説明

新規ケイ素間二重結合含有化合物

【課題】有機合成化学において、原料、合成中間体、立体保護基等として有用な新規化合物を提供する。
【解決手段】(E)ー1,2−ビス(1,1,3,3,5,5,7,7,−オクタエチルー1,2,3,5,6,7,−ヘキサヒドロ−s−インダセンー4−イル)ー1,2−ジブロモジシレンに代表される、かさ高い置換基を有するジシレン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素間二重結合を含有する新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機合成化学の分野において、かさ高い化合物が合成中間体や立体保護基等として有用であることが知られている。例えば、非特許文献1〜5には、かさ高い立体保護基を利用することにより、従来存在し得ないと考えられていたSi=Si結合、P=P結合等の重い元素間の不飽和結合を有する化合物(インターエレメント不飽和結合化合物)の合成に成功したことが報告されている。
【非特許文献1】R.West, Science 1981, 214, 1343.
【非特許文献2】吉藤正明, JACS 1981, 103, 4587.
【非特許文献3】岡崎廉治, 時任宣博, JACS 2000, 122, 5648.
【非特許文献4】吉良満夫, Nature 2003, 421, 725.
【非特許文献5】関口章, Science 2004, 305, 1755.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の目的は、有機合成化学において有用な新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(I)で表されるケイ素間二重結合を有する環状化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

[一般式(I)中、R11〜R22およびR31〜R42は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、X1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に水素原子、アルカリ金属原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基または不飽和炭化水素基を表し、但し、A1およびA2の少なくとも一方はハロゲン原子を表す。]
[2]一般式(I)中、R11、R12、R15、R16、R17、R18、R21、R22、R31、R32、R35、R36、R37、R38、R41およびR42は、それぞれ独立にアルキル基を表し、R13、R14、R19、R20、R33、R34、R39およびR40は水素原子を表す[1]に記載の化合物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物は、剛健性を有するため化学的安定性が高く、一般式(I)中のA1部および/またはA2部にて結合可能(二官能性)であるため各種有機合成反応に応用可能である。また、一般式(I)中のR11〜R22およびR31〜R42に導入する基の種類により、溶解性等の物性を制御することができる。更に、簡便な方法により大量合成可能であるため高い汎用性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の化合物は、下記一般式(I)で表される。一般式(I)で表される化合物は、A1およびA2のいずれかが高い反応性を有するハロゲン原子であるため、有機合成における出発原料または合成中間体として有用である。
【化2】

以下、一般式(I)の詳細を説明する。
【0008】
本発明において、ある官能基が置換基を有し得る場合、置換基の種類、その数および置換位置は特に限定されるものではないが、置換基の具体例としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、好ましくは臭素原子)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基)を挙げることができる。
【0009】
一般式(I)中、R11〜R22およびR31〜R42は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。前記炭化水素基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。前記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基等を挙げることができる。溶解性等の点からは、アルキル基であることが好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐の置換または無置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基を挙げることができる。中でも、炭素数1〜6の置換または無置換のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の無置換のアルキル基が更に好ましい。化合物の安定性や反応性を考慮すると、R11、R12、R15、R16、R17、R18、R21、R22、R31、R32、R35、R36、R37、R38、R41およびR42がそれぞれ独立にアルキル基を表し、R13、R14、R19、R20、R33、R34、R39およびR40が水素原子を表すことが好ましい。
【0010】
一般式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表す。
【0011】
ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子である。
【0012】
本発明の化合物を使用する有機合成反応において、A1および/またはA2において反応を進行させる場合、X1およびX2はいずれも水素原子であることが安定性の点から好ましい。他方、X1および/またはX2においても反応を進行させる場合、X1および/またはX2はハロゲン原子であることが好ましい。
【0013】
一般式(I)中、A1およびA2は、それぞれ独立に水素原子、アルカリ金属原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基または不飽和炭化水素基を表し、但し、A1およびA2の少なくとも一方はハロゲン原子を表す。
本発明の化合物は、A1およびA2のいずれか一方に反応性に富むハロゲン原子を含むため、有機合成化学における合成原料としてきわめて有用である。A1部および/またはA2部ハロゲン原子を各種置換基に置換することにより、様々なジシレン化合物を合成することができる。
【0014】
アルカリ金属原子は、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子であり、反応性の点からはリチウム原子が好ましい。
【0015】
ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、反応性の点からは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
【0016】
アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリチル基である。
【0017】
アリール基は、好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基であり、フェニル基が好ましい。
【0018】
複素環基に含まれるヘテロ原子は特に限定されるものではなく、例えば窒素原子、硫黄原子等を挙げることができる。上記複素環基は、単環であっても縮合環であってもよく、置換されていても無置換であってもよい。具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、シロール環などの複素単環、ベンゾフラン環、キサンテン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環、カルバゾール環、キノリン環、アクリジン環、フェナントロリン環、ベンゾシロール環、ジベンゾシロール環などの縮合複素環が挙げられる。
【0019】
不飽和炭化水素基としては、好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換の不飽和炭化水素基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基、ブタジエニル基、エチニル基、フェニルエチニル基等を挙げることができる。
【0020】
本発明の化合物の具体例としては、後述する実施例に示す化合物を挙げることができる。更に本発明の化合物の具体例としては、以下の化合物も例示できる。
【0021】
【化3】

【0022】
本発明の化合物の合成方法は、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法を例示できる。
まず以下に示すルイス酸触媒を用いた分子内フリーデル−クラフツ反応により原料化合物を合成する。
【0023】
【化4】

[上記において、RおよびR’は、それぞれ独立に炭素数1〜20の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。複数存在するRおよびR’は同一でも異なっていてもよい。Yは、水素原子またはハロゲン原子を表す。]
【0024】
次いで、上記反応により得られた化合物に所望の原子または置換基を導入することにより単量体を得る。例えば、上記反応により得られた化合物を臭素化することにより、上記ベンゼン環に1つまたは2つの臭素原子が置換したブロモ体を得ることができる。更に、例えばモノブロモ体のリチオ化、およびそれに続くアルコキシヒドロシラン類との反応、さらに続くヒドリド試薬との反応により上記のベンゼン環に水素置換シリル基が置換したトリヒドロシリル体を合成することができる。また、トリヒドロシリル体のケイ素上の水素を臭素化することにより上記ベンゼン環に臭素置換シリル基が置換したトリブロモシリル体を得ることができる。また、トリブロモシリル体の還元反応により、ケイ素上に臭素原子が置換した二量体であるジブロモジシレンを得ることができる。
シリル基の導入は、トリエトキシシラン(Si(OEt)3H)等の液体のトリアルコキシシラン、または、固体のトリアルコキシシランを使用することが好ましい。水素置換シリル基を導入するためには、トリアルコキシシランとの反応によりアルコキシ置換シリル基を導入した後、水素化リチウムアルミニウム等のヒドリド試薬を用いた還元反応を行えばよい。
【0025】
上記のトリアルコキシシランの反応については、例えば“2,4,6-Tri-tert.butylphenyl-substituierte Silane”, H. Weiss, H. Oehme, Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie 568, 1989, p157-164. を参照できる。また、後述の実施例も参照できる。例えば、トリアルコキシシランとしては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリフェノキシシランを用いることができる。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類が好ましい。用いるトリアルコキシシランの量は、原料であるブロモ体に対して、モル比として1:1〜1:10程度が好ましく、1:2〜1:5の割合が更に好ましい。反応温度は、-100 ℃付近から室温が好ましく、反応時間は数時間から数日が好ましい。
【0026】
上記のヒドリド試薬の反応については、後述の実施例も参照できる。例えば、ヒドリド試薬としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、リチウムトリエチルボロンハイドライド、ナトリウムトリエチルボロンハイドライド、カリウムトリエチルボロンハイドライド、などを用いることができる。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類が好ましい。用いるヒドリド試薬の量は、特に限定されるものではなく、ケイ素上のアルコキシ基が水素化されるのに十分な量であればよい。反応温度は、-100 ℃付近から室温が好ましく、反応時間は数時間から数日が好ましい。
【0027】
上記のトリヒドロシリル体の臭素化については、後述の実施例も参照できる。例えば、臭素化剤としては、四臭化炭素、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)を用いることができる。反応溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが使用できる。用いる臭素化剤の量は、原料であるトリヒドロシリル体に対して、モル比として1:3〜1:100程度が好ましく、1:4〜1:10の割合が更に好ましい。反応温度は、室温から60 ℃付近が好ましく、反応時間は数時間から数日が好ましい。
【0028】
その後、得られたトリブロモシリル体を還元縮合反応により二量化することによって、目的の臭素置換ジシレン化合物を得ることができる。二量化はリチウムナフタレニド/THFを用いた還元反応により行うことができるが、二量化のための反応は上記反応に限定されるものではない。また、リチウムに対して、ナフタレンを当量、あるいは、触媒量用いても、目的の臭素置換ジシレン化合物を得ることができる。
【0029】
上記還元反応については、例えば“Synthesis, Structure, and Reactions of a Kinetically Stabilized Dibromodisilene”, Koji Hironaka et al., The 54th Symposium on Organometallic Chemistry, Japan, 2007, PA127, p40を参照できる。また、後述の実施例も参照できる。例えば、還元剤としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、リチウムナフタレニド(LiNp)、ナトリウムナフタレニド(NaNp)、カリウムグラファイト(KC8)などが使用できる。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1、2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが使用できる。用いる還元剤の量は、原料であるブロモ体に対して、モル比として1:2程度が好ましい。反応温度は、-100 ℃付近から室温が好ましく、反応時間は数時間から数日が好ましい。
【0030】
その後、得られたジブロモジシレンにアルキルリチウムやアリールリチウムを反応させることにより、アルキル基あるいはアリール基が置換したブロモジシレン化合物を得ることができる。アルキル基やアリール基の導入は、アルキルリチウムやアリールリチウム試薬を用いた反応により行うことができるが、上記反応に限定されるものではない。
【0031】
上記の置換基導入反応については、例えば“Synthesis, Structure, and Reactions of a Kinetically Stabilized Dibromodisilene”, Koji Hironaka et al.,The 54th Symposium on Organometallic Chemistry, Japan, 2007, PA127,p40を参照できる。また、後述の実施例も参照できる。例えば、アルキル基の導入では、MeLi、MeMgBr、EtMgBr、n-BuLi、アリール基の導入では、PhLi、PhMgClなどのリチウム試薬やグリニャール試薬などが使用できる。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1、2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが使用できる。用いるリチウム試薬やグリニャール試薬の量は、原料であるジブロモジシレンに対して、モル比として1:1〜1:2程度が好ましい。反応温度は、-100 ℃付近から室温が好ましく、反応時間は数時間から数日が好ましい。
【0032】
上記反応に使用する原料化合物は、公知の方法で合成可能であり、市販品として入手できるものもある。原料化合物の合成方法の一例を以下に示す。その詳細は、例えばK. Tamao, M, Kumada, et al., JACS. 1972, 94, 4374, BCSJ. 1976, 49, 1958等に記載されている。
【化5】

[上記において、R’は前述と同義である。Y’は、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。]
【0033】
以上、ハロゲン原子として臭素原子を有する化合物の合成方法を例として本発明の化合物の合成方法を説明したが、使用する試薬等を適宜変更することにより所望のハロゲン原子が導入された化合物を得ることができる。
【0034】
合成反応後、公知の方法で単離精製を行ってもよい。目的化合物が得られたことは、NMR等の同定方法により確認することができる。なお、本発明の化合物は、一般式(I)中に含まれる原子または基の種類によっては塩を形成する場合があり、遊離の状態または塩の状態で水和物または溶媒和物を形成することもあるが、これらの状態も本発明の範囲に含まれるものとする。
【0035】
本発明の化合物は、かさ高い構造を有するため有機合成反応における立体保護基として有用である。更に、有機合成反応において合成原料または合成中間体として使用することもできる。また、本発明の化合物を原料として、更に本発明の化合物を合成することもできる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
(E)-1,2-ビス(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-1,2-ジブロモジシレンの合成
(1)4-ブロモ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの合成
A. Fukazawa, Y. Li, S. Yamaguchi, H. Tsuji, K. Tamao, JACS. 2007, 129, 14164.に従って、以下の方法により合成を行った。
(i)1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-エチルプロピル)ベンゼンの合成
【化6】

【0038】
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子、ジムロート冷却管、200 mL滴下ロートを備えた1000 mL三口フラスコに削り状マグネシウム(14.62 g、0.601 mol)、ジエチルエーテル(50 ml)を入れ、臭化エチル(65.60 g、0.602 mol)のジエチルエーテル溶液(50 ml)を氷浴下でゆっくりと滴下した。室温で終夜撹拌し、得られた反応混合物にイソフタル酸ジメチルエステル(19.63 g、0.101 mol)のジエチルエーテル溶液(200 ml)を氷浴下でゆっくりと滴下した。ジエチルエーテル還流下で終夜撹拌した。得られた反応混合物を希塩酸で加水分解し、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をヘキサンで洗浄した後、乾燥して表題化合物を無色結晶として得た。収量18.20 g(0.0727 mol、収率72%)。
【0039】
(ii)1,3-ビス(1-クロロ-1-エチルプロピル)ベンゼンの合成
【化7】

【0040】
磁気攪拌子、ガス吹き込み管を備えた200 mlシュレンク管に1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-エチルプロピル)ベンゼン(15.4 g、61.6 mmol)、ジクロロメタン(120 ml)、および脱水剤として塩化カルシウム(約20 g)を入れ、室温で吹き込み管から塩化水素ガスを1時間吹き込んだ。得られた反応混合物をCelite(登録商標)を敷き詰めたブフナー漏斗で濾過し、不溶物を除去した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣を乾燥することにより、表題化合物を主生成物として含む茶褐色油状物を得た。この油状物中の表題化合物の純度を1H NMRにより決定した。粗収量16.8 g(粗収率 95 %)。
【0041】
(iii)1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの合成(三塩化ホウ素触媒)
【化8】

【0042】
アルゴン雰囲気下、磁気攪拌子を備えた300 mL三口フラスコに1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-エチルプロピル)ベンゼン(15.4 g、61.6 mmol)から上記(ii)で合成した1,3-ビス(1-クロロ-1-エチルプロピル)ベンゼン、2-エチル-1-ブテン(10.0 g、119.3 mmol)、ジクロロメタン(120 mL)を入れ、-60 ℃において、触媒量の三塩化ホウ素1.0 Mジクロロメタン溶液(60 mL、60 mmol)を加えた。室温まで昇温させ、室温で五日間攪拌した。得られた反応混合物を1.0 M水酸化ナトリウム水溶液で加水分解した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラム(関東化学製Silica gel 60、粒径40〜50μm)により、得られた残渣から不純物を取り除いた。ヘキサンを留去し、得られた残渣をクーゲルロール蒸留することにより、表題化合物を無色結晶として得た(bp 120-160 ℃、0.1 mmHg)。収量10.1 g(26.3 mmol、収率43%)。
【0043】
(iv)4-ブロモ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの合成
【化9】

【0044】
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子、ジムロート冷却管を備えた500 mL三口フラスコに、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン(9.65 g、25.2 mmol)、リン酸トリエチル(200 mL)を入れ、室温で臭素 (20.0 mL、390 mmol)を加えた。70 ℃において終夜攪拌後、得られた反応混合物を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液で加水分解した。析出した粉末を濾取し、水およびエタノールで洗浄した。減圧乾燥し、表題化合物を無色結晶として得た。収量9.11 g(19.8 mmol、収率78%)。
【0045】
(2)(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シランの合成
【化10】

【0046】
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子、滴下ロートを備えた500 ml三口フラスコに4-ブロモ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン(13.9 g、30.0 mmol)とテトラヒドロフラン(300 ml)を入れ、2.6 M n-ブチルリチウム−ヘキサン溶液(25.0 ml、65.0 mmol)を-60 ℃で滴下した。混合物を4時間で-10 ℃まで昇温し、トリエトキシシラン(15.5 g、94.3 mmol)を加えた。室温で終夜攪拌後、テトラヒドロフランを減圧留去した。この混合物にヘキサンを加えてセライト(登録商標)を敷き詰めたグラスフィルターで濾過し、不溶物を除去した。揮発成分を減圧下で留去し、黄色の油状物を得た。
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子を備えた500 ml三口フラスコにリチウムアルミニウムヒドリド(0.956 g、25.2 mmol)とジエチルエーテル(100 ml)を入れ、上記の反応で得られた黄色油状物のジエチルエーテル溶液(150 ml)を0 ℃で滴下した。室温で30分間撹拌後、反応混合物を希塩酸で加水分解しジエチルエーテルで抽出した。有機層を分離し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をヘキサンから再結晶することで表題化合物を無色結晶として得た。収量9.727 g(23.6 mmol、収率79%)。
【0047】
(3)トリブロモ(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シランの合成
【化11】

【0048】
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子を備えた200 mlナス型シュレンクに(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シラン(7.46 g、18.1 mmol)、四臭化炭素(30.4 g、91.7 mmol)、ヘキサン(100 ml)を入れ、室温で4日間攪拌した。ヘキサンと四臭化炭素を減圧留去後、ヘキサンを加えてセライト(登録商標)を敷き詰めたグラスフィルターで濾過し、不溶物を除去した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をヘキサンから再結晶することで表題化合物を無色結晶として得た。収量8.84 g (13.6 mmol、収率75%)。
1H NMR (CDCl3,δ) 0.75 (t, J = 7.2 Hz, 12H), 0.80 (t, J = 7.2 Hz, 12H), 1.52-1.64 (m, 4H), 1.62-1.76 (m, 4H), 1.82 (s, 4H), 2.16-2.32 (m, 4H), 2.20-2.36 (m, 4H), 6.85 (s, 1H);
13C NMR (CDCl3,δ) 9.0, 10.2, 33.1, 33.5, 43.9, 47.6, 54.6, 125.9, 127.9, 151.1, 155.5;
29Si NMR (CDCl3,δ) -43.2.
【0049】
(4)(E)-1,2-ビス(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-1,2-ジブロモジシレンの合成
【化12】

【0050】
アルゴン雰囲気下、磁気攪拌子を備えた100 mlシュレンク管にトリブロモ(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シラン(1.30 g、2.01 mmol)、無水テトラヒドロフラン(20 ml)を入れ、リチウム(38.4 mg、5.53 mmol)、ナフタレン(0.565 g、4.41 mmol)から調製したリチウムナフタレニドのテトラヒドロフラン溶液(5ml)を-90℃で滴下した。この混合物を徐々に室温まで昇温しながら終夜攪拌した。溶媒を減圧留去し、ベンゼンを加え、不溶物を遠心分離により取り除いた。溶媒を減圧留去した後、得られた残渣に少量のヘキサンを加えて洗浄し、表題化合物を黄色粉末として得た。収量0.500 g(0.511 mmol、51%)。
1H NMR (C6D6,δ) 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 12H), 0.88 (t, J = 7.2 Hz, 12H), 1.04 (t, J = 7.2 Hz, 12H), 1.06 (t, J = 7.2 Hz, 12H), 1.52-1.74 (m, 16H), 1.89 (s, 8H), 2.18-2.28 (m, 4H), 2.40-2.60 (m, 8H), 2.70-2.84 (m, 4H), 6.96 (s, 2H);
13C NMR (C6D6,δ) 9.3, 9.5, 10.8, 11.4, 33.4(2C), 33.7, 36.8, 42.1, 47.8, 54.3, 122.4, 123.9, 150.5, 155.6;
MS (FAB): m/z; 976 (M+)
得られた化合物の分子構造をX線結晶構造解析により決定した。X線結晶構造解析により得られた分子構造を図1に示す。
【0051】
[実施例2]
(E)-1,2-ビス(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-1-ブロモ-2-フェニルジシレンの合成
【化13】

【0052】
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子を備えた100 mlシュレンク管に、実施例1で合成した(E)-1,2-ビス(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-1,2-ジブロモジシレン(0.028 g、0.29 mmol)と無水THF (30 ml)を入れ、1.9 M フェニルリチウム−ジブチルエーテル溶液 (0.40 ml、0.76 mmol)を-70℃で滴下した。この混合物を徐々に室温まで昇温しながら終夜攪拌した。溶媒を減圧留去し、ヘキサンを加え、不溶物を遠心分離により取り除いた。溶媒を減圧留去した後、ヘキサンから再結晶することにより、表題化合物を橙色結晶として得た。収量0.052 g(0.053 mmol、18%)。
1H NMR (C6D6,δ) 0.80-1.10 (t, 48H), 1.55-1.80 (m, 16H), 1.85-1.95 (d, 8H), 2.10-2.40 (m, 10H), 2.65-2.95 (m, 6H), 6.77-6.82 (m, 3H), 6.98 (s, 1H), 6.99 (s, 1H), 7.07-7.12 (m, 2H);
13C NMR (C6D6,δ) 9.33, 9.43, 9.50, 9.53, 10.90, 11.13, 11.29, 11.34, 32.83, 33.09, 33.14, 34.06, 34.15, 34.33, 34.67, 35.61, 41.37, 41.71, 47.80, 47.88, 54.24, 54.45, 120.09, 122.46, 123.72, 124.86, 127.24, 128.54, 134.71, 139.19, 150.28, 150.59, 155.46, 156.57.
MS (FAB): m/z; 974 (M+)
【0053】
[実施例3]
(E)-1,2-ビス(1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-1,2-ジブロモジシレンの合成
(1)5-ブロモ-1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼンの合成
【化14】

【0054】
窒素雰囲気下、磁気撹拌子、ジムロート冷却管、100 mL滴下ロートを備えた500 mL三口フラスコに5-ブロモイソフタル酸ジメチルエステル(7.00 g、25.6 mmol)、テトラヒドロフラン(150 mL)を入れ、氷浴下でメチルマグネシウムブロマイド3.0 Mジエチルエーテル溶液(45 mL、135 mmol)をゆっくりと滴下した。室温で終夜攪拌し、得られた反応混合物を希塩酸で加水分解し、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた淡黄色固体をヘキサンおよびジクロロメタンで洗浄することにより、表題化合物を無色結晶として得た。収量5.54 g(20.3 mmol、収率79%)。同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,δ) 1.55 (s, 12 H), 7.48 (d, J = 1.6 Hz, 2 H), 7.53 (t, J = 1.6 Hz, 1 H);
13C NMR (CDCl3,δ) 31.7, 72.4, 119.2, 122.3, 126.1, 151.3.
【0055】
(2)5-ブロモ-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンの合成
【化15】

【0056】
磁気撹拌子を備えた200 mLナス型シュレンク管に、上記(1)で得た5-ブロモ-1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼン(4.09 g、15.0 mmol)、ジクロロメタン(150 mL)、および脱水剤として塩化カルシウム(約 10 g)を入れ、室温で吹き込み管から塩化水素ガスを1.5時間吹き込んだ。得られた反応混合物をCelite(登録商標)を敷き詰めたグブフナー漏斗で濾過し、不溶物を除去した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣を乾燥することにより、表題化合物を無色結晶として得た。収量4.63 g (15.0 mmol、収率100%)。同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,δ) 1.96 (s, 12 H), 7.60 (d, J = 1.8 Hz, 2 H), 7.72 (t, J = 1.8 Hz, 1 H);
13C NMR (CDCl3,δ) 34.2, 68.5, 121.7, 122.1, 127.9, 148.3.
【0057】
(3)4-ブロモ-1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの合成(三塩化ホウ素触媒)
【化16】

【0058】
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を備えた200 mLナス型シュレンク管に、上記(2)で得た5-ブロモ-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン(4.63 g、15.0 mmol)、2-エチル-1-ブテン(2.70 g、32.1 mmol)、ジクロロメタン(80 mL)を入れ、-78 ℃において、触媒量の三塩化ホウ素1.0 Mジクロロメタン溶液 (15 mL、15 mmol)を加えた。室温までゆっくりと昇温させた後、室温で3日間攪拌した。得られた反応混合物を1.0 M水酸化ナトリウム水溶液で加水分解した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた無色固体をエタノール/ジクロロメタン混合溶媒から再結晶することにより、表題化合物を無色結晶として得た。収量3.65 g(9.00 mmol、収率60%)。同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,δ) 0.72 (t, J = 7.6 Hz, 12 H), 1.24 (s, 12 H), 1.58-1.68 (m, 4 H), 1.87 (s, 4 H), 2.03-2.13 (m, 4 H), 6.67 (s, 1 H);
13C NMR (CDCl3,δ) 9.5, 31.4, 32.1, 40.8, 50.0, 54.1, 115.8, 117.6, 143.1, 155.2.
【0059】
(4)(1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シランの合成
【化17】

【0060】
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子、滴下ロートを備えた300 ml三口フラスコに4-ブロモ-1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン(10.1 g、25.1 mmol)とテトラヒドロフラン(150 ml)を入れ、2.6 M n-ブチルリチウム‐ヘキサン溶液 (21.0 ml、54.6 mmol)を-50℃で滴下した。混合物を二時間で-20 ℃まで昇温し、トリエトキシシラン(12.4 g、75.5 mmol)を加えた。室温で終夜攪拌後、テトラヒドロフランを減圧留去した。この混合物にヘキサンを加えてセライト(登録商標)を敷き詰めたグラスフィルターで濾過し、不溶物を除去した。揮発成分を減圧下で留去し、黄色の油状物を得た。
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子を備えた500 mlナスフラスコに上記の反応で得られた黄色油状物のジエチルエーテル溶液(50 ml)を入れ、リチウムアルミニウムヒドリド(1.02 g、26.9 mmol)とジエチルエーテル(100 ml)の懸濁液を0℃で滴下した。室温で一時間撹拌後、反応混合物を希塩酸で加水分解し酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をヘキサンから再結晶することで表題化合物を無色結晶として得た。収量4.41 g (12.4 mmol、収率49%)。同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,δ) 0.74 (t, J = 7.3 Hz, 12H), 1.27 (s, 12H), 1.66-1.80 (m, 4H), 1.86 (s, 4H), 1.90-2.04 (m, 4H), 4.38 (s, 3H, JSi-H = 198 Hz), 6.83 (s, 1H);
13C NMR (CDCl3,δ) 9.5, 32.2, 32.8, 40.4, 50.1, 53.6, 119.2, 120.0, 151.8,153.6;
29Si NMR (CDCl3,δ) -74.4.
【0061】
(5)トリブロモ(1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シランの合成
【化18】

【0062】
アルゴン雰囲気下、磁気撹拌子を備えた200 mlナス型シュレンクに(1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シラン(3.57 g、10.0 mmol)、四臭化炭素(16.6 g、50.0 mmol)、ヘキサン(50 ml)を入れ、室温で3日間攪拌した。ヘキサンと四臭化炭素を減圧留去後、ヘキサンを加えてセライト(登録商標)を敷き詰めたグラスフィルターで濾過し、不溶物を除去した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をヘキサンから再結晶することで表題化合物を無色結晶として得た。収量5.20 g(8.77 mmol、収率88%)。同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,δ) 0.77 (t, J = 7.3 Hz, 12H), 1.30 (s, 12H), 1.90 (s, 4H), 2.14-2.26 (m, 4H), 2.26-2.40 (m, 4H), 7.01 (s, 1H);
13C NMR (CDCl3,δ) 10.2, 32.7, 32.9, 40.6, 50.7, 55.1, 122.9, 127.0, 153.9, 154.6;
29Si NMR (79 MHz, CDCl3,δ) -43.3.
【0063】
(6)(E)-1,2-ビス(1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-1,2-ジブロモジシレンの合成
【化19】

【0064】
アルゴン雰囲気下、磁気攪拌子を備えた100 mlシュレンク管にトリブロモ(1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)シラン(1.19 g、2.00 mmol)、無水テトラヒドロフラン(20 ml)を入れ、リチウム(29.4 mg、4.24 mmol)、ナフタレン(0.538 g、4.20 mmol)から調製したリチウムナフタレニドのテトラヒドロフラン溶液(5ml)を-90℃で滴下した。この混合物を徐々に室温まで昇温しながら終夜攪拌した。溶媒を減圧留去し、トルエンを加え、不溶物を遠心分離によりことにより取り除いた。溶媒を減圧留去した後、得られた残渣に少量のヘキサンを加えて洗浄し、表題化合物を黄色粉末として得た。収量0.342 g(0.395 mmol、40%)。同定結果を以下に示す。
1H NMR (C6D6,δ) 0.98 (t, J = 6.9 Hz, 12H), 0.98 (t, J = 6.9 Hz, 12H), 1.29 (s, 12H), 1.31 (s, 12H), 1.91 (s, 8H), 1.96-2.08 (m, 4H), 2.16-2.28 (m, 4H), 2.64-2.78 (m, 4H),2.76-2.88 (m, 4H), 7.07 (s, 2H);
13C NMR (C6D6,δ) 11.0, 11.2, 32.1, 32.6, 34.5, 37.3, 40.6, 49.2, 55.0, 121.5, 122.1, 153.7, 153.8;
29Si NMR (C6D6,δ) 73.6;
MS (FAB): m/z; 864 (M+)
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の化合物は、様々な有機合成反応において、出発原料、合成中間体、立体保護基等として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】X線結晶構造解析により得られた(E)-1,2-ビス(1,1,3,3,5,5,7,7-オクタエチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)-1,2-ジブロモジシレンの分子構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

[一般式(I)中、R11〜R22およびR31〜R42は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、X1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に水素原子、アルカリ金属原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基または不飽和炭化水素基を表し、但し、A1およびA2の少なくとも一方はハロゲン原子を表す。]
【請求項2】
一般式(I)中、R11、R12、R15、R16、R17、R18、R21、R22、R31、R32、R35、R36、R37、R38、R41およびR42は、それぞれ独立にアルキル基を表し、R13、R14、R19、R20、R33、R34、R39およびR40は水素原子を表す請求項1に記載の化合物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−215237(P2009−215237A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61204(P2008−61204)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】