説明

新規シリル化合物及び、これを用いた電子写真感光体、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】耐摩耗性で剥離のない層が得られる化合物、及びそれを用いた高耐久感光体を提供する。
【解決手段】一般式1で示される化合物、及び該化合物を含有する電子写真感光体。


(式中、R、R、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基等を表し、Ar、Arはアリール基等を表し、Xは単結合等を表し、m、nは1〜5の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子デバイス、特に電子写真感光体に有用な新規光機能性有機シリル化合物、及びそれを用いた電子写真感光体、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体や、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機電子デバイスが、生産性、材料設計の容易さ、安全性などの点から注目され、種々の改良が重ねられて実用化されている。これら有機電子デバイスの安定化、長寿命化の観点から、たとえば、有機エレクトロルミネッセンス素子では、発生するジュール熱により膜のモルホルジー変化を引き起こさない材料が、また、電子写真感光体では、オゾンやNOxなどに対する化学的な安定性のみならず、熱や機械力などの物理的なストレスに対して安定な材料が求められている。
【0003】
特に、電子写真感光体では、帯電特性の安定化と長寿命化の要請が大きい。
近年、電子写真感光体は、感度、安定性の面から、電荷発生層と電荷輸送層を分離したものが主流となっているが、この構成の電子写真感光体は、電荷発生物質を適当な樹脂を結着材として結着してなる層と、その上の電荷輸送材をバインダー樹脂中に分散或いは溶解させた層の2層からなっている。電荷輸送層のバインダーとしては、主に、正孔輸送材について検討がなされ、そのバインダーとしてポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂が検討されている。
【0004】
この場合、電荷輸送層表面をコロナ帯電あるいは、ローラー帯電により負に帯電させる必要があり、その時発生するオゾンによる樹脂の劣化、感光体表面での放電による電気的な衝撃による摩耗、感度低下、帯電能の低下や、その後のトナー現像、紙への転写、クリーニングなどの際の摩擦等による機械的破壊など、種々の原因により感光体特性が低下することが問題となっている。
【0005】
そこで、電荷輸送層の強度を高めるため、あるいは、表面付着を防ぎ、クリーニング性を向上させるために、ポリシロキサン樹脂を共重合成分或いは他樹脂へブレンドすることが試みられ、たとえば、ポリシロキサン樹脂を含む熱硬化性樹脂を電荷輸送層に使用するもの(特許文献1参照)、ポリシロキサン樹脂を含む保護層を有するもの(特許文献2参照)、熱硬化性ポリシロキサン樹脂にシリカゲル、ウレタン樹脂、フッ素樹脂を分散させ保護層とするもの(特許文献3参照)、熱可塑性樹脂に熱硬化型ポリシロキサン樹脂を分散させた樹脂を保護層或いは電荷輸送材バインダー樹脂とするもの(特許文献4参照)などが提案されている。これらは、ポリシロキサン樹脂の透明性、耐絶縁破壊、光安定性に加えて低表面張力等、他の樹脂に見られない特性を利用して感光体の高性能化、寿命の向上、クリーニング性の改善を図るものである。
【0006】
しかしながら、ポリシロキサン樹脂は、有機化合物との相溶性が極めて悪いため、単独で電荷輸送材料構成樹脂として使用される事はなく、また、共重合或いはブレンドによる電荷輸送材料構成樹脂の改質の為に使用しても、ポリシロキサン樹脂を増量すると相分離を起こしてしまうという問題があった。
従って、ポリシロキサン樹脂を、単独で電荷輸送層を構成するバインダーとして用いるためには、ポリシロキサン樹脂に可溶な電荷輸送物質を見いだすことが必要であった。
【0007】
特許文献5にはポリシロキサン樹脂ではなく、モノマーを塗工、乾燥後フィルムにした加熱時に樹脂化する方法がとられている。しかしこれでは電気特性の不具合があり、特許文献6、特許文献7には水酸基を含有した光機能性有機ケイ素化合物とシランカップリング剤との硬化膜が提案されている。特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11にはこれら光機能性有機ケイ素化合物がビニル基をもった電荷輸送材とアルコキシシランから誘導される光機能性有機ケイ素化合物が開示されている。特許文献12にはトリアリールアミンフェノール化合物とアルコキシシランイソシアネート化合物との反応で得られるトリアリールアミン光機能性有機ケイ素化合物の硬化膜が開示されている。特許文献13にはグリニヤール反応を用いて誘導された光機能性有機ケイ素化合物、特許文献14、特許文献15、特許文献16にはWittig反応を用いて誘導された光機能性有機ケイ素化合物、特許文献17にはカルボン酸エステル化によって誘導された光機能性有機ケイ素化合物が示されており、これら光機能性有機ケイ素化合物は硬化反応によって高硬度な表面層が得られる。しかし、成膜時の体積収縮で内部応力を膜内に貯め込み、外部から応力が加わると脆く、脆性破壊して剥離現象がみられる。
【特許文献1】特開昭61−238062号公報
【特許文献2】特開昭62−108260号公報
【特許文献3】特開平4−346356号公報
【特許文献4】特開平4−273252号公報
【特許文献5】特開2000−221723号公報
【特許文献6】特開2000−310870号公報
【特許文献7】特開2003−241409号公報
【特許文献8】特開平9−124942号公報
【特許文献9】特開平9−124943号公報
【特許文献10】特開平9−127710号公報
【特許文献11】特開平9−190004号公報
【特許文献12】特開平3−191358号公報
【特許文献13】特開平11−124387号公報
【特許文献14】特開平10−251277号公報
【特許文献15】特開平11−171890号公報
【特許文献16】特開平11−180987号公報
【特許文献17】特開平11−236391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、硬化時の体積収縮による内部応力を緩和し、また外部応力も緩和した耐摩耗性で剥離のない層が得られる化合物、及びそれを用いた高画質を維持した高耐久感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、新規シリル化合物を見出し、これを感光層に用いることにより、上記課題を解決することができることを見出した。即ち、本発明は以下の構成からなる。
(1) 下記一般式1で示されるシリル化合物。
【化1】

{式中、R、R、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基を表し、アルコキシ基は2個以上である。Ar、Arは同一又は異なる置換もしくは無置換のアリール基を表し、Xは単結合、酸素原子、−COO−、
【化2】

(Rは水素、アルキル基、又はアリール基を、aは2〜4の整数を、bは1または2を表す)を表し、m、nは1〜5の整数を表す。)
【0010】
(2) 下記一般式2で示されるアルコール化合物と下記一般式3で示されるイソシアネート化合物から合成されることを特徴とする前記(1)記載のシリル化合物。
【化3】

{Ar、Arは同一又は異なる置換もしくは無置換のアリール基を表し、Xは単結合、酸素原子、−COO−、
【化4】

(Rは水素、アルキル基、又はアリール基を、aは2〜4の整数を、bは1または2を表す)を表し、mは1〜5の整数を表す。}
【化5】

(R、R、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基を表し、アルコキシ基は2個以上であり、nは1〜5の整数を表す。)
【0011】
(3) 導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体において、前記(1)又は(2)記載のシリル化合物及び/又はその硬化物を含有したことを特徴とする電子写真感光体。
(4) 前記硬化物が、前記シリル化合物と下記一般式4で示される化合物を硬化させたものであることを特徴とする前記(3)記載の電子写真感光体。
【化6】

(R、R、R、Rは水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はアリール基を表し、少なくとも1個はアルコキシ基である。)
【0012】
(5) 前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層を積層した積層型感光層であり、該電荷輸送層が前記シリル化合物及び/又はその硬化物を含有したことを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真感光体。
(6) 前記電子写真感光体が、感光層上に保護層を有し、該保護層が前記シリル化合物及び/又はその硬化物を含有したことを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真感光体。
(7) 感光体の形状がベルト状、シート状またはドラム状であることを特徴とする前記(3)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
【0013】
(8) 少なくとも、帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備した画像形成装置において、該電子写真感光体が前記(3)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(9) 前記(3)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体的に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一般式1で示されるシリル化合物は、電荷輸送性を有し、硬化反応し、硬度の高い、かつウレタン結合とメチレン鎖をもつ光機能性シリル化合物であって、ウレタン結合部位間の二次構造とメチレン鎖による硬化時の体積収縮による内部応力を緩和し、また外部応力を緩和した耐摩耗性と剥離のない層を形成することができる。したがって、本発明の新規シリル化合物を用いた電子写真感光体は、機械的耐久性に優れ、高画質を維持した高耐久感光体となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、下記一般式1で示される光機能性シリル化合物である。
【化7】

【0016】
ここで、R、R、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基を表し、アルコキシ基は2個以上である。Ar、Arは同一又は異なる置換もしくは無置換のアリール基を表し、Xは単結合、酸素原子、−COO−、
【化8】

(Rは水素、アルキル基、又はアリール基を、aは2〜4の整数を、bは1または2を表す)を表し、m、nは1〜5の整数を表す。
【0017】
アルキル基は炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
アルコキシ基は炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルコシキ基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、等が挙げられる。
【0018】
前記一般式1において、Ar、Arはアリール基であり、具体例として、非縮合炭素環式基、縮合多環式炭化水素基、及び複素環基が挙げられる。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
【0019】
また、該非縮合炭素環式基としてはベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
更にまた、複素環基である場合、具体例としてカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
【0020】
前記Ar、Arで表されるアリール基は以下に示す置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基
(2)アルキル基、好ましくは、炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
【0021】
(3)アルコキシ基(−OR10):R10は(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基:アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、が挙げられる。これは、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基:具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0022】
(6)
【化9】

(式中、R11及びR12は各々独立に水素原子、(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表し、アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらは炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R11及びR12は共同で環を形成してもよい。)
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
【0023】
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基、等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換無置換のβ−フェニルスチリル基ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0024】
一般式1で示される化合物としては以下のものが挙げられる。
【化10】

【0025】
【化11】

【0026】
【化12】

【0027】
一般式1で示される化合物は以下一般式2で示されるアルコール性化合物と以下一般式3で示されるイソシアネート化合物をエーテル系、芳香族系、エステル系、ケトン系溶媒を用いて反応させることにより得ることができる。好ましくはケトン系の脱水溶媒中、25〜50℃で5〜40時間反応させることにより得ることができる。反応の終点は赤外吸収スペクトルから−NCO、−OHで消失を確認しながら進める。
【化14】

Ar、Arは同一又は異なる置換もしくは無置換のアリール基を表し、Xは単結合、酸素原子、−COO−、
【化15】

(Rは水素、アルキル基、又はアリール基を、aは2〜4の整数を、bは1または2を表す)を表し、mは1〜5の整数を表す。
【0028】
【化16】

、R、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基を表し、アルコキシ基は2個以上であり、nは1〜5の整数を表す。
【0029】
本発明の一般式1で示されるシリル化合物は、この化合物自体電荷輸送能があり、電荷輸送物質として用いることもできる。
また、本発明の一般式1で示されるシリル化合物は硬化反応し、硬度の高い、かつウレタン結合とメチレン鎖をもつ光機能性シリル化合物であって、ウレタン結合部位間の二次構造とメチレン鎖による硬化時の体積収縮による内部応力を緩和し、また外部応力を緩和した耐摩耗性と剥離のない層を形成することができる。
硬化する際は、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、あるいはシュウ酸、酢酸、トリフロロ酢酸などの有機酸、あるいはジブチル錫ジアセテート、アルミニウムIII2,4−ペンタンジオネートなどの触媒でアルコキシシランを加水分解しシラノールとして、50〜200℃、10〜60分間加熱することで脱水縮合させ硬化膜が得られる。
【0030】
一般式1で示される化合物は単独で使用されてもよいが、下記一般式4で示されるシランカップリング剤と併用しても良い。
【化17】

一般式4でのR、R、R、Rは水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はアリール基を表し、少なくとも1個はアルコキシ基である。
【0031】
具体的には、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジフェニルシランジオール、フェニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、アリルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、ジブトキシジメチルシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロオロプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3,3,3−トリフロロオロプロピルシラン、ベンジルトリエトキシシラン等があげられる。
【0032】
一般式1、一般式4で示されるシリル化合物は1〜4つのアルコキシ基をもち反応性に富み、水、酸触媒、塩基触媒、有機金属触媒で加水分解しシラノールを形成し、シラノールは加熱下縮合反応して硬化する。1つアルコキシ基の調合が多いと架橋度が下がり、硬度が下がり、4つのアルコキシ基の調合が多いと架橋度が上昇し硬度が上がるが、塗工溶液の寿命、固体高分子反応のために未反応シラノールが残るため、それが湿度依存性を発生させ、画像ボケの原因となるため、1から4つアルコキシ基の調合量、及び添加量が適宜決められる。アルコキシ基の数にもよるが、例えば、一般式1で示されるシリル化合物1重量部に対して一般式4で示される化合物0.2〜1.2重量部用いることができる。また一般式1、及び一般式4のシリル化合物はポリカーボネート、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリエステル、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、アクリルポリオールなどと伴にフィルム性を形成することができる。
【0033】
感光体について述べる。
導電性基体としては、体積抵抗1010Ω以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着またはスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらをD.I.、I.I.、押出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨などで表面処理した管などを使用することが出来る。
【0034】
本発明における感光層は、単層型でも積層型でもよいが、ここでは説明の都合上、まず電荷発生層と電荷輸送層を有する積層型について述べる。
はじめに、電荷発生層について説明する。電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0035】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0036】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。更に、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
【0037】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0038】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後者のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0039】
次に、電荷輸送層について説明する。
本発明一般式1で示されるのシリル化合物は電荷輸送機能があり、それ自身で硬化して電荷輸送層を形成しても良く、また一般式4で示される化合物とともに硬化して電荷輸送層を形成してもよい。さらにバインダー樹脂とともに溶解、塗工し、電荷輸送層を形成することもできる。特に、電荷輸送層が電子写真感光体の表面層である場合は、硬化することにより耐摩耗性が向上するので硬化することが好ましい。
バインダー樹脂としてはポリカーボネート(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ、ビスフェノールCタイプ、あるいはこれら共重合体)、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステル、メタクリル樹脂、ポリスチレン、酢酸ビニル、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、アクリルポリオールなどなどが用いられる。これらのバインダーは、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0040】
また、一般式1で示されるシリル化合物は、従来の分子分散電荷輸送層に添加することもできる。電荷輸送層に使用される低分子電荷輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号公報、特開昭52−139066号公報に記載)イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特願平1−77839号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号公報、特開昭55−156954号公報、特開昭55−52063号公報、特開昭56−81850公報等に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245、58−198043号公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特願平2−94812号公報に記載)などが挙げられ、上記バインダー樹脂が使用できる。
【0041】
電荷輸送層に使用される高分子電荷輸送物質としては、特開平9−319120号公報に記載されているトリアリールアミン骨格を主鎖、あるいは側鎖にもつカーボート樹脂、特開平5−202135号公報記載のトリアリールアミン骨格をもつアクリル樹脂、ポリビニルカルバゾールなどが挙げられ、本発明のシリル化合物はこれら高分子電荷輸送層にも添加することができる。
電荷輸送層の膜厚は、5〜100μm程度が適当であり、好ましくは、10〜40μm程度が適当である。
【0042】
また、本発明において電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0043】
また、本発明のシリル化合物は、従来の分子分散電荷輸送層上に一般式1、及び一般式4で示される化合物との硬化膜の保護層としても使用できる。この場合従来の電荷輸送として挙動して不都合はなく電荷輸送層としてなんらかわりのないものである。
【0044】
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。
キャスティング法で単層感光層を設ける場合、多くは電荷輸送物質としては、本発明の一般式1で示されるシリル化合物を、あるいは一般式1で示されるシリル化合物と一般式4で示される化合物を用い、電荷発生物質、バインダー樹脂とから構成された硬化層から形成される。電荷発生物質は層中2〜10重量%、一般式1のシリル化合物は30〜70重量%、一般式4シリル化合物は0〜50重量%、およびバインダー樹脂は20〜50重量%で添加される、この場合触媒として鉱酸、有機酸、有機金属化合物など使用される。
電荷発生物質としては、先に電荷発生層で挙げた電荷発生物質を用いることができる。
バインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いる他に、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
また、必要により可塑剤やレベリング剤を添加することもできる。
単層感光体の膜厚は、5〜100μm程度が適当であり、好ましくは、10〜40μm程度が適当である。
【0045】
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性基体と感光層(積層タイプの場合には、電荷発生層)との間に下引き層を設けることができる。下引き層は、接着性を向上する、モワレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。
【0046】
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層のごとく適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
【0047】
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、本発明の下引き層には Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO,SnO,TiO,ITO,CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0048】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は、有機物を含む層ならばいずれに添加してもよいが、電荷輸送物質を含む層に添加すると良好な結果が得られる。
【0049】
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
モノフェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど。
ビスフェノール系化合物
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0050】
高分子フェノール系化合物
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類など。
【0051】
パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0052】
有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0053】
以下、図面を用いて本発明の画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジについて説明する。
図1は、本発明の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、感光体1は導電性基体上に少なくとも感光層が設けられ、前記一般式1で示される化合物及び/又はその硬化物を含有している。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャ3、転写前チャージャ7、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)、帯電ローラ等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0054】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャ10と分離チャージャ11を併用したものが効果的である。
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
光源等は、図1に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0055】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
トナーはカラー化が進み、シアン、マゼンタ、イエローからなる。これらトナーは一般にトナー補給時に流動性が要求されるため、シリカ、酸化チタンなどの流動化剤が添加される。
【0056】
図2には、本発明による電子写真プロセス、装置の別の例を示す。感光体21は導電性基体上に少なくとも感光層が設けられ、前記一般式1で示される化合物及び/又はその硬化物を含有しているベルト状のものである。このベルト状感光体は駆動ローラ22a、22bにより駆動、支持され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図2においては、感光体21(勿論この場合は基体が透光性である)に基体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
尚、ベルト感光体と駆動、支持ローラとが一体で、装置への脱着が自在にできるようにユニット化することも可能である。
【0057】
図3には本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す。
感光体31の周辺には帯電手段として帯電ローラー33、感光体表面に現像材を適量供給する現像ユニット34、画像転写後に感光体表面をクリーニングする手段として、ブレードを備えたクリーニングユニット35が一体に組み込まれている。
このカートリッジは光書きこみ手段、転写手段、除電手段、定着手段、記録紙の搬送手段などの画像形成に必要な手段を具備した画像形成装置に着脱自在に取り扱い可能なように形成されている。
尚、該カートリッジに搭載される感光体31は、導電性基体上に少なくとも感光層が設けられ、前記一般式1で示される化合物及び/又はその硬化物を含有している。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。尚、部は重量部を示す。
【0059】
実施例1
【化18】

上記ヒドロキシエチルオキシ体8.19g(0.02mol)、テトラヒドロフラン20ml、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート4.94g(0.02mol)を三角フラスコに取り、密封し室温で40時間攪拌した、未反応のイソシアネートに基づく赤外吸収スペクトル2270cm−1が確認されるものの反応を終了させた。析出物をろ別し、ろ液は減圧下テトラヒドロフランを除き、シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=2:1volでカラムクロマトで目的のシリル化合物6g(45.6%)、m.p.:71〜73℃を得た。(No.2のシリル化合物)
【0060】
得られたシリル化合物のH−NMRスペクトルを図4に、IRスペクトルを図5に示す。
図4に示すH−NMRスペクトルにおける吸収ピーク
【化19】

a:7.49−7.37ppm(4H)、
b:7.07−6.94ppm(m 12H)、
c:5.03ppm(1H)、
d:4.41ppm(2H)、
e:4.18ppm(2H)、
f:3.84−3.79ppm(6H)、
g:3.2−3.17(2H)
h:2.31(6H)、
i:1.61ppm(2H)、
j:1.24ppm(9H)、
k:0.65−0.61ppm(2H)
【0061】
実施例2
アルミ板上にポリアミド層(東レ社製 アミランCM8000)をメタノール溶液で0.5μの下引き層を設けた。
下記電荷発生物質 2部
【化20】

ポリビニルブチラール 1部
テトラヒドロフラン(以後THF) 50部
の分散液をブレード塗工して0.2μの電荷発生層を設けた。
【0062】
この上に下記溶液をブレード塗工して、130℃で30分間、乾燥、硬化して15μmの電荷輸送層を設け、電子写真感光体を得た。
No.2のシリル化合物 1部
THF 2部
ジブチル錫ジアセテート 0.01部
この感光体を川口電気社製エレクトロニックペーパーアナライザーを用いて1000回転させ放電電流20μAで20秒間帯電(Vd)させ、20秒間暗中放置の電位(Dd)、白色光5.3Luxの光量で露光させ1/2電位になる感度(E1/2)を測定した結果、Vd:1100V、Dd:900V、E1/2:1.3lux・secであった。
【0063】
実施例3
実施例2と同様にして下引き層と電荷発生層を設けて、下記電荷輸送層を実施例2と同様にして設け、電子写真感光体を得た。得られた感光体を用い、実施例2と同様に評価した。
No.1のシリル化合物 1部
THF 2部
ジブチル錫ジアセテート 0.01部
Vd:1000V、Dd:950V、E1/2:1.2lux・sec
【0064】
実施例4
実施例2と同様にして下引き層と電荷発生層を設けて、下記電荷輸送層を実施例2と同様にして設け、電子写真感光体を得た。得られた感光体を用い、実施例2と同様に評価した。
No.7のシリル化合物 1部
THF 2部
ジブチル錫ジアセテート 0.01部
Vd:1200V、Dd:1050V、E1/2:1.5lux・sec
【0065】
比較例1
実施例2と同様にして下引き層と電荷発生層を設けて、下記電荷輸送層を実施例2と同様にして15μm設け、電子写真感光体を得た。得られた感光体を用い、実施例2と同様に評価した。
下記電荷輸送物質 1部
【化21】

ポリカーボネート(帝人化成社製 K1300) 1部
THF 13部
Vd:1100V、Dd:990V、E1/2:1.1lux・sec
【0066】
実施例2〜4、及び比較例1で得られた電子写真感光体について、東洋精機社製ロータリーアブレージョンテスターを用いて摩耗輪CS10で2000回転の摩耗試験を行った。摩耗量は重量減少で表した。
【表1】

実施例2〜4は摩耗量が小さく、比較例1は摩耗量が大きく、実施例は機械的強度が高いことがわかる。
【0067】
実施例5
φ30mm、L340mmのアルミニウムシリンダーに、下記塗工液を浸漬法により塗工し、電子写真感光体を得た。
膜厚は、下引き層4μm/電荷発生層0.2μm/電荷輸送層20μmであった。
〔下引き層用塗工液〕
下記組成をボールミルで24時間分散して調製した。
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
4部
酸化チタン(CREL 石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン 200部
【0068】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記組成をボーリミルで72時間粉砕、分散した。
下記電荷発生物質 2部
【化22】

ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 1部
テトラヒドロフラン 50部
【0069】
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記電荷輸送物質 0.5部
【化23】

No.1のシリル化合物 1部
テトラヒドロフラン(THF) 2部
ジブチル錫ジアセテート 0.02部
の溶液を2時間攪拌し、リング塗工し、130℃で30分間乾燥、硬化させ、20μmの電荷輸送層を設けた。
【0070】
実施例6
実施例5と同様に下引き層、電荷発生層を設けた上に下記電荷輸送層を20μm設け、次いで下記保護層塗工液をスプレー法で塗工し、130℃で30分間乾燥、硬化させ、5μmの保護層を設け、電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリスチレン(トーヨースチロール社製 MW−1 ) 10部
下記電荷輸送物質 10部
【化24】

1%THF溶液のシリコーンオイル(信越化学社製 KF50) 0.1部
THF 100部
【0071】
〔保護層塗工液〕
No.2のシリル化合物 1部
メチルトリメトキシシラン 1部
イソプロピルアルコール 5部
THF 5部
10%塩酸水溶液 0.1部
【0072】
実施例7
実施例5と同様に下引き層、電荷発生層を設けた上に下記電荷輸送層を20μm設け、次いで下記保護層塗工液をスプレー法で塗工し、130℃で30分間乾燥、硬化させ、5μmの保護層を設け、電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネートZ(帝人化成社製 TS−2050) 10部
下記電荷輸送物質 10部
【化25】

1%THF溶液のシリコーンオイル(信越化学社製 KF50) 0.1部
THF 100部
【0073】
〔保護層塗工液〕
No.9のシリル化合物 1部
メチルトリメトキシシラン 0.6部
トリエトキシシラン 0.3部
トリメチルメトキシシラン 0.1部
イソプロピルアルコール 5部
THF 5部
10%塩酸水溶液 0.1部
【0074】
比較例2
実施例5と同様にして下引き層、電荷発生層を設けた上に下記電荷輸送層25μmを設け、電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記電荷輸送物質 1部
【化27】

ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製 C−1400) 1部
1%THF溶液のシリコーンオイル(信越化学社製 KF50) 0.1部
THF 10部
【0075】
比較例3
実施例6で下引き層、電荷発生層を設け且つ電荷輸送層を25μmを設け、保護層を設けない以外は実施例6と同様にして電子写真感光体を得た。
比較例4
実施例7で保護層を設けないで、電荷輸送層25μmを設けた以外は実施例7と同様にして電子写真感光体を得た。
【0076】
以上のように作製した実施例5〜7および比較例2〜4の電子写真感光体を実装用にした後、以下のようにして評価を行った。
[実機ランニング特性評価方法]
市販電子写真複写機イマジオNeo270[(株)リコー製]により、それぞれの感光体について1万枚までのランニング試験を行った。試験中及び試験後に感光体の、画像品質特性、感光層摩耗量の評価を適時行った。
暗部電位(VD):各感光体の表面電位を初期850Vになるように調整した。
明部電位(VL):各感光体の表面電位を初期80Vになるように調整した。
それぞれのVD、VLの変化量をみた。
画像品質:ベタ濃度、細線再現性、異常画像等総合的に評価
摩耗量 :実機ランニングによる感光層膜厚減少量
これら結果を表2に示した。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例8
φ168mm、厚み30μmニッケル基体上に実施例5と同様に下引き層を設け、その上に下記電荷発生層液を塗工して80℃で乾燥して0.2μmの電荷発生層を設けた。
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.2部
テトラヒドロフラン 50部
【0079】
次いでこの上に下記電荷輸送層20μmを設けた。
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記電荷輸送物質 1部
【化28】

ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製 TS−2050) 1部
テトラヒドロフラン(THF) 2部
1%THF溶液のシリコーンオイル(信越化学社製 KF50) 0.1部
【0080】
次いで電荷輸送層上に下記保護層塗工液をスプレー法で塗工、130℃で30分間乾燥、硬化させ、5μmの保護層を設け、電子写真感光体を得た。
No.1のシリル化合物 0.9部
ジメチルジメトキシシラン 0.1部
テトラヒドロフラン(THF) 5部
ジブチル錫ジアセテート 0.02部
この感光体の基体は30μmと薄いにもかかわらず、収縮による変形、及び表面の亀裂もなくクリアなものであった。
この感光体をリコー社製イマジオネオC270に装着して1万枚の通紙試験を行った。この装置は図2に示すベルト状感光体である。
この結果異常画像もなく、初期、1万枚後も鮮明な画像であった。また摩耗もなく、また亀裂、剥離もなく、高耐久な感光体であった。
【0081】
このように本発明のシリル化合物は機械的耐久性に優れ、高画質を維持した高耐久感光体を実現したものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概念図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の別の概念図である。
【図3】本発明で用いられるプロセスカートリッジの概念図である。
【図4】実施例1で得られたシリル化合物のH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例1で得られたシリル化合物のIRスペクトルである。
【符号の説明】
【0083】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 ブレード
21 感光体
22a、22b 駆動ローラ
23 帯電器
24 像露光源
25 転写チャージャ
26 クリーニング前露光
27 クリーニングブラシ
28 除電光源
31 感光体
32 クリーニングブレード
33 帯電ローラ
34 現像ユニット
35 クリーニングユニット
36 搬送スクリュー
37 現像スリーブ
38 現像剤セットケース
39 ドクター
40 トナー搬送コイル
41 画像露光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で示されるシリル化合物。
【化1】

{式中、R、R、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基を表し、アルコキシ基は2個以上である。Ar、Arは同一又は異なる置換もしくは無置換のアリール基を表し、Xは単結合、酸素原子、−COO−、
【化2】

(Rは水素、アルキル基、又はアリール基を、aは2〜4の整数を、bは1または2を表す)を表し、m、nは1〜5の整数を表す。}
【請求項2】
下記一般式2で示されるアルコール化合物と下記一般式3で示されるイソシアネート化合物から合成されることを特徴とする請求項1記載のシリル化合物。
【化3】

{Ar、Arは同一又は異なる置換もしくは無置換のアリール基を表し、Xは単結合、酸素原子、−COO−、
【化4】

(Rは水素、アルキル基、又はアリール基を、aは2〜4の整数を、bは1または2を表す)を表し、mは1〜5の整数を表す。}
【化5】

(R、R、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基を表し、アルコキシ基は2個以上であり、nは1〜5の整数を表す。)
【請求項3】
導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体において、請求項1又は2記載のシリル化合物及び/又はその硬化物を含有したことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項4】
前記硬化物が、前記シリル化合物と下記一般式4で示される化合物を硬化させたものであることを特徴とする請求項3記載の電子写真感光体。
【化6】

(R、R、R、Rは水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又はアリール基を表し、少なくとも1個はアルコキシ基である。)
【請求項5】
前記感光層が、電荷発生層と電荷輸送層を積層した積層型感光層であり、該電荷輸送層が前記シリル化合物及び/又はその硬化物を含有したことを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記電子写真感光体が、感光層上に保護層を有し、該保護層が前記シリル化合物及び/又はその硬化物を含有したことを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記電子写真感光体の形状がベルト状、シート状またはドラム状であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項8】
少なくとも、帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備した画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項3〜6のいずれかに記載の電子写真感光体あることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項3〜6のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体的に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−321752(P2006−321752A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146714(P2005−146714)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】