新規抗増殖因子および使用方法
糖ペプチドを含む新規抗増殖因子を開示する。具体的実施形態では、新規抗増殖因子が膀胱に関係する。間質性膀胱炎および癌を同定しそして/または処置するための組成物、診断キットおよび試薬、ならびに本化合物の使用方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第60/484,010号(2003年7月1日出願)、米国仮特許出願第60/515,850号(2003年10月29日出願)、および米国仮特許出願第60/569,363号(2004年5月7日出願)に基づく優先権を主張し、これらはすべて参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の後援による研究または開発に関する陳述
本発明の少なくとも一部は、米国国立衛生研究所(NIH)NIDDK DK52596、米国復員軍人局(VAメリットレビューファンディング)、および所内国立癌研究所資金からの資金を使ってなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有しうる。
【0003】
本発明は医学、生化学、細胞生物学、および化学の分野を対象とする。より具体的には、本発明は成長阻害活性を持つ新規化合物およびその誘導体を扱う。さらに本発明は、膀胱障害、特に間質性膀胱炎に関する生体マーカーおよび/または診断薬としての、新規化合物およびその誘導体の使用を対象とする。また本発明は、無制御な細胞増殖を伴う任意の疾患、例えば癌などの処置に関する。
【背景技術】
【0004】
米国では約100万人が、膀胱上皮内壁の菲薄化または潰瘍形成を特徴とする慢性有痛性膀胱状態である膀胱障害の一つ、間質性膀胱炎を患っている(Curhanら,1999)。
【0005】
この障害を持つ患者の膀胱にみられる膀胱鏡検査異常には、「グロメリュレーション(glomerulation)」と呼ばれる点状出血および固有層に伸びる潰瘍(ハンナー潰瘍)が含まれる(JohanssonおよびFall,1990;Skoludaら,1974)。最も一貫性の高い組織学的異常には、膀胱上皮の剥脱または1〜2細胞層への菲薄化が含まれる(JohanssonおよびFall,1990;Skoludaら,1974;Tomaszewskiら,2001)。これらの所見から、間質性膀胱炎は、正常膀胱上皮細胞の増殖が阻害され、その結果として上皮障壁の完全性が失われ、それに続いて膀胱中の感覚神経細胞が尿構成成分にばく露されることによって起こりうることが示唆される。しかし間質性膀胱炎の病理発生過程はこれまでのところわかっていない。
【0006】
間質性膀胱炎患者の膀胱上皮細胞によってもっぱら産生され(Keayら,2001;Keayら,2000)正常膀胱上皮細胞の増殖を著しく阻害する(Keayら,2003)抗増殖因子(「APF」)ペプチドの単離は、既に記載されている。参照によりそのまま本明細書に組み入れられる米国特許第5,962,645号には、間質性膀胱炎を持つ患者の尿から単離された精製ヒト抗増殖因子(APF)が教示されており、そのAPFは水性アセトニトリル溶液中の試料に対する質量分析で決定された約1.7kDaの分子量および約1.38〜3.5のpI範囲を特徴とし、そのAPFは正常ヒト膀胱上皮(HBE)および膀胱癌細胞の増殖を阻害する能力を持つ。ピコモル量のHPLC精製APFは、インビトロで正常膀胱上皮細胞に、著しい増殖速度の低下(Keayら,2003)および膀胱上皮細胞の対数期成長に必要な成長因子(ヘアピン結合性表皮成長因子様成長因子、すなわちHB-EGF)の産生量の低下(Keayら,2000;Keayら,2003)を含む、いくつかの変化を誘導することができた。
【0007】
HB-EGFは既に記載されている(例えば米国特許第5,811,393号を参照されたい)。米国特許第6,156,522号には、膀胱機能障害を患っている対象における間質性膀胱炎を診断する方法であって、(a)その対象の尿試料中のHB-EGF様成長因子のレベルを測定するステップ、および(b)前記レベルを正常レベルと比較するステップを含み、正常集団におけるヘパリン結合性表皮成長因子様成長因子のレベルと比較して低下しているヘパリン結合性表皮成長因子様成長因子が、間質性膀胱炎の存在を示すという方法が記載されている。米国特許第6,232,289号は、膀胱上皮細胞増殖の強化をその必要がある対象において行なう方法であって、膀胱上皮細胞増殖を強化するのに有効な量のHB-EGFを対象に投与することを含む方法が教示されている。米国特許第6,376,197号には、膀胱上皮細胞増殖の阻害に関係する間質性膀胱炎などの状態を診断する方法であって、対象から得た尿中の表皮成長因子のレベルを決定するステップ、および正常集団における表皮成長因子のレベルと比較して増加している表皮成長因子のレベルがその状態の存在を示すという基準に従って前記レベルを正常レベルと比較するステップを含む方法が教示されている。
【0008】
マイクロアレイ解析により、APFは、より分化した表現型への細胞遺伝子発現パターンの変化も誘導できることが示された(Keayら,2003)。したがってこの因子の同定は、間質性膀胱炎の病理発生におけるその潜在的役割を決定し、この疾患の生体マーカーとしてのその有用性を確立するために重要である。
【0009】
APFの予備的特徴づけにより、これは低分子量で、比較的熱安定性が高いペプチドであることが示された(Keayら,2000)。APFは、患者尿標本にも外植した患者膀胱細胞の上清にも極めてわずかしか見いだされないので、NMR分光法などの便利な構造解析法は実行できない。本明細書に記載するように、この強力な成長阻害因子の完全な特徴づけにより、過去に開示されことのない新規な構造が得られる。完全な特徴づけは、質量分析、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、酵素解析、および全合成などの技術を併用することによって行なった。
【0010】
APFの構造の確認は、ネイティブおよび合成APF誘導体のマイクロキャピラリー液体クロマトグラフィーを使って行なうと共に、成長因子の産生および膀胱上皮細胞の増殖を調節する能力を合成APFが持っていることを証明することによって行なった。APFのアイデンティティを示すさらなる証拠は、frizzled 8タンパク質セグメント用のプローブに結合するmRNAが、間質性膀胱炎患者由来の細胞中には同定されるが、対照には同定されないこと、そして、合成APFに対して生じさせたウサギ抗体が、間質性膀胱炎患者の膀胱上皮細胞の上清から得られるネイティブAPFに結合することによって得られた。
【0011】
細胞周期阻害因子であると考えられるもう一つの因子が米国特許第5,916,871号に記載されている。この因子は、好ましくは、APFよりはるかに大きい分子量(例えば18kDまたは66kD)を持つシアリル化糖ペプチドを含み、細胞周期のG1期を阻害する(しかしG2期は阻害しない)。また、先に記載されたこの因子が持っている糖質成分はその全質量の10%未満を占めるに過ぎないが、ネイティブ型のAPFはその全質量の44%を占める糖質を持っている。
【0012】
他のさらなる目的、特徴および利点は、開示を目的として記載する、現時点で好ましい本発明の実施形態に関する以下の説明から明らかになるだろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は抗増殖因子(APF)に関わるシステムおよび方法に向けられる。本発明の特定の態様では、APFが、インビトロに、ある生物(ヒトを含む哺乳動物など)においてインビボに、そして/またはエクスビボに、例えば特定の組織、体液、または器官に、関係し、関連し、局在し、または他の形で提供される。APFはヒト、マウス、およびショウジョウバエなどの動物中に見いだされるタンパク質のセグメントに相同性を有するので、APFがショウジョウバエ(Drosophila)などの下等生物によって提供されることも考えられる。APFは、ある生物の特定の組織、体液、または器官に関係しうる。具体的な実施形態では、APFが特定の組織、体液、または器官中の細胞によって分泌され、さらなる実施形態では、APFが特定の組織、体液、または器官中で活性(例えばそこに含まれる細胞中で活性)である。一部の実施形態では、APFが特定の組織、体液、または器官の細胞によって分泌され、その細胞中で活性である。特定の態様では、APFは、上皮細胞を含む組織、例えば以下の組織に関係する:膀胱、尿管、尿道、肺、心臓、消化管(胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、膵臓および胆嚢を含む)、脾臓、雄性生殖器管(精嚢、前立腺、尿道球腺、輸精管、精巣上体、精巣、および陰茎を含む)、雌性生殖器管(卵巣、ファロピウス管、子宮、子宮頚、および膣を含む)、腎臓、副腎、胸腺、甲状腺、皮膚、骨(滑膜を含む)、眼組織(角膜、網膜、および水晶体を含む)、蝸牛、乳房組織、リンパ節、口腔粘膜(歯肉粘膜を含む)、唾液腺、耳下腺、および鼻咽頭粘膜(副鼻腔粘膜を含む)など。
【0014】
本発明の一定の実施形態では、本発明化合物が、単離されたAPF分子を含む。本発明のAPF分子は、例えば細胞増殖を部分的にもしくは完全に阻害しそして/または細胞増殖を遅くする糖ペプチドを含む。具体的実施形態では、増殖される細胞が、上皮細胞である。特定の実施形態では、APFを負の成長因子、負の成長調節物質、または毒素とみなすことができる。具体的実施形態ではAPFが膀胱特異的APFまたは膀胱上皮細胞特異的APFであるが、これは他の組織にも、例えば線維芽細胞または前立腺細胞などの非膀胱細胞の増殖を阻害するなどの目的に、有用である。間質性膀胱炎患者は、HB-EGFおよびEGFの血清レベルに、尿標本中に見られるものと同じ変化を持つので(Keayら,2000)、一部の実施形態ではAPFが膀胱以外の組織で産生される。
【0015】
Rashidら(2004)に概説されているように、具体的実施形態では、APFは細胞周期調整物質である。すなわち、正常膀胱生検標本に由来する外植細胞をAPFにばく露したところ、対照と比較して四倍体細胞および高四倍体細胞の比率が有意に増加した。したがって本発明の特定の態様では、APFへの細胞のばく露により、細胞周期がG2および/またはM期でブロックされ、そして/または多倍数性が生じうる。このように、APFは細胞周期分布に影響を及ぼし、それが特定の実施形態では、例えば正常な尿路上皮の増殖および修復過程の破壊などにより、間質性膀胱炎などの膀胱障害の病理発生の一因になる。さらなる実施形態では、APFへの1つ以上の細胞のばく露により、それら1つ以上の細胞の増殖の阻害が起こる。これは、細胞周期中の任意の時点における細胞周期ブロックを含みうるが、特定の実施形態では、そのブロックが主としてG2期またはM期で起こる。特定の実施形態では、APFの除去によって細胞周期の再開が可能になる。
【0016】
特定の実施形態ではAPFの分子量が約3000ダルトン未満であるが、別の実施形態ではAPFの分子量は約3000ダルトンより大きい。本組成物は、糖部分および疎水性部分を含み、その疎水性部分はペプチド部分または脂質部分であることができると、さらに定義することができる。特定のペプチド部分には任意の適切な構造が含まれるが、具体的実施形態では、それらは線状、環状、分岐状、またはそれらの組合せであることができる。さらなる具体的実施形態では、ペプチド部分はfrizzledポリペプチドの少なくとも一部に対する相同性を有し、例えばfrizzled 8の膜貫通ドメインの少なくとも一部(例えばNM_031866(配列番号8)中の例示的ポリヌクレオチドによってコードされるNP_114072(配列番号7)に記載の例示的配列に含まれるもの)に対する相同性を有する。他の具体的実施形態では、APFのペプチド成分が、細胞増殖の重要な調節物質であるWntを天然リガンドとするGタンパク質共役受容体frizzled 8の推定第6膜貫通ドメインの少なくとも一部に対する完全な相同性または実質的に完全な相同性を有する。分泌型frizzled関連タンパク質の一例は、米国特許第6,600,018号に記載されており、この特許は参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0017】
例えばペプチド部分は、frizzled 8の少なくとも一部に対して約50%未満の相同性、約50%の相同性、約55%の相同性、約60%の相同性、約65%の相同性、約70%の相同性、約75%の相同性、約80%の相同性、約85%の相同性、約90%の相同性、約95%の相同性、または約100%の相同性を有しうる。ただし、例えばペプチドミメティックが関わるような実施形態では、配列相同性は機能性の決定には用いられず、むしろ疎水性の化学的特徴ならびに物理的および化学的類似性(すなわち極性、立体的かさ高さ、水素結合能)が用いられることは、当業者に知られている。
【0018】
本発明の一目的では、APFは、間質性膀胱炎(IC)などの膀胱障害の鋭敏かつ特異的な生体マーカーであり、具体的な実施形態では、例えば遺伝子発現の調節(例えばE-カドヘリン産生量の増加などによるもの)および特異的成長因子類(例えばHB-EGFおよびEGFなど)の産生量の改変などを介して、膀胱細胞増殖を著しく阻害することにより、ICの病理発生に決定的な役割を果たす。より具体的に述べると、APFによる膀胱細胞増殖の阻害は、HB-EGF産生の阻害、細胞EGF、E-カドヘリン、アリールスルファターゼA、ホスホリボシルピロホスフェートシンテターゼ関連タンパク質39、もしくはSWI/SNF複合体170kDaサブユニット遺伝子発現の刺激、または細胞推定tRNAシンセテターゼ様タンパク質、ビメンチン、中性アミノ酸トランスポーターB、予想GTP結合タンパク質、アルファ1-カテニン、アルファ2-インテグリン、サイクリンD1およびJNKもしくはリボソームタンパク質L27a遺伝子発現の阻害を伴う。
【0019】
本発明の具体的一態様では、APFが、α配置またはβ配置でガラクトースに連結されたN-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン残基に、例えばN末端のスレオニン、セリンまたはシステインを介して共有結合的に連結された9アミノ酸残基(例えば、TVPAAVVVA(配列番号1)、SVPAAVVVA(配列番号3)、TVPAAVVLA(配列番号4)、またはSLPAAVVVA(配列番号5)など)を含み、そのガラクトース部分が2,3結合によってシアリル化されている、酸性熱安定性シアロ糖ペプチドである。グリコシル結合のアノマー配置は特定の実施形態ではアルファであるが、別の実施形態ではベータであってもよい。
【0020】
本発明の具体的一実施形態では、APFのペプチド成分が疎水性であり、同様に疎水性である非タンパク質部分、例えば脂質の代わりに用いることができる。したがって本発明の特定態様では、APFのペプチド/脂質部分が、膜との会合、例えば挿入、連結、結合、インターカレーション、もしくは他の形での膜との会合、または膜表面受容体への結合による会合を促進し、ネイティブAPFの糖部分は当該分子の高レベルな機能的活性を含む。
【0021】
本発明は、単離された天然APF、合成APF、その誘導体、またはその混合物を包含する。ネイティブAPFと同様に合成APFは、EGF産生を刺激すると共に、膀胱上皮細胞増殖(IC50=0.4nM)およびHB-EGF産生を著しく阻害した。合成APFは、ネイティブAPFに対して感受性を示す膀胱癌細胞の増殖も阻害した。本発明の具体的実施形態では、非グリコシル化合成ペプチドおよびグリコシル化合成APFのベータアノマーが持つ望ましい活性は少なかったものの、脱シアリル化ネイティブAPFおよび非シアリル化合成APFは、そのシアリル化対応物と同様の機能的活性を有する。
【0022】
ある実施形態では、APF化合物が、1個以上の糖を有する糖部分を含み、それらの糖をここでは第1糖、第2糖、第3糖などと呼ぶ。これらの糖のうち、どれをペプチドに共有結合的に連結してもよいが、具体的実施形態では、第3糖が、ペプチド(例えば基本的に配列番号1、3、4または5に記載に配列を持つもの)に共有結合的に連結され、あるいは第3糖を脂質分子に共有結合的に連結してもよい。糖部分は、天然糖、合成糖、その誘導体(糖ミメティック成分を含む)および/またはその任意の組合せを含みうる。
【0023】
一定の本発明化合物は、極性の化学的特徴および/またはヘテロ原子を含有する末端サブユニットを有することを特徴としうるペプチド部分を含む。このペプチドのサブユニットは、天然アミノ酸残基、非天然アミノ酸、アミノ酸の誘導体、例えばメチル化アミノ酸、ペプチドミメティック成分および/またはその任意の組合せを含みうる。別の実施形態では、ペプチド部分を脂質分子、例えばミリスチン酸もしくはパルミチン酸を含むオメガ脂肪酸、またはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどの他の脂質で置き換える。
【0024】
好ましい実施形態では、糖分子に、例えば1個以上のシアル酸、ガラクトース、グルコース、N-アセチルグルコサミン、および/またはN-アセチルガラクトサミンが含まれる。一定の実施形態では、シアル酸分子がガラクトースまたはグルコースに(2,3)、(2,6)、(2,8)および/または(2,9)結合によって共有結合的に連結される。指定した位置の原子を同定するために糖/糖質化学で用いられる命名法は、当業者に知られている。あるいは、ガラクトースまたはグルコースがN-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン分子に1→3、1→6、または1→4結合によって共有結合的に連結される。さらに好ましい実施形態では、N-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン糖分子が、アルファ配置で、疎水性部分に連結される。
【0025】
脂質部分を含む本発明の組成物において、脂質部分は、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸などの飽和脂肪酸、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、および/またはアラキドン酸などの不飽和脂肪酸、例えば脂質上のアルコールにエステルが付加されるステロイドアルコール類などのエステル化脂肪酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸を含むオメガ脂肪酸、例えばホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンなどのリン酸基含有脂肪、または極性頭部および非極性尾部を持つことを特徴とする界面活性剤であることができる。一般に、決定的に重要な脂質の特性は、脂質が二重脂質細胞膜に会合、インターカレート、または他の形で結合することができるような、疎水性の化学的特徴である。
【0026】
APFの誘導体であって、基本的に配列番号1に記載の配列を有するペプチドがその断片であり、その断片が配列番号1の1〜約8アミノ酸であるものも考えられる。配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6についても、類似の断片が考えられる。さらに、ペプチド部分はノナペプチドまたはノナペプチドより大きいペプチド、例えばペプチド部分に10個以上のアミノ酸を有するペプチド、またはペプチド部分に15個以上のアミノ酸を有するペプチドであることができると考えられる。
【0027】
APFの誘導体にはAPFの天然前駆体または天然代謝産物が含まれると考えられる。さらに、天然もしくは合成APFまたはそれらの誘導体は、例えば蛍光部分、比色部分、または放射性部分などの検出可能分子で標識することができる。いずれの場合も、本発明の化合物は、ネイティブAPFの作用を受ける改変と類似する形または同じ形で、細胞機能を改変する。APFによって改変される細胞機能の例には、HB-EGF産生の阻害、細胞EGF、E-カドヘリン、アリールスルファターゼA、ホスホリボシルピロホスフェートシンテターゼ関連タンパク質39、もしくはSWI/SNF複合体170kDaサブユニット遺伝子発現の刺激、または細胞推定tRNAシンテターゼ様タンパク質、ビメンチン、中性アミノ酸トランスポーターB、予想GTP結合タンパク質、アルファ1-カテニン、アルファ2-インテグリン、サイクリンD1およびJNKもしくはリボソームタンパク質L27a遺伝子発現の阻害が含まれる。
【0028】
配列番号1のノナペプチド、またはその生物学的に機能的な誘導体、例えば配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のペプチドなど、および/またはAPFの前駆体をコードするオリゴヌクレオチドも、ここでは考えられる。配列番号1をコードする例示的オリゴヌクレオチドは配列番号2である。しかし、ある特定アミノ酸のコドンごとにトリプレットヌクレオチドの選択肢は限られていることを考えると、本発明のペプチド(その例示的実施形態には配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6が含まれる)をコードするポリヌクレオチドは数が限られており、本発明の範囲に十分含まれることが、当業者にはわかる。APF分子のペプチド部分の少なくとも一部に好ましく含まれる疎水性アミノ酸をコードするために利用することができるコドンのさらなる部分集合を考えると、これは特にそうであると言える。
【0029】
本発明のAPF化合物を含む組成物が考えられる。本組成物は、リポソームなどの送達剤、被包された細胞、コンジュゲートされた分子、例えば抗体(Safavyら,2003)、他のペプチド、および種々の非ペプチドコンジュゲート(葉酸およびポリエチレングリコールを含む;Aronovら,2003)、薬物、例えばゲルダナマイシン(Mandlerら,2004)またはインスリン(Ouら,2003)、リポソーム(HeathおよびMartin,1986)、ラクトサミン化ヒトアルブミン(Di Stefanoら,2003)、ポリエチレングリコール(PEG)(Aronovら,2003)、ナノ粒子、例えばコロイド金、または細胞表面受容体に結合して細胞とAPFとの相互作用もしくは細胞によるAPFの取り込みを促進する他の分子を、さらに含むことができる。
【0030】
そのような新規組成物の使用は、本発明のもう一つの目的である。具体的に述べると、本発明は、本発明の化合物を含む、膀胱障害、より具体的には間質性膀胱炎を検出するための診断キットに向けられる。具体的実施形態では、本発明の診断キットは、APF分子のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分上のエピトープに対する1つ以上の抗体を含む。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができ、本キットはポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を含んでもよい。
【0031】
本発明のいくつかの態様には、APF分子についてアッセイすることによって、個体の膀胱障害を検出する方法がある。具体的実施形態では、膀胱障害は間質性膀胱炎である。本発明には、非侵襲的手段によってAPF分子についてアッセイすることができるという利点があるが、別の実施形態では、侵襲的手段を使用してもよい。試料を当該個体から入手し、直接または間接的にAPF分子についてアッセイすることができる。具体的実施形態では、試料が尿、血漿、または他の体液標本、例えば全血、糞便、唾液、乳頭吸引液、粘液、または汗などを含む。尿試料は当該個体からの排尿後に取得することができ、カテーテルを通して取得することもできる。
【0032】
診断方法は、APF分子の1個以上の糖部分の検出を含むことができ、そして/またはAPF分子のペプチドもしくは脂質部分またはペプチドおよび/または脂質および/または糖部分の組合せの検出を含むことができる。具体的実施形態では、アッセイステップが、APF分子のペプチド部分のエピトープに対する抗体を試料に導入することを含む。APFが脂質部分を含む実施形態では、適切なアッセイ手段(例えば脂質分子を検出するために利用することができる標準的方法)を利用する診断に、これを用いることができる。
【0033】
本発明は、上皮過形成または上皮由来の悪性腫瘍を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法にも向けられる。
【0034】
本発明は、線維芽細胞の過形成または悪性腫瘍を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法に向けられる。
【0035】
本発明は、リンパ網内系の悪性腫瘍または固形腫瘍を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法に向けられる。
【0036】
本発明は、癌を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法に向けられる。例えば膀胱、肺、乳房、前立腺、脳、胃、結腸、脾臓、肝臓、膵臓、黒色腫、頭頸部、甲状腺など、あらゆる種類の癌を処置することができる。しかし、具体的実施形態では、本発明は、膀胱癌または前立腺癌の処置であって、そのような処置を必要とする患者に有効量のAPFまたはその誘導体を同時投与する処置に有用である。本発明のさらなる態様では、APFが、化学療法、放射線療法、外科手術、遺伝子治療、および/または免疫療法の群より選択される癌治療に対する抵抗性の克服または感受性の改善を、改善し、容易にし、または支援する。
【0037】
本発明の化合物は抗血管新生特性も有し、血管(例えば腫瘍に注ぎ込む血管)の形成および/または分化を阻害または減速することによって利益を得る処置方法における使用が考えられる。
【0038】
本発明のAPF化合物は抗真菌剤としても有用である。
【0039】
APF化合物は、それに対する抗体を生成させるために使用することができ、その抗体は間質性膀胱炎の処置に使用することができる。特定の実施形態では、本発明は、APF組成物のペプチド部分、糖部分および/または糖ペプチド部分に対する抗体を生成させることを包含する。例えば、APFのペプチド部分(例えば配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6を含むものなど)に対する抗体を生成させる。生成させる抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる。本明細書で使用する用語「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどの任意の免疫学的結合剤を広く指すものとする。一般に、IgGおよび/またはIgMは好ましい。なぜなら、それらは生理学的状況で最も一般的な抗体だからであり、実験室環境での製造が最も容易だからである。
【0040】
用語「抗体」は、抗原結合領域を持つ任意の抗体様分子を指すためにも用いることができ、例えばFab'、Fab、F(ab')2、単独ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(一本鎖Fv)などの抗体断片を包含する。種々の抗体に基づく構築物および断片を製造し使用する技術は当技術分野では周知である。抗体を製造し特徴づける手段も当技術分野では周知である(例えば「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory,1988)を参照されたい;この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。本発明の抗体は、本発明の組成物で動物を免疫し、免疫された動物から抗血清を収集することによって製造される。
【0041】
アジュバントと呼ばれる免疫応答の非特異的刺激物質を使用することにより、特定免疫原組成物の免疫原性を強化しうることも、当技術分野では周知である。好適なアジュバントには、許容できる全ての免疫刺激化合物、例えばサイトカイン類、ケモカイン類、補因子類、または毒素などが含まれる。使用できるアジュバントには、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、γ-インターフェロン、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、MDP化合物、例えばthur-MDPおよびnor-MDP、CGP(MTP-PE)、リピドA、およびモノホスホリルリピドA(MPL)が含まれる。2%スクアレン/Tween 80エマルション中に、細菌から抽出された3成分、MPL、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)を含有するRIBIも考えられる。MHC抗原も使用することができる。例示的に、しばしば好まれるアジュバントには、完全フロイントアジュバント(死滅結核菌を含有する免疫応答の非特異的刺激物質)、不完全フロイントアジュバントおよび水酸化アルミニウムアジュバントがある。
【0042】
あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、またはAPFの産生もしくは活性を阻害する他の物質を製造するために、APF化合物を使用する。
【0043】
さらにもう一つの実施形態では、間質性膀胱炎の動物モデルを作製するためにAPF化合物を使用する。例示的動物モデルでは、膀胱上皮のAPFへのばく露後に、動物が刺激を受けて、間質性膀胱炎に関係する症状(例えば膀胱痛または骨盤痛、尿頻度の増加、および/または尿意切迫の増加)または所見(例えば膀胱上皮の菲薄化および/または潰瘍形成)を発生させる。このばく露は、例えば膀胱内への合成もしくはネイティブAPFの直接投与に起因するか、APF分子のペプチド部分をコードするポリヌクレオチドによるトランスフェクション後の膀胱上皮細胞によるAPFの発現/生合成に起因することができるだろう。遺伝子はさらに、直接的方法(例えばエレクトロポレーションまたは膜融合)によって、または間接的方法によって(例えばウイルスベクターによって)、細胞中に導入することができる。マウスおよびヒトfrizzled 8の配列は、APF分子のペプチド部分に相同な9アミノ酸にわたって同一であり、マウス線維芽細胞はAPFの抗増殖作用に対して感受性を示すので、APFに基づくこの障害のマウスモデルの開発が可能であることに注目すべきである。例示的なヒトfrizzled 8ポリペプチドは配列番号7であり、例示的なマウスfrizzled 8ポリペプチドは配列番号9(NP_032084)である。
【0044】
もう一つの実施形態では、APF組成物を乾癬(例えば特発性乾癬状皮膚損傷(Schon,1999)を含むもの)の動物モデルに利用する。他の例示的疾患モデルには、過形成に対するAPFの作用を試験するための動物モデル、例えば無胸腺無脾臓ヌードラット(Poloら,1999)およびケロイド形成のヘアレスモルモットモデル(Clugstonら,1995)などが含まれる。
【0045】
さらにもう一つの実施形態では、正常膀胱上皮細胞または膀胱癌由来の細胞を用いる細胞増殖阻害アッセイ(例えばトリチウム化チミジンまたはブロモデオキシウリジン取り込みの阻害など)を使ってAPF活性を検出する方法が提供される。この方法では、APFの存在により、間質性膀胱炎が存在すること、または間質性膀胱炎が発症する素因を持つことが示される。これらの方法は非侵襲的であることができる、すなわち試料はカテーテル法によって取得してもカテーテル法によらずに取得してもよい尿試料であることができるので、特に有利である。尿試料は個体からの排尿時に取得することができる。
【0046】
もう一つの実施形態として、抗体に基づく方法(例えばELISA)、質量分析(MS)もしくは核磁気共鳴(NMR)、またはそれらの組合せを使って、APF糖ペプチドに関する直接アッセイを遂行することにより、APFを検出する方法がある。
【0047】
本発明は、Wntシグナル伝達経路を含む(ただしこれに限定されるわけではない)特異的細胞シグナル伝達経路を刺激する能力に鑑みて、刺激薬として用いられるAPF組成物も包含する。
【0048】
本発明の実施形態には、1個以上の糖部分を持ち少なくとも1つの糖部分が疎水性部分に連結される膀胱抗増殖因子を含む、単離されたまたは合成された組成物がある。
本組成物はさらに、膀胱上皮細胞増殖因子と定義することができる。本因子の分子量は約3000ダルトン未満であることができる。具体的態様では、疎水性部分が以下の1つを含む:線状、環状、もしくは分岐状であることができるペプチド部分、または脂質部分。本APF組成物は、具体的実施形態では、シアロ糖ペプチドを含むが、別の実施形態では糖ペプチドまたはペプチドを含む。さらなる実施形態では、ペプチドがfrizzledポリペプチドの少なくとも一部に対して相同性を有し、例えばfrizzled 8の膜貫通ドメインの少なくとも一部に対して相同性を有する。
【0049】
特定の実施形態では、本組成物はさらに、約1〜約6個の糖部分および約2〜約15アミノ酸残基のペプチド部分を含み、前記残基の1つは連結アミノ酸であり、ぺプチドは糖部分の少なくとも1つに、極性(例えばセリン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、またはチロシン)でありうる連結アミノ酸のヘテロ原子で連結されると定義される。したがって、糖部分に連結されるヘテロ原子は酸素、窒素および/または硫黄原子であると考えられる。さらなる具体的実施形態では、本組成物は、3個の糖残基および9個のアミノ酸を含み、連結アミノ酸はセリンまたはスレオニンである。さらに別の具体的実施形態では、本組成物は2個の糖残基および9個のアミノ酸を含む。
【0050】
糖部分は、天然糖、合成糖、天然糖の誘導体、または合成糖の誘導体を含む。より具体的には、少なくとも1つの糖部分は、シアル酸(N-アセチルノイラミン酸)分子などのアミノ糖であり、一部の実施形態では、アミノ糖が少なくとももう一つの(第2の)糖に(2,3)結合、(2,6)結合、(2,8)結合、または(2,9)結合によって連結される。少なくとも1つの糖部分とペプチド部分の間の結合は共有結合であり、糖部分と脂質部分の間の結合は共有結合であり、本明細書に記載する他の結合も共有結合であることができる。
【0051】
2個以上の糖部分を伴う具体的実施形態では、ある糖部分ともう一つの糖部分の間の結合は、1→3結合、1→4結合、または1→6結合である。別の実施形態では、少なくとも1つの糖部分と疎水性部分、例えばペプチドまたは脂質の間の結合がアルファ配置またはベータ配置である。
【0052】
本組成物のペプチド部分はさらに、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸の誘導体、非天然アミノ酸の誘導体、修飾されたアミノ酸、主鎖修飾アミノ酸、またはそれらの混合物を含むと定義される。ペプチド部分はさらに、還元されたペプチド結合を含む1個以上の主鎖修飾アミノ酸を含むと定義される。修飾されたアミノ酸はさらに、メチル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ベータアミノ酸、またはアミノ酸ミメティックと定義することができる。
【0053】
ペプチド部分は、本発明の一部の態様では約9アミノ酸長であり、配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5を含みうる。具体的実施形態では、脂質部分は、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸などの飽和脂肪酸、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、例えば脂質上のアルコールにエステルが付加されるステロイドアルコール類などのエステル化脂肪酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸を含むオメガ脂肪酸、例えばホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンなどのリン酸基含有脂肪、または極性頭部および非極性尾部を持つことを特徴とする界面活性剤を含む。
【0054】
本発明のAPF組成物はさらに、蛍光部分、比色部分、または放射性部分などのラベルを含むと定義することができる。一定の実施形態では、ラベルが、1個以上の糖部分の少なくとも1つ(例えばシアル酸、グルコース、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン)に取り付けられる。あるいは、ラベルは、例えばペプチド部分を構成するアミノ酸の少なくとも1つに含まれるペプチド中の任意の適切な原子に(例えばセリン、スレオニン、またはシステインアミノ酸サブユニット中のヘテロ原子に)取り付けられるか、ペプチドのカルボキシル末端にあるカルボキシル基に取り付けられる。あるいは、ラベルは、脂質部分の原子の少なくとも1つに、例えば不飽和脂肪酸(すなわちオレイン酸など)中の二重結合に、または脂質の極性頭部(アルコール)に、取り付けられる。
【0055】
本発明の具体的実施形態では、APF組成物がさらに以下のように定義される:
【0056】
(a)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルガラクトサミン-スレオニン-バリン-プロリン- アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン;
【0057】
(b)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-スレオニン-バリン-プロリン- アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン;または
【0058】
(c)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-セリン-ロイシン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン。
【0059】
本明細書の実施例でさらに説明するように、本発明のAPF組成物は、もう一つの選択肢として、シアル酸分子を含まない(a)、(b)または(c)のいずれか一つと定義される。
【0060】
(a)の組成物はさらに以下の1つ(または1つ以上)を有すると定義することができる:シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;ガラクトースが1,3結合によってN-アセチルガラクトサミンに連結される;そして/またはN-アセチルガラクトサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【0061】
(b)の組成物はさらに以下の1つ(または1つ以上)を有すると定義することができる:シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;そして/またはN-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【0062】
(c)の組成物はさらに以下の1つ(または1つ以上)を有すると定義することができる:シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;そして/またはN-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、本組成物はさらに送達ビヒクル、例えばリポソーム、細胞、コンジュゲートされた分子、ナノ粒子、またはそれらの混合物を含む。コンジュゲートされた分子は、抗体、ペプチド、葉酸、ポリエチレングリコール、薬物、リポソーム、ミクロスフェア、またはラクトサミン化ヒトアルブミンを含みうる。ナノ粒子はコロイド金を含みうる。
【0064】
本組成物は薬学的に許容できる賦形剤中に含まれうる。また本組成物は細胞増殖を可逆的に停止させうる。具体的実施形態では、本組成物はさらに、細胞周期を主としてG2期もしくはM期またはその両方で停止させる活性を含むと定義される。
【0065】
本発明の他の実施形態には、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、またはその機能的誘導体からなる群より選択される単離されたペプチドがある。その機能的誘導体はさらに、当該ペプチドの1個以上のアミノ酸における保存的置換を含むと定義することができる。保存的置換はさらに、セリン、スレオニン、プロリン、またはその組合せにおける置換と定義することができる。具体的実施形態では、保存的置換が、疎水性の保存的置換、例えば1個以上のアラニン、1個以上のバリン、1個以上のプロリン、またはそれらの組合せにおける置換を含む。具体的実施形態では、ここで考えられる本発明のペプチドの機能が、キット(例えば試料中のAPFを定量するためのキット)内の標準物質として、抗増殖因子として、そして/または抗体産生を誘導するための手段として使用するための機能である。
【0066】
本発明のさらなる実施形態には、配列番号1をコードする単離されたポリヌクレオチドがあり、これはさらに配列番号2と定義することができる。
【0067】
本ポリヌクレオチドはさらに、以下の1つ以上を持つと定義することができる:ACA、ACC、ACG、およびACUからなる群より選択されるスレオニンのコドン;GUA、GUC、GUG、およびGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン;CCA、CCC、CCG、およびCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;ならびにGCA、GCC、GCG、およびGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン。
【0068】
もう一つの実施形態には、配列番号3をコードする単離されたポリヌクレオチド、例えば以下の1つ以上を有するとさらに定義されるものがある:AGC、AGU、UCA、UCC、UCG、およびUCUからなる群より選択されるセリンのコドン;GUA、GUC、GUG、またはGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン;CCA、CCC、CCG、またはCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;ならびにGCA、GCC、GCG、またはGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン。
【0069】
さらなる実施形態には、配列番号4をコードする単離されたポリヌクレオチド、例えば以下の1つ以上を有するとさらに定義されるものがある:ACA、ACC、ACG、およびACUからなる群より選択されるスレオニンのコドン;GUA、GUC、GUG、およびGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン;CCA、CCC、CCG、およびCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;GCA、GCC、GCG、およびGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン;ならびにUUA、UUG、CUA、CUC、CUG、およびCUUからなる群より選択される1個以上のロイシンのコドン。
【0070】
本発明のもう一つの実施形態には、配列番号5をコードする単離されたポリヌクレオチド、例えば以下の1個以上を有するとさらに定義されるものがある:AGC、AGU、UCA、UCC、UCG、およびUCUからなる群より選択されるセリンのコドン;UUA、UUG、CUA、CUC、CUG、およびCUUからなる群より選択されるロイシンのコドン;CCA、CCC、CCG、およびCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;GCA、GCC、GCG、およびGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン;ならびにGUA、GUC、GUG、およびGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン。
【0071】
本発明のさらなる実施形態には、適切な容器に収納されたAPF組成物を含むキットがある。対象における膀胱障害の診断に使用されるキットであって、抗増殖因子のペプチド、糖、または糖ペプチドのエピトープに免疫学的に結合する抗体組成物を含み、前記抗体組成物が適切な容器に収納されているキットも考えられる。具体的実施形態では、抗増殖因子が膀胱抗増殖因子である。ペプチドは1個以上の疎水性アミノ酸を含みうる。
【0072】
具体的実施形態では、抗体が配列番号1もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号1のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;抗体が配列番号3もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号3のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;抗体が配列番号4もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号4のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;抗体が配列番号5もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号5のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;そして/または抗体が配列番号6もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号6のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である。
【0073】
キット中の抗体にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはその両方が含まれうる。抗体は標識されていてもよい。
【0074】
本発明のキットは試料中のAPF組成物を検出するための検出手段を含み、さらなる実施形態では抗体、蛍光レポーター分子などのマーカー、および/または組成物の糖部分もしくはペプチド部分を標的とする捕捉分子を含む。
【0075】
本発明のもう一つの実施形態には、抗体またはその結合部分を含む組成物であって、前記抗体または結合部分が、膀胱抗増殖因子のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合し、前記抗増殖因子が1個以上の糖部分を含む組成物がある。具体的実施形態では、抗体または結合部分が抗増殖因子のペプチド部分に結合し、それによってAPF分子の活性を阻害する。抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはその混合物であることができる。具体的実施形態では、ペプチドが配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5である。
【0076】
本発明のさらなる実施形態には、個体における膀胱障害を検出する方法であって、APF組成物についてアッセイするステップを含む方法がある。具体的実施形態では、膀胱障害が間質性膀胱炎である。具体的実施形態では、アッセイステップが当該個体に対して非侵襲性または侵襲性である。具体的実施形態では、本方法はさらに、当該個体から試料を取得し、前記試料をAPF組成物の存在についてアッセイすることと定義される。試料は、当該個体から得られる尿、血漿、血清、組織、またはそれらの混合物を含みうる。アッセイステップは、APF組成物の1個以上の糖部分の検出を含みうる。アッセイステップは、APF組成物の疎水性部分の検出を含みうる。組成物の疎水性部分はペプチド部分を含むことができ、アッセイステップはさらに、APF組成物のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分のエピトープに対する抗体の、当該試料への導入を含むと定義される。具体的実施形態では、アッセイ方法がELISA、ウェスタンブロット、免疫ブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学、または他の抗体に基づく検出法、例えばスロットブロット、ドットブロットなどを含む。別の実施形態では、アッセイ方法が、例えばインサイチューハイブリダイゼーション、またはAPFのメッセンジャーmRNAを検出するための他の手段などを含む。さらなる実施形態では、アッセイ方法が質量分析、核磁気共鳴、またはペプチド種を検出するための他の非免疫学的方法を含む。
【0077】
本発明のさらなる実施形態には、癌を処置する方法であって、治療有効量のAPF組成物を投与するステップを含む方法がある。具体的実施形態では、癌が上皮癌、例えば膀胱癌または前立腺癌を含む。さらにもう一つの具体的実施形態では、本方法がさらに、追加の癌治療、例えば外科手術、化学療法、放射線、遺伝子治療、免疫療法、またはそれらの組合せを含む。
【0078】
本発明のもう一つの実施形態には、膀胱障害を処置する方法であって、治療有効量のAPF組成物を投与するステップを含む方法がある。具体的実施形態では、本方法がさらに、追加の膀胱障害治療を含む。具体的実施形態では、膀胱障害が膀胱癌を含む。もう一つの具体的実施形態では、本方法がさらに、追加の癌治療、例えば外科手術、化学療法、放射線、遺伝子治療、免疫療法、またはそれらの組合せなどを含む。
【0079】
さらにもう一つの実施形態には、過形成を処置する方法であって、治療有効量のAPF組成物を投与するステップを含む方法がある。具体的実施形態では、本方法がさらに、上皮過形成または線維芽細胞過形成などの過形成に対する追加の治療を含む。
【0080】
もう一つの実施形態には、個体の癌治療を強化する方法であって、その個体に治療有効量のAPF組成物を投与することを含む方法がある。本組成物の投与は、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子治療、またはそれらの組合せを強化しうる。本組成物は、強化される癌処置に先だって投与するか、強化される癌処置と同時に投与するか、強化される癌処置の後に投与するか、またはそれらの組合せで投与することができる。
【0081】
さらにもう一つの実施形態には、個体における血管新生を阻害する方法であって、その個体に治療有効量のAPF組成物を投与することを含む方法がある。
【0082】
もう一つの実施形態には、個体における真菌成長を阻害する方法であって、その個体に治療有効量のAPF組成物を投与することを含む方法がある。
【0083】
上記は、以下に述べる本発明の詳細な説明がより良く理解されうるように、本発明の特徴および技術的利点をかなり広く概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点を以下に説明する。ここに開示する概念および具体的実施形態は、本発明の目的と同じ目的を実施するために、他の構造物を修飾または設計するための基礎として容易に利用できることを理解すべきである。また、そのような等価な構築物が、本願特許請求の範囲に記載する発明から逸脱しないことも、はっきりと理解すべきである。その構成と作用方法の両方に関して本発明に特有であると考えられる新規な特徴は、さらなる目的および利点と共に、以下の説明を添付の図面と一緒に考慮することによって、より良く理解されるだろう。ただし、各図面は例示と説明のために提供されるのであって、本発明の限界を定義するつもりではないことは、はっきりと理解すべきである。
【0084】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面と合わせて解釈される以下の説明を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
I.定義
本明細書で使用する「1つの」(aまたはan)は1つ以上を意味しうる。本願特許請求の範囲において、単語「を含む(comprising)」と一緒に使用される場合、単語「1つの」(aまたはan)は、1つ以上を意味しうる。本明細書で使用する「もう一つの」(another)は少なくとも2つ目またはそれ以上を意味しうる。
【0086】
本明細書で使用する用語「アルファ配置」αは、ピラノース環の立体配座式を用いた場合にアノマー基がアキシャル配置であるような糖質化学における構造的関係を指す。逆に「ベータ配置」βは、アノマー基がエカトリアルであるような配置を指す。
【0087】
本明細書で使用する用語「抗増殖因子」は、1個以上の糖部分および/または疎水性部分から構成される分子であって、細胞増殖を阻害する能力を特徴とする分子を指す。具体的実施形態では、阻害活性が、膀胱上皮細胞増殖などの上皮細胞増殖を阻害することを含む。さらなる具体的実施形態では、疎水性部分がペプチドまたは脂質である。具体的実施形態では、その疎水性が、膜との非特異的会合、または例えば膜もしくは細胞質受容体の疎水性ポケットとの特異的もしくは非特異的相互作用を促進する。具体的実施形態では、膜との会合が、膜への挿入を含む。膜はあらゆる種類の膜であることができるが、本発明の特定態様では形質膜である。さらなる具体的実施形態では、ペプチドが部分的に疎水性であり、APFと膜との会合を促進するのに十分な疎水性を含む。
【0088】
用語「主鎖修飾アミノ酸」は当技術分野では公知であり、以下に説明する。通常のペプチドまたはタンパク質主鎖は、カルボキシル基に隣接する炭素上にアミノ基を持つアルファアミノ酸の重合によって形成される。これにより、繰り返し単位が-[NHCH(R)C(O)]-であるようなポリマーがもたらされる。式中、Rは各アミノ酸を異ならせる側鎖であるが、主鎖を形成する繰り返し単位は示したとおりである。仮にアミノ基を異なる炭素(例えばアラニンのベータ炭素)に移動させたとすると、主鎖はもはや天然ではなくなるが、ペプチドの特性の多くはまだ持っている。タンパク質分解酵素は改変された主鎖を認識しない。ベータ-アラニンまたはガンマ-酪酸は一般的な主鎖改変アミノ酸である。これらは天然にはペプチドまたはタンパク質中に見いだされない。
【0089】
本明細書で使用する用語「膀胱障害」は、膀胱の異常な状態を指す。
【0090】
本明細書で使用する用語「保存的置換」は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸を類似する化学的性質を持つ異なるアミノ酸で置き換えることを指す。例えば、非極性アミノ酸は、別の非極性アミノ酸で保存的に置換することができる。具体的実施形態では、疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸で置換することができる。
【0091】
本明細書で使用する用語「上皮癌」は、ある組織の癌であって、その組織の上皮細胞から派生するものを指す。例えば上皮癌は、膀胱、尿管、肺、心臓、消化管(胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、膵臓および胆嚢を含む)、脾臓、雄性生殖器管(精嚢、前立腺、尿道球腺、輸精管、精巣上体、精巣および陰茎を含む)、雌性生殖器管(卵巣、ファロピウス管、子宮、子宮頚、および膣を含む)、腎臓、副腎、胸腺、甲状腺、皮膚、骨(滑膜を含む)、眼組織(角膜、網膜、および水晶体を含む)、蝸牛、乳房組織、リンパ節,
口腔粘膜(歯肉粘膜を含む)、唾液腺、耳下腺、および鼻咽頭粘膜(副鼻腔粘膜を含む)などを含みうる。
【0092】
本明細書で使用する用語「ヘテロ原子」は、有機分子中の原子であって、炭素または水素以外のものを指す。
【0093】
本明細書で使用する用語「疎水性」は水に対する親和性の欠如を指す。
【0094】
本明細書で使用する用語「疎水性アミノ酸」は、その構造中に電荷を持たないか極めて小さい電荷しか持たないために水との水素結合を形成することができないアミノ酸を指す。疎水性アミノ酸は水素結合に寄与することができないので、水溶液中では、疎水性アミノ酸は水分子間に形成される水素結合構造を破壊する。疎水性アミノ酸は様々なサイズを持ち、疎水性アミノ酸の大半は、純粋に炭化水素である側鎖を持つ。他が同じなら、大きい疎水性側鎖の方が、小さいものより疎水性は強くなる。疎水性アミノ酸の具体例には、脂肪族炭化水素側鎖を含むもの、例えばアラニン、バリン、ロイシン、もしくはイソロイシン、芳香族側鎖を含むもの、例えばフェニルアラニンもしくはトリプトファン、硫黄含有側鎖を含むもの、例えばメチオニン、そして/またはイミノ酸、例えばプロリンなどがある。特定の実施形態では、疎水性アミノ酸はアラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであるとみなされる。
【0095】
本明細書で使用する用語「過形成」は、ある組織における正常細胞の正常な配置での異常増殖を指す。
【0096】
本明細書で使用する用語「抗増殖因子の阻害物質」は、本発明に包含されるAPFの阻害物質を指す。具体的実施形態では、阻害物質は、例えばAPFを分解し、細胞増殖に対するその作用を遮断し、すなわち成長因子であり、またはそれらの組合せである。さらなる具体的実施形態では、阻害物質は抗体、低分子干渉RNA、オリゴヌクレオチド、小分子などを含む。
【0097】
本明細書で使用する用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって接合されたD-もしくはL-アミノ酸またはD-およびL-アミノ酸の混合物の一本鎖から構成される化合物を指す。一般に、ここで使用されるペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸残基を含有し、約50アミノ酸長未満である。本明細書ではD-アミノ酸を小文字の一文字アミノ酸記号で表し(例えばD-アルギニンはr)、L-アミノ酸を大文字の一文字アミノ酸記号で表す(例えばL-アルギニンはR)。ペプチドは環状、線状、分岐状、またはそれらの組合せであることができる。
【0098】
本明細書にいう「ポリペプチド」は、少なくとも2つのアミノ酸残基を持ち、1つ以上のペプチド結合を含有するポリマーを指す。「ポリペプチド」は、そのポリペプチドが明確なコンフォメーションを持つかどうかとは関係なく、ペプチドおよびタンパク質を包含する。
【0099】
本明細書で使用する用語「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸から構成されるが、ペプチドとは対照的に、明確なコンフォメーション(例えば明確な三次元コンフォメーション)を持つ化合物を指す。タンパク質は、ペプチドとは異なり、一般に50アミノ酸以上の鎖からなる。
【0100】
本明細書で使用する用語「精製(された)」は、糖タンパク質がその天然に得られうる状態に対して、すなわちこの場合であれば、真核細胞内でのその純度、あるいは細胞培地もしくは上清などの液体または尿、血清もしくは血漿などの生物学的液体内でのその純度に対して、どの程度にでも精製されているような糖タンパク質組成物を指すものとする。
【0101】
本明細書にいう「サブユニット」は、接合されることでより大きなポリマー化合物を形成するモノマー単位である。一連のアミノ酸はサブユニットの一例である。各アミノ酸は共通する主鎖(--C--C--N--)を持ち、異なるアミノ酸はその側鎖が異なる。主鎖はポリペプチド中で繰り返される。サブユニットはポリマー主鎖中の要素の最も短い繰り返しパターンを表す。例えばペプチドの2つのアミノ酸は1つのサブユニットとはみなされない。なぜなら、2つのアミノ酸はポリマー主鎖中の要素の最も短い繰り返しパターンを持たないだろうからである。
【0102】
本明細書で使用する用語「末端アミノ酸」は、APF分子の直線ペプチドの末端にあるアミノ酸を指し、N末端アミノ酸またはC末端アミノ酸を指しうる。
【0103】
用語「治療剤」「治療組成物」および「治療物質」は、例えば、哺乳類生物を含む(ただしこれに限定されるわけではない)生物の利益になるように使用することができるあらゆる組成物を指すが、これに限定されるわけではない。そのような薬剤は、例えばイオン、小有機分子、ペプチド、タンパク質またはポリペプチド、糖ペプチド(および他の修飾ペプチド)、オリゴヌクレオチド、およびオリゴ糖などの形態をとりうる。
【0104】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、単独でまたは他の化合物と組み合わせて治療目的で利用される組成物の量であって、処置される医学的状態の少なくとも1つの症状または客観的所見(徴候)の改善をもたらすような量を指す。1つ以上の症状または徴候が緩和される限り、完全な治癒には至らなくても、本発明が有用であることは、当業者には理解される。例えば、ある膀胱状態の処置では、治療有効量は、以下のいずれかまたは全てを容易にする量を含むだろう:細胞増殖の減少(または阻害による、増加)、排尿痛、尿意切迫または排尿頻度の減少、膀胱上皮内壁の菲薄化および/または潰瘍形成の量、度合いおよび/または強さの減少など。
【0105】
本明細書で使用する「膀胱」という用語は、個体の尿を一時的に保持するのに役立つ膨張性膜性の嚢を指す。通常、これは、骨盤腔内で直腸の前方に存在し、2本の尿管からの尿を受け取って、ときどきそれを、括約筋によって閉じられる開口部を通して、尿道に排出する。この器官は移行内胚葉上皮で裏打ちされる。
【0106】
本明細書で使用する用語「膀胱抗増殖因子」は、主として膀胱に関係する本明細書に記載の抗増殖因子を指す。これは、膀胱の細胞(例えば上皮細胞)と関係しうるので、これを「膀胱上皮細胞抗増殖因子」と呼ぶことができる。本因子は、1つ以上の膀胱上皮細胞中に同定されうるか、1つ以上の細胞からの分泌後に同定されうるか、またはその両方であることができる。これに加えて、またはこれに代えて、本因子は、膀胱内の尿もしくはそこから排泄された尿中またはその両方に懸濁している場合もある。本因子と膀胱とのそのような関係から、APFの検出は、ある膀胱状態(例えば間質性膀胱炎)の診断手段になりうる。一部の実施形態では、APFは膀胱中に位置するが、別の実施形態では、APF分子は血清、血漿、または他の組織とも関係する。
【0107】
II.本発明
負の成長因子は真核細胞の正常な接触阻害にとって重要であると考えられ、それらの活性の低下は悪性細胞成長と関係づけられている。しかし、成長阻害物質の産生の異常な増加は、骨髄機能不全(再生不良性貧血および骨髄異形成症候群)、非中毒性甲状腺腫、慢性静脈性潰瘍、全身性硬化症に伴う虚血症状発現、胃潰瘍の治癒遅延を含む、いくつかのヒト疾患状態にしか関連づけられていない。本発明の具体的実施形態では、正常な組織の完全性を維持するのに必要な細胞増殖の不適切な阻害により、他の疾患も引き起こされ、それは固形組織では、特異的細胞層の菲薄化または不在および正常組織構造の破壊として顕在化しうる。そのような種類の疾患の一つに、膀胱障害、例えば間質性膀胱炎が含まれうる。
【0108】
米国では約100万人が、膀胱上皮内壁の菲薄化または潰瘍形成を特徴とする慢性有痛性膀胱障害の一つ、間質性膀胱炎を患っているが、その病因はわかっていない。本明細書に記載するとおり、本発明は、この障害を持つ患者の膀胱上皮細胞によって特異的に分泌される、細胞増殖の新規グリコシル化frizzled関連ペプチド阻害物質に向けられる。この抗増殖因子(APF)は、細胞接着タンパク質および成長因子産生の調節により、膀胱細胞増殖を阻害する。APFの構造は、イオントラップ質量分析、酵素消化、レクチンアフィニティクロマトグラフィー、および全合成を使って推定し、マイクロキャピラリーLC/MSでのネイティブおよび合成APF誘導体の同時溶出によって確認した。標準型のAPFは、酸性熱安定性シアロ糖ペプチドであり、そのペプチド鎖はfrizzled 8の推定第6膜貫通ドメインに対して100%の相同性を持つと決定された。合成およびネイティブAPFはどちらも正常膀胱上皮細胞およびT24膀胱癌細胞中で同じ生物活性を持った。ノーザンブロット解析により、frizzled 8セグメントの配列を含有するプローブと、間質性膀胱炎患者の細胞から抽出されたmRNAとの結合が示されたが、対照ではこれが認められず、合成APFペプチドに対して生じさせた抗体は精製ネイティブAPFに用量依存的に結合した。したがってAPFは、もっぱらfrizzledタンパク質の膜貫通セグメントを含有することが示された初めてのfrizzled関連ペプチドであり、間質性膀胱炎の潜在的生体マーカーである。
【0109】
報告された結果は、間質性膀胱炎患者から外植された膀胱上皮細胞によって特異的に産生されるAPFが、独特な修飾を受けたfrizzled 8関連シアロ糖タンパク質であり、このGタンパク質共役Wntリガンド受容体(Saitohら,2001)の第6膜貫通セグメントに対して100%の相同性を有するペプチド構造を持つことを証明している。本発明の一部の実施形態ではこの小さい分泌型frizzled関連ペプチドが、胚形成中にヒト膀胱上皮細胞中で正常に発現され、別の実施形態では、これらの患者に由来する膀胱上皮細胞によってのみ産生されるのが、frizzledタンパク質の異常変異体である。しかし、この障害に対するその特異性および分泌型frizzled関連ペプチド成長阻害物質としてのその同定は、この疾患の病理発生におけるその役割を示している。APFの同定により、APFの産生もしくは活性の阻害またはAPF破壊の刺激に基づく間質性膀胱炎処置の開発を考えることが可能になる。また、一部の実施形態では、成人においては間質性膀胱炎患者由来の膀胱上皮細胞だけがAPFを発現させることから、この障害の直接的非侵襲性診断試験が考えられる。
【0110】
今までに、2つの疾患状態が、APF以外の分泌型frizzled関連タンパク質の異常に増加した発現と関係すると注目されていた。すなわち、対照心臓と比較して不全心室中で2つのそのようなタンパク質のmRNAが上昇することが示されている過負荷誘発性心不全(Schumannら,2000)と、ある分泌型frizzled関連タンパク質およびそのmRNAの発現が著しく上昇する変性網膜疾患(Jonesら,2000)である。以前に同定された分泌型frizzled関連タンパク質はシステインリッチな細胞外ドメインを含有しており、それにより、2つの機序(すなわちWntリガンドへの結合による機序、またはfrizzled受容体との非シグナル伝達性二量体の形成による機序)の一方によってWntシグナル伝達を阻害することができる(Baficoら,1999)。したがってAPFは、frizzled受容体の膜貫通部分だけに相同性を有する初めてのfrizzled関連成長阻害物質であり、frizzled関連タンパク質による成長阻害が別の機序によって起こりうることを示唆している。APFは今までに同定されたなかで最も小さい分泌型frizzled関連ペプチドでもあり、以前に記載されたfrizzled関連ペプチドは33.5〜39.9kDaを持つ(JonesおよびJomacy,2002)。
【0111】
APFが膀胱上皮細胞中のJun N末端キナーゼを含むいくつかの遺伝子の発現を減少させることは、マイクロアレイ解析により、先に示されていることから(Keayら,2003)、APFはfrizzled受容体タンパク質によって媒介される非カノニカルWntシグナル伝達を妨害しうる可能性が示唆される(Pandurら,2002)。しかし、細胞骨格のその基層への結合は、アクチン-カテニン複合体のE-カドヘリン(これは、その発現が膀胱上皮細胞においてAPFによって有意にアップレギュレートされることも示されており(Keayら,2003)、インビトロでは尿路上皮癌細胞でも正常尿路上皮細胞でもカノニカルWntシグナル伝達を阻害することが知られている(Thievessenら,2003)タンパク質である)への結合を含む。したがって、どんな理論にも束縛されるものではないが、具体的実施形態では、APFは、膀胱癌細胞または正常膀胱細胞におけるカノニカルまたは非カノニカルWnt経路の阻害によって、その抗増殖作用を媒介する。
【0112】
他の強力なシアリル化低分子糖ペプチド成長阻害物質が、正常哺乳動物の血清または脳から単離され、様々な組織に由来する正常細胞と悪性細胞の両方の増殖を阻害することが示されているが(Augerら,1989;Moosら,1995)、これらの天然成長阻害物質はいずれもその構造データを利用することはできず、それらのfrizzled関連タンパク質または何らかの特異的シグナル伝達経路との関係も決定されていない。したがってAPFは、この種類の成長阻害物質のなかで初めて完全に特徴づけられたものであると共に、初めて合成されたものでもある。APFによる抗増殖活性および成長因子産生の調節にはα-O-結合型N-アセチルヘキソサミン構造が必要であることから、APFは、別のシアロ糖ペプチド成長阻害物質について示唆されているように(SharifiおよびJohnson,1987)、特異的細胞受容体に結合しうることが示唆される。さらに、APFのペプチド部分の極端な疎水性から、これが形質膜と相互作用し、細胞表面で、糖部分の異なるコンフォメーションを呈しうる可能性も示唆される。
【0113】
III.抗増殖因子(APF)
本発明は、抗増殖因子(APF)と関係する組成物および方法を包含する。APFは、膀胱上皮細胞、皮膚線維芽細胞、および前立腺細胞を含む他の上皮細胞の増殖を阻害する糖ペプチドを含み、一部の実施形態では、膀胱上皮細胞、例えば間質性膀胱炎に関係するものによって産生される。特定の実施形態では、本化合物は間質性膀胱炎を持つ個体の尿中に存在する。別の実施形態では、本化合物は、膀胱組織および膀胱細胞以外の組織および細胞によって産生または生合成される。本発明の一態様では、本化合物が毒素、負の成長因子、またはその両方とみなされる。
【0114】
APFは、膀胱壁を裏打ちする細胞の成長を(具体的実施形態ではこれらの細胞によるいくつかのタンパク質、例えば特異的成長因子および細胞接着タンパク質、の産生を変化させることによって)阻害するというその能力ゆえに同定された。どの理論にも束縛されないが、さらなる実施形態では、APFは、間質性膀胱炎(膀胱内壁が一般に薄くそして/または潰瘍を形成する)を引き起こす。
【0115】
したがって、本明細書で使用する用語「APF」は、ある種類の化合物を指し、図4の構造は単なるプロトタイプAPFであって、他の関連組成物も、それらが膀胱状態の診断に役立ち、そして/または細胞増殖の異常な増加に関係する障害を処置するための直接的もしくは間接的標的として有用である限り包含され、それらの阻害物質は細胞増殖の減少に関係する障害の処置に有用である。
【0116】
本発明の特定態様ではAPFは図4に記載の構造を含むが、これは単に本発明の一実施形態に過ぎない。図4の構造は膀胱上皮細胞によって分泌されうるので、これが間質性膀胱炎などの膀胱障害の診断に役立つことは、当業者には理解される。しかし一部の実施形態では、類似しているが同一ではないAPFの構造が膀胱障害の診断に役立つ。本明細書におけるAPF組成物は単離された天然APF、その合成型、その誘導体、またはそれらの混合物をいずれも包含する。さらに、本発明の化合物は、合成的手段を使って製造するか、自然源(例えば膀胱上皮細胞、それらの細胞外培地、組織または尿、血清もしくは血漿などの体液)から単離することができる。
【0117】
さらに、図4に示すAPFの構造を持つ分子の阻害は、本発明にとって有用であるが、APFの類似構造を持つ分子の阻害も有用でありうる。阻害は、例えば抗体などによってAPFの機能を阻害することに向けられたものであってもよいし、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子干渉RNAなど、APFの産生を阻害するためであってもよいし、APFの破壊を刺激するためであってもよいし、それらの組合せであってもよい。
【0118】
したがって、具体的実施形態では、本発明に関する組成物は、約1〜約6個の糖残基と、約2〜約15個のアミノ酸残基とを含み、ペプチドは糖部分の1つに連結アミノ酸で連結され、連結アミノ酸は連結アミノ酸の連結部分として役立つヘテロ原子を含む。より具体的には、連結アミノ酸はセリン、スレオニン、またはシステインを含む。別の具体的実施形態では、本発明の組成物は2または3個の糖残基と9個のアミノ酸とを含み、連結アミノ酸はスレオニンまたはセリンである。
【0119】
本発明のある特定態様では、APF組成物がその一部に疎水性部分、例えばペプチド(例えば配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号4、配列番号5を含むもの)または脂質を含みうる。ペプチドは膜貫通ドメインの少なくとも一部を含むことができ、特定の実施形態では、frizzled 8の一部、例えばfrizzled 8の膜貫通ドメインを含む。具体的実施形態では、ペプチドは疎水性である。
【0120】
配列番号1のペプチドまたはその変異体に共有結合的に連結されたN-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミンに共有結合的に連結されたガラクトースを含む糖タンパク質が、ここに提供される。「その変異体」という用語は様々なタイプのペプチドミメティックを包含する(Ahnら,2002)。ペプチドは、任意の適切なアミノ酸、例えばL-アミノ酸、D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸、またはそれらの組合せなど、ならびにペプチドミメティック化合物、例えば非天然アミノ酸、または活性ペプチドに対応する線状、環状、もしくは分岐状ペプチドの特異的構造要素を模倣する他の「ペプチド様」有機構築物を含みうる。糖部分は天然物、合成物、糖質ミメティックであることができ、それらの混合物を組成物中に使用することもできる。糖が糖質ミメティック部分であるか、ペプチド成分がペプチドミメティック部分であるか、それら2つの組合せである糖ペプチドミメティック化合物は、本発明に包含される。具体的実施形態では、本発明の糖はアミノ糖を含む。
【0121】
本発明の特定態様では、APFは1482.8の分子量を持ち、9個のアミノ酸と3個の糖部分とを以下の順序で含む:(a)シアル酸-ガラクトース-N-アセチルガラクトサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、または(b)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、または(c)シアル酸-ガラクトース-N-アセチルグルコサミン-セリン-ロイシン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン。本組成物はさらに以下の1つ以上を有すると定義することができる:(a)中のシアル酸がガラクトースに2,3結合によって連結される;(b)中のシアル酸がガラクトースに2,3結合によって連結される;(c)中のシアル酸がガラクトースに2,3結合によって連結される;(a)中のガラクトースがN-アセチルガラクトサミンに1,3結合によって連結される;(b)中のガラクトースがN-アセチルグルコサミンに1,4結合によって連結される;(c)中のガラクトースがN-アセチルグルコサミンに1,4結合によって連結される;N-アセチルグルコサミンがセリンにO結合によってアルファ配置で連結される;またはN-アセチルガラクトサミンがスレオニンまたはセリンにO結合によってアルファ配置で連結される。
【0122】
本発明の化合物は、一定の特徴が改善されるように、例えば水溶性ユニットの付加により溶解度が改善されるように、修飾しうると考えられる。「水溶性ユニット」という用語は水溶性を付与する任意の官能基、例えばS03-、PO32-、CH2COO-、エステル結合またはアルキル結合を介して取り付けられた4級アンモニウム基、例えばC=O(CH2)xNAlk3または(CH2)xNAlk3(式中、Alk3は、独立してC1-C4アルキルである3個のアルキル基を表し、xは1〜4である)、(CH2CH2O)nCH2CH2OX(n=1〜3)(XはHまたはCH3であることができる)、すなわちPEGまたはMeO-PEGなどを意味するが、これらに限定されるわけではない。電荷を有する水溶性ユニットの対イオンには、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属などの金属、ならびにハロゲンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0123】
本発明の一定の化合物は、N末端にスレオニン、セリンもしくはシステイン、または任意の機能的等価物を含む。機能的等価物の非限定的な例には、1級もしくは2級もしくは3級アルコール、エステル、カルボン酸、エーテル、チオール、チオレート、または分子が生物学的機能を保つという条件で、糖分子との共有結合を可能にする任意の官能基を有する合成誘導体が含まれる。
【0124】
本発明の「誘導体」に考えられる他の官能基には、位置異性体であれ、構造異性体であれ、立体異性体であれ、任意の糖またはアミノ酸の異性体が含まれる。化学分野の当業者に知られる他の置換基も、当該分子の生物学的機能が保たれる限り、与えることができる。
【0125】
IV.診断実施形態
本発明の具体的実施形態では、1つ以上の膀胱障害を診断するために、本発明のAPF化合物を利用する。
【0126】
本発明の具体的態様では、ある個体に関するAPF化合物の同定は、特定の膀胱障害を発症する危険の増加を示し、一部のケースでは、その疾患の症状はまだ明白でない場合もある。したがって一部の実施形態では、本発明は、間質性膀胱炎などの膀胱状態を発症する素因を同定することを包含するか、またはその疾患の存在を同定することを包含する。
【0127】
本発明の具体的実施形態では、膀胱障害の診断が、APF糖ペプチドまたはその活性の検出を含み、検出はAPF分子の直接的検出であるか、または例えば中間体、副生成物、分解産物、誘導体などの間接的検出であることができる。APFの検出には当技術分野の任意の適切な手段を使用することができるが、具体的実施形態では、例えばAPFのペプチド部分、糖部分もしくは糖ペプチド部分に対する抗体;APFのペプチド、糖もしくは糖ペプチド部分を検出するための質量分析、核磁気共鳴、もしくはプロテオミクス法などの技術;またはAPF活性を検出するための正常もしくは悪性細胞の代謝もしくは増殖の阻害に関するアッセイを、検出に利用する。一般に、個体に由来する試料中のAPFのペプチド部分を検出するために使用されるアッセイは、当業者には周知であり、例えばウェスタンブロット解析、ELISAアッセイ、「サンドイッチ」アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学または他の抗体に基づくアッセイが含まれる(例えばColiganら「Current Protocols in Immunology」1(2),第6章,(1991)参照)。一般に、ウェスタンブロット法は、タンパク質またはペプチドをゲル電気泳動によって分割した後、それらをニトロセルロース、ナイロンまたは他のトランスファーメンブレンにブロットする技術である。タンパク質は、オートラジオグラフィー(標識されている場合)を含むいくつかの方法の一つで検出するか、標識、125I-標識または酵素結合抗体、レクチンまたは特異的結合剤への結合によって検出することができる。
【0128】
ELISAアッセイでは、まず、APFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分を含む抗原に特異的な抗体を作製する。これは好ましくはモノクローナル抗体である。次に、レポーター抗体が、通例、前記モノクローナル抗体に対して作製される。レポーター抗体には、放射性部分、蛍光部分または酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの検出可能試薬を取り付ける。試料を宿主から取り出し、試料中のタンパク質を結合する固形支持体、例えばポリスチレンディッシュ上でインキュベートする。次に、ウシ血清アルブミンまたは乳タンパク質などの非特異的タンパク質と共にインキュベートすることにより、ディッシュ上の遊離のタンパク質結合部位を全てブロックする。次に、抗体をディッシュ中でインキュベートすると、その間に抗体が、ポリスチレンディッシュに結合した試料に由来するAPFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合する。全ての未結合抗体を緩衝液で洗い流す。次にレポーター抗体をディッシュに入れて、レポーター抗体を、APFのペプチド部分に結合しているモノクローナル抗体に結合させる。次に、未結合のレポーター抗体を洗い流した後、APFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分を検出する。あるいは、抗APF抗体を上述のように直接標識してもよい。具体的実施形態では、与えられた体積の患者試料中に存在するAPFの量が、そのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分の検出に比例し、それを標準曲線と比較する。
【0129】
「サンドイッチ」アッセイはELISAアッセイに似ている。「サンドイッチ」アッセイでは、APFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分を、固形支持体上に通し、固形支持体に取り付けた抗体に結合させる。次に、二次抗体をAPFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチドに結合させる。次に、二次抗体に特異的な三次抗体を固形支持体上に通し、二次抗体に結合させることによって、二次抗体を検出する。あるいは、二次抗体を上述のように直接標識してもよい。
【0130】
V.治療実施形態
膀胱状態の治療法を提供するために本発明のAPF組成物を様々な方法で取り扱いうることは、当業者には理解される。例えば、間質性膀胱炎の場合のように増殖が望ましい治療実施形態では、APFの活性もしくは産生の阻害物質またはAPF分解の刺激物質を、治療に使用することができる。増殖が望ましくない治療実施形態では、APF組成物を治療に使用することができる。
【0131】
本発明の一態様では、有害な膀胱状態が細胞増殖の減少(例えば上皮細胞増殖の阻害)と間接的または直接的に関係する。そのような状態は、膀胱上皮の有害な改変をもたらしうるので、細胞増殖音阻害を軽減しまたは実質的に除去することは有益であるだろう。これらの態様では、その膀胱状態を持つ個体に、APF組成物の阻害物質を送達すること、例えばその個体に全身的に送達すること、または膀胱上皮に直接送達することが望ましい。APF阻害物質の具体例には、APF組成物のペプチド部分に対する抗体、オリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、APFとその標的との相互作用を遮断する小さい化合物、およびAPFの分解を引き起こすまたは刺激する化合物、および/またはそれらの混合物が含まれる。本組成物は任意の適切な手段によって送達しうるが、具体的実施形態では、カテーテルを通して、経口的に、静脈内に、局所的に、皮下に、経皮的に、筋肉内に、関節内に、非経口的に、腹腔内に、鼻腔内に、膀胱内に、または吸入によって、送達される。別の具体的実施形態では、本組成物は薬学的に許容できる賦形剤(例えば水性液体または非水性液体)に含まれる。本発明の具体的態様では、ペプチド部分の疎水性ゆえに、非水性賦形剤に入れて投与される。これは単独で、または担体、例えばリポソーム、被包された細胞、ウイルスベクター、ナノ粒子、生分解性ゲルもしくはポリマー、植込まれた浸透圧ポンプ、または他の適切な装置に入れて送達することができる。
【0132】
本発明のもう一つの態様では、有害な膀胱状態が、細胞増殖の増加(例えば上皮細胞増殖の増加)と間接的または直接的に関係する。そのような状態は膀胱上皮の悪性腫瘍をもたらしうるので、細胞増殖の量を部分的にまたは実質上完全に減少させることは有益であるだろう。これらの態様では、その膀胱状態を持つ個体に、APF組成物を送達すること、例えばAPF組成物をその個体に全身的に送達すること、または膀胱上皮に直接送達することが望ましい。本組成物は任意の適切な手段によって送達しうるが、具体的実施形態では、カテーテルを通して、経口的に、静脈内に、局所的に、皮下に、経皮的に、筋肉内に、経口的に、関節内に、非経口的に、腹腔内に、鼻腔内に、膀胱内に、または吸入によって、送達される。別の具体的実施形態では、本組成物は薬学的に許容できる賦形剤に含まれる。これは単独で、または担体、例えばリポソーム、被包された細胞、ウイルスベクター、ナノ粒子、生分解性ゲルもしくはポリマー、植込まれた浸透圧ポンプ、または他の適切な装置に入れて送達することができる。
【0133】
特定の実施形態では、本発明のAPF組成物を、任意の種類の癌、例えば上皮癌を持つ個体に投与することができる。具体的実施形態では、膀胱上皮の悪性腫瘍があり、それをここでは膀胱癌と呼ぶ場合もある。具体的実施形態では、APF処置に加えて癌治療、例えば遺伝子治療、化学療法、放射線、外科手術、免疫療法、またはそれらの組合せも行なわれる。
【0134】
VI.膀胱障害
本発明はAPFが治療になるような任意の医学的状態に役立ちうるが、具体的実施形態では、本発明は1つ以上の膀胱障害に有用である。「膀胱障害」という用語は、膀胱の任意の異常状態を指すが、具体的実施形態では、膀胱障害は、例えば間質性膀胱炎、膀胱癌(原発癌または二次癌)、慢性骨盤痛症候群、過敏性膀胱症候群、尿道症候群、有痛性膀胱症候群、慢性非細菌性前立腺炎、および他の膀胱状態を含む。
【0135】
本発明の具体的実施形態には、間質性膀胱炎に関する方法および組成物がある。間質性膀胱炎の典型的な症状には、疼痛(これは腹部、尿道または膣領域に感じうるもので、しばしば性交にも関連する)、尿意切迫(これは直ちに排尿する必要があるという感覚を含み、圧迫および/または痙直も伴いうる)、ならびに排尿頻度の増加(これは日中および/または夜間排尿頻度であることができる)が含まれる。
【0136】
今までのところ、間質性膀胱炎の診断は細胞検査を使って行なわれ、水圧拡張術および生検が通常は同時に行なわれる。間質性膀胱炎を持つ典型的な膀胱を細胞検査で検査すると、粘膜下層ピンポイント出血(グロメリュレーション)、上皮の菲薄化および/またはハンナー潰瘍が同定されうる。また、場合によっては、炎症も存在しうる。したがって、尿がIC患者の膀胱に入るとかなりの痛みが生じ、そのため、間質性膀胱炎患者は、灼熱痛、刺痛および疼痛ゆえに、その膀胱に尿を溜めておく能力を持つことが、極めて困難になる。
【0137】
現在の治療法には、例えばエルミロン、アミトリプチリン(エラビル)アタラックス、ニューロンチン、ジトロパン(Ditropan)、プロザック、シメチジンなどの経口薬が含まれる。本発明の具体的実施形態では、本発明に関係する治療剤が単独で、またはこれらの医薬品もしくは類似の医薬品の1つ以上と組み合わせて使用される。具体的実施形態では、患者が、他の様々な症候群、例えば線維筋痛、尿道症候群、慢性外陰部痛(vulvodynia)、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、アレルギー、および他の自己免疫障害、例えば強皮症なども患う。
【0138】
VII.薬学的組成物
本発明は、膀胱状態、例えば間質性膀胱炎、膀胱癌、上皮過形成もしくは上皮由来の悪性腫瘍、線維芽細胞過形成もしくは悪性腫瘍、他の固形腫瘍、またはリンパ網内系悪性腫瘍などの処置または改善に用いられる薬学的組成物にも向けられる。本発明の化合物を、膀胱癌または他の悪性腫瘍の補助処置として、抗血管新生剤または抗真菌剤として用いることも考えられる。さらに、本発明の化合物は、間質性膀胱炎または細胞増殖に関連する他の障害を処置するための抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、またはAPFとその標的との相互作用を遮断する薬剤を作製するためにも使用することができると考えられる。
【0139】
そのような方法では一般に、有効量の、本発明の糖ペプチドを含む薬学的組成物を投与する。他の例示的組成物は、有効量の、基本的に配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5に記載の配列を持つノナペプチドをコードするオリゴヌクレオチド、または配列番号1、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5に記載のペプチドをコードする配列の一部または全部を含む低分子干渉RNAを含む。
【0140】
本発明が本発明の化合物による処置に向けられる場合、本発明の化合物と、必要に応じて適切な薬学的賦形剤との投与は、許容される投与様式のいずれによっても行なうことができる。化合物は、適宜、動物に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応および/または他の不都合な反応をもたらさらない分子実体および/または組成物とみなしうる薬学的に許容できる賦形剤に含まれうる。これには、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および/または抗真菌剤、等張化および/または吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのそのような媒質および/または薬剤の使用は当技術分野では周知である。通常の媒質および/または薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が考えられる。
【0141】
したがって投与は、例えば静脈内、局所、皮下、経皮、筋肉内、経口、関節内、非経口、腹腔、鼻腔内、膀胱内投与、または吸入による投与であることができる。従って適切な投与部位には、皮膚、気管支、胃腸、肛門、膣、眼、膀胱、および耳が含まれるが、これらに限定されるわけではない。製剤は、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、停留管長剤、クリーム剤、軟膏、ローション剤、エアロゾル剤など、好ましくは正確な投与量の簡単な投与に適した単位剤形での、固形、半固形、凍結乾燥固体、または液体剤形の形態をとりうる。
【0142】
本組成物は典型的には通常の薬学的担体または賦形剤を含み、さらに他の医薬用薬剤、担体、アジュバントなどを含みうる。好ましくは、本組成は、1つ以上の本発明化合物が約5重量%〜75重量%であり、残りは適切な薬学的賦形剤からなるだろう。好適な賦形剤は、当技術分野で周知の方法(例えば「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES」第18版(Mack Publishing Co.,ペンシルバニア州イーストン(1990))によって、特定の組成物および投与経路に適合させることができる。
【0143】
経口投与の場合、そのような賦形剤には、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ゼラチン、ショ糖、炭酸マグネシウムなどが含まれる。本組成物は溶液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態をとりうる。
【0144】
一部の実施形態では、本薬学的組成物が、丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態をとり、したがって本組成物は、生物学的に活性なコンジュゲートと共に、以下の物質をどれでも含有することができる:希釈剤、例えばラクトース、ショ糖、リン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えばデンプンまたはその誘導体;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど;ならびに結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースおよびその誘導体。
【0145】
製剤の活性化合物は、例えばポリエチレングリコール(PEG)担体(例えばPEG1000[96%]およびPEG4000[4%])に配合された約0.5%〜約50%の本発明化合物を含む坐剤に製剤化することができる。
【0146】
液体組成物は、化合物(約0.5%〜約20%)および随意の薬学的アジュバントを、担体(例えば食塩水(例えば0.9%w/v塩化ナトリウム)、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなど)に溶解または分散して、例えば静脈内投与用の溶液剤または懸濁剤を形成させることによって製造することができる。活性化合物は停留浣腸剤に製剤化することもできる。
【0147】
所望であれば、投与される組成物は、微量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、またはオレイン酸トリエタノールアミンなども含有しうる。
【0148】
局所投与の場合、組成物は、例えばローション剤、経皮貼付剤など、任意の適切な形式で投与することができる。吸入による送達の場合、組成物は乾燥粉末として(例えばInhale Therapeutics)、またはネブライザーにより液状で、送達することができる。
【0149】
そのような剤形を製造する方法は知られているか、または当業者には明白であるだろう。例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」(上記)および同様の刊行物を参照されたい。投与される組成物は、いずれにせよ、本発明の教示するところに従って投与した場合に処置される状態を軽減するのに薬学的に有効な量のプロドラッグおよび/または活性化合物を含有するだろう。
【0150】
一般に本発明の化合物は、治療有効量(すなわち処置を達成するのに十分な投与量)で投与されるが、それは処置される個体および状態に依存して変動するだろう。典型的には、治療有効1日量は、1日につき0.1〜100mg/kg体重の薬物である。大半の状態は、1日あたり約1〜約30mg/kg体重、すなわち70kgの人の場合で1日あたり約70〜2100mgの総投与量の投与に応答するだろう。しかしAPFの有効量は、特に膀胱内に直接投与される場合には、この範囲外になる可能性もある。
【0151】
コンジュゲートの安定性は、ポリペプチド鎖中のDアミノ酸残基ならびに他のペプチドミメティック部分などといった化学的改変によって、さらに制御することができる。さらに、コンジュゲートの安定性を、非天然糖質残基によって強化することもできるだろう。
【0152】
VIII.併用処置
個体(例えば患者)における癌の処置に関するAPF組成物の有効性を増加させるために、これらの組成物を過剰増殖性疾患の処置に有効な他の薬剤(例えば抗癌剤)と組み合わせることが、望ましいかもしれない。「抗癌」剤は、例えば癌細胞を殺し、癌細胞のアポトーシスを誘導し、癌細胞の成長速度を低下させ、転移の発生もしくは数を減少させ、腫瘍サイズを減少させ、腫瘍成長を阻害し、腫瘍もしくは癌細胞への血液供給を減少させ、癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進し、癌の進行を防止もしくは阻害し、または癌を持つ対象の寿命を延ばすことなどによって、対象の癌に負の影響を及ぼす能力を持つ。より一般的には、これら他の組成物は、細胞を殺しまたは細胞の増殖を阻害するのに有効な併用量で投与される。この方法は、細胞を発現コンストラクトおよび薬剤または複数の因子と同時に接触させることを伴いうる。これは、細胞を、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤と接触させることによって、または細胞を、2つの異なる組成物または製剤(この場合、一方の組成物は発現コンストラクトを含み、他方は第2の薬剤を含む)と同時に接触させることによって、達成することができる。
【0153】
化学療法剤および放射線療法剤に抵抗性の腫瘍細胞は、臨床腫瘍学における大きな問題である。現在の癌研究の目標の一つは、化学療法および放射線療法の効力を、例えばそれを他の癌治療法と組み合わせることなどによって、改善する方法を発見することである。本発明との関連では、APF組成物治療は、他のアポトーシス促進剤または細胞周期調節剤だけでなく、化学療法、放射線療法、外科手術、または免疫療法による介入とも同様に併用することができるだろうと考えられる。
【0154】
あるいは、APF処置は、数分から数週間にわたる間隔で、他の薬剤処置の前、後、またはその両方に行なうことができる。APF組成物および他の薬剤が個体の細胞に別個に適用される実施形態では、一般に、APF組成物と他の薬剤とが細胞に対して有利な併用作用をまだ発揮することができるように、それぞれの送達があまり時間を置かずに行なわれることが保証されるだろう。そのような場合は、細胞を両方のモダリティと互いに約12〜24時間以内に、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に接触させるだろうと考えられる。しかし場合によっては、処置期間をかなり延ばすことが望ましいこともあり、その場合は、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する。
【0155】
例えばAPF処置を「A」、放射線療法または化学療法などの第2剤を「B」とすると、A/B/A、B/A/B、B/B/A、A/A/B、A/B/B、B/A/A、A/B/B/B、B/A/B/B、B/B/B/A、B/B/A/B、A/A/B/B、A/B/A/B、A/B/B/A、B/B/A/A、B/A/B/A、B/A/A/B、A/A/A/B、B/A/A/A、A/B/A/A、A/A/B/Aなど、様々な組合せを使用することができる。
【0156】
患者への本発明のAPF組成物の投与は、その分子にもし毒性があれば、その毒性を考慮しつつ、化学療法剤の投与に関する一般的プロトコールに従って行なわれるだろう。処置サイクルは必要なだけ繰り返されるだろうと考えられる。また、種々の標準的治療ならびに外科的介入を、記載されている過剰増殖細胞治療と組み合わせて適用してもよいと考えられる。
【0157】
A.化学療法
細胞成長を阻害するための本明細書に記載のAPF処置に加えて、他の化学療法剤も新生物疾患の処置に有用であることは、当業者には理解される。そのような化学療法剤の例には、例えばシスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロルエタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビンエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害物質、トランスプラチナム、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前記の任意の類似体もしくは誘導変異体が含まれる。
【0158】
B.放射線療法
DNA損傷を引き起こす他の因子であって広範に使用されているものには、一般にγ線と呼ばれているもの、X線、および/または放射性同位体の腫瘍細胞への指向的送達が含まれる。マイクロ波およびUV照射など、他の形態のDNA損傷因子も考えられる。おそらく、これらの因子はいずれも、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対して、広範な損傷をもたらすだろう。X線の線量範囲は、長期間(3〜4週間)にわたる50〜200レントゲンの1日線量から、2000〜6000レントゲンの単回線量までにわたる。放射性同位体の投与量範囲は広く変化し、その同位体の半減期、放出される放射線の強さおよびタイプ、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0159】
細胞に適用される「接触」または「ばく露」という用語は、ここでは、治療コンストラクトおよび化学療法剤または放射線療法剤が標的細胞に送達されるか、標的細胞のすぐ近くに置かれる過程を説明するために用いられる。細胞死または細胞静止を達成するために、両薬剤は、細胞を殺すか細胞の分裂を防止するのに有効な併用量で細胞に送達される。
【0160】
C.免疫療法
免疫療法剤は、一般に、免疫エフェクター細胞および免疫エフェクター分子を使用した癌細胞の標的化および破壊に頼っている。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面にある何らかのマーカーに特異的な抗体であることができる。抗体だけで治療のエフェクターとして役立ちうるか、または実際に細胞を殺す他の細胞を抗体が動員しうる。抗体は薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートして、単にターゲティング剤として役立たせることもできる。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子を持つリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0161】
したがって免疫療法はAPF治療法と共に併用療法の一部として使用することができる。併用療法の一般的アプローチを以下に議論する。一般に、腫瘍細胞は、ターゲティングに適した(すなわち他の細胞の大半に存在しない)何らかのマーカーを持たなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、それらはいずれも本発明との関連でターゲティングに適しうる。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、尿腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155などがある。
【0162】
G.遺伝子
さらにもう一つの実施形態では、二次的処置が、標的組織に対して併用抗増殖作用を持つ第2治療ポリヌクレオチドをAPF分子の前、後、またはAPF分子と同時に投与する二次遺伝子治療である。細胞増殖の阻害物質、例えばp53を含む腫瘍抑制因子、および/またはプログラム細胞死の調節物質、例えばBcl-2など、様々なタンパク質が、本発明に包含される。
【0163】
E.外科手術
癌を持つ人の約60%は、予防的、診断的または病期分類的、治療的および姑息的外科手術を含む何らかのタイプの外科手術を受けるだろう。治療的外科手術は、例えば本発明の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法および/または代替療法などの他の治療法と一緒に使用しうる癌処置である。
【0164】
治療的外科手術には、癌性組織の全部または一部を物理的に除去、切除、および/または破壊する摘除術が含まれる。腫瘍摘除とは腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍摘除の他にも、外科手術による処置には、レーザー外科手術、凍結外科手術、電気外科手術、および顕微鏡下外科手術(モース氏手術)が含まれる。さらに、本発明は表在性癌、前癌、または付帯量の正常組織の除去と一緒に使用することができると考えられる。
【0165】
癌性の細胞、組織、または腫瘍の一部または全部を切除すると、体内に空洞が生じうる。追加の抗癌治療法によるその領域の灌流、直接注射または局所適用によって、処置を達成してもよい。そのような処置は、例えば1、2、3、4、5、6もしくは7日ごと、または1、2、3、4および5週間ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月ごとに繰り返すことができる。これらの処置は様々な投薬量で行なうこともできる。
【0166】
F.他の薬剤
他の薬剤も、処置の治療効力を改善するために、本発明と組み合わせて使用することができると考えられる。これらの追加薬剤には、免疫調整剤、細胞表面受容体およびギャップジャンクションのアップレギュレーションに影響を及ぼす薬剤、細胞増殖抑制剤および分化誘導剤、細胞接着の阻害物質、またはアポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感受性を増加させる薬剤が含まれる。免疫調整剤には、腫瘍壊死因子、インターフェロンアルファ、ベータ、およびガンマ、IL-2および他のサイトカイン類、F42Kおよび他のサイトカイン類似体、またはMIP-1、MIP-1ベータ、MCP-1、RANTES、および他のケモカイン類が含まれる。さらに、細胞表面受容体またはそれらのリガンド(例えばFas/Fasリガンド、DR4またはDR5/TRAILなど)のアップレギュレーションは、過剰増殖細胞に対するオートクリンまたはパラクリン作用の樹立によって、本発明のアポトーシス誘導能力を増強するだろうと考えられる。ギャップジャンクション数の上昇による細胞間シグナル伝達の増加は、近傍の過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖作用を増大させるだろう。別の実施形態では、処置の抗過剰増殖効力を改善するために、細胞分裂抑制剤または分化誘導剤を本発明と組み合わせて使用することができる。細胞接着の阻害物質は本発明の効力を改善すると考えられる。細胞接着阻害物質の例は焦点接着キナーゼ(FAK)阻害物質およびロバスタチンである。さらに、処置効力を改善するために、アポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を増加させる他の薬剤、例えば抗体c225などを、本発明と組み合わせて使用することもできると考えられる。
【0167】
ホルモン療法も本発明と一緒に、または上述した他の任意の癌治療法と組み合わせて使用することができる。ホルモンの使用は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌または子宮頚癌などの一定の癌の処置に、テストステロンまたはエストロゲンなどの一定のホルモンのレベルを低下させたり、その作用を遮断したりする目的で利用することができる。この処置は、1つの処置選択肢として、または転移の危険を減少させる目的で、少なくとも1つの他の癌治療法と組み合わせて、しばしば使用される。
【0168】
IX.キット
本発明の糖タンパク質に関係する診断および/または治療キットは、本発明のもう一つの態様を構成する。そのようなキットは一般に、適切な容器手段中に、本発明のAPF分子、例えば基本的に配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に記載する配列(ただしこれらに限定されるわけではない)を持つペプチドを含む糖タンパク質、またはそのような分子を検出する手段を含有する。本キットは、APF組成物を含有する単一の容器手段を持つか、APF組成物およびそのようなキット内に含まれうる他の試薬類のための相異なる容器手段を持つことができる。他のキットは、適切な容器手段中にAPFの阻害物質、例えば抗体、低分子干渉RNAなどを含みうる。診断キットは、APF組成物を同定するための任意の適切な試薬類、例えば抗体などを含みうる。
【0169】
本キットの成分は、溶液として、または乾燥粉末として提供することができる。成分を溶液として提供する場合、その溶液は水性または非水性溶液であり、滅菌された水性または非水性溶液は特に好ましい。試薬類または成分を乾燥粉末として提供する場合、その粉末は、適切な溶剤の添加によって復元することができる。溶剤も別の容器手段に入れて提供しうると考えられる。
【0170】
キットは、例えばイムノアッセイに必要とされるように、基本的に配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に記載の配列を持つペプチドを検出するための試薬類を含みうる。免疫検出試薬は典型的には抗体もしくは抗原に付随したラベルまたは二次結合リガンドに付随したラベルを含むだろう。例示的リガンドには、ラベルが付随している第1抗体もしくは抗原に対する二次抗体、またはビオチンもしくはアビジン(またはストレプトアビジン)が含まれうる。もちろん、例示的ラベルの多くは当技術分野で知られており、そのようなラベルはいずれも本発明に関連して使用することができる。キットは抗体-ラベルコンジュゲートを、完全にコンジュゲートされた形態で、中間体の形態で、またはキットの使用者によってコンジュゲートされるようになっている別個の部分として、含有しうる。
【0171】
容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ビン、注射器または他の容器手段であってその中に抗原または抗体を入れ、好ましくは適切に小分けすることができるものを含むだろう。第2結合リガンドを提供する場合、キットは一般に、第2のバイアルまたは他の容器であってその中にそのリガンドまたは抗体を入れることができるものも含有するだろう。本発明のキットは、典型的には、商業的販売のために抗体、抗原、および試薬容器をぴったりと囲んで含有する手段も含む。そのような容器には、射出成形またはブロー成形されたプラスチック製容器であってその中に所望のバイアルを保持しておくものが含まれうる。
【0172】
X.APF抗体
もう一つの態様として、本発明では、タンパク質または糖組成物、例えば本発明のペプチド、糖、糖ペプチド、またはそれらの組合せと免疫反応する抗体が考えられる。ペプチドは、より大きい組成物、例えば本発明のAPFの一部から構成されうる。
【0173】
抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる。好ましい実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。抗体を製造し特徴づける手段は当技術分野では周知である(例えばHowellおよびLane,1988参照)。
【0174】
簡単に述べると、アジュバントまたは免疫応答を強化する他のそのような分子(例えばKLH)を使って、または使わずに、本発明のペプチド、糖または糖ペプチドを含む免疫原で動物を免疫し、免疫された動物から抗血清を集めることによって、ポリクローナル抗体を作製する。広範囲にわたる動物種を抗血清の産生に用いることができる。典型的には、抗抗血清の産生に用いられる動物はウサギ、マウス、ラット、ニワトリ、ハムスターまたはモルモットである。ウサギの血液量は比較的多いので、ウサギはポリクローナル抗体の産生にとって好ましい選択肢である。
【0175】
当業者には一般にわかるだろうが、APFペプチド、糖、糖ペプチド、特に配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5によって表されるもの、その変異体およびエピトープに特異的な抗体は、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でも、通常の免疫技術を使って作製することができる。APFの抗原性エピトープを含有する組成物は、1以上の実験動物、例えばウサギ、ニワトリ、またはマウスを免疫するのに使用することができ、そうすればそれらの実験動物は、APFのペプチド、糖、または糖ペプチド領域に対する特異的抗体を産生するようになるだろう。抗体が生成するまで待ってから、単に動物から採血し、全血から血清試料を調製するだけで、ポリクローナル抗血清を得ることができる。
【0176】
モノクローナル抗体を取得する場合も、まず、実験動物(しばしば好ましくはマウス)をAPF組成物で免疫することになるだろう。次に、抗体を生成させるのに十分な時間が経ってから、その動物から脾細胞またはリンパ細胞の集団を得る。次に、その脾細胞またはリンパ細胞を細胞株、例えばヒトまたはマウス骨髄腫株と融合させて、抗体分泌ハイブリドーマを作出することができる。これらのハイブリドーマを単離して個々のクローンを得た後、それらを所望のAPFペプチド、糖、または糖ペプチドに対する抗体の産生に関してスクリーニングすることができる。
【0177】
免疫化に続いて、脾細胞を取り出し、標準的融合プロトコールを使って形質細胞腫細胞と融合させることにより、APFおよび/またはAPFペプチドに対するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作出する。選択した抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを標準的技術、例えばELISAおよびウェスタンブロット法を使って同定する。次に、ハイブリドーマクローンを液体培地中で培養し、培養上清を精製することにより、APF特異的モノクローナル抗体を得る。
【0178】
本発明のモノクローナル抗体は、標準的免疫化学手法(例えばELISAおよびウェスタンブロット法)、ならびにAPFエピトープに特異的な抗体を利用しうる他の手法に、有用な用途が見つかるだろう。
【0179】
また、特定のペプチドに特異的なモノクローナル抗体は他の有用な用途にも利用できると考えられる。例えば免疫吸着プロトコールにおけるそれらの使用は、ネイティブもしくは組換えAPF種またはその変異体の精製に役立ちうる。
【0180】
一般に、APFに対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、様々な実施形態で使用することができる。例えばそれらは、APFまたは関連タンパク質をコードするcDNAまたは遺伝子を得るための抗体クローニングプロトコールに使用することができる。これは、APFエピトープを認識するハイブリドーマ細胞もしくはリンパ球の選択、またはAPFエピトープを認識する抗体もしくはそのセグメントの作製にも使用しうる。また、細胞または動物におけるAPFの作用を解析するための阻害研究にも使用することができる。抗APF抗体は、様々な細胞事象中のAPFペプチドの分布を解析するための(例えば異なる生理学的条件下でAPFペプチドまたは糖ペプチドの細胞特異的または組織特異的分布を決定するための)免疫学的局在決定研究にも役立つだろう。そのような抗体の特に有用な用途は、ネイティブまたは組換えAPFペプチドまたは糖ペプチドの(例えば抗体アフィニティーカラムなどによる)精製における用途である。そのような免疫学的技術の作用はいずれも、本開示に照らして当業者にはわかるだろう。
【0181】
本発明をその特定実施形態に関して説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えうることは、当業者には理解されるだろう。本願特許請求の範囲は、ここに記載する具体的実施形態に限定されないものとする。
【0182】
本発明は、APF組成物に対する抗体、例えばペプチド部分、糖部分、および/または糖ペプチド部分に対する抗体を作製する方法も包含する。ペプチド部分は、例えば配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6などを含む。次に、これらの抗体を、例えば間質性膀胱炎などの膀胱状態の検出、膀胱状態の診断、またはAPF組成物を阻害するためなどの治療的目的に、利用することができる。
【0183】
XI.抗増殖因子の阻害物質のスクリーニング
APF活性の阻害物質は、例えば直接または間接細胞増殖阻害アッセイなどを使って、スクリーニングすることもできる。直接アッセイでは、APFによる正常細胞増殖または悪性細胞増殖の阻害が、用量依存的に打ち消される。この目的には、トリチウム化チミジン取り込み、ブロモデオキシウリジン取り込み、生細胞数、または細胞増殖の検出に使用される数多くの市販化合物のいずれかを含む細胞増殖アッセイを使用することができるだろう。間接アッセイでは、APFによる正常細胞代謝または悪性細胞代謝の阻害を、細胞増殖の間接的指標として使用する。その場合は、APFによる細胞代謝の阻害が、APF活性の阻害物質によって用量依存的に打ち消されるだろう。
【実施例1】
【0184】
例示的な方法および試薬
細胞培養
細胞検査は、先に記述されているように(Keayら,2001;Keayら,2000;Keayら,2003a;Keayら,2003b;Keayら,1996)、全身麻酔下で行い、リジッドコールドカップ(rigid cold cup)生検鉗子を使って、過去に細胞検査を受けたことがあって間質性膀胱炎のNIDDK/NIH診断基準を満たす6人の患者と、尿路疾患に関して無症候である6人の年齢、人種および性別対応対照とから、粘膜下膀胱組織を伴う4mm2の移行上皮片を得た。患者は全員、少なくとも18歳であり、メリーランド大学医学部の施設内審査委員会の指針に従って登録された。
【0185】
外植された上皮細胞を、これらの生検標本から、10%熱非働化ウシ胎仔血清(FBS)、1%抗生物質/抗真菌剤溶液、1%L-グルタミン、1.0U/mlインスリン(いずれもSigma(ミズーリ州セントルイス)から入手)および5μg/ml hEGF(R & D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を含むDMEM-F12(Media Tech、バージニア州ハーンドン)中、5%CO2雰囲気下に370Cで増殖させ、先に記述されているように(Keayら,2001;Keayら,2000;Keayら,2003a;Keayら,2003b;Keayら,1996)、AE-1/AE-3パンサイトケラチン抗体(Signet、マサチューセッツ州デダム)の結合によって特徴づけた。
【0186】
T24膀胱癌細胞(ATCC番号HTB4)はAmerican Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)から購入し、10%FBS、1%グルタミンおよび1%抗生物質/抗真菌剤溶液(いずれもSigmaから入手)を含有するマッコイ5A培地(Gibco-Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)で培養した。
【0187】
APF精製
外植した患者膀胱上皮細胞の上清からAPFを収集し、先に記述されているように(Keayら,2000)、分子量分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使って精製した。疑似APFは、正常対照膀胱上皮細胞と同じ精製手法を使って調製した。
【0188】
マイクロキャピラリーLC-MS/MS解析
マイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィー(mRPLC)は、イオントラップ質量分析計(LCQ Deca XP、ThermoFinnigan、カリフォルニア州サンホゼ)にオンライン接続したAgilent 1100キャピラリーLCシステム(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)を使って行なった。各試料の逆相分離は、3μm、孔径300ÅのC-18固定相(Vydac、カリフォルニア州ヘスペリア)を自分達でスラリー充填した内径75μm×長さ10cmの溶融シリカエレクトロスプレーイオン化キャピラリーカラム(Polymicro Technologies、アリゾナ州フェニックス)を使って行なった。試料注入後に、カラムを98%溶媒A(0.1%v/vギ酸-水溶液)で20分間洗浄し、40分間で2%溶媒B(0.1%v/vギ酸-アセトニトリル溶液)から42%溶媒Bまで、次に15分間で42%Bから95%Bまでの直線的ステップ勾配を使って、0.5μL/分の一定流速で勾配溶出を行なった。
【0189】
イオントラップ質量分析計は、各完全質量分析(MS)スキャン後に3回のタンデムMSスキャンが行なわれるデータ依存モードで作動させ、ここでは3つの最も豊富な分子イオンが、38%の標準化衝突エネルギー(normalized collision energy)を使った衝突誘起解離(CID)用に動的に選択された。加熱キャピラリーの温度およびエレクトロスプレー電圧はそれぞれ180℃および1.8kVとした。
【0190】
3H-チミジン取り込み
先に記述されているように(Keayら,2001;Keayら,2000;Keayら,2003a;Keayら,1996)、外植した正常ヒト膀胱上皮細胞への3H-チミジン取り込みによって、細胞増殖を測定した。簡単に述べると、精製ネイティブまたは合成APF(または適当な疑似調製物)を無血清MEM(グルタミンおよび抗生物質/抗真菌剤だけを含有するもの)で希釈し、細胞に適用した。細胞対照には無血清MEMだけを与えた。次に、細胞を5%CO2雰囲気下に37℃で48時間インキュベートした。次に細胞を1μCi/ウェルの3H-チミジンで4時間標識し、トリプシン処理し、不溶性細胞含有物を収集し、ガラス繊維濾紙上にメタノール固定し、取り込まれた放射能の量を決定した。3H-チミジン取り込みの有意な阻害を、各プレートの対照細胞の平均から2標準偏差を越える、1分あたりのカウント数の平均減少と定義した。
【0191】
細胞数決定
細胞計数実験では、外植した正常ヒト膀胱上皮細胞、LNCaP前立腺癌細胞、またはT24膀胱癌細胞を、10%FBS、1%抗生物質/抗真菌溶液、1%L-グルタミンを含有するMEM(初代膀胱細胞)、DMEM(LNCaP細胞)、またはマッコイ5A培地(T24細胞)中、1×104細胞/ウェルの密度でコーニング24穴組織培養プレート(VWR Scientific Products)に播種し、5%CO2雰囲気下に37℃で終夜インキュベートした。翌日、培地を除去し、1%抗生物質/抗真菌剤溶液および1%L-グルタミンを含有(3つの細胞タイプの全て)する無血清MEM、DMEM、またはマッコイ5A培地に置き換えた。次に、HPLC精製したAPFまたは合成APF(またはそれらの疑似調製物)を培地に加え、細胞をさらに5%CO2下に37℃でインキュベートした。48時間後に培養上清をELISAによる成長因子解析用に取り出し、細胞をトリプシン処理し、トリパンブルー(Sigma)で染色し、血球計を使って計数した。
【0192】
ELISA
HB-EGF−ELISAは、96穴Immuolon IIプレート(Dynatech Laboratories、バージニア州シャンティイ)を40℃にて200λ培養上清で終夜コーティングして、先に記述されているように行なった(Keayら,2001;Keayら,1998)。次にプレートを濯ぎ、ブロックし、抗HB-EGF抗体(1μg/ml)(R & D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を適用した。さらにインキュベートし、濯いだ後、ビオチン化抗ヤギIgG/アビジンDセイヨウワサビペルオキシダーゼを加えた。ABTS[2,2'-アジノ-ビス-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)]で発色させることにより、結合を検出した。405nmでの吸光度を読み取った。
【0193】
モノクローナル抗EGF抗体を製造者の使用説明書(R & D Systems)に従ってプレコーティングしたウェルに、EGF−培養上清(200λ)をピペットで入れた。インキュベートし、濯いだ後、HRP結合ポリクローナル抗EGFを加え、テトラメチルベンジジン(TMB)基質で発色させることにより、結合を検出した。450nmでの吸光度を読み取った。
【0194】
既知濃度のEGFまたはHB-EGFを使った結果から線形の吸光度対濃度曲線を作成し、吸光度値をプロットすることによって、試料濃度を決定した。
【0195】
酵素切断
部分精製APFを、3つの位置特異的ノイラミニダーゼ[2-3;2-3,6;2-3,6,8,9](いずれもSigmaから入手)のいずれかと共に37℃で2時間インキュベートした。対照APFは、同じ条件で、ただし酵素なしでインキュベートした。次に、APFを、3000MWカットオフのセントリコンフィルター(Amicon、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使った限外濾過によって酵素から精製し、各限外ろ過液の抗増殖活性およびレクチン結合を決定した。
【0196】
レクチン結合
HPLC精製したAPFまたは酵素処理したAPF試料を以下のアガロース結合レクチンに適用し、製造者の使用説明書に従って溶出させた:コムギ胚芽凝集素、コンカナバリンA、レンチルレクチン(いずれもAmershamから入手)、ビロードクサフジ(Vicia villosa)(Sigma)、アメリカデイゴ(Erythrina cristagalli)、グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)IおよびII、ピーナッツ凝集素、ジャカリン(Jacalin)レクチン(いずれもVector Labs(カリフォルニア州バーリンゲーム)から入手)、またはトリトリコモナス・モビレンシス(Tritrichomonas mobilensis)レクチン(Calbiochem-Novobiochem Corp.、カリフォルニア州サンディエゴ)。溶出物を3H-チミジン取り込みアッセイにより抗増殖活性について試験した。
【0197】
ショ糖密度勾配等電点電気泳動
HPLC精製したAPFを、LKB8100-1カラム(LKB Instruments Inc.、メリーランド州ゲイサーズバーグ)を使って15Wで18時間にわたって形成させたpH2〜10ショ糖密度勾配における高速等電点分離法で分画した。画分のpHを40℃で決定し、中和(pH7.0)した画分の抗増殖活性を3H-チミジン取り込みアッセイを使って正常膀胱細胞で決定した。
【0198】
APF合成
ペプチドの合成は、Nautilus 2400合成装置(Argonaut Technologies、カリフォルニア州フォスターシティー)を使って、アラニル2-クロロトリチル樹脂(Calbiochem-Novobiochem)上で、標準的Fmoc化学を利用して、固相法で行なった。N-{(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン}-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(Sigma-Aldrich、ウィスコンシン州ミルウォーキー)および1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(Anaspec,Inc.)試薬を利用して、Fmoc保護アミノ酸(Anaspec Inc.、カリフォルニア州サンホゼ)をカップリングした。他の試薬類はSigma-Aldrichから購入した。全ての中間体および最終生成物を質量分析によって検証した。
【0199】
Fmoc保護O-α-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニン.LeuckおよびKunzの方法(LeuckおよびKunz,1997)にわずかな変更を加えて、Fmoc-L-Thr(Calbiochem-Novabiochem)をフェナシルエステルに変換し、銀トリフレートの存在下に2-アジド-1-α-ブロモ-ヘキサ-O-アセチル-2-デオキシラクトースでグリコシル化した。反応は、α-アノマーに関して>98%の選択性が保証される−40℃で行なった。アノマー純度はプロトンNMR分光法によって決定した。そのフェナシルエステルを亜鉛/酢酸/無水酢酸で脱保護することにより、アジド基の同時還元と、その結果生じたアミノ基のアセチル化も起こった(SvarovskyおよびBarchi,2003)。分取用逆相(C8カラム)HPLCにより、最終生成物を精製した。
【0200】
Fmoc保護O-β-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニン.βアノマーの製造手法は、2-アジド-1-α-ブロモ-ヘキサ-O-アセチル-2-デオキシラクトースによるスレオニンのグリコシル化を−20℃で行なった点以外は、αアノマーの製造手法と同じである。この手法によって生じた生成物は、αアノマー(90%)とβアノマー(10%)の混合物であり、これは酢酸エチル/ヘキサン類勾配を用いるシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって容易に分離された。
【0201】
Fmoc保護O-α-[Galβ(1→3)GalNAc]-L-スレオニン.合成手法はFmoc保護O-α-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニンの製造に用いた方法と類似している。Qiuらが公表した手法(Qiuら,1996)にわずかな変更を加えて、Fmoc-L-スレオニンフェナシルエステルを三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の存在下にトリクロロアセトイミデート-二糖供与体でグリコシル化した。アジド基の変換およびフェナシルエステルの脱保護は、Fmoc保護O-α-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニン合成で用いた手法と同一である。
【0202】
糖ペプチド合成の一般的方法.グリコシル化Fmoc保護スレオニンをHATU/HOAtで活性化し、延長したカップリング時間(16時間)にわたって、ヒューニッヒ塩基の存在下で成長中のペプチド鎖に加えた。トリフルオロ酢酸、水、トリイソプロピルシランの混合物(90:5:5 v/v/v)を使って樹脂から糖ペプチドを切り離し、溶媒を減圧下で除去し、残渣を高真空下で乾燥した。その粗製乾燥糖ペプチドを無水メタノールに溶解し、ナトリウムメトキシド粉末で30分間処理した。HPLC-MSがアセチル基の完全な除去を示した時点で反応を酢酸で停止させ、蒸発乾固した。粗製脱アセチル化生成物を、C8逆相カラムを使った分取用HPLCによって精製した。
【0203】
N末端スレオニンヘキソサミド残基のシアリル化.ペプチドのN-アセチルヘキソサミン誘導体を、組換えラットα-2,3(N)シアリルトランスフェラーゼ(EMD Biosciences,Inc.、カリフォルニア州ラホーヤ)およびCMP-N-アセチルノイラミン酸基質(Sigma)を使って、250mM MOPS緩衝液(pH7.4)中で酵素的にシアリル化した。全ての粗製糖ペプチドをC8カラムでの逆相HPLCによって精製し、精製されたペプチドを質量分析によって解析した。
【0204】
ノーザンブロット解析
間質性膀胱炎を持つ6人の患者と、年齢、人種および性別対応無症候対照とに由来する外植膀胱上皮細胞から、Trizol/クロロホルム(Gibo-BRL)抽出を使って、全RNAを抽出した。各試料から等量のRNAを1%アガロース/2%ホルムアルデヒドゲルに負荷し、標準的ゲル電気泳動によって分離し、ナイロンメンブレンに転写した。APF mRNAのDIG標識プローブは、ヒトfrizzled 8タンパク質(EMBL NM-031866;例えば配列番号7)のヌクレオチド1626〜1632の既知配列(accgtgcccgccgcggtggtggtcgcc)(配列番号2)およびDIGノーザンスターターキットをSP6/T7/T3 RNAポリメラーゼ(Roche Applied Science、インディアナ州インディアナポリス)と共に使用することにより、ランダムラベル法で調製した。ベータアクチンmRNA用のDIG標識プローブはRoche Applied Scienceから購入した(ヒトベータアクチンのヌクレオチド69〜618を使って調製されたもの)(EMBL HSAC07)。CDP-Star(Roche Applied Science)を使って、化学発光検出により、ブロットを発色させた。
【0205】
抗APF抗体
配列番号1の誘導体から構成されるペプチド部分を含み、そこにN末端システイン残基が付加されている(配列番号6)APF組成物を製造することにより、合成APFペプチドを作製した。そのペプチドをシステイン残基(これが連結アミノ酸になる)で硫黄原子を介してKLHにカップリングし、抗体産生用の2頭のニュージーランド白ウサギに注射した(0.5mgペプチド/ウサギ)。月に1回の追加免疫注射を2回行なった後、血清を収集し、免疫グロブリン画分を精製し、HPLC精製したネイティブAPFおよびKLHに対するその反応性を、二次抗体にHRP結合ヤギ抗ウサギIgGを使って、ドットブロット形式で試験した。図7に示すように、これらの抗体はAPFおよびKLHを検出し、様々な既知濃度のAPFに対する標準曲線を作製することができた。免疫前抗体はAPFまたはKLHに結合しなかった。
【実施例2】
【0206】
質量分析解析によるアミノ酸の同定
本発明の具体的態様では、APF分子が、当技術分野における任意の適切な手段で、例えばAPFのペプチド、糖、または糖ペプチド部分の特性解析などによって、同定され、そして/または特徴づけられる。ある具体的実施形態では、質量分析を利用する。別の実施形態では、核磁気共鳴またはプロテミクス技術(同位体コードアフィニティアッセイを含む)などの技術、および高感度クロマトグラフィー法などを利用することができる。
【0207】
マイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィーを使って、質量分析用に、APFペプチドの極めて純粋な調製物を得た。HPLC精製APFの調製物3つをマイクロキャピラリー技術を使って解析したところ、3つのペプチドピークが各調製物にほぼ等しい比率で存在し、そのうちの1つだけが、初代膀胱上皮細胞に対してインビトロで抗増殖活性を持つことが示された。活性ピークのイオントラップ質量分析解析により、1482.8ダルトンの分子量が示された(図1A)。活性物質の衝突誘起解離によって生成するピークの解析により、末端シアル酸がヘキソース部分に連結されており、そのヘキソース部分はN-アセチルヘキソース部分に連結されていることが示された(図1B)。827ダルトンペプチド部分のさらなる解離後にN末端から存在する検出可能なアミノ酸部分には、アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニンが含まれていた(図1C)。存在する残りのN末端アミノ酸は合計351.4ダルトンの分子量を持っていた。相同ペプチドをコードする遺伝子の検索により、適切な総分子量を持つ配列(T-V-P-A-A-V-V-V-A:配列番号1)とWntリガンド受容体であるfrizzled 8(Qiuら,1996)の第6膜貫通領域中のアミノ酸541〜549との間に100%の相同性が示された。
【0208】
本発明のペプチド部分は配列番号1の保存的変異体、例えばアミノ酸配列S-V-P-A-A-V-V-V-A(配列番号3)、T-V-P-A-A-V-V-L-A(配列番号4)、S-L-P-A-A-V-V-V-A(配列番号5)、またはC-T-V-P-A-A-V-V-V-A(配列番号6)のアミノ酸配列を含むペプチドなども含みうる。これらの保存的変異体は、配列番号6の場合のように、化学的性質によって定義される既知の保存的置換または付加を含むと考えられる。例えばセリン、スレオニンおよびシステインは、本組成物の少なくとも1つの糖部分に連結するための手段となるヘテロ原子(連結手段として利用できる求核性または求電子性を持つ炭素または水素以外の原子)、具体的には酸素(O)および硫黄(S)を含み、本発明のペプチドおよび糖ペプチド中で交換した場合には、保存的変異体とみなされる。もう一つの例では、バリンサブユニットのいずれか一つを少なくとも1個以上のロイシンで置換する。
【0209】
ペプチドおよび/またはポリペプチドの機能性を実質的に変化させないアミノ酸置換を行ないうることは、当業者に知られている。したがって本発明では、基本的に配列番号1に記載の配列を持つペプチドを含む糖ペプチドが考えられる。「基本的に配列番号1に記載の配列」という用語は、その配列が配列番号1の一部に実質的に対応すること、および配列番号1のアミノ酸とは同一でないか、またはその生物学的機能等価物であるアミノ酸数が、比較的少ないことを意味する。「生物学的機能等価物」という用語は当技術分野では良く理解されており、本明細書ではさらに、基本的に配列番号1に記載の配列を持つタンパク質であって、上皮細胞の疾患状態に関係するものと定義される。したがって、配列番号1のアミノ酸と同一であるか機能的に等価なアミノ酸が、約50%未満、約50%〜約65%、70%および約80%、より好ましくは約85%〜約90%、さらに好ましくは約90および95%〜約99%であるような配列は、「基本的に配列番号1に記載」の配列であるだろう。しかし具体的実施形態では、APF分子は、2個以上のアミノ酸を置換してもまだ活性を含み、まだ活性でありうる。例えばペプチド全体を、疎水性であることができる誘導体化アミノ酸もしくはペプチドミメティック剤、または別の疎水性部分、例えば脂質で置換することができる。
【0210】
生物学的機能等価物
本発明のペプチドまたはそれらをコードするDNAセグメントの構造には修飾または改変を加えることができ、それでもなお、望ましい特徴を持つタンパク質またはペプチドをコードする機能的分子が得られる。以下は、等価な、さらには改善された第二世代分子を作製するために、タンパク質のアミノ酸を変化させることに基づく議論である。アミノ酸変化は、以下のコドン表に従ってRNA配列のコドンを変化させることによって達成しうる。
【表1】
【0211】
例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位などといった構造との相互作用的結合能力をほとんど失うことなく、一定のアミノ酸でタンパク質構造中の他のアミノ酸を置換することができる。タンパク質の生物学的機能活性を定義づけるのはそのタンパク質の相互作用能力および性質であるから、あるタンパク質配列と、当然、その基礎をなすDNAコード配列およびメッセンジャーRNA配列とに、一定のアミノ酸配列置換を施して、それでもなお類似する性質を持つタンパク質を得ることができる。したがって、ここに開示する組成物のペプチド配列または前記ペプチドをコードする対応DNAまたはRNA配列には、それらの生物学的有用性または活性を感知しうるほど失わずに、様々な変更を加えることができると考えられる。
【0212】
そのような変更を加える際には、アミノ酸のハイドロパシー指標を考慮することができる。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指標の重要性は、当技術分野で広く理解されている(KyteおよびDoolittle,1982;この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特徴が、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、ひいてはそれがそのタンパク質の他の分子(例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を定義づけるということは、広く受け入れられている。
【0213】
各アミノ酸にはそれらの疎水性および電荷特徴に基づいてハイドロパシー指標を割り当てられており(KyteおよびDoolittle,1982)、それらは以下の通りである:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9);、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)、およびアルギニン(4.5)。
【0214】
一定のアミノ酸を類似するハイドロパシー指標またはハイドロパシースコアを持つ別のアミノ酸で置換しても、類似する生物学的活性を持つタンパク質が得られること、すなわち、生物学的機能が等価なタンパク質が得られることは、当技術分野では知られている。このような変更を加える際には、ハイドロパシー指標が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるアミノ酸の置換は特に好ましく、±0.05以内であるアミノ酸の置換はさらに好ましい。
【0215】
また、類似アミノ酸の置換を親水性に基づいて効果的に行ないうることも、当技術分野では理解されている。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号には、隣接アミノ酸の親水性によって左右されるタンパク質の最大局所平均親水性が、そのタンパク質の生物学的性質と相関すると述べられている。
【0216】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、アミノ酸残基には以下の親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、トリプトファン(−3.4)。
【0217】
あるアミノ酸で、類似する親水性値を持つ別のアミノ酸を置換することができ、それでもなお生物学的に等価なタンパク質、特に免疫学的に等価なタンパク質が得られることがわかっている。このような変更では、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるアミノ酸の置換は特に好ましく、±0.5以内であるアミノ酸の置換はさらに好ましい。
【0218】
したがって、上に概説したように、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。上述の様々な特徴を考慮した例示的置換は当業者には周知であり、それらには、アルギニンおよびリジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、セリンおよびスレオニン、グルタミンおよびアスパラギン、ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが含まれる。
【0219】
また、アミノ酸配列は追加の残基、例えば追加のN末端またはC末端アミノ酸を含んでもよく、それでもなお、その配列が上記の基準(例えばタンパク質が関係する場合には生物学的タンパク質活性の維持)を満たす限り、本明細書に開示する配列の一つに基本的に記載されていると言えることも理解されるだろう。末端配列の付加は、特に、もう一つの分子(すなわち糖残基)への容易な共有結合を可能にするためにN末端またはC末端に隣接する様々な非天然アミノ酸配列を含みうる配列に当てはまる。
【実施例3】
【0220】
レクチン結合解析による糖部分の同定
本発明の具体的態様では、APF分子が、当技術分野における任意の適切な手段によって同定され、かつ/または特徴づけられる。ある具体的実施形態では、レクチン結合解析を利用して、糖部分を同定する。糖部分の同定には、例えば化学分解、NMR分光法、質量分析、および抗体結合を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)他の糖同定法も、使用することができる。
【0221】
ヘキソース部分およびヘキソサミン部分の同定および結合を決定するために、HPLC精製APFをそのネイティブ状態で種々のアガロース結合レクチンと共にインキュベートし、溶出液を抗増殖活性について試験した(表2)。
【0222】
【表2】
【0223】
ネイティブAPFはコムギ胚芽凝集素およびトリトリコモナス・モビレンシスレクチンに結合したが、他の様々なレクチンには結合しなかったことから、おそらく末端シアル酸残基が存在することが確認された。4つの既知結合[2,3、2,6、2,8、または2,9]のいずれかによって連結されたシアル酸を切断するノイラミニダーゼでネイティブAPFを処理しても、その生物学的活性を減少しなかったが、その後、生化学的活性毒の溶出とともに、グリフォニア・シンプリシフォリアI、ピーナッツ凝集素、ジャカリンレクチンおよびアメリカデイゴへのAPFの結合が可能になった。これらの結果は、それぞれ、ガラクトースおよびN-アセチルラクトサミン(ガラクトースβ1-4N-アセチルグルコサミン)が存在する可能性を示している。脱シアリル化APFがビロードクサフジレクチンには結合しないらしいことから、残りの二糖部分はガラクトースα1-3N-アセチルガラクトサミンからはなっていないことが示され、グリフォニア・シンプリシフォリアIIへの結合がないことから、N-アセチルグルコサミン部分はシアル酸の除去後も末端ではないことが確認された。次に、2,3結合切断に特異的なノイラミニダーゼによる消化後のグリフォニア・シンプリシフォリアIおよびアメリカデイゴレクチンへの結合を証明することにより、シアル酸はガラクトース部分に2,3結合によって連結されていることが判明した。したがってAPFの推定構造は、ペプチドのN末端のスレオニンにO結合しているガラクトースβ1-4N-アセチルグルコサミンまたはガラクトースβ1-3N-アセチルガラクトサミンに2,3結合したシアル酸だった。完全シアリル化ネイティブAPFの等電点電気泳動により、約2.3の等電点を持つ酸性ペプチドであることが示された。
【実施例4】
【0224】
APFの全合成
本発明は、抗増殖活性(特に膀胱細胞に対する抗増殖活性)を持ち、1個以上の糖部分と疎水性部分とを含む任意のAPF分子を包含する。単離された天然APF分子も、合成APF分子も、同様に本発明に包含される。特に、APF分子は、当技術分野における任意の適切な手段によって合成される。しかし具体的実施形態では、本分子は、この実施例に記載するように合成される。
【0225】
APFがアメリカデイゴに結合したこと、およびそれが膜結合型ペプチドではなくて分泌型ペプチドであることから、合成は、ノナ糖ペプチドの固相合成にαおよびβ-グリコシル化アミノ酸ビルディングブロックを使って、スレオニンに連結されたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)から開始した。化学酵素的アプローチを採用して、適切にFmoc保護されたN-アセチルラクトサミン-スレオニン糖アミノ酸を両方の配置で合成することによって、完全な分子を構築した。次に、これらを他の8アミノ酸を含有するペプチド鎖に組み込んだ。シアル酸部分はAPF活性にとって必要でないことがレクチン結合研究からわかっていたので、次にαおよびβ-N-アセチルラクトサミン修飾ペプチドの両方を、それらの抗増殖活性についてアッセイし、かつ外植初代正常膀胱上皮細胞による特異的成長因子産生を調節する能力についてアッセイした。
【0226】
ネイティブAPFと同様に、N-アセチルラクトサミン誘導体の非シアリル化アルファアノマーは、約0.4nMのIC50を持つ強力な細胞増殖阻害物質だった。最大阻害はわずか1nMの合成毒素で達成できた(図2)。これと比較すると、N-アセチルラクトサミン誘導体のベータアノマーおよび非グリコシル化ペプチドは測定可能な活性が低かった。そこで次に、組換え2,3-シアリルトランスフェラーゼを使ってノイラミン酸単位をアルファアノマーに付加したところ、シアリル化誘導体の抗増殖活性は、非シアリル化糖ペプチドと類似していることが確認された(図2)。3H-チミジン取り込みを最大限に阻害する同じ1nM濃度のシアリル化または非シアリル化アルファアノマー型合成APFは、細胞数を有意に減少させる(非掲載データ)と共に、初代膀胱細胞によるHB-EGF産生を有意に減少させ、かつEGF産生を増加させることも示された(表3)。したがって、これらの解析の全てから決定されるAPFは、アルファアノマー型シアロ糖ペプチドだった。
【0227】
【表3】
【0228】
*疑似APFと比較してp<0.0001
【0229】
†ペプチドのみと比較してp<0.0001
【0230】
しかし、スレオニンに連結されたベータアノマー型のN-アセチルグルコサミンは真核細胞で先に記載されたことがあるが、アルファ型はこれまでに記載されたことがなく、一方、O-α-N-アセチルガラクトサミンは修飾真核細胞タンパク質中によく見いだされる。そこで、ガラクトースにβ1→3結合したアルファアノマー型のN-アセチルガラクトサミンを含むように、APFを合成した。同じく図2に示すように、この合成APFはアルファN-アセチルグルコサミンを含む合成化合物と類似する活性を持っていた。そこで、GalNAc含有またはGlcNAc含有合成糖ペプチドと共に脱シアリル化ネイティブAPFを添加したマイクロキャピラリーLC-MS/MS(図3Aおよび3B)を使って、APFの正しい構造を立証した。ネイティブおよび合成GalNAc含有APF誘導体はどちらも同じ保持時間を持ち、それはGlcNAc含有化合物の保持時間とは容易に識別できた。したがってAPFの正しい構造は、図4に示すGalNAc含有シアロ糖ペプチドである。
【実施例5】
【0231】
ネイティブおよび合成APFによる膀胱癌細胞増殖の阻害
合成APFとネイティブAPFが同じであることを示すさらなる証拠は、膀胱癌T24細胞株に対するそれらの抗増殖活性を、トリパンブルー排除法で決定される生細胞数を使って測定することによって得られた。図5に示すように、これらの細胞はネイティブAPF種にも合成APF種にも、ほぼ同じ濃度で感受性を示す。
【実施例6】
【0232】
ノーザンブロット解析によるAPF mRNAの同定
APFがfrizzled 8関連ペプチドであることを示すさらなる証拠を得るために、IC患者6人および正常対照6人の外植膀胱上皮細胞から抽出したmRNAのノーザンブロット解析を行なった。図6に示すように、ノナペプチドをコードするプローブに結合する小さな(約460bpの)mRNA種は、APFを産生することが先に示されているIC患者由来の6つの細胞外植体の抽出物中にのみ存在し、APFを産生しない年齢、人種および性別対応対照に由来するどの外植細胞の抽出物にも存在しなかった。5回の実験中3回の実験で、対照標本には認められない約3100bpのかすかなバンドがIC標本に認められたが、他の2回の実験ではそれを検出することができず、主要バンドはいつでも450bpにあった。しかし、ヒトfrizzled 8の完全長mRNAのサイズ(4Kb)にはバンドが認められず、対照細胞ではどの実験でもバンドが認められなかった。これに対して、両群に由来する細胞はいずれも、類似する量のベータアクチンmRNAを産生するようだった。
【実施例7】
【0233】
APFの阻害化合物による治療実施形態
本発明の一部の態様では、その必要がある個体にAPFの阻害化合物を与えることによって、APFの抗細胞増殖活性または産生を部分的にまたは完全に減少させることが有益である。例えば、ある膀胱状態を処置するために、APFの阻害物質をその膀胱状態の少なくとも1つの症状を患っている個体に、またはその膀胱状態を持つと疑われる個体に送達する。具体的実施形態では、APFの阻害物質が、それに結合する抗体、またはAPFによるその標的への結合の低分子阻害物質である。別の態様では、APFの阻害物質が、APF産生を阻害する化合物、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくは低分子干渉RNAなど、または同様にAPF産生を阻害できるであろう任意の化合物である。別の態様では、APFの阻害物質が、APFの分解を刺激する化合物である。
【0234】
APFの阻害物質は任意の適切な手段によって個体に送達することができる。本発明の具体的実施形態では、APFの阻害物質が経口医薬品として含まれ、そして/またはカテーテルによって送達される。十分な量を膀胱組織に直接送達するか、または全身的に送達することができる。十分な量とは、膀胱状態の少なくとも1つの症状または所見(徴候)を改善する量であり、当業者はそのような量を決定するための標準的方法を理解している。
【実施例8】
【0235】
APFによる治療実施形態
本発明の一部の態様では、その必要がある個体にAPF組成物を送達してその抗細胞増殖活性を与えることが有益である。例えば膀胱癌を処置するために、膀胱癌の少なくとも1つの症状または所見(徴候)を患っている個体に、または膀胱癌を持つと疑われる個体に、APF組成物を送達する。図8は、2種類のペプチド(1番、配列番号1に相当、および4番、配列番号5に相当)ならびに2個(2番および5番、それぞれ非シアリル化)および3個(3番および6番)の糖部分を有するそれらの糖誘導体の、正常ヒト膀胱上皮細胞に対する抗増殖活性を証明している。
【0236】
別の実施形態では、前立腺癌細胞(例示的なLNCaP細胞など)をAPF組成物で処置する。LNCaP細胞を、24穴組織培養プレートの1ウェルあたり2×104細胞の密度で、10%ウシ胎仔血清、1%L-グルタミン、1%抗生物質/抗真菌剤溶液を含有するDMEM培に播種し、5%CO2雰囲気下に37℃で生育した。翌日、ウシ胎仔血清を含まない点以外は同じ添加物を含有するDMEM培地に培地を変えた後、HPLC精製APFまたは等量の疑似APFを各ウェルに加えた。培養3日目にトリパンブルー排除法によって生細胞数を数えた。値は、培地のみを与えた細胞対照と比較した細胞数の減少率であり、3重のウェルの平均値として記載する。垂直線は標準偏差である。細胞はネイティブ精製APFの抗増殖活性に対して感受性だった(図9)。
【0237】
APF組成物は任意の適切な手段によって個体に送達することができる。本発明の具体的実施形態では、APF組成物が経口医薬品として含まれ、そして/またはカテーテルによって、経口的に、静脈内に、局所的に、皮下に、経皮的に、筋肉内に、関節内に、非経口的に、腹腔内に、鼻腔内に、膀胱内に、または吸入によって送達される。十分な量を膀胱組織に直接送達するか、または全身的に送達することができる。十分な量とは、単独でまたは他の薬剤もしくは他のタイプの治療と組み合わせて与えられた場合に、膀胱癌の少なくとも1つの症状または客観的所見を改善する量であり、当業者はそのような量を決定するための標準的方法を理解している。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1A】APFのイオントラップ質量分析解析を示す。図1Aは、HPLC精製APFのマイクロキャピラリー分画よって得られる活性ピークの分子質量解析が記載されている。
【図1B】APFのイオントラップ質量分析解析を示す。図1Bは、衝突誘起解離による主要分子種の逐次的断片化後の解析を示す。
【図1C】APFのイオントラップ質量分析解析を示す。図1Cは、衝突誘起解離による主要分子種の逐次的断片化後の解析を示す。
【0239】
【図2】APFペプチドおよびグリコシル化誘導体の抗増殖活性を証明している。合成APFおよびその誘導体による初代正常膀胱上皮細胞3H-チミジン取り込みの阻害。等モル量のペプチド主鎖のみ(-□-)、N-アセチルラクトサミン-α-O-Thr誘導体(閉じた-▼-)、シアリル化N-アセチルラクトサミン-α-O-Thr誘導体(-△-)、N-アセチルラクトサミン-β-O-Thr誘導体(閉じた-◆-)、およびGalβ1-3GalNAc-α-O-Thr誘導体(閉じた-●-)を正常膀胱上皮細胞に適用し、3H-チミジン取り込みを決定して、緩衝液のみを含有する培地中で生育した細胞における取り込みと比較した。全ての標本を2〜3回の反復実験で3重にアッセイした。データは取り込みの平均阻害として表し、垂直線はその平均の標準誤差を示す。
【0240】
【図3A】ネイティブAPF、ならびに合成GlcNAc誘導体(Galβ1-4GlcNAcα-O-TVPAAVVVAともいう)のマイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィーを示す。ノイラミニダーゼ処理したAPFを、合成GalGlcNAc含有APFと共に注入し、C18でのそれらの相対的移動度を決定した。
【図3B】ネイティブAPF、ならびにGalNAc誘導体(一部の実施形態ではGalβ1-3GalNAcα-O-TVPAAVVVAともいう)のマイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィーを示す。ノイラミニダーゼ処理したAPFを、合成GalGalNAc含有APFと共に注入し、C18でのそれらの相対的移動度を決定した。
【0241】
【図4】APF、Galβ1-3GalNAcα-O-TVPAAVVVAの構造の一実施形態を表す。
【0242】
【図5】天然および合成APFによるT24細胞増殖の阻害を示す。ネイティブAPF(260nmでの吸光度によれば推定濃度3〜5μg/ml)、等体積の疑似APF、合成GalGalNAcAPF(3.0μg/mlの糖ペプチド)、または等モル量のペプチド主鎖のみを、その細胞増殖阻害能力について、48時間後の生細胞数をトリパンブルー排除法で決定することによって比較した。全ての標本を3重にアッセイした。データは細胞数の平均減少として表し、垂直線はその平均の標準誤差を示す。
【0243】
【図6】APFノナペプチドをコードするmRNAのノーザンブロット解析を表す。間質性膀胱炎を持つ6人の患者(レーン1、3、5、7、9、および11)ならびに彼らの年齢、人種および性別対応無症候対照(レーン2、4、6、8、10、および12)に由来する外植膀胱上皮細胞から全RNAを抽出した。次に、その膜を、APF mRNAおよびベータ-アクチンmRNAのDIG標識プローブと共にインキュベートし、化学発光基質を使って発色させた。
【0244】
【図7】合成APFに対して生じさせた精製ウサギ抗体の、HPLC精製ネイティブAPFへの用量依存的な結合を証明している。
【0245】
【図8】2種類のペプチド(1番、配列番号1に相当、および4番、配列番号5に相当)ならびに2個(2番および5番、それぞれ非シアリル化)および3個(3番および6番)の糖部分を有するそれらの糖誘導体の、正常ヒト膀胱上皮細胞に対する抗増殖活性を証明している。
【0246】
【図9】インビトロでのLNCaP前立腺癌細胞に対するAPFの阻害活性を示す。
【0247】
参考文献
本明細書で言及する特許および刊行物はいずれも、本発明が属する技術分野の当業者の水準を示すものである。本明細書に記載する全ての特許および刊行物は、個々の刊行物について参照により本明細書に組み入れられることを明確かつ個別に示した場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
特許
米国特許第5,811,393号
米国特許第5,916,871号
米国特許第5,962,645号
米国特許第6,156,522号
米国特許第6,232,289号
米国特許第6,376,197号
米国特許第6,600,018号
刊行物
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【0248】
本発明およびその利点を詳細に説明し終えたが、本願特許請求の範囲によって定義される本発明から逸脱することなく、様々な変更、置換および改変を加えることができると理解すべきである。さらにまた本発明の範囲は、本明細書に記載したプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されないものとする。本開示から容易に理解されるだろうが、本明細書に記載した対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすまたは実質的に同じ結果をもたらすプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップであって、現存するものまたは後に開発されるものを利用することができる。したがって、本願特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップも、その範囲に包含するものとする。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第60/484,010号(2003年7月1日出願)、米国仮特許出願第60/515,850号(2003年10月29日出願)、および米国仮特許出願第60/569,363号(2004年5月7日出願)に基づく優先権を主張し、これらはすべて参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の後援による研究または開発に関する陳述
本発明の少なくとも一部は、米国国立衛生研究所(NIH)NIDDK DK52596、米国復員軍人局(VAメリットレビューファンディング)、および所内国立癌研究所資金からの資金を使ってなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有しうる。
【0003】
本発明は医学、生化学、細胞生物学、および化学の分野を対象とする。より具体的には、本発明は成長阻害活性を持つ新規化合物およびその誘導体を扱う。さらに本発明は、膀胱障害、特に間質性膀胱炎に関する生体マーカーおよび/または診断薬としての、新規化合物およびその誘導体の使用を対象とする。また本発明は、無制御な細胞増殖を伴う任意の疾患、例えば癌などの処置に関する。
【背景技術】
【0004】
米国では約100万人が、膀胱上皮内壁の菲薄化または潰瘍形成を特徴とする慢性有痛性膀胱状態である膀胱障害の一つ、間質性膀胱炎を患っている(Curhanら,1999)。
【0005】
この障害を持つ患者の膀胱にみられる膀胱鏡検査異常には、「グロメリュレーション(glomerulation)」と呼ばれる点状出血および固有層に伸びる潰瘍(ハンナー潰瘍)が含まれる(JohanssonおよびFall,1990;Skoludaら,1974)。最も一貫性の高い組織学的異常には、膀胱上皮の剥脱または1〜2細胞層への菲薄化が含まれる(JohanssonおよびFall,1990;Skoludaら,1974;Tomaszewskiら,2001)。これらの所見から、間質性膀胱炎は、正常膀胱上皮細胞の増殖が阻害され、その結果として上皮障壁の完全性が失われ、それに続いて膀胱中の感覚神経細胞が尿構成成分にばく露されることによって起こりうることが示唆される。しかし間質性膀胱炎の病理発生過程はこれまでのところわかっていない。
【0006】
間質性膀胱炎患者の膀胱上皮細胞によってもっぱら産生され(Keayら,2001;Keayら,2000)正常膀胱上皮細胞の増殖を著しく阻害する(Keayら,2003)抗増殖因子(「APF」)ペプチドの単離は、既に記載されている。参照によりそのまま本明細書に組み入れられる米国特許第5,962,645号には、間質性膀胱炎を持つ患者の尿から単離された精製ヒト抗増殖因子(APF)が教示されており、そのAPFは水性アセトニトリル溶液中の試料に対する質量分析で決定された約1.7kDaの分子量および約1.38〜3.5のpI範囲を特徴とし、そのAPFは正常ヒト膀胱上皮(HBE)および膀胱癌細胞の増殖を阻害する能力を持つ。ピコモル量のHPLC精製APFは、インビトロで正常膀胱上皮細胞に、著しい増殖速度の低下(Keayら,2003)および膀胱上皮細胞の対数期成長に必要な成長因子(ヘアピン結合性表皮成長因子様成長因子、すなわちHB-EGF)の産生量の低下(Keayら,2000;Keayら,2003)を含む、いくつかの変化を誘導することができた。
【0007】
HB-EGFは既に記載されている(例えば米国特許第5,811,393号を参照されたい)。米国特許第6,156,522号には、膀胱機能障害を患っている対象における間質性膀胱炎を診断する方法であって、(a)その対象の尿試料中のHB-EGF様成長因子のレベルを測定するステップ、および(b)前記レベルを正常レベルと比較するステップを含み、正常集団におけるヘパリン結合性表皮成長因子様成長因子のレベルと比較して低下しているヘパリン結合性表皮成長因子様成長因子が、間質性膀胱炎の存在を示すという方法が記載されている。米国特許第6,232,289号は、膀胱上皮細胞増殖の強化をその必要がある対象において行なう方法であって、膀胱上皮細胞増殖を強化するのに有効な量のHB-EGFを対象に投与することを含む方法が教示されている。米国特許第6,376,197号には、膀胱上皮細胞増殖の阻害に関係する間質性膀胱炎などの状態を診断する方法であって、対象から得た尿中の表皮成長因子のレベルを決定するステップ、および正常集団における表皮成長因子のレベルと比較して増加している表皮成長因子のレベルがその状態の存在を示すという基準に従って前記レベルを正常レベルと比較するステップを含む方法が教示されている。
【0008】
マイクロアレイ解析により、APFは、より分化した表現型への細胞遺伝子発現パターンの変化も誘導できることが示された(Keayら,2003)。したがってこの因子の同定は、間質性膀胱炎の病理発生におけるその潜在的役割を決定し、この疾患の生体マーカーとしてのその有用性を確立するために重要である。
【0009】
APFの予備的特徴づけにより、これは低分子量で、比較的熱安定性が高いペプチドであることが示された(Keayら,2000)。APFは、患者尿標本にも外植した患者膀胱細胞の上清にも極めてわずかしか見いだされないので、NMR分光法などの便利な構造解析法は実行できない。本明細書に記載するように、この強力な成長阻害因子の完全な特徴づけにより、過去に開示されことのない新規な構造が得られる。完全な特徴づけは、質量分析、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、酵素解析、および全合成などの技術を併用することによって行なった。
【0010】
APFの構造の確認は、ネイティブおよび合成APF誘導体のマイクロキャピラリー液体クロマトグラフィーを使って行なうと共に、成長因子の産生および膀胱上皮細胞の増殖を調節する能力を合成APFが持っていることを証明することによって行なった。APFのアイデンティティを示すさらなる証拠は、frizzled 8タンパク質セグメント用のプローブに結合するmRNAが、間質性膀胱炎患者由来の細胞中には同定されるが、対照には同定されないこと、そして、合成APFに対して生じさせたウサギ抗体が、間質性膀胱炎患者の膀胱上皮細胞の上清から得られるネイティブAPFに結合することによって得られた。
【0011】
細胞周期阻害因子であると考えられるもう一つの因子が米国特許第5,916,871号に記載されている。この因子は、好ましくは、APFよりはるかに大きい分子量(例えば18kDまたは66kD)を持つシアリル化糖ペプチドを含み、細胞周期のG1期を阻害する(しかしG2期は阻害しない)。また、先に記載されたこの因子が持っている糖質成分はその全質量の10%未満を占めるに過ぎないが、ネイティブ型のAPFはその全質量の44%を占める糖質を持っている。
【0012】
他のさらなる目的、特徴および利点は、開示を目的として記載する、現時点で好ましい本発明の実施形態に関する以下の説明から明らかになるだろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は抗増殖因子(APF)に関わるシステムおよび方法に向けられる。本発明の特定の態様では、APFが、インビトロに、ある生物(ヒトを含む哺乳動物など)においてインビボに、そして/またはエクスビボに、例えば特定の組織、体液、または器官に、関係し、関連し、局在し、または他の形で提供される。APFはヒト、マウス、およびショウジョウバエなどの動物中に見いだされるタンパク質のセグメントに相同性を有するので、APFがショウジョウバエ(Drosophila)などの下等生物によって提供されることも考えられる。APFは、ある生物の特定の組織、体液、または器官に関係しうる。具体的な実施形態では、APFが特定の組織、体液、または器官中の細胞によって分泌され、さらなる実施形態では、APFが特定の組織、体液、または器官中で活性(例えばそこに含まれる細胞中で活性)である。一部の実施形態では、APFが特定の組織、体液、または器官の細胞によって分泌され、その細胞中で活性である。特定の態様では、APFは、上皮細胞を含む組織、例えば以下の組織に関係する:膀胱、尿管、尿道、肺、心臓、消化管(胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、膵臓および胆嚢を含む)、脾臓、雄性生殖器管(精嚢、前立腺、尿道球腺、輸精管、精巣上体、精巣、および陰茎を含む)、雌性生殖器管(卵巣、ファロピウス管、子宮、子宮頚、および膣を含む)、腎臓、副腎、胸腺、甲状腺、皮膚、骨(滑膜を含む)、眼組織(角膜、網膜、および水晶体を含む)、蝸牛、乳房組織、リンパ節、口腔粘膜(歯肉粘膜を含む)、唾液腺、耳下腺、および鼻咽頭粘膜(副鼻腔粘膜を含む)など。
【0014】
本発明の一定の実施形態では、本発明化合物が、単離されたAPF分子を含む。本発明のAPF分子は、例えば細胞増殖を部分的にもしくは完全に阻害しそして/または細胞増殖を遅くする糖ペプチドを含む。具体的実施形態では、増殖される細胞が、上皮細胞である。特定の実施形態では、APFを負の成長因子、負の成長調節物質、または毒素とみなすことができる。具体的実施形態ではAPFが膀胱特異的APFまたは膀胱上皮細胞特異的APFであるが、これは他の組織にも、例えば線維芽細胞または前立腺細胞などの非膀胱細胞の増殖を阻害するなどの目的に、有用である。間質性膀胱炎患者は、HB-EGFおよびEGFの血清レベルに、尿標本中に見られるものと同じ変化を持つので(Keayら,2000)、一部の実施形態ではAPFが膀胱以外の組織で産生される。
【0015】
Rashidら(2004)に概説されているように、具体的実施形態では、APFは細胞周期調整物質である。すなわち、正常膀胱生検標本に由来する外植細胞をAPFにばく露したところ、対照と比較して四倍体細胞および高四倍体細胞の比率が有意に増加した。したがって本発明の特定の態様では、APFへの細胞のばく露により、細胞周期がG2および/またはM期でブロックされ、そして/または多倍数性が生じうる。このように、APFは細胞周期分布に影響を及ぼし、それが特定の実施形態では、例えば正常な尿路上皮の増殖および修復過程の破壊などにより、間質性膀胱炎などの膀胱障害の病理発生の一因になる。さらなる実施形態では、APFへの1つ以上の細胞のばく露により、それら1つ以上の細胞の増殖の阻害が起こる。これは、細胞周期中の任意の時点における細胞周期ブロックを含みうるが、特定の実施形態では、そのブロックが主としてG2期またはM期で起こる。特定の実施形態では、APFの除去によって細胞周期の再開が可能になる。
【0016】
特定の実施形態ではAPFの分子量が約3000ダルトン未満であるが、別の実施形態ではAPFの分子量は約3000ダルトンより大きい。本組成物は、糖部分および疎水性部分を含み、その疎水性部分はペプチド部分または脂質部分であることができると、さらに定義することができる。特定のペプチド部分には任意の適切な構造が含まれるが、具体的実施形態では、それらは線状、環状、分岐状、またはそれらの組合せであることができる。さらなる具体的実施形態では、ペプチド部分はfrizzledポリペプチドの少なくとも一部に対する相同性を有し、例えばfrizzled 8の膜貫通ドメインの少なくとも一部(例えばNM_031866(配列番号8)中の例示的ポリヌクレオチドによってコードされるNP_114072(配列番号7)に記載の例示的配列に含まれるもの)に対する相同性を有する。他の具体的実施形態では、APFのペプチド成分が、細胞増殖の重要な調節物質であるWntを天然リガンドとするGタンパク質共役受容体frizzled 8の推定第6膜貫通ドメインの少なくとも一部に対する完全な相同性または実質的に完全な相同性を有する。分泌型frizzled関連タンパク質の一例は、米国特許第6,600,018号に記載されており、この特許は参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0017】
例えばペプチド部分は、frizzled 8の少なくとも一部に対して約50%未満の相同性、約50%の相同性、約55%の相同性、約60%の相同性、約65%の相同性、約70%の相同性、約75%の相同性、約80%の相同性、約85%の相同性、約90%の相同性、約95%の相同性、または約100%の相同性を有しうる。ただし、例えばペプチドミメティックが関わるような実施形態では、配列相同性は機能性の決定には用いられず、むしろ疎水性の化学的特徴ならびに物理的および化学的類似性(すなわち極性、立体的かさ高さ、水素結合能)が用いられることは、当業者に知られている。
【0018】
本発明の一目的では、APFは、間質性膀胱炎(IC)などの膀胱障害の鋭敏かつ特異的な生体マーカーであり、具体的な実施形態では、例えば遺伝子発現の調節(例えばE-カドヘリン産生量の増加などによるもの)および特異的成長因子類(例えばHB-EGFおよびEGFなど)の産生量の改変などを介して、膀胱細胞増殖を著しく阻害することにより、ICの病理発生に決定的な役割を果たす。より具体的に述べると、APFによる膀胱細胞増殖の阻害は、HB-EGF産生の阻害、細胞EGF、E-カドヘリン、アリールスルファターゼA、ホスホリボシルピロホスフェートシンテターゼ関連タンパク質39、もしくはSWI/SNF複合体170kDaサブユニット遺伝子発現の刺激、または細胞推定tRNAシンセテターゼ様タンパク質、ビメンチン、中性アミノ酸トランスポーターB、予想GTP結合タンパク質、アルファ1-カテニン、アルファ2-インテグリン、サイクリンD1およびJNKもしくはリボソームタンパク質L27a遺伝子発現の阻害を伴う。
【0019】
本発明の具体的一態様では、APFが、α配置またはβ配置でガラクトースに連結されたN-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン残基に、例えばN末端のスレオニン、セリンまたはシステインを介して共有結合的に連結された9アミノ酸残基(例えば、TVPAAVVVA(配列番号1)、SVPAAVVVA(配列番号3)、TVPAAVVLA(配列番号4)、またはSLPAAVVVA(配列番号5)など)を含み、そのガラクトース部分が2,3結合によってシアリル化されている、酸性熱安定性シアロ糖ペプチドである。グリコシル結合のアノマー配置は特定の実施形態ではアルファであるが、別の実施形態ではベータであってもよい。
【0020】
本発明の具体的一実施形態では、APFのペプチド成分が疎水性であり、同様に疎水性である非タンパク質部分、例えば脂質の代わりに用いることができる。したがって本発明の特定態様では、APFのペプチド/脂質部分が、膜との会合、例えば挿入、連結、結合、インターカレーション、もしくは他の形での膜との会合、または膜表面受容体への結合による会合を促進し、ネイティブAPFの糖部分は当該分子の高レベルな機能的活性を含む。
【0021】
本発明は、単離された天然APF、合成APF、その誘導体、またはその混合物を包含する。ネイティブAPFと同様に合成APFは、EGF産生を刺激すると共に、膀胱上皮細胞増殖(IC50=0.4nM)およびHB-EGF産生を著しく阻害した。合成APFは、ネイティブAPFに対して感受性を示す膀胱癌細胞の増殖も阻害した。本発明の具体的実施形態では、非グリコシル化合成ペプチドおよびグリコシル化合成APFのベータアノマーが持つ望ましい活性は少なかったものの、脱シアリル化ネイティブAPFおよび非シアリル化合成APFは、そのシアリル化対応物と同様の機能的活性を有する。
【0022】
ある実施形態では、APF化合物が、1個以上の糖を有する糖部分を含み、それらの糖をここでは第1糖、第2糖、第3糖などと呼ぶ。これらの糖のうち、どれをペプチドに共有結合的に連結してもよいが、具体的実施形態では、第3糖が、ペプチド(例えば基本的に配列番号1、3、4または5に記載に配列を持つもの)に共有結合的に連結され、あるいは第3糖を脂質分子に共有結合的に連結してもよい。糖部分は、天然糖、合成糖、その誘導体(糖ミメティック成分を含む)および/またはその任意の組合せを含みうる。
【0023】
一定の本発明化合物は、極性の化学的特徴および/またはヘテロ原子を含有する末端サブユニットを有することを特徴としうるペプチド部分を含む。このペプチドのサブユニットは、天然アミノ酸残基、非天然アミノ酸、アミノ酸の誘導体、例えばメチル化アミノ酸、ペプチドミメティック成分および/またはその任意の組合せを含みうる。別の実施形態では、ペプチド部分を脂質分子、例えばミリスチン酸もしくはパルミチン酸を含むオメガ脂肪酸、またはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどの他の脂質で置き換える。
【0024】
好ましい実施形態では、糖分子に、例えば1個以上のシアル酸、ガラクトース、グルコース、N-アセチルグルコサミン、および/またはN-アセチルガラクトサミンが含まれる。一定の実施形態では、シアル酸分子がガラクトースまたはグルコースに(2,3)、(2,6)、(2,8)および/または(2,9)結合によって共有結合的に連結される。指定した位置の原子を同定するために糖/糖質化学で用いられる命名法は、当業者に知られている。あるいは、ガラクトースまたはグルコースがN-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン分子に1→3、1→6、または1→4結合によって共有結合的に連結される。さらに好ましい実施形態では、N-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン糖分子が、アルファ配置で、疎水性部分に連結される。
【0025】
脂質部分を含む本発明の組成物において、脂質部分は、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸などの飽和脂肪酸、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、および/またはアラキドン酸などの不飽和脂肪酸、例えば脂質上のアルコールにエステルが付加されるステロイドアルコール類などのエステル化脂肪酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸を含むオメガ脂肪酸、例えばホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンなどのリン酸基含有脂肪、または極性頭部および非極性尾部を持つことを特徴とする界面活性剤であることができる。一般に、決定的に重要な脂質の特性は、脂質が二重脂質細胞膜に会合、インターカレート、または他の形で結合することができるような、疎水性の化学的特徴である。
【0026】
APFの誘導体であって、基本的に配列番号1に記載の配列を有するペプチドがその断片であり、その断片が配列番号1の1〜約8アミノ酸であるものも考えられる。配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6についても、類似の断片が考えられる。さらに、ペプチド部分はノナペプチドまたはノナペプチドより大きいペプチド、例えばペプチド部分に10個以上のアミノ酸を有するペプチド、またはペプチド部分に15個以上のアミノ酸を有するペプチドであることができると考えられる。
【0027】
APFの誘導体にはAPFの天然前駆体または天然代謝産物が含まれると考えられる。さらに、天然もしくは合成APFまたはそれらの誘導体は、例えば蛍光部分、比色部分、または放射性部分などの検出可能分子で標識することができる。いずれの場合も、本発明の化合物は、ネイティブAPFの作用を受ける改変と類似する形または同じ形で、細胞機能を改変する。APFによって改変される細胞機能の例には、HB-EGF産生の阻害、細胞EGF、E-カドヘリン、アリールスルファターゼA、ホスホリボシルピロホスフェートシンテターゼ関連タンパク質39、もしくはSWI/SNF複合体170kDaサブユニット遺伝子発現の刺激、または細胞推定tRNAシンテターゼ様タンパク質、ビメンチン、中性アミノ酸トランスポーターB、予想GTP結合タンパク質、アルファ1-カテニン、アルファ2-インテグリン、サイクリンD1およびJNKもしくはリボソームタンパク質L27a遺伝子発現の阻害が含まれる。
【0028】
配列番号1のノナペプチド、またはその生物学的に機能的な誘導体、例えば配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のペプチドなど、および/またはAPFの前駆体をコードするオリゴヌクレオチドも、ここでは考えられる。配列番号1をコードする例示的オリゴヌクレオチドは配列番号2である。しかし、ある特定アミノ酸のコドンごとにトリプレットヌクレオチドの選択肢は限られていることを考えると、本発明のペプチド(その例示的実施形態には配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6が含まれる)をコードするポリヌクレオチドは数が限られており、本発明の範囲に十分含まれることが、当業者にはわかる。APF分子のペプチド部分の少なくとも一部に好ましく含まれる疎水性アミノ酸をコードするために利用することができるコドンのさらなる部分集合を考えると、これは特にそうであると言える。
【0029】
本発明のAPF化合物を含む組成物が考えられる。本組成物は、リポソームなどの送達剤、被包された細胞、コンジュゲートされた分子、例えば抗体(Safavyら,2003)、他のペプチド、および種々の非ペプチドコンジュゲート(葉酸およびポリエチレングリコールを含む;Aronovら,2003)、薬物、例えばゲルダナマイシン(Mandlerら,2004)またはインスリン(Ouら,2003)、リポソーム(HeathおよびMartin,1986)、ラクトサミン化ヒトアルブミン(Di Stefanoら,2003)、ポリエチレングリコール(PEG)(Aronovら,2003)、ナノ粒子、例えばコロイド金、または細胞表面受容体に結合して細胞とAPFとの相互作用もしくは細胞によるAPFの取り込みを促進する他の分子を、さらに含むことができる。
【0030】
そのような新規組成物の使用は、本発明のもう一つの目的である。具体的に述べると、本発明は、本発明の化合物を含む、膀胱障害、より具体的には間質性膀胱炎を検出するための診断キットに向けられる。具体的実施形態では、本発明の診断キットは、APF分子のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分上のエピトープに対する1つ以上の抗体を含む。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができ、本キットはポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を含んでもよい。
【0031】
本発明のいくつかの態様には、APF分子についてアッセイすることによって、個体の膀胱障害を検出する方法がある。具体的実施形態では、膀胱障害は間質性膀胱炎である。本発明には、非侵襲的手段によってAPF分子についてアッセイすることができるという利点があるが、別の実施形態では、侵襲的手段を使用してもよい。試料を当該個体から入手し、直接または間接的にAPF分子についてアッセイすることができる。具体的実施形態では、試料が尿、血漿、または他の体液標本、例えば全血、糞便、唾液、乳頭吸引液、粘液、または汗などを含む。尿試料は当該個体からの排尿後に取得することができ、カテーテルを通して取得することもできる。
【0032】
診断方法は、APF分子の1個以上の糖部分の検出を含むことができ、そして/またはAPF分子のペプチドもしくは脂質部分またはペプチドおよび/または脂質および/または糖部分の組合せの検出を含むことができる。具体的実施形態では、アッセイステップが、APF分子のペプチド部分のエピトープに対する抗体を試料に導入することを含む。APFが脂質部分を含む実施形態では、適切なアッセイ手段(例えば脂質分子を検出するために利用することができる標準的方法)を利用する診断に、これを用いることができる。
【0033】
本発明は、上皮過形成または上皮由来の悪性腫瘍を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法にも向けられる。
【0034】
本発明は、線維芽細胞の過形成または悪性腫瘍を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法に向けられる。
【0035】
本発明は、リンパ網内系の悪性腫瘍または固形腫瘍を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法に向けられる。
【0036】
本発明は、癌を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、有効量のAPFまたはその誘導体を投与することを含む方法に向けられる。例えば膀胱、肺、乳房、前立腺、脳、胃、結腸、脾臓、肝臓、膵臓、黒色腫、頭頸部、甲状腺など、あらゆる種類の癌を処置することができる。しかし、具体的実施形態では、本発明は、膀胱癌または前立腺癌の処置であって、そのような処置を必要とする患者に有効量のAPFまたはその誘導体を同時投与する処置に有用である。本発明のさらなる態様では、APFが、化学療法、放射線療法、外科手術、遺伝子治療、および/または免疫療法の群より選択される癌治療に対する抵抗性の克服または感受性の改善を、改善し、容易にし、または支援する。
【0037】
本発明の化合物は抗血管新生特性も有し、血管(例えば腫瘍に注ぎ込む血管)の形成および/または分化を阻害または減速することによって利益を得る処置方法における使用が考えられる。
【0038】
本発明のAPF化合物は抗真菌剤としても有用である。
【0039】
APF化合物は、それに対する抗体を生成させるために使用することができ、その抗体は間質性膀胱炎の処置に使用することができる。特定の実施形態では、本発明は、APF組成物のペプチド部分、糖部分および/または糖ペプチド部分に対する抗体を生成させることを包含する。例えば、APFのペプチド部分(例えば配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6を含むものなど)に対する抗体を生成させる。生成させる抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる。本明細書で使用する用語「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどの任意の免疫学的結合剤を広く指すものとする。一般に、IgGおよび/またはIgMは好ましい。なぜなら、それらは生理学的状況で最も一般的な抗体だからであり、実験室環境での製造が最も容易だからである。
【0040】
用語「抗体」は、抗原結合領域を持つ任意の抗体様分子を指すためにも用いることができ、例えばFab'、Fab、F(ab')2、単独ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(一本鎖Fv)などの抗体断片を包含する。種々の抗体に基づく構築物および断片を製造し使用する技術は当技術分野では周知である。抗体を製造し特徴づける手段も当技術分野では周知である(例えば「Antibodies: A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory,1988)を参照されたい;この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。本発明の抗体は、本発明の組成物で動物を免疫し、免疫された動物から抗血清を収集することによって製造される。
【0041】
アジュバントと呼ばれる免疫応答の非特異的刺激物質を使用することにより、特定免疫原組成物の免疫原性を強化しうることも、当技術分野では周知である。好適なアジュバントには、許容できる全ての免疫刺激化合物、例えばサイトカイン類、ケモカイン類、補因子類、または毒素などが含まれる。使用できるアジュバントには、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、γ-インターフェロン、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、MDP化合物、例えばthur-MDPおよびnor-MDP、CGP(MTP-PE)、リピドA、およびモノホスホリルリピドA(MPL)が含まれる。2%スクアレン/Tween 80エマルション中に、細菌から抽出された3成分、MPL、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)を含有するRIBIも考えられる。MHC抗原も使用することができる。例示的に、しばしば好まれるアジュバントには、完全フロイントアジュバント(死滅結核菌を含有する免疫応答の非特異的刺激物質)、不完全フロイントアジュバントおよび水酸化アルミニウムアジュバントがある。
【0042】
あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、またはAPFの産生もしくは活性を阻害する他の物質を製造するために、APF化合物を使用する。
【0043】
さらにもう一つの実施形態では、間質性膀胱炎の動物モデルを作製するためにAPF化合物を使用する。例示的動物モデルでは、膀胱上皮のAPFへのばく露後に、動物が刺激を受けて、間質性膀胱炎に関係する症状(例えば膀胱痛または骨盤痛、尿頻度の増加、および/または尿意切迫の増加)または所見(例えば膀胱上皮の菲薄化および/または潰瘍形成)を発生させる。このばく露は、例えば膀胱内への合成もしくはネイティブAPFの直接投与に起因するか、APF分子のペプチド部分をコードするポリヌクレオチドによるトランスフェクション後の膀胱上皮細胞によるAPFの発現/生合成に起因することができるだろう。遺伝子はさらに、直接的方法(例えばエレクトロポレーションまたは膜融合)によって、または間接的方法によって(例えばウイルスベクターによって)、細胞中に導入することができる。マウスおよびヒトfrizzled 8の配列は、APF分子のペプチド部分に相同な9アミノ酸にわたって同一であり、マウス線維芽細胞はAPFの抗増殖作用に対して感受性を示すので、APFに基づくこの障害のマウスモデルの開発が可能であることに注目すべきである。例示的なヒトfrizzled 8ポリペプチドは配列番号7であり、例示的なマウスfrizzled 8ポリペプチドは配列番号9(NP_032084)である。
【0044】
もう一つの実施形態では、APF組成物を乾癬(例えば特発性乾癬状皮膚損傷(Schon,1999)を含むもの)の動物モデルに利用する。他の例示的疾患モデルには、過形成に対するAPFの作用を試験するための動物モデル、例えば無胸腺無脾臓ヌードラット(Poloら,1999)およびケロイド形成のヘアレスモルモットモデル(Clugstonら,1995)などが含まれる。
【0045】
さらにもう一つの実施形態では、正常膀胱上皮細胞または膀胱癌由来の細胞を用いる細胞増殖阻害アッセイ(例えばトリチウム化チミジンまたはブロモデオキシウリジン取り込みの阻害など)を使ってAPF活性を検出する方法が提供される。この方法では、APFの存在により、間質性膀胱炎が存在すること、または間質性膀胱炎が発症する素因を持つことが示される。これらの方法は非侵襲的であることができる、すなわち試料はカテーテル法によって取得してもカテーテル法によらずに取得してもよい尿試料であることができるので、特に有利である。尿試料は個体からの排尿時に取得することができる。
【0046】
もう一つの実施形態として、抗体に基づく方法(例えばELISA)、質量分析(MS)もしくは核磁気共鳴(NMR)、またはそれらの組合せを使って、APF糖ペプチドに関する直接アッセイを遂行することにより、APFを検出する方法がある。
【0047】
本発明は、Wntシグナル伝達経路を含む(ただしこれに限定されるわけではない)特異的細胞シグナル伝達経路を刺激する能力に鑑みて、刺激薬として用いられるAPF組成物も包含する。
【0048】
本発明の実施形態には、1個以上の糖部分を持ち少なくとも1つの糖部分が疎水性部分に連結される膀胱抗増殖因子を含む、単離されたまたは合成された組成物がある。
本組成物はさらに、膀胱上皮細胞増殖因子と定義することができる。本因子の分子量は約3000ダルトン未満であることができる。具体的態様では、疎水性部分が以下の1つを含む:線状、環状、もしくは分岐状であることができるペプチド部分、または脂質部分。本APF組成物は、具体的実施形態では、シアロ糖ペプチドを含むが、別の実施形態では糖ペプチドまたはペプチドを含む。さらなる実施形態では、ペプチドがfrizzledポリペプチドの少なくとも一部に対して相同性を有し、例えばfrizzled 8の膜貫通ドメインの少なくとも一部に対して相同性を有する。
【0049】
特定の実施形態では、本組成物はさらに、約1〜約6個の糖部分および約2〜約15アミノ酸残基のペプチド部分を含み、前記残基の1つは連結アミノ酸であり、ぺプチドは糖部分の少なくとも1つに、極性(例えばセリン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、またはチロシン)でありうる連結アミノ酸のヘテロ原子で連結されると定義される。したがって、糖部分に連結されるヘテロ原子は酸素、窒素および/または硫黄原子であると考えられる。さらなる具体的実施形態では、本組成物は、3個の糖残基および9個のアミノ酸を含み、連結アミノ酸はセリンまたはスレオニンである。さらに別の具体的実施形態では、本組成物は2個の糖残基および9個のアミノ酸を含む。
【0050】
糖部分は、天然糖、合成糖、天然糖の誘導体、または合成糖の誘導体を含む。より具体的には、少なくとも1つの糖部分は、シアル酸(N-アセチルノイラミン酸)分子などのアミノ糖であり、一部の実施形態では、アミノ糖が少なくとももう一つの(第2の)糖に(2,3)結合、(2,6)結合、(2,8)結合、または(2,9)結合によって連結される。少なくとも1つの糖部分とペプチド部分の間の結合は共有結合であり、糖部分と脂質部分の間の結合は共有結合であり、本明細書に記載する他の結合も共有結合であることができる。
【0051】
2個以上の糖部分を伴う具体的実施形態では、ある糖部分ともう一つの糖部分の間の結合は、1→3結合、1→4結合、または1→6結合である。別の実施形態では、少なくとも1つの糖部分と疎水性部分、例えばペプチドまたは脂質の間の結合がアルファ配置またはベータ配置である。
【0052】
本組成物のペプチド部分はさらに、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸の誘導体、非天然アミノ酸の誘導体、修飾されたアミノ酸、主鎖修飾アミノ酸、またはそれらの混合物を含むと定義される。ペプチド部分はさらに、還元されたペプチド結合を含む1個以上の主鎖修飾アミノ酸を含むと定義される。修飾されたアミノ酸はさらに、メチル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ベータアミノ酸、またはアミノ酸ミメティックと定義することができる。
【0053】
ペプチド部分は、本発明の一部の態様では約9アミノ酸長であり、配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5を含みうる。具体的実施形態では、脂質部分は、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸などの飽和脂肪酸、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸、例えば脂質上のアルコールにエステルが付加されるステロイドアルコール類などのエステル化脂肪酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸を含むオメガ脂肪酸、例えばホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンなどのリン酸基含有脂肪、または極性頭部および非極性尾部を持つことを特徴とする界面活性剤を含む。
【0054】
本発明のAPF組成物はさらに、蛍光部分、比色部分、または放射性部分などのラベルを含むと定義することができる。一定の実施形態では、ラベルが、1個以上の糖部分の少なくとも1つ(例えばシアル酸、グルコース、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルグルコサミン)に取り付けられる。あるいは、ラベルは、例えばペプチド部分を構成するアミノ酸の少なくとも1つに含まれるペプチド中の任意の適切な原子に(例えばセリン、スレオニン、またはシステインアミノ酸サブユニット中のヘテロ原子に)取り付けられるか、ペプチドのカルボキシル末端にあるカルボキシル基に取り付けられる。あるいは、ラベルは、脂質部分の原子の少なくとも1つに、例えば不飽和脂肪酸(すなわちオレイン酸など)中の二重結合に、または脂質の極性頭部(アルコール)に、取り付けられる。
【0055】
本発明の具体的実施形態では、APF組成物がさらに以下のように定義される:
【0056】
(a)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルガラクトサミン-スレオニン-バリン-プロリン- アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン;
【0057】
(b)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-スレオニン-バリン-プロリン- アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン;または
【0058】
(c)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-セリン-ロイシン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン。
【0059】
本明細書の実施例でさらに説明するように、本発明のAPF組成物は、もう一つの選択肢として、シアル酸分子を含まない(a)、(b)または(c)のいずれか一つと定義される。
【0060】
(a)の組成物はさらに以下の1つ(または1つ以上)を有すると定義することができる:シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;ガラクトースが1,3結合によってN-アセチルガラクトサミンに連結される;そして/またはN-アセチルガラクトサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【0061】
(b)の組成物はさらに以下の1つ(または1つ以上)を有すると定義することができる:シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;そして/またはN-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【0062】
(c)の組成物はさらに以下の1つ(または1つ以上)を有すると定義することができる:シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;そして/またはN-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、本組成物はさらに送達ビヒクル、例えばリポソーム、細胞、コンジュゲートされた分子、ナノ粒子、またはそれらの混合物を含む。コンジュゲートされた分子は、抗体、ペプチド、葉酸、ポリエチレングリコール、薬物、リポソーム、ミクロスフェア、またはラクトサミン化ヒトアルブミンを含みうる。ナノ粒子はコロイド金を含みうる。
【0064】
本組成物は薬学的に許容できる賦形剤中に含まれうる。また本組成物は細胞増殖を可逆的に停止させうる。具体的実施形態では、本組成物はさらに、細胞周期を主としてG2期もしくはM期またはその両方で停止させる活性を含むと定義される。
【0065】
本発明の他の実施形態には、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、またはその機能的誘導体からなる群より選択される単離されたペプチドがある。その機能的誘導体はさらに、当該ペプチドの1個以上のアミノ酸における保存的置換を含むと定義することができる。保存的置換はさらに、セリン、スレオニン、プロリン、またはその組合せにおける置換と定義することができる。具体的実施形態では、保存的置換が、疎水性の保存的置換、例えば1個以上のアラニン、1個以上のバリン、1個以上のプロリン、またはそれらの組合せにおける置換を含む。具体的実施形態では、ここで考えられる本発明のペプチドの機能が、キット(例えば試料中のAPFを定量するためのキット)内の標準物質として、抗増殖因子として、そして/または抗体産生を誘導するための手段として使用するための機能である。
【0066】
本発明のさらなる実施形態には、配列番号1をコードする単離されたポリヌクレオチドがあり、これはさらに配列番号2と定義することができる。
【0067】
本ポリヌクレオチドはさらに、以下の1つ以上を持つと定義することができる:ACA、ACC、ACG、およびACUからなる群より選択されるスレオニンのコドン;GUA、GUC、GUG、およびGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン;CCA、CCC、CCG、およびCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;ならびにGCA、GCC、GCG、およびGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン。
【0068】
もう一つの実施形態には、配列番号3をコードする単離されたポリヌクレオチド、例えば以下の1つ以上を有するとさらに定義されるものがある:AGC、AGU、UCA、UCC、UCG、およびUCUからなる群より選択されるセリンのコドン;GUA、GUC、GUG、またはGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン;CCA、CCC、CCG、またはCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;ならびにGCA、GCC、GCG、またはGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン。
【0069】
さらなる実施形態には、配列番号4をコードする単離されたポリヌクレオチド、例えば以下の1つ以上を有するとさらに定義されるものがある:ACA、ACC、ACG、およびACUからなる群より選択されるスレオニンのコドン;GUA、GUC、GUG、およびGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン;CCA、CCC、CCG、およびCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;GCA、GCC、GCG、およびGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン;ならびにUUA、UUG、CUA、CUC、CUG、およびCUUからなる群より選択される1個以上のロイシンのコドン。
【0070】
本発明のもう一つの実施形態には、配列番号5をコードする単離されたポリヌクレオチド、例えば以下の1個以上を有するとさらに定義されるものがある:AGC、AGU、UCA、UCC、UCG、およびUCUからなる群より選択されるセリンのコドン;UUA、UUG、CUA、CUC、CUG、およびCUUからなる群より選択されるロイシンのコドン;CCA、CCC、CCG、およびCCUからなる群より選択されるプロリンのコドン;GCA、GCC、GCG、およびGCUからなる群より選択される1個以上のアラニンのコドン;ならびにGUA、GUC、GUG、およびGUUからなる群より選択される1個以上のバリンのコドン。
【0071】
本発明のさらなる実施形態には、適切な容器に収納されたAPF組成物を含むキットがある。対象における膀胱障害の診断に使用されるキットであって、抗増殖因子のペプチド、糖、または糖ペプチドのエピトープに免疫学的に結合する抗体組成物を含み、前記抗体組成物が適切な容器に収納されているキットも考えられる。具体的実施形態では、抗増殖因子が膀胱抗増殖因子である。ペプチドは1個以上の疎水性アミノ酸を含みうる。
【0072】
具体的実施形態では、抗体が配列番号1もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号1のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;抗体が配列番号3もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号3のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;抗体が配列番号4もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号4のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;抗体が配列番号5もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号5のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である;そして/または抗体が配列番号6もしくはその糖ペプチド誘導体のエピトープに免疫学的に結合し、そして/またはペプチドが配列番号6のエピトープを含み、約2〜15アミノ酸長である。
【0073】
キット中の抗体にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはその両方が含まれうる。抗体は標識されていてもよい。
【0074】
本発明のキットは試料中のAPF組成物を検出するための検出手段を含み、さらなる実施形態では抗体、蛍光レポーター分子などのマーカー、および/または組成物の糖部分もしくはペプチド部分を標的とする捕捉分子を含む。
【0075】
本発明のもう一つの実施形態には、抗体またはその結合部分を含む組成物であって、前記抗体または結合部分が、膀胱抗増殖因子のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合し、前記抗増殖因子が1個以上の糖部分を含む組成物がある。具体的実施形態では、抗体または結合部分が抗増殖因子のペプチド部分に結合し、それによってAPF分子の活性を阻害する。抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはその混合物であることができる。具体的実施形態では、ペプチドが配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5である。
【0076】
本発明のさらなる実施形態には、個体における膀胱障害を検出する方法であって、APF組成物についてアッセイするステップを含む方法がある。具体的実施形態では、膀胱障害が間質性膀胱炎である。具体的実施形態では、アッセイステップが当該個体に対して非侵襲性または侵襲性である。具体的実施形態では、本方法はさらに、当該個体から試料を取得し、前記試料をAPF組成物の存在についてアッセイすることと定義される。試料は、当該個体から得られる尿、血漿、血清、組織、またはそれらの混合物を含みうる。アッセイステップは、APF組成物の1個以上の糖部分の検出を含みうる。アッセイステップは、APF組成物の疎水性部分の検出を含みうる。組成物の疎水性部分はペプチド部分を含むことができ、アッセイステップはさらに、APF組成物のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分のエピトープに対する抗体の、当該試料への導入を含むと定義される。具体的実施形態では、アッセイ方法がELISA、ウェスタンブロット、免疫ブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学、または他の抗体に基づく検出法、例えばスロットブロット、ドットブロットなどを含む。別の実施形態では、アッセイ方法が、例えばインサイチューハイブリダイゼーション、またはAPFのメッセンジャーmRNAを検出するための他の手段などを含む。さらなる実施形態では、アッセイ方法が質量分析、核磁気共鳴、またはペプチド種を検出するための他の非免疫学的方法を含む。
【0077】
本発明のさらなる実施形態には、癌を処置する方法であって、治療有効量のAPF組成物を投与するステップを含む方法がある。具体的実施形態では、癌が上皮癌、例えば膀胱癌または前立腺癌を含む。さらにもう一つの具体的実施形態では、本方法がさらに、追加の癌治療、例えば外科手術、化学療法、放射線、遺伝子治療、免疫療法、またはそれらの組合せを含む。
【0078】
本発明のもう一つの実施形態には、膀胱障害を処置する方法であって、治療有効量のAPF組成物を投与するステップを含む方法がある。具体的実施形態では、本方法がさらに、追加の膀胱障害治療を含む。具体的実施形態では、膀胱障害が膀胱癌を含む。もう一つの具体的実施形態では、本方法がさらに、追加の癌治療、例えば外科手術、化学療法、放射線、遺伝子治療、免疫療法、またはそれらの組合せなどを含む。
【0079】
さらにもう一つの実施形態には、過形成を処置する方法であって、治療有効量のAPF組成物を投与するステップを含む方法がある。具体的実施形態では、本方法がさらに、上皮過形成または線維芽細胞過形成などの過形成に対する追加の治療を含む。
【0080】
もう一つの実施形態には、個体の癌治療を強化する方法であって、その個体に治療有効量のAPF組成物を投与することを含む方法がある。本組成物の投与は、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子治療、またはそれらの組合せを強化しうる。本組成物は、強化される癌処置に先だって投与するか、強化される癌処置と同時に投与するか、強化される癌処置の後に投与するか、またはそれらの組合せで投与することができる。
【0081】
さらにもう一つの実施形態には、個体における血管新生を阻害する方法であって、その個体に治療有効量のAPF組成物を投与することを含む方法がある。
【0082】
もう一つの実施形態には、個体における真菌成長を阻害する方法であって、その個体に治療有効量のAPF組成物を投与することを含む方法がある。
【0083】
上記は、以下に述べる本発明の詳細な説明がより良く理解されうるように、本発明の特徴および技術的利点をかなり広く概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点を以下に説明する。ここに開示する概念および具体的実施形態は、本発明の目的と同じ目的を実施するために、他の構造物を修飾または設計するための基礎として容易に利用できることを理解すべきである。また、そのような等価な構築物が、本願特許請求の範囲に記載する発明から逸脱しないことも、はっきりと理解すべきである。その構成と作用方法の両方に関して本発明に特有であると考えられる新規な特徴は、さらなる目的および利点と共に、以下の説明を添付の図面と一緒に考慮することによって、より良く理解されるだろう。ただし、各図面は例示と説明のために提供されるのであって、本発明の限界を定義するつもりではないことは、はっきりと理解すべきである。
【0084】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面と合わせて解釈される以下の説明を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
I.定義
本明細書で使用する「1つの」(aまたはan)は1つ以上を意味しうる。本願特許請求の範囲において、単語「を含む(comprising)」と一緒に使用される場合、単語「1つの」(aまたはan)は、1つ以上を意味しうる。本明細書で使用する「もう一つの」(another)は少なくとも2つ目またはそれ以上を意味しうる。
【0086】
本明細書で使用する用語「アルファ配置」αは、ピラノース環の立体配座式を用いた場合にアノマー基がアキシャル配置であるような糖質化学における構造的関係を指す。逆に「ベータ配置」βは、アノマー基がエカトリアルであるような配置を指す。
【0087】
本明細書で使用する用語「抗増殖因子」は、1個以上の糖部分および/または疎水性部分から構成される分子であって、細胞増殖を阻害する能力を特徴とする分子を指す。具体的実施形態では、阻害活性が、膀胱上皮細胞増殖などの上皮細胞増殖を阻害することを含む。さらなる具体的実施形態では、疎水性部分がペプチドまたは脂質である。具体的実施形態では、その疎水性が、膜との非特異的会合、または例えば膜もしくは細胞質受容体の疎水性ポケットとの特異的もしくは非特異的相互作用を促進する。具体的実施形態では、膜との会合が、膜への挿入を含む。膜はあらゆる種類の膜であることができるが、本発明の特定態様では形質膜である。さらなる具体的実施形態では、ペプチドが部分的に疎水性であり、APFと膜との会合を促進するのに十分な疎水性を含む。
【0088】
用語「主鎖修飾アミノ酸」は当技術分野では公知であり、以下に説明する。通常のペプチドまたはタンパク質主鎖は、カルボキシル基に隣接する炭素上にアミノ基を持つアルファアミノ酸の重合によって形成される。これにより、繰り返し単位が-[NHCH(R)C(O)]-であるようなポリマーがもたらされる。式中、Rは各アミノ酸を異ならせる側鎖であるが、主鎖を形成する繰り返し単位は示したとおりである。仮にアミノ基を異なる炭素(例えばアラニンのベータ炭素)に移動させたとすると、主鎖はもはや天然ではなくなるが、ペプチドの特性の多くはまだ持っている。タンパク質分解酵素は改変された主鎖を認識しない。ベータ-アラニンまたはガンマ-酪酸は一般的な主鎖改変アミノ酸である。これらは天然にはペプチドまたはタンパク質中に見いだされない。
【0089】
本明細書で使用する用語「膀胱障害」は、膀胱の異常な状態を指す。
【0090】
本明細書で使用する用語「保存的置換」は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸を類似する化学的性質を持つ異なるアミノ酸で置き換えることを指す。例えば、非極性アミノ酸は、別の非極性アミノ酸で保存的に置換することができる。具体的実施形態では、疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸で置換することができる。
【0091】
本明細書で使用する用語「上皮癌」は、ある組織の癌であって、その組織の上皮細胞から派生するものを指す。例えば上皮癌は、膀胱、尿管、肺、心臓、消化管(胃、小腸、大腸、直腸、肝臓、膵臓および胆嚢を含む)、脾臓、雄性生殖器管(精嚢、前立腺、尿道球腺、輸精管、精巣上体、精巣および陰茎を含む)、雌性生殖器管(卵巣、ファロピウス管、子宮、子宮頚、および膣を含む)、腎臓、副腎、胸腺、甲状腺、皮膚、骨(滑膜を含む)、眼組織(角膜、網膜、および水晶体を含む)、蝸牛、乳房組織、リンパ節,
口腔粘膜(歯肉粘膜を含む)、唾液腺、耳下腺、および鼻咽頭粘膜(副鼻腔粘膜を含む)などを含みうる。
【0092】
本明細書で使用する用語「ヘテロ原子」は、有機分子中の原子であって、炭素または水素以外のものを指す。
【0093】
本明細書で使用する用語「疎水性」は水に対する親和性の欠如を指す。
【0094】
本明細書で使用する用語「疎水性アミノ酸」は、その構造中に電荷を持たないか極めて小さい電荷しか持たないために水との水素結合を形成することができないアミノ酸を指す。疎水性アミノ酸は水素結合に寄与することができないので、水溶液中では、疎水性アミノ酸は水分子間に形成される水素結合構造を破壊する。疎水性アミノ酸は様々なサイズを持ち、疎水性アミノ酸の大半は、純粋に炭化水素である側鎖を持つ。他が同じなら、大きい疎水性側鎖の方が、小さいものより疎水性は強くなる。疎水性アミノ酸の具体例には、脂肪族炭化水素側鎖を含むもの、例えばアラニン、バリン、ロイシン、もしくはイソロイシン、芳香族側鎖を含むもの、例えばフェニルアラニンもしくはトリプトファン、硫黄含有側鎖を含むもの、例えばメチオニン、そして/またはイミノ酸、例えばプロリンなどがある。特定の実施形態では、疎水性アミノ酸はアラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであるとみなされる。
【0095】
本明細書で使用する用語「過形成」は、ある組織における正常細胞の正常な配置での異常増殖を指す。
【0096】
本明細書で使用する用語「抗増殖因子の阻害物質」は、本発明に包含されるAPFの阻害物質を指す。具体的実施形態では、阻害物質は、例えばAPFを分解し、細胞増殖に対するその作用を遮断し、すなわち成長因子であり、またはそれらの組合せである。さらなる具体的実施形態では、阻害物質は抗体、低分子干渉RNA、オリゴヌクレオチド、小分子などを含む。
【0097】
本明細書で使用する用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって接合されたD-もしくはL-アミノ酸またはD-およびL-アミノ酸の混合物の一本鎖から構成される化合物を指す。一般に、ここで使用されるペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸残基を含有し、約50アミノ酸長未満である。本明細書ではD-アミノ酸を小文字の一文字アミノ酸記号で表し(例えばD-アルギニンはr)、L-アミノ酸を大文字の一文字アミノ酸記号で表す(例えばL-アルギニンはR)。ペプチドは環状、線状、分岐状、またはそれらの組合せであることができる。
【0098】
本明細書にいう「ポリペプチド」は、少なくとも2つのアミノ酸残基を持ち、1つ以上のペプチド結合を含有するポリマーを指す。「ポリペプチド」は、そのポリペプチドが明確なコンフォメーションを持つかどうかとは関係なく、ペプチドおよびタンパク質を包含する。
【0099】
本明細書で使用する用語「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸から構成されるが、ペプチドとは対照的に、明確なコンフォメーション(例えば明確な三次元コンフォメーション)を持つ化合物を指す。タンパク質は、ペプチドとは異なり、一般に50アミノ酸以上の鎖からなる。
【0100】
本明細書で使用する用語「精製(された)」は、糖タンパク質がその天然に得られうる状態に対して、すなわちこの場合であれば、真核細胞内でのその純度、あるいは細胞培地もしくは上清などの液体または尿、血清もしくは血漿などの生物学的液体内でのその純度に対して、どの程度にでも精製されているような糖タンパク質組成物を指すものとする。
【0101】
本明細書にいう「サブユニット」は、接合されることでより大きなポリマー化合物を形成するモノマー単位である。一連のアミノ酸はサブユニットの一例である。各アミノ酸は共通する主鎖(--C--C--N--)を持ち、異なるアミノ酸はその側鎖が異なる。主鎖はポリペプチド中で繰り返される。サブユニットはポリマー主鎖中の要素の最も短い繰り返しパターンを表す。例えばペプチドの2つのアミノ酸は1つのサブユニットとはみなされない。なぜなら、2つのアミノ酸はポリマー主鎖中の要素の最も短い繰り返しパターンを持たないだろうからである。
【0102】
本明細書で使用する用語「末端アミノ酸」は、APF分子の直線ペプチドの末端にあるアミノ酸を指し、N末端アミノ酸またはC末端アミノ酸を指しうる。
【0103】
用語「治療剤」「治療組成物」および「治療物質」は、例えば、哺乳類生物を含む(ただしこれに限定されるわけではない)生物の利益になるように使用することができるあらゆる組成物を指すが、これに限定されるわけではない。そのような薬剤は、例えばイオン、小有機分子、ペプチド、タンパク質またはポリペプチド、糖ペプチド(および他の修飾ペプチド)、オリゴヌクレオチド、およびオリゴ糖などの形態をとりうる。
【0104】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、単独でまたは他の化合物と組み合わせて治療目的で利用される組成物の量であって、処置される医学的状態の少なくとも1つの症状または客観的所見(徴候)の改善をもたらすような量を指す。1つ以上の症状または徴候が緩和される限り、完全な治癒には至らなくても、本発明が有用であることは、当業者には理解される。例えば、ある膀胱状態の処置では、治療有効量は、以下のいずれかまたは全てを容易にする量を含むだろう:細胞増殖の減少(または阻害による、増加)、排尿痛、尿意切迫または排尿頻度の減少、膀胱上皮内壁の菲薄化および/または潰瘍形成の量、度合いおよび/または強さの減少など。
【0105】
本明細書で使用する「膀胱」という用語は、個体の尿を一時的に保持するのに役立つ膨張性膜性の嚢を指す。通常、これは、骨盤腔内で直腸の前方に存在し、2本の尿管からの尿を受け取って、ときどきそれを、括約筋によって閉じられる開口部を通して、尿道に排出する。この器官は移行内胚葉上皮で裏打ちされる。
【0106】
本明細書で使用する用語「膀胱抗増殖因子」は、主として膀胱に関係する本明細書に記載の抗増殖因子を指す。これは、膀胱の細胞(例えば上皮細胞)と関係しうるので、これを「膀胱上皮細胞抗増殖因子」と呼ぶことができる。本因子は、1つ以上の膀胱上皮細胞中に同定されうるか、1つ以上の細胞からの分泌後に同定されうるか、またはその両方であることができる。これに加えて、またはこれに代えて、本因子は、膀胱内の尿もしくはそこから排泄された尿中またはその両方に懸濁している場合もある。本因子と膀胱とのそのような関係から、APFの検出は、ある膀胱状態(例えば間質性膀胱炎)の診断手段になりうる。一部の実施形態では、APFは膀胱中に位置するが、別の実施形態では、APF分子は血清、血漿、または他の組織とも関係する。
【0107】
II.本発明
負の成長因子は真核細胞の正常な接触阻害にとって重要であると考えられ、それらの活性の低下は悪性細胞成長と関係づけられている。しかし、成長阻害物質の産生の異常な増加は、骨髄機能不全(再生不良性貧血および骨髄異形成症候群)、非中毒性甲状腺腫、慢性静脈性潰瘍、全身性硬化症に伴う虚血症状発現、胃潰瘍の治癒遅延を含む、いくつかのヒト疾患状態にしか関連づけられていない。本発明の具体的実施形態では、正常な組織の完全性を維持するのに必要な細胞増殖の不適切な阻害により、他の疾患も引き起こされ、それは固形組織では、特異的細胞層の菲薄化または不在および正常組織構造の破壊として顕在化しうる。そのような種類の疾患の一つに、膀胱障害、例えば間質性膀胱炎が含まれうる。
【0108】
米国では約100万人が、膀胱上皮内壁の菲薄化または潰瘍形成を特徴とする慢性有痛性膀胱障害の一つ、間質性膀胱炎を患っているが、その病因はわかっていない。本明細書に記載するとおり、本発明は、この障害を持つ患者の膀胱上皮細胞によって特異的に分泌される、細胞増殖の新規グリコシル化frizzled関連ペプチド阻害物質に向けられる。この抗増殖因子(APF)は、細胞接着タンパク質および成長因子産生の調節により、膀胱細胞増殖を阻害する。APFの構造は、イオントラップ質量分析、酵素消化、レクチンアフィニティクロマトグラフィー、および全合成を使って推定し、マイクロキャピラリーLC/MSでのネイティブおよび合成APF誘導体の同時溶出によって確認した。標準型のAPFは、酸性熱安定性シアロ糖ペプチドであり、そのペプチド鎖はfrizzled 8の推定第6膜貫通ドメインに対して100%の相同性を持つと決定された。合成およびネイティブAPFはどちらも正常膀胱上皮細胞およびT24膀胱癌細胞中で同じ生物活性を持った。ノーザンブロット解析により、frizzled 8セグメントの配列を含有するプローブと、間質性膀胱炎患者の細胞から抽出されたmRNAとの結合が示されたが、対照ではこれが認められず、合成APFペプチドに対して生じさせた抗体は精製ネイティブAPFに用量依存的に結合した。したがってAPFは、もっぱらfrizzledタンパク質の膜貫通セグメントを含有することが示された初めてのfrizzled関連ペプチドであり、間質性膀胱炎の潜在的生体マーカーである。
【0109】
報告された結果は、間質性膀胱炎患者から外植された膀胱上皮細胞によって特異的に産生されるAPFが、独特な修飾を受けたfrizzled 8関連シアロ糖タンパク質であり、このGタンパク質共役Wntリガンド受容体(Saitohら,2001)の第6膜貫通セグメントに対して100%の相同性を有するペプチド構造を持つことを証明している。本発明の一部の実施形態ではこの小さい分泌型frizzled関連ペプチドが、胚形成中にヒト膀胱上皮細胞中で正常に発現され、別の実施形態では、これらの患者に由来する膀胱上皮細胞によってのみ産生されるのが、frizzledタンパク質の異常変異体である。しかし、この障害に対するその特異性および分泌型frizzled関連ペプチド成長阻害物質としてのその同定は、この疾患の病理発生におけるその役割を示している。APFの同定により、APFの産生もしくは活性の阻害またはAPF破壊の刺激に基づく間質性膀胱炎処置の開発を考えることが可能になる。また、一部の実施形態では、成人においては間質性膀胱炎患者由来の膀胱上皮細胞だけがAPFを発現させることから、この障害の直接的非侵襲性診断試験が考えられる。
【0110】
今までに、2つの疾患状態が、APF以外の分泌型frizzled関連タンパク質の異常に増加した発現と関係すると注目されていた。すなわち、対照心臓と比較して不全心室中で2つのそのようなタンパク質のmRNAが上昇することが示されている過負荷誘発性心不全(Schumannら,2000)と、ある分泌型frizzled関連タンパク質およびそのmRNAの発現が著しく上昇する変性網膜疾患(Jonesら,2000)である。以前に同定された分泌型frizzled関連タンパク質はシステインリッチな細胞外ドメインを含有しており、それにより、2つの機序(すなわちWntリガンドへの結合による機序、またはfrizzled受容体との非シグナル伝達性二量体の形成による機序)の一方によってWntシグナル伝達を阻害することができる(Baficoら,1999)。したがってAPFは、frizzled受容体の膜貫通部分だけに相同性を有する初めてのfrizzled関連成長阻害物質であり、frizzled関連タンパク質による成長阻害が別の機序によって起こりうることを示唆している。APFは今までに同定されたなかで最も小さい分泌型frizzled関連ペプチドでもあり、以前に記載されたfrizzled関連ペプチドは33.5〜39.9kDaを持つ(JonesおよびJomacy,2002)。
【0111】
APFが膀胱上皮細胞中のJun N末端キナーゼを含むいくつかの遺伝子の発現を減少させることは、マイクロアレイ解析により、先に示されていることから(Keayら,2003)、APFはfrizzled受容体タンパク質によって媒介される非カノニカルWntシグナル伝達を妨害しうる可能性が示唆される(Pandurら,2002)。しかし、細胞骨格のその基層への結合は、アクチン-カテニン複合体のE-カドヘリン(これは、その発現が膀胱上皮細胞においてAPFによって有意にアップレギュレートされることも示されており(Keayら,2003)、インビトロでは尿路上皮癌細胞でも正常尿路上皮細胞でもカノニカルWntシグナル伝達を阻害することが知られている(Thievessenら,2003)タンパク質である)への結合を含む。したがって、どんな理論にも束縛されるものではないが、具体的実施形態では、APFは、膀胱癌細胞または正常膀胱細胞におけるカノニカルまたは非カノニカルWnt経路の阻害によって、その抗増殖作用を媒介する。
【0112】
他の強力なシアリル化低分子糖ペプチド成長阻害物質が、正常哺乳動物の血清または脳から単離され、様々な組織に由来する正常細胞と悪性細胞の両方の増殖を阻害することが示されているが(Augerら,1989;Moosら,1995)、これらの天然成長阻害物質はいずれもその構造データを利用することはできず、それらのfrizzled関連タンパク質または何らかの特異的シグナル伝達経路との関係も決定されていない。したがってAPFは、この種類の成長阻害物質のなかで初めて完全に特徴づけられたものであると共に、初めて合成されたものでもある。APFによる抗増殖活性および成長因子産生の調節にはα-O-結合型N-アセチルヘキソサミン構造が必要であることから、APFは、別のシアロ糖ペプチド成長阻害物質について示唆されているように(SharifiおよびJohnson,1987)、特異的細胞受容体に結合しうることが示唆される。さらに、APFのペプチド部分の極端な疎水性から、これが形質膜と相互作用し、細胞表面で、糖部分の異なるコンフォメーションを呈しうる可能性も示唆される。
【0113】
III.抗増殖因子(APF)
本発明は、抗増殖因子(APF)と関係する組成物および方法を包含する。APFは、膀胱上皮細胞、皮膚線維芽細胞、および前立腺細胞を含む他の上皮細胞の増殖を阻害する糖ペプチドを含み、一部の実施形態では、膀胱上皮細胞、例えば間質性膀胱炎に関係するものによって産生される。特定の実施形態では、本化合物は間質性膀胱炎を持つ個体の尿中に存在する。別の実施形態では、本化合物は、膀胱組織および膀胱細胞以外の組織および細胞によって産生または生合成される。本発明の一態様では、本化合物が毒素、負の成長因子、またはその両方とみなされる。
【0114】
APFは、膀胱壁を裏打ちする細胞の成長を(具体的実施形態ではこれらの細胞によるいくつかのタンパク質、例えば特異的成長因子および細胞接着タンパク質、の産生を変化させることによって)阻害するというその能力ゆえに同定された。どの理論にも束縛されないが、さらなる実施形態では、APFは、間質性膀胱炎(膀胱内壁が一般に薄くそして/または潰瘍を形成する)を引き起こす。
【0115】
したがって、本明細書で使用する用語「APF」は、ある種類の化合物を指し、図4の構造は単なるプロトタイプAPFであって、他の関連組成物も、それらが膀胱状態の診断に役立ち、そして/または細胞増殖の異常な増加に関係する障害を処置するための直接的もしくは間接的標的として有用である限り包含され、それらの阻害物質は細胞増殖の減少に関係する障害の処置に有用である。
【0116】
本発明の特定態様ではAPFは図4に記載の構造を含むが、これは単に本発明の一実施形態に過ぎない。図4の構造は膀胱上皮細胞によって分泌されうるので、これが間質性膀胱炎などの膀胱障害の診断に役立つことは、当業者には理解される。しかし一部の実施形態では、類似しているが同一ではないAPFの構造が膀胱障害の診断に役立つ。本明細書におけるAPF組成物は単離された天然APF、その合成型、その誘導体、またはそれらの混合物をいずれも包含する。さらに、本発明の化合物は、合成的手段を使って製造するか、自然源(例えば膀胱上皮細胞、それらの細胞外培地、組織または尿、血清もしくは血漿などの体液)から単離することができる。
【0117】
さらに、図4に示すAPFの構造を持つ分子の阻害は、本発明にとって有用であるが、APFの類似構造を持つ分子の阻害も有用でありうる。阻害は、例えば抗体などによってAPFの機能を阻害することに向けられたものであってもよいし、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子干渉RNAなど、APFの産生を阻害するためであってもよいし、APFの破壊を刺激するためであってもよいし、それらの組合せであってもよい。
【0118】
したがって、具体的実施形態では、本発明に関する組成物は、約1〜約6個の糖残基と、約2〜約15個のアミノ酸残基とを含み、ペプチドは糖部分の1つに連結アミノ酸で連結され、連結アミノ酸は連結アミノ酸の連結部分として役立つヘテロ原子を含む。より具体的には、連結アミノ酸はセリン、スレオニン、またはシステインを含む。別の具体的実施形態では、本発明の組成物は2または3個の糖残基と9個のアミノ酸とを含み、連結アミノ酸はスレオニンまたはセリンである。
【0119】
本発明のある特定態様では、APF組成物がその一部に疎水性部分、例えばペプチド(例えば配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号4、配列番号5を含むもの)または脂質を含みうる。ペプチドは膜貫通ドメインの少なくとも一部を含むことができ、特定の実施形態では、frizzled 8の一部、例えばfrizzled 8の膜貫通ドメインを含む。具体的実施形態では、ペプチドは疎水性である。
【0120】
配列番号1のペプチドまたはその変異体に共有結合的に連結されたN-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミンに共有結合的に連結されたガラクトースを含む糖タンパク質が、ここに提供される。「その変異体」という用語は様々なタイプのペプチドミメティックを包含する(Ahnら,2002)。ペプチドは、任意の適切なアミノ酸、例えばL-アミノ酸、D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸、またはそれらの組合せなど、ならびにペプチドミメティック化合物、例えば非天然アミノ酸、または活性ペプチドに対応する線状、環状、もしくは分岐状ペプチドの特異的構造要素を模倣する他の「ペプチド様」有機構築物を含みうる。糖部分は天然物、合成物、糖質ミメティックであることができ、それらの混合物を組成物中に使用することもできる。糖が糖質ミメティック部分であるか、ペプチド成分がペプチドミメティック部分であるか、それら2つの組合せである糖ペプチドミメティック化合物は、本発明に包含される。具体的実施形態では、本発明の糖はアミノ糖を含む。
【0121】
本発明の特定態様では、APFは1482.8の分子量を持ち、9個のアミノ酸と3個の糖部分とを以下の順序で含む:(a)シアル酸-ガラクトース-N-アセチルガラクトサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、または(b)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、または(c)シアル酸-ガラクトース-N-アセチルグルコサミン-セリン-ロイシン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン。本組成物はさらに以下の1つ以上を有すると定義することができる:(a)中のシアル酸がガラクトースに2,3結合によって連結される;(b)中のシアル酸がガラクトースに2,3結合によって連結される;(c)中のシアル酸がガラクトースに2,3結合によって連結される;(a)中のガラクトースがN-アセチルガラクトサミンに1,3結合によって連結される;(b)中のガラクトースがN-アセチルグルコサミンに1,4結合によって連結される;(c)中のガラクトースがN-アセチルグルコサミンに1,4結合によって連結される;N-アセチルグルコサミンがセリンにO結合によってアルファ配置で連結される;またはN-アセチルガラクトサミンがスレオニンまたはセリンにO結合によってアルファ配置で連結される。
【0122】
本発明の化合物は、一定の特徴が改善されるように、例えば水溶性ユニットの付加により溶解度が改善されるように、修飾しうると考えられる。「水溶性ユニット」という用語は水溶性を付与する任意の官能基、例えばS03-、PO32-、CH2COO-、エステル結合またはアルキル結合を介して取り付けられた4級アンモニウム基、例えばC=O(CH2)xNAlk3または(CH2)xNAlk3(式中、Alk3は、独立してC1-C4アルキルである3個のアルキル基を表し、xは1〜4である)、(CH2CH2O)nCH2CH2OX(n=1〜3)(XはHまたはCH3であることができる)、すなわちPEGまたはMeO-PEGなどを意味するが、これらに限定されるわけではない。電荷を有する水溶性ユニットの対イオンには、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属などの金属、ならびにハロゲンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0123】
本発明の一定の化合物は、N末端にスレオニン、セリンもしくはシステイン、または任意の機能的等価物を含む。機能的等価物の非限定的な例には、1級もしくは2級もしくは3級アルコール、エステル、カルボン酸、エーテル、チオール、チオレート、または分子が生物学的機能を保つという条件で、糖分子との共有結合を可能にする任意の官能基を有する合成誘導体が含まれる。
【0124】
本発明の「誘導体」に考えられる他の官能基には、位置異性体であれ、構造異性体であれ、立体異性体であれ、任意の糖またはアミノ酸の異性体が含まれる。化学分野の当業者に知られる他の置換基も、当該分子の生物学的機能が保たれる限り、与えることができる。
【0125】
IV.診断実施形態
本発明の具体的実施形態では、1つ以上の膀胱障害を診断するために、本発明のAPF化合物を利用する。
【0126】
本発明の具体的態様では、ある個体に関するAPF化合物の同定は、特定の膀胱障害を発症する危険の増加を示し、一部のケースでは、その疾患の症状はまだ明白でない場合もある。したがって一部の実施形態では、本発明は、間質性膀胱炎などの膀胱状態を発症する素因を同定することを包含するか、またはその疾患の存在を同定することを包含する。
【0127】
本発明の具体的実施形態では、膀胱障害の診断が、APF糖ペプチドまたはその活性の検出を含み、検出はAPF分子の直接的検出であるか、または例えば中間体、副生成物、分解産物、誘導体などの間接的検出であることができる。APFの検出には当技術分野の任意の適切な手段を使用することができるが、具体的実施形態では、例えばAPFのペプチド部分、糖部分もしくは糖ペプチド部分に対する抗体;APFのペプチド、糖もしくは糖ペプチド部分を検出するための質量分析、核磁気共鳴、もしくはプロテオミクス法などの技術;またはAPF活性を検出するための正常もしくは悪性細胞の代謝もしくは増殖の阻害に関するアッセイを、検出に利用する。一般に、個体に由来する試料中のAPFのペプチド部分を検出するために使用されるアッセイは、当業者には周知であり、例えばウェスタンブロット解析、ELISAアッセイ、「サンドイッチ」アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学または他の抗体に基づくアッセイが含まれる(例えばColiganら「Current Protocols in Immunology」1(2),第6章,(1991)参照)。一般に、ウェスタンブロット法は、タンパク質またはペプチドをゲル電気泳動によって分割した後、それらをニトロセルロース、ナイロンまたは他のトランスファーメンブレンにブロットする技術である。タンパク質は、オートラジオグラフィー(標識されている場合)を含むいくつかの方法の一つで検出するか、標識、125I-標識または酵素結合抗体、レクチンまたは特異的結合剤への結合によって検出することができる。
【0128】
ELISAアッセイでは、まず、APFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分を含む抗原に特異的な抗体を作製する。これは好ましくはモノクローナル抗体である。次に、レポーター抗体が、通例、前記モノクローナル抗体に対して作製される。レポーター抗体には、放射性部分、蛍光部分または酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの検出可能試薬を取り付ける。試料を宿主から取り出し、試料中のタンパク質を結合する固形支持体、例えばポリスチレンディッシュ上でインキュベートする。次に、ウシ血清アルブミンまたは乳タンパク質などの非特異的タンパク質と共にインキュベートすることにより、ディッシュ上の遊離のタンパク質結合部位を全てブロックする。次に、抗体をディッシュ中でインキュベートすると、その間に抗体が、ポリスチレンディッシュに結合した試料に由来するAPFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合する。全ての未結合抗体を緩衝液で洗い流す。次にレポーター抗体をディッシュに入れて、レポーター抗体を、APFのペプチド部分に結合しているモノクローナル抗体に結合させる。次に、未結合のレポーター抗体を洗い流した後、APFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分を検出する。あるいは、抗APF抗体を上述のように直接標識してもよい。具体的実施形態では、与えられた体積の患者試料中に存在するAPFの量が、そのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分の検出に比例し、それを標準曲線と比較する。
【0129】
「サンドイッチ」アッセイはELISAアッセイに似ている。「サンドイッチ」アッセイでは、APFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分を、固形支持体上に通し、固形支持体に取り付けた抗体に結合させる。次に、二次抗体をAPFのペプチド部分、糖部分、または糖ペプチドに結合させる。次に、二次抗体に特異的な三次抗体を固形支持体上に通し、二次抗体に結合させることによって、二次抗体を検出する。あるいは、二次抗体を上述のように直接標識してもよい。
【0130】
V.治療実施形態
膀胱状態の治療法を提供するために本発明のAPF組成物を様々な方法で取り扱いうることは、当業者には理解される。例えば、間質性膀胱炎の場合のように増殖が望ましい治療実施形態では、APFの活性もしくは産生の阻害物質またはAPF分解の刺激物質を、治療に使用することができる。増殖が望ましくない治療実施形態では、APF組成物を治療に使用することができる。
【0131】
本発明の一態様では、有害な膀胱状態が細胞増殖の減少(例えば上皮細胞増殖の阻害)と間接的または直接的に関係する。そのような状態は、膀胱上皮の有害な改変をもたらしうるので、細胞増殖音阻害を軽減しまたは実質的に除去することは有益であるだろう。これらの態様では、その膀胱状態を持つ個体に、APF組成物の阻害物質を送達すること、例えばその個体に全身的に送達すること、または膀胱上皮に直接送達することが望ましい。APF阻害物質の具体例には、APF組成物のペプチド部分に対する抗体、オリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、APFとその標的との相互作用を遮断する小さい化合物、およびAPFの分解を引き起こすまたは刺激する化合物、および/またはそれらの混合物が含まれる。本組成物は任意の適切な手段によって送達しうるが、具体的実施形態では、カテーテルを通して、経口的に、静脈内に、局所的に、皮下に、経皮的に、筋肉内に、関節内に、非経口的に、腹腔内に、鼻腔内に、膀胱内に、または吸入によって、送達される。別の具体的実施形態では、本組成物は薬学的に許容できる賦形剤(例えば水性液体または非水性液体)に含まれる。本発明の具体的態様では、ペプチド部分の疎水性ゆえに、非水性賦形剤に入れて投与される。これは単独で、または担体、例えばリポソーム、被包された細胞、ウイルスベクター、ナノ粒子、生分解性ゲルもしくはポリマー、植込まれた浸透圧ポンプ、または他の適切な装置に入れて送達することができる。
【0132】
本発明のもう一つの態様では、有害な膀胱状態が、細胞増殖の増加(例えば上皮細胞増殖の増加)と間接的または直接的に関係する。そのような状態は膀胱上皮の悪性腫瘍をもたらしうるので、細胞増殖の量を部分的にまたは実質上完全に減少させることは有益であるだろう。これらの態様では、その膀胱状態を持つ個体に、APF組成物を送達すること、例えばAPF組成物をその個体に全身的に送達すること、または膀胱上皮に直接送達することが望ましい。本組成物は任意の適切な手段によって送達しうるが、具体的実施形態では、カテーテルを通して、経口的に、静脈内に、局所的に、皮下に、経皮的に、筋肉内に、経口的に、関節内に、非経口的に、腹腔内に、鼻腔内に、膀胱内に、または吸入によって、送達される。別の具体的実施形態では、本組成物は薬学的に許容できる賦形剤に含まれる。これは単独で、または担体、例えばリポソーム、被包された細胞、ウイルスベクター、ナノ粒子、生分解性ゲルもしくはポリマー、植込まれた浸透圧ポンプ、または他の適切な装置に入れて送達することができる。
【0133】
特定の実施形態では、本発明のAPF組成物を、任意の種類の癌、例えば上皮癌を持つ個体に投与することができる。具体的実施形態では、膀胱上皮の悪性腫瘍があり、それをここでは膀胱癌と呼ぶ場合もある。具体的実施形態では、APF処置に加えて癌治療、例えば遺伝子治療、化学療法、放射線、外科手術、免疫療法、またはそれらの組合せも行なわれる。
【0134】
VI.膀胱障害
本発明はAPFが治療になるような任意の医学的状態に役立ちうるが、具体的実施形態では、本発明は1つ以上の膀胱障害に有用である。「膀胱障害」という用語は、膀胱の任意の異常状態を指すが、具体的実施形態では、膀胱障害は、例えば間質性膀胱炎、膀胱癌(原発癌または二次癌)、慢性骨盤痛症候群、過敏性膀胱症候群、尿道症候群、有痛性膀胱症候群、慢性非細菌性前立腺炎、および他の膀胱状態を含む。
【0135】
本発明の具体的実施形態には、間質性膀胱炎に関する方法および組成物がある。間質性膀胱炎の典型的な症状には、疼痛(これは腹部、尿道または膣領域に感じうるもので、しばしば性交にも関連する)、尿意切迫(これは直ちに排尿する必要があるという感覚を含み、圧迫および/または痙直も伴いうる)、ならびに排尿頻度の増加(これは日中および/または夜間排尿頻度であることができる)が含まれる。
【0136】
今までのところ、間質性膀胱炎の診断は細胞検査を使って行なわれ、水圧拡張術および生検が通常は同時に行なわれる。間質性膀胱炎を持つ典型的な膀胱を細胞検査で検査すると、粘膜下層ピンポイント出血(グロメリュレーション)、上皮の菲薄化および/またはハンナー潰瘍が同定されうる。また、場合によっては、炎症も存在しうる。したがって、尿がIC患者の膀胱に入るとかなりの痛みが生じ、そのため、間質性膀胱炎患者は、灼熱痛、刺痛および疼痛ゆえに、その膀胱に尿を溜めておく能力を持つことが、極めて困難になる。
【0137】
現在の治療法には、例えばエルミロン、アミトリプチリン(エラビル)アタラックス、ニューロンチン、ジトロパン(Ditropan)、プロザック、シメチジンなどの経口薬が含まれる。本発明の具体的実施形態では、本発明に関係する治療剤が単独で、またはこれらの医薬品もしくは類似の医薬品の1つ以上と組み合わせて使用される。具体的実施形態では、患者が、他の様々な症候群、例えば線維筋痛、尿道症候群、慢性外陰部痛(vulvodynia)、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、アレルギー、および他の自己免疫障害、例えば強皮症なども患う。
【0138】
VII.薬学的組成物
本発明は、膀胱状態、例えば間質性膀胱炎、膀胱癌、上皮過形成もしくは上皮由来の悪性腫瘍、線維芽細胞過形成もしくは悪性腫瘍、他の固形腫瘍、またはリンパ網内系悪性腫瘍などの処置または改善に用いられる薬学的組成物にも向けられる。本発明の化合物を、膀胱癌または他の悪性腫瘍の補助処置として、抗血管新生剤または抗真菌剤として用いることも考えられる。さらに、本発明の化合物は、間質性膀胱炎または細胞増殖に関連する他の障害を処置するための抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、またはAPFとその標的との相互作用を遮断する薬剤を作製するためにも使用することができると考えられる。
【0139】
そのような方法では一般に、有効量の、本発明の糖ペプチドを含む薬学的組成物を投与する。他の例示的組成物は、有効量の、基本的に配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5に記載の配列を持つノナペプチドをコードするオリゴヌクレオチド、または配列番号1、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5に記載のペプチドをコードする配列の一部または全部を含む低分子干渉RNAを含む。
【0140】
本発明が本発明の化合物による処置に向けられる場合、本発明の化合物と、必要に応じて適切な薬学的賦形剤との投与は、許容される投与様式のいずれによっても行なうことができる。化合物は、適宜、動物に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応および/または他の不都合な反応をもたらさらない分子実体および/または組成物とみなしうる薬学的に許容できる賦形剤に含まれうる。これには、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および/または抗真菌剤、等張化および/または吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのそのような媒質および/または薬剤の使用は当技術分野では周知である。通常の媒質および/または薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が考えられる。
【0141】
したがって投与は、例えば静脈内、局所、皮下、経皮、筋肉内、経口、関節内、非経口、腹腔、鼻腔内、膀胱内投与、または吸入による投与であることができる。従って適切な投与部位には、皮膚、気管支、胃腸、肛門、膣、眼、膀胱、および耳が含まれるが、これらに限定されるわけではない。製剤は、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、停留管長剤、クリーム剤、軟膏、ローション剤、エアロゾル剤など、好ましくは正確な投与量の簡単な投与に適した単位剤形での、固形、半固形、凍結乾燥固体、または液体剤形の形態をとりうる。
【0142】
本組成物は典型的には通常の薬学的担体または賦形剤を含み、さらに他の医薬用薬剤、担体、アジュバントなどを含みうる。好ましくは、本組成は、1つ以上の本発明化合物が約5重量%〜75重量%であり、残りは適切な薬学的賦形剤からなるだろう。好適な賦形剤は、当技術分野で周知の方法(例えば「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES」第18版(Mack Publishing Co.,ペンシルバニア州イーストン(1990))によって、特定の組成物および投与経路に適合させることができる。
【0143】
経口投与の場合、そのような賦形剤には、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ゼラチン、ショ糖、炭酸マグネシウムなどが含まれる。本組成物は溶液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態をとりうる。
【0144】
一部の実施形態では、本薬学的組成物が、丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態をとり、したがって本組成物は、生物学的に活性なコンジュゲートと共に、以下の物質をどれでも含有することができる:希釈剤、例えばラクトース、ショ糖、リン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えばデンプンまたはその誘導体;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど;ならびに結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースおよびその誘導体。
【0145】
製剤の活性化合物は、例えばポリエチレングリコール(PEG)担体(例えばPEG1000[96%]およびPEG4000[4%])に配合された約0.5%〜約50%の本発明化合物を含む坐剤に製剤化することができる。
【0146】
液体組成物は、化合物(約0.5%〜約20%)および随意の薬学的アジュバントを、担体(例えば食塩水(例えば0.9%w/v塩化ナトリウム)、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなど)に溶解または分散して、例えば静脈内投与用の溶液剤または懸濁剤を形成させることによって製造することができる。活性化合物は停留浣腸剤に製剤化することもできる。
【0147】
所望であれば、投与される組成物は、微量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、またはオレイン酸トリエタノールアミンなども含有しうる。
【0148】
局所投与の場合、組成物は、例えばローション剤、経皮貼付剤など、任意の適切な形式で投与することができる。吸入による送達の場合、組成物は乾燥粉末として(例えばInhale Therapeutics)、またはネブライザーにより液状で、送達することができる。
【0149】
そのような剤形を製造する方法は知られているか、または当業者には明白であるだろう。例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」(上記)および同様の刊行物を参照されたい。投与される組成物は、いずれにせよ、本発明の教示するところに従って投与した場合に処置される状態を軽減するのに薬学的に有効な量のプロドラッグおよび/または活性化合物を含有するだろう。
【0150】
一般に本発明の化合物は、治療有効量(すなわち処置を達成するのに十分な投与量)で投与されるが、それは処置される個体および状態に依存して変動するだろう。典型的には、治療有効1日量は、1日につき0.1〜100mg/kg体重の薬物である。大半の状態は、1日あたり約1〜約30mg/kg体重、すなわち70kgの人の場合で1日あたり約70〜2100mgの総投与量の投与に応答するだろう。しかしAPFの有効量は、特に膀胱内に直接投与される場合には、この範囲外になる可能性もある。
【0151】
コンジュゲートの安定性は、ポリペプチド鎖中のDアミノ酸残基ならびに他のペプチドミメティック部分などといった化学的改変によって、さらに制御することができる。さらに、コンジュゲートの安定性を、非天然糖質残基によって強化することもできるだろう。
【0152】
VIII.併用処置
個体(例えば患者)における癌の処置に関するAPF組成物の有効性を増加させるために、これらの組成物を過剰増殖性疾患の処置に有効な他の薬剤(例えば抗癌剤)と組み合わせることが、望ましいかもしれない。「抗癌」剤は、例えば癌細胞を殺し、癌細胞のアポトーシスを誘導し、癌細胞の成長速度を低下させ、転移の発生もしくは数を減少させ、腫瘍サイズを減少させ、腫瘍成長を阻害し、腫瘍もしくは癌細胞への血液供給を減少させ、癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進し、癌の進行を防止もしくは阻害し、または癌を持つ対象の寿命を延ばすことなどによって、対象の癌に負の影響を及ぼす能力を持つ。より一般的には、これら他の組成物は、細胞を殺しまたは細胞の増殖を阻害するのに有効な併用量で投与される。この方法は、細胞を発現コンストラクトおよび薬剤または複数の因子と同時に接触させることを伴いうる。これは、細胞を、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤と接触させることによって、または細胞を、2つの異なる組成物または製剤(この場合、一方の組成物は発現コンストラクトを含み、他方は第2の薬剤を含む)と同時に接触させることによって、達成することができる。
【0153】
化学療法剤および放射線療法剤に抵抗性の腫瘍細胞は、臨床腫瘍学における大きな問題である。現在の癌研究の目標の一つは、化学療法および放射線療法の効力を、例えばそれを他の癌治療法と組み合わせることなどによって、改善する方法を発見することである。本発明との関連では、APF組成物治療は、他のアポトーシス促進剤または細胞周期調節剤だけでなく、化学療法、放射線療法、外科手術、または免疫療法による介入とも同様に併用することができるだろうと考えられる。
【0154】
あるいは、APF処置は、数分から数週間にわたる間隔で、他の薬剤処置の前、後、またはその両方に行なうことができる。APF組成物および他の薬剤が個体の細胞に別個に適用される実施形態では、一般に、APF組成物と他の薬剤とが細胞に対して有利な併用作用をまだ発揮することができるように、それぞれの送達があまり時間を置かずに行なわれることが保証されるだろう。そのような場合は、細胞を両方のモダリティと互いに約12〜24時間以内に、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に接触させるだろうと考えられる。しかし場合によっては、処置期間をかなり延ばすことが望ましいこともあり、その場合は、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する。
【0155】
例えばAPF処置を「A」、放射線療法または化学療法などの第2剤を「B」とすると、A/B/A、B/A/B、B/B/A、A/A/B、A/B/B、B/A/A、A/B/B/B、B/A/B/B、B/B/B/A、B/B/A/B、A/A/B/B、A/B/A/B、A/B/B/A、B/B/A/A、B/A/B/A、B/A/A/B、A/A/A/B、B/A/A/A、A/B/A/A、A/A/B/Aなど、様々な組合せを使用することができる。
【0156】
患者への本発明のAPF組成物の投与は、その分子にもし毒性があれば、その毒性を考慮しつつ、化学療法剤の投与に関する一般的プロトコールに従って行なわれるだろう。処置サイクルは必要なだけ繰り返されるだろうと考えられる。また、種々の標準的治療ならびに外科的介入を、記載されている過剰増殖細胞治療と組み合わせて適用してもよいと考えられる。
【0157】
A.化学療法
細胞成長を阻害するための本明細書に記載のAPF処置に加えて、他の化学療法剤も新生物疾患の処置に有用であることは、当業者には理解される。そのような化学療法剤の例には、例えばシスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロルエタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビンエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害物質、トランスプラチナム、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または前記の任意の類似体もしくは誘導変異体が含まれる。
【0158】
B.放射線療法
DNA損傷を引き起こす他の因子であって広範に使用されているものには、一般にγ線と呼ばれているもの、X線、および/または放射性同位体の腫瘍細胞への指向的送達が含まれる。マイクロ波およびUV照射など、他の形態のDNA損傷因子も考えられる。おそらく、これらの因子はいずれも、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対して、広範な損傷をもたらすだろう。X線の線量範囲は、長期間(3〜4週間)にわたる50〜200レントゲンの1日線量から、2000〜6000レントゲンの単回線量までにわたる。放射性同位体の投与量範囲は広く変化し、その同位体の半減期、放出される放射線の強さおよびタイプ、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0159】
細胞に適用される「接触」または「ばく露」という用語は、ここでは、治療コンストラクトおよび化学療法剤または放射線療法剤が標的細胞に送達されるか、標的細胞のすぐ近くに置かれる過程を説明するために用いられる。細胞死または細胞静止を達成するために、両薬剤は、細胞を殺すか細胞の分裂を防止するのに有効な併用量で細胞に送達される。
【0160】
C.免疫療法
免疫療法剤は、一般に、免疫エフェクター細胞および免疫エフェクター分子を使用した癌細胞の標的化および破壊に頼っている。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面にある何らかのマーカーに特異的な抗体であることができる。抗体だけで治療のエフェクターとして役立ちうるか、または実際に細胞を殺す他の細胞を抗体が動員しうる。抗体は薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートして、単にターゲティング剤として役立たせることもできる。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子を持つリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0161】
したがって免疫療法はAPF治療法と共に併用療法の一部として使用することができる。併用療法の一般的アプローチを以下に議論する。一般に、腫瘍細胞は、ターゲティングに適した(すなわち他の細胞の大半に存在しない)何らかのマーカーを持たなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、それらはいずれも本発明との関連でターゲティングに適しうる。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、尿腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155などがある。
【0162】
G.遺伝子
さらにもう一つの実施形態では、二次的処置が、標的組織に対して併用抗増殖作用を持つ第2治療ポリヌクレオチドをAPF分子の前、後、またはAPF分子と同時に投与する二次遺伝子治療である。細胞増殖の阻害物質、例えばp53を含む腫瘍抑制因子、および/またはプログラム細胞死の調節物質、例えばBcl-2など、様々なタンパク質が、本発明に包含される。
【0163】
E.外科手術
癌を持つ人の約60%は、予防的、診断的または病期分類的、治療的および姑息的外科手術を含む何らかのタイプの外科手術を受けるだろう。治療的外科手術は、例えば本発明の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法および/または代替療法などの他の治療法と一緒に使用しうる癌処置である。
【0164】
治療的外科手術には、癌性組織の全部または一部を物理的に除去、切除、および/または破壊する摘除術が含まれる。腫瘍摘除とは腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍摘除の他にも、外科手術による処置には、レーザー外科手術、凍結外科手術、電気外科手術、および顕微鏡下外科手術(モース氏手術)が含まれる。さらに、本発明は表在性癌、前癌、または付帯量の正常組織の除去と一緒に使用することができると考えられる。
【0165】
癌性の細胞、組織、または腫瘍の一部または全部を切除すると、体内に空洞が生じうる。追加の抗癌治療法によるその領域の灌流、直接注射または局所適用によって、処置を達成してもよい。そのような処置は、例えば1、2、3、4、5、6もしくは7日ごと、または1、2、3、4および5週間ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月ごとに繰り返すことができる。これらの処置は様々な投薬量で行なうこともできる。
【0166】
F.他の薬剤
他の薬剤も、処置の治療効力を改善するために、本発明と組み合わせて使用することができると考えられる。これらの追加薬剤には、免疫調整剤、細胞表面受容体およびギャップジャンクションのアップレギュレーションに影響を及ぼす薬剤、細胞増殖抑制剤および分化誘導剤、細胞接着の阻害物質、またはアポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感受性を増加させる薬剤が含まれる。免疫調整剤には、腫瘍壊死因子、インターフェロンアルファ、ベータ、およびガンマ、IL-2および他のサイトカイン類、F42Kおよび他のサイトカイン類似体、またはMIP-1、MIP-1ベータ、MCP-1、RANTES、および他のケモカイン類が含まれる。さらに、細胞表面受容体またはそれらのリガンド(例えばFas/Fasリガンド、DR4またはDR5/TRAILなど)のアップレギュレーションは、過剰増殖細胞に対するオートクリンまたはパラクリン作用の樹立によって、本発明のアポトーシス誘導能力を増強するだろうと考えられる。ギャップジャンクション数の上昇による細胞間シグナル伝達の増加は、近傍の過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖作用を増大させるだろう。別の実施形態では、処置の抗過剰増殖効力を改善するために、細胞分裂抑制剤または分化誘導剤を本発明と組み合わせて使用することができる。細胞接着の阻害物質は本発明の効力を改善すると考えられる。細胞接着阻害物質の例は焦点接着キナーゼ(FAK)阻害物質およびロバスタチンである。さらに、処置効力を改善するために、アポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を増加させる他の薬剤、例えば抗体c225などを、本発明と組み合わせて使用することもできると考えられる。
【0167】
ホルモン療法も本発明と一緒に、または上述した他の任意の癌治療法と組み合わせて使用することができる。ホルモンの使用は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌または子宮頚癌などの一定の癌の処置に、テストステロンまたはエストロゲンなどの一定のホルモンのレベルを低下させたり、その作用を遮断したりする目的で利用することができる。この処置は、1つの処置選択肢として、または転移の危険を減少させる目的で、少なくとも1つの他の癌治療法と組み合わせて、しばしば使用される。
【0168】
IX.キット
本発明の糖タンパク質に関係する診断および/または治療キットは、本発明のもう一つの態様を構成する。そのようなキットは一般に、適切な容器手段中に、本発明のAPF分子、例えば基本的に配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に記載する配列(ただしこれらに限定されるわけではない)を持つペプチドを含む糖タンパク質、またはそのような分子を検出する手段を含有する。本キットは、APF組成物を含有する単一の容器手段を持つか、APF組成物およびそのようなキット内に含まれうる他の試薬類のための相異なる容器手段を持つことができる。他のキットは、適切な容器手段中にAPFの阻害物質、例えば抗体、低分子干渉RNAなどを含みうる。診断キットは、APF組成物を同定するための任意の適切な試薬類、例えば抗体などを含みうる。
【0169】
本キットの成分は、溶液として、または乾燥粉末として提供することができる。成分を溶液として提供する場合、その溶液は水性または非水性溶液であり、滅菌された水性または非水性溶液は特に好ましい。試薬類または成分を乾燥粉末として提供する場合、その粉末は、適切な溶剤の添加によって復元することができる。溶剤も別の容器手段に入れて提供しうると考えられる。
【0170】
キットは、例えばイムノアッセイに必要とされるように、基本的に配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に記載の配列を持つペプチドを検出するための試薬類を含みうる。免疫検出試薬は典型的には抗体もしくは抗原に付随したラベルまたは二次結合リガンドに付随したラベルを含むだろう。例示的リガンドには、ラベルが付随している第1抗体もしくは抗原に対する二次抗体、またはビオチンもしくはアビジン(またはストレプトアビジン)が含まれうる。もちろん、例示的ラベルの多くは当技術分野で知られており、そのようなラベルはいずれも本発明に関連して使用することができる。キットは抗体-ラベルコンジュゲートを、完全にコンジュゲートされた形態で、中間体の形態で、またはキットの使用者によってコンジュゲートされるようになっている別個の部分として、含有しうる。
【0171】
容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ビン、注射器または他の容器手段であってその中に抗原または抗体を入れ、好ましくは適切に小分けすることができるものを含むだろう。第2結合リガンドを提供する場合、キットは一般に、第2のバイアルまたは他の容器であってその中にそのリガンドまたは抗体を入れることができるものも含有するだろう。本発明のキットは、典型的には、商業的販売のために抗体、抗原、および試薬容器をぴったりと囲んで含有する手段も含む。そのような容器には、射出成形またはブロー成形されたプラスチック製容器であってその中に所望のバイアルを保持しておくものが含まれうる。
【0172】
X.APF抗体
もう一つの態様として、本発明では、タンパク質または糖組成物、例えば本発明のペプチド、糖、糖ペプチド、またはそれらの組合せと免疫反応する抗体が考えられる。ペプチドは、より大きい組成物、例えば本発明のAPFの一部から構成されうる。
【0173】
抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる。好ましい実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。抗体を製造し特徴づける手段は当技術分野では周知である(例えばHowellおよびLane,1988参照)。
【0174】
簡単に述べると、アジュバントまたは免疫応答を強化する他のそのような分子(例えばKLH)を使って、または使わずに、本発明のペプチド、糖または糖ペプチドを含む免疫原で動物を免疫し、免疫された動物から抗血清を集めることによって、ポリクローナル抗体を作製する。広範囲にわたる動物種を抗血清の産生に用いることができる。典型的には、抗抗血清の産生に用いられる動物はウサギ、マウス、ラット、ニワトリ、ハムスターまたはモルモットである。ウサギの血液量は比較的多いので、ウサギはポリクローナル抗体の産生にとって好ましい選択肢である。
【0175】
当業者には一般にわかるだろうが、APFペプチド、糖、糖ペプチド、特に配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5によって表されるもの、その変異体およびエピトープに特異的な抗体は、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でも、通常の免疫技術を使って作製することができる。APFの抗原性エピトープを含有する組成物は、1以上の実験動物、例えばウサギ、ニワトリ、またはマウスを免疫するのに使用することができ、そうすればそれらの実験動物は、APFのペプチド、糖、または糖ペプチド領域に対する特異的抗体を産生するようになるだろう。抗体が生成するまで待ってから、単に動物から採血し、全血から血清試料を調製するだけで、ポリクローナル抗血清を得ることができる。
【0176】
モノクローナル抗体を取得する場合も、まず、実験動物(しばしば好ましくはマウス)をAPF組成物で免疫することになるだろう。次に、抗体を生成させるのに十分な時間が経ってから、その動物から脾細胞またはリンパ細胞の集団を得る。次に、その脾細胞またはリンパ細胞を細胞株、例えばヒトまたはマウス骨髄腫株と融合させて、抗体分泌ハイブリドーマを作出することができる。これらのハイブリドーマを単離して個々のクローンを得た後、それらを所望のAPFペプチド、糖、または糖ペプチドに対する抗体の産生に関してスクリーニングすることができる。
【0177】
免疫化に続いて、脾細胞を取り出し、標準的融合プロトコールを使って形質細胞腫細胞と融合させることにより、APFおよび/またはAPFペプチドに対するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作出する。選択した抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを標準的技術、例えばELISAおよびウェスタンブロット法を使って同定する。次に、ハイブリドーマクローンを液体培地中で培養し、培養上清を精製することにより、APF特異的モノクローナル抗体を得る。
【0178】
本発明のモノクローナル抗体は、標準的免疫化学手法(例えばELISAおよびウェスタンブロット法)、ならびにAPFエピトープに特異的な抗体を利用しうる他の手法に、有用な用途が見つかるだろう。
【0179】
また、特定のペプチドに特異的なモノクローナル抗体は他の有用な用途にも利用できると考えられる。例えば免疫吸着プロトコールにおけるそれらの使用は、ネイティブもしくは組換えAPF種またはその変異体の精製に役立ちうる。
【0180】
一般に、APFに対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、様々な実施形態で使用することができる。例えばそれらは、APFまたは関連タンパク質をコードするcDNAまたは遺伝子を得るための抗体クローニングプロトコールに使用することができる。これは、APFエピトープを認識するハイブリドーマ細胞もしくはリンパ球の選択、またはAPFエピトープを認識する抗体もしくはそのセグメントの作製にも使用しうる。また、細胞または動物におけるAPFの作用を解析するための阻害研究にも使用することができる。抗APF抗体は、様々な細胞事象中のAPFペプチドの分布を解析するための(例えば異なる生理学的条件下でAPFペプチドまたは糖ペプチドの細胞特異的または組織特異的分布を決定するための)免疫学的局在決定研究にも役立つだろう。そのような抗体の特に有用な用途は、ネイティブまたは組換えAPFペプチドまたは糖ペプチドの(例えば抗体アフィニティーカラムなどによる)精製における用途である。そのような免疫学的技術の作用はいずれも、本開示に照らして当業者にはわかるだろう。
【0181】
本発明をその特定実施形態に関して説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えうることは、当業者には理解されるだろう。本願特許請求の範囲は、ここに記載する具体的実施形態に限定されないものとする。
【0182】
本発明は、APF組成物に対する抗体、例えばペプチド部分、糖部分、および/または糖ペプチド部分に対する抗体を作製する方法も包含する。ペプチド部分は、例えば配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6などを含む。次に、これらの抗体を、例えば間質性膀胱炎などの膀胱状態の検出、膀胱状態の診断、またはAPF組成物を阻害するためなどの治療的目的に、利用することができる。
【0183】
XI.抗増殖因子の阻害物質のスクリーニング
APF活性の阻害物質は、例えば直接または間接細胞増殖阻害アッセイなどを使って、スクリーニングすることもできる。直接アッセイでは、APFによる正常細胞増殖または悪性細胞増殖の阻害が、用量依存的に打ち消される。この目的には、トリチウム化チミジン取り込み、ブロモデオキシウリジン取り込み、生細胞数、または細胞増殖の検出に使用される数多くの市販化合物のいずれかを含む細胞増殖アッセイを使用することができるだろう。間接アッセイでは、APFによる正常細胞代謝または悪性細胞代謝の阻害を、細胞増殖の間接的指標として使用する。その場合は、APFによる細胞代謝の阻害が、APF活性の阻害物質によって用量依存的に打ち消されるだろう。
【実施例1】
【0184】
例示的な方法および試薬
細胞培養
細胞検査は、先に記述されているように(Keayら,2001;Keayら,2000;Keayら,2003a;Keayら,2003b;Keayら,1996)、全身麻酔下で行い、リジッドコールドカップ(rigid cold cup)生検鉗子を使って、過去に細胞検査を受けたことがあって間質性膀胱炎のNIDDK/NIH診断基準を満たす6人の患者と、尿路疾患に関して無症候である6人の年齢、人種および性別対応対照とから、粘膜下膀胱組織を伴う4mm2の移行上皮片を得た。患者は全員、少なくとも18歳であり、メリーランド大学医学部の施設内審査委員会の指針に従って登録された。
【0185】
外植された上皮細胞を、これらの生検標本から、10%熱非働化ウシ胎仔血清(FBS)、1%抗生物質/抗真菌剤溶液、1%L-グルタミン、1.0U/mlインスリン(いずれもSigma(ミズーリ州セントルイス)から入手)および5μg/ml hEGF(R & D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を含むDMEM-F12(Media Tech、バージニア州ハーンドン)中、5%CO2雰囲気下に370Cで増殖させ、先に記述されているように(Keayら,2001;Keayら,2000;Keayら,2003a;Keayら,2003b;Keayら,1996)、AE-1/AE-3パンサイトケラチン抗体(Signet、マサチューセッツ州デダム)の結合によって特徴づけた。
【0186】
T24膀胱癌細胞(ATCC番号HTB4)はAmerican Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)から購入し、10%FBS、1%グルタミンおよび1%抗生物質/抗真菌剤溶液(いずれもSigmaから入手)を含有するマッコイ5A培地(Gibco-Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)で培養した。
【0187】
APF精製
外植した患者膀胱上皮細胞の上清からAPFを収集し、先に記述されているように(Keayら,2000)、分子量分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使って精製した。疑似APFは、正常対照膀胱上皮細胞と同じ精製手法を使って調製した。
【0188】
マイクロキャピラリーLC-MS/MS解析
マイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィー(mRPLC)は、イオントラップ質量分析計(LCQ Deca XP、ThermoFinnigan、カリフォルニア州サンホゼ)にオンライン接続したAgilent 1100キャピラリーLCシステム(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)を使って行なった。各試料の逆相分離は、3μm、孔径300ÅのC-18固定相(Vydac、カリフォルニア州ヘスペリア)を自分達でスラリー充填した内径75μm×長さ10cmの溶融シリカエレクトロスプレーイオン化キャピラリーカラム(Polymicro Technologies、アリゾナ州フェニックス)を使って行なった。試料注入後に、カラムを98%溶媒A(0.1%v/vギ酸-水溶液)で20分間洗浄し、40分間で2%溶媒B(0.1%v/vギ酸-アセトニトリル溶液)から42%溶媒Bまで、次に15分間で42%Bから95%Bまでの直線的ステップ勾配を使って、0.5μL/分の一定流速で勾配溶出を行なった。
【0189】
イオントラップ質量分析計は、各完全質量分析(MS)スキャン後に3回のタンデムMSスキャンが行なわれるデータ依存モードで作動させ、ここでは3つの最も豊富な分子イオンが、38%の標準化衝突エネルギー(normalized collision energy)を使った衝突誘起解離(CID)用に動的に選択された。加熱キャピラリーの温度およびエレクトロスプレー電圧はそれぞれ180℃および1.8kVとした。
【0190】
3H-チミジン取り込み
先に記述されているように(Keayら,2001;Keayら,2000;Keayら,2003a;Keayら,1996)、外植した正常ヒト膀胱上皮細胞への3H-チミジン取り込みによって、細胞増殖を測定した。簡単に述べると、精製ネイティブまたは合成APF(または適当な疑似調製物)を無血清MEM(グルタミンおよび抗生物質/抗真菌剤だけを含有するもの)で希釈し、細胞に適用した。細胞対照には無血清MEMだけを与えた。次に、細胞を5%CO2雰囲気下に37℃で48時間インキュベートした。次に細胞を1μCi/ウェルの3H-チミジンで4時間標識し、トリプシン処理し、不溶性細胞含有物を収集し、ガラス繊維濾紙上にメタノール固定し、取り込まれた放射能の量を決定した。3H-チミジン取り込みの有意な阻害を、各プレートの対照細胞の平均から2標準偏差を越える、1分あたりのカウント数の平均減少と定義した。
【0191】
細胞数決定
細胞計数実験では、外植した正常ヒト膀胱上皮細胞、LNCaP前立腺癌細胞、またはT24膀胱癌細胞を、10%FBS、1%抗生物質/抗真菌溶液、1%L-グルタミンを含有するMEM(初代膀胱細胞)、DMEM(LNCaP細胞)、またはマッコイ5A培地(T24細胞)中、1×104細胞/ウェルの密度でコーニング24穴組織培養プレート(VWR Scientific Products)に播種し、5%CO2雰囲気下に37℃で終夜インキュベートした。翌日、培地を除去し、1%抗生物質/抗真菌剤溶液および1%L-グルタミンを含有(3つの細胞タイプの全て)する無血清MEM、DMEM、またはマッコイ5A培地に置き換えた。次に、HPLC精製したAPFまたは合成APF(またはそれらの疑似調製物)を培地に加え、細胞をさらに5%CO2下に37℃でインキュベートした。48時間後に培養上清をELISAによる成長因子解析用に取り出し、細胞をトリプシン処理し、トリパンブルー(Sigma)で染色し、血球計を使って計数した。
【0192】
ELISA
HB-EGF−ELISAは、96穴Immuolon IIプレート(Dynatech Laboratories、バージニア州シャンティイ)を40℃にて200λ培養上清で終夜コーティングして、先に記述されているように行なった(Keayら,2001;Keayら,1998)。次にプレートを濯ぎ、ブロックし、抗HB-EGF抗体(1μg/ml)(R & D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を適用した。さらにインキュベートし、濯いだ後、ビオチン化抗ヤギIgG/アビジンDセイヨウワサビペルオキシダーゼを加えた。ABTS[2,2'-アジノ-ビス-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)]で発色させることにより、結合を検出した。405nmでの吸光度を読み取った。
【0193】
モノクローナル抗EGF抗体を製造者の使用説明書(R & D Systems)に従ってプレコーティングしたウェルに、EGF−培養上清(200λ)をピペットで入れた。インキュベートし、濯いだ後、HRP結合ポリクローナル抗EGFを加え、テトラメチルベンジジン(TMB)基質で発色させることにより、結合を検出した。450nmでの吸光度を読み取った。
【0194】
既知濃度のEGFまたはHB-EGFを使った結果から線形の吸光度対濃度曲線を作成し、吸光度値をプロットすることによって、試料濃度を決定した。
【0195】
酵素切断
部分精製APFを、3つの位置特異的ノイラミニダーゼ[2-3;2-3,6;2-3,6,8,9](いずれもSigmaから入手)のいずれかと共に37℃で2時間インキュベートした。対照APFは、同じ条件で、ただし酵素なしでインキュベートした。次に、APFを、3000MWカットオフのセントリコンフィルター(Amicon、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使った限外濾過によって酵素から精製し、各限外ろ過液の抗増殖活性およびレクチン結合を決定した。
【0196】
レクチン結合
HPLC精製したAPFまたは酵素処理したAPF試料を以下のアガロース結合レクチンに適用し、製造者の使用説明書に従って溶出させた:コムギ胚芽凝集素、コンカナバリンA、レンチルレクチン(いずれもAmershamから入手)、ビロードクサフジ(Vicia villosa)(Sigma)、アメリカデイゴ(Erythrina cristagalli)、グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)IおよびII、ピーナッツ凝集素、ジャカリン(Jacalin)レクチン(いずれもVector Labs(カリフォルニア州バーリンゲーム)から入手)、またはトリトリコモナス・モビレンシス(Tritrichomonas mobilensis)レクチン(Calbiochem-Novobiochem Corp.、カリフォルニア州サンディエゴ)。溶出物を3H-チミジン取り込みアッセイにより抗増殖活性について試験した。
【0197】
ショ糖密度勾配等電点電気泳動
HPLC精製したAPFを、LKB8100-1カラム(LKB Instruments Inc.、メリーランド州ゲイサーズバーグ)を使って15Wで18時間にわたって形成させたpH2〜10ショ糖密度勾配における高速等電点分離法で分画した。画分のpHを40℃で決定し、中和(pH7.0)した画分の抗増殖活性を3H-チミジン取り込みアッセイを使って正常膀胱細胞で決定した。
【0198】
APF合成
ペプチドの合成は、Nautilus 2400合成装置(Argonaut Technologies、カリフォルニア州フォスターシティー)を使って、アラニル2-クロロトリチル樹脂(Calbiochem-Novobiochem)上で、標準的Fmoc化学を利用して、固相法で行なった。N-{(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン}-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HATU)(Sigma-Aldrich、ウィスコンシン州ミルウォーキー)および1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)(Anaspec,Inc.)試薬を利用して、Fmoc保護アミノ酸(Anaspec Inc.、カリフォルニア州サンホゼ)をカップリングした。他の試薬類はSigma-Aldrichから購入した。全ての中間体および最終生成物を質量分析によって検証した。
【0199】
Fmoc保護O-α-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニン.LeuckおよびKunzの方法(LeuckおよびKunz,1997)にわずかな変更を加えて、Fmoc-L-Thr(Calbiochem-Novabiochem)をフェナシルエステルに変換し、銀トリフレートの存在下に2-アジド-1-α-ブロモ-ヘキサ-O-アセチル-2-デオキシラクトースでグリコシル化した。反応は、α-アノマーに関して>98%の選択性が保証される−40℃で行なった。アノマー純度はプロトンNMR分光法によって決定した。そのフェナシルエステルを亜鉛/酢酸/無水酢酸で脱保護することにより、アジド基の同時還元と、その結果生じたアミノ基のアセチル化も起こった(SvarovskyおよびBarchi,2003)。分取用逆相(C8カラム)HPLCにより、最終生成物を精製した。
【0200】
Fmoc保護O-β-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニン.βアノマーの製造手法は、2-アジド-1-α-ブロモ-ヘキサ-O-アセチル-2-デオキシラクトースによるスレオニンのグリコシル化を−20℃で行なった点以外は、αアノマーの製造手法と同じである。この手法によって生じた生成物は、αアノマー(90%)とβアノマー(10%)の混合物であり、これは酢酸エチル/ヘキサン類勾配を用いるシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって容易に分離された。
【0201】
Fmoc保護O-α-[Galβ(1→3)GalNAc]-L-スレオニン.合成手法はFmoc保護O-α-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニンの製造に用いた方法と類似している。Qiuらが公表した手法(Qiuら,1996)にわずかな変更を加えて、Fmoc-L-スレオニンフェナシルエステルを三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の存在下にトリクロロアセトイミデート-二糖供与体でグリコシル化した。アジド基の変換およびフェナシルエステルの脱保護は、Fmoc保護O-α-(N-アセチルラクトサミン)-L-スレオニン合成で用いた手法と同一である。
【0202】
糖ペプチド合成の一般的方法.グリコシル化Fmoc保護スレオニンをHATU/HOAtで活性化し、延長したカップリング時間(16時間)にわたって、ヒューニッヒ塩基の存在下で成長中のペプチド鎖に加えた。トリフルオロ酢酸、水、トリイソプロピルシランの混合物(90:5:5 v/v/v)を使って樹脂から糖ペプチドを切り離し、溶媒を減圧下で除去し、残渣を高真空下で乾燥した。その粗製乾燥糖ペプチドを無水メタノールに溶解し、ナトリウムメトキシド粉末で30分間処理した。HPLC-MSがアセチル基の完全な除去を示した時点で反応を酢酸で停止させ、蒸発乾固した。粗製脱アセチル化生成物を、C8逆相カラムを使った分取用HPLCによって精製した。
【0203】
N末端スレオニンヘキソサミド残基のシアリル化.ペプチドのN-アセチルヘキソサミン誘導体を、組換えラットα-2,3(N)シアリルトランスフェラーゼ(EMD Biosciences,Inc.、カリフォルニア州ラホーヤ)およびCMP-N-アセチルノイラミン酸基質(Sigma)を使って、250mM MOPS緩衝液(pH7.4)中で酵素的にシアリル化した。全ての粗製糖ペプチドをC8カラムでの逆相HPLCによって精製し、精製されたペプチドを質量分析によって解析した。
【0204】
ノーザンブロット解析
間質性膀胱炎を持つ6人の患者と、年齢、人種および性別対応無症候対照とに由来する外植膀胱上皮細胞から、Trizol/クロロホルム(Gibo-BRL)抽出を使って、全RNAを抽出した。各試料から等量のRNAを1%アガロース/2%ホルムアルデヒドゲルに負荷し、標準的ゲル電気泳動によって分離し、ナイロンメンブレンに転写した。APF mRNAのDIG標識プローブは、ヒトfrizzled 8タンパク質(EMBL NM-031866;例えば配列番号7)のヌクレオチド1626〜1632の既知配列(accgtgcccgccgcggtggtggtcgcc)(配列番号2)およびDIGノーザンスターターキットをSP6/T7/T3 RNAポリメラーゼ(Roche Applied Science、インディアナ州インディアナポリス)と共に使用することにより、ランダムラベル法で調製した。ベータアクチンmRNA用のDIG標識プローブはRoche Applied Scienceから購入した(ヒトベータアクチンのヌクレオチド69〜618を使って調製されたもの)(EMBL HSAC07)。CDP-Star(Roche Applied Science)を使って、化学発光検出により、ブロットを発色させた。
【0205】
抗APF抗体
配列番号1の誘導体から構成されるペプチド部分を含み、そこにN末端システイン残基が付加されている(配列番号6)APF組成物を製造することにより、合成APFペプチドを作製した。そのペプチドをシステイン残基(これが連結アミノ酸になる)で硫黄原子を介してKLHにカップリングし、抗体産生用の2頭のニュージーランド白ウサギに注射した(0.5mgペプチド/ウサギ)。月に1回の追加免疫注射を2回行なった後、血清を収集し、免疫グロブリン画分を精製し、HPLC精製したネイティブAPFおよびKLHに対するその反応性を、二次抗体にHRP結合ヤギ抗ウサギIgGを使って、ドットブロット形式で試験した。図7に示すように、これらの抗体はAPFおよびKLHを検出し、様々な既知濃度のAPFに対する標準曲線を作製することができた。免疫前抗体はAPFまたはKLHに結合しなかった。
【実施例2】
【0206】
質量分析解析によるアミノ酸の同定
本発明の具体的態様では、APF分子が、当技術分野における任意の適切な手段で、例えばAPFのペプチド、糖、または糖ペプチド部分の特性解析などによって、同定され、そして/または特徴づけられる。ある具体的実施形態では、質量分析を利用する。別の実施形態では、核磁気共鳴またはプロテミクス技術(同位体コードアフィニティアッセイを含む)などの技術、および高感度クロマトグラフィー法などを利用することができる。
【0207】
マイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィーを使って、質量分析用に、APFペプチドの極めて純粋な調製物を得た。HPLC精製APFの調製物3つをマイクロキャピラリー技術を使って解析したところ、3つのペプチドピークが各調製物にほぼ等しい比率で存在し、そのうちの1つだけが、初代膀胱上皮細胞に対してインビトロで抗増殖活性を持つことが示された。活性ピークのイオントラップ質量分析解析により、1482.8ダルトンの分子量が示された(図1A)。活性物質の衝突誘起解離によって生成するピークの解析により、末端シアル酸がヘキソース部分に連結されており、そのヘキソース部分はN-アセチルヘキソース部分に連結されていることが示された(図1B)。827ダルトンペプチド部分のさらなる解離後にN末端から存在する検出可能なアミノ酸部分には、アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニンが含まれていた(図1C)。存在する残りのN末端アミノ酸は合計351.4ダルトンの分子量を持っていた。相同ペプチドをコードする遺伝子の検索により、適切な総分子量を持つ配列(T-V-P-A-A-V-V-V-A:配列番号1)とWntリガンド受容体であるfrizzled 8(Qiuら,1996)の第6膜貫通領域中のアミノ酸541〜549との間に100%の相同性が示された。
【0208】
本発明のペプチド部分は配列番号1の保存的変異体、例えばアミノ酸配列S-V-P-A-A-V-V-V-A(配列番号3)、T-V-P-A-A-V-V-L-A(配列番号4)、S-L-P-A-A-V-V-V-A(配列番号5)、またはC-T-V-P-A-A-V-V-V-A(配列番号6)のアミノ酸配列を含むペプチドなども含みうる。これらの保存的変異体は、配列番号6の場合のように、化学的性質によって定義される既知の保存的置換または付加を含むと考えられる。例えばセリン、スレオニンおよびシステインは、本組成物の少なくとも1つの糖部分に連結するための手段となるヘテロ原子(連結手段として利用できる求核性または求電子性を持つ炭素または水素以外の原子)、具体的には酸素(O)および硫黄(S)を含み、本発明のペプチドおよび糖ペプチド中で交換した場合には、保存的変異体とみなされる。もう一つの例では、バリンサブユニットのいずれか一つを少なくとも1個以上のロイシンで置換する。
【0209】
ペプチドおよび/またはポリペプチドの機能性を実質的に変化させないアミノ酸置換を行ないうることは、当業者に知られている。したがって本発明では、基本的に配列番号1に記載の配列を持つペプチドを含む糖ペプチドが考えられる。「基本的に配列番号1に記載の配列」という用語は、その配列が配列番号1の一部に実質的に対応すること、および配列番号1のアミノ酸とは同一でないか、またはその生物学的機能等価物であるアミノ酸数が、比較的少ないことを意味する。「生物学的機能等価物」という用語は当技術分野では良く理解されており、本明細書ではさらに、基本的に配列番号1に記載の配列を持つタンパク質であって、上皮細胞の疾患状態に関係するものと定義される。したがって、配列番号1のアミノ酸と同一であるか機能的に等価なアミノ酸が、約50%未満、約50%〜約65%、70%および約80%、より好ましくは約85%〜約90%、さらに好ましくは約90および95%〜約99%であるような配列は、「基本的に配列番号1に記載」の配列であるだろう。しかし具体的実施形態では、APF分子は、2個以上のアミノ酸を置換してもまだ活性を含み、まだ活性でありうる。例えばペプチド全体を、疎水性であることができる誘導体化アミノ酸もしくはペプチドミメティック剤、または別の疎水性部分、例えば脂質で置換することができる。
【0210】
生物学的機能等価物
本発明のペプチドまたはそれらをコードするDNAセグメントの構造には修飾または改変を加えることができ、それでもなお、望ましい特徴を持つタンパク質またはペプチドをコードする機能的分子が得られる。以下は、等価な、さらには改善された第二世代分子を作製するために、タンパク質のアミノ酸を変化させることに基づく議論である。アミノ酸変化は、以下のコドン表に従ってRNA配列のコドンを変化させることによって達成しうる。
【表1】
【0211】
例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位などといった構造との相互作用的結合能力をほとんど失うことなく、一定のアミノ酸でタンパク質構造中の他のアミノ酸を置換することができる。タンパク質の生物学的機能活性を定義づけるのはそのタンパク質の相互作用能力および性質であるから、あるタンパク質配列と、当然、その基礎をなすDNAコード配列およびメッセンジャーRNA配列とに、一定のアミノ酸配列置換を施して、それでもなお類似する性質を持つタンパク質を得ることができる。したがって、ここに開示する組成物のペプチド配列または前記ペプチドをコードする対応DNAまたはRNA配列には、それらの生物学的有用性または活性を感知しうるほど失わずに、様々な変更を加えることができると考えられる。
【0212】
そのような変更を加える際には、アミノ酸のハイドロパシー指標を考慮することができる。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指標の重要性は、当技術分野で広く理解されている(KyteおよびDoolittle,1982;この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特徴が、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、ひいてはそれがそのタンパク質の他の分子(例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を定義づけるということは、広く受け入れられている。
【0213】
各アミノ酸にはそれらの疎水性および電荷特徴に基づいてハイドロパシー指標を割り当てられており(KyteおよびDoolittle,1982)、それらは以下の通りである:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9);、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)、およびアルギニン(4.5)。
【0214】
一定のアミノ酸を類似するハイドロパシー指標またはハイドロパシースコアを持つ別のアミノ酸で置換しても、類似する生物学的活性を持つタンパク質が得られること、すなわち、生物学的機能が等価なタンパク質が得られることは、当技術分野では知られている。このような変更を加える際には、ハイドロパシー指標が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるアミノ酸の置換は特に好ましく、±0.05以内であるアミノ酸の置換はさらに好ましい。
【0215】
また、類似アミノ酸の置換を親水性に基づいて効果的に行ないうることも、当技術分野では理解されている。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号には、隣接アミノ酸の親水性によって左右されるタンパク質の最大局所平均親水性が、そのタンパク質の生物学的性質と相関すると述べられている。
【0216】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、アミノ酸残基には以下の親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、トリプトファン(−3.4)。
【0217】
あるアミノ酸で、類似する親水性値を持つ別のアミノ酸を置換することができ、それでもなお生物学的に等価なタンパク質、特に免疫学的に等価なタンパク質が得られることがわかっている。このような変更では、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるアミノ酸の置換は特に好ましく、±0.5以内であるアミノ酸の置換はさらに好ましい。
【0218】
したがって、上に概説したように、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。上述の様々な特徴を考慮した例示的置換は当業者には周知であり、それらには、アルギニンおよびリジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、セリンおよびスレオニン、グルタミンおよびアスパラギン、ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが含まれる。
【0219】
また、アミノ酸配列は追加の残基、例えば追加のN末端またはC末端アミノ酸を含んでもよく、それでもなお、その配列が上記の基準(例えばタンパク質が関係する場合には生物学的タンパク質活性の維持)を満たす限り、本明細書に開示する配列の一つに基本的に記載されていると言えることも理解されるだろう。末端配列の付加は、特に、もう一つの分子(すなわち糖残基)への容易な共有結合を可能にするためにN末端またはC末端に隣接する様々な非天然アミノ酸配列を含みうる配列に当てはまる。
【実施例3】
【0220】
レクチン結合解析による糖部分の同定
本発明の具体的態様では、APF分子が、当技術分野における任意の適切な手段によって同定され、かつ/または特徴づけられる。ある具体的実施形態では、レクチン結合解析を利用して、糖部分を同定する。糖部分の同定には、例えば化学分解、NMR分光法、質量分析、および抗体結合を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)他の糖同定法も、使用することができる。
【0221】
ヘキソース部分およびヘキソサミン部分の同定および結合を決定するために、HPLC精製APFをそのネイティブ状態で種々のアガロース結合レクチンと共にインキュベートし、溶出液を抗増殖活性について試験した(表2)。
【0222】
【表2】
【0223】
ネイティブAPFはコムギ胚芽凝集素およびトリトリコモナス・モビレンシスレクチンに結合したが、他の様々なレクチンには結合しなかったことから、おそらく末端シアル酸残基が存在することが確認された。4つの既知結合[2,3、2,6、2,8、または2,9]のいずれかによって連結されたシアル酸を切断するノイラミニダーゼでネイティブAPFを処理しても、その生物学的活性を減少しなかったが、その後、生化学的活性毒の溶出とともに、グリフォニア・シンプリシフォリアI、ピーナッツ凝集素、ジャカリンレクチンおよびアメリカデイゴへのAPFの結合が可能になった。これらの結果は、それぞれ、ガラクトースおよびN-アセチルラクトサミン(ガラクトースβ1-4N-アセチルグルコサミン)が存在する可能性を示している。脱シアリル化APFがビロードクサフジレクチンには結合しないらしいことから、残りの二糖部分はガラクトースα1-3N-アセチルガラクトサミンからはなっていないことが示され、グリフォニア・シンプリシフォリアIIへの結合がないことから、N-アセチルグルコサミン部分はシアル酸の除去後も末端ではないことが確認された。次に、2,3結合切断に特異的なノイラミニダーゼによる消化後のグリフォニア・シンプリシフォリアIおよびアメリカデイゴレクチンへの結合を証明することにより、シアル酸はガラクトース部分に2,3結合によって連結されていることが判明した。したがってAPFの推定構造は、ペプチドのN末端のスレオニンにO結合しているガラクトースβ1-4N-アセチルグルコサミンまたはガラクトースβ1-3N-アセチルガラクトサミンに2,3結合したシアル酸だった。完全シアリル化ネイティブAPFの等電点電気泳動により、約2.3の等電点を持つ酸性ペプチドであることが示された。
【実施例4】
【0224】
APFの全合成
本発明は、抗増殖活性(特に膀胱細胞に対する抗増殖活性)を持ち、1個以上の糖部分と疎水性部分とを含む任意のAPF分子を包含する。単離された天然APF分子も、合成APF分子も、同様に本発明に包含される。特に、APF分子は、当技術分野における任意の適切な手段によって合成される。しかし具体的実施形態では、本分子は、この実施例に記載するように合成される。
【0225】
APFがアメリカデイゴに結合したこと、およびそれが膜結合型ペプチドではなくて分泌型ペプチドであることから、合成は、ノナ糖ペプチドの固相合成にαおよびβ-グリコシル化アミノ酸ビルディングブロックを使って、スレオニンに連結されたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)から開始した。化学酵素的アプローチを採用して、適切にFmoc保護されたN-アセチルラクトサミン-スレオニン糖アミノ酸を両方の配置で合成することによって、完全な分子を構築した。次に、これらを他の8アミノ酸を含有するペプチド鎖に組み込んだ。シアル酸部分はAPF活性にとって必要でないことがレクチン結合研究からわかっていたので、次にαおよびβ-N-アセチルラクトサミン修飾ペプチドの両方を、それらの抗増殖活性についてアッセイし、かつ外植初代正常膀胱上皮細胞による特異的成長因子産生を調節する能力についてアッセイした。
【0226】
ネイティブAPFと同様に、N-アセチルラクトサミン誘導体の非シアリル化アルファアノマーは、約0.4nMのIC50を持つ強力な細胞増殖阻害物質だった。最大阻害はわずか1nMの合成毒素で達成できた(図2)。これと比較すると、N-アセチルラクトサミン誘導体のベータアノマーおよび非グリコシル化ペプチドは測定可能な活性が低かった。そこで次に、組換え2,3-シアリルトランスフェラーゼを使ってノイラミン酸単位をアルファアノマーに付加したところ、シアリル化誘導体の抗増殖活性は、非シアリル化糖ペプチドと類似していることが確認された(図2)。3H-チミジン取り込みを最大限に阻害する同じ1nM濃度のシアリル化または非シアリル化アルファアノマー型合成APFは、細胞数を有意に減少させる(非掲載データ)と共に、初代膀胱細胞によるHB-EGF産生を有意に減少させ、かつEGF産生を増加させることも示された(表3)。したがって、これらの解析の全てから決定されるAPFは、アルファアノマー型シアロ糖ペプチドだった。
【0227】
【表3】
【0228】
*疑似APFと比較してp<0.0001
【0229】
†ペプチドのみと比較してp<0.0001
【0230】
しかし、スレオニンに連結されたベータアノマー型のN-アセチルグルコサミンは真核細胞で先に記載されたことがあるが、アルファ型はこれまでに記載されたことがなく、一方、O-α-N-アセチルガラクトサミンは修飾真核細胞タンパク質中によく見いだされる。そこで、ガラクトースにβ1→3結合したアルファアノマー型のN-アセチルガラクトサミンを含むように、APFを合成した。同じく図2に示すように、この合成APFはアルファN-アセチルグルコサミンを含む合成化合物と類似する活性を持っていた。そこで、GalNAc含有またはGlcNAc含有合成糖ペプチドと共に脱シアリル化ネイティブAPFを添加したマイクロキャピラリーLC-MS/MS(図3Aおよび3B)を使って、APFの正しい構造を立証した。ネイティブおよび合成GalNAc含有APF誘導体はどちらも同じ保持時間を持ち、それはGlcNAc含有化合物の保持時間とは容易に識別できた。したがってAPFの正しい構造は、図4に示すGalNAc含有シアロ糖ペプチドである。
【実施例5】
【0231】
ネイティブおよび合成APFによる膀胱癌細胞増殖の阻害
合成APFとネイティブAPFが同じであることを示すさらなる証拠は、膀胱癌T24細胞株に対するそれらの抗増殖活性を、トリパンブルー排除法で決定される生細胞数を使って測定することによって得られた。図5に示すように、これらの細胞はネイティブAPF種にも合成APF種にも、ほぼ同じ濃度で感受性を示す。
【実施例6】
【0232】
ノーザンブロット解析によるAPF mRNAの同定
APFがfrizzled 8関連ペプチドであることを示すさらなる証拠を得るために、IC患者6人および正常対照6人の外植膀胱上皮細胞から抽出したmRNAのノーザンブロット解析を行なった。図6に示すように、ノナペプチドをコードするプローブに結合する小さな(約460bpの)mRNA種は、APFを産生することが先に示されているIC患者由来の6つの細胞外植体の抽出物中にのみ存在し、APFを産生しない年齢、人種および性別対応対照に由来するどの外植細胞の抽出物にも存在しなかった。5回の実験中3回の実験で、対照標本には認められない約3100bpのかすかなバンドがIC標本に認められたが、他の2回の実験ではそれを検出することができず、主要バンドはいつでも450bpにあった。しかし、ヒトfrizzled 8の完全長mRNAのサイズ(4Kb)にはバンドが認められず、対照細胞ではどの実験でもバンドが認められなかった。これに対して、両群に由来する細胞はいずれも、類似する量のベータアクチンmRNAを産生するようだった。
【実施例7】
【0233】
APFの阻害化合物による治療実施形態
本発明の一部の態様では、その必要がある個体にAPFの阻害化合物を与えることによって、APFの抗細胞増殖活性または産生を部分的にまたは完全に減少させることが有益である。例えば、ある膀胱状態を処置するために、APFの阻害物質をその膀胱状態の少なくとも1つの症状を患っている個体に、またはその膀胱状態を持つと疑われる個体に送達する。具体的実施形態では、APFの阻害物質が、それに結合する抗体、またはAPFによるその標的への結合の低分子阻害物質である。別の態様では、APFの阻害物質が、APF産生を阻害する化合物、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくは低分子干渉RNAなど、または同様にAPF産生を阻害できるであろう任意の化合物である。別の態様では、APFの阻害物質が、APFの分解を刺激する化合物である。
【0234】
APFの阻害物質は任意の適切な手段によって個体に送達することができる。本発明の具体的実施形態では、APFの阻害物質が経口医薬品として含まれ、そして/またはカテーテルによって送達される。十分な量を膀胱組織に直接送達するか、または全身的に送達することができる。十分な量とは、膀胱状態の少なくとも1つの症状または所見(徴候)を改善する量であり、当業者はそのような量を決定するための標準的方法を理解している。
【実施例8】
【0235】
APFによる治療実施形態
本発明の一部の態様では、その必要がある個体にAPF組成物を送達してその抗細胞増殖活性を与えることが有益である。例えば膀胱癌を処置するために、膀胱癌の少なくとも1つの症状または所見(徴候)を患っている個体に、または膀胱癌を持つと疑われる個体に、APF組成物を送達する。図8は、2種類のペプチド(1番、配列番号1に相当、および4番、配列番号5に相当)ならびに2個(2番および5番、それぞれ非シアリル化)および3個(3番および6番)の糖部分を有するそれらの糖誘導体の、正常ヒト膀胱上皮細胞に対する抗増殖活性を証明している。
【0236】
別の実施形態では、前立腺癌細胞(例示的なLNCaP細胞など)をAPF組成物で処置する。LNCaP細胞を、24穴組織培養プレートの1ウェルあたり2×104細胞の密度で、10%ウシ胎仔血清、1%L-グルタミン、1%抗生物質/抗真菌剤溶液を含有するDMEM培に播種し、5%CO2雰囲気下に37℃で生育した。翌日、ウシ胎仔血清を含まない点以外は同じ添加物を含有するDMEM培地に培地を変えた後、HPLC精製APFまたは等量の疑似APFを各ウェルに加えた。培養3日目にトリパンブルー排除法によって生細胞数を数えた。値は、培地のみを与えた細胞対照と比較した細胞数の減少率であり、3重のウェルの平均値として記載する。垂直線は標準偏差である。細胞はネイティブ精製APFの抗増殖活性に対して感受性だった(図9)。
【0237】
APF組成物は任意の適切な手段によって個体に送達することができる。本発明の具体的実施形態では、APF組成物が経口医薬品として含まれ、そして/またはカテーテルによって、経口的に、静脈内に、局所的に、皮下に、経皮的に、筋肉内に、関節内に、非経口的に、腹腔内に、鼻腔内に、膀胱内に、または吸入によって送達される。十分な量を膀胱組織に直接送達するか、または全身的に送達することができる。十分な量とは、単独でまたは他の薬剤もしくは他のタイプの治療と組み合わせて与えられた場合に、膀胱癌の少なくとも1つの症状または客観的所見を改善する量であり、当業者はそのような量を決定するための標準的方法を理解している。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1A】APFのイオントラップ質量分析解析を示す。図1Aは、HPLC精製APFのマイクロキャピラリー分画よって得られる活性ピークの分子質量解析が記載されている。
【図1B】APFのイオントラップ質量分析解析を示す。図1Bは、衝突誘起解離による主要分子種の逐次的断片化後の解析を示す。
【図1C】APFのイオントラップ質量分析解析を示す。図1Cは、衝突誘起解離による主要分子種の逐次的断片化後の解析を示す。
【0239】
【図2】APFペプチドおよびグリコシル化誘導体の抗増殖活性を証明している。合成APFおよびその誘導体による初代正常膀胱上皮細胞3H-チミジン取り込みの阻害。等モル量のペプチド主鎖のみ(-□-)、N-アセチルラクトサミン-α-O-Thr誘導体(閉じた-▼-)、シアリル化N-アセチルラクトサミン-α-O-Thr誘導体(-△-)、N-アセチルラクトサミン-β-O-Thr誘導体(閉じた-◆-)、およびGalβ1-3GalNAc-α-O-Thr誘導体(閉じた-●-)を正常膀胱上皮細胞に適用し、3H-チミジン取り込みを決定して、緩衝液のみを含有する培地中で生育した細胞における取り込みと比較した。全ての標本を2〜3回の反復実験で3重にアッセイした。データは取り込みの平均阻害として表し、垂直線はその平均の標準誤差を示す。
【0240】
【図3A】ネイティブAPF、ならびに合成GlcNAc誘導体(Galβ1-4GlcNAcα-O-TVPAAVVVAともいう)のマイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィーを示す。ノイラミニダーゼ処理したAPFを、合成GalGlcNAc含有APFと共に注入し、C18でのそれらの相対的移動度を決定した。
【図3B】ネイティブAPF、ならびにGalNAc誘導体(一部の実施形態ではGalβ1-3GalNAcα-O-TVPAAVVVAともいう)のマイクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィーを示す。ノイラミニダーゼ処理したAPFを、合成GalGalNAc含有APFと共に注入し、C18でのそれらの相対的移動度を決定した。
【0241】
【図4】APF、Galβ1-3GalNAcα-O-TVPAAVVVAの構造の一実施形態を表す。
【0242】
【図5】天然および合成APFによるT24細胞増殖の阻害を示す。ネイティブAPF(260nmでの吸光度によれば推定濃度3〜5μg/ml)、等体積の疑似APF、合成GalGalNAcAPF(3.0μg/mlの糖ペプチド)、または等モル量のペプチド主鎖のみを、その細胞増殖阻害能力について、48時間後の生細胞数をトリパンブルー排除法で決定することによって比較した。全ての標本を3重にアッセイした。データは細胞数の平均減少として表し、垂直線はその平均の標準誤差を示す。
【0243】
【図6】APFノナペプチドをコードするmRNAのノーザンブロット解析を表す。間質性膀胱炎を持つ6人の患者(レーン1、3、5、7、9、および11)ならびに彼らの年齢、人種および性別対応無症候対照(レーン2、4、6、8、10、および12)に由来する外植膀胱上皮細胞から全RNAを抽出した。次に、その膜を、APF mRNAおよびベータ-アクチンmRNAのDIG標識プローブと共にインキュベートし、化学発光基質を使って発色させた。
【0244】
【図7】合成APFに対して生じさせた精製ウサギ抗体の、HPLC精製ネイティブAPFへの用量依存的な結合を証明している。
【0245】
【図8】2種類のペプチド(1番、配列番号1に相当、および4番、配列番号5に相当)ならびに2個(2番および5番、それぞれ非シアリル化)および3個(3番および6番)の糖部分を有するそれらの糖誘導体の、正常ヒト膀胱上皮細胞に対する抗増殖活性を証明している。
【0246】
【図9】インビトロでのLNCaP前立腺癌細胞に対するAPFの阻害活性を示す。
【0247】
参考文献
本明細書で言及する特許および刊行物はいずれも、本発明が属する技術分野の当業者の水準を示すものである。本明細書に記載する全ての特許および刊行物は、個々の刊行物について参照により本明細書に組み入れられることを明確かつ個別に示した場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
特許
米国特許第5,811,393号
米国特許第5,916,871号
米国特許第5,962,645号
米国特許第6,156,522号
米国特許第6,232,289号
米国特許第6,376,197号
米国特許第6,600,018号
刊行物
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【0248】
本発明およびその利点を詳細に説明し終えたが、本願特許請求の範囲によって定義される本発明から逸脱することなく、様々な変更、置換および改変を加えることができると理解すべきである。さらにまた本発明の範囲は、本明細書に記載したプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されないものとする。本開示から容易に理解されるだろうが、本明細書に記載した対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすまたは実質的に同じ結果をもたらすプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップであって、現存するものまたは後に開発されるものを利用することができる。したがって、本願特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップも、その範囲に包含するものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上の糖部分を持ち少なくとも1つの糖部分が疎水性部分に連結される膀胱抗増殖因子を含む、単離されたまたは合成された組成物。
【請求項2】
膀胱上皮細胞抗増殖因子とさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項3】
疎水性部分が以下の1つを含む、請求項1の組成物:
ペプチド部分、または
脂質部分。
【請求項4】
ペプチド部分が線状、環状、または分岐状である、請求項3の方法。
【請求項5】
ペプチドがfrizzledポリペプチドの少なくとも一部に対して相同性を有する、請求項3の方法。
【請求項6】
ペプチドがfrizzled 8の膜貫通ドメインの少なくとも一部に対して相同性を有するとさらに定義される、請求項5の方法。
【請求項7】
約1〜約6個の糖部分、および
約2〜約15アミノ酸残基のペプチド部分
を含み、残基の1つは連結アミノ酸であり、連結アミノ酸は糖部分の1つに共有結合的に連結されたヘテロ原子を含むとさらに定義される、請求項3の組成物。
【請求項8】
連結アミノ酸が極性である、請求項7の組成物。
【請求項9】
連結アミノ酸がセリン、スレオニン、またはシステインである、請求項7の組成物。
【請求項10】
2個の糖残基および9個のアミノ酸を含み、前記連結アミノ酸がセリン、スレオニン、またはシステインであるとさらに定義される、請求項7の組成物。
【請求項11】
3個の糖残基および9個のアミノ酸残基を含み、前記連結アミノ酸がセリン、スレオニン、またえはシステインであるとさらに定義される、請求項7の組成物。
【請求項12】
前記糖部分が天然糖、合成糖、天然糖の誘導体、または合成糖の誘導体を含む、請求項1の組成物。
【請求項13】
糖とペプチドの間の結合がアルファ配置またはベータ配置である、請求項3の組成物。
【請求項14】
ペプチド部分が天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸の誘導体、非天然アミノ酸の誘導体、修飾されたアミノ酸、主鎖修飾アミノ酸、またはそれらの混合物を含むとさらに定義される、請求項3の組成物。
【請求項15】
ペプチド部分が、還元されたペプチド結合を含む1個以上の主鎖修飾アミノ酸を含むとさらに定義される、請求項14の組成物。
【請求項16】
修飾されたアミノ酸がメチル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ベータアミノ酸、またはアミノ酸ミメティックとさらに定義される、請求項14の組成物。
【請求項17】
ペプチド部分が配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはその機能的誘導体を含む、請求項3の組成物。
【請求項18】
脂質部分が飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、エステル化脂肪酸、オメガ脂肪酸、リン酸基含有脂肪、または極性頭部および非極性尾部を持つ界面活性剤を含む、請求項3の組成物。
【請求項19】
ラベルを含むとさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項20】
ラベルが蛍光部分、比色部分、または放射性部分を含む、請求項19の組成物。
【請求項21】
(a)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルガラクトサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、
(b)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、または
(c)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-セリン-ロイシン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン
を含むとさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項22】
以下の1つ以上を有するとさらに定義される、請求項21の(a)の組成物:
シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;
ガラクトースが1,3結合によってN-アセチルガラクトサミンに連結される;または
N-アセチルガラクトサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【請求項23】
以下の1つ以上を有するとさらに定義される、請求項21の(b)の組成物:
シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;
ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;または
N-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【請求項24】
以下の1つ以上を有するとさらに定義される、請求項21の(c)の組成物:
シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;
ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;または
N-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でセリンに連結される。
【請求項25】
送達ビヒクルをさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項26】
送達ビヒクルがリポソーム、細胞、コンジュゲートされた分子、ナノ粒子、またはそれらの混合物である、請求項25の組成物。
【請求項27】
コンジュゲートされた分子が抗体、ペプチド、葉酸、ポリエチレングリコール、薬物、リポソーム、またはラクトサミン化ヒトアルブミンを含む、請求項26の組成物。
【請求項28】
ナノ粒子がコロイド金を含む、請求項26の方法。
【請求項29】
薬学的に許容できる賦形剤に含まれる、請求項1の組成物。
【請求項30】
細胞増殖を可逆的に停止させる、請求項1の組成物。
【請求項31】
細胞周期をG2で停止させる活性を含むとさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項32】
配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはその機能的誘導体からなる群より選択される単離されたペプチド。
【請求項33】
その機能的誘導体がペプチドの1個以上のアミノ酸における保存的置換を含むとさらに定義される、請求項32の単離されたペプチド。
【請求項34】
保存的置換がセリン、スレオニン、プロリン、またはそれらの組合せにおける置換とさらに定義される、請求項33の単離されたペプチド。
【請求項35】
保存的置換が疎水性の保存的置換を含む、請求項33の単離されたペプチド。
【請求項36】
疎水性の保存的置換が1個以上のアラニン、1個以上のバリン、1個以上のプロリン、またはそれらの組合せにおける置換とさらに定義される、請求項35の単離されたペプチド。
【請求項37】
配列番号1をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項38】
配列番号2とさらに定義される、請求項37のポリヌクレオチド。
【請求項39】
配列番号3をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項40】
配列番号4をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項41】
配列番号5をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項42】
配列番号6をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項43】
適切な容器に収納された請求項1の組成物を含むキット。
【請求項44】
請求項1の組成物を検出するための検出手段を含み、前記検出手段が適切な容器に収納されているキット。
【請求項45】
対象の膀胱障害の診断に使用されるキットであって、膀胱抗増殖因子のペプチド、糖、または糖ペプチド部分のエピトープに免疫学的に結合する抗体組成物を含み、前記抗体組成物が適切な容器に収納されているキット。
【請求項46】
前記ペプチドまたは糖ペプチドが1個以上の疎水性アミノ酸を含む、請求項45のキット。
【請求項47】
抗体が配列番号1のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項48】
配列番号1のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項47のキット。
【請求項49】
抗体が配列番号3のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項50】
配列番号3のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項49のキット。
【請求項51】
抗体が配列番号4のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項52】
配列番号4のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項51のキット。
【請求項53】
抗体が配列番号5のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項54】
配列番号5のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項53のキット。
【請求項55】
抗体が配列番号5のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項56】
配列番号5のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項55のキット。
【請求項57】
抗体が配列番号6のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項58】
配列番号6のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項55のキット。
【請求項59】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項45のキット。
【請求項60】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項45のキット。
【請求項61】
抗体が標識される、請求項45のキット。
【請求項62】
抗体またはその結合部分を含む組成物であって、前記抗体または結合部分が、膀胱抗増殖因子(APF)のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合し、前記APFが1個以上の糖部分を含む組成物。
【請求項63】
抗体または結合部分が抗増殖因子のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合し、それによってAPF分子の活性を阻害する、請求項62の組成物。
【請求項64】
ペプチドが配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5、または配列番号6である、請求項62の組成物。
【請求項65】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項62の組成物。
【請求項66】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項62の組成物。
【請求項67】
個体の膀胱障害を検出する方法であって、
個体から試料を取得するステップ、および
前記試料を請求項1の組成物の存在についてアッセイするステップ
を含む方法。
【請求項68】
膀胱障害が間質性膀胱炎である、請求項67の方法。
【請求項69】
アッセイステップが個体に対して非侵襲性または侵襲性である、請求項67の方法。
【請求項70】
試料が個体に由来する尿、血漿、血清、組織、またはそれらの混合物を含む、請求項67の方法。
【請求項71】
アッセイステップが請求項1の組成物の1個以上の糖部分の検出を含む、請求項67の方法。
【請求項72】
アッセイステップが請求項1の組成物の疎水性部分の検出を含む、請求項67の方法。
【請求項73】
抗増殖因子が糖ペプチド部分を含むとさらに定義される、請求項67の方法。
【請求項74】
組成物の疎水性部分がペプチド部分を含み、アッセイステップが、請求項1の組成物のペプチド、糖、または糖ペプチド部分のエピトープに対する抗体の、試料への導入を含むとさらに定義される、請求項73の方法。
【請求項75】
試料のアッセイが、ELISA、ウェスタンブロット、イムノブロット、またはラジオイムノアッセイを含む、請求項67の方法。
【請求項76】
個体を癌について処置する方法であって、治療有効量の請求項1の組成物を個体に投与するステップを含む方法。
【請求項77】
癌が上皮癌を含む、請求項76の方法。
【請求項78】
癌が膀胱癌を含む、請求項76の方法。
【請求項79】
癌が前立腺癌を含む、請求項76の方法。
【請求項80】
個体の膀胱障害を処置する方法であって、治療有効量の、請求項1の組成物の阻害物質を、個体に投与するステップを含む方法。
【請求項81】
追加の膀胱障害治療をさらに含む、請求項80の方法。
【請求項82】
膀胱障害が間質性膀胱炎を含む、請求項80の方法。
【請求項83】
追加の間質性膀胱炎処置をさらに含み、前記阻害物質の投与がその間質性膀胱炎処置を強化する、請求項82の方法。
【請求項84】
組成物が、強化される間質性膀胱炎処置に先だって、強化される間質性膀胱炎処置と同時に、強化される間質性膀胱炎処置の後に、またはそれらの組合せで投与される、請求項83の方法。
【請求項85】
過形成を処置する方法であって、治療有効量の請求項1の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項86】
個体の癌処置を強化する方法であって、治療有効量の請求項1の組成物を個体に投与することを含む方法。
【請求項87】
組成物の投与が化学療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、遺伝子治療、またはそれらの組合せを強化する、請求項86の方法。
【請求項88】
組成物が、強化される癌処置に先だって、強化される癌処置と同時に、強化される癌処置の後に、またはそれらの組合せで投与される、請求項86の方法。
【請求項1】
1個以上の糖部分を持ち少なくとも1つの糖部分が疎水性部分に連結される膀胱抗増殖因子を含む、単離されたまたは合成された組成物。
【請求項2】
膀胱上皮細胞抗増殖因子とさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項3】
疎水性部分が以下の1つを含む、請求項1の組成物:
ペプチド部分、または
脂質部分。
【請求項4】
ペプチド部分が線状、環状、または分岐状である、請求項3の方法。
【請求項5】
ペプチドがfrizzledポリペプチドの少なくとも一部に対して相同性を有する、請求項3の方法。
【請求項6】
ペプチドがfrizzled 8の膜貫通ドメインの少なくとも一部に対して相同性を有するとさらに定義される、請求項5の方法。
【請求項7】
約1〜約6個の糖部分、および
約2〜約15アミノ酸残基のペプチド部分
を含み、残基の1つは連結アミノ酸であり、連結アミノ酸は糖部分の1つに共有結合的に連結されたヘテロ原子を含むとさらに定義される、請求項3の組成物。
【請求項8】
連結アミノ酸が極性である、請求項7の組成物。
【請求項9】
連結アミノ酸がセリン、スレオニン、またはシステインである、請求項7の組成物。
【請求項10】
2個の糖残基および9個のアミノ酸を含み、前記連結アミノ酸がセリン、スレオニン、またはシステインであるとさらに定義される、請求項7の組成物。
【請求項11】
3個の糖残基および9個のアミノ酸残基を含み、前記連結アミノ酸がセリン、スレオニン、またえはシステインであるとさらに定義される、請求項7の組成物。
【請求項12】
前記糖部分が天然糖、合成糖、天然糖の誘導体、または合成糖の誘導体を含む、請求項1の組成物。
【請求項13】
糖とペプチドの間の結合がアルファ配置またはベータ配置である、請求項3の組成物。
【請求項14】
ペプチド部分が天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸の誘導体、非天然アミノ酸の誘導体、修飾されたアミノ酸、主鎖修飾アミノ酸、またはそれらの混合物を含むとさらに定義される、請求項3の組成物。
【請求項15】
ペプチド部分が、還元されたペプチド結合を含む1個以上の主鎖修飾アミノ酸を含むとさらに定義される、請求項14の組成物。
【請求項16】
修飾されたアミノ酸がメチル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ベータアミノ酸、またはアミノ酸ミメティックとさらに定義される、請求項14の組成物。
【請求項17】
ペプチド部分が配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはその機能的誘導体を含む、請求項3の組成物。
【請求項18】
脂質部分が飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、エステル化脂肪酸、オメガ脂肪酸、リン酸基含有脂肪、または極性頭部および非極性尾部を持つ界面活性剤を含む、請求項3の組成物。
【請求項19】
ラベルを含むとさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項20】
ラベルが蛍光部分、比色部分、または放射性部分を含む、請求項19の組成物。
【請求項21】
(a)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルガラクトサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、
(b)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-スレオニン-バリン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン、または
(c)シアル酸-ガラクトース-Nアセチルグルコサミン-セリン-ロイシン-プロリン-アラニン-アラニン-バリン-バリン-バリン-アラニン
を含むとさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項22】
以下の1つ以上を有するとさらに定義される、請求項21の(a)の組成物:
シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;
ガラクトースが1,3結合によってN-アセチルガラクトサミンに連結される;または
N-アセチルガラクトサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【請求項23】
以下の1つ以上を有するとさらに定義される、請求項21の(b)の組成物:
シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;
ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;または
N-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でスレオニンに連結される。
【請求項24】
以下の1つ以上を有するとさらに定義される、請求項21の(c)の組成物:
シアル酸が2,3結合によってガラクトースに連結される;
ガラクトースが1,4結合によってN-アセチルグルコサミンに連結される;または
N-アセチルグルコサミンがO結合によってアルファ配置でセリンに連結される。
【請求項25】
送達ビヒクルをさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項26】
送達ビヒクルがリポソーム、細胞、コンジュゲートされた分子、ナノ粒子、またはそれらの混合物である、請求項25の組成物。
【請求項27】
コンジュゲートされた分子が抗体、ペプチド、葉酸、ポリエチレングリコール、薬物、リポソーム、またはラクトサミン化ヒトアルブミンを含む、請求項26の組成物。
【請求項28】
ナノ粒子がコロイド金を含む、請求項26の方法。
【請求項29】
薬学的に許容できる賦形剤に含まれる、請求項1の組成物。
【請求項30】
細胞増殖を可逆的に停止させる、請求項1の組成物。
【請求項31】
細胞周期をG2で停止させる活性を含むとさらに定義される、請求項1の組成物。
【請求項32】
配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはその機能的誘導体からなる群より選択される単離されたペプチド。
【請求項33】
その機能的誘導体がペプチドの1個以上のアミノ酸における保存的置換を含むとさらに定義される、請求項32の単離されたペプチド。
【請求項34】
保存的置換がセリン、スレオニン、プロリン、またはそれらの組合せにおける置換とさらに定義される、請求項33の単離されたペプチド。
【請求項35】
保存的置換が疎水性の保存的置換を含む、請求項33の単離されたペプチド。
【請求項36】
疎水性の保存的置換が1個以上のアラニン、1個以上のバリン、1個以上のプロリン、またはそれらの組合せにおける置換とさらに定義される、請求項35の単離されたペプチド。
【請求項37】
配列番号1をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項38】
配列番号2とさらに定義される、請求項37のポリヌクレオチド。
【請求項39】
配列番号3をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項40】
配列番号4をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項41】
配列番号5をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項42】
配列番号6をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項43】
適切な容器に収納された請求項1の組成物を含むキット。
【請求項44】
請求項1の組成物を検出するための検出手段を含み、前記検出手段が適切な容器に収納されているキット。
【請求項45】
対象の膀胱障害の診断に使用されるキットであって、膀胱抗増殖因子のペプチド、糖、または糖ペプチド部分のエピトープに免疫学的に結合する抗体組成物を含み、前記抗体組成物が適切な容器に収納されているキット。
【請求項46】
前記ペプチドまたは糖ペプチドが1個以上の疎水性アミノ酸を含む、請求項45のキット。
【請求項47】
抗体が配列番号1のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項48】
配列番号1のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項47のキット。
【請求項49】
抗体が配列番号3のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項50】
配列番号3のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項49のキット。
【請求項51】
抗体が配列番号4のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項52】
配列番号4のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項51のキット。
【請求項53】
抗体が配列番号5のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項54】
配列番号5のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項53のキット。
【請求項55】
抗体が配列番号5のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項56】
配列番号5のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項55のキット。
【請求項57】
抗体が配列番号6のエピトープまたはその糖ペプチド誘導体に免疫学的に結合する、請求項45のキット。
【請求項58】
配列番号6のエピトープを含むペプチドが約2〜15アミノ酸長である、請求項55のキット。
【請求項59】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項45のキット。
【請求項60】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項45のキット。
【請求項61】
抗体が標識される、請求項45のキット。
【請求項62】
抗体またはその結合部分を含む組成物であって、前記抗体または結合部分が、膀胱抗増殖因子(APF)のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合し、前記APFが1個以上の糖部分を含む組成物。
【請求項63】
抗体または結合部分が抗増殖因子のペプチド部分、糖部分、または糖ペプチド部分に結合し、それによってAPF分子の活性を阻害する、請求項62の組成物。
【請求項64】
ペプチドが配列番号1、配列番号3、配列番号4、または配列番号5、または配列番号6である、請求項62の組成物。
【請求項65】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項62の組成物。
【請求項66】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項62の組成物。
【請求項67】
個体の膀胱障害を検出する方法であって、
個体から試料を取得するステップ、および
前記試料を請求項1の組成物の存在についてアッセイするステップ
を含む方法。
【請求項68】
膀胱障害が間質性膀胱炎である、請求項67の方法。
【請求項69】
アッセイステップが個体に対して非侵襲性または侵襲性である、請求項67の方法。
【請求項70】
試料が個体に由来する尿、血漿、血清、組織、またはそれらの混合物を含む、請求項67の方法。
【請求項71】
アッセイステップが請求項1の組成物の1個以上の糖部分の検出を含む、請求項67の方法。
【請求項72】
アッセイステップが請求項1の組成物の疎水性部分の検出を含む、請求項67の方法。
【請求項73】
抗増殖因子が糖ペプチド部分を含むとさらに定義される、請求項67の方法。
【請求項74】
組成物の疎水性部分がペプチド部分を含み、アッセイステップが、請求項1の組成物のペプチド、糖、または糖ペプチド部分のエピトープに対する抗体の、試料への導入を含むとさらに定義される、請求項73の方法。
【請求項75】
試料のアッセイが、ELISA、ウェスタンブロット、イムノブロット、またはラジオイムノアッセイを含む、請求項67の方法。
【請求項76】
個体を癌について処置する方法であって、治療有効量の請求項1の組成物を個体に投与するステップを含む方法。
【請求項77】
癌が上皮癌を含む、請求項76の方法。
【請求項78】
癌が膀胱癌を含む、請求項76の方法。
【請求項79】
癌が前立腺癌を含む、請求項76の方法。
【請求項80】
個体の膀胱障害を処置する方法であって、治療有効量の、請求項1の組成物の阻害物質を、個体に投与するステップを含む方法。
【請求項81】
追加の膀胱障害治療をさらに含む、請求項80の方法。
【請求項82】
膀胱障害が間質性膀胱炎を含む、請求項80の方法。
【請求項83】
追加の間質性膀胱炎処置をさらに含み、前記阻害物質の投与がその間質性膀胱炎処置を強化する、請求項82の方法。
【請求項84】
組成物が、強化される間質性膀胱炎処置に先だって、強化される間質性膀胱炎処置と同時に、強化される間質性膀胱炎処置の後に、またはそれらの組合せで投与される、請求項83の方法。
【請求項85】
過形成を処置する方法であって、治療有効量の請求項1の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項86】
個体の癌処置を強化する方法であって、治療有効量の請求項1の組成物を個体に投与することを含む方法。
【請求項87】
組成物の投与が化学療法、放射線療法、免疫療法、外科手術、遺伝子治療、またはそれらの組合せを強化する、請求項86の方法。
【請求項88】
組成物が、強化される癌処置に先だって、強化される癌処置と同時に、強化される癌処置の後に、またはそれらの組合せで投与される、請求項86の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−537697(P2007−537697A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517828(P2006−517828)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021239
【国際公開番号】WO2005/016248
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(500512520)ユニバーシティ・オブ・メリーランド, ボルティモア (1)
【出願人】(506002188)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021239
【国際公開番号】WO2005/016248
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(500512520)ユニバーシティ・オブ・メリーランド, ボルティモア (1)
【出願人】(506002188)
【Fターム(参考)】
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