説明

新規物質ゼルンボン誘導体及びこれらの生成方法

【課題】 ゼルンボンの二重共役系を保持した誘導化を効果的に実現することを課題とする。詳細には、7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienon:7‐ブロモゼルンボン)、該7‐ブロモゼルンボンに求核試薬を反応させることにより6‘-置換型ゼルンボン誘導体、及びこれらの生成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7−ブロモゼルンボン)に求核試薬を反応させることにより、共役二重結合を保持した6'-置換型ゼルンボン誘導体、例えば、6´‐アセトキシゼルンボン、6´‐ヒドロキシゼルンボン、N‐メチル‐N,N‐ビス‐6´‐ゼルンボイルアミン、6´‐ジエチルアミノゼルンボン、及びこれらの生成方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規物質ゼルンボン誘導体及びこれらの生成方法に関する。詳細には、新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)に求核試薬を反応させることにより、共役二重結合を保持した6'-置換型ゼルンボン誘導体、例えば、6’‐アセトキシゼルンボン、6’‐ヒドロキシゼルンボン、N‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミン、6’‐ジエチルアミノゼルンボンに関し、またこれらの生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼルンボンはハナ生姜(Zingiber zerumbet Smith)の根茎から乾燥重量あたり約3%重量含まれる未来型再生可能原料である。石油資源の枯渇問題によるエネルギーおよび資源確保の必要性から、代替資源原料の発見および開発を模索した試みが盛んに行われており、その中でバイオマスは重要な一角を占めると考えられる。しかしバイオマス資源の代表であるセルロースなどを用いた開発だけでは、これまでに人類が犯してきた大量生産に伴う環境バランスの崩壊と同じ問題が発生する可能性があるため、それ以外の多数の再生可能資源植物を並行して利用することができればその問題点も同時に解消できる。しかしながら、この様な観点で行われている研究開発は皆無に等しいため、概念の定着化を目指した成功例のモデルケースを早急に構築する必要がある。
【0003】
本発明者が注目しているハナショウガはその中でもパイオニア的役割を果たすと考えられる。即ち、得られる有用物質の利用法を開発することによって、植物の生産そのものを定常化し、生産・開発・廃棄を網羅した一つの化学工業へ発展させることが目的となる。ハナショウガから大量に得られるゼルンボンの反応性を利用して様々な化合物へ誘導化することによって、医薬、香料、液晶、電子材料などに利用することが可能となる。
【0004】
ゼルンボンは11員環の二重共役ケトンを含むトリエン骨格を有し、他の天然物には見られないユニークな骨格をもつ。本発明者らはこれまでに、本化合物の多様な反応性を利用した開発がこれまでに行われ、例えば新規な二回連続Favorskii反応を経由するシクロプロパン酸の合成法の開発(非特許文献1)や、多環性天然物誘導体・抗菌性開環ハロ脂肪酸・多点不斉誘導体・新規芳香性化合物など高付加価値化合物を開発し(非特許文献2〜5)、工業的基盤を築いた(特許文献1、特許文献2や本発明者らによる特願2004−287548)。
【0005】
一方、ゼルンボンの生理活性(非特許文献6及び非特許文献7参照)やその誘導体の興味深い生理活性が非特許文献8、非特許文献9、特許文献3や本発明者らによる特願2004−14836において明らかとされている。そして、これら生理活性はゼルンボンが有する二重共役系に深く関与していることがわっている。しかしながら、ゼルンボンの二重共役系は反応活性が高いため、その誘導化が極めて困難であり、その有効な方法はこれまでになかった。
【0006】
もし、二重共役系を保持した誘導化が可能となれば、既存の生理活性機能の向上のみならず、新たな生理活性や、二重共役系の反応活性を利用した機能性物質の創出が可能となり、新たな工業的基盤をなす重要な方法として中心的な役割を担うと考えられる。
【0007】
【非特許文献1】T.Kitayama,et.al. J. Org. Chem.,(1999)
【非特許文献2】T.Kitayama,et.al. Tetrahedron Asymmetry, (2001)
【非特許文献3】T.Kitayama,et.al. AROMA RESEARCH(2002)
【非特許文献4】T.Kitayama,et.al. J. Mol. Cat. B: Enzymatic (2002)
【非特許文献5】T.Kitayama,et.al. Tetrahedron(2003)
【非特許文献6】Daitou,et.al. Biosci. Biotechnol. Biochem., (1999)
【非特許文献7】T.Kitayama,et.al. J. Agric. And Food Chem., (2004)
【非特許文献8】T.Kitayama,et.al. Biosci. Biotechnol.Biochem.,(2001)
【非特許文献9】T.Kitayama,et.al. Bioorg. & Med. Chem. Lett., (2004)
【特許文献1】特開2002−155001号公報
【特許文献2】特開2003−064010号公報
【特許文献3】特開2002−069034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、即ち、ゼルンボンの二重共役系を保持した誘導化を効果的に実現することを課題とする。詳細には、7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienon:7‐ブロモゼルンボン)及び該7‐ブロモゼルンボンに求核試薬を反応させることにより6’-置換型ゼルンボン誘導体を生成する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、次式(化1)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)に関する。
【0010】
【化1】

請求項2に係る発明は、次式(化2)で表される6’‐アセトキシゼルンボンに関する。
【0011】
【化2】


請求項3に係る発明は、次式(化3)で表される6’‐ヒドロキシゼルンボンに関する。
【0012】
【化3】

請求項4に係る発明は、次式(化4)で表されるN‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミンに関する。
【0013】
【化4】

請求項5に係る発明は、次式(化5)で表される6’‐ジエチルアミノゼルンボンに関する。
【0014】
【化5】

請求項6に係る発明は、次式(化6)で表されるゼルンボンを有機溶媒又は水との混合有機溶媒中に溶解し、
該ゼルンボンを含む前記溶媒中に臭素化試薬を加え撹拌し、
前記溶媒に水を加えてろ過する
次式(化7)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)の生成方法に関する。
【0015】
【化6】

【0016】
【化7】


請求項7に係る発明は、次式(化8)で表されるゼルンボンを有機溶媒又は水との混合有機溶媒中に溶解し、
該ゼルンボンを含む前記溶媒中にNBS(N-Bromosuccinimide)を加え撹拌し、
前記溶媒に水を加えてろ過する
次式(化9)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)の生成方法に関する。
【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

請求項8に係る発明は、次式(化10)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)に求核試薬を反応させることによる、6'‐置換型ゼルンボン誘導体の生成方法に関する。
【0019】
【化10】

請求項9に係る発明は、前記求核試薬が1〜20の炭素数を有する1価又は2価以上のカルボン酸塩、アルコール、アルコキシド、アンモニアを含む1級又は2級アミン、アジド、シアノ、硝酸塩、亜硝酸塩、炭素アニオン、グリニャール試薬又はチオールから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項8記載の6'‐置換型ゼルンボン誘導体の生成方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienon:7‐ブロモゼルンボン)及び該7‐ブロモゼルンボンに求核試薬を反応させることにより6'-置換型ゼルンボン誘導体を生成する方法によると、ゼルンボンの二重共役系を保持した誘導化が可能となる。これにより、ゼルンボンの生理活性機能の向上のみならず、新たな生理活性や、二重共役系の反応活性を利用した機能性物質の創出及び工業的に利用されることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienon:7‐ブロモゼルンボン)(次式(化11)に示す)は、次式(化12)で表されるゼルンボンを出発原料として得られる。
【0022】
【化11】

【0023】
【化12】

【0024】
前記ゼルンボンを得る方法としては特に限定されないが、例えばハナ生姜(Zingiber zerumbet Smith)から抽出され精製される方法が挙げられる。前記抽出に用いる部位も限定されず、葉、根、茎、地下茎又は全草が用いられる。さらに抽出溶媒も限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサン等が挙げられる。
【0025】
本発明に係る新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7-ブロモゼルンボン)は、前記ゼルンボンに臭素化試薬を作用させることにより得られる。前記臭素化試薬としては、例えばN-Bromosuccinimide(以下NBSと称す)が挙げられる。このようにして生成された7-ブロモゼルンボンは、孤立二重結合のエキソ転移を伴う。
【0026】
以下に、ゼルンボンから新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)を生成する方法を示す。
まず、ゼルンボンを適当な溶媒に溶解する(工程1)。次に、NBSを1当量以上加えた(工程2)後、撹拌する(工程3)。その後、水を適量加え、素早くろ過することによって定量的に7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone:7‐ブロモゼルンボン)を得ることができる。
【0027】
工程1において、ゼルンボンを溶解するための適当な溶媒とは、有機溶媒或は水との混合溶媒が好適に用いられる。前記有機溶媒は、本反応に不活性な溶媒であれば特に制限されないが、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、酢酸、プロピオン酸などの脂肪族カルボン酸類、無水酢酸、無水プロピオン酸などの脂肪族カルボン酸無水物類等が使用可能であり、好ましくは、ブタノール-水混合溶媒及びアセトニトリル-水混合溶媒が挙げられる。
【0028】
工程2における温度条件は0℃〜80℃、好ましくは20℃〜40℃である。0℃未満の場合、反応性に劣り、また80℃を超えると分解が起こるためいずれの場合も好ましくない。
【0029】
工程3における撹拌時間は、20秒〜72時間、好ましくは30秒〜1時間である。前記撹拌時間が20秒未満である場合、反応が十分進行しないため、72時間を越えると分解が起こるため、いずれの場合も好ましくない。
前記工程1〜3において、最適条件としては、アセトニトリル:水の容積比(1:1/5〜5)溶媒内での、18〜22℃で50秒〜70秒間の撹拌時間の反応が挙げられる。
【0030】
さらに、前記7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)に求核試薬を反応させることにより6'‐置換型ゼルンボン誘導体が得られる。
前記求核試薬として、1〜20の炭素数を有する1価又は2価以上のカルボン酸塩、アルコール、アルコキシド、アンモニアを含む1級又は2級アミン、アジド、シアノ、硝酸塩、亜硝酸塩、マロン酸などを代表例とするの炭素アニオン、グリニャール試薬、チオール等が挙げられる。これらの試薬と反応し、6'-置換型ゼルンボン誘導体を得ることができる。
即ち、6'-置換型ゼルンボン誘導体を得るためには、ゼルンボンから7‐ブロモゼルンボンを生成する工程、そして前記7‐ブロモゼルンボンに求核試薬を反応させる工程を経て、6'-置換型ゼルンボン誘導体が生成されることとなる。この一連の工程を次式(化13)の化学反応式で表す。
【0031】
【化13】

【実施例】
【0032】
以下に、本発明に係る新規物質ブロモゼルンボン誘導体の生成方法を詳細に説明する。
(実施例1:7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)の生成)
50mLマイヤー中で、ゼルンボン1g(4.6mmol)をCH3CN:H2O (1:1 v/v)15mLに溶解し、そこに1.2eqのNBSを加えて室温付近で1分間、激しく攪拌した。その後すばやくH2Oを30mL加え、反応溶液を吸引ろ過し、水でよく洗浄した。(次式(化14)参照)得られた白色固体を乾燥して、次式(化15)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone:7‐ブロモゼルンボン)を1.36g(100%)得た。
【0033】
【化14】

【0034】
【化15】

(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone)
【0035】
前記7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone:7‐ブロモゼルンボン)の同定は、NMR測定装置(JEOL270EX)、IR測定装置(Shimadzu FT-IR8200D)、HRMS装置(The Tandem MStation JMS-700)を用いて行った。また、NMR測定は、1HNMR(270MHz)および13CNMR(68MHz)の条件で行った。以下に分析値を示す。
尚、以下実施例2〜5における分析値も前記装置を用いて測定されたものである。
【0036】
IR (KBr): 1654.8 cm-1; 1HNMR (CDCl): δ1.10 (s, 3H, CH3 at C9), 1.19 (s, 3H, CH3 at C9), 1.74 (s, 3H, CH3 at C2), 2.21 (dd, 2H, J = 2.08 Hz and 14.7 Hz, H at C8), 3.37-2.59 (m, 5H, 2H at C4, 2H at C5, and H at C8), 4.75 (d, 1H, J = 10.9 Hz, H at C7), 5.10 (s, 1H, CH2 at C6'), 5.45 (s, 1H, CH2 at C6'), 5.86 (t, 1H, J = 6.3 Hz, H at C3), 5.97 (d, 1H, J = 16.2 Hz, H at C10), 6.56 (d, 1H, J = 16.2 Hz, H at C11), HRMS: m/z calcd mass for C15H21BrO 296.0776, found 296.0786
13CNMR:δ12.37 (CH3 at C2), 24.03 (CH3 at C9), 27.21(CH3 at C9), 28.02(C8), 31.84 (C5), 38.94 (C9), 50.26 (C4), 55.29 (C7), 114.74 (CH2 at C6), 127.71 (C10), 138.85 (C2), 148.01 (C3), 150.13 (C6), 160.34 (C11), 203.07 (C1).
【0037】
次に、実施例1で得られた7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone:7‐ブロモゼルンボン)に求核試薬を反応させ6'‐置換型ゼルンボン誘導体を生成する方法(実施例2〜5)について説明する。
【0038】
(実施例2:6’‐アセトキシゼルンボンの生成)
7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone:7‐ブロモゼルンボン) 1.0g (3.4mmol)を入れた遮光ビンにDMF15mLを加えて撹拌し、酢酸ナトリウム1eq (278.8mg、3.4mmol) を加え、室温で12時間撹拌した後、反応を止めた。反応液をクロロホルムで抽出し、蒸留水と飽和食塩水で洗浄を行った。得られた生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (Hex/AcOEt = 8/1、Rf = 0.2) で分離精製し次式(化16)で表される6’‐アセトキシゼルンボン([2E,6E,10E]-2,9,9-trimethyl-6-acetoxymethylcycloundeca-2,6,10-trienone)を713.2mg (76%)得た。
【0039】
【化16】

([2E,6E,10E]-2,9,9-trimethyl-6-acetoxymethylcycloundeca-2,6,10-trienone)
【0040】
IR (NaCl film): 1735.8, 1654.8 cm-1
1HNMR (CDCl): δ1.10 (s, 3H, CH3 at C9), 1.24 (s, 3H, CH3 at C9),1.79 (s, 3H, CH3 at C2), 2.08 (s, 3H, CH3 at CH3CO), 2.14−2.60 (m, 6H, H at C4, C5, C8), 4.56 (bd, 2H, CH2 at C6), 5.47 (t, 1H, H at C7), 5.84 (d, 2H, J = 16.2 Hz, H at C10, C11), 5.95 (br, 1H, H at C3), 6.00 (d, J = 16.5 Hz, 1H, H at C11)
13CNMR (CDCl): δ11.95 (CH3 at C2), 20.90 (CH3 at CH3CO), 23.90 (CH3 at C9), 24.67 (C4), 29.18 (CH3 at C9), 35.53 (C5), 37.18 (C9), 42.16 (C8), 61.00 (CH2 at C6), 127.17 (C11), 131.29 (C7), 134.23 (C6), 138.28 (C2), 149.04 (C3), 159.75 (C10), 170.76 (CH3CO), 203.65 (C1)
HMRS: m/z calcd mass for C17H24O3 276.1725 found 276.1723
【0041】
(実施例3:6’‐ヒドロキシゼルンボンの生成)
[2E,6E,10E]-2,9,9-trimethyl-6-acetoxymethylcycloundeca-2,6,10-trienone1.0g (3.6mmol)いれた遮光ビンに水酸化ナトリウム水溶液 (1.5eq)を60mL加え、室温で6時間撹拌した後、反応を止めた。反応液をエーテルで3回抽出し(30 mL × 3)、飽和食塩水で3回洗浄した(30 mL × 3)。得られた生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(Hex/AcOEt = 4/1、Rf = 0.1)で分離精製し、次式(化17)で表される6’‐ヒドロキシゼルンボン([2E,6E,10E]-6-hydroxymethyl-2,9,9-trimethylcycloundeca-2,6,10,-trienone)を707mg (84%)の収率で得た。
【0042】
【化17】

([2E,6E,10E]-6-hydroxymethyl-2,9,9-trimethylcycloundeca-2,6,10,-trienone)
【0043】
IR (KBr): 3288.4, 1654.8cm-1
mp 78.5〜79.0 oC
1HNMR (CDCl): δ1.08 (s, 3H, CH3 at C9), 1.22 (s, 3H CH3 at C9), 1.78 (s, 3H, CH3 at C2), 2.22−2.45 (m, 4H, CH2 at C4, C5), 2.79 (br, H, OH at C6), 3.88 (bs, 1H, CH2 at C6), 4.33 (bs, 1H, CH2 at C6), 5.38 (t, 1H, J = 7.92 and 8.58 Hz, H at C7), 5.86 (d, 1H, J = 16.5 Hz, H at C10), 5.98 (d, 1H, J = 16.5 Hz, H at C11), 6.03 (d, 1H, J = 6.03 Hz, H at C3).
13CNMR (CDCl):δ11.80 (CH3 at C2), 23.92 (CH3 at C9), 24.64 (C4), 29.17 (CH3 at C9), 34.90 (C5), 37.23 (C9), 41.87 (C8), 58.82 (CH2 at C6), 126.97 (C11), 127.89 (C7), 137.99 (C2), 139.19 (C6), 149.81 (C3), 160.36 (C10), 204.26 (C1)
【0044】
(実施例4:N‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミンの生成)
7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone:7‐ブロモゼルンボン) 1.0g (3.4mmol)を入れた遮光ビンにDMF40mLを加えて撹拌し、メチルアミン2eq (388μl、6.8mmol) を加え、室温で89時間撹拌した後、反応を止めた。反応液をジクロロメタンで抽出し(30 mL × 3)、蒸留水(30 mL × 3)と飽和食塩水(30 mL × 3)で洗浄を行った。得られた褐色個体を乾燥して次式(化18)で表されるN‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミン(N-Methyl-N,N-bis((2E,6Z,10E)-2,9,9-trimethylcycloundeca-1-oxo-2,6,10-triene)-6-methyl)amin)eを641mg (41%)得た。
【0045】
【化18】

(N-Methyl-N,N-bis((2E,6Z,10E)-2,9,9-trimethylcycloundeca-1-oxo-2,6,10-triene)-6-methyl)amine)
【0046】
IR (KBr): 1651.0cm-1
1HNMR (CDCl): δ1.08 (s, 6H, 2CH3 at C9, C9'), 1.22 (s, 6H 2CH3 at C9, C9'), 1.77 (s, 6H, 2CH3 at C2, C2'), 1.88−3.00 (bm, 19H, CH2, at C4, C4', C5, C5', C8, C8, C6, C6', CH3-N), 5.46 (t, 1H, J = 6.93, 9.24Hz, H at C7, C7'), 5.73 (d, 1H, J = 16.5Hz, J = 16.5Hz, H at C10, C10'), 5.99 (d, 1H, J = 16.5 Hz, H at C11, C11'), 6.06 (d, J = 16.5Hz, 1H, C at C3, C3')
13CNMR (CDCl): δ9.45 (CH3 at C2, C2'), 21.89 (CH3 at C9, C9'), 22.32 (C4), 27.10 (CH3 at C9, C9'), 33.30 (CH2 at C5, C5', C6, C6'), 35.35 (C9), 39.40 (C8), 51.63 (CH2 at C6), 124.85 (C11), 126.31 (C7), 135.65 (C2), 136.24 (C6), 147.46 (C3), 157.77 (C10), 201.74 (C1)
HRMS: m/z calcd mass for C31H45NO2 463.3450, found 463.3418
【0047】
(実施例5:6’‐ジエチルアミノゼルンボンの生成)
7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ-2,10‐ジエノン(7-Bromo-2,9,9-trimethyl-6-methylenecycloundeca-2,10-dienone:7‐ブロモゼルンボン)1.0g (3.4mmol)を入れた遮光ビンにDMF40mLを加えて撹拌し、ジエチルアミン2eq (696μl、6.8mmol) を加え、室温で89時間撹拌した後、反応を止めた。反応液をジクロロメタンで抽出し (30 mL × 3)、蒸留水と飽和食塩水で洗浄を行った(30 mL × 3)。得られた褐色個体を乾燥して、次式(化19)で表される6’‐ジエチルアミノゼルンボン((2E,6Z,10E)-6-(diethylaminomethyl)-2,9,9-trimethylcycloundeca-2,6,10-trienone)を869.6mg(89%)得た。
【0048】
【化19】

((2E,6Z,10E)-6-(diethylaminomethyl)-2,9,9-trimethylcycloundeca-2,6,10-trienone)
【0049】
IR (KBr): 1651.0cm-1
1HNMR (CDCl): δ1.02 (t, 6H, J = 6.93, 7.26 Hz, CH3 at NCH2CH3), 1.07 (s, 3H CH3 at C9), 1.20 (s, 3H, CH3 at C9), 1.80 (s, 3H, CH3 at C2), 1.88-3.02 (m, 8H, 2H at C4, C5, C6, C8, NCH2CH3), 5.41 (t, 1H, J = 8.25 Hz, H at C7), 5.77 (d, 1H, J = 16.2 Hz, H at C11), 5.98 (d, 1H, J = 16.5 Hz, CH at C10), 6.09 (m, 1H, H at C3)
13CNMR (CDCl): δ11.84 (CH3 at NCH2CH3), 23.92 (CH3 at C9), 24.58 (CH2 at NCH2CH3), 29.29 (CH3 at C9), 35.73 (CH2 at C6), 37.59 (C9),.03 (C4), 50.12 (C5), 127.03 (C11), 127.73 (C7), 137.83 (C2), 139.08 (C6), 150.01 (CH at C3), 160.02 (CH at C10), 204.06 (C1)
HRMS: m/z calcd mass for C19H31NO 289.2406, found 289.2402
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)のH−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)の13C−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の新規物質7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)のIR測定スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の新規物質6’‐アセトキシゼルンボンのH−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図5】本発明の新規物質6’‐アセトキシゼルンボンの13C−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図6】本発明の新規物質6’‐アセトキシゼルンボンのIR測定スペクトルを示す図である。
【図7】本発明の新規物質6’‐ヒドロキシゼルンボンのH−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図8】本発明の新規物質6’‐ヒドロキシゼルンボンの13C−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図9】本発明の新規物質6’‐ヒドロキシゼルンボンのIR測定スペクトルを示す図である。
【図10】本発明の新規物質N‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミンのH−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図11】本発明の新規物質N‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミンの13C−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図12】本発明の新規物質N‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミンのIR測定スペクトルを示す図である。
【図13】本発明の新規物質6’‐ジエチルアミノゼルンボンのH−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図14】本発明の新規物質6’‐ジエチルアミノゼルンボンの13C−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図15】本発明の新規物質6’‐ジエチルアミノゼルンボンのIR測定スペクトルを示す図である。
【図16】本発明の新規物質6’‐ヒドロキシゼルンボンの単結晶X線解析データを示す図(ORTEP図)である。
【図17】本発明の新規物質N‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミンの単結晶X線解析データを示す図(ORTEP図)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(化1)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)。
【化1】

【請求項2】
次式(化2)で表される6’‐アセトキシゼルンボン。
【化2】

【請求項3】
次式(化3)で表される6’‐ヒドロキシゼルンボン。
【化3】

【請求項4】
次式(化4)で表されるN‐メチル‐N,N‐ビス‐6’‐ゼルンボイルアミン。
【化4】

【請求項5】
次式(化5)で表される6’‐ジエチルアミノゼルンボン。
【化5】

【請求項6】
次式(化6)で表されるゼルンボンを有機溶媒又は水との混合有機溶媒中に溶解し、
該ゼルンボンを含む前記溶媒中に臭素化試薬を加え撹拌し、
前記溶媒に水を加えてろ過する
次式(化7)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)の生成方法。
【化6】

【化7】

【請求項7】
次式(化8)で表されるゼルンボンを有機溶媒又は水との混合有機溶媒中に溶解し、
該ゼルンボンを含む前記溶媒中にNBS(N-Bromosuccinimide)を加え撹拌し、
前記溶媒に水を加えてろ過する
次式(化9)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)の生成方法。
【化8】

【化9】

【請求項8】
次式(化10)で表される7‐ブロモ‐2,9,9‐トリメチル‐6‐メチレンシクロウンデカ‐2,10‐ジエノン(7‐ブロモゼルンボン)に求核試薬を反応させることによる、6'‐置換型ゼルンボン誘導体の生成方法。
【化10】

【請求項9】
前記求核試薬が1〜20の炭素数を有する1価又は2価以上のカルボン酸塩、アルコール、アルコキシド、アンモニアを含む1級又は2級アミン、アジド、シアノ、硝酸塩、亜硝酸塩、炭素アニオン、グリニャール試薬又はチオールから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項8記載の6'‐置換型ゼルンボン誘導体の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−241056(P2006−241056A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58188(P2005−58188)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】