説明

新規スルホン化トリアリールアミンポリマー及びその製造方法

【課題】水又はアルコールに可溶であり、良好な導電性と耐熱性を有する新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーを提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化反応する。


(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは置換基を有しても良いスルホン化されたフェニル基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩を表す。その際、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水又はアルコールに可溶であり、良好な導電性と耐熱性を有する新規スルホン化トリアリールアミンポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三級アリールアミノ基が連続的に結合した構造を有するトリアリールアミンポリマーは耐熱性、耐溶剤性に優れた構造材料として知られている(例えば、特許文献1参照)。また、耐熱安定性を向上させた有機EL材料としても有用である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
ところで、近年、塗布性に優れる水分散性の向上した導電性高分子材料として、スルホン化ポリスチレンを含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)が、多く用いられている(例えば、特許文献3〜4参照)。一方で、従来のスルホン化トリアリールアミンポリマーは、特殊な極性有機溶媒であるジメチルスルホキシドやN,N−ジメチルホルムアミドに、水又はメタノールを添加した溶媒系で使用可能となることが報告されている程度で(例えば、特許文献5及び非特許文献1参照)、汎用の極性溶媒である水又はアルコールへの溶解性は未だ不十分である。
【0004】
また、これまでにスルホン化トリアリールアミンポリマーの導電性に関する言及はなく、それゆえ導電性高分子としての利用に関する報告もなかった。
【0005】
以上のように、水又はアルコールに可溶で、良好な導電性を有するスルホン化トリアリールアミンポリマーは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−21349号公報
【特許文献2】特開2004−292782号公報
【特許文献3】特開平7−90060号公報
【特許文献4】特開2010−114066号公報
【特許文献5】中国特許第1,827,666号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry(2006),16(24),2387−2394頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、水又はアルコールに可溶で、良好な導電性と耐熱性を有する新規なスルホン化トリアリールアミンポリマー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、末端の窒素原子が2個のスルホン化芳香族基と結合した構造を有し、水又はアルコールに可溶であるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化することで、水又はアルコールに可溶な性質を保持しながら、導電性の向上が可能であることを見出し、新規なスルホン化トリアリールアミンポリマー及びその製造方法に関する発明を完成するに至った。
【0010】
[1]下記一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化してなり、導電率が10−6S/cm以上であることを特徴とする酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー。
【0011】
【化1】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩を表す。その際、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)
【0012】
【化2】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基を表す。Xは一般式(1)のXと同意義を表す。aは1〜4の整数である。)
[2]一般式(1)において、Arは下記一般式(3)〜(5)で表される構造のいずれかであることを特徴とする上記[1]に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基であり、Rは他の置換基と縮合環を形成してもよい。bは1〜4の整数、cは1〜3の整数である。)
[3]下記一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化反応することを特徴とする上記[1]〜[2]のいずれかに記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【0016】
【化6】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩を表す。その際、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)
【0017】
【化7】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基を表す。Xは一般式(1)のXと同意義を表す。aは1〜4の整数である。)
[4]下記一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化反応した後、アルカリ又はアミン類と反応させることを特徴とする上記[1]〜[2]のいずれかに記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【0018】
【化8】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子を表す。)
【0019】
【化9】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基を表す。Xは水素原子を表す。aは1〜4の整数である。)
[5]酸化反応が、化学酸化又は電解酸化であることを特徴とする上記[3]〜[4]に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【0020】
[6]化学酸化が、過硫酸類、鉄塩(III)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、酸素からなる群より選択される酸化剤を少なくとも1種以上用いることを特徴とする上記[5]に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【0021】
[7]電解酸化が、水溶液中で行われることを特徴とする上記[5]に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーは、従来にない新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーであり、汎用の極性溶媒である水又はアルコールに可溶であることに加え、良好な導電性と耐熱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例2で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーのFT−IRチャートを示す。
【図2】合成例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーのFT−IRチャートを示す。
【図3】実施例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーと合成例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマーの紫外可視吸収スペクトルを示す。
【図4】実施例5で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩のH−NMRスペクトルを示す。
【図5】実施例5で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩の13C−NMRスペクトルを示す。
【図6】実施例10で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩のH−NMRスペクトルを示す。
【図7】実施例10で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアミン塩の13C−NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーは、導電率が10−6S/cm以上、好ましくは10−6〜10S/cm、特に好ましくは10−5〜10S/cmであるスルホン化トリアリールアミンポリマーである。
【0026】
本発明における良好な導電性とは、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコード法、ロールコート法などの従来公知の塗布法により作製された膜、又は圧縮成型法で作製したペレットの表面抵抗が10Ω/□以下のものを示す。
【0027】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーは、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化することにより、水又はアルコールに可溶であり、良好な導電性と耐熱性を有するスルホン化トリアリールアミンポリマーとなるものである。
【0028】
一般式(1)において、Arは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基であり、その中でも特に、一般式(3)〜(5)で表される構造のいずれかであることが好ましい。
【0029】
一般式(3)においては、下記一般式(6)で表される構造が特に好ましい。
【0030】
【化10】

(式中、R及びbは一般式(3)のR及びbと同意義を表し、dは1〜2の整数である。)
一般式(3)におけるRは、上記の定義に該当すれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば水素原子の他;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等のアルコキシ基;エテニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、4−ペンテニル基等のアルケニル基;フェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−(トリフルオロメトキシ)フェニル基等のアリール基;ジフェニルアミノ基、ジ−p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基;及び2−チエニル基、2−ピリジル基等のヘテロアリール基を挙げることができる。より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリールアミノ基のいずれかである。また、Rは他の置換基と縮合環を形成してもよい。
【0031】
また、一般式(4)におけるRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基であり、具体的には上記Rと同じものを挙げることができ、その中でも水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基、アルコキシ基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基が好ましく、特に水素原子、炭素数1〜3のメチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基、アルコキシ基のいずれかであることが好ましい。
【0032】
一般式(1)においてArは、一般式(2)で表される置換基である。
【0033】
一般式(2)におけるRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基であり、具体的にはRと同じものを挙げることができる。
【0034】
一般式(1),(2)におけるXは、水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩であり、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表し、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基等のアリール基である。そして、任意に置換していてもよい置換基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0035】
ここで、アミン塩を形成する第一級アミンの具体例としては特に限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−アミノプロピロニトリル、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、グリシン、タウリン、O−ホスホリルエタノールアミン等が挙げられる。より好ましくはメチルアミン、エチルアミン、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノールである。
【0036】
また、アミン塩を形成する第二級アミンの具体例としては特に限定されないが、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。より好ましくはジメチルアミン、ジエチルアミンである。
【0037】
さらに、アミン塩を形成する第三級アミンの具体例としては特に限定されないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン等が挙げられる。より好ましくはトリメチルアミン、トリエチルアミンである。
【0038】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーを製造するための一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーは、上記の定義に該当するスルホン化トリアリールアミンポリマーであれば特に限定はなく、下記一般式(7)〜(9)で表されるものが好ましく、
【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

(式中、m及びXは一般式(1)のm及びXと同意義を表し、R及びaは一般式(2)のR及びaと同意義を表し、Rは一般式(4)のRと同意義を表し、dは一般式(6)のdと同意義を表す。)
特に以下の化合物が好ましい。
【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
【化16】

【0045】
【化17】

(式中、m及びXは一般式(1)のm及びXと同意義を表す。)
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で500〜500,000の範囲が好ましく、特に好ましくは1,000〜10,000の範囲である。
【0046】
次に、本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法について説明する。
【0047】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーは、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化することにより得られる。
【0048】
酸化の方法としては、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化し得うる方法であれば特に限定はなく、酸化剤を使用する化学酸化や電解酸化が好ましく用いられる。
【0049】
本発明における化学酸化に関して説明する。
【0050】
本発明において、スルホン化トリアリールアミンポリマーを化学酸化するために用いる酸化剤としては、特に限定はなく、例えば過硫酸類、鉄塩(III)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、酸素からなる群より選択される化合物が挙げられ、単一でも混合して使用してもよい。
【0051】
過硫酸類の具体例としては、例えば過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0052】
鉄塩(III)の具体例としては、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄、過塩素酸鉄、パラ−トルエンスルホン酸鉄(III)などが挙げられる。
【0053】
過マンガン酸塩の具体例としては、例えば過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0054】
重クロム酸塩の具体例としては、例えば重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウムなどが挙げられる。
【0055】
これらの中でも酸化剤としては、過硫酸類が好ましく、特に好ましくは過硫酸アンモニウムである。
【0056】
これら酸化剤の使用量としては、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーの繰り返し単位中のトリアリールアミン部(ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)から推定)を酸化し得うる量であればよく、また必ずしも全てのトリアリールアミン部を酸化する必要はないため、特に限定されるものではなく、スルホン化トリアリールアミンポリマーの繰り返し単位中のトリアリールアミン部1モルに対して、0.01〜20倍モル量が好ましく、特に好ましくは0.5〜5.0倍モル量である。
【0057】
本反応において、酸化を阻害するものでなければ添加剤を使用することもできる。添加剤としては、特に限定はなく、プロトン酸が好ましい。
【0058】
プロトン酸の具体例としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;ベンゼンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、燐酸、ホスホン酸などの有機酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などのポリマー酸を挙げることができる。
【0059】
本反応に用いる溶剤としては、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを溶解させるものであれば特に限定はなく、例えば、水やアルコール類などの極性溶媒、その他水と水に混和する有機溶剤との混合溶剤を挙げることができ、単一でも混合して使用してもよい。また、脱気や窒素などの不活性ガスで置換したものでもよい。
【0060】
水の具体例としては、例えば純水、イオン交換水、蒸留水の他、アルカリ性水溶液として、アンモニア水溶液や水酸化ナトリウム水溶液など、また酸性水溶液として塩酸水溶液や硫酸水溶液などを挙げることができる。
【0061】
アルコール類の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
【0062】
水と混和する有機溶剤の具体例としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;アセトンなどのケトン類;N−メチルピロリドン;N,N−ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
【0063】
これらの中で、好ましい溶媒としては水又はアルコールであり、特に好ましくは水である。
【0064】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造は、好ましくは常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施し、仮に加圧条件であっても実施することが可能である。
【0065】
本反応における反応温度は、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化することが可能な反応温度であれば特に限定するものではなく、−30〜200℃が好ましく、特に好ましくは−5〜100℃の範囲である。
【0066】
本反応で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの精製法としては、特に制限はなく、例えばカラムクロマトグラフィー、再沈殿法、限外ろ過法、透析法、イオン交換樹脂処理法などが挙げられる。それぞれ単独でも組み合わせて行ってもよく、特に好ましくは再沈殿法、限外ろ過法、イオン交換樹脂処理法である。
【0067】
本発明における電解酸化に関して説明する。
【0068】
本反応の方法は、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーの溶液に、電極対を浸して電圧を印加することで、陽極表面で酸化が起こる。サイクリック・ボルタンメトリーや直流電圧の印加によって可能であり、装置、電極などは公知のものを使用することができる。
【0069】
本反応における反応溶媒は、水である。必要に応じて支持電解質やプロトン酸を添加してもよい。
【0070】
支持電解質の具体例としては、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマー水溶液に導電性を付与し、酸化を阻害しないものであれば特に限定はなく、例えばLiClO、NaClO、KClO、RbClO、CsClO、NHClO、LiSO、NaSO、KSO4、RbSO、CsSO、(NHSOなどが挙げられ、好ましくはLiClO又はNaSOである。
【0071】
プロトン酸の具体例としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;ベンゼンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、燐酸、ホスホン酸などの有機酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などのポリマー酸を挙げることができる。
【0072】
本反応における反応温度は、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化することが可能である反応温度であれば特に限定するものではなく、−30〜200℃が好ましく、特に好ましくは0〜100℃の範囲である。
【0073】
本反応で生成した酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーが、水溶液として得られる場合の精製法としては特に制限はなく、例えばカラムクロマトグラフィー、再沈殿法、限外ろ過法、透析法、イオン交換樹脂処理法などが挙げられる。それぞれ単独でも組み合わせて行ってもよい。その中でも好ましくは再沈殿法、限外ろ過法、イオン交換樹脂処理法である。また、水分散液の場合には、ろ過により回収することができる。作用電極上に析出した場合には、水又はアルコールなどによる洗浄もしくは溶解により回収することができる。
【0074】
また、本発明である酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩は、一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマー(Xが水素原子である。)を酸化反応した後、無溶媒または極性溶媒中で、アルカリ、アンモニアまたは第一級アミン,第二級アミン,第三級アミン等のアミン類と反応させることにより得ることもできる。
【0075】
本発明における酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーは、水又はアルコールなどの極性溶媒に可溶であることから、極めて良好な成膜性を有している。更に、良好な導電性と耐熱性を兼ね備えている。
【0076】
本発明における水又はアルコールに対する良好な溶解性とは、25℃で0.5重量%以上溶解することであり、好ましくは2重量%以上溶解することである。
【0077】
本発明における良好な耐熱性とは、大気中、室温から100℃付近までに水や低沸点成分や溶媒等を除いた後、100〜150℃の範囲で重量減少が1%以下であることを示す。好ましくは100〜200℃で重量減少が1%以下である。
【0078】
本発明であるスルホン化トリアリールアミンポリマーは、水又はアルコールなどの極性溶媒に可溶であることから、極めて良好な成膜性を有している。よって、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコード法、ロールコート法などの従来公知の塗布法が利用できる。
【0079】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの用途としては、構造材料、有機EL材料、電界効果トランジスタ、光機能素子、帯電防止剤、固体電解コンデンサ用の固体電解質、タッチパネルの電極、電子ペーパー、色素増感太陽電池が挙げられ、本発明は工業的に極めて有意義である。
【実施例】
【0080】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0081】
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200
[紫外可視分光]
装置:島津製作所製、紫外可視分光光度計 UV−3100
[赤外分光分析]
装置:パーキンエルマー製、System2000 FT−IR
測定方法:KBr法
[GPC測定]
装置:東ソー製、HLC−8200、
カラム:東ソー製、G4000HXL−G3000HXL−G2000HXL
[表面抵抗測定]
装置:三菱油化製、Loresta IP MCP−250
[膜厚測定]
装置:ミツトヨ製、マイクロメーター MDC−25L
[熱分析装置]
1)熱分解温度測定
装置:マックサイエンス社製、TG−DTA 2000
条件:窒素雰囲気下、α−アルミナ(標準)10mg、試料10mg、昇温速度は10℃/min、25℃から500℃までの範囲において測定した。
【0082】
2)耐熱性評価
装置:リガク社製、Thermo Plus TG8120
条件:大気中、α−アルミナ(標準)10mg、試料10mg、事前処理として、室温から5℃/minで100℃まで昇温し、同温度で20分間ホールドした後、耐熱性評価を行った。評価は、100℃から2℃/minで150℃まで昇温し、15分間ホールドしたときまでの重量減少量を測定した。
【0083】
合成例1:スルホン化トリアリールアミンポリマー(16)の合成(一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーの合成)
a)トリアリールアミンポリマー(14)の合成
冷却管、温度計を装着した1000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、4,4’−ジヨードビフェニル 20.30g(0.05mol)、アニリン 5.12g(0.055mol)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド 11.53g(0.12mol;ヨウ素原子に対して1.2当量)及びo−キシレン 400.16gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 0.23g(0.25mol;ヨウ素原子に対して0.25mol%)及びトリターシャリーブチルホスフィン 1.6ml(パラジウム原子に対して原子4当量)のo−キシレン(31ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、120℃で撹拌しながら17時間熟成した。17時間後、アニリン 0.9g(0.01mol)を添加し、更に3時間反応を行った。反応終了後、この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水 50.1gを添加し、更に90%アセトン水溶液(1650ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、減圧乾燥し、淡黄色粉体 11.8gを得た(94%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量5,500及び数平均分子量3,100(分散度1.8)であった。
【0084】
【化18】

b)トリアリールアミンポリマー(15)の合成
冷却管、温度計を装着した1000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例a)で得られたトリアリールアミンポリマー 11.65g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,100)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド 19.55g(0.20mol;推定NH原子数に対して26当量)、ブロモベンゼン 11.73g(0.08mol;推定NH原子数に対して10当量)、及びo−キシレン 400.32gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 0.10g(0.11mmol;推定NH原子数に対して14.7mol%)及びトリターシャリーブチルホスフィン 1.6ml(パラジウム原子に対して原子8当量)のo−キシレン(29ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、120℃で撹拌しながら1時間熟成した。反応終了後、この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水 150.1gを添加し、更に92%アセトン水溶液(2050ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、クロロベンゼン 662.6gに溶解し、濃縮後、アセトン(800ml)の撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥して淡黄色粉体 8.6gを得た(66%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量5,500及び数平均分子量3,700(分散度1.5)であった。
【0085】
【化19】

c)スルホン化トリアリールアミンポリマー(16)の合成
冷却管、温度計を装着した500mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例b)で得られたトリアリールアミンポリマー 8.00g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)、アミド硫酸 136.18g(1.40mol;N−フェニルN−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して40当量)、及びN−メチルピロリドン 209.55gを仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、温度120〜140℃で30分間加温した。反応終了後、N−メチルピロリドンを減圧留去しながら濃縮し、99%アセトン水溶液(1900ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、水(150ml)に溶解した後、アセトン(1500ml)で再沈殿した。更に、水(150ml)に再溶解した後、アセトン(500ml)とメタノールの混合液(500ml)で再沈殿を繰り返した。メタノール(2000ml)に溶解し、濃縮後、アセトン(1900ml)の撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトンで洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥してスルホン化トリアリールアミンポリマー灰白色粉体 11.4gを得た。
【0086】
【化20】

実施例1
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの合成(1)
窒素雰囲気下、30mlのナス型フラスコに、合成例1で得られた灰白色のスルホン化トリアリールアミンポリマー 35mg(0.1mmol、N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の分子量:334.8g/mol、ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)を水 5gに室温で溶解させた後、過硫酸アンモニウム 46mg(0.2mmol;N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して2当量)を加え、室温で16時間攪拌して化学酸化処理した。その際、反応液の色はすぐに淡黄色から赤褐色に変化した。反応終了後、得られた反応液を紫外可視分光分析にて分析したところ、長波長シフトした吸収が観測され、一般式(1)のスルホン化トリアリールアミンポリマーの酸化が推測された(図3参照)ことから、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの生成を確認した。
【0087】
実施例2
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの合成(2)
窒素雰囲気下、500mlのナス型フラスコに、合成例1で得られた灰白色のスルホン化トリアリールアミンポリマー 1.05g(3.0mmol、N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の分子量:334.48g/mol、ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)を水 150gに室温で溶解させた後、過硫酸アンモニウム 1.38g(6.0mmol;N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して2当量)を加え、室温で16時間攪拌して化学酸化処理した。その際、反応液の色はすぐに淡黄色から赤褐色に変化し、実施例1と同様に紫外可視分光分析にて長波長シフトが見られた。反応終了後、水 150gを加えて希釈した後、陽イオン交換樹脂(Lewatit S100、事前に5%塩酸で酸型化処理したもの)14g、陰イオン交換樹脂(Lewatit MP62)14gを添加して、窒素雰囲気下、室温で16時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下で減圧ろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮し、更に60℃で2時間減圧乾燥して黒色固体を0.85g得た。得られた固体のH−NMR及び13C−NMRにより、スルホン化トリアリールアミン骨格を保持しながらも、芳香族プロトンのピークが低磁場シフトしたことから、酸化型スルホン化アリールアミンポリマーの生成を確認した。また、赤外分光分析により、3100cm−1付近にブロードに観測されるスルホン酸基−SOHの末端−O−H伸縮振動による吸収が減少し、スルホン酸基が自己ドーパントとして使用され、自己ドープ率の増加が見られた。次に、熱分析装置(TG−DTA)で熱分解温度を測定した結果、280℃だった。さらに、耐熱性評価を行った結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0088】
【表1】

実施例3
実施例2で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー約50mgをメノウ乳鉢で微粉末化し、圧縮成型器を用いて直径13mmのペレットを作製した。このペレットの膜厚と表面抵抗(4探針法)を測定した結果から、導電率は1.4×10−2S/cm(表面抵抗2.4×10Ω/□、膜厚307μm)となり、酸化処理により導電性が向上したことを確認した。
【0089】
この導電率は、導電性高分子の用途として一般的に知られている、帯電防止、固体電解コンデンサの固体電解質、タッチパネルの電極、有機EL材料、電子ペーパーに使用可能な範囲であった。
【0090】
比較例1
合成例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー(一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマー)を実施例3と同様にペレット化して導電性を測定した結果、導電率は5.6×10−7S/cm(表面抵抗5.8×10Ω/□、膜厚310μm)であった。
【0091】
一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマー自体の導電性は低いものであった。
【0092】
実施例4
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩の合成
30mlの反応管に、室温下、実施例2で得られた黒色の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.6mmol)、メタノール 5.0g、28%アンモニア水 1ml(14.8mmol)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら16時間熟成した。その後、減圧で溶媒を留去し、100℃で2時間真空乾燥して、黒色の粉体 0.2gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で熱分解温度を測定した結果、270℃だった。さらに、耐熱性評価を行った結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0093】
実施例5
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのメチルアミン塩の合成
実施例4の28%アンモニア水を40%メチルアミン水溶液 2ml(18.0mmol)に変更した以外は、実施例4の方法に準拠して行い、赤褐色の粉体 0.17gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0094】
実施例6
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ブチルアミン塩の合成
30mlの反応管に、室温下、実施例2で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.6mmol)、メタノール 5.0g、n−ブチルアミン 83mg(1.1mmol)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら16時間熟成した。その後、減圧で溶媒を留去し、ヘキサン/エタノール=5/1(v/v)の混合液で洗浄・ろ過した後、100℃で2時間真空乾燥して、黒色の粉体 0.16gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0095】
実施例7
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのtert−ブチルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをtert−ブチルアミン 83mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6の方法に準拠して行い、灰黒色の粉体 0.22gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのtert−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0096】
実施例8
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの2−アミノエタノール塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンを2−アミノエタノール 70mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6の方法に準拠して行い、黒色の粉体 0.17gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの2−アミノエタノール塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0097】
実施例9
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのジメチルアミン塩の合成
実施例5の40%メチルアミン水溶液を50%ジメチルアミン水溶液 1mlに変更した以外は、実施例5に準拠して行い、黒色の粉体 0.19gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのジメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0098】
実施例10
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリメチルアミン塩の合成
実施例5の40%メチルアミン水溶液を30%トリメチルアミン水溶液 2mlに変更した以外は、実施例5に準拠して行い、黒色の粉体 0.19gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0099】
実施例11
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリエチルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをトリエチルアミン 111mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6の方法に準拠して行い、黒色の粉体 0.16gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリエチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0100】
実施例12
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ヘキシルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをn−ヘキシルアミン 115mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6に準拠して行い、黒色の粉体 0.21gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ヘキシルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0101】
実施例13
スルホン化トリアリールアミンポリマーのジn−ブチルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをジn−ブチルアミン 147mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6に準拠して行い、黒色の粉体 0.17gを得た。得られた粉体はH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのジn−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は5%であった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーは、従来にない新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーであり、汎用の極性溶媒である水又はアルコールに可溶であり、良好な導電性と耐熱性を有するものである。本発明の製造方法によれば、良好な導電性と耐熱性を有するスルホン化トリアリールアミンポリマーを簡便に合成することができる。
【0103】
この新規なスルホン化トリアリールアミンポリマーは、構造材料、有機EL材料、電界効果トランジスタ、光機能素子、帯電防止剤、固体電解コンデンサ用の固体電解質、タッチパネルの電極、電子ペーパー、色素増感太陽電池に有用であり、本発明は工業的に極めて有意義である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化してなり、導電率が10−6S/cm以上であることを特徴とする酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー。
【化1】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩を表す。その際、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基を表す。Xは一般式(1)のXと同意義を表す。aは1〜4の整数である。)
【請求項2】
一般式(1)において、Arは下記一般式(3)〜(5)で表される構造のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー。
【化3】

【化4】

【化5】

(式中、R及びRは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基であり、Rは他の置換基と縮合環を形成してもよい。bは1〜4の整数、cは1〜3の整数である。)
【請求項3】
下記一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化反応することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【化6】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、NH(Rで表されるアミン塩を表す。その際、Rは各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはアリール基を表す。)
【化7】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基を表す。Xは一般式(1)のXと同意義を表す。aは1〜4の整数である。)
【請求項4】
下記一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーを酸化反応した後、アルカリ又はアミン類と反応させることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【化8】

(式中、Arは各々独立して置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基を表し、Arは下記一般式(2)で表される置換基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子を表す。)
【化9】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミノ基又はヘテロアリール基を表す。Xは水素原子を表す。aは1〜4の整数である。)
【請求項5】
酸化反応が、化学酸化又は電解酸化であることを特徴とする請求項3又は4に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【請求項6】
化学酸化が、過硫酸類、鉄塩(III)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、酸素からなる群より選択される酸化剤を少なくとも1種以上用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。
【請求項7】
電解酸化が、水溶液中で行われることを特徴とする請求項5に記載の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−255127(P2012−255127A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164832(P2011−164832)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】