説明

新鮮ガス供給装置を備えた内燃機関のための排ガスターボチャージャ及び相応のアセンブリ

本発明は、内燃機関(1)、特にディーゼルエンジンのための排ガスターボチャージャ(10)に関し、新鮮ガス供給装置(4)を備えており、排ガスターボチャージャ(10)は少なくとも1つのコンプレッサ(11)と、少なくとも1つの排ガスタービン(12)と、少なくとも1つのコンプレッサ(11)及び少なくとも1つの排ガスタービン(12)を相対回動不能に連結しているターボチャージャシャフト(13)とを有し、慣性モーメントを高めるためのエネルギ貯蔵器(14)を有しており、エネルギ貯蔵器(14)は、ターボチャージャシャフト(13)を介して、少なくとも1つのコンプレッサ(11)及び少なくとも1つの排ガスタービン(12)に相対回動不能に連結されている。内燃機関(1)に新鮮ガスを供給するためのアセンブリは、上記排ガスターボチャージャ(10)及び新鮮ガス供給装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新鮮ガス供給装置を備えた内燃機関のための排ガスターボチャージャに関する。また、本発明は、内燃機関の新鮮ガスを供給するための相応のアセンブリにも関する。
【0002】
内燃機関、例えばディーゼルエンジンにはよく、排ガスターボチャージャが備え付けられている。図1に、排ガスターボチャージャ10の排ガスタービン12に接続されている排ガス管路6を有する、先行技術に基づく内燃機関1を示す。排ガスタービン12は、排ガスターボチャージャ10のコンプレッサ11を駆動する。この構成において、排ガスタービン12及びコンプレッサ11は、ターボチャージャシャフト13を介して連結されている。コンプレッサ11は、新鮮ガス入口2からの吸込み空気を圧縮し、ひいては内燃機関1の吸込み管路5内の吸込み圧を高める。これにより、例えば内燃機関1を備える車両(図示せず)の加速特性が改良される。さらに燃料消費の低減が達成される。
【0003】
内燃機関における排ガスターボチャージャ(ATL)のコンプレッサ羽根車は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金又はチタン若しくはチタン合金から製造される。この根拠は、低い固有の質量という点にあり、また、低い質量慣性モーメントという点にもある。これによりターボチャージャの迅速なパワーアップを促進し、ひいてはいわゆる「ターボラグ」を減じる。このターボラグは、排ガスターボチャージャ10がその完全なブースト圧を形成することができるように、加速工程時に内燃機関1からの排ガス質量流によって、排ガスタービン12により排ガスターボチャージャ10のコンプレッサ11を加速する必要があるので、排ガスターボチャージャを備えた内燃機関において発生する。最大のブースト圧が達成されるまでの時間は、(排ガスタービン12及びコンプレッサ11の)羽根車の質量慣性に決定的に左右される。質量慣性モーメントが小さければ小さいほど、(特にマニュアルトランスミッション及び自動化されたマニュアルトランスミッションにおける)シフトプロセス若しくはギア変更中のターボチャージャの回転数はより減じられる。このことは結果的に、接続後に先ず排ガスターボチャージャ10は、現状のエンジン回転数に対応する必要な回転数にまで再び加速される、ということになる。
【0004】
上記「ターボラグ」を克服するために、解決手段が提案されてきた。この解決手段においては、内燃機関1の吸気需要が高まる場合に、この吸気需要を満たすために、例えば空気コンプレッサ9によって供給される圧縮空気タンク8からの圧縮空気を、制御して内燃機関1の吸込み管路5内に導入する。ターボチャージャ10のコンプレッサ11若しくは流れ方向において下流側で接続されているインタクーラ3と、吸込み管路5との間に配置されている新鮮ガス供給装置4により行われる。
【0005】
国際特許出願公開第2006089779号明細書には、ターボチャージャにより荷重をかけられるピストン型内燃機関に新鮮空気を供給するためのアセンブリと、このアセンブリを運転するための方法が開示されている。
【0006】
したがって本発明の目的は、改良された排ガスターボチャージャを提供することである。
【0007】
上記目的は、請求項1の特徴部を備えた排ガスターボチャージャにより達成される。
【0008】
したがって、内燃機関、特にディーゼルエンジンのための排ガスターボチャージャは、新鮮ガス供給装置を有しており、排ガスターボチャージャは、少なくとも1つのコンプレッサと、少なくとも1つの排ガスタービンと、少なくとも1つのコンプレッサ及び少なくとも1つの排ガスタービンを相対回動不能に連結しているターボチャージャシャフトと、慣性モーメントを高めるためのエネルギ貯蔵器とを有している。このエネルギ貯蔵器はターボチャージャシャフトを介して、少なくとも1つのコンプレッサと、少なくとも1つの排ガスタービンとに相対回動不能に連結されている。
【0009】
本発明の思想の重要な点は、排ガスターボチャージャの質量慣性モーメントを高めるエネルギ貯蔵器を備えた排ガスターボチャージャにある。
【0010】
排ガスターボチャージャ、つまり回転する構成部材の質量慣性を高めることは、いわゆるターボラグの明らかな拡大に繋がるという事実に対し、排ガスターボチャージャ及び新鮮ガス供給装置をアセンブリにして組み合わせることは、現状のエンジン回転数にとって必要な、付属のブースト圧のためのターボチャージャ回転数値まで排ガスターボチャージャを加速させることが必要ないように、ギア変更後に排ガスターボチャージャが、現状のエンジン回転数に同期化されている、という利点をもたらす。
【0011】
他の利点は、排ガスターボチャージャの加速がギア変更後に不要になるので、新鮮ガス供給装置の圧縮空気消費が減じられる点にある。
【0012】
さらにエネルギ貯蔵器はフライホイールマスを有する。このフライホイールマスは、ターボチャージャシャフトに相対回動不能に取り付けられている一種のフライホイールとして形成されていてよい。
【0013】
上記フライホイールマスは、少なくとも部分的にターボチャージャシャフトに組み込まれていてもよく、これにより部品点数は減じられる。
【0014】
さらにエネルギ貯蔵器のフライホイールマスが、少なくとも部分的に少なくとも1つのコンプレッサ及び/又は少なくとも1つの排ガスタービンの回動可能な部材に組み込まれているように分割されているということが可能である。この構成は、例えばコンプレッサ及び/又は排ガスタービンの羽根車が鋼から製造されていることにより可能である。
【0015】
有利な構成において、エネルギ貯蔵器のフライホイールマスは、排ガスターボチャージャの回転数の所定の減速に対して規定されていてよい。これにより新鮮ガス供給装置の圧縮空気消費は減じられる。これと同時に内燃機関の効率は高まる。
【0016】
さらに、エネルギ貯蔵器により、適切な調節を前提とする追加空気に対する高められた需要はないので、圧縮空気消費を減じることにより、追加空気のための圧縮空気装置又は空気乾燥システムのエアコンプレッサ若しくは空気コンプレッサの適切な調節は回避される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】先行技術に基づく、排ガスターボチャージャ及び新鮮ガス供給装置を備えた内燃機関の概略図である。
【図2】本発明に係る排ガスターボチャージャ及び新鮮ガス供給装置の一実施の形態を備えた内燃機関の概略図である。
【図3】a−cはギア段変更と、エンジン回転数及びターボチャージャ回転数との時間的な関係を示す3つのグラフである。
【0018】
以下に、本発明を、添付の図面に記載の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
同一の機能を備えた同一の構成エレメント及び機能ユニットには、同一の符号を図面において用いる。
【0020】
図1については既に記述したので、以下にさらに説明しない。
【0021】
図2には、本発明に係る排ガスターボチャージャ10及び新鮮ガス供給装置4を備えた内燃機関1の実施の形態を概略的に示す。
【0022】
図1との相違点は、図2に示す実施の形態における本発明に係る排ガスターボチャージャ10は、エネルギ貯蔵器14を有する点にある。
【0023】
本発明に係る排ガスターボチャージャ10及び新鮮ガス供給装置4は、内燃機関1に新鮮ガスを供給するためのアセンブリを形成する。
【0024】
エネルギ貯蔵器14はターボチャージャシャフト13に連結されており、この実施の形態においてはフライホイールマスを有する。このフライホイールマスは、排ガスタービン12が内燃機関1の排ガス流により駆動されると、コンプレッサ11及び排ガスタービン12と共に回転する。
【0025】
この実施の形態において、エネルギ貯蔵器は、一種のフライホイールであるフライホイールマスとして、コンプレッサ11及び排ガスタービン12の慣性を高める。ただしフライホイールマスによるこの慣性の高まりは、内燃機関1が付属する車両の始動時、又はシフトプロセスが行われることなく低い回転数から加速する場合の加速工程において、ターボラグの明らかな増大に繋がる。
【0026】
図2に示した、エネルギ貯蔵器14を備えた排ガスターボチャージャ10と、新鮮ガス供給装置4との組合せにおいて、コンプレッサ11及び排ガスタービン12の羽根車の高められた慣性により拡大されるターボラグは、また、新鮮ガス供給装置4による、内燃機関1の吸込み管路5内への圧縮空気の吹込みにより、ほぼ完全に減じられる。
【0027】
エネルギ貯蔵器14は、ターボチャージャシャフト13にフライホイールマスとして相対回動不能に取り付けられていてよい。フライホイールマスが、例えば2つ又は2つより多くの、ターボチャージャシャフト13の適切な位置に配置されているフライホイールディスクに分配されているということも可能である。エネルギ貯蔵器14は、別様に、例えば連結部及び/又は伝動装置を介してターボチャージャシャフト13に連結されていてもよい。当然にターボチャージャシャフト13は、エネルギ貯蔵器がターボチャージャシャフト13に組み込まれているように形成されていてもよい。
【0028】
エネルギ貯蔵器14のフライホイールマスは、例えばギア変更時に排ガスターボチャージャの回転数の降下が、時間単位毎に予め規定された値に達するように選択することができる。こうして、特に(しかし専らではない)自動化されたマニュアルトランスミッションにおいて、シフトプロセス若しくはギア変更後に、ターボチャージャの回転数は、現状のエンジン回転数に同期化することができる。これにより、排ガスターボチャージャ10の不必要なパワーアップは、回避されるか若しくは最小限に抑えられる。
【0029】
このことは、図3a〜cとの関連において説明したい。図3a〜cに、ギア段変更と、エンジン回転数n及びターボチャージャの回転数nとの時間的な関係の3つのグラフを示す。
【0030】
図3aに、時間tに関するギア段Gのグラフを示す。この実施の形態において、所定の時点T1の前に、自動化されたマニュアルトランスミッション(図示せず)のギア段5が調節されている。時点T1において、ギア段5からギア段7へのギア段変更が行われる。時点T2においてはギア段7が占められている。
【0031】
T1からT2へのギア段変更若しくはシフトプロセスの期間は、この実施の形態においては2sである。
【0032】
図3aとの時間的な関係において、図3bは時間に関するエンジン回転数nが、グラフ区分として概略的に記載されているグラフを示す。時点T1において、エンジン回転数nMT1は1500U/minである。ギア変更のための連結解除時に、エンジン回転数nは、エンジン回転数nが時点T2における連結時に、nMT2=1150U/minの値を有するまで低下する。
【0033】
付随するターボチャージャ回転数nを、図3cにおける他のグラフにおいて示す。時点T1において、ターボチャージャ回転数nLT1は150000U/minである。まず、通常のターボチャージャの事例を記載する。この事例においては、ターボチャージャ回転数nはシフトプロセス中に、減少していく排ガス流に基づき、時点T2においてnLT2=20000U/minの値まで下がる。このことは真っ直ぐに引かれた鎖線により示されている。時点T2において存在するエンジン回転数nMT2=1150U/minに必要なブースト圧を達成するために、ターボチャージャはn’=70000U/minの最適なターボチャージャ回転数を有する必要がある。これはこの実施の形態においては該当しないので、ターボチャージャは20000U/minから70000U/minにまで加速する必要がある。
【0034】
本発明に係るエネルギ貯蔵器14を備えたターボチャージャ10の使用時に、ターボチャージャの回転数nは、高められた慣性に基づき、時点T2において「ただ」n’LT2=70000U/minの値にまでしか下がらない。
【0035】
この実施の形態において、フライホイールマスは、排ガスターボチャージャ10が2sのシフトプロセス中に40000U/sだけ制動されるように規定されている。こうして時点T2における2sのシフトプロセス後に、現状のエンジン回転数nMT2に対して同期化されている最適なターボチャージャの回転数n’LT2がもたらされる。次いで排ガスターボチャージャ10の不必要な高加速はもはや必要ではなく、ターボラグはもはや生じない。
【0036】
当然、エネルギ貯蔵器14のフライホイールマスは、内燃機関1のアイドリング回転数からの始動時若しくはシフトプロセスがない低いエンジン回転数nからの加速時にターボラグを高める。しかしこの影響は、新鮮ガス供給装置4により完全に排除される。
【0037】
時点T2の到達時、つまりシフトプロセスが行われた場合、ターボチャージャ回転数nLT2はエンジン回転数nMT2に対して同期化されていて、もはや加速する必要はないので、圧縮空気の吹込み工程時の空気消費は、新鮮ガス供給装置により減じられる。このことから、例えば商用車における空気コンプレッサ9又は空気乾燥システムの必要な適合は回避可能であり、コスト節約がもたらされることになる。
【0038】
上記実施の形態は本発明を限定するものではない。本発明は、添付の特許請求の枠内において変更可能である。
【0039】
例えばエネルギ貯蔵器14は、このエネルギ貯蔵器14のために用意されている排ガスターボチャージャ10に後から、例えば適切な連結部を介して取付け可能であるか、又は排ガスターボチャージャ10内に組み付け可能であるということが例えば可能である。
【0040】
排ガスターボチャージャ10において、コンプレッサ11及び/又は排ガスタービン12の羽根車は、アルミニウム又はチタンより重い材料、例えば鋼から成っていてよい。これによりエネルギ貯蔵器14の付加的なフライホイールマスを縮小することができる。
【0041】
内燃機関1の種々異なる運転状態に慣性モーメントを適合させるために、エネルギ貯蔵器14は、1つ又は複数の制御可能な連結部により排ガスターボチャージャシャフト13に完全な状態で連結可能であるか、又は2つ若しくはそれより多い区分に分けられて連結可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 内燃機関
2 新鮮ガス入口
3 インタクーラ
4 新鮮ガス供給装置
5 吸込み管路
6 排ガス管路
7 排ガス出口
8 圧縮空気タンク
9 空気コンプレッサ
10 排ガスターボチャージャ
11 コンプレッサ
12 排ガスタービン
13 ターボチャージャシャフト
14 エネルギ貯蔵器
DL 圧縮空気管路
G ギア段
エンジン回転数
ターボチャージャ回転数
t,T1,T2 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)、特にディーゼルエンジンのための排ガスターボチャージャ(10)であって、新鮮ガス供給装置(4)を備えており、前記排ガスターボチャージャ(10)は:
少なくとも1つのコンプレッサ(11)と、
少なくとも1つの排ガスタービン(12)と、
前記少なくとも1つのコンプレッサ(11)及び前記少なくとも1つの排ガスタービン(12)を相対回動不能に連結しているターボチャージャシャフト(13)と、
慣性モーメントを高めるためのエネルギ貯蔵器(14)とを有しており、
該エネルギ貯蔵器(14)は、ターボチャージャシャフト(13)を介して、前記少なくとも1つのコンプレッサ(11)及び前記少なくとも1つの排ガスタービン(12)に相対回動不能に連結されていることを特徴とする、排ガスターボチャージャ。
【請求項2】
前記エネルギ貯蔵器(14)はフライホイールマスを有することを特徴とする、請求項1記載の排ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記エネルギ貯蔵器(14)のフライホイールマスは、前記ターボチャージャシャフト(13)に少なくとも部分的に組み込まれていることを特徴とする、請求項2記載の排ガスターボチャージャ。
【請求項4】
前記エネルギ貯蔵器(14)のフライホイールマスは、少なくとも1つのコンプレッサ(11)及び/又は少なくとも1つの排ガスタービン(12)の回動可能な部分に、少なくとも部分的に組み込まれていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載の排ガスターボチャージャ。
【請求項5】
前記エネルギ貯蔵器(14)のフライホイールマスは、前記排ガスターボチャージャ(10)の回転数の所定の減速のために規定されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項記載の排ガスターボチャージャ。
【請求項6】
少なくとも1つの新鮮ガス供給装置(4)と、少なくとも1つの、請求項1から5までのいずれか一項記載の排ガスターボチャージャ(10)とを備えた、内燃機関(1)、特にディーゼルエンジンへ新鮮ガスを供給するためのアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2013−515892(P2013−515892A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545237(P2012−545237)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069824
【国際公開番号】WO2011/076641
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】