説明

施設管理システム

【課題】センサ機器等の利用を低減し、利用者の利便性を下げずに当該施設の在場人数を管理することができる施設管理システムを提供する。
【解決手段】利用者の入退場を示す情報が当該利用者IDに対応付けて登録された入退場情報テーブル26、利用者の部署が利用者IDに対応付けて登録された個人情報テーブル27、及び、利用者の部署が専有する施設内のエリアが、エリアIDに対応付けて登録されたエリア情報テーブル28を有し、入退場情報テーブル26から、施設へ入場又は退場した利用者の利用者IDを特定し、当該利用者IDに基づいて個人情報テーブル27から当該利用者の部署を特定し、当該利用者の部署に基づいて、エリア情報テーブル28から当該利用者の部署が専有するエリアのエリアIDを特定して、当該エリアIDで特定されるエリアの在場人数を、施設に対する当該利用者の入退場に応じて推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施設に対する利用者の入退場情報、利用者の所属情報及び施設内のエリア情報を用いて、当該施設の各部署の居室エリアを含む専有エリアと共有エリアの在場人数を推定し管理する施設管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の施設管理システムは、一般的に、人の動的な行動を考慮せず、施設内の温度及び湿度等の環境情報や、予め定められたスケジュールの下に制御又は管理を行っていた。
また、人の動的な行動を考慮する施設管理システムとしては、利用者が本人か否かを認証する本人認証装置や、利用者の人数を計測する人流計測装置、人物を識別する人物識別装置等のセンサを施設に複数配置することによって、当該施設内の各エリアにおける人物存在確率を計算するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−161501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人の動的な行動を考慮しない従来の施設管理システムは、施設内に利用者が存在するか否かに拘わらず、空調の制御を行ったり、照明の点灯を行ったりする場合があり、効率的なサービスを利用者に提供することができない。
特許文献1に代表される、人の動的な行動を考慮する従来の施設管理システムでは、例えば、施設の在場人数を管理しようとする場合に、新たにセンサを導入する必要があるため、導入コストがかかる。また、利用者の操作が新たに必要となるため、利用者の利便性が低下するという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、利用者の動的な行動に応じた快適、便利、安全な施設サービスを効率的に実現でき、またセンサ機器等の利用を低減し、かつ利用者の利便性を下げずに当該施設の在場人数を管理することができる施設管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る施設管理システムは、管理対象の施設に対する利用者の入退場を示す情報が当該利用者の識別情報に対応付けて登録された入退場情報テーブルを保持し、検知手段による利用者の識別情報の検知結果から当該施設に対する利用者の入退場を特定して、入退場情報テーブルの内容を更新する入退場管理部と、利用者の所属する組織が、当該利用者の識別情報に対応付けて登録された個人情報テーブルを保持する個人管理部と、利用者の所属する組織が専有する施設内のエリア及び組織に依らずに共用される施設内のエリアが、エリアの識別情報に対応付けてそれぞれ登録されたエリア情報テーブルを保持するエリア管理部と、入退場管理部によって内容が更新された入退場情報テーブルから、施設へ入場又は退場した利用者の識別情報を特定し、当該利用者の識別情報に基づいて個人情報テーブルから当該利用者の所属する組織を特定し、当該利用者の所属する組織に基づいてエリア情報テーブルから当該利用者の所属する組織が専有するエリアの識別情報を特定して、当該識別情報で特定されるエリアの在場人数を、施設に対する当該利用者の入退場に応じて推定する推定部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、管理対象の施設に対する利用者の入退場を示す情報が当該利用者の識別情報に対応付けて登録された入退場情報テーブル、利用者の所属する組織が当該利用者の識別情報に対応付けて登録された個人情報テーブル、及び、利用者の所属する組織が専有する施設内のエリア及び組織に依らずに共用される施設内のエリアが、エリアの識別情報に対応付けてそれぞれ登録されたエリア情報テーブルを有し、入退場情報テーブルから、施設へ入場又は退場した利用者の識別情報を特定し、当該利用者の識別情報に基づいて個人情報テーブルから当該利用者の所属する組織を特定し、当該利用者の所属する組織に基づいてエリア情報テーブルから当該利用者の所属する組織が専有するエリアの識別情報を特定して、当該識別情報で特定されるエリアの在場人数を、施設に対する当該利用者の入退場に応じて推定する。このようにすることで、利用者の動的な行動に応じた快適、便利、安全な施設サービスを効率的に実現でき、またセンサ機器等の利用を低減し、かつ利用者の利便性を下げずに施設の在場人数を管理することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による施設管理システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1における施設管理システムに管理される施設内のエリアの一例を示す図である。
【図4】入退場情報テーブルの一例を示す図である。
【図5】個人情報テーブルの一例を示す図である。
【図6】エリア情報テーブルの一例を示す図である。
【図7】設備制御情報テーブルの一例を示す図である。
【図8】在場人数情報テーブルの一例を示す図である。
【図9】実施の形態1による施設管理システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】エリアごとの在場人数を推定する処理を説明するための図である。
【図11】設備条件情報テーブルの一例を示す図である。
【図12】推定在場人数と設備の電力消費量及び平均電力消費量との関係を時間帯ごとに示すグラフである。
【図13】この発明の実施の形態2による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【図14】エリア情報テーブルの一例を示す図である。
【図15】予定エリア情報テーブルの一例を示す図である。
【図16】スケジューラ情報の一例を示す図である。
【図17】スケジューラ情報を用いて特定したエリアの在場人数を推定する処理を説明するための図である。
【図18】この発明の実施の形態3による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【図19】会議室予約情報の一例を示す図である。
【図20】会議室の利用人数の推定に用いるテーブルデータを示す図である。
【図21】利用者数の推定に用いる重みの一例を示す図である。
【図22】エリア情報テーブルの一例を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態4による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【図24】施設内の各設備に対する部署ごとの利用の割合が登録されたテーブルの一例を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態5による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。
【図26】行動統計情報の一例を示す図である。
【図27】実施の形態5による施設管理システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による施設管理システムの構成を示す図である。図1において、利用者に携帯されるIDカード1は、当該利用者を識別する情報(以下、利用者IDと呼ぶ)を記憶している。
読み取り装置2は、IDカード1に記憶されている情報を読み取る装置であり、読み取った情報は入退場管理装置3へ送信される。また、読み取り装置2は、施設の出入り口に設置され、入退場管理装置3と接続されている。
なお、読み取り装置2は、出入り口の片方もしくは両方に設置することが想定され、さらに1つの扉に対して1つか2つ設置することが想定されるが、本発明は、これらの配置に限定されるものではない。
また、IDカード1及び読み取り装置(検知手段)2は、近接非接触カードと近接非接触カードリーダや、磁気カードと磁気カードリーダなどの構成で実現可能である。
【0010】
入退場管理装置3は、読み取り装置2から得られた利用者IDを用いて、施設に対する利用者の入退場を管理する。入退場が発生すると、入退場管理装置3は、利用者IDと日時情報を入退場情報テーブルに記録する。なお、入退場管理装置3は、施設の通用口の入側と出側の両方に設置した読み取り装置2からの情報により、当該施設における利用者の在場を管理する。
【0011】
サーバ4は、入退場管理装置3が管理する入退場情報テーブルと、施設の管理者によって予め入力された利用者の所属を含む個人情報テーブルを用いて、所属ごとの在場人数を算出し、また所属ごとの在場人数とエリア情報テーブルを用いて、施設のエリアごとの在場人数を推定する。ここで、エリアとは施設内の一部の空間を示すものである。
例えば、所属に割り当てられた居室空間を含む専有エリアや、会議室やミーティングスペースを含む共用される共有エリアなどを含む。
また、在場人数とは、施設内に存在する利用者の人数を示す。
以降の説明でエリアの在場人数と言った場合は、施設内のあるエリアに存在する利用者の人数を示す。
なお、サーバ4は、演算装置、一次記憶装置、補助記憶装置等を備えたコンピュータで構成され、当該コンピュータで推定処理用ソフトウェアを実行することにより、在場人数の推定処理が実現される。
【0012】
設備管理装置5は、エリアごとの在場人数を用いて、エリアの在場人数に応じた設備6−1,6−2,・・・の動作を制御したり、動作の管理を行う装置である。
なお、設備管理装置5は、演算装置、一次記憶装置、補助記憶装置等を備えたコンピュータで構成され、空調や照明を含む施設の設備から得られる設備情報の管理を行う。
【0013】
図2は、実施の形態1による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。図2において、施設管理システムは、機能ブロックとして、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12及び設備管理部15を備える。
入退場管理部7は、読み取り装置2から得られた利用者IDを入力して、施設に対する利用者の入退場を管理する構成部であり、利用者IDで特定された利用者の入退場情報テーブルの内容を更新し、当該利用者IDを推定部10へ出力する。
個人管理部9は、利用者の所属を含む個人情報を管理する構成部であり、例えば図1に示すサーバ4に構築される。
推定部10は、個人管理部9が保持する利用者の所属を含む個人情報から、所属ごとの在場人数を算出する構成部であり、例えば図1に示すサーバ4に構築される。
また、推定部10は、所属ごと在場人数と、エリア管理部12に保持されるエリア情報テーブルに登録されている所属に対応するエリアを示す情報から、エリアごとの在場人数を推定する。
エリア管理部12は、施設内のエリアに関するエリア情報を管理する構成部であって、例えば図1に示すサーバ4に構築される。
設備管理部15は、例えば、図1に示す設備管理装置5に構築されて設備6−1,6−2,・・・の動作を制御又は管理する構成部であり、推定部10に推定されたエリアごとの在場人数に応じて、設備6−1,6−2,・・・の動作の制御又は管理を実行する。
【0014】
なお、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12及び設備管理部15は、図1に示したように、入退場管理装置3、サーバ4及び設備管理装置5として動作する各コンピュータの機能として実現できる。
また、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12及び設備管理部15は、これらの各機能が記述されたプログラムモジュールを有する施設管理用プログラムを、コンピュータに読み込ませて実行させることによって、当該コンピュータの各機能ブロックとして実現することができる。
【0015】
図3は、実施の形態1における施設管理システムに管理される施設内のエリアの一例を示す図であり、IDカード1を携帯する利用者16が入退場する会社の建物18におけるフロア21のエリアを示している。図3において破線で囲んだ部分が施設内のエリア22である。エリアは、部署単位、会議室単位等のように、利用単位ごとに定義する。
例えば、図3の場合、XはA部居室であり、YはB部居室であって、エリアX,Yは、座席23がそれぞれ配置された専有エリアである。
また、Zは共通して利用される開発エリアであって、XXは複数の部署で共通して利用する会議室24であるので、エリアZ,XXは共有エリアである。フロア21には、施設の設備として照明25が設けられている。
図3には記載していないが、共有エリアには、ミーティングスペースや廊下等の通路、トイレなどの複数の部署で共通して利用されるエリアも含まれる。
【0016】
図3に示すように、施設である建物18の出入り口で入退場を管理するだけでは、施設全体の在場人数を管理できるが、エリア22ごとの在場人数は管理できない。
なお、図3には、エリアが互いに重なる部分を持たないように定義したが、複数のエリアで重なるように定義しても構わない。
【0017】
図4は、入退場情報テーブルの一例を示す図である。図4において、入退場情報テーブル26には、入退場があった日時情報、利用者ID、入出情報が登録される。利用者IDは、上述したように、IDカード1に保持される施設の利用者を識別するための情報である。入出情報は、施設へ入場したか、施設から退場したかを示す情報であり、施設の外側に取り付けた読み取り装置2を操作(読み取り)した場合には「入」、内側に取り付けた読み取り装置2を操作した場合は「出」となる。
【0018】
入退場情報テーブル26は、入退場管理部7が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。入退場管理部7は、施設に対する入退場が発生する度に、利用者IDと、その時点での日時情報と、入出情報を、入退場情報テーブル26に登録する。なお、入出情報を用いると、連続した「入」若しくは「出」が検知された場合に入場若しくは退場を許可しないというアンチパスバック機能を入退場管理部7に持たせることが可能である。
【0019】
図5は、個人情報テーブルの一例を示す図である。図5において、個人情報テーブル27は、個人管理部9が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。個人情報テーブル27には、利用者IDと、利用者の所属部署(利用者の属性情報)が登録される。個人情報テーブル27は利用者の所属を特定するために利用される。なお、個人情報テーブル27の内容は、施設の管理者が予め設定しておく。利用者IDに対する所属部署は、兼務の場合等を考慮して、1つの利用者IDに対して複数の所属部署を登録しても構わない。
【0020】
図6は、エリア情報テーブルの一例を示す図である。図6において、エリア情報テーブル28は、エリア管理部12が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。エリア情報テーブル28には、エリアを識別するためのエリアIDと、そのエリアの名称、エリアの担当、属性が登録される。
ここで、エリアの担当とは、当該エリアが割り当てられた所属を示す情報であり、例えばエリアが部署ごとに割り当てられている居室エリアである場合は、その部署名に相当する。属性は、エリアの利用に関する属性であり、例えば部署の居室エリアであれば、「専有」、会議室やミーティングスペース等であれば、「共有」となる。
なお、施設の設備に対するエリアも設定する。例えば、施設のエレベータや自動扉やトイレにエリアを割り当てる。エレベータや自動扉に割り当てるエリアは、他の設備と比較して距離が一番近い廊下のエリアに含めること等が考えられる。
【0021】
図7は、設備制御情報テーブルの一例を示す図である。図7において、設備制御情報テーブル280は、設備管理部15が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。設備制御情報テーブル280には、設備を示す情報と、当該設備が配置されるエリアのエリアIDが登録される。
設備制御情報テーブル280は、設備管理部15が、設備の動作を制御する際に参照される。つまり、設備管理部15が、推定部10により推定されたエリアごとの在場人数に基づいて、当該エリアのエリアIDをキーとして設備制御情報テーブル280を検索し、制御対象の設備を特定する。
なお、設備制御情報テーブル280は、予め施設の管理者が設定しておく。また、1つのエリアに対して複数の設備を設定しても構わない。
【0022】
図8は、在場人数情報テーブルの一例を示す図である。図8において、在場人数情報テーブル29は、推定部10が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。在場人数情報テーブル29には、日時情報と、エリアIDと、当該エリアIDで特定されるエリアにおける在場人数が登録される。
在場人数情報テーブル29は、推定部10によって内容の追記や更新が行われる。また、在場人数情報テーブル29は、設備管理部15が、設備の動作を制御する際に参照される。つまり、設備管理部15が、推定部10によって推定されたエリアごとの在場人数に基づいて、当該エリアのエリアIDをキーとして在場人数情報テーブル29を検索して、制御対象の設備を特定する。
【0023】
次に動作について説明する。
図9は、実施の形態1による施設管理システムの動作の流れを示すフローチャートであり、在場人数を推定する処理の詳細を示している。
先ず、入退場管理部7は、読み取り装置2がIDカード1による利用者IDの入力操作(例えば、非接触通信による入力操作)を受け付けるまで待機状態にあり、当該入力操作の有無によって管理対象の施設に対する入退場イベントの有無を判定する(ステップST1)。ここで、IDカード1による利用者IDの入力操作がなければ(ステップST1;NO)、ステップST1に戻り、上記待ち状態を繰り返す。
【0024】
読み取り装置2がIDカード1による利用者IDの入力操作を受けると(ステップST1;YES)、入退場管理部7は、読み取り装置2から取得した利用者IDに基づいて、入退場情報テーブル26の内容を更新する。この後、入退場管理部7は、読み取り装置2から取得した利用者IDを推定部10へ出力する。推定部10では、入退場管理部7から入力した利用者IDをキーにして、個人管理部9に保持される個人情報テーブル27を検索し、当該利用者IDで特定される利用者の所属部署を取得する(ステップST2)。
【0025】
次に、推定部10は、取得した所属部署をキーにして、エリア管理部12に保持されるエリア情報テーブル28を検索し、当該部署に該当するエリア情報(エリアID)を取得する(ステップST3)。
続いて、推定部10は、取得したエリアIDをキーにして、在場人数情報テーブル29を検索し、当該エリアIDに対応するエリアの在場人数を推定する(ステップST4)。
この後、推定部10は、現在の時刻(当該利用者による施設への入場又は施設からの退場があった時刻)で在場人数情報テーブル29の日時情報を更新するとともに、在場人数情報テーブル29の当該エリアの在場人数を更新する(ステップST6)。更新処理が完了すると、再びステップST1へ移行して入退場の待ち状態へ戻る。
【0026】
図10は、エリアごとの在場人数を推定する処理を説明するための図である。図10の例では、利用者IDが「0005」の利用者16が施設18に入場する場合を説明する。図10(b)に示すように当該利用者16が施設18へ入場すると、入退場管理部7は、図10(a)に示すように、入退場情報テーブル26に対して、この時点の日時情報「2009/12/1 8:30:12」と、利用者ID「0005」及び入出情報「入」を登録する。
【0027】
次に、推定部10は、図10(a)に示すように、個人情報テーブル27から利用者ID「0005」をキーにして所属「B部」を取得する。
続いて、推定部10は、エリア情報テーブル28から所属「B部」をキーにしてエリアID「エリア2」を取得し、図10(c)に示すように、在場人数情報テーブル29におけるエリアIDが「エリア2」の在場人数を“1”だけ増やす。
このようにして推定されたエリアごとの在場人数は、以下のように利用する。
【0028】
(1)「省エネ見える化」
省エネルギー活動の状況を定量的に可視化する「省エネ見える化」に利用できる。
例えば、設備管理部15に表示装置等の可視化手段を設け、設備管理部15が、各エリアの時間ごとの電力消費量を算出して、エリアごとの在場人数とともに、算出した各エリアの時間ごとの電力消費量(グラフ化してもよい)を、表示装置に表示して利用者に提示する。このように、エリアごとの在場人数とともに電力消費量を提示する「省エネ見える化」を実施することによって、電力消費の無駄の発見が可能となり、省エネルギー活動を効率よく行うことができる。
【0029】
また、(2)で後述するように、エリアごとの在場人数に応じて設備の動作を制御し、この制御を実施した結果の電力消費量を、グラフ表示(エリアごとの在場人数を併記してもよい)することにより、省エネルギー活動の状況や効果が見えるようになる、“省エネ見える化”も可能となる。これにより、省エネルギー活動のモチベーションが喚起され、さらに省エネルギー活動を進めることができる。
【0030】
さらに、設備管理部15が、各エリアの電力消費量をエリアの在場人数で割ることで算出されるエリアごとの平均電力消費量を、表示装置等の可視化手段で利用者に提示する。これにより、所属ごとに省エネルギー活動の成果を競い合うことが可能となり、省エネルギー活動の促進を図ることができる。
【0031】
(2)設備制御
設備管理部15が、エリアごとの在場人数情報を用いて設備の動作を制御する。
例えば、エリアごとの在場人数を用いた設備の制御として、人が居ないエリアの設備は動作停止(電力消費がなくなる制御)し、人が居るエリアでは、在場人数に応じた動作の制御を実施する。ここでは、設備管理部15に、設備の制御条件を設定した設備条件情報テーブルをエリアごとに設ける。以下、具体的な設備を例に挙げて説明する。
【0032】
(2−1)空調設備の制御
図11は、設備条件情報テーブルの一例を示す図である。図11において、設備条件情報テーブル290は、設備管理部15が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶する。設備条件情報テーブル290には、制御対象の設備を示す情報、設備の“運転モード”、当該設備の在場人数に応じた“条件”が登録される。空調設備の運転モードは、例えば、運転のオン又はオフ、設定温度及び“暖房”か“冷房”か(設定温度26度の暖房、設定温度23度の冷房)などである。また、上記の“条件”は、対応する運転モードで設備を動作させる際のエリアの在場人数で規定される条件であり、例えば、下記のようなものが挙げられる。
【0033】
T1≦(推定在場人数)≦T2 ・・・(1a)
(推定在場人数の時間変化)≦DT1 ・・・(1b)
(推定在場人数の時間変化)≧DT2 ・・・(1c)
ここで、T1,T2,DT1,DT2は、予め施設の管理者などによって決められた値である。
設備管理部15は、推定部10から取得したエリアの現在の在場人数が上記式(1a)の条件に合致すると、当該在場人数であるエリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで空調設備の動作を制御する。
また、設備管理部15は、推定部10から所定の周期で取得したエリアの在場人数を、当該周期の時間で割ることで得られる“推定在場人数の時間変化”が上記式(1b)又は上記式(1c)の条件に合致すると、当該エリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで空調設備の動作を制御する。
【0034】
OT1≦(外気温)≦OT2 ・・・(2a)
IT1≦(室温)≦IT2 ・・・(2b)
ここで、OT1,OT2,IT1,IT2は、予め施設の管理者などによって決められた値である。
設備管理部15は、エリアの在場人数によらず、設備6−1,6−2,・・・とは別に設けた温度センサ(空調設備が有する温度センサを用いてもよい)で検出した外気温又は室温を取得し、上記式(2a)又は上記式(2b)の条件に合致すると、当該エリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで空調設備の動作を制御する。このように、設備管理部15は、環境温度に応じて空調設備の動作を制御する。
この他、設備管理部15は、エリアの在場人数と環境温度を組み合わせた条件で、空調設備の動作を制御してもよい。
例えば、設備管理部15は、推定部10から取得したエリアの現在の在場人数が上記式(1a)の条件に合致し、かつ上記式(2a)又は上記式(2b)の条件に合致すると、当該在場人数であるエリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで空調設備の動作を制御する。
また、設備管理部15は、推定部10から所定の周期で取得したエリアの在場人数を、当該周期の時間で割ることで得られる“推定在場人数の時間変化”が上記式(1b)又は上記式(1c)の条件に合致し、かつ上記式(2a)又は上記式(2b)の条件に合致すると、当該エリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで空調設備の動作を制御する。
【0035】
上記の例は、在場人数は、推定部10によってリアルタイムに推定された値を利用する場合を示したが、設備管理部15が、推定部10から取得した推定在場人数を履歴情報として記憶装置に記憶しておき、この履歴情報を用いて空調設備の動作を制御してもよい。
例えば、設備管理部15が、過去の在場人数の履歴の平均値を在場人数の予測値として利用する。この場合、過去のある時刻Tにおける在場人数の予測値(在場人数の平均値)を算出して、この予測値と所定の閾値との比較結果を“条件”とする。
これにより、空調設備の“暖房”又は“冷房”の動作制御のように、利用者が快適となる温度に到達するまでに時間がかかる制御であっても、上記予測値を用いて上記在場人数の平均値に達するであろうエリアにおける空調設備を“条件”に合致するものとして動作させることで、快適な温度に達する時間を短縮できる。このように利用者の快適性を向上させる有効な制御となる。
【0036】
(2−2)照明設備の制御
照明の制御の場合も、上述した空調設備の場合と同様に、設備管理部15が、設備制御条件テーブル290を用いて制御を行う。照明設備の運転モードとしては、例えば、照明のオン又はオフ、調光度(L%)の制御などが挙げられる。照明設備の制御条件は、下記のようなものがある。
OL1≦室外照度≦OL2 ・・・(3a)
IL1≦室内照度≦IL2 ・・・(3b)
ここで、OL1,OL2,IL1,IL2は、予め施設の管理者などによって決められた値である。
設備管理部15は、エリアの在場人数によらず、設備6−1,6−2,・・・とは別に設けた照度センサ(照明設備に設けた照度センサを用いてもよい)で検出された室外照度又は室内照度を取得し、上記式(3a)又は上記式(3b)の条件に合致すると、当該エリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで照明設備の動作を制御する。このように、設備管理部15は、照度に応じて照明設備の動作を制御する。
この他、設備管理部15は、エリアの在場人数と照度を組み合わせた条件で、照明設備の動作を制御してもよい。
例えば、設備管理部15は、推定部10から取得したエリアの現在の在場人数が上記式(1a)の条件に合致し、かつ上記式(3a)又は上記式(3b)の条件に合致すると、当該在場人数であるエリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで、照明設備の動作を制御する。
また、設備管理部15は、推定部10から所定の周期で取得したエリアの在場人数を、当該周期の時間で割ることで得られる“推定在場人数の時間変化”が上記式(1b)又は上記式(1c)の条件に合致し、かつ上記式(3a)又は上記式(3b)の条件に合致すると、当該エリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで、照明設備の動作を制御する。
【0037】
さらに、在場人数は、推定部10によってリアルタイムに推定された値を利用する場合を示したが、設備管理部15が、推定部10から取得した推定在場人数を履歴情報として記憶装置に記憶しておき、この履歴情報を用いて照明設備の動作を制御してもよい。
例えば、設備管理部15が、過去の在場人数の履歴の平均値を在場人数の予測値として利用する。この場合、過去のある時刻Tにおける在場人数の予測値(在場人数の平均値)を算出して、この予測値と所定の閾値との比較結果を“条件”とする。
この予測値を用いて、上記在場人数の平均値に達するであろうエリアにおける照明設備を“条件”に合致するものとして動作させることによって、快適な調光度に達する時間を短縮できる。このように利用者の快適性を向上させる有効な制御となる。
【0038】
(2−3)エレベータの制御
エレベータの制御の場合も、上述した場合と同様に、設備管理部15が、設備制御条件テーブル290を用いて制御を行う。エレベータの運転モードとしては、例えば、フロアXで待機する、といったものが挙げられる。また、エレベータの制御条件は、(2−1)で示した上記式(1a)〜(1c)がある。ここで、エレベータの制御に利用される在場人数は、エレベータに面した廊下を含むエリア(エレベータが割り当てられるエリア)の在場人数を利用する。なお、エレベータが割り当てられたエリア以外の、部署に割り当てられる居室エリアや共通で利用する共有エリアなどの推定在場人数を利用したりすることも可能である。
【0039】
設備管理部15は、推定部10から取得したエリアの現在の在場人数が上記式(1a)の条件に合致すると、当該在場人数であるエリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードでエレベータの動作を制御する。
また、設備管理部15は、推定部10から所定の周期で取得したエリアの在場人数を、当該周期の時間で割ることで得られる“推定在場人数の時間変化”が上記式(1b)又は上記式(1c)の条件に合致すると、当該エリアの設備制御情報テーブル290における対応する条件の運転モードで、エレベータの動作を制御する。
【0040】
推定在場人数を用いる“条件”以外に以下のものが考えられる。
複数のエレベータが設けられている場合、他のエレベータの稼動情報、つまり人を乗せている、目的のフロアに向かっている、待機中などといった稼動情報を用いた“条件”が考えられる。
【0041】
また、空調と照明の制御の場合と同様に、在場人数の履歴情報から算出した在場人数の予測値(過去のある時刻Tにおける在場人数の平均値)を用いたエレベータ制御を行うことも考えられる。
つまり、設備管理部15が、推定部10から取得した推定在場人数を、履歴情報として記憶装置に記憶しておき、この履歴情報を用いてエレベータの動作を制御する。
例えば、設備管理部15が、過去の在場人数の履歴の平均値を在場人数の予測値として利用する。この場合、過去のある時刻Tにおける在場人数の予測値(在場人数の平均値)を算出して、この予測値と所定の閾値との比較結果を“条件”とする。
この予測値を用いて、上記在場人数の平均値に達するであろうエレベータを“条件”に合致するものとして動作させる。このように、エレベータの制御に推定在場人数を用いることにより、エレベータのカゴの待ち時間が短縮され、エレベータ運転の効率化が可能となる。
【0042】
(3)設備の保守
在場人数を設備の清掃業務などの保守に利用する。
例えば、設備管理部15に表示装置等の可視化手段を設け、設備管理部15が、ある時刻までの在場人数の累積数をそれまでの在場人数の履歴から算出し、この累積数が所定の閾値を超えたエリアの設備について、上記可視化手段を用いて“清掃”、“動作チェック”又は“設備自体若しくは部品の交換”が必要である旨を、施設の管理者に提示する。
これにより“清掃”、“動作チェック”又は“設備自体若しくは部品の交換”が、適切な状況で実施される。
このように、在場人数の累積情報を用いることにより、利用頻度に応じた作業が可能となるため、効率的な保守業務ができる。
【0043】
(4)災害時の避難計画への利用
在場人数を災害時の避難計画に利用する。
エリア管理部12が、推定部10によって推定された所定の時間ごとのエリア別の在場人数を取得して記憶装置へ履歴情報として記憶しておき、この履歴から各時間帯における避難経路の計画を行う。
例えば、予め避難経路が2通りある場合、エリア管理部12が、エリア別の在場人数の履歴情報から得られる人数に基づいて、避難経路を利用するであろう人数が、各時間帯で上記2通りの避難経路において均等になるように施設内のエリアを2つのグループにそれぞれ分類する。
また、このとき、避難経路とこれに対応するグループのエリアとの位置情報を用いて、なるべく避難経路と当該エリアとが遠くならないように、距離に応じてエリアのグループ分けを行ってもよい。
上述のように、避難経路を利用するであろう人数を各時間帯で均等に分ける場合の他、施設内のエリアを避難経路との距離で分類するようにしてもよい。
さらに、避難経路を利用するであろう人数を各時間帯で均等になるように、かつエリアと避難経路との距離が所定値以下となるように、エリアのグループ分けを行ってもよい。
さらに、策定した避難計画(グループ分け)は、表示装置等の可視化手段で利用者に提示することにより、この提示内容に従って利用者が避難することができる。
【0044】
以上のように、この実施の形態1によれば、管理対象の施設に対する利用者の入退場を示す情報が当該利用者IDに対応付けて登録された入退場情報テーブル26、利用者の所属部署が利用者IDに対応付けて登録された個人情報テーブル27、及び、利用者の所属部署が専有する施設内のエリア及び部署に依らずに共用される施設内のエリアが、エリアIDに対応付けてそれぞれ登録されたエリア情報テーブル28を有し、入退場情報テーブル26から、施設へ入場又は退場した利用者の利用者IDを特定し、当該利用者IDに基づいて個人情報テーブル27から当該利用者の所属する部署を特定し、当該利用者の所属する部署に基づいてエリア情報テーブル28から当該利用者の所属する部署が専有するエリアのエリアIDを特定して、当該エリアIDで特定されるエリアの在場人数を、施設に対する当該利用者の入退場に応じて推定する。
このようにすることで、利用者の動的な行動に応じた快適、便利、安全な施設サービスを効率的に実現でき、またセンサ機器等の利用を低減し、かつ利用者の利便性を下げずに施設の在場人数を管理することができる。
つまり、入出口に読み取り装置2を設置して利用者の入退場を管理している施設であれば、新規にセンサを設置することなく、実施の形態1によるシステムを導入できる。つまり、施設内のエリアの在場人数を推定することにより、実際にセンサで利用者を検出してその人数を求める必要がないため、導入コストを削減することができる。
また、エリアの在場人数を推定するにあたり、当該センサを用いた機器に対する利用者の操作が不要であり、利用者の利便性を劣化することがない。
さらに、推定された在場人数を用いて、設備の効率的な制御、保守、防災計画などを行うことが可能である。
【0045】
図12は、推定在場人数と設備の電力消費量及び平均電力消費量との関係を時間帯ごとに示すグラフである。図12の例では、計測対象が、約20m×30mの面積で、2部署44人が所属するエリアである。図12(a)は、当該エリアにおける照明の消費電力量の時間変化を示しており、図12(b)は、当該エリアにおける推定在場人数の時間変化を示している。また、図12(c)は、当該エリアにおける照明の消費電力量を推定在場人数で割った平均消費電力量の時間変化を示している。図12(c)に示すように、符号Aを付した矢印で示す平均消費電力量が大きな値になっているが、同時刻の在場人数は、少ない。この場合、少ない人数で照明を無駄に利用していると判断でき、実際の照明の利用から無駄を発見することができる。
この利用状況として図12に示したグラフを、設備管理部15が、表示装置等の可視化手段で施設の管理者に提示する。管理者は、設備制御条件テーブル290における照明の運転モードを省エネルギーモードに変更する。例えば、18:00に照明の照度を50%にし、18:00以降はデスクライトを利用する運転モードとすることにより、当該時刻に応じて、設備管理部15が照明を制御する。これにより、実験データで試算すると1日あたり約40kWhの削減が見込まれる。
【0046】
実施の形態2.
図13は、この発明の実施の形態2による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。図13において、実施の形態2の施設管理システムは、機能ブロックとして、実施の形態1の図2に示した構成に加え、スケジュール管理部31を備える。
スケジュール管理部31は、利用者個人の予定を管理するとともに、その所属組織で共通した予定を管理する構成部である。スケジュール管理部31は、例えば、図1におけるサーバ4に構築され、自身が読み書き可能な記憶装置に、上記予定が登録されたスケジューラ情報を保持する。予定は、例えば「2009年12月21日13:00〜15:00会議」や「2009年12月22日15:00〜17:00グループミーティング」などであり、予定の日時と予定内容あるいはその一部の情報を指す。
【0047】
なお、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及びスケジュール管理部31は、図1に示したように、入退場管理装置3、サーバ4及び設備管理装置5として動作する各コンピュータの機能として実現できる。
また、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及びスケジュール管理部31は、これらの各機能が記述されたプログラムモジュールを有する施設管理用プログラムを、コンピュータに読み込ませて実行させることによって、当該コンピュータの各機能ブロックとして実現することができる。
【0048】
次に動作について説明する。
(1)推定在場人数を更新するエリアの特定
実施の形態2における推定部10は、個人管理部9が保持する個人情報テーブル27、及びスケジュール管理部31が保持するスケジューラ情報及び予定エリア情報テーブルを用いて、推定在場人数を更新するエリアを特定する。
図14は、エリア情報テーブルの一例を示す図であり、エリア情報テーブル28における共用の会議室を示している。実施の形態2では、このような共用エリアを使用する予定を管理し、その在場人数が推定される。
【0049】
図15は、予定エリア情報テーブルの一例を示す図である。図15において、予定エリア情報テーブル33は、スケジュール管理部31が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に部署ごとに記憶される。また、予定エリア情報テーブル33には、予定の内容及びこれに対応するエリアを示すエリアIDが登録される。予定の内容には、“会議”や“打合せ”のように、内容自体からエリアを特定できないものも含まれる。予定エリア情報テーブル33には、このような予定の内容に対して適切なエリアを予め登録しておく。
例えば、A部署において、「部会議」とあれば「エリア1」の利用、「●●グループ打合せ」なら「エリア2」の利用、となる。予定エリア情報テーブル33を部署ごとに作成することで、同じ「部会議」という予定の内容であっても、部署によって利用する会議室は異なるといった場合に対応できる。
また、予定エリア情報テーブル33において、予定の内容を複数のエリアに対応させることも可能である。この場合、在場人数の推定は、複数のエリアに推定人数を均等に割り振るというやり方が考えられる。
【0050】
図16は、スケジューラ情報の一例を示す図である。図16において、スケジューラ情報35は、スケジュール管理部31が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に、利用者IDごとに記憶される。スケジューラ情報35には、上述したように、利用者の予定の日時と予定の内容が登録される。図16の例では、利用者IDが“0005”の利用者の予定を示している。
【0051】
スケジュール管理部31は、スケジューラ情報35から、利用者IDが“0005”の利用者の予定が実施されたと判断すると、当該利用者の利用者ID及び当該予定の内容を含む当該スケジューラ情報35を推定部10へ出力する。推定部10は、スケジュール管理部31から取得したスケジューラ情報35の利用者IDをキーとして個人情報テーブル27を検索し、当該利用者IDの利用者の所属部署を取得する。
【0052】
次に、推定部10は、取得した所属部署に対応する予定エリア情報テーブル33を特定し、スケジュール管理部31から取得したスケジューラ情報35の予定の内容をキーとして、当該部署に対応する予定エリア情報テーブル33の内容を検索し、該当するエリア情報(エリアID)を取得する。
【0053】
例えば、推定部10は、スケジュール管理部31が保持するスケジューラ情報35における「12/5 13:00〜15:00部会議」という予定の内容と、個人管理部9が保持する個人情報テーブル27(図5参照)から得られる利用者ID「0005」の部署「B部」から、スケジュール管理部31が保持する予定エリア情報テーブル33(図15参照)を用いて、在場人数を更新するエリアとして「エリア4」を特定する。
【0054】
(2)推定在場人数の更新処理
図17は、スケジューラ情報を用いて特定したエリアの在場人数を推定する処理を説明するための図である。推定部10は、上述のようにエリア(エリア4)を特定すると、在場人数情報テーブル29における特定したエリアの在場人数を、スケジューラ情報35に記述される予定の時間帯の期間だけ増やし、その間、当該利用者が所属する部署のエリア(エリア2)については在場人数をその分減らす。
つまり、図17に示すように、推定部10は、13:00〜15:00におけるエリア4の在場人数を1だけ増やした内容と、13:00〜15:00のB部の居室エリアである「エリア2」の推定在場人数を1減らした内容とを、在場人数情報テーブル29へ追加する。
【0055】
スケジューラ情報35における予定の内容に応じて、予定時間帯が記載されていれば、在場人数の推定は、その時間帯を対象に行うが、予定に時間の記載がない場合は、予定のキーワードに応じて予め定めた時間帯を推定対象の時間帯とすることが考えられる。
例えば、予定の内容が「早朝ミーティング」とあれば、8時から10時までを推定する時間帯とすることなどが考えられる。
【0056】
また、スケジューラ情報35において、予定の時間帯の指定が開始時刻のみで終了時刻がない場合は、予め決めておいた時間だけ開始時刻から経過したら利用終了とすることが考えられる。経過時間は、1時間など一律に固定の時間としてもよいし、予定内容のキーワードに応じて変更してもよい。また、他人の予定内容を用いることも考えられる。
【0057】
推定部10が、個人情報テーブル27から取得された所属情報をキーにして、スケジュール管理部31に保持されるスケジューラ情報35を検索し、部署や課やグループなどが同じ他人の予定内容を取得し、この予定内容をキーにして、スケジュール管理部31に保持される予定エリア情報テーブル33を検索して特定したエリア及び当該部署や課やグループの居室エリアの在場人数を更新するようにしてもよい。
例えば、ある利用者についてスケジューラ情報35に予定が記入されていないが、同じグループについて「グループミーティング」という予定が記入されている場合には、当該予定が記入されていない利用者についても、「グループミーティング」という予定内容で特定されたエリアの在場人数にカウントする。
【0058】
また、過去の予定内容の履歴を用いることも考えられる。例えば、毎月特定の日に「部会議」などの特定の予定が長期に渡って入力されていたが、ある月に入力がない場合は、スケジュール管理部31が、スケジューラ情報35を「部会議」の扱いとして記入する。
若しくは、推定部10が、自身が保持した組織の複数の利用者についての予定の履歴を用いて、特定の日時で実施される予定内容を特定し、この予定内容で特定されるエリアの在場人数を推定する。例えば、1ヶ月における複数の利用者に設定された予定内容から、1ヶ月における特定の日に実施されるであろう会議や打合せの頻度を推定し、当該予定内容で特定されるエリアの在場人数の推定を行う。
さらに、組織の大人数が参加する予定の場合は、例えば執務の人が「A部全体会議」等の予定を正確かつ確実にスケジューラ情報33に入力するという運用を行うことにより、在場人数推定を行うことも考えられる。
【0059】
以上のように、この実施の形態2によれば、施設内のエリアを利用する利用者の予定内容が利用者IDに対応付けて登録されたスケジューラ情報35と、部署の予定内容及びこの予定で利用される施設内のエリアが部署ごとに登録された予定エリア情報テーブル33とを保持するスケジュール管理部31を備え、推定部10が、スケジュール管理部31から取得したスケジューラ情報35における利用者IDに基づいて、個人情報テーブル27から当該利用者の所属する部署を特定し、スケジューラ情報35における利用者の予定内容に基づいて、当該利用者の所属する部署に対応する予定エリア情報テーブル33の内容から、この予定で利用される施設内のエリアを特定して、当該エリアの在場人数を、当該利用者の予定内容に応じて推定する。
このようにすることで、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27、及びエリア情報テーブル28のみでは推定することができないエリアの在場人数を推定することが可能となる。また、部署の居室エリアの在場人数の推定精度が向上する。
なお、上記実施の形態2では、図1に示したサーバ4にスケジュール管理部31を構築する場合を示したが、スケジューラ専用のサーバを設けてもよい。
【0060】
実施の形態3.
図18は、この発明の実施の形態3による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。図18において、実施の形態3の施設管理システムは、機能ブロックとして、実施の形態1の図2に示した構成に加え、会議室予約管理部36を備える。
会議室予約管理部36は、会議室の予約を管理する構成部である。また、会議室予約管理部36は、例えば、図1におけるサーバ4に構築され、自身が読み書き可能な記憶装置に会議室予約情報を保持する。
会議室予約情報とは、会議室の予約状況が記述された情報であり、利用会議室、利用予定日時、利用者、会議内容を含む。なお、利用会議室は、必ず入力されるものとする。
【0061】
なお、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及び会議室予約管理部36は、図1に示したように、入退場管理装置3、サーバ4及び設備管理装置5として動作する各コンピュータの機能として実現できる。
また、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及び会議室予約管理部36は、これらの各機能が記述されたプログラムモジュールを有する施設管理用プログラムを、コンピュータに読み込ませて実行させることによって、当該コンピュータの各機能ブロックとして実現することができる。
【0062】
次に動作について説明する。
(1)在場人数を更新するエリアの特定
実施の形態3における推定部10は、個人管理部9が保持する個人情報テーブル27、会議室予約管理部36が保持する会議室予約情報、及び会議室の予約内容と利用人数との対応をそれぞれ示す各テーブルを用いて、推定在場人数を更新するエリアを特定する。
【0063】
図19は、会議室予約情報の一例を示す図である。図19において、会議室予約情報37は、会議室予約管理部36が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。会議室予約情報37には、上述したように、利用会議室と会議室の予約日時及び予約内容が登録される。図19の例では、利用会議室が「北西会議室」であり、会議室の予約日時が「12/15 13:00−15:00」であり、予約内容が「●●会議、A部」である。
【0064】
会議室予約管理部36は、会議室予約情報37から、利用会議室が予約時刻になったと判断すると、当該会議室予約情報37を推定部10へ出力する。推定部10では、会議室予約管理部36から取得した会議室予約情報37から利用会議室を示す情報(名称)を抽出し、この利用会議室の名称をキーとして、エリア管理部12が保持するエリア情報テーブル28を検索し、該当するエリア情報(エリアID)を取得する。
【0065】
例えば、推定部10は、会議室予約管理部36が保持する会議室予約情報37における利用会議室を示す「北西会議室」という利用会議室の名称から、エリア管理部12が保持するエリア情報テーブル28(図14参照)を検索し、在場人数を更新するエリアとして「エリア4」を特定する。
【0066】
(2)推定在場人数の更新処理
推定部10は、図19に示す会議室予約情報37のように利用者の記述がない場合や、予約の内容に代表者のみが記載されている場合は、会議室予約管理部36に保持される会議室の利用に関する情報に基づいて、利用会議室の利用人数を推定する。
会議室の利用に関する情報とは、例えば、利用する会議室の収容人数や広さや座席数である。会議室の収容人数がX人の場合、利用人数をX×R人などとする。ここで、Rは、施設の管理者などによって予め決められた利用割合(例えば、過去の利用人数の履歴から統計的に算出した値)を示す。
【0067】
また、推定部10は、会議室予約情報37に利用する部署のみが記載されている場合、利用する部署の人数から利用者の人数を推定してもよい。例えば、30人の部署であれば、平均して部署の1割(R=0.1)が会議に参加するとして、3人が会議に参加人数と推定する。この割合Rは、部署の過去の利用人数の履歴から統計的に算出する。
会議室予約情報37の予約の内容に利用者が複数書かれている場合は、記載されている利用者の人数を利用人数としてもよい。
【0068】
さらに、推定部10は、会議室予約情報37の予約内容である会議内容から利用者の人数を推定してもよい。例えば、会議内容が「グループ会議」であれば、X人参加、「部会議」であれば、Y人参加、と会議内容と参加人数との対応を示すテーブルを予め作成しておく。XやYの参加人数の値は、予め各部署にヒアリングを行うなどの調査しておくことで決定可能である。
【0069】
この他、上述した推定方式を組み合わせて利用人数を推定するようにしてもよい。この場合、例えば、下記式(4)に示すように、複数の推定方式の各推定結果に重みをつけて算出する。
N=N1×w1+N2×w2+・・・+Nn×wn ・・・(4)
ここで、Nは会議参加人数であり、Ni(i=1,2,・・・,n)は、推定方式iで推定した会議参加人数である。また、wi(i=1,2,・・・,n)は、推定方式iの結果に対する重みであり、Σwi=1である。
【0070】
図20は、会議室の利用人数の推定に用いるテーブルデータを示す図であり、図20(a)は会議室名称と収容人数との対応テーブル39aを示しており、図20(b)は会議内容と参加すべき利用者の人数との対応テーブル39bを示しており、図20(c)は部署とその人数との対応テーブル39cを示している。図20において、テーブル39a〜39cは、会議室予約管理部36が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。
テーブル39aには、会議室名称と、この名称で特定される会議室の収容人数とが登録される。テーブル39bには、会議内容と、この内容の会議に参加すべき利用者の人数とが登録される。テーブル39cには、所属部署と、この部署に所属する利用者の人数とが登録される。
【0071】
図21は、利用者数の推定に用いる重みの一例を示す図である。図21に示す利用情報と重みのテーブル42は、会議室予約管理部36が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に記憶される。重みaは、利用会議室の収容人数に関する重みを示しており、重みbは、部署ごとに予め設定された参加人数に関する重みであり、重みcは、会議内容に応じて予め設定された参加人数に関する重みを示している。なお、a+b+c=1である。
【0072】
推定部10は、会議室予約情報37における会議室予約の内容「12/15 13:00−15:00、北西会議室、●●会議、A部」から、利用会議室「北西会議室」、会議内容「●●会議」、利用部署「A部」を取得する。続いて、推定部10は、これらの情報をキーとして、会議室予約管理部36が保持するテーブル39a〜39cを検索し、利用人数X1,X2,X3を取得し、図21に示す利用情報と重みのテーブルから、利用人数の推定値Nを以下のように計算する。
N=X1×a+X2×b+X3×c
【0073】
この後、推定部10は、会議室の利用部署(A部)をキーにして、エリア管理部12が保持するエリア情報テーブル28(図22参照)を検索し、該当する部署の居室(A部居室)を特定する(エリア1の特定)。最後に、推定部10は、上述のように算出した会議室の利用人数の推定値Nだけ、北西会議室(エリア4)の在場人数を増やした内容と、A部居室(エリア1)の在場人数をNだけ減らした内容とを、在場人数情報テーブル29へ追加する。
【0074】
以上のように、この実施の形態3によれば、施設内の会議室及びこれを利用する予約内容が登録された会議室予約情報37を保持する会議室予約管理部36を備え、推定部10が、会議室予約管理部36から取得した会議室予約情報における会議室の在場人数の推定値を、当該会議室の収容人数、予約内容に応じた想定参加人数、及び当該会議室を予約した利用者の所属する部署の人数のうちの少なくとも1つを用いて算出する。
このようにすることで、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27、及びエリア情報テーブル28のみでは推定することができないエリアの在場人数を推定することが可能となる。また、部署の居室エリアの在場人数の推定精度が向上する。
なお、上記実施の形態3では、図1に示したサーバ4に会議室予約管理部36を構築する場合を示したが、会議室予約管理専用のサーバを設けてもよい。
【0075】
実施の形態4.
図23は、この発明の実施の形態4による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。図23において、実施の形態4の施設管理システムは、機能ブロックとして、実施の形態1の図2に示した構成に加え、設備利用状況管理部43を備える。
設備利用状況管理部43は、施設内の設備の利用状況を管理する構成部であり、例えば図1におけるサーバ4に構築してもよく、設備管理部15の1つの機能として設けてもよい。また、設備利用状況管理部43は、設備管理部15から設備利用状況情報を取得し、当該設備利用状況情報を、自身が読み書き可能な記憶装置に保持する。
設備利用状況情報は、施設内の設備を示す情報(当該設備が含まれるエリアID)及び当該設備の利用の有無を示す情報を含んで構成され、例えば、エレベータや自動扉やトイレの利用状況を示す。
なお、エレベータであれば利用者がカゴに乗っている場合が利用している状況であり、自動扉であれば人が通過して開閉動作をしている場合が利用されている状況である。
トイレでは、流水の情報や、トイレ内に照明制御のために取り付けた人感センサの情報や、流水用のための人感センサの情報を利用して検知可能となる利用のあり又はなしを示す情報が設備利用状況情報となる。
【0076】
また、設備利用状況管理部43は、設備利用状況情報の他に、設備と、この設備を利用する部署と、この部署のこの設備に対する利用の割合(重み)とを対応付けたテーブルデータを保持している。
図24は、施設内の各設備に対する部署ごとの利用の割合が登録されたテーブルの一例を示す図である。図24に示すテーブル44は、設備利用状況管理部43が読み書き可能な記憶装置の記憶領域に予め記憶される。各設備を利用する部署の利用割合である重みは、例えば、各部署の所属人数に比例した値を設定してもよい。また、各設備と部署の所属エリアとの距離に反比例した値を設定しても構わない。
【0077】
なお、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及び設備利用状況管理部43は、図1に示したように、入退場管理装置3、サーバ4及び設備管理装置5として動作する各コンピュータの機能として実現できる。
また、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及び設備利用状況管理部43は、これらの各機能が記述されたプログラムモジュールを有する施設管理用プログラムを、コンピュータに読み込ませて実行させることによって、当該コンピュータの各機能ブロックとして実現することができる。
【0078】
次に動作について説明する。
設備利用状況管理部43は、設備管理部15から設備利用状況情報を取得すると、これを保持するとともに、推定部10へ出力する。推定部10では、設備利用状況管理部43から取得した設備利用状況情報から、利用されている設備を示す情報(当該設備が含まれるエリアID)を抽出し、この情報(エリアID)をキーとしてエリア管理部12が保持するエリア情報テーブル28を検索し、該当するエリア情報(エリアID)を取得する。
【0079】
次に、推定部10は、特定したエリア(利用されている設備が含まれるエリア)における利用人数Nを下記式(5)から算出する。ただし、Noldは、在場人数情報テーブル29における当該エリアの更新前の推定在場人数であり、Nfは、今回の利用で新たに加わった設備の利用人数の推定値である。推定値Nfは、例えば、エレベータであればカゴの平均利用人数、自動扉であれば1回の利用で通過する平均人数、トイレであれば流水回数から決定される利用人数を用いる。これらの値は、実際にデータを取得してその平均値などを用いてもよいし、エレベータであれば、例えば搭乗可能な最大人数のX%を利用人数としてもよい。
N=Nold+Nf ・・・(5)
【0080】
また、推定部10は、当該設備をキーにして設備利用状況管理部43が保持するテーブル44を検索し、該当する設備の利用時における各部署のエリア(居室エリア)の重みを取得し、当該設備の利用時における各部署のエリアの在場人数の推定値Ndepを、下記式(6)に従って算出する。ただし、Ndep_oldは在場人数情報テーブル29における当該部署の居室エリアの更新前の在場人数の推定値であり、Wf_depは、当該設備の各部署における利用割合である(図24に示す重み)。
Ndep=Ndep_old−Nf×Wf_dep ・・・(6)
【0081】
以上のように、この実施の形態4によれば、施設内の設備の利用の有無を示す情報が、当該設備を含むエリアのエリアIDに対応付けて登録された設備利用状況情報と、施設内の各設備に対する部署ごとの利用の割合が登録されたテーブル44とを保持する設備利用状況管理部43を備え、推定部10が、設備利用状況管理部43から取得した設備利用状況情報におけるエリアIDに基づいてエリア情報テーブル28から当該設備を含むエリアを特定し、当該エリアの在場人数の推定値を、設備利用状況管理部43から取得したテーブル44の情報を用いて算出する。このようにすることで、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27、及びエリア情報テーブル28のみでは推定することができないエリアの在場人数を推定することが可能となる。また、部署の居室エリアの在場人数の推定精度が向上する。
【0082】
実施の形態5.
図25は、この発明の実施の形態5による施設管理システムの機能構成を示すブロック図である。図25において、実施の形態5の施設管理システムは、機能ブロックとして、実施の形態1の図2に示した構成に加え、行動統計情報管理部45を備える。
行動統計情報管理部45は、利用者の行動によって変化する在場に関する統計情報を管理する構成部であり、例えば図1におけるサーバ4に構築してもよい。
また、行動統計情報管理部45は、自身が読み書き可能な記憶装置に行動統計情報を、エリアごとに保持する。
行動統計情報は、利用者の行動の統計情報であり、例えば利用者が自席から離れている割合を示す離席割合の統計情報や、施設への入場から部署の居室エリアまでの到達時間の統計情報などを指す。実施の形態5における推定部10は、これらの情報を用いて在場人数を推定する。
【0083】
なお、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及び行動統計情報管理部45は、図1に示したように、入退場管理装置3、サーバ4及び設備管理装置5として動作する各コンピュータの機能として実現できる。
また、入退場管理部7、個人管理部9、推定部10、エリア管理部12、設備管理部15及び行動統計情報管理部45は、これらの各機能が記述されたプログラムモジュールを有する施設管理用プログラムを、コンピュータに読み込ませて実行させることによって、当該コンピュータの各機能ブロックとして実現することができる。
【0084】
次に動作について説明する。
(1)離席割合に関する行動統計情報の利用
行動統計情報管理部45は、例えば、離席割合をX%とした行動統計情報をエリアごとに保持する。ここで、離席割合は、利用者に無線タグを携帯して実験を行ったり、利用者へのヒアリングを行ったりすることにより得られる。
推定部10は、上記実施の形態1と同様に、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27及びエリア情報テーブル28を利用して、該当するエリアの在場人数Npを推定する。このとき、推定部10は、該当するエリアのエリアIDを行動統計情報管理部45へ出力する。行動統計情報管理部45は、推定部10から取得したエリアIDに対応する行動統計情報(ここでは、離席割合X%)を特定し、推定部10へ出力する。
【0085】
推定部10は、行動統計情報管理部45から離席割合X%を取得すると、下記式(7)に従って、当該エリアの在場人数Nを推定し、最終的な推定結果とする。
N=Np×X/100 ・・・(7)
【0086】
なお、時間帯ごとに変化する離席割合を在場人数の推定に利用してもよい。例えば、7時から8時はX=1%、8時から9時まではX=2%、9時から10時まではX=3%、などとする。このとき、各時間帯での在場人数の推定値Nx−yは、それぞれ下記式で表される。ここで、Nx−yは、x時からy時までの在場人数の推定値である。
N7−8=Np×X1/100
N8−9=Np×X2/100
N9−10=Np×X3/100
【0087】
また、部署ごと(居室エリアごと)に離席割合を変えてもよい。この場合は、例えば、A部、B部、C部の離席割合をXa%、Xb%、Xc%とすると、各部署の居室エリアの推定在場人数Nx(x=a,b,c)は、それぞれ下記式で表される。ここで、Npx(x=a,b,c)は、推定部10が、上記実施の形態1と同様に、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27及びエリア情報テーブル28を利用して算出したX部(X=A,B,C)の在場人数の推定値である。
Na=Npa×Xa/100
Nb=Npb×Xb/100
Nc=Npc×Xc/100
【0088】
(2)施設への入場から部署の居室エリアまでの到達時間に関する行動統計情報の利用
図26は、行動統計情報の一例を示す図である。図26において、行動統計情報46は、部署と当該部署の居室エリアに到達するまでの到達時間の統計情報との対応を示している。到達時間の値は、施設の入り口と部署の居室エリアとの距離dに比例した値(例えば、距離dと、人間の典型的な歩行速度vとを用いて、d/vとする)とする。または、複数の利用者に無線タグを持ってもらい、到達時間を採取する実験を行って得られた時間の平均を利用する。さらには、利用者にヒアリングを行い、その平均値を利用することが考えられる。
【0089】
図27は、実施の形態5による施設管理システムの動作の流れを示すフローチャートであり、部署の居室エリアに到達するまでの到達時間の行動統計情報46を用いて在場人数を推定する処理の詳細を示している。図27において、ステップST1からステップST4までの処理は、上記実施の形態1で図9を用いて説明した処理と同様である。
推定部10は、ステップST4において、上記実施の形態1と同様にして該当する居室エリアの在場人数を推定すると、入退場情報テーブル26及び個人情報テーブル27から得られる当該居室エリアに対応する所属に基づき、行動統計情報管理部45から、入退場を行った利用者の到達時間に関する行動統計情報46を取得する。
【0090】
次に、推定部10は、ステップST4で該当エリアにおける在場人数を推定してから、取得した行動統計情報46における上記到達時間が経過したか否かを判定する(ステップST4−1)。ここで、上記到達時間未満であれば(ステップST4−1;NO)、ステップST4−1に戻り、当該到達時間が経過するまで待ち状態となる。
一方、上記到達時間が経過すれば(ステップST4−1;YES)、推定部10は、ステップST4で推定した在場人数で、在場人数情報テーブル29の当該エリアの在場人数を更新する。
【0091】
以上のように、この実施の形態5によれば、施設内における利用者の行動の統計情報がエリアIDに対応付けて登録された行動統計情報46を保持する行動統計情報管理部45を備え、推定部10が、行動統計情報管理部45から取得した行動統計情報46におけるエリアIDに基づいて、エリア情報テーブル28から施設内のエリアを特定し、当該エリアの在場人数を、行動統計情報46における利用者の行動の統計情報基づいて推定する。
このようにすることで、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27及びエリア情報テーブル28を利用して推定した人数と比較して、利用者の行動をより反映した人数を推定することができる。
【0092】
実施の形態6.
上記実施の形態1から上記実施の形態5までの構成において、管理対象の施設に元々設置されているセンサ等を利用して、在場人数を算出してもよい。
ここで言うセンサとは、人数を計測することが可能なものであり、例えば、施設の廊下に取り付けられた監視画像カメラや、照明の制御に用いる人感センサなどである。
センサは、施設に新規に導入するのではなく、既に施設に設置されているものを利用したり、また既に導入されているセンサシステムにいくつかセンサを追加したりする。
【0093】
監視画像カメラを用いた人数計測は、例えば、監視画像カメラにより得られる画像情報を用いた画像処理によってエリアの人数を推定する。画像処理は、例えば画像の背景差分情報から人の動きを定量化して人数を算出するという方法などが考えられる。
人感センサでは、検知した回数を人数とする。また、複数の人感センサの情報を用いて隣り合うセンサが連続して反応した場合に人数をカウントアップすることで、人感センサによる動き情報を用いた人数の算出を行う方式などが考えられる。
【0094】
以上のように、この実施の形態6によれば、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27及びエリア情報テーブル28に加えて、既存のセンサを利用したり、既存のセンサシステムに導入した少数のセンサを利用して、エリア在場人数を推定する。
このようにすることで、入退場情報テーブル26、個人情報テーブル27、及びエリア情報テーブル28のみでは推定することができないエリアの在場人数を推定することが可能となる。また、部署の居室エリアの在場人数の推定精度が向上する。
【0095】
実施の形態7.
この実施の形態7は、上記実施の形態2〜6で示した在場人数の推定方式の全て若しくは一部を組み合わせて推定処理を行う。
つまり、実施の形態7における施設管理システムは、スケジュール管理部31、会議室予約管理部36、設備利用状況管理部43及び行動統計情報管理部45を備え、推定部10が、推定結果の重み付けによって在場人数Nを下記式(8)から算出する。
ただし、Nscはスケジューラ情報を利用した推定在場人数であり、Nfpは会議室予約情報を利用した推定在場人数である。Nfuは設備利用状況情報を利用した推定在場人数であり、Nstは行動統計情報を利用した推定在場人数であり、Nsenは環境センサ情報を利用した推定在場人数である。
また、wscはスケジューラ情報利用に対する重みであり、wfpは会議室予約情報利用に対する重み、wfuは設備利用状況情報利用に対する重み、wstは行動統計情報利用に対する重み、wsenは環境センサ情報利用に対する重みである。
なお、wsc+wfp+wfu+wst+wsen=1である。
N=Nsc×wsc+Nfp×wfp+Nfu×wfu+Nst×wst+Nsen×wsen ・・・(8)
【0096】
以上のように、この実施の形態7によれば、複数の推定方式を利用するので、一つの推定方式で在場人数を推定する場合と比較して柔軟にパラメータを設定することができる。また、推定方式の結果を調整することにより、エリアの在場人数の推定を高い精度で行うことが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 IDカード、2 読み取り装置(検知手段)、3 入退場管理装置、4 サーバ、5 設備管理装置、6−1,6−2,・・・ 設備、7 入退場管理部、9 個人管理部、10 推定部、12 エリア管理部、15 設備管理部、16 利用者、18 施設、21 フロア、22 エリア、23 座席、24 会議室、25 照明、26 入退場情報テーブル、27 個人情報テーブル、28 エリア情報テーブル、29 在場人数情報テーブル、31 スケジュール管理部、33 予定エリア情報テーブル、35 スケジューラ情報、36 会議室予約管理部、37 会議室予約情報、39a〜39c,42,44 テーブル、43 設備利用状況管理部、45 行動統計情報管理部、46 行動統計情報、280 設備制御情報テーブル、290 制御条件情報テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象の施設に対する利用者の入退場を示す情報が当該利用者の識別情報に対応付けて登録された入退場情報テーブルを保持し、検知手段による利用者の識別情報の検知結果から当該施設に対する前記利用者の入退場を特定して、前記入退場情報テーブルの内容を更新する入退場管理部と、
利用者の所属する組織が、当該利用者の識別情報に対応付けて登録された個人情報テーブルを保持する個人管理部と、
利用者の所属する組織が専有する前記施設内のエリア及び前記組織に依らずに共用される前記施設内のエリアが、エリアの識別情報に対応付けてそれぞれ登録されたエリア情報テーブルを保持するエリア管理部と、
前記入退場管理部によって内容が更新された入退場情報テーブルから、前記施設へ入場又は退場した利用者の識別情報を特定し、当該利用者の識別情報に基づいて前記個人情報テーブルから当該利用者の所属する組織を特定し、当該利用者の所属する組織に基づいて前記エリア情報テーブルから当該利用者の所属する組織が専有するエリアの識別情報を特定して、当該識別情報で特定されるエリアの在場人数を、前記施設に対する当該利用者の入退場に応じて推定する推定部とを備えた施設管理システム。
【請求項2】
前記施設内のエリアを利用する利用者の予定内容が当該利用者の識別情報に対応付けて登録されたスケジューラ情報と、前記組織の予定内容及びこの予定で利用される前記施設内のエリアが前記組織ごとに登録された予定エリア情報とを保持するスケジュール管理部を備え、
前記推定部は、前記スケジュール管理部から取得したスケジューラ情報における利用者の識別情報に基づいて、前記個人情報テーブルから当該利用者の所属する組織を特定し、前記スケジューラ情報における利用者の予定内容に基づいて、当該利用者の所属する組織に対応する前記予定エリア情報から、この予定で利用される前記施設内のエリアを特定して、当該エリアの在場人数を、当該利用者の予定内容に応じて推定することを特徴とする請求項1記載の施設管理システム。
【請求項3】
前記施設内の共用エリア及びこれを利用する予約内容が登録された予約情報を保持する共用エリア予約管理部を備え、
前記推定部は、前記共用エリア予約管理部から取得した予約情報における共用エリアの在場人数の推定値を、当該共用エリアの収容人数、予約内容に応じた想定参加人数、及び当該共用エリアを予約した利用者の所属する組織の人数のうちの少なくとも1つを用いて算出することを特徴とする請求項1記載の施設管理システム。
【請求項4】
前記施設内の設備の利用の有無を示す情報が、当該設備を含むエリアの識別情報に対応付けて登録された設備利用状況情報と、施設内の各設備に対する前記組織ごとの利用の割合が登録された利用割合情報とを保持する設備利用状況管理部を備え、
前記推定部は、前記設備利用状況管理部から取得した設備利用状況情報におけるエリアの識別情報に基づいて前記エリア情報テーブルから当該設備を含むエリアを特定し、当該エリアの在場人数の推定値を、前記設備利用状況管理部から取得した利用割合情報を用いて算出することを特徴とする請求項1記載の施設管理システム。
【請求項5】
前記施設内における利用者の行動の統計情報が、前記施設内のエリアの識別情報に対応付けて登録された行動統計情報を保持する行動統計情報管理部を備え、
前記推定部は、前記行動統計情報管理部から取得した行動統計情報におけるエリアの識別情報に基づいて前記エリア情報テーブルから前記施設内のエリアを特定し、当該エリアの在場人数の推定値を、前記行動統計情報を用いて算出することを特徴とする請求項1記載の施設管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−180974(P2011−180974A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46582(P2010−46582)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、「多次元センサー情報に基づく工場・ビル分野の環境負荷低減戦略に関する研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】