説明

新規組成物

【課題】改良された性質及び性能を有する含浸された木材要素を提供することである。
【解決手段】本発明は少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物に関し、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100である。さらに本発明は、本発明による混合物の形態の組成物での、又は本発明によるバッチ形態(多成分形態)における組成物成分の混合物での木材要素の含浸、及びその後の組成物又は混合物の硬化によって得られる含浸された木材要素に関する。本発明は、木材要素を含浸する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態での組成物であって、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エン(ene)を含む組成物、少なくとも二つの成分a)及びb)を含むバッチ形態での組成物であって、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エン(ene)を含む組成物、及び最後に、組成物での木材要素の含浸によって得られる含浸木材要素、及び含浸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チオール−エンフリーラジカル化学は1930年代後半に遡った頃の初期の仕事によって知られている。J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.:Vol.42(2004)においてレビュー「Thiol−Enes:Chemistry of the Past with Promise for the Future」はCharles E.Hoyle、Tai Yeon Lee、Todd Roperによって書かれる。チオール−エンは以下の分野で使用されてきた:透明保護コーティング、顔料コーティング、光開始液晶構造材料、及び接着剤。
【0003】
木材の含浸/改質は多くの出願及び特許において記述される。これらの出願の主な目的は耐水性を改良することによって木材の劣化及び菌類を防ぐことであった。近年注目されたのは、古い含浸方法を新しいもの、環境に優しい技術、で置き換えることであった。幾つかの将来有望な方法は、木材をフルフリル(WPT/Kebony)、アセチル(Accoya/Accsys/Titanwood)、フェノール(Fibron、C−K composites、Permail等)、又は尿素/メラニン/ホルムアルデヒド樹脂(BASF/Belmadur)で処理することに基づく。
【0004】
水/水性ベースの含浸技術は、長時間の高温及び高圧を含む強エネルギープロセスの間の、木材細胞の制御された膨潤に大きく依存する。技術のうち幾つかは耐水性の改良に対して良好な結果を示したが、コスト効率がよいことが証明されたものは今までない。共通の欠点は、含浸液体の浸透が制限されていること、脱色、及び含浸された木材製品がある程度膨潤することである。
【0005】
桐油及び亜麻仁油等有機油での含浸は歴史的に木材に関して好ましい含浸方法であった。油は適当に硬化するための遅い空気酸化メカニズムに依存する。含浸は制限され、不完全な耐水性をもたらすことも多い。
【0006】
木材は家具製品に好ましい材料である。しかしながら、金属や様々な複合材料のような材料と比較して、大きな木材構造体の機械的強度は限られる。したがって家具デザイナーは、薄い構造体が要求されるときには、他の材料を使用することを強いられる。
【0007】
さらに、劇的な気候変動に伴う熱帯雨林の急速な森林破壊によって、床、家具、及び船のデッキ等の用途における暗い色の熱帯樹を如何に置換するかに焦点が当てられた。前述した最近の幾つかの含浸技術において、得られる木材は通常暗い色になり、及び/又は不適当な色になる。この副次的な作用はある熱帯樹種を含浸によりより軽い/柔らかい木材に写すことにおいて使用され得る。しかしながら、この着色は熱帯産の外観を正確に写し取ることに関して制御が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0729401号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.:Vol.42(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、幾つかの分野においては木材製品における性質を改良するための需要が存在する。例として、耐水性、硬度の改良、寸法安定性、機械的強度、堅さ、及び着色性が挙げられる。機械的強度を増加すると共に着色を行なうことは将来的に重要な分野である。本発明の目的は、乏しくかつ脆弱な資源を保護するために殆どの用途において熱帯雨林木材を置換することである。
【0011】
本発明の目的は、異なる用途において、耐水性、硬度、寸法安定性、機械的強度、堅さ、高Eモジュール、及び着色性等、改良された性質及び性能を有する含浸された木材要素を提供することである。これは木材要素を含浸するために使用される組成物で実現される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物に関し、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100である。
【0013】
さらに、本発明は少なくとも二つの成分a)及びb)を含むバッチ形態(多成分形態)の組成物に関し、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であり、成分a)及びb)は互いに分離している。
【0014】
さらに、本発明による混合物の形態の組成物での、又は本発明によるバッチ形態(多成分形態)における組成物成分の混合物での木材要素の含浸、及びその後の組成物又は混合物の硬化によって得られる含浸された木材要素も本発明に含まれる。
【0015】
さらに、本発明は木材を含浸する方法に関し、木材要素は本発明による混合物の形態の組成物、又は本発明によるバッチ形態(多成分形態)の組成物成分の混合物で含浸される。
【0016】
さらに、木材要素を含浸するための、混合物の形態の組成物、又はバッチ形態の組成物成分の混合物の使用にも関する。
【0017】
定義
「チオール」は硫黄原子と水素原子とからなる官能基、すなわち−SH基を含む化合物を意味する。この官能基はチオール基又はスルフィドリル基と呼ばれる。チオールはメルカプタンとも呼ばれる。
【0018】
「エン」は二つの炭素原子間の二重結合又は三重結合である不飽和からなる少なくとも一つの官能基を含む化合物を意味する。この官能基はエン基と呼ばれる。
【0019】
「単官能」は一つの官能基を有する一つの分子を意味する。チオールに関するとき、それは一つのチオール基を有するチオール分子を意味するだろう。エンに関しても同じであり、すなわち分子は一つの不飽和を有する。
【0020】
「多官能」は二つ以上の官能基を有する一つの分子を意味する。チオールに関するとき、それは二つ以上のチオール基を有するチオール分子を意味するだろう。エンに関しても同じであり、すなわち分子は二つ以上の不飽和を有する。
【0021】
「チオール−エン」は、チオール基を有する化合物とエン基を有する化合物とを含む溶液のための表現である。この表現は、二つの成分a)及びb)を含む組成物に関して使われる場合がある。しかしながら、それは成分a)及びb)が混合物であるときにのみ使用され得る。
【0022】
表現「バッチ形態の組成物」(多成分形態)は応用において使用される。「バッチ形態」は、例えば少なくとも二つの成分が組成物に含まれ、それらが互いに分離されて保持されることを意味する。それらは二つの分離したベッセル又は、後で組成物が使用されるときには引き抜かれ若しくは破壊され得る隔壁を有するベッセル内に保持されることによって分離されてよい。分離は、例えば含浸工程で塗布される前に二つの成分が反応する場合等、望ましくないときに反応するであろう二つの成分に関して使用されてよい。これは、どの成分が選択され、及びどのような保存期間が望ましいか、に依存する。
【0023】
「混合物の形態の組成物」との表現は、組成物中で少なくとも二つの成分が混合物であるときに使用される。
【0024】
木材要素は、硬木、軟木又は任意のタイプの木種の、圧縮された又は非圧縮の、任意の一片又は木材の一部であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な記述
本発明は少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物に関し、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100である。チオールとエンとの間の異なるモル比によって、操作者が硬化工程を制御して含浸された木材要素の性質を調整することが可能となる。反応性チオール基及びエン基の他の有効な転換は、チオール及びエンのモル比が1:0.9から1:10の範囲で実行される。低い比率において、チオールは大部分開始剤及び連鎖移動剤として働き、高い比率において、チオールは大部分コモノマーとして働く。組成物は木材を含浸するのに使用される。非常に良好な浸透が、通常の真空圧含浸オートクレーブを用いて実行される。硬化は、ヒートオーブン、木材乾燥キルン/チャンバ、HF/ウォームプレス等任意の通常の熱源を加えて60〜150℃で実行される。得られる木材要素は有意に増加した機械的性質を有する。ハンノキ、ブナ、及びカバノキ等北欧硬木種は含浸後全て初期の木材材質に依存して8〜15ブリネルの範囲の硬度を有する(年輪方向、節、初期硬度等)。曲げ強度試験の結果は、同じ種に関して最大70%の値の増加を示す。例えば、カバノキの曲げ強度は115MPaから160MPaに増加し、圧縮されたカバノキに関しては曲げ強度は141MPaから239MPaに増加した(表8、例9を参照されたい)。
【0026】
さらに、本発明は少なくとも二つの成分a)及びb)を含むバッチ形態の組成物に関し、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であり、成分a)及びb)は互いに分離している。上述のように、チオール基とエン基とは反応が必要となる前に互いに反応する場合があるので、成分は分離される必要がある場合がある。成分a)及びb)の混合物は非常に迅速に反応する場合があり、一方で二つの成分a)及びb)の他の混合物はそれほど迅速には反応しない場合がある。そのような混合物又は組成物はより長いポットライフを有する。バッチ形態の組成物内の二つの成分a)及びb)の混合物は、二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物と等価のものである。
【0027】
上述のように、反応性チオール基とエン基との他の有効な転換は、チオールとエンとのモル比1:0.9から1:10の範囲で実行される。規則的な、及び制御可能なポリマーネットワークが、より狭い範囲によって得られうる。硬化の程度も改良され得る。
【0028】
以下において、表現「組成物」を用いるとき、他に特定されていない場合、それは混合物の形態の組成物及びバッチ形態の組成物の両方に関する。
【0029】
上述のように、木材要素の性質は本発明による組成物で含浸することによって改良される。チオール基とエン基とを有する組成物は早くから知られており、しばしば上述のように「チオール−エン」と呼ばれる。チオール−エンが使用される分野は透明保護コーティング、色素コーティング、光開始液晶構造材料、及び接着剤であった。驚くべきことに、発明者によって、本発明による組成物(少なくとも二つの成分a)及びb)を含み、成分a)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)は少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100である)が木材要素の含浸に使用でき、非常に良好な性質を有する木材要素を与えることが見出された。そのうえ、木材の応用分野が増えるであろう。チオール基とエン基との間のモル比は1:0.9から1:10であってもよい。
【0030】
本発明による少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオール基を含む成分、及び少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エン基を含む成分を含む混合物の形態の組成物は、室温においてフリーラジカル機構(以下の概略図1を参照されたい)を通じて硬化され得る。
【0031】
【化1】

【0032】
チオール−エン反応の全体の転換速度はエン上の電子密度に直接関係し、電子が豊富なエンは電子が乏しいエンと比較してより迅速に消費される。この規則に対する基本的な例外は、高度に共役した二重結合共重合化がチオールとでは非常に遅いことである。様々なエンとチオールとの反応性の順序は以下の概略図2に示される。メルカプトプロピオン酸エステルに基づくチオールは、メルカプトアセテートエステルと比較して(その代わり単純なアルキルチオールとより迅速に反応する)、所定のエンとより迅速に共重合する。
【0033】
概略図2 様々なエンのチオールに対する反応性
ノルボルネン>ビニルエーテル>プロペニル>アルケン〜ビニルエステル>N−ビニルアミド>アリルエーテル〜アリルトリアジン>アリルイソシアヌレート>アクリレート>不飽和エステル>N−置換マレイミド>アクリロニトリル〜メタクリレート>スチレン>共役ジエン
【0034】
したがって、本発明による混合物の形態の組成物は、様々なチオール及びエンの組合せを選択することによって、又は阻害剤若しくはフリーラジカル開始剤を用いることによって制御され得る。もしも反応が非常に迅速に開始している場合、バッチ形態(多成分形態)の組成物を使用して木材要素を含浸するときに混合物を提供する必要があるだろう。バッチ形態では、異なるベッセル又は少なくとも二つの区画を含むベッセル中に異なる成分を提供することができる。組成物が混合されなくてはならないとき、異なるベッセルからの内容物が混合されるか、又はベッセルの異なる区画の内容物が混合される。異なる区画の間の隔壁は破壊されるか、又は成分は別のベッセル内で混合されてよい。もしも成分が非常に迅速に反応しない場合は、一つのベッセル内に成分が保持されることに問題はない。しかしながら、例えば反応が非常に遅いとき、反応が開始される必要がある場合には、フリーラジカル開始剤を添加することが実用的であり得る。さらに、異なるベッセルを用いたり、又は成分のための異なる区画内部に隔壁を用たりする代わりに、阻害剤が使用されてよい。成分間の反応はその後所定の場合に阻害される。
【0035】
チオールはメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。これらのチオールは制御可能なポットライフ及び硬化プロセスを与えるので適切である。同様に、含浸の性質も調節され得る。
【0036】
エンは、ノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択されてよい。これらのエンは制御可能なポットライフ及び硬化プロセスを与えるので適切である。同様に、含浸の性質も調節され得る。
【0037】
本発明は少なくとも二つの成分a)及びb)を含むバッチ形態の組成物にも関し、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であり、成分a)及びb)は互いに分離している。
【0038】
さらに、成分a)及びb)のうち少なくとも一つは色素、微粉化された顔料、及び/又は顔料を含んでよい。そのサイズが小さいこと、及び透過性が高く制御可能な着色工程を与えることに起因して、色素が好ましい。
【0039】
成分a)及びb)のうち少なくとも一つは、開始剤、阻害剤、及び他の添加剤から選択される添加剤を含んでよい。開始剤及び阻害剤は反応を制御し得る。開始剤は例えば熱(IR、対流、マイクロ波)、光(UV/可視)、又は放射(EB、γ又はβ)によって活性化され得る。
【0040】
本発明は、含浸された木材要素にも関し、それは混合物の形態の組成物又はバッチ形態の組成物成分の混合物で木材要素を含浸しその後組成物又は混合物を硬化することによって得ることができる。上述のように、前記バッチ形態の組成物成分の混合物は、前記混合物の形態の組成物と等価である。
【0041】
したがって、本発明は、少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物で木材要素を含浸し、その後組成物又は混合物を硬化することによって得られる含浸された木材要素に関し、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100である。
【0042】
含浸法のための組成物は上記開示された全ての性質を有してよい。含浸された木材要素は圧縮された木材要素であってよい。
【0043】
含浸された木材要素は、本発明による組成物又は混合物で含浸されたとき優れた性質を実現する。independent technological institute SWEREA IVF(Gothenburg)によって幾つかの試験が実行された。硬度試験は幾つかの硬い種において実行された。結果は例8において示される。
【0044】
試験は元々硬い木材が有意に増加した機械的性質を実現することを示し、硬度に関して最大600%まで増加し、曲げ強度は最大70%まで増加する。例えば、ハンノキの硬度は2.1ブリネルから15.2ブリネルまで増加し、カバノキの硬度は2.6ブリネルから14.9ブリネルまで増加する。カバノキの曲げ強度は115MPaから160MPaまで増加し、ハンノキの曲げ強度は90MPaから121MPaまで増加した。圧縮された(Calignumの欧州特許第0729401B1号明細書による)含浸された木材のサンプルは硬度において最大300%の増加、及び曲げ強度において最大150%の増加を実現する。例えば、圧縮されたブナノキの硬度は7.2ブリネルから11.7ブリネルに、圧縮されたカバノキは4.5ブリネルから11.9ブリネルに増加した。圧縮されたカバノキの曲げ強度は141MPaから239MPaに増加し、圧縮されたブナノキにおいては175MPaから202MPaに増加した。これらの値は本発明を制限しない。代わりに本発明による異なる組成物と組み合わせて異なる種類の木材及び圧縮された木材を使用することによって、さらに高い値を得ることができる。
【0045】
この出願による含浸された全ての木材要素は、最硬天然木材と同様に処理することができる(研磨、平面加工、鋸引き等)。これは、この木材要素がどのような木材工具又は機械においても処理できることを意味する。しかしながら、含浸された木材は非常に硬いので、機器は鋭利にされ保守される必要がある。
【0046】
含浸された木材は寸法安定性及び耐水性も増大する。
【0047】
含浸された木材要素は含浸された木材要素の全重量に基づき計算された約1〜約80重量%の組成物又は混合物を含んでよい。これは、木材に取り込まれてよい組成物の量に関して幅広い範囲である。元々硬く機械的に優れた木材要素に良好な着色を与え耐水性を改良する(木材が既に非常に良好な耐水性を有するであろう)ためだけには少量で有効であろう。さらに、非常に多孔質の木材タイプは約80重量%の組成物を取り込む場合がある。そのような木材要素の所定の性質を得るには、これは必要なことであろう。
【0048】
もしも木材要素が多孔質である場合、組成物によって強化される必要がある。多量の組成物によって得られる範囲において耐水性が増加される必要もあるだろう。木材要素によって取り込まれる組成物又は混合物の量は、選択される木材及び組成物に依存する。さらに、それは以下に記述される方法によって調節される。
【0049】
木材要素を含浸する方法は、木材要素にある種の圧縮を施す段階も含んでよい。圧縮は含浸段階の前又は後に行なわれてよい。例えば、木材要素は木材要素の任意の方向に圧縮を受けてよい。
【0050】
木材要素を圧縮するにはさらなる方法が存在する。木材要素を圧縮する例は欧州特許第0729401B1号明細書に開示される。この方法は均衡圧縮を使用する。得られる木材は非常に硬いので木材は圧縮木材要素とよばれる。そのような木材要素を製造する方法に関して、我々はこのEP文献を参照する。そのような本発明による組成物で含浸された木材要素は非常に硬く、高い機械的強度を有する。圧縮段階は木材要素の含浸の前又は後に行なわれてよい。
【0051】
木材要素は軟木及び硬木からなる群から選択されてよい。どちらの種類の木材でも働く。軟木の例としてマツ及びトウヒが挙げられる。硬木の例としては、カバノキ、ハンノキ、アスペン、ブナノキ、又はオークが挙げられる。
【0052】
この木材要素は、高度の耐磨耗性及び耐引裂性を有する、硬く、美しい表面を使用する、床、階段、及び家具等殆どの屋内木材製品に対して理想的である。一般的に、全ての屋内木材構造物は曲げ強度等機械的性質が増大すると有利である。耐水性と共に強度が増加することによって、例えば構造物の建築、屋外家具のための木材等、屋外使用においても良好な材料となる。
【0053】
本発明は木材を含浸する方法にも関し、木材は本発明による混合物の形態の組成物で、又は本発明によるバッチ形態(多成分形態)の組成物の成分の混合物で含浸される。
【0054】
したがって、本発明は、少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物で木材要素が含浸される、木材要素を含浸する方法に関し、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100である。
【0055】
さらに、本発明は木材要素を含浸する方法に関し、木材要素は少なくとも二つの成分a)及びb)を含むバッチ形態の組成物の混合物で含浸され、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であり、成分a)及びb)は含浸前バッチ形態において互いに分離され、含浸時に互いに混合されて成分a)及びb)の混合物となる。
【0056】
成分a)及びb)は含浸直前に混合されてよい。
【0057】
結果的に、これらの方法は後者の方法の開始時の組成がバッチ組成物である点において異なり、二つの組成物a)及びb)は互いに分離される。木材要素が含浸されるとき、二つの成分a)及びb)は互いに混合され混合物となる。前者の方法では、二つの成分の組成物は方法開始時には既に混合物である。バッチ組成物が使用されるとき、成分は通常互いに迅速に反応し、ポットライフが短い。
【0058】
木材の含浸は当業者によって容易に理解される。含浸は一般的にオートクレーブ内で真空及び圧力を適用して木材製品内部への含浸液体の浸透を実行する段階を含む。含浸された木材は、その後典型的には熱の使用を通じて含浸液体(木材細胞構造内部)の重合を行なって硬化される。この方法は広く知られているが、如何に含浸を実現するか、幾つかの例が以下に記載される。
【0059】
木材要素は段階i、ii、iii、vii、viii、及び任意に段階iv、v、及びviの一つ以上を任意の順で用いて含浸されてよい。
i)木材要素をチャンバ内に入れる、
ii)チャンバ内部に組成物又は混合物を供給する、
iii)チャンバ内の木材要素を真空にさらす、
iv)木材要素を通常の圧力にさらす、
v)木材要素を過剰な圧力にさらす、
vi)木材要素を真空にさらす、
vii)木材要素をチャンバから取り出す、
viii)含浸された木材要素を少なくとも40℃の温度に少なくとも5分間加熱する。
【0060】
他に取り得る処理段階として、組成物、又は混合物は真空下でチャンバ内へと供給されてもよい。木材要素は、真空とされる前にチャンバ内部に単に入れられる。他の処理段階は同じであり、任意の順で適用されてよい。
【0061】
段階は任意の適切な順序で実行されてよい。したがって、上述の順序で実行される必要はない。さらに、幾つかの段階は2回以上実行されてよい。これらの方法は木材要素の含浸において通常使用される方法である。
【0062】
段階viii)(硬化又は加熱段階)は組成物硬化の開始である。硬化は室温から最大約180℃までの温度で実行され得る。しかしながら、さらに高い温度が用いられてよく、これは木材基材及びチオレン組成物に依存する。加熱及び硬化時間は、使用される成分a)及びb)、及び温度に依存する。室温での硬化は、より長い硬化時間を用いることを必要にする。
【0063】
木材要素によって取り込まれ得る組成物の量は、本方法における様々な段階によって調整され得る。真空の程度が低いことによって木材は容易に組成物を取り込むよう調製されてよく、高い過剰圧力は組成物を木材要素内部に押し進める。様々な段階の継続期間は、木材要素によって取り込まれる組成物の量にも影響する可能性がある。
【0064】
さらに本発明は、木材要素の含浸における、上述の本発明による混合物の形態の組成物、又は上述の本発明によるバッチ形態の組成物の成分の混合物の使用に関する。
【0065】
本発明は、少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物の使用;又はバッチ形態での組成物の少なくとも二つの成分a)及びb)の混合物の使用であって、成分a)及びb)が使用前互いに分離される使用;に特に関し、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100である。
【0066】
ここで、本発明のさらなる説明(制限的なものではない)のために以下が例示される。
【0067】

1.様々なチオール及びエンの反応性の例
1a)チオール基とエン基との間のモル比が1:1であるチオールTMPMP及び様々なエンの組成物の試料10gが試験され、様々な反応速度が記録された。組成物はベッセル内に配置された。温度は最初は最大20分間RT(室温、20℃)であり、その後最大25分間78℃であり、最終的には反応が終了する(硬化)まで100℃であった。組成物が既に硬化していたため(FTIR、二重結合転換>90%)、高い温度に加熱する必要がなかった場合もあった。
【0068】
結果は以下の表1に示される。
【0069】
【表1】

【0070】
上記結果は反応性の相違が使用される(不飽和)エンのタイプに依存することを示す。同じ分子上のエン基の官能性が増加すると反応速度が増加する。
【0071】
1b)チオール基とエン基との間のモル比が1:1である様々なチオール及びエンTMPTAの組成物の試料10gが試験され、様々な反応速度が記録された。組成物はベッセル内に配置された。反応が終了するまで温度は80℃であった(硬化は、FTIRによって測定された二重結合の転換が>90%であることを意味する)。
【0072】
【表2】

【0073】
表1bの結果は、同じ分子上のチオール基の官能性が増大すると反応速度が増大することを示す。また、メルカプトアセテートチオールと比較してメルカプトプロピオン酸チオールの反応性が高いことも示す。
【0074】
2.様々なモル比のチオール/エン基の例
モル比が異なるチオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)の組成物の試料10gを調製して、得られる硬度及び表面特性を調べた。硬化条件は80℃で6分間であった。表2aを参照されたい。
【0075】
【表3】

【0076】
上述の結果は、チオール基とエン基との間のモル比が異なることで異なる性質を有する製品が得られることを示す。TMPMP及びTMPTAの組合せにおいてエン基が増加すると硬度が増加する。チオールとエンの組合せが異なると、そのモル比及び官能基に依存して異なる機械的性質を与える。PETMP(ペンタエリトリトールテトラ−メルカプトプロピオン酸)及びTEGDA(トリエチレングリコールジアクリレート)の組成物は、PETMPのモル比が増加するにつれて硬い膜を与える(表2bを参照されたい)。
【0077】
【表4】

【0078】
3.様々な硬化温度の例
様々な硬化温度の効果は、チオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)の組成物で調査された。チオール基とエン基との間のモル比は1:1であった。
【0079】
圧縮されたハンノキの木材片(50×150×4mm)は上記組成物で含浸された。含浸処理パラメータは以下のとおりである。
真空圧力:4分間0.2bar
通常圧力:6分
過剰圧力:10分間2bar
通常圧力:2時間
硬化は対流オーブン内で異なる温度及び時間で実施された。表3a及び3bを参照されたい。
【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
表3cにおいて、さらなる例が示される。調べた組成物はチオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)であった。チオール基とエン基との間でモル比は1:5.6であった。
【0083】
圧縮されたハンノキの木材片(50×150×4mm)は上記組成物で含浸された。含浸の処理パラメータは、以下のとおりである。
真空圧力:6分間0.1bar
通常圧力:15分間
【0084】
【表7】

【0085】
試験結果は硬化温度及び時間が重要であることを示す。一般的に温度が高いと反応速度が増加し、硬化時間が短くなる。硬化時間はチオール及びエンの各組成物に関して最適化されなくてはならない。表3a、3b、及び3cはこの硬化温度の効果を示す。
【0086】
4.硬化のための様々な熱/UV源の例
様々な硬化条件が調べられた。対流オーブン、IRランプ、及びマイクロ波オーブン内で生成される熱での硬化が評価された。UVランプの影響も同様に試験された。結果は表4に示される。
【0087】
調べた組成物はチオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)であった。チオール基とエン基との間でモル比は1:1.3であった。
【0088】
圧縮されたハンノキの木材片(50×150×4mm)は上記組成物で含浸された。含浸の処理パラメータは、以下のとおりである。
真空圧力:10分間0.1bar
通常圧力:2分間
過剰圧力:8分間1.5bar
通常圧力:4時間
【0089】
【表8】

【0090】
上記結果から、UVは木材片表面層にのみ効果をもたらし、UVとIRとの組合せは木材片全体を通じて良好な硬化を与えると結論付けることができる。IRのみでは、さらなる改良を必要とする硬化を与える。マイクロ波オーブン及び対流オーブン(100℃、6時間)内での硬化は含浸された木材片に良好な硬化条件を与える。
【0091】
5.ポットライフの制御例。様々なチオール/エン、阻害剤及び/又はフリーラジカル開始剤
含浸工程において、様々な処理段階のための時間、及び工程において同じ組成物を何度か使用する可能性の観点から、組成物のポットライフは重要である
【0092】
組成物のポットライフを制御する幾つかの方法が存在する。それらのうち幾つかは:
・チオール及びエンの選択(タイプ、官能基、モル比)
・阻害剤の使用
・フリーラジカル開始剤の使用(UV及び熱感受性開始剤、活性化されたときポットライフはより短い)
・二つの成分に対して異なるベッセルが使用され得る
【0093】
表5において、幾つかの例が示される。
【0094】
【表9】

【0095】
6.様々なタイプの木材(天然及び被圧縮の双方)の含浸の例
表6は様々なタイプの木材(天然及び被圧縮の双方)の含浸の例における結果を示す。
【0096】
調べた組成物はチオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)及びHDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)であり、エン間のモル比は8:2であった。チオール基とエン基との間でモル比は1:2であった。
【0097】
木材片(2000×200×4mm)は上記組成物で含浸された。含浸の処理パラメータは、以下のとおりである。
真空圧力:6分間0.15bar
通常圧力:15分間
過剰圧力:15分間1.3bar
真空圧力:6分間0.15bar
通常圧力:24時間
100℃における、24時間の硬化
【0098】
【表10】

【0099】
チオレン含浸処理は前記例によるものであり、試験はチオレン含浸処理が全てのタイプの木材に対して使用可能であることを示す。木材は天然であっても、圧縮されたものであってもよい。
【0100】
7.熱帯雨林樹と同等又はより良好な性質を有する、着色されたチオール−エン組成物で含浸された天然又は被圧縮木材の例(着色されたチオレン組成物は色素、微粉化された顔料、及び/又は顔料によって得られる)
着色された組成物は色素、微粉化された顔料、及び/又は顔料を使用することによって得られる。熱帯雨林からの木材と同等又はより良好な性質を有する、着色された組成物で含浸された天然又は被圧縮木材の例が以下に示される。
【0101】
調べた組成物はチオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)及びTEGDA(トリエチレングリコールジアクリレート)であり、エン間のモル比は9:1であった。チオール基とエン基との間でモル比は1:2であった。組成物にはオレンジ色素及び黒色素が添加された。
【0102】
被圧縮木材片(2000×200×4mm)は上記組成物で含浸された。含浸の処理パラメータは、以下のとおりである。
真空圧力:6分間0.15bar
通常圧力:15分間
過剰圧力:15分間1.3bar
真空圧力:6分間0.15bar
通常圧力:24時間
100℃における、24時間の硬化
【0103】
表7には様々な着色含浸木材の結果が示される。
【0104】
【表11】

【0105】
8.機械的性質の例
機械的性質(ブリネル硬度(SS−EN 1534)及び曲げ強度(ISO 3133))が様々な木材要素に関して測定された。硬度試験は幾つかの硬い種について実施された。結果は以下の表8に示される。
【0106】
【表12】

【0107】
上記結果は、様々な含浸木材要素において、ブリネル硬度及び曲げ強度の双方が天然木材要素と比較して機械的性能において大きく増大することを示す。
【0108】
元々の硬木は有意に増加した機械的性質を実現し、硬度に関しては非常に高い増加(最大600%)及び曲げ強度に関しては高い増加(最大70%)である。被圧縮(Calignumの欧州特許第0729401B1号明細書による)含浸木材試料は硬度において中程度から高い増加(最大300%)及び曲げ強度において高い増加から非常に高い増加(最大150%)を実現する。
【0109】
9.木材要素中のチオレン組成物の様々な量の例(木材要素中の0から80%の範囲のチオレン組成物)
下記表9は0から80重量%の範囲の様々な量の木材要素中のチオレン組成物を示す。調べた組成物はチオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)及びHDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)であり、エン間のモル比は9:1であった。チオール基とエン基との間でモル比は1:2であった。
【0110】
木材片(2000×200×4mm)は上記組成物で含浸された。含浸の処理パラメータは、以下のとおりである。
真空圧力:8分間0.10bar
通常圧力:15分間
過剰圧力:20分間1.2bar
真空圧力:6分間0.15bar
通常圧力:24時間
100℃における、24時間の硬化
【0111】
【表13】

【0112】
表9における結果は、木材要素中の様々な量のチオレン組成物(0から約80重量%)に対して良好な硬化性能を示す。
【0113】
10.チオールとエンとの間の様々なモル比
下記表10は、木材要素中のチオールとエンとの間の様々なモル比(1:0.1から1:100の範囲)を示す。調べた組成物はチオールTMPMP(トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸)及びエンTMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)であった。
【0114】
木材片(2000×200×4mm)は上記組成物で含浸された。含浸の処理パラメータは、以下のとおりである。
真空圧力:6分間0.15bar
通常圧力:20分間
過剰圧力:15分間1.4bar
真空圧力:10分間0.15bar
通常圧力:10時間
100℃における、24時間、対流オーブンでの硬化
【0115】
【表14】

【0116】
結果は、1:0.1から1:100の範囲のチオール及びエンのモル比に関して良好な硬化性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物で木材要素を含浸し、その後組成物又は混合物を硬化することによって得られ、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であることを特徴とする、含浸された木材要素。
【請求項2】
前記成分a)及びb)のうち少なくも一つは色素、微粉化された顔料、及び/又は顔料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の含浸された木材要素。
【請求項3】
前記成分a)及びb)のうち少なくも一つは開始剤、阻害剤、及び他の添加剤から選択される添加剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の含浸された木材要素。
【請求項4】
前記木材要素が、含浸された木材要素の全重量に対して約1〜約80重量%の前記組成物又は混合物を含むことを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の含浸された木材要素。
【請求項5】
前記木材要素が軟木及び硬木からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の含浸された木材要素。
【請求項6】
チオール基とエン基との間のモル比が1:0.9から1:10であることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の含浸された木材要素。
【請求項7】
少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物で木材要素が含浸され、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であることを特徴とする、木材要素を含浸する方法。
【請求項8】
少なくとも二つの成分a)及びb)を含むバッチ形態の組成物の混合物で木材要素が含浸され、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であり、成分a)及びb)は含浸前バッチ形態において互いに分離され、含浸時に互いに混合されて成分a)及びb)の混合物となることを特徴とする、木材要素を含浸する方法。
【請求項9】
前記木材が段階i、ii、iii、vii、viii、及び任意に段階iv、v、及びviの一つ以上を任意の順で用いて含浸されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法:
i)木材要素をチャンバ内に入れる、
ii)チャンバ内部に組成物又は混合物を供給する、
iii)チャンバ内の木材要素を真空にさらす、
iv)木材要素を通常の圧力にさらす、
v)木材要素を過剰な圧力にさらす、
vi)木材要素を真空にさらす、
vii)木材要素をチャンバから取り出す、
viii)含浸された木材要素を少なくとも40℃の温度に少なくとも5分間加熱する。
【請求項10】
少なくとも二つの成分a)及びb)を含む混合物の形態の組成物の使用;又はバッチ形態での組成物の少なくとも二つの成分a)及びb)の混合物の使用であり、成分a)及びb)が使用前互いに分離される使用であって、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であることを特徴とする使用。
【請求項11】
少なくとも二つの成分a)及びb)を含むバッチ形態の組成物であって、成分a)はメルカプトプロピオン酸エステル、メルカプトアセテートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能チオールを含み、成分b)はノルボルネン、ビニルエーテル、プロペニル、アルケン、ビニルエステル、N−ビニルアミド、アリルエーテル、アリルトリアジン、アリルイソシアヌレート、アクリレート、不飽和エステル、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリレート、スチレン、共役ジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの単官能及び/又は多官能エンを含み、チオール基とエン基との間のモル比は1:0.1から1:100であり、成分a)及びb)は互いに分離している組成物。
【請求項12】
前記成分a)及びb)のうち少なくも一つは色素、微粉化された顔料、及び/又は顔料を含むことを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記成分a)及びb)のうち少なくも一つは開始剤、阻害剤、及び他の添加剤から選択される添加剤を含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
チオール基とエン基との間のモル比が1:0.9から1:10であることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。

【公開番号】特開2009−269403(P2009−269403A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−109568(P2009−109568)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(509122049)カリグナム・テクノロジーズ・アーベー (1)
【Fターム(参考)】