説明

新規ポリイミドおよびその用途

【課題】透明性が高く、溶融成形も可能な新規ポリイミドを提供する。
【解決手段】酸無水物成分とジアミン成分から誘導され、下記一般式(1A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドにおいて、酸無水物成分が、下記式(2A)および/または(2B)で表される脂環族酸無水物を必須成分として、全酸無水物中の20モル%〜100モル%の範囲で含み、ジアミン成分が下記式(3A)および/または(3B)で表される芳香族ジアミンを必須の成分として、全ジアミン中の20モル%〜100モル%の範囲で含むことを特徴とするポリイミド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリイミドおよびその用途に関する。具体的には、特定の成分から誘導されるために、透明性が高く、溶融成形も可能な新規ポリイミドを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド系樹脂は、耐熱性、耐溶剤性、機械的特性など、化学的および機械的に安定な材料であること、電気絶縁性に優れているなどのことから電気・電子材料、自動車、その他金属・セラミックスの代替材料として幅広く利用されている。例えば、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を有機溶剤に溶解させたワニスは、電気絶縁部品のコーティング材、接着剤、フレキシブルプリント基板用の材料などとして幅広く利用されている。
【0003】
従来、ポリイミドは一般にジアミンとテトラカルボン酸二無水物を溶媒中で反応させてポリアミド酸を生成し、これを脱水閉環する等の方法で得られている。こうして得られるポリアミド酸およびポリイミドの特性は用いるジアミン、テトラカルボン酸二無水物の選択と、これらの組合せで定まり、耐熱性に優れるもの、寸法安定性に優れるもの等、種々知られている。その中で、テトラカルボン酸二無水物として芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドの多くは、優れた耐熱性及び機械特性を有しており、耐熱性に優れている反面、不溶不融である、極めて融点が高いなど加工性の点で課題を有する場合もあり、決して使いやすい材料とはいえなかった。
【0004】
近年ポリイミドは、回路材料として絶縁層、表面保護層などにも使用されているが、一般にこれらは有機溶剤に可溶な前駆体であるポリアミド酸を基材に塗布し、加熱処理によって溶剤を除去すると共にイミド化を進めていることで用いられることが多い。
【0005】
このポリアミド酸は極めて不安定であり、水に対して鋭敏に反応して加水分解するため分子量の低下を起こしやすい。また、この時に用いる酸アミド系溶剤は高沸点であり、特に厚膜のフィルムを形成する際には、熱イミド化の際の縮合水と共に皮膜の発泡の原因になることがある。さらに完全に溶媒を揮散させるために250℃以上の高温乾燥工程を必要とし、汎用のプロセスでの加工しにくいという問題がある。さらに芳香族のポリイミドではそれら高温の加工プロセス中での含有不純物の酸化劣化、電荷移動錯体(CT錯体)といわれる錯体の分子内、分子間での形成などから外観は褐色に着色していることが多い。
【0006】
また、ポリイミドは種々の分野へ応用されるようになってきており、電子機器の様々な部位に用いられるようになっている。用途としても、半導体実装材料、回路のベース材料のほか、部品や回路を保護するフィルム、あるいは様々な電子部品や回路材料を接着する接着剤としての用途など多岐にわたる。それら多岐にわたる用途のなかで、従来から要求されている耐熱性や絶縁性に加え、近年は透明性や、ポリイミドとしての溶剤溶解性、低い温度での加工性などの特性が要求されてきている。
【0007】
更に、従来の芳香族ポリイミド材料は耐熱性を向上するために剛直な骨格をもつため、イミド化後の収縮によりフィルムにした際反りが大きい、脆い等の問題があり、これらを解決できるような新規ポリイミドの開発が望まれていた。
【0008】
透明なポリイミドについては特許文献1に開示されている。特許文献1では比較的低温で加工可能な低着色性のポリイミドを供するために前駆体溶液に別の化合物を混合することで解決を図っている。しかしこれは他の化合物を用いて希釈することでポリイミド本来の骨格が持つ性質の発露を抑制しているに過ぎず、問題の本質的な解決には至っていない。また特許文献2には、シクロヘキサンテトラカルボン酸骨格を有するポリイミドは、無色透明性に優れることが開示されている。さらに、特許文献3〜5には、ピロメリット酸二無水物を水素化したものなど脂環構造を有するポリイミドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9-012883号公報
【特許文献2】特開2005-15629号公報
【特許文献3】特開2005-163012号公報
【特許文献4】特開2006-70096号公報
【特許文献5】特開2007-80885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような透明性ポリイミドには、さらに、低波長側の透明性を向上することが望まれており、さらに、射出成形可能な成形性の向上や用途によっては溶剤溶解性の付与も望まれている。また従来より提案されていた透明性ポリイミドの中にはガラス転移温度が高すぎてしまい、接着剤用途には使用できないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、透明性が高く、溶剤溶解性に優れ且つ、溶融成形性にも優れ、さらに射出成形可能なポリイミド樹脂を得るべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリイミド樹脂が上記課題を解決することを見出し、本発明に到達したものである。
【0012】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]酸無水物成分とジアミン成分とから誘導され、下記一般式(1A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドにおいて、
酸無水物成分が、下記式(2A) および/または(2B)で表される脂環族酸無水物を必須成分として、全酸無水物中の20モル%〜100モル%の範囲で含み、
ジアミン成分が下記式(3A)および/または(3B)で表される芳香族ジアミンを必須の成分として、全ジアミン中の20モル%〜100モル%の範囲で含むポリイミド。
【0013】
【化1】

(R1およびR2は、脂肪族基、脂環族基、単環式芳香族基、複合多環式芳香族基、芳香族基が直接または架橋員により連結された非縮合式芳香族基であり、R1は4価の基であり、R2は2価の基である)
【0014】
【化2】

R1'は4価の炭素数4〜8の脂環族基、R1"は3価の炭素数4〜8の脂環族基、R3は直接結合、ないし炭素数1〜5の炭化水素基またはハロゲン置換炭化水素基、酸素、硫黄、SO、SO2、COから選らばれる2価基)
【0015】
【化3】

(n1は1または2の整数、n2は1〜5の整数を示し、ただし、ベンゼン環の1つ以上の水素原子が、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい)
[2]前記脂環族酸無水物成分(2A)および(2B)が、それぞれ下記式(2A-1)および(2B-1)で表され、芳香族ジアミン成分(3A)および(3B)が、ぞれぞれ下記式(3A-1)および(3B-1)で表される[1]のポリイミド。
【0016】
【化4】

[3]ガラス転移温度が180℃〜280℃にある[1]または[2]のポリイミド。
[4]前記[1]〜[3]のポリイミドを含有するポリイミドワニス。
[5]前記[1]〜[3]のポリイミドの前駆体である、式 (2A)および/または(2B)で表される脂環族酸無水物と、前記式(3A)および/または(3B)で表される芳香族ジアミンとの反応・重合物であるポリアミド酸を含有するワニス。
[6]前記[1]〜[3]のポリイミドを含む接着剤。
[7]前記[1]〜[3]のポリイミドからなるポリイミドフィルム。
[8]前記[4]または[5]のワニスから形成されてなるポリイミドフィルム。
[9]前記[1]〜[3]のポリイミドを溶融成形して得られることを特徴とするポリイミド成形品。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる新規ポリイミドは、高い耐熱性とともに、透明性を有する。特にカットオフ波長が低短波長化するため、低波長側に高い透明性を有するため、ガラス代替用途への展開も可能となる。また、本発明のポリイミドは適当な範囲にガラス転移温度を有する熱可塑性を有し、しかも成形性が高く、射出成形も可能となる。
【0018】
このため、透明性を必要とするディスプレー基材や透明回路基材、各種光学フィルム材料、レンズ材料、透明封止材などに用いる事が可能であり、また従来の透明性ポリイミドが困難であった透明耐熱接着剤用途にも使用可能となる。さらに、本発明の新規ポリイミドは溶剤への溶解性が高く、このため、ワニスにして、フィルム成形も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明について、説明する。
本発明に係るポリイミドは、酸無水物成分とジアミン成分とから誘導され、下記一般式(1A)で表される繰り返し単位を有する。
【0020】
【化5】

(R1およびR2は、脂肪族基、脂環族基、単環式芳香族基、複合多環式芳香族基、芳香族基が直接または架橋員により連結された非縮合式芳香族基であり、R1は4価の基であり、R2は2価の基である)
【0021】
脂肪族基としては、炭素数1〜20の飽和ないし不飽和炭化水素基が挙げられる。また脂環族基としては、炭素数3以上のものが例示され、さらに、2以上の脂環族基が、直接結合または、炭化水素基、酸素などの架橋員で連結したものであってもよい。さらに、さらに、芳香族環としては、ベンゼン環などの単環、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンなどの複合多環であってもよく、またヘテロ原子を含む複素環であってもよい。
【0022】
本発明では、R1として脂環族基を含むものであり、R2として芳香族基を含むものであり、ポリイミドを誘導する、酸無水物成分およびジアミン成分として特定の必須成分を含むものである。
【0023】
酸無水物成分
酸無水物成分としては、下記式(2A) および/または(2B)で表される脂環族酸無水物を必須成分として含む。
【0024】
【化6】

R1'は4価の炭素数4〜8の脂環族基、R1"は3価の炭素数4〜8の脂環族基、R3は直接結合、ないし炭素数1〜5の炭化水素基またはハロゲン置換炭化水素基、酸素、硫黄、SO、SO2、COから選らばれる2価基を示す。
【0025】
このような脂環族酸無水物として、さらに、下記式(2A-1) および (2B1-1)で表されるものが好ましい。
【0026】
【化7】

このような成分を含むことで、後述の芳香族ジアミンと組み合わせたときに、透明性が高く、適当なガラス転移温度を有するポリイミドが得られる。
【0027】
特にカットオフ波長が低短波長化するため、低波長側に高い透明性を有する。さらに式(2A-1)、(2B-1)で表される脂環族酸無水物を使用する場合、式(3A-1)、(3B-1)で表される芳香族ジアミン化合物と組み合わせるとその効果がより顕現する。
【0028】
本発明では、全酸無水物中の20モル%〜100モル%、好ましくは50〜100モル%が、さらに好ましくは70〜100モル%が前記式(2A)および/または(2B)で表される酸無水物である。
【0029】
本発明では、上記以外の酸無水物として、特に限定されず公知の化合物が使用可能であり、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、オキシジフタル酸、ピロメリット酸二無水物、3-フルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3''',4,4'''-クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'''',4,4''''-キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2-テトラフルオロ-1,2-エチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-トリメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-1,4-テトラメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロ-1,5-ペンタメチレン-4,4'-ジフタル酸二無水物、オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、チオ-4,4'-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルシロキサン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタンニ無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチニリデン-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデン-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4'-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2'-ジフルオロ-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5'-ジフルオロ-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6'-ジフルオロ-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',5,5',6,6'-ヘキサフルオロ-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',5,5',6,6'-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'-ジフルオロオキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5'-ジフルオロオキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、6,6'-ジフルオロオキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5',6,6'-ヘキサフルオロオキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、6,6'-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5',6,6'-ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3'-ジフルオロスルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5'-ジフルオロスルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、6,6'-ジフルオロスルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5',6,6'-ヘキサフルオロスルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、6,6'-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5',6,6'-ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3'-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5'-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、6,6'-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5',6,6'-ヘキサフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、6,6'-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、5,5',6,6'-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、3,3',5,5',6,6'-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4'-ジフタル酸二無水物、9-フェニル-9-(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9-ビス〔4-(2,3-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物などが含まれる。これらは単独で用いても2種以上用いてもよい。
【0030】
ジアミン成分
ジアミン成分としては、下記式(3A) および/または(3B)で表される芳香族ジアミンを必須成分として含む。
【0031】
【化8】

n1は1または2の整数であり、好ましくは1である。また、n2は1〜5の整数であり、好ましくは1または2である。このような成分を含むことで、前記酸無水物成分(2A),(2B)と組み合わせたときに、ガラス転移温度が比較的低く、接着剤として好適なポリイミドが得られる。
【0032】
本発明では、全ジアミン中の20モル%〜100モル%、好ましくは50〜100モル%が、さらに好ましくは70〜100モル%が前記式(3A)および/または(3B)で表されるジアミン化合物である。
【0033】
本発明では、上記以外のジアミンとして、特に限定されず、芳香族系ジアミン、脂肪族系ジアミン、シリコーン系ジアミンなど公知の化合物が使用可能である。
例えば、芳香族系ジアミンとしては、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルホキシド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4'-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-エチルベンゼン、1,3-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)-5-sec-ブチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジメチルベンゼン、1,3-ビス(4-(2-アミノ-6-メチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(2-アミノ-6-エチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)-4-メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)-4-tert-ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,4-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,3-ジメチルベンゼン、1,4-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,2-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-3-n-ブチルベンゼン、1,2-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0034】
例えば、脂肪族系ジアミンとしては、ノルボルナンジアミン、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、エチレングリコールジアミン化合物、プロピレングリコールジアミン化合物、トリメチレングリコールジアミン化合物、テトラメチレングリコールジアミン化合物などが挙げられる。
【0035】
例えば、シリコーン系のジアミンとしては、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ビス(10-アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、ビス(3-アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0036】
本発明で使用されるポリイミドは、上記酸無水物およびジアミン化合物を使用して公知の方法で製造できる。具体的な1例としては酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させて、ポリアミド酸を得た後、脱水工程を経てポリイミドを得る方法である。
【0037】
この反応の方法は、特に限定されるものではないが、有機溶媒中で実施することが好ましい。反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルカプロラクタム、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}エーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホキシドジメチルスルホン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、p−クロロフェノール、アニソールなどが挙げられる。また、これらの有機溶媒は単独または2種以上混合して用いても差し支えない。
【0038】
反応温度は、特に限定されてないが通常200℃以下、好ましくは50℃以下である。反応圧力は特に限定されず、常圧でも充分実施できる。反応時間は溶媒の種類および反応温度により異なり、通常は0.5〜24時間程度である。ポリアミド酸が得られる。
【0039】
本発明のポリイミドを、ポリアミド酸ワニスからポリイミドフィルムとして得て使用する場合には、この様にして得られたポリアミド酸ワニスを用いれば良い。
ポリアミド酸ワニスには、前記した式(2A)、(2B)、(3A)、(3B)に由来する成分が反応したポリアミド酸が含まれる。
【0040】
【化9】

他方、ポリイミドワニスとして得る場合は、上記で得られたポリアミド酸を100〜300℃に加熱してイミド化するか、または無水酢酸などのイミド化剤を用いて、化学イミド化することにより、前記式(1A)で表される構造単位を有するポリイミドを得ることができる。
【0041】
ポリアミド酸ワニス、ポリイミドワニスには、通常、後述する溶媒が含まれるが、溶媒としては前記反応溶媒をそのまま使用してもよい。またワニスには必要に応じて触媒やイミド化剤などが含まれていてもよい。
【0042】
また、酸無水物と、ジアミン化合物を、有機溶媒中に懸濁または溶解させた後、加熱し、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の生成と、同時にイミド化を行うことにより、ポリイミドワニスを得ることも可能である。
【0043】
こうして得られたポリイミドワニスから、ポリイミドを粉体として取り出す場合には、(i)濃反応溶媒を蒸留し、濃縮する(ii)反応に使用した溶媒と相溶し且つ、本発明におけるポリイミドに対して溶解性を持たない溶媒を貧溶媒として用い、ポリイミドを粉体あるいは固化体として析出させる(iii)(i)および(ii)の併用、すなわちある程度の濃度まで濃縮した後、貧溶媒を用いてポリイミドを析出させる、等の方法を採る事ができるが、その手法は特に限定されるものではない。
【0044】
本発明のポリイミドをフィルムとして得たい時には、先のポリアミド酸ワニスまたはポリイミドワニスをガラス板、金属板、PETやPBTに代表されるポリエステル系フィルム、カプトンやユーピレックスに代表されるポリイミドフィルムその他、任意のシート状の基材に塗布し、脱水イミド化反応(ポリアミド酸ワニスの場合)、溶媒の乾燥工程を経た後、基材から剥離する事で、本発明のポリイミドによるフィルムを得る事ができる。
【0045】
本発明において、反応に使用するジアミンとテトラカルボン酸二無水物の量比関係に関しては、アミノ基と酸無水物基が化学量論的に等しい事が必要であるが、分子量の制御や熱的あるいは径時的安定を得るために末端官能基を消失させる事を目的とした、末端封止剤となる単官能化合物を反応させるために多少化学量論からずらす事も可能である。
【0046】
その際、ジアミン/テトラカルボン酸二無水物のモル比としては、アミノ基に対して酸無水物0.75〜1. 25当量の範囲、好ましくは0.85〜1.15当量の範囲、より好ましくは0.9〜1.1当量の範囲である。
【0047】
末端封止剤として用いる事が可能な化合物は、末端の官能基であるアミノ基またはカルボン酸無水物と反応する基を有する単官能基であれば特に限定されないが、モノアミンまたは2カルボン酸無水物であることが好ましい。
【0048】
これらを例示すれば、モノアミンとしては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,4−キシリジン、2,5−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンゾニトリル、m−アミノベンゾニトリル、p−アミノベンゾニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ベンジルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0049】
ジカルボン酸無水物およびその開環物としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3-ジカルボキシフェニルエーテル無水物、3,4-ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3-ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4-ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3-ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4-ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3-ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4-ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2-アントラセンジカルボン酸無水物、2,3-アントラセンジカルボン酸無水物、1,9-アントラセンジカルボン酸無水物等およびその開環物が挙げられる。
【0050】
これらのモノアミンまたはジカルボン酸無水物はその構造の一部がアミンまたはジカルボン酸無水物と反応性を有しない基で置換されても差し支えない。
更に、これらのモノアミンまたはジカルボン酸無水物はその構造の一部が、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4'−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、ニトリロ基およびイソプロペニル基、ビニレン基、ビニリデン基、およびエチニリデン基等で置換されても差し支えない。
【0051】
末端封止剤は目的に応じて選択することが可能である。
末端封止剤の使用料は、ポリイミド原料となるジアミンのモル数をA、とテトラカルボン酸二無水物のモル数をBとした時の(A-B)または(B-A)モルに対して、末端封止剤を1.0当量〜10当量の範囲で用いる事が好ましく、より好ましくは1.1当量〜5.0当量の範囲、さらに好ましくは1.2当量〜3.0当量の範囲である。
上記末端封止剤として好ましいものは、アニリン、シクロヘキシルアミン、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、コハク酸無水物を挙げる事ができる。
【0052】
ポリイミドの特性
本発明に係るポリイミドは、特定の成分から誘導されているので、透明性が高いとともに、熱可塑性を有しており、接着剤として用いることができる。
【0053】
本発明が与えるポリイミドのガラス転移温度は180℃〜280℃の範囲であるが、接着剤として用いる場合のガラス転移温度は、180℃〜250℃にあることが好ましく、さらに180℃〜230℃にあることがより好ましい。ガラス転移温度が低いと、十分な耐熱性が得られない恐れがあり、またガラス転移温度が高いと、成形加工する際に高温が必要となり、接着剤として使用できないことがある。
【0054】
ポリイミドには、100%イミド化したポリイミド樹脂以外に、その前駆体であるポリアミド酸が一部残っている樹脂をも含んでいてもよい。本発明において、ポリイミド系樹脂の好ましいイミド化率は95%以上、より好ましくは98%以上であり、実質的にはアミド酸が検出されない事が好ましく、例えばIR測定によってアミド酸の吸収ピークが消失し、替わりにイミド基の吸収ピークが生成している事を確認する事が好ましい。
【0055】
本発明に係るポリイミド樹脂は、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。光線透過率が低ければ、得られる熱可塑性材料組成物の光線透過率も低くなり、その結果、透明性が要求される用途に使用できないことがある。なお本発明における全光線透過率とは、樹脂を10〜50μm程度の厚さのフィルムとし、ヘイズメーター(日本電色社製「NDH2000」)により求めた値を30μm厚みに換算したものである。
【0056】
また、本発明のポリイミドは、カットオフ波長が低波長化し、低波長側の透明性を高くできる。具体的には、カットオフ波長が290nm〜350nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは290nm〜330nmの範囲にあることが好ましい。
【0057】
本発明におけるポリイミドは、溶融成形が可能な熱可塑性樹脂である。本発明における熱可塑性樹脂とは、ある温度範囲で加熱により軟化し、その軟化した状態で成形や押し出し等により製品加工ができることを示す。具体的には、例えば、加熱状態でプレスすることにより、0.1〜5000μm程度の厚さを有するフィルムを成形できる性能を有する。また、本発明における溶融成形が可能な熱可塑性樹脂とは、熱的に安定な温度域で溶融成形が可能な溶融粘度を有しており、押し出しや射出等により成形加工ができることを示す。具体的には、例えば、空気中において加熱により樹脂の5質量%が減少する温度、すなわち5%質量減少温度に比べ、1〜100パスカル・秒程度の溶融粘度を有する温度が30℃以上、好ましくは50℃以上低いことをいう。溶融成形性を有することにより、押し出し成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、圧縮成型、ブロー成形、カレンダー成形、積層成形等が可能となり、フィルム、ディスク、ファイバー等の様々な成形体を得ることができる。
【0058】
本発明に係るポリイミドは、透明フィルムや、接着剤としても使用可能であり、特に、太陽電池モジュールや半導体装置の接着剤として使用することが可能である。特に本発明のポリイミドは、溶剤への溶解性が高いため、ワニスとして各種用途に好適に使用できる。
【0059】
このような接着剤として使用する場合、ポリイミド(その前駆体のポリアミド酸の場合も含む、以後、断りない限りこの意味も含む)が溶剤に溶解したワニスを接着部分に塗布し乾燥すれば使用できる。
【0060】
また、ワニスに熱硬化性樹脂をポリイミドとともに混合してもよく、ポリイミド以外の熱硬化性樹脂であって、ポリイミド系樹脂と少なくとも部分的に相溶するものであれば特に限定されない。熱硬化性樹脂としては、具体的には、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート、アクリル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。
【0061】
熱硬化性樹脂の量は、ポリイミド系樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部の範囲で用いることが、耐熱性に優れ、接着時の流動性も適当で、フィルム形成性がよくなる点で望ましい。
【0062】
これらの熱硬化性樹脂のなかでも、さまざまな構造のものが市販されていて、産業上の利用範囲が広く、半導体装置の有する耐熱性の範囲内の温度条件で適度な硬化を実現でき、架橋密度なども配合割合でコントロール可能である点で、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものであれば特に限定されない。例えばフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールFもしくはハロゲン化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン変成フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0063】
また必要に応じて硬化剤を含んでいてもよく、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール類などが挙げられる。
接着剤に、さらに、無機物質フィラーを配合していてもよい。フィラーは、接着剤に低熱膨張性、低吸湿性、高弾性、高熱伝導性などを付与する目的で配合され、またフィルム状接着剤の強度向上にも寄与する。無機物質フィラーとしては例えば、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機絶縁体が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して用いことができる。さらに、接着剤には、必要に応じ、本発明の目的を損ねない範囲で、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等のカップリング剤を適宜添加してもよい。カップリング剤は被着体やフィラーとの接着界面における接着強度の向上に寄与する。
【0064】
ワニスに用いられる有機溶媒としては、上記材料を均一に溶解又は混練できるものであれば特に制限はなく、そのようなものとしては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン等が挙げられる。
【0065】
また反応溶媒として使用したものをワニスの有機溶媒として使用しても良い。
また、溶媒量としては特に制限されないが、通常ワニスが流動性を有する程度の粘度となるように調整される。通常ワニスに含まれるポリイミド(またはポリアミド酸)成分量が1〜40重量%、好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは10〜30重量%の範囲にあれば、流動性や加工性、製膜性、塗工性などの点で望ましい。またワニスの粘度は特に制限されないが、ハンドリングしやすい範囲で適宜選択され、さらに必要に応じて、粘度調整剤などが含まれていてもよい。
【0066】
接着剤は、そのまま塗布してもよく、また基材フィルム上に成形してもよく。たとえば、上記のワニスもしくはペースト状混合物を、例えばシリコーン系樹脂で表面処理し、剥離特性のよいPET(ポリエチレンテレフタレート)シートやポリオレフィン系フィルム等のベースフィルム上に均一に塗布し、使用した溶媒が充分に揮散する条件、すなわち、おおむね60〜200℃の温度で、1〜30分間加熱し、単層フィルム状接着剤を得る方法が挙げられる。さらに、耐熱性のコアフィルムや金属箔などの支持フィルムの片面もしくは両面に、上記のワニスもしくはペースト状混合物をコートし、加熱乾燥し溶剤を蒸発させ、フィルム状接着剤を作ってもよい。フィルム状接着剤の製法は上記手法に限定されるものではない。
【0067】
また、本発明にかかるポリイミドは透明性および耐熱性が高いので、かかる特性を用いたフィルム(透明性フィルムや耐熱フィルム)として使用することも可能である。フィルムを作製する場合、溶融したポリイミドをスクリュー式、ピストン式、ギアポンプ式などの押出機によりスリット状ノズルを通して押し出せばよく、押し出されたフィルム溶融体は、キャスティングロール上で冷却され、平板性の良好なフィルムを得ることができる。得られた無定形フィルムをさらに所定の温度で1.5〜3.5倍に延伸してもよく、次いで熱固定してもよい。また、ポリイミドワニスを基材表面に塗布して、フィルムとしてもよく、剥離基材上のワニスを塗布したち、転写してもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種物性値の測定方法は以下に示す通りである。
【0069】
[対数粘度(ηinh)]:固形分濃度が0.5g/dlとなるようにポリアミド酸ないしポリイミドを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)ないしはγ-ブチロラクトンに溶解して得られたワニスの35℃における対数粘度(ηinh(dl/g))を測定した。
[E型機械粘度]:E型機械粘度計(東京計機社製)を使用し、ワニスの25℃におけるE型機械粘度(mPa・s)を測定した。
【0070】
[ガラス転移温度(Tg)]:熱機械分析装置(TMA−50、島津製作所社製)を使用し、窒素気流下、昇温速度を5℃/分としてポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg(℃))を熱機械分析(TMA)により測定した。
【0071】
[5%重量減少温度(Td5)]:熱機械分析装置(TGA−50、島津製作所社製)を使用し、空気中、昇温速度を10℃/分としてポリイミドフィルムの5%重量減少温度(Td5(℃))を熱機械分析(TMA)により測定した。
【0072】
[引張破断伸度(EL)]:小型卓上試験機(EZ−TEST−100N、島津製作所社製)を使用し、ASTM−D−822に準拠してポリイミドフィルムの引張破断伸度(EL(%))を測定した。
【0073】
[耐折度(折り曲げ回数(MIT))]:MIT型耐折度試験機(安田精機製作所社製)を使用し、JIS−P8115に準拠してポリイミドフィルムが破断するまでの折り曲げ回数(MIT(回))を測定した。測定は加重4.9Nにおいて3回行い、その平均値を採用した。
【0074】
[全光線透過率]:ヘイズメーター(日本電色社製「NDH2000」)により求めた。
[b*]色彩式差計(測定ヘッド:CR-300 ミノルタカメラ社製)およびデータプロセッサ(DP-300 ミノルタカメラ社製)を使用し、ポリイミドフィルムの黄味の指標となるb*値を測定した。測定は3回計測し、その平均値を採用した。
【0075】
(実施例1)
撹拌装置、温度計、窒素導入管、ディーンスターク水分離器及びコンデンサーを備え付けた200mlガラス製反応装置に、γ-ブチロラクトン(GBL)44.4g、4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル18.24g(0.05mol)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.21g(0.05mol)、還流溶媒として混合キシレン20gを装入し、窒素気流下において室温で撹拌した。
【0076】
撹拌開始から30分後に、発熱による昇温が終了した事を確認してから、オイルバスにて170℃まで昇温を行った。170℃に達した後、170〜180℃を保ちならがら熱イミド化により生じる水を、キシレンとの共沸によりディーンスターク水分離器により系外に排出した。
【0077】
同温度にて3時間程加熱・撹拌を続けた後、さらに同温度にて3時間撹拌を続け、残存の生成水とキシレンを徐々に系外に排出した。
合計6時間、同温度でにて加熱撹拌を続けて水の生成が終了した事を確認した後、反応を終了とした。内温を130℃まで冷却したのち、GBL66.2gを添加、同温度にて3時間撹拌して、約20wt%のポリイミド-GBL均一ワニスとし、室温まで冷却して終了とした。
【0078】
得られたワニスの濃度を測定したところ、22.6wt%であり、対数粘度ηinhは0.92dl/gであった。またE型機械粘度は58pa・sであった。
こうして得られたポリイミドワニスを、ガラス板上にキャストし、窒素気流下において50℃から270℃まで2時間かけて昇温した。引き続き270℃で2時間焼成することにより、厚さ約30μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)は250℃であり、5%重量減少温度(Td5)は495℃であり、引張破断伸度(EL)は152%であり、折り曲げ回数(MIT)は14000回であった。また、全光線透過率は89%であり、カットオフ波長は315nm、350nmにおける透過率は68%であった。
【0079】
(実施例2)
実施例1と同様の反応装置に、γ-ブチロラクトン(GBL)44.4g、4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル18.24g(0.05mol)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.21g(0.05mol)、トリエチルアミン0.24g、還流溶媒として混合キシレン20gを装入し、窒素気流下において室温で撹拌した。
【0080】
撹拌開始から30分後に、発熱による昇温が終了した事を確認してから、オイルバスにて170℃まで昇温を行った。170℃に達した後、170〜180℃を保ちならがら熱イミド化により生じる水を、キシレンとの共沸によりディーンスターク水分離器により系外に排出した。
【0081】
同温度にて3時間程加熱・撹拌を続けた後、さらに同温度にて3時間撹拌を続け、残存の生成水とキシレンを徐々に系外に排出した。
合計6時間、同温度でにて加熱撹拌を続けて水の生成が終了した事を確認した後、反応を終了とした。内温を130℃まで冷却したのち、GBL66.2gを添加、同温度にて1時間撹拌して、約20wt%のポリイミド-GBL均一ワニスとし、室温まで冷却して終了とした。
【0082】
得られたワニスの濃度を測定したところ、21.4wt%であり、対数粘度ηinhは0.94dl/gであった。またE型機械粘度は61pa・sであった。
こうして得られたポリイミドワニスを、ガラス板上にキャストし、窒素気流下において50℃から270℃まで2時間かけて昇温した。引き続き270℃で2時間焼成することにより、厚さ約30μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)は250℃であり、5%重量減少温度(Td5)は498℃であり、引張破断伸度(EL)は162%であり、折り曲げ回数(MIT)は14000回であった。また、全光線透過率は89%であり、カットオフ波長は315nm、350nmにおける透過率は68%であった。
【0083】
(実施例3)
撹拌装置、温度計、窒素導入管、及びコンデンサーを備え付けた200mlガラス製反応装置に、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)44.4g及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.21g(0.05mol)、を装入し、窒素気流下において室温で撹拌して均一溶液とした。ここに4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル18.24g(0.05mol)を一括で添加し、さらに同条件下で撹拌を継続した。
【0084】
撹拌開始から30分後に、発熱による昇温が終了した事を確認してから、放冷状態にて室温まで温度を低下させながら、4時間撹拌を行ったのち、DMAc66.2gを添加、同温度にて1時間撹拌して、約20wt%のポリアミド酸-DMAc均一ワニスとし、室温まで冷却して終了とした。
得られたワニスの濃度を測定したところ、20.2wt%(ポリイミド換算)であり、対数粘度ηinhは0.74dl/gであった。またE型機械粘度は34pa・sであった。
【0085】
こうして得られたポリアミド酸ワニスを、ガラス板上にキャストし、窒素気流下において50℃から270℃まで2時間かけて昇温した。引き続き270℃で2時間焼成することにより、厚さ約30μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)は249℃であり、5%重量減少温度(Td5)は496℃であり、引張破断伸度(EL)は122%であり、折り曲げ回数(MIT)は12800回であった。また、全光線透過率は89%であり、カットオフ波長は315nm、350nmにおける透過率は68%であった。
【0086】
(実施例4)
実施例1と同様の反応装置に、γ-ブチロラクトン(GBL)44.4g、1,3'-ビス-(3-アミノフェノキシベンゼン14.62g(0.05mol)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.21g(0.05mol)、トリエチルアミン0.24g、還流溶媒として混合キシレン20gを装入し、窒素気流下において室温で撹拌した。
【0087】
撹拌開始から30分後に、発熱による昇温が終了した事を確認してから、オイルバスにて170℃まで昇温を行った。170℃に達した後、170〜180℃を保ちならがら熱イミド化により生じる水を、キシレンとの共沸によりディーンスターク水分離器により系外に排出した。
【0088】
同温度にて3時間程加熱・撹拌を続けた後、さらに同温度にて3時間撹拌を続け、残存の生成水とキシレンを徐々に系外に排出した。
合計6時間、同温度でにて加熱撹拌を続けて水の生成が終了した事を確認した後、反応を終了とした。内温を130℃まで冷却したのち、GBL51.7gを添加、同温度にて1時間撹拌して、約20wt%のポリイミド-GBL均一ワニスとし、室温まで冷却して終了とした。
【0089】
得られたワニスの濃度を測定したところ、22.1wt%であり、対数粘度ηinhは0.89dl/gであった。またE型機械粘度は52pa・sであった。こうして得られたポリイミドワニスを、ガラス板上にキャストし、窒素気流下において50℃から270℃まで2時間かけて昇温した。引き続き270℃で2時間焼成することにより、厚さ約30μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)は210℃であり、5%重量減少温度(Td5)は498℃であり、引張破断伸度(EL)は8%であり、折り曲げ回数(MIT)は10500回であった。
また、全光線透過率は89%であり、カットオフ波長は300nm、350nmにおける透過率は78%であった。
【0090】
(実施例5)
実施例1と同様の反応装置に、γ-ブチロラクトン(GBL)22.2gおよびN-メチルピロリドン(NMP)22.2g、4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル18.24g(0.05mol)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)10.1g(0.045mol)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)1.09g(0.005mol)、トリエチルアミン0.24g、還流溶媒として混合キシレン20gを装入し、窒素気流下において室温で撹拌した。
【0091】
撹拌開始から30分後に、発熱による昇温が終了した事を確認してから、オイルバスにて170℃まで昇温を行った。170℃に達した後、170〜180℃を保ちながら熱イミド化により生じる水を、キシレンとの共沸によりディーンスターク水分離器により系外に排出した。
【0092】
同温度にて3時間程加熱・撹拌を続けた後、さらに同温度にて3時間撹拌を続け、残存の生成水とキシレンを徐々に系外に排出した。
合計6時間、同温度でにて加熱撹拌を続けて水の生成が終了した事を確認した後、反応を終了とした。内温を130℃まで冷却したのち、GBL33.1gおよびNMP33.1gを添加、同温度にて1時間撹拌して、約20wt%のポリイミド-GBL/NMP均一ワニスとし、室温まで冷却して終了とした。
【0093】
得られたワニスの濃度を測定したところ、21.8wt%であり、対数粘度ηinhは0.88dl/gであった。またE型機械粘度は33pa・sであった。
こうして得られたポリイミドワニスを、ガラス板上にキャストし、窒素気流下において50℃から270℃まで2時間かけて昇温した。引き続き270℃で2時間焼成することにより、厚さ約30μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)は252℃であり、5%重量減少温度(Td5)は494℃であり、引張破断伸度(EL)は140%であり、折り曲げ回数(MIT)は14000回であった。また、全光線透過率は88%であり、カットオフ波長は325nm、350nmにおける透過率は6%であった。
【0094】
(実施例6)
実施例1と同様の反応装置に、m-クレゾール44.4g、4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル18.24g(0.05mol)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.15g(0.04975mol)、還流溶媒として混合キシレン20gを装入し、窒素気流下において室温で撹拌した。
【0095】
室温にて撹拌を30分行ったが、発熱、増粘とも見られずに、原料がスラリー状態のままであった。
その後オイルバスにて170℃まで昇温を行った。170℃に達した後、170〜180℃を保ちならがら熱イミド化により生じる水を、キシレンとの共沸によりディーンスターク水分離器により系外に排出した。
【0096】
同温度にて3時間程加熱・撹拌を続けた後、さらに同温度にて3時間撹拌を続け、残存の生成水とキシレンを徐々に系外に排出した。
合計6時間、同温度でにて加熱撹拌を続けて水の生成が終了した事を確認した後、反応を終了とした。内温を130℃まで冷却したのち、末端アミノ基の2当量に相当する無水フタル酸0.074g(0.0005mol)およびm-クレゾール66.2gを添加、同温度にて1時間撹拌して、約20wt%のポリイミド-m-クレゾール均一ワニスとし、室温まで冷却して終了とした。
【0097】
得られた末端封止ポリイミドワニスに、室温で撹拌を行いながら30gのメタノールを30分かけて滴下し、曇化の兆候が見られる程度まで希釈、粘度を低下させた後、500mlの激しく撹拌されたメタノール中へ排出した。
【0098】
白色のポリイミドパウダーが析出したところで、ろ過を行い、さらに500mlのメタノール中にてスラリー洗浄、ろ過を2回繰り返して、末端封止されたポリイミドパウダーを得た。
得られたポリイミドパウダーの溶融流動性をフローテスターにて測定したところ、フロースタート(FST)は305℃であった。
【0099】
(実施例7)
実施例1と同様の反応装置に、GBL44.4g、4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル18.24g(0.05mol)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.15g(0.04975mol)、還流溶媒として混合キシレン20gを装入し、実施例6と同様にして末端封止されたポリイミドパウダーを得た。得られたポリイミドパウダーの溶融流動性をフローテスターにて測定したところ、フロースタート(FST)は298℃であった。
【0100】
(実施例8)
実施例1と同様の反応装置に、m-クレゾール44.4g、4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル18.24g(0.05mol)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.04g(0.04925mol)、還流溶媒として混合キシレン20gを装入し、窒素気流下において室温で撹拌した。
【0101】
室温にて撹拌を30分行ったが、発熱、増粘とも見られずに、原料がスラリー状態のままであった。その後オイルバスにて170℃まで昇温を行った。170℃に達した後、170〜180℃を保ちならがら熱イミド化により生じる水を、キシレンとの共沸によりディーンスターク水分離器により系外に排出した。
同温度にて3時間程加熱・撹拌を続けた後、さらに同温度にて3時間撹拌を続け、残存の生成水とキシレンを徐々に系外に排出した。
【0102】
合計6時間、同温度でにて加熱撹拌を続けて水の生成が終了した事を確認した後、反応を終了とした。内温を130℃まで冷却したのち、末端アミノ基の2当量に相当する無水フタル酸0.222g(0.0015mol)およびm-クレゾール66.2gを添加、同温度にて1時間撹拌して、約20wt%のポリイミド-m-クレゾール均一ワニスとし、室温まで冷却して終了とした。
【0103】
得られた末端封止ポリイミドワニスに、室温で撹拌を行いながら30gのメタノールを30分かけて滴下し、曇化の兆候が見られる程度まで希釈、粘度を低下させた後、500mlの激しく撹拌されたメタノール中へ排出した。
【0104】
白色のポリイミドパウダーが析出したところでろ過を行い、さらに500mlのメタノール中にてスラリー洗浄、ろ過を2回繰り返して、末端封止されたポリイミドパウダーを得た。得られたポリイミドパウダーの溶融流動性をフローテスターにて測定したところ、フロースタート(FST)は266℃であった。
【0105】
(比較例1)
実施例3における1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)11.21g(0.05mol)の替わりに、PMDA10.91g(0.05mol)を用いて同様に反応し、約20wt%濃度のポリアミド酸-DMAcワニスを得た。
【0106】
得られたワニスの濃度を測定したところ、20.5wt%(ポリイミド換算)であり、対数粘度ηinhは0.70dl/gであった。またE型機械粘度は28pa・sであった。
こうして得られたポリアミド酸ワニスを、ガラス板上にキャストし、窒素気流下において50℃から270℃まで2時間かけて昇温した。引き続き270℃で2時間焼成することにより、厚さ約30μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)は259℃であり、5%重量減少温度(Td5)は520℃であり、引張破断伸度(EL)は97%であり、折り曲げ回数(MIT)は50000≧回であった。また、全光線透過率は80%であり、カットオフ波長は420nmであった。
【0107】
(比較例2)
実施例3における1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H−PMDA)に替えてPMDA10.91g(0.05mol)、4,4'-ビス-(3-アミノフェノキシ)ビフェニルに替えて2,5(または6)−ジアミノメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(商品名:NBDA、三井化学社製)7.71g(0.05mol)を用いた以外は同様に反応し、約20wt%濃度のポリアミド酸-DMAcワニスを得た。
【0108】
得られたワニスの濃度を測定したところ、20.2wt%(ポリイミド換算)であり、対数粘度ηinhは0.70dl/gであった。またE型機械粘度は31pa・sであった。
こうして得られたポリアミド酸ワニスを、ガラス板上にキャストし、窒素気流下において50℃から270℃まで2時間かけて昇温した。引き続き270℃で2時間焼成することにより、厚さ約30μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)は290℃であり、5%重量減少温度(Td5)は435℃であり、引張破断伸度(EL)は5%であり、折り曲げ回数(MIT)は3500回であった。また、全光線透過率は90%であり、カットオフ波長は360nmであった。
【0109】
(比較例3)
比較例2において得られたポリアミド酸−DMAcワニスを、実施例2と同様にして加熱、脱水イミド化を行ったが、イミド化の進行にともなってポリマーが析出し、ワニス化は出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のポリイミドによって形成されるフィルム、シート、または成形体は、各種電子部品の構成材料や光学部品材料として、あるいはガラス代替品として好適である。
このため、透明性を必要とするディスプレー基材や透明回路基材、各種光学フィルム材料、レンズ材料、透明封止材などに用いることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸無水物成分とジアミン成分から誘導され、下記一般式(1A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドにおいて、
酸無水物成分が、下記式(2A) および/または(2B)で表される脂環族酸無水物を必須成分として、全酸無水物中の20モル%〜100モル%の範囲で含み、
ジアミン成分が下記式(3A)および/または(3B)で表される芳香族ジアミンを必須の成分として、全ジアミン中の20モル%〜100モル%の範囲で含むことを特徴とするポリイミド。
【化1】

(R1およびR2は、脂肪族基、脂環族基、単環式芳香族基、複合多環式芳香族基、芳香族基が直接または架橋員により連結された非縮合式芳香族基であり、R1は4価の基であり、R2は2価の基である)
【化2】

R1'は4価の炭素数4〜8の脂環族基、R1"は3価の炭素数4〜8の脂環族基、R3は直接結合、ないし炭素数1〜5の炭化水素基またはハロゲン置換炭化水素基、酸素、硫黄、SO、SO2、COから選らばれる2価基)
【化3】

(n1は1または2の整数、n2は1〜5の整数を示し、ただし、ベンゼン環の1つ以上の水素原子が、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい)
【請求項2】
前記脂環族酸無水物成分(2A)および(2B)が、それぞれ下記式(2A-1)および(2B-1)で表され、芳香族ジアミン成分(3A)および(3B)が、それぞれ下記式(3A-1)および(3B-1)で表されること特徴とする請求項1に記載のポリイミド。
【化4】

【請求項3】
ガラス転移温度が180℃〜280℃にあることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドを含有するポリイミドワニス。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドの前駆体である、式 (2A)および/または(2B)で表される脂環族酸無水物と、前記式(3A)および/または(3B)で表される芳香族ジアミンとの反応・重合物であるポリアミド酸を含有するワニス。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドを含む接着剤。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドからなるポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項4または5に記載のワニスから形成されてなるポリイミドフィルム。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドを溶融成形して得られることを特徴とするポリイミド成形品。

【公開番号】特開2012−251080(P2012−251080A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125171(P2011−125171)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】