説明

新規有機化合物

【課題】 純度のよい発光色相を呈し、高効率、高輝度で長寿命な光出力を有する新規有機化合物を提供する。
【解決手段】 下記一般式[I]で示されることを特徴とする有機化合物。
【化1】


(一般式[I]において、Xはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基殻選ばれる。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規有機化合物及びそれを有する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は一対の電極とこれら一対の電極の間に配置される有機化合物層とを有する素子である。これら一対の電極からキャリアを注入することで有機化合物が励起し、励起状態から基底状態に戻る際に発光する。
【0003】
有機発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子あるいは有機EL素子とも呼ばれる。
【0004】
有機発光素子において、発光層の有機化合物の量子収率が高いことが発光効率に大きく貢献することが知られている。
【0005】
特許文献1には、青色発光材料としてピレン化合物が記載されており、その中に下記例示化合物9が記載されている。例示化合物9はピレンを基本骨格とし、フルオレニル基とフェニル基とを有する構造である。ここで基本骨格とは、共役構造を有する縮環を示す。
【0006】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007―191603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、ピレン化合物が記載されている。しかし、このピレン化合物の発光ピーク波長は青色領域であるため、緑色領域の発光を得ることができない。また、基本骨格に置換基を設けることで発光波長を調整することが知られているが、化合物の安定性が損なわれる場合があるので好ましくない。
【0009】
そこで本発明は、基本骨格のみで緑色領域の発光波長を有する新規有機化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって、本発明は、下記一般式[I]で示されることを特徴とする有機化合物を提供する。
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式[I]において、X乃至Xはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基から選ばれる)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基本骨格のみで緑色領域の発光が可能である有機化合物を提供できる。また、それを有する有機発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】有機発光素子と前記有機発光素子と接続するスイッチング素子とを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は下記一般式[I]で示されることを特徴する有機化合物である。
【0016】
【化3】

【0017】
(一般式[I]において、X乃至Xはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基から選ばれる)
ここで、一般式[I]において、アルキル基として例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0018】
一般式[I]において、アリール基として例えば、フェニル基、ナフチル基、ペンタレニル基、アントリル基、ピレニル基、インダセニル基、アセナフテニル基、フェナントリル基、フェナレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、アセフェナントリル基、アセアントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
【0019】
このアリール基は置換基を有してよい。その置換基として例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基などの複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基などのアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、フェノキシル基などのアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、フッ素、塩素などのハロゲン原子などが挙げられる。
【0020】
本発明に係る有機化合物の基本骨格、つまり一般式においてX乃至Xの全てが水素原子である有機化合物は、緑色発光領域に発光スペクトルの波長ピークを有する化合物である。ここで、緑色発光領域とは490nm以上550nm以下の領域である。
【0021】
本発明に係る有機化合物は、一般式中にX乃至Xで示した位置のいずれかにアリール基を置換することで化合物の振動子強度が向上し、量子収率が向上する。
【0022】
さらに好ましくは、X乃至Xの位置のいずれかに縮合多環基を置換することが好ましい。縮合多環基は振動子強度が高く、量子収率を向上させる効果が大きくなるためである。具体的には、フルオレニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基等が挙げられる。
【0023】
また、本発明に係る有機化合物は、一般式中のX乃至Xで示される位置の全てが水素原子である場合は、平面性が高い。そのため、発光材料として用いる場合、濃度消光が生じやすいので、Xの位置にアルキル基またはアリール基を導入することで濃度消光を抑制することが好ましい。
【0024】
濃度消光を抑制するには、Xの位置に縮合多環基を置換することが好ましい。嵩高い縮合多環基は濃度消光を回避する効果が大きいからである。具体的には縮合多環基として、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基等が挙げられる。
【0025】
本発明に係る有機化合物は、発光にかかわる骨格に回転構造を有さない。そのため、有機化合物が得たエネルギーが回転または振動といった運動エネルギーへ変わることを抑制し、光子として放出されるエネルギーの割合を増加させることができる。すなわち量子収率の低下を抑制することができる。
【0026】
本発明に係る有機化合物は5員環を基本骨格内に2つ含むので、電子吸引性が強い化合物である。
【0027】
電子吸引性が強い化合物はLUMOレベルが深い化合物である。ここでLUMOレベルが深いとはLUMOレベルが真空準位から遠いことを表す。
【0028】
バンドギャップを維持したまま、LUMOレベルが深いことは、HOMOレベルが深いことを意味する。
【0029】
そして、HOMOレベルが深い化合物は酸化電位が高い。この化合物を酸化するためにはより大きなエネルギーが必要であり、酸化に対して安定であることを意味する。
【0030】
そして、本発明に係る有機化合物は、LUMOレベルが深い化合物であるため、酸化に対して安定な化合物である。そして、酸化に対して安定な化合物を有機発光素子に用いた場合、安定性が高く、長寿命な有機発光素子を得られる。
【0031】
本発明に係る有機化合物の一例を以下に示す。
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
(例示化合物の性質)
これら例示化合物のうち、A−2乃至A−4は、一般式[I]におけるXがアルキル基である。これらの化合物は濃度消光を抑制する効果が大きい。
【0035】
B−1乃至B−5は一般式[I]におけるXがフェニル基である。これらの化合物はアルキル基より大きな置換基であり、濃度消光を抑制する効果が更に大きく、振動子強度が高く、量子収率が高い。
【0036】
C−1乃至C−8は一般式[I]におけるXが縮合多環基である。これらの化合物はアルキル基やフェニル基より大きな置換基であり、濃度消光を抑制する効果がさらに大きく、フェニル基より振動子強度が高く、量子収率が高い。
【0037】
下記一般式[II]で示される参考例としての有機化合物も一般式[I]で示される化合物と同様の効果が期待できる。
【0038】
【化6】

【0039】
(Yはアルキル基、アリール基を示し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。)
具体例として以下の化合物を示す。
【0040】
【化7】

【0041】
本発明に係る有機化合物は、有機発光素子の発光層、ホール輸送層、電子輸送層として用いることができる。
【0042】
また、本発明に係る有機化合物は発光層として使用する場合、種々の態様で用いて高色純度、高発光効率、長寿命素子を得ることができる。
【0043】
本発明に係る有機化合物はホスト材料およびゲスト材料を有する発光層のゲスト材料として用いられることが好ましい。
【0044】
ここで、ホスト材料とは発光層を構成する化合物の中で重量比が最も大きい化合物である。ゲスト材料とは発光層を構成する化合物の中で重量比がホスト材料よりも小さく、主たる発光をする化合物である。アシスト材料とは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホスト材料よりも小さく、ゲスト材料の発光を助ける化合物である。
【0045】
発光層において本発明に係る有機化合物を単独で用いてもよい。あるいはゲスト材料として用いてもよい。
【0046】
本発明に係る有機化合物を発光層のゲスト材料として用いる場合、発光層中の含有量として好ましくは、発光層の全重量に対して0.1重量%以上30重量%以下であり、更に好ましくは、0.1重量%以上15重量%以下である。発光層がホスト材料やゲスト材料以外の化合物を有する場合もこの数値範囲が当てはまる。
【0047】
有機化合物層において、ゲスト材料は有機化合物層全体に均一あるいは濃度勾配を有して含まれていてもよい。あるいは有機化合物層のある領域にのみ含まれて別の領域ではゲスト材料を含まない領域があってもよい。
【0048】
本発明に係る有機化合物は5員環構造を2つ有するので、酸化に対して安定な化合物である。また、5員環構造による電子吸引性により電子注入性を備え、有機発光素子用材料として使用した場合、駆動電圧を低下することができる。
【0049】
さらに、本発明に係る有機化合物はアシスト材料としても用いることができる。
【0050】
アシスト材料はホスト材料で発生したエネルギーを効率よくゲスト材料に移動させる材料である。
【0051】
また、本発明に係る有機化合物は電子吸引性であるため、アシスト材料として発光層中に含まれることは発光層への電子注入性を高める効果があり、有機発光素子の低電圧化および長寿命化に有効である。
【0052】
(有機発光素子の説明)
本実施形態に係る有機発光素子は一対の電極である陽極と陰極とそれらの間に配置される有機化合物層とを有し、この有機化合物層が本発明に係る有機化合物を有する素子である。
【0053】
本実施形態に係る有機発光素子は、有機化合物層が複数層で構成されてもよい。この複数層としてはホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロッキング層、エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。これらの層を適宜組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明者らは種々の検討を行い、本発明に係る有機化合物を発光層のホスト材料またはゲスト材料、特にゲスト材料として用いた素子が高効率で高輝度な光出力を有し、耐久性が高いことを見出した。
【0055】
本実施形態に係る有機発光素子は本発明に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性材料あるいは輸送性材料あるいはホスト材料あるいはゲスト材料あるいは電子注入性材料あるいは電子輸送性材料等を一緒に使用することができる。
【0056】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0057】
ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料としては、ホール移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0058】
ホスト材料としては、具体的な構造式を表3に示す。ホスト材料は表1に示す構造式で示される化合物の誘導体であってもよい。またそれ以外に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、及びトリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0059】
【表1】

【0060】
電子注入性材料あるいは電子輸送性材料としては、ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0061】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は単独で使用してもよいし複数併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0062】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で使用してもよいし、複数併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0063】
本実施形態に係る有機発光素子において、本発明に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で形成する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0064】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0065】
(有機発光素子を有する表示装置)
以下本発明に係る有機発光素子の用途について説明する。
【0066】
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどがある。
【0067】
表示装置は本発明に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部とは複数の画素を有しており、この画素は本発明に係る有機発光素子とスイッチング素子の一例であるTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極または陰極とTFT素子のドレイン電極またはソース電極とが接続されている。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。表示装置は画像入力部をさらに有する画像入力装置でもよい。
【0068】
画像入力装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの情報を入力する画像入力部と、入力された情報を表示する表示部とを有する。これに撮像光学系をさらに有すればデジタルカメラ等の撮像装置となる。また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部として、外部から入力された画像情報に基づいて画像を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0069】
次に、本発明に係る有機発光素子を使用した表示装置について説明する。
【0070】
図1は、本発明に係る有機発光素子と有機発光素子の発光非発光あるいは発光輝度を制御するスイッチング素子の1例であるTFT素子とを有する表示装置の断面模式図である。本図では有機発光素子とTFT素子との組が2組図示されている。不図示ではあるが発光輝度を制御するトランジスタをさらに有してもよい。表示装置は、情報に応じてスイッチング素子を駆動することで、有機発光素子を点灯あるいは消灯することによって表示を行い、情報を伝える。構造の詳細を以下に説明する。
【0071】
図1の表示装置は、ガラス等の基板1とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜2が設けられている。また符号3は金属のゲート電極3である。符号4はゲート絶縁膜であり、符号5は半導体層である。
【0072】
TFT素子8は半導体層5とドレイン電極6とソース電極7とを有している。TFT素子8の上部には絶縁膜9が設けられている。コンタクトホール10を介して有機発光素子の陽極11とソース電極7とが接続されている。表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子のソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0073】
有機化合物層12は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如き図示をしている。陰極13の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層14や第二の保護層15が設けられている。
【実施例】
【0074】
<実施例1>
例示化合物A−1の合成
以下に示すスキームに従い、合成した。
【0075】
【化8】

【0076】
a)化合物a−3の合成
50ml三ツ口フラスコに、化合物a−1、0.984g(3.00mmol)、化合物a−2、1.0g(2.52mmol)、トルエン20mlおよびエタノ−ル10mlを入れ、窒素雰囲気中、室温で攪拌した。その後、炭酸セシウム、5g/水20mlの水溶液を滴下し、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、144mgを添加した。77度に昇温し、5時間攪拌した。反応後有機層をクロロホルムで抽出し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラム(トルエン、ヘプタン混合、展開溶媒)で精製し、化合物a−3(黄色結晶)1.10g(収率77.6%)を得た。
【0077】
a)例示化合物A−1の合成
50ml三ツ口フラスコに、化合物a−3、1.0g(2.12mmol)、酢酸パラジウム、25mg、ジアザビシクロウンデセン(DBU)1.28ml、トリシクロヘキシルホスフィン、59mg(0.212mmol)およびDMF30mlを入れた。窒素雰囲気中、室温で攪拌後、さらに150℃に昇温し、5時間攪拌した。反応後有機層をクロロホルムで抽出し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラム(トルエン、ヘプタン混合、展開溶媒)で精製し、例示化合物A−1(黄色結晶)590mg(収率70.8%)を得た。
質量分析法により、例示化合物A−1のMである392を確認した。
また、HNMR測定により、例示化合物A−1の構造を確認した。
【0078】
H NMR(CDCl,400MHz) σ(ppm):8.64(s,1H)、8.46(s,1H),8.43(d,1H),8.39(d,1H),8.27−8.23(m,2H),8.13(d,1H),8.08−8.04(m,3H),7.89(d,1H),7.50(s,1H),7.44−7.38(m,2H),1.65(s,6H)
例示化合物A−1の濃度が1×10−5mol/lのトルエン溶液の蛍光スペクトルを、日立製F−4500を用いて励起波長370nmで測定した。蛍光スペクトルの第一発光ピーク波長は513nmであった。
【0079】
<実施例2>
実施例1と同様にして、化合物a−1に変えて以下に示す化合物を用いて例示化合物A−2を合成した。1段階目の反応収率は70.5%、2段階目の反応収率は65.4%であった。
質量分析法により、例示化合物A−2のMである448を確認した。
【0080】
【化9】

【0081】
<実施例3>
実施例1と同様にして、化合物a−1に変えて以下に示す化合物を用いて例示化合物C−1を合成した。1段階目の反応収率は73.2%、2段階目の反応収率は60.4%であった。
質量分析法により、例示化合物C−1のMである584を確認した。
【0082】
【化10】

【0083】
<合成例>
実施例1と同様にして、化合物a−1に変えて以下の表4に示す、ピナコールボラン酸体を用いることで例示化合物A−3、A−4、C−4及びC−6が合成できる。
【0084】
【表2】

【0085】
<実施例4>
素子作成
ガラス基板上に、陽極としての酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜したものを透明導電性支持基板として用いた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。
【0086】
透明導電性支持基板上に以下の有機層と電極層を1×10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着により形成して、素子を作製した。
正孔輸送層(20nm):化合物b−1
発光層(40nm):例示化合物A−1(重量濃度2%):化合物b−2(重量濃度98%)
電子輸送層(20nm):化合物b−3
金属電極層1(0.5nm):LiF
金属電極層2(150nm):Al
【0087】
【化11】

【0088】
本実施例のEL素子に5.0Vの印加電圧で発光輝度1113cd/m、CIE色度(0.37,0.56)の良好な緑色発光が観測された。
【0089】
さらに、窒素雰囲気下で電流密度を100mA/cmに保ち、電圧を100時間連続印加したところ、初期輝度に対する100時間後の輝度劣化率は20%以下で小さかった。
【0090】
<実施例3>
実施例2の発光層を以下の構成に変更した他は実施例2と同様に素子を作成し、同様の評価を行った。
発光層(40nm):例示化合物A−1(重量濃度2%):化合物b−4(重量濃度2%):化合物b−2(重量濃度96%)
【0091】
【化12】

【0092】
本実施例の有機発光素子に5.0Vの印加電圧で発光輝度50cd/m、CIE色度(0.32,0.67)の良好な赤色発光が観測された。
【0093】
さらに、窒素雰囲気下で電流密度を100mA/cmに保ち、電圧を100時間連続印加したところ、初期輝度に対する100時間後の輝度劣化率は20%以下で小さかった。
【符号の説明】
【0094】
8 TFT素子
11 陽極
12 有機化合物層
13 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]で示されることを特徴とする有機化合物。
【化1】


(一般式[I]において、X乃至Xはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基から選ばれる。)
前記アリール基はフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基のいずれかである。
前記アルキル基はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基のいずれかである。
前記アリール基は置換基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基をさらに有してよい。
【請求項2】
前記X乃至Xのいずれかが前記アリール基であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
【請求項3】
前記X乃至Xのいずれかが前記アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
【請求項4】
一対の電極と、前記一対の電極の間に配置された有機化合物層とを有する有機発光素子において、
前記有機化合物層は請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物層が、発光層であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
複数の画素を有し、前記画素は請求項4または5に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するスイッチング素子とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
情報を表示するための表示部と情報を入力するための入力部とを有し、前記表示部は複数の画素を有し、前記画素は請求項4または5に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するスイッチング素子とを有することを特徴とする画像入力装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−236135(P2011−236135A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106716(P2010−106716)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】