方位角計測装置
特定方向に姿勢を一定に保ったまま変化させた場合、誤ったオフセット情報を取得せず、任意の方向に変化させた場合には、相当するオフセット情報を得ることができる方位角計測装置を提供する。地磁気を検出する3軸のセンサからのデータをデータ処理部19で処理する。処理部19では、地磁気の向きが3次元空間で変化した時の3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得し、3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上で、3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法により推定し基準点とし、基準点の座標に基づいて、3軸出力データのオフセット情報を算出し、3軸出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断し、3軸出力データ群が特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、基準点の座標の推定を行わないか、推定された基準点の座標を破棄する処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気検出方式による方位角計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地磁気を検知して方位角を得る方位角計測装置が、携帯電話でのナビゲーション用途などに使われている。このような方位角計測装置においては、磁気センサが検知する地磁気以外の環境磁界に起因する信号出力や、無信号入力時の信号処理回路の出力分であるオフセット分を差し引いて方位角を求めないと、誤った方位を示してしまうことはよく知られている。
【0003】
オフセット分を求める方法としては、特許文献1で開示されるような、方位角計測装置を水平に一周してその最大・最小の点をもとめ、その中点をオフセットの点として求めるものや、特許文献2に開示されるように、方位角計測装置を直交する任意の3点に向けて取得した地磁気情報から方位計を一回転させたときの出力軌跡の方程式を求め、オフセット分を計算する、などの方法が知られている。さらに、方位角計測装置の向きが3次元空間上で任意に変化している時に取得した地磁気データからオフセット情報を算出する方法がある(上述の方法を、特許文献3に見出すことができ、ここでそれを参照することにより本明細書に組込む)。
【0004】
図3は、方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。この方法は、特許文献3に開示されている。
図3において、方位角計測装置1の向きを3次元空間において任意に変化させ、その間にx軸地磁気測定データSx、y軸地磁気測定データSyおよびz軸地磁気測定データSzを所定のデータ取得数Nまで繰り返し取得する。なお、Sx,Sy,Szは以後特に断りの無い限り、方位角計測装置1が備える感度補正計算部によって感度補正された地磁気計測データを指すものとする。
【0005】
そして、繰り返し取得されたSx,Sy,Szの個々のデータをそれぞれP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…とし、図3に示すように、Sx,Sy,Szの値を各軸の方向成分とする3次元空間上に配置する。
【0006】
ここで、Sx,Sy,Szは次式で表すことができる。
Sx=a・Mx+Cx (1)
Sy=a・My+Cy (2)
Sz=a・Mz+Cz (3)
ただし、aはx軸ホール素子HEx、y軸ホール素子HEyおよびz軸ホール素子HEzの感度補正後の感度、Cx,CyおよびCzはそれぞれSx,SyおよびSzのオフセットである。
【0007】
一方、Mx,My,MzとMの関係は次の通りである。
【0008】
【数1】
そこで、
【0009】
【数2】
とおけば、次式が導出される。
(Sx−Cx)2+(Sx−Cx)2+(Sx−Cx)2=r2 (6)
すなわち、(Sx,Sy,Sz)は必ず基準点OP(Cx,Cy,Cz)から一定の距離rを置いて位置することになる。
【0010】
従って、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…のいずれからも等しい距離にある点を計算することによって基準点OPを推定することができ、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得ることができる。
【0011】
基準点OPの推定には種々の計算方法があるが、実際に取得されるSx,Sy,Szは0.01mTオーダーの非常に微弱な地磁気の測定データであり相当のノイズが重畳しているので、データ取得数Nをなるべく多くして統計的手法を用いて計算するのが望ましい。そこで例えば、特許文献3に記載の方法によれば、次式に示すようなCx,Cy,Czに関する連立一次方程式の解を計算することにより計算時間の増大を抑えつつ精度良く基準点OPを推定することができる。
【0012】
【数3】
ただし、
【0013】
【数4】
【0014】
【数5】
【0015】
【数6】
また、rはCx,Cy,Czを用いて以下のように表される。
【0016】
【数7】
図4は、方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。この方法は、特許文献3に開示されている。
【0017】
図4において、方位角測定装置が備えるデータバッファ部は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。(ステップS1)
次に、データバッファ部に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS2)
データバッファ部に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS1に戻る。
【0018】
一方、データバッファ部に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、方位角測定装置1が備えるデータ処理部は、データバッファ部から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…からの距離のばらつきが最小になるような基準点OPの座標Cx,Cy,Czを推定する。(ステップS3)
そして、基準点OPの座標Cx,Cy,Czを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとして方位角計測装置が備えるオフセット情報記憶部に記憶させる。(ステップS4)
【特許文献1】米国特許第1,422,942号明細書
【特許文献2】日本国特開2000−131068号公報
【特許文献3】国際出願第JP03/08293号明細書
【発明の開示】
【0019】
しかしながら、特許文献3に開示されているオフセット情報取得方法では、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、図5に示すように特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は図6に示すように、中心を基準点OP、半径を距離rとする球面Sと、特定の平面Pとの交差によって成す円周C上に分布する。このため、上式(7)の解が計算不能になるか、計算誤差が非常に大きくなり誤った解を計算する欠点があった。
本発明は、以上のような問題を解消した方位角計測装置を提供することを目的とする。
【0020】
このような目的を達成するために、本発明の第1の実施形態の発明は、地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段とを備え、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記基準点推定手段による基準点の座標の推定を行わないか、前記基準点推定手段により推定された基準点の座標を破棄することを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の実施形態の発明は、第1の実施形態において、前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の実施形態の発明は、第1の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の実施形態の発明は、第1の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0024】
本発明の第5の実施形態の発明は、第1乃至4の実施形態のいずれかにおいて、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の題6の実施形態の発明は、地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段と、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し基準平面とする平面推定手段と、前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段とを備え、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記平面推定手段により前記基準平面を推定し、前記仮基準点推定手段により仮基準点を推定し、前記基準点補正手段により基準点を算出し、前記オフセット情報算出手段は前記基準点補正手段によって算出された基準点の座標に基づいて前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出することを特徴とする。
【0026】
本発明の第7の実施形態の発明は、第6の実施形態において、前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0027】
本発明の第8の実施形態の発明は、本発明の第6の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0028】
本発明の第9の実施形態の発明は、第6の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0029】
本発明の第10の実施形態の発明は、第6乃至9の実施形態のいずれかにおいて、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の第11の実施形態の発明は、第6乃至9の実施形態のいずれかにおいて、前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0031】
本発明の第12の実施形態の発明は、第6乃至9の実施形態のいずれかにおいて、前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0032】
本発明の第13の実施形態の発明は、地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が近傍に位置するような平面を推定し基準平面とする平面推定手段と、前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段と、前記基準点補正手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段とを備えることを特徴とする。
【0033】
本発明の第14の実施形態の発明は、第13の実施形態において、前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0034】
本発明の第15の実施形態の発明は、第13の実施形態において、前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合に誤ったオフセット情報を取得してしまう問題を防ぐことができ、さらに、方位角計測装置の向きが任意に変化した場合に相当するオフセット情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る方位角計測装置における磁気センサの取付構造を示す透視図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る方位角計測装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は従来の方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図4】図4は従来の方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は本発明に係る特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保つ磁気センサを示す図である。
【図6】図6は従来の方位角計測装置における課題を説明する図である。
【図7】図7は本発明の一実施形態に係る誤ったオフセット情報の取得を回避する方法の概念を説明する図である。
【図8】図8は本発明の一実施形態に係る誤ったオフセット情報の取得を回避する方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図10】図10は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図11】図11は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図12】図12は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
【図13】図13は本発明の一実施形態に係る方位角計測装置の設置状況を説明する図である。
【図14】図14は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図15】図15は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
【図16】図16は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、方位角計測装置における磁気センサの取付構造を示す透視図である。
図1において、座標軸x,y,zは方位角計測装置1に基づくものであり、x軸は方位角計測装置1の縦方向に、y軸は方位計測装置1の横方向に、そしてz軸は方位角計測装置1の厚さ方向にそれぞれ平行である。方位角計測装置1にはx軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzが設けられ、x軸磁気センサHExは地磁気Mのx方向成分Mxを、y軸磁気センサHEyは地磁気Mのy方向成分Myを、そしてz軸磁気センサHEzは地磁気Mのz方向成分Mzをそれぞれ検出するよう方向を定めて配置される。
【0038】
図2は、以下の各実施形態に共通の方位角計測装置の構成を示すブロック図である。
図2において、方位角計測装置1には、3軸磁気センサ11、磁気センサ駆動電源部12、マルチプレクサ部13、増幅部14、A/D変換部15、感度補正情報記憶部16、感度補正計算部17、データバッファ部18、データ処理部19、オフセット情報記憶部20、オフセット補正部21および方位角計算部22が設けられている。
【0039】
3軸磁気センサ11には、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzが設けられており、それぞれ地磁気Mのx方向成分Mx、y方向成分Myおよびz方向成分Mzを検出したセンサ信号を出力するようになっている。
【0040】
磁気センサ駆動電源部12は、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzの動作に必要な駆動電圧を出力するようになっている。
【0041】
マルチプレクサ部13は、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzを切り換えるためのもので、磁気センサ駆動電源部12の出力電圧をx軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzに時分割で印加し、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzから出力されたセンサ信号を順次出力するようになっている。増幅部14は、マルチプレクサ部13から出力されたセンサ信号を順次増幅する。A/D変換部15は、増幅部14によって増幅されたセンサ信号を順次A/D変換し、x軸地磁気測定データ、y軸地磁気測定データおよびz軸地磁気測定データとして順次出力する。
【0042】
感度補正情報記憶部16は、所定の感度補正情報を記憶する。感度補正計算部17は、感度補正情報記憶部16に記憶されている感度補正情報に基づいて、A/D変換部15から出力された地磁気計測データの感度補正を行う。
【0043】
データバッファ部18は、感度補正計算部17によって感度補正され、オフセット情報算出に用いる地磁気計測データを所定数保持する。
【0044】
符号19はデータ処理部であって、データバッファ部18内のデータに基づいて、以下に詳述する各処理を行う。ここで行われる各処理は、ROM内に格納された所定のプログラム(例えば、図8、12および15に示す如き制御手順を含む)をCPUが実行することによって達成される。RAMはCPUの作業領域を提供する。CPU、ROM、RAMは、符号16〜18および20〜22で示す構成要素が実行する機能も達成するように構成することができる。データ処理部19は、データバッファ部18に保持された地磁気計測データを読み出し、後述するような処理を実行してオフセット情報を算出する。
【0045】
オフセット情報記憶部20は、データ処理部19から出力されたオフセット情報を記憶する。
【0046】
オフセット補正部21は、オフセット情報記憶部20に記憶されているオフセット情報に基づいて、感度補正計算部17によって感度補正された地磁気計測データのオフセットを補正する。
【0047】
方位角計算部22は、オフセット補正部21によってオフセット補正を受けた地磁気計測データに基づいて方位角を算出するようになっている。
【0048】
(第1の実施形態)
図7は、本発明の第1実施形態において誤ったオフセット情報の取得を回避する方法の概念を説明する図である。
図7において、方位角計測装置1の向きを変化させ、その間にx軸地磁気測定データSx、y軸地磁気測定データSyおよびz軸地磁気測定データSzを所定のデータ取得数Nまで繰り返し取得する。方位角計測装置1の向きは任意に変化しているのが望ましいが、図5に示すように特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保ったまま変化する場合もあると仮定する。
【0049】
そして、繰り返し取得されたSx,Sy,Szの個々のデータをそれぞれP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…とし、図7に示すように、Sx,Sy,Szの値を各軸の方向成分とする3次元空間上に配置する。
【0050】
次に、方位角計測装置1の向きが特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保ったまま変化したためにP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する。判断方法としては、上式(7)のCx,Cy,Czに関する連立一次方程式における係数項からなる行列
【0051】
【数8】
が特異行列かそれに近い行列であるか否かを判断すればよく、具体的には上式(12)の行列式の値の絶対値|det(A)|を計算して、零に近ければP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布していると判断する。
【0052】
ここで、式(12)の行列式の値は、数値の丸め時におこる量子化誤差など計算における誤差がない場合は必ず正になる。従って、行列式の値を計算して、零に近いあるいは負であればP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布していると判断しても良い。
【0053】
また、地磁気は、場所によって大きさが変動する。特に人工建造物の内部、周辺では地磁気の変動が大きい。上記の行列式の値は、概ね地磁気の大きさ(=r)の6乗に比例するので、det(A)/r6を計算して、零に近いあるいは負であればP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布していると判断しても良い。
【0054】
また、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する別の方法として、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から平面Pを推定し、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から推定された平面Pまでの距離を計算し、算出された距離が所定値以下であるか否かで判断することもできる。推定する平面Pの式を
aSx+bSy+cSz+d=0 (13)
ただし、a2+b2+c2=1 (14)
とし、上記a、b、cを求める。
【0055】
また、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から推定された平面Pまでの距離εは、例えば次式を用いて算出することができる。
【0056】
【数9】
推定する平面Pの式を
aSx+bSy+cSz+d=0 (A)
とする。上式(A)の各係数は以下のように解く。
【0057】
【数10】
とした時、
【0058】
【数11】
を計算し、最大値を探す。どの式が最大値になるかによって、それぞれ以下の連立一次方程式を解き各係数を算出する。各方程式はa=1、あるいはb=1、あるいはc=1とした時の、平面Pを推定する式であり、Det0,Det1,Det2はそれぞれの係数行列の行列式に対応している。一般的に、行列式の値が大きいほど数値計算の精度が向上するため、行列式の値が最大値をとる方程式を解くことによって係数a,b,cを求めている。
【0059】
Det0が最大の場合(このときa=1)
【0060】
【数12】
Det1が最大の場合(このときb=1)
【0061】
【数13】
Det2が最大の場合(このときc=1)
【0062】
【数14】
さらに、
【0063】
【数15】
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…の各点から推定された平面Pまでの距離diは
により求められる。各点の距離diの正負は、推定された平面Pによって分割された二つの領域のうちどちらの領域に所属するかで異なる。すなわち、これら2つの領域に分割された領域の一方に所属する点から指定された平面Pへの距離diは正となり、他方に所属する点から指定された平面Pへの距離diは負となる。これら各点の距離diの最大値と最小値を求め(図16)、この差が所定値以下であるか否かによって、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているか否か判断してもよい。
【0064】
言い換えると、指定された平面Pによって2つに分割された一方の領域における、指定された平面Pから最も離れた点と該平面Pとの距離の絶対値と、他方の領域における、指定された平面から最も離れた点と該平面Pとの距離の絶対値との和が所定値以下であるか否かによって、上記判断を行ってもよい。
【0065】
そして、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、上式(7)の解の計算を行わないようにする。または上式(7)の解の計算が既に行われていた場合は算出された解を破棄し、オフセット情報の算出も行わないようにする。一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、上式(7)の解を計算して基準点OPを推定し、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得る。
【0066】
これによって、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合に誤ったオフセット情報を取得してしまう問題を防ぐことができる。
【0067】
なお、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、方位角計測装置1の表示部に警報を表示してもよい。これによって、方位角計測装置1の使用者は、Sx,Sy,Szの取得において方位角計測装置1の向きを変化させる操作が不適切であったことを知ることができる。
【0068】
図8は、本発明の第1実施形態において誤ったオフセット情報の取得を回避する方法を示すフローチャートである。
図8において、データバッファ部18は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。なお、ノイズの混入等により取得した地磁気測定データSx,Sy,Szが不適切と見なされる場合は、取得した地磁気測定データSx,Sy,Szをバッファに入れなくてもよい。(ステップS11)
次に、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS12)
データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS11に戻る。
【0069】
一方、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、データ処理部19は、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、読み出した個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する。なお、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出した後は、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szのうち最も古いデータのみをクリアしてもよいし、読み出した数だけクリアしてもよい。(ステップS13)
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断される場合は、基準点OPの座標Cx,Cy,Czの推定を中止する。なお、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS14)
一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…からの距離のばらつきが最小になるような基準点OPの座標Cx,Cy,Czを推定する。(ステップS15)
そして、基準点OPの座標Cx,Cy,Czを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czが不適切と見なされる場合は、推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS16)
尚、ステップ15に相当するステップをステップ13の前に行いまず基準点OPの座標を求めてから平面Pの近傍に分布しているか否か判定しても差し支えない。
【0070】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
第1実施形態と重複する部分は説明を省略する。
【0071】
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、特定の平面Pの推定を行う。平面Pの推定方法は第1実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
【0072】
次にP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような位置を統計的手法によって算出し仮基準点OCとする。
【0073】
次に仮基準点OCを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzをそれぞれオフセットCx,CyCzに相当する値として得る。補正方法としては、図10に示すように仮基準点OCを通って平面Pに垂直な直線L上で、以前に推定した基準点OQに最も近い点をORとするのが適当である。
【0074】
また図11に示すように、平面P上に投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から仮基準点OCまでの距離の平均値rCを算出して平面P上における中心OC、半径rCの円周Cを定義し、円周Cからの距離が所定値Mに等しくなる位置OR1,OR2のいずれかを選択して基準点ORとしてもよい。選択方法としては、例えば、以前に推定した基準点OQに近い方を選ぶ方法がある。なおMの値としては地磁気全磁力に相当する値を設定するのが適当である。
【0075】
一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、上式(7)の解を計算して基準点OPを推定し、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得る。
【0076】
これによって、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合でも、方位角計測装置の向きが任意に変化した場合に相当するオフセット情報を得ることができる。
【0077】
なお、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、方位角計測装置1の表示部に警報を表示してもよい。これによって、方位角計測装置1の使用者は、Sx,Sy,Szの取得において方位角計測装置1の向きを変化させる操作が不適切であったことを知ることができる。
【0078】
図12は、本発明の第2実施形態においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
図12において、データバッファ部18は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。なお、ノイズの混入等により取得した地磁気測定データSx,Sy,Szが不適切と見なされる場合は、取得した地磁気測定データSx,Sy,Szをバッファに入れなくてもよい。(ステップS21)
次に、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS22)
データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS21に戻る。
【0079】
一方、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、データ処理部19は、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、読み出した個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する。なお、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出した後は、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szのうち最も古いデータのみをクリアしてもよいし、読み出した数だけクリアしてもよい。(ステップS23)
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断される場合は、特定の平面Pの推定を行う。(ステップS24)
次に、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを推定する。(ステップS25)
次に、仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzを算出する(ステップS26)
そして、基準点ORの座標ORx,ORy,ORzを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzが不適切と見なされる場合は、推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS27)
一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…からの距離のばらつきが最小になるような基準点OPの座標Cx,Cy,Czを推定する。(ステップS28)
そして、基準点OPの座標Cx,Cy,Czを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czが不適切と見なされる場合は、推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS29)
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3実施形態において方位角計測装置の設置状況を説明する図である。
図13において、方位角計測装置1は自動車22に設置され、垂直方向軸Vに対して傾斜角αで固定される。方位角計測装置1の向きの変化は自動車22の移動によって成される。このため垂直方向軸Vに対する方位角計測装置1の姿勢は傾斜角αで一定に保たれる。
【0080】
図14は、本発明の第3実施形態においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
図14において、方位角計測装置1の向きを変化させ、その間にx軸地磁気測定データSx、y軸地磁気測定データSyおよびz軸地磁気測定データSzを所定のデータ取得数Nまで繰り返し取得する。
【0081】
そして、繰り返し取得されたSx,Sy,Szの個々のデータをそれぞれP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…とし、図14に示すように、Sx,Sy,Szの値を各軸の方向成分とする3次元空間上に配置する。
【0082】
このとき、方位角計測装置1の姿勢は垂直方向軸Vに対して一定に保たれているため、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布する。このため上式(7)の解を計算して基準点OPを推定し、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得ることは不可能である。そこで、以下の手順によりオフセットCx,CyCzに相当する値を得る。
【0083】
まず、特定の平面Pの推定を行う。平面Pの推定方法は第1実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
次にP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような位置を統計的手法によって算出し仮基準点OCとする。具体的な方法は第2実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
【0084】
次に仮基準点OCを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzをそれぞれオフセットCx,CyCzに相当する値として得る。具体的な補正方法は第2実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
【0085】
これによって、方位角計測装置が自動車等の移動物体に設置され、方位角計測装置の向きが特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化するような場合でも、方位角計測装置の向きが任意に変化した場合に相当するオフセット情報を得ることができる。
【0086】
尚、自動車等の移動体に設置され、設置姿勢が概略一定を保っている場合は、補正基準点ORを求めないで、仮基準点OCの座標をそのままオフセットCx,Cy,Czにしても良い。何故なら、仮基準点OCは特定の平面Pの法線方向に大きな誤差を含んでいる時があるが、この誤差は方位角の計算精度には影響しない。
【0087】
図15は、本発明の第3実施形態においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
図15において、データバッファ部18は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。なお、ノイズの混入等により取得した地磁気測定データSx,Sy,Szが不適切と見なされる場合は、取得した地磁気測定データSx,Sy,Szをバッファに入れなくてもよい。(ステップS31)
次に、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS32)
データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS31に戻る。
【0088】
一方、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、データ処理部19は、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、読み出した個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が近傍に分布する特定の平面Pの推定を行う。なお、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出した後は、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szのうち最も古いデータのみをクリアしてもよいし、読み出した数だけクリアしてもよい。(ステップS33)
次に、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを推定する。(ステップS34)
次に、仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzを算出する(ステップS35)
そして、基準点ORの座標ORx,ORy,ORzを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzが不適切と見なされる場合は、推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS36)
尚、自動車等の移動体に設置され、設置姿勢が概略一定を保っている場合は、補正基準点ORを求めないで、仮基準点OCの座標をそのままオフセットとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
地磁気検出方式による方位角計測装置では、磁気センサの周辺にスピーカなどの着磁された部品が配置された場合、着磁された部品から漏れる磁場によって磁気センサの出力にオフセットが発生する。従って、オフセットによって方位角の計算に誤差が生じることを防ぐために、オフセットのキャリブレーションを行うことが必要である。
【0090】
本発明は、このキャリブレーションを行うために必要なオフセット情報の取得を、様々な状況において簡単に行うことのできる方位角計測装置を提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気検出方式による方位角計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地磁気を検知して方位角を得る方位角計測装置が、携帯電話でのナビゲーション用途などに使われている。このような方位角計測装置においては、磁気センサが検知する地磁気以外の環境磁界に起因する信号出力や、無信号入力時の信号処理回路の出力分であるオフセット分を差し引いて方位角を求めないと、誤った方位を示してしまうことはよく知られている。
【0003】
オフセット分を求める方法としては、特許文献1で開示されるような、方位角計測装置を水平に一周してその最大・最小の点をもとめ、その中点をオフセットの点として求めるものや、特許文献2に開示されるように、方位角計測装置を直交する任意の3点に向けて取得した地磁気情報から方位計を一回転させたときの出力軌跡の方程式を求め、オフセット分を計算する、などの方法が知られている。さらに、方位角計測装置の向きが3次元空間上で任意に変化している時に取得した地磁気データからオフセット情報を算出する方法がある(上述の方法を、特許文献3に見出すことができ、ここでそれを参照することにより本明細書に組込む)。
【0004】
図3は、方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。この方法は、特許文献3に開示されている。
図3において、方位角計測装置1の向きを3次元空間において任意に変化させ、その間にx軸地磁気測定データSx、y軸地磁気測定データSyおよびz軸地磁気測定データSzを所定のデータ取得数Nまで繰り返し取得する。なお、Sx,Sy,Szは以後特に断りの無い限り、方位角計測装置1が備える感度補正計算部によって感度補正された地磁気計測データを指すものとする。
【0005】
そして、繰り返し取得されたSx,Sy,Szの個々のデータをそれぞれP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…とし、図3に示すように、Sx,Sy,Szの値を各軸の方向成分とする3次元空間上に配置する。
【0006】
ここで、Sx,Sy,Szは次式で表すことができる。
Sx=a・Mx+Cx (1)
Sy=a・My+Cy (2)
Sz=a・Mz+Cz (3)
ただし、aはx軸ホール素子HEx、y軸ホール素子HEyおよびz軸ホール素子HEzの感度補正後の感度、Cx,CyおよびCzはそれぞれSx,SyおよびSzのオフセットである。
【0007】
一方、Mx,My,MzとMの関係は次の通りである。
【0008】
【数1】
そこで、
【0009】
【数2】
とおけば、次式が導出される。
(Sx−Cx)2+(Sx−Cx)2+(Sx−Cx)2=r2 (6)
すなわち、(Sx,Sy,Sz)は必ず基準点OP(Cx,Cy,Cz)から一定の距離rを置いて位置することになる。
【0010】
従って、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…のいずれからも等しい距離にある点を計算することによって基準点OPを推定することができ、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得ることができる。
【0011】
基準点OPの推定には種々の計算方法があるが、実際に取得されるSx,Sy,Szは0.01mTオーダーの非常に微弱な地磁気の測定データであり相当のノイズが重畳しているので、データ取得数Nをなるべく多くして統計的手法を用いて計算するのが望ましい。そこで例えば、特許文献3に記載の方法によれば、次式に示すようなCx,Cy,Czに関する連立一次方程式の解を計算することにより計算時間の増大を抑えつつ精度良く基準点OPを推定することができる。
【0012】
【数3】
ただし、
【0013】
【数4】
【0014】
【数5】
【0015】
【数6】
また、rはCx,Cy,Czを用いて以下のように表される。
【0016】
【数7】
図4は、方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。この方法は、特許文献3に開示されている。
【0017】
図4において、方位角測定装置が備えるデータバッファ部は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。(ステップS1)
次に、データバッファ部に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS2)
データバッファ部に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS1に戻る。
【0018】
一方、データバッファ部に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、方位角測定装置1が備えるデータ処理部は、データバッファ部から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…からの距離のばらつきが最小になるような基準点OPの座標Cx,Cy,Czを推定する。(ステップS3)
そして、基準点OPの座標Cx,Cy,Czを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとして方位角計測装置が備えるオフセット情報記憶部に記憶させる。(ステップS4)
【特許文献1】米国特許第1,422,942号明細書
【特許文献2】日本国特開2000−131068号公報
【特許文献3】国際出願第JP03/08293号明細書
【発明の開示】
【0019】
しかしながら、特許文献3に開示されているオフセット情報取得方法では、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、図5に示すように特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は図6に示すように、中心を基準点OP、半径を距離rとする球面Sと、特定の平面Pとの交差によって成す円周C上に分布する。このため、上式(7)の解が計算不能になるか、計算誤差が非常に大きくなり誤った解を計算する欠点があった。
本発明は、以上のような問題を解消した方位角計測装置を提供することを目的とする。
【0020】
このような目的を達成するために、本発明の第1の実施形態の発明は、地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段とを備え、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記基準点推定手段による基準点の座標の推定を行わないか、前記基準点推定手段により推定された基準点の座標を破棄することを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の実施形態の発明は、第1の実施形態において、前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の実施形態の発明は、第1の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の実施形態の発明は、第1の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0024】
本発明の第5の実施形態の発明は、第1乃至4の実施形態のいずれかにおいて、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の題6の実施形態の発明は、地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段と、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し基準平面とする平面推定手段と、前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段とを備え、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記平面推定手段により前記基準平面を推定し、前記仮基準点推定手段により仮基準点を推定し、前記基準点補正手段により基準点を算出し、前記オフセット情報算出手段は前記基準点補正手段によって算出された基準点の座標に基づいて前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出することを特徴とする。
【0026】
本発明の第7の実施形態の発明は、第6の実施形態において、前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0027】
本発明の第8の実施形態の発明は、本発明の第6の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0028】
本発明の第9の実施形態の発明は、第6の実施形態において、前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする。
【0029】
本発明の第10の実施形態の発明は、第6乃至9の実施形態のいずれかにおいて、前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の第11の実施形態の発明は、第6乃至9の実施形態のいずれかにおいて、前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0031】
本発明の第12の実施形態の発明は、第6乃至9の実施形態のいずれかにおいて、前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0032】
本発明の第13の実施形態の発明は、地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が近傍に位置するような平面を推定し基準平面とする平面推定手段と、前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段と、前記基準点補正手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段とを備えることを特徴とする。
【0033】
本発明の第14の実施形態の発明は、第13の実施形態において、前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0034】
本発明の第15の実施形態の発明は、第13の実施形態において、前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合に誤ったオフセット情報を取得してしまう問題を防ぐことができ、さらに、方位角計測装置の向きが任意に変化した場合に相当するオフセット情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る方位角計測装置における磁気センサの取付構造を示す透視図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る方位角計測装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は従来の方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図4】図4は従来の方位角計測装置においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は本発明に係る特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保つ磁気センサを示す図である。
【図6】図6は従来の方位角計測装置における課題を説明する図である。
【図7】図7は本発明の一実施形態に係る誤ったオフセット情報の取得を回避する方法の概念を説明する図である。
【図8】図8は本発明の一実施形態に係る誤ったオフセット情報の取得を回避する方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図10】図10は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図11】図11は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図12】図12は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
【図13】図13は本発明の一実施形態に係る方位角計測装置の設置状況を説明する図である。
【図14】図14は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【図15】図15は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
【図16】図16は本発明の一実施形態に係るオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、方位角計測装置における磁気センサの取付構造を示す透視図である。
図1において、座標軸x,y,zは方位角計測装置1に基づくものであり、x軸は方位角計測装置1の縦方向に、y軸は方位計測装置1の横方向に、そしてz軸は方位角計測装置1の厚さ方向にそれぞれ平行である。方位角計測装置1にはx軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzが設けられ、x軸磁気センサHExは地磁気Mのx方向成分Mxを、y軸磁気センサHEyは地磁気Mのy方向成分Myを、そしてz軸磁気センサHEzは地磁気Mのz方向成分Mzをそれぞれ検出するよう方向を定めて配置される。
【0038】
図2は、以下の各実施形態に共通の方位角計測装置の構成を示すブロック図である。
図2において、方位角計測装置1には、3軸磁気センサ11、磁気センサ駆動電源部12、マルチプレクサ部13、増幅部14、A/D変換部15、感度補正情報記憶部16、感度補正計算部17、データバッファ部18、データ処理部19、オフセット情報記憶部20、オフセット補正部21および方位角計算部22が設けられている。
【0039】
3軸磁気センサ11には、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzが設けられており、それぞれ地磁気Mのx方向成分Mx、y方向成分Myおよびz方向成分Mzを検出したセンサ信号を出力するようになっている。
【0040】
磁気センサ駆動電源部12は、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzの動作に必要な駆動電圧を出力するようになっている。
【0041】
マルチプレクサ部13は、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzを切り換えるためのもので、磁気センサ駆動電源部12の出力電圧をx軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzに時分割で印加し、x軸磁気センサHEx、y軸磁気センサHEyおよびz軸磁気センサHEzから出力されたセンサ信号を順次出力するようになっている。増幅部14は、マルチプレクサ部13から出力されたセンサ信号を順次増幅する。A/D変換部15は、増幅部14によって増幅されたセンサ信号を順次A/D変換し、x軸地磁気測定データ、y軸地磁気測定データおよびz軸地磁気測定データとして順次出力する。
【0042】
感度補正情報記憶部16は、所定の感度補正情報を記憶する。感度補正計算部17は、感度補正情報記憶部16に記憶されている感度補正情報に基づいて、A/D変換部15から出力された地磁気計測データの感度補正を行う。
【0043】
データバッファ部18は、感度補正計算部17によって感度補正され、オフセット情報算出に用いる地磁気計測データを所定数保持する。
【0044】
符号19はデータ処理部であって、データバッファ部18内のデータに基づいて、以下に詳述する各処理を行う。ここで行われる各処理は、ROM内に格納された所定のプログラム(例えば、図8、12および15に示す如き制御手順を含む)をCPUが実行することによって達成される。RAMはCPUの作業領域を提供する。CPU、ROM、RAMは、符号16〜18および20〜22で示す構成要素が実行する機能も達成するように構成することができる。データ処理部19は、データバッファ部18に保持された地磁気計測データを読み出し、後述するような処理を実行してオフセット情報を算出する。
【0045】
オフセット情報記憶部20は、データ処理部19から出力されたオフセット情報を記憶する。
【0046】
オフセット補正部21は、オフセット情報記憶部20に記憶されているオフセット情報に基づいて、感度補正計算部17によって感度補正された地磁気計測データのオフセットを補正する。
【0047】
方位角計算部22は、オフセット補正部21によってオフセット補正を受けた地磁気計測データに基づいて方位角を算出するようになっている。
【0048】
(第1の実施形態)
図7は、本発明の第1実施形態において誤ったオフセット情報の取得を回避する方法の概念を説明する図である。
図7において、方位角計測装置1の向きを変化させ、その間にx軸地磁気測定データSx、y軸地磁気測定データSyおよびz軸地磁気測定データSzを所定のデータ取得数Nまで繰り返し取得する。方位角計測装置1の向きは任意に変化しているのが望ましいが、図5に示すように特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保ったまま変化する場合もあると仮定する。
【0049】
そして、繰り返し取得されたSx,Sy,Szの個々のデータをそれぞれP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…とし、図7に示すように、Sx,Sy,Szの値を各軸の方向成分とする3次元空間上に配置する。
【0050】
次に、方位角計測装置1の向きが特定方向の軸Wに対する姿勢を一定に保ったまま変化したためにP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する。判断方法としては、上式(7)のCx,Cy,Czに関する連立一次方程式における係数項からなる行列
【0051】
【数8】
が特異行列かそれに近い行列であるか否かを判断すればよく、具体的には上式(12)の行列式の値の絶対値|det(A)|を計算して、零に近ければP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布していると判断する。
【0052】
ここで、式(12)の行列式の値は、数値の丸め時におこる量子化誤差など計算における誤差がない場合は必ず正になる。従って、行列式の値を計算して、零に近いあるいは負であればP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布していると判断しても良い。
【0053】
また、地磁気は、場所によって大きさが変動する。特に人工建造物の内部、周辺では地磁気の変動が大きい。上記の行列式の値は、概ね地磁気の大きさ(=r)の6乗に比例するので、det(A)/r6を計算して、零に近いあるいは負であればP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布していると判断しても良い。
【0054】
また、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する別の方法として、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から平面Pを推定し、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から推定された平面Pまでの距離を計算し、算出された距離が所定値以下であるか否かで判断することもできる。推定する平面Pの式を
aSx+bSy+cSz+d=0 (13)
ただし、a2+b2+c2=1 (14)
とし、上記a、b、cを求める。
【0055】
また、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から推定された平面Pまでの距離εは、例えば次式を用いて算出することができる。
【0056】
【数9】
推定する平面Pの式を
aSx+bSy+cSz+d=0 (A)
とする。上式(A)の各係数は以下のように解く。
【0057】
【数10】
とした時、
【0058】
【数11】
を計算し、最大値を探す。どの式が最大値になるかによって、それぞれ以下の連立一次方程式を解き各係数を算出する。各方程式はa=1、あるいはb=1、あるいはc=1とした時の、平面Pを推定する式であり、Det0,Det1,Det2はそれぞれの係数行列の行列式に対応している。一般的に、行列式の値が大きいほど数値計算の精度が向上するため、行列式の値が最大値をとる方程式を解くことによって係数a,b,cを求めている。
【0059】
Det0が最大の場合(このときa=1)
【0060】
【数12】
Det1が最大の場合(このときb=1)
【0061】
【数13】
Det2が最大の場合(このときc=1)
【0062】
【数14】
さらに、
【0063】
【数15】
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…の各点から推定された平面Pまでの距離diは
により求められる。各点の距離diの正負は、推定された平面Pによって分割された二つの領域のうちどちらの領域に所属するかで異なる。すなわち、これら2つの領域に分割された領域の一方に所属する点から指定された平面Pへの距離diは正となり、他方に所属する点から指定された平面Pへの距離diは負となる。これら各点の距離diの最大値と最小値を求め(図16)、この差が所定値以下であるか否かによって、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているか否か判断してもよい。
【0064】
言い換えると、指定された平面Pによって2つに分割された一方の領域における、指定された平面Pから最も離れた点と該平面Pとの距離の絶対値と、他方の領域における、指定された平面から最も離れた点と該平面Pとの距離の絶対値との和が所定値以下であるか否かによって、上記判断を行ってもよい。
【0065】
そして、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、上式(7)の解の計算を行わないようにする。または上式(7)の解の計算が既に行われていた場合は算出された解を破棄し、オフセット情報の算出も行わないようにする。一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、上式(7)の解を計算して基準点OPを推定し、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得る。
【0066】
これによって、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合に誤ったオフセット情報を取得してしまう問題を防ぐことができる。
【0067】
なお、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、方位角計測装置1の表示部に警報を表示してもよい。これによって、方位角計測装置1の使用者は、Sx,Sy,Szの取得において方位角計測装置1の向きを変化させる操作が不適切であったことを知ることができる。
【0068】
図8は、本発明の第1実施形態において誤ったオフセット情報の取得を回避する方法を示すフローチャートである。
図8において、データバッファ部18は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。なお、ノイズの混入等により取得した地磁気測定データSx,Sy,Szが不適切と見なされる場合は、取得した地磁気測定データSx,Sy,Szをバッファに入れなくてもよい。(ステップS11)
次に、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS12)
データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS11に戻る。
【0069】
一方、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、データ処理部19は、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、読み出した個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する。なお、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出した後は、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szのうち最も古いデータのみをクリアしてもよいし、読み出した数だけクリアしてもよい。(ステップS13)
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断される場合は、基準点OPの座標Cx,Cy,Czの推定を中止する。なお、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS14)
一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…からの距離のばらつきが最小になるような基準点OPの座標Cx,Cy,Czを推定する。(ステップS15)
そして、基準点OPの座標Cx,Cy,Czを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czが不適切と見なされる場合は、推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS16)
尚、ステップ15に相当するステップをステップ13の前に行いまず基準点OPの座標を求めてから平面Pの近傍に分布しているか否か判定しても差し支えない。
【0070】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
第1実施形態と重複する部分は説明を省略する。
【0071】
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、特定の平面Pの推定を行う。平面Pの推定方法は第1実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
【0072】
次にP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような位置を統計的手法によって算出し仮基準点OCとする。
【0073】
次に仮基準点OCを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzをそれぞれオフセットCx,CyCzに相当する値として得る。補正方法としては、図10に示すように仮基準点OCを通って平面Pに垂直な直線L上で、以前に推定した基準点OQに最も近い点をORとするのが適当である。
【0074】
また図11に示すように、平面P上に投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…から仮基準点OCまでの距離の平均値rCを算出して平面P上における中心OC、半径rCの円周Cを定義し、円周Cからの距離が所定値Mに等しくなる位置OR1,OR2のいずれかを選択して基準点ORとしてもよい。選択方法としては、例えば、以前に推定した基準点OQに近い方を選ぶ方法がある。なおMの値としては地磁気全磁力に相当する値を設定するのが適当である。
【0075】
一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、上式(7)の解を計算して基準点OPを推定し、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得る。
【0076】
これによって、データ取得期間中に方位角計測装置の向きが任意に変化せず、特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化した場合でも、方位角計測装置の向きが任意に変化した場合に相当するオフセット情報を得ることができる。
【0077】
なお、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断された場合は、方位角計測装置1の表示部に警報を表示してもよい。これによって、方位角計測装置1の使用者は、Sx,Sy,Szの取得において方位角計測装置1の向きを変化させる操作が不適切であったことを知ることができる。
【0078】
図12は、本発明の第2実施形態においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
図12において、データバッファ部18は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。なお、ノイズの混入等により取得した地磁気測定データSx,Sy,Szが不適切と見なされる場合は、取得した地磁気測定データSx,Sy,Szをバッファに入れなくてもよい。(ステップS21)
次に、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS22)
データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS21に戻る。
【0079】
一方、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、データ処理部19は、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、読み出した個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布しているかどうか判断する。なお、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出した後は、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szのうち最も古いデータのみをクリアしてもよいし、読み出した数だけクリアしてもよい。(ステップS23)
P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断される場合は、特定の平面Pの推定を行う。(ステップS24)
次に、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを推定する。(ステップS25)
次に、仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzを算出する(ステップS26)
そして、基準点ORの座標ORx,ORy,ORzを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzが不適切と見なされる場合は、推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS27)
一方、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が特定の平面Pの近傍に分布していると判断されない場合は、個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…からの距離のばらつきが最小になるような基準点OPの座標Cx,Cy,Czを推定する。(ステップS28)
そして、基準点OPの座標Cx,Cy,Czを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czが不適切と見なされる場合は、推定した基準点OPの座標Cx,Cy,Czをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS29)
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3実施形態において方位角計測装置の設置状況を説明する図である。
図13において、方位角計測装置1は自動車22に設置され、垂直方向軸Vに対して傾斜角αで固定される。方位角計測装置1の向きの変化は自動車22の移動によって成される。このため垂直方向軸Vに対する方位角計測装置1の姿勢は傾斜角αで一定に保たれる。
【0080】
図14は、本発明の第3実施形態においてオフセット情報を取得する方法の概念を説明する図である。
図14において、方位角計測装置1の向きを変化させ、その間にx軸地磁気測定データSx、y軸地磁気測定データSyおよびz軸地磁気測定データSzを所定のデータ取得数Nまで繰り返し取得する。
【0081】
そして、繰り返し取得されたSx,Sy,Szの個々のデータをそれぞれP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…とし、図14に示すように、Sx,Sy,Szの値を各軸の方向成分とする3次元空間上に配置する。
【0082】
このとき、方位角計測装置1の姿勢は垂直方向軸Vに対して一定に保たれているため、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…は特定の平面Pの近傍に分布する。このため上式(7)の解を計算して基準点OPを推定し、その座標値からオフセットCx,CyおよびCzを得ることは不可能である。そこで、以下の手順によりオフセットCx,CyCzに相当する値を得る。
【0083】
まず、特定の平面Pの推定を行う。平面Pの推定方法は第1実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
次にP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような位置を統計的手法によって算出し仮基準点OCとする。具体的な方法は第2実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
【0084】
次に仮基準点OCを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzをそれぞれオフセットCx,CyCzに相当する値として得る。具体的な補正方法は第2実施形態において記載されている方法と同様であるので説明を省略する。
【0085】
これによって、方位角計測装置が自動車等の移動物体に設置され、方位角計測装置の向きが特定方向の軸に対する姿勢を一定に保ったまま変化するような場合でも、方位角計測装置の向きが任意に変化した場合に相当するオフセット情報を得ることができる。
【0086】
尚、自動車等の移動体に設置され、設置姿勢が概略一定を保っている場合は、補正基準点ORを求めないで、仮基準点OCの座標をそのままオフセットCx,Cy,Czにしても良い。何故なら、仮基準点OCは特定の平面Pの法線方向に大きな誤差を含んでいる時があるが、この誤差は方位角の計算精度には影響しない。
【0087】
図15は、本発明の第3実施形態においてオフセット情報を取得する方法を示すフローチャートである。
図15において、データバッファ部18は、地磁気測定データSx,Sy,Szを取得しバッファに入れる。なお、ノイズの混入等により取得した地磁気測定データSx,Sy,Szが不適切と見なされる場合は、取得した地磁気測定データSx,Sy,Szをバッファに入れなくてもよい。(ステップS31)
次に、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが、所定のデータ取得数Nに達しているかを判断する。(ステップS32)
データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達していない場合は、ステップS31に戻る。
【0088】
一方、データバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szが所定のデータ取得数Nに達している場合は、データ処理部19は、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出し、読み出した個々のデータP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…が近傍に分布する特定の平面Pの推定を行う。なお、データバッファ部18から地磁気測定データSx,Sy,Szを所定のデータ取得数Nだけ読み出した後は、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szのうち最も古いデータのみをクリアしてもよいし、読み出した数だけクリアしてもよい。(ステップS33)
次に、P1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…を推定された平面Pへ投影し、平面P上において投影されたP1(S1x,S1y,S1z),P2(S2x,S2y,S2z),P3(S3x,S3y,S3z),…に対する距離のばらつきが最小になるような仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを推定する。(ステップS34)
次に、仮基準点OCの座標OCx,OCy,OCzを補正して基準点ORとし、その座標値ORx,ORy,ORzを算出する(ステップS35)
そして、基準点ORの座標ORx,ORy,ORzを地磁気測定データSx,Sy,Szのオフセットとしてオフセット情報記憶部20に記憶させる。なお、ノイズの混入や環境磁場の存在等により推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzが不適切と見なされる場合は、推定した基準点ORの座標ORx,ORy,ORzをオフセット情報記憶部20に記憶させなかったり、状況に応じてデータバッファ部18に保持されている地磁気測定データSx,Sy,Szをクリアしてもよい。(ステップS36)
尚、自動車等の移動体に設置され、設置姿勢が概略一定を保っている場合は、補正基準点ORを求めないで、仮基準点OCの座標をそのままオフセットとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
地磁気検出方式による方位角計測装置では、磁気センサの周辺にスピーカなどの着磁された部品が配置された場合、着磁された部品から漏れる磁場によって磁気センサの出力にオフセットが発生する。従って、オフセットによって方位角の計算に誤差が生じることを防ぐために、オフセットのキャリブレーションを行うことが必要である。
【0090】
本発明は、このキャリブレーションを行うために必要なオフセット情報の取得を、様々な状況において簡単に行うことのできる方位角計測装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、
前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、
前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、
前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段とを備え、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記基準点推定手段による基準点の座標の推定を行わないか、前記基準点推定手段により推定された基準点の座標を破棄することを特徴とする方位角計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項6】
地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、
前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、
前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、
前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段と、
前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し基準平面とする平面推定手段と、
前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、
前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段とを備え、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記平面推定手段により前記基準平面を推定し、前記仮基準点推定手段により仮基準点を推定し、前記基準点補正手段により基準点を算出し、前記オフセット情報算出手段は前記基準点補正手段によって算出された基準点の座標に基づいて前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出することを特徴とする方位角計測装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項9】
請求項6において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかにおいて、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項11】
請求項6乃至9のいずれかにおいて、
前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項12】
請求項6乃至9のいずれかにおいて、
前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項13】
地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、
前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が近傍に位置するような平面を推定し基準平面とする平面推定手段と、
前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、
前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段と、
前記基準点補正手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段とを備えることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項15】
請求項13において、
前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項1】
地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、
前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、
前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、
前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段とを備え、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記基準点推定手段による基準点の座標の推定を行わないか、前記基準点推定手段により推定された基準点の座標を破棄することを特徴とする方位角計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項6】
地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、
前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し基準点とする基準点推定手段と、
前記基準点推定手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段と、
前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が特定の平面近傍に分布しているかどうかを判断する平面判断手段と、
前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し基準平面とする平面推定手段と、
前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、
前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段とを備え、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断された場合は、前記平面推定手段により前記基準平面を推定し、前記仮基準点推定手段により仮基準点を推定し、前記基準点補正手段により基準点を算出し、前記オフセット情報算出手段は前記基準点補正手段によって算出された基準点の座標に基づいて前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出することを特徴とする方位角計測装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記平面判断手段は、前記基準点を未知数とする連立一次方程式の係数項からなる行列が特異行列若しくは特異行列に近い行列になっているかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面を前記出力データ取得手段によって得られた出力データ群から推定し、前記出力データ群と前記特定の平面との相関を算出し、前記相関が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項9】
請求項6において、
前記平面判断手段は、前記特定の平面によって区切られる2つの領域の一方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離と、他方の領域の前記出力データ群のうち前記特定の平面から最も離れた点から前記特定の平面までの距離の和が所定値より大きいかどうかで前記判断を行うことを特徴とする方位角計測装置。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかにおいて、
前記平面判断手段により前記出力データ群が前記特定の平面近傍に分布していると判断される場合は警報を表示する警報表示手段をさらに備えることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項11】
請求項6乃至9のいずれかにおいて、
前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項12】
請求項6乃至9のいずれかにおいて、
前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項13】
地磁気を検出する3軸の地磁気検出手段と、
前記地磁気検出手段の向きが3次元空間において変化した時の前記地磁気検出手段からの3軸出力データを所定回数以上繰り返して取得する出力データ取得手段と、
前記3軸出力データを各軸方向成分とする3次元座標上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群が近傍に位置するような平面を推定し基準平面とする平面推定手段と、
前記平面推定手段によって得られた基準平面上において、前記出力データ取得手段によって得られた3軸出力データ群を前記基準平面に投影した投影点群からの距離のばらつきが最小になるような位置の座標を統計的手法によって推定し仮基準点とする仮基準点推定手段と、
前記仮基準点推定手段によって得られた仮基準点を補正し基準点とする基準点補正手段と、
前記基準点補正手段によって得られた基準点の座標に基づいて、前記地磁気検出手段の出力データに対するオフセット情報を算出するオフセット情報算出手段とを備えることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記基準点補正手段は、前記仮基準点を通って前記基準平面に垂直な直線上で、以前に推定された基準点に最も近い位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【請求項15】
請求項13において、
前記基準点補正手段は、前記投影点群から前記仮基準点までの距離の代表値を統計的手法によって推定し、前記仮基準点を中心とし前記距離の代表値を半径とする前記基準平面上の円周からの距離が所定値に等しくなるような位置を前記基準点とすることを特徴とする方位角計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【国際公開番号】WO2005/061990
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516475(P2005−516475)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018888
【国際出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/018888
【国際出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]