説明

新規塩III

本発明は、N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物、該塩または溶媒和物を含む医薬組成物および治療における該塩または溶媒和物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジン誘導体の塩、それを含む医薬組成物および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン受容体1(CCR1)は種々の自己免疫性、炎症性、増殖性、過増殖性および免疫学が仲介する疾患、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症およびリウマチ性関節炎に冒された組織において高度に発現される。故に、本発明の塩での、例えば細胞活性化および移動によるCCR1仲介事象の阻害は、このような状態の処置に有効であることが期待される。
【0003】
医薬製剤の製造において、活性化合物が、商業的に価値ある製造法を得るために簡便に取り扱え、そして処理できる形であることが、重要である。これに関連して、活性化合物の化学安定性および物理安定性は重要な因子である。活性化合物、およびそれを含む製剤は、活性成分の物理化学的特性(例えば化学組成、密度、吸湿性および溶解性)に著しい変化を示すことなく、相当な期間にわたり実際に貯蔵できなければならない。
【0004】
さらに、活性化合物を、例えばTurbuhaler(登録商標)デバイスのような乾燥粉末吸入器を介した、肺投与用の製剤に包含すべきとき、活性化合物が良好な流動毒性を有する粉末を作成するために容易に微粉化でき、そして非常に微細な結晶粒子フラクション(すなわち活性化合物粒子が、10μm(マイクロメーター)未満の空気動力学的中央粒子径を有するフラクション)を含むことが望まれる。このようなフラクションは肺の奥まで送達されることができ、活性化合物の速く増加した吸収に至る。
【0005】
国際特許出願公開番号WO03/051839は、CCR1アンタゴニストとして活性を有するある種のピペリジニル誘導体を一般的に、そして、特に、化合物4−({(2S)−3−[2−(アセチルアミノ)−5−ヒドロキシフェノキシ]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル}アンモニオ)−1−(4−クロロベンジル)ピペリジンおよび薬学的に許容されるその塩または溶媒和物を開示する。該出願に具体的に開示されているこの化合物の塩は、二トリフルオロ酢酸塩であり、それは本質的に無定形であり、そのため肺投与用の乾燥粉末製剤に使用するのに適さない。
【発明の開示】
【0006】
本発明により、肺投与用乾燥粉末製剤に製剤できる良好な物理化学的特性を有する化合物4−({(2S)−3−[2−(アセチルアミノ)−5−ヒドロキシフェノキシ]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル}アンモニオ)−1−(4−クロロベンジル)ピペリジンの塩を製造できることが驚くべきことに判明した。
【0007】
4−({(2S)−3−[2−(アセチルアミノ)−5−ヒドロキシフェノキシ]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル}アンモニオ)−1−(4−クロロベンジル)ピペリジンの構造式を以下に示す:
【化1】

【0008】
故に、本発明によって、4−({(2S)−3−[2−(アセチルアミノ)−5−ヒドロキシフェノキシ]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル}アンモニオ)−1−(4−クロロベンジル)ピペリジンのヘミフマル酸塩(以後N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩、“本ヘミフマル酸塩”と呼ぶ)を提供する。
【0009】
本発明はまた本ヘミフマル酸塩の溶媒和物(水和物を含む)も提供する。しかしながら、本ヘミフマル酸塩は好ましくは無水であり、そして好ましくは溶媒和されていない形である。
【0010】
本発明の一つの態様において、本ヘミフマル酸塩またはその溶媒和物は結晶特性を有し、好ましくは少なくとも50%結晶性、より好ましくは少なくとも60%結晶性、さらに好ましくは少なくとも70%結晶性および最も好ましくは少なくとも80%結晶性である。結晶性は通常のX線回折法により概算できる。
【0011】
本発明の他の態様において、本ヘミフマル酸塩またはその溶媒和物は50%、60%、70%、80%または90%から95%、96%、97%、98%、99%または100%結晶性である。
【0012】
本ヘミフマル酸塩は、少なくとも以下の特徴的X線粉末回折(XRPD)ピークを示す(2θ度で示す)(誤差範囲は、United States Pharmacopeia general chapter on X-ray diffraction(USP941)と一致する − United States Pharmacopeia Convention. X-Ray Diffraction, General Test <941>. United States Pharmacopeia, 25th ed. Rockville, MD: United States Pharmacopeial Convention; 2002:2088-2089参照):
(1) 6.2、10.7および12.5、または
(2) 6.2、10.7および18.8、または
(3) 6.2、10.7および18.0、または
(4) 6.2、10.7、12.5、18.0および18.8、または
(5) 6.2、10.7、12.5、18.0、18.8、19.7および19.8。
【0013】
本ヘミフマル酸塩は以下の工程を含む方法により製造できる:
(i) N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドとフマル酸を、好ましくは撹拌しながら、適当な溶媒または溶媒混合物(例えば極性溶媒のような有機溶媒、その例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトンおよび酢酸エチルを含む)の存在下で接触させることにより反応混合物を形成し、
(ii) N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩の沈殿を得て、そして
(iii) 沈殿を反応混合物から分離する。
【0014】
本発明の化合物は、CCR1またはMIP−1αケモカイン受容体活性のモジュレーターとして有用であり[N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミド二トリフルオロ酢酸塩は、本明細書の実施例部分に記載のようなヒトCCR1結合アッセイで50nM以下のIC50を有する]、そして自己免疫性、炎症性、増殖性および過増殖性疾患および免疫学が仲介する疾患の処置に、ヒトを含む哺乳動物に投与できる。
【0015】
これらの状態の例は以下の通りである:
1. 呼吸器:以下を含む気道の閉塞性疾患:間欠的および永続性の両方、および全ての重症度、および気道過敏反応性の他の理由を含む、気管支、アレルギー性、内因性、外因性、運動誘発、薬剤誘発(アスピリンおよびNSAID誘発を含む)喘息、慢性または難治性(inverterate)喘息(例えば遅発性喘息および気道過剰応答)、および粉塵誘発喘息;不可逆性COPDのような慢性閉塞性肺疾患(COPD);感染性および好酸球性気管支炎を含む気管支炎;気腫;気管支拡張症;嚢胞性線維症;サルコイドーシス;農夫肺および関連疾患;過敏性肺炎;原因不明線維化肺胞炎、特発性間質性肺炎、抗新生物治療および結核およびアスペルギルス症および他の真菌感染を含む慢性感染に合併する線維症を含む肺線維症;肺移植の合併症;肺脈管構造の脈管および血栓障害、および肺高血圧;気道の炎症性および分泌性状態の関連する慢性咳および医原性咳の処置を含む鎮咳活性;乾酪性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎、乾燥性鼻炎および薬物性鼻炎、および血管運動神経性鼻炎を含む急性、アレルギー性、アトピー性(atropic)鼻炎および慢性鼻炎;クループ性、線維素性および偽膜性鼻炎および腺病性鼻炎を含む膜性鼻炎;神経性鼻炎(枯草熱)を含む通年性および季節性(アレルギー性)鼻炎;鼻のポリープ症;一般的な風邪、および呼吸器多核体ウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス(SARSを含む)およびアデノウイルスによる感染を含む急性ウイルス感染;
【0016】
2. 骨および関節:原発性および、例えば、先天的股関節異形成症に二次的な両方の骨関節症/骨関節症に関連するまたはそれを含む関節症(arthritides);頸部および腰椎症、および背下部および首痛;リウマチ性関節炎およびスチル病;強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、活動性関節炎および未分化脊椎関節症(spondarthropathy)を含む血清反応陰性脊椎関節症;敗血症性関節炎およびポット病およびポンセ病を含む結核のような他の感染関連関節症および骨障害;尿酸塩痛風、ピロリン酸カルシウム沈着疾患、およびカルシウムアパタイト関連腱、嚢状および滑膜炎症を含む急性および慢性結晶誘発滑膜炎;ベーチェット病;原発性および二次性シェーグレン症候群;全身性硬化症および限局型強皮症;全身性エリテマトーデス、混合型結合組織疾患、および未分化結合組織疾患;皮膚筋炎および多発性筋炎を含む炎症性ミオパシー;リウマチ性多発筋痛症;どのような関節分布であれ特発性炎症性関節症(arthritides)を含む若年性関節炎および関連症候群、およびリウマチ性熱およびその全身合併症;巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、結節性多発性動脈炎、顕微鏡的多発動脈炎、およびウイルス感染、過敏症反応、クリオグロブリン、およびパラタンパク質が関連する脈管炎を含む脈管炎;背下部痛;家族性地中海熱、マックル・ウェルズ症候群、および家族性アイルランド熱(Familial Hibernian Fever)、キクチ病;薬剤誘発関節痛、腱炎(tendonititides)、およびミオパシー;およびライター病;
【0017】
3. 傷害[例えば運動傷害]または疾患による筋骨格障害の疼痛および結合組織リモデリング:関節炎(arthitides)(例えばリウマチ性関節炎、骨関節症、痛風または結晶関節症)、他の関節疾患(例えば椎間板変性または側頭下顎関節変性)、骨リモデリング疾患(例えば骨粗鬆症、パジェット病または骨壊死)、多発性軟骨炎、強皮症、混合型結合組織障害、脊椎関節症または歯周病(例えば歯周炎);
【0018】
4. 皮膚:乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎または他の湿疹性皮膚炎、および遅延型過敏症反応;植物および光皮膚炎;脂漏性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、扁平苔癬、硬化性萎縮性苔癬、壊疽性膿皮症、皮膚サルコイド、円板状エリテマトーデス、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症、男性型禿頭、スウィート症候群、ウェーバー・クリスチャン症候群、多形性紅斑;感染性および非感染性両方の蜂巣炎;脂肪織炎;皮膚リンパ腫、非黒色腫皮膚癌および他の形成異常病巣;固定薬疹を含む薬剤誘発障害;水疱性天疱瘡;ブドウ膜炎および春季結膜炎;
【0019】
5. 眼:眼瞼炎;通年性および春季アレルギー性結膜炎を含む結膜炎;虹彩炎;前部および後部ブドウ膜炎;脈絡膜炎;自己免疫性;網膜に影響する変性または炎症性障害;交感神経性眼炎を含む眼炎;サルコイドーシス;ウイルス、真菌および細菌を含む感染;
【0020】
6. 胃腸管:舌炎、歯肉炎、歯周炎;逆流性を含む食道炎;好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎、直腸炎、肛門掻痒症を含む大腸炎;セリアック病、過敏性腸症候群、および消化管の遠隔部位で発現する食物関連アレルギー症状(例えば偏頭痛、鼻炎または湿疹);
【0021】
7. 腹部:自己免疫性、アルコール性およびウイルス性を含む肝炎;肝臓の線維症および硬変;胆嚢炎;急性および慢性両方の膵炎;
【0022】
8. 尿生殖器:間質性および糸球体腎炎を含む腎炎;ネフローゼ症候群;急性および慢性(間質性)膀胱炎およびハンナー潰瘍を含む膀胱炎;急性および慢性尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎、卵巣炎および卵管炎;外陰部腟炎;ペイロニー病;勃起不全(男女両方);
【0023】
9. 同種移植片拒絶反応:例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚または角膜移植後のまたは輸血後の急性および慢性拒絶反応;または慢性移植片対宿主病;
【0024】
10. CNS:アルツハイマー病およびCJDおよびnvCJDを含む他の認知症となる障害;アミロイド症;多発性硬化症および他の脱髄症候群;大脳アテローム性動脈硬化症および脈管炎;側頭動脈炎;重症筋無力症;内臓痛、頭痛、偏頭痛、三叉神経痛、非定型顔面痛、関節および骨痛、癌および腫瘍侵襲由来の疼痛、糖尿病性、ヘルペス後およびHIV関連ニューロパシーを含む神経障害性疼痛症候群を含む急性および慢性疼痛(中枢または末梢の起源にかかわりなく、急性、間欠性または持続性の何れかを問わず);ニューロサルコイドーシス;悪性、感染性または自己免疫性過程の中枢および末梢神経系合併症;
【0025】
11. 橋本甲状腺炎、グレーブス病、アジソン病、真性糖尿病、特発性血小板減少性紫斑病、好酸球性筋膜炎、高IgE症候群、抗リン脂質抗体症候群を含む他の自己免疫およびアレルギー性障害;
【0026】
12. 炎症性または免疫学的要素を含む他の障害;後天性免疫不全症候群(AIDS)、ハンセン病、セザリー症候群、および新生物随伴症候群;全身性エリテマトーデス;らい腫性(lepromatosous)ハンセン病;I型糖尿病、ネフローゼ症候群を含む;
【0027】
13. 心血管:環状および末梢循環に影響するアテローム性動脈硬化症;心膜炎;心筋サルコイドを含む心筋炎、炎症性および自己免疫心筋症;虚血再灌流傷害;感染性(例えば梅毒性)を含む心内膜炎、弁膜炎、および大動脈炎;脈管炎;深部静脈血栓症および静脈瘤の合併症を含む、静脈炎および血栓症を含む近位および末梢静脈の障害;
【0028】
14. 腫瘍学:前立腺、乳房、肺(例えば非小細胞性肺癌(NSCLC)、卵巣、膵臓、腸および結腸、胃、皮膚および脳の腫瘍、および扁平上皮肉腫、および骨髄(白血病を含む)およびリンパ増殖系に影響する悪性腫瘍、例えばホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含む一般的癌の処置;転移性疾患および腫瘍再発、および新生物随伴症候群の予防および処置を含む;および
【0029】
15. 胃腸管:セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、判定不能大腸炎、過敏性腸障害、過敏性腸症候群、非炎症性下痢、消化管の遠隔部位で発現する食物関連アレルギー症状、例えば、偏頭痛、鼻炎および湿疹。
【0030】
故に、本発明は、治療において使用するためのN−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物を提供する。
【0031】
さらなる局面において、本発明は治療に使用するための薬剤の製造におけるN−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物の使用を提供する。
【0032】
本明細書の文脈の範囲内で、用語“治療”はまたそれに反する具体的指示がない限り、“予防”も含む。用語“治療的”および“治療的に”はそれにしたがい解釈すべきである。
【0033】
予防は問題の疾患または状態の以前の事象があるか、または他の理由で高い危険性にあると見なされるヒトの処置に特に関連することが期待される。特定の疾患または状態を発症する危険のあるヒトは、一般に、本疾患または状態の家族歴を有する、または遺伝子試験もしくはスクリーニングで本疾患または状態の発症に特に感受性があると同定されているヒトを含む
【0034】
本発明はまた炎症性疾患に罹患しているまたは該疾患の危険性のある患者における該疾患の処置方法であって、該患者に治療的有効量のN−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【0035】
本発明はさらに気道疾患、例えば可逆性閉塞性気道疾患に罹患しているまたは該疾患の危険性のある患者における該疾患の処置方法であって、該患者に治療的有効量のN−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。
【0036】
上記治療的使用のために、投与される投与量はもちろん、投与の形態、望む処置および適応症に依存して変化するが、典型的に0.001mg/kgから30mg/kgの範囲である。
【0037】
本発明のヘミフマル酸塩またはその溶媒和物はそれ自体で使用できるが、一般的に、本ヘミフマル酸塩またはその溶媒和物(活性成分)が薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と結合している医薬組成物の形態で投与する。適当な医薬製剤の選択および製造のための慣用の方法は、例えば、“Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs”, M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。
【0038】
投与形態に依存して、本医薬組成物は0.05から99%w(重量パーセント)、より好ましくは0.05から80%w、さらに好ましくは0.10から70%w、およびなお好ましくは0.10から50%wの活性成分を含み、全重量パーセンテージは総組成物に基づく。
【0039】
本発明はまたN−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0040】
本発明はさらにN−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物と薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を混合することを含む、本発明の医薬組成物の製造方法を提供する。
【0041】
本医薬組成物は局所的に(例えば皮膚または肺および/または気道に)、例えば、クリーム、溶液、懸濁液、ヘプタフルオロアルカン(HFA)エアロゾルおよび乾燥粉末製剤の形で、例えば、Turbuhaler(登録商標)として既知の吸入器中の製剤の形で;または全身的に、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、粉末または顆粒の形での経口投与により;または溶液または懸濁液の形での非経腸投与により;または皮下投与により;または坐薬の形での直腸投与により;または経皮的に投与できる。
【0042】
本発明の一つの態様において、本発明のヘミフマル酸塩を吸入により投与する。さらなる態様において、本発明のヘミフマル酸塩を乾燥粉末吸入器の手段により投与する。吸入器は単回または複数回吸入器であってよく、そして呼気作動型(breath actuated)乾燥粉末吸入器であてよい。
【0043】
吸入を介して投与するとき、本発明の化合物化合物(すなわちヘミフマル酸塩)の投与量は、一般に0.1μgから10000μg、0.1から5000μg、0.1から1000μg、0.1から500μg、0.1から200μg、0.1から200μg、0.1から100μg、0.1から50μg、5μgから5000μg、5から1000μg、5から500μg、5から200μg、5から100μg、5から50μg、10から5000μg、10から1000μg、10から500μg、10から200μg、10から100μg、10から50μg、20から5000μg、20から1000μg、20から500μg、20から200μg、20から100μg、20から50μg、50から5000μg、50から1000μg、50から500μg、50から200μg、50から100μg、100から5000μg、100から1000μgまたは100から500μgの範囲であり得る。
【0044】
本発明の化合物の乾燥粉末製剤および加圧HFAエアロゾルは、経口または経鼻吸入により投与できる。吸入のために、本化合物は望ましくは微粉化されている。微粉化化合物は、好ましくは10μm未満の質量中央直径を有し、C−C20脂肪酸またはその塩(例えば、オレイン酸)、胆汁酸塩、リン脂質、アルキルサッカライド、過フッ素化またはポリエトキシル化界面活性剤、または他の薬学的に許容される分散剤のような分散剤の助けを借りて、噴射剤混合物に懸濁し得る。
【0045】
一つの可能性は、微粉化された本発明の化合物と担体物質、例えば、モノ、ジまたはポリサッカライド、糖アルコール、または他のポリオールの混合物である。適当な担体は、糖、例えば、ラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトール;およびデンプンである。あるいは微粉化した化合物を他の物質でコートしてよい。粉末混合物をまた、各々所望の用量の活性化合物を含む硬ゼラチンカプセルに分配してもよい。
【0046】
他の可能性は、吸入過程中に破壊される球形への微粉化粉末の加工である。この球形化粉末を多回投与量吸入器、例えば、投与ユニットが所望量を定量し、次いでそれが患者により吸入されるTurbuhaler(登録商標)として既知の吸入器の薬剤貯蔵部に充填し得る。この径により、活性成分は担体物質と共にまたは無しで、患者に送達される。
【0047】
経口投与のために、本発明の化合物をアジュバントまたは担体、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、コーンデンプンまたはアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン;および/または滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、蝋、パラフィンなどと混合でき、次いで、錠剤に打錠し得る。コーティング錠が必要なとき、上記の通り製造したコアを、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、タルクおよび二酸化チタンを含む濃縮糖溶液でコートしてよい。あるいは、本錠剤を、容易に揮発する有機溶媒に溶解した適当なポリマーでコートしてよい。
【0048】
軟ゼラチンカプセルの製造のために、本発明の化合物を、例えば、植物油またはポリエチレングリコールと混合し得る。硬ゼラチンカプセルは、錠剤について上記の賦形剤のいずれかを使用した、本化合物の顆粒を含み得る。また本発明の化合物の液体または半固体製剤を硬ゼラチンカプセルに充填し得る。
【0049】
経口投与用の液体製剤はシロップまたは懸濁液の形、例えば、本発明の化合物を含む溶液の形であり得、残りは糖およびエタノール、水、グリセロールおよびプロピレングリコールの混合物である。所望により、このような液体製剤は着色剤、香味剤、サッカリンおよび/または濃厚剤としてのカルボキシメチルセルロースまたは当業者に既知の他の賦形剤を含み得る。
【0050】
本発明の化合物はまた上記状態の処置に使用される他の化合物と組み合わせても投与できる。
【0051】
故に、本発明は、本発明の化合物または本発明の化合物を含む医薬組成物もしくは製剤を、記載の状態の1種以上の処置のための、他の1種もしくは複数の治療剤と同時にまたは連続して、または組み合わせ製剤として投与する、組み合わせ治療に関する。
【0052】
本発明をここで以下の説明的実施例を参照してさらに説明する。
【0053】
一般法
H NMRスペクトルはVarian Unity Inova 400 MHz(ソフトウェア:VNMR 6.1CおよびVNMRJ 1.1D;プローブ:Nalorac 5mm DG400-5AT)またはVarian Mercury-VX 300 MHz(ソフトウェア:VNMR 6.1C;プローブ:Varian 5mm AutoSW PFG)装置で298Kで記録した。アセトン−dまたはジメチルスルホキシド(DMSO)−dの中央ピークを内部参照として使用した。
【0054】
以下の方法をLC/MS分析に使用した:
【表1】

【実施例】
【0055】
実施例1
N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩(2:1塩)の製造
撹拌している粗N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミド(24.0g、36.5mmol;WO03/051839の実施例1に記載の通りトリフルオロ酢酸との対応する塩からpH9での抽出により得た)のメタノール(240ml)溶液に、フマル酸(2.13g、18.3mmol)のメタノール(55ml)溶液を15分にわたり添加した。約2/3のフマル酸溶液を添加したときに沈殿の開始が観察された。全フマル酸溶液を添加したとき、撹拌を止め、反応混合物を一晩、環境温度(20℃)で密閉フラスコ中に放置した。沈殿を濾過漏斗で単離し、メタノール(3×50ml)真空で60℃で一晩乾燥させて、表題塩をオフホワイト色固体として得た(14.0g、73%)。
【0056】
1H NMR(399.99 MHz, DMSO-d6) δ 8.91(s, 1H), 7.48(d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.38(d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.31(d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.50(s, 1H), 6.42(d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.31(dd, J = 8.6, 2.5 Hz, 1H), 3.79(s, strongly coupled AB-system, 2H), 3.44(s, 2H), 2.88(d, J = 12.2 Hz, 1H), 2.82 - 2.72(m, 3H), 2.64 - 2.55(m, 1H), 2.02(s, 3H), 2.00 - 1.92(m, 2H), 1.91 - 1.83(m, 2H), 1.47 - 1.35(m, 2H), 1.23(s, 3H)
APCI-MS: m/z 462 [MH+]
塩基対酸2:1の化学量論をNMRにより確認した。
【0057】
実施例2
X線粉末回折分析
一般法
X線粉末回折(XRPD)分析は、製造したサンプルで標準法に従い行い得る(例えばGiacovazzo et al., eds., Fundamentals of Crystallography, Oxford University Press(1992);Jenkins & Snyder, eds., Introduction to X-Ray Powder Diffractometry, John Wiley & Sons, New York(1996);Bunn, ed., Chemical Crystallography, Clarendon Press, London(1948);およびKlug & Alexander eds., X-ray Diffraction Procedures, John Wiley & Sons, New York(1974)参照)。
【0058】
上記実施例1に記載のヘミフマル酸塩(無水形)のX線粉末回折パターンを以下の通り得た:
単色CuKα照射(45kVおよび40mA)を使用したBragg-Brentano近位焦点(parafocusing)粉末X線回折装置を分析に使用した。一次光学はsollerスリットおよび自動発散スリットを含んだ。平らなサンプルを測定中回転する0バックグラウンドプレート上に調製した。二次光学はsollerスリット、自動散乱除去スリット、受信用スリットおよび単色光分光器を含んだ。回折シグナルを比例的キセノン充填検出器で検出した。回折パターンを2°≦2θ(シータ)≦40°で、0.016° 2θのステップサイズで4° 2θ/分の速度の連続スキャンモードで集めた。生データを電気的に貯蔵した。評価を生または平滑化した回折パターンで行った
【0059】
反射モードのPanalytical X'pert PRO MPD θ−θ回折計を上記測定に使用した。当業者は、示しているデータと同等の回折データを集めることができるように粉末X線回折装置の装置パラメータを設定できる。
得られた結果を図1に示す。
【0060】
実施例3
示差走査熱量測定(DSC)
標準法、例えばHoehne, G. W. H. et al(1996), Differential Scanning Calorimetry, Springer, Berlinに記載の方法を使用して、温度を上昇させるための試験サンプルの熱量応答をQ1000 Modulated Temperature Differential Scanning Calorimeter(MTDSC)を使用して、“加熱のみ”モードで、5℃/分のランプ速度で試験した。約2から5mgの試験サンプルを、窒素雰囲気下、蓋(しわなし)付きのアルミニウムカップに入れた。
DSC開始およびピーク温度が、サンプルの純度および装置のパラメータ、とりわけ温度走査速度により変化し得ることは既知である。当業者は、示しているデータと同等のデータを集めることができるように示差走査熱量計の装置パラメータを設定するために、慣用の最適化/較正を使用できる。
上記実施例1に記載のヘミフマル酸塩の典型的なサンプルの融点は189℃±2℃(開始)であることが判明した。
【0061】
ヒトCCR1結合アッセイ

組み換えヒトCCR1(HEK−CCR1)を安定に発現するECACCからのHEK293細胞を使用して、CCR1含有細胞膜を調製した。膜を−70℃で貯蔵した。各バッチの膜濃度を33pM [125I] MIP−1αの10%特異的結合に調製した。
【0062】
結合アッセイ
17500単位/L バシトラシン(Sigma, Cat No B1025)を添加したアッセイ緩衝液 pH7.4(137mM NaCl(Merck, Cat No 1.06404)、5.7mM グルコース(Sigma, Cat No G5400)、2.7mM KCl(Sigma, Cat No P-9333)、0.36mM NaHPO×HO(Merck, Cat No 1.06346)、10mM HEPES(Sigma, Cat No H3375)、0.1%(w/v)ゼラチン(Sigma, Cat No G2625))に希釈した100μLのHEK−CCR1膜を、96ウェルフィルタープレート(0.45μm opaque Millipore cat no MHVB N4550)の各ウェルに添加した。12μLの10%DMSOを含むアッセイ緩衝液中の化合物を添加して、最終化合物濃度1×10−5.5−1×10−9.5Mとした。10%DMSOを補ったアッセイ緩衝液中10nM 最終濃度の12μl 冷ヒト組み換えMIP−1α(270-LD-050, R&D Systems, Oxford, UK)を一定のウェル(化合物なし)に非特異的結合対照(NSB)として入れた。10%DMSOを含む12μlアッセイ緩衝液を一定のウェル(化合物なし)に添加して、最大結合(B0)を検出した。
【0063】
アッセイ緩衝液でウェル中の最終濃度33pMまで希釈した12μL [125I] MIP−1αを全ウェルに添加した。次いで蓋付きプレートを1.5時間、室温でインキュベートした。インキュベーション後、ウェルを真空濾過(MultiScreen Resist Vacuum Manifold system, Millipore)により空にし、1回200μlアッセイ緩衝液で洗浄した。洗浄後、全ウェルに50μLのシンチレーション液(OptiPhase “Supermix”, Wallac Oy, Turko, Finland)を添加した。結合した[125I] MIP−1αをWallac Trilux 1450 MicroBetaカウンターを使用して測定した。窓設定:低5−高1020、1分計数/ウェル。
【0064】
置換パーセントの計算およびIC50
以下の式を使用して置換パーセントを計算した。
置換パーセント=1−((cpm試験−cpm NSB)/(cpm B0−cpm NSB))、式中:
cpm試験=膜および化合物および[125I] MIP−1α cpmのデュプリケートウェルの平均cpm;
NSB=膜およびMIP−1αおよび[125I] MIP−1α(非特異的結合) cpmのウェルの平均cpm;
B0=膜およびアッセイ緩衝液および[125I] MIP−1α(最大結合)のウェルの平均cpm。
50%置換をもたらす化合物のモル濃度(IC50)をエクセルをベースにしたプログラムXLfit(version 2.0.9)を使用して演算した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
(原文に記載なし)
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−{2−[((2S)−3−{[1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)オキシ]−4−ヒドロキシフェニル}アセトアミドヘミフマル酸塩またはその溶媒和物である化合物。
【請求項2】
無水である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも以下の特徴的X線粉末回折ピークを示す請求項2記載の化合物(2θ度で示す):
(1) 6.2、10.7および12.5、または
(2) 6.2、10.7および18.8、または
(3) 6.2、10.7および18.0、または
(4) 6.2、10.7、12.5、18.0および18.8、または
(5) 6.2、10.7、12.5、18.0、18.8、19.7および19.8。
【請求項4】
図1に示すものと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の化合物を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項6】
乾燥粉末吸入器と組み合わせた、請求項1から4のいずれかに記載の化合物または請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
治療に使用するための、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
ケモカイン受容体1(CCR1)活性の調節が有益であるヒト疾患または状態の処置用薬剤の製造における、請求項1から4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
慢性閉塞性肺疾患の処置に使用するための薬剤の製造における請求項1から4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項10】
喘息の処置に使用するための薬剤の製造における、請求項1から4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項11】
気道疾患に罹患しているまたはこのような疾患の危険性のある患者における該疾患の処置法であって、該患者に治療的有効量の請求項1から4のいずれかに記載の化合物または請求項5記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2009−503066(P2009−503066A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524934(P2008−524934)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000922
【国際公開番号】WO2007/015668
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】