説明

新規アミド塩およびその利用

【課題】 所定構造のアニオンを有するアミド塩を提供すること。
【解決手段】 本発明によると、下記式(1)で表されるアミド塩が提供される。
【化1】


上記式(1)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にパーフルオロアルキルエーテル鎖を有するパーフルオロ基であって、例えば炭素数2〜5のパーフルオロアルキルエーテル基である。また、上記式(2)中のRf2はエーテル結合を含んでもよいパーフルオロ基であって、例えばトリフルオロメチル基である。Y+は水素イオン以外のカチオンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子にスルホニル基およびカルボニル基がそれぞれ結合した構造のアニオンを有する塩(アミド塩)に関する。また本発明は、かかるアミド塩の製造方法に関する。このようなアミド塩は、例えば、各種蓄電素子の電解質等に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
常温域で液状を呈する塩(以下、「常温溶融塩」ともいう。)を構成し得るアニオンとして、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[-N(SO2CF32、以下「TFSI」ともいう。]が知られている。かかるアニオンを有する常温溶融塩の代表例として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI)とTFSIとの塩が挙げられる。
また、下記特許文献1には、窒素原子にスルホニル基およびカルボニル基がそれぞれ結合した構造のアミドアニオンを有するオニウム塩が記載されている。そのようなアミドアニオンの例として、2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルホニル)アセトアミドアニオン[-N(COCF3)(SO2CF3)]が記載されている。これは、TFSIに含まれる二つのトリフルオロメタンスルホニル基(SO2CF3)のうち一方をトリフルオロメタンカルボニル基(COCF3)に変更した化学構造に相当するアニオンである。このような非対称アミドアニオンのオニウム塩は、対応する対称アニオンの塩に比べて、より低融点のものとなり得るとされている。窒素原子にスルホニル基およびカルボニル基が結合した構造のアニオンを有する塩に関する他の従来技術文献として、下記特許文献2および3が挙げられる。
【特許文献1】特開2003−201272号公報
【特許文献2】特開2002−75443号公報
【特許文献3】国際公開第03/012900号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、窒素原子にスルホニル基(−SO2−)およびカルボニル基(−CO−)がそれぞれ結合した構造のアニオンを有するタイプの塩に関し、その特性(例えば、電気化学的安定性、イオン伝導度、融点の低さ、粘度の低さ等のうち一または二以上の特性)を改善することができれば有益である。
本発明は、窒素原子にスルホニル基およびカルボニル基が結合した構造のアニオンを有する新規な塩(アミド塩)を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、かかるアミド塩の製造方法を提供することである。また、そのようなアミド塩を製造するための原料(中間体)として好適な新規アミドおよびその製造方法を提供することである。本発明のさらに他の目的は、上記アミド塩を含む電解質および該電解質を備えた蓄電素子(電池、キャパシタ等)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、下記式(1)で表されるアミド塩が提供される。
【化1】

【0005】
上記式(1)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。なお、本明細書中では、いずれかの有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基を、該有機基の名称に「パーフルオロ」を付して表すことがある。例えば、「アルキル基」に対して、その全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基を「パーフルオロアルキル基」ということがある。また、このように有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基を「パーフルオロ基」と総称することもある。同様に、アルキル鎖の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた構造部分を「パーフルオルアルキル鎖」ということがある。したがって、上記式(1)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むパーフルオロアルキル鎖(これを「パーフルオロアルキルエーテル鎖」という。)を有するパーフルオロ基であり得る。
ここに開示されるアミド塩におけるRf1の典型例としては、エーテル結合を含むパーフルオロアルキル基が挙げられる。例えば、メトキシメチル基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(CF3OCF2−)は、エーテル結合を含むパーフルオロアルキル基(これを「パーフルオロアルキルエーテル基」という。)の一例である。
上記式(1)中のRf2は、一価の有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(すなわちパーフルオロ基)である。このRf2は、エーテル結合を含むパーフルオロ基であり得る。また、Rf2はエーテル結合を含まないパーフルオロ基であり得る。ここに開示されるアミド塩におけるRf2の典型例としては、エーテル結合を含まないアルキル基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(すなわち、パーフルオロアルキル基)が挙げられる。
【0006】
上記式(1)中のY+は、水素イオン以外の一価のカチオンである。このY+は、無機のカチオンであり得る。例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属のカチオンであり得る。
【0007】
また、上記カチオン(Y+)は有機のカチオンであり得る。例えば、窒素(N)、硫黄(S)、酸素(O)およびリン(P)から選択される少なくとも一つの元素を含む一価の有機カチオン(いわゆる有機化合物のカチオンをいう。以下同じ。)であり得る。また、上記以外の元素であって中性状態において孤立電子対を有する元素の少なくとも一個から成る有機カチオンであってもよい。
本発明におけるY+は、それぞれ置換基を有してもよいイミダゾリウムイオン(イミダゾール骨格を備えるカチオンをいう。以下同じ。)、チアゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、イソオキサゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンおよびスルホニウムイオンからなる群から選択されるいずれかのカチオンであり得る。例えば下記式(3)〜(7),(9)で表されるいずれかの有機カチオンであり得る。
【0008】
すなわち、Y+は下記式(3)で表される有機カチオンであり得る。
【化2】

ここで、上記式(3)中のR11〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R11〜R15のうち二つ以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。
【0009】
上記式(3)で表されるカチオンの好ましい一つの態様では、前記式(3)中のR11〜R15は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜10の置換(例えばハロゲン置換)または無置換のアルキル基から選択され得る。他の一つの好ましい態様では、前記式(3)中のR11〜R15のうち、R11およびR13はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基から選択され、他は(すなわちR12,R14およびR15は)それぞれ独立に水素原子および炭素数1〜4のアルキル基から選択され得る。例えば、R11〜R13がそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基から選択され、他はそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜4のアルキル基から選択された構造のカチオンであり得る。R11〜R14がそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基から選択され、R15が水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であるカチオンであってもよい。さらに、R11〜R15の全てがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基から選択されるカチオンであってもよい。
【0010】
また、Y+は下記式(4)で表される有機カチオンであり得る。
【化3】

ここで、上記式(4)中のR21〜R26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R21〜R26のうち二つ以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。
【0011】
また、Y+は下記式(5)で表される有機カチオンであり得る。
【化4】

ここで、上記式(5)中のR31〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R31〜R34のうち二つ以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。
【0012】
また、Y+は下記式(6)で表される有機カチオンであり得る。
【化5】

ここで、上記式(6)中のR41〜R44は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R41〜R44のうち二つ以上が相互に結合して非芳香族性の環を形成していてもよい。
【0013】
また、Y+は下記式(7)で表される有機カチオンであり得る。
【化6】

ここで、上記式(7)中のR43およびR44は、それぞれ独立に、エーテル結合を含むまたは含まない炭素数1〜10の置換(例えばハロゲン置換)または無置換のアルキル基であり得る。pは、化学結合または炭素数1のアルキレン基であり得る。
【0014】
好ましい一つの態様では、前記式(7)中のR43およびR44のうち一方または両方が、下記式(8):
−R1−O(−R2−O)m−R3 (8);
で表される基である。ここで、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜3の置換または無置換のアルキレン基であり得る。R3は炭素数1〜5の置換または無置換のアルキル基であり得る。mは0〜2であり得る。上記式(8)中に複数のR2が含まれる場合、それらのR2は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0015】
また、Y+は下記式(9)で表される有機カチオンであり得る。
【化7】

ここで、上記式(9)中のR51〜R53は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R51とR52とは相互に結合して非芳香族性の環を形成していてもよい。
【0016】
このような有機カチオンと上記アニオン[-N(CORf1)(SO2Rf2)]との塩は、例えば、少なくとも約30℃において液状の塩(すなわち、融点が凡そ30℃以下の塩)であり得る。また、融点が凡そ20℃以下の塩であり得る。さらに、融点が凡そ0℃以下(さらには−20℃以下)の塩であり得る。ここに開示されるアミド塩の好適な一例は、上記式(1)におけるY+が有機カチオンであって、常温付近の温度域(常温域)で液状のアミド塩である。ここで「常温域」とは、例えば、上限が凡そ80℃(典型的には凡そ60℃、場合によっては凡そ40℃)であり、下限が凡そ−20℃(典型的には凡そ0℃、場合によっては凡そ20℃)である温度域をいう。ここに開示されるアミド塩は、かかる温度域の少なくとも一部の範囲で、その少なくとも一部が液状(溶融状態)を呈するアミド塩であり得る。例えば、少なくとも凡そ20〜40℃(より好ましくは凡そ0〜60℃、さらに好ましくは凡そ−20〜+80℃)の温度域で、その少なくとも一部(好ましくは全部)が液状(溶融状態)の状態を維持し得るアミド塩が好ましい。
【0017】
本発明によると、下記式(10)で表されるアミド塩を製造する方法が提供される。
【化8】

ここで、上記式(10)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Y+は水素イオン以外のカチオンであり得る。
そのアミド塩製造方法では、次式(11):(Rf1CO)2O;で表される酸無水物と、次式(12):Y+ -NH(SO2Rf2);で表されるスルホンアミド塩とを反応させる。ここで、上記式(11)および(12)中におけるRf1,Y+およびRf2は、それぞれ上記式(10)中のRf1,Y+およびRf2と同じである。
【0018】
また、本発明によると、下記式(13)で表されるアミド塩を製造する方法が提供される。
【化9】

ここで、上記式(13)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Y+は金属のカチオンである。
そのアミド塩製造方法では、下記式(14):
Rf1COX (14);
で表される酸ハロゲン化物と、下記式(15):
+ -N(Si(R43)(SO2Rf2) (15);
で表されるシリルスルホンアミド塩とを反応させる。ここで、上記式(14)および(15)中のRf1,Y+およびRf2は、それぞれ上記式(13)中のRf1,Y+およびRf2と同じである。Xはハロゲン原子であり得る。R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基であり得る。
【0019】
また、本発明によると、下記式(16)で表されるアミド塩を製造する方法が提供される。
【化10】

ここで、上記式(16)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Y+は水素イオン以外のカチオンである。
そのアミド塩製造方法では、下記式(17):
【化11】

(Rf1およびRf2は、それぞれ、式(16)中のRf1およびRf2と同じである。);
で表されるアミドと、下記式(18):
+ -OCOA (18);
で表される化合物とを反応させる。ここで、上記式(18)中のAは、置換または無置換のアルキル基、ヒドロキシ基、および−O-+基からなる群から選択される基であり得る。Y+は、上記式(16)中のY+と同じである。
ここに開示される製造方法の好ましい態様では、Y+がアルカリ金属のカチオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)である。他の好ましい態様では、上記式(18)で表される塩が炭酸塩および/または炭酸水素塩である。
【0020】
また、本発明によると、下記式(19)で表されるアミド塩を製造する方法が提供される。
【化12】

ここで、上記式(19)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基(パーフルオロ基)であり得る。Y+は有機カチオンである。
そのアミド塩製造方法では、下記式(20):
【化13】

(Rf1およびRf2は、それぞれ、式(19)中のRf1およびRf2と同じである。Y+は金属のカチオンである。);
で表されるアミド塩と、下記式(21):
+ -B (21);
で表される化合物とを反応させる。ここで、上記式(21)中のY+は、上記式(19)中のY+と同じである。-Bは無機または有機のアニオンであり得る。
【0021】
さらに、本発明によると、下記式(22)で表されるアミドが提供される。
【化14】

ここで、上記式(22)におけるRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基であり得る。例えば、エーテル結合を含む炭素数2〜10(好ましくは2〜5)のパーフルオロアルキル基であり得る。ここに開示されるアミドの好ましい一つの態様では、Rf1が、下記式(23):
−Rf3−O(−Rf4−O)n−Rf5 (23);
で表される基である。式(23)中のRf3およびRf4は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基であり得る。Rf5は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり得る。nは0〜2の数であり得る。上記式(23)中に複数のRf4が含まれる場合、それらのRf4は同一であってもよく異なっていてもよい。
また、上記式(22)におけるRf2は、エーテル結合を含むまたは含まない有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基であり得る。Rf2の好適例としては、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)が挙げられる。
このようなアミドは、例えば、上記式(18)で表される化合物と反応させて上記式(16)で表されるアミド塩を製造する上記方法に使用するアミドとして好適である。換言すれば、アミド塩製造用の原料(中間体)として有用である。
【0022】
本発明によると、下記式(24)で表されるアミドを製造する方法が提供される。
【化15】

ここで、上記式(24)中のRf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基(典型的には炭化水素基)の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基であり得る。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基であり得る。
そのアミド製造方法では、下記式(25):
【化16】

(Rf1およびRf2は、それぞれ、式(24)中のRf1およびRf2と同じである。Y+は水素イオン以外のカチオンである。);
で表されるアミド塩と酸(好ましくは強酸、例えば硫酸)とを反応させる。
【0023】
かかる方法により製造されたアミドは、例えば、上記式(18)で表される化合物と反応させて上記式(16)で表されるアミド塩を製造する上述方法に使用するアミドとして好適である。
また、上記式(1)で表されるアミド塩は、上述したいずれかのアミド塩製造方法を単独であるいは適宜組み合わせて実施することにより好適に製造され得る。あるいは、上述したいずれかのアミド塩製造方法とアミド製造方法とを適宜組み合わせて実施することにより好適に製造され得る。
【0024】
本発明によると、上述したアミド塩の一種または二種以上を含む電解質が提供される。そのような電解質の一好適例として、上記式(1)におけるY+が有機カチオンである一種または二種以上のアミド塩を含む電解質が挙げられる。ここに開示される電解質の一つの好ましい態様では、該電解質が、Y+が有機カチオンであって、上記常温域の少なくとも一部において液状(溶融状態)のアミド塩を主成分とする。例えば、少なくとも約30℃(より好ましくは約20℃、さらに好ましくは約0℃、特に好ましくは−20℃)において液状のアミド塩を主成分とすることが好ましい。
ここに開示される電解質は、そのような液状アミド塩に加えて、無機または有機のリチウム塩を含有することができる。そのリチウム塩は、上記式(1)におけるY+がリチウムイオン(Li+)であるアミドリチウム塩であり得る。かかるリチウム塩を含有する電解質であって、常温域で液状の電解質が好ましい。例えば、少なくとも約30℃(より好ましくは約20℃、さらに好ましくは約0℃、特に好ましくは−20℃)において液状の電解質が好ましい。そのような電解質の好ましい一つの態様は、Y+が有機カチオンであって上記常温域の少なくとも一部において液状のアミド塩(媒体)に、上記アミドリチウム塩(支持塩)が溶解している液状電解質である。
【0025】
また、本発明によると、上述したいずれかの電解質を備える蓄電素子が提供される。ここで「蓄電素子」とは、各種の電気化学電池(一次電池および二次電池を含む。例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等が挙げられる。)およびキャパシタ(例えば、電気二重層キャパシタ等が挙げられる)の双方を包含する概念である。本発明によると、上述したいずれかの電解質を備えるリチウムイオン二次電池が提供される。かかる電池の一つの好ましい態様では、該電池が常温域で液状の電解質を備える。例えば、少なくとも約30℃(好ましくは約20℃、より好ましくは約0℃、特に好ましくは約−20℃)において液状の電解質を備えることが好ましい。
【0026】
ここに開示される発明の側面は、上述したアミド塩の一種または二種以上を含むイオン伝導材料である。上記常温域で液状のイオン伝導材料であることが好ましい。そのようなイオン伝導材料は、例えば、蓄電素子その他の各種電気化学デバイスの構成要素として利用され得る。また、太陽電池等の光化学電池、燃料電池等の発電装置等の電解質またはその構成成分として利用され得る。
また、ここに開示される発明のさらに他の側面は、上述したアミド塩の一種または二種以上を含む媒体である。上記常温域で液状の媒体であることが好ましい。このような媒体は、例えば、不燃性溶媒、不揮発性溶媒等として、各種の用途に好ましく利用され得る。例えば、非水系電池(リチウムイオン二次電池等)の電解質において支持塩(リチウム塩等)を溶解させる溶媒(電解質用媒体)として有用なものとなり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0028】
<アニオン成分について>
上記式(1)で表されるアミド塩は、-N(CORf1)(SO2Rf2)で表されるアニオン成分を含む。このアニオン成分は、一つの窒素原子(N)に、スルホニル基(−SO2−)およびカルボニル基(−CO−)がそれぞれ結合した構造を有する。上記カルボニル基には、エーテル結合を含むパーフルオロ基(典型的にはパーフルオロ炭化水素基)Rf1が結合している。上記スルホニル基には、エーテル結合を含むまたは含まないパーフルオロ基(典型的にはパーフルオロ炭化水素基)Rf2が結合している。このように、上記アニオン成分は、窒素原子に結合しているスルホニル基およびカルボニル基がいずれもパーフルオロ基を有する。
【0029】
上記カルボニル基(−CO−)に結合しているパーフルオロ基(Rf1)は、その化学構造の少なくとも一部に、一または二以上のエーテル結合を含むパーフルオロアルキル鎖(パーフルオロアルキルエーテル鎖)を有する。すなわちRf1は、一または二以上のエーテル結合(C−O−C結合)が導入されたパーフルオロアルキル鎖を含む構造を有する(したがって、このパーフルオロアルキル鎖の炭素数は2以上であり、Rf1は炭素数2以上のパーフルオロアルキル基である。)。このパーフルオロアルキルエーテル鎖は、開鎖状であってもよく、環構造を形成していてもよい。ここで「開鎖状」とは、特記しない場合には、分岐を有しない開鎖状(直鎖状)および分岐を有する開鎖状(分岐鎖状)の双方を含む概念である。開鎖状(すなわち、直鎖状または分岐鎖状)のパーフルオロアルキルエーテル鎖を有するRf1が好ましい。該パーフルオロアルキルエーテル鎖は、他の置換基を有することができる。例えば、パーフルオロアルキル基以外のパーフルオロ炭化水素基(例えば、パーフルオロビニル基のような不飽和のパーフルオロ炭化水素基、パーフルオロフェニル基やパーフルオロベンジル基のような芳香環を有するパーフルオロ炭化水素基等)、フッ素および炭素以外の元素(例えばO,N,S,P等)を含むパーフルオロ基等の置換基を有するパーフルオロアルキルエーテル鎖であり得る。Rf1に含まれるパーフルオロアルキルエーテル鎖として特に好ましいものは、他の置換基を有しない開鎖状のパーフルオロアルキルエーテル鎖である。
【0030】
上記式(1)で表されるアミド塩を構成するアニオンは、このようなパーフルオロアルキルエーテル鎖がカルボニル基に直接結合している構造のアニオンであり得る。また、かかるパーフルオロアルキルエーテル鎖が他のパーフルオロ基を介してカルボニル基に結合していてもよい。例えば、上記パーフルオロアルキルエーテル鎖が、パーフルオロ炭化水素基(例えば、パーフルオロビニレン基のような不飽和のパーフルオロ炭化水素基、パーフルオロフェニレン基のような芳香族性のパーフルオロ炭化水素基等)を介してカルボニル基に結合している構造のアニオンであり得る。また、上記パーフルオロアルキルエーテル鎖が、フッ素および炭素以外の元素(例えばO,N,S,P等)を含むパーフルオロ基を介してカルボニル基に結合している構造のアニオンであり得る。ここに開示されるアミド塩を構成するアニオンとして好ましい一例は、パーフルオロアルキルエーテル鎖がカルボニル基に直接結合している(すなわち、Rf1がパーフルオロアルキルエーテル基である)構造のアニオンである。他の置換基を有しないパーフルオロアルキルエーテル基が好ましい。また、直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキルエーテル基が好ましい。
【0031】
Rf1に含まれる炭素原子の合計数(炭素数)は、例えば2〜16であり得る。該炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。Rf1に含まれるエーテル結合の数は、例えば1〜5であり得る。該エーテル結合の数が1〜3であることが好ましい。Rf1の好適例としては、上記炭素数およびエーテル結合の数を満たし、直鎖状または分岐鎖状であって、他の置換基を有しないパーフルオロアルキルエーテル基が挙げられる。
【0032】
上記Rf1は、下記式(2):
−Rf3−O(−Rf4−O)n−Rf5 (2);
で表されるパーフルオロアルキルエーテル基であり得る。ここで、Rf3およびRf4は、それぞれ独立に、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキレン基であり得る。Rf5は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であり得る。nは0〜4(好ましくは0〜2)の数であり得る。上記式(2)中に複数のRf4が含まれる場合、それらのRf4は同一であってもよく異なっていてもよい。Rf3,Rf4およびRf5は、いずれも、他の置換基を有しないことが好ましい。
【0033】
ここに開示されるアミド塩の好適な態様では、上記Rf1が、−CF2OCF3,−CF2OCF2CF3,−CF2OCF2CF2CF3,−CF2CF2OCF3,−CF2CF2OCF2CF3,−CF2CF2CF2OCF3,−CF2OCF2CF2OCF3,−CF2CF2OCF2CF2OCF3,−CF(CF3)OCF3,−CF(CF3)OCF2CF3,−CF(CF3)OCF2CF2CF3,および−C(CF32OCF3、からなる群から選択されるいずれかである。これらのうち、より好ましいRf1としては、−CF2OCF3,−CF2OCF2CF3,−CF2CF2OCF3,−CF2CF2OCF2CF3,−CF2CF2CF2OCF3,−CF2OCF2CF2OCF3,−CF2CF2OCF2CF2OCF3,−CF(CF3)OCF3,−CF(CF3)OCF2CF3,および−CF(CF3)OCF2CF2CF3が挙げられる。特に好ましいRf1として、−CF2OCF3,−CF2OCF2CF3,−CF2CF2OCF3,−CF2OCF2CF2OCF3,および−CF(CF3)OCF2CF2CF3が挙げられる。
【0034】
一方、上記スルホニル基(−SO2−)に結合しているパーフルオロ基(Rf2)は、エーテル結合を含むまたは含まないパーフルオロ炭化水素基であり得る。例えば、エーテル結合を含むまたは含まないパーフルオロアルキル基であり得る。そのパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルキルエーテル基は、開鎖状であってもよく、環構造を形成していてもよい。開鎖状(直鎖状または分岐鎖状)のパーフルオロアルキル基が好ましい。該パーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルキルエーテル基は、他の置換基を有してもよく有しなくてもよい。他の置換基を有する場合、その置換基は、パーフルオロアルキル基以外のパーフルオロ炭化水素基、フッ素および炭素以外の元素(例えばO,N,S,P等)を含むパーフルオロ基等の置換基を有するパーフルオロアルキル基であり得る。他の置換基を有しないパーフルオロアルキル基が好ましい。例えば、エーテル結合を含まず他の置換基も有しない直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0035】
Rf2に含まれる炭素原子の合計数(炭素数)は、例えば1〜10であり得る。該炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。Rf2の好適例としては、上記炭素数を満たし、直鎖状または分岐鎖状(より好ましくは直鎖状)であって、他の置換基を有しないパーフルオロアルキル基が挙げられる。そのようなパーフルオロアルキル基の具体例としては、−CF3,−CF2CF3,−CF2CF2CF3,−CF2(CF22CF3,および,−CF2(CF24CF3が挙げられる。これらのうち好ましいものとして、−CF3,−CF2CF3,および−CF2CF2CF3が挙げられる。Rf2が−CF3であることが特に好ましい。
【0036】
<カチオン成分について>
上記式(1)で表されるアミド塩は、Y+で表されるカチオン成分を含む。該カチオン成分は、無機カチオンであってもよく、有機カチオンであってもよい。例えば、窒素(N)、硫黄(S)、酸素(O)およびリン(P)から選択される少なくとも一つの元素を含む一価の有機カチオンであり得る。例えば、該カチオン中に含まれる上記元素(N,S,OおよびPのいずれか)のうち少なくとも一つに、一または二以上の有機基が結合した構造の有機カチオンであり得る。そのような有機基の一つの好適例としては、炭素数が1〜10(好ましくは1〜6)であって、エーテル結合を含むまたは含まない、開鎖状(例えば直鎖状)のアルキル基が挙げられる。また、上記カチオン成分は、N,S,OおよびP以外の元素であって中性状態において孤立電子対を有する元素の少なくとも一個から成る有機カチオンであってもよい。
【0037】
[イミダゾリウムイオン類]
+の一好適例として、上記式(3)で表されるイミダゾリウムイオンが挙げられる。上記R11〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R11〜R15のうち二つ以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。この場合、これらの基が酸素原子を介在して環構造を形成してもよく、酸素原子を介在しないで(すなわち非介在で)環構造を形成してもよい。典型的には、イミダゾール環を構成する窒素原子の少なくとも一方が炭素数1〜10の有機基を有する。換言すれば、R11およびR13の少なくとも一方(好ましくは両方)が炭素数1〜10の有機基である。
【0038】
11〜R15のいすれかがハロゲン原子である場合、該ハロゲン原子は、F,Cl,BrおよびIからなる群から選択され得る。また、R11〜R15のいずれかが上記有機基である場合、該有機基は、エーテル結合を含むまたは含まない炭化水素基であり得る。該炭化水素基は、開鎖状であってもよく、環構造を形成していてもよい。また、該炭化水素基は飽和および不飽和のいずれでもよい。該炭化水素基が環構造を形成している場合、その環は芳香族性であってもよく非芳香族性であってもよい。該炭化水素基は、その水素原子の一部または全部がハロゲン原子(例えば、F,Cl,BrおよびIからなる群から選択される一種または二種以上のハロゲン原子)で置換されていてもよい。そのようなハロゲン置換炭化水素基の例としては、部分的にフッ素原子で置換された、エーテル結合を含むまたは含まないフルオロアルキル基が挙げられる。他の例としては、全フッ素置換された、エーテル結合を含むまたは含まないフルオロアルキル基(すなわち、エーテル結合を含むまたは含まないパーフルオロアルキル基)が挙げられる。
【0039】
上記式(3)で表されるカチオンの好適例では、R11〜R15が、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基から選択され得る。該アルキル基は、開鎖状であってもよく環構造を形成していてもよい。開鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。該アルキル基が置換基を有するアルキル基(すなわち置換アルキル基)である場合、その置換基はハロゲン原子であり得る。例えば、F,Cl,BrおよびIからなる群から選択される一種または二種以上のハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)であり得る。好ましい一つの態様では、R11〜R15が、それぞれ独立に、水素原子および炭素数が1〜4の置換または無置換の(好ましくは無置換の)開鎖状のアルキル基から選択される。かかるアルキル基の例としては、−CH3,−CH2CH3,−CH2CH2CH3,−CH2CH2CH2CH3,−CH(CH3)CH3,−CH(CH3)CH2CH3,−CH2CH(CH3)CH3,および−C(CH32CH3が挙げられる。これらのうち特に好ましいものとして、−CH3,−CH2CH3,および−CH2CH2CH3が挙げられる。
【0040】
上記式(3)で表されるカチオンの一好適例では、R11〜R15のうちイミダゾール環を構成する窒素に結合している基(すなわち、R11およびR13)が、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基から選択され得る。また、イミダゾール環を構成する炭素に結合している基(すなわち、R12,R14およびR15)が、それぞれ独立に、水素原子、および、炭素数1〜4のアルキル基から選択され得る。例えば、イミダゾール環の1位,2位および3位に結合している基(R11,R12,R13)がいずれも炭素数1〜4のアルキル基であるイミダゾリウムイオンであり得る。また、イミダゾール環の1位,2位および3位に結合している基(R11,R12,R13)が炭素数1〜4のアルキル基であり、かつ、4位および5位に結合している基(R14,R15)のうち一方または両方が炭素数1〜4のアルキル基であるイミダゾリウムイオンであり得る。
【0041】
上記式(3)で表されるカチオンの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−イソプロピル−3−プロピルイミダゾリウムイオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン類;1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリエチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等のトリアルキルイミダゾリウムイオン類;1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウムイオン、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウムイオン等のテトラアルキルイミダゾリウムイオン類;1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウムイオン等のペンタアルキルイミダゾリウムイオン類;等が挙げられる。
【0042】
[ピリジニウムイオン類]
また、Y+の他の好適例として、上記式(4)で表されるピリジニウムイオンが挙げられる。上記R21〜R26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、F,Cl,Br,I)および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R21〜R26のうち二つ以上が相互に結合して環構造を形成していてもよい。この場合、これらの基が酸素原子を介在して環構造を形成してもよく、酸素原子非介在で環構造を形成してもよい。典型的には、ピリジン環を構成する窒素原子が炭素数1〜10の有機基を有する。すなわち、R21が炭素数1〜10の有機基である。
21〜R26のいずれかが上記有機基である場合、該有機基は、上述したR11〜R15と同様の基であり得る。例えば、エーテル結合を含むまたは含まない炭化水素基であり得る。また、置換または無置換の炭化水素基であり得る。また、開鎖状または環構造を有する炭化水素基であり得る。R21〜R26のいずれかが炭化水素基である場合、その好適例としては、炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)の、エーテル結合を含むまたは含まない、置換または無置換のアルキル基が挙げられる。開鎖状のアルキル基が好ましい。また、無置換のアルキル基が好ましい。特に好ましいアルキル基の例として、−CH3,−CH2CH3,および−CH2CH2CH3が挙げられる。
好ましい一つの態様では、ピリジン環を構成する窒素に結合している基(R21)が、炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)のアルキル基である。また、R22〜R26は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)のアルキル基から選択される。典型的には、R22〜R26がいずれも水素原子である。上記式(4)で表されるカチオンの具体例としては、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−イソプロピルピリジニウムイオン、およびN−ブチルピリジニウムイオン等が挙げられる。
【0043】
[オキサゾリウムイオン類]
+の他の好適例として、上記式(5)で表されるオキサゾリウムイオンが挙げられる。R31〜R34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えばF,Cl,Br,I)および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R31〜R34のうち二つ以上が、酸素原子を介在してあるいは酸素原子非介在で、相互に結合して環構造を形成していてもよい。典型的には、オキサゾール環を構成する窒素原子が炭素数1〜10の有機基を有する。すなわち、R32が炭素数1〜10の有機基である。
31〜R34のいずれかが上記有機基である場合、該有機基は、上述したR11〜R15と同様の基であり得る。例えば、エーテル結合を含むまたは含まない炭化水素基であり得る。また、置換または無置換の炭化水素基であり得る。また、開鎖状または環構造を有する炭化水素基であり得る。R31〜R34のいずれかが炭化水素基である場合、その好適例としては、炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)の、エーテル結合を含むまたは含まない、置換または無置換のアルキル基が挙げられる。開鎖状のアルキル基が好ましい。また、無置換のアルキル基が好ましい。特に好ましいアルキル基の例として、−CH3,−CH2CH3,および−CH2CH2CH3が挙げられる。
好ましい一つの態様では、オキサゾール環を構成する窒素に結合している基(R32)が、炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)のアルキル基である。また、R31,R33,R34は、それぞれ独立に、水素原子および炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)のアルキル基から選択される。典型的には、R31,R33,R34がいずれも水素原子である。上記式(5)で表されるカチオンの具体例としては、N−メチルオキサゾリウムイオン、N−エチルオキサゾリウムイオン、およびN−プロピルオキサゾリウムイオン等が挙げられる。
【0044】
[アンモニウムイオン類]
+の他の好適例として、上記式(6)で表されるアンモニウムイオンが挙げられる。R41〜R44のうち、少なくとも一つは炭素数1〜10の有機基から選択され、他はそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R41〜R44のうち二つ以上(より好ましくは三つ以上)が炭素数1〜10の有機基であることが好ましい。典型的には、R41〜R44がいずれも炭素数1〜10の有機基である。R41〜R44のうち二つ以上が、酸素原子を介在してあるいは酸素原子非介在で、相互に結合して非芳香族性の環を形成していてもよい。
41〜R44のいずれかが上記有機基である場合、該有機基は、上述したR11〜R15と同様の基であり得る。例えば、エーテル結合を含むまたは含まない炭化水素基であり得る。また、置換または無置換の炭化水素基であり得る。また、開鎖状または環構造を有する炭化水素基であり得る。R41〜R44のいずれかが炭化水素基である場合、その好適例としては、炭素数1〜10の、エーテル結合を含むまたは含まない、置換または無置換(好ましくは無置換)の、アルキル基またはアルケニル基が挙げられる。R41〜R44の好ましい一例として、−CH3,−CH2CH3,および−CH2CH2CH3等のような、炭素数1〜4の開鎖状の(好ましくは直鎖状の)アルキル基が挙げられる。R41〜R44の好ましい他の例として、一または二以上のエーテル結合を含む炭素数2〜10(より好ましくは2〜5)の開鎖状の(好ましくは直鎖状の)アルキル基が挙げられる。
【0045】
上記式(6)で表されるカチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等のような、R41〜R44が同一のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムイオン類が挙げられる。他の例として、エチルトリメチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、ジエチルジメチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリエチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルイソプロピルアンモニウムイオン、トリエチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジメチルジプロピルアンモニウムイオン、ブチルトリメチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン等のような、R41〜R44が二種以上のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムイオン類が挙げられる。さらに他の例として、ビニルトリメチルアンモニウムイオン、アリルトリメチルアンモニウムイオン等のような、R41〜R44がアルキル基およびアルキレン基であるアンモニウムイオン類が挙げられる。さらに他の例として、2−メトキシエチルトリメチルアンモニウムイオン、2−エトキシエチルトリメチルアンモニウムイオン、2−メトキシエチルトリエチルアンモニウムイオン等の、R41〜R44のうち少なくとも一つがエーテル結合を含むアルキル基(アルキルエーテル基)であり他がアルキル基であるアンモニウムイオン類が挙げられる。
【0046】
上記R41〜R44のうち二つ以上は、相互に結合して非芳香族性の環を形成し得る。そのような非芳香族性の環は、窒素原子を含む脂肪族環であり得る。例えば、窒素原子を含む脂肪族五員環(ピロリジン環)、窒素原子を含む脂肪族六員環(ピペリジン環)等であり得る。環を構成する炭素原子は置換基を有してもよく有していなくてもよい。置換基を有する場合、その置換基は、ハロゲン原子(例えばF,Cl,Br,I。好ましくはF。)、炭素数1〜4のアルキル基、および該アルキル基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子に置き換えた基等であり得る。上記式(6)で表されるカチオンは、R41〜R44のうち二つ(例えばR41とR42)が互いに結合して置換基を有しないピロリジン環またはピペリジン環を形成している構造のアンモニウムイオン(すなわち、ピロリジニウムイオンまたはピペリジニウムイオン)であり得る。残りの基は、炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)の、エーテル結合を含むまたは含まない、置換または無置換(好ましくは無置換)の、アルキル基またはアルケニル基であり得る。
【0047】
+の好適例として、上記式(7)で表されるカチオンが挙げられる。該カチオンは、pが化学結合である場合にはピロリジニウムイオンとなり、pが炭素数1のアルキレン基(すなわちメチレン基)である場合にはピペリジニウムイオンとなる。R43およびR44は、それぞれ独立に、エーテル結合を含むまたは含まない炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基であり得る。R43およびR44として選択し得る基の好適例としては、炭素数1〜4の開鎖状の(好ましくは直鎖状の)アルキル基、一または二以上のエーテル結合を含む炭素数2〜10(より好ましくは2〜5)の開鎖状の(好ましくは直鎖状の)アルキル基等が挙げられる。
好ましい一つの態様では、R43およびR44の一方または両方が、上記式(8)で表される基である。R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜3の置換または無置換のアルキレン基であり得る。R3は炭素数1〜5の置換または無置換のアルキル基であり得る。R1〜R3の有し得る置換基としてはハロゲン原子(例えばF,Cl,Br,I)が挙げられる。R1〜R3がいずれも置換基を有しないアルキレン基またはアルキル基であることが好ましい。また、R1〜R3がいずれも開鎖状(好ましくは直鎖状)のアルキレン基またはアルキル基であることが好ましい。上記式(8)で表される基は、一個(m=0)〜三個(m=2)のエーテル結合を含み得る。mが0〜1であることが好ましい。上記式(8)中に複数のR2が含まれる場合、それらのR2は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0048】
上記式(7)で表されるカチオンの具体例としては、N,N−ジメチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン,N,N−ジメチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン等のジアルキルピロリジニウムイオン類およびジアルキルピペリジニウムイオン類が挙げられる。また、R43およびR44の一方がCH3OCH2CH2−,CH3CH2OCH2CH2−,CH3OCH2CH2OCH2CH2−,およびCH3CH2OCH2CH2OCH2CH2−から選択されるいずれかのアルキルエーテル基であり、他方が−CH3,−CH2CH3,および−CH2CH2CH3から選択されるいずれかのアルキル基であるピロリジニウムイオンまたはピペリジニウムイオンであってもよい。R43およびR44の双方が、それぞれ独立に、CH3OCH2CH2−,CH3CH2OCH2CH2−,CH3OCH2CH2OCH2CH2−,およびCH3CH2OCH2CH2OCH2CH2−から選択されるいずれかのアルキルエーテル基であるピロリジニウムイオンまたはピペリジニウムイオンであってもよい。
【0049】
[スルホニウムイオン類]
+の他の好適例として、上記式(9)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。R51〜R53のうち、少なくとも一つは炭素数1〜10の有機基から選択され、他はそれぞれ独立に水素原子および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。R51〜R53のうち二つ以上が炭素数1〜10の有機基であることが好ましい。典型的には、R51〜R53がいずれも炭素数1〜10の有機基である。R51〜R53のうち二つ以上が、酸素原子を介在してあるいは酸素原子非介在で、相互に結合して非芳香族性の環を形成していてもよい。
51〜R53のいずれかが上記有機基である場合、該有機基は、上述したR11〜R15と同様の基であり得る。例えば、エーテル結合を含むまたは含まない炭化水素基であり得る。また、置換または無置換の炭化水素基であり得る。また、開鎖状または環構造を有する炭化水素基であり得る。R51〜R53のいずれかが炭化水素基である場合、その好適例としては、炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)の、エーテル結合を含むまたは含まない、置換または無置換のアルキル基が挙げられる。開鎖状のアルキル基が好ましい。また、無置換のアルキル基が好ましい。特に好ましいアルキル基の例として、−CH3,−CH2CH3,および−CH2CH2CH3が挙げられる。上記式(9)で表されるカチオンの具体例としては、トリメチルスルホニウムイオン、トリエチルスルホニウムイオン、トリプロピルスルホニウムイオン、トリブチルスルホニウムイオン、ジエチルメチルスルホニウムイオン、ジメチルプロピルスルホニウムイオン等のトリアルキルスルホニウムイオン類、トリフェニルスルホニウムイオン等のトリアリールスルホニウムイオン類が挙げられる。
【0050】
[その他の有機カチオン]
+はまた、チアゾリウムイオン、イソオキサゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、またはピラジニウムイオンであり得る。これらのイオンは、典型的には、複素環を構成する窒素原子(二以上の窒素原子を含む環においてはそれらの窒素原子のうち少なくとも一つ)が、置換基として炭素数1〜10の有機基を有する。その有機基は、例えば、炭素数1〜10(好ましくは1〜4)の、エーテル結合を含むまたは含まない、開鎖状のアルキル基を有する。一方、複素環を構成する他の原子(例えば炭素原子)は、置換基を有してもよく有していなくてもよい。置換基を有する場合、その置換基は、ハロゲン原子(例えばF,Cl,Br,I。好ましくはF。)および炭素数1〜10の有機基から選択され得る。その有機基は、例えば、炭素数1〜10(好ましくは1〜4)の、エーテル結合を含むまたは含まない、開鎖状のアルキル基であり得る。
また、Y+は、上記式(6)における窒素原子(N)をリン原子(P)に置き換えた構造のホスホニウムカチオンであり得る。そのようなホスホニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、トリメチルエチルホスホニウムイオン、トリエチルメチルホスホニウムイオン等の、テトラアルキルホスホニウムイオン類、テトラフェニルホスホニウムイオン等のテトラアリールホスホニウムイオン類が挙げられる。また、R41〜R44のうち二つ以上が相互に結合して非芳香族性の環(典型的には、リンを含む脂肪族五員環または六員環)を形成していてもよい。
【0051】
上述したいずれかの有機カチオン(Y+)と上記アニオン[-N(CORf1)(SO2Rf2)]との塩は、上記常温域において、少なくともその一部が液状を呈する塩(常温溶融塩、室温溶融塩、イオン性液体等と称されることもある。)であり得る。ここに開示されるアミド塩の好適な態様では、該アミド塩の融点が凡そ30℃以下(より好ましくは凡そ20℃以下、さらに好ましくは凡そ0℃以下)である。少なくとも凡そ20〜40℃(より好ましくは凡そ0〜60℃、さらに好ましくは凡そ−20〜+80℃)の温度域で、その少なくとも一部(好ましくは全部)が液状(溶融状態)の状態を維持し得るアミド塩が好ましい。
本発明のアミド塩を構成するアニオンは、(1).一つの窒素原子にスルホニル基およびカルボニル基が結合している、(2).そのスルホニル基およびカルボニル基にそれぞれパーフルオロ基が結合している、および、(3).そのカルボニル基に結合しているパーフルオロ基(Rf1)がパーフルオロアルキルエーテル鎖を有する、という特徴を有する。かかるアニオンを有する塩は、上記特徴(1).〜(3).の一つまたは二つ以上を満たさないアニオンを有する塩に比べて、より融点の低いものとなり得る。また、より粘度の低いものとなり得る。また、よりイオン伝導性の高い(または、より低温域でも実用上好ましいイオン伝導性を示す)ものとなり得る。このようなアミド塩は、蓄電素子その他の各種電気化学デバイスの構成要素として有用なものとなり得る。例えば、常温域で液状を示す電解質(例えば、リチウムイオン二次電池等の各種蓄電素子用の電解質)の構成成分等として好適に利用され得る。かかる電解質において支持電解質を溶解させる溶媒(媒体)として、該アミド塩を好ましく用いることができる。
【0052】
[無機カチオン]
また、ここに開示されるアミド塩を構成するカチオン(Y+)は、水素イオン以外の無機カチオンであり得る。典型的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオンであり得る。例えば、リチウム以外のアルカリ金属のイオンであり得る。また、Y+として選択し得る無機カチオンの他の例として、アンモニウムイオン(NH4+)、ヒドロキシアンモニウムイオン(HONH3+),ヒドロキソニウムイオン(H3+が挙げられる。
このような無機カチオン(Y+)と上記アニオン[-N(CORf1)(SO2Rf2)]との塩は、例えば、後述する電解質の構成成分(典型的には、該電解質に無機カチオンを供給する支持電解質)として好適に利用され得る。また、かかる無機カチオンを有するアミド塩は、Y+が有機カチオンである上記アミド塩(以下、「アミド有機塩」ということもある。)を製造するための原料(中間体)として有用なものとなり得る。アミド有機塩の製造に用いるアミド塩としては、Y+がアルカリ金属イオン(例えばLi+,Na+およびK+)であるものが好ましい。例えば、Y+がNa+またはK+(特に好ましくはNa+)であるアミド金属塩を好ましく用いることができる。
【0053】
<アミド塩の製造方法>
[方法1]
上述したいずれかのアミド塩は、例えば、上記式(11)で表される酸無水物と上記式(12)で表されるスルホンアミド塩とを反応させる工程(以下、「工程A」ということもある。)を含む製造方法によって好適に製造され得る。該方法に使用する酸無水物およびスルホンアミド塩としては、目的とするアミド塩(すなわち、式(10)で表されるアミド塩)の構造に応じて適切な化合物を選択すればよい。この方法は、Y+が有機カチオンであるアミド塩の製造にも、Y+が無機カチオンであるアミド塩の製造にも適用可能である。Y+が無機カチオン(例えばアルカリ金属イオン等の金属カチオン)であるアミド塩の製造に好ましく適用され得る。例えば、Y+がリチウムイオン(Li+),ナトリウムイオン(Na+),またはカリウムイオン(K+)であるアミド塩の製造方法として好適である。
この方法に使用する酸無水物は、既知の方法により容易に合成可能である。あるいは、例えばExfluor Research Corp.社(Texas, U.S.A.)社から入手可能である。上記方法に使用するスルホンアミド塩は、入手容易な既知物質であるか、または既知の方法により容易に合成可能である。
上記反応には必ずしも溶媒を必要としないが、反応をより円滑に収率よく進行させ得ることから、通常は溶媒を用いることが好ましい。使用する溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン等のハロカーボン類;等から選択される一種または二種以上を適宜選択し得る。例えば、エーテル類を好ましく用いることができる。
この反応は、例えば−30℃〜+100℃の温度域で進行させることができる。収率向上等の観点から、通常は0℃〜+50℃の温度域で反応させることが好ましい。
【0054】
[方法2]
また、上記式(13)で表されるアミド塩は、例えば、上記式(14)で表される酸ハロゲン化物と上記式(15)で表されるシリルスルホンアミド塩とを反応させる工程(以下、「工程B」ということもある。)を含む製造方法によって好適に製造され得る。該方法に使用する酸ハロゲン化物およびシリルスルホンアミド塩としては、目的とするアミド塩の構造に応じて適切な化合物を選択すればよい。この方法は、Y+がアルカリ金属イオンであるアミド塩の製造に好ましく適用することができる。例えば、Y+がLi+,Na+またはK+であるアミド塩の製造方法として好適である。
この方法に使用する酸ハロゲン化物は、入手容易な既知物質であるか、または既知の方法により容易に合成可能である。例えば、式(14)中のXがフッ素(F)または塩素(Cl)である酸ハロゲン化物を好ましく使用することができる。Xがフッ素である酸ハロゲン化物がさらに好ましい。また、この方法に使用するシリルスルホンアミド塩は、入手容易な既知物質であるか、または既知の方法により容易に合成可能である。式(15)中のR4がそれぞれメチル基またはエチル基であるシリルスルホンアミド塩が好ましい。例えば、トリメチルシリルスルホンアミドとアルカリ金属との塩を好ましく使用することができる。
上記反応には必ずしも溶媒を必要としないが、反応をより円滑に収率よく進行させ得ることから、通常は溶媒を用いることが好ましい。使用する溶媒としては、上述のようなニトリル類、エーテル類、ケトン類、エステル類、ハロカーボン類等から選択される一種または二種以上を適宜選択し得る。例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類を好ましく使用することができる。
この反応は、例えば0℃〜+150℃の温度域で進行させることができる。収率向上等の観点から、通常は室温〜+100℃の温度域で反応させることが好ましい。
【0055】
[方法3]
また、上述したいずれかのアミド塩は、例えば、上記式(17)で表されるアミドと上記式(18)で表される化合物とを反応させる工程(以下、「工程C」ということもある。)を含む製造方法によって好適に製造され得る。式(17)で表されるアミドおよび式(18)で表される化合物としては、目的とするアミド塩(すなわち、式(16)で表されるアミド塩)の構造に応じて適切な化合物を選択すればよい。この方法は、Y+が有機カチオンであるアミド塩の製造にも、Y+が無機カチオンであるアミド塩の製造にも適用可能である。Y+が無機カチオン(例えばアルカリ金属イオン等の金属カチオン)であるアミド塩の製造に好ましく適用され得る。例えば、Y+がLi+,Na+またはK+であるアミド塩を製造する方法として好適である。
この方法に使用するアミド(すなわち、式(17)で表されるアミド)は、この明細書により開示されるアミド製造方法によって製造することができる。そのアミド製造方法については後に詳しく説明する。また、式(18)で表される化合物は、入手容易な既知物質であるか、または既知の方法により容易に合成可能である。式(18)中のAは、置換(例えばハロゲン置換)または無置換のアルキル基、ヒドロキシ基、または−O-+基であり得る。Aが−O-+基である化合物(すなわち炭酸塩)、および、Aがヒドロキシ基である化合物(すなわち炭酸水素塩)を好ましく用いることができる。次式:Y2CO3;で表される炭酸塩を用いることがより好ましい。
上記反応には必ずしも溶媒を必要としないが、反応をより円滑に収率よく進行させ得ることから、通常は溶媒を用いることが好ましい。使用する溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン等のハロカーボン類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;水、等から選択される一種または二種以上を適宜選択し得る。上記アルコール類には、ヒドロキシ基以外の水素原子のうち一部または全部をハロゲン原子に置き換えた構造のハロゲン置換アルコール類が含まれる。好ましい溶媒として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール[(CF32CHOH]、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のハロゲン置換アルコール類、エステル類、ニトリル類およびハロカーボン類から選択される一種または二種以上が挙げられる。
この反応は、例えば0℃〜+100℃の温度域で進行させることができる。収率向上等の観点から、通常は0℃〜+50℃の温度域で反応させることが好ましい。
【0056】
[方法4]
また、上記式(19)で表されるアミド塩は、例えば、上記式(20)で表されるアミド塩(アミド金属塩)と、上記式(21)で表される化合物(有機塩)とを反応させる工程(以下、「工程D」ということもある。)を含む製造方法によって好適に製造され得る。式(20)で表されるアミド金属塩および式(21)で表される有機塩としては、目的とするアミド塩の構造に応じて適切な化合物を選択すればよい。この方法は、Y+が上述したいずれかの有機カチオンであるアミド塩の製造に好ましく適用することができる。例えば、Y+が上記式(3)〜(7),(9)で表されるいずれかの有機カチオンであるアミド塩を製造する方法として好適である。
この方法に使用するアミド塩(すなわち、式(20)で表されるアミド金属塩)は、この明細書により開示される方法によって製造することができる。例えば、上記工程A、工程Bおよび工程Cの少なくとも一つを含む方法により製造されたアミド金属塩を好ましく使用することができる。Y+がアルカリ金属イオン(例えば、Li+,Na+またはK+)であるアミド金属塩を用いることが好ましい。また、式(21)で表される有機塩は、入手容易な既知物質であるか、または既知の方法により容易に合成可能である。
式(21)中の-Bは、無機アニオンであってもよく、有機アニオンであってもよい。かかる無機アニオンとしては、ハロゲンアニオン(例えば、F-,Cl-,Br-,I-からなる群から選択されるアニオン)、BF4-,PF6-,AsF6-,SbF6-,BCl4-,SbCl5-およびSbCl6-等を例示することができる。また、式(21)で表される化合物を構成し得る有機アニオンの好適例としては、-OCOCH3-OCOC25-OCOCCl3-OSO2Ph(Phはフェニル基を表す。),-OSO2Tol(Tolは、o−,m−またはp−トリル基を表す。),-OSO264NO2(C64NO2は、o−,m−またはp−ニトロフェニル基を表す。),-OSO264Br(C64Brは、o−,m−またはp−ブロモフェニル基を表す。),HSO4-,および、-OSO2OCH3等を例示することができる。かかる有機アニオンとして、さらに、-OCORf2-OSO2Rf2等を例示することができる。ここでRf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基であって、例えばパーフルオロアルキル基(−CF3,−C25等)であり得る。これらの有機アニオンにおけるRf2と、式(19)で表されるアミド塩におけるRf2とは、同一であってもよく異なってもよい。式(21)で表される化合物として、例えば、ハロゲンアニオンと有機カチオン(Y+)との塩、あるいはまた、式(19)で表されるアミド塩と同一のRf2を有する上記有機アニオン(-OSO2Rf2等)と有機カチオン(Y+)との塩を好ましく使用することができる。
上記反応には必ずしも溶媒を必要としないが、反応をより円滑に収率よく進行させ得ることから、通常は溶媒を用いることが好ましい。使用する溶媒としては、上述したニトリル類、エステル類、ケトン類、ハロカーボン類、アルコール類(ハロゲン置換アルコール類を含む)および水等から選択される一種または二種以上を適宜選択し得る。経済性および/または生成物の純度の観点から、溶媒として水を好ましく選択することができる。
この反応は、例えば0℃〜+100℃の温度域で進行させることができる。収率向上等の観点から、通常は0℃〜+50℃の温度域で反応させることが好ましい。
【0057】
[方法5]
上記式(19)で表されるアミド塩を構成する有機カチオン(Y+)は、窒素原子(N)、イオウ原子(S)またはリン原子(P)に少なくとも一つの水素原子が結合した構造のカチオンであり得る。そのような有機カチオンの例としては、式(3)中のR11またはR13、式(4)中のR21、式(5)中のR32、式(6)中のR41〜R44のうちのいずれか一つ、または式(9)中のR51〜R53のうちのいずれか一つが水素原子(H)である構造のカチオンが挙げられる。かかる構造の有機カチオンを有するアミド塩は、そのカチオンの共役塩基に相当する有機化合物と、式(17)で表されるアミドとを混合する(例えば、該化合物に対してほぼ等モル量のアミドを混合する)ことによっても製造され得る。
【0058】
<アミドの製造方法>
[方法6]
上記式(17),(22)または(24)で表されるアミドは、例えば、上記式(25)で表されるアミド塩と酸とを反応させる工程(以下、「工程E」ということもある。)を含む製造方法によって好適に製造され得る。式(25)で表されるアミド塩としては、目的とするアミドの構造に応じて適切な化合物を選択すればよい。式(25)中のY+は、無機カチオンであってもよく有機カチオンであってもよい。ここに開示される方法の一つの好適な態様では、Y+が無機カチオンであるアミド塩を使用する。例えば、Y+がアルカリ金属イオン(例えば、Li+,Na+またはK+)であるアミド金属塩を好ましく用いることができる。他の一つの好適な態様では、Y+が有機カチオン(例えば、上記式(3)〜(7)または(9)で表される有機カチオン)であるアミド塩を使用する。Y+が上記式(6)で表される有機カチオンであるアミド塩を好ましく使用することができる。そのような有機カチオンの好適例としてテトラアルキルアンモニウムイオンが挙げられる。例えば、式(6)中のR41〜R44がそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるアンモニウムイオンを有するアミド塩を使用することが好ましい。
この方法に使用するアミド塩(すなわち、式(25)で表されるアミド塩)は、この明細書により開示される方法によって製造することができる。例えば、上記工程A〜Dの少なくとも一つを含む方法により製造されたアミド塩を好ましく使用することができる。該アミド塩と反応させる酸としては、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。通常は無機酸を用いることが好ましい。また、いわゆる強酸を好ましく用いることができる。この方法に使用する酸の好適例としては、硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。経済性や取扱性等の観点から、硫酸を用いることが特に好ましい。
上記反応では酸が溶媒を兼ねることができる。また、使用する酸の量を減らすため、あるいは大過剰の酸を使用すると一部に分解反応が併発する場合に生成物をより純度よく得るために、溶媒を使用してもよい。使用する溶媒としては上述したハロカーボン類が好ましく、なかでもジクロロメタン、トリクロロメタン等を好ましく使用することができる。
この反応は、例えば0℃〜+150℃の温度域で進行させることができる。経済性、収率等の観点から、通常は0℃〜+120℃の温度域で反応させることが好ましい。例えば、室温〜100℃の温度域で反応させることができる。
【0059】
<アミド塩またはアミドの製造方法>
ここに開示される各種のアミドおよびアミド塩は、上記工程A〜Eのうち一または二以上を含む方法によって好適に製造され得る。例えば、以下のいずれかの製造方法を採用することができる。
(1)上記工程Aまたは工程Bを行うことにより、カチオン成分が金属カチオン(例えばアルカリ金属イオン)であるアミド塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]を得る。そのアミド金属塩を用いて上記工程Dを行う。このようにして、カチオン成分が有機カチオンであるアミド塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]を得る。
(2)上記工程Aまたは工程Bを行うことにより、カチオン成分が金属カチオン(例えばアルカリ金属イオン)であるアミド塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]を得る。そのアミド金属塩を用いて上記工程Eを行う。このようにしてアミド[NH(CORf1)(SO2Rf2)]を得る。
(3)上記(2)により得られたアミドを用意する。そのアミドと、金属の炭酸塩(例えば、アルカリ金属の炭酸塩)または炭酸水素塩とを用いて上記工程Cを行う。このようにして、カチオン成分が金属カチオンであるアミド塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]を得る。
(4)上記(3)により得られたアミド金属塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]を用意する。そのアミド金属塩を用いて上記工程Dを行う。このようにして、カチオン成分が有機カチオンであるアミド塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]を得る。
【0060】
ここに開示されるアミド塩のうち、カチオン成分Y+が有機カチオンであるもの(アミド有機塩)は、融点が凡そ40℃以下の塩であり得る。例えば、融点が凡そ30℃以下(好ましくは凡そ20℃以下、より好ましく凡そ0℃以下)の塩であり得る。さらに好ましい態様では、融点が凡そ−20℃以下(特に好ましくは凡そ−30℃以下)の塩であり得る。また、Y+が有機カチオンである上記アミド塩は、上記常温域において液状のアミド塩(常温溶融塩)であり得る。例えば、少なくとも10℃〜30℃(より好ましくは0℃〜40℃、さらに好ましくは−20℃〜+60℃)の温度域で液状の状態を維持し得るアミド有機塩であり得る。
【0061】
<イオン伝導材料>
上述したアミド塩(すなわち、Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)で表されるアミド塩)の一種または二種以上を含有する組成物は、常温域(例えば10℃〜30℃、好ましくは0℃〜40℃、より好ましくは−20℃〜+60℃)で液状を示すイオン伝導材料となり得る。かかる材料の一つの好ましい態様では、該材料が、上記温度域で液状を示す上記アミド有機塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]の少なくとも一種を含有する。ここに開示されるイオン伝導材料は、そのようなアミド有機塩に代えて、あるいは該アミド有機塩に加えて、Y+が無機カチオン(例えばアルカリ金属イオン)である上記アミド塩の少なくとも一種を含有することができる。
このようなイオン伝導材料は、上述したいずれかのアミド塩に加えて、他の塩を含有することができる。該「他の塩」としては、各種無機アニオンと各種有機カチオンまたは無機カチオンとの塩、パーフルオロアルキルエーテル鎖をもたない各種有機アニオンと各種有機カチオンまたは無機カチオンとの塩、等を例示することができる。例えば、上記アミド塩以外の塩であって常温域で液状を示す塩(常温溶融塩)を含有することができる。
ここに開示されるイオン伝導材料の一つの好ましい態様では、該材料が、上記アミド塩以外の成分(例えば有機溶媒)を実質的に含有しない状態で、上記常温域において液状である。または、上記アミド塩および上記他の塩以外の成分を実質的に含有しない状態で(すなわち、実質的にイオン結合性化合物のみを含む状態で)、該温度域において液状である。そのようなイオン伝導材料は、各種電池やキャパシタ等の蓄電素子に用いられる電解質またはその構成成分として好適なものとなり得る。例えば、常温域で液状を示す上記アミド有機塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]の一種または二種以上から実質的に構成されるイオン伝導材料は、蓄電素子等に用いられる電解質において、従来公知の非水系溶媒等に代えて、あるいは該非水系溶媒とともに、支持電解質を溶解させる媒体(電解質用媒体(溶媒))として好ましく利用され得る。また、そのようなアミド有機塩と他の常温溶融塩とから実質的に構成される組成物も、同様に、電解質用媒体等として好ましく利用され得る。
【0062】
<電解質および該電解質を備える電池>
[電解質]
常温域で液状を示すアミド有機塩[Y+-N(CORf1)(SO2Rf2)]の少なくとも一種を含有する上記イオン伝導性組成物は、例えば、正極と負極との間をカチオンが行き来することにより充放電する電池の電解質またはその構成成分として好ましく利用され得る。例えば、上記カチオンがリチウムイオンである電池(典型的には、リチウムイオン二次電池)の電解質またはその構成成分として好適である。かかる電池に用いられる電解質は、上記アミド有機塩に加えて、該電解質にリチウムイオンを供給し得る化合物(リチウム源)を含有することができる。そのような化合物(「支持電解質」または「支持塩」ともいう。)としては、LiPF6,LiBF4,LiPF5(CF3),LiPF4(CF32,LiPF4(CF2CF32,LiBF3(CF3),LiBF2(CF32,LiBF(CF33,LiBF3(C25),LiAsF6,LiClO4,LiSCN,LiOCOCF3,LiCF3SO3,LiC49SO3,LiN(SO2252,LiC(CF3SO23,LiOCOC65,LiN(SO2CF32(「LiTFSI」と表記されることもある。),LiN(COCF3)(SO2CF3),LiN(COCF2CF3)(SO2CF3)等のリチウム塩を選択することができる。ここに開示される電解質は、上述したアミド有機塩に加えて、次式:-N(CORf1)(SO2Rf2);で表されるアニオンとリチウムイオンとの塩を含有することができる。すなわち、ここに開示される電解質は、次式:LiN(CORf1)(SO2Rf2);で表されるリチウム塩(支持電解質)を含有する組成であり得る。該リチウム塩を構成するアニオン成分と、上記アミド有機塩を構成するアニオン成分とは、同一であってもよく異なってもよい。例えば、アミド有機塩を構成するアニオン成分と同じアニオン成分とリチウムイオンとの塩を含有する電解質とすることができる。このような電解質は、例えば、使用後の回収性等の観点から好ましい。ここに開示される電解質の一つの好ましい態様では、支持電解質としてのリチウム塩が、常温付近で液状を示す上記アミド有機塩から実質的に構成される液状媒体に溶解している。ここに開示される電解質の他の一つの好ましい態様では、支持電解質としてのリチウム塩が、常温付近で液状を示す上記アミド有機塩および該アミド有機塩以外の常温溶融塩から実質的に構成される液状媒体に溶解している。
支持電解質の濃度は特に限定されない。例えば、電解質1リットル(L)当たり、凡そ0.1〜20モルの支持電解質(リチウム塩)を含有する組成とすることができる。通常は、支持電解質の含有割合を0.3〜15モル/Lの範囲とすることが適当であり、0.5〜10モル/Lの範囲とすることが好ましい。少なくとも10℃以上(好ましくは0℃以上)の温度域において、支持電解質が安定して溶解し得る(析出等が認められない)程度の濃度とすることが好ましい。
【0063】
また、上記電解質は、一般的な溶媒(典型的には有機溶媒)を含有することができる。好ましく使用される溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;等の、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる非プロトン性溶媒等を例示することができる。また、3,3,4,4−テトラフルオロテトラヒドロフラン、トリフルオロプロピレンカーボネート、CF3COOCH3,C25COOCH3,C37COOCH3,CF3COOCF2CF2H,CF3COOCH2CF3,CF3COOCH2CF2CF2H,C37OCH3,C49OCH3,CF3CFHCF2OCH2CF3,C37OCF(CF3)COOCH3,F[CF(CF3)CF2O]3CF(CF3)COOCH3,F[CF(CF3)CF2O]3CF(CF3)COOCH3等の分子中に少なくとも一つのフッ素原子を含む有機溶媒(フッ素系有機溶媒);トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、エチルジメチルフォスフェート、ジエチルメチルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(トリフルオロメチル)フォスフェート、トリ(トリフルオロエチル)フォスフェート、トリ(パーフルオロエチル)フォスフェート等のフッ素原子を含むまたは含まないリン酸エステル類;等を例示することができる。これらの溶媒は不燃性または難燃性であるので好ましい。上述した溶媒等から選択される一種または二種以上を電解質に含有させることができる。
特に限定されるものではないが、このような溶媒を含む電解質においては、上記溶媒の含有比をアミド有機塩の含有比以下とすることができる。すなわち、電解質を構成するアミド有機塩50質量部に対して、上記溶媒の含有量を50質量部以下(好ましくは25質量部以下、より好ましくは10質量部以下)とすることができる。このようにアミド有機塩を主成分とする電解質は、ここに開示される電解質の好ましい一例である。
【0064】
ここに開示される電解質は、実質的にイオン結合性化合物(塩)のみからなる組成とすることができる。例えば、上記アミド有機塩の一種または二種以上と、支持電解質(例えばリチウム塩)と、から実質的に構成される組成であり得る。上記アミド有機塩以外の常温溶融塩をさらに含有してもよい。このような組成であって、常温域(例えば10℃〜30℃、好ましくは0℃〜40℃、より好ましくは−20℃〜+60℃)で液状の電解質が好ましい。約−30℃でも液状の状態を維持し得る電解質が特に好ましい。そのような電解質を備えるリチウムイオン二次電池は、例えば−30℃以上(典型的には、−30℃〜+100℃)の温度域で好適に使用し得る。特に、室温以下(さらには0℃以下)の温度範囲において改善された特性(イオン伝導率等)を示すリチウムイオン二次電池となり得る。
【0065】
[他の電池構成要素]
上述のような電解質を備える電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出(例えば挿入および脱離)し得る活物質を有する正極を含んで構成され得る。かかる正極用の活物質としては、リチウムと遷移金属とを構成元素として含む各種のリチウム複合酸化物を好ましく用いることができる。そのような複合酸化物としては、Li−Ni酸化物、Li−Mn酸化物、Li−Co酸化物、等を例示することができる。ここで「Li−Ni含有酸化物」とは、LiとNiとを構成元素とする酸化物の他、LiおよびNi以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、LiおよびNi以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。その金属元素は、Co,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上であり得る。Li−Mn含有酸化物およびLi−Co含有酸化物についても同様である。
【0066】
ここに開示される電池の正極は、上述のような正極活物質を導電性部材に保持させた構成であり得る。該導電性部材(集電体)としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等の金属を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を使用することができる。あるいは、カーボンペーパー等を用いてもよい。例えば、シート状の導電性部材(例えばAl箔)の表面に活物質を含む層(活物質含有層)を設けた構成とすることができる。この活物質含有層は、活物質の他に、一般的な正極に用いられる一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の一例として、導電材、バインダ等が挙げられる。導電材としては、カーボンブラック(アセチレンブラック等)のような炭素材料、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等から選択される一種または二種以上を用いることができる。バインダとしては、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0067】
ここに開示される電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出(例えば挿入および脱離)し得る活物質を有する負極を備えることができる。負極用の活物質としては、アモルファス構造および/またはグラファイト構造の炭素材料を用いることができる。例えば、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等の、一般的なリチウムイオン二次電池の負極に用いられる活物質の一種または二種以上を好ましく用いることができる。あるいは、酸化物、カルコゲナイド等を用いることも可能である。例えば、負極用の活物質としてチタン酸リチウム(例えばLi4Ti612)を好ましく用いることができる。このような活物質を、必要に応じてバインダ等とともに、金属等からなる導電性部材に保持させた構成の負極とすることができる。導電性部材(集電体)としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等の金属を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を使用することができる。あるいは、カーボンペーパー等を用いてもよい。バインダとしては、正極と同様のもの等を使用することができる。例えば、シート状の導電性部材(例えばCu箔)の表面に、活物質を含む層(活物質含有層)を設けた構成とすることができる。
【0068】
ここに開示される電池は、このような正極と負極との間に上記電解質が配置された構成とすることができる。また、上記正極と負極との間にセパレータが配置され、そのセパレータに電解質が染み込んでいる構成とすることができる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムを用いることができる。また、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース(MC)等からなる織布または不織布を用いてもよい。
なお、ここに開示される電解質は、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体(EO−PO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP)等の支持体とともに成形(成膜)することにより、固体電解質として利用することも可能である。
【0069】
以下、本発明に関する実施例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0070】
<アミド金属塩の合成>
[合成例1]
【化17】

上記式(S1)に示す合成スキームに沿って、下記表1に示す反応条件により、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドのナトリウム塩を合成した。
すなわち、反応容器にトリフルオロメタンスルホンアミドナトリウム塩(化合物1)201mmolと乾燥ジエチルエーテル100mLとを入れて氷浴で冷却した。この溶液中に、Exfluor Research Corp.社(Texas, U.S.A.)から入手可能な2−(トリフルオロメトキシ)ジフルオロ酢酸無水物(化合物2)261mmolを乾燥ジエチルエーテル100mLに溶解させた溶液を、35分かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外して室温でさらに4時間攪拌した。その後、アスピレータを用いて溶媒を留去し、さらに110℃で真空乾燥させた。このようにして、N−(トリフルオロメタンスルホニル)−2−(トリフルオロメトキシ)ジフルオロアセトアミドナトリウム塩[NaN(COCF2OCF2)(SO2CF3)]197mmolを得た。収率は98%であった。
【0071】
[合成例2〜5]
表1に示す各アミド金属塩(化合物1)および酸無水物(化合物2)を用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例1と同様に反応および後処理(溶媒の留去および乾燥)を行うことにより、表1に示す各生成物を得た。表1には生成物の収率を併せて示した。
なお、合成例2〜5に使用した酸無水物[(CF3CF2OCF2CO)2O,(CF3OCF2CF2CO)2O,および(CF3OCF2CF2OCF2CO)2O]は、いずれもExfluor Research Corp.社から入手可能である。
【0072】
[合成例6]
以下のようにして、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドのナトリウム塩を合成した。
すなわち、表1に示すシリルスルホンアミドナトリウム塩(化合物1)62.6mmolとアセトニトリルとを反応容器に入れた。この溶液中に、室温にて、表1に示す酸フッ化物(化合物2)75.3mmolをアセトニトリルに溶解させた溶液を滴下して30分攪拌した後、系を80℃まで昇温してさらに61時間攪拌した。その後、合成例1と同様に後処理を行って、表1に示すアミド塩を得た(収率95%)。なお、上記酸フッ化物は、例えばSynQuest Labs社(Florida, U.S.A.)から入手可能である。
【0073】
[合成例7]
【化18】

上記式(S2)に示す合成スキームに沿って、下記表2に示す反応条件により、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドのリチウム塩を合成した。
すなわち、容量100mLのナス型フラスコに炭酸リチウム(化合物2)0.555g(7.5mmol)およびジエチルエーテル 20mLを入れて氷浴で冷却した。この溶液中に、N−(トリフルオロメタンスルホニル)−2−(トリフルオロメトキシ)−ジフルオロアセトアミド(化合物1)4.67g(15mmol)をジエチルエーテル40mLに溶解させた溶液を滴下して10分間攪拌した後、氷浴を外して室温でさらに2時間攪拌した。その後、溶媒を留去し、真空減圧下において150℃で3時間乾燥させた。このようにして、N−(トリフルオロメタンスルホニル)−2−(トリフルオロメトキシ)−ジフルオロアセトアミドリチウム塩(生成物)4.62gを得た。収率は97%であった。この生成物は、常温においてガラス状の固体であった。
【0074】
[合成例8]
本合成例は、反応溶媒を変更して合成例7と同じアミド塩を合成した例である。
すなわち、表2に示すように、反応容器に炭酸リチウム(化合物2)2.5mmolおよび溶媒としての1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール[(CF32CHOH]2.5mLを入れ、表2に示すアミド(化合物1)5.1mmolを(CF32CHOH 2.5mLに溶解させた溶液を室温にて滴下し、2時間攪拌した。その後、合成例7と同様に後処理を行って生成物を得た。収率は97%であった。
なお、合成例7および8で使用した化合物1は、後述する合成例55により得られたものである。
【0075】
[合成例9〜17]
表2〜3に示す各アミド(化合物1)およびアルカリ金属炭酸塩(化合物2)を用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例8と同様に反応および後処理を行うことにより、これらの表に示す各生成物を得た。表中には各生成物の収率を併せて示した。
なお、これらの合成例で使用した化合物1は、それぞれ、後述する合成例55〜59のいずれかにより得られたものである。また、合成例9による生成物は合成例1による生成物と同じアミド塩であり、同様に、合成例11の生成物は合成例2の、合成例13の生成物は合成例3の、合成例14の生成物は合成例5の、合成例15の生成物は合成例4の、そして合成例17の生成物は合成例6の生成物とそれぞれ同じアミド塩である。
【0076】
<得られたアミド塩の物性値および分析結果>
合成例1〜17により得られた各生成物の融点を常法により測定した。また、各生成物の元素分析を行い、計算値と分析値とが概ね一致することを確認した。さらに、各生成物をアセトニトリル−d3に溶解させ、C66を標準として19F−NMRスペクトルを測定した。得られたデータを表4に示す。
なお、合成例7,8,10,12,14,16および17により得られた各生成物については、これらの生成物をさらに精製した後に上記の測定および分析を行った。すなわち、各生成物を室温で適量の溶媒[(CF32CHOH]に溶解させた溶液に、各生成物(アミド金属塩)の共役酸に相当するアミドを少量(0.05mol%)加えて攪拌した。溶媒を留去した後、真空減圧下において150℃で3時間乾燥させて、高純度のアミド塩を得た。このアミド塩を用いて上記の測定および分析を行った。
また、合成例9,11,13,14,15および17により得られた生成物は、合成例1〜6により得られた生成物のそれぞれに比べてより高純度であったので、表4には合成例9,11,13,14,15および17の生成物について得られたデータを示した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
<イミダゾリウムカチオンを有するアミド塩の合成>
[合成例18]
【化19】

上記式(S3)に示す合成スキームに沿って、下記表5に示す反応条件により、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドのイミダゾリウム塩を合成した。
すなわち、反応容器に1,3−ジメチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホナート(トリフラートともいう。表中では「-OTf」と示すこともある。)(化合物1)10mmolと水5mLとを入れた。これを攪拌しながら、合成例9(または合成例1)により得られたNaN(COCF2OCF2)(SO2CF3)(化合物2)10.5mmolを水5mLに溶解させた溶液を加え、室温で10分間攪拌した。その後、下層である油層を分離し、これを水で繰り返し洗浄した。得られた油状物を、真空ポンプを用いた減圧下において110℃で3時間乾燥させた。このようにして、1,3−ジメチルイミダゾリウム N−(トリフルオロメタンスルホニル)−2−(トリフルオロメトキシ)ジフルオロアセトアミド 6.2mmolを得た。収率は62%であった。
【0082】
[合成例19〜35]
表5〜9に示す各イミダゾリウム塩(化合物1)と、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミド金属塩(化合物2)とを用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例18と同様に反応および後処理を行うことにより、これらの表に示す各生成物を得た。表中には各生成物の収率を併せて示した。なお、これらの合成例における化合物2としては、それぞれ、合成例9,11,13,15および17(または合成例1〜4および6)のいずれかにより得られたアミド塩を使用した。
【0083】
<ピリジニウムカチオンを有するアミド塩の合成>
[合成例36]
表9に示すピリジニウム塩(化合物1)と、合成例9(または合成例1)により得られたアミド塩(化合物2)とを用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例18と同様に反応および後処理を行うことにより、同表に示す生成物を得た。収率は66%であった。
【0084】
<オキサゾリウムカチオンを有するアミド塩の合成>
[合成例37]
表9に示すオキサゾリウム塩(化合物1)と、合成例9により得られたアミド塩(化合物2)とを用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例18と同様に反応および後処理を行うことにより、同表に示す生成物を得た。収率は54%であった。
【0085】
合成例18〜37により得られた各生成物の融点は、いずれも常温(ここでは約20℃)以下であった。また、各生成物の元素分析を行い、計算値と分析値とが概ね一致することを確認した。また、上記と同様にして各生成物の19F−NMRスペクトルを測定した。さらに、各生成物をアセトニトリル−d3に溶解させて1H−NMRスペクトルを測定した。得られたデータを表10〜11に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
【表7】

【0089】
【表8】

【0090】
【表9】

【0091】
【表10】

【0092】
【表11】

【0093】
<テトラアルキルアンモニウムカチオンを有するアミド塩の合成>
[合成例38]
表12に示すアンモニウム塩(化合物1)と合成例9(または合成例1)により得られたアミド塩(化合物2)とを用いて、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドアニオンとテトラアルキルアンモニウムカチオンとの塩を合成した。
すなわち、反応容器にテトラメチルアンモニウムクロライド(化合物1)15mmolおよび水を入れた。これを攪拌しながら、NaN(COCF2OCF2)(SO2CF3)(化合物2)15.8mmolの水溶液を加え、室温で20分間攪拌した。その後、合成例18と同様に後処理を行って、テトラメチルアンモニウム N−(トリフルオロメタンスルホニル)−2−(トリフルオロメトキシ)ジフルオロアセトアミドを得た。収率は53%であった。
【0094】
[合成例39〜43]
表12に示す各アンモニウム塩(化合物1)と、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドの金属塩(化合物2)とを用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例38と同様に反応および後処理を行うことにより、これらの表に示す各生成物を得た。表中には各生成物の収率を併せて示した。なお、これらの合成例における化合物2としては、それぞれ、合成例9,11,13,15および17(または合成例1〜4および6)のいずれかにより得られたアミド塩を使用した。
【0095】
合成例38〜43により得られた各生成物の融点は、いずれも常温(ここでは約20℃)以下であった。また、各生成物の元素分析を行い、計算値と分析値とが概ね一致することを確認した。また、上記と同様にして各生成物の19F−NMRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルを測定した。得られたデータを表13に示す。
【0096】
<脂肪族環状アンモニウムカチオンを有するアミド塩の合成>
[合成例44]
以下のようにして、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドアニオンと脂肪族環状アンモニウムカチオンとの塩を合成した。
すなわち、表14に示す脂肪族環状アンモニウム塩(化合物1)および水を反応容器に入れた。これを攪拌しながら、合成例9(または合成例1)により得られたアミド塩(化合物2)15.8mmolの水溶液を加え、室温で10分間攪拌した。その後、合成例18と同様に後処理を行って、同表に示す生成物を得た。収率は56%であった。
【0097】
[合成例45〜48]
表14に示す各脂肪族環状アンモニウム塩(化合物1)と、合成例9(または合成例1)により得られたアミド塩(化合物2)とを用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例44と同様に反応および後処理を行うことにより、これらの表に示す各生成物を得た。表中には各生成物の収率を併せて示した。
【0098】
合成例44〜48により得られた各生成物の融点は、いずれも常温(ここでは約20℃)以下であった。また、各生成物の元素分析を行い、計算値と分析値とが概ね一致することを確認した。また、上記と同様にして各生成物の19F−NMRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルを測定した。得られたデータを表15に示す。
【0099】
[合成例49]
以下のようにして、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドアニオンと、アルキルエーテル基を有する脂肪族環状アンモニウムカチオンとの塩を合成した。
すなわち、表16に示す脂肪族環状アンモニウム塩(化合物1)50mmolおよび水を反応容器に入れた。これを攪拌しながら、合成例9(または合成例1)により得られたアミド塩(化合物2)52.5mmolの水溶液を加え、室温で20分間攪拌した。その後、合成例18と同様に後処理を行って、同表に示す生成物を得た。収率は61%であった。
【0100】
[合成例50〜52]
表16に示す各脂肪族環状アンモニウム塩(化合物1)と、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドの金属塩(化合物2)とを用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例49と同様に反応および後処理を行うことにより、これらの表に示す各生成物を得た。表中には各生成物の収率を併せて示した。なお、これらの合成例における化合物2としては、それぞれ、合成例9(または合成例1)および合成例13(または合成例3)のいずれかにより得られたアミド塩を使用した。
【0101】
合成例49〜52により得られた各生成物の融点は、いずれも常温(ここでは約20℃)以下であった。また、各生成物の元素分析を行い、計算値と分析値とが概ね一致することを確認した。また、上記と同様にして各生成物の19F−NMRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルを測定した。得られたデータを表17に示す。
【0102】
<スルホニウムカチオンを有するアミド塩の合成>
[合成例53]
以下のようにして、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドアニオンのスルホニウム塩を合成した。
すなわち、表18に示すスルホニウム塩(化合物1)15mmolおよび水を反応容器に入れた。これを攪拌しながら、合成例9(または合成例1)により得られたアミド塩(化合物2)15.8mmolの水溶液を加え、室温で20分間攪拌した。その後、合成例18と同様に後処理を行って、同表に示す生成物を得た。収率は39%であった。
合成例53により得られた生成物の融点は常温(ここでは約20℃)以下であった。また、この生成物の元素分析を行い、計算値と分析値とが概ね一致することを確認した。また、上記と同様にして該生成物の19F−NMRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルを測定した。得られたデータを表19に示す。
【0103】
【表12】

【0104】
【表13】

【0105】
【表14】

【0106】
【表15】

【0107】
【表16】

【0108】
【表17】

【0109】
【表18】

【0110】
【表19】

【0111】
<アミドの合成>
[合成例54]
【化20】

上記式(S4)に示す合成スキームに沿って、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドを合成した。
すなわち、蒸留物受け容器と連結された蒸留塔を取り付けた50mLのナス型フラスコに、NaN(COCF2OCF2)(SO2CF3)11.66g(35mmol)と硫酸7.6mL(105mmol)とを入れた。蒸留物受け容器を−40℃に冷却した後、真空ポンプにより系を減圧にし、上記ナス型フラスコ(反応容器)を油浴に浸け、内容物を攪拌しつつ油浴の温度を40℃まで上昇させた。さらに油浴の温度を80℃まで徐々に上げた。このようにして蒸留物受け容器内に目的物(生成物)を、ガラス状固体として得た。収量は10.83g、収率は99.5%であった。なお、上記化合物1としては、合成例1により得られたアミド塩を使用した。
【0112】
[合成例55]
【化21】

上記式(S5)に示す合成スキームに沿って、下記表20に示す反応条件により、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドを合成した。
すなわち、300mLの丸底フラスコに、化合物1としてのN−(トリフルオロメタンスルホニル)−2−(トリフルオロメトキシ)ジフルオロアセトアミドのテトラエチルアンモニウム塩11.0g(25mmol)と、溶媒としてのジクロロメタン250mLとを入れて室温で攪拌した。これに硫酸12.5mL(235mmol)を加えて30分間攪拌した後、上層のジクロロメタン層を分離した。残った下層をさらにジクロロメタン25mLで抽出した。この抽出操作を三回繰り返した。抽出液を集めて溶媒を留去し、残渣を減圧蒸留し、沸点86〜87℃/28mmHgの留分を集めた。この留分(生成物)の収量は6.02g、収率は77%であった。なお、化合物1としては、合成例39により得られたアミド塩を使用した。
【0113】
[合成例56〜59]
表20に示す各アミド塩(化合物1)および酸を用い、同表に示す溶媒および反応条件で合成例55と同様に反応および後処理を行うことにより、これらの表に示す各生成物を得た。表中には各生成物の収率を併せて示した。なお、これらの合成例における化合物1としては、それぞれ、合成例40〜43のいずれかにより得られたアミド塩を使用した。
【0114】
合成例54〜59により得られた各生成物(目的物)の元素分析を行い、計算値と分析値とが概ね一致することを確認した。また、上記と同様にして各成物の19F−NMRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルを測定した。得られたデータを、各生成物の沸点(蒸留条件)とともに表21に示した。
【0115】
【表20】

【0116】
【表21】

【0117】
<イオン伝導度の測定>
上述した合成例により得られたいくつかの塩のイオン伝導度を測定した。測定は、YSI社製の機種名「Model 3100」により、プローブとしてYSI社製の商品名「3417」、MicroElectrodes社製の商品名「MI-915」または同「MI-905」を用いてアルゴン雰囲気下で行った。
【0118】
表22に示す試料1〜4は、同表に示すカチオンとアニオンとの塩につき、測定温度20℃,0℃,−20℃および−30℃におけるイオン伝導度を上記方法により測定した例である。これらの塩は、いずれも1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンと、エーテル結合を含むパーフルオロアルキル基を有する各種非対称アミドアニオンとの塩であって、それぞれ表中のカッコ内に示す各合成例により得られた塩である。同表には、試料5および6として、試料1〜4と同じイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとの塩(試料5)、および、同カチオンと2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルホニル)アセトアミドとの塩(試料6)のイオン伝導度を併せて示している。なお、試料5の塩は上述したいずれの測定温度においても固体であり、試料6の塩は測定温度0℃以下では固体であった。このように測定温度で固体の試料は、液状の試料と比較すると、イオン伝導度は実質的に無いに等しい。したがって、測定温度において試料が固体であった場合のイオン伝導度は「〜0」と表示している。
表22から判るように、試料1〜4の塩は、試料5および6の塩に比べて、低温特性(例えば、0℃以下の温度域におけるイオン伝導度)が明らかに良好であった。したがって、電解質またはその構成成分として試料1〜4の塩を用いた電池は、試料5,6の塩を用いた電池に比べて、より広い温度域(特に低温域)で適切に機能するものとなり得る。
【0119】
【表22】

【0120】
表23に示す試料7は、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムカチオンとパーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドアニオンとの塩である。この試料7としては、合成例30により得られたアミド塩を用いた。また、同表に示す試料8は、上記イミダゾリウムカチオンと2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルホニル)プロピオンアミドとの塩である。これらの試料につき、上記と同様にして測定温度20℃におけるイオン伝導度を測定した。
表23から判るように、試料7の塩は、アニオンの種類が異なる試料8の塩に比べて、より良好なイオン伝導性を示した。
【0121】
【表23】

【0122】
表24に示す試料9および10は、同表に示す各ペンタアルキルイミダゾリウムカチオンと、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドアニオンとの塩である。試料9としては合成例34により得られたアミド塩を、試料10としては合成例35により得られたアミド塩を用いた。また、同表に示す試料11および12は、試料9とはアニオンの種類が異なる塩である。これらの試料につき、上記と同様にして測定温度20℃におけるイオン伝導度を測定した。得られた結果を表24に示す。同表には、試料10とはアニオンの種類が異なる塩である試料13のイオン伝導度を併せて示した。これは、第42回電池討論会要旨集1B09の第256〜257頁(2002年10月発行)に記載されたデータから引用したものである。なお、試料11および12の塩は、いずれも測定温度において固体であった。
表24から判るように、試料9および10の塩は、いずれも、試料11〜13の塩に比べて明らかに良好なイオン伝導性を示した。
【0123】
【表24】

【0124】
表25に示す試料14〜16は、同表に示す各脂肪族環状アンモニウムカチオンとパーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドアニオンとの塩である。試料14としては合成例45により得られたアミド塩を、試料15としては合成例49により得られたアミド塩を、試料16としては合成例52により得られたアミド塩を用いた。これらの試料につき、上記と同様にして測定温度20℃におけるイオン伝導度を測定した。得られた結果を表24に示す。同表には、脂肪族環状アンモニウムカチオンとTFSIとの塩である試料17のイオン伝導度を併せて示した。これは、J. Phys. Chem. B, Vol.103, No.2, pp. 4164-4170 (1999) に記載されたデータから引用したものである。
表25から判るように、試料14〜16の塩は、いずれも、試料17の塩よりも良好なイオン伝導性を示した。
【0125】
【表25】

【0126】
<電位幅の測定>
表26に示す試料18〜20の電気化学的安定性を評価した。ここで、試料18は、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドの1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム塩(合成例30により得られた塩を用いた。)に、パーフルオロアルキルエーテル基を有する非対称アミドのリチウム塩(合成例8により得られた塩を用いた。)を12mol%の濃度で溶解させて調製した組成物である。試料19は、上記イミダゾリウム塩にLiTFSIを11mol%の濃度で溶解させて調製した組成物である。試料20は、上記イミダゾリウム塩に2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルホニル)アセトアミドのリチウム塩を7mol%の濃度で溶解させて調製した組成物である。これらの組成物は、いずれも20℃において液状であった。
これらの試料の電気化学的安定性を以下のようにして評価した。すなわち、各試料を電解質とし、作用電極としてガラス質カーボン電極(Glassy carbon electrode)を用い、対極にリチウム金属、参照電極にリチウム金属を用いて三電極方式の電気化学セルを構築した。このようにして作製したセルにつき、室温(約23℃)にて、掃引速度10mV/secの条件でリニアスウィープボルタンメトリー(Linear Sweep Voltammetry)測定を行うことにより、各試料の還元電位(対金属リチウム。以下同じ。)および酸化電位を調べた。その結果を表26に示した。また、酸化電位と還元電位との差から求めた電位窓の広さ(電位幅)を同表に示した。
表26から判るように、合成例30により得られたイミダゾリウム塩に各種のリチウム塩を溶解させた試料18〜20の組成物は、いずれも−0.2〜0.1V(すなわち0.5V以下、さらには0.3V以下)という低い還元電位を示した。また、これらの組成物は、いずれも5.2〜5.6V(すなわち5V以上)という高い酸化電位を示した。このため、これらの組成物は、いずれも5V以上という広い電位幅を有するものであった。なかでも、合成例30のイミダゾリウム塩に合成例8のリチウム塩を溶解させた試料18の組成物は、特に低い還元電位(−0.2V)および特に高い酸化電位(5.6V)を示し、このため特に広い電位幅(5.8V)を有するものであった。
【0127】
さらに、表26に示す試料21および試料22の塩につき、試料18〜20と同様にして電気化学的安定性を評価した。すなわち、これらの試料を電解質とした点以外は上記と同様に電気化学セルを構築した。試料21としては合成例50により得られた塩を用いた。試料22としては、表26に示すように、試料21とはアニオンの種類が異なる塩を用いた。これらのセルにつき上記と同様にリニアスウィープボルタンメトリー測定を行うことにより、各塩の還元電位(対金属リチウム。以下同じ。)および酸化電位を調べた。その結果を表26に示した。また、酸化電位と還元電位との差から求めた電位窓の広さを同表に示した。
表26から判るように、試料21の塩は、−0.1V(すなわち0V以下)という低い還元電位および5.4V(すなわち5V以上)という高い酸化電位を示した。このため、この塩は5.5Vという広い電位幅を有するものであった。また、試料21の塩は試料22の塩に比べて還元電位がより低く、このため電位窓がより広いものであった。
【0128】
【表26】

【0129】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(Rf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Y+は水素イオン以外のカチオンである。);
で表されるアミド塩。
【請求項2】
前記式(1)中のRf1は、エーテル結合を含む炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基である、請求項1に記載のアミド塩。
【請求項3】
前記式(1)中のRf1は、下記式(2):
−Rf3−O(−Rf4−O)n−Rf5 (2)
(Rf3およびRf4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。Rf5は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。nは0〜2である。);
で表される、請求項2に記載のアミド塩。
【請求項4】
前記式(2)中のRf3およびRf4はそれぞれ独立に炭素数1または2のパーフルオロアルキレン基であり、Rf5は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、nは0または1である、請求項3に記載のアミド塩。
【請求項5】
前記式(1)中のRf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載のアミド塩。
【請求項6】
前記式(1)中のY+はアルカリ金属のカチオンである、請求項1から5のいずれか一項に記載のアミド塩。
【請求項7】
前記式(1)中のY+は有機のカチオンである、請求項1から5のいずれか一項に記載のアミド塩。
【請求項8】
常温域で液状である、請求項7に記載のアミド塩。
【請求項9】
請求項7に記載のアミド塩を含有する電解質。
【請求項10】
請求項9に記載の電解質を備えるリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
下記式(10):
【化2】

(Rf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Y+は水素イオン以外のカチオンである。);
で表されるアミド塩を製造する方法であって、
下記式(11):
(Rf1CO)2O (11)
(Rf1は、式(10)中のRf1と同じである。);
で表される酸無水物と、
下記式(12):
+ -NH(SO2Rf2) (12)
(Y+およびRf2は、それぞれ式(10)中のY+およびRf2と同じである。);
で表されるスルホンアミド塩とを反応させるアミド塩製造方法。
【請求項12】
下記式(13):
【化3】

(Rf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Y+は金属のカチオンである。);
で表されるアミド塩を製造する方法であって、
下記式(14):
Rf1COX (14)
(Rf1は、式(13)中のRf1と同じである。Xはハロゲン原子である。);
で表される酸ハロゲン化物と、
下記式(15):
+ -N(Si(R43)(SO2Rf2) (15)
(Y+およびRf2は、それぞれ式(13)中のY+およびRf2と同じである。R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基である。);
で表されるシリルスルホンアミド塩とを反応させるアミド塩製造方法。
【請求項13】
下記式(16):
【化4】

(Rf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Y+は水素イオン以外のカチオンである。);
で表されるアミド塩を製造する方法であって、
下記式(17):
【化5】

(Rf1およびRf2は、それぞれ、式(16)中のRf1およびRf2と同じである。);
で表されるアミドと、
下記式(18):
+ -OCOA (18)
(Aは、置換または無置換のアルキル基、ヒドロキシ基、または−O-+基である。Y+は、式(16)中のY+と同じである。)
で表される化合物とを反応させるアミド塩製造方法。
【請求項14】
前記式(16)中のY+はアルカリ金属のカチオンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(18)で表される塩は炭酸塩および/または炭酸水素塩である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
下記式(19):
【化6】

(Rf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Y+は有機カチオンである。)
で表されるアミド塩を製造する方法であって、
下記式(20):
【化7】

(Rf1およびRf2は、それぞれ、式(19)中のRf1およびRf2と同じである。Y+は金属のカチオンである。);
で表されるアミド塩と、
下記式(21):
+ -B (21)
(Y+は、式(19)中のY+と同じである。-Bは無機または有機のアニオンである。);
で表される化合物とを反応させるアミド塩製造方法。
【請求項17】
下記式(22):
【化8】

(Rf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。);
で表されるアミド。
【請求項18】
下記式(24):
【化9】

(Rf1は、その化学構造の少なくとも一部にエーテル結合を含むアルキル鎖を有する一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。Rf2は、エーテル結合を含むまたは含まない一価の有機基の全ての水素原子をフッ素原子に置き換えた基である。);
で表されるアミドを製造する方法であって、
下記式(25):
【化10】

(Rf1およびRf2は、それぞれ、式(24)中のRf1およびRf2と同じである。Y+は水素イオン以外のカチオンである。);
で表されるアミド塩と酸とを反応させるアミド製造方法。
【請求項19】
前記酸が硫酸である、請求項18に記載の方法。

【公開番号】特開2006−206456(P2006−206456A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17406(P2005−17406)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】