説明

新規繊維不織布による短期創傷治癒方法

少なくとも以下の構造:創傷と接触する不織布(1)、および防水性であり少なくとも一種類の非水溶性ポリマーを含む膜(3)を有する多層ドレッシング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は紡糸結合不織布または繊維状不織布(spunbonded or fibrous nonwoven)に基づく多層ドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
モイストウーンドクロージャーは既知の技術である(例えば、Balnk,Ingo,Wundversorgung und Verbandwechsel、Kohlhammer−Verlag、シュトゥットガルト、2001、142、ISBN 3−17−016219−5;Stalick L.、Mangaging and caring for a patient with a complicated wound.Br J Nurs. 2004 Oct 14−27;13(18):1107−9;Metzger S.、Clinical and financial advantages of moist wound management.Home Health Nurse.2004 Sep;22(9):586−90参照。)。このタイプの創傷治癒の問題は、創傷接触媒体、例えば、吸収ガーゼ、硬膏等が治癒中に創傷に粘着性になり得ることである。次に接触媒体を除去する時、創傷はしばしば再度傷つき開き、それにより新しく形成されたばかりの組織が再度破壊され、除去される。それにより創傷治癒が不必要に遅れることは明らかである。創傷に付着しない創傷ドレッシングの使用すると、創傷ドレッシングが創傷に付着性になるのを妨げる。創傷欠陥は新しく形成される組織が適応し成長し得る支持構造体および誘導構造体を欠く。この事は特に深い創傷で生じる実質の欠陥の原因になる。更に不必要かつ好ましくない傷跡がある。この問題は、表皮だけでなく真皮も、かつ場合によっては皮下組織(いわゆる「深い」創傷)も関連し、表皮層だけでなく真皮も、かつ場合によっては皮下組織も再構成を必要とする創傷の臨床診療に関連する。
【0003】
表皮の厚さは、通常変化しやすく、部位に依存して0.03〜4mm厚である。年齢および性別もまた表皮の厚さに影響を与える。表皮は血管を有さない。表皮はケラチン生成細胞から作られる。ケラチン生成細胞は、細胞核を有し、ケラチンを生成する角質細胞である。ケラチンは水をはじき、皮膚に強度を与える。
【0004】
下にある真皮は緩やかに絡み合う結合性組織の割合が高い皮膚の弾性層である。真皮もまた部位に依存して厚さが変化し得る。真皮は陰茎およびまぶたにおいて薄く、0.3mmしかないが、手のひらおよび足裏の真皮の厚さは2.4mmである。
【0005】
上記問題は、治癒が遅れた創傷や全く治癒しない創傷(例えば、慢性糖尿病性神経症性潰瘍、下腿潰瘍、床ずれおよび感染創直接癒合)にのみ関係するのではなく、正常に間接癒合する創傷(例えば、離解性裂傷または擦傷(組織がすりむかれ、次に創傷から除去される)およびスプリットスキンドナー部位)にも関係する。
【0006】
以前記述された先行技術を発端とし、本発明は上記欠点(接触媒体が創傷に付着性になること;形成されたばかりの組織の破壊、創傷治癒における不必要な遅れ、過度の傷跡、欠陥(治癒)の形成)を受け入れる必要なく創傷と接触可能な広義の接触媒体(例えば、ドレッシング、ガーゼ、硬膏)提供の問題に取り組んだ。従って、本発明者の目標はモイストウーンドクロージャーにおいて組織における構造を残すことが可能な構造を発達させることであり、創傷の治癒後であっても、これを除去せず、従って治癒プロセスを妨げないようにし、誘導を新しく形成する組織に与えるようにし、最後に傷跡を避けるようにする。
【0007】
DE−C19609551は、生分解性および/または生体吸収性繊維構造体(シリカゲル繊維または繊維状構造体)を開示している。これらは紡糸液から糸を引き出すことにより得られ、必要に応じて乾燥する。この紡糸液は、一般式SiX(式中、X基は同一であるかまたは異なっており、ヒドロキシ、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルであるかまたはアルキル基から誘導されており、酸素原子、硫黄原子またはアミノ基が割り込んでいてもよい。)のモノマーから加水分解縮合により誘導されるケイ素の一種類以上の部分的にまたは完全に加水分解縮合された化合物を含有する。
【0008】
更にWO01/42428およびEP−A01262542に記述されている方法がそれぞれ上記繊維構造体を使用するスキンインプラント、および細胞、組織および器官の製造に関して知られている。WO01/42428はスキンインプラントの製造方法を記述している。ここで、皮膚細胞を栄養溶液表面上に置き、次にこの細胞を成長させ、上記生体適合性、または生分解性および/または生体吸収性繊維で構成されているシート状要素を栄養溶液に置くことを特徴とする。シート状要素の繊維は直径5〜20μmを有する。EP−A01262542は対照的にインヴィトロでの細胞、組織および器官の製造方法を開示しており、上記繊維マトリックス(DE−C19609551参照)は細胞により形成される細胞外マトリックス用の細胞支持物質および/または誘導構造体として役立ち、細胞が増殖および/または遺伝的に決定された分化を達成することを可能にする空間的配置を発見することを可能にする。
【0009】
本発明者により提供される上記問題の解決方法は、本発明の一態様を構成し、請求項1記載の多層ドレッシングの製造に関してDE−C19609551に記載される繊維の使用を含む。これは、前記繊維の、次に常套のドレッシング手段、特に創傷に直接導入されるドレッシング手段と組み合わせ得る不織布への処理を必要とする。この組み合わせをここおよび以下において、典型的なドレッシングでなく、硬膏、圧迫ガーゼ等であるとしても多層ドレッシングと呼ぶ。従って、本発明の一態様は少なくとも以下の構造体:創傷と接触することを目的とする不織布1、および不透水性であり少なくとも一種類の水に不溶のポリマーを含む膜3を有する多層ドレッシングに関する。
【0010】
上記多層ドレッシングは以下の構造体:
創傷と接触することを目的としている不織布1、および
不透水性であり少なくとも一種類の水に不溶のポリマーを含む膜3であって、絆創膏であって創傷を取り巻く皮膚に付着する接着部位を含むか、または接着部位を含まず創傷を取り巻く皮膚に接着剤を適用した時にのみ創傷を取り巻く皮膚に付着する膜3
を有し、膜3と不織布1との間の結合が緩く容易に壊れるかまたは存在しない。
【0011】
多層ドレッシングは、特に膜3が記述されているとおりであり、かつ不織布1が一般式SiX(式中、X基は同一であるか異なっており、ヒドロキシ、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルであるかまたはアルキル基から誘導されており、酸素原子、硫黄原子またはアミノ基が割り込んでもよい。)のモノマーから加水分解縮合により誘導されるケイ素の一種類以上の部分的にまたは完全に加水分解縮合した化合物を含有する紡糸液から糸を引き出すことにより得られ得る生分解性および/または生体吸収性繊維構造体を含む多層ドレッシングである。
【0012】
先のパラグラフに記述されるように、多層ドレッシングは、X基が同一かつエチルである場合、特に好ましい。
【0013】
加水分解縮合を一種類(または複数種)のアミノ酸および/または一種類(または複数種)のペプチドおよび/または一種類(または複数種)のDNA分子またはフラグメントの存在下で行う、2パラグラフ前に記述された多層ドレッシングが更に好ましい。この場合、式SiXのシランにおけるX基は任意に同一であってもよく、任意にエチルであってもよい。アミノ酸および/またはペプチドおよび/またはDNA/DNAフラグメントの存在は、共有結合かまたは非共有結合のどちらかによる、それらの繊維への混合をもたらす。アミノ酸/ペプチド/DNA/DNAフラグメントを繊維から放出(分解に相当する)する前に多層ドレッシングを創傷に導入する。この場合、一方で放出される材料(アミノ酸/ペプチド/DNA/DNAフラグメント)の量を繊維に組み込まれる材料(アミノ酸/ペプチド/DNA/DNAフラグメント)の量により測定するが、他方で繊維からの放出速度を更に繊維の分解速度により測定する。繊維特性(1)細胞接着(以下(段落0036)において記述される)はアミノ酸/ペプチド/DNAまたはDNAフラグメントを増殖細胞に特定量組み込むことを可能にし、これにより特に更に細胞においてDNA/DNAフラグメントにコードされている情報の直接の影響も確実にされる。この事は部分的または更に全体の代謝能が減少した創傷に特に重要かつ有用であることがわかる。なぜなら、創傷部分への細胞代謝に必要なアミノ酸の外部供給がそれにより確実にされかつそれにより初めて創傷治癒が可能にされるからである。
【0014】
ここで図1〜6を簡単に説明する。これらの図は、
−本発明の多層ドレッシングの斜視図(図1);
−ダイプレートにおける穿孔ダイの略図(図2);
−ゴデットシステムと空調設備との斜視図(図3);
−SEMによる繊維表面への細胞の付着映像(図4)、ここで、図4Aおよび4Bは細胞なしの本発明による使用されるSiX繊維を示し、図4Cおよび4Dは細胞有りのSiX繊維およびその優れた接着および分配を示し、かつ図4Eおよび4Fはモルホロジーがコラーゲンマトリックスの荒い性質の結果としての難点だけが確かめられ得る細胞有りのコラーゲン繊維を示す;
−コラーゲン繊維およびPGA繊維と比較した本発明により使用されるSiX繊維の寸法安定性および耐収縮性、ここで左側の列は、上から下へ、細胞培養開始前のコラーゲン繊維、PGA繊維および本発明によるSiX繊維を示し、右側の列は、上から下へ、細胞培養開始4週間後のコラーゲン繊維、PGA繊維および本発明によるSiX繊維を示す(図5);
−コラーゲン繊維、PGA繊維、本発明によるSiX(SIX)繊維および比較用繊維なしで1、2および4週間培養した後のアラマーブルーアッセイ(Alamar blue assay)による蛍光として測定された細胞(皮膚繊維芽細胞)の代謝活性(図6)
を示す。
【0015】
既に記述したように、湿潤不織布は、本発明により支持構造体および誘導構造体として創傷に導入され、従って組織と直接接触させられる、DE−C19609551に記述されている(モノマー単位に基づく化学式SiO2−xOHまたはポリマーに基づく化学式Si(OH)2x2n−x(X=0〜1)の)シリカゲル繊維または繊維状構造体から製造され得る。この不織布は繊維状不織布と紡糸結合不織布とに区別される。連続単繊維またはフィラメントから製造される紡糸結合不織布が3D用途に関して特に有用であるが、繊維状不織布は2D用途に関して特に好適である。
【0016】
単繊維/フィラメントの製造方法は、特許DE−C19609551から行われ得る。これに関連して、当業者は多くのパラメータ、例えば温度、圧力、各成分のモル比、前駆体の化学的性質、溶媒の化学的性質、または触媒の化学的性質を要すれば特に好適な(高または低生分解性および生体吸収性)繊維および不織布を製造するために変化し得る事を考慮に入れ、知っている。
【0017】
DE−C19609551に記載されている方法を、必要に応じて幾分より詳細にここに再度記述する。この発明によるとゾルゲル法においてTEOS(テトラエトキシシラン)をシランとして使用することが好ましいが、DE−C19609551において記述されている全てのシラン、またはそれらの少なくとも二種類の混合物が同様に使用され得る。好適な縮合度の縮合生成物を、一方(エタノールまたはエタノール/水)で溶媒の役割をし、他方(水)で加水分解縮合の反応物の役割もする含水アルコール溶液(好ましくは本発明によるエタノール/水混合物)の存在下、室温においてまたはわずかに低温(12〜15℃)において製造する。好ましい縮合触媒は有機酸、例えばクエン酸、コハク酸または酒石酸である。これらの酸は反応混合物のpHを約3〜4に調節する。アルカリ性であると粒子が形成されるかまたは反応混合物がゲル化するので、pHは常に7以下でなければならない。
【0018】
縮合生成物を必要に応じて、DE−C19609551に記述されているように濾過および溶媒の除去により好適な粘度に調節する。これを0℃以下の温度において所定の時間(数時間〜数ヶ月)、貯蔵して、いわゆる紡糸ゾル(紡糸液)を得てもよい。なぜならば縮合過程が温度0℃以下において非常にゆっくりしか行われないからである。紡糸ゾルは、好ましくは固形分(固形は(部分)縮合生成物、すなわちオリゴマーまたはオリゴマー構造体を意味する。)約10%を有する(すなわち、溶媒含量が約90%である。)。本発明によると縮合反応の開始から紡糸ゾルの獲得までの時間が2〜3日間であることが同様に好ましい。
【0019】
紡糸ゾルを最終的に、予冷(0℃未満)加圧容器に入れて、そこから加圧下において小さなダイを通して長い非破壊または抗破壊糸の形態にする。この糸は、ダイのサイズに依存して直径約10〜100μmおよび数(例えば3〜5)m長を有する。この糸が巻き上げられる場合、更に伸長し、場合によって(必要に応じて含水アルコール雰囲気中における)巻き上げ中に延伸(ストレッチ)により直径が更に小さくなる。この糸の巻き上げを、紡糸速度100〜1000m/分、好ましくは速度約200m/分にて行う。この方法により紡糸された糸はキャリヤベルトにおけるロール上で混ぜ合わせられ得る。次にキャリヤベルトにおける糸を、縮合反応手順を通じて更に、繊維に残っている多数のOH基(すなわち繊維の生分解性および生体吸収性)を所望の通りに調節するように、速度1〜10cm/分において種々の温度ゾーンを通るキャリヤベルト移動により種々の温度に曝してもよい(本発明によるとキャリヤベルトにおけるゲルフィラメントの形態の糸を即座に−35℃に冷却することが好ましい。)。
【0020】
次に混ぜ合わせ糸(連続繊維)を加圧して(紡糸結合または繊維状)不織布を生じる。加圧を圧力ロールにより行う。この場合、ニードルデバイス(ニードル付圧力ロール)を更にしばしば使用する。ニードルの上下移動が、不織布に更なる強度を与えるミリングプロセスを生じる。ニードル付およびニードルなしのロールの圧力は制約なしに調節され得る。本発明により必要とされる圧力は典型的には1〜10MPaである。次にこの不織布を温度を−35℃〜+65℃の範囲内で変化させて熱処理する。温度−5℃以下が好ましく、かつ温度−20℃以下が特に好ましい。この熱処理は同時に不織布における十分な数のシラノール(すなわち非縮合OH)基との構造的に強い結合繊維を生じる。非縮合OH基の数は(生体)吸収性を制御する。更なる非縮合OH基の存在は更なる(生体)吸収性を意味する。OH基の数は、特に種々の温度におけるホールドアップ時間を変化させることにより調節され得る。本発明により使用される不織布の繊維は、好ましくはSi原子5〜10個あたり約一個のOH基を有する(SiO2−xOH(モノマー単位に関する上記式においてx=0.1〜0.2)を意味する。)。
【0021】
次に(例えば、溶媒から、特にTEOSが初期シランである場合、更に初期シランの残留物から)存在する水およびエタノールを所望の程度に、通常不完全に除去するために不織布を必要に応じて温度50℃以上にする。これは本発明によると(例えば紡糸結合)不織布が十分な残留水分を保持して、室温においてより好ましいSiO(不織布中に非縮合OH基を有さない繊維、すなわちガラス繊維)と比較して熱力学的に好ましくないゲル常態(不織布中に非縮合OH基を有する繊維)を安定化するために望ましいからである。このように製造される紡糸結合不織布は、そのゲル常態を密閉(気密)容器中で数ヶ月にわたって保持する。残留エタノールの存在、更に水の存在も、この関連で特に有用であることが判明する。このことは、おそらく、(飽和)エタノール雰囲気において、縮合がSiOの方向に進まないという事実に由来する。反対に、ある場合には、最終的に繊維の生体吸収性を決定して、これは逆になるであろう。
【0022】
記述された方法は紡糸結合不織布の製造に使用される。しかしながら、繊維状不織布−しばしばニードルパンチ不織布と呼ばれる−も更にこのように製造され得る。この場合、繊維を紡糸プロセス後に断片に切る。これらのステープルファイバーは長さ0.1〜10cmを有する。次にステープルファイバーをキャリヤベルトに落とし、プレスし、ニードルで刺し、かつ上記のように熱処理する。紡糸結合不織布と反対に、繊維状不織布は顕著な3D構造を有さない。それらは従って、しばしば2D用途(上部表皮レベルにおける表面創傷)に使用される。従って、繊維状不織布の使用は本発明によると表面創傷(上部表皮レベル)の処理において特に有用である。繊維状不織布が一般的により強力な強度を繊維面に有し、従って機械的ストレス下の場所、例えば筋肉上の皮膚により適していることが一般的に言われている。
【0023】
上記繊維の製造を例えば、長さ約5m、幅約2mおよび高さ約6mの機械でゾルゲル法において行う。この機械の重さは紡糸タワーの底面領域の圧力850〜1000kg/mをもたらす。しかしながら、この機械の寸法は更に付属品および容積に依存して、ここで言及される大きさから相当異なっていてもよい。製造に関して、この機械は十分な水を供給する冷却水循環、および好ましくは強電流接続を必要とする。
【0024】
現在、繊維を空調管理紡糸システムにおいて本発明により製造する。空調管理紡糸システムは循環空気により動かされる空調管理ユニットにより所定の温度および湿度を有する給気が供給される。温度は10〜40℃の範囲が好ましく、特に約20℃の温度が好ましい。このユニットはWeiss Umwelttechnik GmbHにより供給されるSB22/160/40−UKA空調管理試験キャビネットである。Weissにより循環空気操作に関して改装した。2m長かつ外径680mmを有する断熱紡糸タワー内に、直径300mmを有し、かつ3mm円形穿孔を有する内管を循環空気操作による妨害圧縮を避けるために挿入する。紡糸タワーを上記連続繊維またはフィラメントの巻き取り装置が配置されているボックスに接続する。このボックスのドアガラスは十分な断熱用に窓ガラス(24mm厚)から作られ、1.1のK値を有する。ボックスから出る空気を空調管理ユニットに戻し、そこで処理する。この場合、空調管理用センサーはこのユニットの内部ではなく紡糸シャフト内の外部プローブである。空調管理装置(手動でも作動可能である)の作動に関して、製造者に適当なソフトウェアが備わっているPCを取り付ける。PCC_WIN、バージョン1.05プログラムを用いて温度および湿度のプログラムおよびこのユニットの他の必要なセッティングを前もってセットすることが可能である。紡糸が進行中の場合、プロッターが紡糸シャフトにおける温度および湿度を時間の関数として示し得る。別の温度プローブを外部温度を測定するために取付け、この値をデジタル方式で捕捉する。プロセス制御技術を備える紡糸システムの改良に関して、必須の測定ポイントはアナログの出力を備える。
【0025】
空調管理ユニットと紡糸タワーまたはボックスとの間の給気および排気に関する接続は内径が100mm(外径250mm)の可撓性二重断熱チューブからなる。これらの接続は、それぞれアーマフレックス(Armaflex)で被覆された。紡糸プロセスの間エタノールが必要に応じて紡糸液から除去され、空調管理ユニット、紡糸タワーおよびボックスの密閉循環において蓄積し得るので、このシステムはGfG Gesellschaft fuer Geraetebauからのガス警報装置を備えた。エタノールに関して換算し、MWG 0238EXと呼ばれるセンサーをいずれの場合もモーターの直近におけるボックス、および空調管理循環空気ユニットの試験室に取り付けた。評価ユニット(GMA・100−BG)はチャンバの空気中のエタノール濃度がエタノールの曝露下限値25%に達した時に第一アラームを、および曝露下限値50%に達した時に第二のアラームを与える。アラームは同様にセンサーが壊れるかまたは誤作動する場合に始動する。
【0026】
ベローズゲートバルブおよび三つの接続可能性を有するアダプターフランジを紡糸タワーの上端に取り付け、その上に外側に断熱されているジャケット付紡糸ヘッドを取り付け得る。加圧試験の試験報告によると、紡糸ヘッドは50bar(5×10PA)までの圧力に好適である。内径45mmを有すると、紡糸ヘッドは紡糸液0.33リットルの収容力を有する。
【0027】
ダイプレートを紡糸ヘッドの下側に取付ける。直径89mmのプレートは1.5mm深の凹みを有し、この中にアルミニウムホルダー中のステンレス鋼織物を挿入する。この金網は二層を有し、第一層はメッシュ幅80μmを有する。
【0028】
第二の支持層はメッシュ幅315μmを有する。このネットワークをダイプレート置いた場合に金網のアルミニウムホルダーを0.5mmはみ出るようにデザインする。このネットワークを有するプレートが紡糸ヘッド上に15Nmで圧迫される場合、加圧されたAlリングは紡糸ヘッドとプレートとの間の必要なシールを可能にする。7〜19のオリフィスを有するダイプレートを使用した。オリフィスのアプローチボアは3.0mm幅であり、オリフィス直径は0.15mmである。キャピラリー長0.45mmがL/D比3を生じる。ダイプレート中の穿孔ダイのスケッチを図2に示す。
【0029】
ジャケット付紡糸ヘッドの温度をLAUDAサーモスタット(名称RE 112)を用いて制御し、入口および出口管が断熱のためにArmaflexで被覆されている。
【0030】
覗きガラスを紡糸プロセス中にダイからの糸の出現が観測され得るような方法で紡糸ヘッドと紡糸タワーとの間のアダプターフランジの三つの接続に挿入する。フィラメントライイング装置のデザインにおいて、巻き取りユニットを除いて、ガス運搬ノズルを通る繊維のベイリング(bailing)もまた考慮に入れる。この目的に関して、長さ159mmおよび220mmのツーゴデットシステムをフィラメントのドラフトに関してデザインし、後部ゴデットが前方のゴデットに対して8°傾けられている。モーター−タコメータの組み合わせ(名称S4.3G60)およびFaulhaberからの伝達(名称381,3.71:1)を媒介として運転を行う。第一のゴデットの回転速度は第二のゴデットにより自動的に引き継がれる。
【0031】
第二のゴデットはドラフトコントローラを介して10%速く回転し得る。第三のゴデットは巻き取り機の役割をし、ドラフトユニットから独立して操作され得る。これはFaulhaberからのモーター−タコメータの組み合わせにより同様に動かされるマンドレルからなり、厚紙ロールをマンドレルにとらえ得る。この厚紙ロールはバネ構造物により接続されて環径159mmを与える五つの分離した弓形でできている。リラックス状態において、このロールの直径は159mmから143mmまで下減少する。五つのセグメントをテフロンシートで外側をラミネートする。
【0032】
第三のゴデットはIsel−Automatnionからのチャージユニット(charging unit)上に取り付けられる。名称160MCMのステッピングモーターを使用して、巻き取り装置は500mmの長さに渡ってチャージし得る。このユニットの前進および戻りからのチャージ速度を、2〜16/分の値にして、ゴデットを第二の制御ユニットを用いて手動で作動させ得る。ゴデットモーターおよびチャージステッピングモーター用制御ユニットはコントローラ(IT142−C)、Isel−Automationからのアダプターカードおよび制御カードを有する一軸ステッピングモーターコントロール(UMS6)から構成されている。ゴデットシステムおよび空調管理ユニットの図表示を図3に示す。
【0033】
本発明によると分泌物がない間接癒合または直接癒合による外部から供給される生理溶液、例えば生理食塩水(0.9%)を提供する不織布を創傷に配置することが有用である。尚、以下において用語「不織布」は紡糸結合不織布(spunbonded nonwoven)および繊維状不織布(fibrous nonwoven)と同意語として用いる。治療中創傷における不織布の吸収は不織布を創傷治療中または創傷治療後に除去することを不要にする。繊維厚は、不織布の圧縮過程のための制限なしに調節されてもよく、創傷の性質および深さに従って変えられる。適用の典型的な範囲は、実質的に表皮厚と独立して、深さ1〜20mm、好ましくは2〜12mmの創傷である。
【0034】
加えて、連続繊維および不織布に関する製造パラメータを変更(SiX中のX基の選択、加水分解縮合の反応条件の選択、および従って非重合基の割合の選択など、DE−C19609551参照。)することにより、繊維の吸収時間および従って不織布の吸収時間を調節し創傷の状態に適合させることが可能である。従って、必要に応じて、吸収時間を3〜180日に調節可能である(所望のように間隔を連続的に上方に延ばすことが可能である。)。これに関連して、発明者は、繊維または不織布中のOH基の数を変えることにより、およびOH基を介して繊維(不織布)に化学的にまたは非常に大きく極めて親水性の表面に物理吸着により物理的に結合する形態発生因子(治癒促進剤)を添加することにより不織布の吸収時間を調節し、湿った創傷状態に適合させることが可能であることを発見した。官能性OH基が5〜7個のSi原子置きに存在することが有用であること判明した。本明細書中、官能性OH基は、例えば薬剤、例えば抗生物質、抗真菌物質、ステロイドおよび局所または全身作用を有する一般的薬剤が水素結合または不織布への縮合により結合し、次に創傷中で徐々に放出される(薬剤放出)、OH基の形態の可能なフリーの反応部位を意味する。次に、吸収時間は約30日であり、分解生成物(ナノ粒子としてのSiOまたはSiO(OH))は典型的に直径0.5〜1nmを有する。この構造は、この場合、Si固体状態NMR、特にQ4モード測定により正確に解明される。本発明による好ましい圧力は、典型的には、1〜10bar(10〜10Pa)、好ましくは2〜3barであり、紡糸プロセス中の反応時間は好ましくは20〜60秒であるが、温度(紡糸プロセス中)は好ましくは15〜23℃、特に約20℃に保持する。
【0035】
繊維のジオメトリーのため、実際に創傷治癒(組織誘導)の促進が観測される。これに関連して、二次元または三次元配置の極めて親水性のゲル繊維は、増殖型細胞が接着し、通常配置に適切なコラーゲンマトリックスを形成し得る物理的誘導構造の役割をする。繊維の化学環境がほぼ中性のpH(pH7.0±0.2)を有し、有機分解生成物を形成しないので、異物反応も新しく形成する細胞の炎症反応も起こらない。反対に、創傷治癒は、創傷により分泌される上記形態発生因子(ステロイド、サイトカイン、TNF−α、TGF−β1/2、インターロイキン、例えばIL−1、PDGF、EGF等)の蓄積により、継続して生理学的に促進される。有機分野のゼラチン状かつ粘性マトリックス材(コラーゲン、ヒアルロン酸、フィブリン)と対照的に、無機繊維は既知の感染症(HIV、HBV、BSE、プリオン等)および従来知られていなかった感染症源の潜在的リスクと関係がない。加えて、無機材料の物質パラメータは非常に正確に決定し調節し得る。品質および性質のプロフィールはそれにより有機材料と比較してかなり改良される。
【0036】
本発明により使用される繊維は、少なくとも以下の四種の特徴または性質に関して常套の生分解性および生体吸収性生体材料と明瞭に異なる。本発明により使用される繊維は(1)改良された細胞付着性(細胞と繊維との付着)を可能にし、かつ(2)細胞増殖(細胞の増加)、(3)繊維の形態および安定性の保持および(4)細胞増殖および細胞の代謝の長期維持を可能にする。
【0037】
(1)細胞付着:
繊維の特定のジオメトリーおよびモルホロジーは全ての場合において、常套の生体吸収性材料(例えばポリグリコール酸(PGA)、アルギネートおよびコラーゲン)と比較して細胞の速い初期化および繊維表面への質的に良好な付着を可能にする(この改良を図4に示す)。創傷中に存在する繊維に沿う創傷の全ての領域における細胞の速く、確かな分配/新芽形成がそれにより保証される。細胞の繊維への付着から開始して、新規に形成された細胞の確かな分配は、繊維から遠く離れていても更に好ましい(キーワード:細胞化合物増殖)。本発明により使用される繊維のこの有利な特性を走査電子顕微鏡法(SEM)、組織学的および免疫組織学的研究および共焦点顕微鏡法により印象的に示すことが可能であった。
【0038】
(2)細胞増殖:
繊維の特定のジオメトリーおよびモルホロジーが常套の生分解性/生体吸収性材料と比較して、速い/早い開始、高速化/増加および細胞増殖の長い持続/保持 を可能にする。この特性は、細胞の速く質的に良好な細胞と繊維表面との付着を可能にする繊維の特性の利用に関して(1)の下で詳細に示した利点を助ける。細胞の参照パラメータとしてアラマーブルーアッセイにより測定される細胞の代謝活性は、1、2および4週間の短〜中期間後、常套の材料、例えばPGAおよびコラーゲンと比較して明らかに増加する。PGAまたはコラーゲンまたはSiX(本発明による繊維)マトリックスの細胞の代謝活性比は1:5:11(1週間)、2.5:1:6(2週間)、および1.2:0.8:6(4週間)である。しかしながら最初(24時間後)はこの比はわずか1:4.5:4であった。これは本発明により使用される繊維がその利点を少なくとも1週間、より良好には4週間の長い時間の後にしか示さないことを示している。
【0039】
繊維の形状および安定性の保持:
SEM、細胞学的および巨視的研究の使用により確認可能になったように、本発明による繊維は、常套の生体吸収性材料と比較して三次元形状の長く続く保持および三次元繊維配置の遅延収縮を可能にする(繊維のジオメトリーおよびモルホロジーが実質的に保持される)。常套の材料、例えばPGAおよびコラーゲンはそれぞれ4週間にわたって4および6のファクターにより収縮し(ガラス状になる)、更に場合によっては更にその形状を失うが、本発明による繊維は形状および安定性をこの期間にわたって完全に維持し得る(この現象を図5に示す。)。このことは新しく形成される組織の確かな構造を可能にし、大きな創傷であっても栄養および代謝産物の充分な拡散を保証する。加えて、この目的に関して当業者に既知の寸法安定性が低い材料と異なり、新しい血管の形成を可能にし、促進する。このことは、当業者に既知の材料(例えばPGAまたはコラーゲン)と異なり、大きな創傷であっても新しい血管および組織の形成、および従ってそれらの治癒を本発明による材料により最初に可能にすることを意味する。これに関連して、重要な側面は、本発明による繊維の、特に皮膚の部分における、機械的安定をもたらす寸法安定性である。新しく形成される組織は本発明による多層ドレッシングの使用により十分に栄養を与えられ得る。この供給は拡散だけでなく開孔不織布において新しく形成される血管/組織を通じる栄養の直接輸送によっても行われる。寸法安定性に関連して、(1)および(2)に記述された有益な特性(細胞増殖、細胞付着)はつじつまが合う。以下の分析方法、走査電子顕微鏡法(SEM)、組織学、肉眼検査を使用することによりこれを示すことが見事に可能である。
【0040】
(4)細胞増殖および細胞代謝の長期維持:
繊維の特定のジオメトリーおよびモルホロジーが常套の生体吸収性バイオマテリアルと比較して長く続く細胞増殖の維持を可能にし、従って確かな組織構造/再生を達成する。細胞増殖および細胞の活性に関する参照パラメータとして再びアラマーブルーアッセイにより測定される細胞の代謝活性は、本発明により使用されるSiX繊維で4週間後常套のバイオマテリアル、例えばPGAおよびコラーゲンと比較して明らかに優れている(コラーゲン:PGA:SiX比は1:1.5:12である(図6)。)。
【0041】
上記アラマーブルーアッセイ(alamarBlueTM還元)をここで簡単に説明する。
増殖細胞の内部は非増殖細胞の内部より非常に還元されている。特に、NADPH/NADP、FADH/FAD、FMNH/FMN、およびNADH/NAD比が増殖中大きい。これらの代謝中間体により還元される物質、例えばalamarBlueTMを使用して細胞の増殖を測定および記録し得る。alamarBlueTMの酸化還元電位は+380mV(pH7.0、25℃)である。従って、alamarBlueTMはNADPH(E=−320mV)、FADH(E=−220mV)、FMNH(E=−210mV)、NADH(E=−320mV)およびシトクロム(E=290mV〜+80mV)により還元される。結果としてalamarBlueTMがこれらの物質から電子を受け取り得るので、alamarBlueTMは更にその酸化還元状態に従って色も変える(酸化インディゴブルー非蛍光性状態から還元蛍光性桃色状態へ)。従って増殖度合いを分光分析により、色測定によってでも蛍光測定によってでも追跡し得る(これに関連して、更に米国カリフォルニア州カマリロのBiosource Inc.のインターネットサイト、www.lucernachem.ch/downloads/biosource/alamarbluebooklet.pdf参照。)。
【0042】
不織布は好ましくは、既に上に記述したように、飽和アルコール溶液中で製造される。従って、不織布は無菌である。この不織布のサイズは完全に制限無く選択され、現在の創傷ドレッシングのサイズ、典型的には10×10cm、5×5cmまたは2.5×2.5cmに適合され得る(他の寸法も同様に選択され得る。)。
二つの異なる変更が不織布の好適な貯蔵に関して可能である。不織布を無菌かつ不透性パッケージ(例えばアルミニウム)中に入れて貯蔵するかまたは後の処理に送る。更に アルコールを染み込ませた貯蔵物、例えばコットンを無菌パッケージに導入して飽和アルコール雰囲気を維持することも可能である。これに代わる手段として、不織布を更に直接多層ドレッシング(以下および一例として図1に記述するような構造)に処理、例えば、不透水性または半透性付着膜(例えばポリウレタンまたはポリエステルシート)に接続する。この膜を以下に接着プラスター3または膜3として記述するが、膜/シートはそれ自体接着性である必要は全くない。
【0043】
繊維および不織布を、好ましくは調整および製造期間中好ましくは飽和アルコール雰囲気中に保持してSi含有繊維材料の更なる縮合および、これに関連して繊維の生分解性の損失を防ぐ。これは例えば最終生成物まで飽和アルコール雰囲気中で行われるいわゆるインライン製造プロセスを用いて達成される。これは更に不織布または多層ドレッシングを製造した後に滅菌方法(例えばガンマ線滅菌)が不必要であるという利点を有する。
【0044】
本発明による創傷に適合される典型的な多層ドレッシングを図1に示す。しかしながら、他の多層ドレッシングも更に本発明により考えられ、以下に示される。
いわゆる別の膜2をここに記述される態様において接着膜/シート(他の態様において更に単に不透水性または半透性膜/シートであり得る)を有し、かつこの態様においてはドレッシング手段を示す不織布1(すなわち不織布1と膜/接着プラスター3との間)に適用して、上に存在する接着プラスター3/膜3が離されるかまたは替えられる場合に、不織布1を創傷4から外れないようにする。接着プラスター3/膜3は創傷が本発明による多層ドレッシングの使用により外部環境に対して確実にシールされることを保証する。ある態様において別の膜2は不織布1または膜3/接着プラスター3のどちらかにしっかりと接続されない。それにもかかわらず、膜3/接着プラスター3とのしっかりとした接続が存在し得る。これに関連する重大な要素は、膜3/接着プラスター3が除去される場合に不織布1と新しく形成される組織との一部も除去されないことである。水溶性ポリマー(不織布に付着しないポリマー)、好ましくはカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる膜2の不織布1への取り付けを例えば水素結合により行う。これに関連してポリマーの選択は重大ではない(水溶性コラーゲンまたは繊維ゲルを更にここで用いてもよい)。なぜなら膜2は単に接着プラスター3の接着膜/シートが不織布1に接着しないことを保証するだけだからである。この態様を図1に示す。
【0045】
別の態様において、別の膜2をなしで済ませてもよい。なぜなら使用されるドレッシング手段が創傷に付着せず、別の膜2として振る舞い、後の重複をつくるからである。創傷に付着しないようなドレッシング手段はアルギネート(圧縮形またはタンポンとして)、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームおよびフォームドレッシング、親水コロイド、ハイドロゲルを含む。この場合、膜3を、再度、図1に示されるように(創傷を取り巻く無傷の皮膚上に)接着剤で固定された創傷のシールであり、この接着剤は好ましくはホットメルト法により製造されるポリアクリレート接着剤、ゴム接着剤、または合成ゴム接着剤である。
【0046】
本発明の別の態様において、ドレッシング手段は不織布1に適用され、まず第一に創傷に付着せず(従って再び別の膜2として作用し、後の重複を生じる)、第二に接着特性を有し、従って創傷を外にシールする。そのようなドレッシング手段は例えば「フォームドレッシング」(ハイドロポリマードレッシング、特にポリウレタンフォームドレッシング、例えば3Mからのフォームドレッシング、Calmic Medical Divisionから販売されているDow CorningからのSilastic、Smith and NephewからのAllevyu、Seton Healthcare Group plcからのLyofoam)の群から選択され得る。なぜなら、これらのフォームドレッシングはとりわけ大きい液体貯蔵能を有するからである(Bello(2000年)JAMA 283(6):716−8頁;Degreef(1998年)Dermatologic Clinics 16(2):362−75頁;Findlay(1996年)Am Fam Physician 54(5):1519−28頁;Habif(1996年)Clinical Derm.Mosby、810−13頁;Knapp(1999年)Ped Clin N Am 46(6):1201−13頁;Krasner(1995年)Prevention Management Pressure Ulcers;Lweis(1996年)Med−Surg Nrsing、Mosby、199−200頁;Lueckenotte(1996年)Gerontologic Nurs.、Mosby、800−7頁;PUGP(1995年)Am Fam Physician 51(5):1207−22頁;PUGP(1994年)Pressure Ulcer Treatment、AHCPR 95−0653;Way(1991年)Current Surgical、Lange、95−108頁;または以下のインターネットアドレス:http://med2med.de/pages/produktdetail.cfm?prod=85696&katid=6618およびhttp://wound.smithnephew.com/de/node.asp?NodeId=2692参照。)。しかしながら、本発明の別の態様において、接着プラスター3(この場合接着特性を有する必要はない)を不織布1に直接適用し得る場合、完全に(すっかり)別の膜2なしで済ませることも可能である。なぜなら接着プラスター3の接着膜/シートが専ら創傷を取り囲む皮膚のみに接着し、従って接着プラスター3の不織布1への付着が不可能であることが保証されるからである。これは、例えば被覆プロセス前に専ら創傷を取り巻く皮膚のみを接着剤(例えば、BaiersdorfからのLeukospray(登録商標))で濡らす(従って、この場合、接着プラスター3それ自体は接着特性を有さず、従って、より適切に指定された膜3である。)かまたは接着プラスターが創傷のサイズに適切に選択されるかまたは切られる(この場合、接着プラスター3は創傷と接触しない箇所にのみ接着特性を有する)ことにより達成され得る。
本発明によると接着プラスター3/膜3は少なくとも一種類の水に不溶のポリマー、好ましくはPP、PVCまたはPUの不透水性シートからなる。更に必要に応じて(上記種々の態様を参照)ドレッシング技術において通常使用される接着剤(好ましくはホットメルト法により製造されるポリアクリレート接着剤または合成ゴム接着剤、必要に応じて更にゴム接着剤)(これは好ましくは特に良好な皮膚への適合性を有するのが適切である)を有する。多層ドレッシングの製造中であっても前であってもこの接着剤を水に不溶のシートに適用し得る。しかしながら、上記のように創傷を取り巻く箇所のみに、または膜/シートにユーザーが接着剤を適用またはスプレーすることも更に可能である。
【0047】
不透水性接着プラスター3/不透水性膜3は水分が外に蒸発せず、従って湿った創傷環境が恒久的に保持され、従って不織布の繊維の吸収に貢献することを保証する。繊維の吸収は更に必要に応じて繊維に結合された物質の解放、すなわち、例えばイオン(例えばAgイオン)、薬剤(例えば抗生物質、コルチコイド)または形態発生因子の解放および蓄積をもたらす。創傷治療中の体からも形成され、創傷治療に有益な作用を有し、良好な創傷治療に不可欠であるこれらの形態発生因子(更にモルホゲンと呼ぶ)は、インターロイキン、骨形成タンパク質(BMP)、抗体、TGF−βおよびIGFを含む。
【0048】
別の膜2のポリマーの水溶性は、所定の時間作用させた後にこの膜(存在する場合)を引き離すことを容易にする(水性創傷分泌物が不織布を別の膜2から徐々に引き離し、膜2が離れる時に組織へのダメージが生じないようにする。)。別の膜2として銀ドープポリマーを用いて感染のリスクを減らすことが有用である。
【0049】
浮遊ドレッシングは特に大きい創傷(>10cm)に理にかなっている。なぜならば、場合によっては別の膜2の不織布1に関する粘着力が大きくなりすぎるからである。これらの場合、ハイドロゲルは分離媒体としてできるだけ薄い浮遊層である。
【0050】
本発明による好ましい態様を以下の多層ドレッシングにより示す。
【0051】
1. 創傷との接触用不織布1、および不透水性であり少なくとも一種類の非水溶性ポリマーを含み、接着プラスター3であり、創傷を取り巻く皮膚に付着する接着部分を含む膜3を備え、膜3と不織布1との間の結合が緩やかであり容易に壊れるかまたは存在しない多層ドレッシング。
【0052】
2. 創傷との接触用不織布1、および不透水性であり少なくとも一種類の非水溶性ポリマーを含み、接着剤が創傷を取り巻く皮膚に適用される場合にのみ創傷を取り巻く皮膚に付着する接着部分を含む膜3を備え、膜3と不織布1との間の結合が緩やかであり容易に壊れるかまたは存在しない多層ドレッシング。
【0053】
3. 膜3の少なくとも一種類の非水溶性ポリマーがPP、PVCまたはPUである、請求項1記載の多層ドレッシングまたは態様1または2に記載の多層ドレッシング。
【0054】
4. 膜3が粘着性ハイドロポリマーである、態様3記載の多層ドレッシング。
【0055】
5. 多層ドレッシングが更に少なくとも一種類の水溶性ポリマーを含む別の膜2を膜3と不織布1との間に備える、請求項1記載の多層ドレシングまたは態様1、2または3記載の多層ドレッシング。
【0056】
6. 少なくとも一種類の水溶性ポリマーがCMCである、態様5記載の多層ドレッシング。
【0057】
7. 別の膜2と不織布1との間の結合が緩やかであり容易に壊れる、態様5または6記載の多層ドレッシング。
【0058】
8. 別の膜2と不織布1との間の結合が存在しない、態様5または6記載の多層ドレッシング。
【0059】
9. 別の膜2と膜3との間の結合が(i)存在しないか、(ii)緩く容易に壊れるか、または(iii)安定していて壊れない、態様5、6、7または8記載の多層ドレッシング。
【0060】
10. 多層ドレッシングが更にアルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーを膜3と不織布1との間に備える、請求項1記載の多層ドレッシングまたは態様1〜4記載の多層ドレッシング。
【0061】
11. アルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーと不織布1との間の結合が緩く容易に壊れる、態様10記載の多層ドレッシング。
【0062】
12. アルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーと不織布1との間の結合が存在しない、態様10記載の多層ドレッシング。
【0063】
13. アルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーと膜3との結合が(i)存在しないか、(ii)緩く容易に壊れるか、または(iii)安定していて壊れない、態様10、11または12記載の多層ドレッシング。
【0064】
必要であれば更に(別の)ドレッシング材料(例えば吸収ガーゼ)または他の材料(例えば創傷の当て物および保護用材料)をこの頁および前の頁に記載の発明による多層ドレッシングに種々の態様で適用することも可能である。従って、この開示に関連して、ドレッシング手段(多層ドレッシングの構成要素として)とドレッシング材料とを区別する。
【0065】
不織布を創傷上/中に配置するかまたは多層ドレッシングに加工する前に(すなわち、不織布の製造後、すなわちその貯蔵または輸送中、単純な不織布としてかまたは多層ドレッシングとして)、好ましくは後に創傷と接触する表面上をアルコールが漏れるのを防ぐ不透膜によりシールする。この膜は必要に応じて創傷への適用直前にユーザーにより取り外される。しかしながら、この好ましい態様において、アルコールは上記の通り無菌および繊維の化学的性質を安定するが創傷と接触させる場合に非常に有痛性であることを憶えておかなければならない。従って、別の好ましい態様において媒体として生理食塩水を使用することが可能である。反対に、アルコールを使用前に蒸発させるかまたは除去してもよいが、概して使用を複雑にする。
【0066】
不織布を組み合わせ得る典型的なドレッシング手段は、例えば以下の製品である(商標名):
Dermaplast Film/Active und Hydractive(登録商標);Hydrofilm Plus(登録商標);Hydrocoll(登録商標)(Hartmann);Comfeel(−Plus)(登録商標)、Biatain(登録商標)、Seasorb(登録商標)、Contreet(登録商標)(Coloplast)
Cutinova Hydro(登録商標)、Acticoat(登録商標)、Allevyn(登録商標)(Smith&Nephew)
【0067】
しかしながら、不織布を更に種々の製品と組み合わせてもよいかまたは例えば以下のSmith&Nephewの製品(全て登録商標)と共に市販されてもよい。
ハイドロゲルドレッシング、IntraSite Conformable、IntraSite Gel、水選択性創傷ドレッシング(hydroselective wound dressing)、Cutinova Hydro(例えばハイドロセルフォーム(hydrocellular foam)創傷ドレッシング)、Allevyn製品群(例えばアルギネート、抗菌創傷ドレッシング、酵素デブリードマン、臭気吸収ドレッシング、術後ドレッシング)、Cutplast Steril、Hansapor Steril、OpSite Post−Op、Primapore(例えば特別のドレッシング)、Allevyn tracheostomy、Cavi−Care、EXU−DRY。
【0068】
従って、不織布を例えばポリウレタンまたはPVAスポンジドレッシングと組み合わせて、分泌が多い創傷の吸収性を増加させる。本発明に関して言及された利点は、特に真空システム(例えばV.A.C(登録商標))を使用する場合、例えば特定の創傷の治療および抗生洗浄(antibiotic irrigation)において明らかである。加えて、ハイドロコロイド創傷ドレッシングとの関連で不織布を更に上記被覆材としてのアルギネートタンポンネード(tamponade)と組み合わせてもよい。
【0069】
創傷の位置およびその形状および大きさに従って多層ドレッシングの形状を変えて創傷の解剖学的構造への適合をできるだけ正確に達成してもよい。ドレッシングの、ある可能な形状はバタフライ形(肛門部において使用され得る)である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は本発明の多層ドレッシングの斜視図である。
【図2】図2はダイプレートにおける穿孔ダイの略図である。
【図3】図3はゴデットシステムと空調設備との斜視図である。
【図4】図4はSEMによる繊維表面への細胞の付着映像である。
【図5】図5はコラーゲン繊維およびPGA繊維と比較した本発明により使用されるSiX繊維の寸法安定性および耐収縮性である。
【図6】図6はアラマーブルーアッセイによる蛍光として測定された培養細胞の代謝活性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の構造体:
創傷と接触することを目的とする不織布1、および不透水性であり少なくとも一種類の水に不溶のポリマーを含む膜3
を有する多層ドレッシングであって、該膜3が絆創膏3であり創傷を取り巻く皮膚に付着する接着部位を含むか、または該膜が接着部分を含まず創傷を取り巻く皮膚に接着剤が適用された場合にのみ創傷を取り巻く皮膚に適用され、膜3と不織布1との間の結合が緩く容易に壊れるかまたは存在しない、多層ドレッシング。
【請求項2】
該膜3の少なくとも一種類の水に不溶のポリマーがPP、PVCまたはPUである、請求項1記載の多層ドレッシング。
【請求項3】
該膜3が粘着性ハイドロポリマーである、請求項1または2記載の多層ドレッシング。
【請求項4】
該多層ドレッシングが更に膜3と不織布1との間に、少なくとも一種類の水溶性ポリマーを含む別の膜2を備える、従前請求項のいずれかに記載の多層ドレッシング。
【請求項5】
少なくとも一種類の水溶性ポリマーがCMCである、請求項4記載の多層ドレッシング。
【請求項6】
別の膜2と不織布1との間の結合が緩く容易に壊れる、請求項4または5記載の多層ドレッシング。
【請求項7】
別の膜2と不織布1との間の結合が存在しない、請求項4または5記載の多層ドレッシング。
【請求項8】
別の膜2と膜3との間の結合が、(i)存在しないか、(ii)緩く容易に壊れるか、または(iii)安定で壊れない、請求項4〜7のいずれかに記載の多層ドレッシング。
【請求項9】
該多層ドレッシングが、更に、アルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーを膜3と不織布1との間に備える、請求項1〜3のいずれかに記載の多層ドレッシング。
【請求項10】
アルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーと不織布1との間の結合が緩く容易に壊れる、請求項9記載の多層ドレッシング。
【請求項11】
アルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーと不織布1との間の結合が存在しない、請求項9記載の多層ドレッシング。
【請求項12】
アルギネート、コラーゲンスポンジ、ポリウレタンフォームまたはフォーム層、ハイドロコロイド、ハイドロゲルまたはハイドロポリマーと膜3との間の結合が(i)存在しないか、(ii)緩く容易に壊れるか、または(iii)安定で壊れない、請求項9〜11のいずれかに記載の多層ドレッシング。
【請求項13】
該不織布1が 一般式SiX(式中、X基は同一または異なっており、ヒドロキシ、水素、ハロゲン、アミノ、アルコキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルであるか、またはアルキル基から誘導されており、酸素原子、硫黄原子またはアミノ基が割り込んでいてもよい)のモノマーから加水分解縮合により誘導されるケイ素の一種類以上の部分的にまたは完全に加水分解縮合した化合物を含有する紡糸液から糸を引き出すことにより得られ得る生分解性および/または生体吸収性繊維構造体を含む、従前請求項のいずれかに記載の多層ドレッシング。
【請求項14】
該X基が同一であり、かつエチルである、請求項13記載の多層ドレッシング。
【請求項15】
該加水分解縮合が一種類(または複数種)のアミノ酸および/または一種類(または複数種)のペプチドおよび/または一種類(または複数種)のDNA分子またはフラグメントの存在下において起こる、請求項13または14記載の多層ドレッシング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−526281(P2008−526281A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548686(P2007−548686)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002334
【国際公開番号】WO2006/069567
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504142961)バイエル・イノヴェイション・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Innovation GmbH
【Fターム(参考)】