説明

新規の中間体を介する1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法

新規な中間体を用いた、1−ベンジル-4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、新規中間体を用いた、純粋な1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式1の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(ドネペジル)は、軽度から中程度のSDAT(老人性痴呆型アルツハイマー病)の処置に用いられている新しい薬物である。
【化1】

【0003】
従来技術に開示されているように、式1のドネペジルの製造について多くの製造方法が存在する。米国特許第4,895,841号には、2−ブロモ−5,6−ジメトキシインダノンおよび亜リン酸トリエチルから調製した置換された1−インダノン−2−ホスホネートを、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)等の強塩基の存在下で1−ベンジルピペリジン−4−カルボキシアルデヒドで処理した後、テトラヒドロフラン(40体積)中パラジウム炭素を用いて接触還元してドネペジルが得られる(全体での収率50.8%)ことが記載されている。但し、この製造方法にはいくつか制限がある、即ち、高価で毒性のあるトリフェニルホスホニウムメトキシメチルクロリドを用いていること、そしてこの製造方法の全体での収率が非常に低いことである(反応式1)。
【化2】

【0004】
米国特許第5,606,064号には、触媒として二酸化白金および溶媒としてメタノールの存在下、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジン塩の還元により、収率58.5%でドネペジルを製造する別の経路が記載されている(反応式2)。しかしながら、この製造方法において記載されているように、オレフィン結合およびピリジン環のベンジル基の存在下での還元は達成が困難であり、主として脱ベンジル生成物である望ましくない副生成物が生じ、反応が完了するまでの時間もまた24時間と非常に長いものである。
【化3】

【0005】
米国特許第6,252,081号は、触媒として酸化白金、溶媒としてメタノール(15体積)を用いた、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン塩のピリジン環の選択的還元による製造方法を開示している。この製造方法もまた、分離が困難な不純物の形成が生じ、化合物の純度とともに全体の反応収率に影響を及ぼす(反応式3)。
【化4】

【0006】
米国特許第6,649,765号および米国特許出願第20040158070号には、4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンの酢酸およびメタノール(30−40体積)等の混合溶媒中、貴金属酸化物または非酸化貴金属触媒を用いて25−50psiゲージにて還元後、ベンジル化によりドネペジルを合成することが記載されている(反応式4)。
【化5】

【0007】
米国特許出願第20040143121号は、酢酸およびメタノール(15−20体積)等の溶媒の混合物中、触媒として二酸化白金またはPd/Cを用いた、4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンの還元による、ドネペジルの製造方法を開示しており、WO2004082685号は、4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンを出発物質とし、メタノールおよび塩化メチレンの混合物(20−25体積)を溶媒として用いる中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンの製造を介する2工程の還元からなるドネペジルの製造を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術に開示されている製造方法には、複数の反応工程、全体での低い収率、副生成物の形成、高価なまたは有害な試薬の使用など、いくつかの限界があった。さらに、最も一般的な欠点としては、水素化工程における、通常15〜40体積もの非常に大量の溶媒並びに通常10%もの大量の貴金属触媒の使用が挙げられる。水素化工程におけるこのような大量の溶媒の使用には大きな危険が伴う。さらに、取り扱い上の問題だけでなく、その後で大量の溶媒を留去して水素化された生成物を単離しなければならない。従って、水素化反応装置の生産性が大幅に抑えられ、ドネペジルの大量生産におけるボトルネックになっている。溶媒を大量に使用する理由としては、水素化する前の中間体の溶解度が低いことが挙げられる。従って、ドネペジルの大量生産を安全にそしてさらに経済的に実現可能にするための、水素化工程に一般に用いられる溶媒に容易に溶解しうる水素化前の新規な中間体を開発する必要がある。
【0009】
本発明は、このギャップの橋渡しをし、水素化工程における溶媒の過剰な使用を排除し、工業的規模にスケールアップするのに適した新規な製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の主たる態様は、式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造するための、従来技術における制限に対して新規な方法を提供することである。これらのおよびその他の目的は、新規中間体を用いる1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法のいくつかの態様が提供される本発明によって達せられる。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、式(2)の中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を用いる、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を、収率および純度を改善し副生成物の形成を未然に防ぐように製造する新規な方法が提供される。
【0012】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、式(3)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドを用いる、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の新規な製造方法が提供される。
【0013】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、式(6)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドを用いる、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の新規な製造方法が提供される。
【0014】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造において用いる、式(2)の中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法が提供される。この方法は、式(4)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンを酸化してそのN−オキシド誘導体(3)を得、これを還元して式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得ることを含んでなる。
【0015】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、式(4)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンの二重結合を選択的に還元した後、生成した式(5)の還元された中間体を酸化してそのN−オキシド誘導体(6)を得、これをさらに還元して式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得ることによる、式(2)の中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法が提供される。
【0016】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、式(2)の中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩をさらにベンジル化剤で処理して式(1)の最終生成物1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得る、式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法が提供される。
【0017】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、式(3)の新規な水素化前の中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドが提供される。
【0018】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、式(6)の新規な水素化前の中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の開示する態様は、新規中間体の使用による式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法に関する。
【化6】

【0020】
その態様における本発明は、新しい、改善された、経済的で工業的に実現可能なドネペジル(1)の製造方法である。ドネペジル(1)は、鍵となる中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩(2)から製造し、その製造は反応式5に示し、以下を含んでなる:
(a)溶媒中酸化剤を用いて4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジン(4)を酸化してそのN−オキシド誘導体(3)を得;
(b)溶媒中、水素化触媒の存在下でN−オキシド誘導体(3)を還元して4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩(2)を得る。
【0021】
あるいは、4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩(2)は、
(a)4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジン(4)の二重結合を、溶媒中、触媒の存在下で選択的に還元して4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン(5)を得;
(b)4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン(5)を溶媒中酸化剤で処理してそのN−オキシド誘導体(6)を得;
(c)N−オキシド誘導体(6)を溶媒中、水素化触媒の存在下で還元して4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(2)またはその塩を得ることによっても製造される。
【0022】
上記の製造方法はさらに、塩基の存在下、場合により相間移動触媒の存在下、4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩(2)をN−ベンジル化した後、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(1)の製薬的に許容し得る塩を調製することを含んでなる。
【0023】
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジン(4)を溶媒中酸化剤で酸化してそのN−オキシド誘導体(3)を得る。
【0024】
ここで用いられる酸化剤は、過酸(過酢酸、カロ酸、m−クロロペルオキシ安息香酸等)、オキサジリジン、オキシラン(ジメチルジオキシラン(DMD)等)、ペルオキシド(過酸化水素−酢酸、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド(BTSP)等)または有機金属酸化剤(過酸化水素−マンガンテトラキス(2,6−ジクロロフェニル)ポルフィリン、過酸化水素−メチルトリオキソレニウム(MTO)等)、好ましくは過酢酸またはm−クロロペルオキシ安息香酸、からなる群から選択されるがこれらに限定されない。反応は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドおよび水またはその混合物からなる群から選択される溶媒中で行う。反応は、0℃〜85℃の温度で行う。
【0025】
水素化反応に必要な溶媒がこれまで従来技術において報告されている量(15〜40体積)と比較して実質的に少ないので(5〜10体積)、N−オキシド誘導体(3)はその出発物質よりも溶解度が高い。水素化反応における溶媒体積が少ないということは、工業的規模での取り扱いがずっと容易になり、さらに、水素化後の溶媒の回収に必要な時間が実質的に減り、その結果生産性が増大し危険性が減少する。体積の減少により、水素化に必要な触媒の量もまた半分に減る(従来技術(10%w/w)と比較して5%w/wPd/C)。さらに、N−オキシド誘導体は定量的収率で調製するのが非常に容易である。
【0026】
次いで、式(3)の化合物を還元して4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩(2)を得る。通常、還元は触媒の存在下で水素化することにより行うことができる。還元に用いる触媒は、場合により塩酸、酢酸、過塩素酸またはギ酸等の酸の存在下、有機化学の分野で知られている慣用的な水素化触媒、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属またはそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。反応は溶媒またはその混合物中で行う。用いる溶媒は、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール等の低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、酢酸エチルおよびイソプロピルアセテート等のエステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性の非プロトン性溶媒および水またはその混合物からなる群から選択されるがこれに限定されない。水素化は通常の圧力かまたは選択した触媒によって高い圧力で行うことができる。30psi〜200psiの範囲の水素圧で行うことができる。特に、80〜100psiの範囲の水素圧で行うことができる。水素化は、約30℃〜約110℃、例えば約50℃〜約80℃の温度で行うことができる。
【0027】
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩(2)の別の製造法は、式(4)の化合物の二重結合を選択的に還元して、4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン(5)を得ることを含んでなる。
【0028】
通常、式(4)の化合物の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン(5)への還元は、式(4)の化合物のピリジン環を還元しない、触媒の存在下での選択的水素化または炭素−炭素二重結合還元の他の慣用的な手法によって行うことができる。選択的水素化に用いる触媒は、有機化学の分野で知られている穏和な条件下で用いられる慣用的な水素化触媒である。水素化に用いられる触媒の例は、亜鉛−酢酸、Fe−HCl、Raneyニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属またはそれらの誘導体から選択されるがこれに限定されない。貴金属またはそれらの誘導体との反応は、場合により触媒量の過塩素酸等の酸の存在下で行う。反応に用いる溶媒は、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール等の低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、酢酸エチルおよびイソプロピルアセテート等のエステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性の非プロトン性溶媒および水またはその混合物から選択されるがこれに限定されない。水素化は、通常の圧力かまたは選択した触媒によっては高い圧力で行うことができる。20psi〜60psiの範囲の水素圧で行うことができる。特に、20〜30psiの範囲の水素圧で行うことができる。水素化は、約10℃〜40℃の温度で行うことができる。
【0029】
次いで、4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン(5)を溶媒中、酸化剤で酸化して式(6)で示される化合物を得る。用いる酸化剤は、過酸(過酢酸、カロ酸、m−クロロペルオキシ安息香酸等)、オキサジリジン、オキシラン(ジメチルジオキシラン(DMD)等)、ペルオキシド(過酸化水素−酢酸、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド(BTSP)等)または有機金属酸化剤(過酸化水素−マンガンテトラキス(2,6−ジクロロフェニル)ポルフィリン、過酸化水素−メチルトリオキソレニウム(MTO)等)、好ましくは過酢酸またはm−クロロペルオキシ安息香酸、からなる群から選択されるがこれらに限定されない。反応は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドおよび水またはその混合物からなる群から選択される溶媒中で行う。反応は、0℃〜85℃の温度で行う。
【0030】
次いで、式(6)の化合物を還元して4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩(2)を得る。通常、還元は触媒の存在下で水素化することにより行う。還元に用いる触媒は、場合により塩酸、酢酸、過塩素酸またはギ酸等の酸の存在下、有機化学の分野で知られている慣用的な水素化触媒、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属またはそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。反応は溶媒またはその混合物中で行う。用いる溶媒は、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール等の低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、酢酸エチルおよびイソプロピルアセテート等のエステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性の非プロトン性溶媒および水またはその混合物からなる群から選択されるがこれに限定されない。水素化は通常の圧力かまたは選択した触媒によって高い圧力で行うことができる。30psi〜200psiの範囲の水素圧で行うことができる。特に、80〜100psiの範囲の水素圧で行うことができる。水素化は、約30℃〜約110℃、例えば約50℃〜約80℃の温度で行うことができる。
【0031】
次いで、上記のいずれかから調製した式(2)の化合物を、溶媒中、塩基の存在下、場合により相間移動触媒の存在下でベンジル化剤と反応させることによりドネペジル(1)に変換する。用いる塩基は、無機のまたは有機の塩基からなる群からから選択する。無機の塩基はカリウム、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩または重炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムからなる群から選択され、有機の塩基はトリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピコリンまたはルチジンからなる群から選択されるがこれに限定されない。用いるベンジル化剤は、臭化ベンジル、塩化ベンジル、ヨウ化ベンジル、ベンジルメシラートまたはベンジルトシラートからなる群から選択されるがこれに限定されない。
【0032】
用いる相間移動触媒は、アンモニウムベースの相間移動触媒、ホスホニウムベースの相間移動触媒、クラウンエーテルまたはポリエチレングリコール、例えばヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、ジベンゾ−18−クラウン−6、PEG−200またはPEG−400、好ましくはヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI)またはPEG−200からなる群から選択されるがこれに限定されない。用いる溶媒は、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエーテル;塩化メチレン等の塩素化炭化水素;酢酸エチルおよびイソプロピルアセテート等のエステル;アセトンおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン;メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノール等のアルコール;アセトニトリル;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;1,2−ジメトキシエタン;N−メチルピロリドン;スルホラン;水またはその混合物からなる群から選択される。ベンジル化反応は約0℃〜110℃の範囲の温度、例えば約0℃〜約80℃の範囲の温度で行う。特に、約25℃〜約60℃の温度で行うことができる。ベンジル化反応において相間移動触媒を使用するのは主に、完了までの反応時間を短くするためである。また、反応中の副生成物の形成も減少し、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(1)の収率と純度が増大する。
【0033】
1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(1)は、場合により、式2の中間体化合物を単離することなく、式3または6の化合物の水素化反応から得た反応混合物から直接調製することができる。このためには、最初に反応混合物を濾過して水素化触媒を除去した後、濾液を、溶媒中塩基およびベンジル化剤でさらに処理して1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(1)を得る。
【0034】
次いで、1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(1)を、アルコール、脂肪族エーテルまたはその混合物等の溶媒の存在下塩酸で処理して、ドネペジル塩酸塩としてその医薬上許容される塩に変換する。最も好ましくは、溶媒は、メタノール、エタノール、ジエチルエーテルまたはジイソプロピルエーテルなどから選択される。
【0035】
結論として、これは、安価に入手可能な原料を用いた、ドネペジルの工業的生産のための新規で経済的で高収率の製造方法である。
【0036】
以下の非限定的な実施例により本発明の具体的な態様を説明する。但し、これら実施例は、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【実施例】
【0037】
実施例1
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジン(4)の製造:
トルエン(120ml)中の5,6−ジメトキシ−インダン−1−オン(10g)、ピリジン−4−カルボキシアルデヒド(7.8g)、p−トルエンスルホン酸(13.8g)の混合物を6時間共沸還流した。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。得られた湿った固体を10%炭酸ナトリウム水溶液と共に攪拌した。固体を濾過し、アセトンで洗浄した後、乾燥して表題化合物(13.2g)を得た。
【0038】
実施例2
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシド(3)の製造:
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジン(2.5g)を塩化メチレン(60ml)に溶解し、冷却した。m−クロロペルオキシ安息香酸(2.0g)を反応混合物に加えた後、4時間攪拌した。得られた固体を濾過した。得られた湿った固体を10%炭酸水素ナトリウム水溶液とともに攪拌した。固体を濾過し、アセトンで洗浄した後、乾燥して表題化合物(2.5g)を得た。
IR (KBr, cm-1): 3434, 2914, 1685, 1628, 1606, 1503, 1310, 1259, 1231, 1182, 1168, 1128, 1086, 1000, 819.
1H-NMR (400MHz, CDCl3, δppm): 3.95 (s, 2H, C3-H), 3.96 (s, 3H, C11-H), 4.01 (s, 3H, C10-H), 6.98 (s, 1H, C4-H), 7.34 (s, 1H, C7-H), 7.42 (m, 1H, C12-H), 7.50 (m, 2H, C14-HおよびC15-H), 8.24 (m, 2H, C16-HおよびC17-H).
13C-NMR (400MHz, CDCl3, δppm): 31.97, 56.23, 56.34, 105.17, 106.9, 126.67, 126.91, 130.67, 138.78, 139.45, 144.36, 150.03, 156.07,および192.01.
MS:298 (M+1)+.
【0039】
実施例3
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(2)の塩酸塩の製造:
メタノール(50ml)および塩化メチレン(50ml)中の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシド(10g)を濃塩酸(1.18g)およびパラジウム活性炭(0.5g)の存在下で水素化した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、得られた残留物を溶媒から結晶化して表題化合物(9.5g)を得た。
【0040】
実施例4
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン(5)の製造:
メタノールおよびジクロロメタン(1:1)中の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジン(50g)をパラジウム炭素(5g)および触媒量の過塩素酸の存在下、室温にて0.5kgの圧力にて水素化した。溶媒を減圧下で留去し、残留物を酢酸エチル(500ml)にとり、水(50ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で留去して生成物を得た。収量49g。
【0041】
実施例5
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシド(6)の製造:
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジン(1.2g)を塩化メチレン(18ml)に溶解し冷却した。m−クロロペルオキシ安息香酸(0.9g)を反応混合物に加えた後、4時間攪拌した。反応物を10%炭酸水素ナトリウム水溶液と共に攪拌した。有機層を分離し、50mlの水で洗浄した。有機層を蒸留して標題の化合物を得た(1.2g)。
IR (KBr, cm-1): 3574, 3369, 3527, 3101, 2930, 1680, 1603, 1589, 1502, 1481, 1437, 1422, 1308, 1266, 1228, 1181, 1124, 1048, 1010, 796.
1H-NMR (400MHz, CDCl3, δppm): 3.02 (m, 1H, C2-H), 2.68, 3.07 (dd, 4H, C3-HおよびC12-H), 3.79 (s, 3H, C11-H), 3.84 (s, 3H, C10-H), 7.05 (s, 1H, C4-H), 7.07 (s, 1H, C7-H), 7.34 (m, 2H, C14-HおよびC15-H), 8.13 (m, 2H, C16-HおよびC17-H).
13C-NMR (400MHz, CDCl3, δppm): 31.65, 34.97, 47.71, 56.12, 56.45, 104.43, 108.68, 127.45, 129.29, 138.56, 138.74, 149.20, 149.70, 155.94および205.35.
MS: 300 (M+1)+, 322 (M++23).
【0042】
実施例6
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(2)の塩酸塩の製造:
メタノール(100ml)中の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシド(10g)を濃塩酸(1.18g)およびパラジウム活性炭(1g)の存在下で水素化した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、得られた残留物をアセトンから結晶化して表題化合物(9.5g)を得た。
【0043】
実施例7
1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(1)の製造:
4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジン(4g)をアセトン(60ml)に溶解した。これに、塩化ベンジル(1.92g)、炭酸カリウム(2.28g)および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI)を加えた。反応混合物を60℃に加熱し、TLCにより反応をモニターした。反応が完了したら溶媒を蒸留により除去し、残留物を水に溶解し、酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機の抽出物を濃塩酸で酸性化した。溶媒を減圧下で留去して残留物として塩を得た。収量5.14g。
【0044】
KBrペレットを用いてThermo Nicolet FT-IR分光器にて赤外吸収測定を行い、吸収をセンチメートルの逆数で示した。1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルを400MHz NMR分光器にて記録した。質量分析は、ESI法を用い、Thermo Finnigan LCQ Advantage Maxにて記録した。
【0045】
当業者は、特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲から逸脱することなく、開示された発明の特定の修飾や改善を想到するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規中間体を用いた式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法であって、
(a)式(4)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンを溶媒の存在下で酸化剤を用いて酸化して、式(3)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドを得、
(b)式(3)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドを溶媒中、水素化触媒の存在下で還元して式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得、
(c)式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を塩基および溶媒の存在下で、場合により相間移動触媒の存在下、ベンジル化剤で処理して式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得る
ことを含んでなる製造方法。
【請求項2】
新規中間体を用いた式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法であって、
(a)式(4)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンの二重結合を、溶媒中、触媒の存在下で選択的に還元して式(5)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンを得、
(b)式(5)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンを溶媒の存在下、酸化剤で処理して、式(6)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドを得、
(d)式(6)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドを溶媒中、水素化触媒の存在下で還元して式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得、
(e)式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を塩基および溶媒の存在下、場合により相間移動触媒の存在下、ベンジル化剤で処理して式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得る
ことを含んでなる製造方法。
【請求項3】
酸化剤が、過酸、オキシラン、ペルオキシドまたは有機金属試薬からなる群から選択される請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
酸化剤が、過酢酸、カロ酸、m−クロロペルオキシ安息香酸、オキサジリジン、ジメチルジオキシラン(DMD)、過酸化水素−酢酸、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド(BTSP)、過酸化水素−マンガンテトラキス(2,6−ジクロロフェニル)ポルフィリン、過酸化水素−メチルトリオキソレニウム(MTO)からなる群から選択される請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
使用する溶媒が、1〜4個の炭素原子を有する低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、アセトニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒および水またはその混合物からなる群から選択される、請求項1のステップ(a)または請求項2のステップ(b)に記載の製造方法。
【請求項6】
水素化触媒が、貴金属またはそれらの誘導体から選択される請求項1または2記載の製造方法。
【請求項7】
使用する溶媒が、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール等の低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、酢酸エチルおよびイソプロピルアセテート等のエステル;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性の非プロトン性溶媒および水またはその混合物からなる群から選択される、請求項1のステップ(b)または請求項2のステップ(c)に記載の製造方法。
【請求項8】
ベンジル化剤が、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、ベンジルメシラートまたはベンジルトシラートからなる群から選択される、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項9】
塩基が無機の塩基または有機の塩基である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項10】
無機の塩基が、アルカリ金属の炭酸塩または重炭酸塩からなる群から選択される請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
アルカリ金属が、カリウム、ナトリウムまたはリチウムから選択される請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
有機の塩基が、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピコリンまたはルチジンからなる群から選択される、請求項9記載の製造方法。
【請求項13】
相間移動触媒が、アンモニウムベースの相間移動触媒、ホスホニウムベースの相間移動触媒、クラウンエーテルまたはポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項14】
相間移動触媒が、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、ジベンゾ−18−クラウン−6、PEG−200またはPEG−400から選択される、請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
溶媒がエーテル、アルコール、塩素化炭化水素、エステル、ケトン、炭化水素、極性の非プロトン性溶媒および水またはその混合物の1以上を含んでなる、請求項1のステップcまたは請求項2のステップdに記載の製造方法。
【請求項16】
触媒が、触媒量の酸の存在下、Zn/CH3COOH、Fe/HClまたはRaneyニッケルまたは貴金属例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項2のステップ(a)記載の製造方法。
【請求項17】
使用する溶媒が、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール等の低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、酢酸エチルおよびイソプロピルアセテート等のエステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性の非プロトン性溶媒および水またはその混合物からなる群から選択される、請求項2のステップ(a)記載の製造方法。
【請求項18】
式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造するための、式(3)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシド。
【請求項19】
式(4)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンを溶媒の存在下で酸化剤を用いて酸化することを含んでなる、式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造するための式(3)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドの製造方法。
【請求項20】
式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造するための、式(6)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシド。
【請求項21】
式(5)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンを溶媒の存在下で酸化剤を用いて酸化することを含んでなる、式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造するための式(6)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドの製造方法。
【請求項22】
酸化剤が、過酢酸、カロ酸、m−クロロペルオキシ安息香酸、オキサジリジン、ジメチルジオキシラン(DMD)、過酸化水素−酢酸、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド(BTSP)、過酸化水素−マンガンテトラキス(2,6−ジクロロフェニル)ポルフィリン、過酸化水素−メチルトリオキソレニウム(MTO)からなる群から選択される、請求項19〜21のいずれかに記載の製造方法。
【請求項23】
使用する溶媒が1〜4個の炭素原子を有する低級アルコール、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、アセトニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒および水またはその混合物からなる群から選択される請求項19〜21のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造するための、式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法であって、
(a)式(4)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンを溶媒の存在下、酸化剤を用いて酸化して式(3)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドを得ること、
(b)式(3)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドを溶媒中、水素化触媒の存在下で還元して式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得ること
を含んでなる製造方法。
【請求項25】
式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造のための、式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩の製造方法であって、
(a)式(4)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンの二重結合を、溶媒中、触媒の存在下で選択的に還元して式(5)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンを得ること、
(b)式(5)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンを溶媒の存在下、酸化剤で処理して式(6)の新規中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドを得ること、
(c)式(6)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドを、溶媒中、水素化触媒の存在下で還元して式(2)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得ること
を含んでなる方法。
【請求項26】
式(2)の中間体4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンを単離することなく、式(3)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドまたは式(6)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドから、式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を製造する方法であって、
(a)式(3)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イリデン)メチル]ピリジンN−オキシドまたは式(6)の4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピリジンN−オキシドを溶媒中、水素化触媒の存在下で還元すること、
(b)反応混合物から水素化触媒を除去すること、
(c)ステップ(b)で得た反応混合物を、溶媒中ベンジル化剤および塩基で、場合により相間移動触媒の存在下で還元して式(1)の1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン−2−イル)メチル]ピペリジンまたはその塩を得ることを含んでなる方法。

【公表番号】特表2008−526729(P2008−526729A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548972(P2007−548972)
【出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【国際出願番号】PCT/IN2004/000433
【国際公開番号】WO2006/070396
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506343313)ジュビラント・オルガノシス・リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】JUBILANT ORGANOSYS LIMITED
【Fターム(参考)】