説明

新規化合物

本発明は腫瘍および癌を治療および予防するための新規に同定した化合物、ならびに増殖性疾患に示唆されるチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性に関連する増殖性疾患を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍および癌を治療および予防するための新しく同定された化合物、および増殖性疾患に関わるチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性に関連する増殖性疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酵素は、生存細胞において反応を触媒する高分子のタンパク質である。酵素は他の分子を構築するかまたは分解する。例えば、酵素は、脂肪酸からの脂肪の合成を触媒し、グルコースおよびフラクトースから複雑な糖類を生成し、そしてアミノ酸からの他のタンパク質の生成を助ける。酵素はまた、より複雑な構造を破壊することにより構築プロセスを逆行させる。酵素は一般的に、その反応について、ある特定の基質に特異的である。例えば、個々の酵素は、一基質だけが関わる反応を触媒するかまたはあるグループの関係する基質に作用することができる。
【0003】
プロテインキナーゼは、アデノシン三リン酸(ATP)、またはグアノシン三リン酸(GTP)から標的タンパク質へのリン酸の移動を触媒して、リン酸化タンパク質およびアデノシン二リン酸(ADP)またはグアノシン二リン酸(GDP)をそれぞれ得る酵素である。ATPまたはGTPが最初に加水分解されてADPまたはGDPおよび無機リン酸を生成する。無機リン酸は次いで標的タンパク質と結合する。キナーゼが標的とするタンパク質基質は、細胞壁などの膜材料に見られる構造タンパク質であっても、または機能性タンパク質である他の酵素であってもよい。
【0004】
ヒトゲノムの約3〜4%がプロテインキナーゼを形成する転写情報を含有すると見積もられている。現在、約400種に達する既知の異なるプロテインキナーゼがある。しかし、ヒトゲノムの3〜4%がプロテインキナーゼを形成するためのコードであるので、ヒトの身体には数千種の異なりかつ個々のキナーゼが存在しうる。
【0005】
プロテインキナーゼは、その生理学的関連性、多様性および遍在性の故に、生化学および医学研究において最も重要でありかつ広く研究された酵素ファミリーの1つになっている。これらの研究は、プロテインキナーゼが、シグナル伝達、転写制御、細胞運動性、および細胞分裂を含む、多数の細胞機能の主要な制御因子であることを示している。数種の発癌因子もプロテインキナーゼをコードすることが示されていて、キナーゼが発癌にある役割を果たすことを示唆している。
【0006】
プロテインキナーゼはしばしば、それらがリン酸化するアミノ酸残基に基づいて2グループに区分される。最初のグループはセリン/トレオニンキナーゼ(PSTK)と呼ばれ、環状AMPおよび環状GMP依存性プロテインキナーゼ、カルシウムおよびリン脂質依存性プロテインキナーゼ、カルシウムおよびカルモジュリン依存性プロテインキナーゼ、カゼインキナーゼ、細胞分裂周期プロテインキナーゼなどを含む。これらのキナーゼは通常、細胞質内にあるかまたは、恐らくタンパク質に固着することにより、細胞の微粒子画分に随伴する。異常なタンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性は、多数の病理、例えば関節リウマチ、乾癬、敗血症ショック、骨損失、多数の癌およびその他の増殖性疾患において、示唆されるかまたは疑われている。従って、セリン/トレオニンキナーゼおよびそれらが一部分となるシグナル伝達経路は薬物設計の重要な標的である。
【0007】
第2のキナーゼのグループはチロシンキナーゼと呼ばれ、チロシン残基をリン酸化する。これらは遥かに少ない量しか存在しないが、これらも等しく細胞制御に重要な役割を演じる。このグループのキナーゼは、増殖因子およびホルモンなどの分子に対する数種の受容体を含み、これらとしては、上皮細胞増殖因子受容体、インスリン受容体、血小板由来増殖因子受容体などが挙げられる。研究結果は、多くのチロシンキナーゼが膜タンパク質であって、その受容体ドメインは細胞外側に位置しかつそのキナーゼドメインは内側にあることを示している。これらの膜貫通チロシンキナーゼは受容体チロシンキナーゼ(非受容体チロシンキナーゼの反対語として)と呼ばれる。
【0008】
血管新生、すなわち既存の一次血管叢(primary plexus)からの新しい血管の形成は、複数のプロセス:血管出芽(sprouting)、分枝(branching)および剪定(pruning)、および血管の差次的増殖と成熟血管網の生成を介して起こる。血管新生の基礎となる細胞および分子機構は未だ十分解明されてないが、シグナルは内皮細胞特異的分子、特に受容体チロシンキナーゼ(RTK)およびそのリガンドを介して伝達される。血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、Tie受容体、およびEph受容体が血管新生のプロセスに主に関わっている。従って、前血管新生経路のターゲティングは、癌の新しい治療薬を提供するために広く追求されている方法である。
【0009】
血管内皮増殖因子(VEGF)はin vitroで内皮細胞に対する分裂促進性のペプチドであり、そしてin vivoで血管新生応答を刺激する。VEGFはまた、不適当な血管新生にも関係している(Pinedo, H.M.ら, The Oncologist, Vol.5, No. 90001, 1-2, April 2000)。VEGFの受容体であるVEGFRは、細胞増殖および分化の制御に関わるタンパク質中の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する受容体チロシンキナーゼである(A.F. Wilks, Progress in Growth Factor Research, 1990, 2, 97-111;S.A. Courtneidge, Dev. Supp.l, 1993, 57-64;J.A. Cooper, Semin. Cell Biol., 1994, 5(6), 377-387;R.F. Paulson, Semin. Immunol., 1995, 7(4), 267-277;A.C. Chan, Curr. Opin. Immunol., 1996, 8(3), 394-401)。VEGFの3種のタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)は同定されていて、VEGFR-1(Flt-1);VEGFR-2(Flk-1またはKDR)およびVEGFR-3(Flt-4)受容体である。これらの受容体は血管新生に関わり、かつシグナル伝達に加わる(Mustonen, T.ら, J. Cell Biol. 1995:129:895-898)。特に興味深いのはVEGFR-2であり、これは内皮細胞に主に発現される膜貫通受容体PTKである。VEGFによるVEGFR-2の活性化は、腫瘍血管新生を開始するシグナル伝達経路における決定的ステップである。VEGF発現は腫瘍細胞に本質的なものであり、また、ある特定の刺激に応答してアップレギュレーションもされうる。かかる刺激の1つは低酸素血症であり、この場合、VEGF発現は腫瘍および関連する宿主組織の両方においてアップレギュレーションされる。VEGFリガンドはVEGFR-2をその細胞外VEGF結合部位と結合することにより活性化する。この活性化により、VEGFRの受容体二量体化およびVEGFR-2の細胞内キナーゼドメインにおけるチロシン残基の自己リン酸化が起こる。キナーゼドメインはリン酸をATPからチロシン残基へ伝達する働きがあり、従って、VEGFR-2下流のシグナル伝達タンパク質に対する結合部位を提供し、最終的に血管新生の開始をもたらす(McMahon, G., The Oncologist, Vol. 5, No. 90001, 3-10, April 2000)。
【0010】
アンギオポエチン1(Ang1)は、内皮特異的受容体チロシンキナーゼTIE-2に対するリガンドであり、新規の血管新生因子である(Davisら, Cell, 1996, 87:1161-1169;Partanenら, Mol. Cell Biol, 12:1698-1707 (1992);米国特許第5,521,073号;第5,879,672号;第5,877,020号;および第6,030,831号)。頭字語TIEは、「IgおよびEGF相同性ドメインを含有するチロシンキナーゼ」を表す。TIEは、血管内皮細胞および初期造血細胞に専ら発現される受容体チロシンキナーゼのクラスを同定するために使用される。典型的には、TIE受容体キナーゼはEGF-様ドメインおよび鎖内ジスルフィド結合により安定化された細胞外フォールディングユニットから構成される免疫グロブリン(IG)様ドメインの存在により特徴付けられる(Partanenら, Curr. Topics Microbiol. Immunol., 1999, 237:159-172)。血管発生の初期段階中に機能するVEGFと異なり、Ang1およびその受容体TIE-2は血管発生の後期段階、すなわち、血管リモデリング(リモデリングは血管腔の形成を意味する)および成熟中に機能する(Yancopoulosら, Cell, 1998, 93:661-664;Peters, K.G., Circ. Res., 1998, 83(3):342-3;Suriら, 細胞87, 1171-1180 (1996))。
【0011】
EphB4は、元来、Bennett BDら(J Biol Chem, 1994 May 13; 269 (19):14211-8)によりHTKとして記載された別の受容体チロシンキナーゼである。エフリン-B2およびEphB4ノックアウトマウスにおける血管欠損の最近の観察は、エフリン-B2リガンドとそのコグネイトであるEphB4受容体の間の相互作用が動脈-静脈ドメインの境界を規定することを強く示唆している。エフリン-B2リガンドは複数の他の非血管組織、例えば血管内皮細胞に隣接する間葉細胞において広く発現されるが、EphB4受容体は血管内皮細胞にユニークに局在する。EphB4受容体は、膜貫通タンパク質でもあるそれらのそれぞれのエフリン-B2リガンドにより活性化されるだけでなく、EphB4受容体はまた、それらのエフリン-B2リガンドを活性化する。EphB4対立遺伝子についてヘテロ接合性の胚は、野生型と比較していずれの明らかな欠陥も示さない。しかしホモ接合性の胚は、内皮細胞増殖遅延および停止心発生に由来する心血管欠陥、ならびに高発生率の胚死亡率を示す。これらの結果は明らかに、EphB4シグナル伝達経路が血管形成、血管新生および血管成熟に本質的な役割を果たしかつこれらの事象がまた癌およびアテローム性動脈硬化症に複雑に関連していることも示す。
【0012】
細胞内に位置する非受容体チロシンキナーゼも、生化学シグナル、例えば腫瘍細胞運動性、播種および侵襲ならびにその後の転移性腫瘍増殖に影響を与えるシグナルの伝達に関わることが知られている。様々なクラスの非受容体チロシンキナーゼが公知であり、それには、Srcファミリー、例えばSrc、Lyn、FynおよびYesチロシンキナーゼ;Ablファミリー、例えばAblおよびArg;ならびにJakファミリー、例えばJak1およびTyk2が含まれる。
【0013】
非受容体チロシンキナーゼのSrcファミリーは正常な細胞において高度に制御され、細胞外刺激が不在のもとでは不活性なコンフォメーションに維持されることが知られている。しかし、いくつかのSrcファミリーメンバー、例えばc-Srcチロシンキナーゼは、胃腸癌、例えば大腸癌、直腸癌および胃癌、ならびに乳癌などの普通のヒトの癌において、しばしば有意に活性化される(正常な細胞レベルと比較して)。非受容体チロシンキナーゼのSrcファミリーはまた、他の普通のヒトの癌にも存在している。さらに、c-Src非受容体キナーゼの主な役割は、例えば、限局性接着キナーゼおよびパキシリンを含む多数の細胞質タンパク質との相互作用を介して、限局性接着複合体の組み立てを制御することにあるのが知られている。さらに、c-Srcは、細胞運動性を促進するアクチン細胞骨格を制御するシグナル伝達経路と結合している。同様に、c-Src、c-Yesおよびc-Fyn非受容体チロシンキナーゼは、インテグリンが介在するシグナル伝達におよびカドヘリン依存性細胞-細胞接合部の破壊に重要な役割を演じる。細胞運動性は、局在化した腫瘍が血流中への播種、他の組織の侵襲、および転移性腫瘍増殖の開始の段階を介して進行するために必要である。例えば、局在から播種性、侵襲性転移性疾患への大腸腫瘍進行は、c-Src非受容体チロシンキナーゼ活性と関係付けられている。従って、かかる非受容体チロシンキナーゼのインヒビターは、腫瘍細胞運動性のインヒビターとしておよび哺乳動物癌細胞の播種および侵襲のインヒビターとして価値があり、転移性腫瘍増殖を阻止するに違いないことが認識されている。特に、かかる非受容体チロシンキナーゼのインヒビターは固体癌疾患の封じ込めおよび/または治療に用いる抗侵襲薬として価値があるに違いない。
【発明の開示】
【0014】
本発明の化合物は、癌またはアテローム性動脈硬化症において示唆される本明細書に記載の1種以上のチロシンキナーゼ、特にTie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される上記チロシンキナーゼに対して、不適当な血管新生、血管形成、血管成熟、または細胞運動性を阻害または防止することにより、活性を有する。
【0015】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、式I:
【化1】

【0016】
[式中、
Yは硫黄または酸素であり;
R1は、場合によりかつ独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシメチル、-C(O)Q、-NH-C(O)NH-Q、-NHC(O)-Q、-NHSO2-Q、-C(O)NH-Q、-SO2NH-Q、(式中、Qは水素、C1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、アリール、またはアラルキルである)により置換されているフェニルであるか;またはR1は式:
【化2】

【0017】
の基であり;そして
R2は、水素、ハロゲン、ピリジル、または場合によりかつ独立して1〜3個のハロゲン、シアノ、C1-6アルキルオキシ、-C(O)-Z、-C(O)NH-Z-SO2NH-Z、-NHC(O)-Z、-NHSO2-Z、-SO2-Z(式中、Zは水素またはC1-6アルキルである)により置換されているフェニルである]
で表される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体(physiologically functional derivative)に関する。
【0018】
第2の態様において、本発明は、哺乳動物中のTie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される1種以上のチロシンキナーゼを阻害する方法であって、上記哺乳動物に治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体を投与することを含んでなる上記方法に関する。
【0019】
本発明の第3の態様において、治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体および1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0020】
本発明の第4の態様において、式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体の医薬の製造における使用であって、上記医薬が、限定されるものでないが、癌およびアテローム性動脈硬化症を含む、Tie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される1種以上のチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性から生じる不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性により引き起こされる疾患、または不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性の症状を治療または予防するために用いるものである上記使用が提供される。
【0021】
本発明の第5の態様において、本発明は、限定されるものでないが、癌およびアテローム性動脈硬化症を含む、Tie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される1種以上のチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性から生じる不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性により引き起こされる疾患、または不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性の症状を治療または予防する方法であって、;哺乳動物に治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含むものである上記方法に関する。
【0022】
本発明の第6の態様において、本発明は、癌またはアテローム性動脈硬化症を治療または予防する方法であって;哺乳動物に治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含んでなる上記方法に関する。
【0023】
本発明の第7の態様において、本発明は、式Iで表される化合物を作るための化学中間体に関する。
【0024】
本発明の第8の態様において、本発明は、式Iで表される化合物を作る方法に関する。
【0025】
詳細な説明
次の用語を本明細書で使用することがある。これらを使用する場合、次の定義を適用する。
【0026】
本明細書で使用される用語「有効な量」は、例えば研究者または臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する薬物または薬剤の量を意味する。さらに、用語「治療上有効な量」は、かかる量を受給してない対応する被験者と比較して、治療、治癒、予防の改善、疾患、障害、または副作用の改善、または疾患もしくは障害進行速度の低下をもたらすいずれかの量を意味する。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増進するのに有効な量も含む。
【0027】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。従って、「C1-6アルキル」は、1個以上かつ6個以下の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。本発明に有用である「C1-6アルキル」基の例には、限定されるものでないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが含まれる。
【0028】
本明細書で使用される用語「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖の二価炭化水素基を意味する。従って、「C1-6アルキレン」は、1個以上かつ6個以下の炭素原子を含有する基を意味する。本発明で使用する「C1-6アルキレン」の例には、限定されるものでないが、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレンなどが含まれる。
【0029】
本明細書で使用されるC1-6シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルを意味する。
【0030】
直線が芳香族環の中心から引かれる化学記号は、その芳香族環が芳香族環の可能な炭素原子のいずれかから接続されていることを意味する。
【0031】
「アリール」は、場合によりかつ独立して3個以下のハロゲンおよびトリフルオロメチル基により置換されているフェニルまたはナフチルを意味する。明快にするために説明すると、例えばアリールは、4-クロロフェニル基、3-トリフルオロメチルフェニル基、2-フルオロ-5-トリフルオロメチルフェニル基などの基を含む。そして「アリールオキシ」は、4-クロロフェニルオキシ基、3-トリフルオロメチルオキシ基、2-フルオロ-5-トリフルオロメチルフェニルオキシ基などの基を含む。
【0032】
本明細書に使用される用語「アラルキル」は、C1-6アルキレン基と連結したアリール基を意味する。
【0033】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」は、弗素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)を意味する。
【0034】
本明細書で使用される用語「場合により」は、続いて記載された事象が起こってもよくまたは起こらなくてもよく、そして起こる事象と起こらない事象の両方を含むことを意味する。
【0035】
本明細書で使用される用語「生理学的に機能的な誘導体」は、薬学的に許容される本発明の化合物のいずれかの誘導体、例えば、エステルまたはアミドであって、哺乳動物に投与すると本発明の化合物またはその活性代謝物を(直接的にまたは間接的に)与えることができる上記誘導体を意味する。かかる誘導体は、過度の実験をすることなく、「バージャーの薬化学および薬物発見(Burger's Medicinal Chemistry And Drug Discovery)」, 第5版, Vol 1: 「原理と実施(Principles and Practice)」の教示を参照すれば当業者には明白である(同書は本明細書に参照により生理学的に機能的な誘導体を教示する範囲まで組み入れられる)。
【0036】
本明細書で使用される用語「溶媒和物」は、溶質(本発明における、式Iの化合物またはその塩もしくは生理学的に機能的な誘導体)と溶媒により形成される様々な化学量論の複合体を意味する。本発明の目的のためのかかる溶媒は溶質の生物学的活性を妨害してはならない。好適な溶媒としては、限定されるものでないが、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられる。好ましくは、使用される溶媒は薬学的に許容される溶媒である。好適な薬学的に許容される溶媒の例としては、限定されるものでないが、水、エタノールおよび酢酸が挙げられる。最も好ましくは、使用される溶媒は水である。
【0037】
本明細書で使用される用語「置換された」は、名指しした1個以上の置換基による置換を意味する置換を意味し、別に断らない限り、多重の置換も認められる。
【0038】
本明細書に記載の化合物のいくつかは、1個以上のキラル原子を含有してもよく、またはそうでなく2種のエナンチオマーとして存在してもよい。従って、本発明の化合物には、エナンチオマーの混合物ならびに精製されたエナンチオマーまたはエナンチオマーとして濃縮された混合物が含まれる。本発明の範囲内には、上記式Iにより表される化合物の個々の異性体ならびにそのいずれかの完全にまたは部分的に平衡化した混合物も含まれる。本発明はまた、上記の式により表される化合物の個々の異性体ならびに1以上のキラル中心が反転したその異性体との混合物も包含する。また、全ての互変異性体および互変異性体の混合物は式Iの化合物の範囲内に包含されることも当然である。
【0039】
典型的には、本発明の塩は薬学的に許容される塩である。用語「薬学的に許容される塩」に包含される塩は、本発明の化合物の無毒性の塩を意味する。本発明の化合物の塩は、式Iの化合物中の置換基の窒素から誘導された酸付加塩を含みうる。代表的な塩としては、次の塩が挙げられる:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート(edisylate)、エストラート(estolate)、エシラート(esylate)、フマル酸塩、グルセプタート(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート(mesylate)、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、マレイン酸一カリウム、粘液酸塩、ナプシラート(napsylate)、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩(subacetate)、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクラート(teoclate)、トシラート(tosylate)、トリエチオジド、トリメチルアンモニウム塩、及び吉草酸塩。薬学的に許容されない他の塩も本発明の化合物の調製において有用であることがあり、これらは本発明のさらなる態様を形成する。
【0040】
治療における使用のために、治療上有効な量の式Iの化合物、ならびにその塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体をそのまま化学品として投与することは可能であるとともに、活性成分を医薬組成物として提示することが可能である。従って、本発明はさらに、治療上有効な量の式Iの化合物およびその塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体、ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。式Iの化合物およびその塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体は先に記載の通りである。担体、希釈剤または賦形剤は、製剤の他の成分と共存することができ、かつその受給者に有害でないという意味で許容されなければならない。本発明の他の態様によると、式Iの化合物、または塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体を1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む、医薬製剤を調製する方法も提供される。
【0041】
医薬製剤は、1単位投与当たり予め定めた量の活性成分を含有する単位投与剤形で提示することができる。かかる単位は、治療する症状、投与経路ならびに患者の年齢、体重および症状に応じて、例えば、0.5mg〜1g、好ましくは1mg〜700mg、さらに好ましくは5mg〜100mgの式Iの化合物を含有してもよいし、または医薬製剤は1単位投与当たり予め定めた量の活性成分を含有する単位投与剤形で提示してもよい。好ましい単位投与製剤は、活性成分の上述の1日用量またはサブ用量、またはその適当な分率を含有するものである。さらに、かかる医薬製剤は、製薬業界で公知のいずれかの方法により調製することができる。
【0042】
医薬製剤は、いずれかの適当な経路による投与、例えば経口(バッカルまたは舌下を含む)、直腸、鼻腔、局所(バッカル、舌下または経皮を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)経路による投与に適合させることができる。かかる製剤は、製薬技術分野で公知のいずれかの方法により、例えば活性成分を担体または賦形剤と組合わせることにより調製することができる。
【0043】
経口投与用に適合させた医薬製剤は、カプセルまたは錠剤などの区切られた単位;粉末または顆粒;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液;食用フォームまたはホイップ;または水中油乳濁液または油中水乳濁液として提示することができる。
【0044】
例えば、錠剤またはカプセル剤の剤形での経口投与については、活性医薬成分を、経口、無毒性の薬学的に許容される不活性担体、例えばエタノール、グリセリン、水と組み合わせることができる。粉末は、本発明の化合物を好適な微粒子サイズに細かく粉砕し、同様に細かく粉砕した食用炭水化物、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの製薬用担体と混合することによって調製する。香料、保存剤、分散剤及び着色剤を含有させることもできる。
【0045】
カプセルは、先に記載のように粉末混合物を調製し、成型されたゼラチンシースに充填することにより調製する。コロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコールなどの流動促進剤および滑沢剤は、充填操作の前に粉末混合物に加えることができる。寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を加えて、カプセルが摂取されたときの医薬の生物学的利用能を改善することもできる。
【0046】
さらに、所望されるかまたは必要であれば、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤も上記混合物中に配合することができる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖類、例えば、グルコースまたはβ-ラクトース、トウモロコシ甘味剤、天然及び合成ガム例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを挙げることができる。上記投与形態に用いられる滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムなどを挙げられる。崩壊剤としては、限定されるものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、造粒またはスラグ化し、滑沢剤及び崩壊剤を加え、そしてプレスにより製剤する。粉末混合物は、適切に粉砕した本発明の化合物を、上記希釈剤または基剤と混合し、場合により、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン)、溶解抑制剤(例えば、パラフィン)、吸収促進剤(例えば、四級塩)、および/または吸収剤(例えば、ベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウム)を混合することにより調製する。粉末混合物は、結合剤(例えば、シロップ、デンプンペースト、アカシア粘液またはセルロース物質もしくはポリマー物質の溶液)で湿らせ、スクリーンを通して押し出すことにより造粒することができる。造粒の代わりの方法として、粉末混合物を錠剤機で処理してもよく、不完全に成型されたスラグを得るのでこれを砕いて顆粒にする。これらの顆粒は、錠剤成形ダイに付着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えることにより滑沢化することができる。次いで、滑沢化した混合物を圧縮成形して錠剤にする。本発明の化合物はまた、自由流動性の不活性担体と組み合わせて、造粒またはスラグ化工程を経ることなく直接圧縮成形して錠剤にすることもできる。セラックのシーリングコートからなる透明または不透明の保護コーティング、糖またはポリマー物質のコーティング、及びワックスのつや出しコーティングを施すことができる。異なる単位投与量を区別するために、これらのコーティングに染料を添加することもできる。
【0047】
溶液、シロップおよびエリキシルなどの経口液剤は、投与単位剤形で調製して所与の量が本発明化合物の予め定められた量を含有するようにしてもよい。シロップ剤は、本発明の化合物を好適に着香した水溶液に溶解することにより調製することができる一方、エリキシル剤は無毒性のアルコール系ビヒクルを使用することにより調製する。懸濁液剤は、本発明の化合物を無毒性ビヒクルに分散させることにより製剤することができる。可溶化剤および乳化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル)、保存剤、香味添加剤(例えば、ペパーミント油)、または天然甘味剤もしくはサッカリンもしくは他の人工甘味剤などを加えることもできる。
【0048】
適当であれば、経口投与用の投与単位製剤をマイクロカプセル化することができる。この製剤はまた、例えば、粒状物質をポリマーまたはワックスなどでコーティングするまたはそれらに包埋することにより、放出を延長したり、持続するように調製することもできる。
【0049】
式Iの化合物、およびその塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体はまた、リポソーム送達系の剤形、例えば単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞および多重ラメラ小胞で投与することもできる。リポソームは様々なリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンから形成させることができる。
【0050】
式Iの化合物、およびその塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体はまた、化合物分子が結合している個々の担体としてモノクローナル抗体を利用することにより送達することもできる。上記化合物はまた、ターゲッティング可能な医薬担体として可溶性ポリマーと結合させることもできる。かかるポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはパルミトイル残基により置換されたポリエチレンオキシドポリリシンなどを挙げることができる。さらに、上記化合物を、医薬の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、および、ヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロック共重合体などに結合させることができる。
【0051】
経皮投与用に適合させた医薬製剤は、受給者の表皮と長時間にわたり密着して残存するように意図した区切られたパッチとして提供することができる。例えば、一般的にPharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に記載されているように、活性成分をパッチからイオン泳動により送達することができる。
【0052】
局所投与用に適応させた医薬製剤は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エーロゾルまたは油として製剤することができる。
【0053】
眼または他の外部組織、例えば口腔および皮膚の治療用の製剤は、好ましくは、局所的な軟膏またはクリームとして施用する。軟膏に製剤する場合、活性成分をパラフィン性または水混和性軟膏基剤のいずれを用いてもよい。あるいは、活性成分を水中油基剤または油中水基剤で製剤してもよい。
【0054】
眼への局所投与用に適合させた医薬製剤としては、活性成分を好適な担体、特に水溶媒に溶解または懸濁させた点眼剤が挙げられる。
【0055】
口腔中の局所投与用に適合させた医薬製剤としては、ロゼンジトローチ剤、パスチルトローチ剤および洗口剤が挙げられる
直腸投与用に適合させた医薬製剤は、座薬としてまたは浣腸として提示することができる。
【0056】
担体が固体である鼻腔内投与用に適合させた医薬製剤としては、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粒粉末が挙げられ、これは鼻近くに保持した粉末容器から嗅ぐ方法で、すなわち、鼻通路を通る急速な吸入により投与される。担体が液体である、鼻スプレーとしてまたは点鼻薬としての投与用に好適な製剤としては、活性成分の水性または油性溶液が挙げられる。
【0057】
吸入による投与用に適合させた医薬製剤としては微粒子ダストまたはミストが挙げられ、これは様々なタイプの定量、投与加圧されたエーロゾル、噴霧器または吹送器を用いて作製することができる。
【0058】
経膣投与用に適合させた医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提示することができる。
【0059】
非経口投与用に適合させた医薬製剤としては、水性および非水性無菌注射溶液(これは抗酸化剤、バッファー、静菌剤および製剤を意図する受給者の血液と等張化する溶質を含有してもよい);および水性および非水性無菌懸濁液(これは懸濁剤および粘稠剤を含有してもよい)が挙げられる。製剤は、単位用量または多用量容器、例えばシールしたアンプルおよびバイアルに入れて提供してもよく、そして、凍結乾燥(lyopholized)条件で貯蔵し、使用直前に無菌の液担体、例えば注射用水を加えることだけが必要であるようにしてもよい。用事調製の注射溶液および懸濁液は、無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0060】
特に以上に記載した成分に加えて、製剤が問題の製剤のタイプに関して当技術分野で慣用的な他の薬剤を含んでもよいことは当然であり、例えば経口投与用に好適な製剤は香料を含んでもよい。
【0061】
本発明の化合物の治療上有効な量は、多数の因子に依存しうるのであって、上記因子としては、例えば、動物の年齢および体重、治療を要する正確な症状とその重症度、製剤の性質、および投与の経路が挙げられ、そして最終的には臨床医または獣医の裁量によるであろう。しかし、Tie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4から選択される1種以上のチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性により引き起こされる、限定されるものでないが、癌またはアテローム性動脈硬化症を含む不適当な血管新生、血管形成、血管成熟、または細胞運動性の症状を治療または予防するための式Iの化合物の有効な量は、一般的に、1日当たり0.1〜100mg/kg受給者(哺乳動物)体重の範囲そしてさらに通常は1日当たり1〜10mg/kg体重の範囲でありうる。従って、70kg成熟動物に対する1日当たり実際の量は通常、70〜700mgであり、そしてこの量を、1日当たり1回の用量で、またはより通常には全1日用量は同じであるようにして1日当たり複数回(例えば、2、3、4、5または6回)のサブ用量で投与することができる。その塩または溶媒和物、または生理学的に機能的な誘導体の有効量は、式Iの化合物自体の有効量に比例して決定することができる。同様な投与量が他の症状の治療に対しても適当でありうると考えられる。
【0062】
調製方法
一般式Iの化合物は、次の合成スキーム、またはその変法により部分的に説明されるように、有機化学の技術分野で公知の方法により調製することができる。以下に記載のスキームの全てにおいて、化学の一般原理に従って必要である場合、感受性または反応性基に対する保護基が採用されることはよく理解されている。保護基は、有機合成の標準的方法(T. W. GreenおよびP. G. M. Wuts (1991) 「有機合成の保護基(Protecting Groups in Organic Synthesis)」, John Wiley & Sons)に従って取扱われる。これらの基は、化合物合成の好都合な段階に、当業者に容易に判る方法を用いて取り外される。方法ならびにその反応条件とそれらの実行順序の選択は、式Iの化合物の調製と整合したものでなければならない。当業者は立体中心が式Iの化合物に存在するかを認識しうる。従って、本発明には、両方の可能な立体異性体が含まれ、かつラセミ化合物だけでなく個々のエナンチオマーも同様に含まれる。化合物が単一エナンチオマーとして所望される場合、その化合物は立体特異的合成によりまたは最終生成物または好都合な中間体の分割により得ることができる。最終生成物、中間体、または出発物質の分割は、当技術分野で公知のいずれか好適な方法により実施することができる。例えば、E. L. Eliel, S. H. WilenおよびL. N. Manderによる「有機化合物の立体化学(Stereochemistry of Organic Compounds)」(Wiley-Interscience, 1994)を参照されたい。
【0063】
さらに特に、式Iの化合物は、スキームA、またはそれらの変法であるBもしくはB'に記載の方法により作ることができる。当業者であれば、容易にスキームA、B〜B'の方法を、試薬の立体化学、温度、溶媒などが所望の生成物の収率を最適化するように適合させることができる。
【0064】
例えば、Yが酸素である式Iの化合物を作るには、スキームAに従うことができる。簡単に説明すると、2-フルフラール(1)を、マロン酸および好適な塩基、例えばピペリジンを用いて、加熱下で3-(フラン-2-イル)-アクリル酸(2)に変換する。3-(フラン-2-イル)-アクリル酸(2)を、DPPAおよび好適な塩基、例えばトリエチルアミンを用いて3-(フラン-2-イル)-アクリロイルアジド(3)に変換する。アジド(3)を加熱しかつ触媒量のヨウ素を用いて環化し、5H-フロ[3,2-c]ピリジン-4-オン(4)を得る。5H-フロ[3,2-c]ピリジン-4-オンを、POCl3を用いて第4位置で塩素化し、4-クロロ-フロ[3,2-c]ピリジン(5)を得る。4-クロロ-フロ[3,2-c]ピリジンを臭素、次いでDBUにより処理して化合物(6)を得る。化合物(6)の塩素原子をアンモニア水の作用によりアミノ基と置き換えて化合物(7)を得る。化合物(7)を次いでPd(PPh3)4、炭酸ナトリウム、R-B(OH)2または式R-B(OR')2の化合物[式中、基-B(OR')2は次式:
【化3】

【0065】
で表すことができる]で処理し(Suzukiカップリング反応)、式I'の化合物を得る。式I'の化合物をさらに、N-ブロモスクシンイミド(NBS)を用いて臭素化し、式I''の化合物を得る。式I''の化合物に対するさらなるSuzukiカップリング反応を、Pd(PPh3)4、炭酸ナトリウム、R2-B(OH)2または式 R2-B(OR')2の化合物[式中、基-B(OR')2は次式:
【化4】

【0066】
で表すことができる]を用いて行い、式I'''の化合物を得る。スキームAにおいて、R2は式Iに定義された通りであり、そしてRは、R1またはR1に変換することができる官能基である。
【0067】
YがSである式Iの化合物が所望であるときは、スキームAプロセスを改変して所望の生成物を得ることができる。2通りのかかる改変をスキームBおよびB'に示す。スキームBおよびB'に記載の方法はスキームAの軽微な改変であり、これらの方法を用いる実際の例を以下に示す。スキームBとB'において、R1とR2は式Iに定義したとおりである。先のように、R1-B(OR')2またはR2-B(OR')2中の基-B(OR')2は式:
【化5】

【0068】
で表すことができる。
【0069】
スキームA
【化6】

【0070】
スキームB
【化7】

【0071】
スキームB'
【化8】

【実施例】
【0072】
特定の実施形態 実施例
本明細書においては、これらのプロセス、スキーム及び実施例において用いられる記号及び約束事は、現代の科学文献、例えば、「アメリカ化学会誌(Journal of the American Chemical Society)」又は「生物化学誌(Journal of Biological Chemistry)」に用いられるものと整合する。一般的に標準1文字又は3文字略語を使用してアミノ酸残基を表現し、これらのアミノ酸残基は、別に断らなければ、L-コンフィギュレーションであると仮定する。別に断らなければ、全ての出発物質は供給業者から得たものであり、さらに精製することなく使用した。具体的には、次の略語が実施例でおよび本明細書全体にわたって用いられる。
【0073】
g(グラム); mg(ミリグラム);
L(リットル); mL(ミリリットル);
μL(マイクロリットル); psi(ポンド/平方インチ);
M(モル); mM(ミリモル);
i.v.(静脈内); Hz(ヘルツ);
MHz(メガヘルツ); mol(モル);
mmol(ミリモル); rt(室温);
min(分); h(時間);
mp(融点); TLC(薄層クロマトグラフィ);
Tr(保持時間); RP(逆相);
MeOH(メタノール); i-PrOH(イソプロパノール);
TEA(トリエチルアミン); TFA(トリフルオロ酢酸);
TFAA(無水トリフルオロ酢酸); THF(テトラヒドロフラン);
DMSO(ジメチルスルホキシド); AcOEt(酢酸エチル);
DME(1,2-ジメトキシエタン); DCM(ジクロロメタン);
DCE(ジクロロエタン); DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);
DMPU(N,N'-ジメチルプロピレン尿素);CDI(1,1-カルボニルジイミダゾール);
IBCF(クロロ蟻酸イソブチル); HOAc(酢酸);
HOSu(N-ヒドロキシスクシンイミド); HOBT(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール);
mCPBA(m-クロロ過安息香酸);EDC(エチルカルボジイミド塩酸塩);
BOC(tert-ブチルオキシカルボニル);FMOC(9-フルオレニルメトキシカルボニル);
DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);CBZ(ベンジルオキシカルボニル);
Ac(アセチル); atm(気圧);
TMSE(2-(トリメチルシリル)エチル);TMS(トリメチルシリル);
TIPS(トリイソプロピルシリル); TBS(t-ブチルジメチルシリル);
DMAP(4-ジメチルアミノピリジン); BSA(ウシ血清アルブミン)
ATP(アデノシン三リン酸); HRP(西洋わさびペルオキシダーゼ);
DMEM(ダルベッコ(Dulbecco)改変イーグル(Eagle)培地);
HPLC(高圧液体クロマトグラフィ);
BOP(ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド);
TBAF(テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド);
HBTU(O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸);
HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸);
DPPA(ジフェニルホスホリルアジド);
fHNO3(発煙HNO3);および
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)。
【0074】
エーテルは全て、ジエチルエーテルを意味し;ブラインはNaClの飽和水溶液を意味する。別に示さなければ、全ての温度は℃(摂氏)で表される。全ての反応は、断りがなければ、不活性雰囲気下で室温にて実施する。
【0075】
1H NMRスペクトルは、Brucker AVANCE-400で記録した。化学シフトは100万分の1(ppm、δ単位)で表す。カップリング定数はヘルツ(Hz)の単位である。スプリットパターンは見かけの多重度を記載し、s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、quint(五重項)、m(多重項)、br(広幅)として記述する。
【0076】
LC-MSはMicromass ZMD及びWaters 2690で記録した。全ての質量スペクトルは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法で得た。ほとんどの反応は、0.25mm E. Merckシリカゲルプレート(60F-254)上の薄層クロマトグラフィによりモニターし、紫外光、5%エタノール性リンモリブデン酸又はp-アニスアルデヒド溶液を用いて可視化した。フラッシュカラムクロマトグラフィはシリカゲル(230-400メッシュ、Merck)上で実施した。
【0077】
実施例1:4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-(3-クロロフェニル)-フロ[3,2-c]ピリジン(Ia)
【化9】

【0078】
a) 3-(フラン-2-イル)-アクリル酸(2)
【化10】

【0079】
2-フルフラール(15g、0.15mol)、マロン酸(17.9g、0.17mol)およびピペリジン(1.5ml、0.016mol)のピリジン80ml中の混合物を、5時間100℃で攪拌し次いで20分間還流し、これを室温まで冷却し、水(180ml)中に注ぎ、そして得られる混合物を濃HClを用いて酸性化した。生成した沈降物を濾過により採集し、減圧下で乾燥して3-(フラン-2-イル)-アクリル酸(16.8g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 12.44 (brs, 1H), 7.83 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.93(d, J = 3.3 Hz, 1H), 6.63(dd, J = 1.8, 3.3 Hz, 1H), 6.17 (d, J = 15.7 Hz, 1H)。
【0080】
b) 3-(フラン-2-イル)-アクリロイルアジド(3)
【化11】

【0081】
3-(フラン-2-イル)-アクリル酸(15.7g、0.11mol)およびEt3N(19ml、0.14mol)のTHF(300ml)中の溶液に、DPPA(27ml、0.13mmol)を0℃にて加え、4時間、室温にて攪拌し;その溶液を酢酸エチルとNaHCO3飽和水溶液の混合物中に注いだ。有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥し次いで濃縮した。蒸発中、沈降物が生成するので、それを採集し、MeOHを用いて洗浄し、減圧下で乾燥して3-(フラン-2-イル)-アクリロイルアジド(12.6g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.93(d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.59(d, J = 15.7 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 1.9, 3.4 Hz, 1H), 6.25(d, J = 15.7 Hz, 1H)。
【0082】
c) 5H-フロ[3,2-c]ピリジン-4-オン(4)
【化12】

【0083】
3-(フラン-2-イル)-アクリロイルアジド(12.6g)をトルエン100mlに溶解し、得られる溶液を120℃まで加熱し、そして30分間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、o-ジクロロベンゼン(100ml)および数個のヨウ素フレークを加え、そして得られる反応混合物を170℃まで加熱し、2時間攪拌した。その混合物を周囲温度まで冷却し、これにEt2O(100ml)を加えた。不溶の物質を濾過除去し、濾液をEt2O(100ml)、1N NaOH(100ml)および水(100ml)の混合物中に注いだ。対応する水層を採集し、これを2N HClにより酸性化し、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥し、濾過しそして真空で濃縮した。残留物をEt2Oから沈降させ、これを採集し、そして減圧下で乾燥して5H-フロ[3,2-c]ピリジン-4-オン(6.7g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 11.44(brs, 1H), 7.87(d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.29(d, J = 7.1 Hz, 1H), 6.93(dd, J = 2.1, 0.9 Hz,1H), 6.66 (dd, J = 0.8, 7.1 Hz, 1H)。
【0084】
d) 4-クロロ-フロ[3,2-c]ピリジン(5)
【化13】

【0085】
5H-フロ[3,2-c]ピリジン-4-オン(5.9g)をPOCl3(12ml)を用いて懸濁化し、反応混合物を3時間120℃にて攪拌した。POCl3を蒸発させた後、砕氷を加え、そして酢酸エチルおよびNaHCO3飽和水溶液の混合物中に注いだ。対応する有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥し次いで真空で濃縮した。得られる残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して4-クロロ-フロ[3,2-c]ピリジン(5.6g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.31(d, J = 5.8Hz, 1H), 8.26(d, J = 2.3Hz, 1H), 7.79(dd, J = 1.0, 5.6 Hz, 1H), 7.13(dd, J=1.0, 2.3 Hz, 1H)。
【0086】
e) 4-クロロ-3-ブロモ-フロ[3,2-c]ピリジン(6)
【化14】

【0087】
4-クロロ-フロ[3,2-c]ピリジン(4.2g、0.03mol)のCCl4(77ml)中の溶液にBr2(2.4ml、0.046mol)を0℃にて加え、得られる反応混合物を4時間室温にて攪拌した。得られる懸濁液を酢酸エチルと10%Na2SO3の混合物中に注いだ。対応する有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥しそして真空で濃縮した。粗残留物をTHF(100ml)に溶解し、そしてDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン)(5.6ml)を0℃にて加えた。得られる反応混合物を2時間、室温にて攪拌し、NaHCO3と酢酸エチル中に注いだ。有機相を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過しそして濃縮して乾燥した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(5.4g)を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3) ppm 8.32(d, J = 5.8 Hz,1H), 7.72(s, 1H), 7.44(d, J = 5.8 Hz, 1H), 7.26(s, 1H)。
【0088】
f) 4-アミノ-3-ブロモ-フロ[3,2-c]ピリジン(7)
【化15】

【0089】
3-ブロモ-4-クロロ-フロ[3,2-c]ピリジン(3.0g)のジオキサン40ml中の溶液に、28%アンモニア溶液(15ml)をオートクレーブ中で加え、そして油浴中に置いた。反応混合物を150℃まで加熱し、5日間150℃にて攪拌した。得られる混合物を酢酸エチルおよびブライン中に注いだ。有機相を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して3-ブロモ-フロ[3,2-c]ピリジン-4-イルアミン(1.3g)を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3) ppm 7.93(d, J = 6.1 Hz, 1H), 7.52(s, 1H), 6.87(d, J = 5.8 Hz, 1H). MS: m/z 213, 215(M+H)+
【0090】
g) 4-アミノ-3-(4-アミノフェニル)-フロ[3,2-c]ピリジン(I'a)
【化16】

【0091】
4-アミノ-3-ブロモ-フロ[3,2-c]ピリジン(7)(63mg、0.29mmol)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アニリン(84mg、0.38mmol)、Pd(PPh3)4(34mg、0.029mmol)および炭酸ナトリウム(0.74ml、1.5mmol)のDME 3ml中の混合物を14時間80℃で攪拌した。溶媒を除去し、得られる残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(55mg)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.82(d, J = 6.1 Hz, 1H), 7.77(s, 1H), 7.15(d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.89(d, J = 5.8 Hz, 1H), 6.69(d, J = 8.3 Hz, 2H), 5.49(s, 2H), 5.32(s, 2H). MS: m/z 226(M+H)+
【0092】
h) 4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-フロ[3,2-c]ピリジン(Ib)
【化17】

【0093】
4-アミノ-3-(4-アミノフェニル)-フロ[3,2-c]ピリジン(36mg、0.16mmol)のTHF 2ml中の溶液に、2-フルオロ-5-トリフルオロメチル-フェニルイソシアナート(25ul、0.17mmol)を加え、2時間0℃で攪拌した。混合物を次いで蒸発させ、粗生成物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物を固体(35mg)として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 9.46(s, 1H), 9.07(s, 1H), 8.70(d, J = 7.3, 2.0 Hz, 1H), 8.00(s, 1H), 7.93(d, J = 5.8 Hz, 1H), 7.69(d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.53(d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.60-7.56(m, 1H), 7.49-7.45(m, 1H), 5.60(s, 2H). MS: m/z 431(M+H)+
【0094】
i) 4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-ブロモ-フロ[3,2-c]ピリジン(Ic)
【化18】

【0095】
4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-フロ[3,2-c]ピリジン(710mg、1.65mmol)の-78℃に冷却したTHF中の溶液に、NBS(294mg、1.65mmol)を加え、そして反応混合物を0℃まで2時間にわたり加温するに任せた。得られる混合物を10%Na2SO3および酢酸エチル中に注ぎ、有機相を採集し、Na2SO4上で乾燥し、濾過しそして真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(347mg)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 9.41(s, 1H), 9.01(s, 1H), 8.64(dd, J=2.3, 7.3Hz, 1H), 8.09(s, 1H), 7.98(s, 1H), 7.64(d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.54-7.50(m, 1H), 7.48(d, J =8.6 Hz, 2H), 7.44-7.40(m, 1H), 5.75(s, 2H). MS: m/z 509, 511 (M+H)+
【0096】
j) 4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-(3-クロロフェニル)-フロ[3,2-c]ピリジン(Ia)
【化19】

【0097】
4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-ブロモ-フロ[3,2-c]ピリジン(30mg、0.059mmol)、Pd(PPh3)4(10mg、10mol%)、3-クロロフェニルボロン酸(13.8mg、0.089mmol)および2M Na2CO3水溶液(0.15ml、0.30mmol)のDME(4ml)中の混合物を14時間80℃で攪拌した。出発物質が残留したので、同じ量の上記試薬およびDMF(2ml)を加え、5時間100℃で攪拌した。得られる混合物を直接SCX(Varian、5g)に適用し、そして1N NH3を含むCHCl3およびMeOHを用いて溶出させ、溶出物を真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(9.8mg)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 9.44(s, 1H), 9.04(s, 1H), 8.64(dd, J = 2.0, 7.1Hz, 1H), 8.20(s, 1H), 8.08(s, 1H), 7.88(dd, J = 1.9Hz, 1H), 7.80(d, J=7.8Hz, 1H), 7.65(d, J = 8.6Hz, 2H), 7.54-7.49(m, 4H), 7.43-7.41(m, 2H), 5.78(m, 1H). MS: m/z 541, 543(M+H)+
【0098】
実施例2:4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-(3-スルファモイルフェニル)-フロ[3,2-c]ピリジン(Id)
【化20】

【0099】
実施例1jに記載と類似の方法において、表題化合物を、化合物(Ic)および3-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ベンゼンスルホンアミドから固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 9.51(s, 1H), 9.09(s, 1H), 8.63(dd, J = 2.1, 7.2 Hz, 1H), 8.29(dd, J = 1.6 Hz, 1H), 8.20(s, 1H), 8.09(s, 1H), 8.03 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.80(d, J = 7.8Hz, 1H), 7.71-7.65(m, 3H), 7.52-7.50(m, 3H), 7.43-7.39(m, 3H), 5.80(s, 2H), MS: m/z 586(M+H)+
【0100】
実施例3:4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-(3-ピリジル)-フロ[3,2-c]ピリジン(Ie)
【化21】

【0101】
実施例1jに記載と類似の方法において、表題化合物を、化合物(Ic)およびピリジン-3-ボロン酸1,3-プロパンジオール環状エステルから固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 9.46(s, 1H), 9.06(s, 1H), 9.02(d, J=2.3Hz, 1H), 8.63(dd, J = 2.1, 7.2 Hz, 1H), 8.56(dd, J =1.5, 4.8 Hz, 1H), 8.21-8.19(m, 2H), 8.07(s, 1H), 7.66(d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.54-7.49(m, 4H), 7.43-7.39(m, 1H), 5.79(s, 2H). MS: m/z 508 (M+H)+
【0102】
実施例4:4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-スルファモイルフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(If)
【化22】

【0103】
表題化合物を、4-ブロモ-チオフェン-2-カルバルデヒドからスキームBに示した実施例1を調製する類似の操作によって調製した。
【0104】
a) 3-(4-ブロモ-チオフェン-2-イル)-アクリル酸(8)
【化23】

【0105】
4-ブロモ-チオフェン-2-カルバルデヒド(10g、0.052mol)、マロン酸(6.5g、0.063mol)およびピペリジン(0.5ml)のピリジン(40ml)中の混合物を14時間100℃で攪拌し、これを室温に冷却し、そして水中に注ぎ、そして得られる混合物を濃HClを用いて酸性化した。生成した沈降物を濾過により採集し、これを、EtOH(50ml)および水(100ml)により懸濁化した。沈降物を濾過により採集し、減圧下で乾燥して3-(4-ブロモ-チオフェン-2-イル)-アクリル酸(14g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.79 (s, 1H), 7.67 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.56 (s, 1H), 6.26 (d, J = 15.9 Hz, 1H)。
【0106】
b) 3-(4-ブロモ-チオフェン-2-イル)-アクリロイルアジド(9)
【化24】

【0107】
3-(4-ブロモ-チオフェン-2-イル)-アクリル酸(14.0g、0.06mol)およびEt3N(10ml、0.07mol)のTHF(150ml)中の溶液に、DPPA(14ml、0.066mmol)を0℃にて加え、4時間室温にて攪拌し、酢酸エチルおよびNaHCO3飽和水溶液の混合物中に注いだ。有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥し次いで濃縮した。蒸発中に沈降物が生成するので、これをMeOH(75ml)および水(75ml)を用いて懸濁化した。沈降物を採集し、水を用いて洗浄し、そして減圧下で乾燥して3-(4-ブロモ-チオフェン-2-イル)-アクリロイルアジド(11.6g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.95 (s, 1H), 7.87 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 7.75 (s, 1H), 6.44(d, J = 15.7 Hz, 1H)。
【0108】
c) 3-ブロモ-5H-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-オン(10)
【化25】

【0109】
3-(4-ブロモ-チオフェン-2-イル)-アクリロイルアジド(6.0g)をトルエン(100ml)に溶解し、得られる溶液を120℃まで加熱し、そして30分間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、o-ジクロロベンゼン100mlおよび数個のヨウ素フレークを加え、得られる反応混合物を170℃まで加熱しそして2時間攪拌した。その混合物を周囲温度まで冷却した。生成した沈降物を濾過により採集し、EtOHを用いて洗浄し、そして減圧下で乾燥して3-ブロモ-5H-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-オン(2.6g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 11.49(s, 1H), 7.68(s, 1H), 7.28(dd, J = 6.3 Hz, 1H), 6.87(d, J = 7.1 Hz, 1H)。
【0110】
d) 3-ブロモ-4-クロロ-チエノ[3,2-c]ピリジン(11)
【化26】

【0111】
3-ブロモ-5H-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-オン(1.0g)およびPOCl3(3ml)を1.5時間120℃にて攪拌した。POCl3を蒸発させた後、その残留物に砕氷を加え、そして生成した沈降物を濾過により採集して3-ブロモ-4-クロロ-チエノ[3,2-c]ピリジン(1.1g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.31(d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.27-8.21 (m, 2H)。
【0112】
e) 4-アミノ-3-ブロモ-チエノ[3,2-c]ピリジン(12)
【化27】

【0113】
3-ブロモ-4-クロロ-チエノ[3,2-c]ピリジン(3.2g)のジオキサン(30ml)中の溶液に、28%アンモニア溶液(10ml)をオートクレーブ中で加え、そして油浴中に置いた。その反応混合物を150℃まで加熱し、4日間150℃にて攪拌した。得られる混合物を真空で濃縮し、その残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して3-ブロモ-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-イルアミン(1.7g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.84(d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.78(s, 1H), 7.27(d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.51(s, 2H). MS: m/z 229, 231(M+H)+
【0114】
f) 4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)チエノ[3,2-c]ピリジン(Ig)
【化28】

【0115】
4-アミノ-3-ブロモ-チエノ[3,2-c]ピリジン(12)(300mg、1.24mmol)、3-クロロ-4-フルオロ-ベンゼンボロン酸(432mg、2.48mmol)、Pd(PPh3)4(215mg、10mol%)および炭酸ナトリウム(3.1ml、6.0mmol)のDME 30ml中の混合物を、14時間80℃にて攪拌した。得られる混合物を直接、SCX(ベンゼンスルホン酸に基づく強陽イオン交換吸着剤:Varian、10g)に適用し、そして1N NH3を含むCHCl3およびMeOH中を用いて溶出した。溶出液を採集し、そして真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(295mg)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.58(d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.71(dd, J = 2.1, 7.2 Hz, 1H), 7.57(s, 1H), 7.54(dd, J = 9.1Hz, 1H), 7.47 (ddd, J=2.1, 4.8, 8.5Hz, 1H), 7.29(d. J = 5.8 Hz, 1H), 5.42(s, 2H). MS: m/z 279, 281 (M+H)+
【0116】
g) 4-アミノ-7-ブロモ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)チエノ[3,2-c]ピリジン(Ih)
【化29】

【0117】
0℃に冷却した4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)チエノ[3,2-c]ピリジン(240mg、0.86mmol)のTHF10ml中の溶液に、NBS(153mg、0.86mmol)を加え、そして反応混合物を1時間0℃にて攪拌した。得られる混合物を10%Na2SO3および酢酸エチル中に注ぎ、有機相を採集し、Na2SO4上で乾燥し、濾過しそして真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(333mg)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.97(s, 1H), 7.73(dd, J = 2.1, 7.2 Hz, 1H), 7.69(s, 1H), 7.55(dd, J = 8.8 Hz,1H), 7.48(ddd, J = 2.2, 4.7, 8.4 Hz, 1H), 5.66(s, 2H). MS: m/z 357, 359, 361(M+H)+
【0118】
h) 4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-スルファモイルフェニル)チエノ[3,2-c]ピリジン(If)
【化30】

【0119】
4-アミノ-7-ブロモ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)チエノ[3,2-c]ピリジン(40mg、0.112mmol)、Pd(PPh3)4(19mg、10mol%)、3-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ベンゼンスルホンアミド(36.8mg、0.224mmol)および2M Na2CO3水溶液(0.28ml、0.56mmol)のDME 2ml中の混合物を14時間80℃にて攪拌した。出発物質が残っているので、同じ量の上記試薬およびDMF(2ml)を加え、そして5時間100℃にて攪拌した。得られる混合物を直接、SCX(Varian、5g)に適用し、そして1N NH3を含むCHCl3およびMeOH中を用いて溶出し、採集し、そして溶出液を真空で濃縮した。その残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(9.8mg)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.12(dd, J = 1.8 Hz, 1H), 8.0 s, 1H), 7.91(ddd, J = 1.5, 1.5, 7.6 Hz, 1H), 7.85(ddd, J = 1.4, 1.4, 7.1 Hz, 1H), 7.75(dd, J = 7.8 Hz, 1H), 7.67(s, 1H), 7.57( dd, J = 9.0Hz, 1H), 7.51 (ddd, J = 2.2, 4.9, 8.5 Hz, 1H), 7.45(s, 2H), 5.66(s, 2H). MS: m/z 434(M+H)+
【0120】
実施例5:4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-アセトアミドフェニル)チエノ[3,2-c]ピリジン(Ij)
【化31】

【0121】
実施例4hに記載と類似の方法で、表題化合物を、化合物(Ih)および3-アセトアミドベンゼンボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.98 (dd, J = 1.6 Hz, 1H), 7.90(s, 1H), 7.59-7.57(m, 1H), 7.45(dd. J = 2.1, 7.2 Hz, 1H), 7.63(s, 1H), 7.56(dd, J = 8.8 Hz, 1H), 7.51(ddd, J = 2.1, 4.9, 8.5 Hz, 1H), 7.43( dd, J = 8.0 Hz, 1H), 7.32-7.30(m, 1H), 5.54(s, 2H), 2.01(s, 3H). MS: m/z 412, 414(M+H)+
【0122】
実施例6:4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-ピリジル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Ik)
【化32】

【0123】
実施例4hに記載と類似の方法で、表題化合物を、化合物(Ih)およびピリジン-3-ボロン酸1,3-プロパンジオール環状エステルから固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.91-8.87(m, 1H), 8.62(dd, J = 1.5, 4.8 Hz, 1H), 8.11-8.07(m, 1H), 7.99(s, 1H), 7.75(dd, J = 2.0, 7.1 Hz, 1H), 7.65(s, 1H), 7.59-7.54(m, 2H), 7.50(ddd, J = 2.2, 4.9, 8.4 Hz, 1H), 5.65(s, 2H). MS: m/z 356, 358 (M+H)+
【0124】
実施例7:4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-メタンスルホニルフェニル)チエノ-[3,2-c]ピリジン(Il)
【化33】

【0125】
実施例4hに記載と類似の方法で、表題化合物を、化合物(Ih)および3-(メタンスルホニル)フェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.19(dd, J = 1.8 Hz, 1H), 8.06-8.04(m, 2H), 7.96(ddd, J = 1.1, 1.3, 7.8 Hz, 1H), 7.81(dd, J =7.8 Hz, 1H), 7.74(dd, J = 2.1, 7.2 Hz, 1H), 7.66(s, 1H), 7.57(dd, J = 8.8 Hz, 1H), 7.50(ddd, J = 2.1, 4.8, 8.5 Hz, 1H), 5.69(s, 2H), 3.31(s, 3H). MS: m/z 433, 435(M+H)+
【0126】
実施例8:4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-シアノフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Im)
【化34】

【0127】
実施例4hに記載と類似の方法で、表題化合物を、化合物(Ih)および3-シアノフェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.23(dd, J = 1.8Hz, 1H), 8.02 (s, 1H), 8.00-7.98(m, 1H), 7.96-7.93(m, 1H), 7.75(dd, J = 2.1, 7.2 Hz,1H), 7.69(dd, J = 7.7 Hz, 1H), 7.65(s, 1H), 7.57(dd, J = 9.0 Hz,1H), 7.51(ddd, J = 2.1, 4.8, 8.5 Hz, 1H), 5.62(s, 2H), 2.66(s, 3H). MS: m/z 380, 382 (M+H)+
【0128】
実施例9:4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-アセチルフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(In)
【化35】

【0129】
実施例4hに記載と類似の方法で、表題化合物を、化合物(Ih)および3-アセチルフェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.23(dd, J = 1.8 Hz, 1H), 8.02(s, 1H), 8.00-7.98(m, 1H), 7.96-7.93(m, 1H), 7.75(d, J = 2.1, 7.2 Hz, 1H), 7.69(dd, J = 7.7 Hz, 1H), 7.65(s, 1H), 7.57(dd, J = 9.0 Hz, 1H), 7.51 (ddd, J = 2.1, 4.8, 8.5 Hz, 1H), 5.62(s, 2H), 2.66 (s, 3H). MS: m/z 397, 399(M+H)+
【0130】
実施例10:4-アミノ-3-(3-ヒドロキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Io)
【化36】

【0131】
実施例4fに記載と類似の方法で、表題化合物を、化合物(12)および3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノールから固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 9.85(s, 1H), 7.82(d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.45(s, 1H), 7.32(dd, J = 7.8 Hz, 1H), 7.27(d, J = 5.81 Hz, 1H), 6.90-6.80(m, 3H), 5.51(s, 2H). MS: m/z 243 (M+H)+
【0132】
実施例11:4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシンフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Ip)
【化37】

【0133】
表題化合物をスキームB'に示した操作によって調製した。
【0134】
a) 3-ブロモ-7-ヨード-5H-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-オン(13)
【化38】

【0135】
化合物10(実施例4(c)を参照)(1.9g、8.3mmol)とN-ヨードスクシミド(NIS、2.2g、49.9mmol)のDMF(25ml)およびTHF(20ml)中の混合物を、5時間40℃にて攪拌した。反応混合物を10%Na2SO3および酢酸エチル中に注いだ。不溶の生成物を濾過により採集し、酢酸エチルを用いて洗浄し、そして減圧下で乾燥して3-ブロモ-7-ヨード-5H-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-オン(990mg)を得た。濾液を採集し、Na2SO4上で乾燥し、濾過しそして真空で濃縮した。生成した沈降物をMeOHで洗浄してさらに3-ブロモ-7-ヨード-5H-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-オン(1.1g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 11.75(s, 1H), 7.79(s, 1H), 7.57(s, 1H)。
【0136】
b) 3-ブロモ-4-クロロ-7-ヨード-[3,2-c]ピリジン(14)
【化39】

【0137】
3-ブロモ-7-ヨード-5H-チエノ[3,2-c]ピリジン-4-オン(2.3g、6.46mmol)、ジメチルアニリン(1.6ml、12.9mmol)およびPOCl3(6.3ml、67.6mmol)の混合物を3時間120℃にて攪拌した。溶媒を蒸発させた後、その残留物に砕氷を加え、そして生成した沈降物を採集し、水を用いて洗浄し、そして減圧下で乾燥して3-ブロモ-4-クロロ-7-ヨード-[3,2-c]ピリジン(2.4g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.59(s, 1H), 8.33(s, 1H)。
【0138】
c) 4-アミノ-3-ブロモ-7-ヨード-チエノ[3,2-c]ピリジン(15)
【化40】

【0139】
3-ブロモ-4-クロロ-7-ヨード-[3,2-c]ピリジン(2.1g、5.6mmol)および28%アンモニア溶液(10ml)のジオキサン(20ml)中の混合物をオートクレーブ中で7日間150℃にて攪拌した。周囲温度に冷却した後、不溶の生成物を採集し、Et2Oを用いて洗浄し、そして減圧下で乾燥して4-アミノ-3-ブロモ-7-ヨード-[3,2-c]ピリジン(800mg)を得た。濾液を真空で濃縮し、生成した沈降物を採集し、メタノールを用いて洗浄し、そして減圧下で乾燥して4-アミノ-3-ブロモ-7-ヨード-[3,2-c]ピリジン(1.0g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.03(s, 1H), 7.89(s, 1H), 6.69(s, 2H). MS: m/z 355, 357(M+H)+
【0140】
d) 4-アミノ-3-ブロモ-7-(3,4,5-トリメトキシンフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(16)
【化41】

【0141】
4-アミノ-3-ブロモ-7-ヨード-[3,2-c]ピリジン(1.7g、4.85mmol)、Pd(PPh3)4(560mg、10mol%)、3,4,5-トリメトキシンベンゼンボロン酸(1.1g、5.34mmol)および2M炭酸水素ナトリウム(12ml、24.3mmol)のDME(30ml)中の混合物を14時間80℃で攪拌した。粗混合物を直接SCX(Varian、5g)に適用し、そして1N NH3を含むCHCl3およびMeOHを用いて溶出させた。溶出物を採集し、そして溶出物を真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して4-アミノ-3-ブロモ-7-(3,4,5-トリメトキシンフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(1.0g)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.97(s, 1H), 7.85(s, 1H), 6.89(s, 2H), 6.64(s, 2H), 3.83(s, 6H), 3.71(s, 3H). MS: m/z 395, 397(M+H)+
【0142】
e) 4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシンフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Ip)
【化42】

【0143】
4-アミノ-3-ブロモ-7-(3,4,5-トリメトキシンフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(30mg、0.076mmol)、Pd(PPh3)4(17mg、10mol%)、4-クロロベンゼンボロン酸(30mg、0.19mmol)および2M炭酸水素ナトリウム(0.19ml、0.38mmol)のDME(2ml)中の混合物を、14時間80℃で攪拌した。粗混合物を直接SCX(Varian、5g)に適用し、そして1N NH3を含むCHCl3およびMeOHを用いて溶出させた。溶出物を採集し、そして溶出物を真空で濃縮した。残留物をシリカゲルカラム上のクロマトグラフィにより精製して表題化合物(15.5mg)を得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.99(s, 1H), 7.60(d, J=8.6Hz, 2H), 7.58(s, 1H), 7.51(d, J=7.3Hz, 2H), 6.95((s, 2H), 5.47(s, 2H), 3.85(s, 6H), 3.73(s, 3H). MS: m/z 427, 429(M+H)+
【0144】
実施例12:4-アミノ-3-(3-ヒドロキシフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Ir)
【化43】

【0145】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノールから固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 9.82(s, 1H), 7.96(s, 1H), 7.51(s, 1H), 7.34(dd, J =7.8Hz, 1H), 6.95(s, 2H), 6.92-6.86(m, 2H), 6.83-6.82(m, 1H), 5.57(s, 2H), 3.85(s, 6H), 3.72(s, 3H). MS: m/z 409 (M+H)+
【0146】
実施例13:4-アミノ-3-(2,4-ジクロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Is)
【化44】

【0147】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および2,4-ジクロロフェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.98(s, 1H), 7.86(d, J=2.0Hz, 1H), 7.62(s, 1H), 7.60(dd, J=1.9, 8.2Hz, 1H), 7.56(d, J=8.3Hz, 1H), 6.95(s, 2H), 5.30(s, 2H), 3.86(s, 6H), 3.73(s, 3H). MS: m/z 461, 463(M+H)+
【0148】
実施例14:4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(It)
【化45】

【0149】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および3-クロロ-4-フルオロフェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.99(s, 1H), 7.73(dd, J=2.1, 7.2 Hz, 1H), 7.63(s, 1H), 7.57(dd, J=8.8Hz, 1H), 7.49(ddd, J=2.2, 4.7, 8.5Hz, 1H), 6.94(s, 2H), 5.52(s, 2H), 3.85(s, 6H), 3.72(s, 3H). MS: m/z 445, 447 (M+H)+
【0150】
実施例15:4-アミノ-3-(ベンゾ[1,3]-ジオキソール-5-イル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iu)
【化46】

【0151】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および3,4-メチレンジオキシフェニル)ボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.96(s, 1H), 7.49(s, 1H), 7.07(d, J=8.1Hz, 1H), 7.04(d, J=1.8Hz, 1H), 6.94-6.92(m, 3H), 6.13(s, 2H), 5.56(s, 2H), 3.85(s, 6H), 3.72(s, 3H). MS: m/z 437(M+H)+
【0152】
実施例16:4-アミノ-3-(2-ナフチル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iv)
【化47】

【0153】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および2-ナフタレンボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.10-8.02(m, 4H), 8.00(s, 1H), 7.65(s, 1H), 7.63-7.61(m, 3H), 6.98(s, 2H), 5.47(s, 2H), 3.87(s, 6H), 3.74(s, 3H). MS: m/z 443 (M+H)+
【0154】
実施例17:4-アミノ-3-(4-メトキシフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iw)
【化48】

【0155】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および4-メトキシフェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.96(s, 1H), 7.47(s, 1H), 7.41(d, J=8.8Hz, 2H), 7.10(d, J=8.8Hz, 2H), 6.95(s, 2H), 5.50(s, 2H), 3.85(s, 6H), 3.84(s, 3H), 3.72(s, 3H). MS: m/z 423 (M+H)+
【0156】
実施例18:4-アミノ-3-(3-ヒドロキシメチルフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Ix)
【化49】

【0157】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および3-(ヒドロキシメチル)ベンゼンボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.97 (s, 1H), 7.53-7.42(m, 4H), 7.36-7.33(m, 1H), 6.96(s, 2H), 5.49 (s, 2H), 5.36 (t, J=5.8Hz, 1H), 4.60(d, J= 5.6 Hz, 2H), 3.86(s, 6H), 3.73(s, 3H). MS: m/z 423(M+H)+
【0158】
実施例19:4-アミノ-3-(2,3-ジクロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iy)
【化50】

【0159】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および2,3-ジクロロフェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 7.98(s, 1H), 7.84-7.80(m, 1H), 7.65(s, 1H), 7.55-7.52(m, 2H), 6.96(s, 2H), 5.28(s, 2H), 3.86(s, 6H), 3.73(s, 3H). MS: m/z 461, 463(M+H)+
【0160】
実施例20:4-アミノ-3-(1H-インドール-5-イル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iaa)
【化51】

【0161】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および5-インドリルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 11.35(s, 1H), 7.95(s, 1H), 7.63(m, 1H), 7.55(d, J=8.3Hz, 1H), 7.48(dd, J=2.8Hz, 1H), 7.45(s, 1H), 7.16(dd, J=1.6, 8.2Hz, 1H), 6.97(s, 2H), 6.53-6.52(m, 1H), 5.49(s, 2H), 3.86(s, 6H), 3.73(s, 3H). MS: m/z 432(M+H)+
【0162】
実施例21:4-アミノ-3-(4-(シクロペンタンカルボニル-アミノ)-フェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iab)
【化52】

【0163】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)およびシクロペンタンカルボン酸[4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-フェニル]-アミドから固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 10.10(s, 1H), 7.96(s, 1H), 7.77(d, J=8.6Hz, 2H), 7.48(s, 1H), 7.40(d, J=8.6Hz, 2H), 6.95(s, 2H), 5.49(s, 2H), 3.85(s, 6H), 3.72(s, 3H), 2.85-2.78(m, 1H), 1.91-1.55(m, 8H). MS: m/z 504(M+H)+
【0164】
実施例22:4-アミノ-3-(2-メチル-ベンゾチアゾール-5-イル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iac)
【化53】

【0165】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および5-(5,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサボリナン-2-イル)-2-メチル-ベンゾチアゾールから固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.20(d, J=8.1Hz, 1H), 7.99(2H), 7.62(s, 1H), 7.50(dd, J=1.6, 8.2Hz, 1H), 6.97(s, 2H), 5.46(s, 2H), 3.86(s, 6H), 3.73(s, 3H), 2.85(s, 3H). MS: m/z 464(M+H)+
【0166】
実施例23:4-アミノ-3-(4-アセチルフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジン(Iad)
【化54】

【0167】
実施例11eに記載と類似の方法において、表題化合物を化合物(16)および4-アセチルフェニルボロン酸から固体として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) ppm 8.11(d, J=8.3Hz, 2H), 8.01(s, 1H), 7.65(d, J=8.3Hz, 2H), 7.64(s, 1H), 6.96(s, 2H), 5.49(s, 2H), 3.86(s, 6H), 3.73(s,3H), 2.66(s, 3H). MS: m/z 435(M+H)+
【0168】
本発明の有用性
以下の生物学的データは明らかに、本発明の化合物が、限定されるものでないが、癌およびアテローム性動脈硬化症を含む、Tie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される1種以上のチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性が介在する不適当な血管形成、血管新生、血管成熟または細胞運動性により引き起こされる疾患または症状を治療または予防するために有用であることを示す。
【0169】
生物学的データ
EphB4アッセイ
EphB4酵素アッセイは、シンチレーション近接アッセイ技術を用いて酵素活性を測定した。この方法は、γ-リン酸のATPからビオチン標識した合成ペプチド中のチロシン残基への移動を触媒する精製酵素の能力を測定する。EphB4酵素活性アッセイに用いたペプチドはビオチン-Ahx-MAHFENYEFFHAKKK-CONH2(配列番号1)であった。用いた酵素はGST-EphB4、すなわちバキュロウイルスに発現させたヒトEphB4(アミノ酸600-914、BR #21454)の細胞内ドメインのGSTタグ付き組換え体構築物であった。ペプチドのリン酸化は、次の操作により検出した:酵素前活性化については、7.4uM GST-EphB4を30分間室温にて50uM ATPおよび10mM MgCl2を含む30mM HEPESバッファー(pH7.4)とともにインキュベートした。前活性化したGST-EphB4を、次いで3時間室温にて96ウエルプレート中で6uMペプチド、1uM ATP、10mM MgCl2、0.1mg/ml BSA、5uCi/ml P33、1mM DTT、1mM CHAPS、5mM KClおよび23-25uM試験化合物を含む100mM HEPES(pH7.4)とともにインキュベートした。それぞれの反応を、0.1mgストレプトアビジンSPAビーズを含む100mM EDTA/1x PBS、pH 7.2を加えることにより停止した。シグナルはWallac Triluxシンチレーションカウンター(Wallac)を用いて測定した。活性のパーセント阻害は、ポジティブ(C1)およびネガティブ(C2)対照ウエルと比較し、100*(1-(U1-C2)/(C1-C2))を用いて計算した。試験化合物の濃度は、式、y=((Vmax*x)/(K+x))+Y2[式中、「K」はIC50と等しい]を用いて決定した。IC50値をpIC50値、すなわち、-log IC50(モル濃度)に変換した。いくつかの代表的化合物の結果を以下の表1に示す。
【表1】

【0170】
TIE-2酵素アッセイ
TIE-2酵素アッセイは、LANCE法(Wallac)およびGST-TIE2、すなわちバキュロウイルスに発現させたヒトTIE2(アミノ酸762-1104、GenBank受託番号#L06139)の細胞内ドメインのGSTタグ付き組換え体構築物を用いた。本方法は、γ-リン酸のATPからビオチン標識したビオチン標識した合成ペプチド、D1-15(ビオチン-C6-LEARLVAYEGWVAGKKKアミド)中のチロシン残基への移動を触媒する精製酵素の能力を測定した。このペプチドリン酸化は、次の操作により検出した:酵素前活性化については、GST-TIE2を30分間、室温にて2mM ATP、5mM MgCl2および12.5mM DTTを含む22.5mM HEPESバッファー(pH7.4)とともにインキュベートした。前活性化したGST-TIE2を30分間室温にて96ウエルプレート中で1uM D1-15 ペプチド、80uM ATP、10mM MgCl2、0.1mg/ml BSAおよび試験化合物(10mMストックを含むDMSOから希釈して、最終DMSO濃度は2.4%であった)を含む1mM HEPES(pH7.4)とともにインキュベートした。反応は、EDTA(最終濃度45mM)を加えて停止した。次いで、ストレプトアビジンが結合したAPC(アロフィコシアニン、Molecular Probe)およびユーロピウム標識した抗リン酸化チロシン抗体(Wallac)を、それぞれ17ug/ウエルおよび2.1ug/ウエルの最終濃度で加えた。APCシグナルはARVOマルチレベルカウンター(Wallac Berthold Japan)を用いて測定した。活性のパーセント阻害は、ブランク対照ウエルと比較して計算した。活性の50%を阻害する試験化合物の濃度(IC50)は非線型回帰(Levernberg-Marquardt)、y=Vmax(1-x/(K+x))+Y2[式中、「K」はIC50と等しい]を用いて内挿した。IC50値をpIC50値、すなわち、-log IC50(モル濃度で)に変換した。いくつかの代表的化合物の結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0171】
VEGFR-2酵素アッセイ
VEGF酵素アッセイは、LANCE法(Wallac)およびGST-VEGFR2、すなわちバキュロウイルスに発現させたヒトTIE2の細胞内ドメインのGSTタグ付き組換え体構築物を用いた。本方法は、γ-リン酸のATPからビオチン標識したビオチン標識した合成ペプチド、D1-15(ビオチン-アミノヘキシル-EEEEYFELVAKKKK-NH2、配列番号2)中のチロシン残基への移動を触媒する精製酵素の能力を測定した。このペプチドリン酸化は、次の操作により検出した:GST-VEGFR2を40-60分間、室温にて75uM ATP、5 mM MgCl2、0.1mM DTT、0.1mg/mL BSAおよび試験化合物(DMSO中の10mM ストックから所望の濃度に希釈した)を含む100mM HEPESバッファーとともにインキュベートした。反応は、EDTA(最終濃度50mM)を加えて停止した。次いで、ストレプトアビジンが結合したAPC(アロフィコシアニン、Molecular Probe)およびユーロピウム標識した抗リン酸化チロシン抗体(Wallac)を、それぞれ15nMおよび1nMの最終濃度で加えた。APCシグナルはARVOマルチレベルカウンター(Wallac Berthold Japan)を用いて測定した。活性のパーセント阻害は、ブランク対照ウエルと比較して計算した。活性の50%を阻害する試験化合物の濃度(IC50)を非線型回帰(Levernberg-Marquardt)、y=Vmax(1-x/(K+x))+Y2[式中、「K」はIC50と等しい]を用いて内挿した。IC50値をpIC50値、すなわち、-log IC50(モル濃度で)に変換した。いくつかの代表的化合物の結果を以下の表3に示す。
【表3】

【0172】
Src酵素アッセイ
アッセイ原理:
Src酵素アッセイは、均一時間分解蛍光(Homogeneous Time Resolved Fluorescence:HTRF)アッセイ技術を用いて酵素活性を測定した。HTRFは、ユーロピウム標識ホスホチロシン抗体(供与体)とストレプトアビジン(受容体)に結合したアロフィコシアニン(APC)との間の蛍光共鳴エネルギー移動に基づく。この方法は、γ-リン酸のATPからビオチン標識した合成ペプチド中のチロシン残基への移動を触媒する精製酵素の能力を測定する。Src酵素活性アッセイに用いたペプチドは、ビオチン-(6-アミノカプロン酸)-AAAQQIYGQI-NH2であった。用いた酵素はバキュロウイルスに発現させたN-85 Srcであり、第1球状ドメイン(アミノ酸86-536、BR# 455)に先行する最初の85個のアミノ酸を欠失したものであった。
【0173】
アッセイプロトコル:
酵素を前活性化するために、180μM N-85 Srcを、5mM ATPおよび50 mM MgCl2とともに40分間氷上でインキュベートした。次いで、前活性化した酵素(最終濃度0.4nM)を30分間室温にて、200nMペプチド、10μM ATP、0.05mg/ml MgCl2、および試験化合物を含む0.1M HEPES pH 7.5の入った98ウエルまたは384ウエルプレートのいずれかに入れてインキュベートした。それぞれの反応を最初に45mM EDTAを含む0.1M HEPES pH7.5を加えることにより停止し、次いでHTRF試薬を加えてシグナルを測定した。10分間室温にてインキュベーションした後、プレートを665nmにてWallac Victorリーダー上で時間遅れを伴って読み取った。活性のパーセント阻害は、ポジティブ(C1)およびネガティブ(C2、EDTA添加した)対照ウエルと比較し、100*(1-(U1-C2)/(C1-C2))を用いて計算した。試験化合物の濃度は、式、y=((Vmax*x)/(K+x))+Y2[式中、「K」はIC50と等しい]を用いて決定した。IC50値をpIC50値、すなわち、-log IC50(モル濃度)に変換した。いくつかの代表的化合物の結果を以下の表4に示す。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
Yは硫黄または酸素であり;
R1は、場合によりかつ独立して1〜3個のハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシメチル、-C(O)Q、-NH-C(O)NH-Q、-NHC(O)-Q、-NHSO2-Q、-C(O)NH-Q、-SO2NH-Q、(式中、Qは水素、C1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、アリール、またはアラルキルである)により置換されているフェニルであるか;またはR1は式:
【化2】

の基であり;そして
R2は、水素、ハロゲン、ピリジル、または場合によりかつ独立して1〜3個のハロゲン、シアノ、C1-6アルキルオキシ、-C(O)-Z、-C(O)NH-Z-SO2NH-Z、-NHC(O)-Z、-NHSO2-Z、-SO2-Z(式中、Zは水素またはC1-6アルキルである)により置換されているフェニルである]
で表される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体。
【請求項2】
哺乳動物中のTie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される1種以上のチロシンキナーゼを阻害する方法であって、上記哺乳動物に治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは生理学的に機能的な誘導体を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項3】
治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体および1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項4】
Tie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される1種以上のチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性から生じる不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性により引き起こされる疾患の、または不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性の症状の治療または予防に使用するための医薬の製造における、式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体の使用。
【請求項5】
癌およびアテローム性動脈硬化症の治療または予防に使用するめたの医薬の製造における式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体の使用。
【請求項6】
Tie-2、VEGFR-2、Src-c、およびEphB4タンパク質からなる群から選択される1種以上のチロシンキナーゼの不均衡または不適当な活性から生じる不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性により引き起こされる疾患、または不適当な血管形成、血管新生、血管成熟もしくは細胞運動性の症状を治療または予防する方法であって、;哺乳動物に治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含むものである上記方法。
【請求項7】
癌またはアテローム性動脈硬化症を治療または予防する方法であって;それを必要とする哺乳動物に治療上有効な量の式Iで表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは生理学的に機能的な誘導体ならびに1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項8】
4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-(3-クロロフェニル)-フロ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項9】
4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-フロ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項10】
4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-ブロモ-フロ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項11】
4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-(3-スルファモイルフェニル)-フロ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項12】
4-アミノ-3-(4-((2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)アミノカルボニルアミノ)フェニル)-7-(3-ピリジル)-フロ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項13】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-スルファモイルフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項14】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項15】
4-アミノ-7-ブロモ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項16】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-スルファモイルフェニル)チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項17】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-アセトアミドフェニル)チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項18】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-ピリジル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項19】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-メタンスルホニルフェニル)チエノ-[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項20】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-シアノフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項21】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-(3-アセチルフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項22】
4-アミノ-3-(3-ヒドロキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項23】
4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項24】
4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項25】
4-アミノ-3-(3-ヒドロキシフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項26】
4-アミノ-3-(2,4-ジクロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項27】
4-アミノ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項28】
4-アミノ-3-(ベンゾ[1,3]-ジオキソール-5-イル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項29】
4-アミノ-3-(2-ナフチル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項30】
4-アミノ-3-(4-メトキシフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項31】
4-アミノ-3-(3-ヒドロキシメチルフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項32】
4-アミノ-3-(2,3-ジクロロフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項33】
4-アミノ-3-(1H-インドール-5-イル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項34】
4-アミノ-3-(4-(シクロペンタンカルボニル-アミノ)-フェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項35】
4-アミノ-3-(2-メチル-ベンゾチアゾール-5-イル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。
【請求項36】
4-アミノ-3-(4-アセチルフェニル)-7-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-チエノ[3,2-c]ピリジンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iで表される化合物。

【公表番号】特表2006−528685(P2006−528685A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532540(P2006−532540)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/013668
【国際公開番号】WO2004/100947
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】