説明

新規カルシウムチャネル

【課題】同定されたイオンチャネルの数を増やし、その複雑さを更に理解することによって、イオンチャネル機能を変更する治療における今後の取り組みに寄与すること。
【解決手段】特定の配列を有する新規α1Dカルシウムチャネルサブユニットポリペプチド、核酸、並びに、ポリペプチド及び核酸のフラグメント、及び、この使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
全ての細胞は、必須生理機能を行うために細胞膜を横切る無機イオンの調節された運動に依存する。電気的興奮性、シナプス可塑性、及びシグナル伝達は、イオン濃度の変化が決定的役割を果たすプロセスの例である。一般に、これらの変化を可能にするイオンチャネルは、各々が2つ以上の膜貫通ドメインを含む1つ又は複数のサブユニットからなるタンパク質性細孔である。大部分のイオンチャネルは、寸法及び電荷の物理的優先度により、特定のイオン、主にNa、K、Ca2+、又はClに選択性を有する。イオンは、能動輸送よりむしろ電気化学力によって膜を横断し、これにより、単一のチャネルは毎秒数百万のイオンを通過させることができる。チャネルの開口、つまり「ゲーティーング」は、チャネルのサブクラスに依存し、電位の変化又はリガンド結合によって厳重に制御される。イオンチャネルは、非常に多くの生理的プロセスに関与するため、魅力的な治療標的である。しかし、特定の組織型における特定のチャネルに特異性を有する薬剤の生成は、依然として大きな課題のままである。
【0002】
電位開口型イオンチャネルは、膜電位の変化に応答して開口する。例えば、ニューロンのような興奮性細胞の脱分極は、Naイオンの一過性流入をもたらし、これにより、神経活動電位が伝搬される。このNa濃度の変化は、電位開口型Kチャネルによって探知され、この電位開口型Kチャネルは、続いてKイオンを流出させる。Kイオンの流出は、膜を再分極させる。他の細胞型は、活動電位の生成を、電位開口型Ca2+チャネルに依存する。電位開口型イオンチャネルは、分泌、恒常及び分裂促進プロセスの調節のような、非興奮性細胞内の重要な機能も実行する。リガンド開口型イオンチャネルは、神経伝達物質(例えば、グルタミン酸、セロトニン、アセチルコリン)のような細胞外刺激、又は細胞内刺激(例えば、cAMP、Ca2+、リン酸化)によって、開口できる。
【0003】
カルシウムチャネルには、電位開口型クラス及び非電位開口型クラスが含まれる。電位開口型カルシウムチャネルは、更に、T、L、N、P、Qサブタイプに分割できる。他のサブタイプは陽電位で活性化する一方、T型チャネルは、陰電位で一時的に活性化する。電位開口型Ca2+チャネルのαサブユニットは、電位開口型ナトリウムチャネルのαサブユニットに類似し、各々が6つの膜貫通ドメインを含む4つの反復領域を含む。P/Q型αサブユニットは、脳、運動ニューロン及び腎臓において発現し、伝達物質の放出のために重要である。N−型αサブユニットは、中枢及び末梢神経系において発現し、伝達物質の放出のために重要である。L−型αサブユニットは、心臓、肺、平滑筋、線維芽細胞、脳、膵臓及び神経内分泌系において発現し、筋興奮と収縮との連関を媒介する。R−型サブユニットは、脳及び筋肉において発現し、伝達物質の放出のために重要である。T−型サブユニットは、脳、心及び平滑筋において発現する。その他のαサブユニットは、網膜及び骨格筋において発現する。アルファ−1サブユニットは、例えばCa2+流入の動態、Ca2+電流振幅又は電位依存性を変更することによってチャネルの機能を調節する、補助サブユニットに結合する。
【0004】
非電位開口型Ca2+チャネルには、リガンド開口型チャネルが含まれる。これらのチャネルは、筋肉及び他の組織において発現するCa2+ATPaseである。Ca2+ATPaseの突然変異は、ブローディ(Brody)筋疾患(ATP2A1)、ダリエル−ホワイト病及び毛包性角化症(ATP2A2)、聴覚障害及び前庭均衡失調(ATP2B2)の原因となる。非電位開口型Ca2+チャネルのもう1つの重要なクラスは、細胞内クラスであり、この細胞内クラスには、リアノジン受容体、イノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)受容体、ニコトゥイーン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(NAADP)受容体、及びスフィンゴ脂質受容体(EDG1)が含まれる。一般に、細胞内Ca2+チャネルは、ホモ四量体複合体を形成する。これら複合体は、細胞内Ca2+レベルの上昇、リアノジン、カフェイン、IP、NAADP、及びスフィンゴシン−1−リン酸のような第2メッセンジャーによって刺激される。これらのチャネルを介した細胞内Ca2+の放出は、シグナル伝達事象の増幅をもたらす。
【0005】
イオンチャネル機能の遺伝的又は薬理的摂動は、劇的な臨床結果をもたらし得る。遺伝性QT延長症候群、てんかん、膵嚢胞性線維症、及び偶発性運動失調は、イオンチャネルサブユニットの突然変異に起因する遺伝性疾患のうちの数例である。ある薬剤によって引き起こされる不整脈及び発作のような毒性副作用は、イオンチャネル機能の妨害によるものである(非特許文献1及び2参照)。薬剤は、イオンチャネル活性の治療的調節に有用であり、高血圧、狭心症、心筋虚血、喘息、膀胱過敏性、脱毛症、疼痛、心不全、月経困難、II型糖尿病、不整脈、移植片拒絶、発作、痙攣、てんかん、脳卒中、胃自発運動過剰症、精神病、癌、筋ジストロフィー、及び睡眠発作を含む多くの病理的状態の治療に使用できる(非特許文献3及び4参照)。同定されたイオンチャネルの数を増やし、その複雑さを更に理解することは、イオンチャネル機能を変更する治療における今後の取り組みに寄与するであろう。
【非特許文献1】Sirois and Atchison,Neurotoxicology,17(1):63−84、1996
【非特許文献2】Keating,M.T.,Science 272:681−685,1996
【非特許文献3】Coghlan,M.J.et al.,J.Med.Chem.44:1627−1653,2001
【非特許文献4】Ackerman,M.J.and Clapham,D.E.,N.Eng.J.Med.336:1575−1586,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書において、新規α1Dカルシウムチャネルサブユニットポリペプチド、核酸、並びに、ポリペプチド及び核酸のフラグメントが提供される。同様に、新規サブユニットポリペプチド、核酸、及びこれらのフラグメント、を使用する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面において、本発明は、単離L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドであって、このポリペプチドがアミノ酸配列KIVA(配列番号2)を含むことを特徴とする。KIVA配列は、カルシウムチャネルの細胞外ドメイン内にあってもよい。α1Dポリペプチドは、ヒト型であってもよい。1つの実施態様において、ポリペプチドは、次のアミノ酸配列:TRYYETYIR(配列番号10)を含まない。
【0008】
1つの実施態様において、ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0009】
1つの実施態様において、ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列からなる。
【0010】
もう1つの側面において、本発明は、ポリペプチドが、配列番号6に少なくとも85%(例えば、少なくとも90%、95%、99%)の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、ポリペプチドが、次の特徴:
(a)配列番号6のアミノ酸1291−1305の欠失、
(b)配列番号2の挿入、又は、
(c)配列番号6のアミノ酸1804−1812の欠失、の1つ以上を含む、単離L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドであることを特徴とする。
【0011】
1つの実施態様において、ポリペプチドは配列番号2の挿入を含み、この挿入は細胞外ドメイン内にある。この挿入は、カルシウムチャネルサブユニットの反復ドメインの第3及び第4膜貫通セグメントの間にあってもよい。例えば、挿入は、第4反復ドメインの第3及び第4膜貫通セグメントの間にあってもよい。1つの実施態様において、挿入は、配列番号6のアミノ酸1290の後に起きる。例えば、挿入は、配列番号6のアミノ酸1290にある。
【0012】
1つの実施態様において、ポリペプチドは、特徴(a)、(b)、又は(c)のいずれか2つを有する。
【0013】
1つの実施態様において、ポリペプチドは、特徴(a)、(b)、及び(c)の3つ全てを有する。
【0014】
もう1つの側面において、本発明は、配列番号4の少なくとも10個の隣接アミノ酸を含む単離ポリペプチドであることを特徴とする。ポリペプチドは、アミノ酸1281−1284の少なくとも1つ、並びに/又は、アミノ酸1792及び1793を含み得る。1つの実施態様において、細胞外ドメインの一部分は、置換される部分が、KIVA(配列番号2)配列を含まない、他のカルシウムチャネルαサブユニット(例えば、他のカルシウムチャネルα1Dサブユニット、又はカルシウムチャネルα1Sサブユニット、α1Cサブユニット若しくはα1Fサブユニット)からの細胞外ドメインによって置換される。
【0015】
様々な実施態様において、本明細書に記載されるカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドは、(例えば蛍光標識、放射活性標識、又は他の検出可能な化合物、又は毒素によって)ラベルされる。
【0016】
更にもう1つの側面において、本発明は、単離L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット核酸分子であることを特徴とする。1つの実施態様において、核酸は、ポリペプチドが、アミノ酸配列KIVA(配列番号2)を含む単離L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドをコードする。1つの実施態様において、KIVA配列は、カルシウムチャネルの細胞外ドメイン内にある。
【0017】
1つの実施態様において、核酸は、ヒトα1D+KIVAポリペプチドをコードする。1つの実施態様において、核酸は、次のアミノ酸配列:TRYYETYIR(配列番号10)を含まないポリペプチドをコードする。
【0018】
1つの実施態様において、核酸は、配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0019】
1つの実施態様において、核酸は、配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする。
【0020】
1つの実施態様において、核酸は、ポリペプチドが、配列番号6に少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつポリペプチドが、次の特徴:
(a)配列番号6のアミノ酸1291−1305の欠失、
(b)配列番号2の挿入、又は、
(c)配列番号6のアミノ酸1804−1812の欠失、の1つ以上を含む、単離L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドをコードする。
【0021】
1つの実施態様において、核酸は、配列番号2のアミノ酸の挿入をコードし、この挿入は、細胞外ドメイン内にある。この挿入は、カルシウムチャネルサブユニットの反復ドメインの第3及び第4膜貫通セグメントの間にあってもよい。例えば、挿入は、第4反復ドメインの第3及び第4膜貫通セグメントの間にあってもよい。1つの実施態様において、挿入は、配列番号6のアミノ酸1290の後に起きる。例えば、挿入は、配列番号6のアミノ酸1290にある。
【0022】
1つの実施態様において、核酸は、特徴(a)、(b)、又は(c)のいずれか2つを有するポリペプチドをコードする。
【0023】
1つの実施態様において、核酸は、特徴(a)、(b)、及び(c)の3つ全てを有するポリペプチドをコードする。
【0024】
1つの実施態様において、核酸は、配列番号4の少なくとも10個の隣接アミノ酸を含む単離ポリペプチドをコードする。ポリペプチドは、アミノ酸1281−1284の少なくとも1つ、並びに/又は、アミノ酸1792及び1793を含み得る。1つの実施態様において、細胞外ドメインの一部分が他のカルシウムチャネルαサブユニットからの細胞外ドメインによって置換され、置換される部分はKIVA(配列番号2)配列を含まない。
【0025】
1つの実施態様において、核酸は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。
【0026】
1つの実施態様において、核酸分子は、配列番号3のヌクレオチド配列からなる。
【0027】
1つの実施態様において、核酸は、配列番号3の核酸配列の対立遺伝子である。
【0028】
1つの実施態様において、核酸は、L−型カルシウムα1D+KIVAサブユニット核酸分子のフラグメントであり、このフラグメントは、配列番号2をコードする。
【0029】
もう1つの側面において、本発明は、プロモーターに操作可能に連結されたL−型カルシウムα1D+KIVAサブユニット核酸分子を含む発現ベクターであることを特徴とする。
【0030】
更にもう1つの側面において、本発明は、L−型カルシウムα1D+KIVAサブユニット核酸分子を含む宿主細胞であることを特徴とする。
【0031】
1つの側面において、L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチド、例えば本明細書において記載されたα1D+KIVAサブユニットポリペプチドに優先的に結合する薬剤であることを特徴とする。
【0032】
1つの実施態様において、薬剤は、L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドに選択的に結合し、かつ、配列番号5の配列を含むL−型カルシウムチャネルα1Dサブユニットポリペプチドには結合しない。
【0033】
薬剤は、小分子、核酸、又はタンパク質であってもよい。薬剤は、L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドのカルシウムチャネル活性を調節(例えば抑制又は増強)できる。薬剤は、抗体又はその抗原結合フラグメント、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、又は、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体のFabフラグメントであってもよい。
【0034】
本発明は、L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドに優先的に結合する薬剤及び薬理学的に許容し得る担体を含む医薬組成物であることを特徴とする。
【0035】
カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチド又は核酸の存在を、インビトロ(例えば組織のような生体試料)又はインビボ(例えば被験者におけるインビボイメージング)で検出する方法も、本明細書において提供される。この方法は、(a)試料を、α1D+KIVAサブユニットポリペプチド又は核酸に結合する薬剤に接触させること、及び、(b)(例えば本明細書において記載される結合アッセイを使用して)薬剤及び試料の間での複合体形成を検出すること、を含む。この方法は、基準試料(例えば、対照試料)を薬剤に接触させること、及び、基準試料と比較して、薬剤及び試料の間の複合体形成の程度を決定すること、を含んでもよい。
【0036】
本明細書に記載したカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット核酸及び/又はポリペプチドを使用したスクリーニングアッセイ用キット、及び、例えばα1D+KIVAサブユニットポリペプチドをインビトロで発現し、α1D+KIVAサブユニットポリペプチドのモジュレータを同定するためのカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット核酸の使用といった、使用の説明も、提供される。キットは、例えばα1D+KIVAサブユニットポリペプチドを検出、又はα1D+KIVAサブユニットポリペプチドの活性を観察するための、標識又は追加薬剤といった追加試薬を少なくとも1つ更に含み得る。
【0037】
1つの側面において、本発明は、カルシウムチャネルを作成する方法であることを特徴とする。この方法は、例えばL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドをコードする核酸を調製することを含み得る。方法は、カルシウムチャネルα/δサブユニット及び/又はカルシウムチャネルβサブユニットをコードする1つ以上の核酸を調製することを更に含み得る。方法は、核酸を発現するステップを更に含み得る。
【0038】
1つの側面において、本発明は、細胞内でL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチド活性を調節する方法であることを特徴とする。例えば、この方法は、
α1D+KIVAサブユニットポリペプチドを含むL−型カルシウムチャネルを調製すること、
このチャネルを、α1D+KIVAサブユニットポリペプチドの活性を調節するために有効な量のL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットモジュレータに接触させること、を含み、
前記α1D+KIVAサブユニットポリペプチドを、請求項1から16のいずれかに記載のα1D+KIVAサブユニットポリペプチドとする。
【0039】
モジュレータは、小分子、核酸、又はタンパク質であってもよい。
【0040】
もう1つの側面において、本発明は、細胞内でL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドの活性を調節する薬剤を同定する方法であることを特徴とする。例えば、この方法は、
α1D+KIVAサブユニットポリペプチド、例えば本明細書に記載されたα1D+KIVAサブユニットポリペプチドを含む第1カルシウムチャネルを提供すること、
このチャネルを試験化合物に接触させること、及び、
カルシウムチャネルの活性を評価すること、を含み、
基準値に対する活性の変化を、化合物がチャネルを調節する薬剤であることを示すものとする。
【0041】
試験化合物は、小分子、ペプチド、又は核酸であってもよい。
【0042】
カルシウムチャネルは、生体試料内に含まれ得る。試料は、細胞膜を含み得る。1つの実施態様において、試料は、細胞を含む。細胞は、真核細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Xenopus oocyte)又は哺乳動物細胞であってもよい。
【0043】
方法において評価される活性は、カルシウム濃度の調節を含み得る。評価は、カルシウムフラックスを検出することを含み得る。
【0044】
α1D+KIVAサブユニットポリペプチドを含むカルシウムチャネルの接触は、試験化合物がない場合に第1の量のカルシウムフラックスが引き起こされる条件下で、行う。
【0045】
1つの実施態様において、評価は、カルシウムフラックスアッセイを使用することを含み得る。
【0046】
1つの実施態様において、アッセイは、パッチクランプ電気生理を使用する。
【0047】
1つの実施態様において、アッセイは、二電極電位クランプ電気生理を使用する。
【0048】
1つの実施態様において、アッセイは、蛍光アッセイである。
【0049】
L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドの活性を調節する薬剤を同定する方法は、
例えば本明細書に記載されたα1D+KIVAサブユニットポリペプチド以外のα1Dサブユニットポリペプチドを含む第2カルシウムチャネルを調製するステップ、
前記第2チャネルを前記試験化合物に接触させるステップ、
前記第2カルシウムチャネルの活性を評価するステップ、を更に含み得る。
【0050】
この方法は、試験化合物の存在下での第1カルシウムチャネルの活性を、試験化合物の存在下での第2カルシウムチャネルの活性と比較することを更に含み得る。
【0051】
任意で、方法は、レコードを調製すること又は方法の結果のデータセットを生成すること、例えば印刷を調製すること又はコンピュータ読み取り可能なデータセットを生成すること、を更に含み得る。
【0052】
方法の幾つかの実施態様において、複数のカルシウムチャネルを調製する。
【0053】
方法の幾つかの実施態様において、α1D+KIVAサブユニットポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0054】
もう1つの側面において、本発明は、L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドに選択的に結合する薬剤を同定する方法であることを特徴とする。例えば、この方法は、
第1α1D+KIVAサブユニットポリペプチド、例えば本明細書に記載されたα1D+KIVAサブユニットポリペプチドを調製すること、
第1ポリペプチドを試験化合物に接触させること、
試験化合物の第1ポリペプチドへの結合を検定すること、
第2α1Dサブユニットポリペプチドを調製すること、
第2ポリペプチドを前記試験化合物に接触させること、
試験化合物の第2ポリペプチドへの結合を検定すること、を含み、
第1ポリペプチドに結合し且つ前記第2ポリペプチドに実質的に結合しない化合物を、この化合物がL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドアイソフォームに選択的に結合する薬剤であることを示すものとする。
【0055】
もう1つの側面において、本発明は、カルシウム電流に関する障害の治療に有用な薬剤を同定する方法であることを特徴とする。例えば、この方法は、
α1D+KIVAサブユニットポリペプチド、例えば本明細書に記載されたα1D+KIVAサブユニットポリペプチドを含むカルシウムチャネルを調製すること、
前記チャネルを試験化合物に接触させること、及び、
前記チャネルの活性を評価すること、を含み、
基準値に関する活性の変化を、前記試験化合物がカルシウム電流に関する障害に有用な薬剤であることを示すものとする。
【0056】
障害は、心臓病、又は内分泌障害、又はニューロン障害であり得る。
【0057】
方法は、化合物を(例えば動物モデルを使用して)インビボで投与することを更に含み得る。
【0058】
方法は、インビボで使用する化合物を修飾することを更に含み得る。
【0059】
もう1つの側面において、本発明は、カルシウムチャネル電流に関する障害を有する被験者を治療する方法であることを特徴とする。例えば、この方法は、
治療を必要とする被験者に、α1D+KIVAサブユニットを含むカルシウムチャネルに選択的な薬理学的薬剤を投与することを含む。
【0060】
1つの実施態様において、障害は、心臓病である。
【0061】
被験者を治療する方法は、このような治療を必要とする被験者を識別するステップを更に含み得る。このような治療を必要とする被験者を識別することは、被験者又は医療従事者の判断であってよく、主観的(例えば見解)又は客観的(例えば試験又は診断方法によって測定可能)であってよい。
【0062】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細を、表及び以下の記載に示す。本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の記載及び請求項より明らかになるであろう。
(配列の簡単な説明)
【0063】
次の配列は、表1に提供される。
【0064】
配列番号1は、ヒトL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット「KIVA」部位のヌクレオチド配列である。
【0065】
配列番号2は、ヒトL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット「KIVA」部位のアミノ酸配列である。
【0066】
配列番号3は、ヒトL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットcDNAのヌクレオチド配列である。
【0067】
配列番号4は、ヒトL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0068】
配列番号5は、ヒトL−型カルシウムチャネルα1Dサブユニットのコード領域のヌクレオチド配列である(GenBank(登録商標)受入番号M76558)。
【0069】
配列番号6は、ヒトL−型カルシウムチャネルα1Dサブユニットポリペプチドのアミノ酸配列である(GenBank(登録商標)受入番号Q01668)。
【0070】
配列番号7は、配列番号3によってコードされる新規アイソフォームの「KIVA」部位をコードするヌクレオチド配列によって置換された配列番号5(配列番号5の塩基対3871−3915)のヌクレオチド配列である。
【0071】
配列番号8は、配列番号4の新規アイソフォーム内の「KIVA」挿入によって置換された配列番号6(配列番号6のアミノ酸1291−1305)のアミノ酸配列である。
【0072】
配列番号9は、配列番号3のヌクレオチド配列がない配列番号5(配列番号5の塩基対5409−5435)のヌクレオチド配列である。
【0073】
配列番号10は、配列番号4のヌクレオチド配列がない配列番号6(配列番号6のアミノ酸1804−1812)のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
本発明は、ひとつにはL−型カルシウムチャネルα1Dサブユニットの新規アイソフォームをコードするcDNAの同定に基づく。新規cDNAは、ヒト心房組織から単離された。cDNAのコード配列は、配列番号3に示される。新規アイソフォームの予測されるアミノ酸配列は、配列番号4に示される。関連するヒトL−型カルシウムチャネルα1Dサブユニットヌクレオチド配列は、GenBank(登録商標)に受入番号M76558で寄託された(配列番号5)。新規アイソフォームは、幾つかの点でGenBank(登録商標)データベースにおける関連配列と異なる。第1に、新規アイソフォームのヌクレオチド配列は、M76558の塩基対4381−4425の欠失を含む(これは、M76558における配列のコード領域である、配列番号5の塩基対3871−3915の欠失に等しい)。第2に、新規アイソフォームは、配列番号1に示す新規ヌクレオチド配列による塩基対4381−4425の置換を含む。これらの変化は、次の相違点と共に、GenBank(登録商標)受入番号Q01668のα1Dサブユニットポリペプチドに関連するポリペプチド配列をもたらす。第1に、新規アイソフォームは、9個のアミノ酸(残基1291−1305)の欠失を含む。第2に、ヌクレオチド4381−4425での塩基対の置換は、配列KIVA(配列番号2)との15個のアミノ酸の置換をもたらす。ヌクレオチド4381−4425の置換部位は、遺伝子の第4反復領域の第3及び第4膜貫通セグメント(S3及びS4)の接合部にある(以下のαサブユニットドメイン構造の考察参照)。興味深いことに、この接合部は、ラットから単離された心房α1Dアイソフォーム内の挿入部位である(Takimoto et al.,J.Mol.Cell.Cardiol.29:3035−3042、1997)。同様に、新規ヒト心房α1Dアイソフォームは、複数の独立した機会に単離されてきた。これらの結果は、α1D+KIVAサブユニット及び他のα1Dポリペプチドの変異部位が保存されていることを示唆する。
【0075】
本明細書で使用されるように、用語「カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット」又は「α1D+KIVA」は、以上に記載した新規アイソフォームの1つ以上の特徴を有するカルシウムチャネルα1Dサブユニット核酸又はポリペプチドを示す。カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドに関して、これらの特徴は、(i)「KIVA」アミノ酸配列の挿入、(ii)ヒトカルシウムチャネルα1Dサブユニットのアミノ酸残基1291−1305、又は関連するカルシウムチャネルサブユニットにおける対応する領域又は配列での約15個のアミノ酸の欠失、(iii)GenBank(登録商標)受入番号Q01668(同じく配列番号6)における配列の残基1803−1811、又は関連するカルシウムチャネルサブユニットにおける対応する領域又は配列でのヒトカルシウムチャネルα1Dサブユニットの約9個のアミノ酸の欠失を含む。欠失は、(iiに関して)配列番号8及び(iiiに関して)配列番号10に相同なアミノ酸配列の欠失を含む。α1D+KIVA核酸に関して、これらの特徴は、(iv)「KIVA」配列をコードする12個のヌクレオチドの挿入、(v)GenBank(登録商標)受入番号M76558のヒトカルシウムチャネルα1Dサブユニットの残基4381−4425(若しくは配列番号5の残基3871−3915)、又は関連する対応領域又は配列(例えば非ヒトカルシウムチャネルα1Dサブユニット)に、対応する約45の塩基対の欠失、及び(vi)GenBank(登録商標)受入番号M76558のヒトカルシウムチャネルα1Dサブユニットの残基5419−5945(若しくは配列番号5の残基5409−5435)、又は関連する対応領域(例えば非ヒトカルシウムチャネルα1Dサブユニット)に、対応する約27の塩基対の欠失を含む。核酸の欠失は、(ivに関して)配列番号1、(vに関して)配列番号7、及び(viに関して)配列番号9の配列に相同なヌクレオチド配列の欠失を含む。
【0076】
L−型電位開口型カルシウムチャネル
電位開口型カルシウムチャネルは、約130−200キロダルトン(kD)の大きいαサブユニット、小さいδサブユニットに共有結合するαサブユニット、及び約60kD以下のβサブユニットを有する、多サブユニット膜貫通タンパク質である。これらのチャネルは、細胞内へのカルシウムイオン流入を媒介する。αサブユニットは、チャネルの電位感受性、孔形成部分を形成し、他のサブユニットは、αサブユニットの活性を調節する。本明細書に記載されるカルシウムチャネルを含む電位開口型イオンチャネルは、膜分極の変化に対応して、静止状態(分極、閉鎖チャネル、活性化可能)、開口状態(脱分極、開口チャネル、活性化)、及び閉鎖状態(脱分極、閉鎖チャネル、不活性化)のサイクルを経る。イオン伝導αサブユニットの荷電領域は、膜分極の変化を感知する。βサブユニットは、カルシウムチャネルのαサブユニットの電流、電位依存性、活性化及び不活性化を調節する。
【0077】
L−型カルシウムチャネルは、α1S、α1C、α1D、又はα1Fサブユニットを含む高電位活性化カルシウムチャネルであり、それぞれCa1.1、Ca1.2、Ca1.3、及びCa1.4とも称される。L−型カルシウムチャネルは、一般にジヒドロピリジンによって拮抗される。L−型チャネルは、骨格筋、心筋、内分泌細胞、ニューロン、及び網膜を含む多くの組織において発現し、興奮−収縮連関、カルシウム恒常性、遺伝子調節、ホルモン分泌、及び緊張性神経伝達物質放出を含む種々の生物学的作用を媒介する(Catterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.16:521−55、2000)。
【0078】
カルシウムチャネルのαサブユニットは、4つの反復ドメイン(I−IV)を含む。これらの反復ドメインの各々は、6つの膜貫通セグメント(S1−S6)を含む(Catterall,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.16:521−55、2000)。
【0079】
本明細書で使用されるように、「カルシウムチャネル」は、心臓細胞等の筋細胞のような細胞内でシグナルを受け取ること、伝導すること、及び伝達することに関与するタンパク質を指す。カルシウムチャネルは、一般に、多くの細胞型、例えばニューロン、筋肉及び内分泌細胞において発現する。
【0080】
本明細書で使用されるように、「カルシウムチャネル媒介活性」は、カルシウムチャネル、例えば脳細胞又は筋細胞内のカルシウムチャネル、に関連する活性、機能又は応答を示す。カルシウムチャネル媒介活性は、例えば神経系、筋組織、心臓組織、その他の細胞及び組織内で、シグナルを受け取ること、伝導すること、及び伝達することに関連する活性である。カルシウムチャネル媒介活性には、例えば細胞内へのカルシウム流入、興奮−収縮連関、ホルモン分泌調節、及び細胞からの神経伝達物質放出の調節が含まれる。同様に、本明細書で同義的に使用されるように、「カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット活性」、「カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの生物活性」又は「カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの機能活性」は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質、ポリペプチド又は核酸分子の、活性、機能又は応答を指す。
【0081】
本発明の単離タンパク質、例えば本明細書に記載されたカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質は、配列番号4のアミノ酸に充分に相同なアミノ酸配列を有するか、配列番号3に充分に相同なヌクレオチド配列によってコードされる。本明細書で使用されるように、用語「充分に相同」とは、第1アミノ酸又はヌクレオチド配列が、充分な又は最小数の、第2アミノ酸又はヌクレオチド配列と同一又は等価のアミノ酸残基(例えば、類似側鎖を有するアミノ酸残基)又はヌクレオチドを含み、これにより、第1及び第2アミノ酸又はヌクレオチド配列が共通の構造ドメイン若しくはモチーフ、又は共通の機能活性を共有することを指す。
【0082】
従って、本発明の他の実施態様は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット活性を有する、単離カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質及びポリペプチドであることを特徴とする。好ましいタンパク質は、好ましくは細胞外ドメイン内でKIVA配列(配列番号2)を有し且つTRYYETYIR配列(配列番号10)を欠くカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質である。その他の好ましいタンパク質は、配列番号4の配列を有するタンパク質である。
【0083】
長さが約6426個のヌクレオチドである(配列番号3の)新規ヒトカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットコード配列は、約200kDの分子量を有し、長さが約2141個のアミノ酸残基であるタンパク質をコードする。この新規アイソフォームをコードする遺伝子は、心房において発現する。
【0084】
本発明の種々の側面が、以下において更に詳細に記載される。
【0085】
単離核酸分子
本発明の一側面は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチド又はその生物活性を有する部分をコードする単離核酸分子、並びに、本明細書に記載された新規カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの関連アイソフォームをコードする核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとしての使用に充分な核酸フラグメント、及びカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット核酸分子の増幅又は突然変異用のPCRプライマーとして使用するためのフラグメントに関する。本明細書で使用されるように、用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)、並びにヌクレオチドアナログを使用して生成されたDNA又はRNAのアナログを含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖又は二重鎖であってもよいが、好ましくは二重鎖DNAである。
【0086】
「単離」核酸分子は、核酸の天然源に存在する他の核酸分子から単離されたものである。好ましくは、「単離」核酸は、核酸が由来する生体のゲノムDNAにおいて自然に核酸に隣接する配列(すなわち、核酸の5’又は3’末端に位置する配列)を含まない。例えば、種々の実施態様において、単離カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット核酸分子は、核酸が由来する細胞のゲノムDNAにおいて自然に核酸分子に隣接する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、又は0.1kb未満のヌクレオチド配列を含んでもよい。更に、cDNA分子のような「単離」核酸分子は、組換え技術によって生成されたとき、他の細胞物質又は培地を実質的に含まなくてよく、又は、化学合成されたとき、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まなくてよい。
【0087】
本発明の核酸分子、例えば配列番号1、配列番号3のヌクレオチド配列又はその一部を有する核酸分子は、標準分子生物学技術及び本明細書において提供される配列情報を使用して、単離され得る。ハイブリダイゼーションプローブとして配列番号1又は配列番号3の核酸配列の全部又は一部を使用すると、カルシウムチャネルα1D+KIVA核酸分子は、標準ハイブリダイゼーション及びクローニング技術(例えばSambrook,J.,Fritsh,E.F.,and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989参照)を使用して単離され得る。
【0088】
更に、配列番号3の全部又は一部を包含する核酸分子は、配列番号1又は配列番号3の配列に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離され得る。
【0089】
本発明の核酸は、標準PCR増幅技術に従って、鋳型としてcDNA、mRNAあるいはゲノムDNAを使用し、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用することで、増幅され得る。このように増幅された核酸は、適切なベクターにクローニングでき、DNA配列分析によって特徴付けられる。更に、カルシウムチャネルα1D+KIVAヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準合成技術によって、例えば自動DNAシンセサイザーを使用して調製できる。
【0090】
もう1つの実施態様において、本発明の単離核酸分子は、配列番号1、配列番号3に示すヌクレオチド配列の相補体又はこれらヌクレオチド配列の一部である、α1D+KIVA核酸分子を含む。配列番号1又は配列番号3に示すヌクレオチド配列に相補的である核酸分子は、配列番号1又は配列番号3に示すヌクレオチド配列にハイブリダイズできるように、配列番号1又は配列番号3に示すヌクレオチド配列に充分に相補的である。
【0091】
更にもう1つの好ましい実施態様において、本発明の単離核酸分子は、配列番号3に示すヌクレオチド配列の全長、又はこのヌクレオチド配列の一部に少なくとも約75%、85%、95%又はそれ以上の相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0092】
更に、本発明の核酸分子は、配列番号3の核酸配列の一部のみ、例えばプローブ又はプライマーとして使用され得るフラグメント、又はα1D+KIVAサブユニットタンパク質の生物活性部分をコードするフラグメントを含んでよい。ヒトα1D+KIVAcDNAのクローニングから決定されるヌクレオチド配列によって、関連するアイソフォーム及び他種由来の相同体の同定及び/又はクローニングに使用するために設計される、プローブ及びプライマーを生成できる。プローブ/プライマーは、一般に、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3のセンス配列、配列番号1、配列番号3のアンチセンス配列、又は、配列番号1、配列番号3の自然発生する対立遺伝子変異体又は突然変異体の、少なくとも約12又は15、好ましくは約20又は25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65又は75個の連続ヌクレオチドに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を一般に含む。
【0093】
α1D+KIVAヌクレオチド配列に基づくプローブは、関連するアイソフォームをコードする転写物を検出するために使用できる。プローブは、そこに取り付けられた標識基を更に含んでよい。標識基は、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素又は酵素補因子であってよい。このようなプローブは、例えば、被験者の細胞試料においてα1D+KIVAをコードする核酸のレベルを測定することによって、α1D+KIVAタンパク質を発現又は誤発現する細胞又は組織を同定する診断試験キットの一部として使用できる。核酸のレベルの測定としては、例えば、α1D+KIVAmRNAレベルを検出すること、又は、ゲノムα1Dサブユニット遺伝子が、α1D+KIVAアイソフォームの発現に影響を及ぼす領域内に突然変異又は欠失を有するか否かを決定することが挙げられる。
【0094】
「α1D+KIVAタンパク質の生物活性部分」をコードする核酸フラグメントは、配列番号3のヌクレオチド配列の一部を単離すること、(例えばインビトロ組換え発現によって)α1D+KIVAタンパク質のコード部分を発現すること、及び、α1D+KIVAタンパク質のコード部分の活性を評価すること、によって調製できる。ここで、配列番号3のヌクレオチド配列の一部は、α1D+KIVA生物活性(α1D+KIVAタンパク質の生物活性は、本明細書に記載される)を有するポリペプチドをコードする部分である。
【0095】
本発明は、遺伝子コードの縮重のために配列番号3に示すヌクレオチド配列と異なり、配列番号3のヌクレオチド配列によってコードされるものと同じα1D+KIVAタンパク質をコードする核酸分子を、更に包含する。もう1つの実施態様において、本発明の単離核酸分子は、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。
【0096】
配列番号1、及び配列番号3に示したα1D+KIVAヌクレオチド配列に加えて、α1D+KIVAタンパク質のアミノ酸配列の変化を導くDNA配列多型が、個体群(例えばヒト個体群)内に存在し得ることは、当業者によって認識されるであろう。α1D+KIVA遺伝子内のこのような遺伝子多型は、対立遺伝子自然変異のために、個体群内の個体間に存在し得る。本明細書で使用されるように、用語「遺伝子」及び「組換え遺伝子」は、α1D+KIVAタンパク質、好ましくは哺乳動物α1D+KIVAタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を指す。このような対立遺伝子自然変異は、一般に、α1D+KIVA遺伝子のヌクレオチド配列内に1−5%の差異をもたらし得る。対立遺伝子自然変異の結果であり、α1D+KIVAタンパク質の機能活性を変えないα1D+KIVA遺伝子内の任意の及びこれら全てのヌクレオチド変異、並びに結果として生じるアミノ酸多型は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0097】
更に、他のα1D+KIVAカルシウムチャネルファミリーのメンバーをコードし、配列番号1及び配列番号3のα1D+KIVA配列と異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内にあることが意図される。例えば、他のα1D+KIVAcDNAは、ヒトα1D+KIVAのヌクレオチド配列に基づいて同定できる。更に、様々な種のα1D+KIVAタンパク質をコードし、配列番号1及び配列番号3のα1D+KIVA配列と異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内にあることが意図される。例えばマウスα1D+KIVAcDNAは、ヒトα1D+KIVAのヌクレオチド配列に基づいて同定できる。
【0098】
本発明のα1D+KIVAcDNAの対立遺伝子自然変異体及び相同体に対応する核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書で開示されるcDNA又はその一部を、標準ハイブリダイゼーション技術に従ってハイブリダイゼーションプローブとして使用することで、本明細書で開示されるα1D+KIVA核酸への相同性に基づいて単離できる。
【0099】
従って、もう1つの実施態様において、本発明の単離核酸分子は、長さが少なくとも15、20、25、30個又はそれ以上のヌクレオチドであり、配列番号3のヌクレオチド配列を含む核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。好ましくは、分子は、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。他の実施態様において、核酸は、長さが少なくとも30、300、500、700、850、950、又は2000個のヌクレオチドである。本明細書で使用されるように、用語「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」は、互いに少なくとも60%、85%、又は95%の相同性を有するヌクレオチド配列が一般に互いにハイブリダイズされたままであるようなハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を示すことが意図される。ハイブリダイゼーション条件は、当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.,6.3.1−6.3.6,1991に見出すことができる。適度なハイブリダイゼーション条件は、30℃で2×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイゼーションし、次に50℃で1×SSC、0.1%SDS中で洗浄すること、に均等な条件と定義される。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイゼーションし、次に65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中で洗浄すること、に均等な条件と定義される。
【0100】
適度な条件又は高度にストリンジェントな条件下で配列番号3の配列にハイブリダイズする本発明の単離核酸分子は、自然発生する核酸分子に対応できる。本明細書で使用されるように、「自然発生」する核酸分子は、自然に発生する(例えば天然タンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNA又はDNA分子を指す。
【0101】
個体群中に存在し得るα1D+KIVA配列の自然発生した対立遺伝子変異体に加え、当業者は、配列番号1又は配列番号3のヌクレオチド配列を変異することによって、変化を導入でき、これによって、α1D+KIVAタンパク質の機能能力を変えることなく、コードされるα1D+KIVAタンパク質のアミノ酸配列を変化できることを更に認識するであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基でのアミノ酸置換を導くヌクレオチド置換は、配列番号1又は配列番号3の配列内でなされ得る。「必須」アミノ酸残基が生物活性に必要とされる一方、「非必須」アミノ酸残基は、α1D+KIVAの野生型配列(例えば配列番号4の配列)から生物活性を変えることなく変更できる残基である。例えば、本発明のα1D+KIVAタンパク質の間で保存されているアミノ酸残基は、特に変化を受けにくいことが予測される。更に、本発明のα1D+KIVAタンパク質と他のα1Dカルシウムチャネルサブユニットとの間で保存されている追加アミノ酸残基は、変化を受けやすいことが予測されない。
【0102】
従って、本発明のもう1つの側面は、活性に必須でないアミノ酸残基の変化を含むα1D+KIVAタンパク質をコードする核酸分子に関する。このようなα1D+KIVAタンパク質は、依然として、生物活性を保持する配列番号4とアミノ酸配列において異なる。生物活性は、本明細書で記載されるアッセイ、例えばカルシウムチャネル活性アッセイ、例えばCa2+流入アッセイによって測定できる。1つの実施態様において、単離核酸分子は、配列番号4に少なくとも約65%、75%、85%、95%又はそれ以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0103】
配列番号4のタンパク質に相同であるα1D+KIVAタンパク質をコードする単離核酸分子は、コードされるタンパク質に1つ以上のアミノ酸置換、付加又は欠失が導入されるように、1つ以上のヌクレオチド置換、付加又は欠失を配列番号3のヌクレオチド配列に導入することによって、生成できる。突然変異は、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発のような標準技術によって、配列番号3に導入できる。保存的アミノ酸置換は、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基で行うことができる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されるものである。類似側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野において定義される。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。従って、α1D+KIVAタンパク質内の予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基によって置換される。配列番号3の突然変異誘発に続いて、コードされるタンパク質を組み換えて発現でき、タンパク質の活性を測定できる。
【0104】
突然変異α1D+KIVAタンパク質は、(1)非α1D+KIVAタンパク質分子、例えばカルシウムチャネルβ、γ、又はα/βサブユニット、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼCと相互作用する能力、(2)α1D+KIVA依存性シグナル変換経路を活性化する能力、(3)神経伝達物質の放出を調節する能力、(4)膜興奮性を調節する能力、(5)興奮−収縮連関を調節する能力、に関して検定できる。
【0105】
上述したα1D+KIVAタンパク質をコードする核酸分子に加えて、本発明のもう1つの側面は、この核酸分子にアンチセンスである単離核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸には、タンパク質をコードする「センス」核酸に相補的、例えば二重鎖cDNA分子のコード鎖に相補的、又はRNA配列に相補的なヌクレオチド配列が含まれる。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合できる。アンチセンス核酸は、全α1D+KIVAコード鎖、又はその一部のみに相補的であってよい。1つの実施態様において、アンチセンス核酸分子は、α1D+KIVAをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」にアンチセンスである。用語「コード領域」は、アミノ酸残基に翻訳されるコドン(例えば配列番号3に対応するヒトカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットのコード領域)を含むヌクレオチド配列領域を指す。もう1つの実施態様において、アンチセンス核酸分子は、α1D+KIVAをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「非コード領域」にアンチセンスである。用語「非コード領域」は、アミノ酸に翻訳されないコード領域に隣接する5’及び3’配列を示す(すなわち、5’及び3’非翻訳領域とも称される)。
【0106】
本明細書で開示されたα1D+KIVAをコードするコード鎖配列(例えば配列番号1、及び配列番号3)を与えられれば、本発明のアンチセンス核酸は、ワトソンクリック塩基対合則に従って設計できる。アンチセンス核酸分子は、α1D+KIVAmRNAの全コード領域に相補的であってよいが、より好ましくはα1D+KIVAmRNAのコード領域又は非コード領域の一部にのみアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドは、α1D+KIVAmRNAの翻訳開始部位を取り囲む領域に相補的であってよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、KIVA配列をコードする領域に相補的、例えば配列番号1に相補的であってよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば長さが約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50個のヌクレオチドであってよい。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野において公知である手順を用いて、化学合成及び酵素連結反応を使用して構成できる。アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、例えば、自然発生ヌクレオチド、又は分子の生物的安定度を増加、若しくはアンチセンス及びセンス核酸の間に形成された二重鎖の物理的安定度を増加させるように設計され、様々に修飾されたヌクレオチドを使用して化学的に合成できる。例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドが使用できる。アンチセンス核酸を生成するために使用できる修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサントゥイーン、キサントゥイーン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、1,5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキュエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキュエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンが含まれる。代替的に、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向でサブクローニングされた発現ベクターを使用して、生物学的に生成できる(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、以下で更に記載される目的の標的核酸にアンチセンス方向であるRNAである)。
【0107】
本発明のアンチセンス核酸分子は、一般に、被験者に投与されるか、インサイチュ生成され、α1D+KIVAタンパク質をコードする細胞mRNA及び/又はゲノムDNAにハイブリダイズ又は結合し、これにより、例えば転写及び/又は翻訳を抑制することによってタンパク質の発現を抑制する。ハイブリダイゼーションは、安定した二重鎖を形成するための従来のヌクレオチド相補性によったものでよく、例えばDNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合に、二重らせんの主溝内の特異な相互作用を介してもよい。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例には、組織部位での直接注入が含まれる。代替的に、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的とするために修飾された後、全身投与され得る。例えば全身投与に関して、アンチセンス分子は、例えばアンチセンス核酸分子を細胞表面受容体又は抗原に結合された抗体又はペプチドに連結することによって、選択された細胞表面に発現した受容体又は抗原に特異的に結合するように修飾してよい。アンチセンス核酸分子は、同様に、本明細書に記載されたベクターを使用して細胞に送出できる。アンチセンス核酸分子は、アンチセンス分子の充分な細胞内濃度を実現するために、強いpol II又はpol IIIプロモーターの制御下に置かれるベクターコンストラクトが、好ましい。
【0108】
更にもう1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸分子は、α−アノマー核酸分子である。α−アノマー核酸分子は、通常のβユニットに反して、鎖が互いに平行に延びる相補的RNAと特異二重鎖ハイブリッドを形成する(Gaultier et al.Nucleic Acids.Res.15:6625−6641、1987)。アンチセンス核酸分子は、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:6131−6148)又はキメラRNA−DNAアナログ(Inoue et al.FEBS Lett.215:327−330、1987)を含んでもよい。
【0109】
更にもう1つの実施態様において、本発明のアンチセンス核酸は、リボザイムである。リボザイムは、相補領域を有する、mRNAのような一本鎖核酸を開裂できるリボヌクレアーゼ活性を備える触媒RNA分子である。従って、リボザイム(例えば(Haselhoff and Gerlach Nature 334:585−591、1988に記載される)ハンマーヘッド型リボザイム)は、α1D+KIVAmRNA転写物を触媒的に開裂し、これによりα1D+KIVAmRNAの翻訳を抑制するために使用できる。α1D+KIVAコード核酸の特異性を有するリボザイムは、本明細書に開示されるα1D+KIVAcDNAのヌクレオチド配列(すなわち配列番号1、又は配列番号3)に基づいて設計できる。例えば、テトラヒメナL−19 IVS RNAの誘導体は、α1D+KIVAをコードするmRNAにおいて開裂されるヌクレオチド配列に活性部位のヌクレオチド配列が相補的となるように、構築される(例えば、Cech et al.の米国特許第4987071号明細書、及びCech et al.の米国特許第5116742号明細書参照)。代替的に、α1D+KIVAmRNAは、RNA分子プールから特異リボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択するために使用できる(例えば、Bartel,D.and Szostak,J.W.Science 261:1411−1418、1993参照)。
【0110】
本発明のもう1つの実施態様において、RNA干渉(RNAi)が、α1D+KIVAタンパク質の発現を抑制するために使用できる。種々の抑制RNAi分子が同定でき、α1D+KIVAサブユニットの発現を抑制する抑制RNAi分子は、本明細書で記載される治療方法において投与される医薬組成物として配合できる。
【0111】
RNAiは、特定のmRNAが宿主細胞中で分解されるメカニズムを示すために使用される用語である。mRNAを抑制するために、サイレンシングする遺伝子(例えば、α1D+KIVAサブユニットポリペプチドをコードする遺伝子)の一部に対応する二重鎖RNA(dsRNA)が、細胞内に導入される。dsRNAは、短鎖干渉性RNA(つまり、siRNA)と呼ばれる21−25個のヌクレオチド長の二重鎖にダイジェストされ、この二重鎖は、RNA誘発サイレンシング複合体(つまり、RISC)として知られているものを形成するために、ヌクレアーゼ複合体に結合する。RISCは、siRNA鎖の1つと内在性mRNAとの間での塩基対合相互作用によって、相同転写物を標的とする。RISCは、次に、siRNAの3’末端から約12個のヌクレオチドのmRNAを開裂する(Sharp et al.,Genes Dev.15:485−490,2001、及び、Hammond et al.,Nature Rev.Gen.2:110−119,2001参照)。RNAiは、ヒト胚腎臓及びHeLa細胞を含むヒト細胞で成功した(例えば、Elbashir et al.,Nature 411:494−498,2001参照)。ジーンサイレンシングは、RNAヘアピンの内在的発現を強制することによって(Paddison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:1443−1448,2002参照)、又は、(Caplen,Trends in Biotech.20:49−51,2002において検討された)小型(21−23nt)dsRNAのトランスフェクションによって、哺乳動物細胞内で誘発できる。
【0112】
RNAi技術は、標準分子生物学的手法を利用する。(本明細書では、例えばα1D+KIVAサブユニットポリペプチドをコードする配列に対応するであろう)dsRNAは、標準方法によって生成できる(例えば、T7 RNAポリメラーゼによってα1D+KIVAサブユニット配列に対応する鋳型DNAの両鎖を同時に転写することによる。RNAも、化学合成又は組換え生産できる)。dsRNAを生成するキットは、(例えばNew England Biolabs.Inc.から)市販されている。RNAiを媒介するために使用されるRNAは、ホスホロチオエートヌクレオチドのような合成又は修飾されたヌクレオチドを含んでよい。dsRNA又はdsRNAを作るように設計されたプラスミドによって細胞をトランスフェクトする方法も、当該技術分野において慣例となっている手法である。
【0113】
RNAiにより観察されるものと類似する遺伝子サイレンシング効果は、mRNA−cDNAハイブリッドコンストラクトによってトランスフェクトされた哺乳動物細胞において報告された(Lin et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.281:639−644,2001)。従って、α1D+KIVAサブユニット配列を含むmRNA−cDNAハイブリッド、並びに、α1D+KIVAサブユニット配列を含む二重鎖(例えば21−23bpモノマーを含む二重鎖)は、本発明の範囲内である。ハイブリッド及び二重鎖は、本明細書に記載されるアッセイに従って活性を検査でき(すなわち、これらは検査薬として役立ち得る)、抑制活性を示すハイブリッド及び二重鎖は、α1D+KIVAサブユニット活性に関連した疾患又は状態、例えば心臓病を有する又は発症し得る被験者を治療するために使用できる。
【0114】
本発明のdsRNA分子(α1D+KIVAサブユニット遺伝子の部分に対応する二重鎖RNA分子)は、多くの点で異なってよい。例えば、これらは、3’ヒドロキシル基を含んでもよく、上記のように21、22又は23個の連続するヌクレオチド鎖を含んでもよい。更に、これらは、平滑末端を有してもよく、3’末端、5’末端、又は両末端に突出末端を含んでもよい。例えば、RNA分子の少なくとも1つの鎖は、長さが約1から約6個のヌクレオチド((ピリミジン又はプリンヌクレオチドのいずれか)例えば1−5、1−3、2−4又は3−5ヌクレオチド長)の3’突出を有してよい。両鎖が突出を含む場合、突出の長さは、同一でも、各鎖に関して異なっていてもよい。RNA二重鎖の安定度を更に向上するために、3’突出は(例えばアデノシン又はグアノシンヌクレオチドのようなプリンヌクレオチドを含むことによって、又は、修飾されたアナログでピリミジンヌクレオチドを置換(例えば、2’−デオキシチミジンによるウリジン2ヌクレオチド3’突出の置換は、許容され、RNAiの効率に影響を及ぼさない)することによって)、分解に対して安定化してよい。二重鎖又はハイブリッドのインヒビターを作り出す、又は単にアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの役割を果たす、一本鎖α1D+KIVAサブユニットRNA分子も本発明の範囲内である。目的とするRNAiを媒介する標的遺伝子、例えばα1D+KIVAサブユニット遺伝子への充分な相同性を有するならば、任意のdsRNAが本発明の方法において使用できる。21−23個のヌクレオチドを有する二重鎖が上述されているが、本発明はそのようには限定されず、使用できるdsRNAの長さに上限はない(例えばdsRNAは、遺伝子約21塩基対から遺伝子全長又はそれ以上(例えば50−100、100−250、250−500、500−1000、又は1000を超える塩基対)に及んでよい)。
【0115】
これらの核酸は、ヒトに投与されるとき、α1D+KIVAサブユニットmRNAレベルを減少でき、これによりα1D+KIVAサブユニットの発現を抑制する。細胞又は生体は、α1D+KIVAサブユニットmRNAが分解される条件で維持され、これにより細胞又は生体内でRNAiが媒介される。代替的に、細胞は、個体から得られ、エキソビボで処理され、個体に再導入できる。
【0116】
更にもう1つの実施態様において、本発明のα1D+KIVA核酸分子は、塩基部分、糖部分、リン酸バックボーンが修飾されることにより、例えば分子の安定度、ハイブリダイゼーション、又は溶解度を改善できる。例えば、核酸分子のデオキシリボースリン酸バックボーンは、ペプチド核酸を生成するように修飾できる(Hyrup B.et al.Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1):5−23,1996参照)。本明細書で使用されるように、用語「ペプチド核酸」又は「PNA」は、DNAミミック等の核酸ミミックを指し、DNAミミックにおいては、デオキシリボースリン酸バックボーンが、偽性ペプチドバックボーンによって置換され、4個の天然核酸塩基のみが保持されている。PNAの中性バックボーンによれば、低いイオン強度の条件下での、DNA及びRNAへの特異的ハイブリダイゼーションを行うことができることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup B.et al.前掲、Perry−O’Keefe et al.Proc.Natl.Acad.Sci.93:14670−675,1996に記載されたような標準固相ペプチド合成手順を使用して実行できる。
【0117】
α1D+KIVA核酸分子のPNAは、治療及び診断用途で使用できる。例えば、PNAは、例えば転写停止又は翻訳停止の誘導又は複製の抑制による、遺伝子発現の配列特異的調節のためのアンチセンス又は抗原薬剤として使用できる。α1D+KIVA核酸分子のPNAは、他の酵素と組み合わせて使用されるときは「人工制限酵素」(例えばS1ヌクレアーゼ(Hyrup B.,前掲))として、又は、DNA配列決定若しくはハイブリダイゼーションのプローブ又はプライマー(Hyrup B.et al.前掲、Perry−O’Keefe、前掲)として、遺伝子内で一塩基対突然変異分析(例えばPNA特異的PCRクランプ)にも使用できる。
【0118】
もう1つの実施態様において、α1D+KIVAのPNAは、PNAに親油基又は他のヘルパー基を取り付けること、PNA−DNAキメラを形成すること、又はリポソームの使用若しくは当該技術分野において公知な他の薬物送達技術、によって(例えばその安定度又は細胞摂取量を向上するために)修飾できる。
【0119】
他の実施態様において、オリゴヌクレオチドは、(例えば宿主細胞レセプターをインビボで標的とするために)ペプチドのような他の付加された基、又は細胞膜(例えばLetsinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.US.86:6553−6556,1989、Lemaitre et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648−652,1987、 国際公開第WO88/09810号パンフレット参照)若しくは血液脳関門(例えば国際公開第WO89/10134号パンフレット参照)を横断する輸送を容易にする薬剤、を含んでよい。更に、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤(例えばKrol et al.Bio−Techniques 6:958−976,1988参照)又は挿入剤(例えばZon Pharm.Res.5:539−549,1988参照)によって、修飾できる。このために、オリゴヌクレオチドは、他の分子(例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、又はハイブリダイゼーション誘発開裂剤)に結合させてよい。
【0120】
単離α1D+KIVAタンパク質及び抗α1D+KIVA抗体
本発明の1つの側面は、単離カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質、及びその生物活性部分、並びに抗α1D+KIVA抗体を産生する免疫原としての使用に適したポリペプチドフラグメントに関する。1つの実施態様において、標準タンパク質精製技術を使用する適切な精製系によって、未変性α1D+KIVAタンパク質が細胞又は組織源から単離できる。もう1つの実施態様において、α1D+KIVAタンパク質は、組換えDNA技術により生成される。組換え発現の代わりに、α1D+KIVAタンパク質又はポリペプチドは、標準ペプチド合成技術を使用して化学合成できる。
【0121】
「単離」又は「精製」タンパク質又はその生物活性部分は、α1D+KIVAタンパク質が由来する細胞若しくは組織源からの細胞物質その他の混入タンパク質を実質的に含まず、あるいは、化学合成される場合には、化学前駆体その他の化学物質を実質的に含まない。術語「細胞物質を実質的に含まない」には、タンパク質が単離又は組換えにより生成された細胞の細胞成分から分離された、α1D+KIVAタンパク質製剤が含まれる。1つの実施態様において、術語「細胞物質を実質的に含まない」には、(乾燥重量で)約30%未満の非α1D+KIVAタンパク質(本明細書では「混入タンパク質」とも呼ばれる)、より好ましくは約20%、10%、又は5%未満の非α1D+KIVAタンパク質を有するα1D+KIVAタンパク質製剤が含まれる。α1D+KIVAタンパク質又はその生物活性タンパク質は、組換えにより生成される場合、実質的に培地を含まないこと、つまり、培地がタンパク質製剤の約20%、10%、又は5%未満であることが好ましい。
【0122】
術語「化学前駆体又はその他の化学物質を実質的に含まない」には、タンパク質が、タンパク質合成に関与する化学前駆体その他の化学物質から分離された、α1D+KIVAタンパク質製剤が含まれる。1つの実施態様において、述語「化学前駆体又はその他の化学物質を実質的に含まない」には、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、又は5%未満の化学前駆体又は非α1D+KIVA化学物質を有するα1D+KIVAタンパク質製剤が含まれる。
【0123】
本明細書で使用されるように、α1D+KIVAタンパク質の「生物活性部分」は、α1D+KIVA分子及び非α1D+KIVA分子の間の相互作用に関与する、α1D+KIVAタンパク質フラグメントを含む。α1D+KIVAタンパク質の生物活性部分には、α1D+KIVAタンパク質のアミノ酸配列、例えば配列番号2又は配列番号4に示すアミノ酸配列に充分に相同である又はそれから派生したアミノ酸配列を含むペプチドが含まれ、これらのペプチドは完全長のα1D+KIVAタンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、α1D+KIVAタンパク質の活性を少なくとも1つ示す。一般に、生物活性部分は、α1D+KIVAタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメイン又はモチーフ、例えばβ、γ又はα/δカルシウムチャネルサブユニットを含む。α1D+KIVAタンパク質の生物活性部分は、カルシウムチャネル媒介活性を調節する標的として使用できる。
【0124】
1つの実施態様において、α1D+KIVAタンパク質の生物活性部分は、少なくとも1つの膜貫通ドメインを含む。α1D+KIVAタンパク質の生物活性部分は、α1D+KIVAサブユニット活性を媒介し、例えばKIVA配列を有すること、及び/又は配列番号8及び/又は配列番号10のアミノ酸配列を有しないことといった、α1D+KIVAサブユニットタンパク質の1つ以上の特徴を含む。タンパク質の他の領域が欠失された生物活性部分は、組換え技術によって調製でき、未変性α1D+KIVAタンパク質の1つ以上の機能活性について評価できる。
【0125】
1つの実施態様において、α1D+KIVAタンパク質は、配列番号2又は配列番号4に示すアミノ酸配列を有する又は配列番号2又は配列番号4に実質的に相同であり、配列番号4のタンパク質の機能活性を保持するが、後述するように、対立遺伝子自然変異又は突然変異誘発のためにアミノ酸配列が異なっている。
【0126】
従って、もう1つの実施態様において、α1D+KIVAタンパク質は、配列番号2又は配列番号4に少なくとも約50%、75%、85%、95%、99%又はそれ以上相同であるアミノ酸配列を含むタンパク質である。
【0127】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸の相同性を決定するために、最適に比較できるように配列をアラインメントする(例えば、第2アミノ又は核酸配列との最適なアラインメントのために、第1アミノ酸配列又は核酸配列にギャップを導入してよく、非相同配列は、比較のために無視してよい)。比較のためにアラインメントされた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも50%であってよく、70%、80%、又は90%であってさえよい。続いて、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。分子は、第1配列のある位置が第2配列の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合、その位置において相同である(すなわち、本明細書で使用されるように、アミノ酸又は核酸「相同性」は、アミノ酸又は核酸「同一性」に等しい)。2つの配列間の相同性は、これらの配列によって共有される同一位置数の関数である(つまり、相同%=同一位置数/位置総数×100)。
【0128】
配列比較及び二配列間の相同性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。配列比較に用いられる数学的アルゴリズムの好ましい非限定例は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−77,1993のように修正された、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−68,1990のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403−10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、点数=100、語長=12で実行することにより、本発明のα1D+KIVA核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、点数=50、語長=3で実行することにより、本発明のα1D+KIVAタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のためにギャップを有するアラインメントを得るためには、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402,1997に記載されたようにして、Gapped BLASTを使用できる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータが使用できる。National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを参照されたい。配列比較に使用される数学的アルゴリズムのもう1つの非限定例は、Myers and Miller,CABIOS(1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部である、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列比較のためにALIGNプログラムを使用する場合、PAMI120重量残基表、12のギャップ長ペナルティー、及び4のギャップペナルティーが使用できる。
【0129】
本発明は、α1D+KIVAキメラたんぱく質又は融合タンパク質も提供する。本明細書で使用されるように、α1D+KIVA「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」には、非α1D+KIVAポリペプチドに操作自在に連結されたα1D+KIVAポリペプチドが含まれる。「α1D+KIVAポリペプチド」は、α1D+KIVAに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。「非α1D+KIVAポリペプチド」は、α1D+KIVAタンパク質に実質的に相同でないタンパク質、又は本明細書に記載されたα1D+KIVAタンパク質の1つ以上の特徴を含まないタンパク質、に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。α1D+KIVAタンパク質に実質的に相同でないタンパク質は、例えば、α1D+KIVAタンパク質と異なり、同じ又は異なる生体から派生するタンパク質である。本明細書に記載されたα1D+KIVAタンパク質の1つ以上の特徴を含まないタンパク質は、KIVA配列を有し且つ配列番号8及び/又は配列番号10の配列を有しないようなものである。α1D+KIVA融合タンパク質内で、α1D+KIVAポリペプチドは、α1D+KIVAタンパク質の全部又は一部に対応できる。好ましい実施例において、α1D+KIVA融合タンパク質は、α1D+KIVAタンパク質の少なくとも1つの生物活性部分を含む。もう1つの好ましい実施態様において、α1D+KIVA融合タンパク質は、α1D+KIVAタンパク質の少なくとも2つの生物活性部分を含む。融合タンパク質内で、用語「操作自在に連結された」は、α1D+KIVAポリペプチド及び非α1D+KIVAポリペプチドが、互いにインフレームで融合されていることを指すことが意図される。非α1D+KIVAポリペプチドは、α1D+KIVAポリペプチドのN末端又はC末端に融合できる。
【0130】
例えば、1つの実施態様において、融合タンパク質は、α1D+KIVA配列がGST配列のC末端に融合された、GST−α1D+KIVA融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、組換えα1D+KIVAの精製を容易化できる。
【0131】
もう1つの実施態様において、融合タンパク質は、N末端に異種シグナル配列を含むα1D+KIVAタンパク質である。ある種の宿主細胞(例えば哺乳動物宿主細胞)において、α1D+KIVAの発現は、異種シグナル配列の使用を介して増加できる。
【0132】
本発明のα1D+KIVA融合タンパク質は、医薬組成物に組み込み、被験者にインビボで投与できる。α1D+KIVA融合タンパク質は、α1D+KIVA基質の生物学的利用能に影響を及ぼすために使用できる。α1D+KIVA融合タンパク質の使用は、カルシウムチャネル活性に関連する障害、例えば動脈硬化、虚血再灌流障害、再狭窄、動脈炎症、血管壁再構築、心室再構築、急速心室ペーシング、冠状動脈微小塞栓症、頻脈、徐脈、圧負荷、大動脈屈曲、冠状動脈結紮、血管性心臓病、心房細動、QT延長症候群、鬱血性心不全、洞結節機能不全、アンギナ、心不全、高血圧、心房細動、心房粗動、拡張心筋症、特発性心筋症、心筋梗塞、冠状動脈疾患、冠状動脈痙攣、又は不整脈のような心臓血管障害の処置に、治療上有用であり得る。
【0133】
更に、本発明のα1D+KIVA融合タンパク質は、被験者の体内で抗α1D+KIVA抗体を生成するため、α1D+KIVAリガンドを精製するため、及びスクリーニングアッセイにおいてα1D+KIVA基質とのα1D+KIVAの相互作用を抑制する分子を同定するため、に免疫原として使用できる。
【0134】
本発明のα1D+KIVAキメラたんぱく質又は融合タンパク質は、標準組換えDNA技術により生成できる。例えば、様々なポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントは、例えば、ライゲーション用の平滑末端又は食い違い末端の末端を用い、適切な末端を提供するための制限酵素ダイジェストをし、付着末端を適切に埋め、望ましくない結合を避けるためにアルカリホスファターゼ処理をし、酵素的ライゲーションをするといった従来技術により、インフレームで一緒にライゲートされる。融合遺伝子は、自動DNAシンセサイザーを含む従来技術により合成できる。代替的に、2つの連続する遺伝子フラグメント間に、アニールし、再増幅することでキメラ遺伝子配列を生成する相補的突出を発生させるアンカープライマーを使用して、遺伝子フラグメントのPCR増幅を実行できる(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.John Wiley & Sons:1992参照)。更に、融合部分をすでにコードする多くの発現ベクターが、市販されている(例えばGSTポリペプチド)。α1D+KIVAをコードする核酸は、融合部分がα1D+KIVAタンパク質にインフレームで連結されるように、このような発現ベクターにクローニングされる。
【0135】
本発明は、α1D+KIVAアゴニスト(ミミック)、又はα1D+KIVAアンタゴニストとして機能するα1D+KIVAタンパク質の変異体にも関する。α1D+KIVAタンパク質の変異体は、突然変異誘発、例えば離散点突然変異又はα1D+KIVAタンパク質切断により、生成できる。α1D+KIVAタンパク質のアゴニストは、α1D+KIVAタンパク質の自然発生形式の、実質的に同じ生物活性又はサブセットを保持できる。α1D+KIVAタンパク質のアンタゴニストは、例えばα1D+KIVAタンパク質のカルシウムチャネル媒介活性を競合的に調節することによって、α1D+KIVAタンパク質の自然発生形式の1つ以上の活性を抑制できる。従って、機能が制限された変異体による治療によって、特異な生物的効果が誘発され得る。1つの実施態様において、タンパク質の自然発生形式の生物活性のサブセットを有する変異体による被験者の治療は、α1D+KIVAタンパク質の自然発生形式による治療に比べて、被験者における副作用が少ない。
【0136】
1つの実施態様において、α1D+KIVAアゴニスト(ミミック)又はα1D+KIVAアンタゴニストとして機能するα1D+KIVAタンパク質の変異体は、α1D+KIVAタンパク質の突然変異体、例えば切断突然変異体、のコンビナトリアルライブラリを、α1D+KIVAタンパク質アゴニスト又はアンタゴニスト活性でスクリーニングすることによって、同定できる。1つの実施態様において、α1D+KIVA変異体の斑入り(variegated)ライブラリは、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異誘発により生成され、斑入り遺伝子ライブラリによってコードされる。α1D+KIVA変異体の斑入りライブラリは、例えば、個別のポリペプチドとして、又はα1D+KIVA配列のセットを中に含む(例えばファージディスプレイ用の)より大きい融合タンパク質のセットとして、潜在的α1D+KIVA配列の縮重セットが発現されるよう、合成オリゴヌクレオチド混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることにより、生成できる。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的α1D+KIVA変異体のライブラリを生成するために使用できる方法は、種々ある。縮重遺伝子配列の化学合成は自動DNAシンセサイザー内で実行でき、合成遺伝子は適切な発現ベクターにライゲートできる。遺伝子の縮重セットを使用することにより、1種の混合物中で、潜在的α1D+KIVA配列の所望のセットをコードする全配列を調整できる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当該技術分野において公知である(例えばNarang,S.A.Tetrahedron 39:3,1983、Itakura et al.Annu.Rev.Biochem.53:323,1984、Itakura et al.Science 198:1056,1984、Ike et al.Nucleic Acid Res.11:477,1983参照)。
【0137】
更に、α1D+KIVAタンパク質コード配列のフラグメントのライブラリは、α1D+KIVAタンパク質の変異体をスクリーニングし、次いで選択するための、α1D+KIVAフラグメントの斑入り個体群を生成するために使用できる。
【0138】
本明細書に記載されたα1D+KIVAタンパク質は、結合した又は結合しない結合剤の検出を容易にするために、検出可能物質を直接又は間接的にラベルできる。適切な検出可能物質には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、及び放射性材料が含まれる。
【0139】
単離α1D+KIVAタンパク質、又はその部分若しくはフラグメントは、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体調製の標準技術を用いて、α1D+KIVAに結合する抗体を生成するための免疫原として、使用できる。完全長のα1D+KIVAタンパク質が免疫原として使用でき、代替的に、本発明は免疫原として使用するためのα1D+KIVAの抗原ペプチドフラグメントを提供する。α1D+KIVAの抗原ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号4に示すアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基を、特に、配列番号6のアミノ酸配列とは異なるα1D+KIVA領域において含み、ペプチドに対して産生された抗体がα1D+KIVAとの特異的免疫複合体を形成するよう、α1D+KIVAのエピトープを包含する。好ましくは、抗原ペプチドは、少なくとも10、15、20又は30個のアミノ酸残基を含む。
【0140】
一般にα1D+KIVA免疫原は、適切な被験者(例えばウサギ、ヤギ、マウス又はその他の哺乳動物)を免疫原で免疫することによって抗体を調製するために使用される。適切な免疫原製剤には、例えば組換えによって発現したα1D+KIVAタンパク質又は化学合成されたα1D+KIVAポリペプチドが含まれる。製剤は、フロイント完全アジュバント又は不完全アジュバントのようなアジュバント、又は類似の免疫刺激剤を更に含んでよい。免疫原α1D+KIVA製剤によって適切な被験者を免疫すると、ポリクローナル抗α1D+KIVA抗体応答が誘発される。
【0141】
従って、本発明のもう1つの側面は、抗α1D+KIVA抗体に関する。本明細書で使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性部分、すなわちα1D+KIVAのような、抗原に特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を指す。免疫グロブリン分子の免疫活性部分の例には、抗体をペプシン等の酵素によって処理することによって生成できる、F(ab)及びF(ab’)フラグメントが含まれる。本発明は、α1D+KIVAに結合するポリクローナル及びモノクローナル抗体を提供する。本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、α1D+KIVAの特定のエピトープと免疫反応できる抗原結合部位を一種のみ含む抗体分子の個体群を指す。従って、モノクローナル組成物は、一般に、それが免疫反応する特定のα1D+KIVAタンパク質に単結合親和力を示す。
【0142】
抗α1D+KIVAポリクローナル抗体は、上記のように、適切な被験者をα1D+KIVA免疫原で免疫することにより調製できる。免疫された被験者における抗α1D+KIVA抗体力価は、固定化α1D+KIVAを使用した酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のような標準技術によって、長期に亘って監視できる。所望の場合、α1D+KIVAに対する抗体分子は、哺乳動物から(例えば血液から)単離でき、更に、IgG画分を得るためにタンパク質Aクロマトグラフィーのような公知技術によって精製できる。抗体産生細胞は、免疫後の適当な時、例えば抗α1D+KIVA抗体力価が最高である時に、被験者から得られ、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495497によって当初記載されたハイブリドーマ技術(Brown et al.J.Immunol.127:539−46,1981、Brown et al.J.Biol.Chem.255:4980−83,1980、Yeh et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:2927−31,1976、及びYeh et al.Int.J.Cancer 29:269−75,1982も参照)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.Immunol Today 4:72,1983)、EBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al.Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96,1985)又はトリオーマ技術といった、標準技術によりモノクローナル抗体を調製するために使用できる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを生成する方法は、周知である(一般にR.H.Kenneth,in Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses,Plenum Publishing Corp.,New York,N.Y.(1980)、E.A.Lerner Yale J.Biol.Med.,54:387−402,1981、M.L.Gefter et al.Somatic Cell Genet.3:231−36,1977参照)。簡潔に言えば、不死細胞系(一般に骨髄腫)は、上記のようなα1D+KIVA免疫原により免疫された哺乳動物からのリンパ球(一般に脾細胞)に融合され、得られるハイブリドーマ細胞の培養上清は、α1D+KIVAに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを特定するためにスクリーニングされる。
【0143】
リンパ球及び不死化細胞系の融合に使用される多くの周知手順の任意のものは、抗α1D+KIVAモノクローナル抗体を生成する目的に応用できる(例えばG.Galfre et al.Nature 266:55052,1977、Gefter et al.Somatic Cell Genet.,前掲、Lemer,Yale J.Biol.Med.,前掲、Kenneth,Monoclonal Antibodies,前掲参照)。更に、当業者であれば、同様に有用な多くの変形例があることを認識するであろう。
【0144】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの調製の代わりに、モノクローナル抗α1D+KIVA抗体は、α1D+KIVAとの組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(例えば抗体ファージディスプレイライブラリ)をスクリーニングし、これによってα1D+KIVAに結合する免疫グロブリンライブラリメンバーを単離することにより、同定でき単離できる。ファージディスプレイライブラリを生成及びスクリーニングするキットは、市販されている(例えばPharmacia Recombinant Phage Antibody System,Catalog No.27−9400−01)。更に、抗体ディスプレイライブラリの生成及びスクリーニングにおける使用に特に利用できる方法及び試薬の例は、例えばLadner et al.米国特許第5223409号明細書、Kang et al.国際公開第WO92/18619号パンフレット、及びMcCafferty et al.Nature 348:552−554,1990において見出すことができる。
【0145】
更に、標準組換えDNA技術を使用して製造できるヒト部分及び非ヒト部分の両方を含む、キメラ抗体及びヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗α1D+KIVA抗体は、本発明の範囲内である。このようなキメラ抗体及びヒト化モノクローナル抗体は、例えばRobinson et al.国際出願第PCT/US86/02269号明細書、Akira,et al.欧州特許出願第184187号明細書、Taniguchi,M.,欧州特許出願第171496号明細書、Morrison et al.欧州特許出願第173494号明細書、Neuberger et al.国際公開第WO86/01533号パンフレット、Cabilly et al.米国特許第4816567号明細書、Cabilly et al.欧州特許出願第125023号明細書、Better et al.Science 240:1041−1043,1988、Liu et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443,1987、Liu et al.J.Immunol.139:3521−3526,1987、Sun et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218,1987、Nishimura et al.Canc.Res.47:999−1005,1987、Wood et al.Nature 314:446−449,1985、and Shaw et al.J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559,1988)、Morrison,S.L.Science 229:1202−1207,1985、Oi et al.BioTechniques 4:214,1986、Winter米国特許第5225539号明細書、Jones et al.Nature 321:552−525,1986、Verhoeyan et al.Science 239:1534,1988、及びBeidler et al.J.Immunol.141:4053−4060,1988に記載された方法を使用する、当該技術分野で公知な組換えDNA技術によって生成できる。
【0146】
抗α1D+KIVA抗体(例えばモノクローナル抗体)は、アフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降のような標準技術によって、α1D+KIVAを単離するために使用できる。抗α1D+KIVA抗体は、細胞からの天然α1D+KIVA、及び宿主細胞内で発現する組換えα1D+KIVAの精製を容易化できる。更に、抗α1D+KIVA抗体は、α1D+KIVAタンパク質発現量及び発現パターンを評価するために、(例えば細胞可溶化物又は細胞上清中で)α1D+KIVAタンパク質を検出するために使用できる。抗α1D+KIVA抗体は、例えば所与の治療措置の有効性を決定するために、臨床試験手順の一部として組織内のタンパク質レベルを監視するために診断上使用できる。検出は、検出可能な物質に抗体を結合(つまり、物理的に連結)することによって、容易化できる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生体発光材料、及び放射性材料が含まれる。適切な酵素の例には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオトゥイーン、及びアビジン/ビオトゥイーンが含まれ、適切な蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンが含まれ、発光材料の例には、ルミノールが含まれ、生体発光材料の例には、ルシフェラーゼ、フリフェリン、及びエクオリンが含まれ、適切な放射性材料の例には、125I、35S、又はHが含まれる。
【0147】
組換え発現ベクター及び宿主細胞
本発明のもう1つの側面は、α1D+KIVAタンパク質(又はその一部)をコードする核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書で使用されるように、用語「ベクター」は、それが連結された他の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、プラスミドとは追加DNAセグメントをライゲートできる環状二重鎖DNAループを指す。もう1つのタイプのベクターはウイルスベクターであって、追加DNAセグメントをウイルスゲノムにライゲートできるものである。ある種のベクター(例えば、細菌複製開始点を有する細菌ベクター、及びエピソーム哺乳動物ベクター)は、それらが導入される宿主細胞内において自律複製できる。その他のタイプのベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノムに組み入れられ、これにより宿主ゲノムと一緒に複製される。更に、ある種のベクターは、それらが操作自在に連結された遺伝子の発現を指示できる。このようなベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形状である。プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形状なので、本明細書で、「プラスミド」及び「ベクター」は、同義的に使用され得る。しかしながら、本発明は、同様の機能に貢献する、ウイルスベクターのような(例えば複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス)、他形状の発現ベクターも含むことが意図される。
【0148】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内で核酸の発現に適した形状の本発明の核酸を含み、このことは、組換え発現ベクターが、発現に使用される宿主細胞に基いて選択される1つ以上の制御配列を含み、この制御配列が発現される核酸配列に操作自在に連結されていることを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「操作自在に連結された」とは、目的のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、又はベクターが宿主細胞内に導入されたときは宿主細胞において)ヌクレオチド配列が発現されるように、調節配列に連結されていることを意味することが意図される。用語「調節配列」には、プロモーター、エンハンサーその他の発現制御要素(例えばポリアデニル化シグナル)が含まれることが意図される。このような調節配列は、例えばGoeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。調節配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を多くのタイプの宿主細胞内で指示するもの、ヌクレオチド配列の発現をある種の宿主細胞においてのみ指示するもの(例えば組織特異的調節配列)、が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベル等のような要因次第であることが、当業者によって認識されるであろう。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入でき、これによって、本明細書で記載されるような核酸によってコードされるタンパク質又はペプチド(融合タンパク質又融合はペプチドを含む)、例えばα1D+KIVAタンパク質、突然変異形状のα1D+KIVAタンパク質、融合タンパク質、を生成できる。
【0149】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞又は真核細胞内でのα1D+KIVAタンパク質の発現のために設計できる。例えば、α1D+KIVAタンパク質は、大腸菌、(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)昆虫細胞、酵母細胞、両生動物細胞、又は哺乳動物細胞といった細菌細胞内で発現できる。適切な宿主細胞は、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)において更に検討されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで、転写及び翻訳できる。
【0150】
原核生物でのタンパク質発現は、ほとんどの場合、融合又は非融合タンパク質の発現を指示する構成的プロモーター又は誘導性プロモーターを含むベクターを用いて、大腸菌内で行われる。
【0151】
精製された融合タンパク質は、α1D+KIVA活性アッセイ(例えば以下で詳細に記載する直接アッセイ又は競合的アッセイ)において、又は例えばα1D+KIVAに特異的な抗体を生成するために、使用できる。
【0152】
もう1つの実施態様において、α1D+KIVA発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.セレビシエ(S.cerivisae)内の発現のベクターの例には、pYepSec1(Baldari,et al.,(1987)EMBO J.6:229−234),pMFa(Kurjan and Herskowitz,Cell 30:933−943,1982),pJRY88(Schultz et al.,Gene 54:113−123,1987),pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)、及びpicZ(InVitrogen Corp,San Diego,Calif.)が含まれる。
【0153】
あるいは、α1D+KIVAタンパク質は、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞内で発現できる。培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)内でのタンパク質発現のために利用できるバキュロウイルスベクターには、pAc系列(Smith et al.Mol.Cell Biol.3:2156−2165,1983)及びpVL系列(Lucklow and Summers Virol.170:31−39,1989)が含まれる。
【0154】
更にもう1つの実施態様において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞内で発現される。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed,B.Nature 329:840,1987)及びpMT2PC(Kaufman et al.EMBO J.6:187−195,1987)が含まれる。哺乳動物細胞内で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、ウイルス調節要素によってしばしば提供される。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス及びシミアンウイルス40に由来する。原核細胞及び真核細胞の双方に適切な他の発現系に関しては、Sambrook,J.,Fritsh,E.F.,and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd,ed,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989の16及び17章を参照されたい。
【0155】
もう1つの実施態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞タイプ内において、優先的に核酸発現を指示できる(例えば、組織特異的調節要素が、核酸を発現するために使用される)。組織特異的調節要素は、当該技術分野において公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的、Pinkert et al.Genes Dev.1:268−277,1987)、リンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton Adv.Immunol.43:235−275,1988)、特にT細胞レセプターのプロモーター(Winoto and Baltimore EMBO J.8:729−733,1989)及び免疫グロブリン(Banerji et al.Cell 33:729−740,1983、Queen and Baltimore Cell 33:741−748,1983)、ニューロン特異的プロモーター(例えばニューロフィラメントプロモーター、Byrne and Ruddle Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477,1989)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al.Science 230:912−916,1985)、及び乳腺特異的プロモーター(例えば乳清プロモーター、米国特許第4873316号明細書及び欧州特許出願公開第264166号明細書)、が含まれる。発生的に調節されるプロモーター、例えばマウスホメオボックスプロモーター(Kessel and Gruss Science 249:374−379,1990)及びα−フェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman Genes Dev.3:537−546,1989)も、包含される。
【0156】
本発明は、発現ベクターにアンチセンス方向でクローニングされた本発明のDNA分子を含む、組換え発現ベクターを更に提供する。すなわち、このDNA分子は、α1D+KIVAmRNAにアンチセンスであるRNA分子が(DNA分子転写によって)発現されるように、調節配列に操作自在に連結される。アンチセンス方向でクローニングされた核酸に操作自在に連結され、アンチセンスRNA分子の連続発現を種々の細胞タイプにおいて指示する調節配列が選択できる。例えば、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的又は細胞タイプ特異的な発現を指示するウイルスプロモーター及び/又はエンハンサー、又は調節配列が、選択できる。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高性能調節領域の制御下で生成される組換えプラスミド、ファージミド又は弱毒ウイルスの形状であり、これらの活性はベクターが導入される細胞タイプによって決定できる。アンチセンス遺伝子を使用した遺伝子発現調節の論考に関しては、Weintraub,H.et al.,Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis,Trends in Genet.,Vol.1(1)1986を参照されたい。
【0157】
本発明のもう1つの側面は、核酸、例えばα1D+KIVAmRNA又は本発明の組換え発現ベクターが導入された、宿主細胞に関する。用語「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」は、本明細書で同義的に使用される。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代又は潜在的後代をも指すことが理解される。突然変異又は環境の影響により、ある種の変更が後続世代で発生し得るので、このような後代は、実際には、親細胞と同一でない場合もあるが、それでも本明細書で使用される用語の範囲に含まれる。
【0158】
宿主細胞は、いかなる原核細胞又は真核細胞であってもよい。例えば、α1D+KIVAタンパク質は、大腸菌、昆虫細胞、酵母細胞、アフリカツメガエル卵母細胞等のアフリカツメガエル細胞、又は(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はCOS細胞のような)哺乳動物細胞といった細菌細胞内で発現できる。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0159】
ベクターDNAは、従来の形質転換技術又はトランスフェクション技術を通して、原核細胞又は真核細胞内に導入できる。本明細書で使用されるように、「形質転換」及び「トランスフェクション」は、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、又は電気穿孔法を含む、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入する種々の技術的に認識された技術を指すことが意図される。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトする適切な方法は、Sambrook,et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd,ed,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、その他の実験マニュアルにおいて見出される。核酸は、微量注入によっても導入できる。
【0160】
哺乳動物細胞の安定したトランスフェクションのために、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技術に応じて、細胞の小フラクションしか外来DNAをそのゲノム内に組み込まない場合があることが知られている。これらの組み込み体を同定し選択するため、一般的に、選択可能マーカー(例えば抗生物質耐性)をコードする遺伝子が、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。好ましい選択可能マーカーには、G418、ハイグロマイシン及びメトトレキセートのような薬剤への耐性を付与ものが含まれる。選択可能マーカーをコードする核酸は、α1D+KIVAタンパク質をコードするベクターと同じベクターで宿主細胞内に導入してもよく、別個のベクター上で導入してもよい。導入された核酸が安定してトランスフェクトされた細胞は、薬剤選抜によって特定できる(例えば、選択可能マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は残存するが、他の細胞は死亡する)。
【0161】
培養されている原核宿主細胞又は真核宿主細胞といった、本発明の宿主細胞は、α1D+KIVAタンパク質を生成する(つまり、発現させる)ために使用できる。従って、本発明は、本発明の宿主細胞を使用したα1D+KIVAタンパク質の生成方法を更に提供する。
【0162】
本発明の核酸分子は、ベクター内に挿入して、遺伝子治療ベクターとして使用できる。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注射、局所投与(米国特許第5328470号明細書参照)、又は定位的注射(例えばChen et al.Proc.Natl.Acad Sci.USA 91:3054−3057,1994参照)によって、被験者に送達される。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容できる希釈剤中の遺伝子治療ベクターを含んでもよく、遺伝子送達媒体が埋め込まれた叙放性マトリックスを含んでもよい。あるいは、レトロウイルス等の組換え細胞から、完全な遺伝子送達ベクターが無傷で生成できる場合には、医薬製剤は遺伝子送達系を作る1個以上の細胞を含んでよい。
【0163】
本発明の使用及び方法
本明細書に記載された核酸分子、タンパク質、タンパク質相同体、及び抗体は、次の方法:a)スクリーニングアッセイ、b)予測薬剤(例えば診断アッセイ、予後診断アッセイ、臨床試験監視、薬理遺伝学)、及びc)処置方法(例えば、治療及び予防)、の1つ以上において使用できる。
【0164】
本発明の単離核酸分子は、以下で更に記載するように、例えば、(例えば遺伝子治療の応用における、宿主細胞内の組換え発現ベクターを通して)α1D+KIVAタンパク質を発現させるため、(例えば生体試料中の)α1D+KIVAmRNA、又はα1D+KIVAタンパク質をコードする遺伝子内の遺伝的変化を検出するため、及び、α1D+KIVA活性を調節するため、に使用できる。α1D+KIVAタンパク質は、α1D+KIVA基質の不充分又は過剰な生成、又はα1D+KIVAインヒビターの生成、を特徴とする障害を治療するために使用できる。更に、α1D+KIVAタンパク質は、自然発生α1D+KIVA基質をスクリーニングするため、α1D+KIVA活性を調節する薬剤又は化合物をスクリーニングするために使用できる。また、α1D+KIVAタンパク質は、α1D+KIVAタンパク質の不充分若しくは過剰な生成、又はα1D+KIVA野生型タンパク質と比較して減少した活性又は異常な活性を有するα1D+KIVAタンパク質形状の生成を特徴とする障害、例えば動脈硬化、虚血再灌流障害、再狭窄、動脈炎症、血管壁再構築、心室再構築、急速心室ペーシング、冠状動脈微小塞栓症、頻脈、徐脈、圧負荷、大動脈屈曲、冠状動脈結紮、血管性心臓病、心房細動、QT延長症候群、鬱血性心不全、洞結節機能不全、アンギナ、心不全、高血圧、心房細動、心房粗動、拡張心筋症、特発性心筋症、心筋梗塞、冠状動脈疾患、冠状動脈痙攣、又は不整脈といった心臓血管障害を治療するために使用できる。更に、本発明の抗α1D+KIVA抗体は、α1D+KIVAタンパク質を検出及び単離し、α1D+KIVA活性を調節するために使用できる。
【0165】
スクリーニングアッセイ
本発明は、モジュレーター、すなわち本明細書に記載されたα1D+KIVAサブユニットを含むカルシウムチャネルに結合する、候補化合物又は試験化合物又は薬剤(例えばタンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、ペプトイド、小分子その他の薬剤)を特定する方法を提供する。このように特定された化合物は、例えば治療手順において、これらのカルシウムチャネルの活性を調節するために使用できる。
【0166】
1つの実施態様において、本発明は、本明細書に記載されたα1D+KIVAサブユニット又はサブユニットの生物活性部分を含むカルシウムチャネルの基質である、試験化合物をスクリーニングするアッセイを提供する。もう1つの実施態様において、本発明は、これらのカルシウムチャネルに結合する又はその活性を調節する、候補又は試験化合物をスクリーニングするアッセイを提供する。
【0167】
イオンチャネル調節化合物は、(例えば細胞及び非細胞ベースの)インビトロ、及びインビボの方法のいずれでも、同定できる。1つの実施態様において、カルシウムチャネル活性を測定するために、Ca2+流入アッセイが使用される。Ca2+濃度の変化を測定するアッセイは、当該技術分野において公知である。例えば、試験系には、検出可能なCa2+感受性薬剤を装填してもよい。試験化合物を用いた次の処置において、Ca2+感受性薬剤が検出されることは、Ca2+濃度の変化を示唆する。1つの実施態様において、アッセイには、試験系(例えば細胞又は封入膜製剤)に電位を加えることによる刺激に続くカルシウムを検出することが含まれる。
【0168】
イオンチャネル活性を測定するアッセイは、フラックスアッセイ、パッチクランプ電気生理、及び二電極電位クランプ電気生理を含む(例えばLin et al.,Neuron 18:153−166,1997参照)。パッチクランプ生理は、次のように実行される。簡潔に言えば、小型電極を含むピペットチップが、ピペット及び膜の間に密封を生み出すように、細胞膜に押圧される。電極は、ピペットチップの縁部によって画定される膜を通って流れるイオンを捕捉する。細胞内又は膜パッチ内又は細胞全体にわたる電流を測定するために、種々の形状が使用できる。
【0169】
二電極電位クランプ(TEVC)生理は、次のように実行される。簡潔に言えば、2つの鋭敏な微小電極が細胞膜を介して押圧される。一方の電極は膜電位を監視し、他方の電極は膜電位を所望のレベルに保持するために電流を注入する。パッチクランプ及びTEVC技術のいずれによっても、イオンチャネル電流の速度及び強度の両方に関する情報が提供される。
【0170】
1つの実施態様において、カルシウムチャネルは、アフリカツメガエル卵母細胞系を使用して検定される。カルシウムチャネルの一過性発現の詳細な記述、及びアフリカツメガエル卵母細胞からの記録に関しては、例えばXu and Lipscombe,J.Neurosci.21(16):5944−5951,2001、Lin et al.,前掲)を参照されたい。もう1つの実施態様において、アッセイは、例えばヒト又はマウス細胞を使用する、哺乳動物細胞ベースのアッセイである。
【0171】
化合物
本発明の試験化合物は、生物ライブラリ、ペプトイドライブラリ(ペプチドの機能性を有し、酵素分解に耐性であり且つ生物活性を保持する新規な非ペプチドバックボーンを備える分子ライブラリ;例えばZuckermann,R.N.et al.,J.Med.Chem.37:2678−85,1994参照)、空間的にアドレス可能平行固相又は溶液相のライブラリ、逆重畳を必要とする合成ライブラリ方法、「1ビーズ1化合物(one−bead one−compound)」ライブラリ方法、及びアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリ方法、を含む当該技術分野において公知なコンビナトリアルライブラリ方法における多数のアプローチを、単独で又は任意のものを使用して得ることができる。生物ライブラリ及びペプトイドライブラリのアプローチは、ペプチドライブラリに限られ、他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー又は小分子ライブラリに応用できる(Lam,Anticancer Drug Des.12:145,1997)。
【0172】
分子ライブラリの合成方法の例は、当該技術において、例えばDeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909,1993、Erb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422,1994、Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37:2678,1994、Cho et al.,Science 261:1303, 1993、Carrell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059,1994、Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061,1994、及びGallop et al.,J.Med.Chem.37:1233,1994において見出すことができる。
【0173】
化合物のライブラリは、溶液内(Houghten,Biotechniques 13:412−421,1992)、又はビーズ(Lam,Nature 354:82−84,1991)、チップ(Fodor,Nature 364:555−556,1993)、細菌(Ladner,米国特許第5223409号明細書)、胞子(Ladner,米国特許第5223409号明細書)、プラスミド(Cull et al.,Proc Natl Acad Sci USA 89:1865−1869,1992)、又はファージ(Scott and Smith,Science 249:386−390,1990、Devlin,Science 249:404−406,1990、Cwirla et al.Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382,1990、Felici,J.Mol.Biol.222:301−310,1991、Ladner前掲)上に、存在してよい。
【0174】
試験化合物として使用される化合物(すなわち、潜在的インヒビター、アンタゴニスト、アゴニスト)は、商業的供給源から入手でき、又は、容易に入手可能な出発物質から、当該技術分野の当業者に公知の標準合成技術及び方法論を使用して合成できる。本明細書に記載された方法によって同定される化合物の合成に有用な、合成化学変換及び保護基の方法論(保護及び保護解除)は、当該技術分野において公知であり、例えばR.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989)、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.,John Wiley and Sons(1991)、L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994)、及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、及びその後版に記載されたものが含まれる。
【0175】
1つの側面において、化合物は有機小分子、つまり、1000amu未満、あるいは350〜750amuの分子量を有する化合物である。他の側面において、化合物は、(i)非ペプチド性のもの、(ii)更なる置換基を有してもよい、1個以上5個以下のヘテロシクリル基又はヘテロアリール環基を有するもの、(iii)それぞれの薬理学的に許容できる塩の状態のもの、又は(iv)ペプチド性のもの、である。
【0176】
用語「ヘテロシクリル」は、単環式ならば1−3個のヘテロ原子、二環式ならば1−6個のヘテロ原子、又は三環式ならば1−9個のヘテロ原子を有する、非芳香族3−8員単環式、8−12員二環式、又は11−14員三環式環構造を指す。へテロ原子は、O、N、又はSから選択され(例えば、単環式、二環式、又は三環式の各々であれば、炭素原子、及びN、O、Sの1−3、1−6、1−9個のヘテロ原子)、各環の0、1、2又は3個の原子は、置換基によって置換されてもよい。
【0177】
用語「ヘテロアリール」は、単環式ならば1−3個のヘテロ原子、二環式ならば1−6個のヘテロ原子、又は三環式ならば1−9個のヘテロ原子を有する、芳香族5−8員単環式、8−12員二環式、又は11−14員三環式環構造を指す。へテロ原子は、O、N、又はSから選択され(例えば、単環式、二環式、又は三環式の各々であれば、炭素原子、及びN、O、Sの1−3、1−6、1−9個のヘテロ原子)、各環の0、1、2、3又は4個の原子は、置換基によって置換されてもよい。
【0178】
用語「置換基」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基上で、その基の任意の原子で「置換された」基を指す。適切な置換基には、特に限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、SOH、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、カルボキシル、オキソ、チオキソ、イミノ(アルキル、アリール、アラルキル)、S(O)アルキル(式中nは0−2である)、S(O)アリール(式中nは0−2である)、S(O)ヘテロアリール(式中nは0−2である)、S(O)ヘテロシクリル(式中nは0−2である)、アミン(モノ−、ジ−、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル及びその組み合わせ)、エステル(アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル)、アミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル及びその組み合わせ)、スルホンアミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル及びその組み合わせ)、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、非置換ヘテロシクリル、及び非置換シクロアルキル、が含まれる。1つの側面において、基上の置換基は、独立して、上述した置換基の任意の一種又はサブセットである。
【0179】
本発明で想定される化合物の置換基及び変化の組み合わせは、安定した化合物の形成をもたらすものに限られる。本明細書で使用される用語「安定した」は、製造を可能にするのに充分な安定性を有し、且つ、本明細書に詳述する目的(例えば、輸送、貯蔵、検定、被験者への治療的投与)に有用となるのに充分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0180】
本明細書での化合物の薬理学的に許容し得る塩には、薬理学的に許容し得る無機及び有機の酸及び塩基に由来するものが含まれる。適切な酸性塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミスルフェート(hemisulfate)、ヘプタノエート、ヘキサノエート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコトゥイーン酸塩、硝酸塩、パーモエート(palmoate)、ペクトゥイーン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカノエートが含まれる。
【0181】
本明細書に記載された化合物は、1つ以上の不斉中心を含み、これにより、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単一エナンチオマー、単一ジアステレオマー、及びジアステレオマー混合物として発生し得る。このような化合物の全異性体形状は、本発明に明確に含まれる。本明細書に記載された化合物は、複数の互変異性形状で代表することもでき、その全てが本明細書に含まれる。化合物は、シス−若しくはトランス−又はE−若しくはZ二重結合異性体形状でも発生し得る。このような化合物の全異性体形状は、本発明に明確に含まれる。
【0182】
結合アッセイ
α1D+KIVAサブユニットを含むカルシウムチャネルへの試験化合物の結合能も、評価できる。カルシウムチャネル結合は、チャネル調節活性に必須ではないが、カルシウムチャネルに結合する化合物は、チャネルの活性調節に有用であり得る。このことは、例えば、基質等の化合物に放射性同位体又は酵素ラベルを結合させ、ラベルされた基質等の化合物を複合体内で検出することによって、カルシウムチャネルへの基質の結合を決定することで、達成できる。あるいは、本明細書に記載されるα1D+KIVAサブユニットを含むカルシウムチャネルは、試験化合物の複合体調節能を監視するために、放射性同位体又は酵素標識と結合してよい。例えば、化合物は、125I、35S、14C、又はHによって直接的又は間接的にラベルしてよく、放射性同位体は、放射線放出の直接計数又はシンチレーション計数によって検出できる。あるいは、化合物は、例えば西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又はルシフェラーゼによって酵素的にラベルしてよく、酵素ラベルは適切な基質の生成物への転換を測定することによって検出できる。
【0183】
α1Dサブユニットを含む又はいかなる反応体のラベルもない、カルシウムチャネルとの試験化合物の相互作用能は評価できる。例えば、マイクロフィジオメーターは、化合物と、この化合物又はカルシウムチャネルの標識がないカルシウムチャネルとの相互作用を検出するために、使用できる(McConnell,H.M.et al.,Science 257:1906−1912,1992)。本明細書で使用されるように、「マイクロフィジオメーター」(例えばサイトセンサー)は、光学アドレス可能電位計測機(LAPS)を使用して、細胞が環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化は、化合物とカルシウムチャネルとの間の相互作用の指標として使用できる。
【0184】
さらにもう1つの実施態様において、本明細書に記載されたカルシウムチャネル又はその生物活性部分を試験化合物に接触し、チャネル又はその生物活性部分への試験化合物の結合能を評価する、無細胞アッセイが提供される。好ましくは、無細胞アッセイは、膜を含む。無細胞アッセイは、標的遺伝子タンパク質及び試験化合物の反応混合物をこれら二成分が相互作用し結合するのに充分な条件及び時間で調製すること、これによって、除去及び/又は検出できる複合体を形成すること、を含む。
【0185】
二分子間の相互作用は、例えば蛍光エネルギー転移(FET)を使用しても検出できる(例えばLakowicz et al.,米国特許第5631169号明細書、Stavrianopoulos et al.,米国特許第4868103号明細書参照)。第1の「ドナー」分子への蛍光体ラベルは、その放出蛍光エネルギーが第2の「アクセプター」分子への蛍光標識によって吸収され、次に第2のアクセプター分子は吸収したエネルギーにより蛍光を発することができるように選択される。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の自然蛍光エネルギーを単に使用してもよい。「アクセプター」分子標識が「ドナー」の分子標識と区別できるように、異なる光波長を放出する標識が選択される。標識間のエネルギー転移効率は分子間の距離に関係するので、分子間の空間関係を評価してもよい。アッセイ中の「アクセプター」分子標識の蛍光放出は、分子間に結合が発生する状況で、最大となるべきである。FET結合現象は、当該技術分野において周知の標準蛍光分析検出手段を介して(例えば蛍光計を使用して)、好都合に測定できる。
【0186】
もう1つの実施態様において、本明細書に記載されたカルシウムチャネルへの試験化合物の結合能を測定することは、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)を使用して達成できる(例えばSjolander,S.and Urbaniczky,C.,Anal.Chem.63:2338−2345,1991、及びSzabo et al.,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705,1995参照)。「表面プラズモン共鳴」又は「BIA」は、いずれの反応体をラベルすることもなく、生物特異的相互作用をリアルタイムで検出する(例えばビアコア)。(結合現象を示唆する)結合表面での質量変化は、表面近くでの光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)をもたらし、生体分子間のリアルタイム反応を示すものとして使用できる検出可能なシグナルをもたらす。
【0187】
1つの実施態様において、カルシウムチャネル又は試験化合物を含む試料は、固相に固定される。固相に固定されたチャネル/試験化合物複合体は、反応終了時に検出できる。
【0188】
一方又は両方のタンパク質の非複合体形から複合体形を単離するのを容易化するため、並びにアッセイの自動化に適応するために、カルシウムチャネル、抗カルシウムチャネル抗体又はその標的分子を固定化することが好ましい場合がある。カルシウムチャネルへの試験化合物の結合、又は候補化合物の存在及び不存在下におけるカルシウムチャネルの標的分子との相互作用は、反応物を収容するのに適した任意の容器内で、行うことができる。このような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心分離管が含まれる。1つの実施態様において、一方又は両方のタンパク質が結合されることを可能にするドメインを、マトリックスに加える融合タンパク質が提供される。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/α1D+KIVAサブユニット融合タンパク質、又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファローズビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着でき、これらは次に、試験化合物、又は試験化合物及びGST標識サブユニットを有するカルシウムチャネルを含む試料と組み合わされ、混合物は、複合体形成に繋がる条件(例えば、塩及びpHの生理的条件)でインキュベートされる。インキュベーションに続いて、ビーズ又はマイクロタイタープレートウェルは、あらゆる非結合成分を除去するために洗浄され、マトリックスがビーズに固定化され、複合体が例えば上記のように直接的又は間接的に測定される。
【0189】
カルシウムチャネルサブユニットの複合体をマトリックスに固定化する他の技術には、ビオトゥイーン及びストレプタビジンの接合を使用することが含まれる。例えばビオトゥイーン化α1D+KIVAサブユニットタンパク質は、当該技術分野における公知技術(例えばビオトゥイーン化キット、Pierce Chemicals,Rockford,IL)を使用してビオトゥイーンNHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製でき、ストレプトアビジンで被覆した96ウェルプレートのウェルに固定化できる(Pierce Chemical)。
【0190】
アッセイを行うために、非固定化成分は、固定成分を含む被覆表面に添加される。反応が完結した後、未反応成分は、形成された複合体が固体表面上に固定化されたままであるような条件で、(例えば洗浄によって)除去される。固体表面上に固定された複合体の検出は、多数の方法で達成できる。事前に非固定化された成分が予めラベルされている場合、表面に固定化された標識が検出されることは、複合体が形成されていることを示す。事前に非固定化された成分が予めラベルされていない場合、表面に固定された標識を検出するために、間接標識が使用できる。例えば、固定化された成分に特異的な、標識された抗体を使用する(抗体は、順次、例えばラベルされた抗Ig抗体によって、直接的にラベル、又は間接的にラベルしてよい)。
【0191】
1つの実施態様において、このアッセイは、カルシウムチャネル上のエピトープと反応し且つチャネルの標的分子への結合を妨げない抗体を使用して実行される。このような抗体はプレートのウェルに誘導体化され、非結合の標的又はカルシウムチャネルは、抗体接合によってウェル内に捕捉できる。このような複合体を検出する方法には、上述したGST固定化複合体に関するものに加え、カルシウムチャネルの成分と反応する抗体を使用した複合体の免疫検出、並びにチャネルに関連した酵素活性の検出による酵素結合アッセイ、が含まれる。
【0192】
あるいは、無細胞アッセイは、液相で行ってもよい。このようなアッセイにおいて、反応生成物は、分画遠心分離(例えばRivas,G.,and Minton,A.P.,Trends Biochem Sci 18:284−7,1993参照)、クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動及び免疫沈降(例えばAusubel,F.et al.,eds.(1999)Current Protocols in Molecular Biology,J.Wiley:New York参照)を含む(但しそれに限定されない)多数の標準技術の任意のものによって、未反応成分から単離される。このような樹脂及びクロマトグラフ技術は、当業者に公知である(例えばHeegaard,N.H.,J Mol Recognit 11:141−8,1998、Hage,D.S.,and Tweed,S.A.,J Chromatogr B Biomed Sci Appl.699:499−525,1997参照)。更に、蛍光エネルギー転移も、本明細書に記載されるように、溶液から複合体を更に精製することなく結合を検出するために、好都合に使用できる。好ましくは、無細胞アッセイは、例えば膜成分又は合成膜成分を含むことによって、カルシウムチャネル複合体の構造を保存する。
【0193】
好ましい実施態様において、アッセイは、カルシウムチャネル又はα1D+KIVAサブユニットの生物活性部分を含むチャネルを、アッセイ混合物を形成するためにチャネルに結合する公知の化合物に接触させること、アッセイ混合物を試験化合物に接触させること、及び、試験化合物のカルシウムチャネルとの相互作用能を測定することを含み、試験化合物のカルシウムチャネルとの相互作用能を測定することは、試験化合物が、公知の化合物と比較して、カルシウムチャネルに優先的に結合する能力、又は、チャネル活性を調節する能力を測定することを含む。
【0194】
本明細書に記載されたカルシウムチャネルは、タンパク質等の1つ以上の細胞性又は細胞外の巨大分子と、インビボで相互作用できる。この論考のために、このような細胞及び細胞外巨大分子は、本明細書で「結合パートナー」と称される。このような相互作用を混乱させる化合物は、標的遺伝子生成物の活性を調節する際に、有用となる場合がある。このような化合物には、抗体、ペプチド、小分子といった分子が含まれるが、これらには限定されない。代替的実施態様において、本発明は、試験化合物が、カルシウムチャネルの下流エフェクター、例えばカルシウム感受性タンパク質、の活性調節を介してカルシウムチャネルの活性を調節する能力を測定する方法を提供する。前述したように、例えば、適切な標的へのカルシウム感受性分子(例えばカルシニューリンのようなカルシウム活性化ホスファターゼ、又はカルシウム活性化転写因子)の活性(例えばカルシニューリンの基質の脱リン酸化、又はカルシウム活性化転写因子によるDNA結合及び転写活性化)を測定してもよいし、カルシウム感受性分子の適切な標的への結合を測定してもよい。
【0195】
カルシウムチャネル及び細胞外結合パートナーの間の相互作用を妨げる化合物を同定するために、標的遺伝子生成物及び結合パートナーを含む反応混合物は、これら二生成物が複合体を形成するのに充分な条件及び時間のもとで、調製される。抑制薬剤を試験するために、反応混合物は、試験化合物の存在及び不存在下で用意される。試験化合物は、当初反応混合物に含まれていてもよく、カルシウムチャネル及びその細胞性若しくは細胞外の結合パートナーの添加後に添加してもよい。対照反応混合物は、試験化合物なしで、又はプラセボと共に、インキュベートされる。カルシウムチャネル及び細胞性又は細胞外の結合パートナー間のあらゆる複合体の形成は、次に検出される。対照反応において複合体が形成され、試験化合物を含む反応混合物では形成されないことは、その化合物が、標的遺伝子生成物及び相互作用的結合パートナーの相互作用を妨げていることを示唆する。更に、試験化合物及び正常な標的遺伝子生成物を含む反応混合物における複合体の形成は、1つ以上の突然変異サブユニットを含むカルシウムチャネル及び試験化合物を含む反応混合物における複合体形成とも比較できる。この比較は、突然変異体の相互作用を乱し且つ正常な標的遺伝子生成物を乱さない化合物の同定が望まれる場合に、重要であり得る。
【0196】
これらのアッセイは、異種又は同種の型式で実行できる。異種アッセイは、カルシウムチャネル又は結合パートナーを固相に固定すること、及び反応終了時に固相上に固定された複合体を検出することを含む。同種アッセイでは、反応全体が液相中で行われる。いずれのアプローチにおいても、反応物の添加順は、試験される化合物に関する異なる情報を得るために、変更してよい。標的遺伝子生成物及び結合パートナー間の相互作用を例えば競合的に妨害する試験化合物は、試験物質の存在下で反応を行うことによって、同定できる。あるいは、予備形成された複合体を破壊する化合物、例えば、より高い結合定数を有し例えば複合体から成分の1つを移動させる化合物は、複合体が形成された後、反応混合物に試験化合物を添加することによって、検査できる。種々の型式を以下に簡単に記載する。
【0197】
異種アッセイ系において、標的遺伝子生成物又は相互作用的細胞性若しくは細胞外の結合パートナーは、固体表面(例えばマイクロタイタープレート)に固定され、他方で非固定種は、直接的又は間接的にラベルされる。固定種は、非共有結合又は共有結合によって、固定化できる。あるいは、固定された種に特異的な固定化抗体が、種を固体表面に固定するために使用できる。
【0198】
アッセイを行うために、固定化種のパートナーは、試験化合物を有する又は有さない被覆表面に暴露される。反応が完結した後、未反応成分は(例えば洗浄によって)除去され、形成されたあらゆる複合体は、固体表面上に固定化されたままである。非固定化種が予めラベルされている場合、表面に固定化された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。非固定化種が予めラベルされていない場合、例えば当初の非固定化種に特異的なラベル抗体を使用して(抗体は、順次、例えばラベルされた抗Ig抗体によって直接的にラベルされてもよく、間接的にラベルされてもよい)、表面に固定された複合体を検出するために、間接標識が使用できる。反応化合物の添加順に応じて、複合体形成を妨げる、又は予備形成された複合体を破壊する試験化合物が、検出できる。
【0199】
あるいは、反応は、試験化合物の存在又は不存在下、液相中で行われ、反応生成物が未反応化合物から単離され、例えば結合化合物の1つに特異的な固定化抗体を用いて溶液中に形成された任意の複合体を固定し、他のパートナーに特異的なラベル抗体を使用して固定複合体を検出することにより、複合体が検出できる。再び、液相への反応物の添加順に応じて、複合体形成を妨げる、又は予備形成された複合体を破壊する試験化合物が、同定できる。
【0200】
本発明の代替的実施態様において、同種アッセイが使用できる。例えば、カルシウムチャネルサブユニット又はその結合パートナーはラベルされるが、標識によって生成されたシグナルは複合体形成によって消されるので、標的遺伝子生成物及び相互作用的細胞性又は細胞外の結合パートナー生成物の予備形成複合体が、調製される(例えば、このアプローチを免疫アッセイに使用する米国特許第4109496号明細書参照)。予備形成された複合体からの一種と競合し、移動させる試験物質を添加すると、バックグラウンド上のシグナルが生成される。このようにして、標的遺伝子生成物−結合パートナー相互作用を乱す試験物質は同定できる。
【0201】
更にもう1つの側面において、カルシウムチャネルタンパク質と結合又は相互作用し(「カルシウムチャネル−結合タンパク質」又は「カルシウムチャネル−bp」)、カルシウムチャネル活性に関与する、他のタンパク質を同定するために、カルシウムチャネルタンパク質又はそのフラグメントが、ツーハイブリッドアッセイ又はスリーハイブリッドアッセイでの「ベイトタンパク質」として使用できる(例えば米国特許第5283317号明細書、Zervos et al.,Cell72:223−232,1993、Madura et al.,J.Biol.Chem.268:12046−12054,1993、Bartel et al.,Biotechniques 14:920−924,1993、Iwabuchi et al.,Oncogene 8:1693−1696,1993、及びBrent国際公開第WO94/10300号パンフレット参照)。このようなカルシウムチャネル−bpは、例えば、カルシウム媒介シグナル経路の下流要素としてのカルシウムチャネル又はカルシウム感受性標的によるシグナルのアクチベーター又はインヒビターである。
【0202】
ツーハイブリッドシステムは、単離可能なDNA結合ドメイン及び活性化ドメインからなる、大部分の転写因子が備える調節性に基づく。簡潔に言えば、このアッセイは、2つの異なるDNAコンストラクトを使用する。一方のコンストラクトでは、(例えばサブユニットの細胞外ドメインの可溶性部分に対応する)カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質又はそのフラグメントをコードする遺伝子が、公知の転写因子(例えばGAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合される。他方のコンストラクトでは、未同定タンパク質(「プレイ」又は「試料」)をコードするDNA配列ライブラリーからのDNA配列が、公知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合される(あるいは、カルシウムチャネルサブユニットは、活性化ドメインに融合されてもよい。)。「ベイト」及び「プレイ」タンパク質が、インビボで相互作用でき、カルシウムチャネルサブユニット依存性複合体を形成すると、転写因子のDNA結合ドメイン及び活性化ドメインが非常に近接する。この近接によって、転写因子に応答して転写調節部位に操作自在に連結されたレポーター遺伝子(例えばlacZ)の転写が行われる。レポーター遺伝子の発現を検出でき且つ機能転写因子を含む細胞コロニーは、単離され、カルシウムチャネルサブユニットと相互作用するタンパク質をコードするクローン化遺伝子を得るために、使用できる。
【0203】
もう1つの実施態様において、カルシウムチャネルサブユニット発現のモジュレータが同定される。例えば、細胞又は無細胞混合物を候補化合物に接触させ、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットmRNA又はタンパク質の発現を、候補化合物の不存在下でのα1D+KIVAmRNA又はタンパク質の発現レベルに比較して、評価する。α1D+KIVAmRNA又はタンパク質の発現が、候補化合物の不存在下よりも存在下において大きい場合、この候補化合物はα1D+KIVAmRNA又はタンパク質発現の刺激物質として同定される。あるいは、α1D+KIVAmRNA又はタンパク質の発現が、候補化合物の不存在下よりも存在下において小さい場合(統計的には著しく少ない)、この候補化合物はα1D+KIVAmRNA又はタンパク質発現のインヒビターとして同定される。α1D+KIVAmRNA又はタンパク質の発現レベルは、本明細書に記載されたα1D+KIVAmRNA又はタンパク質を検出する方法によって、測定できる。
【0204】
もう1つの側面において、本発明は、本明細書に記載された2つ以上のアッセイの組み合わせに関する。例えば、調節剤は、細胞ベース又は無細胞アッセイを使用して、同定でき、薬剤のカルシウムチャネル活性調節能は、インビボ、例えば疼痛障害、又は脈拍若しくは外傷性脳損傷に関連する障害の動物モデルのような動物において、確認できる。
【0205】
本発明は、更に、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規薬剤に関する。従って、本明細書に記載されるような同定された薬剤(例えば、カルシウムチャネル調節剤、本明細書に記載された1つ以上のカルシウムチャネルサブユニットに対応するアンチセンス核酸分子、カルシウムチャネル特異的抗体、又はカルシウムチャネル−結合パートナー)を適切な動物モデルで更に使用して、このような薬剤による治療効率、毒性、副作用、又は作用機序を決定することは、本発明の範囲内である。更に、上記のスクリーニングアッセイによって同定される新規薬剤は、本明細書に記載されたような治療に使用できる。
【0206】
本発明の診断アッセイ及び予後診断アッセイは、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの発現レベルを評価し、カルシウムチャネルα1D+KIVA分子のヌクレオチド又はアミノ酸配列中の変異及び突然変異を同定する方法を含む。
【0207】
発現の監視及びプロファイリング
カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質又は核酸の、生体試料内での存在、レベル、又は不存在は、被験者から生体試料を得ること、及び、この生体試料を、タンパク質又は核酸の存在が生体試料中で検出されるよう、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質又はカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質をコードする核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出可能な化合物又は薬剤に接触させることによって、評価できる。用語「生体試料」には、被験者から単離された組織、細胞及び生体液、並びに被験者中に存在する組織、細胞及び液体、が含まれる。好ましい生体試料は、心臓組織である。カルシウムチャネルα1D+KIVA遺伝子の発現レベルは、多数の方法で測定できる。このような方法には、特に限定されないが、カルシウムチャネルα1D+KIVA遺伝子によってコードされたmRNAを測定すること、カルシウムチャネルα1D+KIVA遺伝子によってコードされたタンパク質の量を測定すること、又はカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットによってコードされたタンパク質の活性を測定すること、が含まれる。
【0208】
カルシウムチャネルα1D+KIVA遺伝子に対応するmRNAの細胞内レベルは、インサイチュ及びインビトロ型式のいずれでも、測定できる。
【0209】
単離mRNAは、特に限定されないが、サザン分析又はノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析、及びプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーション又は増幅アッセイに使用できる。mRNAレベル検出のためのある好ましい診断法は、検出すべき遺伝子によってコードされるmRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と単離mRNAとを接触させることを含む。核酸プローブは、例えば本明細書に記載された核酸のような完全長のカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット核酸、又はその一部、例えば長さが少なくとも7、15、30、50、100、250又は500個のヌクレオチドであり且つカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットmRNA又はゲノムDNAにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに充分なオリゴヌクレオチド、であってよい。プローブは、アレイ、例えば下記のアレイのアドレスに配置できる。診断アッセイで使用するその他の適切なプローブは、本明細書に記載される。
【0210】
1つの形式において、mRNA(又はcDNA)は、例えば、単離mRNAをアガロースゲル上に運び、このmRNAをゲルからニトロセルロースのような膜に転移させることによって、表面上に固定化され、プローブに接触させられる。代替的型式において、プローブは、例えば下記に記載する二次元遺伝子シップアレイにおいて、表面上に固定化され、このmRNA(又はcDNA)はプローブと接触させられる。当業者であれば、公知のmRNA検出方法を、カルシウムチャネルα1D+KIVA遺伝子によってコードされたmRNAのレベルを検出する用途のために、適合させることができる。
【0211】
カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの1つによってコードされる試料中のmRNAレベルは、核酸増幅、例えばrtPCR(Mullis(1987)米国特許第4683202号明細書)、リガーゼ連鎖反応(Barany,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189−193,1991)、自立的配列複製(Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878,1990)、転写増幅システム(Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177,1989)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi et al.,Bio/Technology 6:1197,1988)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5854033号明細書)又は他のいずれかの核酸増幅法を用い、続いて、当該技術分野における公知技術を使用して増幅分子を検出することで、評価できる。本明細書で使用されるように、増幅プライマーは、遺伝子の5’又は3’領域(それぞれプラス及びマイナス鎖、又はその逆)にアニールでき且つ中間に短い領域を含む核酸分子対であると定義される。一般的に増幅プライマーは、長さが約10から30個のヌクレオチドであり、かつ長さが約50から200個のヌクレオチドの領域に隣接する。適切な条件下で適切な試薬を用いることにより、このようなプライマーは、このプライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
【0212】
インサイチュ方法では、細胞又は組織試料は、調製/処理し、支持体、一般にスライドガラスの上に固定化し、続いて、分析すべきカルシウムチャネルα1D+KIVA遺伝子をコードするmRNAにハイブリダイズできるプローブに接触させればよい。
【0213】
もう1つの実施態様において、本明細書の方法は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットmRNA又はゲノムDNAを検出可能な化合物又は薬剤と、対照試料とを更に接触させること、及び、この対照試料内でのカルシウムチャネルα1D+KIVAmRNA又はゲノムDNAの存在を、試験試料内でのカルシウムチャネルα1D+KIVAmRNA又はゲノムDNAの存在と比較すること、を含む。更にもう1つの実施態様において、米国特許第5695937号明細書に記載されたような遺伝子発現の連続分析が、カルシウムチャネルα1D+KIVA転写レベルを検出するために、使用される。
【0214】
カルシウムチャネルα1D+KIVA遺伝子によってコードされるタンパク質のレベルを測定するために、種々の方法が使用できる。一般的に、これらの方法は、試料を、タンパク質に選択的に結合する抗体等の薬剤に接触させることで、この試料内でのタンパク質レベルを評価することを含む。好ましい実施態様において、抗体は、検出可能な標識を担持する。抗体は、ポリクローナルであっても、更に好ましくはモノクローナルであってもよい。無傷な抗体又はそのフラグメント(例えばFab又はF(ab’))は使用できる。プローブ又は抗体に対する用語「ラベルした」は、検出可能な物質をプローブ又は抗体に結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によるプローブ又は抗体の直接的ラベル、並びに、検出可能な物質との反応性によるプローブ又は抗体の間接的ラベル、を包含することが意図される。検出可能な物質の例は、本明細書に提供される。
【0215】
検出法は、生体試料中のカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質を、インビトロ及びインビボで検出するために使用できる。タンパク質検出用のインビトロ技術には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、酵素免疫アッセイ(EIA)、放射免疫アッセイ(RIA)及びウェスタンブロット分析が含まれる。タンパク質検出用のインビボ技術には、被験者に標識付けされた抗カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット抗体を導入することが含まれる。例えば、抗体は、標準撮像技術によって被験者における存在及び位置が検出可能な放射性マーカーによって、ラベルできる。もう1つの実施態様において、試料は、ラベル、例えばビオトゥイーン化され、次に、抗体、例えば(後述するように)抗体アレイに位置決めされた抗カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット抗体に接触させられる。この試料は、例えば蛍光標識に結合されたアビジンによって検出できる。
【0216】
もう1つの実施態様において、この方法は、対照試料を、カルシウムチャネルα1D+KIVAタンパク質を検出可能な化合物又は薬剤に接触させること、及び、対照試料中のタンパク質の存在を試験試料中のタンパク質の存在と比較すること、を更に含む。
【0217】
本発明は、生体試料中でカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質の存在を検出するキットも含む。例えば、このキットは、生体試料中でカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質又はmRNAを検出可能な化合物又は薬剤を含んでよい。化合物又は薬剤は、適切な容器内に包装してよい。キットは、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットタンパク質又は核酸を検出するキットを使用するための説明書を更に含んでもよい。
【0218】
抗体に基づくキットに関して、キットは、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する(例えば固体担体に取り付けられた)第1抗体、及び任意で、(2)ポリペプチド又は第1抗体に結合し且つ検出可能な薬剤に接合される第2の異なる抗体、を含んでよい。
【0219】
オリゴヌクレオチドベースのキットに関して、このキットは、(1)オリゴヌクレオチド、例えば本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列にハイブリダイズする、検出可能にラベルされたオリゴヌクレオチド、又は(2)本発明のマーカーに対応する核酸分子を増幅するために有用なプライマー対、を含んでよい。キットは、緩衝剤、防腐剤、又はタンパク質安定化剤も含んでよい。キットは、検出可能な薬剤を検出するために必要な成分(例えば酵素又は基質)も含んでよい。キットは、検定され含有される試験試料と比較できる、対照試料又は一連の対照試料を含んでもよい。キットの各成分は、個別の容器内に封入してよく、全ての種々の容器は、キットを使用して行われたアッセイの結果を解釈するための説明書と共に、単一の包装内にあってよい。
【0220】
本明細書に記載される診断法は、カルシウムチャネル発現又は活性に関連する疾患又は障害を有する又は発症する危険のある、被験者を特定できる。本明細書で使用されるように、用語「望ましくない」は、心不整脈又は心室細動のような生体反応に関与する望ましくない現象を含む。
【0221】
1つの実施態様において、カルシウムチャネル発現又は活性に関連する疾患又は障害が同定される。試験試料を被験者から入手し、1つ以上のカルシウムチャネルタンパク質又は核酸(例えばmRNA又はゲノムDNA)を評価するところ、カルシウムチャネルタンパク質又は核酸のレベル、例えば存在又は不存在は、カルシウムチャネル発現又は活性に関連する疾患又は障害を有する又は発症する危険のある、被験者の診断に役立つ。本明細書で使用されているように、「試験試料」は、目的の被験者から得られた、生体液(例えば血清)、細胞試料、又は心臓組織等の組織、を含む生体試料を指す。
【0222】
本明細書に記載された予後診断アッセイは、カルシウムチャネル発現又は活性に関連する疾患又は障害を治療するための薬剤(例えばアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチドミメティック、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子又はその他の薬剤候補)を被験者に投与できるか否かを判定するために、使用できる。例えば、このような方法は、被験者が、疼痛障害又は脈拍又は外傷性脳損傷の薬剤で効果的に治療できるか否かを判定するために、使用できる。
【0223】
もう1つの側面において、本発明は、デジタルコード化された複数のデータ記録を有するコンピュータ媒体であることを特徴とする。各データ記録には、試料中のカルシウムチャネルの発現又は活性レベルを示す値、及び試料の記述子が含まれる。試料の記述子は、試料の識別子、試料を処理する化合物、試料が由来する被験者(例えば患者)、診断又は治療(例えば好ましい治療)であってよい。好ましい実施態様において、データ記録には、カルシウムチャネル以外の遺伝子(例えば、カルシウムチャネルの活性に関する障害に関連する他の遺伝子、又はアレイ上の他の遺伝子)の発現レベルを示す値が、更に含まれる。データ記録は、表、例えば、関係データベースのようなデータベースの一部である表、として構築できる(例えばOracle又はSybaseデータベース環境のSQLデータベース)。
【0224】
試料を評価する方法も、同様に扱われる。方法は、例えば被験者から試料を用意すること、及び試料の遺伝子発現プロファイルを測定することを含み、このプロファイルは、カルシウムチャネル発現又は活性のレベルを示す値を含む。この方法は、値又はプロファイル(すなわち複数の値)を、基準値又は基準プロファイルと比較することを更に含んでよい。試料の遺伝子発現プロファイルは、(例えば試料から核酸を用意し、核酸をアレイに接触させること、又は試料中のカルシウムチャネルの活性を検定することによって)本明細書に記載された方法のいかなるものによっても、得ることができる。方法は、被験者の心臓病を診断するために使用でき、L−型カルシウムチャネル発現の変化は、被験者が心臓病を有する又は有する傾向があるという指標である。方法は、被験者の心臓、神経内分泌、又はニューロン(例えば脳又は末梢神経)障害の治療を監視するために使用できる。例えば、遺伝子発現プロファイルは、治療を受けている被験者からの試料に関して測定できる。プロファイルは、基準プロファイル、又は治療前に若しくは障害開始前に被験者から得られたプロファイルと比較できる(例えばGolub et al.,Science 286:531,1999参照)。
【0225】
更にもう1つの側面において、本発明は試験化合物を評価する方法であることを特徴とする(上記の「スクリーニングアッセイ」も参照)。この方法は、細胞及び試験化合物を用意すること、試験化合物を細胞に接触させること、接触された細胞に関して対象の発現プロファイルを得ること、及び、対象の発現プロファイルを1つ以上の基準プロファイルと比較すること、を含む。プロファイルは、カルシウムチャネル活性又は発現のレベルを示す値を含む。好ましい実施態様において、対象の活性又は発現プロファイルは、標的プロファイル、例えば正常細胞又は細胞の所望の条件のプロファイルと比較される。対象の発現プロファイルが非接触細胞から得られた発現プロファイルよりも標的プロファイルに類似するならば、その試験化合物は、好ましいものと評価される。
【0226】
もう1つの側面において、本発明は、被験者を評価する方法であることを特徴とする。この方法は、:a)被験者、例えば被験者の試料を取得する介護者等の介護者から、試料を得ること、b)試料用に対象の発現プロファイルを測定することを含む。任意に、方法は、c)対象の発現プロファイルを1つ以上の基準発現プロファイルと比較するステップ、及びd)対象の基準プロファイルに最も類似する基準プロファイルを選択するステップ、のいずれか又は両方を更に含んでよい。対象の発現プロファイル及び基準プロファイルは、カルシウムチャネル活性又は発現レベルを示す値を含む。2つの基準プロファイルを比較するために、種々の定常統計的測定が使用できる。1つの可能な計量は、2つのプロファイル間の差である距離ベクトルの長さである。対象及び基準プロファイルの各々が多次元ベクトルとして示され、各次元はプロファイルの値である。
【0227】
方法は、結果を介護者に伝達することを更に含んでよい。この結果は、対象の発現プロファイル、対象の発現プロファイルと他のプロファイルとの比較の結果、最も類似する基準プロファイル、又は前述のいずれかの記述子であってよい。結果は、コンピュータネットワークを通じて伝達できる。例えば、結果は、コンピュータ送信、例えば搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号形状であってよい。
【0228】
以下のステップを実行するための実行可能なコードを有するコンピュータ媒体も、特徴である。対象の発現プロファイル(例えば本明細書に記載された任意の対象の発現プロファイル)を受け、基準発現プロファイルのデータベースにアクセスし、i)対象の発現プロファイルに最も類似する整合基準プロファイルを選択する、又はii)対象の発現プロファイルの少なくとも1つの基準プロファイルへの類似性に関して少なくとも1つの比較点数を決定する。対象の発現プロファイル及び基準発現プロファイルの各々は、カルシウムチャネル活性又は発現レベルを示す値を含む。
【0229】
アレイ及びその使用
もう1つの側面において、本発明は、複数のアドレスを有する基質を含むアレイであることを特徴とする。複数の中の少なくとも1つのアドレスは、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットに対応する分子、例えばカルシウムチャネルα1D+KIVA核酸又はポリペプチド、に特異的に結合する捕捉プローブを含む。アレイは、少なくとも10、100、1000又は10000若しくはそれ以上、又はこれらの間の範囲のアドレス/cmの密度を有してよい。基質は、スライドガラス、ウェーハ(例えばシリカ又はプラスチック)、質量分析プレートのような二次元基質、又はゲルパッドのような三次元基質であってよい。複数のアドレスに加え、アドレスはアレイ上に配置できる。
【0230】
好ましい実施態様において、複数の中の少なくとも1つのアドレスは、カルシウムチャネルα1D+KIVA核酸、例えばセンス又はアンチセンス鎖、に特異的にハイブリダイズする核酸捕捉プローブを含む。複数のアドレスのアドレスサブセットは、α1D+KIVAサブユニットをコードするカルシウムチャネル遺伝子の核酸捕捉プローブであってよい。サブセットの各アドレスは、カルシウムチャネルα1D+KIVA核酸の異なる領域にハイブリダイズする捕捉プローブを含んでよい。アレイは、ハイブリダイゼーションにより遺伝子の配列決定をするために使用できる(例えば米国特許第5695940号明細書参照)。
【0231】
アレイは、種々の方法、例えばフォトリソグラフィー法(例えば米国特許第5143854、5510270及び5527681号明細書参照)、機械的方法(例えば米国特許第5384261号明細書に記載されたような定方向フロー法)、(米国特許第5288514号明細書に記載されたような)ピンベースの方法、及びビーズベースの技術(例えば国際出願第PCT US/93/04145号明細書に記載されたような)によって、生成できる。
【0232】
もう1つの実施態様において、複数の中の少なくとも1つのアドレスは、カルシウムチャネルα1D+KIVAポリペプチド又はそのフラグメントに特異的に結合するポリペプチド捕捉プローブを含む。ポリペプチドは、カルシウムチャネルα1D+KIVAポリペプチドの自然発生相互作用パートナーであってよい。好ましくは、ポリペプチドは、例えばモノクローナル抗体又は単鎖抗体といった、本明細書に記載された抗体である(「抗カルシウムチャネルα1D+KIVA抗体」参照)。
【0233】
もう1つの側面において、本発明は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの発現を分析する方法であることを特徴とする。この方法は、上記のアレイを用意すること、アレイを試料に接触させること、及び、アレイへのカルシウムチャネルα1D+KIVA分子(例えば核酸又はポリペプチド)の結合を検出すること、を含む。任意に、方法は、試料からの核酸を、アレイとの接触前又は接触中に増幅することを更に含む。
【0234】
もう1つの実施態様において、アレイは、アレイ中の遺伝子の組織特異性を解明するため、組織中で遺伝子発現、特にカルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの発現を検定するために使用できる。種々の充分数の試料を分析するならば、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットと同時に調節される他の遺伝子を同定するために、クラスター化(例えば階層的クラスター化、k−平均クラスター化、ベイズのクラスター化)が使用できる。例えば、アレイは、複数遺伝子の発現の定量化のために使用できる。このように、組織特異性のみならず、組織内の一連の遺伝子の発現レベルも解明される。定量的データは、その組織発現自体及びその組織内の発現レベルに基づいて、遺伝子をグループ化(例えばクラスター)するために使用できる。
【0235】
例えば、遺伝子発現のアレイ分析は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット発現による細胞−細胞相互作用の効果を評価するために使用できる。第1組織を摂動させ、第1組織と相互作用する第2組織からの核酸を分析できる。このような状況において、ある細胞タイプが生物的刺激に応答して他の細胞タイプに与える効果は、例えば遺伝子発現レベルで細胞−細胞相互作用の効果を監視するために、決定される。
【0236】
もう1つの実施態様において、細胞は、治療薬に接触させられる。細胞の発現プロファイルはアレイを使用して測定され、発現プロファイルは、治療薬に接触しなかった同様の細胞のプロファイルと比較される。例えば、アッセイは、治療薬の望ましくない効果の分子機序を決定及び分析するために使用できる。治療薬がある細胞タイプを治療するために治療上投与されているが、他の細胞タイプに対しては望ましくない効果を有するならば、本発明は、望ましくない効果の分子機序を決定するアッセイを提供し、これにより、反作用する薬剤を同時投与するか、さもなければ望ましくない効果を処置する機会を提供する。同様に、単一の細胞タイプ内でさえ、望ましくない生物学的効果は分子レベルで決定できる。従って、薬剤が標的遺伝子以外の発現に与える効果は、解明して中和できる。
【0237】
もう1つの実施態様において、アレイは、アレイ中の1以上の遺伝子の発現を経時的に監視するために、使用できる。例えば、様々な時点から得られた試料は、アレイによって検査できる。このような分析によって、カルシウムチャネル活性に関連する疾患又は障害の発達を特定及び/又は特徴付けできる。同様に、この方法によれば、カルシウムチャネル活性に関連する疾患又は障害の治療及び/又は進行が評価できる。
【0238】
アレイは、正常細胞及び異常細胞における、1つ以上の遺伝子のディファレンシャル発現パターンを解明するために有用である。これにより、診断又は治療的介入の分子標的として役立ち得る一連の遺伝子(例えば、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットコードする遺伝子が含まれる)が提供される。
【0239】
もう1つの側面において、本発明は、複数のアドレスを有するアレイであることを特徴とする。複数の各アドレスは、単一のペプチドを含む。複数の中の少なくとも1つのアドレスは、その上に、カルシウムチャネルα1D+KIVAポリペプチド又はそのフラグメントを配置する。ポリペプチドアレイを製造する方法は、当該技術分野において、例えばDe Wildt et al.,Nature Biotech.18:989−994,2000、Lueking et al.,Anal.Biochem.270:103−111,1999、Ge,H.,Nucleic Acids Res.28:e3,I−VII,2000、MacBeath,G.,and Schreiber,S.L.,Science 289:1760−1763,2000、及び国際公開第WO99/51773号パンフレットに記載されている。好ましい実施態様において、複数の各アドレスは、その上に、カルシウムチャネルα1D+KIVAポリペプチド又はそのフラグメントに、少なくとも60%−99%同一であるポリペプチドを配置している。例えば(例えば対立遺伝子変異体、部位特異的突然変異体、ランダム突然変異体、又はコンビナトリアル突然変異体によってコードされる)カルシウムチャネルα1D+KIVAポリペプチドの複数の変異体が、複数の個別アドレスに配置できる。
【0240】
ポリペプチドアレイは、カルシウムチャネル結合化合物(例えばカルシウムチャネルα1D+KIVAポリペプチドに特異性を有する被験者の試料からの抗体)、又はカルシウムチャネル−結合タンパク質若しくはリガンドの存在を検出するために、使用できる。
【0241】
もう1つの側面において、本発明は複数のプローブを分析する方法であることを特徴とする。この方法は、例えば遺伝子発現を分析するために有用である。
方法は、各アドレスが、独特の捕捉プローブを有する複数の他の各アドレスから、互いに位置的に区別できる、複数のアドレスを有する二次元アレイを用意することを含み、ここで、捕捉プローブは、例えば、α1D+KIVAサブユニットを含むカルシウムチャネルを発現する細胞又は被験者、又は、例えばカルシウムチャネルα1D+KIVA核酸又はタンパク質と細胞との接触、又は細胞又は被験者へのカルシウムチャネルα1D+KIVA核酸又はタンパク質の投与によって、カルシウムチャネル媒介応答が発現した細胞又は被験者、に由来するものであり、
各アドレスが、複数の他の各アドレスから互いに位置的に区別でき、独特の捕捉プローブを有する、複数のアドレスを有する二次元アレイを用意することを含み、ここで、捕捉プローブは、例えば、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットを発現しない(又は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニット陽性の複数の捕捉プローブの場合ほど高度には発現しない)細胞又は被験者、又は、カルシウムチャネル媒介応答が発現しなかった(又は第1の試料よりも狭い範囲で発現した)細胞又は被験者、に由来するものであり、
アレイを(好ましくは、カルシウムチャネルα1D+KIVA核酸、ポリペプチド又は抗体以外である)1つ以上の照会プローブに接触させること、及び、これにより複数の捕捉プローブを評価することを含む。例えば核酸の場合には、結合、及び複数のアドレスでの捕捉プローブとのハイブリダイゼーションは、例えば核酸、ポリペプチド又は抗体に取り付けられた標識のシグナル生成によって検出される。
【0242】
もう1つの側面において、本発明は、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットを分析する方法、例えば構造、機能、又は他の核酸若しくはアミノ酸配列への関連性を分析する方法であることを特徴とする。この方法は、カルシウムチャネルα1D+KIVA核酸又はアミノ酸配列を用意すること、この配列を、例えば核酸又はタンパク質配列データベースといった配列集合からの一配列、好ましくは複数の配列と比較して、カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットを分析すること、を含む。
【0243】
検出アッセイ
本明細書で同定されるcDNA配列の一部又はフラグメント(及び対応する完全な遺伝子配列)は、ポリヌクレオチド試薬として、多数の方法によって使用できる。
【0244】
例えば、ポリヌクレオチド試薬は、診断アッセイ、予後診断アッセイに使用でき、臨床試験の監視は予後診断(予測)目的で使用され、これにより予防的に個体を治療する。従って、本発明の1つの側面は、個体が疾患又は障害に苦しんでいるか、α1D+KIVA発現又は活性に関連した異常又は望まない障害を発症する恐れがあるか否かを決定するために、生体試料(例えば、血液、血清、細胞、組織)の状況で、α1D+KIVAタンパク質及び/又は核酸の発現並びにα1D+KIVA活性を測定するための診断アッセイに関する。本発明は、個体がα1D+KIVAタンパク質、核酸の発現、又は活性に関連した障害を発症する危険があるか否かを決定するための予後診断(予測)アッセイも提供する。例えば、α1D+KIVAサブユニットをコードする遺伝子の突然変異は、生体試料において検定され、予後診断又は予測目的で使用できる。
【0245】
本発明のもう1つの側面は、薬剤(例えば薬剤、化合物)がインビボでα1D+KIVA発現又は活性に与える影響の監視に関する。
【0246】
薬剤(例えば薬剤)がα1D+KIVAサブユニットタンパク質の発現又は活性(例えば膜興奮性の調節)に与える影響を監視することは、基礎的な薬剤スクリーニングだけでなく、臨床試験にも応用できる。例えば、本明細書に記載されたスクリーニングアッセイによってα1D+KIVA遺伝子発現、タンパク質レベルを増加する又はα1D+KIVA活性を上方制御すると決定された薬剤の有効性は、減少又は増加したα1D+KIVA遺伝子発現、タンパク質レベル、又は下方制御されたα1D+KIVAを示す被験者の臨床実験において監視できる。例えば、カルシウムチャネルに関連する障害に関与するその他の遺伝子は、特定の細胞の表現型マーカーとして使用できる。
【0247】
治療法
本発明のもう1つの側面は、治療目的でα1D+KIVA発現又は活性を調節する方法に関する。従って、模範的な実施例では、本発明の調節法は、細胞を、α1D+KIVAサブユニットタンパク質、又はこの細胞に関連するα1D+KIVAサブユニットタンパク質の活性の1つ以上を調節する薬剤に、接触させることを含む。α1D+KIVAサブユニットタンパク質活性を調節する薬剤は、核酸又はタンパク質、α1D+KIVAタンパク質の自然発生標的分子(例えばα1D+KIVA基質)、α1D+KIVA抗体、α1D+KIVAアゴニスト又はアンタゴニスト、α1D+KIVAアゴニスト又はアンタゴニストのペプチドミメティック、その他の小分子、といった本明細書に記載された薬剤であってよい。1つの実施態様において、薬剤は、α1D+KIVA活性の1つ以上を刺激する。このような刺激薬剤の例には、活性α1D+KIVAタンパク質、及び細胞に導入されたα1D+KIVAをコードする核酸分子が含まれる。もう1つの実施態様において、薬剤は、α1D+KIVA活性の1つ以上を抑制する。このような抑制薬剤の例には、アンチセンスα1D+KIVA核酸分子、抗α1D+KIVA抗体、及びα1D+KIVAインヒビターが含まれる。これらの調節法は、(例えば細胞を薬剤とともに培養することによって)インビトロで、あるいは(例えば薬剤を被験者に投与することによって)インビボで、行うことができる。このように、本発明は、α1D+KIVAタンパク質又は核酸分子の異常又は望ましくない発現若しくは活性を特徴とする、疾患又は障害に苦しむ個体を治療する方法を提供する。1つの実施態様において、方法は、薬剤(例えば、本明細書で記載されるスクリーニングアッセイによって同定される薬剤)、又はα1D+KIVA発現又は活性を調節する(例えば、上方制御又は下方制御する)薬剤を組み合わせて、投与することを含む。もう1つの実施態様において、方法は、α1D+KIVAタンパク質又は核酸分子を、減少した又は異常なα1D+KIVA発現又は活性を補償するための治療として、投与することを含む。
【0248】
α1D+KIVA活性の刺激は、α1D+KIVAが異常に下方調節される状況、及び/又は、α1D+KIVA活性が増加すると有益な効果をもたらすであろう状況、において望ましい。活性の拮抗も同じく望ましくなり得る。例えば、モジュレータは、心調律の調節に望ましい場合がある。
【0249】
医薬組成物
本明細書で使用されるように、本発明の組成物、例えば本明細書に記載された方法により同定されたカルシウムチャネルモジュレータは、薬理学的に許容し得る誘導体又はプロドラッグを含むものと定義される。「薬理学的に許容し得る誘導体又はプロドラッグ」は、本発明の化合物の任意の薬理学的に許容し得る塩、エステル、エステル塩、本発明の化合物を(直接的又は間接的に)受容体への投与後に提供できる、本発明の化合物のその他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体及びプロドラッグは、このような化合物が哺乳動物に投与されたときに(例えば、経口投与された化合物を血液中に吸収されるのを更に容易にすることによって)本発明の化合物の生物学的利用能を増加させるもの、又は親種比べて生物学的区画(例えば脳、又はリンパ系)への親化合物の送達を増強するものである。好ましいプロドラッグには、水溶解度又は腸膜を介した能動輸送を増強する基が、本明細書に記載された式の構造に付加された誘導体が含まれる。
【0250】
本発明の化合物は、選択的生物特性を増強するために適切な機能性を付加することによって、修飾してよい。このような修飾は、当該技術分野では公知であり、所与の生物学的区画(例えば脳、又はリンパ系、中央神経系)への生物的浸透を増加させ、経口利用性を向上させ、注射による投与を可能にし、代謝を変更し、排泄速度を変更するために溶解度を増加させるものが含まれる。
【0251】
本発明の化合物の薬理学的に許容し得る塩は、薬理学的に許容し得る無機及び有機の酸及び塩基に由来したものが含まれる。適切な酸性塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルフェート、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタノエート、グリコール酸塩、ヘミスルフェート(hemisulfate)、ヘプタノエート、ヘキサノエート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコトゥイーン酸塩、硝酸塩、パーモエート(palmoate)、ペクトゥイーン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカノエートが含まれる。シュウ酸等の他の酸は、それ自体は薬理学的に許容されないが、本発明の化合物及びその薬理学的に許容し得る酸添加塩を得る際に、中間体として有用な塩の調製に使用できる。適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム及びN−(アルキル)塩が含まれる。本発明は、本明細書に開示された化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も予見する。水溶性若しくは油溶性又は分散性の生成物は、このような四級化によって得られる。本明細書の任意の式の化合物の塩形状は、カルボキシ基(例えばL−アルギニン、L−リシン、L−ヒスチジン塩)のアミノ酸塩であってよい。
【0252】
本明細書に記載された式の化合物は、例えば静脈内、動脈内、真皮下、腹腔内、筋肉内、又は皮下に注射することによって、又は経口、口腔内、経鼻、経粘膜、局所で、点眼薬で、又は吸入によって、体重1キロ当たり約0.5〜約100mgの服用量、あるいは4〜120時間毎に一服当たり1mg〜1000mgの服用で、又は特定の薬剤の要件に従って、投与できる。本明細書の方法では、所望の又は一定の効果を達成するために、有効量の化合物又は化合物組成物の投与が考慮される。一般に、本発明の医薬組成物は、1日当たり約1から約6回、又は連続輸液として投与される。このような投与は、慢性又は急性治療としても使用できる。1回の投与形状を生成するために担体材料に混合される活性成分量は、治療される宿主及び特定の投与方式に応じて、変化する。典型的な製剤は、約5%から約95%(w/w)の活性化合物を含む。あるいは、このような製剤は、約20%から約80%の活性化合物を含む。
【0253】
以上に列挙した用量よりも低い又は高い用量が、必要とされる場合がある。いかなる特定患者に対する特殊な服用量及び治療計画は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌、投与時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、疾患の重症度及び経過、状態又は症状、患者の疾患、状態又は症状の性質、及び治療を行う医師の判断を含む、種々の要因に依存する。
【0254】
必要であれば、患者の状態の改善後、本発明の化合物、組成物、又は組み合わせの維持量を投与してもよい。その後、症状が所望のレベルまで緩和された場合、投与の量若しくは頻度、又は両方は、症状に応じて、改善された状態が維持されるレベルまで減少してよい。しかしながら、患者が、疾患の症状の再発後、長期にわたり断続的な治療を必要とする場合もある。
【0255】
本明細書で説明した組成物は、本明細書で説明した式の化合物、並びに追加の治療薬があればこの追加の治療薬を、イオンチャネル媒介障害又はその症状を含む疾患又は疾患の症状を調節できる有効な量、含有する。
【0256】
用語「薬理学的に許容し得る担体又はアジュバント」は、本発明の化合物と共に患者に投与できる担体又はアジュバントであって、治療量の化合物を送達するのに充分な用量で投与されたときに、その薬理活性を破壊せず、非毒性である担体又はアジュバントを指す。
【0257】
本発明の医薬組成物に使用できる薬理学的に許容し得る担体、アジュバント及び媒体には、特に限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシトゥイーン、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、トゥイーンその他の類似したポリマー送達マトリックスのような医薬投与形状で使用される界面活性剤等の自己乳化性薬物送達システム(SEDDS)、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水等の緩衝物質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ボリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛油等の塩又は電解質が含まれる。α−、β−、及びγ−シクロデキストリンといったシクロデキストリン、又は、2−及び3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンといった化学的に修飾された誘導体、その他の可溶化誘導体も、本明細書に記載された式の化合物の送達を強化するために好適に使用できる。
【0258】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、吸入スプレーにより、局所、直腸、経鼻、口腔内、経膣又は移植されたリザーバを経由して、好ましくは経口投与又は注射投与によって、投与できる。本発明の医薬組成物は、従来の非毒性で薬理学的に許容し得る担体、アジュバント又は媒体、の任意のものを含んでもよい。薬理学的に許容し得る酸、塩基又は緩衝液によって、製剤のpHを調整して、配合された化合物又はその送達形状の安定性を強化してよい場合もある。本明細書で使用されるような非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、クモ膜下、病巣内及び頭蓋内への、注射又は輸液技術を含む。
【0259】
医薬組成物は、滅菌注射用製剤、例えば、滅菌注射可能な水性又は油性の懸濁液のような形状であってもよい。この懸濁液は、当該技術分野において公知の技術に従って、適切な分散剤又は湿潤剤(例えばトゥイーン80)、及び懸濁剤を使用して、処方できる。滅菌注射可能な製剤は、滅菌注射可能な、溶液、又は、例えば1、3−ブタンジオール溶液のような非経口で無毒性の許容し得る希釈液又は溶剤中の懸濁液であってもよい。使用可能な許容し得る媒体及び溶剤には、マンニトール、水、リンガー液、及び生理食塩液がある。更に、滅菌不揮発性油は、溶剤又は懸濁媒として、従来使用されている。このために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含むあらゆる無刺激不揮発性油が使用できる。オレイン酸等の脂肪酸及びそのグリセリド誘導体は、オリーブ油又はヒマシ油が、特にそのポリオキシエチル化の形で薬理学的に許容し得る天然油であるので、注射液の調製に有用である。これらの油剤又は懸濁液は、長鎖アルコール希釈液及び分散剤、又はカルボキシメチルセルロース、又はエマルジョン又は懸濁液のような薬理学的に許容し得る投与形状の処方に通常使用される類似する分散剤、を含んでもよい。トゥイーン又はスパン(Span)及び/又は他の類似する乳化剤のようなその他の通常使用される界面活性剤、又は薬理学的に許容し得る固体、液体その他の投与形状の製造に通常使用される生物活性エンハンサーも、処方のために使用できる。
【0260】
本発明の医薬組成物は、特に限定されないが、カプセル、錠剤、エマルジョン及び水性懸濁液、分散剤及び溶液を含む、経口的に許容し得るあらゆる投与形状で、経口投与できる。経口用の錠剤の場合、通常使用される担体は、ラクトース及びコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムのような平滑剤も、一般に添加される。カプセル形状での経口投与に関して、有用な希釈液は、ラクトース及び乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液及び/又はエマルジョンが経口で使用される場合、活性成分は、油相で懸濁又は溶解し、乳化剤及び/又は懸濁剤と混合してよい。所望ならば、ある種の甘味料及び/又は香味料及び/又は着色剤が添加されてもよい。
【0261】
本発明の医薬組成物は、直腸投与用の坐薬の形状で投与してもよい。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温では固体であり且つ直腸温度では液体であって、直腸内で融解して活性成分を放出する適切な非刺激性賦形剤とともに、混合することによって調製できる。このような材料には、カカオ脂、蜜蝋、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0262】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望される治療が、局部適用によって容易に到達できる領域又は器官に関連する場合に有用である。皮膚に局所適用するためには、医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解された活性成分を含む適切な軟膏で処方するべきである。本発明の化合物の局所投与用担体には、特に限定されないが、鉱油、流動石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋、及び水が含まれる。あるいは、医薬組成物は、適切な乳化剤により担体中に懸濁又は溶解された活性化合物を含む適切なローション及びクリームで処方してもよい。適切な担体には、特に限定されないが、鉱油、ソルビタンモノステアリン酸、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれる。本発明の医薬組成物は、肛門坐薬製剤又は適切な浣腸製剤によって、下部腸管に局所適用してもよい。局所経皮パッチも本発明に含まれる。
【0263】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾール又は吸入によって投与してよい。このような組成物は、医薬製剤の技術分野で周知の技術によって調製され、ベンジルアルコールその他の適切な防腐剤、生物学的利用能を強化する吸収促進剤、フルオロカーボン及び/又は当該技術分野で公知であるその他の可溶剤又は分散剤を用いて、塩類溶液として調製してもよい。
【0264】
本明細書の式の化合物、及び追加の薬剤(例えば治療薬)を有する組成物は、移植可能な装置を使用して投与できる。移植可能な装置及び関連する技術は、当該技術分野において公知であり、本明細書で説明した化合物又は組成物の連続送達又は徐放送達が望まれる場合に、送達システムとして有用である。更に、移植可能装置送達システムは、化合物又は組成物の送達の特定点(例えば局在化部位、器官)を標的にするために有用である(Negrin et al.,Biomaterials,22(6):563(2001)参照)。交互送達法を含む徐放技術も、本発明において使用できる。例えば、ポリマー技術に基づく徐放処方、持続放出技術及びカプセル化技術(例えば、ポリマー、リポソーム)も、本明細書で説明された化合物及び組成物を送達するために使用できる。
【0265】
本明細書の活性化学療法混合物を送達するためのパッチも、本発明の範疇である。パッチは、材料層(例えばポリマー、布、ガーゼ、包帯)、及び本明細書の製剤の化合物を含む。材料層の一方の側面は、この材料層に接着された保護層を含んでよく、これにより、化合物又は組成物の通過に耐えることができる。パッチは、パッチを被験者の定位置に保持するための接着剤を更に含んでよい。接着剤は、被験者の皮膚に接触されると、一時的に皮膚に接着する組成物であり、天然又は合成由来のものが含まれる。それは防水性であってもよい。長時間に亘って被験者の皮膚とパッチとの接触状態を保つために、接着剤がパッチ上に配置されてもよい。接着剤は、偶然接触しやすい位置に装置を保持するが、積極的行為(例えば引き裂き、剥がしその他の意図的な除去)を受けると、装置又は接着剤自体に負荷された外力に屈して、接着的接触を中断するように、粘着又は接着力を有するように作製できる。接着剤は、感圧性であってもよく、つまり、これにより、接着剤又は装置に圧力を加える(例えば押圧、摩擦)と、接着剤(及び皮膚に接着される装置)の皮膚に対する位置決めができる。
【0266】
本発明の組成物が、本明細書に記載された製剤の化合物及び1つ以上の追加の治療薬剤又は予防的薬剤の混合物を含む場合、化合物及び追加の薬剤は、いずれも、単独投与計画で通常投与される服用量の約1〜100%、より好ましくは約5〜95%の服用量レベルで存在すべきである。追加の薬剤は、本発明の化合物とは別に、複数投与計画の一部として、別個に投与してもよい。あるいは、これらの薬剤は、単独投与形式の一部で、単一組成物中で本発明の化合物と共に混合してもよい。
【0267】
以上に記載された化合物及び方法は、カルシウムチャネル機能の治療的調節に使用できる。
【0268】
【表1】

【0269】
本明細書で言及された全ての参考文献は、印刷、電子、コンピュータ読み取り可能記憶媒体、特に限定されないが、アブストラクト、論文、機関紙、出版物、テキスト、専門書、インターネットウェブサイト、データベース、ソフトウェアパッケージ、特許及び特許公開を含むその他の形状のいずれであっても、その全体が参考として明確に組み込まれる。本発明の多数の実施態様は記載されている。しかしながら、種々の修正が、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、行われてよいことが理解されるであろう。従って、その他の実施態様は、請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの単離されたポリペプチドであって、
前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
KIVA配列は、細胞外ドメイン内にある請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、ヒト型である請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含まない請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列からなる請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットの単離されたポリペプチドであって、
前記ポリペプチドは、配列番号6に少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、前記ポリペプチドは、次の特徴:
(a)配列番号6のアミノ酸1291−1305の欠失、
(b)配列番号2の挿入、又は、
(c)配列番号6のアミノ酸1804−1812の欠失、の1つ以上を含むポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドは配列番号2の挿入を含み、この挿入は細胞外ドメイン内にある請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記挿入は、反復ドメインの第3及び第4膜貫通セグメントの間にある請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記挿入は、第4反復ドメインの第3及び第4膜貫通セグメントの間にある請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記挿入は、配列番号6のアミノ酸1290の後にある請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記挿入は、配列番号6のアミノ酸1290にある請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドは、前記特徴(a)、(b)、又は(c)のいずれか2つを有する請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドは、前記特徴(a)、(b)、又は(c)の3つ全てを有する請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号4の少なくとも10個の隣接アミノ酸を含む単離されたポリペプチドであって、
前記ポリペプチドは、アミノ酸1281−1284の少なくとも1つ、並びに/又は、アミノ酸1792及び1793を含むポリペプチド。
【請求項16】
配列番号2ではない、細胞外ドメインの一部分は、他のカルシウムチャネルαサブユニットからの細胞外ドメインによって置換される請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載のポリペプチドをコードするL−型カルシウムα1D+KIVAサブユニットの単離された核酸分子。
【請求項18】
前記核酸は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
核酸分子は、配列番号3のヌクレオチド配列からなる請求項18に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記核酸は、配列番号3の核酸配列の対立遺伝子である請求項17に記載の核酸分子。
【請求項21】
請求項17に記載のL−型カルシウムα1D+KIVAサブユニット核酸分子のフラグメントであって、
前記フラグメントは、配列番号2をコードするフラグメント。
【請求項22】
プロモータに操作可能に連結された請求項17に記載のL−型カルシウムα1D+KIVAサブユニット核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項23】
請求項17に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項24】
請求項1に記載のL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドに優先的に結合する薬剤。
【請求項25】
請求項5に記載のL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドに選択的に結合し、且つ、配列番号5の配列を含むL−型カルシウムチャネルα1Dサブユニットポリペプチドには結合しない薬剤。
【請求項26】
前記薬剤は、小分子、核酸、又は、タンパク質である請求項24に記載の薬剤。
【請求項27】
前記薬剤は、L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドのカルシウムチャネル活性を調節(例えば、阻害又は増強)する請求項26に記載の薬剤。
【請求項28】
前記薬剤は、抗体又はその抗原結合フラグメントである請求項26に記載の薬剤。
【請求項29】
前記抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である請求項28に記載の薬剤。
【請求項30】
請求項27に記載の薬剤及び薬理学的に許容し得る担体を含む医薬組成物。
【請求項31】
細胞内でL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチド活性を調節する方法であって、
α1D+KIVAサブユニットポリペプチドを含むL−型カルシウムチャネルを調製すること、
前記チャネルを、α1D+KIVAサブユニットポリペプチドの活性を調節するために有効な量のL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットモジュレータに接触させること、を含み、
前記α1D+KIVAサブユニットポリペプチドを、請求項1から16のいずれかに記載のα1D+KIVAサブユニットポリペプチドとする方法。
方法。
【請求項32】
前記モジュレータは、小分子、核酸、又は、タンパク質である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドの活性を調節する薬剤を同定する方法であって、
α1D+KIVAサブユニットポリペプチドを含む第1カルシウムチャネルを調製すること、
前記チャネルを試験化合物に接触させること、及び、
カルシウムチャネルの活性を評価すること、を含み、
前記α1D+KIVAサブユニットポリペプチドを、請求項1から16のいずれかに記載されたα1D+KIVAサブユニットポリペプチドとし、
基準値に対する活性の変化を、前記化合物がチャネルを調節する薬剤であることを示すものとする方法。
【請求項34】
前記試験化合物は、小分子、ペプチド、又は、核酸である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記カルシウムチャネルは、生体試料内に含まれる請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記試料は、細胞膜を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記試料は、細胞を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞は、真核細胞である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞は、アフリカツメガエルの卵母細胞である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞は、哺乳動物細胞である請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記活性は、カルシウム濃度の調節を含む請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記評価は、カルシウムフラックスを検出することを含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記接触は、試験化合物がない場合に、第1の量のカルシウムフラックスを引き起こす条件で行われる請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記評価は、カルシウムフラックスアッセイを使用することを含む請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記アッセイは、パッチクランプ電気生理を使用する請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記アッセイは、二電極電位クランプ電気生理を使用する請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記アッセイは、蛍光アッセイである請求項43に記載の方法。
【請求項48】
請求項33に記載の方法であって、
請求項1から16に記載のα1D+KIVAサブユニットポリペプチド以外のα1Dサブユニットポリペプチドを含む第2カルシウムチャネルを調製するステップ、
前記第2チャネルを前記試験化合物に接触させるステップ、
前記第2カルシウムチャネルの活性を評価するステップ、を更に含む方法。
【請求項49】
前記試験化合物の存在下での前記第1カルシウムチャネルの活性を、前記試験化合物の存在下での前記第2カルシウムチャネルの活性と比較することを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項50】
複数のカルシウムチャネルを調製する請求項33に記載の方法。
【請求項51】
前記α1D+KIVAサブユニットポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む請求項33に記載の方法。
【請求項52】
L−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドアイソフォームに選択的に結合する薬剤を同定する方法であって、
請求項1から16のいずれかに記載の第1α1D+KIVAサブユニットポリペプチドアイソフォームを調製すること、
前記第1ポリペプチドを試験化合物に接触させること、
前記試験化合物の前記第1ポリペプチドへの結合を検定すること、
第2α1Dサブユニットポリペプチドを調製すること、
前記第2ポリペプチドを前記試験化合物に接触させること、
前記試験化合物の前記第2ポリペプチドへの結合を検定すること、を含み、
前記α1Dサブユニットポリペプチドを、請求項1から16に記載のα1D+KIVAサブユニットポリペプチド以外とし、
前記第1ポリペプチドに結合し且つ前記第2ポリペプチドに実質的に結合しない化合物を、この化合物がL−型カルシウムチャネルα1D+KIVAサブユニットポリペプチドアイソフォームに選択的に結合する薬剤であることを示すものとする方法。
【請求項53】
カルシウム電流に関する障害の治療に有用な薬剤を同定する方法であって、
請求項1から16のいずれかに記載のα1D+KIVAサブユニットポリペプチドを含むカルシウムチャネルを調製すること、
前記チャネルを試験化合物に接触させること、及び、
前記チャネルの活性を評価すること、を含み、
基準値に関する活性の変化を、前記試験化合物がカルシウム電流に関する障害に有用な薬剤であることを示すものとする方法。
【請求項54】
前記障害は、心臓病である請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記化合物を(例えば動物モデルを使用して)インビボで投与することを更に含む請求項53に記載の方法。
【請求項56】
インビボで使用する化合物を修飾することを更に含む請求項53に記載の方法。
【請求項57】
カルシウムチャネル電流に関する障害を有する被験者を治療する方法であって、
治療を必要とする被験者に、α1D+KIVAサブユニットを含むカルシウムチャネルに選択的な薬理学的薬剤を投与することを含む方法。
【請求項58】
前記障害は、心臓病である請求項57に記載の方法。

【公表番号】特表2007−525968(P2007−525968A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517654(P2006−517654)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020397
【国際公開番号】WO2005/001060
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505475035)サイオン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】