようであった。
第1の兆候の平均年齢:25.6歳(SD, 11; 範囲8-58)
試験時の平均年齢:43.3 years (SD, 13.8; 範囲17-76)
性別:女性142名、男性84名(比1.7)
民族起源:欧州白色人種213名、非欧州白色人種7名、情報欠如6名 (2.5%)
双極性障害の家族歴有18.5%、総合失調症0.9%。
【0194】
b)非影響集団
双極性障害を患っていない個体(対照)からの201 DNAサンプルをゲノタイピング解析のために収集した。
全ての対照は、精神病の病歴及び家族歴がない個体であった。
対照の主なフェノタイプ・データは以下のようであった。
平均年齢:43.8歳(SD, 12; 範囲21-72)
性別:女性118名、男性83名(比1.4)
180名の対照が欧州白色人種、21名の対照が民族起源の混血であった。
【0195】
c)関連研究のために選択された症例及び対照集団
症例対照集団を、159症例と159対照個体になるように、民族性及び性別をそろえた。症例のうち、96例がタイプIの双極性障害、56例がタイプIIの双極性障害、7例が非決定タイプの双極性障害を患っていた。症例の33.8%が男性であり、症例の平均年齢が43歳であり、中央の年齢が44歳であった。対照の41.4%が男性であった。対照の平均年齢は44歳で、中央の年齢は46歳であった。
集団構造の存在によっては、擬似関連(これは、いかなる座の原因にも結びついかないが、種々の民族起源に結びついている表現型とマーカーとの間における関連である)を招くことがある。Fst試験は、ばらつきを分析するための一般的な統計の手段であり、収集が均等である、つまり、集団の構造に結びつかない関係を見出すことを実証するために用いることができる。Fst値は、(i) 同一連鎖群に属さず、(ii)研究されるべき形質に関連しないランダムマーカーを用いて算出した。0に近いFst値は、収集が均等であり、見出された顕著な関連が調査下の形質のためであることを示す (例えば、Bruce S.Weir, Genetic Data Analysis II, Edition Sinauer, San Francisco and Hartl and Clark, Populations genetics, Edition Sinauer, San Francisco参照)。 (i) 同一連鎖群に属さず、(ii)双極性障害に関連しない66のランダムマーカーを、Fstの算出に用いた。1.68e-01のFst値が、ラビノ収集における認定で認められ、この収集が均等であることを示す。
【0196】
B) UCL収集
a)影響集団
全ての患者は、DSM-IV分類で双極性タイプI (ICD-10: F30.x, F31.x)又は双極性タイプII (ICD-10: F31.8)であった。全ての患者は、イギリス諸島の白色人種起源(イングランド人、ウェールズ人、スコットランド人及びアイルランド人を含む)の2世代までの血縁でない個体であった。
【0197】
b)非影響集団
非影響対照個体(双極性障害を患っていない)からの300サンプルをゲノタイピング解析のために収集した。
全ての対照個体は、 (i)精神病の病歴及び家族例がなく、 (ii) 一親等の親族に精神病の家族歴がなかった。全ての対照個体は、イギリス諸島の白色人種起源(イングランド人、ウェールズ人、スコットランド人及びアイルランド人を含む)の2世代までの個体であった。
【0198】
c)関連研究のために選択された症例及び対照集団
研究のために確保した集団は、315症例と295対照から構成された。症例のうち、256例がタイプIの双極性障害、26例がタイプIIの双極性障害、33例が非決定タイプの双極性障害を患っていた。約36%が男性であり、症例の平均年齢が46歳であり、中央の年齢が46歳であった。対照の48%が男性であった。対照の平均年齢は37歳で、中央の年齢は32歳であった。
(i) 同一連鎖群に属さず、(ii)双極性障害に関連のない59のランダムマーカーを用いてFst値を算出した。3.41e-01のFst値が、UCL収集における認定で認められ、この収集が均等であることを示す。
【0199】
5.2.関連研究
A)影響及び対照個体のゲノタイピング
バイアレリックマーカー、それらのうち、本発明のバイアレリックマーカーのアレル頻度を確立するために、関連研究を行うための一般的戦略は、上述した集団のそれぞれにおける全ての個体からのDNAサンプルを(これらの集団のそれぞれに属する試験された個体の二倍体ゲノムで)個々にスキャンすることであった。
各個体(症例及び対照)における全てのバイアレリックマーカーの頻度を、各個体からのDNAサンプルにおいて行われたゲノムPCRによって得られた増幅フラグメントで、マイクロシーケンス反応を行うことによって測定した。ゲノムPCR及びマイクロシーケンシングを、示されたPCRプライマー及びマイクロシーケンシングプライマーを用いて実施例11から13に詳細に示したように行った。
【0200】
B) 単一バイアレリックマーカー頻度解析
双極性障害の非影響集団と影響集団とにおけるアレル頻度の間の差を、KCNQ2遺伝子に位置する全5のマーカー及びPPP2R2C遺伝子に位置する全4のマーカーについて算出した。症例及び対照間のマーカーのアレル頻度を、アレル頻度及びゲノタイプ頻度分布のためのPearson Chi標準テストを用いて調査した。症例及び対照集団間の特定マーカーの観察アレル/ゲノタイプと予想アレル/ゲノタイプとの間に顕著な差があれば、この特定のバイアレリックマーカーを含む遺伝子と双極性障害との間には関連があることを意味する。アレルp値及びゲノタイプp値の双方を全てのマーカーで算出した。表5A及び5Bのp値は、頻度を考慮するとバイアレリックマーカーと双極性障害との間には関連がない可能性を示す。
【0201】
オッズ比の測定は、与えられたアレルを有する場合対そのアレルを有しない場合の、疾患を有する可能性を比較する方法である。オッズ比が1より大きいと、代替アレル、ハプロタイプ又はゲノタイプの一つを有する場合の方が、ほかの1つを有する場合よりも、双極性障害の可能性が高いことを示す。オッズ比は、関連バイアレリックマーカーに対して「リスク」アレル、ハプロタイプ又はゲノタイプの同定を可能にする。ゲノタイプオッズ比は、PPP2R2Cに位置する1つのバイアレリックマーカー及びKCNQ2遺伝子に位置する2つのマーカーを算出する(表6A及び6B)。
【0202】
【表5】

【0203】
【表6】

【0204】
PPP2R2Cにおけるバイアレリックマーカー
このように、PPP2R2C遺伝子に位置する4つの研究されたバイアレリックマーカーは、双極性障害に関連することが認められる。より詳細には、99-24169/139はUCL収集において、双極性障害に関連が高いことが認められる(優位なアレル及びゲノタイプp値)。24-257/320及び99-24175/218は、ラビノ収集において双極性障害に関連が高いことが認められる(有意なアレルp値)。さらに、99-24175/218も、UCL収集において双極性障害に関連している(有意なゲノタイプp値) 。24-247/216は、UCL収集において双極性障害に関連している(有意なゲノタイプp値) 。
【0205】
99-24169/139バイアレリックマーカーのリスクアレルは、「A」である。24-257/320バイアレリックマーカー及び99-24175/218バイアレリックマーカーのリスクアレルも「A」である。99-24169/139バイアレリックマーカーのリスクゲノタイプは「AA」である。このように、バイアレリックマーカー99-24169/13にゲノタイプ「AA」を有する個体は、双極性障害の発現のリクスがある。
【0206】
KCNQ2遺伝子におけるバイアレリックマーカー
KCNQ2遺伝子に位置する2つのバイアレリックマーカー、30-2/62及び30-7/30は、有意に双極性障害に関連する。より詳細には、30-2/62はUCL収集において、双極性障害の関連が高いことが認められる(有意なアレル及びゲノタイプp値)。30-7/30は、UCL収集において双極性障害に関連する(有意なゲノタイプp値) 。
30-2/62のリスクゲノタイプは、「AG」である。30-7/30のリスクゲノタイプは「CC」である。このように、バイアレリックマーカー30-2/62にゲノタイプ「AG」を有する個体及びバイアレリックマーカー30-7/30にゲノタイプ「CC」を有する個体は、双極性障害の発達のリスクがある。
単一バイアレリックマーカー頻度解析の関連研究は、PPP2R2C遺伝子及びKCNQ2遺伝子の双方が双極性障害に関連することを示す。したがって、KCNQ2ポリペプチド及びPP2A/B(調節サブユニットを含むPP2Aホスファターゼの脱調節及び機能不全は、双極性障害の発症及び発現に寄与する。
【0207】
C)ハプロタイプ頻度解析
個体のマーカーの統計学的能力を増加する一つの方法は、ハプロタイプ関連解析を行うことである。
ハプロタイプ頻度の解析は、観察されたゲノタイプのデータから直ちに誘導することができない。EM (期待値-最大値)アルゴリズム (Excoffier L & Slatkin M, 1995)によって、調査集団のハプロタイプの推定値を得ることができる。ハプロタイプ頻度推定をオムニバス尤度比試験(PCT公開公報WO 01/091026)を適用することによって行った。
ハプロタイプ解析をPPP2R2Cに位置する2セットのマーカーで行った。24-257/320及び99-24175/218のハプロタイプ解析をラビモ収集で行った。99-24169/139及び24-247/216をUCL収集で行った。それらの結果を表7(p値)及び7B(オッズ比)に示す。
【0208】
【表7】

24-257/320及び99-24175/218のリスクハプロタイプは、「AA」とした。99-24169/139 及び24-247/216のリスクハプロタイプを「AG」とした。このように、バイアレリックマーカー24-257/320及び99-24175/218でハプロタイプ「AA」を有する個体は双極性障害発現のリスクがあり、バイアレリックマーカー99-24169/139及び24-247/216でハプロタイプ「AG」を有する個体も、双極性障害発現のリスクがある。
【0209】
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【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】図1A及び図1Bは、全長KCNQ2ポリペプチド(KCNQ2-fl, SEQ ID NO: 7)、KCNQ2-15bx (配列番号2)、KCNQ2-15by (配列番号4)及びKCNQ2-15bz (配列番号6)間の配列を示す。ボックスは、KCNQ2-fl に比較して、KCNQ2-15bx、KCNQ2-15by及びKCNQ2-15bzにおいて特有のアミノ酸のハイライトを示す。
【図2】KCNQ2-15bx、KCNQ2-15by及びKCNQ2-15bz cDNAの構成の図である。
【図3】実施例3に記載したように、PP2A/B(及び異なるKCNQ2ポリペプチド間のマッチング試験結果を示す。
【図4】実施例3に記載したように、種々のKCNQ2ポリペプチド間のマッチング試験結果を示す。
【図5】KCNQ2-15bx、KCNQ2-15by、KCNQ2-15bz又はKCNQ2-flサブユニットを含む同属四量体カリウムチャネルによって発生した電流強度をそれぞれ比較したものである。
【図6A】KCNQ2-15bxサブユニットを含む同属四量体カリウムチャネルによって発生した電流の電圧クランプトレースを示す。
【図6B】KCNQ2-15byサブユニットを含む同属四量体カリウムチャネルによって発生した電流の電圧クランプトレースを示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号2のアミノ酸 589から643の少なくとも10のアミノ酸のスパンを含むポリペプチド、
b)配列番号2のアミノ酸 589 から 643を含むポリペプチド、
c)配列番号2のアミノ酸 545 から 643を含むポリペプチド、
d)配列番号2を含むポリペプチド、
e)配列番号4を含むポリペプチド、
f)配列番号6を含むポリペプチド、
g)(a) から (f)のいずれかのムテイン、アミノ酸配列は、(a) から (f) の配列の少なくとも1つと、少なくとも50 %又は60 %又は70 % 又は又は 80 % 又は 90 % 又は 95% 又は 99%同一である、
h)穏やかなストリンゲント条件下又は高いストリンジェントな条件下で、(a)から(f)のいずれかをコードするDNA配列の相補体にハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a) から (f)のいずれかのムテイン、
i)(a)から(f)のいずれかのムテイン、アミノ酸におけるいずれかの変化は、(a)から(f)におけるアミノ酸配列への保存的アミノ酸置換である、
からなる群から選択される単離ポリペプチド。
【請求項2】
ポリペプチドがPP2A ホスホターゼのB(サブユニットに結合することができる請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2の少なくとも1つのポリペプチドを含むカリウムチャネル。
【請求項4】
カリウムチャネルが、請求項1又は2のポリペプチドを含む同価同義チャネルである請求項3のカリウムチャネル。
【請求項5】
請求項1又は2のポリペプチド又はそれらのポリペプチド相補体をコードする精製ポリヌクレオチド。
【請求項6】
ポリヌクレオチドが、
a)配列番号2のヌクレオチド1776から1929を含むポリヌクレオチド、
b)配列番号2のヌクレオチド1632から1929を含むポリヌクレオチド、
c)配列番号1を含むポリヌクレオチド、
d)配列番号3を含むポリヌクレオチド、
e)配列番号5を含むポリヌクレオチド、
f) (a)から(e)のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド相補体、
からなる群から選択される請求項5のポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項5又は6のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項8】
ベクターが遺伝子治療ベクターである請求項7の発現ベクター。
【請求項9】
請求項7又は8の発現ベクターを含むホストセル。
【請求項10】
ポリペプチドを製造する方法であって、ホストセル中で請求項1又は2のポリペプチドの製造に適当な条件下で、請求項9によるホストセルを培養する工程を含む方法。
【請求項11】
さらに、培養株からポリペプチドを精製する工程を含む請求項10の方法。
【請求項12】
請求項1又は2のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項13】
候補となるモジュレータをスクリーニングするための標的としてのKCNQ2ポリペプチドの使用。
【請求項14】
候補となるモジュレータが、自然リガンド、小分子、アプタマー、アンチセンスmRNA 、小干渉RNA及び抗体からなる群から選択される請求項13の使用。
【請求項15】
モジュレータが、精神障害の治療用候補薬である請求項13又は14の使用。
【請求項16】
KCNQ2ポリペプチドの活性を、KCNQ2ポリペプチドを含むカリウムチャネルによって発生するM−電流を測定することによって評価する請求項13から15のいずれかの使用。
【請求項17】
精神障害の治療用医薬を製造するためのKCNQ2ポリペプチドのモジュレータの使用。
【請求項18】
モジュレータを、精神障害の治療用の公知薬と組み合わせて用いる請求項17の使用。
【請求項19】
KCNQ2ポリペプチドが請求項1又は2のポリペプチドである請求項13から18のいずれかの使用。
【請求項20】
モジュレータが、配列番号2の545から643位で示すエキソン15bを含むポリペプチドを特異的に調節する請求項13から19のいずれかの使用。
【請求項21】
精神障害が、双極性障害、総合失調症及びうつ病からなる群から選択される請求項15から20のいずれかの使用。
【請求項22】
精神障害が双極性障害である請求項15から20のいずれかの使用。
【請求項23】
精神障害の治療のためのKCNQ2ポリペプチドのモジュレータの有効性を評価する方法であって、精神障害の動物にモジュレータを投与する方法を含み、モジュレータが、動物モデルにおける精神障害の主な特徴を改善する決定は、モジュレータが精神障害の治療用の薬物であることを示す方法。
【請求項24】
動物モデルは、シナプス障害及び重篤な行動障害のSTOP-/- マウスである請求項23の方法。
【請求項25】
KCNQ2 ポリペプチドが請求項1又は2のポリペプチドである請求項23又は24の方法。
【請求項26】
モジュレータが、配列番号2の545から643位で示すエキソン15bを含むポリペプチドを特異的に調節する請求項23から25のいずれかの方法。
【請求項27】
精神障害が、双極性障害、総合失調症及びうつ病からなる群から選択される請求項23から26のいずれかの方法。
【請求項28】
精神障害が双極性障害である請求項23から26のいずれかの使用。
【請求項29】
個体が精神障害を患っているか又は患うリスクにあるかどうかを診断するための少なくとも1つのKCNQ2-関連バイアレリックマーカーの使用。
【請求項30】
少なくとも1つのKCNQ2-関連バイアレリックマーカーが、表3Bに示された30-2/62及び30-7/30ならびにそれらの相補体からなる群から選択される請求項29の使用。
【請求項31】
バイアレリックマーカー30-2/62218でのゲノタイプ「AG」の存在が、精神障害に患っているから患うリスクにある個体を示す請求項30の使用。
【請求項32】
バイアレリックマーカー30-7/30でのゲノタイプ「CC」の存在が精神障害に患っているから患うリスクにある個体を示す請求項30の使用。
【請求項33】
KCNQ2-関連バイアレリックマーカーと精神障害との間に有意な関係があるかどうかを測定するための少なくとも1つのKCNQ2-関連バイアレリックマーカーの使用。
【請求項34】
KCNQ2-関連バイアレリックマーカーが、表3Bに示された30-2/62及び30-7/30ならびにそれらの相補体からなる群から選択される請求項33の使用。
【請求項35】
精神障害が、双極性障害、総合失調症及びうつ病からなる群から選択される請求項29から34のいずれかの使用。
【請求項36】
精神障害が双極性障害である請求項29から34のいずれかの使用。
【請求項37】
生物学的サンプル中のKCNQ2-関連バイアレリックマーカー又それらの相補体でのヌクレオチドの同一性を測定する工程を含むゲノタイピング方法。
【請求項38】
生物学的サンプルが単一の個体由来である請求項37の方法。
【請求項39】
バイアレリックマーカーでのヌクレオチドの同一性を、個体のゲノムに存在するバイアレリックマーカーの双方のコピーに対して測定する請求項38の方法。
【請求項40】
測定をマイクロシーケンシング解析によって行う請求項37から39のいずれかの方法。
【請求項41】
さらに、測定工程前にバイアレリックマーカーを含むシーケンスの部分を増幅することを含む請求項37から39のいずれかの方法。
【請求項42】
増幅をPCRによって行う請求項41の方法。
【請求項43】
請求項38から42のいずれかの方法による、少なくとも1つのKCNQ2-関連バイアレリックマーカーをゲノタイピングする工程を含む個体における精神障害を診断する方法。
【請求項44】
ゲノタイピング工程の結果を、精神障害を患うリスクとを関連付ける工程をさらに含む請求項43の方法。
【請求項45】
KCNQ2-関連バイアレリックマーカーが、表3Bに示された30-2/62及び30-7/30ならびにそれらの相補体からなる群から選択される請求項44の方法。
【請求項46】
バイアレリックマーカー30-2/62218でのゲノタイプ「AG」の存在が、精神障害に患っているか、患うリスクにある個体を示す請求項45の方法。
【請求項47】
バイアレリックマーカー30-7/30でのゲノタイプ「CC」の存在が精神障害に患っているか、患うリスクにある個体を示す請求項45の方法。
【請求項48】
精神障害が、双極性障害、総合失調症及びうつ病からなる群から選択される請求項43から47のいずれかの方法。
【請求項49】
精神障害が双極性障害である請求項43から47のいずれかの方法。




【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2006−514821(P2006−514821A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−514878(P2004−514878)
【出願日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050246
【国際公開番号】WO2004/000875
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(504029617)セローノ ジェネティクス インスティテュート ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】