説明

新規化合物

新規なNH−置換された融合トリアゾルが、細菌酵素スタフィロコッカスアウレウスtRNAシンセターゼの阻害剤であり、そして細菌感染を治療することにおいて使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、メチオニルt−RNAシンセターゼ(MRS)の阻害剤である新規NH−置換された融合トリアゾル類、それらの製造方法及び抗菌剤としてのそれらの治療における用途に関する。
【0002】
t−RNAシンセターゼは蛋白質の生合成に関与して、その阻害が細胞成長の停止を導くと予測してよい。即ち、例えば、生物体シュードモナスフルオレッセンスにより生産される化合物ムピロシンは抗菌剤であり、スミスクラインビーチャムにより市販されている製品バクトロバン中の活性成分として使用される。ムピロシンはイソロイシルt−RNAシンセターゼの阻害剤であることが示された。各t−RNAシンセターゼは、薬剤の開発のための独立した標的を表す。細菌細胞から哺乳類細胞にわたり、選択性のt−RNAシンセターゼ阻害剤は、抗菌剤として使用される可能性を有するため、相当な治療上の関心事である。
【0003】
生物体、例えば、スタフィロコッカスアウレウス中のt−RNAシンセターゼ遺伝子の配列は最近決定され、例えば、欧州特許出願番号97300317.1(スミスクラインビーチャム、スタフィロコッカスアウレウスMRS)を参照されたく、それにより阻害剤の同定のプロセスを助ける。
【0004】
WO99/及びWO00/21949(スミスクラインビーチャム、本出願の優先日の後に公表された)は、メチオニルt−RNAシンセターゼの有力な阻害剤である2−(NH−又はO−置換された)キノロン類のクラスを記載する。
【0005】
我々は、メチオニルt−RNAシンセターゼの有力な阻害剤、即ち、NH−置換された融合トリアゾル類の、さらなるクラスの化合物を今発見した。
従って、本発明は、式(I)
【0006】
【化1】

(式中、
は、任意に置換されたアリルであるか又は任意に置換されたヘテロアリル環であり;
Xは、CH又はCHRであり、但し、Rは、C(1−6)アルキルであるか又はRのアリル又はヘテロアリル環のオルト位置に結合しており、任意に酸素又は窒素を環状原子として含む5から7員環を形成し;
Yは、C(1−3)アルキレンであるか又はC(4−6)シクロアルキレンであり;
,Z及びZは、各々独立にN又はCRから選択され、但し、Rは水素又はハロゲン、シアノ、(C1−6)アルキル、モノからパーフルオロ(C1−3)アルキル、(C3−7)シクロアルキル、(C2−6)アルケニル、(C1−6)アルコキシ、(C2−6)アルケノキシ、アリルC(1−6)アルコキシ、ハロ(C1−6)アルキル、ヒドロキシ、アミノ、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、カルボキシ、(C1−6)アルコキシカルボニル、(C1−6)アルケニルオキシカルボニル、(C1−6)アルコキシカルボニル(C1−6)アルキル、カルボキシ(C1−6)アルキル、(C1−6)アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ(C1−6)アルキルオキシ、(C1−6)アルコキシカルボニル(C1−6)アルコキシ、(C1−6)アルキルチオ、(C1−6)アルキルスルフィニル、(C1−6)アルキルスルフォニル、スルファモイル、モノ−又はジ−(C1−6)−アルキルスルファモイル、カルバモイル、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルカルバモイル、及びヘテロシシクリルから選択される置換基である)
の化合物;又は
その互変体、及び
その塩、好ましくは薬学上受容可能なその塩
を提供する。
【0007】
アリルがフェニル及びナフチルを含むとき、Rの代表的な例は、その各々が4までの置換基により任意に置換されていてよい。
そのような置換基の代表的な例は、C(1−6)アルキル、C(1−6)アルコキシ、C(1−6)アルキルチオ、ハロ、シアノ、アミノ、スルファモイル、フェニルカルボニル、アリル、及びベンジルオキシを含む。好ましくは、フェニル又はナフチルが、2つ又は3つの脂肪親和性置換基、例えばクロロ、ブロモ、ヨード、メチル、メトキシ、エトキシ、アリールオキシフェネチルオキシ又はトリフルオロメチルにより置換される。
【0008】
ヘテロアリルがピロリル、チエニル、フラニル、ピリジル、キノリニル、ベンゾフラニル、及びヨードリルを含むときのRの代表的な例は、その各々が3つまでの置換基により置換されてよい。好ましくは、ヘテロアリル環が、2つ又は3つの脂肪親和性置換基、例えばクロロ、ブロモ、ヨード、メチル、メトキシ又はトリフルオロメチルにより置換される。各置換基の代表的な例は、ハロを含む。
【0009】
のためのアリル及びヘテロアリル基の好ましい例は、フェニル、ヨードリル、及びチエニルを含む。
Xの代表的な例は、CHを含むか、又はRと共に、アリル環又はヘテロアリル環に融合させた5−7員環を形成し、環状原子として酸素又は窒素、例えばクロマン−4−イル及び1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イルを含み、式中、Rはフェニルである。
【0010】
Xの代表的な例は、ベンジル、クロマン−4−イル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル、インドール−7−イルメチル、及びチエン−2−イルメチルを含み、但し、アリル/ヘテロアリル環は任意に前で規定されたもののように置換してよい。好ましくは、RXは任意にベンジル、インドール−7−イルメチル又はチエン−2−イルメチルである。
【0011】
Yの代表的な例は、Cアルキレン鎖又は1,2−シクロペンチレン基を含む。好ましくは、YはCアルキレン鎖である。
好ましくは、Z,Z及びZのひとつだけがNであり、他の2つがCRである。好ましくは、ZがNであり、そしてZとZが各々CHである。好ましくは、トリアゾル環を含む融合したヘテロアリル環が1H−ピラゾロ[1,5b][1,2,4]トリアゾルである。
【0012】
塩は無機酸及び有機酸から形成させてよい。式(I)の化合物の薬学上受容可能な塩を形成してよい適当な無機酸及び有機酸の代表的な例は、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモイック酸(pamoic acid)、琥珀酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルフォン酸、エタンジスルフォン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルフォン酸、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、シクロヘキシルスルファミン酸、リン酸、及び硝酸を含む。
【0013】
本明細書にて用いられるとき、用語「アルキル」及び類似の用語、例えば「アルコキシ」は、全ての直鎖及び分枝したアイソマーを含む。その代表的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシルを含む。
【0014】
アルキル基のための好ましい置換基は、例えば、他に定義しない限り、ハロゲン、シアノ、アジド、ニトロ、カルボキシ、(C1−6)アルコキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルカルバモイル、スルフォ、スルファモイル、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルスルファモイル、アミノ、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルアミノアシルアミノ、ウレジド、(C1−6)アルコキシカルボニルアミノ、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルアミノ、アリル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、(C1−6)アルコキシ、アシルオキシ、オキソ、アシル、2−チエノイル、(C1−6)アルキルチオ、(C1−6)アルキルスルフィニル、(C1−6)アルキルスルフォニル、ヒドロキシイミノ、(C1−6)アルコキシイミノ、ヒドラジノ、ヒドラゾノ、ベンゾヒドロキシモイル、グアニジド、アミジノ及びイミノアルキルアミノを含む。
【0015】
本明細書にて使用されるとき、用語「アリル」は、他に定義しない限り、5まで、好ましくは3までの置換基により任意に置換されたフェニル又はナフチルを含む。
置換された場合、アリル基は3つまでの置換基を有してよい。アリル基のための好ましい置換基は、例えば、及び他に定義しない限り、ハロゲン、シアノ、(C1−6)アルキル、モノからパーフルオロ(C1−3)アルキル、(C3−7)シクロアルキル、(C2−6)アルケニル、(C1−6)アルコキシ、(C2−6)アルケノキシ、アリルC(1−6)アルコキシ、ハロ(C1−6)アルキル、ヒドロキシ、アミノ、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、カルボキシ、(C1−6)アルコキシカルボニル、(C1−6)アルケニルオキシカルボニル、(C1−6)アルコキシカルボニル(C1−6)アルキル、カルボキシ(C1−6)アルコキシカルボニル(C1−6)アルコキシ、(C1−6)アルキルチオ、(C1−6)アルキルスルフィニル、(C1−6)アルキルスルフォニル、スルファモイル、モノ−及びジ−(C1−6)−アルキルスルファモイル、カルバモイル、モノ−及びジ−(C1−6)アルキルカルバモイル、及びヘテロシクリルを含む。
【0016】
本明細書にて使用されるとき、用語「ヘテロアリル」は、酸素、窒素及び硫黄から選択される環中の4つまでのヘテロ原子を含む単一の環又は融合した環であり、そして任意に3つまでの置換基により置換されてよい。好ましくは、ヘテロアリル環は、4から7、好ましくは5から6の環状原子を含む。融合したヘテロアリル環系は、カルボキシル環を含んでよく、一つの複素環を含むことのみを必要とする。
【0017】
本明細書にて使用されるとき、用語「ヘテロシクリル」は、酸素、窒素及び硫黄から選択される環中の4つまでのヘテロ原子を含む芳香族又は非芳香族の単一の環又は融合した環であり、そして任意に3つまでの置換基により置換されてよい。適切には、複素環は、4から7、好ましくは5から6の環状原子を含む。融合した複素環系は、カルボキシル環を含んでよく、一つの複素環を含むことのみを必要とする。
【0018】
置換されている場合、ヘテロアリル又はヘテロシクリル基は3までの置換基を有してよい。好ましくは、そのような置換基は、アリル基並びにオキソに関して前で記載されたものを含む。
【0019】
本明細書にて使用されるとき、用語「ハロゲン」と「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素と、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を、それぞれ含む。
発明による化合物は、実質上純粋な形態、例えば、少なくとも50%純粋、適切には少なくとも60%純粋、有利には少なくとも75%純粋、好ましくは少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、特別には少なくとも98%にて提供されるのが適しており、全てのパーセンテージは重量/重量にて計算された。純粋ではないか又は純度が劣る発明の化合物は、例えば、薬学上の用途のために適した同じ化合物又は関連化合物(例えば、対応する誘導体)の、より純粋な形態の製造のために使用してよい。
【0020】
式(I)の好ましい化合物は、
2−[3−4,5−ジブロモ−3−メチルチエン−2−イルメチルアミノ)プロピルアミノ]−1H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾルを含む。
【0021】
式(I)の化合物は、式(II)
【0022】
【化2】

(式中、Y,Z,Z,及びZは前で定義されたとおりである)
の化合物を、
(a)XがCHである式(I)の化合物に関して、式(III)
【0023】
【化3】

のアルデヒド
(Rは前で定義されたとおりである)
と還元アルキル化条件にて反応させるか;
(b)XがC(1−6)アルキルで置換されたCHか又はR1とXが酸素又は窒素を任意に含む5−7員環により連結した式(I)の化合物に関して、式(IV)
【0024】
【化4】

のケトン
(R及びRは前で定義されたとおりである)
と還元アルキル化条件にて反応させる
ことにより製造してよい。
【0025】
適当な還元アルキル化条件とは、当業界でよく知られており、例えば、ソディウムトリアセトキシボロヒドリドの溶剤系、例えばDMF/酢酸中での使用又はソディウムシアノボロヒドリドのメタノール/酢酸中での使用を含む。アルデヒドによる還元アルキル化は、典型的には、室温において、1−16時間の間実施される。ケトンを用いた還元アルキル化は、典型的には、還流メタノール中で、16−40時間の間実施される。
【0026】
式(II)の化合物は、式(V)
【0027】
【化5】

(Z,Z,及びZは前で定義されたとおりである)
の対応する化合物から、
式(VI)
【0028】
【化6】

(Bocはベンジルオキシカルボニル)
の保護されたイソシアネートによる環化、
続くBoc保護基の除去により製造してよい。
【0029】
式(V)のトリアゾル化合物は、当業界でよく知られているか、又はそのような環系を製造するための標準の公知の方法を用いて類似させて製造することができる。
この発明の化合物は、グラム陰性及びグラム陽性生物体の両方に活性であり、ヘモフィルス、例えばヘモフィルスインフルエンザQ1;モラキセラ、例えばモラキセラカタルハリス1502;ストレプトコッカス、例えばストレプトコッカスピオゲネスCN10及びストレプトコッカスニューモニエR6;スタフィロコッカス、例えばスタフィロコッカスアウレウスオックスフォード;エシェリヒア、例えばエシェリヒアコリDC0,及びエンテロコッシ、例えばエンテロコッカスフェーカリスIを含む。さらに、この発明の化合物は、スタフィロコッカス生物体、例えばスタフィロコッカスアウレウス及びスタフィロコッカスのコアグラーゼ耐性株、例えば他の抗菌剤、例えばβ−ラクタム抗生物質、例えばメチシリン、マクロリデス;アミノグリコシド及びリンコサミドに耐性のスタフィロコッカスエピダミディスに対して活性である。本発明の化合物は、よって、MRSA,MRCNS及びMRSEの治療に有用である。本発明の化合物は、バンコマイシン耐性株を含むエンテロコッカスフェーカリスの株に対しても活性であり、よって、VRE生物体に付随した感染を治療するのに有用である。さらに、本発明の化合物はムピロシンに耐性のスタフィロコッカス生物体の治療に有用である。
【0030】
処置してよい細菌感染は、呼吸系感染、中耳炎、髄膜炎、心内幕炎、ヒトにおける皮膚感染及び柔組織感染、畜牛における乳房炎、動物、例えばブタ及びウシの呼吸器感染を含む。従って、さらなる側面において、本発明は、ヒト及び非ヒト動物において細菌感染を治療する方法を提供するが、当該方法は、本明細書にて定義したとおりの式(I)の化合物を含む薬学組成物を、そのような治療の必要なヒト又は非ヒト動物に投与することを含む。
【0031】
本発明は、式(I)の化合物を薬学上受容可能な担体又は賦形剤と共に含む薬学組成物を提供する。
本発明は、動物、特にヒト及び家畜動物において細菌感染を治療する方法も提供し、式(I)の化合物又は本発明の組成物をその必要のある患者に投与することを含む。
【0032】
発明は、さらに、細菌感染残り治療における使用のための医薬組成物の製造における式(I)の化合物の使用法を提供する。
発明の化合物及び組成物は、他の抗生物質を用いる場合に類似させて、ヒト又は獣医師の治療における使用のためのあらゆる便利な様式にて投与するために製剤化してよい。
【0033】
発明の化合物及び組成物は、あらゆる経路、例えば経口、局所又は非経口による投与のために製剤化してよい。組成物は、例えば、タブレット、カプセル、粉末、顆粒、飴錠剤、クリーム、シロップ又は液体製剤。例えば溶液又は懸濁液の形態で作成してよく、経口用途のため、又は注射又は注入により非経口投与のために滅菌形態にて、製剤化してよい。
【0034】
経口投与のためのタブレット及びカプセルは、ユニット用量形態であってよく、例えば結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカンゴム又はポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール又はシリカ;崩壊剤、例えばポテトのでんぷん;及び薬学上受容可能な湿潤剤、例えばソディウムラウリルスルフェートを含む慣用の賦形剤を含んでよい。タブレットは標準の薬学の実務においてよく知られた方法に従いコーティングしてよい。
【0035】
経口用液体調製物は、例えば、水性又は油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ又はエリキシルの形態であってよく、あるいは水又は他の適切な媒体で使用前に再構成するための乾燥製品として提示されてよい。そのような液体調製物は、慣用の添加剤、例えば懸濁剤、例えばソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は水素化された食用油;乳化剤、例えばレシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアカシア;非水性媒体(食用油を含んでよい)、例えばアーモンドオイル、油性エステル(例えば、グリセリン)、プロピレングリコール、又はエチルアルコール;保存ざい、例えば、メチル又はプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル又はソルビン酸;及び所望なら慣用の芳香剤及び発色剤を含んでよい。
【0036】
局所投与を意図した発明の組成物は、例えば、軟膏、クリーム、ローション、眼科用軟膏、眼科用ドロップ、耳用ドロップ、含浸させた包帯、及びエアロゾルの形態であってよく、適切な慣用の添加剤を含んでよく、保存剤、薬剤の浸透を助ける溶液、及び軟膏及びクリーム中の皮膚軟化薬を含む。そのような局所投与用製剤は、適合可能な慣用の担体、例えばクリーム又は軟膏基剤、及びローションにはエタノール又はオレイルアルコールを含んでもよい。そのような担体は、製剤の約1重量%から約98重量%を構成してよく;より通常には、それらが製剤の約80重量%までを構成することになる。
【0037】
発明による組成物は、座薬として製剤化してよく、慣用の座薬ベース、例えば、ココアバター又は他のグリセリドを含んでよい。
非経口投与を意図した発明による組成物は、慣用的に液体ユニット用量形態にしてよく、上記化合物と滅菌媒体、好ましくは水を利用して調製してよい。使用された媒体と濃度に依存して、上記化合物は媒体に懸濁されるか溶解してよい。調製溶液中では、化合物は、注射のための水に溶解され、適切なバイアル又はアンプルに充填される前にフィルター滅菌されて、次にシールされる。有利には、例えば局所麻酔剤、保存剤、及び緩衝剤を含む慣用の添加物を媒体中に溶解することができる。溶液の安定性を増加させるため、上記組成物はバイアル中に充填される前に凍結してよく、水を真空により除去してよい;結果の凍結乾燥粉末は次にバイアル中でシールされて、注射のための水の同封のバイアルを供給することにより使用前に液体を再生してよい。非経口懸濁液は実質上同じ様式にて調製してよいが、但し、溶解する代わりに化合物を媒体中に懸濁して、滅菌が濾過により達成できないことを除く。化合物は、代わりに、滅菌媒体中に懸濁される前にエチレンオキシドに暴露されることにより滅菌してよい。有利には、界面活性剤又は湿潤剤をそのような懸濁液に含ませて、化合物の均一な分散を促進する。
【0038】
発明による化合物又は組成物は、抗菌有効量にて患者に適切に投与してよい。
発明による化合物又は組成物は、投与法に依存して、発明による化合物を0.1重量%、好ましくは10から60重量%(組成物の全重量に基づく)を含んでよい。
【0039】
発明による化合物は、体重kgあたり1.0から50mgの毎日の用量にて患者に適切に投与してよい。成人のヒト(約70kgの体重の)に関しては、50から3000mg、例えば約1500mgの発明の化合物を毎日投与してよい。適切には、成人ヒトの用量は、5から20mg/kg/日である。しかしながら、より高いか又は低い用量を通常の臨床の実務に従い使用してよい。
【0040】
発明による組成物をユニット用量形態にて提示する場合、各ユニット用量は、25から1000mg,好ましくは50から500mgの発明の化合物を適切に含む。
以下の実施例は本発明を例示する。
還元性アミン化の一般法 メタノール(2ml)中のアミン(0.2mmol)(アミンがジヒドロクロリドとして存在したなら0.5mmolの酢酸ナトリウムを含む)の懸濁液に、メタノール(2ml)及び酢酸(0.033ml)中のアルデヒド(0.2mmol)を加えた。アルゴン下で10分間撹拌後に、MeOH(1ml)中のNaCNBH(24mg,0.4mmol)を加え、そして反応物を16時間撹拌した。反応混合物をMeOH(8ml)によりフラッシュした2gのVarian Bond Elute SCXカートリッジに適用した。当該カートリッジを次にシリカゲル上でクロマトグラフィーして、CHCl中の2−10%(9:1 MeOH/20M NH)を用いて溶出した。生成物を含むフラクションを混合し、そして減圧下で蒸発させることにより、白色の固形物として生成物を生じた。これを相当するジヒドロクロリドに変換するため、当該固形物をメタノール(0.4ml)中の1.0MのHClに溶解して、乾燥するまで溶液を蒸発させた。
【0041】
ポリマー支持されたシアノボロヒドリドを用いる別の方法も使用した。(ポリスチリルメチル)トリメチルアンモニウムシアノボロヒドリド(ノボバイオケム)(3.64mmol/g,100mg)を、ソディウムシアノボロヒドリドの代わりに用いた。反応物を、上で記載されたとおり、濾過、蒸発によりワークアップし、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行った。
中間体1−N−(1H−ピラゾール[1,5−b][1,2,4]トリアゾル−2−イル)プロパン−1,3−ジアミン
a)[3−(1H−ピラゾール[1,5−b][1,2,4]トリアゾル−2−イルアミノ)プロピル]カルバミン酸tert−ブチルエステル:1,5−ジアミノピラゾール(72mg;Synthesis 1986,71−74)、(3−イソチオシアネートプロピル)カルバミン酸tert−ブチルエステル(158mg)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(18mg),及び乾燥1,2−ジクロロエタンの混合物を、均一な溶液が得られるまで音波処理し、そして70℃において18時間放置した。溶剤を真空により除去し、そして残渣をカラムクロマトグラフィーに供して、チオウレア(80mgの黄色固形物:m/z(ESI)337(MNa,40%),313([M−H],51%)を生じた。このチオウレア(75mg)を、ジクロロメタン(2.5ml)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.13ml)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(5mg)を含むアセトニトリル(2ml)に溶解した。メタンスルフォニルクロリド(0.37ml)に、ジクロロメタンを加えて容量を10mlにして、この溶液を反応混合物に25℃において滴下し、15分後に0.1mlをぷらすし、1時間後に0.1mlをプラスした。さらに15分後に、結果の混合物を濃縮し、そして表題の化合物をカラムクロマトグラフィーにより単離した:黄色オイル(39mg),m/z(ESI)279([M−H]−,21%)。
b)N−(1H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾル−2−イル)プロパン−1,3−ジアミン:[3−(1H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾル−2−イルアミノ)プロピルカルバミン酸tert−ブチルエステルを、トリフルオロ酢酸(0.5ml)と30分間25℃において反応させた。揮発性物質を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーに供して、表題の化合物(22mg)を黄色のフィルムとして得た:m/z(ESI)179([M−H],100%)。
実施例1−2−[3−(3−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−7−イルメチルアミノ)プロピルアミノ]−1H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾルジヒドロクロリド
還元性アミン化の一般的手法に従い、3−クロロ−5−メトキシ−1Hインドール−7−カルバルデヒド(26mg)を中間体1(20mg)と反応させた。生成物をカラムクロロにより単離して、メタノール中の過剰なHClにより処理し、揮発性物質を蒸発させ、そして残渣をジクロロメタンにより粉砕することにより、表題の化合物(7mg)をオレンジの固形物として得た:m/z(d−MeOH中の溶液からのESI)372([M−H],41%),373([M+D−2H],100%)。
実施例2−2−[3−(4,5−ジブロモ−3−メチルチエン−2−イルメチルアミノ)プロピルアミノ]−1H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾルジヒドロクロリド
還元性アミン化のための一般的な手法に従い、4,5−ジブロモ−3−メチルチオフェン−2−カルバルデヒド(85mg)を中間体1(88mg)と反応させた。メタノール中の過剰なHClによる処理により、表題の化合物(15mg)を白色の固形物として得た:m/z(ESI MeOH)448([MH],100%)。
生物学上のデータ
1.酵素阻害(スタフィロコッカスアウレウスMRS)−アミノアシル化合アッセイ
本発明の化合物を、それらが酵素メチオニルtRNAシンセターゼ(MRS)を阻害する能力について、組換えスタフィロコッカスアウレウスMRSを用いて以下のとおりにアッセイした:
反応混合物(1mlあたり)
ストック 容量(ul) 最終濃度
100mM Tris/Cl,pH7.9 600 30mM
250mM KCl 75mM
125mM ATP 40 2.5mM
250mM MgCl 80 10mM
50mM DTT 80 2mM
0.5mM Met(S−35ホットとコールド)40 10uM
固形tRNA 4mg/ml 2mg/ml
(混合されたエシェリヒアコリMRE600)
O 160
10x阻害剤(0−100μM) 5μlをウエルあたり 0−10μM
20μlの適切に希釈された純粋酵素(阻害剤と予めインキュベートされた)を、25μlの反応混合物に10分間室温において添加することにより、反応を開始する。反応は、100μlの5%トリクロロ酢酸、10%グリセロールの添加により停止させる。TCA沈殿物を乾燥Unifilter GFCプレート上に、パッカードFiltermate Cell Harvesterを用いて回収する。フィルターを4x200μlの50%工業メチル化アルコールにより乾燥前に洗浄する。30μlのMicroscint 20を各ウエルに加え、そしてプレートをTopCount(パッカード96ウエルカウンター)上で計数する。
試薬
混合されたエシェリヒアコリMRE 600 tRNA及びATPをベーリンガーマンハイムから購入し、[35S]メチオニンはアマシャムから購入し、そして他の試薬はシグマから購入した。
【0042】
純粋な組換えスタフィロコッカスアウレウスMRS(欧州出願番号97300317.1、スミスクラインビーチャム)を標準の精製手法により得た。当該酵素を、10mMのTris/Cl,2mMのDTT pH7.9からなる希釈バッファーで希釈した。
結果
実施例1及び2はスタフィロコッカスアウレウスMRSに対して<10nMのIC50値を有する。全てが哺乳類酵素に関して選択性が高い(1μMまでラットのMRSの阻害はない)。
2.酵素阻害(ヘモフィルスインフルエンザMRS)−アミノアシル化アッセイ
本発明の化合物を、それらが酵素メチオニルtRNAシンセターゼ(MRS)を阻害する能力について、組換えヘモフィルスインフルエンザMRSを用いて以下のとおりにアッセイした:
反応混合物(1mlあたり)
ストック 容量(ul) 最終濃度
100mM Tris/Cl,pH7.9 600 30mM
250mM KCl 75mM
125mM ATP 40 2.5mM
250mM MgCl 80 10mM
50mM DTT 80 2mM
1mM Met(S−35ホットとコールド) 20 10uM
固形tRNA 4mg/ml 2mg/ml
(混合されたエシェリヒアコリMRE600)
O 180
10x阻害剤(0−100μM) 5μlをウエルあたり 0−10μM
20μlの適切に希釈された純粋酵素(阻害剤と予めインキュベートされた)を、25μlの反応混合物に10分間室温において添加することにより、反応を開始する。反応は、ホスホジエステラーゼ(PDE)SPAビーズ(0.833mg/ml)を含む150μlの167mMクエン酸ナトリウム、pH2.15の添加により停止させる。放射性標識された生成物のビーズへの結合は、トリチウムからの放射がビーズ内の閃光を引き起こすのに十分なようにするのに十分近接してアイソトープを連れてくる。あらゆる未結合の放射性標識は、このエネルギー転移を可能にするように十分に閃光に近接しないので、シグナルは生じない。反応停止後に、プレート2500rpmにて5分間Mistral 3000Eプレート遠心分離機中で回転させる(か又は1時間放置する)。当該アッセイは96ウエルのOptiplate(パッカード)中で実施する。プレートをTopCount(パッカード96ウエルカウンター)上で計数する。
試薬
混合されたエシェリヒアコリMRE 600 tRNA及びATPをベーリンガーマンハイムから購入し、[35S]メチオニン及びホスホジエステラーゼシンチレーション近接(SPA)ビーズはアマシャムファルマシアバイオテックから購入し、そして他の試薬はシグマから購入した。
3.抗菌活性
本発明の化合物を、病理生物体(スタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスニューモニエ、エンテロコッカスフェーカリス、ヘモフィルスインフルエンザ及びモラキセラカタルハリスの株)のレンジに対する抗菌活性に関して、溶解性を助けるためにシクロデキストリンの包含により修飾された標準MICアッセイにおいてアッセイした。
【0043】
実施例1は、生物体スタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスニューモニエ、及びモラキセラカタルハリス、及びエンテロコッカスフェーカリスのいくつかの株に対して<32μg/mlのMICを有した。
【0044】
実施例2は、ヘモフィルスインフルエンザに対しても活性であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、式(I)
【化1】

(式中、
は、任意に置換されたアリルであるか又は任意に置換されたヘテロアリル環であり;
Xは、CH又はCHRであり、但し、Rは、C(1−6)アルキルであるか又はRのアリル又はヘテロアリル環のオルト位置に結合しており、任意に酸素又は窒素を環状原子として含む5から7員環を形成し;
Yは、C(1−3)アルキレンであるか又はC(4−6)シクロアルキレンであり;
,Z及びZは、各々独立にN又はCRから選択され、但し、Rは水素又はハロゲン、シアノ、(C1−6)アルキル、モノからパーフルオロ(C1−3)アルキル、(C3−7)シクロアルキル、(C2−6)アルケニル、(C1−6)アルコキシ、(C2−6)アルケノキシ、アリルC(1−6)アルコキシ、ハロ(C1−6)アルキル、ヒドロキシ、アミノ、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、カルボキシ、(C1−6)アルコキシカルボニル、(C1−6)アルケニルオキシカルボニル、(C1−6)アルコキシカルボニル(C1−6)アルキル、カルボキシ(C1−6)アルキル、(C1−6)アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ(C1−6)アルキルオキシ、(C1−6)アルコキシカルボニル(C1−6)アルコキシ、(C1−6)アルキルチオ、(C1−6)アルキルスルフィニル、(C1−6)アルキルスルフォニル、スルファモイル、モノ−又はジ−(C1−6)−アルキルスルファモイル、カルバモイル、モノ−又はジ−(C1−6)アルキルカルバモイル、及びヘテロシシクリルから選択される置換基である)
の化合物;又は
その互変体、及び
その塩、好ましくは薬学上受容可能なその塩。
【請求項2】
アリルがフェニル及びナフチルを含むとき、Rの代表的な例は、その各々が4までの置換基により任意に置換されていてよいか;又はヘテロアリルがピロリル、チエニル、フラニル、ピリジル、キノリニル、ベンゾフラニル、及びヨードリルを含むとき、その各々が3つまでの置換基により置換されてよいRである、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
のためのアリル及びヘテロアリル基がそれぞれフェニル、ヨードリル、及びチエニルである、請求項1又は2記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
XがCHであるか、又はRと共に、環状原子として酸素又は窒素を含むアリル環又はヘテロアリル環に融合させた5−7員環を形成する、請求項1乃至3の何れか1項の式(I)の化合物。
【請求項5】
Xが、ベンジル、クロマン−4−イル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル、インドール−7−イルメチル、及びチエン−2−イルメチルを含み、但し、アリル/ヘテロアリル環は任意に置換されてよい、請求項1乃至4の何れか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
YがCアルキレン鎖である、請求項1乃至5の何れか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
,Z及びZのひとつだけがNであり、他の2つがCRである、請求項1乃至6のいずれか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
がNHであり、そしてZとZが各々CHである、請求項1乃至7の何れか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
抗菌有効量の請求項1記載の式(I)の物質又は化合物を、薬学上受容可能な担体又は賦形剤と共に含む、薬学組成物。
【請求項10】
治療における使用のための、式(I)の化合物。
【請求項11】
細菌感染の処置における使用のための、式(I)の化合物。
【請求項12】
細菌感染の処置における使用のための医薬の製造における、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
式(II)
【化2】

(式中、Y,Z,Z,及びZは前で定義されたとおりである)
の化合物を、
(a)XがCHである式(I)の化合物に関して、式(III)
【化3】

のアルデヒド
(Rは前で定義されたとおりである)
と還元アルキル化条件にて反応させるか;
(b)XがC(1−6)アルキルで置換されたCHか又はR1とXが酸素又は窒素を任意に含む5−7員環により連結した式(I)の化合物に関して、式(IV)
【化4】

のケトン
(R及びRは前で定義されたとおりである)
と還元アルキル化条件にて反応させる
ことにより請求項1記載の式(I)の化合物を製造する方法。

【公表番号】特表2007−525417(P2007−525417A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503282(P2006−503282)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/003040
【国際公開番号】WO2004/069196
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(502354959)レプリダイン・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】